IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱レイヨン株式会社の特許一覧

特許7415748セラミックグリーンシートの支持体用ポリエステルフィルムロール
<>
  • 特許-セラミックグリーンシートの支持体用ポリエステルフィルムロール 図1
  • 特許-セラミックグリーンシートの支持体用ポリエステルフィルムロール 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】セラミックグリーンシートの支持体用ポリエステルフィルムロール
(51)【国際特許分類】
   B29C 55/12 20060101AFI20240110BHJP
   H01G 13/00 20130101ALI20240110BHJP
   B28B 1/30 20060101ALI20240110BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20240110BHJP
   B32B 7/027 20190101ALI20240110BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20240110BHJP
   B32B 27/20 20060101ALI20240110BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20240110BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20240110BHJP
   B65H 75/00 20060101ALI20240110BHJP
   B29K 67/00 20060101ALN20240110BHJP
   B29L 9/00 20060101ALN20240110BHJP
【FI】
B29C55/12
H01G13/00 351A
B28B1/30 101
B32B27/36
B32B7/027
B32B27/18 Z
B32B27/20 Z
B32B27/00 L
C08J5/18 CFD
B65H75/00 Z
B29K67:00
B29L9:00
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020064345
(22)【出願日】2020-03-31
(65)【公開番号】P2021160240
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2022-09-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100129746
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 滋郎
(72)【発明者】
【氏名】服部 雄太
【審査官】瀧口 博史
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-331575(JP,A)
【文献】特開2003-260734(JP,A)
【文献】特開2003-191419(JP,A)
【文献】特開2019-111747(JP,A)
【文献】国際公開第2019/203175(WO,A1)
【文献】特開2018-203818(JP,A)
【文献】特開平11-115043(JP,A)
【文献】特開2005-010188(JP,A)
【文献】国際公開第2017/221701(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 55/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二軸延伸ポリエステルフィルムを巻き取ってなり、
前記ポリエステルフィルムは、以下の手順(a-1)~(c-1)で測定される微視的な厚さ振れが0.14μm以下であり、以下の手順(a-2)~(c-2)で測定される巨視的な厚さ振れが0.14μm以下であり、かつ
前記ポリエステルフィルムが、以下の(1)を満足する、セラミックグリーンシートの支持体用ポリエステルフィルムロール。
(a-1)長手方向(MD方向)に流れるフィルムに膜厚計を幅方向(TD方向)に移動させながら測定したデータを平均化し、フィルムのTD方向の厚さ分布グラフを作成する。
(b-1)作成したグラフに対して移動平均処理を施し平滑化する。
(c-1)平滑化されたグラフから変曲点間の厚さ振れを算出し、これを微視的な厚さ振れとする。
(a-2)MD方向に流れるフィルムに膜厚計をTD方向に移動させながら測定したデータを平均化し、フィルムのTD方向の厚さ分布グラフを作成する。
(b-2)当該作成したグラフから、フィルムのTD方向に200mm間隔で全幅にわたってR値(フィルム厚みの最大値Rmax-フィルム厚みの最小値Rmin)を算出する。
(c-2)200mm間隔で全幅にわたってサンプルリングした全R値の最大値を巨視的な厚さ振れとする。
(1)100℃で5分間加熱処理したとき、フィルム端部において、フィルムのMD方向0°に対して、左斜め45°方向の熱収縮率と右斜め45°方向の熱収縮率との差の絶対値が0.15%以下
【請求項2】
前記ポリエステルフィルムが、さらに、以下の(2)及び(3)を満足する請求項に記載のセラミックグリーンシートの支持体用ポリエステルフィルムロール。
(2)100℃で5分間加熱処理したときの熱収縮率がMD方向で0.3%以下
(3)100℃で5分間加熱処理したときの熱収縮率がフィルムの幅方向(TD方向)で0.3%以下
【請求項3】
前記ポリエステルフィルムは、チタン化合物を含む、請求項1又は2に記載のセラミックグリーンシートの支持体用ポリエステルフィルムロール。
【請求項4】
前記ポリエステルフィルムの表面層を構成するポリエステルの極限粘度(IV)が、0.65dl/g以上である、請求項1~の何れか一項に記載のセラミックグリーンシートの支持体用ポリエステルフィルムロール。
【請求項5】
前記ポリエステルフィルムは、少なくとも一方の面に粒子を含有する表面層Aを有する請求項1~の何れか一項に記載のセラミックグリーンシートの支持体用ポリエステルフィルムロール。
【請求項6】
前記ポリエステルフィルムが、3層以上の積層構造を有する請求項1~の何れか一項に記載のセラミックグリーンシートの支持体用ポリエステルフィルムロール。
【請求項7】
前記表面層Aは、平均粒径0.1~0.5μmの有機及び/又は無機粒子を含有する請求項に記載のセラミックグリーンシートの支持体用ポリエステルフィルムロール。
【請求項8】
前記ポリエステルフィルムは、前記表面層Aよりも平均表面粗さ(Sa)及び最大山高さ(Sp)のいずれもが小さい表面層Cを有する、請求項5又は7に記載のセラミックグリーンシートの支持体用ポリエステルフィルムロール。
【請求項9】
前記表面層Cは、平均粒径0.05~0.2μmの粒子を900~6000ppm含有する、請求項に記載のセラミックグリーンシートの支持体用ポリエステルフィルムロール。
【請求項10】
前記表面層Cは、チタン化合物を含む、請求項8又は9に記載のセラミックグリーンシートの支持体用ポリエステルフィルムロール。
【請求項11】
前記表面層Aは、アンチモン化合物及び/又はチタン化合物を含み、該アンチモン化合物の含有量が100ppm以下である、請求項5、及び7~10の何れか一項に記載のセラミックグリーンシートの支持体用ポリエステルフィルムロール。
【請求項12】
前記ポリエステルフィルムの少なくとも片面に離型層を有する請求項1~11の何れか一項に記載のセラミックグリーンシートの支持体用ポリエステルフィルムロール。
【請求項13】
積層セラミックコンデンサーの製造工程において用いられる請求項12に記載のセラミックグリーンシートの支持体用ポリエステルフィルムロール。
【請求項14】
自動車用セラミックコンデンサーの製造工程において用いられる請求項12に記載のセラミックグリーンシートの支持体用ポリエステルフィルムロール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、厚さ振れが改善されたセラミックグリーンシートの支持体用ポリエステルフィルムロール、とりわけ、積層セラミックコンデンサーの製造工程において用いられる工程用離型フィルムの支持体に好適なセラミックグリーンシートの支持体用ポリエステルフィルムロールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の電装化やスマートフォンの高機能化等に伴い、積層セラミックコンデンサー(Multi-Layered-Ceramic-Capacitor;MLCC)の小型化・高容量化が進んでいる。
積層セラミックコンデンサーは、次のようにして製造される。
まず、離型フィルム上に、セラミック成分及びバインダー樹脂を含むセラミックスラリーを塗工し、乾燥することでセラミックグリーンシート(誘電体シート)を作製し、これに電極をスクリーン印刷法等により印刷して内部電極とし、乾燥した後に印刷済のセラミックグリーンシートを離型フィルムから剥離し、このようなグリーンシートを多数積層させる。
積層させたグリーンシートをプレスして一体化させた後、個々のチップに切断する。
その後、焼成炉で内部電極及び誘電体層を焼結させ、積層セラミックコンデンサーが製造される。
【0003】
MLCCの小型及び高容量化に際して、セラミックグリーンシートの薄膜化が進んでいる。
セラミックグリーンシートが薄膜化されると、キャリアフィルムとしての離型フィルムの表面に微小な突起があれば、これに起因して、セラミックグリーンシートにピンホール等が発生する。このため当該離型フィルムには、高い表面平滑性が求められている。
【0004】
従来、この種の離型フィルムとして、特許文献1には、第1の面と第2の面とを有する基材と、前記基材の前記第1の面側に設けられた平滑化層と、前記平滑化層の前記基材と反対の面側に設けられた剥離剤層とを有し、前記平滑化層は、質量平均分子量が950以下の熱硬化性化合物を含む平滑化層形成用組成物を加熱して硬化させることにより形成されており、前記剥離剤層の外表面の算術平均粗さRa1が8nm以下であり、かつ、前記剥離剤層の外表面の最大突起高さRp1が50nm以下であることを特徴とするグリーンシート製造用剥離フィルムが開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、離型フィルムの支持体として、表面の平滑性に優れ、特にフィルム表面の微細な欠点が少ない離型用ポリエステルフィルムとして、深さ0.5μm以上の窪み欠点数が5個/m以下であり、少なくとも片面の表面の中心線平均粗さSRaが15~35nm、十点平均粗さSRzが1000nm以下である離型用ポリエステルフィルムが開示されている。
【0006】
グリーンシートの薄膜化が大きく進む中、薄膜化されたグリーンシートを多層に積層させる際の積層精度が、さらに高く要求されている。
このため離型フィルムの平面性についても重要度が高まってきており、熱しわの制御等が図られている。
【0007】
この種のフィルムとして、特許文献3には、ポリエステルフィルムを巻き取ってなるポリエステルフィルムロールであって、前記ポリエステルフィルムに存在するスラック欠点が、100mあたり5個未満である、ポリエステルフィルムロールが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2014-177093号公報
【文献】特開2013-7054号公報
【文献】特開2018-90803号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、セラミックグリーンシートの薄肉化に伴い、誘電体層はより高い平滑性が求められてきており、とりわけ、セラミックグリーンシートの支持体として使用されるポリエステルフィルムの厚さ振れが、誘電体層の不均一性を招き、延いては、最終製品の収率に大きく影響を及ぼすことが分かってきた。
【0010】
そこで、本発明は、厚さ振れが高度に改善された新たなセラミックグリーンシートの支持体用ポリエステルフィルムロールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のセラミックグリーンシートの支持体用ポリエステルフィルムロールは、二軸延伸ポリエステルフィルムを巻き取ってなり、前記ポリエステルフィルムは、以下の手順(a-1)~(c-1)で測定される微視的な厚さ振れが0.14μm以下であり、以下の手順(a-2)~(c-2)で測定される巨視的な厚さ振れが0.14μm以下であるという構成を採用するものである。
(a-1)長手方向(MD方向)に流れるフィルムに膜厚計を幅方向(TD方向)に移動させながら測定したデータを平均化し、フィルムのTD方向の厚さ分布グラフを作成する。
(b-1)作成したグラフに対して移動平均処理を施し平滑化する。
(c-1)平滑化されたグラフから変曲点間の厚さ振れを算出し、これを微視的な厚さ振れとする。
(a-2)MD方向に流れるフィルムに膜厚計をTD方向に移動させながら測定したデータを平均化し、フィルムのTD方向の厚さ分布グラフを作成する。
(b-2)当該作成したグラフから、フィルムのTD方向に200mm間隔で全幅にわたってR値(フィルム厚みの最大値Rmax-フィルム厚みの最小値Rmin)を算出する。
(c-2)200mm間隔で全幅にわたってサンプルリングした全R値の最大値を巨視的な厚さ振れとする。
【発明の効果】
【0012】
本発明のセラミックグリーンシートの支持体用ポリエステルフィルムロールは、微視的な厚さ振れと巨視的な厚さ振れの両方が改善され、フィルムの厚さ精度に優れることから、当該フィルムを、例えば積層セラミックコンデンサーの製造工程において、セラミックグリーンシートの支持体として用いれば、セラミックスラリーを均一に塗布できることで均一な誘電体層を形成することができ、チップコンデンサの電気的性質に優れるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明に係るセラミックグリーンシートの支持体用ポリエステルフィルムロールの熱収縮に関し、斜め45°方向を示す平面模式図である。
図2図2は、加熱後の斜め収縮を示す平面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<ポリエステルフィルムロール>
本発明のセラミックグリーンシートの支持体用ポリエステルフィルムロール(以下「本ロール」という)は、二軸延伸ポリエステルフィルム(以下「本フィルム」を巻き取ってなるものである。
本ロールは、紙管、金属管、プラスチック管等のコアに巻き取られたフィルムであり、幅0.2m以上であることが好ましく、0.3m以上であることがより好ましく、1.0m以上であることが特に好ましく、1.2m以上であることが最も好ましい。フィルムの幅の上限は、特に限定されないが、2.0mである。
また、本ロールに巻き取られる本フィルムの長さは、特に限定されないが、1000m以上であることが好ましい。
さらに、本フィルムの厚さは、例えば19μm以上38μm以下、好ましくは25μm以上32μm以下である。
【0015】
(二軸延伸ポリエステルフィルム)
本フィルムは、ポリエステルをシート状に溶融成形し、冷却固化して未延伸シートとした後、フィルムの長手方向(MD方向)方向及びフィルムの幅方向(TD方向)に延伸、熱処理した二軸延伸フィルムであって、以下の手順(a-1)~(c-1)で測定される微視的な厚さ振れが0.14μm以下であり、以下の手順(a-2)~(c-2)で測定される巨視的な厚さ振れが0.14μm以下である。
(a-1)長手方向(MD方向)に流れるフィルムに膜厚計を幅方向(TD方向)に移動させながら測定したデータを平均化し、フィルムのTD方向の厚さ分布グラフを作成する。
(b-1)作成したグラフに対して移動平均処理を施し平滑化する。
(c-1)平滑化されたグラフから変曲点間の厚さ振れを算出し、これを微視的な厚さ振れとする。
(a-2)MD方向に流れるフィルムに膜厚計をTD方向に移動させながら測定したデータを平均化し、フィルムのTD方向の厚さ分布グラフを作成する。
(b-2)当該作成したグラフから、フィルムのTD方向に200mm間隔で全幅にわたってR値(フィルム厚みの最大値Rmax-フィルム厚みの最小値Rmin)を算出する。
(c-2)200mm間隔で全幅にわたってサンプルリングした全R値の最大値を巨視的な厚さ振れとする。
【0016】
なお、微視的な厚さ振れは、複数検出された場合には、最大値を採用する。また、変曲点が複数無い場合には、微視的な厚さ振れは、0μmとする。すなわち、微視的な厚さ振れの下限値は、0μmである。
また、上記(b-2)において、200mm間隔で全幅にわたって区切る際、10mm幅分はオーバーラップさせる。また、200mmに満たない部分についてもR値の算出対象とする。その他の詳細な測定方法及び条件については実施例に詳述した。
なお、巨視的な厚さ振れは、下限値に関し特に限定されず、0μm以上であればよい。
【0017】
本発明者は、セラミックスラリーの薄膜化に伴い、フィルムの厚さ精度が及ぼす誘電体層形成の不均一性について検討を重ねたところ、フィルムの局所的な厚み精度、すなわち変曲点間の厚さ振れを管理・制御するだけではなく、フィルムの幅方向におけるR値(フィルム厚みの最大値Rmax-フィルム厚みの最小値Rmin))を管理及び制御することにより、極めて優れた平面性をフィルムに具備できることを見出したのである。
【0018】
積層セラミックコンデンサーは、例えば数百にも及ぶセラミック層及び電極層が交互に積層された構成を有しており、各セラミック層及び電極層の厚みはサブミクロンレベルである。
微視的又は巨視的な厚み振れが0.14μmを超えるセラミックグリーンシートの支持体用ポリエステルフィルムを用いてセラミック層を形成した場合、該セラミック層を用いて形成される積層セラミックコンデンサーでは厚みの不均一性が増幅され、性能発揮に支障をきたす虞がある。
係る観点から、本フィルムの微視的な厚み振れは0.14μm以下であり、0.12μm以下であることが好ましく、0.08μm以下であることが特に好ましい。
また、本フィルムの巨視的な厚み振れは0.14μm以下であり、0.12μm以下であることが好ましく、0.10μm以下であることが特に好ましい。
【0019】
本フィルムにおいて、上記範囲に微視的な厚さ振れ及び巨視的な厚さ振れを調整するには、フィルム製膜に際して、次の(A)~(C)の方法を採用すればよい。
(A)巨視的及び微視的な厚さ振れに対して、延伸後の熱固定(熱処理)ゾーンでの温度を下げてフィルムが緩和するのを抑制し、寸法安定性を向上させることで厚さ振れを小さくする方法
(B)微視的な厚さ振れに対して、TD方向の延伸倍率を上げることで分子鎖を引き伸ばし、厚さ振れを小さくする方法
(C)巨視的な厚さ振れに対して、Rmaxが高い区間が検出されたら、都度、口金のリップ調整ボルトを機械的、熱的に作動させて口金のスリット間隙を変化させ樹脂吐出量を調整する等によりRmaxを調整して厚さ振れを小さくする方法
【0020】
上記(A)において、熱固定温度は225℃以下であることが好ましく、180℃~220℃の範囲内とすることがより好ましい。
【0021】
上記(B)において、横方向の延伸倍率は4.5倍以上であることが好ましく、4.6倍以上とすることがより好ましい。
【0022】
本フィルムは、セラミック層の薄肉化対応やピンホール抑制の観点から、少なくとも片面の平均表面粗さ(Sa)が8nm以下であることが好ましく、6nm以下であることがより好ましく、4nm以下であることが最も好ましい。上記少なくとも片面の平均表面粗さ(Sa)は、下限に関して特に限定されないが、例えば1nm以上、好ましくは2nm以上である。
【0023】
また、本フィルムは、セラミック層のピンホール抑制の観点から、少なくとも片面の最大山高さ(Sp)が150nm以下であることが好ましく、120nm以下であることがより好ましい。
【0024】
平均表面粗さ(Sa)とは、面粗さパラメーター(ISO25178)の一つであり、二次元のRaを三次元に拡張したもので、表面形状曲面と平均面で囲まれた部分の体積を測定面積で割ったものであり、以下の式から求められる。
表面をXY面,高さ方向をZ軸とした時、A:定義された領域(画像全体とする)、Z(x,y):画像点(x,y)の高さ0の面からの高さとすると、以下のように表される。
【0025】
【数1】
【0026】
また、最大山高さ(Sp)とは、面粗さパラメーター(ISO25178)の一つであり、表面の平均面からの高さの最大値を表し、以下のように表される。
【0027】
【数2】
【0028】
上記の本フィルム表面粗さ特性は、例えばフィルム表面を構成する層中に粒子を含有させ、その平均粒径や粒子種や含有量を制御することで調整することができる。
【0029】
(斜め収縮率)
セラミックスラリーの乾燥温度の上昇に伴い、フィルムの熱収縮特性がセラミックグリーンシートの変形に影響を及ぼす虞があることから、フィルムの熱収縮特性を高度に制御することが好ましい。本発明者は、フィルム長手方向(MD方向)及びフィルム幅方向(TD方向)の熱収縮率を低減化させると、乾燥温度の上昇によるMD方向及びTD方向に対する収縮は低減化できるが、フィルム全体が僅かながら斜めに収縮、とりわけ、図2に示すようにフィルム端部が斜め45°に変形し、これに伴ってセラミックグリーンシートも変形することを見出した。
【0030】
そこで、斜め収縮に起因するセラミックグリーンシートの変形を抑制する観点から、本フィルムは、(1)100℃で5分間加熱処理したとき、フィルム端部において、フィルムの長手方向(MD方向)0°に対して、左斜め45°方向の熱収縮率と右斜め45°方向の熱収縮率との差の絶対値を0.15%以下に調整することが好ましい。
【0031】
係る観点から、本フィルムは、(1)100℃で5分間加熱処理したとき、フィルム端部において、フィルムの長手方向(MD方向)0°に対して、左斜め45°方向の熱収縮率と右斜め45°方向の熱収縮率との差の絶対値は、0.13%以下であることがより好ましい。
なお、斜め収縮率の詳細な測定方法及び条件については実施例に詳述した。
【0032】
また、フィルム中央部とフィルム端部における斜め収縮率の差に起因するセラミックグリーンシートの変形ムラの発生を抑制する観点から、100℃で5分間加熱処理したとき、フィルム端部において、フィルムの長手方向(MD方向)0°に対して、左斜め45°方向の熱収縮率と右斜め45°方向の熱収縮率との差の絶対値と、100℃で5分間加熱処理したとき、フィルム中央部において、フィルムの長手方向(MD方向)0°に対して、左斜め45°方向の熱収縮率と右斜め45°方向の熱収縮率との差の絶対値との差が、絶対値で0.12%以下であることが好ましく、0.10%以下であることがより好ましい。
【0033】
「フィルム端部」とは、フィルム全幅に対して7.6%及び92.4%の位置を示し、フィルム中央部とはフィルム全幅に対して50%の位置を示す。
【0034】
本フィルムにおいて、上記範囲に斜め収縮率を調整するには、フィルム製膜に際して、次の(D)及び(E)の方法を採用すればよい。
(D)延伸後の熱固定(熱処理)ゾーンの温度を上げて熱処理による配向の緩和を抑制し、配向結晶を促進させることで熱変形率の差を小さくする方法
(E)熱固定後の冷却ゾーンの温度を高くし、かつ、段階的に冷却することでフィルム中央部と端部との間において加熱延伸後の冷却時に発生する収縮応力による影響の相違から発生した不均一な配向を均一化する方法
【0035】
上記(D)において、熱固定ゾーンでの温度は、180℃~220℃の範囲であることが好ましい。
また、この熱固定は、温度の異なる2段以上の工程で行い、段階的に行うと、熱処理による配向の緩和を抑制し、配向結晶を促進させることが可能となる。
【0036】
上記(E)において、冷却ゾーンの温度は、フィルムを構成するポリエステルのガラス転移温度(Tg)以上であることが好ましく、より具体的には、100~160℃の範囲であることが好ましい。
通常、前記冷却温度は、フィルムを構成するポリエステルのガラス転移温度(Tg)未満とするが、本発明においては、これよりも高い温度に設定することが好ましい。
また、この冷却は、温度の異なる2段以上の工程で行い、段階的に行うと、より配向を均一化することができる。
【0037】
また、本フィルムは、セラミックグリーンシートの変形抑制の観点から、フィルム中央部及び/又は端部における熱収縮率が、以下の(2)及び(3)を満足することが好ましい。
(2)100℃で5分間加熱処理したときの熱収縮率がMD方向で0.3%以下
(3)100℃で5分間加熱処理したときの熱収縮率がフィルムの幅方向(TD方向)で0.3%以下
さらに、上記MD方向の熱収縮率は0.25%以下であることがより好ましく、上記TD方向の熱収縮率は0.20%以下であることがより好ましい。
【0038】
(ポリエステル)
上記ポリエステルとは、主鎖に連続してエステル結合を有する高分子化合物をいい、ホモポリエステルであっても共重合ポリエステルであってもよく、具体的には、ジカルボン酸成分とジオール成分とを重縮合反応させることによって得られるポリエステルを挙げることができる。
【0039】
なお、本発明においては、ジカルボン酸成分を100モル%としたとき、芳香族ジカルボン酸又は脂肪族ジカルボン酸を50%よりも多く含有するポリエステルを使用することが好ましい。
【0040】
前記ジカルボン酸成分としては、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ジフェニルジカルボン酸、4,4’-ジフェニルエーテルジカルボン酸及び4,4’-ジフェニルスルホンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸や、例えばアジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ダイマー酸、ドデカンジオン酸、シクロヘキサンジカルボン酸及びこれらのエステル誘導体等の脂肪族ジカルボン酸を挙げることができる。
【0041】
前記ジオール成分としては、例えばエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-ヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、2,2-ビス(4-ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、イソソルベート及びスピログリコール等を挙げることができる。
【0042】
上記ポリエステルがホモポリエステルからなる場合、芳香族ジカルボン酸と脂肪族グリコールとを重縮合させて得られるものが好ましい。前記芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸などを挙げることができ、脂肪族グリコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール等を挙げることができる。
代表的なポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン-2,6-ナフタレンジカルボキシレート(PEN)等を例示することができる。
【0043】
一方、上記ポリエステルが共重合ポリエステルの場合は、30モル%以下の第三成分を含有した共重合体であることが好ましい。第三成分とは、ポリエステルを構成するジカルボン酸成分の主成分となる化合物と、ジオール成分の主成分となる化合物以外の成分であり、ポリエチレンテレフタレートではテレフタル酸及びエチレングリコール以外の成分である。
共重合ポリエステルのジカルボン酸成分としては、例えばイソフタル酸、フタル酸テレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、オキシカルボン酸等の一種または二種以上を挙げることができる。
共重合ポリエステルのグリコール成分としては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール等の一種または二種以上を挙げることができる。
【0044】
また、上記ポリエステルとしては、80モル%以上、好ましくは90モル%以上が、エチレンテレフタレート単位であるポリエチレンテレフタレートや、エチレン-2,6-ナフタレート単位であるポリエチレン-2,6-ナフタレート等が好ましい。
【0045】
(ポリエステル重縮合触媒)
上記ポリエステルを重縮合する際の重縮合触媒としては、アンチモン化合物、ゲルマニウム化合物、アルミニウム化合物、チタン化合物等が挙げられる。これらの中では、アンチモン化合物及びチタン化合物の少なくともいずれかが好ましく、とりわけ、チタン化合物を用いて得られるポリエステルを使用することが好ましい。
したがって、ポリエステルフィルムは、アンチモン化合物及びチタン化合物の少なくともいずれかを含むことが好ましく、チタン化合物を含むことがより好ましい。
前記チタン化合物を使用することで、フィルム中に当該チタン化合物に由来する金属含有凝集体、いわゆる粗大異物の個数を低減化することができ、高い表面平滑性、とりわけ、少なくとも片面の最大山高さ(Sp)が小さい二軸延伸フィルムを得ることができる。
【0046】
本フィルムの最外層(「表面層」ともいう、例えば、離型層が積層される表面層)を構成するポリエステルは、その重縮合触媒としてチタン化合物を使用することが好ましく、例えば、後述する表面層Cがチタン化合物を含むことが好ましい。
当該最外層中に当該チタン化合物に由来するチタン元素含有量が3ppm以上40ppm以下であることが好ましく、4ppm以上35ppm以下であることがより好ましい。
上記範囲内であれば、ポリエステルの製造効率を低下することなく、触媒起因の異物を低減化することができる。
また、生産性の観点から、中間層(後述するベース層B)を構成するポリエステルは、その重縮合触媒としてチタン化合物を使用しないことが好ましい。
また、同様の観点から、本フィルムの最外層中のアンチモン化合物の含有量は100ppm以下であることが好ましい。
例えば、後述する表面層Aは、アンチモン化合物及びチタン化合物の少なくともいずれかを含み、表面層Aにおけるアンチモン化合物の含有量が100ppm以下であることが好ましい。この際、表面層Aはアンチモン化合物を含有しなくてもよい。
【0047】
(ポリエステルの極限粘度(IV))
本フィルムを構成するポリエステルの極限粘度(IV)は0.6dl/g以上であることが好ましく、0.70dl/g以上であることがより好ましい。
【0048】
本フィルムを構成する樹脂として、極限粘度IVが0.6dl/g以上のポリエステルを使用すると混練中のせん断応力が増大することによって粒子が高分散する等の利点がある。
【0049】
なお、「本フィルムを構成するポリエステルの極限粘度(IV)」とは、極限粘度(IV)が異なる2種以上のポリエステルを使用する場合には、これら混合樹脂の極限粘度(IV)を意味するものとする。
【0050】
上記の観点から、とりわけ、本フィルムが積層構造の場合、本フィルムの最外層(例えば、離型層が積層される表面層)を構成するポリエステルの極限粘度(IV)は0.65dl/g以上であることが好ましく、0.70dl/g以上であることがより好ましい。該ポリエステルの極限粘度(IV)は、例えば、1.0dl/g以下である。
【0051】
(本フィルムの構成)
本フィルムは、単層及び2以上の層を有する積層構造(積層フィルム)のいずれも採用することができるが、とりわけ、3層以上の積層構造を有することが好ましい。
【0052】
(粒子)
本フィルムは、少なくとも一方の面に粒子を含有する表面層Aを有することが好ましい。
係る構成を採用することによりフィルムの取扱い性を向上させることができる。
【0053】
前記粒子としては、例えばシリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、カオリン、酸化アルミニウム及び酸化チタン等の無機粒子の他、架橋シリコーン樹脂粒子、架橋アクリル樹脂粒子、架橋スチレン-アクリル樹脂粒子、架橋ポリエステル粒子等の架橋高分子、シュウ酸カルシウム及びイオン交換樹脂等の有機粒子を挙げることができる。これらの中では、シリカ、酸化アルミニウムなどが好ましく、中でもシリカがより好ましい。シリカの具体例としては、単分散球状シリカ粒子が挙げられる。
【0054】
本フィルム中の粒子含有量は、ハンドリング性付与の観点から、質量割合で例えば900ppm以上であり、2000ppm以上10000ppm以下であることが好ましく、2500ppm以上9500ppm以下であることがより好ましく、3000ppm以上9000ppm以下であることが最も好ましい。
【0055】
(本フィルムの積層構造)
本フィルムが2以上の層を有する積層構造を備える場合、ベース層Bと表面層A及び表面層Cから構成されるA/B/C及びベース層Bと表面層Aから構成されるA/B/Aの3層構造が好ましく、とりわけ、A/B/Cの3層構造が好ましい。
【0056】
前記表面層Cの平均表面粗さ(Sa)は8nm以下が好ましく、6nm以下であることがより好ましく、4nm以下であることが最も好ましく、また、例えば1nm以上、好ましくは2nm以上である。さらに、表面層Cの最大山高さ(Sp)は150nm以下が好ましく、120nm以下であることがより好ましく、115nm以下であることがさらに好ましく、90nm以下であることが特に好ましい。
【0057】
また、前記表面層Cは、前記表面層Aよりも平均表面粗さ(Sa)及び最大山高さ(Sp)のいずれもが小さいことが好ましい。
【0058】
上記A/B/Cの積層構造において、表面層Aは、平均表面粗さ(Sa)が5nm以上又は最大山高さ(Sp)が220nm以下であることが好ましい。この場合、平均表面粗さ(Sa)は20nm以下程度であってもよい。
係る積層構成を採用することにより、表面層Aにはフィルムの取扱い性を向上させるために必要な粗面を具備することができ、表面層Cには肉薄なセラミック層を付与させるために必要な平滑性を具備することができる。
以上の観点から、表面層Aの平均表面粗さ(Sa)は、8nm以上であることがより好ましく、また、最大山高さ(Sp)は、200nm以下とすることがより好ましい。
【0059】
上記A/B/C及び上記A/B/Aの3層構造において、表面層A及び表面層Cは、ハンドリング性を確保するために粒子を含有することが好ましい。
【0060】
また、上記A/B/C及びA/B/Aの3層構造において、表面層A及び表面層Cそれぞれは、粒度分布が狭い略均一な平均粒径を有する(いわゆる単分散性を有する)粒子を含有することが特に好ましい。
係る構成を採用することで、本フィルムのハンドリング性を維持しながら、高い表面平滑性、とりわけ、少なくとも片面の平均表面粗さ(Sa)及び最大山高さ(Sp)が小さい二軸延伸フィルムを得ることができる。
【0061】
上記粒度分布が狭い略均一な平均粒径を有する粒子としては、該粒子の粒度分布において、累積個数が10%となる粒子径をD10、累積個数が50%となる粒子径をD50、累積個数が90%となる粒子径をD90としたときに、(D90-D10)/D50が0.4以下となる粒子が好ましく、0.2以下となる粒子が特に好ましい。
係る関係式(D90-D10)/D50は、D50を基準とした粒子径のバラツキを示すものであり、(D90-D10)/D50が0.4以下の粒子は、D90とD10との差が小さいシャープな粒度分布を有するものであり、本フィルムに対して、優れたハンドリング性を維持しながら、極めて高い平滑性を付与することができる。
また、粒子の粒度分布は、レーザー回折式測定装置によって測定される。
【0062】
前記粒子の平均粒径は、平均表面粗さ(Sa)の増大及び最大山高さ(Sp)の抑制、即ち、ハンドリング性の向上及びセラミック層のピンホール抑制の観点から、例えば0.05~0.8μmであり、0.1~0.5μmであることが好ましく、0.1~0.3μmであることがより好ましい。
【0063】
表面層Aは、平均粒径0.1~0.5μmの粒子を含有することが好ましい。
また、前記表面層Cは、平均粒径0.05~0.2μmの粒子を含有することが好ましく、0.05~0.1μmの粒子を含有することがより好ましい。
【0064】
なお、粒子の平均粒径は、走査型電子顕微鏡(SEM)によって、10個以上の粒子の直径を測定し、その平均値として求めることができる。その際、非球状粒子の場合は、最長径と最短径の平均値を各粒子の直径として測定することができる。
【0065】
また、本フィルムは、前記粒子を例えば900ppm以上の質量割合で含み、2000~10000ppmの質量割合で含むことが好ましく、中でも2500ppm以上9500ppm以下、その中でも3000ppm以上9000ppm以下の質量割合で含むことがさらに好ましい。なお、ここでいう質量割合とは、各表面層における粒子の割合である。
【0066】
また、前記表面層Cは、前記粒子を900ppm以上6000ppm以下の質量割合で含むことがとりわけ好ましい。
前記表面層Cが、係る範囲で粒子を含むことでフィルムの取扱い性が良く、セラミック層のピンホールを抑制することができる。
【0067】
また、前記表面層Aは、前記粒子を5000ppm未満の質量割合で含むことがとりわけ好ましく、前記粒子を2000ppm以上4000ppm以下の質量割合で含むことが最も好ましい。
【0068】
前記ベース層Bは、最も厚みの厚い主層として機能させることが好ましく、コストダウンするために、粒子を実質的に含まないか、或いは、少なくとも表面層Aよりも低濃度で粒子を含むことが好ましい。
【0069】
なお、「実質的に含有しない」とは、意図して含有しないという意味であり、具体的には、粒子の含有量(粒子濃度)が200ppm以下、より好ましくは150ppm以下のことを指す。
【0070】
上述のとおり、表面層Cは上記表面層Aとは異なる層であるが、具体的には、粒子の種類、平均粒径及び配合量が異なる形態の他、層厚みが異なる形態を例示することができる。
【0071】
また、次の(X)及び(Y)に示した表面層A及び/又は表面層Cを備える構成が特に好ましい。
係る構成を採用することで、本フィルムが、優れたハンドリング性と表面平滑性を具備することができる。
【0072】
(X)特に好ましい実施形態1
(1)前記A/B/Cの構成において、表面層Cが粒子及びチタン化合物を含み、表面層Aが平均粒径0.1~0.5μmの粒子を含む形態
(2)前記(1)において、表面層Cが少なくとも平均粒径が0.05~0.2μmの無機粒子及び/又は有機粒子を含む形態
(3)前記(1)又は(2)において、表面層Aが無機粒子及び/又は有機粒子を含む形態
(4)前記(3)において、表面層A及び表面層Cが無機粒子を含有し、表面層Aに含有される該無機粒子と表面層Cに含有される無機粒子との平均粒径が異なる形態
(5)前記(1)~(4)の何れかにおいて、表面層Aがアンチモン化合物及び/又はチタン化合物を含み、該アンチモン化合物の含有量が100ppm以下である形態
(6)前記(1)~(5)の何れかにおいて、前記粒子は、累積個数が10%となる粒子径をD10、累積個数が50%となる粒子径をD50、累積個数が90%となる粒子径をD90としたときに、(D90-D10)/D50が0.4以下である形態
(7)前記(6)において、前記粒子は、単分散球状シリカ粒子である形態
【0073】
上記(X)では、チタン化合物を触媒として重縮合されたポリエステルを使用することで触媒起因の異物を低減化することができ、高い表面平滑性を具備させることができる。
【0074】
(Y)特に好ましい実施形態2
(1)前記A/B/Aの構成において、表面層Aは、累積個数が10%となる粒子径をD10、累積個数が50%となる粒子径をD50、累積個数が90%となる粒子径をD90としたときに、(D90-D10)/D50が0.4以下である粒子を含む形態
(2)前記(1)において、表面層Aが、アンチモン化合物及び/又はチタン化合物を含み、該アンチモン化合物の含有量が100ppm以下である形態
(3)前記(1)又は(2)において、前記表面層Aを構成するポリエステルの極限粘度(IV)が0.6dl/g以上、好ましくは0.65dl/g以上の形態
(4)前記(1)~(3)の何れかにおいて、前記粒子は、単分散球状シリカ粒子である形態
【0075】
上記(Y)では、表面層Aが略均一な平均粒径を有する粒子、より詳しくは、累積個数が10%となる粒子径をD10、累積個数が50%となる粒子径をD50、累積個数が90%となる粒子径をD90としたときに、(D90-D10)/D50が0.4以下である粒子を含むことでフィルムのハンドリング性を維持しながら、高い表面平滑性、とりわけ、少なくとも片面の最大山高さ(Sp)が小さい二軸延伸フィルムを得ることができる。
【0076】
(製造方法)
以下、本フィルムの製造方法の一例を示す。
先ずは、公知の方法により、原料例えばポリエステルチップを溶融押出装置に供給し、それぞれのポリマーの融点以上に加熱し、溶融ポリマーをダイから押し出し、回転冷却ドラム上でポリマーのガラス転移点以下の温度となるように冷却固化し、実質的に非晶状態の未配向シートを得るようにすればよい。
【0077】
次に、当該未配向シートを、一方向にロール又はテンター方式の延伸機により延伸する。この際、延伸温度は、通常25~120℃、好ましくは35~100℃であり、延伸倍率は通常2.5~7倍、好ましくは2.8~6倍である。
【0078】
次いで、一段目の延伸方向と直交する方向に延伸する。この際、延伸温度は通常50~140℃であり、延伸倍率は通常3.0~7倍、好ましくは4.5倍以上であり、より好ましくは4.5~5.0倍である。
【0079】
そして、引き続き180~220℃の温度で緊張下又は30%以内の弛緩下で熱固定処理を行い、二軸配向フィルムとしての本共重合ポリエステルフィルムを得ることができる。この熱固定処理は、温度の異なる2段以上の工程で行ってもよい。
また、熱固定処理の後に冷却ゾーンにて冷却を行ってもよい。冷却温度は、フィルムを構成するポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)より高い温度であることが好ましく、より具体的には、100~160℃の範囲であることが好ましい。この冷却は、温度の異なる2段以上の工程で行ってもよい。
なお、前記の延伸においては、一方向の延伸を2段階以上で行う方法を採用することもできる。
【0080】
(離型層)
本フィルムは、少なくとも片面に離型層を有する形態で、セラミックグリーンシートの支持体として使用することが可能である。
当該離型層は、本フィルムの高平滑面側、特に、平均表面粗さ(Sa)が8nm以下の面側に積層されることが好ましい。
したがって、例えばA/B/C構成の場合には、C層表面側に離型層が積層され、A/B/C/離型層の構成となる。
本フィルムの高平滑面側に離型層を積層することで、離型層上に超薄層セラミック層を積層してグリーンシートを成型する際にピンホールなどの発生が起こりにくく好ましい。
【0081】
前記離型層は、直接又は他の層を介して本フィルムに積層される。
他の層としては、例えば、本フィルムへの密着性を改良するためのコート層の他、帯電防止層やブロッキング防止層等を挙げることができる。
【0082】
前記離型層は、離型剤を含む離型剤組成物から形成されるが、良好な離型性能を得る観点から、とりわけ、該離型剤組成物中にシリコーン樹脂を含有することが好ましい。具体的には、硬化型シリコーン樹脂を主成分とするタイプや、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂等の有機樹脂とのグラフト重合等による変性シリコーンタイプ、或いはフルオロシリコーン樹脂等を含有することが好ましい。
【0083】
前記硬化型シリコーン樹脂としては、付加型・縮合型等の熱硬化型や紫外線硬化型等の電子線硬化型等、既存の何れの硬化反応タイプでも用いることができ、また複数種類の硬化型シリコーン樹脂を併用して使用しても良い。
また、離型層を形成する際の硬化型シリコーン樹脂の塗工形態にも特に制限は無く、有機溶剤に溶解している形態、水系エマルジョンの形態、無溶剤の形態の何れであっても良い。
【0084】
前記離型層を形成する離型剤組成物には、その他にも、必要に応じてバインダー、消泡剤、塗布性改良剤、増粘剤、無機系有機系粒子、有機系潤滑剤、帯電防止剤、導電剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、発泡剤、染料及び顔料等が含有されてもよい。
【0085】
離型層の形成は、本フィルムに離型剤組成物をコーティングすることにより設けられ、フィルム製膜工程内で行うインラインコーティング、或いは、一旦製造したフィルム上に系外で塗布する、いわゆるオフラインコーティングのいずれを採用してもよい。
【0086】
本フィルム上に離型層を設ける方法としては、リバースグラビアコート、ダイレクトグラビアコート、ロールコート、ダイコート、バーコート、カーテンコート等、従来公知の塗工方式を挙げることができる。
【0087】
離型層を形成する際の硬化条件に関しては、特に限定されるわけではなく、オフラインコーティングにより離型層を設ける場合、通常、80℃以上で10秒以上、好ましくは100~200℃で3~40秒間、より好ましくは120~180℃で3~40秒間を目安として熱処理を行うのが良い。
【0088】
また、必要に応じて熱処理と紫外線照射等の活性エネルギー線照射とを併用してもよい。
なお、活性エネルギー線照射による硬化のためのエネルギー源としては、公知の装置、エネルギー源を用いることができる。
【0089】
離型層の塗工量(乾燥後)は塗工性の面から、通常、0.005~5g/m、好ましくは0.005~1g/m、さらに好ましくは0.005~0.1g/mの範囲である。塗工量(乾燥後)が0.005g/m未満の場合、塗工性の面より安定性に欠け、均一な塗膜を得るのが困難になる場合がある。
【0090】
一方、5g/mを超えて厚塗りにする場合には離型層自体の塗膜密着性、硬化性等が低下する場合がある。
【0091】
なお、塗布量は、塗布した時間あたりの液質量(乾燥前)、塗工液不揮発分濃度、塗布幅、延伸倍率、ライン速度等から計算で求める。
【0092】
(用途)
本フィルムは、前述したように、平滑性に優れている一方、それでいて厚さ振れが改善されていることから、セラミックグリーンシートの支持体として、特に、積層セラミックコンデンサーの製造工程において用いられるセラミックグリーンシートの支持体として好適に用いることができる。セラミックグリーンシートは、支持体としての本フィルムに例えばセラミックスラリーを塗布することで形成される。
【0093】
今後、電装化が進む自動車向け積層セラミックコンデンサーにおいては、とりわけ、当該コンデンサーの小型化・高容量化が進み使用するセラミックグリーンシートの薄膜化が進み、スラリー溶媒が高沸点化していくと予測される。
したがって、とりわけ、本フィルムは、自動車向け積層セラミックコンデンサーに用いるセラミックグリーンシートの支持体として好適に用いることができる。
【実施例
【0094】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0095】
<ポリエステルの製造>
(1)ポリエステルAの製造
ジメチルテレフタレート100質量部及びエチレングリコール65質量部を、攪拌装置、昇温装置及び留出液分離塔を備えたエステル交換反応槽に仕込み、150℃に加熱してジメチルテレフタレートを溶融させた。
【0096】
次いで、得られるポリエステルに対する酢酸マグネシウムの添加量が0.09質量%となるように、酢酸マグネシウム四水塩のエチレングリコール溶液を添加した。
その後、常圧下で3時間かけて225℃まで昇温させ、さらに225℃で1時間15分攪拌保持すると共にメタノールを留去しながらエステル交換反応を行ない、実質的にエステル交換反応を終了してポリエステル低重合体(オリゴマー)を得た。
【0097】
このオリゴマーを留出管を備えた攪拌機付き重縮合反応槽へ移送した。
得られるポリエステル樹脂分に対する酢酸マグネシウムの添加量が0.09質量%となるように、酢酸マグネシウム四水塩のエチレングリコール溶液を、移送後のオリゴマーに添加した。
その後、得られるポリエステルに対するリン酸の添加量が0.017質量%となるように、熱安定剤としてリン酸のエチレングリコール溶液を添加した。
【0098】
得られるポリエステルに対するテトラブチルチタネートの添加量が得られるポリエステルに対してチタン原子として4.5質量ppmとなるように、重縮合触媒としてテトラブチルチタネートのエチレングリコール溶液を、前記オリゴマーに添加した。
その後、101.3kPaから0.4kPaまで85分間で減圧し0.4kPaに保持するとともに、225℃から280℃まで2時間かけて昇温させ280℃で1.5時間保持して溶融重縮合反応を行い、極限粘度0.63dL/gのポリエステルAを得た。
【0099】
(2)ポリエステルBの製造
上記ポリエステルAを固相重合し、極限粘度0.70dL/gのポリエステルBを得た。
【0100】
(3)ポリエステルCの製造
上記ポリエステルAを固相重合し、極限粘度0.85dL/gのポリエステルCを得た。
【0101】
(4)ポリエステルDの製造
上記ポリエステルAでテトラブチルチタネートを添加する代わりに、添加量が得られるポリエステル樹脂分に対してアンチモン原子として300質量ppmとなるように、重縮合触媒として三酸化アンチモンを添加すること以外はポリエステルAと同様にしてポリエステルDを得た。
【0102】
(5)ポリエステルEの製造
上記ポリエステルAで、添加量が得られるポリエステルに対してチタン原子として210質量ppmとなるようにテトラブチルチタネートを添加すること以外はポリエステルAと同様にしてポリエステルEを得た。
【0103】
(6)ポリエステルFの製造
上記の実質的に粒子を含有しないポリエステルD中に、平均1次粒径0.5μmの単分散球状シリカを1.0質量%((D90-D10)/D50=0.27)添加し、ベント式二軸混練機を用いて練り込みポリエステルFを得た。
【0104】
(7)ポリエステルGの製造
上記の実質的に粒子を含有しないポリエステルB中に、平均1次粒径0.3μmの単分散球状シリカを2.0質量%((D90-D10)/D50=0.28)添加し、ベント式二軸混練機を用いて練り込みポリエステルGを得た。
【0105】
(8)ポリエステルHの製造
上記の実質的に粒子を含有しないポリエステルB中に、平均1次粒径0.15μmの単分散球状シリカを2.0質量%((D90-D10)/D50=0.19)添加し、ベント式二軸混練機を用いて練り込みポリエステルHを得た。
【0106】
(9)ポリエステルIの製造
上記の実質的に粒子を含有しないポリエステルB中に、平均1次粒径0.10μmの単分散球状シリカを2.0質量%((D90-D10)/D50=0.14)添加し、ベント式二軸混練機を用いて練り込みポリエステルIを得た。
【0107】
(10)ポリエステルJの製造
上記の実質的に粒子を含有しないポリエステルB中に、平均1次粒径0.20μmの単分散球状シリカを1.0質量%((D90-D10)/D50=0.18)添加し、ベント式二軸混練機を用いて練り込みポリエステルJを得た。
【0108】
(11)ポリエステルKの製造
上記の実質的に粒子を含有しないポリエステルD中に、平均1次粒径0.05μmのアルミナ粒子を1.5質量%添加し、ベント式二軸混練機を用いて練り込みポリエステルKを得た。
【0109】
(12)ポリエステルLの製造
上記の実質的に粒子を含有しないポリエステルE中に、平均1次粒径0.05μmのアルミナ粒子を0.75質量%添加し、ベント式二軸混練機を用いて練り込みポリエステルLを得た。
【0110】
(13)ポリエステルMの製造
上記の実質的に粒子を含有しないポリエステルD中に、平均1次粒径0.7μmの有機粒子を2.0質量%添加し、ベント式二軸混練機を用いて練り込みポリエステルMを得た。
【0111】
[実施例1]
ポリエステルB、C、Fを、それぞれ17%、58%、25%の質量割合でブレンドした原料を表面層Aの原料とし、ポリエステルD=100%の原料を中間層(ベース層B)の原料として、ベント付き押出機に供給し、290℃で溶融押出した後、静電印加密着法を用いて表面温度を40℃に設定した冷却ロール上で冷却固化して無定形フィルムを得た。
【0112】
次いで、ロール周速差を利用してフィルム温度85℃で縦方向に、すなわちMD方向に3.4倍延伸した後、この縦延伸フィルムをテンターに導き、横方向、すなわちTD方向に120℃で4.6倍延伸し、テンター内の熱処理(固定)ゾーン1、2、冷却ゾーン3、4において、それぞれ215℃、205℃、150℃、110℃で熱処理を行った後、フィルムをプラスチック芯にロール状に巻き上げ、厚さ31μm、フィルム幅1420mm、巻長さ13500mの積層ポリエステルフィルムロールを得た。
なお、フィルム製造時には、MD方向に流れるフィルムに膜厚計をTD方向に移動させながら測定したデータを平均化することでフィルムのTD方向の厚さ分布グラフを作成し、Rmaxが高い区間が検出されたら、都度、押出機の口金のリップ調整ボルトを作動させることで口金のスリット間隙を変化させて樹脂吐出量を調整し、Rmaxを調整した。
得られたフィルムロールの特性を下記表1に示す。
【0113】
[実施例2]
実施例1において、ポリエステルB、Gをそれぞれ83%、17%の質量割合でブレンドした原料を表面層Aの原料とし、ポリエステルB、Lをそれぞれ87%、13%の質量割合でブレンドした原料を表面層Cの原料とし、横方向、すなわちTD方向に4.5倍延伸に変更する以外は実施例1と同様にして積層ポリエステルフィルムロールを得た。
得られたフィルムロールの特性を下記表1に示す。
【0114】
[実施例3]
実施例1において、ポリエステルB、Gをそれぞれ83%、17%の質量割合でブレンドした原料を表面層Aの原料とし、ポリエステルB、Iをそれぞれ73%、27%の質量割合でブレンドした原料を表面層Cの原料とし、テンター内の熱処理(固定)ゾーン1、2、冷却ゾーン3、4での熱処理温度をそれぞれ220℃、210℃、155℃、120℃に変更する以外は実施例1と同様にして積層ポリエステルフィルムロールを得た。
得られたフィルムロールの特性を下記表1に示す。
【0115】
[実施例4]
実施例1において、ポリエステルB、Hをそれぞれ77%、23%の質量割合でブレンドした原料を表面層Aの原料とし、ポリエステルB、Jをそれぞれ85%、15%の質量割合でブレンドした原料を表面層Cの原料とし、テンター内の熱処理(固定)ゾーン1、2、冷却ゾーン3、4での熱処理温度をそれぞれ220℃、200℃、150℃、105℃に変更する以外は実施例1と同様にして積層ポリエステルフィルムロールを得た。
得られたフィルムロールの特性を下記表1に示す。
【0116】
[実施例5]
実施例1において、ポリエステルB、Mをそれぞれ85%、15%の質量割合でブレンドした原料を表面層Aの原料に変更する以外は、実施例1と同様にして積層ポリエステルフィルムロールを得た。
得られたフィルムロールの特性を下記表1に示す。
【0117】
[実施例6]
実施例1において、ポリエステルB、Gをそれぞれ80%、20%の質量割合でブレンドした原料を表面層Aの原料とし、ポリエステルD、Kをそれぞれ93.5%、6.5%の質量割合でブレンドした原料を表面層Cの原料に変更する以外は実施例1と同様にして積層ポリエステルフィルムロールを得た。
得られたフィルムロールの特性を下記表1に示す。
【0118】
[実施例7]
実施例1において、ポリエステルA、Fをそれぞれ70%、30%の質量割合でブレンドした原料を表面層Aの原料に変更する以外は、実施例1と同様にして積層ポリエステルフィルムロールを得た。
得られたフィルムロールの特性を下記表1に示す。
【0119】
[比較例1]
実施例1において、ポリエステルB、C、Fをそれぞれ14%、58%、28%の質量割合でブレンドした原料を表面層Aの原料とし、テンター内の熱処理(固定)ゾーン1、2、冷却ゾーン3、4での熱処理温度をそれぞれ230℃、185℃、120℃、95℃に変更する以外は実施例1と同様にして積層ポリエステルフィルムロールを得た。
得られたフィルムロールの特性を下記表2に示す。
実施例1と比較して、熱処理(固定)ゾーン1の熱処理温度を230℃に上げたことで、フィルムの緩和が促進され、特に巨視的な厚さ振れが大きくなったと推測される。
【0120】
[比較例2]
実施例1において、横方向、すなわちTD方向に4.4倍延伸に変更し、テンター内の熱処理(固定)ゾーン1での熱処理温度を230℃に変更し、フィルム製造時に樹脂吐出量を調整することでRmaxを調整しなかったこと以外は実施例1と同様にして積層ポリエステルフィルムロールを得た。
得られたフィルムロールの特性を下記表2に示す。
実施例1と比較して、TD方向の延伸倍率を下げ、熱処理(固定)ゾーン1の熱処理温度を230℃に上げ、フィルム製造時にRmaxを調整しなかったことで、巨視的及び微視的な厚さ振れが大きくなったと推測される。
【0121】
[比較例3]
実施例1において、横方向、すなわちTD方向に4.3倍延伸に変更したこと以外は実施例1と同様にして積層ポリエステルフィルムロールを得た。
得られたフィルムロールの特性を下記表2に示す。
実施例1と比較して、TD方向の延伸倍率を下げたことで、特に微視的な厚さ振れが大きくなったと推測される。
【0122】
[比較例4]
実施例1において、横方向、すなわちTD方向に4.4倍延伸に変更し、熱処理(固定)ゾーン1の熱処理温度を210℃に下げたこと以外は実施例1と同様にして積層ポリエステルフィルムロールを得た。
得られたフィルムロールの特性を下記表2に示す。
実施例1と比較して、TD方向の延伸倍率を下げたことで、特に微視的な厚さ振れが大きくなったと推測される。
【0123】
[比較例5]
実施例1において、横方向、すなわちTD方向に4.7倍延伸に変更し、熱処理(固定)ゾーン1及び2の熱処理温度を240℃、220℃に上げたこと以外は実施例1と同様にして積層ポリエステルフィルムロールを得た。
得られたフィルムロールの特性を下記表2に示す。
実施例1と比較して、熱処理(固定)ゾーン1及び2の熱処理温度を240℃、220℃に上げたことで、特に微視的な厚さ振れが大きくなったと推測される。
[比較例6]
【0124】
実施例1において、横方向、すなわちTD方向に4.9倍延伸に変更し、フィルム製造時に樹脂吐出量を調整することでRmaxを調整しなかったこと以外は実施例1と同様にして積層ポリエステルフィルムロールを得た。
得られたフィルムロールの特性を下記表2に示す。
実施例1と比較して、フィルム製造時にRmaxを調整しなかったことで、特に巨視的な厚さ振れが大きくなったと推測される。
【0125】
なお、実施例及び比較例で用いた測定法及び評価方法を次のとおりである。
(1)極限粘度(IV)
ポリエステル1gを精秤し、フェノール/テトラクロロエタン=50/50(重量比)の混合溶媒100mlを加えて溶解させ、30℃で測定した。
【0126】
(2)粒子の平均粒径及び粒度分布
走査型電子顕微鏡(HITACHI製、「S3400N」)を用いて、粉体を観察した。得られた画像データから粒子1個の大きさを測定し、10点の平均値を平均1次粒径とした。
また、粒子にフェノール/テトラクロロエタン=2/3の混合溶剤を添加した固形分0.03g/mLの分散液を調製し、当該分散液について、マイクロトラックベル社製「MT3300EXII」を用いてレーザー回折散乱法により、累積個数が10%となる粒子径D10、累積個数が50%となる粒子径D50及び累積個数が90%となる粒子径D90を測定し、(D90-D10)/D50を算出した。
【0127】
(3)熱収縮率
マスターロールより試験片を指定の位置において縦方向及び横方向、45°(右斜め45°)方向、135°(左斜め45°)方向からサンプリングする。試験片のサイズは、15mm×150mmであり、試験片の中心が指定の位置に一致するようにした。ただし、上記サイズのサンプルが採取できない場合には、できる限り大きなサンプルを採取するようにする。
あらかじめ測長しておいた試料を無張力状態で100℃の熱風循環式恒温槽中で5分間熱処理を行い、熱処理後に試料の長さを測定し、下記式にて算出した。
加熱収縮率=(熱処理前の長さ-熱処理後の長さ)÷熱処理前の長さ×100
【0128】
(4)平均表面粗さ(Sa)及び最大山高さ(Sp)
アメテック株式会社の「NewView」(登録商標)を用いて測定し、得られたる表面のプロファイル曲線より、算術平均粗さSa値、最大山高さSp値を求めた。
【0129】
(5)微視的な厚さ振れ
積層ポリエステルフィルムロールについて、以下の(a-1)から(c-1)に準じて微視的な厚み振れを測定した。
【0130】
(a-1)MD方向に流れるフィルムに非接触式インライン膜厚計をTD方向に移動させながら測定したデータを平均化し、フィルムのTD方向の厚さ分布グラフ(X軸:幅方向の位置X、Y軸:厚み変位量Y)を作成する。
(b-1)作成したグラフに対して5点移動平均処理(連続する5点の相加平均を算出する操作を移動距離10mm刻みでずらして行う処理のことである)を施し平滑化する。
(c-1)平滑化されたグラフから変曲点間の厚さ振れを算出し、これを微視的な厚さ振れとする。
なお、厚さ振れとは、厚さ分布グラフにおいて隣接する変曲点の高さ差に相当する。
【0131】
(6)巨視的な厚さ振れ
積層ポリエステルフィルムロールについて、以下の(a-2)から(c-2)に準じて微視的な厚み振れを測定した。
【0132】
(a-2)MD方向に流れるフィルムに非接触式インライン膜厚計をTD方向に移動させながら測定したデータを平均化し、フィルムのTD方向の厚さ分布グラフ(X軸:幅方向の位置X、Y軸:厚み変位量Y)を作成する。
(b-2)作成したグラフから、フィルムのTD方向に200mm間隔で全幅にわたってR値(フィルム厚みの最大値Rmax-フィルム厚みの最小値Rmin)を算出する。
(c-2)200mm間隔で全幅にわたってサンプルリングした全R値の最大値を巨視的な厚さ振れとする。
【0133】
【表1】
【0134】
【表2】
【0135】
実施例1~7の積層ポリエステルフィルムロールは、高い平滑性を有するとともに、微視的及び巨視的な厚さ振れが改善されたものであった。中でも、実施例1、2、6、7は、厚さ振れが極めて低いものであった。
【0136】
また、実施例1~7の結果により、表面層の最大山高さ(Sp)の調整には、表面層に用いる粒子の平均粒径は、表面層Aでは0.1~0.5μm、表面層Cでは0.05~0.2μmであることが好ましいこと、A/B/A構成において、表面層Aに用いる粒子は単分散球状シリカがとりわけ好ましいこと、表面層がアンチモン化合物及び/又はチタン化合物を含み、該アンチモン化合物の含有量が100ppm以下であることが好ましいこと、表面層を構成するポリエステルの極限粘度(IV)が0.65dl/g以上であることが好ましいことが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0137】
本発明のセラミックグリーンシートの支持体用ポリエステルフィルムロールは、高い平滑性を有するとともに、微視的及び巨視的な厚さ振れが改善されるものであるから、例えば積層セラミックコンデンサーの製造工程において、セラミックグリーンシートの支持体として用いれば、均一な誘電体層を形成することができ、チップコンデンサの電気的性質を優れたものにできる。とりわけ、自動車向け積層セラミックコンデンサーに用いるセミックグリーンシート用支持体として好適に用いることができる。

図1
図2