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特許7415559反応性ホットメルト接着剤組成物及びその製造方法、接着方法、並びに、画像表示装置及びその製造方法
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  • 特許-反応性ホットメルト接着剤組成物及びその製造方法、接着方法、並びに、画像表示装置及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】反応性ホットメルト接着剤組成物及びその製造方法、接着方法、並びに、画像表示装置及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09J 175/06 20060101AFI20240110BHJP
   C09J 175/08 20060101ALI20240110BHJP
   G02F 1/1333 20060101ALI20240110BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
C09J175/06
C09J175/08
G02F1/1333
G09F9/00 350Z
G09F9/00 336E
G09F9/00 338
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019561051
(86)(22)【出願日】2018-12-14
(86)【国際出願番号】 JP2018046156
(87)【国際公開番号】W WO2019124266
(87)【国際公開日】2019-06-27
【審査請求日】2021-11-15
(31)【優先権主張番号】P 2017244037
(32)【優先日】2017-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100221992
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 真由美
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(72)【発明者】
【氏名】小宮 聡一郎
(72)【発明者】
【氏名】鈴村 浩二
(72)【発明者】
【氏名】倉持 知佳
(72)【発明者】
【氏名】馬籠 和幸
【審査官】上條 のぶよ
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-532632(JP,A)
【文献】特開2014-201635(JP,A)
【文献】特開2015-196768(JP,A)
【文献】特開2016-121214(JP,A)
【文献】特開2017-057375(JP,A)
【文献】特開2002-235053(JP,A)
【文献】特開2007-154078(JP,A)
【文献】特開2015-151443(JP,A)
【文献】国際公開第2004/031296(WO,A1)
【文献】特開2008-094960(JP,A)
【文献】特開2002-188073(JP,A)
【文献】特開平07-118622(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J,G02F,G09F
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶性ポリエステルポリオールとポリーテルポリオールとを含むポリオール化合物とポリイソシアネート化合物との反応物であるイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー、及び、黒色顔料を含有し、
前記ポリオール化合物が、前記ポリオール化合物の総質量を基準として、前記結晶性ポリエステルポリオールを50質量%以上含み、
前記黒色顔料の含有量が、前記ウレタンプレポリマー100質量部に対して0.5~10質量部である、反応性ホットメルト接着剤組成物。
【請求項2】
前記ポリオール化合物が、前記結晶性ポリエステルポリオールを50~90質量%含む、請求項1に記載の反応性ホットメルト接着剤組成物。
【請求項3】
前記結晶性ポリエステルポリオールが、6~12個の炭素原子を有するポリカルボン酸と、4~10個の炭素原子を有する多価アルコールとに基づく構造を有する、請求項1又は2に記載の反応性ホットメルト接着剤組成物。
【請求項4】
結晶性ポリエステルポリオールとポリーテルポリオールとを含むポリオール化合物に由来する構造単位と、ポリイソシアネート化合物に由来する構造単位とを有し、前記ポリオール化合物に由来する構造単位のうち50質量%以上が、前記結晶性ポリエステルポリオールに由来する構造単位であるウレタンプレポリマー、及び、黒色顔料を含有し、
前記黒色顔料の含有量が、前記ウレタンプレポリマー100質量部に対して0.5~10質量部である、反応性ホットメルト接着剤組成物。
【請求項5】
フラットパネルディスプレイと、バックライトユニットとを備える画像表示装置であって、
前記フラットパネルディスプレイと前記バックライトユニットとが、請求項1~4のいずれか一項に記載の反応性ホットメルト接着剤組成物により接着されている、画像表示装置。
【請求項6】
イソシアネート基を有するウレタンプレポリマー及び黒色顔料を含有する反応性ホットメルト接着剤組成物の製造方法であって、
結晶性ポリエステルポリオールとポリーテルポリオールとを含むポリオール化合物とポリイソシアネート化合物とを反応させて、前記イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを得る工程を備え、
前記ポリオール化合物が、前記ポリオール化合物の総質量を基準として前記結晶性ポリエステルポリオールを50質量%以上含み、
前記黒色顔料の含有量が、前記ウレタンプレポリマー100質量部に対して0.5~10質量部である、製造方法。
【請求項7】
前記ポリオール化合物が、前記結晶性ポリエステルポリオールを50~90質量%含む、請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
前記結晶性ポリエステルポリオールが、6~12個の炭素原子を有するポリカルボン酸と、4~10個の炭素原子を有する多価アルコールとに基づく構造を有する、請求項6又は7に記載の製造方法。
【請求項9】
フラットパネルディスプレイと、バックライトユニットとを接着する接着方法であって、
前記フラットパネルディスプレイの上面に前記バックライトユニットを積層して形成される、前記バックライトユニットの側面と前記フラットパネルディスプレイの露出している上面との内隅に、請求項1~4のいずれか一項に記載の反応性ホットメルト接着剤組成物を用いることで接着剤層を形成する、接着方法。
【請求項10】
請求項9に記載の接着方法を用いて画像表示装置を製造する、画像表示装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反応性ホットメルト接着剤組成物及びその製造方法、接着方法、並びに、画像表示装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
反応性ホットメルト接着剤は無溶剤型の接着剤であるため、環境及び人体への負荷が少なく、短時間接着が可能なので生産性向上に適した接着剤である。反応性ホットメルト接着剤は、反応性樹脂を主成分とし、化学反応により高分子量化し、高い接着強度等を発現することができる。反応性樹脂としては、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーが利用されている(例えば、特許文献1及び2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2008-500406号公報
【文献】国際公開第2016/157614号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
反応性ホットメルト接着剤は、被着体に塗布した後、接着剤自体の冷却固化により、短時間で、ある程度の接着強度を示す。その後、ウレタンプレポリマーのイソシアネート基が空気中又は被着体表面の水分と反応することにより高分子量化し、架橋を生じることにより接着剤層を形成して優れた接着強度を発現する。しかし、反応性ホットメルト接着剤による接着は、塗布直後は高分子量化、架橋が瞬時に起こらないために基材への初期接着強度が不十分な場合がある。そのため、反応性ホットメルト接着剤には、短時間で優れた初期接着強度を発現すること、すなわち、速固化性が求められている。
【0005】
本発明の目的は、速固化性を有する反応性ホットメルト接着剤組成物及びその製造方法、当該反応性ホットメルト接着剤組成物を用いた接着方法、並びに、画像表示装置及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物との反応物であるイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを含有し、ポリオール化合物が、ポリオール化合物の総質量を基準として結晶性ポリエステルポリオールを50質量%以上含む反応性ホットメルト接着剤組成物を提供する。本発明に係る反応性ホットメルト接着剤組成物は、ポリオール化合物に由来する構造単位と、ポリイソシアネート化合物に由来する構造単位とを有し、ポリオール化合物に由来する構造単位のうち50質量%以上が、結晶性ポリエステルポリオールに由来する構造単位であるウレタンプレポリマーを含有する。
【0007】
ポリオール化合物は、結晶性ポリエステルポリオールを50~90質量%含んでもよい。結晶性ポリエステルポリオールは、6~12個の炭素原子を有するポリカルボン酸と、4~10個の炭素原子を有する多価アルコールとに基づく構造を有してもよい。ポリオール化合物は、ポリエーテルポリオールを含んでもよい。
【0008】
本発明に係る反応性ホットメルト接着剤組成物は、顔料を更に含有してもよい。
【0009】
本発明はまた、フラットパネルディスプレイと、バックライトユニットとを備える画像表示装置であって、フラットパネルディスプレイとバックライトユニットとが、本発明に係る反応性ホットメルト接着剤組成物により接着されている、画像表示装置を提供する。
【0010】
本発明はまた、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを含有する反応性ホットメルト接着剤組成物の製造方法であって、ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物とを反応させて、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを得る工程を備え、ポリオール化合物が、ポリオール化合物の総質量を基準として結晶性ポリエステルポリオールを50質量%以上含む、製造方法を提供する。
【0011】
本発明はまた、フラットパネルディスプレイとバックライトユニットとを接着する接着方法であって、フラットパネルディスプレイの上面にバックライトユニットを積層して形成される、バックライトユニットの側面とフラットパネルディスプレイの露出している上面との内隅に、本発明に係る反応性ホットメルト接着剤組成物を用いることで接着剤層を形成する、接着方法を提供する。
【0012】
本発明はさらに、上記接着方法を用いて画像表示装置を製造する、画像表示装置の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、速固化性を有する反応性ホットメルト接着剤組成物及びその製造方法、当該反応性ホットメルト接着剤組成物を用いた接着方法、並びに、画像表示装置及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施形態に係る反応性ホットメルト接着剤組成物を用いた接着の一態様を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に何ら限定されない。
【0016】
<定義>
本明細書において、「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。本明細書に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階の数値範囲の上限値又は下限値は、他の段階の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。本明細書に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。「A又はB」とは、A及びBのどちらか一方を含んでいればよく、両方とも含んでいてもよい。
【0017】
[反応性ホットメルト接着剤組成物]
本実施形態の反応性ホットメルト接着剤組成物(以下、「接着剤組成物」と略記する場合がある。)は、ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物との反応物であるイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを含有し、ポリオール化合物が、ポリオール化合物の総質量を基準として結晶性ポリエステルポリオールを50質量%以上含む。
【0018】
一般に、反応性ホットメルト接着剤組成物は、空気中又は被着体表面の水分と反応することにより高分子量化し、接着強度(最終接着強度)を発現することができる。本実施形態に係る接着剤組成物は、従来の反応性ホットメルト接着剤組成物よりもより短時間で優れた初期接着強度を発現することでき、優れた速固化性を有している。
【0019】
本実施形態に係る接着剤組成物の速固化性は、例えば、以下のような方法により評価することができる。室温(23℃、50%RH)において、1mm幅で基材に接着剤組成物を塗布して接着剤層を形成してから、接着剤層の表面にタックがなくなるまでの時間で、接着剤組成物の固化性を評価できる。速固化性の観点から、タックが2分以内になくなることが好ましく、タックが1分以内になくなることがより好ましい。ここで「タックがなくなる」とは、接着剤層を指で触れたときに、べた付きがなくなることを示す。
【0020】
(イソシアネート基を有するウレタンプレポリマー)
本実施形態に係るイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(以下、「反応性ウレタンプレポリマー」という場合もある。)は、結晶性ポリエステルポリオールを50質量%以上含むポリオール化合物を、ポリイソシアネート化合物と反応させてなり、ウレタンプレポリマーの末端にイソシアネート基を有している。これにより、本実施形態に係る接着剤組成物は、優れた初期接着強度を早期に発揮することができる。
【0021】
速固化性及び塗布作業性の観点から、ポリオール化合物は、結晶性ポリエステルポリオールを50~90質量%含むことが好ましく、50~85質量%含むことがより好ましく、50~80質量%含むことが更に好ましい。
【0022】
反応性ウレタンプレポリマーは、ポリオール化合物に由来する構造単位と、ポリイソシアネート化合物に由来する構造単位とを有し、ポリオール化合物に由来する構造単位のうち50質量%以上が、結晶性ポリエステルポリオールに由来する構造単位を含有する。構造単位の含有量は、NMR、熱分解GC/MS等の既知の分析手法を用いて測定することができる。速固化性及び塗布作業性の観点から、ポリオール化合物に由来する構造単位は、結晶性ポリエステルポリオールに由来する構造単位を50~90質量%含むことが好ましく、50~85質量%含むことがより好ましく、50~80質量%含むことが更に好ましい。
【0023】
ポリエステルポリオールの結晶性及び非晶性は、25℃での状態で判断する。結晶性は、ポリエステルポリオールを25℃以上に加温して液状になることを確認するか、示差走査熱量計にてポリエステルポリオールの融解温度を確認することで判断することができる。本明細書において、ポリエステルポリオールのうち、25℃で結晶であるポリエステルポリオールを結晶性ポリエステルポリオールとし、25℃で非結晶であるポリエステルポリオールを非晶性ポリエステルポリオールとする。本実施形態に係るポリオール化合物は、結晶性ポリエステルポリオールを必須成分として含むが、必要に応じて非晶性ポリエステルポリオールを含んでもよい。
【0024】
ポリエステルポリオールは、例えば、2~15個の炭素原子及び2又は3個の水酸基を有する多価アルコールと、2~14個の炭素原子(カルボキシル基中の炭素原子を含む)を有し、2~6個のカルボキシル基を有するポリカルボン酸との重縮合物であってもよい。ポリエステルポリオールは、ジオールとジカルボン酸とから生成する直鎖ポリエステルジオールであってもよく、トリオールとジカルボン酸とから生成する分岐ポリエステルトリオールであってもよい。また、分岐ポリエステルトリオールは、ジオールとトリカルボン酸との反応によって得ることもできる。
【0025】
多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、ブタンジオールの各異性体、ペンタンジオールの各異性体、ヘキサンジオールの各異性体、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、2-メチルプロパンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,4,4-トリメチルヘキサン-1,6-ジオール、2,2,4-トリメチルヘキサン-1,6-ジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール等の脂肪族又は脂環族ジオール;4,4’-ジヒドロキシジフェニルプロパン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ピロカテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン等の芳香族ジオールが挙げられる。
【0026】
これらの中でも、結晶性ポリエステルポリオールが得られ易くなる観点から、多価アルコールとして、脂肪族ジオールが好ましく、2~10個の炭素原子を有する脂肪族ジオールがより好ましく、4~10個の炭素原子を有する脂肪族ジオールが更に好ましく、4~8個の炭素原子を有する脂肪族ジオールがより一層好ましい。より結晶性の高い結晶性ポリエステルポリオールを得られ易くする観点から、多価アルコールは、直鎖の脂肪族ジオールであることが好ましい。直鎖の脂肪族ジオールが有する炭素原子の数としては、3~10個であることが好ましく、4~10個であることがより好ましく、4~8個であることが更に好ましく、4~6個であることがより一層好ましく、5個又は6個であることが特に好ましい。多価アルコールは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
ポリカルボン酸としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸等の芳香族ポリカルボン酸;マレイン酸、フマル酸、アコニット酸、1,2,3-プロパントリカルボン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸、1,4-シクロヘキサジエン-1,2-ジカルボン酸等の脂肪族又は脂環族ポリカルボン酸が挙げられる。
【0028】
これらの中でも、結晶性ポリエステルポリオールが得られ易くなる観点から、ポリカルボン酸として、脂肪族ジカルボン酸が好ましく、4~12個の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸がより好ましく、6~12個の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸が更に好ましく、6~10個の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸がより一層好ましい。より結晶性の高い結晶性ポリエステルポリオールを得られ易くする観点から、ポリカルボン酸として、直鎖の脂肪族ジカルボン酸が好ましい。直鎖の脂肪族ジカルボンが有する炭素原子の数としては、4~12個が好ましく、6~12個がより好ましく、6~10個が更に好ましい。ポリカルボン酸は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0029】
速固化性に優れた接着剤組成物を得易くする観点から、本実施形態に係る結晶性ポリエステルポリオールは、6~12個の炭素原子を有するポリカルボン酸と、4~10個の炭素原子を有する多価アルコールとに基づく構造を有することが特に好ましい。
【0030】
ポリカルボン酸に代えて、カルボン酸無水物、カルボキシル基の一部がエステル化された化合物等のポリカルボン酸誘導体を用いることもできる。ポリカルボン酸誘導体として、例えば、ドデシルマレイン酸及びオクタデセニルマレイン酸が挙げられる。
【0031】
結晶性ポリエステルポリオールの数平均分子量(Mn)は、防水性及び高い初期接着強度を得易くなる観点から、500~10000が好ましく、1000~8000がより好ましく、1500~6000が更に好ましく、2000~5500がより一層好ましい。
【0032】
本明細書において、数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定され、標準ポリスチレン換算した値である。GPCの測定は、以下の条件で行うことができる。
カラム:「Gelpack GLA130-S」、「Gelpack GLA150-S」及び「Gelpack GLA160-S」(日立化成株式会社製、HPLC用充填カラム)
溶離液:テトラヒドロフラン
流量:1.0mL/分
カラム温度:40℃
RI検出器:L-3350(株式会社日立ハイテクサイエンス、製品名)
【0033】
非晶性ポリエステルポリオールの数平均分子量としては、接着剤組成物の初期接着強度を向上できる観点から、500~3000が好ましく、1000~3000がより好ましく、1500~2500が更に好ましい。
【0034】
本実施形態に係るポリオール化合物は、ポリエーテルポリオールを更に含んでもよい。ポリエーテルポリオールは、接着剤組成物の塗布後の適度な溶融粘度及びオープンタイム(貼り合わせ可能時間)を調整して、優れた作業性、接着強度、防水性及び柔軟性を接着剤組成物に付与することができる。接着剤組成物の塗布作業性を向上させる観点からポリエーテルジオールが好ましく、ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール及びエチレンオキサイド変性ポリプロピレングリコールが挙げられる。ポリエーテルポリオールは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
ポリエーテルポリオールの含有量は、接着剤組成物を低粘度に調整し易い点及び被着体への密着性を向上する点から、ポリオール化合物の総質量を基準として50質量%以下であることが好ましく、10~50質量%であることがより好ましく、15~50質量%であることが更に好ましい。
【0036】
ポリエーテルポリオールの数平均分子量としては、接着強度及び柔軟性を得易くする観点から、500~6000の範囲が好ましく、800~5000の範囲がより好ましく、1000~4500の範囲が更に好ましい。
【0037】
ポリイソシアネート化合物としては、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート、ジメチルジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート;ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネートが挙げられる。ポリイソシアネート化合物は、反応性及び接着強度を向上する点から、芳香族ジイソシアネートを含有することが好ましく、ジフェニルメタンジイソシアネートを含有することがより好ましい。ポリイソシアネート化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0038】
反応性ウレタンプレポリマーを合成する場合、ポリイソシアネート化合物とポリオール化合物との混合割合は、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基(NCO)当量/ポリオールの水酸基(OH)当量の比であるNCO/OHが1.6~3.0であることが好ましく、1.8~2.5であることがより好ましい。NCO/OHの比が1.6以上であると、得られる反応性ウレタンプレポリマーの粘度が高くなることを抑え、作業性を向上し易くなる傾向がある。NCO/OHの比が3.0以下であると、接着剤組成物の湿気硬化反応の際に発泡が生じ難くなり、最終接着強度の低下を抑える傾向がある。
【0039】
反応性ウレタンプレポリマーの製造方法は、特に限定されない。接着剤組成物を調製する際に、ポリイソシアネート化合物とポリオール化合物とを混合して、反応性ウレタンプレポリマーを合成してもよく、予めポリイソシアネート化合物とポリオール化合物とから反応性ウレタンプレポリマーを合成した後に、接着剤組成物を調製してもよい。
【0040】
(顔料)
本実施形態に係る接着剤組成物は、顔料を更に含有してもよい。顔料は、求められる特性に応じて適宜選択することができる。顔料としては、例えば、黒色顔料、白色顔料、赤色顔料、黄色顔料及び青色顔料が挙げられる。各種の顔料は、それぞれ所望される効果に基づいて選択された含有量、例えば、ウレタンプレポリマー100質量部に対して0.5~30質量部の範囲で、接着剤組成物に含むことができる。
【0041】
遮光性が求められる場合には、黒色顔料を用いることができる。黒色顔料としては、例えば、カーボンブラック、ランプブラック、黒鉛、植物黒、骨炭等の炭素系黒色顔料;鉄の酸化物、銅とクロムとの複合酸化物、銅とクロムと亜鉛との複合酸化物等の酸化物系黒色顔料が挙げられる。
【0042】
黒色顔料の含有量は、ウレタンプレポリマー100質量部に対して、0.5~10質量部が好ましく、0.8~8質量部がより好ましく、1~5質量部が更に好ましい。黒色顔料の含有量が0.5質量部以上であると、接着剤組成物から形成される接着剤層の遮光性を向上し易くなり、黒色顔料の含有量が10質量部以下であると、接着剤組成物の粘度を調整し易くなる。
【0043】
ここで、黒色顔料の粒子径(平均一次粒子径)は特に限定されないが、例えば、1~200nmであってもよく、5~100nmであってもよい。本明細書における平均一次粒子径とは、実施例に記載の方法により求められる数値のことを示す。
【0044】
光反射性が求められる場合には、白色顔料を用いることができる。白色顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化アンチモン及び酸化ジルコニウムが挙げられる。
【0045】
(その他の成分)
本実施形態に係る接着剤組成物には、必要に応じて、触媒、酸化防止剤、紫外線吸収剤、界面活性剤、難燃剤、充填剤等を適量配合してもよい。
【0046】
触媒としては、例えば、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジオクテート、ジメチルシクロヘキシルアミン、ジメチルベンジルアミン及びトリオクチルアミンが挙げられる。
【0047】
(物性)
本実施形態に係る接着剤組成物のオープンタイム(貼り合わせ可能時間)は、120秒以下であることが好ましく、60秒以下であることがより好ましい。オープンタイムが60秒以下であると接着剤組成物による接着後、すぐに接着力が発現し易くなる。
【0048】
被着体への塗布性を向上する観点から、本実施形態に係る接着剤組成物の回転粘度計を用いて測定される溶融粘度は、JIS Z 8803に準拠し、実施例に記載の方法で測定可能である。接着剤組成物の溶融粘度は、120℃で10Pa・s以下であることが好ましく、8Pa・s以下であることがより好ましく、7Pa・s以下であることが更に好ましい。溶融粘度の下限値は限定されないが、例えば、120℃で0.5Pa・s以上であってもよい。
【0049】
[反応性ホットメルト接着剤組成物の製造方法]
本実施形態に係る接着剤組成物の製造方法は、ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物とを反応させて、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを得る工程を備え、ポリオール化合物が、ポリオール化合物の総質量を基準として結晶性ポリエステルポリオールを50質量%以上含む方法である。
【0050】
本実施形態に係る接着剤組成物は、ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物とを反応させて、反応性ウレタンプレポリマーを得てから、必要に応じて配合する顔料等の成分と混合することにより作製してもよい。また、ポリイソシアネート化合物及びポリオール化合物と、必要に応じて配合する顔料等の成分とを混合して、反応性ウレタンプレポリマーを合成しながら、接着剤組成物を作製してもよい。例えば、接着剤組成物に顔料を配合する場合、顔料の存在下、ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物とを反応させてウレタンプレポリマーを得る工程により、接着剤組成物を作製してもよく、また、予めポリオール化合物とポリイソシアネート化合物とを反応させてウレタンプレポリマーを得た後、ウレタンプレポリマーと顔料とを混合する工程により、接着剤組成物を作製してもよい。
【0051】
本実施形態の反応性ホットメルト接着剤組成物を用いて、各種被着体を接着することができる。本実施形態に係る接着剤組成物は、被着体の表面又は側面に塗布することにより被着体同士を接着させることができ、従来の反応性ホットメルト接着剤組成物よりもより短時間で優れた初期接着強度を発現することができる。
【0052】
被着体としては、例えば、金属被着体(SUS、アルミニウム等)、非金属被着体(ポリカーボネート、ガラス等)が挙げられる。本実施形態に係る接着剤組成物は、非金属被着体だけでなく、金属被着体に対しても優れた接着強度を示す。本実施形態に係る接着剤組成物は、従来、両面テープが用いられていた液晶ディスプレイ等のフラットパネルディスプレイとバックライトユニットとの接着にも用いることができる。
【0053】
フラットパネルディスプレイとは、薄型で平坦な画面を有する薄型映像表示のことを示す。フラットパネルディスプレイとして、例えば、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、FED(フィールドエミッション・ディスプレイ)、電子ペーパ等が挙げられる。
【0054】
以下、本実施形態に係る接着剤組成物を用いたフラットパネルディスプレイとバックライトユニットとの接着方法について、説明する。図1は、本実施形態に係る接着剤組成物を用いた接着の一態様を示す模式断面図である。
【0055】
フラットパネルディスプレイ10とバックライトユニット20を重ねて二層の構造を形成し、バックライトユニット20の側面とフラットパネルディスプレイ10の露出している上面との内隅に、接着剤組成物を塗布することで接着剤層30を形成し、フラットパネルディスプレイ10とバックライトユニット20とを接着することができる。すなわち、本実施形態の係る接着方法では、フラットパネルディスプレイ10の上面にバックライトユニット20を積層して形成される、バックライトユニット20の側面とフラットパネルディスプレイ10の露出している上面との内隅に、本実施形態に係る接着剤組成物を用いて接着剤層30を形成することができる。上記接着方法を用いることで、フラットパネルディスプレイと、バックライトユニットとを備える画像表示装置を製造することができる。また、本実施形態に係る接着剤組成物は速固化性を有するため、製造プロセスを効率化する観点から、上記画像表示装置の製造方法において好適である。この際、黒色顔料を含有する接着剤組成物を用いた場合、接着と遮光とを同時に行うことができる。本実施形態に係る接着方法の場合、従来のフラットパネルディスプレイの端部とバックライトユニットの端部とを両面テープで接着する方法に比較して、薄型化が可能となる。また、本実施形態に係る接着剤組成物を、上記接着方法により接着させる場合、上記接着の一態様に示されるような、二層の被着体の接着に用いてもよく、三層以上の被着体の接着に用いてもよい。
【0056】
本実施形態に係る接着剤組成物は速固化性を有するため、上記接着方法において特に好適である。
【実施例
【0057】
以下、本発明を実施例で説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
【0058】
(ポリオール化合物)
結晶性ポリエステルポリオールとして、PES-1(アジピン酸及び1,6-ヘキサンジオールを反応させることで得られたポリエステルポリオール、水酸基数:2、Mn:3000)と、PES-2(セバシン酸及び1,6-ヘキサンジオールを反応させることで得られたポリエステルポリオール、水酸基数:2、Mn:5000)を準備した。非晶性ポリエステルポリオールとして、PES-3(アジピン酸及びエチレングリコールを反応させることで得られたポリエステルポリオール、水酸基数:2、Mn:2000)を準備した。ポリエーテルポリオールとして、PP2000(ポリプロピレングリコール、Mn:2000、旭硝子株式会社製の「EXENOL2020」)を準備した。
【0059】
(ポリイソシアネート化合物)
ポリイソシアネート化合物として、MDI(ジフェニルメタンジイソシアネート、イソシアネート基数:2、東ソー株式会社製の「ミリオネートMT」)を準備した。
【0060】
(顔料)
黒色顔料として、カーボンブラックA(粒子径:30~50nm)、カーボンブラックB(粒子径20~30nm)及びカーボンブラックC(粒子径10~20nm)を準備した。ここで、粒子径とは平均一次粒子径のことを示す。走査型電子顕微鏡(株式会社Philips製の「XL-30」)を用いてカーボンブラックの観察を行い、得られた観察画像から、カーボンブラックの一次粒子50個について長径を測定し、その平均値を平均一次粒子径とした。
【0061】
(実施例1)
予め真空乾燥機により脱水処理したPES-1を50質量部、PP2000を50質量部、MDIを21.1部、及び、カーボンブラックAを3質量部混合した後、110℃で2時間反応させ、更に110℃で2時間減圧脱泡攪拌して、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーと黒色顔料とを含む、接着剤組成物を得た。
【0062】
(実施例2~8、比較例1~2)
各成分を表1に示す種類及び配合量に変更した以外は、実施例1と同様にして、接着剤組成物を得た。なお、表1中の数字は、質量部を意味する。
【0063】
【表1】
【0064】
実施例及び比較例で作製した接着剤組成物の各特性を以下のようにして評価した。結果を表2に示す。
【0065】
(溶融粘度)
JIS Z 8803に準拠し、B型粘度計(東機産業株式会社製の「TVB-25H」)で、4号ローターを使用して、ローター回転数50rpm、120℃における接着剤組成物(試料量15g)の溶融粘度を測定した。
【0066】
(固化性)
接着剤組成物を室温(23℃、50%RH)において、1mm幅で、基材に塗布して接着剤層を形成してから、接着剤層の表面にタックがなくなるまでの時間で測定することで固化性を判断した。タックが1分以内になくなった場合を「A」、タックが1分を超え2分以内になくなった場合を「B」、タックが2分以内になくならなかった場合を「C」と評価した。
【0067】
(接着力)
接着剤組成物を100℃に溶融し、温度25℃、湿度50%の環境下で、縦100mm×横25mm×厚さ2mmのポリカーボネート板上に、縦12.5mm×横25mm×厚さ0.1mmの接着剤層を形成した後、当該接着剤層の上に、縦100mm×横25mm×厚さ2mmのポリカーボネート板を圧着し試験片を作製した。JIS 6850に準拠し、試験機(株式会社島津製作所製の「オートグラフ AGS-1kNX」)を使用して、圧着してから10分経過した後と、30分経過した後に試験片のせん断接着試験(ピール速度:10mm/分)を行い、初期接着強度を測定した。また、同様の手順で作製した試験片を25℃、50%RHの恒温槽に24時間静置した後に、せん断接着試験(ピール速度:10mm/分)を行い、最終接着強度を測定した。
【0068】
(吐出性)
接着剤組成物を100℃に溶融し、内径0.25mmの精密ノズル(武蔵エンジニアリング株式会社製の「SHN-0.25N」)を取り付けたシリンンジ容器(武蔵エンジニアリング株式会社製の「PSY-30E」)に入れて、100℃に予め加熱されたディスペンサー(武蔵エンジニアリング株式会社製の「SHOTMASTER 200DS」)を用いて、圧力300kPaで吐出した。吐出できた場合を「A」、吐出できなかった場合を「C」と評価した。
【0069】
(遮光性)
接着剤組成物を100℃に溶融し、縦15mm×横40mm×厚さ0.1mmの試験片を作製した。試験片を25℃、50%RHの恒温槽に7日間静置した後、OD値を透過濃度計(伊原電子工業株式会社製の「TM-5」)で測定した。
【0070】
【表2】
【0071】
実施例1~8で得られた接着剤組成物は、速固化性に優れ、短時間で接着力を発現できることが確認できた。
【符号の説明】
【0072】
10…フラットパネルディスプレイ。20…バックライトユニット、30…接着剤層。
図1