(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】粘接着剤組成物、及びそれを用いてなる粘接着剤、粘接着剤シート、ならびに積層体
(51)【国際特許分類】
C09J 133/00 20060101AFI20240110BHJP
C08G 18/62 20060101ALI20240110BHJP
C09J 5/06 20060101ALI20240110BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20240110BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20240110BHJP
C09J 163/00 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
C09J133/00
C08G18/62 016
C09J5/06
C09J7/38
C09J11/06
C09J163/00
(21)【出願番号】P 2019185799
(22)【出願日】2019-10-09
【審査請求日】2022-05-16
(31)【優先権主張番号】P 2018238078
(32)【優先日】2018-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079382
【氏名又は名称】西藤 征彦
(74)【代理人】
【識別番号】100123928
【氏名又は名称】井▲崎▼ 愛佳
(74)【代理人】
【識別番号】100136308
【氏名又は名称】西藤 優子
(74)【代理人】
【識別番号】100207295
【氏名又は名称】寺尾 茂泰
(72)【発明者】
【氏名】三ツ谷 直也
(72)【発明者】
【氏名】布谷 昌平
【審査官】福山 駿
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-147011(JP,A)
【文献】国際公開第2013/157567(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0141786(US,A1)
【文献】特開2016-020502(JP,A)
【文献】特開2009-242771(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
C08G 18/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル系樹脂(A)、エポキシ系化合物(B)
、常温又は加温状態でのエージング下で上記アクリル系樹脂(A)
と架橋する架橋剤(C)(但し、エポキシ系化合物(B
)を除く)
、及び上記エポキシ系化合物(B)と反応する硬化剤(D)を含有する粘接着剤組成物であって、上記アクリル系樹脂(A)のガラス転移温度が20℃以上であり、上記エポキシ系化合物(B)の25℃における粘度が3000mPa・s以下であることを特徴とする粘接着剤組成物(但し、半導体素子用感光性接着剤組成物を除く)。
【請求項2】
上記アクリル系樹脂(A)の重量平均分子量が20万以上であることを特徴とする請求項1記載の粘接着剤組成物。
【請求項3】
上記エポキシ系化合物(B)が、エポキシ基を少なくとも3個以上有するエポキシ系化合物を含むことを特徴とする請求項1または2記載の粘接着剤組成物。
【請求項4】
上記エポキシ系化合物(B)が、脂肪族エポキシ系化合物であることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の粘接着剤組成物。
【請求項5】
上記エポキシ系化合物(B)の含有量が、アクリル系樹脂(A)100重量部に対して25~300重量部であることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の粘接着剤組成物。
【請求項6】
請求項1~
5のいずれか一項に記載の粘接着剤組成物が架橋されてなることを特徴とする粘接着剤。
【請求項7】
100~250℃の加熱により硬化されることを特徴とする請求項
6記載の粘接着剤。
【請求項8】
硬化前の剪断強度(MPa)に対する、硬化後の剪断強度(MPa)の比が10以上であることを特徴とする請求項
7記載の粘接着剤。
【請求項9】
請求項
6~
8のいずれか一項に記載の粘接着剤からなる粘接着剤層を有することを特徴とする粘接着シート。
【請求項10】
請求項
6~
8のいずれか一項に記載の粘接着剤からなる粘接着剤層と他の部材とが積層されていることを特徴とする積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘接着剤組成物に関し、更に詳しくは、常態下では粘着性を有し、被着体に貼着後、加熱により硬化して強固に接着する粘接着剤組成物に関する。また、本発明は、上記粘接着剤組成物が架橋されてなる、タック感及び保持力を高いレベルで両立し、硬化後においては剪断強度に優れた粘接着剤に関する。更に、本発明は、上記粘接着剤からなる粘接着剤層を有する粘接着シート、あるいは、上記粘接着剤からなる粘接着剤層と他の部材とが積層され、その貼り合わせ面の保持力と剪断強度に優れた積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エポキシ系化合物を用いた液状の接着剤が、金属やプラスチックの接着用途に用いられている。
また、常態下では粘着性(タック)を有し、被着体に貼着後は加熱により硬化して強固に接着するといった、粘着剤と接着剤の両方の性質を併せ持つ粘接着剤として、アクリル系樹脂、エポキシ樹脂及びエポキシ硬化剤を用いた熱硬化型感圧接着性組成物も提案されている(例えば、特許文献1参照)。
一方で、固体のエポキシ樹脂と比較的ガラス転移温度(Tg)の低いアクリル系樹脂を用いた粘接着剤も提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-20502号公報
【文献】国際公開WO2013/157567号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されている粘接着剤は硬化後の剪断強度には優れるものの、硬化前の粘接着剤は保持力に劣るものである。
また、特許文献2に開示されている粘接着剤は、硬化前の保持力や硬化後の剪断強度については全く考慮されておらず、両性能を満足するものではない。
【0005】
そこで、本発明ではこのような背景下において、硬化前のタックや保持力に優れ、更に、硬化後の剪断強度にも優れた粘接着剤を形成する粘接着剤組成物を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
しかるに、本発明者らはかかる事情に鑑み鋭意研究を重ねた結果、アクリル系樹脂、エポキシ系化合物及びアクリル系樹脂の架橋剤を含有する粘接着剤組成物において、ガラス転移温度が高めのアクリル系樹脂を用い、かつ、粘度が低めのエポキシ系化合物を用いることにより、硬化前のタックや保持力に優れ、更に、硬化後の剪断強度にも優れた粘接着剤を形成する粘接着剤組成物を得ることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
即ち、本発明は、アクリル系樹脂(A)、エポキシ系化合物(B)及び上記アクリル系樹脂(A)の架橋剤(C)(但し、エポキシ系化合物(B)を除く)を含有する粘接着剤組成物であって、上記アクリル系樹脂(A)のガラス転移温度が20℃以上であり、上記エポキシ系化合物(B)の25℃における粘度が3000mPa・s以下である粘接着剤組成物を第1の要旨とする。
【0008】
また、本発明は、上記第1の要旨である粘接着剤組成物が架橋されてなる粘接着剤を第2の要旨とする。
【0009】
更に、本発明は、上記第2の要旨である粘接着剤からなる粘接着剤層を有する粘接着シートを第3の要旨とし、同じく上記第2の要旨である粘接着剤からなる粘接着剤層と他の部材とが積層されている積層体を第4の要旨とする。
【0010】
なお、本発明において、「硬化」とは加熱によるエポキシ系化合物の硬化を表し、「架橋」とはアクリル系樹脂と架橋剤との反応による架橋を表すこととする。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、アクリル系樹脂(A)、エポキシ系化合物(B)及び上記アクリル系樹脂(A)の架橋剤(C)(但し、エポキシ系化合物(B)を除く)を含有する粘接着剤組成物であって、上記アクリル系樹脂(A)のガラス転移温度が20℃以上であり、上記エポキシ系化合物(B)の25℃における粘度が3000mPa・s以下である。そのため、この粘接着剤組成物を用いて得られる粘接着剤は、硬化前の状態においてタック及び保持力に優れ、硬化後の状態において高い剪断強度を発現する、という優れた効果を有している。したがって、本発明の粘接着剤組成物は、種々の用途、例えば、建材用、車載部品用、電子部品用、半導体製造工程用、部材封止用、航空部品用、スポーツ用品用等の粘接着用途に好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明を詳細に説明する。
なお、本発明において、「アクリロイル基を有するモノマー」とは、一般式「CH2=CH-C(=O)-」で表される基を有するモノマーを、「(メタ)アクリル」とはアクリルあるいはメタクリルを、「(メタ)アクリロイル」とはアクリロイルあるいはメタクリロイルを、「(メタ)アクリレート」とはアクリレートあるいはメタクリレートをそれぞれ意味するものである。
また、「アクリル系樹脂」とは、少なくとも1種の(メタ)アクリレート系モノマーを含む重合成分を重合して得られる樹脂である。
【0013】
本発明において、「ガラス転移温度」とは、示差走査熱量計(TAインスツルメント社製、DSC Q2000)を用いて測定される値である。なお、測定温度範囲は-85℃~200℃、温度上昇速度は5℃/分である。
【0014】
本発明の粘接着剤組成物は、アクリル系樹脂(A)、エポキシ系化合物(B)及び上記アクリル系樹脂(A)の架橋剤(C)を含有するものである。以下、上記(A)、(B)、(C)を順に説明する。
【0015】
<アクリル系樹脂(A)>
上記アクリル系樹脂(A)は、ガラス転移温度が20℃以上である。そして、このようなアクリル系樹脂(A)としては、(メタ)アクリル系モノマーを主成分とし、必要に応じて、他の各種の重合性モノマーを含有する重合成分を重合してなるアクリル系樹脂が挙げられる。
なお、「主成分とする」とは、重合成分全体に対して通常40重量%以上、好ましくは50重量%以上、更に好ましくは60重量%以上含有することを意味する。
【0016】
上記(メタ)アクリル系モノマーとしては、(メタ)アクリル酸またはその誘導体、(メタ)アクリルアミドまたはその誘導体等が挙げられる。
【0017】
上記(メタ)アクリル酸の誘導体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、2-メチル-2-ニトロプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、s-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、n-ペンチル(メタ)アクリレート、t-ペンチル(メタ)アクリレート、3-ペンチル(メタ)アクリレート、2,2-ジメチルブチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、4-メチル-2-プロピルペンチル(メタ)アクリレート、n-オクタデシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸のアルキルエステル等が挙げられる。
【0018】
また、上記(メタ)アクリル酸の誘導体の他の例として、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート等のシクロアルキル(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレート等のアラルキル(メタ)アクリレート;ビフェニルオキシエチル(メタ)アクリレート等のビフェニルオキシ構造含有(メタ)アクリレート;2-イソボルニル(メタ)アクリレート、2-ノルボルニルメチル(メタ)アクリレート、5-ノルボルネン-2-イル-メチル(メタ)アクリレート、3-メチル-2-ノルボルニルメチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレ-ト、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレ-ト、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレ-ト、等の多環式(メタ)アクリレート;2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、2-メトキシメトキシエチル(メタ)アクリレート、3-メトキシブチル(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、アルキルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等のアルコキシ基またはフェノキシ基含有(メタ)アクリレート;等が挙げられる。
【0019】
更に、(メタ)アクリル酸の誘導体としては、官能基含有モノマーも挙げられ、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、10-ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12-ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートや、[4-(ヒドロキシメチル)シクロヘキシル]メチルアクリレート、シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレート;グリシジル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル等のエポキシ基含有(メタ)アクリレート;2,2,2-トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,2-トリフルオロエチルエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、ヘプタデカフルオロデシル(メタ)アクリレート、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のハロゲン含有(メタ)アクリレート;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート;3-オキセタニルメチル(メタ)アクリレート、3-メチル-オキセタニルメチル(メタ)アクリレート、3-エチル-オキセタニルメチル(メタ)アクリレート、3-ブチル-オキセタニルメチル(メタ)アクリレート、3-ヘキシル-オキセタニルメチル(メタ)アクリレート等のオキセタン基含有(メタ)アクリレート;等が挙げられる。
【0020】
また、前記(メタ)アクリルアミドの誘導体としては、例えば、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-ヘキシル(メタ)アクリルアミド等のN-アルキル基含有(メタ)アクリルアミド誘導体;N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール-N-プロパン(メタ)アクリルアミド等のN-ヒドロキシアルキル基含有(メタ)アクリルアミド誘導体;アミノメチル(メタ)アクリルアミド、アミノエチル(メタ)アクリルアミド等のN-アミノアルキル基含有(メタ)アクリルアミド誘導体;N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-エトキシメチル(メタ)アクリルアミド等のN-アルコキシ基含有(メタ)アクリルアミド誘導体;メルカプトメチル(メタ)アクリルアミド、メルカプトエチル(メタ)アクリルアミド等のN-メルカプトアルキル基含有(メタ)アクリルアミド誘導体;N-アクリロイルモルホリン、N-アクリロイルピペリジン、N-メタクリロイルピペリジン、N-アクリロイルピロリジン等の複素環含有(メタ)アクリルアミド誘導体;等が挙げられる。
【0021】
これらの(メタ)アクリル系モノマーは、単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。そして、中でも、(メタ)アクリル酸のアルキルエステルが好適に用いられ、特に、アルキル基の炭素数が1~20のものが好ましい。更には、アルキル基の炭素数が1~12のものがより好ましく、1~8のものが特に好ましく、1~4のものが最も好ましい。炭素数が小さい方が、後述するエポキシ系化合物(B)との相溶性に優れる傾向があるからである。
【0022】
また、これらの(メタ)アクリル系モノマーのうち、アクリロイル基を有するモノマーを、アクリル系樹脂(A)の重合成分全体に対して25重量%以上含有させることが好ましく、より好ましくは35重量%以上である。上記アクリロイル基を有するモノマーの含有割合を多くすることにより、硬化前の粘着特性を損なうことなく、粘接着剤層形成後の転写性が優れたものとなり、取り扱い性が良好となる。
【0023】
このようなアクリロイル基を有するモノマーとしては、前述の、各種の(メタ)アクリル系モノマーのうち、アクリル酸またはその誘導体、アクリルアミドまたはその誘導体等の、アクリロイル基を含有するモノマーを選択して用いることができる。
【0024】
上記アクリロイル基を有するモノマーとして、例えば、アクリル酸誘導体を用いる場合、ガラス転移温度が高く、硬化後の剪断強度が高くなる傾向がある点、アクリル系樹脂(A)の分子量を高めやすい点でホモポリマーとした際のガラス転移温度が0℃以上のモノマーが好ましく、重合性の点でメチルアクリレートを含むことが好適である。
【0025】
そして、ガラス転移温度が高く、硬化後の剪断強度が高くなる傾向がある点、後述する架橋剤(C)との反応性等を考慮すると、2-ヒドロキシエチルアクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート等の、ヒドロキシアルキルアクリレート等、水酸基を含有するものを含むことが好適である。また、上記水酸基を含有するものと同様の理由から、アクリル酸を使用することも好適である。
【0026】
また、上記アクリロイル基を有するモノマーとして、例えば、アクリルアミド誘導体を用いる場合、ガラス転移温度が高く、エポキシ系化合物(B)との相溶性に優れている点で、ジアルキルアクリルアミドやN-アクリロイルモルホリンを含むことが好適である。
【0027】
更に、上記アクリロイル基を有するモノマーの中でも、ホモポリマーとしたときのガラス転移温度が0℃以上のアクリロイル基含有モノマーを多く用いることが、得られるアクリル系樹脂(A)のガラス転移温度を高く維持することができ好適である。
【0028】
本発明において、アクリル系樹脂(A)に用いることのできる、(メタ)アクリル系モノマー以外の重合性モノマー(以下、「その他の重合性モノマー」という)としては、例えば、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、グルタコン酸、イタコン酸、アクリルアミド-N-グリコール酸、ケイ皮酸等の不飽和カルボン酸;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステルモノマー;スチレン、α-メチルスチレン等の芳香環を含有するモノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アルキルビニルエーテル、ビニルトルエン、ビニルピリジン、ビニルピロリドン、イタコン酸ジアルキルエステル、フマル酸ジアルキルエステル、アリルアルコール、アクリルクロライド、メチルビニルケトン、アリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルアリルビニルケトン等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0029】
そして、本発明に用いられるアクリル系樹脂(A)は、とりわけ、官能基含有モノマーを含有することが好ましく、かかる官能基含有モノマーは、水酸基含有モノマー及びカルボキシ基含有モノマーから選ばれる少なくとも1種のモノマーを含むことが好ましい。中でも、(メタ)アクリロイル基を含有する官能基含有モノマーが好ましく、更にアクリロイル基を有する官能基含有モノマーが好ましい。これらの中でも、特に、2-ヒドロシキエチルアクリレート、アクリル酸が好ましい。
【0030】
そして、かかる官能基含有モノマーの含有量は、アクリル系樹脂(A)における重合成分全体に対して0.1~30重量%であることが好ましく、1~25重量%であることがより好ましく、3~20重量%であることがとりわけ好ましい。上記官能基含有モノマーが少なすぎると、粘接着剤層としたときの凝集力が低下する傾向になり、タックや保持力が低下する傾向がある。また、逆に多すぎると、粘接着剤層の保存安定性が低下したり、ポットライフが短くなったりする傾向がある。
【0031】
本発明で用いるアクリル系樹脂(A)は、ガラス転移温度が20℃以上となるように上記モノマーを適宜選択し、重合することにより得られる。
【0032】
上記アクリル系樹脂(A)の重合方法としては、溶液ラジカル重合、懸濁重合、塊状重合、乳化重合等の従来公知の方法を用いることができる。例えば、有機溶媒中に、適宜選択してなる重合成分、重合開始剤を混合あるいは滴下し、所定の重合条件にて重合する方法等があり、中でも、溶液ラジカル重合、塊状重合が好ましく、安定にアクリル系樹脂が得られる点で、溶液ラジカル重合が特に好ましい。
【0033】
上記重合反応に用いられる有機溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ヘキサン等の脂肪族炭化水素類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の脂肪族アルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類等が挙げられる。これらの有機溶媒は、単独でもしくは2種以上併用することができる。
【0034】
これらの有機溶媒の中でも、重合反応のしやすさや連鎖移動の効果や粘接着剤組成物の塗工時の乾燥のしやすさ、安全上の点から、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類が好ましく、特には、酢酸エチルを含むことが好ましい。
【0035】
また、かかる溶液ラジカル重合に用いられる重合開始剤としては、例えば、通常のラジカル重合開始剤である2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス-2-メチルブチロニトリル、4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)、2,2’-アゾビス(メチルプロピオン酸)等のアゾ系開始剤、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物等が挙げられ、使用するモノマーに合わせて適宜選択して用いることができる。これらの重合開始剤は、単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
【0036】
このようにして、本発明で用いられるアクリル系樹脂(A)が得られる。
【0037】
上記アクリル系樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)は、20万以上であることが好ましく、特に好ましくは20万~150万、更に好ましくは25万~100万、殊に好ましくは30万~80万である。かかる重量平均分子量が小さすぎると、得られる粘接着剤層の靱性や凝集力が低下する傾向があり、タックや保持力、硬化後の剪断強度が低下する傾向がある。また、かかる重量平均分子量が大きすぎると、粘度が高くなりすぎて重合時にスケーリングが多くなったり、エポキシ系化合物(B)との相溶性が低下したり、ハンドリング性が低下したりする傾向がある。
【0038】
また、アクリル系樹脂(A)の分散度[重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)]は、15以下であることが好ましく、特に好ましくは10以下、更に好ましくは5.5以下である。かかる分散度が高すぎると凝集力が低下する傾向がある。なお、分散度の下限は通常1である。
【0039】
上記のアクリル系樹脂(A)の重量平均分子量は、標準ポリスチレン分子量換算による重量平均分子量であり、高速液体クロマトグラフ(日本Waters社製、「Waters 2695(本体)」と「Waters 2414(検出器)」)に、カラム:Shodex GPC KF-806L(排除限界分子量:2×107、分離範囲:100~2×107、理論段数:10000段/本、充填剤材質:スチレン-ジビニルベンゼン共重合体、充填剤粒径:10μm)を3本直列に接続して用いることにより測定されるものであり、数平均分子量も同様の方法で測定することができる。また分散度は、上記重量平均分子量と数平均分子量の測定値より求めることができる。
【0040】
上記アクリル系樹脂(A)のガラス転移温度(Tg)は、20℃以上であること必要である。好ましくは25~200℃、特に好ましくは30~180℃である。かかるガラス転移温度が低すぎると、硬化後の剪断強度が低下することとなる。なお、高すぎると硬化前のタックが低くなる傾向がある。
【0041】
上記アクリル系樹脂(A)の屈折率は、通常1.440~1.600である。かかる屈折率は積層する部材との屈折率差を小さくすることが、部材界面での光損失が小さくなり好ましい。
【0042】
なお、上記屈折率は、薄膜にしたアクリル系樹脂(A)を、屈折率測定装置(アタゴ社製「アッベ屈折計1T」)を用いてNaD線、23℃で測定した値である。
【0043】
<エポキシ系化合物(B)>
本発明で用いられるエポキシ系化合物(B)としては、脂肪族エポキシ系化合物、芳香族エポキシ系化合物、脂環式エポキシ系化合物等が挙げられる。また、エポキシ系化合物(B)としては、その構造中にエポキシ基を1つ有する単官能エポキシ系化合物、エポキシ基を2つ以上有する多官能エポキシ系化合物であってもよい。これらの化合物は、単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0044】
上記脂肪族エポキシ系化合物としては、例えば、アルキルグリシジルエーテル、アルコキシグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル等の単官能脂肪族エポキシ系化合物;ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル等の2官能脂肪族エポキシ系化合物;グリセロールトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、イソシアヌル酸トリグリシジル及びその誘導体、ペンタエリスリトールトリグリシジルエーテル等の3官能脂肪族エポキシ系化合物;ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、ジグリセロールテトラグリシジルエーテル、ジトリメチロールプロパンテトラグリシジルエーテル等の4官能脂肪族エポキシ系化合物;ポリグリセロールペンタグリシジルエーテル、ペンタエリストールペンタグリシジルエーテル、ジペンタエリストールペンタグリシジルエーテル等の5官能脂肪族エポキシ系化合物;ソルビトールヘキサグリシジルエーテル、ジペンタエリストールヘキサグリシジルエーテル等の6官能脂肪族エポキシ系化合物;トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル等の、他の多官能脂肪族エポキシ系化合物等が挙げられる。
【0045】
上記芳香族エポキシ系化合物としては、例えば、フェノールグリシジルエーテル、EO(エチレンオキサイド)変性フェノールグリシジルエーテル等の単官能芳香族エポキシ系化合物;ジグリシジルテレフタラート、ジグリシジル-o-フタレート、ジグリシジルレソルシノールエーテル、ビスフェノールA型ジグリシジル化合物、ビスフェノールF型ジグリシジル化合物、ビフェニル型ジグリシジル化合物等の2官能芳香族エポキシ系化合物;フェノールノボラック型エポキシ系化合物、クレゾールノボラック型エポキシ系化合物等の他の多官能芳香族エポキシ系化合物等が挙げられる。
【0046】
上記脂環式エポキシ系化合物としては、例えば、ビスフェノールA型ジグリシジル化合物の水添物、ビスフェノールF型ジグリシジル化合物の水添物、ビフェニル型ジグリシジル化合物の水添物等の2官能脂環式エポキシ系化合物等が挙げられる。
【0047】
上記エポキシ系化合物(B)の中でも、硬化後の剪断強度が高くなる傾向がある点で、エポキシ基を少なくとも3個以上有するエポキシ系化合物が好ましい。また、タックに優れる点から、脂肪族エポキシ系化合物が好ましい。特には、トリメチルプロパンポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテルが好ましい。
【0048】
そして、上記エポキシ系化合物(B)の25℃における粘度は、3000mPa・s以下であることが必要である。好ましくは2000mPa・s以下、より好ましくは1500mPa・s以下、特に好ましくは1000mPa・s以下である。なお、粘度の下限は、通常5mPa・sであり、好ましくは10mPa・sである。上記粘度が高すぎると、粘接着剤層とした際のタックが低下する。なお、粘度が低すぎると粘接着剤層とした際の凝集力が低下する傾向がある。また、エポキシ系化合物(B)を2種類以上用いる場合は、用いるエポキシ系化合物(B)を均一に混合した時の粘度が上記の範囲にあればよい。
本発明の粘接着剤組成物は、上記の粘度を有するエポキシ系化合物(B)、即ち、25℃で液状のエポキシ系化合物(B)を含有するため、硬化前の粘接着剤層の粘着力、保持力、タック等のバランスに優れるものである。
【0049】
上記エポキシ系化合物(B)の粘度は、JIS K 7233に準拠してB型粘度計を用いて測定した値である。
【0050】
また、上記エポキシ系化合物(B)の重量平均分子量(前述の測定方法による、以下同じ)は、100~2000が好ましく、200~1800がより好ましく、250~1500が特に好ましい。分子量が低すぎると、高温で揮発したり白煙が発生したりする傾向にあり、高すぎるとアクリル系樹脂(A)との相溶性が低下する傾向にある。
【0051】
更に、上記エポキシ系化合物(B)の含有量は、前記アクリル系樹脂(A)100重量部に対して25~300重量部であることが好ましく、30~250重量部であることがより好ましく、40~200重量部であることが特に好ましく、50~150重量部であることが更に好ましい。アクリル系樹脂(A)に対するエポキシ系化合物(B)の含有割合が少なすぎると、粘接着剤のタックが低下してハンドリング性が低下したり、部材を貼り合わせて硬化する際に密着性が低下したりする傾向にあり、多すぎると粘接着剤の保持力が低下する傾向にある。
【0052】
<アクリル系樹脂(A)の架橋剤(C)>
前記アクリル系樹脂(A)の架橋剤として用いられる架橋剤(C)(以下、単に「架橋剤(C)」という)としては、例えば、イソシアネート系架橋剤、アジリジン系架橋剤、メラミン系架橋剤、アルデヒド系架橋剤、金属キレート系架橋剤が挙げられる。なお、上記エポキシ系化合物(B)として用いられるものは除く。
【0053】
上記イソシアネート系架橋剤としては、例えば、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート等のトリレンジイソシアネート系化合物;1,3-キシリレンジイソシアネート、1,4-キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等のキシリレンジイソシアネート系化合物;1,5-ナフタレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート等の芳香族イソシアネート系化合物;ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、及びこれらのイソシアネート系化合物とトリメチロールプロパン等のポリオール化合物とのアダクト体、これらポリイソシアネート化合物のビュレット体やイソシアヌレート体等が挙げられる。
【0054】
また、上記アジリジン系架橋剤としては、例えば、テトラメチロールメタン-トリ-β-アジリジニルプロピオネート、トリメチロールプロパン-トリ-β-アジリジニルプロピオネート、N,N’-ジフェニルメタン-4,4’-ビス(1-アジリジンカルボキシアミド)、N,N’-ヘキサメチレン-1,6-ビス(1-アジリジンカルボキシアミド)等が挙げられる。
【0055】
更に、上記メラミン系架橋剤としては、例えば、へキサメトキシメチルメラミン、ヘキサエトキシメチルメラミン、ヘキサプロポキシメチルメラミン、ヘキサブトキシメチルメラミン、ヘキサペンチルオキシメチルメラミン、ヘキサヘキシルオキシメチルメラミン、メラミン樹脂等が挙げられる。
【0056】
また、上記アルデヒド系架橋剤としては、例えば、グリオキザール、マロンジアルデヒド、スクシンジアルデヒド、マレインジアルデヒド、グルタルジアルデヒド、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド等が挙げられる。
【0057】
そして、上記金属キレート系架橋剤としては、例えば、アルミニウム、鉄、銅、亜鉛、スズ、チタン、ニッケル、アンチモン、マグネシウム、パナジウム、クロム、ジルコニウム等の多価金属のアセチルアセトンやアセトアセチルエステル配位化合物等が挙げられる。
【0058】
上記架橋剤(C)は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。そして、上記架橋剤(C)の中でも、特に、基材との密着性を向上させる点やアクリル系樹脂(A)との反応性の点で、イソシアネート系架橋剤が好適に用いられ、その中でも、粘接着剤とした時の保持力や粘着物性に優れる点で、トリレンジイソシアネート系化合物や、ヘキサメチレンジイソシアネート系架橋剤が好ましい。
【0059】
上記架橋剤(C)の含有量は、アクリル系樹脂(A)100重量部に対して0.1~30重量部であることが好ましく、より好ましくは1~25重量部、特に好ましくは2.5~20重量部である。上記架橋剤(C)のアクリル系樹脂(A)に対する含有割合が上記の範囲内であると、粘接着剤とした際の保持力やタックにとりわけ優れる傾向がある。
【0060】
本発明のアクリル系粘接着剤組成物は、上記必須成分であるアクリル系樹脂(A)、エポキシ系化合物(B)及び架橋剤(C)を含有するものであるが、これらとともに、更に、上記エポキシ系化合物(B)と反応する硬化剤(D)(以下、単に「硬化剤(D)」という)を含有することが、粘接着剤とした際に効率よく硬化できる点で好ましい。
【0061】
<硬化剤(D)>
上記硬化剤(D)としては、例えば、アミン類、ポリアミド類、イミダゾール類、ポリメルカプタン硬化剤、酸無水物類が挙げられる。これらは、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。そして、上記硬化剤(D)の中でも、特に、粘接着剤とした際の保存安定性や硬化時の剪断強度に優れる点で、アミン化合物であるジシアンジアミドや有機酸ヒドラジドが好ましく、有機酸ヒドラジドの中でも、とりわけ、アジピン酸ヒドラジドが硬化速度や硬化後の剪断強度に優れる点で好ましい。
【0062】
上記硬化剤(D)は、液体であっても固体であっても差し支えないが、粘接着剤とした時の保存安定性の点、粘接着剤組成物のポットライフの点で、固体であることが好ましく、更には、塗膜が平滑性となり硬化する際に部材との接着面積が増加し硬化後の剪断強度が高くなる点で、粉体の状態で分散含有されていることが好ましい。硬化剤(D)として粉体を用いる場合、粉体の粒径は、粘接着剤層を形成する際の膜厚に対し、その膜厚の1.2倍以下となるように設定することが好ましく、1倍以下であることが更に好ましい。
【0063】
上記硬化剤(D)を用いる場合、その含有量は、前記エポキシ系化合物(B)100重量部に対して10~100重量部であることが好ましく、中でも、15~80重量部であることがより好ましく、25~50重量部であることが最も好ましい。上記硬化剤(D)の、エポキシ系化合物(B)に対する含有割合が上記の範囲よりも少なすぎると、硬化速度が遅くなったり、硬化温度が高くなったりする傾向があり、多すぎると、塗工時に筋が発生したり、粘接着剤組成物のポットライフが短くなったりする傾向がある。
【0064】
本発明の粘接着剤組成物には、任意成分として、上記硬化剤(D)以外にも、本発明の効果を損なわない範囲において、各種の任意成分を配合することができる。以下、それらの任意成分について説明する。
【0065】
<その他の任意成分>
その他の任意成分としては、例えば、カーボンや金属等の導電剤;金属粒子やガラス粒子等の無機フィラー;ウレタン樹脂、ロジン、ロジンエステル、水添ロジンエステル、フェノール樹脂、脂肪族系石油樹脂、脂環族系石油樹脂、スチレン系樹脂等の粘着付与剤;充填剤;酸化防止剤;紫外線吸収剤;シランカップリング剤;イオン性化合物、過酸化物、ウレタン化触媒等の架橋促進剤;アセチルアセトン等の架橋遅延剤;等の各種添加剤が挙げられる。これらは単独でもしくは2種以上を併せて用いることができる。
【0066】
また、上記添加剤の他にも、アクリル系粘接着剤組成物の構成成分の製造原料等に含まれる不純物等が少量含有されたものであってもよい。
【0067】
本発明の粘接着剤組成物は、上記アクリル系樹脂(A)、エポキシ系化合物(B)及び架橋剤(C)、好ましくは更に硬化剤(D)、必要に応じてその他の任意成分を混合することにより得ることができる。
【0068】
これらの成分の混合方法については、特に限定されるものではなく、各成分を一括で混合する方法や、任意の成分を混合した後、残りの成分を一括または順次混合する方法等、種々の方法を採用することができる。
【0069】
本発明の粘接着剤組成物は、アクリル系樹脂(A)と架橋剤(C)とが反応して架橋することにより粘接着剤とすることができ、この粘接着剤からなる粘接着剤層をプラスチックフィルム等の基材に積層形成することにより、粘接着シートを得ることができる。
【0070】
そして、上記粘接着シートは、中でも、粘接着剤層の両面にセパレータ(剥離シート)を積層した基材レス両面シートであることが、取り扱いやすい点で好適である。
【0071】
上記粘接着シートの製造方法としては、例えば、セパレータや基材上に、粘接着剤組成物を塗工、乾燥した後、セパレータ(セパレータに塗布した場合は剥離力の異なるセパレータ)を貼合し、常温(加温しない状態)及び加温状態でのエージングの少なくとも一方による処理を行う方法等が挙げられる。
【0072】
上記エージング処理は、アクリル系樹脂(A)と架橋剤(C)の化学架橋の反応時間として、粘接着剤の粘着物性のバランスをとるために行うものであり、エージングの条件としては、温度は通常室温(20±10℃)~40℃、時間は通常1~30日間であり、具体的には、例えば23℃で1~20日間、40℃で1~7日間等の条件で行えばよい。
【0073】
上記粘接着剤組成物の塗工に際しては、この粘接着剤組成物を溶剤で希釈して塗工することが好ましく、固形分濃度は、好ましくは5~65重量%、特に好ましくは20~55重量%である。また、上記溶剤としては、粘接着剤組成物を溶解させるものであれば特に限定されない。例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル等のエステル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤、メタノール、エタノール、プロピルアルコール等のアルコール系溶剤を用いることができる。これらの中でも、溶解性、乾燥性、価格等の点から酢酸エチルが好適に用いられる。
【0074】
上記希釈された粘接着剤組成物の粘度は、500~15000mPa・s/25℃が好ましく、1000~10000mPa・s/25℃がより好ましい。粘度が低すぎると比重の重い成分を用いた場合、その成分が沈降しやすくなる傾向がある。
【0075】
また、上記粘接着剤組成物の塗工方法としては、例えば、ロールコーティング、ダイコーティング、グラビアコーティング、コンマコーティング、スクリーン印刷等の方法が挙げられる。
【0076】
そして、得られる粘接着シートにおける粘接着剤層の厚みは、5~250μmが好ましく、特には25~200μmが好ましく、更には50~175μmが好ましい。上記粘接着剤層が薄すぎると、厚み精度が低下したり粘接着力が低くなる傾向があり、厚すぎると粘接着シートをロール状にした際に端から粘接着剤層がはみ出したりする傾向がある。
【0077】
上記方法により製造される粘接着剤層のゲル分率については、部材との密着性、リワーク性、保持力の点から10~90重量%であることが好ましく、特に好ましくは15~70重量%であり、更に好ましくは20~60重量%である。上記粘接着剤層のゲル分率が低すぎると、凝集力が低くなり粘接着剤を硬化させる際に、部材がずれてしまう傾向があり、高すぎると、部材を貼り合わせる際に粘接着剤層と部材界面との充分な密着性が得られず硬化後の剪断強度が低下する傾向がある。
【0078】
上記ゲル分率は、架橋度(硬化度合い)の目安となるもので、例えば、以下の方法にて算出される。即ち、基材等の表面に粘接着剤層が形成されてなる粘接着シートから粘接着剤をピッキングにより採取し、粘接着剤を200メッシュのSUS製金網で包み、23℃に調整した酢酸エチル中に24時間浸漬することにより、酢酸エチル浸漬前の粘接着剤層の重量に対する、金網中に残存した不溶解の粘接着剤成分の重量百分率をゲル分率とする。
【0079】
本発明においては、上記粘接着剤層が加熱により硬化され、接着力が上昇することになる。上記加熱条件としては、加熱温度は、好ましくは100~250℃であり、更に好ましくは120~200℃、特に好ましくは130~185℃である。かかる温度が低すぎると硬化時間が長くなり、作業性が低下する傾向があり、高すぎるとエポキシ系化合物が揮発したり発火したりする傾向がある。また、加熱時間は、好ましくは5~180分間であり、更に好ましくは30~120分間、特に好ましくは45~90分間である。かかる時間が短すぎると剪断強度が低下する傾向があり、長すぎると作業性が低下する傾向がある。
【0080】
そして、硬化前の剪断強度(MPa)に対する、硬化後の剪断強度(MPa)の比が、10以上であることが硬化前の粘着物性と硬化後の剪断強度及び耐久性のバランスが好ましく、更に好ましくは20以上、特に好ましくは100以上である。また、上記硬化前の剪断強度に対する、硬化後の剪断強度の比の上限は、通常10万である。
【0081】
本発明の粘接着剤層は、硬化前の状態において転写性と保持力に優れ、硬化後の状態において高い剪断強度を発現する、という優れた特徴を有している。したがって、種々の用途、例えば、建材用、車載部品用、電子部品用、半導体製造工程用、部材封止用、航空部品用、スポーツ用品用等の粘接着用途に好適に用いることができる。
【0082】
この粘接着剤層を有する粘接着シートは、粘接着剤層の表面に被覆するセパレータを剥離し、目的とする部材面に、この粘接着剤層表面を粘着させるだけで、簡単に粘接着剤層を転写することができるため、非常に作業勝手がよい。
【0083】
そして、上記粘接着剤層を介して他の部材を積層させてなる積層体は、上記粘接着剤層が硬化前に高い保持力を有し、硬化後に高い剪断強度を発現することから、容易にずれたり剥離したりすることがなく、優れた品質のものとなる。
【実施例】
【0084】
以下、実施例をあげて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、例中、「部」、「%」とあるのは、重量基準を意味する。
実施例に先立って下記の成分を準備した。
【0085】
<アクリル系樹脂(A)>
[アクリル系樹脂(A-1)の調製]
還流冷却器、撹拌器、窒素ガスの吹き込み口及び温度計を備えた4ツ口丸底フラスコに、酢酸エチル72部、メチルエチルケトン24部、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を0.036部仕込み、加熱して内温が沸点に到達した後、メチルアクリレート74.5部、メチルメタクリレート20部、2-ヒドロキシエチルアクリレート5部、アクリル酸0.5部、酢酸エチル4部、重合開始剤0.036部の混合溶液を沸騰状態を維持したまま2時間にわたって滴下した。その後反応を継続しながら、重合開始剤(AIBN)を2度追加し、7時間反応させたあと希釈して、アクリル系樹脂(A-1)溶液(固形分38.0%、粘度13500mPa・s/25℃、アクリル系樹脂(A-1):重量平均分子量(Mw)40.2万、分散度(Mw/Mn)3.3、ガラス転移温度(Tg)21.5℃)を得た。
【0086】
[アクリル系樹脂(A-2)の調製]
上記アクリル系樹脂(A-1)の調製において、重合性モノマー組成を、メチルアクリレート49.5部、メチルメタクリレート45部、2-ヒドロキシエチルアクリレート5部、アクリル酸0.5部とした以外はアクリル系樹脂(A-1)の調製に準じて行い、アクリル系樹脂(A-2)溶液(固形分36.0%、粘度6040mPa・s/25℃、アクリル系樹脂(A-2):重量平均分子量(Mw)25.5万、分散度(Mw/Mn)2.1、ガラス転移温度(Tg)39.8℃)を得た。
【0087】
<エポキシ系化合物(B)>
エポキシ系化合物(B)として以下のものを用意した。
・エポキシ系化合物(B-1)〔デナコールEX-321(トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル)、粘度130mPa・s/25℃、エポキシ当量140g/mol、エポキシ基数2~3個、長瀬ケムテックス社製〕
・エポキシ系化合物(B-2)〔デナコールEX-411(ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル)、粘度800mPa・s/25℃、エポキシ当量229g/mol、エポキシ基数3~4個、長瀬ケムテックス社製〕
・エポキシ系化合物(B-3)〔デナコールEX-421(ジグリセロールポリグリシジルエーテル)、粘度650mPa・s/25℃、エポキシ当量159g/mol、エポキシ基数3個、長瀬ケムテックス社製〕
・エポキシ系化合物(B’-1)〔デナコールEX-521(ポリグリセロールポリグリシジルエーテル)、粘度4400mPa・s/25℃、エポキシ当量183g/mol、エポキシ基数4個以上、長瀬ケムテックス社製〕
・エポキシ系化合物(B’-2)〔デナコールEX-612(ソルビトールポリグリシジルエーテル)、粘度11900mPa・s/25℃、エポキシ当量166g/mol、エポキシ基数4個以上、長瀬ケムテックス社製〕
・エポキシ系化合物(B’-3)〔デナコールEX-614B(ソルビトールポリグリシジルエーテル)、粘度5000mPa・s/25℃、エポキシ当量173g/mol、エポキシ基数4個以上、長瀬ケムテックス社製〕
・エポキシ系化合物(B’-4)〔アデカレジンEP-4000、粘度4500mPa・s/25℃、エポキシ当量320g/mol、エポキシ基数2個、ADEKA社製〕
・エポキシ系化合物(B’-5)〔アデカレジンEP-4300E(ビスフェノールA型エポキシ樹脂)、粘度8000mPa・s/25℃、エポキシ当量185g/mol、エポキシ基数2個、ADEKA社製〕
・エポキシ系化合物(B’-6)〔アデカレジンEP-4901(ビスフェノールF型エポキシ樹脂)、粘度3500mPa・s/25℃、エポキシ当量170g/mol、エポキシ基数2個、ADEKA社製〕
【0088】
<架橋剤(C)>
架橋剤(C)として、以下のものを用いた。
(C-1):トリレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンのアダクト体(東ソー社製、コロネートL55E)
【0089】
<硬化剤(D)>
硬化剤(D)として、以下のものを用いた。
(D-1):アジピン酸ジヒドラジド(三菱ケミカル社製、ADH)
【0090】
<実施例1~4、比較例1~6>
上記の成分を後記表1にしたがって配合し、酢酸エチルを用いて固形分濃度を30~60%の範囲に調整することにより、粘接着剤組成物を得た。
【0091】
得られた粘接着剤組成物を用いて、以下に示す手順にしたがってサンプル用の粘接着シートを作製した後、そのボールタック、保持力、硬化後の剪断強度を評価した。各項目の評価方法と評価基準は、後記のとおりである。
これらの結果を、後記の表1に併せて示す。
【0092】
<サンプル:粘接着シートの作製>
粘接着剤組成物を、厚み38μmの重剥離シリコンセパレータ(三井東セロ社製 SPPET03 38BU)に、乾燥後の厚みが50μmとなるようにコンマコータを用いて塗工し、100℃×3分間乾燥した。そして、乾燥した粘接着剤層の表面に、厚み38μmの軽剥離シリコンセパレータ(三井東セロ社製SPPET01 38BU)を貼り合わせて、粘接着シートを作製した(軽剥離シリコンセパレータ/粘接着剤層/重剥離シリコンセパレータ)。
【0093】
<ボールタック>
上記粘接着シートの軽剥離シリコンセパレータを剥離し、PETフィルムに転写した後、重剥離シリコンセパレータを剥離し、JIS Z 0237に準拠し、傾斜板の角度30°で23℃、相対湿度50%の雰囲気における粘接着剤層のボールタック試験を行った。評価基準は下記の通りである。
◎・・・ボールナンバー5超
○・・・ボールナンバー3以上5以下
×・・・ボールナンバー3未満
【0094】
<保持力>
上記粘接着シートの軽剥離シリコンセパレータを剥離し、PETフィルムに転写した後、重剥離シリコンセパレータを剥離して、貼着面積が25mm×25mmとなるように粘接着剤層側を研磨SUS板に貼着し、23℃×50%RHの条件下で30分間静置した後、40℃の条件下にて1kgの荷重をかけて、JIS Z 0237の保持力の測定法に準じてズレを評価した。評価基準は下記の通りである。
○・・・24時間ではズレなし
△・・・24時間でズレあり
×・・・24時間で落下
【0095】
<硬化後の剪断強度>
粘接着シートを25mm×12.5mmの大きさにカットし、SUS板に転写した。転写したSUS板と反対側に同じサイズのSUS板を貼り合わせ、貼り合わせた部分をクリップで止めて140℃で1時間硬化した後、23℃×50%RH条件下でAUTO Graph AG-X Plus(Shimadzu社製)を用い、5mm/minの速度で剪断強度(MPa)を測定した。評価基準は下記の通りである。
〇・・・10MPa以上
△・・・5MPa以上10MPa未満
×・・・5MPa未満
【0096】
また、上記実施例1の粘接着剤組成物を用いて作製した粘接着シートについて、下記の評価方法にしたがい硬化前の剪断強度を測定し、硬化前後の剪断強度比を求めた。
【0097】
<硬化前後の剪断強度比>
実施例1の粘接着剤組成物を用いて作製した粘接着シートを25mm×12.5mmの大きさにカットし、SUS板に転写した。転写したSUS板と反対側に同じサイズのSUS板を貼り合わせ、貼り合わせた部分をクリップで止め23℃×50%RHの条件下で1時間静置した。その後、23℃×50%RH条件下でAUTO Graph AG-X Plus(Shimadzu社製)を用い、5mm/minの速度で硬化前の剪断強度(MPa)を測定した。
次に、上記測定により得られた硬化前の剪断強度と、上記硬化後の剪断強度を用いて硬化前後の剪断強度比を以下の計算式より求めたところ、176であった。
硬化前後の剪断強度比=硬化後の剪断強度(MPa)/硬化前の剪断強度(MPa)
【表1】
【0098】
上記の結果より実施例1~4の粘接着剤組成物を用いた粘接着剤は、硬化前のタック及び保持力に優れ、更に硬化後は高い剪断強度を有するものであった。
一方、特定の粘度有するエポキシ系化合物(B)を含有しない比較例1~6の粘接着剤組成物を用いた粘接着剤は、硬化前のタックが劣るものであり、実施例1~4と比較して物性バランスに劣るものであった。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明の粘接着剤組成物は、硬化前の状態においてタックと保持力に優れ、硬化後の状態において高い剪断強度を発現することから、種々の用途、例えば、建材用、車載部品用、電子部品用、半導体製造工程用、部材封止用、航空部品用、スポーツ用品用の粘接着用途に好適である。