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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】半導体パッケージの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/56 20060101AFI20240110BHJP
   H01L 23/00 20060101ALI20240110BHJP
   H01L 23/28 20060101ALI20240110BHJP
   H01L 21/301 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
H01L21/56 R
H01L23/00 C
H01L23/28 F
H01L21/78 P
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020058788
(22)【出願日】2020-03-27
(65)【公開番号】P2021158279
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2023-01-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(74)【代理人】
【識別番号】100169063
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 洋平
(72)【発明者】
【氏名】福住 志津
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 直也
【審査官】正山 旭
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-208529(JP,A)
【文献】国際公開第2020/032176(WO,A1)
【文献】特開2009-044123(JP,A)
【文献】特開2017-076748(JP,A)
【文献】国際公開第2018/216621(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0035680(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0115060(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0268216(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/56
H01L 23/00
H01L 23/28
H01L 21/301
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)延伸性フィルムと、前記延伸性フィルムの表面上に互いに離間した状態で配置された複数の半導体パッケージとを備える被処理体を準備する工程と、
(B)前記延伸性フィルムに張力を付与することにより、隣接する二つの前記半導体パッケージの間隔を拡大する工程と、
(C)前記延伸性フィルムに張力を付与した状態で、複数の前記半導体パッケージの回路面を覆うように仮固定フィルムを貼る工程と、
(D)複数の前記半導体パッケージから前記延伸性フィルムを剥離する工程と、
(E)前記延伸性フィルムの剥離によって露出した、複数の前記半導体パッケージの表面上に機能層を形成する工程と、
を含む、半導体パッケージの製造方法。
【請求項2】
(A)工程が、
(a1)複数の半導体チップと、前記複数の半導体チップを封止している封止材とを備えるパネル部材の第一の表面に対して前記延伸性フィルムを貼ることと、
(a2)前記延伸性フィルム上の前記パネル部材を複数の前記半導体パッケージに個片化することと、
を含む、請求項1に記載の半導体パッケージの製造方法。
【請求項3】
前記機能層がスパッタリング又は蒸着によって形成される金属層である、請求項1又は2に記載の半導体パッケージの製造方法。
【請求項4】
前記機能層が電磁波シールド層である、請求項1~3のいずれか一項に記載の半導体パッケージの製造方法。
【請求項5】
(F)複数の前記半導体パッケージの表面に形成された前記機能層を覆うように粘着フィルムを貼る工程と、
(G)前記粘着フィルム上の複数の前記半導体パッケージから前記仮固定フィルムを剥離する工程と、
を更に含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の半導体パッケージの製造方法。
【請求項6】
(H)前記粘着フィルムの前記半導体パッケージに対する粘着力を低下させる工程と、
(I)前記粘着フィルムから前記半導体パッケージをピックアップする工程と、
を更に含む、請求項5に記載の半導体パッケージの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は半導体パッケージの製造方法に関し、より詳しくは、表面の少なくとも一部に機能層(例えば、電磁波シールド層)を有する半導体パッケージの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体パッケージの小型化、高機能化、高集積化に伴い、半導体チップの多ピン化、高密度化、配線の狭ピッチ化が進展している。その結果、インピーダンスの増加又は信号ライン間の信号干渉に起因して半導体パッケージの本来の性能が阻害される傾向にある。特許文献1は、接着剤層と、電磁波シールド層とを有する半導体装置用接着フィルムを開示している。この半導体装置用接着フィルムは、接着剤層の表面上に、スパッタ法又は蒸着法によって電磁波シールド層を形成する工程を経て作製される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-124466号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは、半導体パッケージの表面に電磁波シールド層のような機能層を直接的に形成することによって、かかる機能を半導体パッケージに付与することを検討した。本開示は、表面の少なくとも一部が機能層で覆われている半導体パッケージを効率的に製造する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示に係る半導体パッケージの製造方法は以下の工程を含む。
(A)延伸性フィルムと、延伸性フィルムの表面上に互いに離間した状態で配置された複数の半導体パッケージとを備える被処理体を準備する工程。
(B)延伸性フィルムに張力を付与することにより、隣接する二つの半導体パッケージの間隔を拡大する工程。
(C)延伸性フィルムに張力を付与した状態で、複数の半導体パッケージの回路面を覆うように仮固定フィルムを貼る工程。
(D)複数の半導体パッケージから延伸性フィルムを剥離する工程。
(E)延伸性フィルムの剥離によって露出した、複数の半導体パッケージの表面上に機能層を形成する工程。
【0006】
上記製造方法によれば、(C)工程において、隣接する二つの半導体パッケージの間隔が拡大された状態で複数の半導体パッケージが仮固定フィルムに貼り付けられるため、(E)工程において、例えば、スパッタリング又は蒸着によって、半導体パッケージの側面にも所望の厚さの機能層を形成することができる。これに加え、(E)工程において、回路面が仮固定フィルムで覆われている半導体パッケージに対して機能層が形成されるため、機能層を構成する材料が半導体パッケージの回路面に回り込むことを抑制できる。機能層は、例えば、電磁波シールド層(金属層)である。
【0007】
(A)工程は、(a1)複数の半導体チップと、複数の半導体チップを封止している封止材とを備えるパネル部材の第一の表面に対して延伸性フィルムを貼ることと、(a2)延伸性フィルム上のパネル部材を複数の半導体パッケージに個片化することとを含んでもよい。ここでいうパネル部材は、複数の半導体パッケージが一体化された状態の部材である。(a2)工程においてパネル部材が個片化されることで、例えば、ウエハレベルパッケージ又はパネルレベルパッケージが得られる。被処理体は、例えば、延伸性フィルムの表面上においてパネル部材をダイシングすることによって得ることができる。
【0008】
(E)工程後、半導体パッケージを効率的にピックアップできるように、以下の工程を適宜実施してもよい。
(F)複数の半導体パッケージの表面に形成された機能層を覆うように粘着フィルムを貼る工程。
(G)粘着フィルム上の複数の半導体パッケージから仮固定フィルムを剥離する工程。
【0009】
例えば、上記粘着フィルムの粘着力が紫外線照射又は加熱によって低下するものである場合、(G)工程後に以下の工程を適宜実施してもよい。
(H)粘着フィルムの半導体パッケージに対する粘着力を低下させる工程。
(I)粘着フィルムから半導体パッケージをピックアップする工程。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、表面の少なくとも一部が機能層で覆われている半導体パッケージを効率的に製造する方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は本開示の製造方法によって製造される半導体パッケージの一例(ファンアウト・ウエハレベルパッケージ)を模式的に示す断面図である。
図2図2はファンアウト・ウエハレベルパッケージ用パネル部材の一例を模式的に示す平面図である。
図3図3(a)及び図3(b)は図2に示すパネル部材を複数の半導体パッケージに個片化する過程を模式的に示す断面図である。
図4図4は延伸性フィルムに張力を付与することによって隣接する二つの半導体パッケージの間隔を拡大した状態を模式的に示す断面図である。
図5図5図4に示す状態の複数の半導体パッケージの回路面を覆うように仮固定フィルムを貼り付けた状態を模式的に示す断面図である。
図6図6図5に示す状態から延伸性フィルムを剥離した状態を模式的に示す断面図である。
図7図7は半導体パッケージの表面に電磁波シールド層(機能層)が形成された状態を模式的に示す断面図である。
図8図8(a)~図8(c)は半導体パッケージをピックアップするまでの過程を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら本開示の実施形態について詳細に説明する。以下の説明では、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0013】
本明細書の記載及び請求項において「左」、「右」、「正面」、「裏面」、「上」、「下」、「上方」、「下方」等の用語が利用されている場合、これらは、説明を意図したものであり、必ずしも永久にこの相対位置である、という意味ではない。また、「層」との語は、平面図として観察したときに、全面に形成されている形状の構造に加え、一部に形成されている形状の構造も包含される。
【0014】
(半導体パッケージ)
図1は本実施形態に係る製造方法によって製造される半導体パッケージを模式的に示す断面図である。この図に示す半導体パッケージ10は、ファンアウト・ウエハレベルパッケージ(Fan-out WLP、FO-WLP)と称されるものである。半導体パッケージ10は、半導体チップ1と、封止層3と、再配線層4と、電磁波シールド層5(機能層)とを備える。なお、パッケージ形態は、FO-WLPに限られるものではなく、ウェハレベルパッケージ(WLP)、フリップチップ・チップスケールパッケージ(FC-CSP)、フリップチップ・ボールグリッドアレイ(FC-BGA)、メモリーパッケージ等でもよい。
【0015】
平面視における半導体パッケージ10の形状は、例えば正方形又は長方形である。平面視における半導体パッケージ10の面積は、例えば、1~900mmであり、9~625mm又は25~400mmであってもよい。平面視における半導体パッケージ10の一辺の長さは、例えば、1~30mmであり、3~25mm又5~20mmであってもよい。半導体パッケージ10の厚さ(バンプ4cの高さを除く。)は、例えば、100~1500μmであり、200~1000μmであってもよい。
【0016】
半導体チップ1は、回路面1aと、回路面1aに形成された複数のバンプ1b(突起電極)とを有する。回路面1aは、Ni/Auめっきパッド等の比較的平坦な金属パッドを有するものであってもよい。バンプ1bは、例えば、銅バンプ及びはんだバンプである。平面視における半導体チップ1の形状は、例えば正方形又は長方形である。平面視における半導体チップ1の面積は、例えば、1~400mmであり、9~225mm又は25~100mmであってもよい。平面視における半導体チップ1の一辺の長さは、例えば、1~20mmであり、3~15mm又5~10mmであってもよい。半導体チップ1の厚さ(バンプ1bの高さを除く。)は、例えば、50~775μmであり、100~500μmであってもよい。
【0017】
封止層3は、熱硬化性樹脂組成物によって構成されている。封止層3は、光、熱、湿気、ほこり及び物理的衝撃等から半導体チップ1を保護している。封止層3は、例えば、コンプレッションモールド、トランスファーモールド、フィルム状の封止材のラミネートによって形成される。封止層3の厚さは、例えば、50μm以上であり、100μm以上であってもよい。
【0018】
再配線層4は半導体チップ1のバンプ1bと電気的に接続されている。再配線層4は、導体部4aと、絶縁部4bと、バンプ4c,4dとによって構成されている。導体部4aは半導体チップ1のバンプ1bとバンプ4cとを電気的に接続している。図1の左端に示すバンプ4dは電磁波シールド層5と電気的に接続されている。再配線層4の側面4fはグランド接触点4gを有する。グランド接触点4gは電磁波シールド層5と接している。これにより、電磁波シールド層5はグランド接続を取ることができる。なお、図1には一点のグランド接触点4gを図示したが、半導体パッケージ10は再配線層4の側面4fに複数のグランド接触点を有してもよい。
【0019】
電磁波シールド層5は、封止層3の面3a及び側面3bを覆うとともに、再配線層4の側面4fの少なくも一部を覆っている。電磁波シールド層5は、例えば、スパッタリング又は蒸着によって形成される金属層である。電磁波シールド層5は、例えば、銅、クロム及びニッケル等の金属元素を含む。電磁波シールド層5を構成する金属元素は一種であってもよいし、二種以上であってもよい。電磁波シールド層5の厚さは、例えば、0.01~100μmであり、0.05~50μmであってもよい。なお、電磁波シールド層5の形成方法は、スパッタリング又は蒸着に限定されず、スクリーン印刷法、スプレー印刷法、無電解めっき法又は電解めっき法等でもよい。
【0020】
(半導体パッケージの製造方法)
次に、半導体パッケージ10の製造方法について説明する。半導体パッケージ10は、例えば、以下の工程を経て製造することができる。
(A)延伸性フィルム15と、延伸性フィルム15の表面上に互いに離間した状態で配置された複数の半導体パッケージ10Pとを備える被処理体20を準備する工程(図3(b)参照)。
(B)延伸性フィルム15に張力を付与することにより、隣接する二つの半導体パッケージ10Pの間隔を拡大する工程(図4参照)。
(C)延伸性フィルム15に張力を付与した状態で、複数の半導体パッケージ10Pの回路面1aを覆うように仮固定フィルム25を貼る工程(図4参照)。
(D)複数の半導体パッケージ10Pから延伸性フィルム15を剥離する工程(図6参照)。
(E)延伸性フィルム15の剥離によって露出した、複数の半導体パッケージ10Pの表面上にスパッタリング又は蒸着によって電磁波シールド層5を形成する工程(図7参照)。
【0021】
上記製造方法によれば、以下の効果が奏される。
・(C)工程において、隣接する二つの半導体パッケージ10Pの間隔が拡大された状態で複数の半導体パッケージ10Pが仮固定フィルム25に貼り付けられるため、(E)工程において、スパッタリング又は蒸着によって半導体パッケージ10Pの側面にも所望の厚さの電磁波シールド層5を形成することができる。
・(E)工程において、回路面1aが仮固定フィルム25で覆われている半導体パッケージ10Pに対して電磁波シールド層5が形成されるため、電磁波シールド層5を構成する材料が回路面1aに回り込むことを抑制できる。
【0022】
[(A)工程]
(A)工程は被処理体20を準備する工程である。(A)工程において、例えば、以下のステップを経て被処理体20を作製することができる。
(a1)複数の半導体チップ1と、複数の半導体チップ1を封止している封止材13とを備えるパネル部材30の第一の表面30aに対して延伸性フィルム15を貼るステップ(図3(a)参照)。
(a2)延伸性フィルム15上のパネル部材30を複数の半導体パッケージ10Pに個片化するステップ(図3(b)参照)。
【0023】
本実施形態においては、パネル部材30として、FO-WLPを製造するためのパネルを使用する場合を例に挙げる。なお、上述のとおり、パッケージ形態はFO-WLPに限られるものではない。図2は、FO-WLP用パネル部材の一例を模式的に示す平面図である。この図に示すパネル部材30は平面視で略円形であり、その直径は、例えば、100~300mmである。パネル部材30は、複数の半導体チップ1と、これらの半導体チップ1を封止する封止材13とによって構成されている。なお、図2には、便宜上、21個の半導体パッケージ10A(個片化前)が一体化されたものを図示したが、FO-WLP用パネル部材が備える半導体パッケージ10Aの数は、例えば、100個以上であり、100~6000個又は1600~24000個であってもよい。
【0024】
図3(a)は、パネル部材30に延伸性フィルム15を貼り付けた状態を模式的に示す断面図である。延伸性フィルム15は、延伸性を有する基材フィルム15aと、粘着層15bとを備える。延伸性フィルム15として、例えば、ステルスダイシング等に使用されるエキスパンドフィルムを使用することができる。延伸性フィルム15は(B)工程において隣接する二つの半導体パッケージ10Pの間隔を拡大するために使用される。拡大後の間隔は(E)工程において半導体パッケージ10Pの側面に電磁波シールド層5が適切に形成できればよく、間隔が全体にわたって必ずしも均一でなくてもよい。したがって、延伸性フィルム15として、エキスパンドフィルムの代わりに、ある程度の延伸性を有する粘着フィルム(例えば、ダイシングフィルム)を使用してもよい。
【0025】
図3(b)は、ブレードによってパネル部材30を複数の半導体パッケージ10Pに個片化した状態を示す断面図である。隣接する二つの半導体パッケージ10Pの離間距離は、切断に使用したブレード幅とほぼ同じであり、例えば、50μm程度である。これらのステップを経て被処理体20が得られる。
【0026】
[(B)工程]
(B)工程は、延伸性フィルム15に張力を付与することにより、隣接する二つの半導体パッケージ10Pの間隔を拡大する工程である(図4参照)。延伸性フィルム15に対し、パネル部材30よりも直径が小さいリング状の部材(不図示)を押し当てることによって延伸性フィルム15に径方向の張力を付与することができる。隣接する二つの半導体パッケージ10Pの拡大後の離間距離は、好ましくは100~2000μmであり、より好ましくは200~800μmである。この距離が2000μm以下であることで、延伸性フィルム15の破断を抑制できる傾向にある。この距離Dと半導体パッケージの厚さTの比(D/T)は1以上であることが好ましい。比D/Tが1以上であることで、(E)工程におけるスパッタリング又は蒸着によって半導体パッケージ10Pの側面に、所望の厚さの電磁波シールド層5を安定的に形成することができる。
【0027】
[(C)工程]
(C)工程は、延伸性フィルム15に張力を付与した状態で、複数の半導体パッケージ10Pの回路面1aを覆うように仮固定フィルム25を貼る工程である(図5参照)。仮固定フィルム25は、(E)工程におけるスパッタリング又は蒸着に曝されるため、十分な耐熱性を有する材質からなる。仮固定フィルム25は、例えば、耐熱性を有する基材フィルム25aと、半導体パッケージ10Pに対する高い粘着性を有する粘着層25bとを含む積層構造を有する。図5に示されたように、複数の半導体パッケージ10Pの回路面1aに粘着層25bが接し且つバンプ1bが粘着層25bに埋め込まれた状態とすることが好ましい。粘着層25bが回路面1aに密着していることで、(E)工程の電磁波シールド層5の形成を経ても電磁波シールド層5を構成する材料が回路面1aに回り込むことを高度に抑制できる。
【0028】
基材フィルム25aは、上述のとおり、耐熱性を有するものであればよく、例えば、ポリイミドフィルム、PETフィルム(延伸)、ポリ塩化ビニリデン等が挙げられる。基材フィルム25aは、単層のフィルムであってもよいし、上記プラスチックフィルムを二種以上又は同種のプラスチックフィルムを二つ以上組み合わせて得られる多層のフィルムであってもよい。粘着層25bは、例えば、粘着性組成物からなり、加熱されることによって半導体パッケージ10Pに対して強い密着性が発現するものであってもよい。
【0029】
[(D)工程]
(D)工程は、複数の半導体パッケージ10P及び仮固定フィルム25から、延伸性フィルム15を剥離する工程である。図6は、図5に示す状態から延伸性フィルム15を剥離した状態を模式的に示す断面図である。なお、図6図5の状態から上下を反転させた状態を示している。(D)工程を実施するに先立ち、例えば、延伸性フィルム15に紫外線を照射することによって、延伸性フィルム15の粘着力を低下させてもよい。
【0030】
[(E)工程]
(E)工程は、延伸性フィルム15の剥離によって露出した封止層の面3aと、側面3bに、スパッタリング又は蒸着によって電磁波シールド層5を形成する工程である。スパッタリングは、例えば、芝浦メカトロニクス株式会社製のCCS-2110(商品名)を使用して実施できる。蒸着は、例えば、株式会社神戸製鋼所(KOBELCO)製のAIP-Gシリーズ(商品名、「AIP」は登録商標)を使用して実施できる。図7は、仮固定フィルム25の表面上に複数の半導体パッケージ10が形成された状態を模式的に示す断面図である。
【0031】
(E)工程後、半導体パッケージ10を効率的にピックアップできるように、複数の半導体パッケージ10を仮固定フィルム25から粘着フィルム35に転写し、粘着フィルム35から半導体パッケージ10をピックアップしてもよい。すなわち、(E)工程後、以下の工程を適宜実施してもよい。なお、粘着フィルム35として、例えば、紫外線照射又は加熱によって粘着力が低下するものを使用すればよい。
(F)複数の半導体パッケージ10の表面に形成された電磁波シールド層5を覆うように粘着フィルム35を貼る工程(図8(a)参照)。
(G)粘着フィルム35上の複数の半導体パッケージから仮固定フィルムを剥離する工程(図8(b)参照)。
(H)粘着フィルム35の半導体パッケージ10に対する粘着力を低下させる工程。(I)粘着フィルム35から半導体パッケージ10をピックアップする工程。
【0032】
図8(c)は、粘着フィルム35から半導体パッケージ10をピックアップしている様子を模式的に示す断面図である。図8(c)に示されたように、突き上げ冶具51で半導体パッケージ10を粘着フィルム35の下面側から突き上げるとともに、半導体パッケージ10をコレット52で吸引してピックアップする。
【0033】
以上、本開示の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態においては、機能層として電磁波シールド層5を形成する場合を例示したが、電磁波シールド層5の代わりに、放熱層及び/又は保護層を半導体パッケージ10Pの表面に形成してもよい。
【実施例
【0034】
本開示について以下の実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0035】
WLP用パネル部材(直径:24mm、厚さ:0.3mm、半導体チップ数:16個、回路面のバンプ:はんだ)を準備した。WLP用パネル部材の一方の面(回路面と反対側の面)に延伸性フィルム(延伸性を有するダイシングフィルム)を貼り付けた。以下の条件でWLP用パネル部材をブレードダイシングすることにより、延伸性フィルム上に複数の半導体パッケージ(平面視でのサイズ6mm×6mm)を形成した((A)工程)。
・ダイサー:DFD3361(株式会社ディスコ製)
・ブレード:ZH05-SD3000-N1-70(株式会社ディスコ製)
・ブレード幅:28μm
・ブレード回転数:30000rpm
・ダイシング速度:10mm/秒
【0036】
WLP用パネル部材の直径よりも大きい内径を有するリングを延伸性フィルムの下方から押し当てることによって、延伸性フィルムに張力を付与した。これにより、隣接する二つの半導体パッケージの間隔を約320μmに拡大させた((B)工程)。延伸性フィルムに張力を付与した状態で、複数の半導体パッケージの回路面を覆うように仮固定フィルムを真空ラミネーターで貼り付けた((C)工程)。仮固定フィルムとして、紫外線硬化型の粘着層を表面に有するポリイミドフィルムを使用した。その後、複数の半導体パッケージから延伸性フィルムを剥離した((D)工程)。
【0037】
ポリイミドフィルム上の複数の半導体パッケージの表面にスパッタリングによって電磁波シールド層(厚さ:4380nm)を形成した((E)工程)。ターゲットとして、クロム及び銅を使用した。
【0038】
半導体パッケージの回路面を拡大して観察したところ、電磁波シールド層を構成する材料の回路面への回り込みは認められなかった。
【符号の説明】
【0039】
1…半導体チップ、1a…回路面、1b…バンプ、3…封止層、3a…面、3b…側面、4…再配線層、4a…導体部、4b…絶縁部、4c,4d…バンプ、4f…再配線層の側面、4g…グランド接触点、5…電磁波シールド層、10…半導体パッケージ、10A…半導体パッケージ(個片化前)、10P…半導体パッケージ(電磁波シールド層形成前)、13…封止材、15…延伸性フィルム、20…被処理体、25…仮固定フィルム、30…パネル部材、30a…第一の表面、15a…基材フィルム、15b…粘着層、25a…基材フィルム、25b…粘着層、35…粘着フィルム、51…冶具、52…コレット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8