(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】アノード水平搬送装置
(51)【国際特許分類】
C25C 7/02 20060101AFI20240110BHJP
C25C 1/12 20060101ALI20240110BHJP
B65G 47/74 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
C25C7/02 302C
C25C1/12
B65G47/74 A
(21)【出願番号】P 2020091083
(22)【出願日】2020-05-26
【審査請求日】2023-01-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000811
【氏名又は名称】弁理士法人貴和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】真壁 祐太
【審査官】祢屋 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-145468(JP,A)
【文献】特開2018-128303(JP,A)
【文献】実公昭50-016004(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25C 7/02
C25C 1/12
B65G 47/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれが一対の耳部を有する複数枚のアノードを、水平方向に搬送するためのアノード水平搬送装置であって、
前記複数枚のアノードの前記一対の耳部のそれぞれを載置可能な搬送面をそれぞれ有し、互いに独立して制御可能な一対のコンベアと、
前記一対のコンベアにより搬送される前記複数枚のアノードのうち、搬送方向先頭に位置するアノードの前記一対の耳部のそれぞれの、前記搬送方向に関する位置を検出する一対のセンサと、
前記一対のセンサのそれぞれによる検出結果に基づいて、前記一対のコンベアのそれぞれの動作を独立して制御する制御器と、
前記搬送方向先頭に位置するアノードを持ち上げるための持ち上げ装置と、
を備える、アノード水平搬送装置。
【請求項2】
前記一対のセンサのそれぞれが、非接触センサにより構成されている、
請求項1に記載のアノード水平搬送装置。
【請求項3】
前記一対のセンサのそれぞれが、レーザセンサにより構成されている、
請求項2に記載のアノード水平搬送装置。
【請求項4】
前記一対のセンサのそれぞれが、レーザを発する発光部と、前記発光部に対向配置され、前記レーザを受光可能な受光部とを有する、
請求項3に記載のアノード水平搬送装置。
【請求項5】
前記一対のコンベアのそれぞれが、チェーンコンベアにより構成されている、
請求項1~4のいずれかに記載のアノード水平搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば、銅電解精製用のアノードを鋳造工程から次工程である整形工程に送る際に、前記アノードを水平方向に搬送するためのアノード水平搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
銅の電解精製では、精製炉において粗銅を酸化精製および還元処理することにより得られた、純度約99.5%の精製粗銅を板状に鋳造した銅板をアノードとして用いる。このアノードと、パーマネントカソードあるいは種板からなるカソードとが、電解槽内に貯えられた電解液内に交互に浸漬される。この状態で、アノードとカソードの間に電圧を印加して、カソードの表面に銅を電着させることにより、純度が99.99%以上である電気銅が得られる。
【0003】
銅の電解精製に用いられるアノードは、精製炉からの溶融粗銅(精製粗銅)を、たとえば、特開2015-123451号公報に記載されている、アノード鋳造機を使用して、鋳造することにより得られる。
図1に示すように、アノード1は、板厚方向から見て略矩形の端面形状を有する板状部2と、その上部両隅部から左右にそれぞれ突出し、通電する際に正極電源と接続する一対の耳部3とからなる構造を有する。
【0004】
鋳造アノードは、次工程である整形工程において形状の矯正を行い、アノードが電解槽での使用時には鉛直方向に懸架される。
【0005】
鋳造アノードを整形工程に送り込む手段としては、鋳造工程の設備と整形工程の設備との位置関係に応じて適切なものを選択することができる。たとえば、実公昭50-16004号公報に記載されているように、鋳造アノードは、フォークリフトにて、アノード整形工程の搬入口にあるアノード搬入装置のアノード受け台まで運搬および載置され、アノード移載台車により、アノード受け台からアノード水平搬送装置のチェーンコンベア上に移載される。アノード水平搬送装置の終端部には、押上装置が備えられ、押し上げられた鋳造アノードは、他のチェーンコンベアなどに下ろされて整形工程に移送される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2015-123451号公報
【文献】実公昭50-16004号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
アノード水平搬送装置の1例を
図2および
図3に概略的に示す。アノード水平搬送装置4は、支持フレーム5と、コンベア6とを備え、アノード1を幅方向両側から支持して搬送する。
【0008】
コンベア6は、アノード水平搬送装置4の幅方向(
図3の左右方向)に関して離隔して配置された一対のコンベアチェーン10を有する複列のチェーンコンベアにより構成される。コンベアチェーン10のそれぞれは、支持フレーム5に回転自在に支持された、従動スプロケット11とテンションスプロケット12と一対のアイドラスプロケット13とにかけ渡される。それぞれのコンベアチェーン10は、従動スプロケット11とテンションスプロケット12とにかけ渡された部分の上面により、アノード1の耳部3を載置可能な搬送面Sを構成している。
【0009】
一対のコンベアチェーン10は、1個の駆動モータ14により駆動される。駆動モータ14の出力軸の回転は、該出力軸に備えられた駆動スプロケット15と、第1駆動チェーン18とを順に介して、中間軸16に伝達される。中間軸16は、幅方向に伸長するように、支持フレーム5に対し回転自在に支持され、第1中間スプロケット17と2つの第2中間スプロケット19とをそれぞれ同軸に備える。第1駆動チェーン18は、駆動スプロケット15と第1中間スプロケット17とにかけ渡されている。
【0010】
中間軸16の回転は、それぞれの第2中間スプロケット19と第2駆動チェーン22とを順に介して、一対の従動軸20に伝達される。従動軸20のそれぞれは、幅方向に伸長するように、支持フレーム5に対し回転自在に支持され、第3中間スプロケット21と従動スプロケット11とをそれぞれ同軸に備える。第2駆動チェーン22のそれぞれは、第2中間スプロケット19と第3中間スプロケット21とにかけ渡されている。従動スプロケット11のそれぞれには、コンベアチェーン10が巻き掛けられている。したがって、1本の中間軸16から一対の従動スプロケット11に回転が伝達されると、一対の従動スプロケット11は、互いに同じ方向かつ同じ速度で回転することになり、一対のコンベアチェーン10は、互いに同じ方向かつ同じ速度で駆動される。
【0011】
アノード水平搬送装置は、一対の被押圧部材7および一対のセンサ8と、押上装置9をさらに備える。
【0012】
被押圧部材7のそれぞれは、搬送面Sのそれぞれの搬送方向(進行方向)終端部に、アノード1の耳部3のそれぞれに対向して配置され、センサ8のそれぞれは、被押圧部材7のそれぞれに対向して配置される。
【0013】
押上装置9は、搬送面Sの搬送方向終端部に位置するアノード1を上方に押し上げる機能を備え、動力シリンダあるいはジャッキなどにより構成される。
【0014】
アノード1は、複数枚ごと、たとえば16枚ごとに、フォークリフトによりアノード受け台23まで運搬される。続いて、アノード移載台車24により、複数枚のアノード1はまとめて、コンベア6の一対の搬送面Sに移載される。具体的には、アノード1の一対の耳部3のそれぞれが、5mm~10mm程度の間隔を空けた状態で幅方向に離隔して配置された搬送面Sのそれぞれに載置される。この状態で、駆動モータ14により、一対のコンベアチェーン10が駆動されると、複数枚のアノード1が搬送される。
【0015】
複数枚のアノード1のうち、搬送方向先頭に位置するアノード1が搬送方向終端部まで移動し、耳部3のそれぞれの表面により、被押圧部材7のそれぞれが押圧され、該被押圧部材7のそれぞれが搬送方向に変位すると、該変位がセンサ8のそれぞれにより検出される。センサ8のそれぞれにより、被押圧部材7のそれぞれの変位が検出されると、図示しない制御器が駆動モータ14を停止する。この状態で、搬送方向先頭に位置するアノード1が、押上装置9により押し上げられ、他のチェーンコンベアなどに移載される。
【0016】
上述のように、複数枚のアノード1は、アノード水平搬送装置4の一対の搬送面S上を、5mm~10mm程度の間隔を空けた状態で搬送される。一対の搬送面Sに載置されたアノード1の間隔は、複数枚のアノード1を、フォークリフトからアノード受け台23に荷下ろしした状態での間隔のままである。ここで、アノード1を、フォークリフトから荷下ろしする際に、アノード1が幅方向に対して傾いた状態、すなわち一対の耳部3のうちの一方の耳部3が他方の耳部3よりも搬送方向前方に位置した状態で、アノード受け台23に載置されてしまう可能性がある。また、アノード1は、鋳造時に反りや曲がりを生じたり、フォークリフトでの搬送中に接触などによって変形を生じたりする場合がある。この場合も、アノード1を一対の搬送面Sに載置した状態で、一方の耳部3が他方の耳部3よりも搬送方向前方に位置してしまう。
【0017】
搬送方向先頭に位置するアノード1が、一対の耳部3のうちの一方の耳部3が他方の耳部3よりも搬送方向前方に位置した状態で、一対の搬送面Sに載置され、搬送方向終端付近まで移動すると、まず一方の耳部3に対向配置された一方の被押圧部材7が一方の耳部3により押圧され、一方の被押圧部材7の変位が一方のセンサ8により検出される。この状態では、他方の耳部3は、まだ搬送方向終端部まで達していないため、引き続き駆動モータ14により一対のコンベアチェーン10を駆動し、他方の耳部3を搬送方向終端部まで移動させ、アノード1の幅方向に対する傾きを修正する。
【0018】
このとき、搬送方向先頭に位置するアノード1の一方の耳部3は被押圧部材7により搬送方向前方への変位(前進)を阻止される。しかしながら、2番目以降のアノード1の一方の耳部3は、搬送方向前方に移動(前進)し続ける。この結果、アノード1同士が接近し、間隔が狭くなる可能性がある。アノード1同士の間隔が狭くなると、押上装置9により、搬送方向先頭に位置するアノード1を押し上げる際に、作業不良が発生してアノード1が落下するなどし、アノード水平搬送装置4を停止する必要が生じる可能性がある。アノード1は、1枚あたり、400kg~500kgの重量を有するため、復旧作業に時間を要する可能性がある。
【0019】
本発明は、上述のような事情を鑑みて、一対の搬送面に載置されたアノードが徒に接近して、間隔が狭くなることを防止できるアノード水平搬送装置の構造を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明のアノード水平搬送装置は、それぞれが一対の耳部を有する複数枚のアノードを、水平方向に搬送するための装置であって、
前記複数枚のアノードの前記一対の耳部のそれぞれを載置可能な搬送面をそれぞれ有し、互いに独立して制御可能な一対のコンベアと、
前記一対のコンベアにより搬送される前記複数枚のアノードのうち、搬送方向先頭に位置するアノードの前記一対の耳部のそれぞれの、前記搬送方向に関する位置を検出する一対のセンサと、
前記一対のセンサのそれぞれによる測定結果に基づいて、前記一対のコンベアのそれぞれの動作を独立して制御する制御器と、
前記搬送方向先頭に位置するアノードを持ち上げるための持ち上げ装置と、
を備える。
【0021】
前記一対のセンサのそれぞれは、レーザセンサまたは超音波センサ、赤外線センサなどの非接触センサにより構成することができる。
【0022】
前記一対のセンサのそれぞれは、レーザを発する発光部と、前記発光部に対向配置され、前記レーザを受光可能な受光部とを有することができる。換言すれば、前記一対のセンサのそれぞれは、透過型(対向型)のレーザセンサにより構成することができる。
【0023】
ただし、前記一対のセンサのそれぞれは、レーザを発する発光部と、前記アノードに反射した前記レーザを受光可能な受光部とを有する反射型のレーザセンサにより構成することもできる。
【0024】
前記一対のコンベアのそれぞれは、チェーンコンベアにより構成することができる。
ただし、前記一対のコンベアのそれぞれは、ベルトコンベアにより構成することもできる。
【発明の効果】
【0025】
本発明のアノード水平搬送装置によれば、一対の搬送面に載置されたアノードが徒に接近して、間隔が狭くなることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】
図1は、銅電解用アノードの概略正面図である。
【
図2】
図2は、既設のアノード水平搬送装置を、アノード受け台およびアノード移載台車とともに、搬送方向(前方)を右側とした状態で示す、概略側面図である。
【
図3】
図3は、既設のアノード搬入装置を搬送方向(前方)から見た概略正面図である。
【
図4】
図4は、本発明の実施の形態の1例のアノード水平搬送装置を、搬送方向(前方)を右側とした状態で示す、概略側面図である。
【
図5】
図5は、本発明の実施の形態の1例のアノード水平搬送装置を、搬送方向(前方)から見た略正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の実施の形態の1例について、
図4および
図5を参照しつつ説明する。
【0028】
アノード水平搬送装置4aは、床面に載置される支持フレーム5aと、一対のコンベア6aと、一対のセンサ8aと、制御器25と、持ち上げ装置26とを備える。
【0029】
一対のコンベア6aは、複数枚のアノード1の一対の耳部3のそれぞれを載置可能な搬送面Sをそれぞれ有し、互いに独立して制御可能に構成される。本例では、コンベア6aのそれぞれは、従動スプロケット11a、テンションスプロケット12aおよび一対のアイドラスプロケット13aと、コンベアチェーン10aと、駆動モータ14aと、動力伝達機構27とを備える、チェーンコンベアにより構成される。ただし、一対のコンベアのそれぞれは、コンベアベルトを有するベルトコンベアにより構成することもできる。また、アイドラスプロケットは、省略することもできる。
【0030】
従動スプロケット11aは、支持フレーム5aに回転自在に支持され、幅方向(
図4の表裏方向、
図5の左右方向)に伸長する従動軸20aの軸方向内側(アノード水平搬送装置4aの幅方向に関する内側)の端部に支持固定される。テンションスプロケット12aおよび一対のアイドラスプロケット13aのそれぞれは、支持フレーム5aに回転自在に支持され、幅方向に伸長する回転軸に支持固定される。従動スプロケット11a、テンションスプロケット12aおよび一対のアイドラスプロケット13aは、幅方向から見て上辺が下辺よりも長い台形の頂点に配置される。具体的には、上辺の両端に、従動スプロケット11aおよびテンションスプロケット12aが配置され、かつ、下辺の両端に、一対のアイドラスプロケット13aが配置される。
【0031】
コンベアチェーン10aは、従動スプロケット11aと、テンションスプロケット12aと、一対のアイドラスプロケット13aとにかけ渡される。搬送面Sは、コンベアチェーン10aのうち、従動スプロケット11aとテンションスプロケット12aとにかけ渡された部分の上面により構成される。
【0032】
コンベアチェーン10aは、動力伝達機構27を介して駆動モータ14aにより駆動される。動力伝達機構27は、駆動スプロケット15a、第1中間スプロケット17a、第2中間スプロケット19a、第3中間スプロケット21aおよび従動スプロケット11aと、第1駆動チェーン18aおよび第2駆動チェーン22aとを備える。
【0033】
駆動スプロケット15aは、駆動モータ14aの出力軸に支持固定され、第1中間スプロケット17aと第2中間スプロケット19aとは、支持フレーム5aに回転自在に支持され、幅方向に伸長する中間軸16aに支持固定され、および、第3中間スプロケット21aと従動スプロケット11aは、従動軸20aに支持固定される。第1駆動チェーン18aは、駆動スプロケット15aと第1中間スプロケット17aとにかけ渡され、および、第2駆動チェーン22aは、第2中間スプロケット19aと第3中間スプロケット21aとにかけ渡される。
【0034】
したがって、駆動モータ14aを回転駆動することにより、駆動スプロケット15aが回転駆動されると、該駆動スプロケット15aの回転は、第1駆動チェーン18aにより第1中間スプロケット17aに伝達される。第1中間スプロケット17aの回転に伴い、第2中間スプロケット19aが回転すると、第2中間スプロケット19aの回転は、第2駆動チェーン22aにより第3中間スプロケット21aに伝達される。第3中間スプロケット21aの回転に伴い、従動スプロケット11aが回転し、該従動スプロケット11aに巻きかけられたコンベアチェーン10aが駆動される。
【0035】
一対のセンサ8aのそれぞれは、一対のコンベア6aにより搬送される複数枚のアノード1のうち、搬送方向(進行方向)に関して先頭に位置する(
図4の最も右側に位置する)アノード1の一対の耳部3のそれぞれの、搬送方向に関する位置を検出する。具体的には、センサ8aのそれぞれは、耳部3のそれぞれが、搬送方向終端部まで達したかを検出できれば足りる。
【0036】
本例では、センサ8aのそれぞれは、搬送面Sよりも上方に支持され、搬送方向終端部に位置する耳部3に向けてレーザLを発する発光部28と、搬送面Sよりも下方に支持され、レーザLを受光可能に発光部28に対向配置された受光部29とを備える、透過型(対向型)のレーザセンサにより構成される。耳部3が搬送方向終端部まで移動すると、発光部28から発せられたレーザLが耳部3により遮られるため、受光部29はレーザLを受光できなくなる。受光部29は、レーザLの受光の有無を示す信号を制御器25に出力する。
【0037】
制御器25は、一対のコンベア6aのそれぞれの動作を独立して制御する機能を有する。具体的には、センサ8aから耳部3が搬送方向終端部まで達したことに相当する信号を受信したら、該信号を受信した側であるコンベア6aの駆動モータ14aのみを停止して、コンベア6aの動作を一時停止する。
【0038】
持ち上げ装置26は、搬送方向終端部に位置するアノード1を上方に持ち上げるための装置である。持ち上げ装置26は、たとえば動力シリンダあるいはジャッキなどにより構成され、板状部2または一対の耳部3の下面を上方に押し上げることで、搬送方向終端部に位置するアノード1を上方に持ち上げる。
【0039】
アノード水平搬送装置4aにより、アノード1を水平方向に搬送する手順について説明する。
【0040】
アノード1は、複数枚ごと、たとえば16枚ごとに、フォークリフトによりアノード受け台23(
図2参照)まで運搬され、アノード移載台車24により、アノード水平搬送装置4aの一対の搬送面Sに載置される。この状態で、両方のコンベア6aの駆動モータ14aにより、それぞれのコンベアチェーン10aを、互いに同じ方向かつ同じ速度で駆動し、複数枚のアノード1を、搬送方向前方に向けて搬送する。
【0041】
複数枚のアノード1のうち、搬送方向先頭に位置するアノード1が搬送方向終端部まで移動すると、まず、一方のセンサ8aが、一方の耳部3が搬送方向終端部まで達したことを検出する。制御器25は、一方のセンサ8aから一方の耳部3が搬送方向終端部まで達したことを知らせる信号を受信したら、該信号を受信した側である一方のコンベア6aの駆動モータ14aのみを停止することで、一方のコンベア6aの動作のみを停止する。これにより、一方のコンベア6aの搬送面Sに載置された耳部3がそれ以上搬送方向前方に移動することが阻止される。このとき、他方のコンベア6aは、動作を続ける。
【0042】
制御器25は、他方のセンサ8aから他方の耳部3が搬送方向終端部まで達したことを知らせる信号を受信したら、他方のコンベア6aの駆動モータ14aを停止することで、他方のコンベア6aの動作を停止する。これにより、他方のコンベア6aの搬送面Sに載置された耳部3がそれ以上搬送方向前方に移動することが防止される。
【0043】
制御器25は、両方のコンベア6aの動作を停止したら、持ち上げ装置26に、搬送方向終端部に位置するアノード1を持ち上げるよう指示する。持ち上げ装置26により上方に持ち上げられたアノード1は、移載装置により他のチェーンコンベアなどに移載される。
【0044】
本例のアノード水平搬送装置4aによれば、一対のコンベア6aのそれぞれを独立して制御することができるため、一対の搬送面Sに載置された複数枚のアノード1が徒に接近して、間隔が狭くなることを防止できる。
【0045】
制御器25は、一方のセンサ8aから一方の耳部3が搬送方向終端部まで達したことを知らせる信号を受信したら、該信号を受信した側である一方のコンベア6aの動作のみを停止し、一方のコンベア6aの搬送面Sに載置された耳部3がそれ以上搬送方向前方に移動することを防止する。この状態で、他方のコンベア6aは動作を続け、他方の耳部3が搬送方向終端部まで達すると、他方のセンサ8aからの信号に基づいて、制御器25は、他方のコンベア6aの動作を停止する。これにより、アノード1の幅方向に対する傾きを修正することができる。
【0046】
したがって、
図2および
図3に示したアノード水平搬送装置4とは異なり、アノード1の幅方向に対する傾きを修正するために、一方の耳部3が搬送方向終端部まで達した後は、一対のコンベアチェーン10aを駆動し続ける必要がない。このため、搬送方向先頭のアノード1の一方の耳部3が搬送方向終端部まで達した後については、2番目以降のアノード1の一方の耳部3が搬送方向前方に移動することがないので、アノード1同士が接近し、間隔が徒に狭くなることを防止することができる。このため、持ち上げ装置26により、アノード1を持ち上げる際の作業不良の発生を防止することができる。
【0047】
本例では、アノード1の耳部3のそれぞれが、搬送方向終端部まで達したかを検出するためのセンサ8aのそれぞれは、非接触センサであるレーザセンサにより構成される。このため、耳部3のそれぞれの位置検出精度を長期にわたって高く確保することができる。
【0048】
図2および
図3に示したアノード水平搬送装置4では、アノード1の耳部3のそれぞれにより被押圧部材7が押圧され、該被押圧部材7の変位をセンサ8により検出することで、耳部3のそれぞれが搬送方向終端部まで達したかを検出していた。耳部3のそれぞれが搬送方向終端部まで移動することによって、耳部3のそれぞれが被押圧部材7に繰り返し接触(衝突)すると、被押圧部材7の表面が摩耗する。このような被押圧部材7の表面の摩耗が著しくなると、耳部3のそれぞれが搬送方向終端部まで達したかの検出精度が低下する可能性がある。この検出精度が低下すると、アノード1の移動量が過大になって、持ち上げ装置26によりアノード1を持ち上げる際に、作業不良を起こしたり、アノード1の間隔が徒に狭くなったりする可能性がある。また、摩耗粉が発生し、コンベア6aや持ち上げ装置26が動作不良を起こす可能性がある。本例では、センサ8aのそれぞれが、非接触センサであるレーザセンサにより構成されるため、
図2および
図3に示したアノード水平搬送装置4とは異なり、被押圧部材7の摩耗に起因する問題は生じない。
【0049】
さらに、本例では、センサ8aのそれぞれが、対向型のレーザセンサにより構成されるため、アノード1の表面が錆の発生などにより光沢度および反射率が低い場合でも、耳部3のそれぞれの位置検出精度を十分確保することができる。
【0050】
ただし、アノードの一対の耳部のそれぞれが、搬送方向終端部まで達したかを検出するためのセンサは、反射型のレーザセンサにより構成することもできるし、超音波センサや赤外線センサなど、レーザセンサ以外の非接触センサにより構成することもできる。あるいは、圧力センサなどの接触センサにより、耳部のそれぞれが搬送方向終端部まで達したかを検出することもできる。
【符号の説明】
【0051】
1 アノード
2 板状部
3 耳部
4、4a アノード水平搬送装置
5、5a 支持フレーム
6、6a コンベア
7 被押圧部材
8、8a センサ
9 押上装置
10、10a コンベアチェーン
11、11a 従動スプロケット
12、12a テンションスプロケット
13、13a アイドラスプロケット
14、14a 駆動モータ
15、15a 駆動スプロケット
16、16a 中間軸
17、17a 第1中間スプロケット
18、18a 第1駆動チェーン
19、19a 第2中間スプロケット
20、20a 従動軸
21、21a 第3中間スプロケット
22、22a 第2駆動チェーン
23 アノード受け台
24 アノード移載台車
25 制御器
26 持ち上げ装置
27 動力伝達機構
28 発光部
29 受光部