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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】定着装置および画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/20 20060101AFI20240110BHJP
   G03G 15/00 20060101ALI20240110BHJP
   G03G 21/16 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
G03G15/20 515
G03G15/00 680
G03G21/16 185
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020070856
(22)【出願日】2020-04-10
(65)【公開番号】P2021113967
(43)【公開日】2021-08-05
【審査請求日】2023-02-13
(31)【優先権主張番号】P 2020006094
(32)【優先日】2020-01-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100090527
【弁理士】
【氏名又は名称】舘野 千惠子
(72)【発明者】
【氏名】今田 高広
(72)【発明者】
【氏名】服部 良雄
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 良州
(72)【発明者】
【氏名】高木 啓正
(72)【発明者】
【氏名】石ヶ谷 康功
(72)【発明者】
【氏名】和井田 匠
【審査官】藤井 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-268701(JP,A)
【文献】特開平04-217288(JP,A)
【文献】特開2002-072760(JP,A)
【文献】特開2002-236954(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0103851(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 13/00
G03G 13/20
G03G 15/00
G03G 15/20
G03G 21/16-21/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成装置本体に対して着脱自在に設置される定着装置であって、
トナー像を加熱して記録媒体に定着させる定着部材と、前記定着部材を加熱する加熱源と、前記定着部材に圧接してニップ部を形成する加圧部材と、前記記録媒体を前記ニップ部に案内する搬送ガイド部材と、少なくとも前記定着部材及び前記加圧部材を収容する外装部材と、中継基板と、前記中継基板を被覆する基板被覆部材と、を備え、
前記基板被覆部材は、前記搬送ガイド部材から延出して一体に形成されていることを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記外装部材は、端子同士の接触により信号を前記画像形成装置に伝えるドロワコネクタを備え、
前記中継基板は、信号を伝送するリード線により前記ドロワコネクタと接続されていることを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
前記リード線が前記中継基板上のパターン配線により複数に分岐され、前記ドロワコネクタに接続されていることを特徴とする請求項2に記載の定着装置。
【請求項4】
前記ドロワコネクタは、前記基板被覆部材の前記中継基板と対向する面と直交する方向に突出し、前記基板被覆部材の端部の少なくとも一部を被覆することを特徴とする請求項2または3に記載の定着装置。
【請求項5】
前記搬送ガイド部材は、前記外装部材よりも熱伝導率が高い材料及び比熱の小さい材料の少なくともいずれかからなり、前記定着部材から放射される熱によって加温されることを特徴とする請求項1からのいずれかに記載の定着装置。
【請求項6】
画像形成装置本体に対して着脱自在に設置される定着装置であって、
トナー像を加熱して記録媒体に定着させる定着部材と、前記定着部材を加熱する加熱源と、前記定着部材に圧接してニップ部を形成する加圧部材と、中継基板と、前記中継基板を被覆する基板被覆部材と、を備え、
前記基板被覆部材は、前記加圧部材の方向へ延出する突出部を有することを特徴とする定着装置。
【請求項7】
請求項1からのいずれかに記載の定着装置を備えることを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着装置、加熱装置および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置の定着装置では、紙詰まりの処理、定着装置内部品のメンテナンス、定着装置の交換のために定着装置を画像形成装置本体から着脱する必要がある。定着装置内には、加熱源(例えば、ハロゲンヒータ)、温度検知部材、定着装置の有無を検知するセット検知部材などを設けているので、装置本体から加熱源への電力供給や、温度検知信号の伝達のための電気的接続が必要であり、定着装置の装置本体への着脱時にそれらを容易に接離するドロワコネクタが知られている。ドロワコネクタは、定着装置の加熱源や温度検知部材などの電気系統に電力を供給するための、画像形成装置本体との電気的接点である。
【0003】
着脱可能な定着装置の温度検知手段のリード線(信号線)を画像形成装置本体と接続するドロワコネクタを含む定着装置では、ドロワコネクタの端子部は定着装置の着脱による摺動により端子表層の金メッキが剥がれて、下層のニッケルメッキが露出し、定着装置近傍のために高温高湿な環境に晒されることでニッケル酸化物が生成され、接点部の接触不良が発生し、温度検知信号が正しく伝えられず、種々の障害が発生することがあった。このニッケル酸化物による接触不良が発生するときの接点部の挙動は非常に不安定で、接触抵抗が瞬間的に変化したり、中間的な抵抗値を有したりするが、大抵の場合は、抵抗上昇に持続性が無く、僅かな振動や定着装置の着脱により正常状態に戻る。
【0004】
特許文献1の図6では、雄コネクタと雌コネクタを有するドロワコネクタであって、雄コネクタは上下2箇所の接点部で雌コネクタと接触することが開示されている。このドロワコネクタでは、1系統のラインに対して2箇所の接点部を設けているが、課題を解決するために特殊なドロワコネクタを製作する必要がある。
しかしながら、特殊仕様のコネクタは汎用性が無く、装置仕様に合致したコネクタが採用できないという課題がある。例えば必要な信号線数、電源線数が不足して使用が限られる場合、逆に必要以上の信号線、電源線がある場合は大きさ等の制約が発生する。
【0005】
これに対し、着脱可能な定着装置の温度検知手段のリード線を画像形成装置本体と接続するコネクタの接点に接触不良が発生した場合でも、温度検知信号を正しく伝達し、それに伴う障害の発生を防止する構成が提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方、コネクタに接続されたリード線は定着装置内の基板により中継されている。
上述のように、コネクタの接点における接触不良が解決されたとしても、中継する基板(以下、「中継基板」という)に起因した動作不良が生じる場合がある。
【0007】
定着装置のコールドスタート時(例えば、電源投入時や待機モードからの復帰時など)に、定着部材が所定の温度に達していても、周囲の十分に暖まっていない部材の表面に水滴(結露)が付着する不具合が知られている。
中継基板を収容している領域は定着装置の外装側にあり、コネクタ接続用の隙間等から通紙によって発生した水蒸気成分が流れ込み、基板上で結露してしまう場合もある。このような基板上の結露が、動作不良の原因となることがある。
【0008】
そこで本発明は、中継基板上の結露付着を防止し、信号伝達における障害の発生を防止可能な定着装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の定着装置は、画像形成装置本体に対して着脱自在に設置される定着装置であって、トナー像を加熱して記録媒体に定着させる定着部材と、前記定着部材を加熱する加熱源と、前記定着部材に圧接してニップ部を形成する加圧部材と、前記記録媒体を前記ニップ部に案内する搬送ガイド部材と、少なくとも前記定着部材及び前記加圧部材を収容する外装部材と、中継基板と、前記中継基板を被覆する基板被覆部材と、を備え、前記基板被覆部材は、前記搬送ガイド部材から延出して一体に形成されていることを特徴とする。
また、本発明の定着装置は、画像形成装置本体に対して着脱自在に設置される定着装置であって、トナー像を加熱して記録媒体に定着させる定着部材と、前記定着部材を加熱する加熱源と、前記定着部材に圧接してニップ部を形成する加圧部材と、中継基板と、前記中継基板を被覆する基板被覆部材と、を備え、前記基板被覆部材は、前記加圧部材の方向へ延出する突出部を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、中継基板上の結露付着を防止し、信号伝達における障害の発生を防止可能な定着装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態に係る画像形成装置の概略構成図である。
図2】本実施形態に係る定着装置の温度検知回路の一例を示す図である。
図3】ドロワコネクタの接点を模式的に表した従来の温度検知回路を示す図である。
図4】ドロワコネクタの接点を模式的に表した本発明の実施形態に係る温度検知回路を示す図である。
図5】中継基板での信号線の分岐を示す図である。
図6】ドロワコネクタの接点を模式的に表した本発明の別の実施形態に係る温度検知回路を示す図である。
図7】定着部材の温度変化に伴う電圧変化を示す図である。
図8】中継基板の概略構成図である。
図9】本実施形態に係る定着装置の要部構成を示す断面図である。
図10】本実施形態に係る定着装置の外観を示す斜視図である。
図11】本実施形態に係る定着装置の中継基板を被覆する基板被覆部を示す図である。
図12図11の基板被覆部により被覆される中継基板を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る定着装置、加熱装置および画像形成装置について図面を参照しながら説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、修正、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【0013】
[画像形成装置]
以下では、本発明の実施形態に係る画像形成装置としての電子写真方式のカラーレーザプリンタ(以下、単に「プリンタ」とも言う)について説明する。
図1は、本実施形態のプリンタの概略構成図である。このプリンタは、イエロー・シアン・マゼンタ・ブラックの4つの画像形成手段を横に並べて配置してタンデム画像形成部を構成する。タンデム画像形成部においては、個々のトナー像形成手段である画像形成手段101Y、101C、101M、101Kが、図中左から順に配置されている。ここで、各符号の添字Y、C、M、Kは、それぞれイエロー、マゼンダ、シアン、黒用の部材であることを示す。また、タンデム画像形成部においては、個々の画像形成手段101Y,C,M,Kは、潜像担持体としてのドラム状の感光体21Y,C,M,Kのまわりに、帯電装置、現像装置10Y,C,M,K、感光体クリーニング装置等を備えている。プリンタの上部には、イエロー、シアン、マゼンタ、黒の各色トナーが充填されたトナーボトル2Y,C,M,Kが配置されている。そして、このトナーボトル2Y,C,M,Kから画像形成装置内に備えられた搬送経路によって、所定の補給量だけ各色現像装置10Y,C,M,Kに各色トナーが補給される。
【0014】
また、タンデム画像形成部の下部に潜像形成手段としての光書込ユニット9が設けられている。この光書込ユニット9は、光源、ポリゴンミラー、f-θレンズ、反射ミラー等を備え、画像データに基づいて各感光体21の表面にレーザ光を走査しながら照射するように構成されている。
【0015】
また、タンデム画像形成部の直ぐ上には、中間転写体として無端ベルト状の中間転写ベルト1を設けている。この中間転写ベルト1は、支持ローラ1a、1bに掛け回され、この支持ローラのうち駆動ローラ1aの回転軸には駆動源としての駆動モータが連結されている。この駆動モータを駆動させると、中間転写ベルト1が図中反時計回りに回転移動するとともに、従動可能な支持ローラ1bが回転する。中間転写ベルト1の内側には、感光体21Y,C,M,K上に形成されたトナー像を中間転写ベルト1上に転写するための一次転写装置11Y,C,M,Kを設けている。
【0016】
また、上記1次転写装置11Y,C,M,Kより中間転写ベルト1の駆動方向下流に2次転写装置としての2次転写ローラ4を設けている。この2次転写ローラ4と中間転写ベルト1を挟んで反対側には、支持ローラ1bが配置されており、押部材としての機能を果たしている。また、給紙カセット8、給紙コロ7、レジストローラ6等を備えている。さらに、2次転写ローラ4によりトナー像を転写された記録媒体Sの進行方向に関して2次転写ローラ4の下流部には、記録媒体S上の画像を定着する定着装置5、排紙ローラ3を備えている。
【0017】
つぎに、上記プリンタの動作を説明する。個々の画像形成手段でその感光体21Y,C,M,Kを回転し、感光体21Y,C,M,Kの回転とともに、まず帯電装置17Y,C,M,Kで感光体21Y,C,M,Kの表面を一様に帯電する。次いで画像データを光書込ユニット9からのレーザによる書込み光を照射して感光体21Y,C,M,B上に静電潜像を形成する。その後、現像装置10Y,C,M,Kによりトナーが付着され静電潜像を可視像化することで各感光体21Y,C,M,K上にそれぞれ、イエロー・シアン・マゼンタ・ブラックの単色画像を形成する。また、画像形成装置内に備えられた駆動モータで駆動ローラ1aを回転駆動して他の従動ローラ1b、2次転写ローラ4を従動回転し、中間転写ベルト1を回転搬送して、その可視像を一次転写装置11Y,C,M,Kで中間転写ベルト1上に順次転写する。これによって中間転写ベルト1上に合成カラー画像を形成する。画像転写後の感光体21Y,C,M,Kの表面は、感光体クリーニング装置で残留トナーを除去して清掃して再度の画像形成に備える。
【0018】
また、上記画像形成のタイミングにあわせて、給紙カセット8からは記録媒体S先端が給紙コロ7により繰り出され、レジストローラ6まで搬送され、一旦停止する。そして、上記画像形成動作とタイミングを取りながら、2次転写ローラ4と中間転写ベルト1の間に搬送される。ここで、中間転写ベルト1と2次転写ローラ4とは記録媒体Sを挟んでいわゆる2次転写ニップを形成し、2次転写ローラ4にて中間転写ベルト1上のトナー像を記録媒体S上に2次転写する。
【0019】
画像転写後の記録媒体Sは定着装置5へと送り込まれ、表面を所定の温度に維持された定着部材51と定着部材51に対向し定着部材51に圧接される加圧部材52により形成されるニップ部に記録媒体Sを挟持搬送することで、記録媒体S上のトナー像を加熱加圧し、記録媒体Sに定着させる。またニップ部から排出された記録媒体Sは分離部材により分離された後、排紙ローラ3から機外に排出される。一方、画像転写後の中間転写ベルト1は、中間転写体クリーニング装置12で、画像転写後に中間転写ベルト1上に残留する残留トナーを除去し、タンデム画像形成部による再度の画像形成に備える。
【0020】
[定着装置]
本発明の実施形態に係る定着装置5の要部構成を示す断面図を図9に、外観斜視図を図10に示す。
【0021】
本実施形態の定着装置5は、画像形成装置本体に対して着脱自在に設置される定着装置であって、定着部材51と、定着部材51を加熱する加熱源53と、定着部材51に圧接してニップ部Nを形成する加圧部材52と、記録媒体Sをニップ部Nに案内する搬送ガイド部材(上部ガイド58及び下部ガイド59)と、少なくとも定着部材51及び加圧部材52を収容する外装部材5aと、中継基板56と、中継基板を被覆する基板被覆部材58aと、を備え、基板被覆部材58aは、搬送ガイド部材(上部ガイド)58から延出して一体に形成されている。
【0022】
また、本実施形態の定着装置5は、画像形成装置本体に対して着脱自在に設置される定着装置であって、定着部材51と、定着部材51を加熱する加熱源53と、定着部材51に圧接してニップ部Nを形成する加圧部材52と、中継基板56と、中継基板56を被覆する基板被覆部材58aと、を備え、基板被覆部材58aは、加圧部材52の方向へ延出する突出部58bを有する。
【0023】
図9に示すように、ニップ部Nに記録媒体(以下、「用紙」ともいう)Sが進入すると、加熱により用紙の水分蒸発するため、ニップ部出口において水蒸気が発生する。この水蒸気の一部は、図中矢印Dで示す方向に流入する。
定着装置の外装部材5aは、画像形成装置本体側から非接触式温度センサで定着部材の温度を検知するための開口部や、外装部材5aの成型上必要な開口形状等、水蒸気が流れこむ隙間が複数箇所存在する。
定着装置の外側(画像形成装置本体側や、外装部材5aの外側面)は、内部よりも温度が低いため、流れこんだ水蒸気が結露してしまうことがある。
【0024】
これに対し、本実施形態の定着装置5は、基板被覆部材58aが、搬送ガイド部材(上部ガイド)58から延出して一体に形成されており、搬送ガイド部材(上部ガイド)58は、記録媒体Sをガイドする搬送ガイド部としての突出部58bを有する。
また、本実施形態の定着装置5は、基板被覆部材58aが、加圧部材52の方向に延びる突出部58bを有する。
そのため、突出部58bが定着部材51から放射される熱によって加温されると、一体に形成された部材である基板被覆部材58aの温度も上昇する。これにより中継基板56の周囲の温度が上昇するため、中継基板56の表面での結露が防止され、結露付着に起因した障害発生を防ぐことができる。
【0025】
搬送ガイド部材(上部ガイド)58は、加熱源53により加熱された定着部材51から放射される熱によって加温される部材である。
搬送ガイド部材(上部ガイド)58が速やかに加温されることにより、基板被覆部材58aの周囲温度も速やかに上昇し、中継基板56の結露防止効果が向上する。
そのため、搬送ガイド部材58は外装部材5aよりも熱伝導率が高い材料及び比熱の小さい材料の少なくともいずれかからなることが好ましい。
特に、基板被覆部材58aの好ましい材料としては、中継基板56の結露防止効果の観点からは、熱伝導率が高いSUSや銅等の金属が挙げられ、軽量化の観点からは、樹脂(例えば、PET等)が挙げられる。
本実施形態において、搬送ガイド部材(上部ガイド58及び下部ガイド59)の材料はPETである。
【0026】
一方、本実施形態の定着装置5において外装部材5aは、耐熱性に優れ、剛性の高い材料からなることが好ましい。
本実施形態において、外装部材5aの材料はLCP樹脂である。
【0027】
本実施形態の定着装置5は、中継基板56が基板被覆部材58aにより覆われていることにより、オペレータやサービスマンが、定着装置5の着脱時に装置外に出された定着装置5の中継基板56に意図せずに接触することを防止し、部品の機械的破損、静電気等による電気的破損、コネクタ抜け等の不具合を防止することができる。
【0028】
本実施形態の定着装置5は、外装部材5aが、端子同士の接触により信号を画像形成装置に伝えるドロワコネクタ(定着装置側コネクタ)55Uを備え、中継基板56は、信号を伝送するリード線によりドロワコネクタ55Uと接続されている。
【0029】
図11は、基板被覆部材58aにより中継基板56が被覆された状態を示す概略図であり、図11(A)はドロワコネクタ55Uが設置された状態を示し、図11(B)はドロワコネクタ55Uが設置されていない状態を模式的に示している。
図12は、図11(A)に示した基板被覆部材58aが取り外され、該基板被覆部材58aにより被覆される対象である中継基板56が露出した状態を示している。
【0030】
ドロワコネクタ55Uは、長方形の開口を有し、内部には金メッキが施された端子を有する。一方、画像形成装置の本体側のドロワコネクタ55Hも、長方形の開口に対応する形状を有し、内部には金メッキが施された端子を有する。
これらの定着装置側のドロワコネクタ55U側の端子は本体側のドロワコネクタ55H側の端子と接触することで、電気的接続が形成される。
【0031】
定着装置5には温度検知手段54が設置されている。温度検知手段54は、定着装置5の長手方向端部に設置された端部サーミスタと、中央部に設置された中央サーミスタから成る。ドロワコネクタ55Uの下には、保持部材57が定着装置の外装部材に固定されており、保持部材57には中継基板56が配置されている。
【0032】
ドロワコネクタ55Uは、図11(A)に示すように基板被覆部材58aの中継基板56と対向する面と直交する方向に突出し、基板被覆部材58aの鉛直方向上部側(上端面)の少なくとも一部を被覆する。すなわち、基板被覆部材58aの鉛直方向上部側が中継基板56を被覆しない開放面となっていても、ドロワコネクタ55Uにより中継基板56が被覆される。
なお、配線等の作業性の観点から、基板被覆部材58aの鉛直方向上部側において、中継基板56が被覆されていない領域を有することが好ましい。
【0033】
中継基板56は、図9に示すように、鉛直方向の平面視において、搬送ガイド部材(上部ガイド)58の搬送ガイド部である突出部58bと、ドロワコネクタ55Uとの間に配設されていることが好ましい。
なお、中継基板56はドロワコネクタ55Uとハーネス接続されるので、配線の観点から、ドロワコネクタ55の近くに配置されることが好ましい。
また、搬送ガイド部である突出部58bと基板被覆部材58aとを備える搬送ガイド部材(上部ガイド)58のサイズも、部品コストや装置のコンパクト化の観点から小さいことが好ましい。
【0034】
上述のように、中継基板56における結露による動作不良の発生を防ぐことができるが、ドロワコネクタの接点における接触不良等による不具合も防止する必要がある。
これに対し、本実施形態の定着装置は、各種制御信号を伝達するリード線が中継基板56上のパターン配線により複数に分岐され、ドロワコネクタ55Uに接続されている。
このように、配線の複線化(複数系統化)とその中継基板56の結露防止を実現することにより、装置の信頼性をさらに高めることができる。
【0035】
以下、複線化の構成について説明する。
図2は、実施形態に係る定着装置の温度検知回路の一例を示す図である。
定着装置5に設けられた温度検知手段54は、定着装置の温度を検知する温度検知手段であって、温度により抵抗値が変化するサーミスタ素子54aを有し、その抵抗値の変化により定着部材51の温度を検知する。温度検知手段54としてはここではサーミスタを用いているが、サーミスタに限定されない。温度検知手段54には、制御基板60の制御部61からの電流がドロワコネクタ(以下、定着装置側コネクタ55U及び本体側コネクタ55Hにより構成される態様を単に「ドロワコネクタ55」という)を介して流れる。また、制御部61が、サーミスタ素子54aの抵抗変化によって変化する電圧を検知し、加熱源53の通電を制御することで定着部材51の温度を制御する。
【0036】
ドロワコネクタ55は一対の雄コネクタと雌コネクタで構成され、それぞれのコネクタに設けられた端子部がコネクタ挿入時に接触することで通電される。多数回の挿抜を想定しているドロワコネクタのリード線用の端子は、一般的に、銅から成る基材の表面にニッケルメッキが施し、さらにその表面に金メッキが施されている。
【0037】
この温度検知回路内のドロワコネクタ55の接点部の端子表層の金メッキが剥がれ、下層のニッケルメッキが露出し、これが定着装置近傍による高温高湿な環境に晒されることで、ニッケル酸化物、酸化被膜が生成されることがある。また、接点部にゴミや異物が侵入し、ゴミや異物が原因で接触不良が生じることもある。
【0038】
このような接点部の接触不良が発生し、温度検知信号が正しく伝えられないと、本来の検知温度よりも高い温度又は低い温度を検知することになる。誤って高い温度と検知した場合は、定着装置が本来の目標温度よりも低い温度に制御され、記録媒体上のトナー画像の定着不良が発生し、画像品質が低下してしまう。また誤って低い温度と検知した場合は、定着装置が本来の目標温度よりも高い温度に制御されるので、定着装置の劣化を早めてしまう等の問題が生じる。このような故障状態となった場合、ユーザーやサービスマンが定着装置5を一旦取り外し、清掃作業を行わなければならず、また清掃作業で解決しない場合、定着装置5を交換しなければならなかった。
【0039】
図3は、ドロワコネクタの接点を模式的に表した従来の温度検知回路を示す図である。
ドロワコネクタ55は、定着装置側コネクタ55Uと本体側コネクタ55Hを有し、温度検知手段54と、装置本体の制御基板60の間に配置されている。定着装置側コネクタ55Uは、定着装置5に設置され、本体側コネクタ55Hは画像形成装置本体に設置されている。一般に、温度検知手段としてのサーミスタはリード線を2本有し、リード線は信号線とGND線(アース線)とに分かれている。温度検知手段54のリード線は定着装置側コネクタ55Uに接続されている。リード線の先端に端子があり、本体側コネクタ55Hと定着装置側コネクタ55Uの端子同士が接触している箇所が接点である。温度検知電流は、制御基板60の信号側からドロワコネクタ55の接点65aを介して温度検知手段54の信号側に流れ、サーミスタ素子54a(図3には図示していない)を流れ、温度検知手段54のGND側から再びドロワコネクタ55の別の接点65cを介して制御基板60へ流れる。
【0040】
ここで、ドロワコネクタ55のいずれかの接点(例えば、接点65a)の抵抗が上昇すると、温度検知回路に別の抵抗が加算されるため温度検知が正しくできなくなり、上述のような障害が生じる。
【0041】
図4は、ドロワコネクタの接点を模式的に表した本発明の実施形態に係る温度検知回路を示す図である。
この温度検知回路は、中継基板56を用いた複線化の一例である。具体的には、温度検知手段54とドロワコネクタ55の間に中継基板56が配置されている。温度検知手段54からのリード線である信号線及びGND線は、信号側及びGND側でそれぞれ中継基板56へ接続され、それぞれ2本の信号線及びGND線に分岐され(すなわち、複線化され)、ドロワコネクタ55を通過して制御基板60へと接続されている。温度検知手段54のリード線は中継基板56上のパターン配線により複数に分岐されている。中継基板56を用いることで、従来から用いられている汎用的なドロワコネクタ55を用いることができるので、ドロワコネクタ55を安価に調達できる。制御基板60では制御基板60内のパターン配線により制御部61へは1信号として伝えられる。これに代えて、装置本体側にも中継基板や中継コネクタを用いて2本のリード線を1本のリード線に戻しても良い。また、1又は複数の温度検知手段54が定着装置5に設けられてもよい。
【0042】
以上のように、本実施形態に係る定着装置5は、定着装置の温度を検知する1個又は複数の温度検知手段54と、本体側コネクタ55Hとの端子同士の接触により、温度検知手段54からの温度検知信号を画像形成装置本体に伝える定着装置側コネクタ55Uと、を有し、温度検知手段54のリード線が複数に並列に分岐され、定着装置側コネクタ55Uに接続されている。これにより、着脱可能な定着装置5の温度検知手段54のリード線を画像形成装置本体と接続するコネクタの接点に接触不良が発生した場合でも、温度検知信号を正しく伝達し、それに伴う障害の発生を防止することができる。
【0043】
次に、図5を用いて中継基板56でのリード線の分岐について説明する。図5は、図4に示す中継基板56の概略拡大図である。
温度検知手段54からの1つのリード線は、中継コネクタ56Uを介してそのまま1つのリード線として中継基板56に接続される。そして、各温度検知手段54のリード線である信号線及びGND線はそれぞれ、中継基板56内でのパターン配線により1つの線から2つの線に分岐される。これらの線は複線化され、並列配置されている。中継コネクタ56Dを介して2倍に複線化された信号線及びGND線はドロワコネクタ55に接続される。中継基板56は、中継コネクタ56U及び中継コネクタ56Dを有している。なお、複線化される線数は2倍に限らず、3倍以上であってもよい。
【0044】
再び図4を参照して、ドロワコネクタ55の1つの接点の抵抗が上昇した場合について説明する。
図3の場合と同様に、図4に示す1つの接点65aの抵抗が上昇した場合、信号線が複数化され並列配置されているため、電流は抵抗の低い方に流れる。すなわち、電流は、図中の矢印に示すように、並列配置されたもう一方の接点65bを介して制御基板60まで流れる。この時の電流は、オームの法則で既知の通り、抵抗上昇していないときと同じ値で流れるので温度検知信号は正しく伝達される。この結果、抵抗上昇した接点65aは温度検知回路上で不要となり、定着装置は正しく動作し、障害は発生しない。
【0045】
図6は、ドロワコネクタの接点を模式的に表した本発明の別の実施形態に係る温度検知回路を示す図である。
本実施形態では、温度検知手段54とドロワコネクタ55の間に中継基板56が配置され、温度検知手段54には信号線とGND線がそれぞれ単独に設けられている。それぞれの温度検知手段54からの信号線は中継基板56へ接続され、そこで2本の信号線に分岐され(すなわち、複線化され)、ドロワコネクタ55を通過して制御基板60へと接続されている。一方で、温度検知手段54からの複数のGND線は中継基板56上のパターン配線により互いに接続されている。信号線は検知した温度の信号を伝達するが、GND線は基準として共通である。この温度検知回路では、複数のGND線は共通に使用可能なので、ドロワコネクタ55通過時に互いに並列接続することが可能であり、並列接続することで1個の接点で異常が生じた場合でも、信号線の場合と同様に、電流は正常な接点の方に流れるので、温度を正しく検知できる。例えば本実施形態では、接点65cで抵抗上昇が生じた場合、電流は他の接点65eを介して制御基板60まで流れる。これにより、接点の異常に伴う障害発生が防止でき、信頼性を高めることができる。中継基板56を用いることでGND線の接点を自由に選ぶことができる。GND線の接点は、温度検知手段の数とドロワコネクタの信号数の制約により増減可能である。信号は、温度検知回路の複数のGND線を共通使用してドロワコネクタ55に伝達されるので、ドロワコネクタ上の使用信号線数を増やすことなく前述の効果を得ることができる。また線数を増やしていないので装置の大型化を防止し、費用増大を抑制することができる。中継基板56を用いることで、従来から用いられている汎用的なドロワコネクタ55を用いることができるので、ドロワコネクタ55を安価に調達できる。
【0046】
図7は、定着部材51の温度変化に伴う電圧変化を示す図である。
制御部61により、電圧値を温度検知信号として捉え、加熱源53の通電を制御し、定着部材51を一定温度になるように制御しているので、図示のように、通常は、定着部材51の温度と同期している電圧値は一定の値に制御される。しかし、接点部の抵抗上昇が生じた場合、結果として図7に示すような一時的な電圧暴れ(図中矢印A及びB)が発生する。端子抵抗が正常だった場合の電圧値は図中矢印Cで示している。
温度検知信号が一時的に変動した結果、狙いの温度が正しい値からずれるので一定の振幅で推移していた全体波形にも乱れが生じる。このニッケル酸化物による接触不良が発生するときの接点部の挙動は非常に不安定で、接触抵抗が瞬間的に変化したり、中間的な抵抗値を持ったりするが、大抵の場合は、抵抗上昇に持続性が無く、僅かな振動や定着装置の着脱により正常状態に戻ってしまう。図7の例でも2~3回の抵抗上昇の後に電圧波形は正常状態に戻っているので、温度検知波形も直ぐに一定な温度に対応する波形に戻っている。
【0047】
このように、ニッケル酸化物による接触不良が生じる場合に抵抗が継続的に暴れることは少ないので、接点を並列配置することで、残りの正常な接点を使用できる可能性が高く、これにより温度検知信号を正しく伝えることができる。画像形成装置において接点の抵抗上昇による障害が起こる確率を大幅に減らすことができる。
【0048】
逆に、接点の抵抗上昇が継続的に起こる場合は、複数の接点が同時に抵抗上昇することとなり、そのような場合は複数接点の効果が得られなくなる。
【0049】
図8は、中継基板56の概略構成図である。
図8に示す中継基板56では、図6に示す中継基板56と同様に、信号線は2本の信号線に分岐され(すなわち、複線化され)ている。一方で、GND線は互いに接続されている。
【0050】
なお中継基板56は上述の図12に示したように、保持部材57に保持されている。ネジ取付形状が不要となるので、図8に示す中継基板56のネジ穴70を含む部分を削除することができ、これにより中継基板56を小型化することできる。
【0051】
[加熱装置]
本発明に係る加熱装置は、内部に加熱源を有する加熱部材と、加熱部材に圧接してニップ部を形成する加圧部材と、中継基板と、中継基板を被覆する基板被覆部材と、を備え、基板被覆部材は、加圧部材の方向へ延出する突出部を有する。
【0052】
本発明に係る加熱装置は、上述の定着装置及び画像形成装置に適用することができる。
この態様において、加熱部材は定着部材として機能し、その他の構成は上述の定着装置及び画像形成装置と同様である。
【0053】
本発明に係る加熱装置を適用した定着装置5の要部構成を示す断面図を図9に示す。
本実施形態の定着装置は、内部に加熱源53を有する加熱部材としての定着部材51と、加熱部材である定着部材51に圧接してニップ部Nを形成する加圧部材52と、中継基板56と、中継基板56を被覆する基板被覆部材58aと、を備え、基板被覆部材58aは、加圧部材52の方向へ延出する突出部58bを有する。
【0054】
突出部58bは基板被覆部材58aと一体の部材である搬送ガイド部材58を構成している。搬送ガイド部材58は、加熱装置により加熱される対象をニップ部Nに搬送する部材である。
突出部58bが加熱部材としての定着部材51から放射される熱によって加温されると、一体の部材である搬送ガイド部材58を構成する基板被覆部材58aの温度も上昇する。これにより中継基板56の周囲の温度が上昇するため、中継基板56の表面での結露が防止され、結露付着に起因した障害発生を防ぐことができる。
【0055】
加熱部材は、上述の図1に示す電子写真方式の画像形成装置に設置される態様において、トナー像を加熱して記録媒体Sに定着させる定着部材51であるが、これに限定されない。
本発明に係る加熱装置は、電子写真方式の画像形成装置の他、乾燥装置を備えたインクジェット式の画像形成装置等にも適用することができる。この態様において加熱部材は、記録媒体Sに塗布されたインクを乾燥させる部材となる。
【0056】
また、本発明に係る加熱装置は、上述の定着装置及び画像形成装置の他、熱圧着装置等に適用することができる。
熱圧着装置としては、対象を加熱して圧着させるものであれば特に限定されず、例えば、被覆部材(例えば、フィルム等)を記録媒体等のシート表面に熱圧着するラミネータや、包装材料のシール部を熱圧着するヒートシーラー等が挙げられる。
【符号の説明】
【0057】
5 定着装置
5a 外装部材
51 定着部材
52 加圧部材
53 加熱源
54 温度検知手段
55 ドロワコネクタ
55H 本体側コネクタ
55U 定着装置側コネクタ
56 中継基板
57 保持部材
58 搬送ガイド部材(上部ガイド)
58a 基板被覆部材
58b 突出部
59 搬送ガイド部材(下部ガイド)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0058】
【文献】特開2010-72073号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12