(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】計測装置、移動体および車両
(51)【国際特許分類】
G01B 11/245 20060101AFI20240110BHJP
【FI】
G01B11/245 H
(21)【出願番号】P 2019136369
(22)【出願日】2019-07-24
【審査請求日】2022-05-18
(31)【優先権主張番号】P 2018142992
(32)【優先日】2018-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】釣谷 翔
【審査官】國田 正久
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0204569(US,A1)
【文献】特開2014-086826(JP,A)
【文献】国際公開第2008/044589(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/056268(WO,A1)
【文献】特開2004-187220(JP,A)
【文献】特開2011-090367(JP,A)
【文献】特開2014-095627(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00 - 11/30
G01C 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体に取付可能な計測装置であって、
前記計測装置は、第1の撮像装置および第2の撮像装置を有し、
前記第1の撮像装置の撮像方向と前記第2の撮像装置の撮像方向とを同じ方向とし、且つ前記第1の撮像装置の撮像対象までの距離と前記第2の撮像装置の前記撮像対象までの距離とが等しくなるように、前記第1の撮像装置と前記第2の撮像装置を配置した場合における前記計測装置の幅方向の撮像範囲を確保するために、
前記第1の撮像装置の撮像方向は、前記移動体の幅方向外側に向かって
所定の角度を有しており、
前記第2の撮像装置は、前記第1の撮像装置よりも前記移動体の幅方向内側に配置され、且つ前記移動体の高さ方向において、前記第1の撮像装置は、前記第2の撮像装置よりも前記撮像対象に近
い位置に配置され、
前記第1の撮像装置と前記第2の撮像装置とは、撮像領域の一部が重なり、
前記移動体の高さ方向に対する前記第1の撮像装置の撮像方向の前記移動体の幅方向の角度をθ2Aとし、前記移動体の高さ方向に対する前記第2の撮像装置の撮像方向の前記移動体の幅方向の角度をθBとして、
θ2A>θB
を満足するように配置されている、
ことを特徴とする計測装置。
【請求項2】
前記第1の撮像装置は、前記第2の撮像装置の撮像領域外にある、
ことを特徴とする請求項1に記載の計測装置。
【請求項3】
前記第1の撮像装置および前記第2の撮像装置は、
|θ2A-θB|≦30°
を満足するように配置されている、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の計測装置。
【請求項4】
前記第2の撮像装置は、
θB=0°
を満足するように配置されている、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の計測装置。
【請求項5】
前記撮像装置の撮像方向は、前記移動体の鉛直方向に対して前記移動体の進行方向に角度を有する、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の計測装置。
【請求項6】
前記第1の撮像装置の有効ワーキングディスタンスは、
前記第1の撮像装置から近い側のワーキングディスタンスで形成される四角形を上面とし、
前記第1の撮像装置から遠い側のワーキングディスタンスで形成される四角形を底面とする四角錐台の領域を有し、
前記第1の撮像装置で撮像される画像は、
前記上面の頂点のうちの1つの頂点である第1頂点の近傍と、
前記底面の頂点のうち前記第1頂点と対角方向に位置する第2頂点の近傍と、を用いて形成する
ことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の計測装置。
【請求項7】
前記撮像装置は、少なくとも2つのレンズを有するステレオカメラである
ことを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の計測装置。
【請求項8】
前記ステレオカメラが有しているレンズは、広角レンズである
ことを特徴とする請求項7に記載の計測装置。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の計測装置を備える、
ことを特徴とする移動体。
【請求項10】
請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の計測装置を備える、
ことを特徴とする車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計測装置、移動体および車両に関する。
【背景技術】
【0002】
カメラなどの撮像装置を移動体(車両、ドローンなど)に取り付けて、外環境の状態(周りの車両、道路の状態、トンネルの状態など)を計測する移動計測装置が知られている。なお、外環境の状態を計測する撮像装置としては、広角のレンズを有するカメラ、複数のカメラ(ステレオカメラ)などが既に知られている。
【0003】
特許文献1には、車載パノラマカメラシステムが開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された構成では、移動体の近傍の被写体(道路等)を撮像する場合、撮像範囲が移動体と干渉することで撮像範囲が小さくなるという課題がある。
【0005】
よって、本発明は、高精度かつ広範囲を計測できる計測装置、移動体および車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施の形態の一観点によれば、移動体に取付可能な計測装置であって、前記計測装置は、第1の撮像装置および第2の撮像装置を有し、前記第1の撮像装置の撮像方向と前記第2の撮像装置の撮像方向とを同じ方向とし、且つ前記第1の撮像装置の撮像対象までの距離と前記第2の撮像装置の前記撮像対象までの距離とが等しくなるように、前記第1の撮像装置と前記第2の撮像装置を配置した場合における前記計測装置の幅方向の撮像範囲を確保するために、前記第1の撮像装置の撮像方向は、前記移動体の幅方向外側に向かって所定の角度を有しており、前記第2の撮像装置は、前記第1の撮像装置よりも前記移動体の幅方向内側に配置され、且つ前記移動体の高さ方向において、前記第1の撮像装置は、前記第2の撮像装置よりも前記撮像対象に近い位置に配置され、前記第1の撮像装置と前記第2の撮像装置とは、撮像領域の一部が重なり、前記移動体の高さ方向に対する前記第1の撮像装置の撮像方向の前記移動体の幅方向の角度をθ2Aとし、前記移動体の高さ方向に対する前記第2の撮像装置の撮像方向の前記移動体の幅方向の角度をθBとして、θ2A>θBを満足するように配置されている、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、高精度かつ広範囲を計測できる計測装置、移動体および車両を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態に係る計測装置を備える移動計測装置を説明する図であり、(a)は側面図であり、(b)は後方側から見た斜視図である。
【
図2】移動計測装置の計測状態を説明する図である。
【
図3】第1実施形態に係る計測装置を下方側から見た斜視図である。
【
図4】第1実施形態に係る計測装置の側面側から見た断面図である。
【
図5】第1実施形態に係る計測装置を後方側から見た断面図である。
【
図6】参考例に係る計測装置における後方模式図である。
【
図8】参考例に係る計測装置における後方模式図である。
【
図9】第1実施形態に係る計測装置の撮像範囲を示す後方模式図である。
【
図10】計測装置におけるカメラの配置を説明する後方模式図である。
【
図11】第1実施形態に係る計測装置の撮像範囲を示す斜視図である。
【
図12】計測装置におけるカメラの配置を説明する側方模式図である。
【
図13】第1実施形態に係る計測装置の有効ワーキングディスタンスを説明する図である。
【
図14】第2実施形態に係る計測装置を後方側から見た断面図である。
【
図15】第3実施形態に係る計測装置を後方側から見た断面図である。
【
図16】第4実施形態に係る計測装置を後方側から見た断面図である。
【
図17】第5実施形態に係る計測装置を後方側から見た断面図である。
【
図18】第6実施形態に係る計測装置を後方側から見た断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明を実施するための形態について、以下に説明する。尚、同じ部材等については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0010】
第1実施形態に係る計測装置100を備える移動計測装置800について、
図1および
図2を用いて説明する。
図1は、第1実施形態に係る計測装置100を備える移動計測装置800を説明する図であり、(a)は側面図であり、(b)は後方側から見た斜視図である。
図2は、移動計測装置800の計測状態を説明する図である。なお、
図1,2および以下の説明において、車両700の進行方向を前方向(前進方向)、その逆方向を後方向(後進方向)、重力方向を下方向、その逆方向を上方向、進行方向にみて水平右方向を右方向、その逆方向を左方向、と称するものとする。
【0011】
移動計測装置800は、車両(移動体)700と、車両700に取り付けられたマウント750と、マウント750を介して車両700に取り付けられた計測装置100と、を備えている。
【0012】
なお、
図1,2に示す移動計測装置800では、車両700の後方にマウント750が取り付けられ、
図2に示すように計測装置100が備えるステレオカメラ(撮像装置)130の光路の軌跡Sが略下向きとなるように取り付けられている。このような構成により、移動計測装置800は、前進方向Fに移動しながら計測装置100内のステレオカメラ130で路面900を撮像することにより、計測対象である路面900の凹凸や道路の状態(白線が消えていないか等)を計測することができるようになっている。より具体的には、道路の平坦性(進行方向の凹凸)、わだち掘れ量、ひび割れ率を計測することができる。その後、これら3つの路面性状値に基づいてMCI(Maintenance Control Index)を求めることができる。MCIは、計測後に計測データを外部機器であるPC、タブレット端末などに送信して求めてもよく、車両700にPCを備えつけて計測移動しながら求めてもよい。
【0013】
なお、車両700の後方に限らず、車両700の前方や側面(車両700のドアが備えてある面)にマウント750を取り付けてもよい。
【0014】
次に、第1実施形態に係る計測装置100について、
図3から
図5を用いてさらに説明する。
図3は、第1実施形態に係る計測装置100を下方側から見た斜視図である。
図4は、第1実施形態に係る計測装置100の側面側から見た断面図である。
図5は、第1実施形態に係る計測装置100を後方側から見た断面図である。
【0015】
計測装置100は、ベースフレーム110と、カメラマウント120と、ステレオカメラ130と、保護カバーユニット200と、を備えている。計測装置100は、複数のステレオカメラ130を備えることにより、広範囲の計測データを取得することが可能となる。なお、
図3に示す第1実施形態に係る計測装置100においては、3つのステレオカメラ130(130-1,130-2,130-3)を備えており、それぞれカメラマウント120(120-1,120-2,120-3)が設けられている。ベースフレーム110は、一端がマウント750(
図1参照)に固定され、他端にカメラマウント120が取り付けられている。カメラマウント120は、撮像装置であるステレオカメラ130を固定する。なお、カメラマウント120には、ステレオカメラ130の撮像角度を調整する角度調整機構を備えていてもよい。
【0016】
ステレオカメラ130は、2つのレンズ131を有するカメラであり、得られた画像データを処理することにより計測対象までの距離を計測することができる。なお、計測装置100が備える撮像装置は、ステレオカメラ130であるものとして説明するが、これに限定されるものではない。例えば、被写体の状態を確認したい場合には、撮像装置として単眼のレンズを有するカメラを備える構成であってもよい。また、計測装置100が備える撮像装置の数は、3つに限られるものではなく、2つであってもよく、4つ以上備えていてもよい。撮像装置を複数備える構成とすることにより、より広範囲の計測データを取得することができる。また、ステレオカメラ130のレンズ131を焦点距離が35mm以下の広角のレンズとすることにより、より広範囲の計測データを取得することができるようにしてもよい。
【0017】
保護カバーユニット200は、例えば樹脂プレートと樹脂プレートを支持するアルミフレームで構成されており、下面側に(即ち、撮像装置の撮像方向側に)開口部211(211a,211b,211c)を有する箱体を形成している。なお、ステレオカメラ130は、保護カバーユニット200の内部空間に配置されている。また、保護カバーユニット200は、右側面の下端側から側面開口部212aが形成され、左側面の下端側から側面開口部212bが形成されている。なお、開口部211と側面開口部212aが連通し、開口部211と側面開口部212bが連通するように形成されている。このように、保護カバーユニット200に形成される開口部は、右側面から下面を通り左側面にわたって開口する開口部211,212a,212bの全体として形成されている。フレーム216a,216bは、ステレオカメラ130の光路の軌跡(後述する
図9のS-1~S-3参照)と干渉しない位置に設けられている。なお、
図3の例では、下面側の開口部211は、フレーム216a,216bで区画され、3つの開口部211a,211b,211cが形成されているものとして図示しているが、開口部を区画するフレーム216a,216bはなくてもよい。
【0018】
なお、保護カバーユニット200は、開口部211,212a,212bを閉口する保護部材を備えていてもよい。保護部材により開口部211,212a,212bを閉口することにより、計測を行わない際に内部に配置されたステレオカメラ130を保護することができる。
【0019】
図4に示すように、ステレオカメラ130(130-1,130-2,130-3)の撮像方向は、車両700(
図1参照)の進行方向(前後方向)に対して所定の角度を有している。換言すれば、計測装置100を幅方向から見た際、一点鎖線で示すステレオカメラ130の撮像方向は、二点鎖線で示す鉛直方向(上下方向)に対して、車両700の進行方向後方に向かって所定の角度θ1で傾斜している。なお、車両700の前方に計測装置100を取り付けた場合、ステレオカメラ130の撮像方向は、鉛直方向(上下方向)に対して、車両700の進行方向前方に向かって所定の角度で傾斜していてもよい。
【0020】
また、
図5に示すように、複数設けられるステレオカメラ130のうち、幅方向外側のステレオカメラ130-1,130-3の撮像方向は、車両700の幅方向(左右方向)に対して所定の角度を有している。換言すれば、計測装置100を前後方向から見た際、一点鎖線で示すステレオカメラ130-1,130-3の撮像方向は、二点鎖線で示す鉛直方向(上下方向)に対して、車両700の幅方向外側に向かって所定の角度θ2,θ3で傾斜している。なお、ステレオカメラ130-1およびステレオカメラ130-3の所定の角度θ2,θ3は、等しくてもよく、異なっていてもよい。
【0021】
一方、ステレオカメラ130-2の撮像方向は、車両700の幅方向(左右方向)に対して所定の角度を有していない。換言すれば、計測装置100を前後方向から見た際、ステレオカメラ130-2の撮像方向は、鉛直方向(上下方向)と一致している。
【0022】
ここで、参考例に係る計測装置100Xと対比しつつ、第1実施形態に係る計測装置100について説明する。
図6は、参考例に係る計測装置100Xにおける後方模式図である。
図7は、参考例に係る計測装置100Xの上方模式図である。
図8は、参考例に係る計測装置100Xにおける後方模式図である。なお、
図6から
図8においては、計測装置100Xの構成を簡略して撮像装置であるカメラ130Xの位置のみを示している。
【0023】
図6に示すように、複数のカメラ130Xで広範囲の被写体(路面900)を撮像する場合、カメラ130Xの撮像範囲と隣接するカメラ130Xの撮像範囲とが重なる重なり領域Dを有した状態となっている。この構成において、各カメラ130X間の幅方向の間隔を広げることで、計測装置100X全体の幅方向の撮像範囲Aを確保する場合、計測装置100Xが幅方向に大型化するという課題がある。
【0024】
図7(a)に示すように、複数のカメラ130Xで広範囲の被写体(路面900)を撮像する場合、撮像範囲Aの一部が車両700と被ってしまい干渉範囲Nとなる。計測装置100Xは、干渉範囲Nの路面を撮像することができないため、被っている領域分、被写体(路面)の撮像範囲Aが小さくなるという課題がある。一方、
図7(b)に示すように、撮像範囲Aと車両700の干渉を避けるように、複数のカメラ130Xを後方に配置すると、計測装置100Xが前後方向に大型化するという課題がある。
【0025】
ここで、カメラ130,130Xの先端から被写体までの距離であるワーキングディスタンスのうち、所定の計測精度が得られる最も短いワーキングディスタンスから所定の計測精度が得られる最も長いワーキングディスタンスまでの間のワーキングディスタンスを、有効ワーキングディスタンスWDと呼ぶ。有効ワーキングディスタンスWDは、例えば、カメラのカタログ等で記載される推奨撮影距離の範囲や作動距離の範囲に相当する。カメラ130,130Xと被写体(路面900)との距離が、有効ワーキングディスタンスWDの範囲内にある撮像領域では良好な画像が得られるが、有効ワーキングディスタンスWDよりも長くとも、短くとも、画像欠陥(画像ボケ)により計測精度が悪化してしまう。
【0026】
図8(a)示す計測装置100Xの構成から、
図8(b)に示すように、カメラ130Xと被写体(路面900)との距離を離して撮像範囲Aを広げた場合、路面900上の撮像範囲Aがカメラ130Xの有効ワーキングディスタンスWDから外れてしまい画像欠陥(画像ボケ)が起こるという課題がある。
【0027】
図9は、第1実施形態に係る計測装置100の撮像範囲を示す後方模式図である。なお、
図9においては、計測装置100の構成を簡略してステレオカメラ(撮像装置)130の位置のみを示している。また、ステレオカメラ130-1の光路の軌跡S-1、ステレオカメラ130-2の光路の軌跡S-2、ステレオカメラ130-3の光路の軌跡S-3について、ハッチングを付して図示している。また、
図6に示す参考例に係る計測装置100Xの両外側のカメラ130Xの位置を破線で図示している。
【0028】
第1実施形態に係る計測装置100は、
図5に示すように、カメラ130-1,130-3の撮像方向は、車両700の幅方向外側に向かって所定の角度を有している。このような構成を有することにより、
図9に示すように、外側のステレオカメラ130-1,130-3と画像を重ねたいステレオカメラ130-2との重なり領域Dを有した状態で、撮像範囲Aを確保が可能となり外側のステレオカメラ130-1,130-3を車両700の幅方向内側へ設置することが可能となる。これにより、計測装置100の大きさ、特に計測装置100の幅Wを参考例に係る計測装置100Xの幅WXよりも小さくすることができ、計測装置100を小型化することができる。
【0029】
ここで、計測装置100におけるステレオカメラ130の配置について
図10を用いて説明する。
図10は、計測装置100におけるステレオカメラ130の配置を説明する後方模式図であり、(a)は第1実施形態における配置を示し、(b)は参考例における配置を示す。なお、
図10においては、車両700、マウント750、計測装置100の外装等の図示を省略している。
【0030】
図10(a)に示すように、一方のカメラ(例えば、ステレオカメラ130-1)は、車両700の幅方向外側に向かって所定の角度θ2A(
図10(a)の例では30°)で傾斜している。即ち、車両700の高さ方向に対するステレオカメラ130-1の撮像方向の車両700の幅方向の角度を角度θ2Aとする。また、一方のカメラと隣接する他方のカメラ(例えば、ステレオカメラ130-2)は、車両700の幅方向外側に向かって所定の角度θB(
図10(a)の例では0°)で傾斜している。即ち、車両700の高さ方向に対するステレオカメラ130-2の撮像方向の車両700の幅方向の角度を角度θBとする。前述のように、カメラ130-1,130-3の撮像方向は、車両700の幅方向外側に向かって所定の角度を有している。換言すれば、θ2A>θBを満たす。
【0031】
一方のカメラの傾斜角度θ2Aと隣接する他方のカメラの傾斜角度θBとの関係は、|θ2A-θB|≦30°となることが好ましい。
【0032】
ここで、所定の位置を回転中心としてステレオカメラ130-1を回転移動させることで、撮像範囲Aを有効ワーキングディスタンスWDの範囲内でとらえつつ、計測装置100の大きさを小型化することが可能となる。しかしながら、
図10(b)に示すように、ステレオカメラ130-1の傾斜角度θ2Aを大きくすると、隣接するステレオカメラ130-2の視野にステレオカメラ130-1が入る位置まで近づく位置関係となるため、写りこみが発生する。
【0033】
これに対し、|θ2A-θB|≦30°に設定することにより、隣接するカメラの視野に他のカメラが写りこむことを防止するとともに、撮像範囲Aを有効ワーキングディスタンスWDの範囲内でとらえつつ、計測装置100の大きさを小型化することが可能となる。
【0034】
また、
図10(a)に示すように(併せて
図5参照)、車両700の幅方向の両端のステレオカメラ130-1,130-3が中央のステレオカメラ130-2よりも低い位置に設置されている。このように構成することで、計測装置100に用いるステレオカメラ130-1,130-2,130-3について、有効ワーキングディスタンスWDが同じカメラを用いることが可能となる。換言すれば、別の種類のカメラを用いる必要がなくなるため、計測装置100のコストダウンにつながる。なお、第1実施形態に係る計測装置100においては、両端のステレオカメラ130-1,130-3と中央のステレオカメラ130-2との高さの違いは、おおよそ200mmに設定している。
【0035】
図11は、第1実施形態に係る計測装置100の撮像範囲を示す斜視図である。第1実施形態に係る計測装置100は、
図4に示すように、ステレオカメラ130(130-1,130-2,130-3)の撮像方向は、車両700の進行方向後方に向かって所定の角度を有している。このような構成を有することにより、
図11に示すように、各ステレオカメラ130-1,130-2,130-3の光路の軌跡S-1,S-2,S-3を後方に移動させることが可能となるため、車両700と撮像範囲Aの干渉を回避することができ、路面900上の撮像範囲Aの減少を抑えることができる。
【0036】
図12は、計測装置100におけるステレオカメラ130の配置を説明する側方模式図であり、(a)は第1実施形態における配置を示し、(b)は参考例における配置を示す。なお、
図12においては、マウント750、計測装置100の外装等の図示を省略している。
【0037】
図12(a)に示すように、ステレオカメラ130が車両700の進行方向後方に向かって傾斜する角度θ1は、25°以下であることが好ましい。
【0038】
ここで、移動計測装置800の走行時や信号待ちなどの停車時において後続車両701に車間距離を詰められた際、
図12(b)に示すように、ステレオカメラ130の視野に後続車両701が入ることで路面900の計測を妨げられるおそれがある。
【0039】
これに対し、θ1≦25°とすることにより、後続車両701が写りこむことを抑制することができる。本実施例では、θ1≦25°とすることで、後続車両との車間距離がおおよそ2mの場合においてもステレオカメラ130の視野を確保することが可能となる。
【0040】
図13は、第1実施形態に係る計測装置100の有効ワーキングディスタンスを説明する図であり、(a)は後方側から見た背面図、(b)は後方上側から見た斜視図である。なお、
図13では、ステレオカメラ130-1の光路の軌跡S-1を省略して、光路の軌跡S-2,S-3のみを図示している。なお、第1実施形態に係る計測装置100においては、ステレオカメラ130として、有効ワーキングディスタンスWDが1000~2500mmであるステレオカメラを用いている。
【0041】
図13(a)は、ステレオカメラ130-2によって形成される光路の軌跡S-2のうち、画像欠陥(画像ボケ等)が生じにくい領域(有効ワーキングディスタンス)WD-2を図示したものである。同様に、ステレオカメラ130-3によって形成される光路の軌跡S-3のうち、画像欠陥が生じにくい領域(有効ワーキングディスタンス)WD-3を図示したものである。
図13(a)に示すように、有効ワーキングディスタンスWD-2,WD-3は、四角錐台の領域を有している。被写体である路面900は、四角錐台の有効ワーキングディスタンスWD-2,WD-3の内側におさまるように構成されている。ステレオカメラ130-1についても同様に、四角錐台の有効ワーキングディスタンスWD-1の内側におさまるように構成されている(
図11参照)。
【0042】
さらに、
図13(a)および
図13(b)に示すように、ステレオカメラ130-3の有効ワーキングディスタンスWD-3において、四角錐台のうちステレオカメラ130-3から近い側のワーキングディスタンスで形成される四角形を上面Uとし、ステレオカメラ130-3から遠い側のワーキングディスタンスで形成される四角形を下面Lとする。ステレオカメラ130-3は後方左側に向けて傾いているため、上面Uの四角形を構成する4つの頂点のうち、前方右側の頂点P1が最も下側に配置される。また、下面Lの四角形を構成する4つの頂点のうち、頂点P1と対角方向に位置する後方左側の頂点P2が最も上側に配置される。さらに、撮像された画像は、四角錐台の上面前方側の頂点P1の近傍点P3と、対角方向に位置する四角錐台の底面後方側の頂点P2の近傍点P4と、を含む領域A-3を用いて形成されるように構成されている。このように構成することで、外側のステレオカメラ130-3の撮像範囲を大きくとることが可能となり、計測装置100の撮像範囲Aを大きくとることができる。また、有効ワーキングディスタンス内で画像を形成することができるため、画像欠陥(画像ボケ等)を生じにくい画像を取得することができる。
【0043】
第1実施形態に係る計測装置100は、撮像装置としてステレオカメラ130を備えるものとして説明したが、これに限られるものではない。
図14は、第2実施形態に係る計測装置100Aを後方側から見た断面図である。計測装置100Aは撮像装置として、単眼のレンズ131を備えるカメラ130Aを備えていてもよい。
【0044】
また、第1実施形態に係る計測装置100は、撮像装置として3つのステレオカメラ130を備えるものとして説明したが、これに限られるものではない。撮像装置は2つであってもよく、4つ以上備えていてもよい。
【0045】
図15は、第3実施形態に係る計測装置100Bを後方側から見た断面図である。計測装置100Bは、2つのステレオカメラ130(130-1,130-2)を備えている。幅方向外側のステレオカメラ130-1,130-2の撮像方向は、車両700の幅方向に対して所定の角度を有している。その他の構成は、第1実施形態に係る計測装置100と同様である。
【0046】
図16は、第4実施形態に係る計測装置100Cを後方側から見た断面図である。計測装置100Cは、2つのステレオカメラ130(130-1,130-2)を備えている。幅方向外側のステレオカメラ130-1の撮像方向は、車両700の幅方向に対して所定の角度を有している。一方、ステレオカメラ130-2の撮像方向は、車両700の幅方向に対して所定の角度を有していない。その他の構成は、第1実施形態に係る計測装置100と同様である。なお、右側のステレオカメラ130-1が幅方向に角度を有し、左側のステレオカメラ130-2が幅方向に角度を有さない構成であるものとして説明したが、これに限られるものではなく、左側のステレオカメラ130-2が幅方向に角度を有し、右側のステレオカメラ130-1が幅方向に角度を有さない構成であってもよい。
【0047】
図17は、第5実施形態に係る計測装置100Dを後方側から見た断面図である。計測装置100Dは、4つのステレオカメラ130(130-1,130-2,130-3,130-4)を備えている。幅方向外側のステレオカメラ130-1,130-4の撮像方向は、車両700の幅方向に対して所定の角度を有している。一方、ステレオカメラ130-2,130-3の撮像方向は、車両700の幅方向に対して所定の角度を有していない。その他の構成は、第1実施形態に係る計測装置100と同様である。
【0048】
図18は、第6実施形態に係る計測装置100Eを後方側から見た断面図である。計測装置100Eは、5つのステレオカメラ130(130-1,130-2,130-3,130-4,130-5)を備えている。幅方向外側のステレオカメラ130-1,130-5の撮像方向は、車両700の幅方向に対して所定の角度を有している。一方、ステレオカメラ130-2,130-3,130-4の撮像方向は、車両700の幅方向に対して所定の角度を有していない。その他の構成は、第1実施形態に係る計測装置100と同様である。
【符号の説明】
【0049】
100,100A~100E 計測装置
110 ベースフレーム
120 カメラマウント
130 ステレオカメラ(撮像装置)
130A 単眼カメラ(撮像装置)
131 レンズ
200 保護カバーユニット
211,211a,211b,211c,212a,212b 開口部
216a,216b フレーム
700 車両(移動体)
750 マウント
800 移動計測装置(移動体)
900 路面(撮像対象)
S 光路の軌跡
A 撮像範囲
D 重なり領域
WD 有効ワーキングディスタンス
N 干渉範囲
F 前進方向
P1 頂点(第1頂点)
P2 頂点(第2頂点)
P3,P4 近傍点
【先行技術文献】
【特許文献】
【0050】