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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】ガラス板の曲げ成形装置
(51)【国際特許分類】
   C03B 23/03 20060101AFI20240110BHJP
【FI】
C03B23/03
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020558391
(86)(22)【出願日】2019-11-18
(86)【国際出願番号】 JP2019045129
(87)【国際公開番号】W WO2020105597
(87)【国際公開日】2020-05-28
【審査請求日】2022-08-04
(31)【優先権主張番号】P 2018216519
(32)【優先日】2018-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(72)【発明者】
【氏名】太田 進哉
(72)【発明者】
【氏名】松元 遼太
【審査官】中村 浩
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-533592(JP,A)
【文献】特開2005-343720(JP,A)
【文献】国際公開第2017/079251(WO,A1)
【文献】国際公開第92/001638(WO,A1)
【文献】特開昭62-270429(JP,A)
【文献】特開2004-330289(JP,A)
【文献】特開平06-211532(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1343631(KR,B1)
【文献】米国特許第05833729(US,A)
【文献】実開平03-074629(JP,U)
【文献】実開昭54-012357(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 23/00-23/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス板の下方に位置し、前記ガラス板の縁部を支持する下方成形リング型と、
前記下方成形リング型を支持する複数の支持部材と、
前記ガラス板の上方に位置し、前記下方成形リング型に支持される前記ガラス板に押し付けられる、下方に向けて凸の成形面を有する上方成形型と、
前記下方成形リング型を加熱する下方ヒーターと、
前記下方成形リング型に取り付けられ、前記上方成形型と前記下方成形リング型との間隔を制御するスペーサと、
を備え
前記下方成形リング型は平面視で3箇所以上の隅部を有する多角形形状であり、前記複数の支持部材は、前記下方成形リング型の前記隅部に配置されており、
前記隅部に配置される前記複数の支持部材は、一端が前記下方成形リング型に接続されており、他端が前記複数の支持部材を支持する台座に接続されており、前記複数の支持部材の前記台座から前記下方成形リング型までの高さは固定であり、
前記複数の支持部材と前記台座とが接続されている部位には、前記複数の支持部材が平面視で面内方向に移動可能なスライダー機構を備える、ガラス板の曲げ成形装置。
【請求項2】
前記台座の下方にはプレス装置が配置されており、前記台座と前記プレス装置の間には、前記下方成形リング型を上方に付勢する弾性部材を備える、請求項1に記載のガラス板の曲げ成形装置。
【請求項3】
前記ガラス板の板厚が、前記スペーサの厚みの70%以上130%以下である、請求項1または2に記載のガラス板の曲げ成形装置。
【請求項4】
前記ガラス板の端部と前記スペーサとの距離は、3mm以上30mm以下である、請求項1からのいずれか一項に記載のガラス板の曲げ成形装置。
【請求項5】
前記下方成形リング型は、前記複数の支持部材間に前記下方成形リング型の変形方向を規制するガイド機構を備える、請求項1からのいずれか一項に記載のガラス板の曲げ成形装置。
【請求項6】
前記上方成形型は、前記上方成形型を加熱する上方ヒーターを備える、請求項1からのいずれか一項に記載のガラス板の曲げ成形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス板の曲げ成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の建築物、及び自動車用の窓ガラスは、デザイン上、又は機能上の要請により、様々な形状、及び曲率を有することを求められている。この要請に対応するため、ガラス板が曲げ成形装置により曲げ成形されている。ガラス板の曲げ成形装置として、上方成形型と下方成形リング型とでガラス板をプレスする装置が知られている。
【0003】
特許文献1のガラス板の曲げ成形装置は、上方成形型と、フレキシブルな下方成形リング型と、下方成形リング型を変形可能面に沿って支持するための変形可能な複数の支持体とを、備える。
【0004】
特許文献2のガラス板の曲げ成形装置は、上方成形型と、可動する下方成形リング型と、下方成形リング型を加熱する加熱導体を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平7-187692号公報
【文献】特開平6-009237号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1のガラス板の曲げ成形装置では、フレキシブルな下方成形リング型を変形可能な複数の支持体で支持するため、下方成形リング型が意図しない変形を生じる懸念がある。
【0007】
特許文献2のガラス板の曲げ成形装置では、下方成形リング型が加熱導体により加熱されるため、下方成形リング型が熱膨張に起因して意図しない変形を生じる懸念がある。
【0008】
下方成形リング型が変形すると、上方成形型と下方成形リング型との間隔が一定ではなくなる。間隔が一定でない場合、ガラス板が所望の形状に曲げ成形されず、またガラス板に加えられる押圧力が、ガラス板の面内で、ばらついてしまう。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、上方成形型と下方成形リング型との間隔のばらつきを抑制することができるガラス板の曲げ成形装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
実施態様のガラス板の曲げ成形装置は、ガラス板の下方に位置し、前記ガラス板の縁部を支持する下方成形リング型と、前記下方成形リング型を支持する複数の支持部材と、前記ガラス板の上方に位置し、前記下方成形リング型に支持される前記ガラス板に押し付けられる、下方に向けて凸の成形面を有する上方成形型と、前記下方成形リング型を加熱する下方ヒーターと、前記下方成形リング型に取り付けられ、前記上方成形型と前記下方成形リング型との間隔を制御するスペーサと、を備え、前記下方成形リング型は平面視で3箇所以上の隅部を有する多角形形状であり、前記複数の支持部材は、前記下方成形リング型の前記隅部に配置されており、前記隅部に配置される前記複数の支持部材は、一端が前記下方成形リング型に接続されており、他端が前記複数の支持部材を支持する台座に接続されており、前記複数の支持部材の前記台座から前記下方成形リング型までの高さは固定であり、前記複数の支持部材と前記台座とが接続されている部位には、前記複数の支持部材が平面視で面内方向に移動可能なスライダー機構を備える
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、上方成形型と下方成形リング型との間隔のばらつきを抑制でき、ガラス板を精度よく曲げ成形できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の実施形態の一つに係るガラス板の曲げ成形装置の概略斜視図である。
図2図2は、ガラス板の曲げ成形装置の下方成形リング型の組立て部分拡大斜視図である。
図3図3は、ガラス板の曲げ成形装置の動作を示す説明図である。
図4図4は、ガラス板の曲げ成形装置の動作を示す説明図である。
図5図5は、ガラス板の曲げ成形装置の動作を示す説明図である。
図6図6は、ガラス板の曲げ成形装置の概略正面図である。
図7図7は、ガラス板の曲げ成形装置の概略正面図である。
図8図8は、ガラス板の曲げ成形装置のガイド機構の拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面にしたがって本発明の実施形態の一つについて説明する。本発明は以下の実施形態により説明される。但し、本発明の範囲を逸脱すること無く、多くの手法により変更を行うことができ、実施形態以外の他の実施形態を利用することができる。したがって、本発明の範囲内における全ての変更が特許請求の範囲に含まれる。以下、図面を参照して発明を実施するための形態を説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。本明細書中で、数値範囲を“乃至”を用いて表す場合は、“乃至”で示される上限、下限の数値も数値範囲に含むものとする。本明細書では、「上」、「下」とは、重力方向に対して用いられる。ある基準に対して重力方向を「下」、反重力方向を「上」と定義される。
【0014】
以下、図面を参照して、ガラス板の曲げ成形装置の好ましい実施形態について説明する。
【0015】
<ガラス板の曲げ成形装置>
図1は実施形態のガラス板の曲げ成形装置の構成を説明するための概略斜視図である。図1に示されるように、ガラス板の曲げ成形装置1は、下方成形リング型10と、上方成形型30と、を備える。下方成形リング型10は、ガラス板Gの縁部を支持する。上方成形型30は、ガラス板Gの略全面に押し付けられる、下方に向けて凸の成形面32を備える。成形面32の形状は、ガラス板Gを要求される形状に曲げ形成できる限り、限定されない。
【0016】
上方成形型30の成形面32は、下方成形リング型10に向けて湾曲した曲面形状を有している。平板状のガラス板Gは、成形面32の曲面形状に沿った所望の形状に曲げ成形される。上方成形型30は上方ヒーター35を備える。上方ヒーター35は、成形面32を、例えば、350℃乃至550℃の温度範囲に加熱できる。
【0017】
上方成形型30は、例えば、中空構造で構成される。上方成形型30は、中空構造と連通するダクト34を備える。ダクト34は不図示の吸引ファンに連結される。成形面32には、中空構造に連通する複数の小孔(不図示)が形成されている。吸引ファンの吸引力により、成形面32は、ガラス板Gを吸着でき、その状態を保持できる。
【0018】
下方成形リング型10は、ガラス板Gの縁部を下側から支持する。図1に示されるように、下方成形リング型10は、ガラス板Gの輪郭に沿った形状された環状の部材である。下方成形リング型10は、ガラス板Gの縁部を除き、ガラス板Gを支持していない。下方成形リング型10は、下方ヒーター13を備える。下方ヒーター13は、下方成形リング型10のガラス板の支持面を、例えば、350℃乃至600℃の温度範囲に加熱できる。実施形態の下方成形リング型10は4つの辺で構成されている。下方成形リング型10を構成する辺同士が接続する箇所では隅部が構成される。但し、下方成形リング型10の辺及び隅部の数は特に限定されず、下方成形リング型10はガラス板Gの形状に応じて、平面視で3箇所以上の隅部を有する多角形形状であることが好ましい。
なお、図面の簡明化のため、図6では、上方ヒータ35及び下方ヒータ13の図示を省略している。
【0019】
上方成形型30と下方成形リング型10とは対向配置される。上方成形型30の形状及び下方成形リング型10の形状はそれぞれ、互いに合致した形状を有している。上方成形型30と下方成形リング型10の形状は、ガラス板Gの板厚、及び所望の湾曲形状から要求されたものに合致するように形成されている。下方成形リング型10によりガラス板Gを支持した状態で、下方成形リング型10と上方成形型30とを相対的に近づく方向に移動することにより、ガラス板Gがプレス成形される。ガラス板Gをプレスにより曲げ成形する際、ガラス板Gの板厚を考慮して、下方成形リング型10と上方成形型30との間隔が決定される。
【0020】
実施形態では、下方成形リング型10は下方ヒーター13で加熱される。加熱された下方成形リング型10は、ガラス板Gの縁部を下方成形リング型10により支持する際、ガラス板Gの縁部の温度低下を抑制する。これは、ガラス板Gの縁部に発生する内部応力を小さく、例えば、10MPa以下、好ましくは7MPa以下にすることを可能にする。
【0021】
図1に示されるように、ガラス板の曲げ成形装置1は、下方成形リング型10を支持する複数の支持部材12を備える、実施形態では、支持部材12は、下方成形リング型10の隅部に配置されている。ガラス板Gをプレスする際に、上方成形型30から押圧力を分散して支持することができれば、支持部材12の配置位置は、特に限定されない。支持部材12は、隅部にのみ配置されてもよいが、隅部と隅部との間にも支持部材を配置してもよい。ここで、隅部は、隅部近傍を含むことができる。
【0022】
隅部に配置される複数の支持部材12は、一端が下方成形リング型10に接続されており、他端が複数の支持部材12を支持する台座20に接続されている。隅部に配置される複数の支持部材12の台座20から下方成形リング型10までの高さは固定である。ここで、隅部に配置される複数の支持部材12の高さが固定とは、上方成形型30にガラス板Gをプレスする際に支持部材の高さが変化しないことをいう。固定高さの支持部材12は下方成形リング型10が大きく変形することを防止する。隅部の高さレベルを合わせるため、固定高さの支持部材12は、高さ調整を行うことができる。高さ調整は、ネジを調整すること、または支持部材12の下にシムを挿入することの少なくとも一方により達成できる。
【0023】
一方、隅部と隅部との間に配置される支持部材は、高さが可変式の支持部材であってもよい。すなわち、隅部に配置される複数の支持部材12は、高さが固定式であり、隅部と隅部の間に配置される支持部材は、高さが可変式であってもよい。例えば、高さが可変式の支持部材は、バネ等の弾性部材を備えるバネ式の構造にすることができる。高さが可変式の支持部材は、バネ等の弾性部材を備えるため、上方成形型30にガラス板Gをプレスする際に、隅部と隅部の間に配置される高さが可変式の支持部材の高さが、下方成形リング型10の変形に合わせて変化することができる。
【0024】
隅部に配置される複数の支持部材12が高さ固定式であり、隅部と隅部の間に配置される支持部材が高さ可変式であると、下方成形リング型10において隅部の高さは変化せず、隅部と隅部の間の高さは下方成形リング型10の変形に合わせて変化することができるため、ガラス板Gをプレスする際に、下方成形リング型10が上方成形型30から押圧力を分散して支持することができる。
【0025】
ガラス板の曲げ成形装置1は、支持部材12を支持するリング状の台座20を備える。台座20の下方には弾性部材24(図6,7参照)が配置される。
【0026】
実施形態のガラス板の曲げ成形装置1では、複数のスペーサ14が下方成形リング型10の外周側に交換可能に取り付けられる。
【0027】
ガラス板の曲げ成形装置1は、下方成形リング型10は変形方向を規制する複数のガイド機構40を備える。ガイド機構40は、複数の支持部材12の間であって、下方成形リング型10を構成する各辺の中央の位置に配置されることが好ましい。対向する各辺に配置されるガイド機構40同志を結ぶ仮想線は、一点で交わる。2本の仮想線の交点は、下方成形リング型10の重心位置になる。
【0028】
図2は、スペーサ14の下方成形リング型10への組立て部分拡大斜視図である。図2に示されるように、スペーサ14は、円板状のヘッド14Aと、ヘッド14Aに直交しヘッド14Aの中心から延びる円柱状の軸部14Bとを備える。貫通孔18の形成されたホルダー16が下方成形リング型10の外周側に設けられている。ホルダー16と下方成形リング型10とは一体的に形成することができる。また、ホルダー16と下方成形リング型10とを別体として準備し、ホルダー16と下方成形リング型10とを溶接により固定することもできる。
【0029】
スペーサ14の軸部14Bが貫通孔18に上から挿入される。スペーサ14のヘッド14Aがホルダー16に接触し、スペーサ14がホルダー16に取り付けられる。
【0030】
ホルダー16の上面と下方成形リング型10の上面とは、ほぼ同一面を構成する。その結果、スペーサ14のヘッド14Aが、下方成形リング型10の上面より上側に突出する。
【0031】
スペーサ14が、ホルダー16に強固に固定(例えば、溶接)されていない場合、スペーサ14は下方成形リング型10から容易に取り外すことができる。
【0032】
例えば、図2に示されるように、スペーサ14の軸部14Bは、ホルダー16の貫通孔18から下側に突出する。スペーサ14の軸部14Bに、下から上に力を加えることで、スペーサ14は容易にホルダー16から取り外すことができる。なお、スペーサ14の下方成形リング型10への取り付けは上記に限定されない。スペーサ14とホルダー16とを溶接により取り付けることもできる。
【0033】
図3乃至図5は、ガラス板の曲げ成形装置の動作を示す説明図である。上述したように、ガラス板Gを曲げ成形する場合、下方成形リング型10と上方成形型30との間隔が、プレス成形の際に、ばらつかないことが重要になる。
【0034】
図3に示されるように、下方成形リング型10と上方成形型30とは、ガラス板Gを受け入れることができる距離だけ離間して配置される。ガラス板Gは不図示の搬送システムにより、下方成形リング型10と上方成形型30との間に搬送される。ガラス板の曲げ成形装置1に搬送される前に、ガラス板Gは、曲げ成形に適した温度まで、加熱炉(不図示)で加熱される。ガラス板Gは、加熱炉で620℃乃至690℃の範囲で加熱される。搬送されたガラス板Gの縁部が、下方成形リング型10の上面により、下方から支持される。下方成形リング型10と上方成形型30とは、相対的に近づく方向に移動される。実施形態では、下方成形リング型10が上方成形型30に向かって移動する。なお、ガラス板の曲げ成形装置1は、加熱炉外に設置でき、また加熱炉内に設置できる。
【0035】
図4に示されるように、下方成形リング型10が上方成形型30に向かって移動することにより、上方成形型30の成形面32がスペーサ14のヘッド14Aに接触する。スペーサ14が下方成形リング型10及び上方成形型30の移動を規制する。移動を規制することにより。下方成形リング型10と上方成形型30との間隔tがスペーサ14により制御され、間隔tのばらつきが抑制される。スペーサ14が間隔tを一定にするので、下方成形リング型10の形状は、上方成形型30に成形面32に倣った形状になる。実施形態のガラス板の曲げ成形装置1は、ガラス板Gを高い精度で曲げ成形できる。上方成形型30と下方成形リング10の間隔tにより、ガラス板Gを曲げる力を発生させている。したがって、間隔tを変化させることで、ガラス板Gを曲げる力を制御することが可能になる。
【0036】
ガラス板Gの端部とスペーサ14との距離Lは、3mm以上30mm以下であることが好ましい。距離Lを3mm以上にすることは、曲げ成形中にガラス板Gとスペーサ14とが接触するのを回避でき、ガラス板Gの損傷の発生を抑制する。距離Lを30mm以下にすることは、上方成形型30が下方成形リング型10と比較して大きくなりすぎるのを抑制する。ガラス板の曲げ成形装置1の小型化が可能になる。
【0037】
下方成形リング型10と上方成形型30との間隔tは、スペーサ14のヘッド14Aの厚みによって制御される。例えば、厚みの異なるヘッド14Aを有する複数種のスペーサ14を準備し、ガラス板Gの板厚に応じて、スペーサ14を交換することが好ましい。ガラス板の曲げ成形装置1は、板厚の異なるガラス板Gの曲げ成形にも対応可能となる。
【0038】
ガラス板Gの板厚とスペーサ14のヘッド14Aの厚みとの関係は、ガラス板Gの板厚がスペーサ14の厚みの70%以上130%以下であることが好ましい。これは、一つのスペーサ14が複数の板厚のガラス板Gに対応できることを意味する。複数の板厚のガラス板Gに対応することは、スペーサ14の交換頻度を低減できる。なお、ガラス板Gの板厚は85%以上115%以下であることがさらに好ましい。
【0039】
図4に示されるように、スペーサ14は、下方成形リング型10とホルダー16との境界BLを跨ぐ位置に配置される。上方成形型30からの押圧力がスペーサ14を介して下方成形リング型10とホルダー16とにより支持できる。ホルダー16のみが上方成形型30からの圧力を受けることを回避でき、ホルダー16が破損することを防止できる。
【0040】
図5に示されるように、ガラス板Gの曲げ成形を終えると、下方成形リング型10は上方成形型30から遠ざかる方向に移動する。曲げ成形されたガラス板Gは、上方成形型30に真空吸着されたままである。次いで、吸着が解除され、ガラス板Gは、不図示の搬送システムにより、下流の工程に搬送される。
【0041】
スペーサ14の形状は、下方成形リング型10と上方成形型30との間隔tを制御できれば、特に限定されない。例えば、ヘッド14Aの形状は、上から見て矩形であってもよい。スペーサ14は、下方成形リング型10に取り付けることができれば、軸部14Bを備える必要はない。
【0042】
複数のスペーサ14は、例えば、100mm乃至300mmの範囲で等ピッチで、下方成形リング型10の外周側に取り付けることができる。また、50mm乃至600mmの範囲で、不等ピッチで配置することもできる。
【0043】
曲げ成形されるガラス板Gは、例えばフロート法、フュージョン法により平板形状に成形されたガラス板である。ガラス板は、無機ガラスであってもよい。ガラス板は、ソーダライムガラスでもよいし、アルミノシリケートガラスであってもよいし、無アルカリガラスであってもよい。ガラス板がソーダライムガラスである場合、グリーンガラスであってもよいし、クリアガラスであってもよい。
【0044】
ガラス板Gの板厚は、好ましくは、1mm乃至5mmである。但し、ガラス板Gの板厚は特に限定されない。また、ガラス板の大きさも特に限定されない。
【0045】
ガラス板の曲げ成形装置1は、1枚のガラス板Gだけでなく、積層された2枚以上のガラス板Gを同時に曲げ成形することができる。
【0046】
次に、図6及び図7は、ガラス板の曲げ成形装置1の概略正面図である。図6及び図7では、支持部材12は内部構造を示す。また、動作の理解を容易にするためガラス板Gは図示していない。図6に示されるように、複数の支持部材12が下方成形リング型10を下方から支持する。支持部材12は、下方成形リング型10と連結される軸部12Aと、軸部12Aの下方に取り付けられる円盤状のスライダー12Bと、スライダー12Bを上下方向から挟み込む2枚のスライダープレート12Cと、スライダープレート12Cを囲うスライダーケース12Dと、を備える。スライダー12Bは、2枚のスライダープレート12Cとスライダーケース12Dとにより形成される空間内を移動でき、スライダー12Bは、下方のスライダープレート12Cの水平面内で移動できる。スライダー12Bに連結される軸部12Aは、スライダー12Bの移動に伴い移動する。実施形態では、スライダー機構は、スライダー12Bと、2枚のスライダープレート12Cと、スライダーケース12Dとにより構成される。但し、スライダー機構は、この構造に限定されない。
【0047】
スライダー機構を備える支持部材12の動作について説明する。上述したように、下方成形リング型10は下方ヒーターにより加熱される。加熱による熱膨張に起因して下方成形リング型10の各辺は、矢印Aに示す長手方向に沿って延びる。スライダー機構を備える支持部材12は、下方成形リング型10の熱膨張に追従して矢印Bに示す方向に移動する。スライダー機構を備える支持部材12が、下方成形リング型10の変形を制御し、意図しない変形を抑制する。
【0048】
図6に示されるように、ガラス板の曲げ成形装置1は、台座20の下方にプレス装置22を備える。プレス装置22は台座20を上下方向に移動させる。実施形態のガラス板の曲げ成形装置1は、台座20の下方で、プレス装置22の上方に、すなわち、台座20とプレス装置22との間に弾性部材24を備える。弾性部材24は台座20を上方に付勢する。
【0049】
次に、図7に示されるように、プレス装置22が台座20を上方成形型30に向けて移動させる。これにより、下方成形リング型10が上方成形型30に近づく。上方成形型30の成形面32とスペーサ14とが接する。プレス装置22は、弾性部材24を縮めて弾性部材24が予め定めた高さhになるまで、台座20を上方成形型30に向けて移動させる。
【0050】
ガラス板の曲げ成形装置1では、弾性部材24の高さhが不図示の測定手段により検出される。高さhに達すると、下方成形リング型10の上方向の移動が停止する。弾性部材24は、縮むことにより、ガラスの曲げ成形時に与える力を一定量に保つと同時に、下成形リング型10とプレス装置22の破損を防止できる。
【0051】
図8は、ガイド機構40の拡大図である。図8に示されるように、ガイド機構40は、下方成形リング型10の辺の中央から下方に延びる突出部42と、台座20に設けられたU字型の受け部44と、から構成される。突出部42は、受け部44の溝44Aの開口から受け部44に挿入される。
【0052】
ガイド機構40の作用について説明する。U字型の受け部44の溝44Aは、矢印Cで示す下方成形リング型10の辺の方向と直交する方向に形成されている。受け部44は、突出部42が矢印Dに示す溝44Aに沿う方向の移動を許容する。一方、受け部44は、突出部42が、矢印Cに示す下方成形リング型10の辺の延びる方向の移動を規制する。ガイド機構40は、熱膨張により下方成形リング型10が変形した際に、下方成形リング型10が辺の延びる方向に沿う変形を規制し、辺に直交する方向の変形を許容する。熱膨張により下方成形リング型10に変形が生じても、ガイド機構40が下方成形リング型10の変形方向を規制する。ガイド機構40は、下方成形リング型10の重心位置が変化することを抑制する。
なお、2018年11月19日に出願された日本特許出願2018-216519号の明細書、特許請求の範囲、要約書および図面の全内容をここに引用し、本発明の明細書の開示として、取り入れるものである。
【符号の説明】
【0053】
1・・・曲げ成形装置、10・・・下方成形リング型、12・・・支持部材、12A・・・軸部、12B・・・スライダー、12C・・・スライダープレート、12D・・・スライダーケース、14・・・スペーサ、14A・・・ヘッド、14B・・・軸部、16・・・ホルダー、18・・・貫通孔、20・・・台座、22・・・プレス装置、24・・・弾性部材、30・・・上方成形型、32・・・成形面、34・・・ダクト、40・・・ガイド機構、42・・・突出部、44・・・受け部、44A・・・溝
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8