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特許7415274プレミックスモルタル包装物、及び、モルタル組成物の施工方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】プレミックスモルタル包装物、及び、モルタル組成物の施工方法
(51)【国際特許分類】
   B65D 65/46 20060101AFI20240110BHJP
   C04B 28/02 20060101ALI20240110BHJP
   C04B 24/26 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
B65D65/46
C04B28/02
C04B24/26 B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020052987
(22)【出願日】2020-03-24
(65)【公開番号】P2021151886
(43)【公開日】2021-09-30
【審査請求日】2022-08-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】小松 桃子
(72)【発明者】
【氏名】関 友則
【審査官】植前 津子
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-085565(JP,A)
【文献】特開2003-226361(JP,A)
【文献】特開平06-270957(JP,A)
【文献】特開2019-064709(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0293728(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 65/00-79/02
B65D 81/18-81/30
C04B 2/00-32/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレミックスモルタルが袋に収納されたプレミックスモルタル包装物であって、
前記袋が、水溶性ポリビニルアルコールフィルムから構成され、
前記水溶性ポリビニルアルコールフィルムにおけるポリビニルアルコールの含有量が、
前記プレミックスモルタル100質量部に対して、1.6質量部以上2.0質量部以下で
ある、プレミックスモルタル包装物。
【請求項2】
前記水溶性ポリビニルアルコールフィルムの水に対する溶解温度が、1℃以上45℃以
下である、請求項に記載のプレミックスモルタル包装物。
【請求項3】
前記水溶性ポリビニルアルコールフィルムの厚みが、40μm以上100μm以下であ
る、請求項1又は2に記載のプレミックスモルタル包装物。
【請求項4】
請求項1~のいずれか一つに記載のプレミックスモルタル包装物を用いてモルタル組
成物を施工する方法であって、
前記プレミックスモルタル包装物と、水と、を混練して得られたモルタル組成物を施工
する、モルタル組成物の施工方法。
【請求項5】
前記プレミックスモルタル包装物に対する前記水の質量比が、15以上100以下であ
る、請求項に記載のモルタル組成物の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレミックスモルタル包装物、及び、該プレミックスモルタル包装物を用いたモルタル組成物の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セメント、細骨材等の粉体材料を混合したプレミックスモルタルは、数十kg毎に袋詰めされ、プレミックスモルタル包装物として施工現場へ搬送される。プレミックスモルタルを収納する袋としては、例えば、クラフト紙とポリエチレン等の樹脂フィルムとを積層させた多層袋、ポリエチレン等の樹脂でラミネートした紙製の袋、麻袋等が知られている。このようなプレミックスモルタル包装物は施工現場で開封され、その後、プレミックスモルタルに所定量の水を加えて混練することにより、モルタル組成物を得ることができる。
【0003】
従来、プレミックスモルタルを混練する際に使用した水が、モルタル組成物の打設後にセメント、細骨材等の材料から分離して浮き上がる現象(ブリーディング)が問題となっている。ブリーディングが生じると、モルタル硬化物の沈下やひび割れが生じる虞がある。このような問題を解決するため、近年では、プレミックスモルタルにセルロース系増粘剤等の粉末状の増粘剤を混合することにより、モルタル組成物におけるブリーディングの発生を抑制している(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-204183号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
プレミックスモルタルに混合される増粘剤の量が増えると、モルタル組成物の粘性が増して、良好なコンシステンシーが得られないという問題がある。そのため、従来、プレミックスモルタルには少量の増粘剤が混合されている(例えば、プレミックスモルタル100質量部に対して0.04質量部以下)。しかしながら、プレミックスモルタルに混合される増粘剤の量が少ないと、増粘剤を均一に混合させることが難しくなり、その結果、モルタル組成物におけるブリーディングにばらつきが生じるという問題がある。
【0006】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、コンシステンシーが良好で、かつ、ブリーディングのばらつきが抑制されたモルタル組成物を得ることが可能なプレミックスモルタル包装物、及び、該プレミックスモルタル包装物を用いたモルタル組成物の施工方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るプレミックスモルタル包装物は、プレミックスモルタルが袋に収納され、前記袋が、水溶性ポリビニルアルコールフィルムから構成される。
【0008】
斯かる構成により、施工現場において開封することなく、プレミックスモルタル及び袋(水溶性ポリビニルアルコールフィルム)に所定量の水を加えて混練すると、袋(水溶性ポリビニルアルコールフィルム)が水に溶解し、ポリビニルアルコールがプレミックスモルタル中に分散する。これにより、コンシステンシーが良好なモルタル組成物を得ることができる。また、プレミックスモルタルを混練する際にポリビニルアルコールが分散されることにより、プレミックスモルタル中にポリビニルアルコールを均一に混合させることができ、その結果、ブリーディングのばらつきが抑制されたモルタル組成物を得ることができる。
【0009】
本発明に係るプレミックスモルタル包装物は、前記水溶性ポリビニルアルコールフィルムにおけるポリビニルアルコールの含有量が、前記プレミックスモルタル100質量部に対して、0.4質量部以上2.0質量部以下であることが好ましい。
【0010】
前記プレミックスモルタル包装物は、斯かる構成により、コンシステンシーがより良好なモルタル組成物を得ることができる。
【0011】
本発明に係るプレミックスモルタル包装物は、前記水溶性ポリビニルアルコールフィルムの水に対する溶解温度が、1℃以上45℃以下であることが好ましい。
【0012】
前記プレミックスモルタル包装物は、斯かる構成により、水溶性ポリビニルアルコールフィルムを充分に溶解させることができるため、ポリビニルアルコールがより均一に分散されたモルタル組成物を得ることができる。すなわち、ブリーディングのばらつきがより抑制されたモルタル組成物を得ることができる。
【0013】
本発明に係るプレミックスモルタル包装物は、前記水溶性ポリビニルアルコールフィルムの厚みが、40μm以上100μm以下であることが好ましい。
【0014】
前記プレミックスモルタル包装物は、斯かる構成により、水溶性ポリビニルアルコールフィルムを充分に溶解させることができるため、ポリビニルアルコールがより均一に分散されたモルタル組成物を得ることができる。すなわち、ブリーディングのばらつきがより抑制されたモルタル組成物を得ることができる。また、前記プレミックスモルタル包装物は、斯かる構成により、水溶性ポリビニルアルコールフィルムが破れにくく、かつ、容易に成型することができる。
【0015】
本発明に係るモルタル組成物の施工方法は、上述のプレミックスモルタル包装物を用いてモルタル組成物を施工する方法であって、前記プレミックスモルタル包装物と、水と、を混練して得られたモルタル組成物を施工する。
【0016】
前記モルタル組成物の施工方法は、プレミックスモルタル及び水溶性ポリビニルアルコールフィルムに所定量の水を加えて混練すると、水溶性ポリビニルアルコールフィルムが水に溶解し、ポリビニルアルコールがプレミックスモルタル中に分散する。これにより、コンシステンシーが良好なモルタル組成物を得ることができる。また、プレミックスモルタルを混練する際にポリビニルアルコールが分散されることにより、プレミックスモルタル中にポリビニルアルコールを均一に混合させることができ、その結果、ブリーディングのばらつきが抑制されたモルタル組成物を得ることができる。
【0017】
本発明に係るモルタル組成物の施工方法は、前記プレミックスモルタル包装物に対する前記水の質量比が、15以上100以下であることが好ましい。
【0018】
前記モルタル組成物の施工方法は、斯かる構成により、水溶性ポリビニルアルコールフィルムを充分に溶解させることができるため、モルタル組成物中のポリビニルアルコールをより均一に分散させることができる。すなわち、ブリーディングのばらつきがより抑制されたモルタル組成物を得ることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、コンシステンシーが良好で、かつ、ブリーディングのばらつきが抑制されたモルタル組成物を得ることが可能なプレミックスモルタル包装物、及び、該プレミックスモルタル包装物を用いたモルタル組成物の施工方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本実施形態に係る本発明に係るプレミックスモルタル包装物、及び、モルタル組成物の施工方法について説明する。
【0021】
[プレミックスモルタル包装物]
本実施形態に係るプレミックスモルタル包装物では、プレミックスモルタルが袋に収納され、該袋が、水溶性ポリビニルアルコールフィルムから構成されている。
【0022】
<プレミックスモルタル>
プレミックスモルタルは、少なくともセメント及び細骨材を含み、必要に応じてその他の添加剤を含んでいてもよい。
【0023】
(セメント)
セメントとしては、特に限定されるものではなく、例えば、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメント、白色ポルトランドセメント等のポルトランドセメント;高炉セメント、フライアッシュセメント、シリカセメント等の混合セメント;超速硬セメント、アルミナセメント等の公知のセメントを用いることができる。なお、セメントは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0024】
セメントの含有量は、プレミックスモルタルの容積1m当たり、300kg以上700kg以下であることが好ましく、400kg以上600kg以下であることがより好ましい。なお、セメントが2種以上含まれる場合、前記含有量は、セメントの合計含有量である。
【0025】
(細骨材)
細骨材とは、10mm網ふるいを全部通過し、5mm網ふるいを質量で85%以上通過する骨材のことをいう(JIS A 0203:2014)。細骨材としては、特に限定されるものではなく、例えば、JIS A 5308附属書Aレディミクストコンクリート用骨材で規定される川砂、陸砂、山砂、海砂、砕砂、石灰石砕砂等の天然物由来の砂、高炉スラグ、電気炉酸化スラグ、フェロニッケルスラグ等のスラグ由来の砂等が挙げられる。なお、細骨材は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0026】
細骨材の含有量は、プレミックスモルタルの容積1m当たり、400kg以上800kg以下であることが好ましく、500kg以上700kg以下であることがより好ましい。なお、細骨材が2種以上含まれる場合、前記含有量は、細骨材の合計含有量である。
【0027】
(その他の添加剤)
その他の添加剤としては、例えば、混和材、混和剤、着色剤等が挙げられる。
【0028】
混和材としては、特に限定されるものではなく、例えば、フライアッシュ、シリカフューム、セメントキルンダスト、高炉フューム、高炉水砕スラグ微粉末、高炉除冷スラグ微粉末、転炉スラグ微粉末、半水石膏、膨張材、石灰石微粉末、生石灰微粉末、ドロマイト微粉末等の無機質微粉末、ナトリウム型ベントナイト、カルシウム型ベントナイト、アタパルジャイト、セピオライト、活性白土、酸性白土、アロフェン、イモゴライト、シラス(火山灰)、シラスバルーン、カオリナイト、メタカオリン(焼成粘土)、合成ゼオライト、人造ゼオライト、人工ゼオライト、モルデナイト、クリノプチロライト等の無機物系フィラーが挙げられる。なお、混和材は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0029】
混和剤としては、特に限定されるものではなく、例えば、AE剤、AE減水剤、増粘剤、流動化剤、分離低減剤、凝結遅延剤(例えば、酒石酸等)、凝結促進剤(例えば、硫酸アルミニウム等)、急結剤、収縮低減剤、起泡剤、発泡剤、防水剤等が挙げられる。なお、混和剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0030】
プレミックスモルタルは、ミキサー等を用いて、セメントと、細骨材と、必要に応じてその他の添加剤とを攪拌混合することにより得られる。攪拌混合時間は、特に限定されるものではなく、例えば、2分以上10分以下とすればよい。
【0031】
<水溶性ポリビニルアルコールフィルム>
水溶性ポリビニルアルコールフィルムとは、ポリビニルアルコールを主成分とする水溶性のフィルムを意味する。水溶性ポリビニルアルコールフィルムにおけるポリビニルアルコールの含有量は、プレミックスモルタル100質量部に対して、0.4質量部以上2.0質量部以下であることが好ましく、1.6質量部以上2.0質量部以下であることがより好ましい。
【0032】
水溶性ポリビニルアルコールフィルムは、ポリビニルアルコール以外のその他の成分として、加工安定剤、耐候性安定剤、着色剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤等を含んでいてもよい。
【0033】
水溶性ポリビニルアルコールフィルムの厚みは、40μm以上100μm以下であることが好ましく、60μm以上75μm以下であることがより好ましい。水溶性ポリビニルアルコールフィルムの大きさは、特に限定されるものではなく、例えば、1500cm以上3000cm以下とすることができる。
【0034】
水溶性ポリビニルアルコールフィルムの水に対する溶解温度は、1℃以上45℃以下であることが好ましく、5℃以上35℃以下であることがより好ましい。
【0035】
水溶性ポリビニルアルコールフィルムの製造方法は、特に限定されるものではなく、例えば、ポリ酢酸ビニルをケン化して得られるポリビニルアルコールを用いて、押出法、キャスト成形法、Tダイ法、インフレーション法等により製造することができる。また、水溶性ポリビニルアルコールフィルムとして、市販品であるソルブロン(アイセロ社製)、クラリア(クラレ社製)等を使用することもできる。
【0036】
プレミックスモルタルが収納される袋は、1枚の水溶性ポリビニルアルコールフィルムから構成されるシートを袋状に形成したものであってもよいし、2枚以上の水溶性ポリビニルアルコールフィルムを重ね合わせて構成されるシートを袋状に形成したものであってもよい。2枚以上の水溶性ポリビニルアルコールフィルムを重ね合わせる場合、例えば、でんぷん糊等の水溶性接着剤を用いてフィルム同士を接着することができる。
【0037】
本実施形態に係るプレミックスモルタル包装物は、プレミックスモルタルが袋に収納され、前記袋が、水溶性ポリビニルアルコールフィルムから構成されることにより、施工現場において開封することなく、プレミックスモルタル及び袋(水溶性ポリビニルアルコールフィルム)に所定量の水を加えて混練すると、袋(水溶性ポリビニルアルコールフィルム)が水に溶解し、ポリビニルアルコールがプレミックスモルタル中に分散する。これにより、コンシステンシーが良好なモルタル組成物を得ることができる。また、プレミックスモルタルを混練する際にポリビニルアルコールが分散されることにより、プレミックスモルタル中にポリビニルアルコールを均一に混合させることができ、その結果、ブリーディングのばらつきが抑制されたモルタル組成物を得ることができる。
【0038】
本実施形態に係るプレミックスモルタル包装物は、前記水溶性ポリビニルアルコールフィルムにおけるポリビニルアルコールの含有量が、前記プレミックスモルタル100質量部に対して、0.4質量部以上2.0質量部以下であることにより、コンシステンシーがより良好なモルタル組成物を得ることができる。
【0039】
本実施形態に係るプレミックスモルタル包装物は、前記水溶性ポリビニルアルコールフィルムの水に対する溶解温度が1℃以上45℃以下であることにより、水溶性ポリビニルアルコールフィルムを充分に溶解させることができるため、ポリビニルアルコールがより均一に分散されたモルタル組成物を得ることができる。すなわち、ブリーディングのばらつきがより抑制されたモルタル組成物を得ることができる。
【0040】
本実施形態に係るプレミックスモルタル包装物は、前記水溶性ポリビニルアルコールフィルムの厚みが40μm以上100μm以下であることにより、水溶性ポリビニルアルコールフィルムを充分に溶解させることができるため、ポリビニルアルコールがより均一に分散されたモルタル組成物を得ることができる。すなわち、ブリーディングのばらつきがより抑制されたモルタル組成物を得ることができる。また、前記プレミックスモルタル包装物は、斯かる構成により、水溶性ポリビニルアルコールフィルムが破れにくく、かつ、容易に成型することができる。
【0041】
[モルタル組成物の施工方法]
本実施形態に係るモルタル組成物の施工方法は、本実施形態に係るプレミックスモルタル包装物を用いてモルタル組成物を施工する方法であって、上述のプレミックスモルタル包装物と、水と、を混練して得られたモルタル組成物を施工する。
【0042】
水としては、特に限定されるものではなく、例えば、水道水、工業用水、回収水、地下水、河川水、雨水等を使用することができる。なお、水は単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0043】
プレミックスモルタル包装物に対する水の質量比は、15以上100以下であることが好ましく、15以上50以下であることがより好ましい。
【0044】
混練時間は、特に限定されるものではなく、例えば、2分以上10分以下とすればよい。
【0045】
本実施形態に係るモルタル組成物の施工方法は、プレミックスモルタル及び水溶性ポリビニルアルコールフィルムに所定量の水を加えて混練すると、水溶性ポリビニルアルコールフィルムが水に溶解し、ポリビニルアルコールがプレミックスモルタル中に分散する。これにより、コンシステンシーが良好なモルタル組成物を得ることができる。また、プレミックスモルタルを混練する際にポリビニルアルコールが分散されることにより、プレミックスモルタル中にポリビニルアルコールを均一に混合させることができ、その結果、ブリーディングのばらつきが抑制されたモルタル組成物を得ることができる。
【0046】
本実施形態に係るモルタル組成物の施工方法は、プレミックスモルタル包装物に対する水の質量比が15以上100以下であることにより、水溶性ポリビニルアルコールフィルムを充分に溶解させることができるため、モルタル組成物中のポリビニルアルコールをより均一に分散させることができる。すなわち、ブリーディングのばらつきがより抑制されたモルタル組成物を得ることができる。
【実施例
【0047】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0048】
<プレミックスモルタル包装物の作製>
(実施例1)
実施例1では、水溶性ポリビニルアルコールフィルム(大きさ:1500cm)を1~5枚重ね合わせて構成されるシートを袋状に形成し、プレミックスモルタル(総量5kg)を収納したプレミックスモルタル包装物を作製した。プレミックスモルタルとしては、増粘剤抜き無収縮モルタル(住友大阪セメント社製)と6号珪砂(日瓢鉱業社製)とを1:1(質量比)の割合で混合したものを用いた。水溶性ポリビニルアルコールフィルムとしては、ソルブロンPT(厚み:75μm、アイセロ社製)を用いた。水溶性ポリビニルアルコールフィルムの枚数、及び、プレミックスモルタル100質量部に対するポリビニルアルコール(PVA)の含有量を表1に示す。
【0049】
(比較例1)
水溶性ポリビニルアルコールフィルムとしてソルブロンPT(厚み:75μm、アイセロ社製)を用いて、該フィルムを裁断した破片(1cm×1cm)をプレミックスモルタルに混合して袋に収納したこと以外は、実施例1と同様にプレミックスモルタル包装物を作製した。プレミックスモルタル100質量部に対するポリビニルアルコール(PVA)の含有量を表1に示す。
【0050】
プレミックスモルタルと水溶性ポリビニルアルコールフィルムの破片との混合は、OMKミキサー(混合容量:1m、三扇機工社製)を用いて行った。具体的には、稼働したミキサーの上部からプレミックスモルタル1t→水溶性ポリビニルアルコールフィルムの破片を連続的に投入し、3分間の攪拌混合を行った後、ミキサーの下部から混合物を排出した。なお、試験No.2-2~2-5では、ミキサーの下部から混合物を排出後、水溶性ポリビニルアルコールフィルムの破片によって配管が閉塞したため、その後の試験を行わなかった。
【0051】
(比較例2)
水溶性ポリビニルアルコールフィルムを磨砕した粉をプレミックスモルタルに混合して袋に収納したこと以外は、比較例1と同様にプレミックスモルタル包装物を作製した。プレミックスモルタル100質量部に対するポリビニルアルコール(PVA)の含有量を表1に示す。
【0052】
(比較例3)
水溶性ポリビニルアルコール繊維としてクラロンK-II(太さ:17dtex、クラレ社製)をプレミックスモルタルに混合して袋に収納したこと以外は、比較例1と同様にプレミックスモルタル包装物を作製した。プレミックスモルタル100質量部に対するポリビニルアルコール(PVA)の含有量を表1に示す。なお、試験No.4-2~4-5では、ミキサーの下部から混合物を排出後、水溶性ポリビニルアルコール繊維によって配管が閉塞したため、その後の試験を行わなかった。
【0053】
(比較例4)
増粘剤を含まないプレミックスモルタルを袋に収納したこと以外は、比較例1と同様にプレミックスモルタル包装物を作製した。
【0054】
<モルタル組成物の作製>
実施例1のプレミックスモルタル包装物は、袋を開封することなく、プレミックスモルタルが収納された袋ごと、水(2.5kg)が入った練り鉢に投入した。一方、比較例1~4のプレミックスモルタル包装物は、袋を開封して、袋の中身を練り鉢に投入した。その後、JIS A 1171(ポリマーセメントモルタルの試験方法)2016 に規定する5.4 a)機械練りによる方法で混錬することにより、モルタル組成物を得た。なお、機械練りには、ホバートミキサ(N-50型,ホバート・ジャパン社製)を用いた。
【0055】
<ブリーディング率の測定>
得られたモルタル組成物のブリーディング率は、JSCE-F522(プレパックドコンクリートの注入モルタルのブリーディング率および膨張率試験方法(ポリエチレン袋方法)(案))に規定する方法に基づき測定した。結果を表1に示す。
【0056】
また、実施例1の試験No.1-4,1-5、及び、比較例2の試験No.3-4,3-5については、各200個のプレミックスモルタル包装物について同様にブリーディング率を測定し、ブリーディング率を4段階に分けてばらつきを評価した。各段階のブリーディング率を示したプレミックスモルタル包装物の個数を表2に示す。
【0057】
<コンシステンシーの評価>
得られたモルタル組成物のコンシステンシーの評価は、NEXCO試験法312「無収縮モルタルの品質管理試験方法」に規定されるJロートによる試験方法を用いて流下時間を測定することにより行った。なお、流下時間が8±2秒以内であるモルタル組成物を合格と判定した。結果を表1に示す。
【0058】
【表1】
【0059】
【表2】
【0060】
表1及び表2の結果から分かるように、本発明の構成要件をすべて満たす実施例1のプレミックスモルタル包装物は、コンシステンシーが良好で、かつ、ブリーディングのばらつきが抑制されたモルタル組成物を得ることができる。
【0061】
一方で、水溶性ポリビニルアルコールフィルムを磨砕した粉をプレミックスモルタルに混合して袋に収納した比較例2のプレミックスモルタル包装物は、良好なコンシステンシーが得られるものの、ブリーディングのばらつきが大きいことが分かる。特に、ポリビニルアルコール(PVA)の含有量が少ないほど、ブリーディングのばらつきが大きいことが分かる。また、増粘剤を含まないプレミックスモルタルを袋に収納した比較例4のプレミックスモルタル包装物は、モルタル組成物のブリーディング率が高く、さらに、良好なコンシステンシーを得ることができなかった。