(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】含フッ素重合体および含フッ素重合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08F 14/18 20060101AFI20240110BHJP
【FI】
C08F14/18
(21)【出願番号】P 2020082508
(22)【出願日】2020-05-08
【審査請求日】2023-02-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100168985
【氏名又は名称】蜂谷 浩久
(72)【発明者】
【氏名】岡本 未央
(72)【発明者】
【氏名】民辻 慎哉
(72)【発明者】
【氏名】山本 悠太
【審査官】岡部 佐知子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/230456(WO,A1)
【文献】特開2017-214588(JP,A)
【文献】特開2012-092164(JP,A)
【文献】特表2022-528662(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 14/18
C08F 114/18
C08F 214/18
C08F 2/00-2/60
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1,1,2-トリフルオロ-1-プロペン、1,1,2,3-テトラフルオロ-1-プロペン、および、1,1,2,3,3-ペンタフルオロ-1-プロペンからなる群から選択される少なくとも1種の単量体(a)に基づく単位(a)を有する含フッ素重合体であって、
前記単位(a)の含有量が、前記含フッ素重合体が含む全単位に対して、
80~100モル%である、含フッ素重合体。
【請求項2】
前記含フッ素重合体の融点が100~330℃である、請求項1に記載の含フッ素重合体。
【請求項3】
前記単位(a)の含有量が、前記含フッ素重合体が含む全単位に対して、90~100モル%である、請求項1または2に記載の含フッ素重合体。
【請求項4】
前記含フッ素重合体が、実質的に前記単位(a)からなる、請求項1
~3のいずれか1項に記載の含フッ素重合体。
【請求項5】
前記単位(a)が、1,1,2-トリフルオロ-1-プロペンに基づく単位、1,1,2,3-テトラフルオロ-1-プロペンに基づく単位、および、1,1,2,3,3-ペンタフルオロ-1-プロペンに基づく単位のうち、1種の単位のみからなる、請求項1~
4のいずれか1項に記載の含フッ素重合体。
【請求項6】
請求項1~
5のいずれか1項に記載の含フッ素重合体の製造方法であって、
1,1,2-トリフルオロ-1-プロペン、1,1,2,3-テトラフルオロ-1-プロペン、および、1,1,2,3,3-ペンタフルオロ-1-プロペンからなる群から選択される少なくとも1種の単量体(a)と、重合開始剤と、の存在下で、前記単量体(a)を重合する、含フッ素重合体の製造方法。
【請求項7】
前記単量体(a)の重合が溶媒の存在下で行われ、
前記溶媒と前記単量体(a)の質量の合計に対する、前記単量体(a)の質量の割合が、3~90質量%である、請求項
6に記載の含フッ素重合体の製造方法。
【請求項8】
前記単量体(a)の重合が溶媒を実質的に使用しないで行われる、請求項
7に記載の含フッ素重合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含フッ素重合体および含フッ素重合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
含フッ素重合体は、耐候性、耐熱性および耐薬品性等の性質に優れるので、多様な分野で用いられており、その用途の一例として金属基材や樹脂基材の表面のコーティングが挙げられる。
ここで、基材を構成する材質の種類によっては、基材に対する含フッ素重合体の接着性が不十分になる場合があるので、この問題を改善するために様々な検討がなされている。
例えば、特許文献1の実施例欄において、テトラフルオロエチレン-パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体(以下、「PFA」ともいう。)と、シリカナノ粒子とのフッ素樹脂複合体組成物を用いて得られた成形体は、銅基材に対する接着性に優れると開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したように、特許文献1では、フッ素樹脂複合体組成物の成形体が銅基材に対する接着性が優れることが示されている。しかしながら、シリカナノ粒子等の無機微粒子を用いないで、PFA等の含フッ素重合体のみを用いた場合には、材質の異なる多様な種類の基材に対する接着性の問題が依然として存在している。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされ、多様な種類の基材に対する接着性に優れた含フッ素重合体およびその製造方法の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、特定の単量体に基づく単位を特定量以上含む含フッ素重合体を用いれば、所望の効果が得られることを見出し、本発明に至った。
【0007】
すなわち、発明者らは、以下の構成により上記課題が解決できることを見出した。
[1] 1,1,2-トリフルオロ-1-プロペン、1,1,2,3-テトラフルオロ-1-プロペン、および、1,1,2,3,3-ペンタフルオロ-1-プロペンからなる群から選択される少なくとも1種の単量体(a)に基づく単位(a)を有する含フッ素重合体であって、上記単位(a)の含有量が、上記含フッ素重合体が含む全単位に対して、25~100モル%である、含フッ素重合体。
[2] 上記含フッ素重合体の融点が100~330℃である、[1]の含フッ素重合体。
[3] 上記含フッ素重合体が、実質的に上記単位(a)からなる、[1]または[2]の含フッ素重合体。
[4] 上記単位(a)が、1,1,2-トリフルオロ-1-プロペンに基づく単位、1,1,2,3-テトラフルオロ-1-プロペンに基づく単位、および、1,1,2,3,3-ペンタフルオロ-1-プロペンに基づく単位のうち、1種の単位のみからなる、[1]~[3]のいずれかの含フッ素重合体。
[5] [1]~[4]のいずれかの含フッ素重合体の製造方法であって、1,1,2-トリフルオロ-1-プロペン、1,1,2,3-テトラフルオロ-1-プロペン、および、1,1,2,3,3-ペンタフルオロ-1-プロペンからなる群から選択される少なくとも1種の単量体(a)と、重合開始剤と、の存在下で、上記単量体(a)を重合する、含フッ素重合体の製造方法。
[6] 上記単量体(a)の重合が溶媒の存在下で行われ、上記溶媒と上記単量体(a)の質量の合計に対する、上記単量体(a)の質量の割合が、3~90質量%である、[5]の含フッ素重合体の製造方法。
[7] 上記単量体(a)の重合が溶媒を実質的に使用しないで行われる、[5]の含フッ素重合体の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、多様な種類の基材に対する接着性に優れた含フッ素重合体およびその製造方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明における用語の意味は以下の通りである。
「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
「単位」とは、単量体が重合して直接形成された、上記単量体1分子に由来する原子団と、上記原子団の一部を化学変換して得られる原子団との総称である。「単量体に基づく単位」は、以下、単に「単位」ともいう。
【0010】
〔含フッ素重合体〕
本発明の含フッ素重合体(以下、「特定含フッ素重合体」ともいう。)は、1,1,2-トリフルオロ-1-プロペン(以下、「1243yc」ともいう。)、1,1,2,3-テトラフルオロ-1-プロペン(以下、「1234yc」ともいう。)、および、1,1,2,3,3-ペンタフルオロ-1-プロペン(以下、「1225yc」ともいう。)からなる群から選択される少なくとも1種の単量体(a)に基づく単位(a)を有する。
また、上記単位(a)の含有量は、特定含フッ素重合体が含む全単位に対して、25~100モル%である。
特定含フッ素重合体は、多様な種類の基材に対する接着性に優れる。この理由の詳細は明らかになっていないが、単位(a)が側鎖にC-H結合を有し、所定量の単位(a)を有することで、材質の異なる多様な基材に対して優れた接着性を示したと推測される。
また、特定含フッ素重合体は、単位(a)の主鎖にC-F結合を有するので、耐候性、耐熱性および耐薬品性等に優れるという、従来の含フッ素重合体が有する特徴も備えている。
【0011】
単量体(a)は、1243yc、1234ycおよび1225ycからなる群から選択される少なくとも1種の単量体である。
単量体(a)は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよいが、特定含フッ素重合体の物性を制御しやすい点から、1種単独で用いることが好ましい。
【0012】
特定含フッ素重合体は、1243yc単位、1234yc単位、および、1225yc単位のうち、1種の単位のみを有していてもよいし、2種以上の単位を有していてもよい。中でも、本発明の効果がより優れる点、および、特定含フッ素重合体の物性を制御しやすい点から、1種の単位のみを有することが好ましい。すなわち、特定含フッ素重合体は、1243ycの単独重合体、1234ycの単独重合体、または、1225ycの単独重合体であることが好ましい。
【0013】
単位(a)の含有量は、特定含フッ素重合体が含む全単位に対して、25~100モル%であり、本発明の効果がより優れる点、および、加工性に優れ平坦な膜を形成できる点から、50モル%以上が好ましく、80モル%以上がより好ましく、90モル%以上がさらに好ましく、95モル%以上が特に好ましい。
本発明において、特定含フッ素重合体が含む全単位に対する単位(a)の含有量が95モル%以上であることを、「実質的に単位(a)からなる」ともいう。
【0014】
特定含フッ素重合体は、単量体(a)以外の他の単量体に基づく単位(以下、「他の単位」ともいう。)を有していてもよい。
他の単量体の具体例としては、テトラフルオロエチレン(TFE)、フッ化ビニリデン(VdF)およびヘキサフルオロプロプレン(HFP)等の含フッ素単量体が挙げられる。
他の単位の含有量は、0~75モル%が好ましく、0~50モル%がより好ましく、0~10モル%がさらに好ましく、0~1モル%が特に好ましい。
【0015】
(含フッ素重合体の物性)
特定含フッ素重合体の融点は、100~330℃が好ましく、110~300℃がより好ましく、120~240℃が特に好ましい。
本発明において、含フッ素重合体の融点とは、示差走査熱量計(例えば、DSC204F1(Netsch社製)に準ずる装置)を用い、含フッ素重合体を10℃/分の速度で昇温したときの融解ピークを記録し、含フッ素重合体の融解ピークの最大値に対応する温度(℃)である。
【0016】
特定含フッ素重合体の熱分解温度は、200~500℃が好ましく、220~450℃がより好ましく、240~430℃が特に好ましい。
本発明において、含フッ素重合体の熱分解温度は、熱重量-示差熱分析装置(TG-DTA)(例えば、STA7200(日立ハイテクサイエンス社製)に準ずる装置)を用いて測定される。
【0017】
(含フッ素重合体の用途)
特定含フッ素重合体の用途は特に限定されないが、例えば、半導体産業、自動車産業、化学産業等で用いる各種基材(例えば、金属基材、樹脂基材)のコーティングに使用できる。
特定含フッ素重合体は、これをそのまま成形して成形体として用いてもよいし、特定含フッ素重合体および任意の添加剤(例えば、着色剤、補強剤、帯電防止剤、難燃剤、滑剤等)を含む含フッ素重合体組成物とした後、含フッ素重合体組成物を成形して成形体として用いてもよい。
成形方法の具体例としては、溶融成形、射出成形、押出成形、ブロー成形、プレス成形、回転成形、静電塗装等が挙げられる。
成形体の形状の具体例としては、シート状、チューブ状および立体形状が挙げられる。
【0018】
〔含フッ素重合体の製造方法〕
特定含フッ素重合体の製造方法(以下、「本製造方法」ともいう。)は、上述の単量体(a)と、重合開始剤との存在下で、上記単量体(a)を重合する製造方法である。
【0019】
単量体(a)は、上述の通りであり、市販品として入手可能である。
【0020】
重合開始剤としては、特に限定されないが、単量体(a)の重合性の点から、ラジカル重合開始剤が好ましく、10時間半減期温度が15~150℃のラジカル重合開始剤が特に好ましい。
10時間半減期温度が15~150℃のラジカル重合開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物;イソブチリルペルオキシド、オクタノイルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド等の非フッ素系ジアシルペルオキシド;ジイソプロピルペルオキシジカ-ボネート(以下、「IPP」ともいう。)等のペルオキシジカーボネート;tert-ブチルペルオキシピバレート(以下、「PBPV」ともいう。)、tert-ブチルペルオキシイソブチレート、tert-ブチルペルオキシアセテート等のペルオキシエステル;ビス(ヘプタフルオロブチリル)ペルオキシド(以下、「PFB」ともいう。)等の含フッ素ジアシルペルオキシド;過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;が挙げられる。
重合開始剤は、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
重合開始剤の仕込み量は、単量体(a)の仕込み量100質量部に対して、0.01~10質量部が好ましく、0.05~9質量部がより好ましく、0.07~8質量部が特に好ましい。
【0021】
単量体(a)の重合は、溶媒の存在下で行われてもよい。このような重合方法としては、懸濁重合、溶液重合、乳化重合が挙げられる。
溶媒としては、水および有機溶媒が挙げられ、有機溶媒が好ましい。有機溶媒の具体例としては、フッ素系溶媒および非フッ素系溶媒が挙げられる。有機溶媒は、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0022】
フッ素系有機溶媒の具体例としては、フルオロアルカン、フルオロ芳香族化合物、フルオロアルキルエーテル、フルオロアルキルアミン、フルオロアルコールが挙げられる。
フルオロアルカンは、炭素数4~8の化合物が好ましく、例えば、C6F13H(AC-2000:製品名、AGC社製)、C6F13C2H5(AC-6000:製品名、AGC社製)、C2F5CHFCHFCF3(バートレル:製品名、デュポン社製)が挙げられる。
フルオロ芳香族化合物の具体例としては、ヘキサフルオロベンゼン、トリフルオロメチルベンゼン、ペルフルオロトルエン、1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、1,4-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼンが挙げられる。
フルオロアルキルエーテルは、炭素数4~12の化合物が好ましく、例えば、CF3CH2OCF2CF2H(AE-3000:製品名、AGC社製)、C4F9OCH3(ノベック-7100:製品名、3M社製)、C4F9OC2H5(ノベック-7200:製品名、3M社製)、C2F5CF(OCH3)C3F7(ノベック-7300:製品名、3M社製)が挙げられる。
フルオロアルキルアミンの具体例としては、ペルフルオロトリプロピルアミン、ペルフルオロトリブチルアミンが挙げられる。
フルオロアルコールの具体例としては、2,2,3,3-テトラフルオロプロパノール、2,2,2-トリフルオロエタノール、ヘキサフルオロイソプロパノールが挙げられる。
【0023】
非フッ素系有機溶媒としては、炭化水素系溶媒、ケトン系溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶媒、アルコール系溶媒、アミド系溶媒が挙げられる。
炭化水素系有機溶媒の具体例としては、ヘキサン、へプタン、シクロヘキサンが挙げられる。
ケトン系有機溶媒の具体例としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンが挙げられる。
エーテル系有機溶媒の具体例としては、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラエチレングリコールジメチルエーテルが挙げられる。
エステル系有機溶媒の具体例としては、酢酸エチル、酢酸ブチルが挙げられる。
アルコール系有機溶媒の具体例としては、イソプロピルアルコール、エタノール、n-ブタノールが挙げられる。
アミド系溶媒としては、N,N-ジメチルホルムアミド(以下、「DMF」ともいう。)が挙げられる。
【0024】
中でも、有機溶媒は、AC-2000、AE-3000、DMF等の連鎖移動性の低い有機溶媒が好ましい。
【0025】
単量体(a)の重合が溶媒の存在下で行われる場合において、単量体(a)の重合性の点から、溶媒と単量体(a)の質量の合計に対する、単量体(a)の質量の割合は、3~90質量%が好ましく、5~85質量%がより好ましく、8~70質量%が特に好ましい。
【0026】
単量体(a)の重合は、溶媒を実質的に使用しないで行われてもよい。このような重合方法としては、塊状重合が挙げられる。
本発明において、「溶媒を実質的に使用しない」とは、溶媒と単量体(a)の質量の合計に対する、単量体(a)の質量の割合が90質量%よりも大きい場合を意味する。
【0027】
単量体(a)の重合の際には、単量体(a)、重合開始剤および溶媒以外の他の成分を用いてもよい。
他の成分の具体例としては、上述の他の単量体、連鎖移動剤、重合禁止剤が挙げられる。
【0028】
単量体(a)を重合する際の反応温度は、15~120℃が好ましく、20~80℃が特に好ましい。
単量体(a)の重合する際の反応圧力は、0~2.0MPaが好ましく、0.2~1.5MPaが特に好ましい。
単量体(a)を重合する際の反応時間は、2~72時間が好ましく、5~70時間が特に好ましい。
【実施例】
【0029】
以下、例を挙げて本発明を詳細に説明する。例1~例4は実施例であり、例5~例7は比較例である。ただし本発明はこれらの例に限定されない。
【0030】
〔含フッ素重合体における各単位の含有量〕
含フッ素重合体の全単位に対する各単位の含有量(モル%)は、19F-核磁気共鳴(NMR)分析に基づいて算出した。
【0031】
〔含フッ素重合体の物性〕
含フッ素重合体の物性(熱分解温度および融点)は、上述の方法にて測定した。
【0032】
〔接着性〕
基材と基材の表面に配置された含フッ素重合体とを、シート状の金型に配置して、次の条件で金型のプレヒートを行った。例1~例3においては170℃10分間、例4においては210℃5分間、例5および例6においては270℃5分間、例7においては200℃5分間のプレヒートを行った。
続いて、以下の条件にて基材および含フッ素重合体をプレスして、基材と、含フッ素重合体層とがこの順に積層された積層体を得た。例1~例3においては2MPaの圧力で170℃1分間、例4においては2MPaの圧力で210℃5分間、例5においては2MPaの圧力で320℃5分間、例6においては2MPaの圧力で270℃5分間、例7においては2MPaの圧力で200℃5分間のプレヒートを行った。なお、積層体における含フッ素重合体層の厚さは、50μmであった。
得られた積層体の外観を目視にて確認して、以下の基準により含フッ素重合体の接着性を評価した。
ここで、接着性の評価は、銅板、アルミニウム板、ポリイミドフィルム(ユーピレックス-125S 125μm:製品名、宇部興産社製)、PTFEフィルム、SUS板のそれぞれについて行った。評価結果を表1に示す。
◎:含フッ素重合体層の全体が基材に接着しており、基材からの剥離が確認されない。
○:含フッ素重合体層の一部が基材に接着している。
×:含フッ素重合体層の全体が基材から剥離している。
【0033】
〔例1〕
SUS316製で内容積が30Lの攪拌機付き重合槽(オートクレーブ)内を-40℃まで冷却し、真空ポンプで減圧した。
次に、重合槽内に、AC-2000の13.5g、重合開始剤溶液(IPP:1,3-ジクロロ-1,1,2,2,3-ペンタフルオロプロパン=50:50(質量比)、日油社製)の0.04gを導入した。次に、重合槽内に、1243ycの1.5gをガスの状態で導入した。重合槽を加熱し、重合槽内が60℃になった時点を重合開始時点とした。なお、反応圧力は、0.24MPa(ゲージ圧)とした。重合開始時点から、16時間後、重合槽を冷却し、残留ガスをパージして重合を終了させた。重合槽内のスラリーを取り出し、80℃で12時間真空乾燥し、残存モノマーと残存溶媒を除去して、例1の含フッ素重合体を得た(0.2g、収率15%)。
【0034】
〔例2〕
溶媒を使用せず、各成分の仕込み量を表1の通りに変更した以外は、例1と同様にして、例2の含フッ素重合体を得た。
【0035】
〔例3〕
含フッ素重合体の製造条件を表1の通りに変更した以外は、例1と同様にして、例3の含フッ素重合体を得た。
【0036】
〔例4〕
含フッ素重合体の製造条件を表1の通りに変更し、単量体(a)と同時にTFEをガスの状態で導入した以外は、例1と同様にして、例4の含フッ素重合体を得た。
【0037】
〔例5〕
PFA(ナフロン TOMBO NO.9000PFA:製品名、ニチアス社製、テトラフルオロエチレン-パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体)を例5の含フッ素重合体として用いた。
【0038】
〔例6〕
ETFE(Fluon C-55AXP:製品名、AGC社製、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体)を例6の含フッ素重合体として用いた。
【0039】
〔例7〕
PVDF(ハイラー 301F:製品名、ソルベイ社製、ポリフッ化ビニリデン)を例7の含フッ素重合体として用いた。
【0040】
【0041】
表1に示す通り、単位(a)の含有量が含フッ素重合体が含む全単位に対して25~100モル%である含フッ素重合体は、多様な材質の基材に対する接着性に優れることが確認された(例1~例4)。