(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】ポリオレフィン系シート、プレススルーパッケージ包装用底材およびプレススルーパッケージ包装材
(51)【国際特許分類】
C08L 23/04 20060101AFI20240110BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20240110BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20240110BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20240110BHJP
C08L 25/04 20060101ALI20240110BHJP
C08L 57/00 20060101ALI20240110BHJP
C08L 67/00 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
C08L23/04
B32B27/32 E
B65D65/40 D
C08J5/18 CES
C08L25/04
C08L57/00
C08L67/00
(21)【出願番号】P 2020062708
(22)【出願日】2020-03-31
【審査請求日】2023-01-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079382
【氏名又は名称】西藤 征彦
(74)【代理人】
【識別番号】100123928
【氏名又は名称】井▲崎▼ 愛佳
(74)【代理人】
【識別番号】100136308
【氏名又は名称】西藤 優子
(74)【代理人】
【識別番号】100207295
【氏名又は名称】寺尾 茂泰
(72)【発明者】
【氏名】早川 裕子
(72)【発明者】
【氏名】田中 一也
(72)【発明者】
【氏名】井口 礼康
【審査官】堀内 建吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-131933(JP,A)
【文献】特開2012-172100(JP,A)
【文献】特開2013-036018(JP,A)
【文献】特開2013-249388(JP,A)
【文献】特開2007-021755(JP,A)
【文献】特開2016-000805(JP,A)
【文献】特開2015-059145(JP,A)
【文献】特開平7-041042(JP,A)
【文献】特開昭63-107552(JP,A)
【文献】特開2015-174251(JP,A)
【文献】国際公開第2018/180858(WO,A1)
【文献】特開2013-200397(JP,A)
【文献】特開2011-107597(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 23/04
B32B 27/32
B65D 65/40
C08J 5/18
C08L 25/04
C08L 57/00
C08L 67/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)、(B)、(C)および(D)を含む熱可塑性樹脂組成物から形成される層(I)を有し、前記層(I)を形成する熱可塑性樹脂組成物を100質量%としたとき、前記(C)が3質量%以上30質量%以下、且つ(D)が3質量%以上60%質量以下であるポリオレフィン系シート。
(A)JIS K7112に基づき測定した密度が0.935g/cm
3以上であるポリエチレン系樹脂
(B)結晶核剤
(C)石油樹脂、テルペン樹脂、クマロン-インデン樹脂、ロジン系樹脂、およびこれらの水素添加誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種の熱可塑性樹脂
(D)24℃における貯蔵弾性率(E’)が1000MPa以上である前記(A)に非相溶の熱可塑性樹脂
【請求項2】
前記(D)がプロピレン系樹脂、エステル系樹脂、スチレン系樹脂、環状オレフィン系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種類の熱可塑性樹脂である請求項1記載のポリオレフィン系シート。
【請求項3】
前記層(I)の少なくとも一方に隣接する層(II)を有し、層(II)が前記(C)および下記(E)を含む熱可塑性樹脂組成物から形成され、前記層(II)を形成する熱可塑性樹脂組成物を100質量%としたとき、前記(C)が3質量%以上30質量%以下である、請求項1または2記載のポリオレフィン系シート。
(E)単一組成からなるポリプロピレンおよびプロピレン・エチレン共重合体の少なくとも一方
【請求項4】
JIS K7129B法に基づき、温度40℃、相対湿度90%で測定した水蒸気透過率が0.6g/(m
2・24時間)以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載のポリオレフィン系シート。
【請求項5】
前記(A)が、バイオポリエチレン系樹脂である請求項1~4のいずれか一項に記載のポリオレフィン系シート。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載のポリオレフィン系シートを用いてなるプレススルーパッケージ包装用底材。
【請求項7】
請求項6記載のプレススルーパッケージ包装用底材と、蓋材とを組み合わせてなるプレススルーパッケージ包装材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は二次加工性、防湿性、透明性および分割性に優れたポリオレフィン系シート、それを用いてなるプレススルーパッケージ包装用底材およびプレススルーパッケージ包装材に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品や食品等の包装分野においては、カプセルや錠剤等の固形剤、粒状の食品等を包装するためにPTP(プレススルーパッケージ)包装が実施されている。また、食品等の包装分野においては、食品等を包装するためにPTP包装によく似たブリスターパッケージもよく実施されている。
【0003】
PTP包装とは、例えば透明のシートに圧空成形、真空成形等を施すことによりカプセル等の固形剤を収納するポケット部を形成し、ポケット部にカプセル等を収納した後、例えばアルミ箔のように手で容易に引き裂いたり、容易に開封したりできる材質の箔やフィルムを蓋材として積層して一体化した形態の包装である。PTP包装によれば、透明なシートのポケットに収納された固形剤や食品等を開封前に直接肉眼で確認でき、開封する際には、ポケット部の固形剤等を指で押して蓋材を押し破ることにより、内容物を容易に取り出すことができる。
【0004】
また、ブリスターパッケージとは、シートを真空成形等して食品等の形態に応じたポケット部を形成し、このポケット部に食品等の内容物を収納した後、ヒートシール性コート紙やフィルム等で封をする形態の包装である。
【0005】
PTP包装やブリスターパッケージに用いられるシートの原料としては、従来、ポリ塩化ビニル(以下「PVC」ということもある)が良好な熱成形性、常温での剛性、耐衝撃性、透明性を有することから使用されてきた。ところが、PVCは、燃焼の方法によっては塩化水素ガスが発生し、燃焼炉を劣化させたり、環境汚染を引き起こしたりする等の問題があるだけでなく、防湿性も不充分であるため、内容物の長期保存の面からもPVCに替わる材料が求められていた。
【0006】
そこで、PVCの代替素材として、ポリプロピレン系樹脂(以下「PP」ということもある)が一般的に使用されている。例えば、特許文献1では、PPと水添石油樹脂からなる、透明性と防湿性の良いPTP包装に適した樹脂シートが提案されている。
【0007】
しかし、PPは、PVCと比較して防湿性に優れるものの、近年はさらなる防湿性の向上が求められている。そこで、防湿性に優れるだけでなく、透明性や材料の粘弾性挙動がPVCに近い“非晶性ポリオレフィン”がPVCやPPの代替材料候補の一つとして注目されている。特許文献2ではポリエチレンと結晶核剤および石油樹脂を用いたPTP包装が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特公平6-99604号公報
【文献】特開2012-131933号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記PTP包装は、薬剤を小分けにして所持または服用する用途のため、PTP包装にスリット加工をした上で、手で容易に分割できる分割性が求められる。特許文献2に開示されたポリエチレン系シートでは、透明性や防湿性は向上するものの、ポリエチレンが柔軟で伸びやすいため、分割性(手切れ性)が劣るという課題がある。
【0010】
そこで、本発明の目的は、このような従来技術の課題に鑑み、充分な透明性および防湿性を有し、さらに優れた分割性を有する新たなポリオレフィン系シート、それを用いてなるPTP包装用底材およびPTP包装材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、高密度ポリエチレン系樹脂、結晶核剤、特定の熱可塑性樹脂、および貯蔵弾性率が高くポリエチレン系樹脂と非相溶の熱可塑性樹脂とを含む熱可塑性樹脂組成物をシートとすることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、下記(A)、(B)、(C)および(D)を含む熱可塑性樹脂組成物から形成される層(I)を有し、前記層(I)を形成する熱可塑性樹脂組成物を100質量%としたとき、前記(C)が3質量%以上30質量%以下、且つ(D)が3質量%以上60%質量以下であるポリオレフィン系シートをその要旨とするものである。
(A)JIS K7112に基づき測定した密度が0.935g/cm3以上であるポリエチレン系樹脂
(B)結晶核剤
(C)石油樹脂、テルペン樹脂、クマロン-インデン樹脂、ロジン系樹脂、およびこれらの水素添加誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種の熱可塑性樹脂
(D)24℃における貯蔵弾性率(E’)が1000MPa以上である前記(A)に非相溶の熱可塑性樹脂
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、本発明のポリオレフィン系シートは、分割性、防湿性および透明性に優れているため、各種包装用に好適に用いることができ、特にPTP包装用底材に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】後述する実施例の分割性の評価で用いたPTP成型品を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態の1つの例としてのポリオレフィン系シートについて説明する。但し、本発明の範囲が以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0016】
本発明において、「X~Y」(X、Yは任意の数字)と記載した場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」および「好ましくはYより小さい」の意を包含するものである。
【0017】
<層(I)について>
本発明のポリオレフィン系シートは下記(A)、(B)、(C)および(D)を含む熱可塑性樹脂組成物から形成される層(I)を有する。
(A)JIS K7112に基づき測定した密度が0.935g/cm3以上であるポリエチレン系樹脂
(B)結晶核剤
(C)石油樹脂、テルペン樹脂、クマロン-インデン樹脂、ロジン系樹脂、およびこれらの水素添加誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種の熱可塑性樹脂
(D)24℃における貯蔵弾性率(E’)が1000MPa以上である前記(A)に非相溶の熱可塑性樹脂
以下、層(I)を形成する熱可塑性樹脂組成物について説明する。
【0018】
〔ポリエチレン系樹脂(A)〕
本発明に用いるポリエチレン系樹脂(A)は、JIS K7112に基づき測定した密度が0.935g/cm3以上である。密度のより好ましい範囲は0.940g/cm3以上であり、さらに好ましい範囲は0.945g/cm3以上である。密度が上記範囲内であることで、防湿性や耐薬品性の高いシートを提供することができる。
【0019】
上記ポリエチレン系樹脂(A)は、エチレン単独重合体であるポリエチレンであってもよく、エチレンとエチレン以外のモノマー成分との共重合体であるポリエチレン共重合体であってもよい。また、ポリエチレン系樹脂(A)としては、これらの混合物を用いることもできる。
【0020】
上記エチレン以外のモノマー成分としては、例えば、α-オレフィンモノマー、官能基を有する非オレフィンモノマー等があげられ、中でもα-オレフィンモノマーが好ましい。
【0021】
上記α-オレフィンモノマーとしては、炭素数3~20のα-オレフィン、例えば、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-トリデセン、1-テトラデセン、1-ペンタデセン、1-ヘキサデセン、1-ヘプタデセン、1-オクタデセン、1-ノナデセン、1-エイコセン、3-メチル-1-ブテン、4-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ペンテン、4-エチル-1-ヘキセン、3-エチル-1-ヘキセン、9-メチル-1-デセン、11-メチル-1-ドデセン、12-エチル-1-テトラデセン等が挙げられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いてもよい。中でも、工業的な入手し易さや諸特性、経済性等の観点から、プロピレン、1-ブテン、1-へキセン、1-オクテンが好ましい。
【0022】
上記α-オレフィンモノマーを共重合成分として用いる場合、ポリエチレン共重合体中に占めるα-オレフィンモノマーの割合の合計が0.1~4.0質量%であることが好ましく、より好ましくは0.3~3.5質量%、特に好ましくは0.5~3.0質量%である。α-オレフィンモノマーの割合がかかる範囲内であれば、ポリオレフィン系シートの防湿性、透明性をさらに優れたものとすることができる。
【0023】
本発明で用いるポリエチレン系樹脂(A)としては、上記の中でも、エチレン単独重合体、あるいは、エチレンと、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、および1-オクテンからなる群より選ばれる少なくとも1種類のα-オレフィンモノマーとの共重合体を用いるのが好ましい。
【0024】
ポリエチレン系樹脂(A)の重合方法としては、特に制限はなく、従来公知の常法により行うことができ、また、重合に用いる触媒も特に制限はなく、従来公知のものを用いることができる。
【0025】
また、ポリエチレン系樹脂(A)のJIS K7210における190℃、2.16kg荷重のメルトフローレート(以下、「MFR」ともいう)は、0.3g/10分以上、20g/10分以下であることが好ましく、0.5g/10分以上、10g/10分以下であることがより好ましく、0.8g/10分以上、8.0g/10分以下であることがさらに好ましい。MFRが上記の範囲内にあれば、安定な製膜性が得られ、機械物性にも良好なポリオレフィン系シートが得られる。
【0026】
なお、上記ポリエチレン系樹脂(A)は石油由来のポリエチレン系樹脂であってもよいが、バイオポリエチレン系樹脂であることが環境保護の点から好ましい。
上記「バイオポリエチレン系樹脂」とは、再生可能なバイオマス資源を原料に、化学的または生物学的に合成することで得られるポリエチレン系樹脂を意味する。上記バイオポリエチレン系樹脂は、これを焼却処分した場合でも、バイオマスのもつカーボンニュートラル性から、大気中の二酸化炭素濃度を上昇させないという特徴がある。
【0027】
上記バイオポリエチレン系樹脂は、植物原料から得られたバイオエタノールから誘導された植物由来エチレンを用いることが好ましい。すなわち、上記バイオポリエチレン系樹脂は、植物由来ポリエチレン系樹脂であることが好ましい。
【0028】
ポリエチレン系樹脂(A)の具体的な製品として、石油由来のポリエチレン系樹脂としては、旭化成社製「サンテックHD」シリーズ、日本ポリプロ社製「ノバテックHD」シリーズ、プライムポリマー「エボリューH」シリーズ等が挙げられる。また、バイオポリエチレン系樹脂としては、Braskem社製「グリーンポリエチレン」シリーズ等が挙げられる。
【0029】
上記ポリエチレン系樹脂(A)の含有量は、層(I)を形成する樹脂組成物を100質量%としたとき、20質量%以上90質量%以下であることが好ましく、より好ましくは25質量%以上80質量%以下であり、特に好ましくは30質量%以上75質量%以下である。ポリエチレン系樹脂(A)の割合を上記の下限値以上にすることで、防湿性を付与することができる。また、ポリエチレン系樹脂(A)の割合を上限値以下にすることで、良好な分割性を付与することができる。
【0030】
〔結晶核剤(B)〕
結晶核剤(B)は、ポリオレフィン系シートの透明性、防湿性を向上させるために添加される。
【0031】
上記結晶核剤(B)としては、例えば、ジベンジリデンソルビトール(DBS)化合物、1,3-O-ビス(3,4ジメチルベンジリデン)ソルビトール、ジアルキルベンジリデンソルビトール、少なくとも一つの塩素または臭素置換基を有するソルビトールのジアセタール、ジ(メチルまたはエチル置換ベンジリデン)ソルビトール、炭素環を形成する置換基を有するビス(3,4-ジアルキルベンジリデン)ソルビトール、脂肪族、脂環族、および芳香族のカルボン酸、ジカルボン酸または多塩基性ポリカルボン酸や、これらの無水物および金属塩等の有機酸の金属塩化合物、環式ビス-フェノールホスフェート、2ナトリウムビシクロ[2.2.1]ヘプテンジカルボン酸等の二環式ジカルボン酸および塩化合物、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-ジカルボキシレート等の二環式ジカルボキシレートの飽和の金属または有機の塩化合物、1,3:2,4-O-ジベンジリデン-D-ソルビトール、1,3:2,4-ビス-O-(m-メチルベンジリデン)-D-ソルビトール、1,3:2,4-ビス-O-(m-エチルベンジリデン)-D-ソルビトール、1,3:2,4-ビス-O-(m-イソプロピルベンジリデン)-D-ソルビトール、1,3:2,4-ビス-O-(m-n-プロピルベンジリデン)-D-ソルビトール、1,3:2,4-ビス-O-(m-n-ブチルベンジリデン)-D-ソルビトール、1,3:2,4-ビス-O-(p-メチルベンジリデン)-D-ソルビトール、1,3:2,4-ビス-O-(p-エチルベンジリデン)-D-ソルビトール、1,3:2,4-ビス-O-(p-イソプロピルベンジリデン)-D-ソルビトール、1,3:2,4-ビス-O-(p-n-プロピルベンジリデン)-D-ソルビトール、1,3:2,4-ビス-O-(p-n-ブチルベンジリデン)-D-ソルビトール、1,3:2,4-ビス-O-(2,3-ジメチルベンジリデン)-D-ソルビトール、1,3:2,4-ビス-O-(2,4-ジメチルベンジリデン)-D-ソルビトール、1,3:2,4-ビス-O-(2,5-ジメチルベンジリデン)-D-ソルビトール、1,3:2,4-ビス-O-(3,4-ジメチルベンジリデン)-D-ソルビトール、1,3:2,4-ビス-O-(3,5-ジメチルベンジリデン)-D-ソルビトール、1,3:2,4-ビス-O-(2,3-ジエチルベンジリデン)-D-ソルビトール、1,3:2,4-ビス-O-(2,4-ジエチルベンジリデン)-D-ソルビトール、1,3:2,4-ビス-O-(2,5-ジエチルベンジリデン)-D-ソルビトール、1,3:2,4-ビス-O-(3,4-ジエチルベンジリデン)-D-ソルビトール、1,3:2,4-ビス-O-(3,5-ジエチルベンジリデン)-D-ソルビトール、1,3:2,4-ビス-O-(2,4,5-トリメチルベンジリデン)-D-ソルビトール、1,3:2,4-ビス-O-(3,4,5-トリメチルベンジリデン)-D-ソルビトール、1,3:2,4-ビス-O-(2,4,5-トリエチルベンジリデン)-D-ソルビトール、1,3:2,4-ビス-O-(3,4,5-トリエチルベンジリデン)-D-ソルビトール、1,3:2,4-ビス-O-(p-メチルオキシカルボニルベンジリデン)-D-ソルビトール、1,3:2,4-ビス-O-(p-エチルオキシカルボニルベンジリデン)-D-ソルビトール、1,3:2,4-ビス-O-(p-イソプロピルオキシカルボニルベンジリデン)-D-ソルビトール、1,3:2,4-ビス-O-(o-n-プロピルオキシカルボニルベンジリデン)-D-ソルビトール、1,3:2,4-ビス-O-(o-n-ブチルベンジリデン)-D-ソルビトール、1,3:2,4-ビス-O-(o-クロロベンジリデン)-D-ソルビトール、1,3:2,4-ビス-O-(p-クロロベンジリデン)-D-ソルビトール、1,3:2,4-ビス-O-[(5,6,7,8,-テトラヒドロ-1-ナフタレン)-1-メチレン]-D-ソルビトール、1,3:2,4-ビス-O-[(5,6,7,8,-テトラヒドロ-2-ナフタレン)-1-メチレン]-D-ソルビトール、1,3-O-ベンジリデン-2,4-O-p-メチルベンジリデン-D-ソルビトール、1,3-O-p-メチルベンジリデン-2,4-O-ベンジリデン-D-ソルビトール、1,3-O-ベンジリデン-2,4-O-p-エチルベンジリデン-D-ソルビトール、1,3-O-p-エチルベンジリデン-2,4-O-ベンジリデン-D-ソルビトール、1,3-O-ベンジリデン-2,4-O-p-クロルベンジリデン-D-ソルビトール、1,3-O-p-クロルベンジリデン-2,4-O-ベンジリデン-D-ソルビトール、1,3-O-ベンジリデン-2,4-O-(2,4-ジメチルベンジリデン)-D-ソルビトール、1,3-O-(2,4-ジメチルベンジリデン)-2,4-O-ベンジリデン-D-ソルビトール、1,3-O-ベンジリデン-2,4-O-(3,4-ジメチルベンジリデン)-D-ソルビトール、1,3-O-(3,4-ジメチルベンジリデン)-2,4-O-ベンジリデン-D-ソルビトール、1,3-O-p-メチル-ベンジリデン-2,4-O-p-エチルベンジリデンソルビトール、1,3-p-エチル-ベンジリデン-2,4-p-メチルベンジリデン-D-ソルビトール、1,3-O-p-メチル-ベンジリデン-2,4-O-p-クロルベンジリデン-D-ソルビトール、1,3-O-p-クロル- ベンジリデン-2,4-O-p-メチルベンジリデン-D-ソルビトール等のジアセタール化合物、ナトリウム2,2’-メチレン-ビス-(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスフェート、アルミニウムビス[2,2’-メチレン-ビス-(4-6-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスフェート]、燐酸2,2-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)ナトリウムや、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、マーガリン酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘニン酸、モンタン酸等の脂肪酸、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、ステアリン酸アミド、ヘベニン酸アミド等の脂肪酸アミド、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の脂肪酸金属塩、シリカ、タルク、カオリン、炭化カルシウム等の無機粒子、グリセロール、グリセリンモノエステル等の高級脂肪酸エステル、および類似物を挙げることができる。これらは単独でもしくは2種以上を併せて用いてもよい。
これらの中でも、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、ステアリン酸アミド、ヘベニン酸アミド等の脂肪酸アミド、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の脂肪酸金属塩が特に好ましい。
【0032】
結晶核剤(B)の具体的な製品としては、例えば、新日本理化社製「ゲルオールD」シリーズ、旭電化工業社製「アデカスタブ」シリーズ、ミリケンケミカル社製「HYPERFORM HPN-20E」、「HL3-4」、「Millad」シリーズ、BASF社製「IRGACLEAR」シリーズ、理研ビタミン社製「リケマスターCN-001」、「リケマスターCN-002」等が挙げられる。この中でも特に透明性を向上する効果が高いものとしては、ミリケンケミカル社製「HYPERFORM HPN-20E」、「HL3-4」、理研ビタミン社製「リケマスターCN-001」、「リケマスターCN-002」等が挙げられる。
【0033】
上記結晶核剤(B)の含有量は、層(I)を形成する樹脂組成物を100質量%としたとき、0.5質量%以上、4.0質量%以下であることが好ましく、より好ましくは1質量%以上、3.5質量%以下である。結晶核剤(B)の割合を上記の下限値以上にすることで、ポリオレフィン系シートの結晶性が向上し、好適な透明性や防湿性を付与することができる。また、結晶核剤(B)の割合を上限値以下にすることで、添加物の割合を最小限に留め効率的な効果が期待できる。
【0034】
〔熱可塑性樹脂(C)〕
熱可塑性樹脂(C)としては、石油樹脂、テルペン樹脂、クロマン-インデン樹脂、ロジン系樹脂、およびこれらの水素添加誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種を用いる。また、上記熱可塑性樹脂(C)は、前記ポリエチレン系樹脂(A)と相溶し、かつポリエチレン系樹脂(A)よりも高いガラス転移温度を有することが好ましい。
【0035】
上記石油樹脂としては、例えば、C5系石油樹脂、C9系石油樹脂、C5-C9共重合系石油樹脂等の石油樹脂、ジシクロペンタジエン系石油樹脂等の脂環式炭化水素系石油樹脂や、これらの水素添加誘導体等が挙げられる。中でも、C9系石油樹脂の水素添加誘導体が好ましい。
【0036】
上記テルペン樹脂としては、例えば、α-ピネン重合体、β-ピネン重合体、ジペンテン重合体等のテルペン樹脂や、テルペンフェノール系樹脂、スチレン変性テルペン系樹脂、水素添加テルペン系樹脂等の変性テルペン樹脂等が挙げられる。
【0037】
上記クマロン-インデン樹脂としては、例えば、タールの160~180℃留分を精製し、炭素数8のクマロンおよび炭素数9のインデンを主要なモノマーとして重合した熱可塑性合成樹脂等を挙げることができる。
【0038】
上記ロジン系樹脂としては、例えば、トールロジン、ガムロジン、ウッドロジン等の未変性ロジン、重合ロジン、不均化ロジン、水素添加ロジン、マレイン酸変性ロジン、フマル酸変性ロジンや、これらをグリセリン、ペンタエリスリトール、エチレングリコール等で変性したエステル化ロジン樹脂等を挙げられる。
【0039】
熱可塑性樹脂(C)としては、ポリエチレン系樹脂(A)に混合した場合に比較的良好な相溶性を示し、色調、熱安定性、相溶性、耐透湿性等をさらに高める観点から、水素添加誘導体が好ましく、特に水素添加率(以下「水添率」という)が95%以上であり、かつ水酸基、カルボキシル基、ハロゲン等の極性基、あるいは二重結合等の不飽和結合を実質上含有しない、石油樹脂またはテルペン樹脂が好ましく、石油樹脂が特に好ましい。
【0040】
熱可塑性樹脂(C)の軟化点は、80~170℃であることが好ましく、より好ましくは、90~160℃であり、特に好ましくは、100~150℃である。熱可塑性樹脂(C)の軟化点が、上記範囲内であると、熱可塑性樹脂(C)がポリエチレン系樹脂(A)に相溶しやすくなり、ポリエチレン系樹脂(A)の結晶化による微細な結晶の形成がより促進され、透明性に優れたポリオレフィン系シートが得られる傾向がある。また、軟化点が上記下限以上であれば、シート製膜時において原料ペレットのブロッキングを防止し生産性が良好となる傾向がある。
【0041】
熱可塑性樹脂(C)の具体例としては、例えば、東ソー社製「ペトロタック」シリーズ、荒川化学工業社製「アルコン」シリーズ、ヤスハラケミカル社製「クリアロン」シリーズ、出光石油化学社製「アイマーブ」シリーズ、JXTGエネルギー社製「T-REZ」シリーズ等が挙げられる。
【0042】
上記熱可塑性樹脂(C)の含有量は、層(I)を形成する樹脂組成物を100質量%としたとき、3質量%以上、30質量%以下であり、8質量%以上、27質量%以下であることが好ましく、10質量%以上、25質量%以下がさらに好ましい。熱可塑性樹脂(C)の割合を上記の下限値以上にすることで、シートの透明性や防湿性が向上する。また、熱可塑性樹脂(C)の割合を上限値以下にすることで、良好な製膜性や耐衝撃性を維持することができる。
【0043】
〔熱可塑性樹脂(D)〕
熱可塑性樹脂(D)に用いられる樹脂は、24℃における貯蔵弾性率(E’)が1000MPa以上、かつポリエチレン系樹脂(A)と非相溶であることが重要である。このようなポリエチレン系樹脂(A)と非相溶で、貯蔵弾性率が高い熱可塑性樹脂を用いることにより、ポリオレフィン系シートに良好な分割性を付与することができる。
ここでポリエチレン系樹脂(A)と非相溶とは、熱可塑性樹脂(D)がポリエチレン系樹脂(A)に相溶しないことであり、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、製膜したポリオレフィン系シートの断面観察を行うことによって確認することができる。観察した断面が海島構造をとっている場合、熱可塑性樹脂(D)は、ポリエチレン系樹脂(A)と非相溶である。また、ポリエチレン系樹脂(A)と熱可塑性樹脂(D)との相溶性が悪いほど分散径(島構造)が大きくなる傾向があり、このような海島構造の分散状態を取ることで、ポリエチレン系樹脂(A)と熱可塑性樹脂(D)の双方に由来する物性挙動が独立して現れる。そのため、熱可塑性樹脂(D)とポリエチレン系樹脂(A)の相溶性が悪く、分散径(島構造)が大きくなるほど、ポリエチレン系樹脂(A)の柔軟性が、熱可塑性樹脂(D)によって阻害されるため、ポリオレフィン系シートの分割性が向上する。
【0044】
上記貯蔵弾性率(E’)のより好ましい範囲としては、1000MPa以上、50000MPa以下であり、さらに好ましくは1400MPa以上、4000MPa以下である。熱可塑性樹脂(D)の貯蔵弾性率(E’)を上記の範囲内にすることで、良好な製膜性および成形性を維持しながら、シートに効率的に分割性を付与することができる。
【0045】
上記貯蔵弾性率(E’)は、粘弾性測定装置を用いて下記条件で動的粘弾性を測定した際の、24℃における値である。
[測定条件]
振動周波数:10Hz
歪み:0.1%
昇温速度:3℃/分
測定温度:-50~200℃
【0046】
上記熱可塑性樹脂(D)としては、プロピレン系樹脂、エステル系樹脂、スチレン系樹脂、環状オレフィン系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種類が好ましい。熱可塑性樹脂(D)として、上記樹脂を用いることにより、ポリオレフィン系シートの防湿性、透明性、また製膜性を維持しながら、シートに好適な分割性を付与することができる。中でも、プロピレン系樹脂、環状オレフィン系樹脂が好ましい。
【0047】
上記プロピレン系樹脂としては、例えば、プロピレン単独共重合体、プロピレンとエチレン等のα-オレフィンとの共重合体が挙げられる。中でも、プロピレンとα-オレフィンとの共重合体が好ましく、プロピレンとエチレンとの共重合体がより好ましい。
【0048】
上記プロピレン系樹脂として共重合体を用いる場合は、共重合体中のプロピレンの割合は80%以上であることが好ましく、より好ましくは90%以上であり、さらに好ましくは97%以上である。共重合体中のプロピレンの含有量が上記範囲以上であることで、シートの分割性に必要な剛性や防湿性が付与される。
【0049】
上記エステル系樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリプロピレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンイソフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリブチレンナフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート/イソフタレート共重合樹脂、1,4-シクロヘキサンジメタノール単位を全グリコール単量体単位中に15モル%以上、50モル%以下含有する低結晶性あるいは非晶性ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレン/ネオペンチルテレフタレート共重合樹脂、ポリ乳酸系樹脂に代表される脂肪族ポリエステル系樹脂類等が挙げられる。
【0050】
上記スチレン系樹脂としては、例えば、GPPS(汎用ポリスチレン)、HIPS(耐衝撃性ポリスチレン)、SEPS(スチレン-エチレン-プロピレン-スチレン共重合体)、SIS(スチレン-イソプレン-スチレン共重合体)、MS(スチレン-メチルメタクリレート共重合体)等が挙げられる。
【0051】
上記環状ポリオレフィン系樹脂としては、環状オレフィンの開環(共)重合体を必要に応じ水素添加した重合体、環状オレフィンの付加(共)重合体、環状オレフィンとエチレン、プロピレン等α-オレフィンとのランダム共重合体、また、前記環状オレフィン開環(共)重合体あるいは環状オレフィン開環(共)重合体およびそれらの水添物を、例えば無水マレイン酸、マレイン酸、無水イタコン酸、イタコン酸、(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸あるいは、その無水物等の変性剤で変性したグラフト共重合体等が挙げられる。中でも、環状オレフィンとα-オレフィンとの共重合体が好ましく、環状オレフィンとエチレンとの共重合体がより好ましい。
【0052】
なお、上記「(共)重合体」とは、「重合体」および「共重合体」を包括する意味であり、「(メタ)アクリル」とは「アクリル」および「メタクリル」を包括する意味である。
【0053】
熱可塑性樹脂(D)の具体例としては例えば、日本ポリプロ社製「ノバテックPP」シリーズ、プライムポリマー社製「プライムポリプロ」シリーズ、サンアロマー社製「サンアロマー」シリーズ、「クオリア」シリーズ、住友化学社製「ノーブレン」シリーズ、ポリスチレンジャパン社製「GPPS」シリーズ、「HIPS」シリーズ、デンカ社製「TX」シリーズ、日本ゼオン社製「ZEONOR」シリーズ、三菱ケミカル社製「ゼラス」シリーズ、三井化学社製「アペル」シリーズ、ポリプラスチックス社製「TOPAS」シリーズ等が挙げられる。
【0054】
上記熱可塑性樹脂(D)の含有量は、層(I)を形成する樹脂組成物を100質量%としたとき、3質量%以上、60質量%以下であり、5質量%以上、50質量%以下であることが好ましく、10質量%以上、40質量%以下がさらに好ましい。熱可塑性樹脂(D)の割合を上記の下限値以上にすることで、シートの分割性を向上することができる。また、熱可塑性樹脂(D)の割合を上限値以下にすることで、シートの透明性や防湿性を維持することができる。
【0055】
[その他の添加剤]
また、層(I)を形成する熱可塑性樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、前記(A)~(D)以外のポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂や、ポリオレフィン系、あるいは、ポリスチレン系の熱可塑性エラストマー等の樹脂、および、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、核剤、抗菌・防かび剤、帯電防止剤、滑剤等の添加剤を配合することができる。これらは単独でもしくは2種以上を併せて用いてもよい。
【0056】
本発明のポリオレフィン系シートは、上記(A)~(D)を含む熱可塑性樹脂組成物から形成される層(I)を有するものであり、好ましくは、上記層(I)の少なくとも一方に隣接する層(II)を有することである。
【0057】
<層(II)について>
上記層(II)は、前記(C)および下記(E)を含む熱可塑性樹脂組成物から形成されるものである。
(E)単一組成からなるポリプロピレンおよびプロピレン・エチレン共重合体の少なくとも一方
【0058】
〔熱可塑性樹脂(C)〕
層(II)を形成する熱可塑性樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂(C)としては、前記(C)として説明した中でも、C9系石油樹脂の水素添加誘導体が好ましい。
【0059】
上記熱可塑性樹脂(C)の含有量は、上記層(II)を形成する樹脂組成物を100質量%としたとき、3質量%以上、30質量%以下であることが好ましく、より好ましくは5質量%以上、27質量%以下であり、特に好ましくは10質量%以上、25質量%以下である。熱可塑性樹脂(C)の割合を上記の下限値以上とすることで、シートに好適な透明性や防湿性を付与することができ、下限値以下とすることで、シートに良好な成形性や耐衝撃性を維持することができる。
【0060】
〔単一組成からなるポリプロピレンおよびプロピレン・エチレン共重合体の少なくとも一方(E)〕
上記(E)は、単一組成からなるポリプロピレンすなわち、プロピレン単独重合体であっても、プロピレンとエチレンとの共重合体であるプロピレン・エチレン共重合体であってもよく、また、これらの混合物を用いることも可能である。
【0061】
また、上記プロピレン・エチレン共重合体を用いる場合、共重合体中のエチレン含有量は0.5質量%以上、5.0質量%以下が好ましく、1.0質量%以上、4.0質量%以下がより好ましく、1.5質量%以上、3.0質量%以下がさらに好ましい。共重合体中のエチレン含有量を上記の範囲以内とすることで、良好な製膜性を維持しながら、シートに好適な防湿性や透明性を付与することができる。
【0062】
本発明においては、これらの中でも単一組成からなるポリプロピレンを用いることが良好な製膜性を維持しながら、シートに好適な防湿性や透明性を付与できる点で好ましい。
【0063】
上記単一組成からなるポリプロピレンおよびプロピレン・エチレン共重合体の少なくとも一方(E)の含有量は、上記層(II)を形成する樹脂組成物を100質量%としたとき、50質量%以上であることが好ましく、より好ましくは60質量%以上、99質量%以下であり、特に好ましくは70質量%以上、90質量%以下である。上記(E)の割合を上記の下限値以上とすることで、シートの防湿性や透明性を維持することができ、上限値以下とすることで、シートの製膜性やシートの熱成形性を良好にすることができる。
【0064】
[その他の添加剤]
また、層(II)を形成する熱可塑性樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、前記(A)~(D)の他、(A)~(D)以外のポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂や、ポリオレフィン系、あるいは、ポリスチレン系の熱可塑性エラストマー等の樹脂、および、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、核剤、抗菌・防かび剤、帯電防止剤、滑剤等の添加剤を配合することができる。これらは単独でもしくは2種以上を併せて用いてもよい。
【0065】
<ポリオレフィン系シートの層構成>
本発明のポリオレフィン系シートは、層(I)を有するものであり、好ましくは、層(I)の少なくとも一方に隣接する層(II)を有するものであり、特に好ましくは層(I)の両側に隣接する層(II)を有するものである。
【0066】
<ポリオレフィン系シートの製造方法>
次に、本発明のポリオレフィン系シートの製造方法について説明する。
本発明のポリオレフィン系シートの成形方法は特に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレン系樹脂(A)、結晶核剤(B)、熱可塑性樹脂(C)、前記(A)に非相溶な熱可塑性樹脂(D)および、その他添加剤を単軸、あるいは、二軸押出機等で溶融混合し、Tダイにより押出し、キャストロールで急冷、固化することにより無延伸シートを作製することができる。
ここで、無延伸シートとは、シートの強度を高める目的で積極的に延伸しないシートを意味し、例えば、押出成形の際に延伸ロールによって2倍未満に延伸されたものは無延伸シートに含むものとする。
【0067】
また、本発明のポリオレフィン系シートが層(II)を有する場合は、Tダイを用いて層(I)と共押出しすればよい。
【0068】
〔厚さ〕
本発明のポリオレフィン系シートの厚さは特に限定されないが、加工性、実用性を考慮した場合、100μm以上、1000μm以下であることが好ましく、150μm以上、800μm以下であることがより好ましく、180μm以上、600μm以下であることがさらに好ましく、200μm以上、400μm以下が特に好ましい。本発明のプロピレン系シートの厚さが上記の下限値以上であれば、好適なシートの剛性が発現し、加工性、耐カール性に優れる。一方、本発明のプロピレン系シートの厚さが上限値以下であれば、シートの剛性を好適な範囲に制御することがきるので、PTP包装として使用する際に薬剤の取り出しで不具合を生じることなく、優れた加工性を維持することができる。
【0069】
また、本発明のポリオレフィン系シートが、層(I)と層(II)とを有する場合、層(I)の厚さは、シート全体の厚さに対して40%以上、90%以下であることが好ましく、より好ましくは50%以上、80%以下である。
【0070】
<引張伸度>
本発明のポリオレフィン系シートは、分割性の観点から、室温(23℃)で横方向に200mm/分の条件で引張試験を行った際の引張伸度が300%以下であることが好ましく、250%以下であることがより好ましく、120%以下であることが特に好ましい。また、シート製造時の流れ方向をシートの縦方向、流れ方向と直交する方向を横方向という。
【0071】
<防湿性>
本発明のポリオレフィン系シートの水蒸気透過率は、薬剤等の包装用途の観点から、JIS K7129B法に基づき、温度40℃、相対湿度90%で測定した水蒸気透過率が0.6g/(m2・24時間)以下であることが好ましい。また、より好ましくは0.5g/(m2・24時間)以下であり、さらに好ましくは0.4g/(m2・24時間)以下である。本発明のポリオレフィン系シートの水蒸気透過率を上記の範囲以下とすることで、良好な防湿性が得られ、薬剤等の包装用途に使用する場合に内容物の劣化を抑制することができる。
【0072】
<透明性>
本発明のポリオレフィン系シートを包装用途へ使用する場合、意匠性、内容物の視認性等の観点から、JIS K7105に基づき測定したヘイズが60%以下であることが好ましく、50%以下であることがより好ましく、45%以下であることがさらに好ましい。本発明のポリオレフィン系シートのヘイズが上記の範囲であれば、充分な視認性を確保することができる。
【0073】
<バイオマス度>
本発明のポリオレフィン系シートのバイオマス度は、10%以上であることが好ましく、15%以上であることがより好ましく、25%以上であることがさらに好ましい。本発明のポリオレフィン系シートのバイオマス度が上記の数値以上であれば、より環境負荷を低減することができる。なお、上記バイオマス度は、下記の方法により算出することができる。
[バイオマス度の算出方法]
「シートのバイオマス度」(%)=「バイオマス資源を原料とする樹脂のバイオマス度」(%)×「シート中のバイオマス資源を原料とする樹脂の質量割合」
【0074】
<ポリオレフィン系シートを用いた成型体>
本発明のポリオレフィン系シートは、真空成形、圧空成形、圧空真空成形、プレス成形、その他の熱成形によって、各種形状の成形体に形成することができ、例えば、包装用成形体、特にPTP包装用底材やブリスターパッケージ等の包装用成形体を好適に製造し利用することができる。
【0075】
例えば、PTP包装用底材の成形シートを製造する場合には、成形前に加熱板で本発明のプロピレン系シートを加熱軟化させ、成形型にて当該シートを挟み、圧空を注入して成形型の凹型に沿わせてシート面内に多数のポケット部(例えば、直径約9mm、深さ約4mm)を成形するようにすればよい。また、必要に応じて圧空注入時に適切なタイミングでプラグを上昇および下降させて成形性を補助すればよい。上記のようにして製造されるPTP包装用底材は、蓋材と組み合わされることにより、PTP包装材とすることができる。
【0076】
また、前記の熱成形を施すと共に、シート表面、あるいは、裏面又は両面にアルミ箔、アルミ蒸着フィルム、プラスチックフィルム(例えば、二軸延伸ポリプロピレンフィルム、ナイロンフィルム、エチレン-ビニルアルコール共重合体フィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム)等を積層することも可能である。なお、シート表面或いは裏面又は両面にアルミ箔や前記各種フィルム等を積層して複合シートを形成した後、これを熱成形することも可能である。
【0077】
また、製品の意匠性や二次加工性等を高める目的で、シート表面にエンボス加工や、艶消し加工等の加工を行ってもよい。この場合、一旦鏡面状のシートを作成してからエンボスロールや艶消しロールで加工を施すようにしても、押出成形の際にキャストロールをエンボスロールや艶消しロールに変更して成形するようにしてもよい。本発明の趣旨を損なわない限り、シート表面に帯電防止剤、シリコーン、ワックス等をコーティングすることも、傷付着防止等の目的で表面保護シートを用いて皮膜を形成することも、印刷層を設けることも可能である。なお、印刷層の形成手段は現在公知の任意の手段を採用可能である。
【0078】
本発明のポリオレフィン系シートは透明性、耐衝撃性、防湿性、耐カール性に優れるため、医薬品や食品等の包装分野においてカプセルや錠剤等の固形剤、粒状の食品等を包装するためのPTP包装や、食品等の包装分野における食品等を包装するためのブリスターパッケージ等に使用することができる。
【実施例】
【0079】
以下に実施例を示すが、これらにより本発明は何ら制限を受けるものではない。なお、原料およびポリオレフィン系シートについての種々の測定値および評価は次のようにして行い、バイオマス度は、前述の方法に従い算出した。また、ポリオレフィン系シートの押出機からの流れ方向を縦方向、その直交方向を横方向と呼ぶ。
【0080】
<原料の評価>
(1)貯蔵弾性率(E’)の測定
各樹脂を設定温度180~220℃の範囲で加熱し、熱プレスを用い、荷重20MPaで30秒間圧縮した後、冷却してシート上に成形した。得られたフィルムの動的粘弾性を、粘弾性スぺクトロメーターDVA-200(アイティー計測社製)を用いて下記条件で測定した。測定結果から、24℃の時の貯蔵弾性率(E’)の値を各樹脂の剛性とした。
[測定条件]
振動数波数:10Hz
歪み:0.1%
昇温速度:3℃/分
測定温度:-50℃~200℃
【0081】
<ポリオレフィン系シートの評価>
(1)伸び(引張伸度)
ポリオレフィン系シートを幅1cm×長さ9cmの短冊状に切り出した試験片を作成し、精密万能試験機AG-X plus(島津製作所社製)を用いて、下記条件で試験片の破断時の標線間の伸び率から引張伸度を求め、下記の基準で評価を行った。
[測定条件]
温度:室温(23℃)
測定方向:シートの横方向(試験片の長さ方向がシートの横方向)
引張速度:200mm/分
標線間 :25mm
[評価基準]
◎:引張伸度が120%以下
〇:引張伸度が120%を超えて300%以下
△:引張伸度が300%を超えて450%以下
×:引張伸度が450%を超える
【0082】
(2)防湿性(水蒸気透過率)
JIS K7129Bに基づき、PERMATRAN W 3/31(MOCON社製)を用いて、40℃、90%RHの雰囲気下においてポリオレフィン系シートの水蒸気透過率を測定し、下記の基準で評価した。
[評価基準]
◎:水蒸気透過率が0.4g/(m2・24時間)以下
〇:水蒸気透過率が0.4g/(m2・24時間)を超えて0.6g/(m2・24時間)以下
×:水蒸気透過率が0.6g/(m2・24時間)を超える
【0083】
(3)透明性(ヘイズ)
JIS K7105に基づいて、ポリオレフィン系シートの全光線透過率および拡散透過率を、ヘイズメーターを用いて測定した。得られた全光線透過率および拡散透過率からヘイズを以下の式で算出し、下記の基準で評価した。
[ヘイズ](%)=[拡散透過率]/[全光線透過率]×100
[評価基準]
◎:ヘイズが45%以下
〇:ヘイズが45%を超えて60%以下
×:ヘイズが60%を超える
【0084】
<PTP用シートの評価>
(4)分割性
ポリオレフィン系シートを、PTP用成形装置(CKD社製、FBP-300E)を用いてPTP包装用底材シートを成形し、内容物を充填せずにアルミ箔を用いて220℃で熱シールした。さらに、底材シート側から深さ200μmになるようにスリットを入れた後、約40mm×約95mm、コーナーR=5mmのサイズ(40mmの方向がシートの縦方向)に打ち抜いて、
図1に示す様なPTP成型品を得た。
成型品のスリット部を手で5回折り曲げた後、端部から引き裂き、分割性を評価した。1度で滞りなく裂けたものを分割性が良好として「〇」、引っ掛かったり引き裂き面が伸びたりしたものを分割性が劣るとして「×」と評価した。
【0085】
実施例に先立って、下記の原料を準備した。
【0086】
〔ポリエチレン系樹脂(A)〕
(A-1):バイオポリエチレン系樹脂(密度=0.953g/cm3、MFR=2.0g/10分、バイオマス度=96%)
(A-2):バイオポリエチレン系樹脂(密度=0.948g/cm3、MFR=1.0g/10分、バイオマス度=94%)
【0087】
〔結晶核剤(B)〕
(B-1):脂肪酸金属塩
【0088】
〔熱可塑性樹脂(C)〕
(C-1):C9系石油樹脂の水素添加誘導体(軟化点=125℃)
【0089】
〔熱可塑性樹脂(D)〕
(D-1):ランダムポリプロピレン(プロピレン/エチレン=98/2質量%共重合体、E’=1600MPa)
(D-2):環状ポリオレフィン(E’=2100MPa)
(D-3):環状ポリオレフィン(E’=1900MPa)
(D-4):ホモポリプロピレン(プロピレン単独重合体、E’=1700MPa)
(D’-1):ランダムポリプロピレン(プロピレン/エチレン=97/3質量%共重合体、E’=940MPa)
【0090】
〔ポリプロピレン系樹脂(E)〕
(E-1):ホモポリプロピレン(プロピレン単独重合体、E’=1480MPa)
【0091】
<実施例1>
層(I)として(A-1)、(B-1)、(C-1)および、(D-1)を混合質量比60:2.5:20:20の割合でドライブレンドした後、40mmφ単軸押出機を用いて230℃で混練した。層(II)として(C-1)および(E-1)を混合質量比20:80の割合でドライブレンドした後、32mmφ単軸押出機を用いて230℃で混練した。層(I)と層(II)を積層比がII:I:II=1:4:1になるようにTダイより押出し、次いで約45℃のキャスティングロールにて急冷し、厚さ300μmのシートを作製した。得られたシートについて、伸び、防湿性、透明性、分割性の評価を行った。結果を後記の表1に示す。
【0092】
<実施例2~6、比較例1、2>
層(I)として(A)~(D)を後記の表1に示す所定の割合で混合した以外は実施例
1と同様の方法で、厚さ300μmのシートの作製、評価を行った。結果を表1に示す。
【0093】
<参考例>
参考例として、従来PTP包装用底材として用いられているホモポリプロピレン単層で構成される、厚さ300μmのシートを準備した。上記のシートについて同様に伸び、防湿性、透明性、分割性の評価を行った。結果を後記の表1に示す。
【0094】
【0095】
上記の表1の結果から、(A)~(D)成分を含み、かつ(C)および(D)成分の含有量が所定の熱可塑性樹脂から形成される層(I)を有する実施例1~6のポリオレフィン系シートは、分割性、防湿性、透明性に優れるものであった。
【0096】
一方、(D)成分を含まない比較例1のポリオレフィン系シート、(D)成分の貯蔵弾性率が低い熱可塑性樹脂を含む比較例2のポリオレフィン系シートは、分割性に劣るものであった。
【0097】
以上、現時点においてもっとも実践的であり、かつ好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲および明細書全体から読み取れる発明の要旨あるいは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴うフィルムもまた本発明の技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明のポリオレフィン系シートは、分割性、防湿性および透明性に優れているため、各種包装用に好適に用いることができ、特にPTP包装用底材に好適に用いることができる。