(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】反応性シリコーン組成物およびその硬化物
(51)【国際特許分類】
C08F 299/08 20060101AFI20240110BHJP
C08F 290/14 20060101ALI20240110BHJP
C08G 77/04 20060101ALI20240110BHJP
C08L 83/07 20060101ALI20240110BHJP
C08K 9/06 20060101ALI20240110BHJP
C08K 9/02 20060101ALI20240110BHJP
C09J 183/04 20060101ALI20240110BHJP
C09J 11/04 20060101ALI20240110BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20240110BHJP
C09D 183/04 20060101ALI20240110BHJP
C09D 7/62 20180101ALI20240110BHJP
C09D 7/20 20180101ALI20240110BHJP
C09C 1/36 20060101ALI20240110BHJP
C09C 3/12 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
C08F299/08
C08F290/14
C08G77/04
C08L83/07
C08K9/06
C08K9/02
C09J183/04
C09J11/04
C09J11/06
C09D183/04
C09D7/62
C09D7/20
C09C1/36
C09C3/12
(21)【出願番号】P 2020558227
(86)(22)【出願日】2019-11-01
(86)【国際出願番号】 JP2019043076
(87)【国際公開番号】W WO2020105405
(87)【国際公開日】2020-05-28
【審査請求日】2022-07-26
(31)【優先権主張番号】P 2018218291
(32)【優先日】2018-11-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】飛田 将大
(72)【発明者】
【氏名】山田 修平
(72)【発明者】
【氏名】安部 誠志
【審査官】佐藤 のぞみ
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-510159(JP,A)
【文献】国際公開第2017/170275(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/165620(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/115377(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/170385(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 290/00-290/14
C08F 299/00-299/08
C08G 77/00-77/62
C08L 83/00-83/16
C08K 3/00-13/08
C09C 1/36、3/12
C09J
C09D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(S)成分及び(T)成分を含有する反応性シリコーン組成物であって、
前記(S)成分は、式[1]で表されるジアリールケイ酸化合物と式[2]で表されるケイ素化合物との縮合生成物からなる反応性シリコーン化合物であり、
【化1】
(式中、Ar
1及びAr
2は、それぞれ独立して、炭素原子数1乃至6のアルキル基で任意に置換され得るフェニル基を表し、Xは、加水分解性反応基を表す。)
前記(T)成分は、2~60nmの平均一次粒子径を有する酸化チタン含有金属酸化物のコロイド粒子(A)を核とし、その表面を二酸化ケイ素及び酸化スズを含む複合酸化物の1~4nmの平均一次粒子径を有するコロイド粒子(B)からなる被覆物で被覆された、2~100nmの平均粒子径を有する酸化チタン含有酸化物コロイド粒子(C)であり、その表面に有機ケイ素化合物が結合してなる、変性酸化チタン含有酸化物コロイド粒子である、
反応性シリコーン組成物。
【請求項2】
溶媒としてシクロヘキサノン又はメチルエチルケトンを含む、請求項1に記載の反応性シリコーン組成物。
【請求項3】
さらに重合開始剤を含む、請求項1又は請求項2に記載の反応性シリコーン組成物。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のうちいずれか一項に記載の反応性シリコーン組成物から形成される硬化物。
【請求項5】
請求項1乃至請求項3のうちいずれか一項に記載の反応性シリコーン組成物からなる、光信号伝送装置における光導波路同士の接続部又は光導波路と受光素子との接続部に用いる光学接着剤。
【請求項6】
請求項4に記載の硬化物からなる、光信号伝送用デバイスにおけるコア部材。
【請求項7】
請求項1乃至請求項3のうちいずれか一項に記載の反応性シリコーン組成物からなる膜形成剤。
【請求項8】
光学基材表面に請求項1乃至請求項3のうちいずれか一項に記載の反応性シリコーン組成物より形成される硬化膜を有する光学部材。
【請求項9】
前記硬化膜上に、更に反射防止膜が施されたことを特徴とする
、請求項8に記載の光学部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明性に優れ、高い屈折率を発現する硬化物を得られる反応性シリコーン組成物に関する。この反応性シリコーン組成物は、光学接着剤又は透明封止材向け用途や、オンボード光インターコネクト、例えば、光信号伝送装置におけるコア部材等の光配線材料として有用である。
【背景技術】
【0002】
近年、クラウドコンピューティングの発展やスマートフォン使用者の増加により、通信トラフィックは増加の一途をたどっている。そのため、送信された情報データが集中するデータサーバーにて、膨大な電力使用量が発生する、さらには処理量の限界が近づいている、といった問題が顕在化しており、これらを改善するための技術進展が急務となっている。
こうした中、情報を高密度かつ高速に処理できる技術として、サーバーボード内の一部の電気配線を光配線へと変更する、光電気複合基板(光電気混載基板ともいう)という技術が精力的に検討されている。
【0003】
光電気複合基板において、光伝送路である光導波路を経由して光を送受信する受発光素子は、素子の信頼性を高めるために透明な光学接着剤による封止がなされる。例えば基板上の光導波路に光学接着剤を用いて面発光レーザー素子(VCSEL)などの受発光素子を接続し、続いてリフローによりはんだ付けすることで、電気配線と受発光素子との接続を行うとともに素子の固定が行われる。
ここで使用される光学接着剤や光導波路には、光通信で用いられる850nm、1.31μm、1.55μmといった近赤外波長において透明であることが求められる。また光導波路又は受発光素子と光学接着剤との屈折率差による、接続部における光損失を低減するために、光学接着剤や光導波路等に使用される光学材料の屈折率は制御可能であることが望ましい。
また光電気複合基板では、受発光素子を基板に強固に固定するべく、強度の高い鉛フリーはんだの使用が検討されている。鉛フリーはんだはリフローに高温を必要とし、そのためプリント配線基板には280℃もの高温が加えられ得る。そのため、光電気複合基板に使用される光配線関連材料(光導波路、光学接着剤)には高い耐熱性が求められることとなる。
【0004】
透明性および耐熱性に優れた光学接着剤としては、特定構造のアダマンタン誘導体を含有することを特徴とする硬化性樹脂組成物(特許文献1)や、脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステルを含有することを特徴とする硬化性樹脂組成物(特許文献2)が提案されている。
また、上記の近赤外波長領域での透明性と耐熱性を有する光導波路を形成できる材料として、ビニル系シリコーン化合物が提案されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2010-132576号公報
【文献】特開平11-61081号公報
【文献】特表2014-510159号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように光電気複合基板の実用化が検討される中で、これら基板にて使用される光学接着剤や光導波路向け等の光学材料には、長波長域において低伝搬損失であり、耐熱性を有し、また屈折率調整が可能であることが求められる。加えてこれら材料は、上記基板上における光配線の形成が精度良く、また簡便かつ汎用的な手段にて可能となるといった加工性にも優れることが求められる。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、光通信で使われる近赤外光領域で透明であり、屈折率の調整が可能であり、またリソグラフィやエッチング等の従来の半導体加工技術にて微細構造を容易に形成可能であり、硬化後の耐光性、耐熱性に優れた反応性シリコーン組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明者らが鋭意検討した結果、特定構造の反応性シリコーン化合物と、有機ケイ素化合物で表面修飾されてなる特定構造の酸化チタン含有コロイド粒子とを含む反応性シリコーン組成物が、透明性に優れ、屈折率調整が可能であり、耐光性に優れる硬化物が得られ、また光照射や加熱により容易に硬化物が形成可能な優れた加工性を有することを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち本発明は、第1観点として、
下記(S)成分及び(T)成分を含有する反応性シリコーン組成物であって、
前記(S)成分は、式[1]で表されるジアリールケイ酸化合物と式[2]で表されるケイ素化合物との縮合生成物からなる反応性シリコーン化合物であり、
【化1】
(式中、Ar
1及びAr
2は、それぞれ独立して、炭素原子数1乃至6のアルキル基で任意に置換され得るフェニル基を表し、Xは、加水分解性反応基を表す。)
前記(T)成分は、2~60nmの平均一次粒子径を有する酸化チタン含有金属酸化物のコロイド粒子(A)を核とし、その表面を二酸化ケイ素及び酸化スズを含む複合酸化物の1~4nmの平均一次粒子径を有するコロイド粒子(B)からなる被覆物で被覆された、2~100nmの平均粒子径を有する酸化チタン含有酸化物コロイド粒子(C)であり、その表面に有機ケイ素化合物が結合してなる、変性酸化チタン含有酸化物コロイド粒子である、
反応性シリコーン組成物に関する。
第2観点として、溶媒としてシクロヘキサノン又はメチルエチルケトンを含む、第1観点に記載の反応性シリコーン組成物に関する。
第3観点として、さらに重合開始剤を含む、第1観点又は第2観点に記載の反応性シリコーン組成物に関する。
第4観点として、第1観点乃至第3観点のうちいずれか一項に記載の反応性シリコーン組成物から形成される硬化物に関する。
第5観点として、第1観点乃至第3観点のうちいずれか一項に記載の反応性シリコーン組成物からなる、光信号伝送装置における光導波路同士の接続部又は光導波路と受光素子との接続部に用いる光学接着剤に関する。
第6観点として、第4観点に記載の硬化物からなる、光信号伝送用デバイスにおけるコア部材に関する。
第7観点として、第1観点乃至第3観点のうちいずれか一項に記載の反応性シリコーン組成物からなる膜形成剤に関する。
第8観点として、光学基材表面に第1観点乃至第3観点のうちいずれか一項に記載の反応性シリコーン組成物より形成される硬化膜を有する光学部材に関する。
第9観点として、第8観点に記載の光学部材の表面に、更に反射防止膜が施されたことを特徴とする光学部材に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、特定構造の反応性シリコーン化合物と、有機ケイ素化合物で表面修飾されてなる特定構造の酸化チタン含有コロイド粒子とを組み合わせることにより、得られる反応性シリコーン組成物において高い屈折率を有し耐光性に優れる硬化物を形成することができる。また前記反応性シリコーン組成物において、前記反応性シリコーン化合物と前記酸化チタン含有コロイド粒子の配合比や、前記酸化チタン含有コロイド粒子の組成を調整することにより、得られる硬化物の屈折率を調整することが可能である。
また本発明による反応性シリコーン組成物は、その硬化物が近赤外光領域における透明性に優れることから、長波長領域において低伝搬損失な材料を提供できる。
そして本発明による反応性シリコーン組成物は、光照射や加熱により容易に硬化物が形成可能であり、またワニスの形態としても使用可能である。さらに薄膜を容易に形成することも可能であり、コーティング組成物としての使用も可能である。そのため本発明の反応性シリコーン組成物は、透明性に優れ、高い屈折率を有し、耐光性に優れる硬化膜(コーティング層)を形成することができる。
さらに本発明による反応性シリコーン組成物は、長期の保管後においても凝集や沈殿、析出物が抑制され、保存安定性に優れる組成物を提供でき、また安定性の高いコート材としての提供も可能である。
【0011】
そして本発明の反応性シリコーン組成物より得られる硬化物は、近赤外光領域において透明性に優れ、高屈折率を有し、かつ耐光性をも有するものであり、さらに前記反応性シリコーン化合物とコロイド粒子の配合量やコロイド粒子の組成の調整によって容易に屈折率を調整できる。
そのため、本発明の硬化物は、光電気複合基板などに用いられる光デバイスの信頼性向上において有用であり、例えば光信号伝送装置における光導波路同士の接続部や光導波路と受発光素子との接続部に用いる光学接着剤や、光信号伝送用デバイス(例えばケーブル等)におけるコア部材として特に有用である。
【0012】
また、上記硬化物を膜(層)形態にて、光学基材表面に形成し光学部材を為した場合、該光学部材は透明性に優れ、高い屈折率を有し、耐光性に優れるものとなり、また屈折率が1.58以上の高屈折率の部材を用いた場合においても干渉縞の見られない高透明性で外観良好な光学部材を得られる。
そのため、本発明の反応性シリコーン組成物により作製される硬化膜を有する光学部材は、眼鏡レンズのほか、カメラ用レンズ、自動車の窓ガラス、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイなどに付設する光学フィルターなどに使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
〔反応性シリコーン組成物〕
本発明の反応性シリコーン組成物は(S)成分:反応性シリコーン化合物、及び、(T)成分:変性酸化チタン含有酸化物コロイド粒子を含みて構成され、該反応性シリコーン組成物は後述する溶媒、重合開始剤、さらには反応性希釈剤を含んでいてもよい。
以下、本発明の反応性シリコーン組成物を構成する各成分について詳述する。
【0014】
《(S)成分》
本発明に係る(S)成分は、式[1]で表されるジアリールケイ酸化合物と式[2]で表されるケイ素化合物とを酸又は塩基存在下で重縮合して得られる反応性シリコーン化合物であり、すなわち式[1]で表されるジアリールケイ酸化合物と式[2]で表されるケイ素化合物との縮合生成物であり、一例として脱アルコール縮合生成物の態様が挙げられる。
【0015】
<式[1]で表されるジアリールケイ酸化合物>
本発明において使用するジアリールケイ酸化合物としては、下記式[1]で表される化合物(以下、単に式[1]化合物とも称する)が挙げられる。
【化2】
式中、Ar
1及びAr
2は、それぞれ独立して、炭素原子数1乃至6のアルキル基で置換されていてもよいフェニル基を表す。Ar
1及びAr
2の例としては、フェニル基、2-メチルフェニル基、3-メチルフェニル基、4-エチルフェニル基、4-イソプロピルフェニル基等が挙げられる。
【0016】
上記式[1]で表される化合物の具体例としては、ジフェニルシランジオール、ジ(4-メチルフェニル)シランジオール、ジ(4-エチルフェニル)シランジオール、ジ(4-イソプロピルフェニル)シランジオール等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
上記式[1]で表される化合物は、一種を単独で使用してもよく、また二種以上の混合物として用いてもよい。
【0017】
<ケイ素化合物>
本発明において使用するケイ素化合物としては、下記式[2]で表される化合物(以下、単に式[2]化合物とも称する)が挙げられる。
【化3】
式中、Xは、加水分解性反応基(加水分解性の縮合反応を受け得る基)を表す。
Xは、好ましくは炭素原子数1乃至10のアルコキシ基、炭素原子数2乃至5のアシルオキシ基、炭素原子数2乃至6のアルキルカルボニル基、炭素原子数2乃至6のアルコキシカルボニル基、又は基NR
1
2(式中、R
1は水素原子又は炭素原子数1乃至6のアルキル基を表す。)を表す。より好ましくは、Xは、炭素原子数1乃至6のアルコキシ基を表し、例えばメトキシ基又はエトキシ基を表す。
式[2]で表される化合物の具体例としては、4-ビニルフェニルトリメトキシシラン(p-スチリルトリメトキシシラン)、4-ビニルフェニルトリエトキシシラン(p-スチリルトリエトキシシラン)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
上記式[2]で表される化合物は、一種を単独で使用してもよく、また二種以上の混合物として用いてもよい。
【0018】
<ジアリールケイ酸化合物とケイ素化合物との配合割合>
上述の反応性シリコーン化合物に調製に用いるジアリールケイ酸化合物[1]とケイ素化合物[2]の配合割合は特に限定されないが、例えばブロックコポリマー化を防ぐ目的から、式[1]化合物:式[2]化合物のモル比で、2:1乃至1:2の範囲で配合され得る。これらの化合物は、より好ましくは1.1:0.9乃至0.9:1.1のモル比の範囲で配合され、例えばおよそ1:1のモル比にて配合され得る。なお、本反応性シリコーン化合物中において遊離のヒドロキシ基が存在しないことを確実にするという目的においては、例えば式[1]化合物:式[2]化合物のモル比で約1:1乃至0.9:1.1の範囲にて配合することが好ましい。
【0019】
上記式[1]で表されるジアリールケイ酸化合物及び式[2]で表されるケイ素化合物は、前述したように、必要に応じてそれぞれ適宜選択して用いることができ、また、式[1]化合物及び式[2]化合物のいずれも、単独で、或いは複数種を組み合わせて使用することができる。複数種を組み合わせて使用する場合には、式[1]化合物の合計モル数、式[2]化合物の合計モル数が、それぞれ上記の数値範囲内となるように配合すればよい。
【0020】
<反応性シリコーン化合物:重縮合反応>
上記式[1]で表されるジアリールケイ酸化合物と上記式[2]で表されるケイ素化合物とを酸又は塩基存在下で重縮合して得られる、本発明で使用する反応性シリコーン化合物(縮合生成物)は、上記の式[2]で表されるケイ素化合物の構造が一つの特徴となっている。式[2]化合物に含まれる反応性基(重合性二重結合)は、ラジカルによって容易に重合し、重合後(硬化後)は高い耐熱性を示す。
【0021】
一般に、式[2]で表されるケイ素化合物を、式[1]で表されるジアリールケイ酸化合物と共に重縮合に付し、高い耐熱性を有する反応性のシリコーン化合物を得る場合、生成物が液体状態を保つように適度な重合度で反応を停止させる必要がある。中でも本発明で使用される式[2]で表されるケイ素化合物がアルコキシケイ素化合物である態様の場合、ジアリールケイ酸化合物との重縮合反応は穏やかであるため、重合度を制御しやすいという特徴があり、この態様における利点といえる。
【0022】
式[2]で表されるケイ素化合物、好ましくはアルコキシケイ素化合物と、式[1]で表されるジアリールケイ酸化合物との間の脱アルコール化等による重縮合反応は、無溶媒下で行うことも可能だが、式[2]で表される化合物に対して不活性な溶媒(例えばトルエンなど)を反応溶媒として用いることも可能である。
また上記重縮合反応を無溶媒下での反応とし、そして式[2]で表される化合物がアルコキシケイ素化合物である場合、反応副生成物であるアルコールの留去が容易になるという利点がある。
一方、反応溶媒を用いる場合、反応系を均一にしやすく、より安定した重縮合反応を行えるという利点がある。
【0023】
<重縮合反応に使用する溶媒>
反応性シリコーン化合物の合成(重縮合)反応は、前述のように無溶媒で行ってもよいが、反応をより均一化させるために溶媒を使用してもよい。溶媒は、上記ジアリールケイ酸化合物および上記ケイ素化合物と反応せず、それらの重縮合物を溶解するものであれば特に限定されない。
【0024】
溶媒の例としては、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール等のグリコール類、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、ジエチルセロソルブ、ジエチルカルビトール等のグリコールエーテル類、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド等、酢酸エチル等のエステル類、及び、下記の場合において、メタノール又はエタノール等のアルコール類が挙げられる。アルコール類は、式[2]中のXがアルコキシ基以外の基である場合において好適であり、この場合にアルコール類は、再エステル化による重縮合反応を制御するために使用し得る。
重縮合反応に溶媒を使用する場合、特に好ましいものとして、トルエン、キシレン及びメチルエチルケトンを挙げることができる。
上述の溶媒は1種単独で、或いは2種以上を混合して用いてもよい。
【0025】
<その他触媒など>
上記の重縮合反応には触媒を使用してもよい。使用可能な触媒としては、前述の溶媒に溶解する、もしくは均一分散する限りにおいては特にその種類は限定されず、必要に応じて適宜選択して用いることができる。触媒は1種単独で使用してもよいし、又は複数種を併用することもできる。
用いることのできる触媒の例としては、酸性化合物として、Ti(OR)4、Zr(OR)4、B(OR)3及びAl(OR)3等、塩基性化合物としてアルカリ土類金属水酸化物等、並びに、フッ化物塩として、NH4F及びNR4F(ここでRは、炭素原子数1乃至12の直鎖状炭化水素基、炭素原子数3乃至12の分枝アルキル基及び炭素原子数3乃至12の環状アルキル基からなる群から選ばれる一種以上の基である)等が挙げられる。
【0026】
酸性化合物の具体例としては、トリメトキシアルミニウム、トリエトキシアルミニウム、トリ-n-プロポキシアルミニウム、トリイソプロポキシアルミニウム、トリ-n-ブトキシアルミニウム、トリイソブトキシアルミニウム、トリ-sec-ブトキシアルミニウム、トリ-tert-ブトキシアルミニウム、トリメトキシボロン、トリエトキシボロン、トリ-n-プロポキシボロン、トリイソプロポキシボロン、トリ-n-ブトキシボロン、トリイソブトキシボロン、トリ-sec-ブトキシボロン、テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラ-n-プロポキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラ-n-ブトキシチタン、テトライソブトキシチタン、テトラ-sec-ブトキシチタン、テトラ-tert-ブトキシチタン、テトラメトキシジルコニウム、テトラエトキシジルコニウム、テトラ-n-プロポキシジルコニウム、テトライソプロポキシジルコニウム、テトラ-n-ブトキシジルコニウム、テトライソブトキシジルコニウム、テトラ-sec-ブトキシジルコニウム、テトラ-tert-ブトキシジルコニウム等が挙げられる。
【0027】
塩基性化合物の例としては、水酸化バリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ストロンチウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アンモニウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、トリエチルアミン等が挙げられる。
【0028】
フッ化物塩の例としては、フッ化アンモニウム、フッ化テトラメチルアンモニウム、フッ化テトラブチルアンモニウム等が挙げられる。
【0029】
これら触媒のうち、好ましく用いられるのは、テトライソプロポキシチタン(チタンイソプロポキシド)、水酸化バリウム、水酸化ストロンチウム、水酸化カルシウム、及び水酸化マグネシウムからなる群から選ばれる一種以上の化合物である。
【0030】
触媒を使用する場合、その使用量は、式[1]で表されるジアリールケイ酸化合物と式[2]で表されるケイ素化合物(好ましくはアルコキシケイ素化合物)との合計質量に対して、触媒としての作用(反応の進行)の観点から0.01質量%以上であり、例えば0.01乃至10質量%、或いは0.1乃至5質量%である。
【0031】
<縮合反応の反応条件> 本発明で用いる反応性シリコーン化合物は、式[1]で表されるジアリールケイ酸化合物と式[2]で表されるケイ素化合物を、例えば、酸または塩基性触媒の存在下で、脱アルコール縮合等の重縮合反応を行うことにより得られる。好ましい態様において該重縮合反応は水を添加せずに行われ、例えば周囲(試薬、ガラス壁、該材料上の大気)を介して混入する可能性のある水を可能な限り低く抑えて実施され得、また例えば完全に水の非存在下で(非加水にて)反応が実施され得る。こうした理由により、該反応は窒素ガス等の不活性ガス雰囲気中で行なわれ得、また反応容器は使用前に加熱され得る。更に、水分の混入を防ぐために、無水試薬が使用され得る。
【0032】
反応温度は、必要に応じて選択することができ、例えば20℃乃至150℃の範囲であり、或いは30℃乃至120℃の範囲で選択可能である。
反応時間は、重縮合物の分子量増加が終了し、分子量分布が安定するのに必要な時間以上であるならば特に制限は受けず、例えば数時間から数日間である。
【0033】
式[2]で表されるケイ素化合物がアルコキシケイ素化合物である場合、この反応系は脱アルコール縮合を促進するため、反応中減圧下で副生成物であるアルコールを留去してもよく、ただしアルコールの留去は必須ではない。
【0034】
《(T)成分》
本発明の反応性シリコーン組成物に含まれる(T)成分は、その表面に有機ケイ素化合物が結合してなる、変性酸化チタン含有酸化物コロイド粒子である。
【0035】
上記(T)成分は、より詳細には、2~100nmの平均粒子径を有する酸化チタン含有酸化物コロイド粒子(C)の表面に有機ケイ素化合物が結合してなる、変性酸化チタン含有酸化物コロイド粒子である。前記コロイド粒子(C)は、2~60nmの平均一次粒子径を有する酸化チタン含有金属酸化物のコロイド粒子(A)を核として、その表面を、二酸化ケイ素及び酸化スズを含む複合酸化物の1~4nmの平均一次粒子径を有するコロイド粒子(B)からなる被覆物で被覆されてなる、コロイド粒子である。
【0036】
なお本発明において、核となる酸化チタン含有金属酸化物のコロイド粒子(A)、並びに、被覆物となる複合酸化物のコロイド粒子(B)は、その平均一次粒子径が透過型電子顕微鏡による観察で測定される。そして前記核となる粒子(A)の表面が粒子(B)からなる被覆物で被覆された酸化チタン含有酸化物コロイド粒子(C)は、動的光散乱法(DLS法)によってその平均粒子径を測定することができる。
なお、前記酸化チタン含有金属酸化物コロイド粒子(A)の表面を前記複合酸化物コロイド粒子(B)で被覆する際、粒子同士の界面の反応によって、得られる酸化チタン含有酸化物コロイド粒子(C)の粒子径の値は変化し得る。そのため、酸化チタン含有酸化物コロイド粒子(C)の粒子径を透過型電子顕微鏡による観察により測定した一次粒子径で評価した場合には、この値が前記酸化チタン含有金属酸化物コロイド粒子(A)と前記複合酸化物コロイド粒子(B)の平均一次粒子径の和に必ずしも一致しないことがある。
以下本明細書において、透過型電子顕微鏡観察により測定された粒子径を「平均一次粒子径」、動的光散乱法(DLS法)により測定された粒子径を「平均粒子径(動的光散乱法粒子径)」と称する。
【0037】
<酸化チタン含有金属酸化物コロイド粒子(A)>
上記酸化チタン含有金属酸化物コロイド粒子(A)は2~60nmの平均一次粒子径を有する粒子である。
上記酸化チタン含有金属酸化物コロイド粒子(A)は、酸化チタンのみからなるものであっても、酸化チタンと酸化チタン以外の成分を含みてなるものであってもよい。
【0038】
酸化チタン以外の成分としては、例えばFe、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、In、Sn、Sb、Ta、W、Pb、Bi及びCeからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属の酸化物を挙げることができる。これら金属酸化物の形態として、例えば、Fe2O3、CuO、ZnO、Y2O3、ZrO2、Nb2O5、MoO3、In2O3、SnO2、Sb2O5、Ta2O5、WO3、PbO、Bi2O3、CeO2等を例示することができる。これら金属酸化物は単独で用いることも複数種を組み合わせて用いることもできる。
前記コロイド粒子(A)が酸化チタンと酸化チタン以外の成分(金属酸化物)を含みてなる場合、組み合わせ方法としては、上記酸化チタンと一種又は二種以上の金属酸化物を混合する方法や、上記酸化チタンと一種又は二種以上の金属酸化物を複合化させる方法、又は上記酸化チタンと一種又は二種以上の金属酸化物を原子レベルで固溶体化する方法が挙げられる。
【0039】
上記コロイド粒子(A)に酸化チタン以外の成分(金属酸化物)が含まれる場合の具体例としては、TiO2粒子とSnO2粒子とがその界面で化学的な結合を生じて複合化されたTiO2-SnO2複合金属酸化物コロイド粒子、TiO2とSnO2とZrO2とが原子レベルで固溶体を形成して得られたTiO2-SnO2-ZrO2複合金属酸化物コロイド粒子等が挙げられる。
【0040】
また、上記コロイド粒子(A)は無定形でも、アナタース型、ルチル型、ブルッカイト型等の結晶であってもよい。更には、チタン酸バリウム(BaTiO3又はBaO・TiO2で表される。)のようなペロブスカイト型チタン化合物であってもよい。中でも、酸化チタン含有金属酸化物コロイド粒子の結晶型はルチル型であることが好ましい。
【0041】
上記酸化チタン含有金属酸化物コロイド粒子(A)における酸化チタン含有量は、TiO2換算で40~100質量%であり、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上である。中でも酸化チタン含有量を50質量%以上とすることで、これらの粒子を含む組成物を用いて得られる硬化物(硬化膜、透明被膜等)の屈折率の向上が期待でき、また、基材の屈折率によって発生し得る干渉縞の生成を抑えることができる。
【0042】
なお、前記酸化チタン含有金属酸化物コロイド粒子(A)は、公知の方法、例えば、イオン交換法、解膠法、加水分解法、反応法により製造することができる。上記のイオン交換法の例としては、上記金属(Ti、Ti以外の金属)の酸性塩を水素型イオン交換樹脂で処理する方法、あるいは上記金属(Ti、Ti以外の金属)の塩基性塩を水酸基型陰イオン交換樹脂で処理する方法が挙げられる。上記解膠法の例としては、上記金属の酸性塩を塩基で中和するか、あるいは上記金属の塩基性塩を酸で中和させることによって得られるゲルを洗浄した後、酸又は塩基で解膠する方法が挙げられる。上記加水分解法の例としては、上記金属のアルコキシドを加水分解する方法、あるいは上記金属の塩基性塩を加熱下加水分解した後、不要の酸を除去する方法が挙げられる。上記反応法の例としては、上記金属の粉末と酸とを反応させる方法が挙げられる。
【0043】
<二酸化ケイ素及び酸化スズを含む複合酸化物のコロイド粒子(B)>
上記二酸化ケイ素及び酸化スズを含む複合酸化物のコロイド粒子(B)は1~4nmの平均一次粒子径を有する粒子である。
上記コロイド粒子(B)としては、SnO2粒子とSiO2粒子とがその界面で化学的な結合を生じて複合化されたSnO2-SiO2複合コロイド粒子を挙げることができる。
上記コロイド粒子(B)において、二酸化ケイ素(SiO2)と酸化スズ(SnO2)の質量比は、例えばSiO2/SnO2=0.1~5.0とすることができる。
【0044】
また上記コロイド粒子(B)には、二酸化ケイ素及び酸化スズ以外のその他の成分を含んでいてもよく、例えばAl、Zr、Mo、Sb及びWからなる群から選ばれた1種又は2種以上の原子を含むことができる。これらの酸化物の形態としては、Al2O3、ZrO2、MoO3、Sb2O5、WO3等を例示することができる。
二酸化ケイ素及び酸化スズ以外のその他の成分を含む場合のコロイド粒子(B)一例として、SnO2粒子とWO3粒子とSiO2粒子とがその界面で化学的な結合を生じて複合化されたSnO2-WO3-SiO2複合コロイド粒子、SnO2粒子とMoO3粒子とSiO2粒子とがその界面で化学的な結合を生じて複合化されたSnO2-MoO3-SiO2複合コロイド粒子等が挙げられる。
【0045】
前記複合酸化物コロイド粒子(B)は、公知の方法、例えば、イオン交換法、酸化法により製造することができる。上記のイオン交換法の例としては、複合酸化物を構成する原子:Sn及びSi(及び所望によりその他の原子)の酸性塩を水素型イオン交換樹脂で処理する方法が挙げられる。上記酸化法の例としては、上記原子(Sn及びSi等)又はこれらの酸化物の粉末と過酸化水素とを反応させる方法が挙げる。
【0046】
<酸化チタン含有酸化物コロイド粒子(C)>
上記酸化チタン含有金属酸化物コロイド粒子(A)を核として、その表面を、上記二酸化ケイ素及び酸化を含む複合酸化物のコロイド粒子(B)からなる被覆物で被覆されてなる酸化チタン含有酸化物コロイド粒子(C)(複合酸化物のコロイド粒子被覆-酸化チタン含有金属酸化物コロイド粒子)において、被覆物となる複合酸化物コロイド粒子(B)の量(質量割合)は、核となる酸化チタン含有金属酸化物コロイド粒子(A)に対して、好ましくは0.01~1.0の範囲である。
なお、前記複合酸化物のコロイド粒子(B)の平均一次粒子径の値は、前記酸化チタン含有金属酸化物コロイド粒子(A)の平均一次粒子径の値より小さいことが好ましい。酸化チタン含有酸化物コロイド粒子(C)において、静電的な作用により、酸化チタン含有金属酸化物コロイド粒子(A)の表面に複合酸化物コロイド粒子(B)が被覆されるものと考えられる。
【0047】
前記酸化チタン含有酸化物コロイド粒子(C)、すなわち、上記酸化チタン含有金属酸化物コロイド粒子(A)を核として、その表面を、上記複合酸化物コロイド粒子(B)からなる被覆物で被覆されてなるコロイド粒子を得るには、従来公知の方法を採用することができる。
例えば、核としての酸化チタン含有金属酸化物コロイド粒子(A)を含有する水性ゾルと、被覆物となる複合酸化物コロイド粒子(B)を含有する水性ゾルとを、その酸化チタン含有金属酸化物及び複合酸化物の質量として換算した際の(B)/(A)の質量割合で0.01~1.0にて混合した後、その水性媒体を加熱する方法が挙げられる。
酸化チタン含有金属酸化物コロイド粒子(A)と複合酸化物コロイド粒子(B)との混合は0~100℃の温度、好ましくは室温から60℃で行うことができる。そして混合後の加熱は、例えば70~300℃で行われる。
【0048】
〈中間薄膜層〉
上記酸化チタン含有酸化物コロイド粒子(C)は、核となる上記酸化チタン含有金属酸化物のコロイド粒子(A)と、その表面を被覆してなる二酸化ケイ素及び酸化スズを含む複合酸化物のコロイド粒子(B)からなる被覆物との間に、Si、Al、Sn、Zr、Sb、Nb、Ta及びWからなる群から選ばれる少なくとも1種の原子の単独酸化物、同群から選ばれる2種以上の原子の複合酸化物、又は、該単独酸化物及び該複合酸化物から選択される2種以上の酸化物の混合物のいずれか1種からなる中間薄膜層が1層以上介在していてもよい。該中間薄膜層は1層であっても、2層以上の多層であってもよい。
【0049】
核となる上記コロイド粒子(A)と被覆物となる上記コロイド粒子(B)との間に、中間薄膜層を少なくとも1層介在させることによって、酸化チタン含有酸化物コロイド粒子(C)の屈折率を調整することができる。すなわち後述する本発明の(T)成分である、コロイド粒子(C)の表面に有機ケイ素化合物が結合してなる変性酸化チタン含有酸化物コロイド粒子の屈折率を調整することができる。さらに、後述する変性酸化チタン含有酸化物コロイド粒子((T)成分)を含む反応性シリコーン組成物を用いて得られる硬化膜の耐光性や耐候性の向上が期待できるほか、硬化膜と基材との密着性等の諸物性を向上させることができる。更に後述する変性酸化チタン含有酸化物コロイド粒子((T)成分)の着色を抑制し、硬化膜の透明性を向上させることができる。
【0050】
また、中間薄膜層の層の数、層の厚さは、前述した核となる上記コロイド粒子(A)に対して被覆物となる上記コロイド粒子(B)の量(質量割合)が0.01~1.0の範囲にありさえすれば、特に制限はない。
【0051】
また、前記中間薄膜層が設けられる場合、該薄膜層としては、特に二酸化ケイ素(SiO2)、酸化アンチモン(Sb2O5)、酸化アルミニウム(Al2O3)及び酸化ジルコニウム(ZrO2)の少なくとも1種からなることが好適であり、例えば、二酸化ケイ素、酸化アンチモン、酸化アルミニウム又は酸化ジルコニウムが各成分毎に積層して薄膜層を形成していてもよく、また、例えば酸化アンチモン-二酸化ケイ素複合体のように複合化して薄膜層を形成していてもよい。
【0052】
一例として、中間薄膜層を構成する酸化物として二酸化ケイ素を含むことで、酸化チタン含有酸化物コロイド粒子(C)(ひいては後述する変性酸化チタン含有酸化物コロイド粒子((T)成分))のゾルの安定性が向上し、かつ後述する反応性シリコーン組成物のポットライフが長くなる。このため、該反応性シリコーン組成物より得られる硬化物(硬化膜、透明被膜等)の硬度の向上と、該硬化物(硬化膜、透明被膜等)の上に形成され得る成形物(例えば反射防止膜等)との密着性の向上を図ることができ、耐候性、耐光性、基材との密着性、(膜)硬度、耐擦傷性、可撓性等が向上する。例えば、中間薄膜層として、二酸化ケイ素と酸化ジルコニウムおよび/または酸化アルミニウムとを用いると、優れた耐候性、耐光性、基材との密着性、(膜)硬度、耐擦傷性、可撓性等を有する硬化物(硬化膜、透明被膜等)を形成可能な、酸化チタン含有酸化物コロイド粒子(C)(ひいては変性酸化チタン含有酸化物コロイド粒子((T)成分))を得ることができる。
また、中間薄膜層を構成する酸化物として酸化ジルコニウムを用いることにより、得られる酸化チタン含有酸化物コロイド粒子(C)(ひいては後述する変性酸化チタン含有酸化物コロイド粒子((T)成分))の変色を抑制することができる。一次粒子径が小さな酸化チタン(酸化チタンゾル)は、紫外線により部分的にTiO2からTiOへの還元反応が起こり、前述の通り濃青色に呈するという問題を持っている。酸化第二スズ(SnO2)においても、平均一次粒子径が100nm以下、特に30nm以下のゾルになると、紫外線により部分的にSnO2からSnOへの還元反応が起こるため褐色あるいは青緑色を呈するという問題がある。このとき、酸化チタン含有酸化物コロイド粒子(C)(ひいては変性酸化チタン含有酸化物コロイド粒子((T)成分))の中間薄膜層に酸化ジルコニウムが存在することにより、酸化物コロイド粒子を構成する酸化チタンや酸化第二スズのTiOやSnOへの還元が抑制され、変色を抑制することができる。
【0053】
中間薄膜層を介する場合、先ず中間薄膜層の構成成分となる原子の水溶液又はコロイド粒子分散液を用意し、その中に核となる前記酸化チタン含有金属酸化物コロイド粒子(A)を投入し、該コロイド粒子(A)の表面に中間薄膜層を形成させる。中間薄膜層を形成させる際は加熱することが好ましく、40℃以上、又は200℃以下が好ましい。
次いで中間薄膜層を形成させたコロイド粒子(A)の水性ゾルに、被覆物となる前記複合酸化物のコロイド粒子(B)の水性ゾルを添加して、前述の方法により被覆物を形成させればよい。前述の通り、無機酸化物コロイド粒子(B)の添加量は、金属酸化物コロイド粒子(A)に対して0.01~1.0(質量割合)の範囲である。
【0054】
〈酸化チタン含有酸化物コロイド粒子(C)の水性ゾル〉
上記手順により得られる酸化チタン含有酸化物コロイド粒子(C)は、酸化チタン含有酸化物コロイド粒子(C)の水性ゾルの形態として得られる。
上記酸化チタン含有酸化物コロイド粒子(C)の水性ゾルは、必要に応じて洗浄処理して不純物を除去してもよい。また、限外濾過、蒸発濃縮等の方法により水性ゾル中の全金属酸化物濃度を調整したり、水性ゾルのpHや温度を適宜調節することができる。さらに必要に応じて、例えば40℃乃至200℃に加熱してもよい。
水性ゾルの濃度を更に高めたいときは、最大約50質量%まで常法により、例えば蒸発法、限外濾過法等により濃縮することができる。またこのゾルのpHを調整したいときには、濃縮後に、後述するアルカリ金属、有機塩基(アミン)、オキシカルボン酸等をゾルに加えることができる。
なお本明細書において、コロイド粒子(C)並びに後述するコロイド粒子(C)の表面に有機ケイ素化合物が結合してなる変性コロイド粒子における“全金属酸化物濃度”とは、コロイド粒子(A)、コロイド粒子(B)に含まれるTiO2やSnO2等の金属酸化物はもちろん、コロイド粒子(B)に含まれる無機酸化物であるSiO2も含めた濃度として定義される。
【0055】
また前記酸化チタン含有酸化物コロイド粒子(C)の水性ゾルにおいて、該水性ゾルの分散媒である水性媒体(水)を有機溶媒で置換することにより、有機溶媒分散ゾル(オルガノゾル)が得られる。この置換は、蒸留法、限外濾過法等、通常の方法により行うことができる。この有機溶媒の例としてはメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のセロソルブ類、エチレングリコール等のグリコール類、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類、酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等の直鎖アミド類、N-メチル-2-ピロリドン等の環状アミド類等が挙げられる。これらの有機溶媒は1種で単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
【0056】
上記酸化チタン含有酸化物コロイド粒子(C)のゾルは、本発明の目的が達成される限り、他の任意の成分を含有することができる。例えばオキシカルボン酸類を全金属酸化物の合計量に対し約30質量%以下の割合で含有させると、分散性等の性能が更に改良されたコロイドが得られ得る。用いられるオキシカルボン酸の例としては、乳酸、酒石酸、クエン酸、グルコン酸、リンゴ酸、グリコール酸等が挙げられる。
【0057】
また酸化チタン含有酸化物コロイド粒子(C)のゾルは、アルカリ成分を含有することができ、例えば、Li、Na、K、Rb、Cs等のアルカリ金属の水酸化物;アンモニア、エチルアミン、トリエチルアミン、イソプロピルアミン、n-プロピルアミン、トリペンチルアミン等のアルキルアミン、ベンジルアミン等のアラルキルアミン、ピペリジン等の脂環式アミン、モノエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミンなどの有機塩基が挙げられる。これらは1種を単独で含んでいてもよいし、2種以上を混合して含有していてもよい。これらアルカリ成分は、全金属酸化物の合計量に対し約30質量%以下の割合で含有させることができる。また前記のオキシカルボン酸と併用することができる。
【0058】
<表面の少なくとも一部に、有機ケイ素化合物が結合してなる変性酸化チタン含有酸化物コロイド粒子>
本発明に用いられる(T)成分:変性酸化チタン含有酸化物コロイド粒子は、前記酸化チタン含有酸化物コロイド粒子(C)の表面の少なくとも一部に有機ケイ素化合物が結合したものである。有機ケイ素化合物によって表面改質処理されることでコロイド表面が疎水化され、非水溶性の有機溶媒への分散性を優れたものとすることができる。
該粒子は、例えば酸化チタン含有酸化物コロイド粒子(C)において被覆物である複合酸化物コロイド粒子(B)に由来するヒドロキシ基に、有機ケイ素化合物(例えば後述する一般式(1)~一般式(4)で表される化合物における加水分解性反応基等)が結合した構造を有する。
【0059】
使用される有機ケイ素化合物としては、シランカップリング剤として知られている公知の有機ケイ素化合物やシラン化合物を用いることができ、その種類は、用途や溶媒の種類等に応じて適宜選択される。
上記シランカップリング剤の具体例としては、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p-ビニルフェニルトリメトキシシラン、3-メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチルブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-[メトキシ-ポリ(エチレンオキシ)プロピル]トリメトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3-イソシアナートプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
また前記シランの具体例としては、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン等が挙げられる。
【0060】
また例えば、有機ケイ素化合物として、例えば以下の一般式(1)~(4)で表される化合物を使用することができる。
一般式(1):R2
3SiX2 で表される単官能性シラン
一般式(2):R2
2SiX2
2 で表される二官能性シラン
一般式(3):R2SiX2
3 で表される三官能性シラン
一般式(4):SiX2
4 で表される四官能性シラン
上記式(1)~(4)中、R2は炭素原子数1~8のアルキル基、フェニル基、ビニル基、メタクリルオキシ基、メルカプト基、アミノ基又はエポキシ基を有する有機基を表す。
X2は加水分解性反応基を表し、好ましくは上記式[2]で表される化合物における基Xとして挙げた基を挙げることができる。
【0061】
前記酸化チタン含有酸化物コロイド粒子(C)の表面に結合させる有機ケイ素化合物は、1種を単独で使用しても2種以上を混合して使用してもよい。
また、前記酸化チタン含有酸化物コロイド粒子(C)の表面に有機ケイ素化合物を結合させる表面改質処理を行う際に、前記有機ケイ素化合物の部分的な加水分解を行ってもよいし、加水分解を行わないままで表面改質処理を行ってもよい。
さらに表面改質処理後は、前記有機ケイ素化合物の加水分解性反応基が前記酸化チタン含有酸化物コロイド粒子(C)の表面のヒドロキシ基と反応した状態が好ましいが、一部のヒドロキシ基が未処理のまま残存した状態でも何ら差し支えない。
【0062】
前記酸化チタン含有酸化物コロイド粒子(C)の表面に有機ケイ素化合物を結合させるには、例えば、有機ケイ素化合物のアルコール溶液に、上記のコロイド粒子(C)(例えばコロイド粒子(C)のゾル)を所定量混合し、(必要であれば)所定量の水、必要に応じて希塩酸等の加水分解触媒を加えた後、所定時間常温で放置する、あるいは、加熱処理を行えばよい。
また、有機ケイ素化合物の加水分解物とコロイド粒子(C)とを水とアルコールの混合液に加えて加熱処理することによっても行うことができる。
【0063】
また前記酸化チタン含有酸化物コロイド粒子(C)の表面への有機ケイ素化合物の結合量(有機ケイ素化合物の添加量)は特に限定されないが、例えば、コロイド粒子(C)の全金属酸化物の総質量に対して0.1~40質量%、例えば3~30質量%であり、好ましくは5~20質量%である。
【0064】
得られた有機ケイ素化合物が表面に結合してなる変性酸化チタン含有酸化物コロイド粒子は有機溶媒分散ゾル(オルガノゾル)の形態として得られ得、分散媒である有機溶媒を、前述の蒸留法、限外濾過法等の溶媒置換の方法によって、所望の有機溶媒に置換してもよい。
【0065】
本発明において、上記有機ケイ素化合物が表面に結合してなる変性酸化チタン含有酸化物コロイド粒子の有機溶媒分散ゾル(オルガノゾル)(変性酸化チタンコロイド粒子分散液ともいう)中における、金属酸化物の合計濃度(全金属酸化物濃度、便宜的にSiO2も含む)が、例えば0.01~60質量%のゾルを使用することができ、また例えば10~40質量%であるゾルを好ましいものとして挙げることができる。例えば全金属酸化物濃度が0.01質量%以上のゾルとすることで、他の成分と配合して得られる組成物より硬化物を得る際に所望の形状(厚さ等)を為すこと容易となり得、また、60質量%未満のゾルとすることにより、良好な安定性を有するゾルとなることが期待できる。
【0066】
《反応性シリコーン組成物》
本発明の反応性シリコーン組成物は、上記の(S)成分:反応性シリコーン化合物、及び、(T)成分:変性酸化チタン含有酸化物コロイド粒子を含む。
上記(S)成分と(T)成分の割合は特に限定されないが、例えば、(S)成分の反応性シリコーン化合物100質量部に対して、(T)成分の変性酸化チタン含有酸化物コロイド粒子を10~500質量部、例えば25~400質量部にて含むことができる。また後述する反応性希釈剤を含む場合には、(S)成分と反応性希釈剤の合計としてこれらの100質量部に対して、(T)成分を10~500質量部にて含むことができる。
【0067】
<反応性希釈剤>
本発明の反応性シリコーン組成物に含まれる(S)成分:反応性シリコーン化合物は、粘度が高く作業性に劣ることがあるため、反応性希釈剤を加えて適切な粘度に調整してもよい。この場合、反応性希釈剤には、耐熱性を大きく低下させない性質を有することが求められる。
【0068】
このような反応性希釈剤として、アルケニル基及び(メタ)アクリル基からなる群から選ばれる少なくとも1つの重合性基を有する化合物が挙げられる。
前記重合性基を有する化合物の一例としては、例えば下記式[3]で表される化合物及び下記式[4]で表される化合物からなる群から選択される1種以上の化合物を挙げることができ、これらはそれぞれ1種を単独で使用してもよいし、また2種以上を組み合わせて併用してもよい。
【化4】
式[3]中、R
3は、水素原子又はメチル基を表す。
Lは、単結合、水素原子、酸素原子、フェニル基で任意に置換され得る炭素原子数1乃至20のm価の脂肪族炭化水素残基、エーテル結合を任意に含み得る素原子数1乃至20のm価の脂肪族炭化水素残基、又はエーテル結合を任意に含む炭素原子数1乃至20の多価アルコール残基を表す。
Ar
3は、n+1価の、芳香族炭化水素残基、単環性炭化水素残基又は二環性炭化水素残基又は三環性炭化水素残基を表す。
mは、1乃至3の整数(ただしLが水素原子を表すときmは1を表し、Lが単結合又は酸素原子を表すときmは2を表す。)を表し、nはそれぞれ独立して、1又は2を表す。
【0069】
Lの例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基、ベンジル基、フェネチル基、メトキシメチル基、エトキシメチル基、2-メトキシエチル基、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、1-メチルエチレン基、プロパン-2,2,-ジイル基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、2,2-ジメチルトリメチレン基、へキサメチレン基、3-メチルペンタメチレン基、シクロヘキサン-1,4-ジイル基、ジエチレングリコール残基(-CH2CH2OCH2CH2-)、トリエチレングリコール残基(-(CH2CH2O)2CH2CH2-)、ジプロピレングリコール残基(-CH(CH3)CH2OCH(CH3)CH2-)、トリメチレングリコール残基(-CH2CH2CH2-)、ジ(トリメチレングリコール)残基(-CH2CH2CH2OCH2CH2CH2-)、プロパン-1,1,1-トリイル基(-C(-)2CH2CH3)、プロパン-1,1,3-トリイル基(-CH(-)CH2CH2-)、ブタン-1,2,4-トリイル基(-CH2CH(-)CH2CH2-)等が挙げられる。
【0070】
Ar3の例としては、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン等の芳香族炭化水素環からn+1個の水素原子を除いた基(フェニル残基、ナフチル残基、アントラシル残基)が挙げられる。Ar3は、好ましくは炭素原子数1乃至6のアルキル基で置換されるか又は未置換である。中でも、Ar3がフェニル残基を表すのがより好ましい。
またそれとは独立して、R3が水素原子を表すのが好ましい。
別の独立した好ましい態様において、式[3]におけるnは2である。Ar3がフェニル残基を表し且つR3が水素原子を表すことが更に好ましい。Ar3がフェニル残基を表し、R3が水素原子を表し且つnが2であるのがいっそう好ましい。
また前述の式[3]の態様の全てにおいて、Lが水素原子を表し且つmが1であるのが最も好ましい。
【0071】
【化5】
式[4]中、R
4は、水素原子又はメチル基を表す。
R
5は、フェニル基で任意に置換され得るp価の炭素原子数1乃至20の脂肪族炭化水素残基又はエーテル結合を任意に含み得るp価の炭素原子数1乃至20の脂肪族炭化水素残基を表す。
pは、1乃至6の整数を表す。
【0072】
式[4]におけるR5の例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基、ベンジル基、フェネチル基、メトキシメチル基、エトキシメチル基、2-メトキシエチル基、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、1-メチルエチレン基、プロパン-2,2,-ジイル基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、2,2-ジメチルトリメチレン基、へキサメチレン基、3-メチルペンタメチレン基、シクロヘキサン-1,4-ジイル基、ジエチレングリコール残基(-CH2CH2OCH2CH2-)、トリエチレングリコール残基(-(CH2CH2O)2CH2CH2-)、ジプロピレングリコール残基(-CH(CH3)CH2OCH(CH3)CH2-)、トリメチレングリコール残基(-CH2CH2CH2-)、ジ(トリメチレングリコール)残基(-CH2CH2CH2OCH2CH2CH2-)、プロパン-1,1,1-トリイル基(-C(-)2CH2CH3)、プロパン-1,1,3-トリイル基(-CH(-)CH2CH2-)、ブタン-1,2,4-トリイル基(-CH2CH(-)CH2CH2-)等が挙げられる。
前記式[4]中、R5がエーテル結合を任意に含み得る炭素原子数2乃至10の多価アルコール残基を表し、かつpが2乃至6の整数を表すのがより好ましい。
【0073】
なお、850nm、1.31μm及び1.55μmの近赤外波長で望ましい透明性を有する硬化物を製造するという目的においては、反応性希釈剤として、式[3]で表される1種以上の化合物を使用することが好ましいことを留意すべきである。
【0074】
以下、式[3]及び[4]で表される化合物の具体例を述べるが、それらに限定されるものではない。
式[3]で表される化合物の具体例としては、ジビニルベンゼン、スチレン、ジイソプロペニルベンゼン、4,4’-ジビニルビフェニル、2-(4-ビニルフェノキシ)スチレン、4-フェネチルスチレン、1,1,1-トリス(4-ビニルフェノキシ)プロパン等が挙げられる。
式[4]で表される化合物の具体例としては、ベンジル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリトリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリトリトールテトラ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ペンタエリトリトールテトラ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジグリシジルエーテル(メタ)アクリル酸付加物、プロピレングリコールジグリシジルエーテル(メタ)アクリル酸付加物等が挙げられる。なお本明細書において(メタ)アクリレートや(メタ)アクリル酸といった記載は、メタクリレートとアクリレート、メタクリル酸とアクリル酸の双方を表す。
【0075】
本発明の反応性シリコーン組成物において反応性希釈剤が使用される場合、反応性希釈剤としてのアルケニル基及び(メタ)アクリル基からなる群から選ばれる少なくとも1つの重合性基を有する化合物は、前記反応性シリコーン化合物100質量部に基づき、1乃至100質量部、好ましくは5乃至70質量部の比率で使用される。
例えば反応性希釈剤として式[3]で表される化合物を使用する場合には、前記反応性シリコーン化合物100質量部に基づき、1乃至100質量部、好ましくは5乃至70質量部、例えば5乃至20質量部の比率で使用することができる。
また、反応性希釈剤として式[4]で表される化合物を使用する場合には、前記反応性シリコーン化合物100質量部に基づき、1乃至100質量部、好ましくは5乃至50質量部の比率で使用することができる。
なお、上述した比率以外の比率も同様に可能である。
【0076】
本発明の反応性シリコーン組成物は、流動性の付与、固形分濃度の調整、表面張力、粘度、蒸発速度等を調整するなどの目的にて、溶媒を含む態様としてもよい。
使用される溶媒としては、反応性シリコーン組成物に含まれる各成分を溶解又は分散できる溶媒であれば限定されず、例えば、水又は有機溶媒である。
上記有機溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール等のアルコール類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のセロソルブ類、エチレングリコール等のグリコール類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、ジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、及びN,N-ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドン等が挙げられる。中でも、シクロヘキサノン又はメチルエチルケトンが好適な溶媒として挙げられる。
なお、本発明の反応性シリコーン組成物における全固形分の濃度は、厚さや塗布性の制御などの目的に従って適宜選択することができ、例えば1~99質量%、10~80質量%、20~40質量%、又は30~70質量%とすることができる。なお本明細書において、“全固形分”とは、反応性シリコーン組成物から溶媒を除いた全成分を言及し、液状成分であっても便宜的に“固形分”として扱うものとする。
また、反応性シリコーン組成物において、コーターなどの塗布装置における作業性の観点から、例えばその粘度を0.1~200mPa・s、又は0.5~50mPa・sとすることができる。
【0077】
更に、本発明の反応性シリコーン組成物は、後述するように、基材上に該組成物より硬化物(硬化膜)を形成する際、基材に対する濡れ性を向上させ、硬化膜の平滑性を向上させる目的で各種の界面活性剤、レベリング剤等を含有させることができる。さらに、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、帯電防止剤等も硬化膜の物性に影響を与えない限り添加することが可能である。さらには、分散染料、油溶染料、蛍光染料、顔料、フォトクロミック化合物、チキソトロピー剤等を添加してもよい。
【0078】
また、基板(基材、例えばレンズ)との屈折率を合わせるために種々の微粒子状金属酸化物を本発明の反応性シリコーン組成物に含有させることができる。微粒子状金属酸化物としては、平均一次粒子径2~60nmの酸化アルミニウム、酸化チタン、五酸化アンチモン、酸化ジルコニウム、二酸化ケイ素、酸化セリウムなどの微粒子が挙げられる。
【0079】
〔硬化物〕
本発明の反応性シリコーン組成物は、重合開始剤の非存在下、或いは、光ラジカル重合開始剤又は熱ラジカル重合開始剤の存在下、光(活性エネルギー線)照射または加熱により、反応性シリコーン化合物に含まれる重合性二重結合を反応させて硬化物を得ることができる。なお重合開始剤を含む反応性シリコーン組成物の態様も本発明の対象である。
得られた硬化物(成形物)は、光デバイス材料として有用である。例えば光インターコネクション用材料として、具体的には、光信号伝送ケーブルにおけるコア部材として使用することができる。
また、硬化物が光デバイス材料として有用であるという性質から、反応性シリコーン組成物それ自体を、光信号伝送装置における光導波路同士の接続部又は光導波路と受光素子との接続部に用いる光学接着剤として、使用することができる。
【0080】
上記光ラジカル重合開始剤の例としては、例えば、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ミヒラーのベンゾイルベンゾエート、アミロキシムエステル、テトラメチルチウラムモノスルフィド、チオキサントン類等が挙げられる。
【0081】
光ラジカル重合開始剤を使用する場合、例えば光開裂型の光ラジカル重合開始剤を好ましい例として挙げることができる。光開裂型の光ラジカル重合開始剤については、最新UV硬化技術(159頁、発行人:高薄一弘、発行所:(株)技術情報協会、1991年発行)に記載されているものが挙げられる。
【0082】
市販の光ラジカル重合開始剤の例としては、例えば、IGM社製 商品名:OMNIRAD(登録商標、旧名称イルガキュア)184、369、651、500、819、907、784、2959、CGI1700、CGI1750、CGI1850、及びCG24-61、OMNIRAD(登録商標、旧名称ダロキュア)1116、1173、OMNIRAD(登録商標、旧名称ルシリン)TPO、UCB社製 商品名:ユベクリル P36、フラテツリ・ランベルティ社製 商品名:エザキュアー KIP150、KIP65LT、KIP100F、KT37、KT55、KTO46、KIP75/B等が挙げられる。
【0083】
熱ラジカル重合開始剤の例としては、以下の開始剤が挙げられる。
1)過酸化物類:
例えばt-ブチル(3,5,5-トリメチルヘキサノイル)ペルオキシド、t-ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、ペルオキシ酢酸t-ブチル、ペルオキシ安息香酸t-ブチル、ペルオキシオクタン酸t-ブチル、ペルオキシネオデカン酸t-ブチル、ペルオキシイソ酪酸t-ブチル、過酸化ラウロイル、ペルオキシピバル酸t-アミル、ペルオキシピバル酸t-ブチル、過酸化ジクミル、過酸化ベンゾイル、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等;
2)アゾ化合物:
例えば2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオン酸)ジメチル、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-ブタンニトリル)、4,4’-アゾビス(4-ペンタン酸)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、2-(t-ブチルアゾ)-2-シアノプロパン、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(1,1)-ビス(ヒドロキシメチル)-2-ヒドロキシエチル]プロピオンアミド、2,2’-アゾビス(2-メチル-N-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド、2,2’-アゾビス(N,N-ジメチレンイソブチルアミジン)ジクロリド、2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)ジクロリド、2,2’-アゾビス(N,N-ジメチレンイソブチルアミド)、2,2’-アゾビス(2-メチル-N-[1,1-ビス(ヒドロキシメチル)-2-ヒドロキシエチル]プロピオンアミド)、2,2’-アゾビス(2-メチル-N-[1,1-ビス(ヒドロキシメチル)エチル]プロピオンアミド)、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド)、2,2’-アゾビス(イソブチルアミド)二水和物等;
3)次のような組合せを含むレドックス系:
-過酸化水素又は過酸化アルキル、過酸エステル類、過炭酸塩等と、鉄塩又は第一チタン塩、亜鉛ホルムアルデヒドスルホキシレート又はナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、還元糖のいずれか、との混合物;
-過硫酸、過ホウ酸又は過塩素酸のアルカリ金属塩又はアンモニウム塩と、メタ重亜硫酸ナトリウムのような重亜硫酸アルカリ金属塩や還元糖、との組合せ物;
-過硫酸アルカリ金属塩と、ベンゼンホスホン酸のようなアリールホスホン酸、他の同様の酸や還元糖、との組合せ物。
【0084】
重合開始剤を使用する場合、上記光ラジカル重合開始剤又は熱ラジカル重合開始剤の使用量は、前記(S)成分の反応性シリコーン化合物100質量部に基いて、また、反応性希釈剤を含む場合には、(S)成分と反応性希釈剤の合計としてこれらの100質量部に基いて、例えば0.1乃至15質量部の範囲であり、或いは0.5乃至10質量部の範囲である。上記重合開始剤は1種を単独で使用してもよく、また複数種の開始剤を併用してもよい。
【0085】
反応性シリコーン組成物の反応(硬化)に使用する活性エネルギー線としては赤外線、紫外線、電子線等が挙げられる。
また加熱温度としては例えば70~200℃であり、或いは90~150℃である。
これら光照射や加熱の前に、反応性シリコーン組成物に含まれる溶媒を除去するために、予備加熱を行ってもよい。
【0086】
さらに、本発明の反応性シリコーン組成物を基材表面に塗布し、光照射または加熱によって硬化膜を得ることができ、すなわちコーティング組成物としての使用も可能である。なお上記反応性シリコーン組成物からなる膜形成剤も本発明の対象である。更に光学用途に適した透明性の基材(光学基材)を用いることにより、硬化膜(透明被膜)を有する光学部材を得ることができる。
用いられる基材としては、ガラス、プラスチック等からなる各種基材が用いられ、例えばフィルムシート、シリコンウエハー基板、シリコン/二酸化シリコン被覆基板、シリコンナイトライド基板、ガラス基板、ITO基板、ポリイミド基板、及び低誘電率材料(low-k材料)被覆基板等を挙げることができる。
また適用される基材の具体例として、眼鏡レンズ、カメラ等の各種光学レンズ、各種表示素子フィルター、ルッキンググラス、窓ガラス、自動車等の塗料膜、自動車等に用いられるライトカバー等が挙げられる。この基材表面に形成された硬化膜は、ハードコート膜やプラスチックレンズのプライマー用膜等の用途に用いることができる。
上記反応性シリコーン組成物を基材表面に塗布する方法としてはディッピング法、スピン法、スプレー法等の通常行われる方法が適用できる。例えば面積度の観点から、ディッピング法やスピン法を選択することができる。
また塗布後の硬化は、熱風乾燥又は活性エネルギー線照射によって行うことができる。熱風乾燥の硬化条件としては70~200℃の熱風中で行うことがよく、特に90~150℃が好ましい。また、活性エネルギー線としては赤外線、紫外線、電子線等が挙げられ、特に遠赤外線は熱による損傷を低く抑えることができる。
【0087】
また前記反応性シリコーン組成物を基材表面に塗布する前に、基材表面を酸、アルカリ又は各種有機溶剤若しくは洗剤による化学的処理、プラズマ、紫外線等による物理的処理を行うことにより、基材と硬化膜との密着性を向上させることができる。さらに基材表面を、各種樹脂を用いたプライマー処理を行うことにより、基材と硬化膜との密着性をより向上させることができる。
【0088】
また本発明の反応性シリコーン組成物より形成される硬化膜は、高屈折率膜として反射膜に使用でき、さらに、防曇、フォトクロミック、防汚等の機能成分を加えることにより、多機能膜として使用することもできる。
本発明の反応性シリコーン組成物より形成される硬化膜を有する光学部材は、眼鏡レンズのほか、カメラ用レンズ、自動車の窓ガラス、液晶ディスプレイやプラズマディスプレイなどに付設する光学フィルターなどに使用することができる。
また上記光学部材は、光学基材の表面に本発明の反応性シリコーン組成物から形成される硬化膜を有しているが、その硬化膜上に無機酸化物の蒸着膜からなる反射防止膜を形成させることができる。該反射防止膜は特に限定されず、従来から知られている無機酸化物の単層又は多層の蒸着膜を使用することができる。反射防止膜の例としては、特開平2-262104号公報、特開昭56-116003号公報に開示されている反射防止膜などが挙げられる。
【実施例】
【0089】
以下、本発明について、製造例、実施例及び比較例に基づきさらに詳述するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【0090】
分散液の諸物性は、以下の測定方法により求めた。
・粘度:BL型粘度計により求めた。(20℃)
・固形分濃度:600℃で焼成した際の残存固形物より求めた。
・動的光散乱法による平均粒子径(動的光散乱法粒子径):
ゾルを分散溶媒で希釈し、溶媒のパラメーターを用いて、動的光散乱法測定装置:Malvern Instruments Ltd製ゼータ-サイザーで測定した。
・透過型電子顕微鏡による平均一次粒子径:ゾルを銅メッシュ上に滴下し乾燥させ、透過型電子顕微鏡(日本電子社製 JEM-1020)を用いて加速電圧100kVにて観察し、100個の粒子を測定し平均化した値を平均一次粒子径として求めた。
【0091】
また、実施例1乃至13で調製・使用した反応性シリコーン組成物及び比較例1及び2で調製・使用した比較例組成物、及びこれら組成物より得られた硬化膜について、以下の手順に従い諸物性を測定し評価した。
【0092】
(1)保存安定性評価
各組成物を5℃に設定した乾燥機内で1日間保管し、保管前後の外観を目視にて確認し、変化の有無を下記基準にて評価した。得られた評価結果を表1[表1-1、表1-2]に示す。
A:析出物が生じておらず、流動性のあるもの。
N:析出物が生じ、ゲル化しているもの。
【0093】
(2)赤外域透過率
紫外可視近赤外分光光度計(島津製作所(株)製、UV-3600)を用いて、測定波長:800~1600nmにおける、ガラス基板上に形成した各硬化膜の平均透過率を測定した。
【0094】
(3)ヘイズ値
ヘイズメーター(日本電色工業(株)製、NDH5000)を用いて、ガラス基板上に形成した各硬化膜のヘイズ値を測定した。
【0095】
(4)膜厚、及び屈折率
レンズ反射率測定機(オリンパス(株)製、USPM-RU)を用いて、ガラス基板上に形成した各硬化膜の反射率を測定した。また測定した反射率から光学シミュレーションを用いて膜厚を算出した。
【0096】
(5)耐光性試験
分光光度計((株)島津製作所製UV-3600)を用いて、ガラス基板上に形成した各硬化膜の透過率を測定し、JIS 7373に基づいてYI値を算出した。
その後、QUV促進耐候性試験機(UVAランプ 照射強度890mW/m2)を用いて、96時間露光を行った硬化膜のYI値を算出した。
得られたYI値より、紫外線照射前後の硬化膜のΔYIを算出した。判断基準は次の通りである。
A:ΔYIが2.0未満である
N:ΔYIが2.0以上である
【0097】
[製造例1]
<反応性シリコーン化合物の調製>
国際公開第2012/097836号に記載の方法で、無色透明の反応性シリコーン化合物を合成した。すなわち、トルエン溶媒中でジフェニルシランジオールとスチリルトリメトキシシランを、水酸化バリウム・一水和物を触媒として50℃の加熱下で、脱アルコール縮合を行った後、混合物を冷却・ろ過し、ロータリーエバポレータを用いて、50℃の加熱下においてトルエンおよび副生成物のメタノールを真空下で除去することで、目的とする無色透明の反応性シリコーン化合物を合成した。
【0098】
国際公開第2012/097836号に記載の方法で反応性希釈剤を含有する反応性シリコーン化合物含有混合液を調製した。すなわち、上記で得られた反応性シリコーン化合物に、反応性希釈剤として、減圧蒸留精製したジビニルベンゼンを所定の割合(反応性シリコーン化合物100質量部に対して7質量部)で添加し、40℃の加熱下において撹拌混合することで、均一な液体とし、室温まで冷却後に淡黄色透明の混合液を得た。ここに、光重合開始剤としてIGM社製 OMNIRAD(登録商標、旧名称ルシリン)TPO(2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド)を所定の割合(反応性シリコーン化合物及び反応性希釈剤の合計100質量部に対して3質量部)で添加し、撹拌しながら溶解させて目的とする反応性シリコーン化合物含有混合液を調製した。
【0099】
[製造例2]
<変性酸化チタンコロイド粒子分散液1の合成>
1リットルの容器に純水126.2gを入れ、メタスズ酸17.8g(SnO2換算で15g含有)、チタンテトライソプロポキシド284g(TiO2換算で80g含有)、シュウ酸二水和物84g(シュウ酸換算で70g)、35質量%水酸化テトラエチルアンモニウム水溶液438gを撹拌下に添加した。得られた混合溶液は、シュウ酸/チタン原子のモル比0.78、水酸化テトラエチルアンモニウム/チタン原子のモル比1.04であった。該混合溶液950gを、80℃で2時間保持し、更に580Torrまで減圧して2時間保持し、チタン混合溶液を調製した。調製後のチタン混合溶液のpHは4.7、電導度は27.2mS/cm、TiO2濃度8.4質量%であった。
3リットルのガラスライニングされたオートクレーブ容器に上記チタン混合溶液950g、純水950gを投入し、140℃で5時間水熱処理を行った。室温に冷却後、取り出された水熱処理後の溶液は淡い乳白色の酸化チタンコロイド粒子の水分散液であった。得られた分散液は、pH3.9、電導度19.7mS/cm、TiO2濃度4.2質量%、水酸化テトラエチルアンモニウム4.0質量%、シュウ酸1.8質量%であり、動的光散乱法粒子径16nm、透過型電子顕微鏡観察では、平均一次粒子径5乃至15nmの楕円粒子が観察された。得られた分散液を110℃で乾燥させた粉末のX線回折分析を行い、ルチル型結晶であることが確認された。得られた酸化チタンコロイド粒子を酸化チタン含有金属酸化物コロイド粒子(A)(該コロイド粒子における酸化チタン濃度は84質量%)(以下、酸化チタン含有核粒子(A)とも称する)とした。
【0100】
次いで、珪酸ナトリウム水溶液(JIS3号珪酸ソーダ、SiO2として34質量%含有、富士化学(株)製)27.9gを純水27.9gにて希釈した後、スズ酸ナトリウム・3水和物(SnO2として55質量%含有、昭和化工(株)製)8.6gを添加し、撹拌下で溶解し、珪酸-スズ酸ナトリウム水溶液を得た。得られた珪酸-スズ酸ナトリウム水溶液64.4gを純水411gで希釈し、水素型陽イオン交換樹脂(アンバーライト(登録商標)IR-120B)を充填したカラムに通液することにより、二酸化ケイ素-スズ酸複合酸化物コロイド粒子の水分散液(pH2.7、SnO2として0.83質量%、SiO2として1.67質量%を含有、SiO2/SnO2質量比2.0)570gを得た。
次いで、得られた二酸化ケイ素-スズ酸複合酸化物コロイド粒子の水分散液にジイソプロピルアミンを2.9g添加した。得られた分散液はアルカリ性の二酸化ケイ素-スズ酸複合酸化物コロイド粒子の水分散液であり、pH8.2、平均一次粒子径1~4nmのコロイド粒子であった。得られたアルカリ性の二酸化ケイ素-スズ酸複合酸化物コロイド粒子(B)を後述の被覆物のコロイド粒子とした。
【0101】
次いで、撹拌下で前記酸化チタン含有核粒子(A)の水分散液1900gに被覆物となる二酸化ケイ素-スズ酸複合酸化物(B)570gを添加した後、温度95℃で3時間保持し、酸化チタン含有酸化物コロイド粒子(C)の水分散液を得た。その後、得られた変性酸化チタンコロイド粒子の水分散液を、水素型陽イオン交換樹脂(アンバーライトIR-120B)を充填したカラムに通し、酸性の酸化チタン含有酸化物コロイド粒子の水分散液2730gを得た。得られた分散液はpH2.7、全金属酸化物濃度は4.0質量%であった。得られた分散液にトリペンチルアミンを5.1g添加した。次いで、トリペンチルアミンが添加された分散液をナス型フラスコ付きエバポレータに投入して濃縮し、メタノールを添加しながら600Torrで水を留去することにより、酸化チタン含有酸化物コロイド粒子(C)のメタノール分散液533gを得た。得られたメタノール分散液は、pH6.0(分散液と同質量の水で希釈)、全金属酸化物濃度20.5質量%、水分3.1%であった。また、透過型電子顕微鏡観察による平均一次粒子径は8~18nm、動的光散乱法(DLS)による平均粒子径(動的光散乱法粒子径)は15nmであった。
【0102】
得られた酸化チタン含有酸化物コロイド粒子(C)のメタノール分散液400gに3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン)を6.9g添加し、70℃で還留加熱を5時間行い、3-メタクリロイルオキシプロピル基を表面に結合させ、変性酸化チタン含有酸化物コロイド粒子のメタノール分散液を得た。
次いで、エバポレータを用いて150Torrでシクロヘキサノンを添加しながらメタノールを留去することによりメタノールをシクロヘキサノンに置換して、3-メタクリロイルオキシプロピル基が表面に結合した、変性酸化チタン含有酸化物コロイド粒子のシクロヘキサノン(メタノール10質量%含有)分散液(以下、変性酸化チタンコロイド粒子分散液1という)210gを得た。得られたシクロヘキサノン(メタノール10質量%含有)分散液は、pH5.9(分散液と同質量の水、メタノールで希釈)、全金属酸化物濃度40.0質量%であった。
【0103】
[製造例3]
<変性酸化チタンコロイド粒子分散液2の合成>
製造例2と同様の方法にて製造した酸化チタン含有酸化物コロイド粒子(C)のメタノール分散液400gに、3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製)を6.9g添加し、70℃で還留加熱を5時間行い、3-メタクリロイルオキシプロピル基を表面に結合させた、変性酸化チタン含有酸化物コロイド粒子のメタノール分散液を得た。
次いで、エバポレータを用いて150Torrでシクロヘキサノンを添加しながらメタノールを留去することによりメタノールをシクロヘキサノンに置換して、3-メタクリロイルオキシプロピル基が表面に結合した、変性酸化チタン含有酸化物コロイド粒子のシクロヘキサノン(メタノール20質量%含有)分散液(以下、変性酸化チタンコロイド粒子分散液2という)210gを得た。得られたシクロヘキサノン(メタノール20質量%含有)分散液は、pH5.9(分散液と同質量の水、メタノールで希釈)、全金属酸化物濃度40.0質量%であった。
【0104】
[製造例4]
<変性酸化チタンコロイド粒子分散液3の合成>
製造例2と同様の方法にて製造した酸化チタン含有酸化物コロイド粒子(C)のメタノール分散液400gに、3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製)を6.9g添加し、70℃で還留加熱を5時間行い、3-メタクリロイルオキシプロピル基を表面に結合させた、変性酸化チタン含有酸化物コロイド粒子のメタノール分散液を得た。
次いで、エバポレータを用いて150Torrでメチルエチルケトンを添加しながらメタノールを留去することによりメタノールをメチルエチルケトンに置換して、3-メタクリロイルオキシプロピル基が表面に結合した、変性酸化チタン含有酸化物コロイド粒子のメチルエチルケトン分散液(以下、変性酸化チタンコロイド粒子分散液3という)280gを得た。得られたメチルエチルケトン分散液は、pH6.1(分散液と同質量の水、メタノールで希釈)、全金属酸化物濃度30.0質量%であった。
【0105】
[製造例5]
<変性酸化チタンコロイド粒子分散液4の合成>
製造例2と同様の方法にて製造した酸化チタン含有酸化物コロイド粒子(C)のメタノール分散液400gに、フェニルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製)を5.5g添加し、70℃で還留加熱を5時間行い、フェニル基を表面に結合させた、変性酸化チタン含有酸化物コロイド粒子のメタノール分散液を得た。
次いで、エバポレータを用いて150Torrでメチルエチルケトンを添加しながらメタノールを留去することによりメタノールをメチルエチルケトンに置換して、フェニル基が表面に結合した、変性酸化チタン含有酸化物コロイド粒子のメチルエチルケトン分散液(以下、変性酸化チタンコロイド粒子分散液4という)280gを得た。得られたメチルエチルケトン分散液は、pH5.5(分散液と同質量の水、メタノールで希釈)、全金属酸化物濃度30.0質量%であった。
【0106】
[製造例6]
<変性酸化チタンコロイド粒子分散液5の合成>
製造例2と同様の方法にて製造した酸化チタン含有酸化物コロイド粒子(C)のメタノール分散液400gに、ヘキシルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製)を5.8g添加し、70℃で還留加熱を5時間行い、ヘキシル基を表面に結合させた、変性酸化チタン含有酸化物コロイド粒子のメタノール分散液を得た。
次いで、エバポレータを用いて150Torrでメチルエチルケトンを添加しながらメタノールを留去することによりメタノールをメチルエチルケトンに置換して、ヘキシル基が表面に結合した、変性酸化チタン含有酸化物コロイド粒子のメチルエチルケトン分散液(以下、変性酸化チタンコロイド粒子分散液5という)280gを得た。得られたメチルエチルケトン分散液は、pH5.8(分散液と同質量の水、メタノールで希釈)、全金属酸化物濃度30.0質量%であった。
【0107】
[製造例7]
<変性酸化チタンコロイド粒子分散液6の合成>
製造例2と同様の方法にて製造した酸化チタン含有酸化物コロイド粒子(C)のメタノール分散液400gにポリエーテル変性シラン(3-[メトキシ(ポリエチレンオキシ)nプロピル]トリメトキシシラン(n=5~15))(信越化学工業(株)製)を16.8g添加し、70℃で還留加熱を5時間行い、ポリエーテル基を表面に結合させた、変性酸化チタン含有酸化物コロイド粒子のメタノール分散液を得た。
次いで、エバポレータを用いて150Torrでメチルエチルケトンを添加しながらメタノールを留去することによりメタノールをメチルエチルケトンに置換して、ポリエーテル基が表面に結合した、変性酸化チタン含有酸化物コロイド粒子のメチルエチルケトン分散液280g(以下、変性酸化チタンコロイド粒子分散液6という)を得た。得られたメチルエチルケトン分散液は、pH6.4(分散液と同質量の水、メタノールで希釈)、全金属酸化物濃度30.0質量%であった。
【0108】
[製造例8]
<酸化チタンコロイド粒子分散液7の合成>
製造例2と同様の方法にて製造した酸化チタン含有核粒子(A)の分散液2600gを、ナス型フラスコ付きエバポレータに投入し濃縮し、メタノールを添加しながら600Torrで水を留去することにより、酸化チタン含有核粒子(A)のメタノール分散液533gを得た。得られたメタノール分散液は、pH4.1、全金属酸化物濃度20.5質量%、水分量3.0%であった。
得られた酸化チタン含有核粒子(A)のメタノール分散液400gに3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランを6.9g添加し、70℃で還流加熱を5時間行い、3-メタクリロイルオキシプロピル基を表面に結合させた変性酸化チタン含有核粒子のメタノール分散液を得た。
次いで、エバポレータを用いて150Torrでメチルエチルケトンを添加しながらメタノールを留去することによりメタノールをメチルエチルケトンに置換して、3-メタクリロイルオキシプロピル基を表面に結合させた変性酸化チタン含有核粒子のメチルエチルケトン分散液(以下、酸化チタンコロイド粒子分散液7という)280gを得た。得られたメチルエチルケトン分散液は、pH4.2(分散液と同質量の水、メタノールで希釈)、全金属酸化物濃度30.0質量%であった。
【0109】
[実施例1]
製造例1にて調製した反応性シリコーン化合物含有混合液2gをシクロヘキサノン3gに溶解し、ここに製造例2にて調製した変性酸化チタンコロイド粒子分散液1を5g添加し、混合することで、淡黄色透明の反応性シリコーン組成物1を得た。ここで変性チタン含有酸化物コロイド粒子(全金属酸化物換算)の、反応性シリコーン化合物含有混合液の質量(反応性シリコーン化合物、反応性希釈剤、開始剤の合計質量)に対する配合量は100phrであった。得られた反応性シリコーン組成物1に対して上記(1)に示す試験を実施した。評価結果を表1[表1-1、表1-2]に示す。
この反応性シリコーン組成物1を、スピンコーターを用いて回転数2000rpmにてガラス基板上に塗布し、ホットプレートにより100℃で10分間加熱することで脱溶媒し、さらに紫外光を0.89W/cm2にて3分間照射することで、硬化膜を得た。得られた硬化膜について、上記(2)~(5)に示す試験を実施した。評価結果を表1[表1-1]に示す。
【0110】
[実施例2]
実施例1に記載の反応性シリコーン組成物1(変性チタン含有酸化物コロイド粒子の、反応性シリコーン化合物含有混合液の質量(反応性シリコーン化合物、反応性希釈剤、開始剤の合計質量)に対する配合量は100phr)をガラス基板に塗布する際のスピンコーターの回転数を1000rpmに変更する以外は、実施例1に記載の条件で同様に脱溶媒、紫外線照射することで、硬化膜を作成し、評価した。得られた評価結果を表1[表1-1]に示す。
【0111】
[実施例3]
実施例1に記載の反応性シリコーン組成物1(変性チタン含有酸化物コロイド粒子の、反応性シリコーン化合物含有混合液の質量(反応性シリコーン化合物、反応性希釈剤、開始剤の合計質量)に対する配合量は100phr)をガラス基板に塗布する際のスピンコーターの回転数を500rpmに変更する以外は、実施例1に記載の条件で同様に脱溶媒、紫外線照射することで、硬化膜を作成し、評価した。得られた評価結果を表1[表1-1]に示す。
【0112】
[実施例4]
製造例1にて調製した反応性シリコーン化合物含有混合液3.2gをシクロヘキサノン4.8gに溶解し、ここに製造例2にて調製した変性酸化チタンコロイド粒子分散液1を2g添加し、混合することで、淡黄色透明の反応性シリコーン組成物2を得た。ここで変性チタン含有酸化物コロイド粒子(全金属酸化物換算)の、反応性シリコーン化合物含有混合液の質量(反応性シリコーン化合物、反応性希釈剤、開始剤の合計質量)に対する配合量は25phrであった。得られた反応性シリコーン組成物2に対して上記(1)に示す試験を実施した。評価結果を表1[表1-1]に示す。
この反応性シリコーン組成物2を、ガラス基板上に塗布する際のスピンコーターの回転数を500rpmとした以外は、実施例1に記載の条件で同様に脱溶媒、紫外線照射することで、硬化膜を作成し、評価した。得られた評価結果を表1[表1-1]に示す。
【0113】
[実施例5]
製造例1にて調製した反応性シリコーン化合物含有混合液0.8gをシクロヘキサノン1.2gに溶解し、ここに製造例2にて調製した変性酸化チタンコロイド粒子分散液1を8g添加し、混合することで、淡黄色透明の反応性シリコーン組成物3を得た。ここで変性チタン含有酸化物コロイド粒子(全金属酸化物換算)の、反応性シリコーン化合物含有混合液の質量(反応性シリコーン化合物、反応性希釈剤、開始剤の合計質量)に対する配合量は400phrであった。得られた反応性シリコーン組成物3に対して上記(1)に示す試験を実施した。評価結果を表1[表1-1]に示す。
この反応性シリコーン組成物3を、ガラス基板上に塗布する際のスピンコーターの回転数を500rpmとした以外は、実施例1に記載の条件で同様に脱溶媒、紫外線照射することで、硬化膜を作成し、評価した。得られた評価結果を表1[表1-1]に示す。
【0114】
[実施例6]
製造例1にて調製した反応性シリコーン化合物含有混合液2gをシクロヘキサノン2.4g、メタノール0.6gに溶解し、ここに製造例3にて調製した変性酸化チタンコロイド粒子分散液2を5g添加し、混合することで、淡黄色透明の反応性シリコーン組成物4を得た。ここで変性チタン含有酸化物コロイド粒子(全金属酸化物換算)の、反応性シリコーン化合物含有混合液の質量(反応性シリコーン化合物、反応性希釈剤、開始剤の合計質量)に対する配合量は100phrであった。得られた反応性シリコーン組成物4に対して上記(1)に示す試験を実施した。評価結果を表1[表1-1]に示す。
この反応性シリコーン組成物4を、スピンコーターを用いて回転数1000rpmにてガラス基板上に塗布し、ホットプレートにより100℃で10分間加熱することで脱溶媒し、さらに120℃で2時間加熱することで硬化膜を作成し、評価した。得られた評価結果を表1[表1-1]に示す。
【0115】
[実施例7]
製造例1にて調製した反応性シリコーン化合物含有混合液3.2gをシクロヘキサノン3.84g、メタノール0.96gに溶解し、ここに製造例3にて調製した変性酸化チタンコロイド粒子分散液2を2g添加し、混合することで、淡黄色透明の反応性シリコーン組成物5を得た。ここで変性チタン含有酸化物コロイド粒子(全金属酸化物換算)の、反応性シリコーン化合物含有混合液の質量(反応性シリコーン化合物、反応性希釈剤、開始剤の合計質量)に対する配合量は25phrであった。得られた反応性シリコーン組成物5に対して上記(1)に示す試験を実施した。評価結果を表1に示す。
この反応性シリコーン組成物5を、実施例6に記載の条件で同様にガラス基板上に塗布、脱溶媒、加熱することで、硬化膜を作成し、評価した。得られた評価結果を表1[表1-1]に示す。
【0116】
[実施例8]
製造例1にて調製した反応性シリコーン化合物含有混合液0.8gをシクロヘキサノン0.96g、メタノール0.24gに溶解し、ここに製造例3にて調製した変性酸化チタンコロイド粒子分散液2を8g添加し、混合することで、淡黄色透明の反応性シリコーン組成物6を得た。ここで変性チタン含有酸化物コロイド粒子(全金属酸化物換算)の、反応性シリコーン化合物含有混合液の質量(反応性シリコーン化合物、反応性希釈剤、開始剤の合計質量)に対する配合量は400phrであった。得られた反応性シリコーン組成物6に対して上記(1)に示す試験を実施した。評価結果を表1[表1-1]に示す。
この反応性シリコーン組成物6を、実施例6に記載の条件で同様にガラス基板上に塗布、脱溶媒、加熱することで、硬化膜を作成し、評価した。得られた評価結果を表1[表1-1]に示す。
【0117】
[実施例9]
製造例1にて調製した反応性シリコーン化合物含有混合液1.5gをメチルエチルケトン3.5gに溶解し、ここに製造例4にて調製した変性酸化チタンコロイド粒子分散液3を5g添加し、混合することで、淡黄色透明の反応性シリコーン組成物7を得た。ここで変性チタン含有酸化物コロイド粒子(全金属酸化物換算)の、反応性シリコーン化合物含有混合液の質量(反応性シリコーン化合物、反応性希釈剤、開始剤の合計質量)に対する配合量は100phrであった。得られた反応性シリコーン組成物7に対して上記(1)に示す試験を実施した。評価結果を表1[表1-2]に示す。
この反応性シリコーン組成物7を、実施例6に記載の条件で同様にガラス基板上に塗布、脱溶媒、加熱することで、硬化膜を作成し、評価した。得られた評価結果を表1[表1-2]に示す。
【0118】
[実施例10]
製造例1にて調製した反応性シリコーン化合物含有混合液0.6gをメチルエチルケトン1.4gに溶解し、ここに製造例4にて調製した変性酸化チタンコロイド粒子分散液3を8g添加し、混合することで、淡黄色透明の反応性シリコーン組成物8を得た。ここで変性チタン含有酸化物コロイド粒子(全金属酸化物換算)の、反応性シリコーン化合物含有混合液の質量(反応性シリコーン化合物、反応性希釈剤、開始剤の合計質量)に対する配合量は400phrであった。得られた反応性シリコーン組成物8に対して上記(1)に示す試験を実施した。評価結果を表1[表1-2]に示す。
この反応性シリコーン組成物8を、実施例6に記載の条件で同様にガラス基板上に塗布、脱溶媒、加熱することで、硬化膜を作成し、評価した。得られた評価結果を表1[表1-2]に示す。
【0119】
[実施例11]
製造例1にて調製した反応性シリコーン化合物含有混合液2.4gをメチルエチルケトン5.6gに溶解し、ここに製造例5にて調製した変性酸化チタンコロイド粒子分散液4を2g添加し、混合することで、淡黄色透明の反応性シリコーン組成物9を得た。ここで変性チタン含有酸化物コロイド粒子(全金属酸化物換算)の、反応性シリコーン化合物含有混合液の質量(反応性シリコーン化合物、反応性希釈剤、開始剤の合計質量)に対する配合量は25phrであった。得られた反応性シリコーン組成物9に対して上記(1)に示す試験を実施した。評価結果を表1[表1-2]に示す。
この反応性シリコーン組成物9を、実施例6に記載の条件で同様にガラス基板上に塗布、脱溶媒、加熱することで、硬化膜を作成し、評価した。得られた評価結果を表1[表1-2]に示す。
【0120】
[実施例12]
製造例1にて調製した反応性シリコーン化合物含有混合液2.4gをメチルエチルケトン5.6gに溶解し、ここに製造例6にて調製した変性酸化チタンコロイド粒子分散液5を2g添加し、混合することで、淡黄色透明の反応性シリコーン組成物10を得た。ここで変性チタン含有酸化物コロイド粒子(全金属酸化物換算)の、反応性シリコーン化合物含有混合液の質量(反応性シリコーン化合物、反応性希釈剤、開始剤の合計質量)に対する配合量は25phrであった。得られた反応性シリコーン組成物10に対して上記(1)に示す試験を実施した。評価結果を表1[表1-2]に示す。
この反応性シリコーン組成物10を、実施例6に記載の条件で同様にガラス基板上に塗布、脱溶媒、加熱することで、硬化膜を作成し、評価した。得られた評価結果を表1[表1-2]に示す。
【0121】
[実施例13]
製造例1にて調製した反応性シリコーン化合物含有混合液2.4gをメチルエチルケトン5.6gに溶解し、ここに製造例7にて調製した変性酸化チタンコロイド粒子分散液6を2g添加し、混合することで、淡黄色透明の反応性シリコーン組成物11を得た。ここで変性チタン含有酸化物コロイド粒子(全金属酸化物換算)の、反応性シリコーン化合物含有混合液の質量(反応性シリコーン化合物、反応性希釈剤、開始剤の合計質量)に対する配合量は25phrであった。得られた反応性シリコーン組成物11に対して上記(1)に示す試験を実施した。評価結果を表1[表1-2]に示す。
この反応性シリコーン組成物11を、実施例6に記載の条件で同様にガラス基板上に塗布、脱溶媒、加熱することで、硬化膜を作成し、評価した。得られた評価結果を表1[表1-2]に示す。
【0122】
[比較例1]
製造例1にて調製した反応性シリコーン化合物含有混合液4gをシクロヘキサノン5.7g、メタノール0.3gに溶解し、無色透明の比較例組成物1を得た。得られた比較例組成物1に対して上記(1)に示す試験を実施した。評価結果を表1[表1-2]に示す。
この比較例組成物1を、ガラス基板上に塗布する際のスピンコーターの回転数を500rpmとした以外は、実施例1に記載の条件で同様に脱溶媒、紫外線照射することで、硬化膜を作成し、評価した。得られた評価結果を表1[表1-2]に示す。
【0123】
[比較例2]
製造例1にて調製した反応性シリコーン化合物含有混合液1.5gをメチルエチルケトン3.5gに溶解し、ここに製造例8にて調製した酸化チタンコロイド粒子分散液7を5g添加し、混合することで、淡黄色透明の比較例組成物2を得た。ここで酸化チタン含有核粒子(全金属酸化物換算)の、反応性シリコーン化合物含有混合液の質量(反応性シリコーン化合物、反応性希釈剤、開始剤の合計質量)に対する配合量は100phrであった。得られた比較例組成物2に対して上記(1)に示す試験を実施した。評価結果を表1[表1-2]に示す。
この比較例組成物2を、実施例6に記載の条件で同様に塗布、脱溶媒、加熱することで、硬化膜を作成し、評価した。得られた評価結果を表1[表1-2]に示す。
【0124】
【0125】
【0126】
[評価結果]
表1(表1-1、表1-2)に示すように、実施例1~13で調製し使用した反応性シリコーン組成物1~11は、比較例2で調製し使用した比較例組成物2に比べて高い保存安定性を有していることが確認された。また実施例1~13で作成した硬化膜は赤外域にて高い透過率を示し、低いヘイズ値を示し、高い透明性を維持し、耐光性に優れることが確認された。さらに実施例1~13にて製造した硬化膜は、比較例1に比べて高い屈折率を示し、変性酸化チタン含有酸化物コロイド粒子の配合により屈折率が上昇したこと、また変性酸化チタン含有酸化物コロイド粒子の配合量により屈折率が変化し、屈折率の調整が可能であることが確認された。