IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友金属鉱山株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】金属カドミウムの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C22B 17/00 20060101AFI20240110BHJP
   C22B 3/46 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
C22B17/00 101
C22B3/46
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020070336
(22)【出願日】2020-04-09
(65)【公開番号】P2021001393
(43)【公開日】2021-01-07
【審査請求日】2022-11-02
(31)【優先権主張番号】P 2019115333
(32)【優先日】2019-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123869
【弁理士】
【氏名又は名称】押田 良隆
(72)【発明者】
【氏名】大原 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】中西 次郎
(72)【発明者】
【氏名】仙波 祐輔
【審査官】中西 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開昭58-177423(JP,A)
【文献】特公昭48-043405(JP,B1)
【文献】特開2003-013275(JP,A)
【文献】特開昭57-123933(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22B 1/00-61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
始液のニッケルを含むカドミウム溶液から亜鉛セメンテーションを用いて空孔を有する金属カドミウムを析出させる、金属カドミウムの製造方法であって、
前記亜鉛セメンテーションの終了時のニッケルを含むカドミウム溶液(以下、亜鉛セメンテーション終点のカドミウム溶液)」のカドミウム濃度を、
出発物質となる前記始液のニッケルを含むカドミウム溶液のニッケル含有量とカドミウム含有量に応じて、
前記始液のニッケルを含むカドミウム溶液からのニッケルの析出が抑制される濃度範囲に調整することを特徴とする、
金属カドミウムの製造方法。
【請求項2】
前記出発物質となる始液のニッケルを含むカドミウム溶液が、カドミウム含有量が2.0質量%以上、ニッケル含有量が0.002質量%以下のニッケルを含むカドミウム溶液であり、
前記始液のニッケルを含むカドミウム溶液に対する前記亜鉛セメンテーションの終了時のニッケルを含むカドミウム溶液のカドミウム濃度を、1.0~10.0g/Lの範囲となるように調整することを特徴とする、
請求項1に記載の金属カドミウムの製造方法。
【請求項3】
前記出発物質となる始液のニッケルを含むカドミウム溶液が、カドミウム含有量が7.0質量%以上、ニッケル含有量が0.005質量%以下の始液のニッケルを含むカドミウム溶液であり、
前記始液のニッケルを含むカドミウム溶液に対する前記亜鉛セメンテーションの終了時のニッケルを含むカドミウム溶液のカドミウム濃度を、1.4~10.0g/Lの範囲となるように調整することを特徴とする、
請求項1に記載の金属カドミウムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カドミウム溶液から、金属カドミウムを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
亜鉛製錬所における亜鉛地金の原料として、粗酸化亜鉛等から不純物を分離回収して得た酸化亜鉛鉱が広く用いられている。この粗酸化亜鉛は、例えば、鉄鋼業における高炉や電気炉等の製鋼炉から発生する鉄鋼ダストから還元焙焼処理を経て得ることができ、資源リサイクルの促進の観点からは、鉄鋼ダストの亜鉛原料としての再利用は望ましいものである。
【0003】
このような鉄鋼ダスト由来の粗酸化亜鉛には、その主成分である酸化亜鉛以外に、塩素やフッ素等のハロゲン成分及びカドミウム等の不純物が高い割合で含有されている。これらの不純物のうち、特にカドミウムについては有害金属としての性質を持っており、酸化亜鉛の製造プラントにおいては、カドミウムを分離回収する処理が必須となっている。
一方、カドミウムはニッケルカドミウム電池の負極材として使用されるなど、電子エレクトロニクス材料として重要な有用金属のひとつとなっている。
【0004】
ところで、カドミウムを分離回収する方法としては、例えば、湿式処理で不純物を粗分離後、乾式処理によって精分離する方法が一般的に行われている。
しかしながら、乾式処理は化石燃料や、電力の使用において環境やエネルギー負荷が高いという問題があった。よって、不純物の分離を一層高度に行い、湿式工程に続く乾式工程での化石燃料や電力の使用を抑制する、湿式処理技術の開発が望まれている。
【0005】
不純物の分離を湿式処理において行う既存の技術としては、具体的に、特許文献1の技術を挙げることができる。特許文献1に開示される技術は、通常乾式処理で分離される不純物としてのニッケルを、予め析出母液となるカドミウム溶液からジメチルグリオキシム処理で分離を行う湿式処理技術であるが、このような予備処理を行うことは非効率であり、ジメチルグリオキシムは高価な薬剤であるため、コストが掛かるという課題があった。
【0006】
このような背景から、ニッケルを含有するカドミウム溶液から、ニッケルの析出を抑えつつ、効率的に金属カドミウムを析出する湿式処理技術の開発が期待されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特公昭48-43405号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、ニッケルを含有するカドミウム溶液から、ニッケルの析出が抑制された空孔を有する金属カドミウムを析出する、金属カドミウムの製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上述の目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、カドミウム溶液に対する亜鉛セメンテーションにおいて、亜鉛セメンテーション終了時のカドミウム濃度を調整することによって、上述の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
本発明の第1の発明は、始液のニッケルを含むカドミウム溶液から亜鉛セメンテーションを用いて空孔を有する金属カドミウムを析出させる、金属カドミウムの製造方法であって、「前記亜鉛セメンテーションの終了時のニッケルを含むカドミウム溶液(以下、亜鉛セメンテーション終点のカドミウム溶液)」のカドミウム濃度を、出発物質となる始液のニッケルを含むカドミウム溶液のニッケル含有量とカドミウム含有量に応じて、前記始液のニッケルを含むカドミウム溶液からのニッケルの析出が抑制される濃度範囲に調整することを特徴とする、金属カドミウムの製造方法である。
【0011】
本発明の第2の発明は、第1の発明において、前記出発物質となる始液のニッケルを含むカドミウム溶液が、カドミウム含有量が2.0質量%以上、ニッケル含有量が0.002質量%以下のニッケルを含むカドミウム溶液であり、前記始液のニッケルを含むカドミウム溶液に対する前記亜鉛セメンテーションの終了時のニッケルを含むカドミウム溶液のカドミウム濃度を、1.0~10.0g/Lの範囲となるように調整することを特徴とする、金属カドミウムの製造方法である。
【0012】
本発明の第3の発明は、第1の発明において、前記出発物質となる始液のニッケルを含むカドミウム溶液が、カドミウム含有量が7.0質量%以上、ニッケル含有量が0.005質量%以下の始液のニッケルを含むカドミウム溶液であり、前記始液のニッケルを含むカドミウム溶液に対する前記亜鉛セメンテーションの終了時のニッケルを含むカドミウム溶液のカドミウム濃度を、1.4~10.0g/Lの範囲となるように調整することを特徴とする、金属カドミウムの製造方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ニッケルを含有するカドミウム溶液から、その溶液からのニッケルの析出が抑制された空孔を有する金属カドミウムを製造することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の具体的な実施形態について詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲から逸脱しない内容において、種々の変更が可能である。
本発明の金属カドミウムの製造方法の一実施形態は、カドミウム溶液の亜鉛セメンテーションにおいて、その亜鉛セメンテーション終了時(以下、「亜鉛セメンテーション終点」または単に「終点」と略す場合もある。)のカドミウム溶液中のカドミウム濃度を、出発物質となるカドミウム溶液のニッケル含有量とカドミウム含有量に応じて、調整することによって、ニッケルの大半を、その溶液中に残留させ、その溶液からのニッケルの析出が抑制された空孔を有する金属カドミウム(以下、スポンジカドミウムとも称す。)を得るものである。
【0015】
ここで、前記カドミウム溶液に対する亜鉛セメンテーションは、主に下記(1)の化学反応式で表される反応に基づいて進行する。
【0016】
【化1】
【0017】
また、本実施形態では、始液となるカドミウム溶液のニッケル含有量とカドミウム含有量に応じて、前記亜鉛セメンテーションの終了時のカドミウム濃度を調整することによって、得られる空孔を有する金属カドミウム(スポンジカドミウム)のニッケル品位を抑制することが可能である。この場合、出発物質となるカドミウム溶液のニッケル含有量とカドミウム含有量は特に限定されない。
さらに、後述のニッケル含有量とカドミウム含有量を有するカドミウム溶液に対して亜鉛セメンテーションを行い、且つ、この亜鉛セメンテーションの終了時のカドミウム濃度を、後述の濃度範囲に調整することによって、ニッケル品位が電池材料として好適に利用できる品位に抑制された、金属カドミウムを効率的に得ることが可能である。
【0018】
ここで、カドミウム22g/L(2.2質量%)、ニッケル0.019g/L(0.0019質量%)を含有する硫酸イオンを含んだ溶液(以下、浸出液という)200mLずつを、500mlビーカーに分取し、その分取した浸出液を25℃の常温で撹拌しながら、その浸出液に純度99.4質量%、表面積40cmの亜鉛板を浸漬し、亜鉛セメンテーションを行うことにより得られた、空孔を有する金属カドミウムであるスポンジカドミウムのニッケル品位を分析した結果を表1に示す。
前記の亜鉛セメンテーションは、この亜鉛セメンテーションの間、適時間隔で浸出液を5mlずつ分取し、その浸出液中のカドミウム濃度を直ちに分析し、分析のカドミウム濃度が所定のカドミウム濃度に到達した時点を終点として、直ちに亜鉛板をビーカーから取り出して亜鉛セメンテーションを停止し、その時点で生成されているスポンジカドミウムを分析する手順を繰り返すことにより実施した。
【0019】
【表1】
【0020】
表1を参照すると、亜鉛セメンテーション終点のカドミウム濃度が7.2g/L(0.72質量%)を下回る付近から徐々に析出するニッケルの量が増加し始め、さらに1.0g/L(0.1質量%)を下回る付近から析出するニッケルの増加割合が増加する様子が窺える。
これは、亜鉛セメンテーション終点のカドミウム濃度を、浸出液からのニッケルの析出が抑制される濃度範囲に調整することによって、所望のニッケル品位を有するスポンジカドミウムを析出させることが可能であることを示すものである。
【0021】
例えば、ニッケル品位が150ppm以下に抑制されたスポンジカドミウムを析出させる場合には、亜鉛セメンテーション終点のカドミウム濃度を1.0g/L(0.1質量%)以上の濃度範囲に調整すればよく、ニッケル品位が200ppm以下に抑制されたスポンジカドミウムを析出させる場合には、亜鉛セメンテーション終点のカドミウム濃度を0.091g/L(0.0019質量%)以上の濃度範囲に調整すればよい。
【0022】
ところで、析出によって得られるスポンジカドミウムのニッケル品位は、亜鉛セメンテーション終点のカドミウム濃度だけでなく、出発物質となるカドミウム溶液のニッケル含有量や、カドミウム含有量にも影響される。
このため、あるニッケル含有量とカドミウム含有量とを有するカドミウム溶液を出発物質として、ニッケル品位が抑制されたスポンジカドミウムを得るためには、予め、その組成を有するカドミウム溶液に対応する、スポンジカドミウム中のニッケル品位と、亜鉛セメンテーション終点のカドミウム濃度との対応関係を、上記と同様な試験によって求めておくことが好ましい。そのうえで、求めたこの対応関係に基づいて、亜鉛セメンテーション終点のカドミウム濃度を、ニッケル品位を抑制する濃度範囲内になるように調整する。
【0023】
なお、電池材料として好適に利用することのできるスポンジカドミウムは、ニッケル品位が200ppm以下に抑制されたスポンジカドミウムであるが、こうしたスポンジカドミウムを得るための亜鉛セメンテーション終点のカドミウム濃度範囲も、上記と同様な試験によって求めることができる。
【0024】
例えば、ニッケル品位が200ppm以下に抑制されたスポンジカドミウムを得るための亜鉛セメンテーション終点のカドミウム濃度範囲は、ニッケル含有量が0.002質量%以下であり、カドミウム含有量が2.0質量%以上であるカドミウム溶液を出発物質とする場合には、1.0g/L(0.1質量%)以上の濃度範囲として求めることができ、そして、ニッケル含有量が0.005質量%以下であり、カドミウム含有量が7.0質量%以上であるカドミウム溶液を出発物質とする場合には、1.4g/L(0.14質量%)以上の濃度範囲として求めることができる。上記については、後述の実施例において説明する。
【0025】
この場合、さらに亜鉛セメンテーションの終了時のカドミウム濃度を10.0g/L(1.0質量%)以下の濃度範囲となるように調整することによって、液中に残存するカドミウムを抑制できて、効率的なスポンジカドミウムの析出が可能である。
【実施例
【0026】
以下、本発明の実施例を示してさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0027】
カドミウム20g/L(2.0質量%)、ニッケル0.02g/L(0.002質量%)、を含有する硫酸イオンを含んだ溶液(以下、浸出液という)200mLずつ、500mlビーカーに分取した。
【0028】
浸出液を25℃の常温で撹拌しながら純度99.4質量%、表面積40cmの亜鉛板を浸漬し、亜鉛セメンテーションを行った。
【0029】
上記亜鉛セメンテーションの間、適時浸出液を5mlずつ分取し、浸出液中のカドミウム濃度を直ちに分析し、カドミウム濃度が10.0g/L(1.0質量%)となった時点を終点として直ちに亜鉛板をビーカーから取り出して亜鉛セメンテーションを停止した。
その後、得られたセメンテーション済浸出液を濾過した後、得られた空孔を有する金属カドミウムであるスポンジカドミウムのニッケル品位を分析した。
【実施例2】
【0030】
終点を、1.0g/L(0.1質量%)とする以外は、実施例1と同じ条件で亜鉛セメンテーションを実施し、空孔を有する金属カドミウムであるスポンジカドミウムのニッケル品位を分析した。
【実施例3】
【0031】
カドミウム70g/L(7.0質量%)、ニッケル0.05g/L(0.005質量%)、を含有する硫酸イオンを含んだ溶液を使用し、終点を、9.7g/L(0.97質量%)とする以外は、実施例1と同じ条件で亜鉛セメンテーションを実施し、空孔を有する金属カドミウムであるスポンジカドミウムのニッケル品位を分析した。
【実施例4】
【0032】
カドミウム70g/L(7.0質量%)、ニッケル0.05g/L(0.005質量%)、を含有する硫酸イオンを含んだ溶液を使用し、終点を、1.4g/L(0.14質量%)とする以外は、実施例1と同じ条件で亜鉛セメンテーションを実施し、空孔を有する金属カドミウムであるスポンジカドミウムのニッケル品位を分析した。
【0033】
次に、上記実施例を基に、「亜鉛セメンテーション前の浸出液(始液)のカドミウム濃度」「亜鉛セメンテーション前の浸出液(始液)のニッケル濃度」と「亜鉛セメンテーション終点における浸出液のカドミウム濃度」と、「その終点で取り出したスポンジカドミウム中のニッケル品位」との関係を表2に示す。
【0034】
【表2】
【0035】
はじめに、実施例1から実施例2を参照すると、浸出液の始液のニッケル濃度が0.02g/L(0.002質量%)、浸出液の始液のカドミウム濃度が20g/L(2.0質量%)である場合に、浸出液の終点のカドミウム濃度を10.0g/L(1.0質量%)に調整することによって、ニッケル品位が119ppmであるスポンジカドミウムが得られ、また、浸出液の終点のカドミウム濃度を1.0g/L(0.1質量%)に調整することによって、ニッケル品位が151ppmであるスポンジカドミウムが得られることが窺える。
これは、浸出液の終点のカドミウム濃度を1.0g/L(0.1質量%)以上の濃度範囲に調整することによって、スポンジカドミウム中のニッケル品位が151ppm以下のスポンジカドミウムが得られることを意味する。そして、このスポンジカドミウムは、ニッケル品位が200ppm以下に抑制されたスポンジカドミウムでもある。
【0036】
ここで、浸出液の始液のニッケル濃度は低ければ低い程、スポンジカドミウムのニッケル品位を抑制するうえで有利であるが、浸出液の始液のニッケル濃度が高い場合であっても、カドミウム濃度の高い始液を採用することによって、スポンジカドミウムのニッケル品位を抑制することが可能である。これは、浸出液の始液のカドミウム濃度が高ければ、析出するカドミウム量が析出するニッケル量に対して、相対的に増加するためであり、例えば、実施例3はこのことを示すものとなっている。実施例3の浸出液の始液のニッケル濃度が実施例1よりも高い0.05g/L(0.005質量%)であるにも拘らず、始液のカドミウム濃度が70g/L(7.0質量%)と高いため、スポンジカドミウム中のニッケル品位が実施例1よりも低くなっている。
【0037】
ところで、前述の通り、実施例2を参照すると、浸出液の始液のニッケル濃度が0.02g/L(0.002質量%)、カドミウム濃度が20g/L(2.0質量%)である場合に、浸出液の終点のカドミウム濃度を1.0g/L(0.1質量%)に調整することによって、ニッケル品位が151ppmであるスポンジカドミウムを得ることができるが、この場合にも上記があてはまる。
つまり、浸出液の始液のニッケル濃度が0.02g/L(0.002質量%)以下である場合に、その始液が20g/L(2.0質量%)以上のカドミウムを含むものであれば、析出するカドミウム量が析出するニッケル量に対して相対的に増加するため、この始液に対して終点のカドミウム濃度が1.0g/L(0.1質量%)以上の濃度範囲となるように調整すれば、少なくとも、スポンジカドミウム中のニッケル品位が151ppmを超えることはない。すなわち、ニッケル品位が200ppm以下に抑制されたスポンジカドミウムを得ることが可能である。
【0038】
さらに、亜鉛セメンテーションの終了時のカドミウム濃度を10.0g/L(1.0質量%)以下の濃度範囲となるように調整することによって、液中に残存するカドミウムを抑制できて、効率的なスポンジカドミウムの析出が可能である。
【0039】
次に、実施例3から実施例4を参照すると、浸出液の始液のニッケル濃度が0.05g/L(0.005質量%)、浸出液の始液のカドミウム濃度が70g/L(7.0質量%)である場合に、浸出液の終点のカドミウム濃度を1.4g/L(0.14質量%)に調整することによって、ニッケル品位が170ppmであるスポンジカドミウムが得られ、また、浸出液の終点のカドミウム濃度を9.7g/L(0.97質量%)に調整することによって、ニッケル品位が73ppmであるスポンジカドミウムが得られることが窺える。
【0040】
これは、浸出液の終点のカドミウム濃度を1.4g/L以上(0.14質量%)の濃度範囲に調整することによって、スポンジカドミウム中のニッケル品位が170ppm以下のスポンジカドミウムが得られることを意味する。そして、このスポンジカドミウムは、ニッケル品位が200ppm以下に抑制されたスポンジカドミウムでもある。
【0041】
したがって、浸出液の始液のニッケル濃度が0.05g/L(0.005質量%)以下である場合に、その始液が70g/L(7.0質量%)以上のカドミウムを含むものであれば、浸出液の終点のカドミウム濃度を1.4g/L(0.14質量%)以上の濃度範囲に調整することによって、少なくとも、スポンジカドミウム中のニッケル品位が170ppmを超えることはなく、ニッケル品位が200ppm以下に抑制されたスポンジカドミウムを得ることが可能である。
【0042】
さらに、この場合もまた、亜鉛セメンテーションの終了時のカドミウム濃度を10.0g/L(1.0質量%)以下の濃度範囲となるように調整することによって、液中に残存するカドミウムを抑制できて、効率的なスポンジカドミウムの析出が可能である。