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特許7415266制御装置、搬送装置、画像形成装置、制御方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】制御装置、搬送装置、画像形成装置、制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G03G 21/00 20060101AFI20240110BHJP
   B65H 5/02 20060101ALI20240110BHJP
   B65H 5/06 20060101ALI20240110BHJP
   B65G 43/00 20060101ALN20240110BHJP
   G03G 15/16 20060101ALN20240110BHJP
【FI】
G03G21/00 370
B65H5/02 G
B65H5/06 J
B65G43/00 D
G03G15/16
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019228413
(22)【出願日】2019-12-18
(65)【公開番号】P2021096390
(43)【公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-10-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100098626
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 壽
(72)【発明者】
【氏名】中本 尚吾
(72)【発明者】
【氏名】前畠 康広
【審査官】内藤 万紀子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-155895(JP,A)
【文献】特開2017-227882(JP,A)
【文献】特開2019-156632(JP,A)
【文献】特開2018-085797(JP,A)
【文献】特開2016-139132(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 21/00
B65H 5/02
B65H 5/06
B65G 43/00
G03G 15/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被搬送体に搬送力を付与する第一回転体に隣り合って該被搬送体に搬送力を付与する第二回転体の回転速度を基準にして、該第一回転体の回転速度を調整する制御を行う制御装置であって、
前記第二回転体を規定速度で回転させつつ、互いに異なる予め決められた2点又は3点の回転速度のそれぞれで前記第一回転体を回転させた場合の、前記被搬送体が前記第一回転体及び前記第二回転体の両方から搬送力を受けている第一区間における前記第二回転体の各駆動トルク情報を取得し、取得した全駆動トルク情報を用いて、前記第一区間における前記第一回転体の回転速度と該第二回転体の駆動トルクとの関係を示す第一区間パラメータを、前記予め決められた2点又は3点の回転速度の範囲よりも広い該第一回転体の回転速度範囲にわたって算出するとともに、
前記第二回転体を前記規定速度で回転させつつ、互いに異なる予め決められた2点又は3点の回転速度のそれぞれで前記第一回転体を回転させた場合の、前記被搬送体が前記第一回転体から搬送力を受けずに前記第二回転体から搬送力を受けている第二区間における前記第二回転体の各駆動トルク情報を取得し、取得した全駆動トルク情報を用いて、前記第二区間における前記第一回転体の回転速度と該第二回転体の駆動トルクとの関係を示す第二区間パラメータを、前記予め決められた2点又は3点の回転速度の範囲よりも広い該第一回転体の回転速度範囲にわたって算出し、
前記第一区間パラメータ及び前記第二区間パラメータに基づいて、前記第二回転体の駆動トルクが前記第一区間及び前記第二区間の間で一致することになる前記第一回転体の回転速度を調整目標値として特定する特定処理を実行する特定処理部とを有することを特徴とする制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の制御装置において、
前記第二区間における前記第二回転体の各駆動トルク情報を取得する際における前記第一回転体の前記予め決められた2点又は3点の回転速度は、前記第一区間における前記第二回転体の各駆動トルク情報を取得する際における前記第一回転体の前記予め決められた2点又は3点の回転速度と同じであることを特徴とする制御装置
【請求項3】
求項1又は2に記載の制御装置において、
前記第一区間パラメータ及び前記第二区間パラメータのうちの少なくとも一方のパラメータが示す関係は、比例関係であることを特徴とする制御装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の制御装置において、
前記特定処理部は、前記第二回転体の前記規定速度として、該第二回転体を前記第一回転体として前記特定処理を行って事前に調整目標値として特定した回転速度を用いることを特徴とする制御装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の制御装置において、
前記特定処理部は、前記特定処理を実行した後、該特定処理時の前記第二回転体に対して該特定処理時の前記第一回転体とは搬送方向反対側で隣り合う第三回転体を新たに第一回転体として、新たに前記特定処理を実行することを特徴とする制御装置
【請求項6】
求項1乃至5のいずれか1項に記載の制御装置において、
前記駆動トルク情報として、前記第二回転体を駆動させる駆動電流値又はPWM指令値を用いることを特徴とする制御装置。
【請求項7】
複数の回転体により被搬送体を搬送する搬送装置であって、
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の制御装置を有することを特徴とする搬送装置。
【請求項8】
搬送装置によって搬送される被搬送体上に画像を形成する画像形成装置であって、
前記搬送装置として、請求項7に記載の搬送装置を用いることを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
被搬送体に搬送力を付与する第一回転体に隣り合って該被搬送体に搬送力を付与する第二回転体の回転速度を基準にして、該第一回転体の回転速度を調整する制御を行う制御方法であって、
前記第二回転体を規定速度で回転させつつ、互いに異なる予め決められた2点又は3点の回転速度のそれぞれで前記第一回転体を回転させた場合の、前記被搬送体が前記第一回転体及び前記第二回転体の両方から搬送力を受けている第一区間における前記第二回転体の各駆動トルク情報を取得し、取得した全駆動トルク情報を用いて、前記第一区間における前記第一回転体の回転速度と該第二回転体の駆動トルクとの関係を示す第一区間パラメータを、前記予め決められた2点又は3点の回転速度の範囲よりも広い該第一回転体の回転速度範囲にわたって算出するとともに、
前記第二回転体を前記規定速度で回転させつつ、互いに異なる予め決められた2点又は3点の回転速度のそれぞれで前記第一回転体を回転させた場合の、前記被搬送体が前記第一回転体から搬送力を受けずに前記第二回転体から搬送力を受けている第二区間における前記第二回転体の各駆動トルク情報を取得し、取得した全駆動トルク情報を用いて、前記第二区間における前記第一回転体の回転速度と該第二回転体の駆動トルクとの関係を示す第二区間パラメータを、前記予め決められた2点又は3点の回転速度の範囲よりも広い該第一回転体の回転速度範囲にわたって算出し、
前記第一区間パラメータ及び前記第二区間パラメータに基づいて、前記第二回転体の駆動トルクが前記第一区間及び前記第二区間の間で一致することになる前記第一回転体の回転速度を調整目標値として特定する特定処理を実行することを特徴とする制御方法。
【請求項10】
被搬送体に搬送力を付与する第一回転体に隣り合って該被搬送体に搬送力を付与する第二回転体の回転速度を基準にして、該第一回転体の回転速度を調整する制御を行う制御装置のコンピュータに実行されるプログラムであって、
前記第二回転体を規定速度で回転させつつ、互いに異なる予め決められた2点又は3点の回転速度のそれぞれで前記第一回転体を回転させた場合の、前記被搬送体が前記第一回転体及び前記第二回転体の両方から搬送力を受けている第一区間における前記第二回転体の各駆動トルク情報を取得し、取得した全駆動トルク情報を用いて、前記第一区間における前記第一回転体の回転速度と該第二回転体の駆動トルクとの関係を示す第一区間パラメータを、前記予め決められた2点又は3点の回転速度の範囲よりも広い該第一回転体の回転速度範囲にわたって算出するとともに、
前記第二回転体を前記規定速度で回転させつつ、互いに異なる予め決められた2点又は3点の回転速度のそれぞれで前記第一回転体を回転させた場合の、前記被搬送体が前記第一回転体から搬送力を受けずに前記第二回転体から搬送力を受けている第二区間における前記第二回転体の各駆動トルク情報を取得し、取得した全駆動トルク情報を用いて、前記第二区間における前記第一回転体の回転速度と該第二回転体の駆動トルクとの関係を示す第二区間パラメータを、前記予め決められた2点又は3点の回転速度の範囲よりも広い該第一回転体の回転速度範囲にわたって算出し、
前記第一区間パラメータ及び前記第二区間パラメータに基づいて、前記第二回転体の駆動トルクが前記第一区間及び前記第二区間の間で一致することになる前記第一回転体の回転速度を調整目標値として特定する特定処理を、前記コンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置、搬送装置、画像形成装置、制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被搬送体に搬送力を付与する第一回転体に隣り合って該被搬送体に搬送力を付与する第二回転体の回転速度を基準にして、該第一回転体の回転速度を調整する制御を行う制御装置が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、第二回転体を規定速度で回転させた状態で、被搬送体が第一回転体及び第二回転体の両方から搬送力を受けている第一区間における当該第二回転体の駆動トルクT1と、被搬送体が第一回転体から搬送力を受けずに第二回転体から搬送力を受けている第二区間における当該第二回転体の駆動トルクT2とが一致するときの第一回転体の回転速度を、当該第一回転体の回転速度の目標値として設定する制御装置が開示されている。この制御装置では、第二回転体を規定速度で回転させつつ、第一回転体の回転速度を予め決められた最初の回転速度から所定の変動幅で順次変更していき、第一区間及び第二区間における第二回転体の駆動トルクT1,T2を取得する処理を行う。そして、大小関係が逆転したら、大小関係が逆転する直前の第一回転体の回転速度と、大小関係が逆転したときの第一回転体の回転速度との間の速度範囲内を線形補間し、T1=T2となる第一回転体の回転速度を算出し、これを当該第一回転体の回転速度の目標値として設定する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、従来の制御装置では、第一区間と第二区間との間における第二回転体の駆動トルクT1,T2の大小関係が逆転するまで、第一回転体の回転速度を順次変更していく必要があり、第一回転体の回転速度の調整に時間がかかる場合があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するために、本発明は、被搬送体に搬送力を付与する第一回転体に隣り合って該被搬送体に搬送力を付与する第二回転体の回転速度を基準にして、該第一回転体の回転速度を調整する制御を行う制御装置であって、前記第二回転体を規定速度で回転させつつ、互いに異なる予め決められた2点又は3点の回転速度のそれぞれで前記第一回転体を回転させた場合の、前記被搬送体が前記第一回転体及び前記第二回転体の両方から搬送力を受けている第一区間における前記第二回転体の各駆動トルク情報を取得し、取得した全駆動トルク情報を用いて、前記第一区間における前記第一回転体の回転速度と該第二回転体の駆動トルクとの関係を示す第一区間パラメータを、前記予め決められた2点又は3点の回転速度の範囲よりも広い該第一回転体の回転速度範囲にわたって算出するとともに、前記第二回転体を前記規定速度で回転させつつ、互いに異なる予め決められた2点又は3点の回転速度のそれぞれで前記第一回転体を回転させた場合の、前記被搬送体が前記第一回転体から搬送力を受けずに前記第二回転体から搬送力を受けている第二区間における前記第二回転体の各駆動トルク情報を取得し、取得した全駆動トルク情報を用いて、前記第二区間における前記第一回転体の回転速度と該第二回転体の駆動トルクとの関係を示す第二区間パラメータを、前記予め決められた2点又は3点の回転速度の範囲よりも広い該第一回転体の回転速度範囲にわたって算出し、前記第一区間パラメータ及び前記第二区間パラメータに基づいて、前記第二回転体の駆動トルクが前記第一区間及び前記第二区間の間で一致することになる前記第一回転体の回転速度を調整目標値として特定する特定処理を実行する特定処理部とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、第一回転体の調整目標値を特定する特定処理に要する時間の短縮、当該特定処理時に搬送しなければならない被搬送体の数の低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態の搬送装置の概略構成を示す図。
図2】同搬送装置における二次転写部の構成を示す説明図。
図3】同搬送装置における搬送部の構成を示す説明図。
図4】(a)及び(b)は、2つの回転体の表面移動速度の差による干渉トルクについて説明する図。
図5】下流側のモータと上流側のモータの間に生じる干渉トルクについて説明する図。
図6】実施形態の画像形成装置の構成の概略を説明する図。
図7】実施形態のモータ制御部を説明する図。
図8】実施形態の回転体制御処理部の機能を説明する図。
図9】実施形態の回転体制御処理部の動作を説明する第一のフローチャート。
図10】実施形態の回転体制御処理部の動作を説明する第二のフローチャート。
図11】第一区間における第一規定値及び第二規定値とトルク検知モータの駆動トルクとを線形補間する第一近似式の一例と、第二区間における第一規定値及び第二規定値とトルク検知モータの駆動トルクとを線形補間する第二近似式の一例とを示すグラフ。
図12】第一区間における第一規定値及び第二規定値とトルク検知モータの駆動トルクとを線形補間する第一近似式の他の例と、第二区間における第一規定値及び第二規定値とトルク検知モータの駆動トルクとを線形補間する第二近似式の他の例とを示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態の搬送装置の概略構成を示す図である。
本実施形態の搬送装置100は、例えばシート状の被搬送体を搬送するものであって、後述する画像形成装置等に搭載される。
【0009】
本実施形態の搬送装置100は、中間転写ベルト10、中間転写ローラ11、二次転写対向ローラ12、従動ローラ13、テンションローラ14、ベルトクリーニング装置15、スケールセンサ16を有する。中間転写ベルト10には、エンコーダパターン17が形成されている。また、本実施形態の搬送装置100は、中間転写モータ21、ローラエンコーダ22,33,43、モータエンコーダ34,44、二次転写ローラ31、二次転写モータ32、搬送ローラ41、搬送モータ42、搬送対向ローラ46を有する。また、本実施形態の搬送装置100は、中間転写ベルト10の表面移動速度を一定に保つための制御を行うモータ制御部200を有する。
【0010】
本実施形態の搬送装置100において、中間転写ベルト10は、ベルトループ内に配設された複数の張架ローラによって張架されながら、張架ローラの1つである中間転写ローラ11の回転駆動によって無端移動せしめられる。この中間転写ローラ11は、減速機構を介して駆動源としての中間転写モータ21に接続されている。 この減速機構は、中間転写モータ21の回転軸にある小径歯車と中間転写ローラ11の回転軸にある大径歯車とを噛合わせた構成となっている。
【0011】
本実施形態では、中間転写ベルト10の表面移動速度を検出する速度検出手段として、ベルトエンコーダ方式を採用している。本実施形態の中間転写ベルト10の裏面にはエンコーダパターン17が刻まれており、このエンコーダパターン17をスケールセンサ16で読み取ることによって、中間転写ベルト10の表面移動速度を検出する。
【0012】
なお、図1の例では、従動ローラ13と中間転写ローラ11との間の略中央にスケールセンサ16を設置しているが、これに限定されない。スケールセンサ16は、平坦な部分に設置されれば、中間転写ベルト10の表面移動速度を正しく測定できる。 例えば、平坦でない回転軸上等にスケールセンサ16を設置した場合、軸の曲率の影響が出てしまい、中間転写ベルト10の製造上の厚み変動や環境変化による変動によって、エンコーダパターン17の間隔が変化してしまい、正しい表面移動速度ではなくなるため、避ける必要がある。
【0013】
エンコーダパターン17は、シート状のエンコーダパターンを貼り付けたり、中間転写ベルト10上に直接パターン加工したり、中間転写ベルト10の製造工程で一体加工したりと、製作方法はどのような方法でも良い。本実施形態において、スケールセンサ16は、等間隔のスリットを備えた反射式の光学センサを想定しているが、これに限定されない。このセンサは、エンコーダパターン17から中間転写ベルト10の表面位置を正確に検出できるセンサであれば良く、例えばCCDカメラ等を使用し、画像処理によって表面位置を検出するものでも良い。また、ドップラー方式やベルト表面の凹凸から画像処理によって表面位置を検出できるセンサ方式であれば、エンコーダパターン17を無くすことも可能となる。
【0014】
また、中間転写ベルト10の表面移動速度を検出する他の速度検出手段として、ロータリーエンコーダ方式がある。この方式は、従動ローラ13の回転軸に設けた回転検出器である。従動ローラ13は、中間転写ベルト10の無端移動に伴って従動回転するローラで、中間転写ベルト10の表面移動速度を検出することができる。
【0015】
搬送装置100では、中間転写ベルト10の表面移動方向における全領域のうち、従動ローラ13に対する掛け回し位置を通過してから、中間転写ローラ11に対する掛け回し位置に進入する前の箇所が、Y、M、C、K用の感光体ドラム19と当接してY、M、C、K用の一次転写ニップを形成する。中間転写ベルト10におけるY、M、C、K用の一次転写ニップの形成箇所に対しては、中間転写ベルト10の裏面側から転写ローラがそれぞれ当接している。搬送装置100では、電源によって各転写ローラに転写バイアスが印加され、各色の一次転写ニップにおいて中間転写ベルト10と感光体ドラム19との間に転写電界が形成される。
【0016】
搬送装置100では、一次転写部にてカラー画像が形成されるため、この部分での中間転写ベルト10の表面移動速度を検出して制御することが好ましい。そこで、従動ローラ13にロータリーエンコーダを設置するか、従動ローラ13と中間転写ローラ11の間にスケールセンサ16を設置するのが望ましい。
【0017】
本実施形態のテンションローラ14は、ベルトループの外側からベルトに押し当てられ、一定のベルト張力を発生させるものである。テンションローラ14により生じるベルト張力によって、中間転写ベルト10は各張架ローラの表面に当接して、中間転写ベルト10が表面移動方向へ移動する。特に、中間転写ローラ11の表面と中間転写ベルト10との当接力は、中間転写ローラ11のベルト搬送摩擦力と相関があるために重要で、中間転写ベルト10を搬送するために必要な搬送摩擦力が確保できるようにテンションローラ14の押し当て力を設定する。
【0018】
また、搬送装置100では、二次転写対向ローラ12と対向する位置で中間転写ベルト10の表面に当接する二次転写ローラ31が配設されている。また、搬送装置100では、ベルトループ外側にて二次転写ローラ31のベルト搬送方向下流に配設された、ベルトクリーニング装置15が中間転写ベルト10に当接している。ベルトクリーニング装置15は、中間転写ベルト10の表面に付着しているトナー等の異物を、トナーと自らとの電位差によって中間転写ベルト10の表面から回収する。
【0019】
なお、搬送装置100では、矢印Aで示す搬送方向に被搬送体を搬送する。したがって、搬送装置100は、被搬送体を、搬送ローラ41の搬送方向上流側から搬送され、二次転写ローラ31の搬送方向下流側へと搬送する。つまり、本実施形態における被搬送体の搬送経路は、中間転写ベルト10、二次転写ローラ31、搬送ローラ41を含む回転体によって形成される。
【0020】
本実施形態のモータ制御部200は、中間転写ベルト10の表面移動速度を一定とするために、中間転写モータ21をフィードバック制御する。具体的には、モータ制御部200は、中間転写ベルト10の表面移動速度を示すスケールセンサ16の出力信号S1と、中間転写ローラ11の回転速度を示すローラエンコーダ22の出力信号S2とに基づいて、中間転写モータ21の駆動制御信号S3を出力する。
【0021】
また、モータ制御部200は、二次転写部50を通過する被搬送体の影響による中間転写ベルト10の表面移動速度の変動を抑制するために、二次転写モータ32と搬送モータ42をフィードバック制御する。具体的には、モータ制御部200は、スケールセンサ16の出力信号S1と、ローラエンコーダ22の出力信号S2とに基づいて、二次転写モータ32の駆動制御信号S4を出力する。
【0022】
次に、二次転写ローラ31の周辺の機構について説明する。
図2は、搬送装置100における二次転写部50の構成を示す説明図である。
搬送装置100は、中間転写モータ21とは別に、二次転写モータ32が設置されている。二次転写モータ32には、モータ制御部200から送信される駆動制御信号S4によって回転する。二次転写モータ32は、中間転写モータ21と同じブラシ付きDCモータやブラシレスDCモータが採用される。二次転写モータ32の回転速度は、減速機構(モータギヤと二次転写ローラ31側の減速ギヤ)により減速される。また、二次転写ローラ31は、その回転により、二次転写部50まで搬送された被搬送体を搬送する。
【0023】
二次転写ローラ31の対向側には、中間転写ベルト10を支持している二次転写対向ローラ12があり、二次転写ローラ31は、中間転写ベルト10を挟んで二次転写対向ローラ12に当接する。2つのローラの当接は、スプリングによって行われる。また、二次転写ローラ31には、二次転写対向ローラ12から離間するためのカム機構が設けられており、二次転写部50における2つのローラの当接と離間が切り替えられる。
【0024】
本実施形態の搬送装置100では、二次転写部50の転写性を向上させるために、二次転写ローラ31の表面部に弾性層を設けている。二次転写ローラ31の例としては、低慣性薄肉金属パイプを中心に、シリコンゴム等の低硬度ゴム材料ローラ部(弾性ゴム層)を設け、その表層に塗布されるウレタンコーティング層から構成される。
【0025】
なお、本実施形態の二次転写ローラ31では、導電性ゴムローラ部はゴム硬度40°(ゴム硬度Aスケール)以下の加硫ゴム又はシリコン系ゴムを下層に構成し、その表層には粘性を無効とするウレタンコーティング層を薄層として設けても良い。本実施形態では、これにより、導電性ゴムローラ部の当接変形によってニップ(圧接)領域を拡げ、かつ適切な転写必要圧力を確保する構造にできる。
【0026】
一般に発泡ゴム構造以外の方法で40°以下の低硬度を実現しようとすると、加硫ゴムの場合は可塑剤の添加により粘性が増加する。また、シリコンゴムの場合も高粘性になる。その結果、中間転写ベルト10と二次転写ローラ31とが接する圧接部51での粘着或いは被搬送体と接触する部分との粘着により、両移動体の移動不良が生じる。これを回避するために、上述した表層に塗布されるウレタンコーティングが有効である。
【0027】
次に、搬送ローラ41の周辺の構成について説明する。
図3は、搬送装置100における搬送部60の構成を示す説明図である。
搬送装置100の有する搬送ローラ41は、搬送経路を形成し、被搬送体を搬送する回転体の1つであり、搬送モータ42により回転される。搬送ローラ41は、搬送モータ42が駆動されと、搬送モータ42の回転がギヤを介して搬送ローラ41に伝達されて回転する。被搬送体は、搬送ローラ41と、搬送ローラ41と対向した位置に配置された搬送対向ローラ46とから形成される搬送部60により、二次転写ローラ31と二次転写対向ローラ12との圧接部51まで搬送される。圧接部51まで搬送された被搬送体は、二次転写ローラ31と中間転写ベルト10とに挟持されて搬送される。言い換えれば、圧接部51は、被搬送体が二次転写ローラ31と中間転写ベルト10とに挟持される挟持部である。
【0028】
以上のように、本実施形態の搬送装置100において、被搬送体は、搬送部60から二次転写部50に搬送される。そして、搬送装置100は、二次転写部50において二次転写ローラ31と中間転写ベルト10と圧接し、トナー像を被搬送体に転写する。このとき、被搬送体の搬送経路を形成する回転体は、被搬送体の種類や、各ローラの公差、接触圧力変化や、環境、経時によるローラ形状の偏差量等により、表面移動速度が変動する。また、この変動は、中間転写ベルト10の表面移動速度を変動させる。言い換えれば、被搬送体の搬送経路を形成する回転体の表面移動速度の変動は、中間転写ベルト10を駆動する中間転写モータ21の駆動トルクの変動の原因となる干渉トルクを発生させる。
【0029】
そこで、本実施形態では、中間転写ベルト10の表面移動速度を一定に保つために、被搬送体の搬送経路を形成する回転体の回転速度を制御する。言い換えれば、本実施形態では、中間転写モータ21の駆動トルクに対する干渉トルクを発生させないように、被搬送体の搬送経路を形成する回転体の回転速度を制御する。
【0030】
なお、本実施形態において、被搬送体の搬送経路を形成する回転体とは、例えば、搬送ローラ41よりも上流側に位置し、被搬送体を搬送ローラ41まで搬送するためのローラを含む。また、被搬送体の搬送経路を形成する回転体には、搬送経路において、圧接部51よりも下流側に位置し、被搬送体を定着装置まで搬送するためのローラを含む。
【0031】
なお、本実施形態の被搬送体は、例えば紙であっても良いし、シート状のフィルム等であっても良い。本実施形態の被搬送体は、画像を転写することができ、搬送装置100で搬送できるものであれば、どのようなものであっても良い。
【0032】
以下に、本実施形態の搬送装置100の搬送経路における、隣り合う2つの回転体の表面移動速度の差による干渉トルクについて説明する。
【0033】
図4(a)及び(b)は、2つの回転体の表面移動速度の差による干渉トルクについて説明する図である。
図4の例では、搬送経路における隣り合う2つの回転体として、搬送ローラ41と二次転写ローラ31を示している。図4の例では、搬送ローラ41が搬送方向上流側の回転体であり、二次転写ローラ31が搬送方向下流側のローラとなる。図4(a)は、搬送方向上流側の搬送ローラ41の表面移動速度が、搬送方向下流側の二次転写ローラ31の表面移動速度に対して速い場合を示す。図4(b)は、搬送方向上流側の搬送ローラ41の表面移動速度が、搬送方向下流側の二次転写ローラ31の表面移動速度に対して遅い場合を示す。
【0034】
本実施形態において、搬送方向上流側の搬送ローラ41は、モータエンコーダ45から得られる回転速度に基づいて搬送モータ42がフィードバック制御されるため、回転軸の回転速度Vrは常に一定となる。一方、搬送方向下流側の二次転写ローラ31も同様に、モータエンコーダ34から得られる回転速度に基づいて二次転写モータ32がフィードバック制御されるため、二次転写ローラ31の回転軸の回転速度Vsは常に一定となる。
【0035】
搬送装置100では、搬送方向上流側の搬送ローラ41の表面移動速度と、搬送方向下流側の二次転写ローラ31の表面移動速度とが異なる場合、これらのローラを駆動させるモータ同士に干渉トルクが生じる。ここでの干渉トルクとは、搬送方向下流側の二次転写ローラ31を駆動させる二次転写モータ32が、被搬送体の搬送時に、被搬送体を介して、搬送方向上流側の搬送ローラ41から押し込みや引っ張りの影響を受けることで発生するトルクである。また言い換えれば、図4の例では、搬送ローラ41の表面移動速度(搬送モータ42の回転速度)と中間転写ベルト10の表面移動速度とが異なる場合、搬送モータ42と中間転写モータ21との間に干渉トルクが生じる。
【0036】
ここで述べる干渉トルクは、中間転写モータ21が、被搬送体である用紙Pを介して搬送ローラ41における用紙Pの押し込みや引っ張りの影響を受けることで発生する。この干渉トルクを計測するには、用紙Pが二次転写ローラ31及び搬送ローラ41に跨った状態と、用紙Pが二次転写ローラ31のみに搬送され搬送ローラ41には搬送されない状態との間における、中間転写モータ21の駆動トルクTaの変化量を見ればよい。本実施形態では、この変化量をゼロに近づけることで、搬送ローラ41における用紙Pの押し込みや引っ張りによる中間転写モータ21に対する干渉トルクの発生を抑制する。
【0037】
図4(a)では、搬送ローラ41と二次転写ローラ31との両方に用紙Pが跨っている状態を示している。また、図4(a)では、搬送ローラ41の表面移動速度が中間転写ベルト10の表面移動速度と比べて速いため、搬送ローラ41が用紙Pを二次転写ローラ31に向かって押し込む状態になる。この状態では、二次転写ローラ31の表面移動速度が速くなり、用紙Pと中間転写ベルト10の表面で干渉トルクが発生する。ここで、モータ制御部200は、中間転写ベルト10の表面移動速度を一定の速度となるように制御するため、中間転写モータ21(二次転写モータ32)の駆動トルクTaを低下させる。
【0038】
また、図4(a)の状態において用紙Pが搬送され、用紙Pの後端Peが搬送部60を通過して二次転写部50のみに搬送される状態になると、搬送ローラ41から二次転写ローラ31に向かって用紙Pを押し込む力が消失する。これにより、二次転写ローラ31の表面移動速度は遅くなるので、モータ制御部200は、中間転写ベルト10の表面移動速度を一定の速度となるように制御するため、中間転写モータ21の駆動トルクTaは上昇する。
【0039】
本実施形態では、被搬送体の搬送経路において、被搬送体が、搬送方向上流側の回転体と搬送方向下流側の回転体との両方に跨って搬送される区間を第一区間と呼ぶ。また、本実施形態では、被搬送体が、搬送方向上流側又は下流側のいずれか一方の回転体のみによって搬送される区間を第二区間と呼ぶ。図4の例では、搬送経路において、搬送部60と二次転写部50の両方に用紙Pが存在している状態で用紙Pが搬送される区間が第一区間となり、二次転写部50にのみ用紙Pが存在している状態で用紙Pが搬送される区間が第二区間となる。
【0040】
ここで、図4(a)のように、搬送方向下流側の二次転写ローラ31に対して搬送方向上流側の搬送ローラ41が被搬送体を押し込む状態では、搬送方向下流側のモータの駆動トルクTaは、第一区間において低下し、第二区間において上昇することがわかる。言い換えれば、搬送方向上流側の搬送ローラ41の表面移動速度が、搬送方向下流側の二次転写ローラ31の表面移動速度に対して速い場合、搬送方向下流側のモータの駆動トルクTaは、第一区間において低下し、第二区間において上昇する。
【0041】
一方で、図4(b)では、搬送方向上流側の搬送ローラ41の表面移動速度が、搬送方向下流側の二次転写ローラ31の表面移動速度と比べて遅いため、搬送ローラ41が用紙Pを二次転写ローラ31から引っ張る状態になる。すると、二次転写ローラ31の表面移動速度が遅くなり、用紙Pと二次転写ローラ31の表面で干渉トルクが発生する。このときも、モータ制御部200は、二次転写ローラ31の表面移動速度を一定の速度となるように制御するため、中間転写モータ21の駆動トルクTaは上昇する。
【0042】
また、図4(b)の状態において用紙Pが搬送され、用紙Pの後端Peが搬送ローラ41を通過して二次転写ローラ31のみに搬送される状態となると、搬送ローラ41が二次転写ローラ31から用紙Pを引っ張る力が消失する。これにより、二次転写ローラ31の表面移動速度は速くなるので、モータ制御部200は、中間転写ベルト10の表面移動速度を一定の速度となるように制御する。その結果、中間転写モータ21の駆動トルクTaは低下する。
【0043】
つまり、図4(b)のように、搬送方向下流側の二次転写ローラ31に対し、搬送方向上流側の搬送ローラ41が用紙Pを引っ張る状態では、搬送方向下流側のモータの駆動トルクTaは、第一区間において上昇し、第二区間において低下することがわかる。言い換えれば、搬送方向上流側の搬送ローラ41の表面移動速度が、搬送方向下流側の二次転写ローラ31の表面移動速度に対して遅い場合、搬送方向下流側のモータの駆動トルクTaは、第一区間において上昇し、第二区間において低下する。
【0044】
以下、図5を参照して、第一区間におけるトルクの変化と、第二区間におけるトルクの変化の関係を説明する。
図5は、下流側のモータと上流側のモータの間に生じる干渉トルクについて説明する図である。
図5では、上流側のローラの速度の変動を、上流側のローラの設定速度に対する速度の変動の割合をパーセントで示している。設定速度は、上流側のローラの表面移動速度が下流側のローラの表面移動速度と一致すると想定された値である。縦軸は、トルクから換算される搬送力である。図5に示す線L1’は、第一区間における、上流側のローラの回転速度と下流側のモータの搬送力の関係を示し、線L2’は、第二区間における、上流側のローラの回転速度と下流側のモータの搬送力の関係を示している。
【0045】
図4で説明したように、下流側のモータの駆動トルクは、上流側のローラの回転速度が下流側のローラの表面移動速度に対して速い場合、第一区間において低下し、第二区間において上昇する。また、下流側のモータの駆動トルクは、上流側のローラの回転速度が下流側のローラの表面移動速度に対して遅い場合、第一区間において上昇し、第二区間において低下する。よって、図5示すように、第一区間における下流側のモータの搬送力L1’は、上流側のローラの回転速度が速いほど低下し、第二区間における下流側のモータの搬送力L2’は、上流側のローラの回転速度が速いほど上昇する。
【0046】
本実施形態では、第一区間における搬送力L1’と、第二区間における搬送力L2’との差分がゼロとなる状態が、上流側のローラにおける被搬送体の押し込みや引っ張りの影響を最も受けない状態であると言える。よって、本実施形態では、第一区間における搬送力L1’と、第二区間における搬送力L2’との差分がゼロとなるときの上流側のモータの回転速度が、上流側のモータの回転速度の調整目標値として設定される最適な値となる。
【0047】
以下に説明する本実施形態の画像形成装置、搬送装置及び回転体制御装置では、上述した内容を踏まえ、搬送経路における干渉トルクを低減させるための回転速度の調整を行う。具体的には、本実施形態では、被搬送体に圧接しているローラのうち、最も上流に位置するローラと、このローラと下流側で隣り合うローラとを一組とする。そして、本実施形態では、下流側のローラにおいて検知されるトルクがゼロとなるように、上流側のローラの回転速度を調整することで、この組における干渉トルクをゼロに近づける。
【0048】
本実施形態では、搬送経路において、上流側のローラが搬送経路の末端のローラとなるまで、上流側のローラと下流側のローラと含む組を1つずつ上流側にずらし、組ごとに上流側のローラの回転速度を調整する。本実施形態では、この順に調整することで、組における上流側のローラは、このローラより上流で被搬送体に圧接している他のローラの影響を受けることなく、干渉トルクを検出する精度を高くすることができる。したがって、本実施形態では、干渉トルクをゼロに近づける調整の精度を高くすることができる。
【0049】
また、本実施形態では、被搬送体に圧接しているローラのうち、最も下流に位置するローラと上流側でこのローラと隣り合うローラとを一組とすることもできる。そして、本実施形態では、上流側のローラにおいて検知されるトルクがゼロとなるように、下流側のローラの回転速度を調整することで、この組における干渉トルクをゼロに近づける。そして、本実施形態では、搬送経路において、下流側のローラが搬送経路の末端のローラとなるまで、下流側のローラと上流側のローラと含む組を1つずつ下流側にずらし、組ごとに下流側のローラの回転速度を調整する。本実施形態では、この順に調整することで、組における下流側のローラは、このローラより下流で被搬送体に圧接している他のローラの影響を受けることなく、干渉トルクを検出する精度を高くすることができる。したがって、本実施形態では、干渉トルクをゼロに近づける調整の精度を高くすることができる。
【0050】
以下の説明では、回転速度の調整が行われるローラを速度調整用回転体(第一回転体)と呼び、速度調整用回転体の上流側又は下流側で速度調整用回転体に隣り合い、且つ、トルクが検知されるローラをトルク検知用回転体(第二回転体)と呼ぶ。本実施形態では、速度調整用回転体とトルク検知用回転体とを含む組を上流側又は下流側にずらし、各組において、干渉トルクをゼロに近づける調整を行うことで、搬送経路内のローラについて、トルク干渉を低減させる。
【0051】
なお、本実施形態では、速度調整用回転体が、搬送経路の末端のローラとなるまで、上述した調整を行うものとしたが、これに限定されない。末端のローラは、実際の搬送経路の末端でなくても良い。具体的には、例えば、末端のローラは、中間転写ベルト10との間で干渉トルクが生じる回転体のうち、末端に位置するローラであっても良い。つまり、末端のローラは、基準となるトルク検知用回転体との干渉トルクを解消させるべき回転体と、その精度に応じて適宜決められれば良い。
【0052】
また、本実施形態の搬送装置100では、搬送経路において、中間転写モータ21の駆動トルクに対する干渉トルクを低減させることが目的である。言い換えれば、本実施形態の搬送装置100では、二次転写部50に被搬送体が挟持されて搬送される状態においても、中間転写ベルト10が単体で回転している状態においても、中間転写モータ21の駆動トルクを一定とすることが目的である。したがって、本実施形態では、回転体の組の選択において、最初の組を中間転写ベルト10と搬送ローラ41とし、まず初めに、中間転写モータ21の駆動トルクTaに対する干渉トルクをゼロに近づける。そして、本実施形態では、駆動トルクTaに対する干渉トルクを解消した後に、回転体の組を1つずつずらすように選択しても良い。
【0053】
このとき、本実施形態では、搬送方向において、二次転写部50の上流側と下流側のうち、駆動トルクTaに対する干渉トルクに大きく影響する方向に向かって、回転体の組をずらしても良い。例えば、一般的な画像形成装置では、二次転写部50を基準にしたときに、二次転写部50から定着装置までの距離を、二次転写部50から搬送ローラ41までの距離よりも大きくとる構成となることが多い。これは、定着による熱の影響や、搬送ローラ41を二次転写部50に近づけて搬送のタイミングの精度等を考慮した結果である。このような構成では、干渉トルクに対する影響が大きい搬送方向上流側にある搬送ローラ41の回転速度を優先的に調整する必要がある。よって、このような構成の場合には、回転体の組は、最初の組から上流側へ順次ずらしていくように選択される。
【0054】
回転体の組の選択において、最初の組からずらしていく方向は、ニップ圧や搬送経路ニップ時間の違い等によって決められても良い。例えば、搬送経路の下流側の構成が、干渉トルクに対して大きな影響を与える場合には、回転体の組は、最初の組から下流側へ順次ずらしていくように選択される。
【0055】
以下に、本実施形態の各装置について説明する。
図6は、本実施形態の画像形成装置の構成の概略を説明する図である。
本実施形態の画像形成装置300は、電子写真方式のデジタル複合機からなり、複写機能と、プリンタ機能およびファクシミリ機能等を有している。なお、インク滴を吐出して画像を形成するインクジェット方式、昇華型熱転写方式、ドットインパクト方式などの画像形成装置300であっても良い。本実施形態の画像形成装置300は、搬送装置100を含む。
【0056】
本実施形態の画像形成装置300は、画像読取部301、画像書込みユニット302、感光体ユニット303、感光体ドラム19、現像ユニット305、中間転写部306、中間転写ベルト10、二次転写部50、搬送部60、トレイ307、搬送部308、定着部309を有している。
【0057】
画像形成装置300は、画像読取部301により光源を原稿に照射しながら原稿を走査し、原稿からの反射光をCCD(Charge Coupled Device)センサにより画像を読み取る。読み取られた画像は、画像処理ユニットによりスキャナγ補正、色変換、画像分離、階調補正処理等の画像処理が施された後、画像書込みユニット302へ送られる。画像書込みユニット302では、画像データに応じてLD(Laser Diode)の駆動を変調する。感光体ユニット303は、一様に帯電された回転する感光体ドラム19にLDからのレーザビームにより静電潜像が書き込まれ、現像ユニット305によりトナーが付着されて顕像化される。
【0058】
感光体ドラム19上に形成された画像は、中間転写部306の中間転写ユニットの中間転写ベルト10上に転写される。画像形成装置300においてフルカラーコピーが実行された場合、中間転写ベルト10上には4色(ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y))のトナー像が順次重ねられる。全ての色の作像と転写が終了した時点で、搬送部60により中間転写ベルト10とタイミングを合わせてトレイ307から被搬送体が供給され、二次転写部50で中間転写ベルト10から被搬送体へトナー像が二次転写される。トナー像が転写された被搬送体は、搬送部308を経て定着部309へ送られ、定着ローラと加圧ローラによりトナー像が被搬送体に定着された後に排出される。
【0059】
図7は、本実施形態のモータ制御部を説明する図である。
本実施形態のモータ制御部200は、搬送装置100に含まれるものであり、図1で示した複数の回転体(中間転写ローラ11、二次転写ローラ31、搬送ローラ41)の駆動を制御する。また、本実施形態のモータ制御部200は、搬送経路を形成する他の回転体の駆動も制御する。本実施形態の画像形成装置300において、モータ制御部200は、画像形成装置300全体を制御するメイン制御部310と接続されており、搬送経路を形成する回転体の駆動を制御する。
【0060】
メイン制御部310は、画像形成装置300の操作部320から画像データの出力指示等が操作されると、モータ制御部200に対して各モータの駆動指示を行う。具体的にはメイン制御部310は、画像データの出力指示等を受けると、モータ制御部200へ各モータへの指令値、スタート/ストップ指示、回転速度の目標値や回転方向などを指示する。モータ制御部200は、この指示を受けて各モータの駆動を制御する。また、メイン制御部310は、モータ制御部200と各モータに関する情報の授受を行う。さらに、メイン制御部310は、各モータに関する情報(モータ情報)を記憶するメモリ330を有している。モータに関する情報とは、例えば各モータの回転速度(設定速度)や、指令値に応じたPWM値、駆動電流、エンコーダ値等を含む。
【0061】
本実施形態のモータ制御部200は、回転体制御処理部210は、搬送経路を形成する複数の各ローラを回転させるモータに対応したドライバと、FETとを有する。図5の例では、搬送経路を形成する複数の各ローラを回転させるモータの例として、中間転写モータ21、二次転写モータ32、搬送モータ42を示している。
【0062】
回転体制御処理部210が有するドライバ221,222,223、FET231,232,233は、中間転写モータ21、二次転写モータ32、搬送モータ42のそれぞれに対応するドライバとFETである。
【0063】
回転体制御処理部210は、詳しくは後述するが、はじめに、二次転写モータ32の回転速度の目標値と、搬送モータ42の回転速度の目標値を調整し、調整した後の各目標値をメモリ330に格納する。なお、二次転写モータ32の回転速度は、二次転写ローラ31の回転速度と同義であり、搬送モータ42の回転速度は、搬送ローラ41の回転速度と同義である。
【0064】
また、回転体制御処理部210は、搬送経路を形成する回転体から、隣り合う2つの回転体の組を選択し、この組において、一方の回転体のトルクを検知しながら他方の回転体の回転速度を調整する。回転体制御処理部210は、回転体の組を、搬送方向の上流側又は下流側に順次ずらすように選択し、各組について同様の調整を行う。
【0065】
なお、本実施形態では、回転体の組の選択は、メイン制御部310で行っても良い。この場合、回転体制御処理部210は、選択された回転体を特定する情報をメイン制御部310から取得すれば良い。
【0066】
ドライバ221とFET231は、中間転写モータ21へ駆動電流を供給する機能を有する。ドライバ222とFET232は、二次転写モータ32へ駆動電流を供給する機能を有する。ドライバ223とFET233は、搬送モータ42へ駆動電流を供給する機能を有する。
【0067】
回転体制御処理部210は、中間転写ローラ11のローラエンコーダ22やスケールセンサ16から、中間転写ベルト10の表面移動速度と中間転写モータ21の回転速度とを取得する。また、回転体制御処理部210は、モータエンコーダ34、ローラエンコーダ33から、二次転写モータ32と二次転写ローラ31の回転速度を取得する。更に、回転体制御処理部210は、モータエンコーダ44、ローラエンコーダ43から搬送モータ42と搬送ローラ41の回転速度を取得する。
【0068】
また、回転体制御処理部210は、中間転写モータ21、二次転写モータ32及び搬送モータ42の駆動電流を取得して、各モータへの制御出力を演算し、制御出力と対応するPWM指令値を各ドライバへ出力する。また、本実施形態の回転体制御処理部210は、搬送経路を形成する各ローラを回転させる各モータについて、駆動電流を取得して、各モータへの制御出力を演算し、制御出力と対応するPWM指令値を各モータのドライバへ出力する。
【0069】
回転体制御処理部210は、PWM指令値によって各モータの駆動電流を算出する。しかし、ドライバを含むモータ駆動回路の変動や応答性の影響を受けて誤差が発生するおそれがある。そこで、より高精度にモータの駆動電流を把握するために、回転体制御処理部210は、FETの電流を計測して駆動電流を把握してもよい。具体的には、回転体制御処理部210は、FETに接続されたシャント抵抗に流れる合成電流値から駆動電流を把握しても良い。
【0070】
ドライバ221,222,223では、PWM指令値が入力されると、各モータ21,32,42の回転角をホール素子信号により認識する。そして、各ドライバは、PWM指令値に応じて生成されたPWM信号をモータ3相出力信号に変換し、FET231,232,233を介して各モータを駆動する。
【0071】
本実施形態の回転体制御処理部210は、以上の動作により、各モータの指令値に基づき、搬送経路を形成する回転体の回転速度を制御する。
【0072】
また、回転体制御処理部210は、取得した駆動電流から駆動トルクの算出を行う。具体的には、回転体制御処理部210は、搬送経路を形成する回転体(回転体に対応するモータ)の回転速度と駆動電流を取得し、トルク乗数と速度との関係を示したトルク換算テーブル等を用いて駆動電流をトルクに換算する。
【0073】
更に、回転体制御処理部210は、必要に応じて、回転体制御処理部210が取得したデータや演算したデータ等をメモリ330に格納したり、メイン制御部310に異常通知等の情報を通知したりする。メモリ330は、回転体制御処理部210内にも有する構成としても良い。
【0074】
このように本実施形態では、回転体制御処理部210は、複数の回転体の駆動を制御する回転体制御装置の一部として機能する。
【0075】
次に、図8を参照して、本実施形態の回転体制御処理部210の機能について説明する。
図8は、本実施形態の回転体制御処理部の機能を説明する図である。
本実施形態の回転体制御処理部210は、例えばメモリ等を有する演算処理装置(回転体制御装置)等であり、後述する回転体制御処理部210の各部は、演算処理装置がメモリに格納された回転体制御プログラムを実行することで実現される。
【0076】
本実施形態の回転体制御処理部210は、選択部240、通紙検知部245、速度制御部250、速度調整部260を有する。
【0077】
選択部240は、搬送経路において、隣り合う2つの回転体を選択する。なお、本実施形態の選択部240は、メイン制御部310において選択された回転体を特定する情報を取得することによっても隣り合う2つの回転体を選択しても良い。
【0078】
本実施形態の選択部240は、最初に、二次転写部50の中間転写ベルト10を、基準となるトルク検知用回転体に選択する。このとき、二次転写部50では、中間転写ベルト10と二次転写ローラ31の両方が駆動するため、基準としてどちらを選択しても良いが、本実施形態では、画像形成の安定化に寄与するために、中間転写ベルト10を基準となるトルク検知用回転体(ベルト)に選択する。言い換えれば、本実施形態では、中間転写ベルト10が、基準となるトルク検知用回転体である。
【0079】
次に、本実施形態では、基準の回転体よりも搬送方向上流側の回転体の回転速度の調整を行う場合には、基準である中間転写ベルト10と搬送方向上流側で隣り合う搬送ローラ41を速度調整用回転体に選択する。つまり、この場合は、2つの隣り合う回転体の組は、中間転写ベルト10と搬送ローラ41となる。
【0080】
以下、搬送ローラ41の搬送方向上流側に2つの搬送ローラ47-1,47-2が設けられており、中間転写ベルト10の上流側を調整対象とする場合について説明する。この場合、中間転写ベルト10と搬送ローラ41の組の次に選択される組は、この組の搬送方向上流側にある搬送ローラ41と、この搬送ローラ41と搬送方向上流側で隣り合う搬送ローラ47-1となる。また、この組では、搬送方向下流側の搬送ローラ41がトルク検知用回転体となり、搬送方向上流側の搬送ローラ47-1が速度調整用回転体となる。
【0081】
また、搬送ローラ41と搬送ローラ47-1の組の次は、この組において搬送方向上流側にある搬送ローラ47-1と、この搬送ローラ47-1と搬送方向上流側で隣り合う搬送ローラ47-2となる。また、この組では、搬送ローラ47-1がトルク検知用回転体となり、搬送ローラ47-2が速度調整用回転体となる。選択部240は、搬送方向における上流側の末端のローラが選択されるまで、組の選択を行う。
【0082】
次に、中間転写ベルト10の搬送方向下流側に2つの搬送ローラ48-1,48-2が設けられており、中間転写ベルト10の下流側を調整対象とする場合について説明する。この場合、中間転写ベルト10と、中間転写ベルト10と搬送方向下流側で隣り合う搬送ローラ48-1とが、最初の組に選択される。この場合、中間転写ベルト10がトルク検知用回転体であり、搬送ローラ48-1が速度調整用回転体となる。
【0083】
最初の組の次に選択される組は、この組において搬送方向下流側にある搬送ローラ48-1と、この搬送ローラ48-1と搬送方向下流側で隣り合う搬送ローラ48-2となる。この組では、搬送方向上流側の搬送ローラ48-1がトルク検知用回転体となり、搬送方向下流側の搬送ローラ48-2が速度調整用回転体となる。選択部240は、搬送方向下流側の末端のローラが選択されるまで、組の選択を続ける。
【0084】
以上のように、本実施形態の選択部240は、速度調整用回転体の回転速度の調整が行われた後に、この速度調整用回転体を次のトルク検知用回転体に選択し、この回転体に対してトルク検知用回転体と反対側で隣り合う回転体を、次の速度調整用回転体に選択する。本実施形態では、このように回転体の組を選択することで、搬送方向上流側に組をずらしていく場合と、搬送方向下流側に組をずらしていく場合の両方において、速度調整用回転体が、さらに上流又はさらに下流の回転体の影響を受けずに調整を行うことができる。
【0085】
なお、本実施形態の選択部240には、調整対象とする方向が、基準となる中間転写ベルト10の上流側又は下流側のいずれかに設定されていても良い。選択部240は、この設定に基づき、速度調整用回転体とトルク検知用回転体を選択しても良い。
【0086】
通紙検知部245は、各回転体に被搬送体に到達したこと、通過したことを検知する。
【0087】
速度制御部250は、各回転体の回転速度を制御する。具体的には、速度制御部250は、各回転体に対応するモータに対し、回転速度を変更したり、回転速度の目標値を設定したりする。また、速度制御部250は、各モータの回転速度が、モータ情報に含まれる目標値となるように、フィードバック制御を行う。
【0088】
速度調整部260は、選択部240により選択された2つの回転体間におけるトルクの干渉をなくすように、2つの回転体に対応するモータの回転速度の目標値を調整する。
【0089】
本実施形態の速度調整部260は、トルク推定部261、速度変更指示部263、速度算出部264、格納制御部265を有する。
【0090】
本実施形態のトルク推定部261は、選択部240により選択された組における、トルク検知用回転体を回転させる駆動トルクの推定値を算出する。言い換えれば、本実施形態のトルク推定部261は、トルク検知用回転体を回転させるモータの駆動トルクを取得する取得部である。
【0091】
以下、駆動トルクの推定値を算出する方法の一例として、中間転写モータ21の駆動トルクTaの推定値の算出方法を説明する。
【0092】
トルク推定部261は、ドライバ221に出力されるPWM指令値と、スケールセンサ16から得られる中間転写モータ21の回転速度と、に基づいて算出される負荷トルク値を駆動トルクTaとする。駆動トルクTaの推定値は、各モータが目標の速度に精度よく制御されている状態では、モータに供給される電流値、PWM指令値等から算出できる。なお、本実施形態では、駆動トルクTaの推定値を算出することと、駆動トルクTaを算出することとは同義である。
【0093】
速度変更指示部263は、トルク検知用回転体及び速度調整用回転体を回転させる各モータに対し、それぞれの回転速度の変更を指示する。以下の説明では、トルク検知用回転体を回転させるモータをトルク検知モータと呼び、速度調整用回転体を回転させるモータを速度調整モータと呼ぶ。
【0094】
速度算出部264は、選択部240により選択された組において、速度変更指示部263により指示される各回転速度で速度調整用回転体を回転させた場合の、第一区間におけるトルク検知用回転体の駆動トルクT1と、第二区間におけるトルク検知用回転体の駆動トルクT2とを取得し、第一区間パラメータ及び第二区間パラメータを算出する。第一区間パラメータは、第一区間における速度調整用回転体(第一回転体)の回転速度とトルク検知用回転体(第二回転体)の駆動トルクとの関係を示すパラメータであり、第二区間パラメータは、第二区間における速度調整用回転体(第一回転体)の回転速度とトルク検知用回転体(第二回転体)の駆動トルクとの関係を示すパラメータである。本実施形態の速度算出部264は、このように算出される第一区間パラメータ及び第二区間パラメータに基づいて、速度調整モータの回転速度の目標値を算出する。言い換えれば、速度算出部264は、速度調整モータの回転速度を設定する設定部である。
【0095】
格納制御部265は、速度算出部264により算出された回転速度(目標値)をメモリ330に格納する。
【0096】
次に、図9及び図10を参照して、本実施形態の回転体制御処理部210の動作を説明する。
図9は、本実施形態の回転体制御処理部の動作を説明する第一のフローチャートである。
なお、図9に示す処理は、例えば、画像形成装置300の工場出荷時や、画像形成装置300が設置されて利用が開始される時等の所定のタイミングで実行されても良い。また図9に示す処理は、搬送装置100により搬送される被搬送体の種類が変わったときに実行されても良い。また、図9に示す処理は、画像形成装置300の利用者からの指示により、任意のタイミングで実行されても良いし、所定の期間毎に実行されても良い。つまり、図9の処理は、任意のタイミングで実行されて良い。
【0097】
本実施形態の回転体制御処理部210は、選択部240により、速度調整用回転体(i)を特定するための変数iの初期設定として、i=0を設定する(S701)。続いて、回転体制御処理部210は、選択部240により、回転速度の調整を行う方向を取得する(S702)。なお、本実施形態では、選択部240が基準となる回転体に対して、搬送方向上流側又は下流側のうち、どちらかが調整対象とする方向として設定されているものとした。
【0098】
続いて、選択部240は、速度調整部260による回転速度の調整を行う速度調整用回転体の数(選択される組の数)Nを決定する(S703)。このとき、基準となる回転体(中間転写ベルト10)は、0番目のローラと考える。その後、選択部240は、速度調整用回転体を選択し、変数iをインクリメントする(S704)。ここで、選択部240は、最初に基準となる回転体である中間転写ベルト10と、調整対象の方向に基づき、速度調整用回転体を選択する。
【0099】
例えば、調整対象の方向が搬送方向上流側であった場合には、選択部240は、搬送ローラ41を速度調整用回転体として選択する。また、調整対象の方向が搬送方向下流側であった場合には、選択部240は、中間転写ベルト10と搬送方向下流側で隣り合う搬送ローラ48-1を速度調整用回転体として選択する。
【0100】
次に、回転体制御処理部210は、速度調整部260により、トルク検知用回転体の駆動トルクを計測する区間である第一区間及び第二区間を設定する(S705)。本実施形態では、搬送経路のローラ間距離、搬送基本速度等の情報が予め設定されており、被搬送体の搬送区間は、これらの情報を参照して算出される。また、トルク検知用回転体の駆動トルクを計測するタイミングは、各回転体に対して被搬送体の通過を検知するための検知センサからの信号や印刷実行信号等に基づき、決められる。
【0101】
本実施形態において、第一区間は、トルク検知用回転体(i-1)と速度調整用回転体(i)の両方で被搬送体を搬送する区間である。この第一区間においては、速度調整用回転体(i)の搬送方向上流側では当該被搬送体を搬送している回転体が存在しない(当該回転体による搬送が実質的に影響しない)ものとする。
また、本実施形態において、第二区間は、トルク検知用回転体(i-1)のみで被搬送体を搬送する区間である。
【0102】
次に、回転体制御処理部210は、速度調整部260により、速度調整用回転体(i)の回転速度の調整を行う(S800)。この処理ステップS800の詳細は後述する。
【0103】
この処理ステップS800を終えて、速度調整用回転体(i)の回転速度の調整が完了した後、回転体制御処理部210は、この速度調整用回転体(i)が搬送経路における末端の回転体であるか否かを判定する(S707)。つまり、回転体制御処理部210は、速度調整用回転体(i)のi=Nであるか否かを判定する。この処理ステップS707において、末端の回転体でないと判定された場合には、回転体制御処理部210は、処理ステップS704へ戻って処理を継続する。一方、処理ステップS707において、末端の回転体であると判定された場合には、速度調整部260は、各速度調整用回転体(i=1~N)のそれぞれの回転速度を、目標値としてメモリ330に格納し(S708)、処理を終了する。
【0104】
次に、図10を参照して、本実施形態の速度調整部260による速度調整用回転体の回転速度の調整について説明する。
図10は、本実施形態の回転体制御処理部の動作を説明する第二のフローチャートである。図10の処理は、図9に示す処理ステップS800の詳細を示している。
【0105】
本実施形態の回転体制御処理部210は、まず、トルク検知モータの回転速度を目標値に設定するとともに(S801)、速度調整モータの回転速度を第一規定値Aに設定する(S802)。その後、被搬送体の搬送(通紙)を開始させる(S803)。そして、回転体制御処理部210は、速度調整部260のトルク推定部261により、第一区間におけるトルク検知モータの駆動トルクT1Aと、第二区間におけるトルク検知モータの駆動トルクT2Aを算出する(S804)。
【0106】
次に、回転体制御処理部210は、トルク検知モータの回転速度を目標値に設定したまま、速度調整モータの回転速度を第二規定値Bに設定する(S805)。その後、被搬送体の搬送(通紙)を開始させる(S806)。そして、回転体制御処理部210は、速度調整部260のトルク推定部261により、第一区間におけるトルク検知モータの駆動トルクT1Bと、第二区間におけるトルク検知モータの駆動トルクT2Bを算出する(S807)。
【0107】
ここで、駆動トルクT1,T2の算出について説明する。
回転体制御処理部210は、被搬送体の搬送が開始され、通紙検知部245により、速度調整用回転体(i)に続いてトルク検知用回転体(i-1)に被搬送体が到達したことを検知すると、トルク推定部261によるトルク検知モータの駆動トルクの取得を開始する。トルク推定部261は、所定の時間間隔(サンプリング間隔)ごとの駆動トルクを取得し、通紙検知部245により被搬送体の速度調整用回転体の通過が検知されたら、取得した駆動トルクの平均値を求め、これを第一区間におけるトルク検知モータの駆動トルクT1として算出する。
【0108】
続けて、回転体制御処理部210は、通紙検知部245により被搬送体のトルク検知用回転体の通過を検知したら、トルク推定部261により、被搬送体の速度調整用回転体の通過からトルク検知用回転体の通過までの間に取得した駆動トルクの平均値を求め、これを第二区間におけるトルク検知モータの駆動トルクT2として算出する。
【0109】
なお、本実施形態においては、このようにして算出される駆動トルクT1,T2を所定枚数分の被搬送体について算出し、その所定枚数分の平均値を最終的な駆動トルクT1,T2として算出してもよい。
【0110】
本実施形態の通紙検知部245による検知方法としては、例えば、(1)速度調整モータ又はトルク検知モータに設置された各エンコーダが検出したトルクを監視する方法、(2)速度調整用回転体が被搬送体の搬送を開始したことを検出する方法、(3)トルク検知モータと対応するFETを流れる駆動電流を監視する方法などが挙げられる。
【0111】
上記(1)の方法について具体的に説明する。トルク検知用回転体に作用するトルクは、被搬送体を搬送している区間では、搬送していない区間よりも大きくなる。通紙検知部245は、メイン制御部310から駆動指示を受信した後、トルク検知用回転体の回転速度が安定する時間の経過を待ち、トルクを監視する。そして、通紙検知部245は、例えば、トルクの変化速度(勾配)が閾値以上になったときに、トルク検知用回転体に被搬送体の先端が突入したと判定する。
【0112】
上記(2)の方法について具体的に説明する。速度調整用回転体は、中間転写ベルト10のトナー画像が被搬送体に印刷されるようにタイミングを調整して搬送を再開する機能を有している。速度調整用回転体が搬送を開始したことは、メイン制御部310が検知するので、通紙検知部245は、メイン制御部310から速度調整用回転体が搬送開始したとの通知を受ける。速度調整用回転体からトルク検知用回転体までの距離と搬送速度は既知なので、通紙検知部245は、通知を受けてから所定時間が経過すると、トルク検知用回転体に被搬送体の先端が突入したと判定することができる。なお、このほか、トルク検知用回転体の近くに設置したセンサが被搬送体の通過を検出する方法を利用してもよい。
【0113】
上記(3)の方法について説明する。FETを流れる駆動電流は、トルク検知モータの負荷が大きくなると増大する。したがって、トルク検知用回転体に被搬送体が突入すると、FETを流れる駆動電流が増大する。したがって、通紙検知部245は、例えば、トルク検知モータの駆動電流の変化速度(勾配)が所定値以上になると、トルク検知用回転体に被搬送体が突入したと判定する。
【0114】
以上のようにして、速度調整用回転体を第一規定値A及び第二規定値Bの回転速度でそれぞれ回転させたときの第一区間及び第二区間におけるトルク検知モータの駆動トルクT1A,T2A,T1B,T2Bが得られる。その後、速度算出部264は、第一区間パラメータとして、第一規定値A及び第二規定値Bの2点の回転速度と、これらにそれぞれ対応する第一区間のトルク検知モータの駆動トルクT1A,T1Bとの間を線形補間する第一近似式L1を算出する(S808)。また、速度算出部264は、第二区間パラメータとして、第一規定値A及び第二規定値Bの2点の回転速度と、これらにそれぞれ対応する第二区間のトルク検知モータの駆動トルクT2A,T2Bとの間を線形補間する第二近似式L2を算出する(S808)。
【0115】
その後、速度算出部264は、算出した第一近似式L1及び第二近似式L2に基づいて、トルク検知用回転体の駆動トルクが第一区間及び第二区間の間で一致することになる速度調整用回転体の回転速度を調整目標値Tとして特定する(S809)。具体的には、第一近似式L1及び第二近似式L2の交点となる速度調整用回転体の回転速度を調整目標値Tとして特定する。このようにして速度調整用回転体の調整目標値Tを特定したら、図9の処理ステップS707へ進む。
【0116】
なお、本実施形態では、第二区間についての第二近似式L2を得るために用いた速度調整用回転体の回転速度である第一規定値A及び第二規定値Bが、第一区間についての第一近似式L1を得るために用いた速度調整用回転体の回転速度と同じであったが、別の回転速度を用いてもよい。ただし、同じである方が、より短時間での処理が可能となる。
【0117】
図11は、第一区間における第一規定値A及び第二規定値Bとトルク検知モータの駆動トルクT1A,T1Bとを線形補間する第一近似式L1の一例と、第二区間における第一規定値A及び第二規定値Bとトルク検知モータの駆動トルクT2A,T2Bとを線形補間する第二近似式L2の一例とを示すグラフである。
各種条件(被搬送体の種類など)や使用環境などによっては、図11に示すように、第一近似式L1と第二近似式L2との交点となる速度調整用回転体の回転速度(調整目標値T)が、第一規定値Aと第二規定値Bとの間の速度範囲内に存在する場合がある。
【0118】
図12は、第一区間における第一規定値A及び第二規定値Bとトルク検知モータの駆動トルクT1A,T1Bとを線形補間する第一近似式L1の他の例と、第二区間における第一規定値A及び第二規定値Bとトルク検知モータの駆動トルクT2A,T2Bとを線形補間する第二近似式L2の他の例とを示すグラフである。
各種条件(被搬送体の種類など)や使用環境などによっては、図12に示すように、第一近似式L1と第二近似式L2との交点となる速度調整用回転体の回転速度(調整目標値T)が、第一規定値Aと第二規定値Bとの間の速度範囲外に存在する場合がある。
【0119】
本実施形態においては、図11及び図12のいずれの場合であっても、速度調整用回転体の調整目標値Tを高い精度で得ることができる。
【0120】
この点について説明する。本実施形態の画像形成装置300においては、速度調整用回転体の回転速度を広い速度範囲にわたって振っても、第一区間及び第二区間のいずれも、速度調整用回転体の回転速度とトルク検知モータの駆動トルクT1,T2との関係が安定した関係が得られることを見出した。なお、ここでいう広い速度範囲とは、第一区間と第二区間との間における第二回転体の駆動トルクT1,T2の大小関係が逆転するまで、第一回転体の回転速度を順次変更していく従来の装置における第一回転体の回転速度の変更幅よりも広い速度範囲である。また、ここでいう関係とは、本実施形態では、一次近似できる比例関係であるが、二次近似式などの他の関係であってもよい。
【0121】
このように安定した関係が得られることから、少なくとも2点について、速度調整用回転体の回転速度とトルク検知モータの駆動トルクT1,T2の計測値が得るだけで、速度調整用回転体の回転速度とトルク検知モータの駆動トルクT1,T2との関係を示す近似式L1,L2を高い精度(要求される精度)で得ることができる。
【0122】
この結果、速度調整用回転体の調整目標値Tを特定するための近似式L1,L2を算出するにあたっては、少なくとも2点(第一規定値Aと第二規定値B)についての速度調整用回転体の回転速度におけるトルク検知モータの駆動トルクT1,T2を取得するだけで済む。したがって、第一区間と第二区間との間における第二回転体の駆動トルクT1,T2の大小関係が逆転するまで、第一回転体の回転速度を順次変更していってトルク検知モータの駆動トルクT1,T2を取得するような従来の装置よりも、速度調整用回転体の調整目標値Tを特定するための特定処理に要する時間を短くすることができる。
【0123】
特に、速度調整用回転体の調整目標値Tは、搬送される被搬送体の種類(材質や厚みなど)ごとに異なるものである。そのため、画像形成装置300が使用する被搬送体の種類が複数種類にわたる場合には、各種類の被搬送体について個別に特定処理を実行することが望ましい。したがって、複数種類の被搬送体についてそれぞれ特定処理を実行する場合には、特定処理に要する時間の短縮効果は非常に大きいものとなる。
【0124】
加えて、トルク検知モータの駆動トルクT1,T2を取得するためには、実際に被搬送体を搬送する必要があるところ、本実施形態によれば、その被搬送体の通紙枚数も減らすことができる。
【0125】
本実施形態では、以上の回転体制御処理部210の処理により、各組に含まれる速度調整モータから、搬送経路の上流側又は下流側の末端の回転体の速度調整モータまで、回転速度を調整することができる。
【0126】
なお、本実施形態の回転体制御処理部210は、例えば、図9の処理が完了した後に、中間転写モータ21の干渉トルクを求め、干渉トルクがゼロに近づいているかを判定しても良い。このとき、本実施形態では、例えば、干渉トルクが画像の出力部230に影響しない程度の目標値以下であるか否かを判定しても良い。
【0127】
なお、本実施形態では、中間転写ベルト10に対する干渉トルクを解消するように、搬送経路を形成する回転体の回転速度を制御する例を説明したが、本実施形態が適用される構成は、これに限定されない。本実施形態の制御の方法は、例えば、感光体ベルトを有する構成の画像形成装置等にも適用できる。この場合、感光体ベルトに対する干渉トルクを解消するようにしても良い。本実施形態では、回転体の対を複数有し、この複数の対によって、被搬送体が搬送される構成のものであれば、どのような装置にも適用することができる。
【0128】
また、画像形成装置において、中間転写モータ21、二次転写モータ32と、搬送モータ42等の搬送経路を形成する回転体を一定の回転速度に制御している状態では、各モータの駆動トルクの変動は、各モータの上流の各信号においても反映される。よって、中間転写モータ21の駆動トルクTaの代わりに、中間転写モータ21に供給される電流指令値、駆動電流、PWM実測値、トルク実測値等を用いることもできる。言い換えれば、中間転写モータ21に供給される電流指令値、駆動電流、PWM実測値、トルク実測値等を、中間転写モータ21の搬送力として用いることもできる。この場合、中間転写モータ21の駆動トルクTaの代わりに他の値を用いることができるため、駆動トルクTaの推定値を算出しなくても良くなる。
【0129】
以上に説明したものは一例であり、次の態様毎に特有の効果を奏する。
[第1態様]
第1態様は、被搬送体(例えば用紙)に搬送力を付与する第一回転体(速度調整用回転体:例えば搬送ローラ41)に隣り合って該被搬送体に搬送力を付与する第二回転体(トルク検知用回転体:例えば中間転写ベルト10)の回転速度を基準にして、該第一回転体の回転速度を調整する制御を行う制御装置(例えばモータ制御部200)であって、前記第二回転体を規定速度で回転させつつ、互いに異なる2点以上の回転速度(例えば第一規定値Aと第二規定値B)のそれぞれで前記第一回転体を回転させた場合の、前記被搬送体が前記第一回転体及び前記第二回転体の両方から搬送力を受けている第一区間における前記第二回転体の各駆動トルク情報T1A,T1Bを取得し、取得した全駆動トルク情報を用いて、前記第一区間における前記第一回転体の回転速度と該第二回転体の駆動トルクとの関係を示す第一区間パラメータ(例えば第一近似式L1)を算出するとともに、前記第二回転体を前記規定速度で回転させつつ、互いに異なる2点以上の回転速度(例えば第一規定値Aと第二規定値B)のそれぞれで前記第一回転体を回転させた場合の、前記被搬送体が前記第一回転体から搬送力を受けずに前記第二回転体から搬送力を受けている第二区間における前記第二回転体の各駆動トルク情報T2A,T2Bを取得し、取得した全駆動トルク情報を用いて、前記第二区間における前記第一回転体の回転速度と該第二回転体の駆動トルクとの関係を示す第二区間パラメータ(例えば第二近似式L2)を算出し、前記第一区間パラメータ及び前記第二区間パラメータに基づいて、前記第二回転体の駆動トルクが前記第一区間及び前記第二区間の間で一致することになる前記第一回転体の回転速度を調整目標値Tとして特定する特定処理を実行する特定処理部(例えば回転体制御処理部210)とを有することを特徴とするものである。
従来の制御装置では、第二回転体の駆動トルクの大小関係が逆転するまで、第一回転体の回転速度を、予め決められた最初の回転速度から順次変更していき、第一回転体の調整目標値(回転速度)が存在し得る速度範囲を探索する。この場合、第一回転体の調整目標値が最初の回転速度から離れていると、当該速度範囲が見つかるまでに時間がかかり、第一回転体の調整目標値を特定する特定処理に多くの時間を要することになる。そして、次の理由で、第一回転体の調整目標値が最初の回転速度から離れるケースが生じやすい。
従来の制御装置における特定処理では、第一回転体の調整目標値(回転速度)が存在し得る速度範囲を見つけたら、その速度範囲内を線形補間するための一次式(第一区間パラメータ及び第二区間パラメータ)を求め、第一区間と第二区間との間における第二回転体の駆動トルクが一致することになる第一回転体の回転速度を特定する。従来の制御装置は、このような処理を行うために、探索を開始する最初の回転速度について、どのような状況でも、第一回転体の調整目標値を含む速度範囲が探索から外れることのないように、十分に余裕をもって設定される。そのため、第一回転体の調整目標値が最初の回転速度から離れているケースが生じやすい。
ここで、本発明者らは、第二回転体の駆動トルクの大小関係が逆転するまで、第一回転体の調整目標値(回転速度)が存在し得る速度範囲を探索するという処理を行わなくても、各区間における第一回転体の回転速度と第二回転体の駆動トルクとの関係を示す第一区間パラメータ及び第二区間パラメータを高い精度で得ることができることを見出した。つまり、本発明者らは、第一回転体における2点(3点以上であってもよい。)の回転速度から得られる第一区間パラメータ及び第二区間パラメータを用いて、これらの回転速度の間の速度範囲の内だけでなく、その速度範囲の外に存在する第一回転体の調整目標値(回転速度)も高い精度で特定できることを見出した。
その結果、第一回転体の調整目標値が存在し得る速度範囲を探索するという処理を行わなくても、第一回転体における2点以上の回転速度を適宜設定し、当該2点以上の回転速度で第一回転体を回転させたときの第二回転体の各駆動トルク情報から、第一区間パラメータ及び第二区間パラメータを求め、第一回転体の調整目標値(回転速度)を特定することができる。
本態様における特定処理では、まず、第二回転体を規定速度で回転させつつ、互いに異なる2点以上の回転速度のそれぞれで第一回転体を回転させた場合の第一区間及び第二区間における第二回転体の各駆動トルク情報を取得する。そして、取得した全駆動トルク情報を用いて、それぞれの区間における第一回転体の回転速度と第二回転体の駆動トルクとの関係を示す第一区間パラメータ及び第二区間パラメータを算出する。すなわち、本態様の特定処理では、取得した全駆動トルク情報を用いて第一区間パラメータ及び第二区間パラメータを算出することから、第一回転体の調整目標値(回転速度)が存在し得る速度範囲を探索するという処理は行わない。その後、本態様の特定処理では、これらのパラメータに基づいて、第二回転体の駆動トルクが第一区間及び第二区間の間で一致することになる第一回転体の回転速度を調整目標値として特定する。
本態様によれば、第一回転体の調整目標値(回転速度)が存在し得る速度範囲を探索するという処理を行わずに第一区間パラメータ及び第二区間パラメータを得て、第一回転体の調整目標値を特定できる。その結果、第一区間パラメータ及び第二区間パラメータを得るための第一回転体の回転速度の点の数を減らすことが可能となり、特定処理に要する時間の短縮、当該特定処理時に搬送しなければならない被搬送体の数の低減を図ることができる。
【0130】
[第2態様]
第2態様は、第1態様において、前記第二区間における前記第二回転体の各駆動トルク情報を取得する際における前記第一回転体の前記2点以上の回転速度(例えば第一規定値Aと第二規定値B)は、前記第一区間における前記第二回転体の各駆動トルク情報を取得する際における前記第一回転体の前記2点以上の回転速度と同じであることを特徴とするものである。
これによれば、同じ被搬送体の搬送中に、第一区間における第二回転体の各駆動トルク情報と、第二区間における第二回転体の各駆動トルク情報の両方を取得することができる。したがって、より短時間での処理が可能となる。
【0131】
[第3態様]
第3態様は、第1又は第2態様において、前記第二回転体の各駆動トルク情報を取得する際に用いる前記第一回転体の回転速度の数は、2点又は3点であることを特徴とするものである。
第二回転体の各駆動トルク情報を取得する際に用いる第一回転体の回転速度の数が2点又は3点という少数であっても、要求される精度(例えば、従来と同程度の精度)で、第一回転体の調整目標値(回転速度)を得ることができる。
【0132】
[第4態様]
第4態様は、第1乃至第3態様のいずれかにおいて、前記第一区間パラメータ及び前記第二区間パラメータのうちの少なくとも一方のパラメータが示す関係は、比例関係であることを特徴とするものである。
要求される精度(例えば、従来と同程度の精度)で、第一回転体の調整目標値(回転速度)を得ることができる。
【0133】
[第5態様]
第5態様は、第1乃至第4態様のいずれかにおいて、前記特定処理部は、前記第二回転体の前記規定速度として、該第二回転体を前記第一回転体として前記特定処理を行って事前に調整目標値として特定した回転速度を用いることを特徴とするものである。
これによれば、搬送経路上の各回転体の回転速度を、より高い精度で調整することができる。
【0134】
[第6態様]
第6態様は、第1乃至第5態様のいずれかにおいて、前記特定処理部は、前記特定処理を実行した後、該特定処理時の前記第二回転体(例えば中間転写ベルト10)に対して該特定処理時の前記第一回転体とは搬送方向反対側で隣り合う第三回転体(例えば搬送ローラ48-1)を新たに第一回転体として、新たに前記特定処理を実行することを特徴とするものである。
これによれば、前記第二回転体(例えば中間転写ベルト10)を基準にして、当該第二回転体の搬送方向上流側と下流側の回転体の回転速度を調整することができる。
【0135】
[第7態様]
第7態様は、第1乃至第6態様のいずれかにおいて、前記特定処理部は、前記第二回転体の駆動トルクが前記第一区間及び前記第二区間の間で一致することになる前記第一回転体の回転速度(調整目標値T)が、前記第一区間及び前記第二区間のうちの少なくとも一方の区間における前記第二回転体の各駆動トルク情報を取得する際に用いる前記第一回転体の前記2点以上の回転速度(例えば第一規定値Aと第二規定値B)の範囲外であっても、当該一致することになる前記第一回転体の回転速度を調整目標値として特定することを特徴とするものである。
図12に示すような場合であっても、要求される精度(例えば、従来と同程度の精度)で、第一回転体の調整目標値(回転速度)を得ることができる。
【0136】
[第8態様]
第8態様は、第1乃至第7態様のいずれかにおいて、前記駆動トルク情報として、前記第二回転体を駆動させる駆動電流値又はPWM指令値を用いることを特徴とするものである。
これによれば、より簡易に駆動トルク情報を取得することができる。
【0137】
[第9態様]
第9態様は、複数の回転体により被搬送体を搬送する搬送装置100であって、第1乃至第8態様のいずれかの制御装置を有することを特徴とするものである。
これによれば、第一回転体の調整目標値を特定する特定処理に要する時間の短縮、当該特定処理時に搬送しなければならない被搬送体の数の低減を図ることのできる搬送装置を実現できる。
【0138】
[第10態様]
第10態様は、搬送装置によって搬送される被搬送体上に画像を形成する画像形成装置300であって、前記搬送装置として、第9態様の搬送装置を用いることを特徴とするものである。
これによれば、第一回転体の調整目標値を特定する特定処理に要する時間の短縮、当該特定処理時に搬送しなければならない被搬送体の数の低減を図ることのできる画像形成装置を実現できる。
【0139】
[第11態様]
第11態様は、被搬送体に搬送力を付与する第一回転体に隣り合って該被搬送体に搬送力を付与する第二回転体の回転速度を基準にして、該第一回転体の回転速度を調整する制御を行う制御方法であって、前記第二回転体を規定速度で回転させつつ、互いに異なる2点以上の回転速度のそれぞれで前記第一回転体を回転させた場合の、前記被搬送体が前記第一回転体及び前記第二回転体の両方から搬送力を受けている第一区間における前記第二回転体の各駆動トルク情報を取得し、取得した全駆動トルク情報を用いて、前記第一区間における前記第一回転体の回転速度と該第二回転体の駆動トルクとの関係を示す第一区間パラメータを算出するとともに、前記第二回転体を前記規定速度で回転させつつ、互いに異なる2点以上の回転速度のそれぞれで前記第一回転体を回転させた場合の、前記被搬送体が前記第一回転体から搬送力を受けずに前記第二回転体から搬送力を受けている第二区間における前記第二回転体の各駆動トルク情報を取得し、取得した全駆動トルク情報を用いて、前記第二区間における前記第一回転体の回転速度と該第二回転体の駆動トルクとの関係を示す第二区間パラメータを算出し、前記第一区間パラメータ及び前記第二区間パラメータに基づいて、前記第二回転体の駆動トルクが前記第一区間及び前記第二区間の間で一致することになる前記第一回転体の回転速度を調整目標値として特定する特定処理を実行することを特徴とするものである。
これによれば、第一回転体の調整目標値を特定する特定処理に要する時間の短縮、当該特定処理時に搬送しなければならない被搬送体の数の低減を図ることができる。
【0140】
[第12態様]
第12態様は、被搬送体に搬送力を付与する第一回転体に隣り合って該被搬送体に搬送力を付与する第二回転体の回転速度を基準にして、該第一回転体の回転速度を調整する制御を行う制御装置のコンピュータに実行されるプログラムであって、前記第二回転体を規定速度で回転させつつ、互いに異なる2点以上の回転速度のそれぞれで前記第一回転体を回転させた場合の、前記被搬送体が前記第一回転体及び前記第二回転体の両方から搬送力を受けている第一区間における前記第二回転体の各駆動トルク情報を取得し、取得した全駆動トルク情報を用いて、前記第一区間における前記第一回転体の回転速度と該第二回転体の駆動トルクとの関係を示す第一区間パラメータを算出するとともに、前記第二回転体を前記規定速度で回転させつつ、互いに異なる2点以上の回転速度のそれぞれで前記第一回転体を回転させた場合の、前記被搬送体が前記第一回転体から搬送力を受けずに前記第二回転体から搬送力を受けている第二区間における前記第二回転体の各駆動トルク情報を取得し、取得した全駆動トルク情報を用いて、前記第二区間における前記第一回転体の回転速度と該第二回転体の駆動トルクとの関係を示す第二区間パラメータを算出し、前記第一区間パラメータ及び前記第二区間パラメータに基づいて、前記第二回転体の駆動トルクが前記第一区間及び前記第二区間の間で一致することになる前記第一回転体の回転速度を調整目標値として特定する特定処理を、前記コンピュータに実行させることを特徴とするものである。
これによれば、第一回転体の調整目標値を特定する特定処理に要する時間の短縮、当該特定処理時に搬送しなければならない被搬送体の数の低減を図ることができる。
【符号の説明】
【0141】
10 :中間転写ベルト
11 :中間転写ローラ
12 :二次転写対向ローラ
13 :従動ローラ
14 :テンションローラ
15 :ベルトクリーニング装置
16 :スケールセンサ
17 :エンコーダパターン
19 :感光体ドラム
21 :中間転写モータ
22 :ローラエンコーダ
31 :二次転写ローラ
32 :二次転写モータ
33,43:ローラエンコーダ
34,44:モータエンコーダ
41,47-1,47-2,48-1,48-2:搬送ローラ
42 :搬送モータ
46 :搬送対向ローラ
50 :二次転写部
60 :搬送部
100 :搬送装置
200 :モータ制御部
210 :回転体制御処理部
230 :出力部
240 :選択部
245 :通紙検知部
250 :速度制御部
260 :速度調整部
261 :トルク推定部
263 :速度変更指示部
264 :速度算出部
265 :格納制御部
300 :画像形成装置
301 :画像読取部
302 :画像書込みユニット
303 :感光体ユニット
305 :現像ユニット
306 :中間転写部
308 :搬送部
309 :定着部
310 :メイン制御部
320 :操作部
330 :メモリ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0142】
【文献】特開2018-155895号公報
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