(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】ジオキサジン顔料、着色剤及び印刷インキ
(51)【国際特許分類】
C09B 19/02 20060101AFI20240110BHJP
C09B 67/20 20060101ALI20240110BHJP
C09D 11/037 20140101ALI20240110BHJP
【FI】
C09B19/02
C09B67/20 F
C09D11/037
(21)【出願番号】P 2020016265
(22)【出願日】2020-02-03
【審査請求日】2023-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【氏名又は名称】小川 眞治
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【氏名又は名称】大野 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】フー シオン ワン
(72)【発明者】
【氏名】山田 頌悟
(72)【発明者】
【氏名】大竹 英弘
【審査官】桜田 政美
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第03515790(US,A)
【文献】特開昭61-141764(JP,A)
【文献】特開昭61-138665(JP,A)
【文献】特開2004-189668(JP,A)
【文献】特開2016-141767(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09B 19/02
C09B 67/20
C09D 11/037
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式
(1-1)で表されるジオキサジン顔料。
【化1】
[式中のX
1及びX
2は下記式(2)で表される基であり、
R
1及びR
2は水素原子又は炭素数1~8のアルキル基を表す。]
【化2】
[式中のYはNH又はOであり、
R
3は炭素数1~18のアルキル基、フェニル基、又は置換基として炭素数1~18のアルキル基を有するフェニル基を表す。
波線の箇所においてジオキサジン構造部と結合する。]
【請求項2】
請求項1に記載のジオキサジン顔料を少なくとも含有する着色剤。
【請求項3】
請求項1に記載のジオキサジン顔料を少なくとも含有する印刷インキ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なジオキサジン顔料、それを含む着色剤及び印刷インキに関する。
【背景技術】
【0002】
紫色顔料は、特有の色相を持ち、調色目的などに用いられる重要な顔料である。紫色顔料のなかでも、C.I.ピグメントバイオレット23に代表されるジオキサジン顔料は、鮮明な紫色で着色力が強く、耐熱性を持つため様々な場面で使用される顔料である。このようなジオキサジン顔料としては、例えば下記特許文献1に記載の顔料が知られている。しかし、このような従来のジオキサジン顔料は、一般的に耐光性に問題がある。特にC.I.ピグメントバイオレット23においては構造中に塩素基を有しているため、塩素に由来して耐光性が悪化することがある。また、市場からは、安全性等の問題から、塩素を含まないハロゲンフリーの顔料が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように従来のジオキサジン顔料は、耐光性などの問題を有しているため新たなジオキサジン顔料が求められている。本発明が解決しようとする課題は、C.I.ピグメントバイオレット23と同程度の着色力、耐熱性を有しつつ優れた耐光性を有し、塩素を含まないハロゲンフリーである新規なジオキサジン顔料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、ハロゲンフリーであり、優れた耐光性を示すジオキサジン顔料を見出すべく、鋭意検討した結果、C.I.ピグメントバイオレット23の構造の一部を特定の基に置き換えることで、上記課題を解決できる顔料が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
即ち本発明は、以下に関する。
項1. 下記式(1-1)、(1-2)又は(1-3)で表されるジオキサジン顔料。
【化1】
[式中のX
1及びX
2は下記式(2)で表される基であり、R
1及びR
2は水素原子又は炭素数1~8のアルキル基を表す。]
【化2】
[式中のYはNH又はOであり、R
3は炭素数1~18のアルキル基、フェニル基、又は置換基として炭素数1~18のアルキル基を有するフェニル基を表す。波線の箇所においてジオキサジン構造部と結合する。]
項2. 項1に記載のジオキサジン顔料を少なくとも含有する着色剤。
項3. 項1に記載のジオキサジン顔料を少なくとも含有する印刷インキ。
【発明の効果】
【0007】
本発明のジオキサジン顔料は、従来のジオキサジン顔料と同等の着色力、耐熱性を有しつつ、耐光性を著しく向上することができる。そのため、本発明のジオキサジン顔料は、印刷インキや塗料など広い分野において着色剤への使用が期待される。また、本発明のジオキサジン顔料は、塩素を有しておらずハロゲンフリーであるため、食品パッケージ、化粧品などの安全性が求められる分野にも使用することができると期待される。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[ジオキサジン顔料]
本発明のジオキサジン顔料は、下記式(1-1)、(1-2)又は(1-3)で表される。一般的にジオキサジン顔料の構造式は、式(1-1)で表されるが、本発明のジオキサジン顔料は、式(1-1)のみならず、式(1-2)や(1-3)で表される構造の化合物(構造異性体)であってもよい。また、本発明のジオキサジン顔料は、式(1-1)、(1-2)及び(1-3)で表される化合物を2種以上含む混合物もしくは混晶であってもよい。
【化3】
【0009】
上記式中のX
1及びX
2は下記式(2)で表される基であり、上記式中のR
1及びR
2は水素原子又は炭素数1~8のアルキル基を表す。R
1及びR
2としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基などが挙げられる。なかでもR
1及びR
2としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などの炭素数1~4のアルキル基が好ましい。なお、式(2)で表される基における波線の箇所において式(1-1)、(1-2)又は(1-3)で表されるジオキサジン構造部と結合する。
【化4】
【0010】
式(2)中のYはNH又はOであり、R3は炭素数1~18のアルキル基、フェニル基、又は置換基として炭素数1~18のアルキル基を有するフェニル基を表す。R3としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基などが挙げられる。なかでもR3としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などの炭素数1~4のアルキル基が好ましい。
【0011】
本発明のジオキサジン顔料の代表例としては、以下の化合物が挙げられる。
【化5】
【化6】
【0012】
[ジオキサジン顔料の製造方法]
本発明のジオキサジン顔料を簡便に得る方法の一例を以下に述べるが、本発明のジオキサジン顔料は、この製造方法により得られたジオキサジン顔料に限定して解釈されるべきものではない。本発明のジオキサジン顔料は、例えば、式(2)で表される基におけるYがNHである場合、下記の合成経路により得られる。
【0013】
【化7】
[上記式においてR
3は前記と同じであり、R
4はR
1及びR
2と同様に水素原子又は炭素数1~8のアルキル基を表す。]
【0014】
まず、上記合成経路においてクロラニル(A)から中間体1として(B-1)を得る反応は、クロラニルを溶媒に溶解させ、これに水酸化アンモニウムを加えて攪拌することにより行う。クロラニル1モルに対して加える水酸化アンモニウムの量は、2~10モル程度である。水酸化アンモニウムとしては、水で希釈したアンモニア水を用いてもよい。反応温度は、例えば30~80℃であり、反応時間は例えば1~6時間である。溶媒としては、酢酸2-メトキシエチルなどを使用することができる。
【0015】
次に、上記合成経路において中間体2として(D-1)を得る反応は、中間体1である(B-1)に化合物(C)を加え、酸性条件下で攪拌することにより行う。酸性条件下とするために硫酸、塩酸、ベンゼンスルホン酸などを加えてもよい。反応温度は、例えば10~40℃であり、反応時間は例えば3~24時間である。
【0016】
最後に、上記合成経路においてジオキサジン顔料を得る反応は、中間体2である(D-1)にカルバゾール化合物(E)を加え、塩基性条件下で反応させた後、酸性条件下で加熱することにより行う。塩基性条件下とするためにトリエチルアミンやアンモニア水を加えてもよい。また、酸性条件下とするために硫酸、塩酸、ベンゼンスルホン酸などを加えてもよい。さらに、酸化剤として塩化ベンゼンスルホン酸を使用してもよい。加熱の温度は、例えば100~200℃であり、反応時間は例えば3~12時間である。溶媒としては、例えば、ジクロロベンゼンやN-メチルピロリドンなどを使用することができる。
【0017】
また、本発明のジオキサジン顔料は、式(2)で表される基におけるYがOである場合、例えば下記の合成経路により得られる。
【0018】
【化8】
[上記式においてR
3は前記と同じであり、R
4はR
1及びR
2と同様に水素原子又は炭素数1~8のアルキル基を表す。]
【0019】
まず、上記合成経路においてクロラニル(A)から中間体1として(B-2)を得る反応は、クロラニルを溶媒に溶解させ、これに水酸化ナトリウムを加えて攪拌することにより行う。クロラニル1モルに対して加える水酸化ナトリウムの量は、2~100モル程度である。反応温度は、例えば0~80℃であり、反応時間は例えば1~6時間である。溶媒としては、水や1,4-ジオキサンなどを使用することができる。
【0020】
次に、上記合成経路において中間体2として(D-2)を得る反応は、中間体1である(B-2)に化合物(C)を加え、酸性条件下で攪拌することにより行う。酸性条件下とするために硫酸、塩酸、ベンゼンスルホン酸などを加えてもよい。反応温度は、例えば10~40℃であり、反応時間は例えば3~24時間である。
【0021】
最後に、上記合成経路においてジオキサジン顔料を得る反応は、中間体2である(D-2)にカルバゾール化合物(E)を加え、塩基性条件下で反応させた後、酸性条件下で加熱することにより行う。塩基性条件下とするためにトリエチルアミンやアンモニア水を加えてもよい。また、酸性条件下とするために硫酸、塩酸、ベンゼンスルホン酸などを加えてもよい。さらに、酸化剤として塩化ベンゼンスルホン酸を使用してもよい。加熱の温度は、例えば100~200℃であり、反応時間は例えば3~12時間である。溶媒としては、例えば、ジクロロベンゼンやN-メチルピロリドンなどを使用することができる。
【0022】
なお、本発明のジオキサジン顔料は、本発明の効果に好ましくない影響を与えない限りにおいて、添加剤や分散剤などを含有させ、各用途に適するように調整可能である。
【0023】
[着色剤]
上記の本発明のジオキサジン顔料は、着色機能を必要とするような着色剤用途であれば何れにも好適に使用できる。例えば、塗料、印刷インキ、着色成形品、トナー、表示装置のカラーフィルタやブラックマトリックス、インクジェット記録用インク等の公知慣用の各種用途に使用することができる。
【0024】
本発明のジオキサジン顔料は、グラビア印刷インキやフレキソ印刷インキの着色成分として好適である。グラビア印刷インキやフレキソ印刷インキは、顔料と樹脂、溶剤、各種添加剤よりなる。顔料としては、本発明のジオキサジン顔料を各種有機顔料や無機顔料と併用してもよい。樹脂としては、ポリウレタン(PU)樹脂やニトロセルロース(NC)、ポリアミド(PA)樹脂、アクリル樹脂、塩素化ポリプロピレン、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合樹脂などが挙げられる。樹脂は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。PU樹脂は、ウレタン構造を骨格内に有していれば特に限定されず、ポリウレタン、ポリウレタンポリウレア等も含む。それぞれ溶剤としては、トルエン、キシレンなどの芳香族有機溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、2-ヘプタノン、3-ヘプタノンなどのケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエステル系溶剤、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、t-ブタノールなどのアルコール系溶剤、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、エチレングリコールモノ-i-プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ-i-プロピルエーテルなどの(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル系溶剤、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどの(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート系溶剤、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテルなどの他のエーテル系溶剤、水などが挙げられる。なお、溶剤は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。各種添加剤としては、アニオン性、ノニオン性、カチオン性、両イオン性などの界面活性剤、ガムロジン、重合ロジン、不均化ロジン、水添ロジン、マレイン化ロジン、硬化ロジン、フタル酸アルキッド樹脂などロジン類、顔料誘導体、分散剤、湿潤剤、接着補助剤、レベリング剤、消泡剤、帯電防止剤、トラッピング剤、ブロッキング防止剤、ワックス成分などを使用することができる。
【0025】
本発明のジオキサジン顔料は、オフセット印刷インキの着色成分として好適である。オフセット印刷インキは、顔料とワニス、補助剤よりなる。顔料としては、本発明のジオキサジン顔料を各種有機顔料や無機顔料と併用してもよい。ワニスとしては、ロジン変性フェノール樹脂や植物油、石油系溶剤、光硬化型樹脂などを使用することができる。また、補助剤として、ワックス、乾燥促進剤(ドライヤー)、乾燥抑制剤、裏移り防止剤、光反応開始剤、重合禁止剤などを使用することができる。
【0026】
本発明のジオキサジン顔料を塗料とする場合、塗料として使用される樹脂としては、アクリル樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、フェノール樹脂など様々である。
【0027】
塗料に使用される溶媒としては、トルエンやキシレン、メトキシベンゼン等の芳香族系溶剤、酢酸エチルや酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の酢酸エステル系溶剤、エトキシエチルプロピオネート等のプロピオネート系溶剤、メタノール、エタノール、プロパノール、n-ブタノール、イソブタノール等のアルコール系溶剤、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、ヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶剤、N,N-ジメチルホルムアミド、γ-ブチロラクタム、N-メチル-2-ピロリドン、アニリン、ピリジン等の窒素化合物系溶剤、γ-ブチロラクトン等のラクトン系溶剤、カルバミン酸メチルとカルバミン酸エチルの48:52の混合物のようなカルバミン酸エステル、水等がある。溶媒としては、特にプロピオネート系、アルコール系、エーテル系、ケトン系、窒素化合物系、ラクトン系、水等の極性溶媒で水可溶のものが適している。
【実施例】
【0028】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明を更に詳細に説明する。以下の実施例及び比較例において特に断りの無い限り、「%」は「質量%」を表すものとする。
【0029】
本実施例において、ジオキサジン顔料及びその中間体の組成の確認は、電界脱離イオン化質量分析法(FD-MS)で行った。詳細は以下の通りである。
【0030】
[電界脱離イオン化質量分析法(FD-MS)による方法]
日本電子株式会社製JMS-T100GCを用いて、電界脱離イオン化質量分析法でジオキサジン顔料及びその中間体の質量分析スペクトルを測定した。サンプル5mgをジブチルヒドロキシトルエン不含のテトラヒドロフラン(富士フイルム和光純薬株式会社製)1.0mLに加え、超音波にて懸濁させたものを測定に使用した。
[測定条件]
エミッタ電流:0mA~40mA[25.6mA/分]
対向電極:-10000V
測定質量範囲:m/z=50~200
測定時間:2分
【0031】
本実施例における耐光性及び耐熱性の評価方法の詳細は以下の通りである。
【0032】
[耐光性]
顔料0.4gと、インキ用樹脂であるMG63-ワニス(DIC株式会社製)1.6gとをフーバーマーラーを用いて混合し、原色インキを得て、原色インキをアート紙に展色してサンプルを作製した。このサンプルについて、フェードメーター(スガ試験機株式会社製)を用いて150時間光照射を行った。そして、0時間(初期)及び150時間照射後のサンプルの彩度(C*)及び色相角度(h*)を分光光度計DATACOLOR650(サンカラー株式会社製)を用いて測定し、150時間照射後の彩度変化(ΔC*)及び色相角度変化(Δh*)を求めた。
【0033】
[耐熱性]
顔料5mgをアルミパンに乗せて、測定装置TG-DTA8122(株式会社リガク製)により測定を行った。測定は、窒素雰囲気下で室温から200℃が10℃/min、200~500℃が5℃/minの速度で昇温し、5%質量減少温度を記録した。
【0034】
[中間体1の合成]
まず、クロラニル(東京化成工業株式会社製)100gを酢酸2-メトキシエチル(関東化学株式会社製)400gに投入し、60℃まで加熱してクロラニルを溶解させた。次に、25%アンモニア水(関東化学株式会社製試薬)188mlを滴下して、80℃に加熱し、3時間攪拌して反応させた。その後、室温まで冷却し、生じた固体を濾過し、水で洗浄した。そして、得られた固体をアセトンに分散させ、濾過し、アセトンと水を用い濾液が着色しなくなるまで洗浄を繰り返した。このようにして得られたケーキを加熱乾燥して下記化学式で表される中間体1(80g、収率95%)を得た。この中間体1について、FD-MSで質量分析を行ったところm/z=206であった。
【0035】
[中間体2の合成]
上記で得られた中間体1 80gを無水酢酸(関東化学株式会社製試薬)244mlに投入して濃硫酸(関東化学株式会社製)6.3mlを加えて、室温で一晩攪拌して反応をさせた。その後、反応溶液を氷水で冷却しながら、冷却したエタノール60mlを添加した。生成した固体を濾過し、冷却したエタノールで洗浄した。このようにして得られたケーキを加熱乾燥して下記化学式で表される中間体2(82g、収率73%)を得た。この中間体2について、FD-MSで質量分析を行ったところm/z=290であった。
【0036】
[実施例1:ジオキサジン顔料(1)の合成]
まず、上記で得られた中間体2 3.5gと3-アミノ-9-エチルカルバゾール(東京化成工業株式会社製)5.33gをメチル安息香酸(関東化学株式会社製)59mlに投入した。次に、トリエチルアミン(関東化学株式会社製)3.65gを滴下して、38℃で4時間攪拌した。そして、150℃まで昇温した後、塩化ベンゼンスルホニル(関東化学株式会社製)3.61gを滴下して、178℃で6時間攪拌して反応をさせた。その後、100℃まで冷却し、生じた固体を濾過し、メチル安息香酸、エタノール及び水を用いて洗浄した。このようにして得られたケーキを加熱乾燥してジオキサジン顔料(1)(1.03g、収率14%)を得た。このジオキサジン顔料(1)について、FD-MSで質量分析を行ったところm/z=634であった。
【0037】
上記中間体1の合成からジオキサジン顔料(1)の合成までの合成経路は以下のとおりである。
【化9】
【0038】
上記実施例1で得られたジオキサジン顔料(1)の耐光性および耐熱性の評価結果を下記表1に示す。下記表1の比較例1は、特開2004-189668号公報の段落番号[0067]を参考にして合成したC.I.ピグメントバイオレット23(PV23)である。また、下記表1の比較例2は、C.I.ピグメントバイオレット37(PV37)(製品名「Cromophtal Violet B」、BASF社製)である。
【0039】
【0040】
上記表1から分かるとおり、実施例1では彩度変化がほとんどないのに対し、従来の紫色顔料である比較例1及び2ではそれぞれ22%、17%彩度が落ちた。また、色相変化から分かるとおり、実施例1ではわずかに短波長化したのに対し、比較例1及び2では大きく長波長化したことが分かる。さらに、耐熱性において、実施例1と比較例1は同程度であるが、比較例2は実施例1及び比較例1より悪いことが分かる。これらの結果より、実施例1の本発明のジオキサジン顔料は、比較例1及び2の従来の顔料に比べて耐光性が良く、耐熱性においても従来の顔料と同程度もしくはそれ以上であると言える。