(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】樹脂組成物、樹脂フィルム、半導体積層体、半導体積層体の製造方法、半導体装置及び半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08G 59/30 20060101AFI20240110BHJP
C08G 59/14 20060101ALI20240110BHJP
C08G 59/62 20060101ALI20240110BHJP
H01L 23/29 20060101ALI20240110BHJP
H01L 23/31 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
C08G59/30
C08G59/14
C08G59/62
H01L23/30 R
(21)【出願番号】P 2019228464
(22)【出願日】2019-12-18
【審査請求日】2021-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】弁理士法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】市岡 揚一郎
(72)【発明者】
【氏名】小木曽 浩二
【審査官】櫛引 智子
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-007003(JP,A)
【文献】特開2012-007004(JP,A)
【文献】特開2019-006980(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0241733(US,A1)
【文献】特開2020-132779(JP,A)
【文献】特開2019-112477(JP,A)
【文献】国際公開第2017/077845(WO,A1)
【文献】特開2016-204553(JP,A)
【文献】特開2019-048905(JP,A)
【文献】特開2019-048906(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G,H01L
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)シルフェニレン変性エポキシ樹脂又はシルフェニレン及びシリコーン変性エポキシ樹脂であって、エポキシ当量が140~5,000g/eqであるエポキシ樹脂、
(B)フェノール系硬化剤、
(C)硬化促進剤、
(D)下記式(D)で表される化合物
、下記式(D1)で表される化合物及び下記式(D2)で表される化合物から選ばれる1種又は2種以上である改質剤、及び
(E)無機充填剤
を含む樹脂組成物。
【化1】
(式中、Rは、炭素数10~50のヒドロカルビル基である。Qは、エーテル結合、エステル結合、カルボニル基又はチオエーテル結合である。Lは、酸素原子を含んでいてもよい炭素数1~20のヒドロカルビレン基である。Tは、エポキシ基、オキセタン基又はアルコキシシリル基である。mは、
1である
。)
【化2】
【請求項2】
Qが、エーテル結合又はエステル結合である請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記シルフェニレン変性エポキシ樹脂又はシルフェニレン及びシリコーン変性エポキシ樹脂が、下記式(A)で表されるものである請求項1又は2記載の樹脂組成物。
【化3】
[式中、R
1~R
6は、それぞれ独立に、炭素数1~20のヒドロカルビル基又はヒドロカルビルオキシ基である。a、b、c、d及びeは、各繰り返し単位の組成比を表し、0<a<1、0<b<1、0≦c<1、0≦d<1、0≦e<1、0.67≦(b+d)/(a+c+e)≦1.67、かつa+b+c+d+e=1を満たす数である。kは、0~300の整数である。X
1は、下記式(X1)で表される2価の基である。X
2は、下記式(X2)で表される2価の基である。X
3は、下記式(X3)で表される2価の基である。
【化4】
(式中、X
11は、単結合、メチレン基、プロパン-2,2-ジイル基、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン-2,2-ジイル基又はフルオレン-9,9-ジイル基である。R
11及びR
12は、それぞれ独立に、炭素数1~20のヒドロカルビル基又はヒドロカルビルオキシ基である。x
1及びy
1は、それぞれ独立に、0~2の整数である。)
【化5】
(式中、nは、0~300の整数である。)
【化6】
(式中、X
12は、単結合、メチレン基、プロパン-2,2-ジイル基、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン-2,2-ジイル基又はフルオレン-9,9-ジイル基である。R
13及びR
14は、それぞれ独立に、炭素数1~20のヒドロカルビル基又はヒドロカルビルオキシ基である。x
2及びy
2は、それぞれ独立に、0~2の整数である。)]
【請求項4】
(D)改質剤が、下記式のいずれかで表される化合物である請求項1~3のいずれか1項記載の樹脂組成物。
【化7】
【化8】
【請求項5】
(E)無機充填剤が、シリカであり、前記樹脂組成物の固形分中20~96質量%含まれる請求項1~4のいずれか1項記載の樹脂組成物。
【請求項6】
更に、(F)(A)成分及び(D)成分とは異なるエポキシ化合物を含む請求項1~5のいずれか1項記載の樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1~
6のいずれか1項記載の樹脂組成物から得られる樹脂フィルム。
【請求項8】
基板、及び該基板上に請求項7記載の樹脂フィルムの硬化物を備える半導体積層体。
【請求項9】
請求項8記載の半導体積層体が個片化されたものである半導体装置。
【請求項10】
請求項7記載の樹脂フィルムを半導体ウエハに貼り付け、該半導体ウエハをモールドする工程と、前記樹脂フィルムを加熱し、硬化させる工程とを含む半導体積層体の製造方法。
【請求項11】
請求項10記載の半導体積層体の製造方法によって製造した半導体積層体を個片化する工程を含む半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、樹脂フィルム、半導体積層体、半導体積層体の製造方法、半導体装置及び半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体業界では、スマートフォン等のモバイル機器の高周波対応のために、材料の誘電特性に注目し始めている。従来、半導体封止材へよく利用されてきたエポキシ-フェノール硬化系やエポキシ-酸無水物硬化系では架橋反応後にヒドロキシ基が発生するが、このヒドロキシ基が誘電特性を低下させてしまう。このヒドロキシ基を減らすために架橋密度を下げた場合、封止材に求められる接着力が下がるため、バランスよく性能を上げることが困難であった。一方、フッ素原子を導入することで、誘電特性が向上することが知られているが、接着力が低下しやすい。
【0003】
そこで、接着力を維持しつつ、誘電損失が小さい樹脂組成物、及びこれを用いた良好なウエハ保護性能を有するウエハモールディング材が望まれていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、前記問題点に鑑みてなされたものであって、接着力が高く、誘電損失が小さく、反りが小さい樹脂フィルムを与える組成物、該組成物から得られる樹脂フィルム、該樹脂フィルムの硬化物を備える半導体積層体及びその製造方法、並びに該半導体積層体が個片化されたものである半導体装置及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意検討を行った結果、(A)エポキシ当量が140~5,000g/eqであるエポキシ樹脂、(B)フェノール系硬化剤、(C)硬化促進剤、(D)特定の構造の化合物である改質剤、及び(E)無機充填剤を組み合わせることで、接着力が高く、誘電損失が小さく、反りが小さい樹脂フィルムを与える組成物が得られることを見出した。さらに、前記樹脂組成物をフィルム化することで、より容易に取り扱えるウエハモールディング材となることを見出し、本発明を完成させた。
【0006】
したがって、本発明は、下記樹脂組成物、樹脂フィルム、半導体積層体、半導体積層体の製造方法、半導体装置及び半導体装置の製造方法を提供する。
1.(A)エポキシ当量が140~5,000g/eqであるエポキシ樹脂、
(B)フェノール系硬化剤、
(C)硬化促進剤、
(D)下記式(D)で表される化合物である改質剤、及び
(E)無機充填剤
を含む樹脂組成物。
【化1】
(式中、Rは、炭素数10~50のヒドロカルビル基である。Qは、エーテル結合、エステル結合、カルボニル基又はチオエーテル結合である。Lは、酸素原子を含んでいてもよい炭素数1~20のヒドロカルビレン基である。Tは、反応性官能基である。mは、1~3の整数である。mが2又は3のとき、各L及び各Tは、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。)
2.Tが、エポキシ基、オキセタン基又はアルコキシシリル基である1の樹脂組成物。
3.Qが、エーテル結合又はエステル結合である1又は2の樹脂組成物。
4.(A)成分が、シルフェニレン及び/又はシリコーン変性エポキシ樹脂である1~3のいずれかの樹脂組成物。
5.前記シルフェニレン及び/又はシリコーン変性エポキシ樹脂が、下記式(A)で表されるものである4の樹脂組成物。
【化2】
[式中、R
1~R
6は、それぞれ独立に、炭素数1~20のヒドロカルビル基又はヒドロカルビルオキシ基である。a、b、c、d及びeは、各繰り返し単位の組成比を表し、0<a<1、0≦b<1、0≦c<1、0≦d<1、0≦e<1、0.67≦(b+d)/(a+c+e)≦1.67、かつa+b+c+d+e=1を満たす数である。kは、0~300の整数である。X
1は、下記式(X1)で表される2価の基である。X
2は、下記式(X2)で表される2価の基である。X
3は、下記式(X3)で表される2価の基である。
【化3】
(式中、X
11は、単結合、メチレン基、プロパン-2,2-ジイル基、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン-2,2-ジイル基又はフルオレン-9,9-ジイル基である。R
11及びR
12は、それぞれ独立に、炭素数1~20のヒドロカルビル基又はヒドロカルビルオキシ基である。x
1及びy
1は、それぞれ独立に、0~2の整数である。)
【化4】
(式中、nは、0~300の整数である。)
【化5】
(式中、X
12は、単結合、メチレン基、プロパン-2,2-ジイル基、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン-2,2-ジイル基又はフルオレン-9,9-ジイル基である。R
13及びR
14は、それぞれ独立に、炭素数1~20のヒドロカルビル基又はヒドロカルビルオキシ基である。x
2及びy
2は、それぞれ独立に、0~2の整数である。)]
6.(E)無機充填剤が、シリカであり、前記樹脂組成物の固形分中20~96質量%含まれる1~5のいずれかの樹脂組成物。
7.更に、(F)エポキシ化合物を含む1~6のいずれかの樹脂組成物。
8.1~7のいずれかの樹脂組成物から得られる樹脂フィルム。
9.基板、及び該基板上に8の樹脂フィルムの硬化物を備える半導体積層体。
10.9の半導体積層体が個片化されたものである半導体装置。
11.8の樹脂フィルムを半導体ウエハに貼り付け、該半導体ウエハをモールドする工程と、前記樹脂フィルムを加熱し、硬化させる工程とを含む半導体積層体の製造方法。
12.11の半導体積層体の製造方法によって製造した半導体積層体を個片化する工程を含む半導体装置の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明の樹脂組成物は、接着力が高く、誘電損失が小さく、反りが小さく、ウエハを一括してモールドすることが可能なフィルムとなる。これを用いることで、ウエハを一括してモールドすることができ、特に、大口径、薄膜ウエハに対して良好なモールド性を有し、同時に、基板との剥離が起こりにくく、高接着性・低反り性を有し、モールド工程を良好に行うことができ、ウエハレベルパッケージに好適に用いることができる。本発明の樹脂組成物を用いることで、歩留まりがよく、高品質な半導体装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[樹脂組成物]
本発明の樹脂組成物は、(A)エポキシ当量が140~5,000g/eqであるエポキシ樹脂、(B)フェノール系硬化剤、(C)硬化促進剤、(D)改質剤及び(E)無機充填剤を含むものである。
【0009】
[(A)エポキシ樹脂]
(A)成分のエポキシ樹脂は、エポキシ当量が140~5,000g/eqであるものである。なお、エポキシ当量(g/eq)は、樹脂の質量(g)を樹脂中に含まれるエポキシ基の当量(eq)で割って計算される値である。エポキシ当量が前記範囲であれば、十分な架橋を成すことができ、硬化物に耐薬品性や接着力を付与できる。
【0010】
(A)エポキシ樹脂は、室温(25℃)で固体であることが好ましい。この場合、フィルム化が容易となる。
【0011】
(A)エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、ジアリールスルホン型エポキシ樹脂、シルフェニレン及び/又はシリコーン変性エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0012】
(A)エポキシ樹脂は、シルフェニレン及び/又はシリコーン変性エポキシ樹脂であることが好ましい。シルフェニレン及び/又はシリコーン変性エポキシ樹脂を使用することで、組成物の柔軟性が増し、フィルム化が更に容易になる。
【0013】
前記シルフェニレン及び/又はシリコーン変性エポキシ樹脂としては、下記式(A)で表されるものが好ましい。
【化6】
【0014】
式(A)中、R1~R6は、それぞれ独立に、炭素数1~20のヒドロカルビル基又はヒドロカルビルオキシ基である。前記ヒドロカルビル基は、飽和でも不飽和でもよく、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;ビニル基、1-プロペニル基、2-プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基等のアルケニル基が挙げられる。これらのうち、炭素数1~4のアルキル基又は炭素数1~4のアルコキシ基が好ましく、メチル基及びフェニル基が原料の入手の容易さからより好ましい。
【0015】
式(A)中、a、b、c、d及びeは、各繰り返し単位の組成比を表し、0<a<1、0≦b<1、0≦c<1、0≦d<1、0≦e<1、0.67≦(b+d)/(a+c+e)≦1.67、かつa+b+c+d+e=1を満たす数である。
【0016】
式(A)中、kは、0~300の整数である。kが2以上の整数のとき、各R5は、互いに同一であっても異なっていてもよく、各R6は、互いに同一であっても異なっていてもよい。kが2以上の整数のとき、添え字kで示されるシロキサン単位は、ランダムに結合したものでも交互に結合したものでもよく、同種のシロキサン単位のブロックを複数含むものであってもよい。
【0017】
式(A)中、X
1は、下記式(X1)で表される2価の基である。
【化7】
【0018】
式(X1)中、X11は、単結合、メチレン基、プロパン-2,2-ジイル基、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン-2,2-ジイル基又はフルオレン-9,9-ジイル基である。R11及びR12は、それぞれ独立に、炭素数1~20のヒドロカルビル基又はヒドロカルビルオキシ基である。x1及びy1は、それぞれ独立に、0~2の整数であるが、0が好ましい。
【0019】
式(A)中、X
2は、下記式(X2)で表される2価の基である。
【化8】
【0020】
式(X2)中、nは、0~300の整数であるが、0~40の整数が好ましい。
【0021】
式(A)中、X
3は、下記式(X3)で表される2価の基である。
【化9】
【0022】
式(X3)中、X12は、単結合、メチレン基、プロパン-2,2-ジイル基、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン-2,2-ジイル基又はフルオレン-9,9-ジイル基である。R13及びR14は、それぞれ独立に、炭素数1~20のヒドロカルビル基又はヒドロカルビルオキシ基である。x2及びy2は、それぞれ独立に、0~2の整数であるが、0が好ましい。
【0023】
R11、R12、R13及びR14で表されるヒドロカルビル基及びヒドロカルビルオキシ基のヒドロカルビル部は、飽和でも不飽和でもよく、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。その具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;ビニル基、1-プロペニル基、2-プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基等のアルケニル基が挙げられる。これらのうち、炭素数1~4のアルキル基又は炭素数1~4のアルコキシ基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、tert-ブチル基、メトキシ基、エトキシ基がより好ましい。
【0024】
式(A)で表されるシルフェニレン及び/又はシリコーン変性エポキシ樹脂の重量平均分子量(Mw)は、3,000~500,000が好ましく、5,000~200,000がより好ましい。なお、本発明においてMwは、テトラヒドロフランを溶剤として用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算測定値である。式(A)で表されるシルフェニレン及び/又はシリコーン変性エポキシ樹脂は、ランダム共重合体でも、ブロック重合体でもよい。
【0025】
式(A)で表されるシルフェニレン及び/又はシリコーン変性エポキシ樹脂を用いることで、硬化前の樹脂組成物に柔軟性を与え、フィルム化を容易にし、硬化後は十分な弾性率を示すことができ、耐薬品性、耐熱性、耐圧性がより優れる硬化物を与えることができる。
【0026】
(A)エポキシ樹脂は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0027】
式(A)で表されるシルフェニレン及び/又はシリコーン変性エポキシ樹脂は、下記式(A1)で表されるシルフェニレン化合物及び下記式(A2)で表されるオルガノハイドロジェンシロキサン化合物から選ばれる少なくとも1種と、下記式(A3)で表される化合物、下記式(A4)で表される化合物及び下記式(A5)で表される化合物から選ばれる少なくとも1種とを用いて、以下に示す方法により製造することができる。
【化10】
(式中、R
1~R
6及びkは、前記と同じ。)
【0028】
【化11】
(式中、R
11~R
14、X
11、X
12、n、x
1、x
2、y
1及びy
2は、前記と同じ。)
【0029】
式(A)で表されるシルフェニレン及び/又はシリコーン変性エポキシ樹脂は、原料をヒドロシリル化させることで合成できる。その際、反応容器に全部の原料を入れた状態で反応させてもよく、また一部の原料を先に反応させて、その後に残りの原料を反応させてもよく、原料を1種類ずつ反応させてもよく、反応させる順序も任意に選択できる。各化合物の配合比は、式(A3)で表される化合物、式(A4)で表される化合物及び式(A5)で表される化合物が有するアルケニル基の合計に対する式(A1)で表される化合物及び式(A2)で表される化合物が有するヒドロシリル基の合計が、モル比で0.67~1.67が好ましく、0.83~1.25がより好ましい。
【0030】
この重合反応は、触媒存在下で行う。触媒は、ヒドロシリル化が進行するものであれば特に限定されない。具体的には、パラジウム錯体、ロジウム錯体、白金錯体等が用いられるが、これらに限定されない。触媒は、式(A1)で表される化合物及び式(A2)で表される化合物が有するヒドロシリル基の合計1モルに対し、0.01~10.0モル程度加えることが好ましい。0.01モル以上であれば、反応の進行が遅くならず、反応が十分に進行し、10.0モル以下であれば、脱水素反応が進行しにくくなり、付加反応の進行を阻害するおそれがない。
【0031】
重合反応に用いる溶剤としては、ヒドロシリル化を阻害しない有機溶剤が広く使用できる。具体的には、オクタン、トルエン、テトラヒドロフラン、ジオキサン等が挙げられるが、これらに限定されない。溶剤は、溶質が10~70質量%になるように使用することが好ましい。10質量%以上であれば、反応系が薄くならず、反応の進行が遅くならない。また、70質量%以下であれば、粘度が高くならず、反応途中で系中を十分に攪拌できなくなるおそれがない。
【0032】
反応は、通常40~150℃、好ましくは60~120℃、特に好ましくは70~100℃の温度で行われる。反応温度が150℃以下であれば、分解等の副反応が起こりにくくなり、40℃以上であれば、反応の進行は遅くならない。また、反応時間は、通常0.5~60時間、好ましくは3~24時間、特に好ましくは5~12時間である。
【0033】
[(B)フェノール系硬化剤]
(B)成分のフェノール系硬化剤は、公知のものを広く使用可能である。硬化剤の構造としては、少なくとも2以上のフェノール性ヒドロキシ基を有する化合物がよく、以下に示すものが例示できるが、これらに限定されない。
【化12】
【0034】
(B)成分の含有量は、(A)成分のエポキシ基1モルに対し、(B)成分中のフェノール性ヒドロキシ基が、0.6~1.4モルとなる量が好ましく、0.9~1.1モルとなる量がより好ましい。前記範囲であれば、硬化反応が良好に進行し、エポキシ基やフェノール性ヒドロキシ基が過度にあまることがなく、信頼性は悪化しにくくなる。
【0035】
[(C)硬化促進剤]
(C)成分の硬化促進剤は、エポキシ基の開環に用いられるものであれば、広く使用可能である。前記硬化促進剤としては、イミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール等のイミダゾール類;2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-(ジメチルアミノメチル)フェノール、トリエチレンジアミン、トリエタノールアミン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の第3級アミン類;ジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン等の有機ホスフィン類;テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウム・エチルトリフェニルボレート等のテトラ置換ホスホニウム・テトラ置換ボレート;オクチル酸スズ等の金属化合物等が挙げられる。
【0036】
(C)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対し、0.01~20.0質量部が好ましく、0.1~5.0質量部がより好ましい。前記範囲であれば、硬化反応が過不足なく進行する。
【0037】
[(D)改質剤]
(D)成分の改質剤は、下記式(D)で表される化合物である。
【化13】
【0038】
式(D)中、Rは、炭素数10~50のヒドロカルビル基である。前記ヒドロカルビル基は、飽和でも不飽和でもよく、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。前記ヒドロカルビル基としては、炭素数10~30のものが好ましく、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、トリアコンチル基、ジフェニルメチル基、トリフェニルメチル基、フェニルブチル基、1-(3-ジメチル-1-メチルブチル)-6-メチル-4-メチルヘプチル基、n-ブチルフェニル基、sec-ブチルフェニル基、イソブチルフェニル基、tert-ブチルフェニル基、1-ペンチルヘキシル基等が好ましい。
【0039】
式(D)中、Qは、エーテル結合、エステル結合、カルボニル基又はチオエーテル結合であるが、原料の入手容易性の観点からエーテル結合又はエステル結合であることが好ましい。
【0040】
式(D)中、Lは、酸素原子を含んでいてもよい炭素数1~20のヒドロカルビレン基である。前記ヒドロカルビレン基は、飽和でも不飽和でもよく、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。前記ヒドロカルビレン基としては、炭素数1~5のものが好ましく、特にメチレン基、プロピレン基等が挙げられる。
【0041】
式(D)中、Tは、反応性官能基である。ここで、反応性官能基とは、本発明の樹脂組成物が通常使用時において曝される温度や圧力下において、本発明の樹脂組成物中の化合物が有する官能基と反応しうる官能基を意味する。前記反応性官能基としては、エポキシ基、オキセタン基、アルコキシシリル基等が挙げられるが、原料の入手容易性や組成物の保存安定性の観点からエポキシ基が好ましい。
【0042】
式(D)中、mは、1~3の整数である。mが2又は3のとき、各L及び各Tは、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0043】
式(D)で表される化合物としては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。
【化14】
【0044】
【0045】
(D)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対し、0.1~40質量部が好ましく、1.0~15質量部がより好ましい。前記範囲内であれば、硬化反応を阻害することなく、接着力が向上する。(D)成分は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0046】
[(E)無機充填剤]
本発明の樹脂組成物は、ウエハ保護性を与え、低誘電損失性、耐熱性、耐湿性、強度等を向上させ、硬化物の信頼性を上げるために、(E)成分として無機充填剤を含む。前記無機充填剤としては、酸化チタン、アルミナ、溶融シリカ(溶融球状シリカ、溶融破砕シリカ)、結晶シリカ粉末等の酸化物;タルク、ガラス、焼成クレー等のケイ酸塩;窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素等の窒化物;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の炭酸塩;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等の水酸化物;硫酸バリウム、硫酸カルシウム等の硫酸塩;亜硫酸カルシウム等の亜硫酸塩等が挙げられる。これらの中でも、酸化物が好ましく、溶融シリカ、結晶シリカ粉末等のシリカが好ましい。
【0047】
前記無機充填剤の平均粒子径は、特に限定されないが、0.01~30μmが好ましく、0.03~14μmがより好ましい。無機充填剤の平均粒子径が0.01μm以上であれば、フィラーを充填しやすくなり、硬化物の強度が高くなり、30μm以下であれば、チップ間への充填性が良好になる。なお、本発明において、平均粒子径は、レーザー光回折法による粒度分布測定装置によって求めることができ、質量平均値D50(すなわち、累積質量が50%となるときの粒子径又はメジアン径)として測定することができる。
【0048】
(E)成分の含有量は、樹脂組成物の固形分中、20~96質量%が好ましく、50~95質量%がより好ましく、60~93質量%が特に好ましい。無機充填剤の含有量が20質量%以上であれば、無機充填剤の効果が十分に得られ、96質量%以下であれば、無機充填剤の充填性や組成物の加工性が良好となる。なお、固形分とは、後述する有機溶剤以外の成分のことをいう。(E)無機充填剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0049】
[(F)エポキシ化合物]
本発明の樹脂組成物は、更に(F)エポキシ化合物を含んでもよい。(F)エポキシ化合物は、(A)成分及び(D)成分とは異なる化合物であり、少なくともエポキシ基を2個含む化合物が好ましく、エポキシ基を2~10個含む化合物がより好ましい。(F)エポキシ化合物を含むことで、更に信頼性を高めるとともに、弾性率や伸び性等の各種物性を改善することができる。
【0050】
(F)エポキシ化合物としては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。
【化16】
【0051】
【0052】
【0053】
【化19】
(式中、p及びqは、それぞれ独立に、1~10の整数である。)
【0054】
本発明の樹脂組成物が(F)エポキシ化合物を含む場合、その含有量は、(A)成分100質量部に対し、0.1~80質量部が好ましい。この範囲であれば、エポキシ化合物の効果が得られ、反り量が増加したりすることがない。(F)エポキシ化合物は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0055】
[その他の成分]
本発明の樹脂組成物は、必要に応じて前述したもの以外の成分(以下、その他の成分ともいう。)を含んでもよい。その他の成分としては、例えば、難燃剤、酸化防止剤、顔料、染料、有機溶剤等が挙げられる。
【0056】
本発明の樹脂組成物は、難燃性の向上を目的として、難燃剤を含んでもよい。難燃剤としては、リン系難燃剤が挙げられ、ハロゲン原子を含有せずに難燃性を付与するものであるが、その例としてはホスファゼン化合物、リン酸エステル化合物、リン酸エステルアミド化合物等が挙げられる。ホスファゼン化合物やリン酸エステルアミド化合物は、分子内にリン原子と窒素原子を含有しているため、特に高い難燃性が得られる。難燃剤の含有量は、(A)成分100質量部に対し、3~40質量部が好ましい。
【0057】
さらに、各成分の相溶性向上や樹脂組成物の貯蔵安定性又は作業性等の各種特性を向上させるために、例えば、脂肪酸エステル、グリセリン酸エステル、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の内部離型剤、フェノール系、リン系又は硫黄系酸化防止剤等を添加してもよい。また、カーボンブラック等の顔料や染料を用いて、組成物を着色することもできる。
【0058】
本発明の樹脂組成物は、前述した成分を均一に混合するため有機溶剤に溶かしてもよい。前記有機溶剤としては、例えば、N,N-ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、N,N-ジメチルホルムアミド、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、N-メチル-2-ピロリドン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トルエン、キシレン等が挙げられる。これらのうち、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートが好ましい。これらの有機溶剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。有機溶剤の使用量は、樹脂組成物中の固形分濃度が40~90質量%になる量が好ましい。
【0059】
本発明の樹脂組成物は、(D)改質剤を含むため、接着力が高いまま維持され、誘電損失が小さいという特徴を有する。具体的には、後述する樹脂フィルムの硬化物の10GHzにおける誘電正接が、0~0.015であるものが好ましく、0~0.014であるものがより好ましい。
【0060】
[樹脂フィルム]
本発明の樹脂フィルムは、前記樹脂組成物をフィルム状に加工して得られるものである。フィルム状に加工されることで、大口径、薄膜ウエハに対して良好なモールド性能を有するものとなり、ウエハを一括してモールドする際に樹脂を流し込む必要がないため、ウエハ表面への充填不良等の問題を生じさせることがない。また、前記樹脂組成物を用いて形成された樹脂フィルムであれば、反りが出づらく、接着力が高いため、各種不具合が起こりにくいウエハモールディング材となる。
【0061】
本発明の樹脂フィルムの厚さは、特に限定されないが、好ましくは2mm以下、より好ましくは50~1,200μm、更に好ましくは80~850μmである。このような厚みであれば、半導体封止材として、保護性に優れるため好ましい。
【0062】
本発明の樹脂フィルムは、前記樹脂組成物から得られる樹脂フィルムに保護フィルムが積層された樹脂フィルム積層体としてもよい。前記保護フィルムは、本発明の樹脂組成物からなる樹脂フィルムの形態を損なうことなく剥離できるものであれば特に限定されないが、ウエハ用の保護フィルム及び剥離フィルムとして機能するものであり、通常、ポリエチレン(PE)フィルム、ポリプロピレン(PP)フィルム、ポリメチルペンテン(TPX)フィルム、離型処理を施したポリエステルフィルム等のプラスチックフィルム等が挙げられる。また、前記保護フィルムの樹脂フィルムからの剥離力は、50~300mN/50mmが好ましい。なお、前記剥離力は、前記保護フィルムにポリエステル粘着テープ日東No.31Bテープ(日東電工(株)製)を貼り、幅50mmの短冊状に切り、0.3m/分で180°ピール剥離したときの剥離力である。前記保護フィルムの厚さは、25~150μmが好ましく、38~125μmがより好ましい。
【0063】
前記樹脂フィルム積層体の製造方法の一例について説明する。前述した(A)~(E)成分、並びに必要に応じて(F)エポキシ化合物及びその他の成分を混合して樹脂組成物を作製し、該樹脂組成物をリバースロールコータ、コンマコータ等を用いて所望の厚さになるように保護フィルムに塗布する。前記樹脂組成物が塗布された保護フィルムをインラインドライヤに通し、80~160℃で2~20分間かけて有機溶剤を除去することにより乾燥させ、次いでロールラミネーターを用いて保護フィルムと圧着することにより、樹脂フィルムに保護フィルムが積層されたフィルム積層体が得られる。
【0064】
[半導体積層体及びその製造方法]
本発明の半導体積層体は、半導体ウエハ又は角型基板等の基板上に、前記樹脂フィルムの硬化物を備えるものである。樹脂フィルムの硬化物の強度と接着力が高いため、樹脂フィルムの硬化物により半導体ウエハが十分に保護されたものとなる。
【0065】
前記半導体ウエハとしては、表面に半導体素子(チップ)が積載されたウエハであっても、表面に半導体素子が作製された半導体ウエハであってもよい。本発明の樹脂フィルムは、モールド前にはこのようなウエハ表面に対する充填性が良好であり、また、モールド後には高強度・高接着性を有し、このようなウエハの保護性に優れる。また、本発明の樹脂フィルムは、直径8インチ以上、例えば、直径8インチ(200mm)、12インチ(300mm)又はそれ以上といった大口径のウエハや薄膜ウエハをモールドするのに好適に用いることができる。前記薄型ウエハとしては、厚さ5~400μmに薄型加工されたウエハが好ましい。
【0066】
前記角型基板としては、表面に半導体素子(チップ)が積載されていても、表面に半導体素子が作製されたものであってもよい。角型基板のサイズとしては、10cm角、50cm角等が挙げられ、更に大きくてもよい。本発明の樹脂フィルムは、長方形、台形等の形によらず、基板の厚さにもよらず、モールディング材料として好適に用いることができる。
【0067】
本発明の半導体積層体の製造方法は、前記樹脂フィルムを基板に貼り付け、該基板をモールドする工程と、前記樹脂フィルムを加熱し、硬化する工程を含む。
【0068】
本発明の樹脂フィルムを用いたウエハのモールド方法は、特に限定されないが、例えば、樹脂フィルム上に貼られた一方の保護層を剥がし、(株)タカトリ製の真空ラミネーター(製品名:TEAM-300)を用いて、真空チャンバー内を真空度50~1,000Pa、好ましくは50~500Pa、例えば100Paに設定し、80~200℃、好ましくは80~130℃、例えば100℃で他方の保護層が貼られた樹脂フィルムを前記ウエハに一括して密着させ、常圧に戻した後、前記ウエハを室温まで冷却して前記真空ラミネーターから取り出し、他方の保護層を剥離する方法が挙げられる。
【0069】
また、半導体チップが積層されたウエハに対し、コンプレッションモールディング装置や真空ダイヤフラムラミネーターと平坦化のための金属板プレスとを備えた装置等を好適に使用することができる。コンプレッションモールディング装置としては、例えばアピックヤマダ(株)製の装置(製品名:WCM-300マニュアルシステム)を使用することができ、半導体チップが積層された300mmシリコンウエハをモールドする際は、成型温度100~180℃、成型圧力100~300kN、クランプタイム30~90秒、成型時間5~20分で成型が可能である。また、真空ダイヤフラムラミネーターと平坦化のための金属板プレスを備えた装置としては、例えばニッコー・マテリアルズ(株)製の装置(製品名:CVP-300)を使用することができ、ラミネーション温度100~180℃、真空度50~500Pa、圧力0.1~0.9MPa、ラミネーション時間30~300秒でラミネートした後、上下熱板温度100~180℃、圧力0.1~3.0MPa、加圧時間30~300秒で樹脂成型面を平坦化することが可能である。
【0070】
モールド後、120~220℃、15~360分間の条件で樹脂フィルムを加熱することで、樹脂フィルムを硬化することができる。これにより、半導体積層体が得られる。
【0071】
[半導体装置及びその製造方法]
本発明の半導体装置は、前記半導体積層体が個片化されたものである。本発明の半導体装置の製造方法は、前記半導体積層体を個片化する工程を含む方法である。このように、樹脂フィルムでモールドされた半導体ウエハを個片化することで、硬化皮膜を有する半導体装置が得られる。モールドされたウエハは、ダイシングテープ等の半導体加工用保護テープにモールド樹脂面又はウエハ面が接するように貼られ、ダイサーの吸着テーブル上に設置され、このモールドされたウエハは、ダイシングブレードを備えるダイシングソー(例えば、(株)DISCO製DFD6361)を使用して切断される。ダイシング時のスピンドル回転数及び切断速度は、適宜設定すればよいが、通常、スピンドル回転数25,000~45,000rpm、切断速度10~50mm/secが好ましい。また、個片化されるサイズは、半導体パッケージの設計によるが、概ね2mm×2mm~30mm×30mm程度である。
【0072】
このように、前記樹脂フィルムでモールドされた半導体ウエハは、樹脂フィルムの強度と接着力が高いため、半導体ウエハが十分に保護されたものとなるので、これを個片化することで歩留まりよく高品質な半導体装置を製造することができる。
【実施例】
【0073】
以下、合成例、実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されない。
【0074】
使用した化合物(S-1)~(S-6)は、以下のとおりである。
【化20】
【0075】
[1]エポキシ化合物の合成
[合成例1]エポキシ化合物(S-7)の合成
攪拌機、温度計、窒素置換装置及び還流冷却器を具備した5Lフラスコに、化合物(S-1)617g(2.0モル)、メタノール256g(8.0モル)及びエピクロロヒドリン852g(8.0モル)を加え、水酸化ナトリウム768g(19.2モル)を2時間かけて添加し、その後、60℃まで温度を上げて3時間反応させた。反応後、トルエン500mLを加え、水層が中性になるまで純水で洗浄した後、有機層中の溶剤を減圧下で除去し、エポキシ化合物(S-7)757g(1.8モル)を得た。
【化21】
【0076】
[2]エポキシ樹脂の合成
以下の合成例において、Mwは、GPCカラム(TSKgel Super HZM-H(東ソー(株)製))を用い、流量0.6mL/分、溶出溶剤テトラヒドロフラン、カラム温度40℃の分析条件で、単分散ポリスチレンを標準とするGPCにより測定した値である。
【0077】
[合成例2]エポキシ樹脂1の合成
攪拌機、温度計、窒素置換装置及び還流冷却器を具備した3Lフラスコに、化合物(S-7)420.5g(1.0モル)を加えた後、トルエン1,400gを加え、70℃まで加熱した。その後、塩化白金酸トルエン溶液(白金濃度0.5質量%)1.0gを投入し、化合物(S-3)194.4g(1.0モル)を1時間かけて滴下した(ヒドロシリル基の合計/アルケニル基の合計=1.0/1.0=1(モル比))。滴下終了後、100℃まで加熱し、6時間熟成した後、反応溶液からトルエンを減圧留去し、下記式で表される固体状のエポキシ樹脂1 570gを得た。エポキシ樹脂1のMwは、53,200、エポキシ当量は307g/eqであった。
【化22】
【0078】
[合成例3]エポキシ樹脂2の合成
攪拌機、温度計、窒素置換装置及び還流冷却器を具備した3Lフラスコに、化合物(S-2)133.5g(0.227モル)を加えた後、トルエン1,500gを加え、70℃まで加熱した。その後、塩化白金酸トルエン溶液(白金濃度0.5質量%)1.0gを投入し、化合物(S-4)525.6g(0.182モル)及び化合物(S-3)8.8g(0.045モル)を1時間かけて滴下した(ヒドロシリル基の合計/アルケニル基の合計=0.5/0.5=1(モル比))。滴下終了後、100℃まで加熱し、6時間熟成した後、反応溶液からトルエンを減圧留去し、下記式で表される固体状のエポキシ樹脂2 605gを得た。エポキシ樹脂2のMwは、51,100、エポキシ当量は1,471g/eqであった。
【化23】
【0079】
[合成例4]エポキシ樹脂3の合成
攪拌機、温度計、窒素置換装置及び還流冷却器を具備した3Lフラスコに、化合物(S-2)104.9g(0.179モル)、化合物(S-5)61.5g(0.143モル)及び化合物(S-6)6.6g(0.036モル)を加えた後、トルエン1,600gを加え、70℃まで加熱した。その後、塩化白金酸トルエン溶液(白金濃度0.5質量%)1.0gを投入し、化合物(S-4)516.3g(0.179モル)及び化合物(S-3)34.7g(0.179モル)を1時間かけて滴下した(ヒドロシリル基の合計/アルケニル基の合計=0.5/0.5=1(モル比))。滴下終了後、100℃まで加熱し、6時間熟成した後、反応溶液からトルエンを減圧留去し、下記式で表される固体状のエポキシ樹脂3 680gを得た。エポキシ樹脂3のMwは、46,800、エポキシ当量は2,022g/eqであった。
【化24】
【0080】
[3]樹脂フィルムの作製及びその評価
[実施例1~20及び比較例1~9]
下記表1~3に記載した組成で、(A)エポキシ樹脂、(B)フェノール系硬化剤、(C)硬化促進剤、(D)改質剤、(E)無機充填剤及び(F)エポキシ化合物を配合した。更に、固形成分濃度が80質量%となる量のシクロペンタノンを添加し、スターラーを使用して攪拌し、混合及び分散して、樹脂組成物の分散液を調製した。エポキシ基とフェノール当量が合うように、フェノール系硬化剤を加えた。
フィルムコーターとしてダイコーターを用い、保護フィルムとしてE7304(商品名、東洋紡(株)製ポリエステル、厚さ75μm、剥離力200mN/50mm)を用いて、各樹脂組成物を保護フィルム上に塗布した。次いで、100℃に設定されたオーブンに20分間入れることで溶剤を完全に蒸発させ、膜厚100μmの樹脂フィルムを前記保護フィルム上に形成した。
【0081】
表1~3中、各成分は、以下のとおりである。
・YL983U:三菱ケミカル(株)製ビスフェノール型エポキシ樹脂、エポキシ当量172g/eq、粘度30~60P(ガードナーホルト法、25℃)
【0082】
【0083】
・硬化促進剤:キュアゾール2P4MHZ(四国化成工業(株)製、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール)
【0084】
【0085】
・シリカ1:(株)アドマテックス製、平均粒子径5.0μm
・シリカ2:(株)アドマテックス製、平均粒子径10.0μm
【0086】
【0087】
得られた樹脂フィルムについて、以下の方法で評価を行った。結果を表1~3に併記する。
(1)接着力測定試験
作製したフィルムを、ニッコー・マテリアル社製ラミネータV-130を用いて、110℃、0.5MPaの条件で20mm角シリコンウエハに貼り付け、その上から2mm角に切ったシリコンチップを押し当てて、180℃で4時間加熱してフィルムを硬化させた。その後、接着力測定装置(ノードソン・アドバンスト・テクノロジー社製万能型ボンドテスター シリーズ4000(DS-100))を用いて、23℃で、200μm/secの試験速度でチップを横から押し、チップが基板から剥がれたときの接着力を測定した(ダイシェアテスト)。
【0088】
(2)反り応力測定試験
フィルムラミネーター((株)タカトリ製TEAM-100)を用いて、作製したフィルムをシリコンウエハ上にラミネートし、180℃で4時間加熱してフィルムを硬化させ、それらを薄膜応力測定装置(東朋テクノロジー(株)製FLX-2320-S)で反り応力(25℃)を測定した。
【0089】
(3)誘電正接測定試験
作製したフィルムを180℃で4時間加熱して硬化させ、ベクトルネットワークアナライザ(アンリツ(株)製MS46122A)用いて、前記硬化物の10GHzにおける誘電正接を25℃で測定した。
【0090】
(4)信頼性試験
シリコンウエハ上に、エポキシ系接着剤(信越化学工業(株)製SINR-DF3770)を用いて10mm角の400μm厚シリコンチップをマウントし、190℃で2時間加熱して接着剤を硬化させた。その後、フィルムラミネーター((株)タカトリ製TEAM-100)を用いて、作製したフィルムをシリコンウエハ上にラミネートし、180℃で4時間加熱して硬化させた後、チップを中心として、1辺3cmの正方形にダイシングした。それをエスペック(株)製冷熱衝撃試験器に入れ、-55~125℃で1,000回の冷熱衝撃試験を実施し、電子顕微鏡を用いて断面観察によりチップとモールドとの界面の状態を確認した。剥離やクラックがあったものを×とし、これらがないものを〇とした。
【0091】
【0092】
【0093】
【0094】
以上の結果より、本発明の樹脂組成物から得られる樹脂フィルムは、改質剤を含まない組成物から得られた比較例の樹脂フィルムと比べて、接着力が高いまま維持され、誘電損失が小さくなり、パッケージの信頼性にも影響がないことが示された。この特徴から、本発明の樹脂組成物を半導体封止用フィルムに用いた場合、電流のロスがなくなり、高周波対応デバイスの電気特性が改善され、長期間使用しても剥離等の問題が起こりにくいといえる。これにより、モールド用途に本発明の樹脂組成物を使用した場合、チップ搭載ウエハに対して、良好な低反り性、難剥離性を示す。