(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】表面保護材用粘着剤および表面保護材
(51)【国際特許分類】
C09J 153/02 20060101AFI20240110BHJP
C09J 11/08 20060101ALI20240110BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20240110BHJP
【FI】
C09J153/02
C09J11/08
C09J7/38
(21)【出願番号】P 2019222638
(22)【出願日】2019-12-10
【審査請求日】2022-12-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】弁理士法人とこしえ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 大祐
【審査官】澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-231070(JP,A)
【文献】特開平05-093176(JP,A)
【文献】国際公開第2002/040611(WO,A1)
【文献】特開2019-056062(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(A)で表される水添ブロック共重合体Aおよび下記一般式(B)で表される水添ブロック共重合体Bを有する水添ブロック共重合体組成物と、粘着付与樹脂とを含有してなる表面保護材用粘着剤であって、
前記水添ブロック共重合体組成物における、前記水添ブロック共重合体Aと前記水添ブロック共重合体Bとの重量比(A/B)が10/90~80/20であり、
前記水添ブロック共重合体組成物を構成する重合体成分における、オレフィンの水添率が10~100%である表面保護材用粘着剤。
Ar1
a-HD
a-Ar2
a (A)
Ar1
b-HD
b-Ar2
b (B)
(上記一般式(A)および一般式(B)において、Ar1
a、Ar2
a、Ar1
b、およびAr2
bは、芳香族ビニル重合体ブロックであり、HD
aおよびHD
bは、共役ジエン重合体の水添重合体ブロックであり、
Ar1
a
、Ar1
b
、およびAr2
b
の重量平均分子量が、それぞれ、2,000~40,000の範囲であり、Ar2
a
の重量平均分子量が、5,000~250,000の範囲であり、HD
a
およびHD
b
の重量平均分子量が、それぞれ、10,000~300,000の範囲であり、Ar1
aの重量平均分子量(Mw(Ar1
a))に対する、Ar2
aの重量平均分子量(Mw(Ar2
a))の比(Mw(Ar2
a)/Mw(Ar1
a))が2.6~66であ
り、Ar1
b
の重量平均分子量(Mw(Ar1
b
))に対する、Ar2
b
の重量平均分子量(Mw(Ar2
b
))の比(Mw(Ar2
b
)/Mw(Ar1
b
))が0.95~1.05である。)
【請求項2】
前記水添ブロック共重合体組成物の重合体成分の全繰返し単位中における、芳香族ビニル単量体単位が占める割合が20~70重量%である請求項1に記載の表面保護材用粘着剤。
【請求項3】
前記水添ブロック共重合体組成物の上記一般式(A)および一般式(B)における
、HD
aおよびHD
bの重量平均分子量が、それぞれ、15,000~300,000の範囲である請求項1または2に記載の表面保護材用粘着剤。
【請求項4】
前記水添ブロック共重合体組成物の上記一般式(A)および一般式(B)における、HD
aおよびHD
bが、それぞれ、ビニル結合含有量が1~20モル%である請求項1~3のいずれかに記載の表面保護材用粘着剤。
【請求項5】
前記粘着付与樹脂の含有量が、前記水添ブロック共重合体組成物100重量部に対して、1~100重量部である請求項1~4のいずれかに記載の表面保護材用粘着剤。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載の表面保護材用粘着剤からなる粘着層と、樹脂からなる基材層とが積層されてなる表面保護材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面保護材用粘着剤および表面保護材に関し、さらに詳しくは、粘着性および展開性にバランスよく優れ、粘着力の昂進が良好に抑制され、かつ、熱安定性に優れた表面保護材を与えることができる、表面保護材用粘着剤と、その粘着剤からなる粘着層を有する表面保護材に関する。
【背景技術】
【0002】
保管時や運搬時における、汚れ・ほこりの付着や他物との接触に起因する損傷から、種々の物品の表面を保護する目的で、表面保護フィルム、表面保護シート、表面保護テープなどの表面保護材が広く用いられている。表面保護材は、一般的に、樹脂などの基材に粘着剤からなる粘着層を積層させた構成を有しており、粘着層が保護の対象とする物品の表面に接するように、物品に貼り付けて使用される。
【0003】
このような表面保護材用の粘着剤として、たとえば、特許文献1には、特定のブロック共重合体Aと特定のブロック共重合体Bとを特定の割合で含有するブロック共重合体組成物と、粘着付与樹脂とを含有してなる表面保護材用粘着剤が開示されている。この特許文献1の技術によれば、優れた粘着性および展開性を有し、さらには、粘着力の昂進(物品に貼り付けた状態で時間が経過すると、徐々に粘着力が強くなる現象)が良好に抑制され、なおかつ保護対象からの剥離時に糊残りし難い表面保護材を与えることができる、表面保護材用粘着剤を提供することができる。一方で、特許文献1においては、表面保護材の熱安定性については、検討されていない。
【0004】
また、特許文献2には、芳香族アルケニル重合体ブロックと芳香族アルケニル-共役ジエン共重合体ブロックとを有する特定のマルチブロック共重合体を粘着剤層に用い、粘着付与剤と軟化剤を所定量配合してなる粘着剤組成物が開示されている。この特許文献2の技術によれば、適当な初期粘着力を確保しつつ、展開性に優れ、被着体に対する剥離後の糊残を抑制できる粘着剤組成物を提供することができる。しかしながら、粘着性と展開性のさらなる向上が望まれると同時に、得られる表面保護材の熱安定性の向上も望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-167074号公報
【文献】特開2012-111793号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、粘着性および展開性にバランスよく優れ、粘着力の昂進が良好に抑制され、かつ、熱安定性に優れた表面保護材を与えることができる、表面保護材用粘着剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、上記目的を達成すべく検討を行ったところ、特定の構造を有する2種の水添ブロック共重合体を含有する水添ブロック共重合体組成物および粘着付与樹脂を含有する表面保護材用粘着剤において、特定の構造を有する2種の水添ブロック共重合体の重量比を特定の範囲とし、かつ、水添ブロック共重合体組成物を構成する重合体成分における、オレフィンの水添率を特定の範囲に制御することにより、これを用いて得られる表面保護材が、粘着性および展開性にバランスよく優れ、粘着力の昂進が良好に抑制され、かつ、熱安定性に優れたものとなることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明によれば、下記一般式(A)で表される水添ブロック共重合体Aおよび下記一般式(B)で表される水添ブロック共重合体Bを有する水添ブロック共重合体組成物と、粘着付与樹脂とを含有してなる表面保護材用粘着剤であって、前記水添ブロック共重合体組成物における、前記水添ブロック共重合体Aと前記水添ブロック共重合体Bとの重量比(A/B)が10/90~80/20であり、前記水添ブロック共重合体組成物を構成する重合体成分における、オレフィンの水添率が10~100%である表面保護材用粘着剤が提供される。
Ar1a-HDa-Ar2a (A)
Ar1b-HDb-Ar2b (B)
(上記一般式(A)および一般式(B)において、Ar1a、Ar2a、Ar1b、およびAr2bは、芳香族ビニル重合体ブロックであり、HDaおよびHDbは、共役ジエン重合体の水添重合体ブロックであり、Ar1aの重量平均分子量(Mw(Ar1a))に対する、Ar2aの重量平均分子量(Mw(Ar2a))の比(Mw(Ar2a)/Mw(Ar1a))が2.6~66である。)
【0009】
本発明の表面保護材用粘着剤において、前記水添ブロック共重合体組成物の重合体成分の全繰返し単位中における、芳香族ビニル単量体単位が占める割合が20~70重量%であることが好ましい。
本発明の表面保護材用粘着剤において、前記水添ブロック共重合体組成物の上記一般式(A)および一般式(B)における、Ar1a、Ar1b、およびAr2bの重量平均分子量が、それぞれ、2,000~40,000の範囲であり、HDaおよびHDbの重量平均分子量が、それぞれ、15,000~300,000の範囲であることが好ましい。
本発明の表面保護材用粘着剤において、前記水添ブロック共重合体組成物の上記一般式(A)および一般式(B)における、HDaおよびHDbが、それぞれ、ビニル結合含有量が1~20モル%であることが好ましい。
本発明の表面保護材用粘着剤において、前記粘着付与樹脂の含有量が、前記水添ブロック共重合体組成物100重量部に対して、1~100重量部であることが好ましい。
【0010】
また、本発明によれば、上記いずれかに記載の表面保護材用粘着剤からなる粘着層と、樹脂からなる基材層とが積層されてなる表面保護材が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、粘着性および展開性にバランスよく優れ、粘着力の昂進が良好に抑制され、かつ、熱安定性に優れた表面保護材を与えることができる、表面保護材用粘着剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<表面保護材用粘着剤>
本発明の表面保護材用粘着剤は、後述する一般式(A)で表される水添ブロック共重合体Aと、後述する一般式(B)で表される水添ブロック共重合体Bとを含有してなる水添ブロック共重合体組成物と、粘着付与樹脂とを含有してなる表面保護材用粘着剤であって、
前記水添ブロック共重合体組成物における、前記水添ブロック共重合体Aと前記水添ブロック共重合体Bとの重量比(A/B)が10/90~80/20であり、
前記水添ブロック共重合体組成物を構成する重合体成分における、オレフィンの水添率が10~100%であるものである。
【0013】
本発明で用いる水添ブロック共重合体組成物は、下記一般式(A)で表される水添ブロック共重合体Aと、下記一般式(B)で表される水添ブロック共重合体Bとを含有してなるものである。
Ar1a-HDa-Ar2a (A)
Ar1b-HDb-Ar2b (B)
【0014】
上記一般式(A)において、Ar1a、Ar2aは、芳香族ビニル重合体ブロックであり、Ar1aの重量平均分子量(Mw(Ar1a))に対する、Ar2aの重量平均分子量(Mw(Ar2a))の比(Mw(Ar2a)/Mw(Ar1a))が2.6~66である。また、HDaは、共役ジエン重合体の水添重合体ブロックである。
【0015】
また、上記一般式(B)において、Ar1b、Ar2bは、芳香族ビニル重合体ブロックであり、HDbは、共役ジエン重合体の水添重合体ブロックである。
【0016】
水添ブロック共重合体Aおよび水添ブロック共重合体Bの芳香族ビニル重合体ブロックAr1a、Ar2a、Ar1b、Ar2bは、芳香族ビニル単量体単位により構成される重合体ブロックである。
【0017】
芳香族ビニル単量体単位を構成するために用いられる芳香族ビニル単量体としては、芳香族ビニル化合物であれば、特に限定されない。芳香族ビニル化合物としては、たとえば、スチレン;α-メチルスチレン、2-メチルスチレン、3-メチルスチレン、4-メチルスチレン、2-エチルスチレン、3-エチルスチレン、4-エチルスチレン、2,4-ジイソプロピルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、4-t-ブチルスチレン、5-t-ブチル-2-メチルスチレン等のアルキル基で置換されたスチレン類;2-クロロスチレン、3-クロロスチレン、4-クロロスチレン、4-ブロモスチレン、2-メチル-4,6-ジクロロスチレン、2,4-ジブロモスチレン等のハロゲン原子で置換されたスチレン類;ビニルナフタレン;などが挙げられる。これらのなかでも、スチレンを用いることが好ましい。これらの芳香族ビニル単量体は、各芳香族ビニル重合体ブロックにおいて、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、各芳香族ビニル重合体ブロックにおいて、同じ芳香族ビニル単量体を用いてもよいし、相異なる芳香族ビニル単量体を用いてもよい。
【0018】
また、水添ブロック共重合体Aおよび水添ブロック共重合体Bを構成する、芳香族ビニル重合体ブロックAr1a、Ar2a、Ar1b、Ar2bは、それぞれ、芳香族ビニル単量体単位以外の単量体単位を含んでいてもよい。芳香族ビニル単量体単位以外の単量体単位を構成する単量体としては、1,3-ブタジエン、イソプレン(2-メチル-1,3-ブタジエン)などの共役ジエン単量体;α,β-不飽和ニトリル単量体;不飽和カルボン酸または酸無水物単量体;不飽和カルボン酸エステル単量体;非共役ジエン単量体;などが挙げられる。
【0019】
各芳香族ビニル重合体ブロックにおける芳香族ビニル単量体単位以外の単量体単位の含有量は、芳香族ビニル重合体ブロック全体に対して、20重量%以下であることが好ましく、10重量%以下であることがより好ましく、実質的に0重量%であることが特に好ましい。
【0020】
水添ブロック共重合体Aおよび水添ブロック共重合体Bを構成する、共役ジエン重合体の水添重合体ブロックHDa、HDbは、共役ジエン単量体単位により構成される重合体ブロックであって、かつ、重合体ブロックを構成する共役ジエン単量体単位のうち、少なくとも一部が水素化されてなるものである。
【0021】
共役ジエン単量体単位を構成するために用いられる共役ジエン単量体としては、共役ジエン化合物であれば特に限定されない。共役ジエン化合物としては、たとえば、1,3-ブタジエン、イソプレン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2-クロロ-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエンなどが挙げられる。これらの中でも、重合反応性の観点から、1,3-ブタジエンおよび/またはイソプレンを用いることが好ましく、イソプレンを用いることが特に好ましい。これらの共役ジエン単量体は、各水添重合体ブロックにおいて、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、各水添重合体ブロックにおいて、同じ共役ジエン単量体を用いてもよいし、相異なる共役ジエン単量体を用いることもできる。
【0022】
水添ブロック共重合体Aおよび水添ブロック共重合体Bを構成する、共役ジエン重合体の水添重合体ブロックHDa、HDbは、それぞれ、共役ジエン単量体単位以外の単量体単位を含んでいてもよい。共役ジエン単量体単位以外の単量体単位を構成する単量体としては、スチレン、α-メチルスチレンなどの芳香族ビニル単量体;α,β-不飽和ニトリル単量体;不飽和カルボン酸または酸無水物単量体;不飽和カルボン酸エステル単量体;非共役ジエン単量体;などが挙げられる。
【0023】
各水添重合体ブロックにおける共役ジエン単量体単位以外の単量体単位の含有量は、共役ジエン重合体ブロック全体に対し、20重量%以下であることが好ましく、10重量%以下であることがより好ましく、実質的に0重量%であることが特に好ましい。
【0024】
水添ブロック共重合体組成物を構成する水添ブロック共重合体Aは、Ar1aの重量平均分子量(Mw(Ar1a))に対する、Ar2aの重量平均分子量(Mw(Ar2a))の比(Mw(Ar2a)/Mw(Ar1a))が2.6~66の範囲にあるものであり、そのため、比較的小さい重量平均分子量を有する芳香族ビニル重合体ブロックAr1a、共役ジエン重合体の水添重合体ブロックHDa、および比較的大きい重量平均分子量を有する芳香族ビニル重合体ブロックAr2aが、この順で連なって構成される非対称な芳香族ビニル-共役ジエン-芳香族ビニルブロック共重合体の水素化物である。
【0025】
水添ブロック共重合体Aにおいて、Mw(Ar2a)/Mw(Ar1a)は、2.6~66の範囲であり、好ましくは4~40の範囲、より好ましくは4.5~35の範囲である。Mw(Ar2a)/Mw(Ar1a)が小さすぎても、あるいは、大きすぎても、得られる表面保護材は粘着性および展開性に劣るものとなってしまう。なお、本発明において、重合体や重合体ブロックの重量平均分子量は、高速液体クロマトグラフィの測定による、ポリスチレン換算の値として求めるものとする。
【0026】
なお、水添ブロック共重合体Aを構成する、比較的小さい重量平均分子量を有する芳香族ビニル重合体ブロックAr1aの重量平均分子量(Mw(Ar1a))は、好ましくは2,000~40,000であり、より好ましくは2,500~30,000、さらに好ましくは3,000~10,000である。Mw(Ar1a)を上記範囲とすることで、得られる表面保護材を粘着性と展開性により優れたものとすることができる。
【0027】
また、水添ブロック共重合体Aを構成する、比較的大きい重量平均分子量を有する芳香族ビニル重合体ブロックAr2aの重量平均分子量(Mw(Ar2a))は、好ましくは5,000~250,000であり、より好ましくは8,000~120,000、さらに好ましくは10,000~80,000である。Mw(Ar2a)を上記範囲とすることで、得られる表面保護材を、粘着力の昂進がより抑制されたものとすることができる。
【0028】
水添ブロック共重合体Aを構成する、共役ジエン重合体の水添重合体ブロックHDaのビニル結合含有量(全共役ジエン単量体単位において、1,2-ビニル結合と3,4-ビニル結合が占める割合)は、好ましくは0.1~50モル%であり、より好ましくは1~20モル%であり、さらに好ましくは2~15モル%であり、特に好ましくは3~10モル%である。ビニル結合含有量を上記範囲とすることで、得られる表面保護材を、粘着性により優れたものとすることができる。
【0029】
水添ブロック共重合体Aを構成する、共役ジエン重合体の水添重合体ブロックHDaの重量平均分子量(Mw(HDa))は、好ましくは10,000~300,000であり、より好ましくは15,000~300,000、さらに好ましくは15,000~150,000、特に好ましくは20,000~80,000である。
【0030】
水添ブロック共重合体Aの全単量体単位に対する芳香族ビニル単量体単位の含有量は、特に限定されないが、好ましくは10~35重量%であり、より好ましくは12~32重量%、さらに好ましくは15~30重量%である。
【0031】
水添ブロック共重合体A全体としての重量平均分子量も、特に限定されないが、好ましくは20,000~500,000、より好ましくは25,000~300,000、さらに好ましくは30,000~150,000である。
【0032】
また、水添ブロック共重合体組成物を構成する水添ブロック共重合体Bは、共役ジエン重合体ブロックHDbの両端に、それぞれ、2つの芳香族ビニル重合体ブロックAr1b、Ar2bが結合して構成される芳香族ビニル-共役ジエン-芳香族ビニルブロック共重合体の水素化物である。
【0033】
水添ブロック共重合体Bを構成する、2つの芳香族ビニル重合体ブロックAr1b、Ar2bの重量平均分子量(Mw(Ar1b)、Mw(Ar2b))は、それぞれ、好ましくは2,000~40,000であり、より好ましくは2,500~30,000、さらに好ましくは3,000~10,000である。Mw(Ar1b)およびMw(Ar2b)を上記範囲とすることで、得られる表面保護材を粘着性と展開性により優れたものとすることができる。2つの芳香族ビニル重合体ブロックAr1b、Ar2bの重量平均分子量(Mw(Ar1b)、Mw(Ar2b))は、上記の範囲内であれば、互いに等しいものであっても、互いに異なるものであってもよいが、実質的に等しいものであることが好ましい。たとえば、Ar1bの重量平均分子量(Mw(Ar1b))に対する、Ar2bの重量平均分子量(Mw(Ar2b))の比(Mw(Ar2b)/Mw(Ar1b))が0.95~1.05の範囲にあることが好ましい。
【0034】
また、これら2つの芳香族ビニル重合体ブロックAr1b、Ar2bのうちの少なくとも1つの重合体ブロックは、その重量平均分子量(Mw(Ar1b)、Mw(Ar2b))が、水添ブロック共重合体Aを構成する、比較的小さい重量平均分子量を有する芳香族ビニル重合体ブロックAr1aの重量平均分子量(Mw(Ar1a))と、実質的に等しいことがより好ましい。たとえば、Ar1aの重量平均分子量(Mw(Ar1a))に対する、Ar1bの重量平均分子量(Mw(Ar1b))の比(Mw(Ar1b)/Mw(Ar1a))が0.95~1.05の範囲にあるか、あるいは、Ar1aの重量平均分子量(Mw(Ar1a))に対する、Ar2bの重量平均分子量(Mw(Ar2b))の比(Mw(Ar2b)/Mw(Ar1a))が0.95~1.05の範囲にあることが好ましい。
【0035】
水添ブロック共重合体Bを構成する、共役ジエン重合体の水添重合体ブロックHDbのビニル結合含有量(全共役ジエン単量体単位において、1,2-ビニル結合と3,4-ビニル結合が占める割合)は、好ましくは0.1~50モル%であり、より好ましくは1~20モル%であり、さらに好ましくは2~15モル%であり、特に好ましくは3~10モル%である。ビニル結合含有量を上記範囲とすることで、得られる表面保護材を、粘着性により優れたものとすることができる。なお、水添ブロック共重合体Bを構成する、共役ジエン重合体の水添重合体ブロックHDbのビニル結合含有量は、水添ブロック共重合体Aを構成する、共役ジエン重合体の水添重合体ブロックHDaのビニル結合含有量と実質的に等しいことが好ましい。
【0036】
なお、本発明で用いる水添ブロック共重合体組成物を製造する際に、たとえば、後述する(1a)~(6a)の工程を有する水添ブロック共重合体組成物の製造方法を採用する場合等、カップリング剤を使用した製造方法を採用する場合には、水添ブロック共重合体Bを構成する、共役ジエン重合体の水添重合体ブロックHDbが、カップリング剤の残基を含有するものであってもよい。具体的には、水添ブロック共重合体Bが、下記式で表されるような化合物であってもよい。
Ar1b-(HDb’-X-HDb’ ’)-Ar2b
すなわち、上記式に示すように、共役ジエン重合体の水添重合体ブロックHDbが、カップリング剤の残基Xを介して、HDb’、HDb’ ’がカップリングされてなるような態様であってもよい。なお、カップリング剤の残基Xとしては、後述する(1a)~(6a)の工程を有する水添ブロック共重合体組成物の製造方法において例示されている2官能のカップリング剤の残基などが挙げられる。
【0037】
水添ブロック共重合体Bを構成する、共役ジエン重合体の水添重合体ブロックHDbの重量平均分子量(Mw(HDb))は、好ましくは10,000~300,000であり、より好ましくは15,000~300,000、さらに好ましくは15,000~150,000、特に好ましくは20,000~80,000である。
【0038】
水添ブロック共重合体Bの全単量体単位に対する芳香族ビニル単量体単位の含有量は、特に限定されないが、好ましくは35~90重量%であり、より好ましくは40~87重量%、さらに好ましくは43~85重量%である。
【0039】
水添ブロック共重合体B全体としての重量平均分子量も、特に限定されないが、好ましくは20,000~200,000、より好ましくは25,000~150,000、さらに好ましくは30,000~70,000である。
【0040】
本発明で用いる水添ブロック共重合体組成物を構成する水添ブロック共重合体Aおよび水添ブロック共重合体B、ならびに、これらを構成する各重合体ブロックの、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比〔(Mw)/(Mn)〕で表される分子量分布は、特に限定されないが、それぞれ、好ましくは1.1以下であり、より好ましくは1.05以下である。
【0041】
本発明で用いる水添ブロック共重合体組成物に含有される水添ブロック共重合体Aと水添ブロック共重合体Bとの重量比(A/B)は、10/90~80/20であり、好ましくは12/88~60/40、より好ましくは15/85~50/50である。このような比率で、水添ブロック共重合体Aと水添ブロック共重合体Bとを含有することにより、得られる表面保護材を粘着性および展開性にバランスよく優れたものとすることができる。重量比(A/B)が小さすぎると、得られる表面保護材は粘着力が昂進し易いものとなり、重量比(A/B)が大きすぎると、得られる表面保護材は粘着性が不十分なものとなる。
【0042】
また、本発明で用いる水添ブロック共重合体組成物は、水添ブロック共重合体組成物を構成する重合体成分における、オレフィンの水添率が10~100%の範囲であるものである。ここで、オレフィンの水添率とは、水添ブロック共重合体組成物を構成する全ての重合体成分のオレフィンの水添率であり、具体的には、水添前の重合体成分中に含まれる全非芳香族性炭素-炭素二重結合のうち、水素化されたものの割合(モル%)である。本発明者等が鋭意検討を行ったところ、水添ブロック共重合体組成物として、上記一般式(A)で表される水添ブロック共重合体Aと、上記一般式(B)で表される水添ブロック共重合体Bとを特定の重量割合で含有するものであり、かつ、水添ブロック共重合体組成物におけるオレフィンの水添率を上記範囲とするものを含有することにより、これを用いて得られる表面保護材用粘着剤を、粘着性および展開性にバランスよく優れ、しかも、優れた熱安定性を有する表面保護材を形成可能なものとすることができることを見出したものである。特に、本発明によれば、水添ブロック共重合体組成物として、上記一般式(A)で表される水添ブロック共重合体Aと、上記一般式(B)で表される水添ブロック共重合体Bとを特定の重量割合で含有するものを含有することで、水添による熱安定性の向上効果を得られるものであり、これにより、得られる表面保護材を、粘着性および展開性をバランスよく優れ、さらには、粘着力の昂進が良好に抑制され、しかも、熱安定性に優れたものとすることができるものである。
【0043】
本発明で用いる水添ブロック共重合体組成物を構成する重合体成分における、オレフィンの水添率は、10~100%の範囲であればよいが、好ましくは30~100%であり、より好ましくは70~100%、さらに好ましくは90~100%である。オレフィンの水添率が低すぎると、得られる表面保護材は熱安定性に不十分なものとなってしまう。
【0044】
また、本発明で用いる水添ブロック共重合体組成物は、オレフィンの水添率が上記範囲にあればよいが、水添ブロック共重合体組成物を構成する重合体成分における、ヨウ素価が0~300gI2/100gの範囲内であることが好ましく、0~150gI2/100gの範囲内であることがより好ましく、0~125gI2/100gの範囲内であることがさらに好ましく、0~90gI2/100gの範囲内であることがさらにより好ましく、0~30gI2/100gの範囲内であることが特に好ましい。ヨウ素価が上記範囲内であれば、得られる表面保護材は熱安定性により優れたものとなる。
【0045】
本発明で用いる水添ブロック共重合体組成物は、水添ブロック共重合体Aおよび水添ブロック共重合体Bのみを重合体成分として含むものであってよいが、本発明の作用効果を損なわない範囲であれば、水添ブロック共重合体Aおよび水添ブロック共重合体B以外の重合体成分を含むものであってもよい。
【0046】
本発明で用いる水添ブロック共重合体組成物に含まれ得る水添ブロック共重合体Aおよび水添ブロック共重合体B以外の重合体成分としては、水添ブロック共重合体Aおよび水添ブロック共重合体B以外の芳香族ビニル-共役ジエン-芳香族ビニルブロック共重合体、芳香族ビニル-共役ジエンブロック共重合体、芳香族ビニル単独重合体、共役ジエン単独重合体、芳香族ビニル-共役ジエンランダム共重合体、およびこれらの分岐型重合体;ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマーなどの熱可塑性エラストマー;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、アクリロニトリル-スチレン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体、ポリフェニレンエーテルなどの熱可塑性樹脂;などが挙げられる。
【0047】
本発明で用いる水添ブロック共重合体組成物において、水添ブロック共重合体Aおよび水添ブロック共重合体B以外の重合体成分の含有量は、重合体成分全体に対して、20重量%以下であることが好ましく、10重量%以下であることがより好ましい。
【0048】
本発明で用いる水添ブロック共重合体組成物において、水添ブロック共重合体組成物中の重合体成分全体(重合体成分を構成する全単量体単位)に対して、芳香族ビニル単量体単位が占める割合(以下、「全体の芳香族ビニル単量体単位含有量」ということがある)は、好ましくは20~70重量%であり、より好ましくは25~60重量%、さらに好ましくは30~50重量%、特に好ましくは32~50重量%である。全体の芳香族ビニル単量体単位含有量を、上記範囲とすることで、得られる表面保護材を、粘着力の昂進がより良好に抑制されたものとすることができる。全体の芳香族ビニル単量体単位含有量は、水添ブロック共重合体組成物を構成する水添ブロック共重合体A、水添ブロック共重合体Bおよびこれら以外の重合体成分のそれぞれの芳香族ビニル単量体単位の含有量を勘案し、それらの配合量を調節することにより、容易に調節することができる。
【0049】
なお、水添ブロック共重合体組成物を構成する全ての重合体成分が、芳香族ビニル単量体単位および共役ジエン単量体単位のみにより構成されている場合には、Rubber Chem.Technol.,45,1295(1972)に記載された方法に従って、水添ブロック共重合体組成物中の重合体成分をオゾン分解し、次いで、水素化リチウムアルミニウムにより還元することにより、共役ジエン単量体単位部分(水添された部分も含む)が分解され、芳香族ビニル単量体単位部分のみを取り出すことができるため、容易に全体の芳香族ビニル単量体単位含有量を測定することができる。
【0050】
本発明で用いる水添ブロック共重合体組成物を構成する重合体成分全体の重量平均分子量は、特に限定されないが、好ましくは30,000~400,000であり、より好ましくは35,000~100,000、さらに好ましくは40,000~80,000である。
【0051】
また、本発明で用いる水添ブロック共重合体組成物を構成する重合体成分全体の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)で表される分子量分布は、特に限定されないが、好ましくは1.01~10であり、より好ましくは1.02~5、さらに好ましくは1.03~3である。
【0052】
本発明で用いる水添ブロック共重合体組成物を製造するための方法として、特に限定されず、たとえば、従来のブロック共重合体の製法および水素化方法に従って、水添ブロック共重合体Aと水添ブロック共重合体Bとをそれぞれ別個に製造し、必要に応じて、他の重合体成分や各種添加剤を配合した上で、それらを混練や溶液混合等の常法に従って混合することにより、製造することができる。一方で、本発明においては、水添ブロック共重合体組成物を高い生産性にて、製造することができるという観点より、以下に説明する製造方法が好適である。
【0053】
すなわち、本発明で用いる水添ブロック共重合体組成物の製造方法は、下記の(1)~(7)の工程を有する製造方法であることが好ましい。
(1):溶媒中で重合開始剤を用いて、芳香族ビニル単量体を重合させることにより、活性末端を有する芳香族ビニル重合体を含有する溶液を得る工程
(2):上記(1)の工程で得られる活性末端を有する芳香族ビニル重合体を含有する溶液に共役ジエン単量体を添加して、該共役ジエン単量体を重合させることにより、活性末端を有する芳香族ビニル-共役ジエンブロック共重合体を含有する溶液を得る工程
(3):上記(2)の工程で得られる活性末端を有する芳香族ビニル-共役ジエンブロック共重合体を含有する溶液に芳香族ビニル単量体を添加して、該芳香族ビニル単量体を重合させることにより、活性末端を有する芳香族ビニル-共役ジエン-芳香族ビニルブロック共重合体を含有する溶液を得る工程
(4):上記(3)の工程で得られる活性末端を有する芳香族ビニル-共役ジエン-芳香族ビニルブロック共重合体を含有する溶液に、その活性末端に対して1モル当量未満となる量で重合停止剤を添加し、活性末端を有する芳香族ビニル-共役ジエン-芳香族ビニルブロック共重合体の活性末端の一部を失活させて、ブロック共重合体B’を含有する溶液を得る工程
(5):上記(4)の工程で得られるブロック共重合体B’を含有する溶液に、芳香族ビニル単量体を添加して、該芳香族ビニル単量体を重合させることにより、ブロック共重合体B’およびブロック共重合体A’を含有する溶液を得る工程
(6):上記(5)の工程で得られるブロック共重合体B’およびブロック共重合体A’を含有する溶液について、水素添加反応を行うことで、水添ブロック共重合体Bおよび水添ブロック共重合体Aを含有する溶液を得る工程
(7):上記(6)の工程で得られる水添ブロック共重合体Bおよび水添ブロック共重合体Aを含有する溶液から、水添ブロック共重合体組成物を回収する工程
【0054】
<工程(1)>
この水添ブロック共重合体組成物の製造方法では、まず、工程(1)において、溶媒中で重合開始剤を用いて、芳香族ビニル単量体を重合させることにより、活性末端を有する芳香族ビニル重合体を含有する溶液を得る。
【0055】
重合開始剤としては、芳香族ビニル単量体と共役ジエン単量体とに対し、アニオン重合活性があることが知られている重合開始剤を使用することができる。重合開始剤としては、たとえば、有機アルカリ金属化合物、有機アルカリ土類金属化合物、有機ランタノイド系列希土類金属化合物などが挙げられる。
【0056】
有機アルカリ金属化合物としては、分子中に1個以上のリチウム原子を有する有機リチウム化合物が特に好適に用いられる。有機アルカリ金属化合物の具体例としては、エチルリチウム、n-プロピルリチウム、イソプロピルリチウム、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、t-ブチルリチウム、ヘキシルリチウム、フェニルリチウム、スチルベンリチウム、ジアルキルアミノリチウム、ジフェニルアミノリチウム、ジトリメチルシリルアミノリチウムなどの有機モノリチウム化合物;メチレンジリチウム、テトラメチレンジリチウム、ヘキサメチレンジリチウム、イソプレニルジリチウム、1,4-ジリチオ-エチルシクロヘキサンなどの有機ジリチウム化合物;更には、1,3,5-トリリチオベンゼンなどの有機トリリチウム化合物;などが挙げられる。これらのなかでも、有機モノリチウム化合物が特に好適に用いられる。
【0057】
有機アルカリ土類金属化合物としては、たとえば、n-ブチルマグネシウムブロミド、n-ヘキシルマグネシウムブロミド、エトキシカルシウム、ステアリン酸カルシウム、t-ブトキシストロンチウム、エトキシバリウム、イソプロポキシバリウム、エチルメルカプトバリウム、t-ブトキシバリウム、フェノキシバリウム、ジエチルアミノバリウム、ステアリン酸バリウム、エチルバリウムなどが挙げられる。
【0058】
また、上記以外に、ネオジム、サマリウム、ガドリニウムなどを含むランタノイド系列希土類金属化合物/アルキルアルミニウム/アルキルアルミニウムハライド/アルキルアルミニウムハイドライドからなる複合触媒や、チタン、バナジウム、サマリウム、ガドリニウムなどを含むメタロセン型触媒などの、有機溶媒中で均一系となり、リビング重合性を有するものなどを用いることもできる。
【0059】
上記重合開始剤は、1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を混合して使用してもよい。重合開始剤の使用量は、目的とする各ブロック共重合体の分子量に応じて決定すればよく、特に限定されないが、重合に使用する全単量体100gあたり、好ましくは0.01~20ミリモルであり、より好ましくは0.05~15ミリモル、さらに好ましくは0.1~10ミリモルである。
【0060】
重合に用いる溶媒は、重合開始剤に対し不活性なものであればよく、特に限定されないが、たとえば、鎖状炭化水素溶媒、環式炭化水素溶媒またはこれらの混合溶媒などが挙げられる。鎖状炭化水素溶媒としては、たとえば、n-ブタン、イソブタン、1-ブテン、イソブチレン、トランス-2-ブテン、シス-2-ブテン、1-ペンテン、トランス-2-ペンテン、シス-2-ペンテン、n-ペンタン、イソペンタン、neo-ペンタン、n-ヘキサンなどの、炭素数4~6の鎖状アルカンおよびアルケンなどが挙げられる。また、環式炭化水素溶媒としては、たとえば、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族化合物;シクロペンタン、シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素化合物;などが挙げられる。これらの溶媒は、1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を混合して使用してもよい。
【0061】
溶媒の使用量は、特に限定されないが、重合反応後の溶液中における全ブロック共重合体の濃度が、5~60重量%となる量とすることが好ましく、10~55重量%となる量とすることがより好ましく、20~50重量%となる量とすることがさらに好ましい。
【0062】
また、水添ブロック共重合体組成物を製造する際には、各ブロック共重合体の各重合体ブロックの構造を制御するために、反応系にルイス塩基化合物を添加してもよい。ルイス塩基化合物としては、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテルなどのエーテル類;テトラメチルエチレンジアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、キヌクリジンなどの第三級アミン類;カリウム-t-アミルオキシド、カリウム-t-ブチルオキシドなどのアルカリ金属アルコキシド類;トリフェニルホスフィンなどのホスフィン類;などが挙げられる。これらのルイス塩基化合物は、1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を混合して使用してもよい。
【0063】
水添ブロック共重合体組成物を製造する際において、ルイス塩基化合物を添加する時期は、特に限定されず、目的とする各ブロック共重合体の構造に応じて適宜決定すればよい。たとえば、重合を開始する前に予め添加してもよいし、一部の重合体ブロックを重合してから添加してもよい。さらには、重合を開始する前に予め添加するとともに、一部の重合体ブロックを重合した後、さらに追加添加してもよい。
【0064】
重合反応温度は、好ましくは10~150℃、より好ましくは30~130℃、さらに好ましくは40~90℃であり、重合時間は、好ましくは48時間以内、より好ましくは0.5~10時間である。また、重合圧力は、重合温度において単量体および溶媒を液相に維持するのに充分な圧力の範囲内とすればよく、特に限定されない。
【0065】
以上のような条件で、溶媒中で重合開始剤を用いて、芳香族ビニル単量体を重合させることにより、活性末端を有する芳香族ビニル重合体を含有する溶液を得ることができる。このようにして、工程(1)において得られる活性末端を有する芳香族ビニル重合体は、水添ブロック共重合体組成物を構成する、水添ブロック共重合体Aの比較的小さい重量平均分子量を有する芳香族ビニル重合体ブロックAr1aおよび水添ブロック共重合体Bの芳香族ビニル重合体ブロックAr1b、Ar2bのいずれか一方(すなわち、Ar1bまたはAr2b)を構成することとなるものである。そのため、工程(1)における、芳香族ビニル単量体の量を含む各重合条件は、これらの重合体ブロックの目的とする重量平均分子量などに応じて決定すればよい。
【0066】
<工程(2)>
次に、工程(2)において、上記工程(1)で得られた活性末端を有する芳香族ビニル重合体を含有する溶液に、共役ジエン単量体を添加し、該共役ジエン単量体を重合させることにより、活性末端を有する芳香族ビニル-共役ジエンブロック共重合体を含有する溶液を得る。
【0067】
工程(2)によれば、上記工程(1)で得られた活性末端を有する芳香族ビニル重合体を含有する溶液に、共役ジエン単量体を添加することにより、活性末端を起点として、共役ジエン重合体鎖が形成され、これにより、活性末端を有する芳香族ビニル-共役ジエンブロック共重合体を含有する溶液を得ることができる。
【0068】
工程(2)において形成される共役ジエン重合体鎖(工程(2)において得られる活性末端を有する芳香族ビニル-共役ジエンブロック共重合体を構成する、共役ジエンブロック)は、水添ブロック共重合体Aの共役ジエン重合体の水添重合体ブロックHDaおよび水添ブロック共重合体Bの共役ジエン重合体の水添重合体ブロックHDbを構成することとなるものである。そのため、工程(2)における、共役ジエン重合体の量を含む各重合条件は、これらの重合体ブロックの目的とする重量平均分子量などに応じて、決定すればよい(たとえば、重合条件は、上記工程(1)において説明した範囲において決定すればよい。)。
【0069】
<工程(3)>
次に、工程(3)において、上記工程(2)で得られた活性末端を有する芳香族ビニル-共役ジエンブロック共重合体を含有する溶液に、芳香族ビニル単量体を添加し、該芳香族ビニル単量体を重合させることにより、活性末端を有する芳香族ビニル-共役ジエン-芳香族ビニルブロック共重合体を含有する溶液を得る。
【0070】
工程(3)によれば、上記工程(2)で得られた活性末端を有する芳香族ビニル-共役ジエンブロック共重合体を含有する溶液に、芳香族ビニル単量体を添加することにより、活性末端を起点として、芳香族ビニル重合体鎖が形成され、これにより、活性末端を有する芳香族ビニル-共役ジエン-芳香族ビニルブロック共重合体を含有する溶液を得ることができる。
【0071】
工程(3)において形成される芳香族ビニル重合体鎖(工程(3)において得られる活性末端を有する芳香族ビニル-共役ジエン-芳香族ビニルブロック共重合体を構成する、芳香族ビニルブロック)は、水添ブロック共重合体Bの芳香族ビニル重合体ブロックAr1b、Ar2bのうち一方(すなわち、Ar1bまたはAr2bのうち、工程(1)において形成されたブロックとは異なるブロックであり、たとえば、工程(1)においてAr1bを形成した場合には、Ar2bが該当することとなる。)を構成することとなるものである。そのため、工程(3)における、芳香族ビニル単量体の量を含む各重合条件は、このような重合体ブロックの目的とする重量平均分子量などに応じて決定すればよい(たとえば、重合条件は、上記工程(1)において説明した範囲において決定すればよい。)。
【0072】
<工程(4)>
次に、工程(4)において、上記工程(3)で得られた活性末端を有する芳香族ビニル-共役ジエン-芳香族ビニルブロック共重合体を含有する溶液に、その活性末端に対して1モル当量未満となる量で重合停止剤を添加し、活性末端を有する芳香族ビニル-共役ジエン-芳香族ビニルブロック共重合体の活性末端の一部を失活させて、ブロック共重合体B’を含有する溶液を得る。
【0073】
工程(4)で得られるブロック共重合体B’は、水添ブロック共重合体Bを得るための水添前のブロック共重合体となるものである。
【0074】
重合停止剤は、活性末端と反応して活性末端を失活させることができ、1つの活性末端と反応した後、別の活性末端と反応しないものであればよく、特に限定されないが、ハロゲン原子を含有しない化合物であることが好ましく、なかでも、活性末端と反応した際に金属アルコキシド、金属アリールオキシド、または金属水酸化物を生じさせる重合停止剤が特に好ましい。重合停止剤の具体例としては、水;メタノールやエタノールなどの1価アルコール;フェノールやクレゾールなどの1価フェノール類;などが挙げられる。
【0075】
重合停止剤の使用量は、水添ブロック共重合体組成物を構成する水添ブロック共重合体Aと水添ブロック共重合体Bとの割合に応じて決定すればよく、重合体の活性末端に対して1モル当量未満となる量であれば特に限定されないが、重合停止剤の使用量は、重合体の活性末端に対し、0.18~0.91モル当量となる範囲とすることが好ましく、0.35~0.80モル当量となる範囲とすることがより好ましい。
【0076】
以上のようにして、工程(4)によれば、活性末端を有する芳香族ビニル-共役ジエン-芳香族ビニルブロック共重合体を含有する溶液に、その活性末端に対して1モル当量未満となる量で重合停止剤を添加することにより、活性末端を有する芳香族ビニル-共役ジエン-芳香族ビニルブロック共重合体のうちの一部の共重合体の活性末端が失活し、その活性末端が失活した共重合体は、水添ブロック共重合体Bを構成するための、水添前のブロック共重合体B’となる。そして、重合停止剤と反応しなかった活性末端を有する芳香族ビニル-共役ジエン-芳香族ビニルブロック共重合体の残りの一部は、未反応のまま、活性末端を維持した状態にて溶液中に残ることとなる。
【0077】
<工程(5)>
次に、工程(5)において、上記工程(4)で得られたブロック共重合体B’を含有する溶液に、芳香族ビニル単量体を添加して、該芳香族ビニル単量体を重合させることにより、ブロック共重合体B’およびブロック共重合体A’を含有する溶液を得る。
【0078】
工程(5)によれば、上記工程(4)で得られる溶液に芳香族ビニル単量体を添加すると、重合停止剤と反応せずに残っていた活性末端を有する芳香族ビニル-共役ジエン-芳香族ビニルブロック共重合体の活性末端を有する側の芳香族ビニル重合体鎖から、さらに芳香族ビニル単量体が重合して、芳香族ビニル重合体鎖が延長され、これにより、ブロック共重合体A’が得られる。なお、ブロック共重合体A’は、芳香族ビニル重合体鎖が延長されることにより得られる芳香族ビニル-共役ジエン-芳香族ビニルブロック共重合体であり、水添ブロック共重合体Aを得るための水添前のブロック共重合体となるものである。
【0079】
このとき、工程(5)において、延長される芳香族ビニル重合体鎖は、水添ブロック共重合体組成物を構成する、水添ブロック共重合体Aの比較的大きい重量平均分子量を有する芳香族ビニル重合体ブロックAr2aを構成することとなる。そのため、工程(5)における、芳香族ビニル単量体の量を含む各重合条件は、このような芳香族ビニル重合体ブロックAr2aの目的とする重量平均分子量などに応じて決定すればよい(たとえば、重合条件は、上記工程(1)において説明した範囲において決定すればよい。)。
【0080】
<工程(6)>
次に、工程(6)において、上記工程(5)で得られたブロック共重合体B’およびブロック共重合体A’を含有する溶液について、水素添加反応を行うことで、水添ブロック共重合体Bおよび水添ブロック共重合体Aを含有する溶液を得る。
【0081】
ブロック共重合体B’およびブロック共重合体A’を含有する溶液について、水素添加反応を行う方法としては、特に限定されないが、たとえば、水素化触媒の存在下において、ブロック共重合体B’およびブロック共重合体A’を含有する溶液を、水素と接触させる方法などが挙げられる。
【0082】
水素化触媒としては、特に限定されないが、たとえば、Ni、Pt、Pd、Ru等の金属をカーボン、シリカ、アルミナ、ケイソウ土等の担体に担持させた担持型不均一系触媒と、Ni、Co、Fe、Crなどの有機塩またはアセチルアセトン塩と有機Alなどの還元剤とを用いるチーグラー型触媒;Ru、Rhなどの有機金属化合物などの有機錯体触媒;チタノセン化合物に還元剤として有機Li、有機Al、有機Mgなどを用いる均一触媒;などが挙げられる。このなかでも、チーグラー型触媒が好ましい。
【0083】
水素化反応は、たとえば、特公昭42-8704号公報、特公昭43-6636号公報、特開昭59-133203号公報、特開昭60-220147号公報等に開示されている方法に従って行うことができる。
【0084】
水素化反応の条件は、水添ブロック共重合体組成物を構成する重合体成分における、オレフィンの水添率に応じて選択すればよいが、水素添加反応温度は、好ましくは0~200℃であり、より好ましくは30~150℃である。また、水素添加反応に使用される水素の圧力は、好ましくは0.1~15MPaであり、より好ましくは0.2~10MPa、さらに好ましくは0.3~5MPaであり、水素添加反応時間は、好ましくは3分~10時間であり、より好ましくは10分~5時間である。なお、水素添加反応は、バッチプロセス、連続プロセス、あるいはこれらの組み合わせのいずれであってもよい。
【0085】
<工程(7)>
次に、工程(7)において、上記工程(6)で得られた水添ブロック共重合体Bおよび水添ブロック共重合体Aを含有する溶液から、目的とする水添ブロック共重合体組成物を回収する。
【0086】
回収の方法は、常法に従えばよく、特に限定されない。たとえば、反応終了後に、必要に応じて、重合停止剤を添加し、活性末端を有する重合体の活性末端を失活させて、さらに必要に応じて、酸化防止剤などの添加剤を添加してから、溶液に直接乾燥法やスチームストリッピングなどの公知の溶媒方法を適用することにより、目的の水添ブロック共重合体組成物を回収することができる。なお、この際において、重合停止剤としては、上述したものを用いることができる。
【0087】
スチームストリッピングなどによって、水添ブロック共重合体組成物をスラリーとして回収した場合には、押出機型スクイザーなどの任意の脱水機を用いることで脱水を行い、クラム状の水添ブロック共重合体組成物を回収し、さらに得られたクラムをバンドドライヤーやエクスパンション押出乾燥機などの任意の乾燥機を用いて乾燥することが好ましい。また、このようにして得られる水添ブロック共重合体組成物は、常法に従い、ペレット形状などに加工してから使用に供してもよい。
【0088】
このようにして得られる、固形状(ペレット状、クラム状など)の水添ブロック共重合体組成物は、たとえば、ホッパードライヤー、熱風循環式棚型乾燥器、棚型真空乾燥器、撹拌型真空乾燥器などの乾燥機を用いて、固形状の水添ブロック共重合体組成物に含まれる水分量を低減させてから使用に供することが好ましい。このときの乾燥条件は、目的の水分量とすることができる限りにおいて特に限定されず、低減させるべき水分量や乾燥機の種類などに応じて設定すればよいが、通常、乾燥温度40~90℃、乾燥時間1~24時間の範囲で設定される。
【0089】
上記した水添ブロック共重合体組成物の製造方法によれば、水添ブロック共重合体Aと水添ブロック共重合体Bとを同じ反応容器内で連続して得ることができるので、それぞれの水添ブロック共重合体を個別に製造し混合する場合に比して、優れた生産性で目的の水添ブロック共重合体組成物を得ることができる。
【0090】
なお、本発明における水添ブロック共重合体組成物を製造する際には、上記した好適な製造方法(工程(1)~(7)を備える製造方法)のほかに、下記の(1a)~(6a)の工程を有する水添ブロック共重合体組成物の製造方法も好ましく用いられる。
(1a):溶媒中で重合開始剤を用いて、芳香族ビニル単量体を重合させることにより、活性末端を有する芳香族ビニル重合体を含有する溶液を得る工程
(2a):上記(1a)の工程で得られる活性末端を有する芳香族ビニル重合体を含有する溶液に共役ジエン単量体を添加して、該共役ジエン単量体を重合させることにより、活性末端を有する芳香族ビニル-共役ジエンブロック共重合体を含有する溶液を得る工程
(3a):上記(2a)の工程で得られる活性末端を有する芳香族ビニル-共役ジエンブロック共重合体を含有する溶液に、その活性末端に対して官能基の総量が1モル当量未満となる量で、2官能のカップリング剤を添加し、活性末端を有する芳香族ビニル-共役ジエンブロック共重合体の一部をカップリングさせて、ブロック共重合体B’を含有する溶液を得る工程
(4a):上記(3a)の工程で得られるブロック共重合体B’を含有する溶液に、芳香族ビニル単量体を添加して、該芳香族ビニル単量体を重合させることにより、ブロック共重合体B’およびブロック共重合体A’を含有する溶液を得る工程
(5a):上記(4a)の工程で得られるブロック共重合体B’およびブロック共重合体A’を含有する溶液について、水素添加反応を行うことで、水添ブロック共重合体Bおよび水添ブロック共重合体Aを含有する溶液を得る工程
(6a):上記(5a)の工程で得られる水添ブロック共重合体Bおよび水添ブロック共重合体Aを含有する溶液から、水添ブロック共重合体組成物を回収する工程
【0091】
<工程(1a)、工程(2a)>
工程(1a)、工程(2a)は、上述した工程(1)、工程(2)と同様であり、同様の条件を採用することができる。
【0092】
<工程(3a)>
工程(3a)においては、上記工程(2a)で得られた活性末端を有する芳香族ビニル-共役ジエンブロック共重合体を含有する溶液に、その活性末端に対して官能基の総量が1モル当量未満となる量で、2官能のカップリング剤を添加し、活性末端を有する芳香族ビニル-共役ジエンブロック共重合体の一部をカップリングさせて、ブロック共重合体B’を含有する溶液を得る。
【0093】
工程(3a)で得られるブロック共重合体B’は、水添ブロック共重合体Bを得るための水添前のブロック共重合体となるものである。
【0094】
2官能のカップリング剤としては、活性末端と反応する官能基を2つ有するものであればよく、特に限定されないが、たとえば、ジクロロシラン、モノメチルジクロロシラン、ジメチルジクロロシランなどの2官能性ハロゲン化シラン;ジクロロエタン、ジブロモエタン、メチレンクロライド、ジブロモメタンなどの2官能性ハロゲン化アルカン;ジクロロスズ、モノメチルジクロロスズ、ジメチルジクロロスズ、モノエチルジクロロスズ、ジエチルジクロロスズ、モノブチルジクロロスズ、ジブチルジクロロスズなどの2官能性ハロゲン化スズ;が挙げられる。
【0095】
2官能のカップリング剤の使用量は、水添ブロック共重合体組成物を構成する水添ブロック共重合体Aと水添ブロック共重合体Bとの割合に応じて決定すればよい。
【0096】
以上のようにして、工程(3a)によれば、活性末端を有する芳香族ビニル-共役ジエンブロック共重合体を含有する溶液に、その活性末端に対して官能基の総量が1モル当量未満となる量で、2官能のカップリング剤を添加することで、活性末端を有する芳香族ビニル-共役ジエンブロック共重合体のうち、一部の共重合体がカップリングし、水添ブロック共重合体Bを構成するための、水添前のブロック共重合体B’となる。そして、2官能のカップリング剤と反応しなかった活性末端を有する芳香族ビニル-共役ジエンブロック共重合体の残りの一部は、未反応のまま、活性末端を維持した状態にて溶液中に残ることとなる。
【0097】
<工程(4a)>
次に、工程(4a)においては、上記工程(3a)で得られたブロック共重合体B’を含有する溶液に、芳香族ビニル単量体を添加して、該芳香族ビニル単量体を重合させることにより、ブロック共重合体B’およびブロック共重合体A’を含有する溶液を得る。
【0098】
工程(4a)によれば、上記工程(3a)で得られる溶液に芳香族ビニル単量体を添加すると、2官能のカップリング剤と反応せずに残っていた活性末端を有する芳香族ビニル-共役ジエンブロック共重合体の活性末端から、芳香族ビニル単量体が重合して、芳香族ビニル重合体鎖が形成され、これにより、ブロック共重合体A’が得られる。なお、ブロック共重合体A’は、水添ブロック共重合体Aを得るための水添前のブロック共重合体となるものである。
【0099】
このとき、工程(4a)において、形成される芳香族ビニル重合体鎖は、水添ブロック共重合体組成物を構成する、水添ブロック共重合体Aの比較的大きい重量平均分子量を有する芳香族ビニル重合体ブロックAr2aを構成することとなる。そのため、工程(4a)における、芳香族ビニル単量体の量を含む各重合条件は、このような芳香族ビニル重合体ブロックAr2aの目的とする重量平均分子量などに応じて決定すればよい(たとえば、重合条件は、上記工程(1)において説明した範囲において決定すればよい。)。
【0100】
<工程(5a)、工程(6a)>
そして、工程(4a)により得られたブロック共重合体B’およびブロック共重合体A’を含有する溶液を用いて、上記した工程(5a)、工程(6a)における操作を経て、本発明で用いる水添ブロック共重合体組成物を得ることができる。なお、上記した工程(5a)、工程(6a)は、上述した工程(6)、工程(7)と同様であり、同様の条件を採用することができる。
【0101】
本発明の表面保護材用粘着剤は、上記の水添ブロック共重合体組成物に加えて、粘着付与樹脂を含有してなるものである。本発明の表面保護材用粘着剤は、粘着付与樹脂が含有されることにより、優れた粘着性を示す表面保護材を形成できる。本発明の表面保護材用粘着剤に含有される粘着付与樹脂の種類は、特に限定されず、たとえば、ロジン;不均化ロジン、二量化ロジンなどの変性ロジン類;グリコール、グリセリン、ペンタエリスリトールなどの多価アルコールとロジンまたは変性ロジン類とのエステル化物;テルペン系樹脂;石油樹脂などの脂肪族系、芳香族系、脂環族系または脂肪族-芳香族共重合系の炭化水素樹脂またはこれらの水素化物;フェノール樹脂;クマロン-インデン樹脂などを粘着付与樹脂として使用することができ、なかでも、脂肪族系、芳香族系、脂環族系または脂肪族-芳香族共重合系の炭化水素樹脂またはこれらの水素化物が好適に用いられ、とりわけ、脂環族系の炭化水素樹脂または脂環族系の炭化水素樹脂の水素化物が特に好適に用いられる。なお、粘着付与樹脂は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0102】
本発明の表面保護材用粘着剤に含有される粘着付与樹脂の軟化点は、特に限定されないが、10~160℃であることが好ましく、20~150℃であることがより好ましい。軟化点がこの範囲にある粘着付与樹脂を用いることにより、得られる表面保護材は、粘着性により優れたものとなる。
【0103】
本発明の表面保護材用粘着剤における粘着付与樹脂の含有量は、特に限定されないが、水添ブロック共重合体組成物100重量部に対して、1~100重量部であることが好ましく、5~90重量部であることがより好ましく、10~85重量部であることがさらに好ましい。粘着付与樹脂の含有量がこの範囲にあることにより、得られる表面保護材は、粘着力の昂進がより良好に抑制されたものとなる。
【0104】
本発明の表面保護材用粘着剤には、水添ブロック共重合体組成物および粘着付与樹脂以外に、必要に応じて酸化防止剤を添加することができる。その種類は特に限定されず、たとえば、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール、ジ-t-ブチル-4-メチルフェノールなどのヒンダードフェノール系化合物;ジラウリルチオプロピオネートなどのチオジカルボキシレートエステル類;トリス(ノニルフェニル)ホスファイトなどの亜燐酸塩類;を使用することができる。酸化防止剤の使用量は、特に限定されないが、水添ブロック共重合体組成物100重量部に対し、通常10重量部以下であり、好ましくは0.5~5重量部である。なお、酸化防止剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、表面保護材用粘着剤へ酸化防止剤を配合する時期は特に限定されず、たとえば、表面保護材用粘着剤を構成するために用いる水添ブロック共重合体組成物に予め添加しておいてもよいし、水添ブロック共重合体組成物と粘着付与樹脂とを混合する際に添加してもよい。
【0105】
本発明の表面保護材用粘着剤には、さらに、軟化剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、充填剤など、その他の添加剤を添加することができる。
【0106】
本発明の表面保護材用粘着剤を得るにあたり、ブロック共重合体組成物と粘着付与樹脂や各種添加剤とを混合する方法は特に限定されず、たとえば、各成分を溶剤に溶解し均一に混合した後、溶剤を加熱などにより除去する方法、各成分をニーダーなどで加熱溶融混合する方法を挙げることができる。
【0107】
本発明の表面保護材用粘着剤のガラス転移温度は、特に限定されないが、-50~30℃であることが好ましく、-40~25℃であることがより好ましい。ガラス転移温度がこの範囲にあることにより、表面保護材用粘着剤の粘着性と展開性とのバランスが、特に良好なものとなる。なお、表面保護材用粘着剤のガラス転移温度は、常法に従って容易に調節可能であり、たとえば、粘着付与樹脂の含有量を調節することにより調節することができる。
【0108】
本発明の表面保護材用粘着剤は、たとえば、表面保護フィルム、表面保護シート、表面保護テープなどの各種の表面保護材の粘着層を形成するために用いられるものである。本発明の表面保護材用粘着剤で粘着層を形成することにより、バランスよく優れた粘着性および展開性を有し、さらには、粘着力の昂進が良好に抑制され、なおかつ熱安定性に優れた表面保護材を得ることができる。本発明の表面保護材用粘着剤が用いられる表面保護材の基材や用途は特に限定されず、各種の基材や用途に適用可能である。なお、本発明の表面保護材用粘着剤が好適に用いられる表面保護材の態様や用途は、本発明の表面保護材の説明として、以下に詳述する。
【0109】
本発明の表面保護材は、本発明の表面保護材用粘着剤からなる粘着層と、樹脂からなる基材層とが積層されてなる表面保護材である。本発明の表面保護材の基材層を構成する材料は、樹脂であれば特に限定されないが、成形容易性の観点からは、熱可塑性樹脂であることが好ましく、なかでも、オレフィン系樹脂が好適である。基材層の材料となるオレフィン系樹脂は、特に限定されないが、たとえば、ポリエチレン(低密度、中密度、高密度)、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリブテン、エチレン-プロピレン共重合体、プロピレン-ブテン共重合体を用いることができる。なお、基材層を構成する樹脂は、1種類を単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。また、基材層を構成する樹脂には、必要に応じて、たとえば、酸化防止剤、着色剤、発泡剤、難燃剤、滑剤、紫外線吸収剤、光安定剤、充填剤などの添加剤を添加することができる。
【0110】
本発明の表面保護材における粘着層の厚さは、特に限定されないが、通常1~50μmの範囲であり、好ましくは2~30μmの範囲である。また、基材層の厚さも、特に限定されないが、通常10~50μmの範囲であり、好ましくは15~45μmの範囲である。
【0111】
本発明の表面保護材は、前述の粘着層と基材層との2層のみからなる積層体であってもよいし、これらの2層の間やどちらかの表面などの任意の位置にさらに他の層を有してなる3層以上の積層体であってもよい。また、それぞれの層には、必要に応じて、コロナ放電処理、紫外線照射処理、プラズマ処理などの表面処理を施してもよい。
【0112】
本発明の表面保護材全体での厚さは、特に限定されないが、通常11~100μmの範囲であり、好ましくは12~75μmの範囲である。また、本発明の表面保護材は、表面保護フィルム、表面保護シート、表面保護テープなどの任意の形態の表面保護材とすることができる。
【0113】
本発明の表面保護材を製造する方法は、特に限定されず、従来公知の表面保護材の製造法を適用することができる。好適に用いられる製造法としては、本発明の表面保護材用粘着剤や基材層を構成する樹脂などの、各層の材料を共押出しすることによって、積層体を成形する方法を挙げることができる。
【0114】
本発明の表面保護材は、製造後、任意の形態で保管することが可能であり、たとえば、巻回して、いわゆるロール体とすることも可能である。本発明の表面保護材は、展開性に優れる本発明の表面保護材用粘着剤を用いたものであるので、ロール体から展開して使用することが容易なものとなる。
【0115】
本発明の表面保護材は、保管時や運搬時における、汚れ・ほこりの付着や他物との接触に起因する損傷から、種々の物品の表面を保護する目的で、粘着層が保護の対象とする物品の表面に接するように、物品に貼り付けて使用される。保護の対象となる物品の具体例としては、金属板、合成樹脂板、木質化粧板、ディスプレイ、光学フィルム、建築資材を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0116】
本発明の表面保護材は、本発明の表面保護材用粘着剤を用いることにより、粘着性および展開性にバランスよく優れたものであるので、物品に貼り付けた際に、意図しない剥離が生じがたく、また、物品から剥離しやすいものである。また、本発明の表面保護材は、本発明の表面保護材用粘着剤を用いることにより、粘着力の昂進が良好に抑制されたものであるので、長期間物品に貼り付けた後でも、物品から剥離しやすいものである。さらに、本発明の表面保護材は、本発明の表面保護材用粘着剤を用いることにより、熱安定性に優れたものであるので、高温条件下で、長期間物品に貼り付けていても、意図しない剥離が生じがたいものである。
【実施例】
【0117】
以下に、実施例および比較例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。なお、「部」および「%」は、特に断りのない限り重量基準である。
本実施例および比較例において行った試験方法は以下のとおりである。
【0118】
〔重量平均分子量、分子量分布〕
流速0.35ml/分のテトラヒドロフランをキャリアとする高速液体クロマトグラフィによりポリスチレン換算の分子量に基づくチャートを得て、得られたチャートに基づいて求めた。装置は、東ソー社製HLC8320、カラムは昭和電工社製Shodex(登録商標)KF-404HQを3本連結したもの(カラム温度40℃)、検出器は示差屈折計および紫外検出器を用い、分子量の較正はポリマーラボラトリー社製の標準ポリスチレン(500から300万)の12点で実施した。
【0119】
〔(水添)ブロック共重合体組成物中の各ブロック共重合体の重量比〕
上記の高速液体クロマトグラフィにより得られたチャートの各ブロック共重合体に対応するピークの面積比から求めた。
【0120】
〔(水添)ブロック共重合体のスチレン重合体ブロックの重量平均分子量〕
Rubber Chem.Technol.,45,1295(1972)に記載された方法に従い、(水添)ブロック共重合体をオゾンと反応させ、水素化リチウムアルミニウムで還元することにより、(水添)ブロック共重合体のイソプレン重合体ブロックを分解した。
具体的には、以下の手順で行なった。すなわち、モレキュラーシーブで処理したジクロロメタン100mlを入れた反応容器に、試料を300mg溶解した。この反応容器を冷却槽に入れ-25℃としてから、反応容器に170ml/minの流量で酸素を流しながら、オゾン発生器により発生させたオゾンを導入した。反応開始から30分経過後、反応容器から流出する気体をヨウ化カリウム水溶液に導入することにより、反応が完了したことを確認した。次いで、窒素置換した別の反応容器に、ジエチルエーテル50mlと水素化リチウムアルミニウム470mgを仕込み、氷水で反応容器を冷却しながら、この反応容器にオゾンと反応させた溶液をゆっくり滴下した。そして、反応容器を水浴に入れ、徐々に昇温して、40℃で30分間還流させた。その後、溶液を撹拌しながら、反応容器に希塩酸を少量ずつ滴下し、水素の発生がほとんど認められなくなるまで滴下を続けた。この反応の後、溶液に生じた固形の生成物をろ別し、固形の生成物は、100mlのジエチルエーテルで10分間抽出した。この抽出液と、ろ別した際のろ液とをあわせ、溶媒を留去することにより、固形の試料を得た。このようにして得られた試料について、上記の重量平均分子量の測定法に従い、重量平均分子量を測定し、その値をスチレン重合体ブロックの重量平均分子量とした。
【0121】
〔(水添)ブロック共重合体の(水添)イソプレン重合体ブロックの重量平均分子量〕
それぞれ上記のようにして求められた、(水添)ブロック共重合体の重量平均分子量から、対応するスチレン重合体ブロックの重量平均分子量を引き、その計算値に基づいて、(水添)イソプレン重合体ブロックの重量平均分子量を求めた。
【0122】
〔(水添)ブロック共重合体のスチレン単位含有量〕
上記の高速液体クロマトグラフィの測定における、示差屈折計と紫外検出器との検出強度比に基づいて求めた。なお、予め、異なるスチレン単位含有量を有する共重合体を用意し、それらを用いて、検量線を作成した。
【0123】
〔(水添)ブロック共重合体組成物全体のスチレン単位含有量〕
プロトンNMRの測定に基づき求めた。
【0124】
〔(水添)イソプレン重合体ブロックのビニル結合含有量〕
プロトンNMRの測定に基づき求めた。
【0125】
〔(水添)ブロック共重合体組成物のオレフィン水添率(モル%)〕
1H-NMRスペクトル測定により、水添前のブロック共重合体組成物および水添後の水添ブロック共重合体組成物のそれぞれについて、オレフィン量を求め、水添前後のオレフィン量の差に基づいてオレフィン水添率(モル%)を算出した。
1H-NMRスペクトル測定では、溶媒に重クロロホルムを用い、NMR測定装置としてJMN-AL seriesAL400(JEOL社製)を用いた。
また、本実施例、比較例においては、水添前のブロック共重合体組成物および水添後の水添ブロック共重合体組成物は、いずれも、オレフィンに由来の単量体の単位として、イソプレン単位のみを含むものであったため、測定に際しては、イソプレンの水添率を求め、これをオレフィン水添率とした。
【0126】
〔(水添)ブロック共重合体組成物のヨウ素価〕
JIS K0070に準拠して測定した。
【0127】
〔(水添)ブロック共重合体組成物のメルトインデックス〕
ASTM D-1238(G条件、200℃、5kg)に準拠して測定した。
【0128】
〔(水添)ブロック共重合体組成物の粘度保持率〕
クラム状の(水添)ブロック共重合体組成物を、押出機の先端部に水中ホットカット装置を備えた単軸押出機に供給し、平均直径5mmで平均長さが5mm程度の円筒状のペレットとした。このペレット状の(水添)ブロック共重合体組成物を、60℃に加温したホッパードライヤーに投入し、60℃の乾燥空気を流通させながら10時間乾燥させた。
次いで、以上のようにして得られた乾燥させたペレット状の(水添)ブロック共重合体組成物を、T-ダイを装着した二軸押出機を用いて、200℃で加熱溶融し、押し出すことにより、厚さ0.2mmのフィルム状に成形した。
組成物処理速度:15kg/hr
フィルム引き取り速度:10m/min
押出機温度:投入口200℃、T-ダイ220℃
スクリュー:フルフライト
押出機L/D:42
T-ダイ:幅300mm、リップ1mm
得られたフィルムについて、熱劣化試験(170℃×60分;空気存在下)を行い、熱劣化試験を行う前、および熱劣化試験を行った後における溶融粘度を測定し、下記式により粘度保持率を求めた。粘度保持率が高いほど、(水添)ブロック共重合体組成物の安定性に優れると判断できる。
粘度保持率(%)=(熱劣化試験後の溶融粘度/熱劣化試験前の溶融粘度)×100
溶融粘度の測定は、フローテスターCFT-500C(島津製作所社製)を用い、温度180℃、加重100kgf/cm2、ダイ形状1mmφ×10mmの条件で測定した。
【0129】
〔粘着付与樹脂の軟化点〕
JIS K 2531に従い、環球法により測定した。
【0130】
〔初期剥離力(低速剥離)〕
表面保護材を、23℃の条件下で、2kgのゴムローラーを用いて300mm/分の速度で圧着することにより、ポリプロピレン板に貼り付け、貼り付け後30分経過したものを測定試料とした。この測定試料について、23℃での剥離接着強さ(N/m)を、PSTC-1(米国粘着テープ委員会による180°剥離接着試験)に準じて、測定機器としてChemInstruments社製「PA-1000-180」を用いて、剥離速度を0.3m/分として測定することにより、剥離力を評価した。この値が大きいものほど、粘着性に優れる。
【0131】
〔初期剥離力(高速剥離)〕
表面保護材を、23℃の条件下で、2kgのゴムローラーを用いて300mm/分の速度で圧着することにより、ポリプロピレン板に貼り付け、貼り付け後30分経過したものを測定試料とした。この測定試料について、23℃での剥離接着強さ(N/m)を、PSTC-1(米国粘着テープ委員会による180°剥離接着試験)に準じて、測定機器としてテスター産業社製の高速剥離試験機「TE-701-S」を用いて、剥離速度を15m/分として測定することにより、剥離力を評価した。この値が小さいものほど、展開性に優れる。
【0132】
〔室温経時剥離力〕
表面保護材を、23℃の条件下で、2kgのゴムローラーを用いて300mm/分の速度で圧着することにより、ポリプロピレン板に貼り付け、貼り付け後に20℃のギヤオーブン中で14日間静置した後、放冷したものを測定試料とした。この測定試料について、23℃での剥離接着強さ(N/m)を、PSTC-1(米国粘着テープ委員会による180°剥離接着試験)に準じて、測定機器としてChemInstruments社製「PA-1000-180」を用いて、剥離速度を0.3m/分として測定することにより、剥離力を評価した。この値と初期剥離力(低速剥離)の値との差が小さなものほど、粘着力の昂進が良好に抑制されていると判断できる。
【0133】
〔高温経時剥離力〕
表面保護材を、23℃の条件下で、2kgのゴムローラーを用いて300mm/分の速度で圧着することにより、ポリプロピレン板に貼り付け、貼り付け後に80℃のギヤオーブン中で14日間静置した後、放冷したものを測定試料とした。この測定試料について、23℃での剥離接着強さ(N/m)を、PSTC-1(米国粘着テープ委員会による180°剥離接着試験)に準じて、測定機器としてChemInstruments社製「PA-1000-180」を用いて、剥離速度を0.3m/分として測定することにより、剥離力を評価した。この値と室温経時剥離力の値との差が小さなものほど、熱安定性に優れると判断できる。
【0134】
〔製造例1〕
(1)水添前のブロック共重合体組成物の製造
耐圧反応器に、シクロヘキサン56.6kg、ジブチルエーテル505ミリモル、およびスチレン1.22kgを添加した。全容を40℃で攪拌しながら、n-ブチルリチウム(1.6M溶液)270.6ミリモルを添加した。添加終了後、50℃に昇温して1時間重合反応を行った(重合1段目)。このときのスチレンの重合転化率は100重量%であった。
【0135】
引き続き、50~60℃を保つように温度制御しながら、反応器に、イソプレン6.49kgを1時間にわたり連続的に添加した。イソプレンの添加を完了した後、さらに1時間重合反応を行った(重合2段目)。このときのイソプレンの重合転化率は100%であった。
【0136】
次いで、50~60℃を保つように温度制御しながら、スチレン1.22kgを1時間にわたり連続的に添加した。スチレンの添加を完了した後、さらに1時間重合反応を行うことで、活性末端を有するスチレン-イソプレン-スチレントリブロック共重合体を含有する溶液を得た(重合3段目)。このときのスチレンの重合転化率は100%であった。
【0137】
次いで、重合停止剤として、メタノール195ミリモルを添加して、混合することにより、活性末端を有するスチレン-イソプレン-スチレントリブロック共重合体のうちの一部の活性末端を失活させて、水添ブロック共重合体Bを得るためのブロック共重合体B’となるスチレン-イソプレン-スチレントリブロック共重合体を含有する溶液を得た。
【0138】
この後、さらに引き続き50~60℃を保つように温度制御しながら、スチレン1.06kgを1時間にわたり連続的に添加した。スチレンの添加を完了した後、さらに1時間重合反応を行い、水添ブロック共重合体Aを得るためのブロック共重合体A’となる、活性末端を有するスチレン-イソプレン-スチレントリブロック共重合体を含有する溶液を得た(重合4段目)。このときのスチレンの重合転化率は100%であった。
【0139】
最後に、重合停止剤として、メタノール345ミリモルを添加して、混合することにより、活性末端を有するスチレン-イソプレン-スチレントリブロック共重合体の活性末端を全て失活させて、重合反応を完了させ、これにより、水添前のブロック共重合体組成物を含む溶液を得た。
反応に用いた各試剤の量を表1にまとめて示す。
【0140】
(2)水添前のブロック共重合体組成物の水素添加反応
上記にて得られた水添前のブロック共重合体組成物を含む溶液に対し、水素添加反応を行うことにより、水添ブロック共重合体組成物を含む溶液を得た。水素添加反応は、上記にて得られた水添前のブロック共重合体組成物を含む溶液に、水素添加触媒として、Ni(AcAc)2-TIBAL触媒を、水添前のブロック共重合体組成物に対して0.5重量%の割合で添加し、水素圧力3MPa、反応温度80℃、反応時間3時間の条件で行った。
【0141】
このようにして得られた水添ブロック共重合体組成物を含む溶液の一部を取り出し、水添ブロック共重合体組成物(全体)の重量平均分子量および分子量分布、組成物中の各水添ブロック共重合体の重量比率、各水添ブロック共重合体のスチレン重合体ブロックの重量平均分子量、各水添ブロック共重合体の水添イソプレン重合体ブロックの重量平均分子量、各水添ブロック共重合体のスチレン単位含有量、水添ブロック共重合体組成物(全体)のスチレン単位含有量、各水添ブロック共重合体の水添イソプレン重合体ブロックのビニル結合含有量、ならびに水添ブロック共重合体組成物(全体)のオレフィン水添率を求めた。これらの値を、表2にまとめて示す。
【0142】
(3)水添ブロック共重合体組成物の回収
以上のようにして得られた水添ブロック共重合体組成物を含む溶液100部に、酸化防止剤として、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール0.3部を加えて混合し、混合溶液を少量ずつ85~95℃に加熱された温水中に滴下して、溶媒を揮発させて析出物を得た。得られた析出物を粉砕し、85℃で熱風乾燥することにより、クラム状の水添ブロック共重合体組成物を回収した。得られた水添ブロック共重合体組成物について、ヨウ素価、メルトインデックス、および粘度保持率の測定を行った。これらの結果を、表2にまとめて示す。
【0143】
〔製造例2〕
水素添加反応における反応時間を3時間から1時間に変更したこと以外は、製造例1と同様にして、水添ブロック共重合体組成物を得て、同様に測定を行った。結果を表2にまとめて示す。
【0144】
〔製造例3〕
スチレン、ジブチルエーテル、n-ブチルリチウム、イソプレン、およびメタノールの量を、それぞれ表1に示すように変更したこと、および水素添加反応における反応時間を3時間から15分に変更したこと以外は、製造例1と同様にして、水添ブロック共重合体組成物を得て、同様に測定を行った。結果を表2にまとめて示す。
【0145】
〔製造例4〕
スチレン、ジブチルエーテル、n-ブチルリチウム、イソプレン、およびメタノールの量を、それぞれ表1に示すように変更したこと、および水素添加反応における反応時間を3時間から2時間に変更したこと以外は、製造例1と同様にして、水添ブロック共重合体組成物を得て、同様に測定を行った。結果を表2にまとめて示す。
【0146】
〔製造例5〕
(1)水添前のブロック共重合体組成物の製造
耐圧反応器に、シクロヘキサン56.6kg、ジブチルエーテル842ミリモル、およびスチレン1.04kgを添加した。全容を40℃で攪拌しながら、n-ブチルリチウム(1.6M溶液)451.5ミリモルを添加した。添加終了後、50℃に昇温して1時間重合反応を行った(重合1段目)。このときのスチレンの重合転化率は100重量%であった。
【0147】
引き続き、50~60℃を保つように温度制御しながら、反応器に、イソプレン7.99kgを1時間にわたり連続的に添加した。イソプレンの添加を完了した後、さらに1時間重合反応を行うことで、活性末端を有するスチレン-イソプレンジブロック共重合体を含有する溶液を得た(重合2段目)。このときのイソプレンの重合転化率は100%であった。
【0148】
次いで、2官能のカップリング剤として、ジメチルジクロロシラン154ミリモルを添加して、混合することにより、活性末端を有するスチレン-イソプレンジブロック共重合体のうちの一部をカップリングさせて、水添ブロック共重合体Bを得るためのブロック共重合体B’となるスチレン-イソプレン-スチレントリブロック共重合体を含有する溶液を得た。
【0149】
この後、さらに引き続き50~60℃を保つように温度制御しながら、スチレン0.96kgを1時間にわたり連続的に添加した。スチレンの添加を完了した後、さらに1時間重合反応を行い、水添ブロック共重合体Aを得るためのブロック共重合体A’となる、活性末端を有するスチレン-イソプレン-スチレントリブロック共重合体を含有する溶液を得た(重合3段目)。このときのスチレンの重合転化率は100%であった。
【0150】
最後に、重合停止剤として、メタノール595ミリモルを添加して、混合することにより、活性末端を有するスチレン-イソプレン-スチレントリブロック共重合体の活性末端を全て失活させて、重合反応を完了させ、これにより、水添前のブロック共重合体組成物を含む溶液を得た。
反応に用いた各試剤の量を表1にまとめて示す。
【0151】
(2)水添前のブロック共重合体組成物の水素添加反応
上記にて得られた水添前のブロック共重合体組成物を含む溶液に対し、水素添加反応を行うことにより、水添ブロック共重合体組成物を含む溶液を得た。水素添加反応は、製造例1と同様の条件により行った。そして、得られた水添ブロック共重合体組成物を含む溶液の一部を取り出し、製造例1と同様に各測定を行った。結果を表2にまとめて示す。
【0152】
(3)水添ブロック共重合体組成物の回収
得られた水添ブロック共重合体組成物を含む溶液を用いて、製造例1と同様にして、回収を行った後、同様に測定を行った。結果を表2にまとめて示す。
【0153】
〔製造例6〕
(1)水添前のブロック共重合体組成物の製造
耐圧反応器に、シクロヘキサン56.6kg、ジブチルエーテル517ミリモル、およびスチレン1.75kgを添加した。全容を40℃で攪拌しながら、n-ブチルリチウム(1.6M溶液)284.2ミリモルを添加した。添加終了後、50℃に昇温して1時間重合反応を行った(重合1段目)。このときのスチレンの重合転化率は100重量%であった。
【0154】
引き続き、50~60℃を保つように温度制御しながら、反応器に、イソプレン6.49kgを1時間にわたり連続的に添加した。イソプレンの添加を完了した後、さらに1時間重合反応を行った(重合2段目)。このときのイソプレンの重合転化率は100%であった。
【0155】
次いで、50~60℃を保つように温度制御しながら、スチレン1.75kgを1時間にわたり連続的に添加した。スチレンの添加を完了した後、さらに1時間重合反応を行うことで、活性末端を有するスチレン-イソプレン-スチレントリブロック共重合体を含有する溶液を得た(重合3段目)。このときのスチレンの重合転化率は100%であった。
【0156】
最後に、重合停止剤として、メタノール568.4ミリモルを添加して、混合することにより、活性末端を有するスチレン-イソプレン-スチレントリブロック共重合体の活性末端を全て失活させて、重合反応を完了させ、これにより、水添前のブロック共重合体組成物を含む溶液を得た。
反応に用いた各試剤の量を表1にまとめて示す。
【0157】
(2)水添前のブロック共重合体組成物の水素添加反応
上記にて得られた水添前のブロック共重合体組成物を含む溶液に対し、水素添加反応を行うことにより、水添ブロック共重合体組成物を含む溶液を得た。水素添加反応は、製造例1と同様の条件により行った。そして、得られた水添ブロック共重合体組成物を含む溶液の一部を取り出し、製造例1と同様に各測定を行った。結果を表2にまとめて示す。
【0158】
(3)水添ブロック共重合体組成物の回収
得られた水添ブロック共重合体組成物を含む溶液を用いて、製造例1と同様にして、回収を行った後、同様に測定を行った。結果を表2にまとめて示す。
【0159】
〔製造例7〕
スチレン、ジブチルエーテル、n-ブチルリチウム、イソプレン、およびメタノールの量を、それぞれ表1に示すように変更したこと、および水素添加反応を行わなかったこと以外は、製造例1と同様にして、未水添のブロック共重合体組成物を製造し、得られた未水添のブロック共重合体組成物を用いて、同様に測定を行った。結果を表2にまとめて示す。
【0160】
〔製造例8〕
スチレン、ジブチルエーテル、n-ブチルリチウム、イソプレン、およびメタノールの量を、それぞれ表1に示すように変更したこと、および水素添加反応を行わなかったこと以外は、製造例6と同様にして、未水添のブロック共重合体組成物を製造し、得られた未水添のブロック共重合体組成物を用いて、同様に測定を行った。結果を表2にまとめて示す。
【0161】
【0162】
【0163】
〔実施例1〕
製造例1で得られた水添ブロック共重合体組成物100部を攪拌翼型混練機に投入し、これに、粘着付与樹脂として、軟化点が125℃の脂環族系炭化水素樹脂であるエクソンモービルケミカル社製「エスコレッツ5320」50部および酸化防止剤としてペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]であるBASF社製「イルガノックス1010」1部を添加して系内を窒素ガスで置換したのち、160~180℃で1時間混練することにより、粘着剤を調製した。次いで、得られた粘着剤と、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂である東ソー社製「ニポロン-L F14」とを用いて、Tダイ法による共押出成形を行うことによって、粘着剤からなる厚さ10μmの粘着層と直鎖状低密度ポリエチレン樹脂からなる厚さ25μmの基材層との2層が積層されてなる表面保護材を得た。この表面保護材について、初期剥離力(低速剥離)、初期剥離力(高速剥離)、室温経時剥離力、および高温経時剥離力を測定した。その結果を表3にまとめて示す。
【0164】
〔実施例2~5、比較例1~3〕
用いる水添ブロック共重合体組成物の種類および粘着付与樹脂の量を表3に示す通りに変更したこと以外は、実施例1と同様にして粘着剤を調製し、表面保護材を得た。そして、得られた表面保護材について、実施例1と同様に評価を行なった。結果を表3にまとめて示す。
【0165】
【0166】
表3に示すように、一般式(A)で表される水添ブロック共重合体Aと、一般式(B)で表される水添ブロック共重合体Bとを、A/B(重量比)=10/90~80/20の割合で含有し、かつ、水添ブロック共重合体組成物を構成する重合体成分における、オレフィンの水添率が10~100%である水添ブロック共重合体組成物と、粘着付与樹脂とを含有してなる表面保護材用粘着剤によれば、得られる表面保護材は、粘着性および展開性にバランスよく優れ、粘着力の昂進が良好に抑制され、さらに、熱安定性にも優れるものであった。
一方、一般式(A)で表される水添ブロック共重合体Aを含有しない場合には、得られる表面保護材は、熱安定性には優れるものの、粘着力が昂進してしまっているものであった(比較例1)。
また、オレフィンの水添率が10%未満である場合には、得られる表面保護材は、熱安定性に劣る結果となった(比較例2)。
さらに、一般式(A)で表される水添ブロック共重合体Aを含有せず、かつ、オレフィンの水添率が10%未満である場合には、得られる表面保護材は、展開性に劣り、粘着力が昂進してしまい、熱安定性にも劣るものであった(比較例3)。