(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】割裂接着強さ試験機
(51)【国際特許分類】
G01N 3/00 20060101AFI20240110BHJP
G01N 19/04 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
G01N3/00 Q
G01N19/04 D
(21)【出願番号】P 2020126399
(22)【出願日】2020-07-27
【審査請求日】2023-02-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【氏名又は名称】松浦 憲三
(72)【発明者】
【氏名】上田 俊司
(72)【発明者】
【氏名】森岡 康司
【審査官】鴨志田 健太
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-073863(JP,A)
【文献】特開2003-073631(JP,A)
【文献】特開2009-257904(JP,A)
【文献】特開2017-128653(JP,A)
【文献】特開2001-091446(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0025091(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0258862(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 3/00
G01N 19/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の主面と、前記第1の主面と反対側に位置する第2の主面と、を有する板状の第1被着体と、
第3の主面と、前記第3の主面と反対側に位置する第4の主面と、を有する板状の第2被着体と、
前記第1被着体の前記第1の主面に取り付けられる第1支持部と、
前記第2被着体の前記第4の主面に取り付けられる第2支持部と、
前記第1被着体の前記第2の主面と、前記第2被着体の前記第3の主面との間に介在する接着剤と、
移動機構部と、
を備える割裂接着強さ試験機であって、
前記第1被着体及び前記第2被着体は、ともに短冊形状に形成され、かつ、長手方向において互いに直交する姿勢で前記接着剤により接着され、
前記第1支持部は、第1軸受部と、前記第1軸受部に対し第1水平軸を中心に回転自在に設けられた第1ピンと、を有し、
前記第2支持部は、第2軸受部と、前記第2軸受部に設けられ、前記第1水平軸と平行な第2水平軸を中心に回転自在に設けられた第2ピンと、を有し、
前記第2支持部は、前記第1支持部に対し鉛直方向下側に配置され、
前記移動機構部は、前記第1ピン及び前記第2ピンのうち一方のピンに連結された固定部と、前記第1ピン及び前記第2ピンのうち他方のピンに連結され、前記一方のピンに対して前記他方のピンを鉛直方向において離間する方向に駆動する駆動部と、を有し、
前記移動機構部によって、前記第1支持部と前記第2支持部とは鉛直方向において相対的に離間する方向に移動される、割裂接着強さ試験機。
【請求項2】
前記第2支持部は、前記第2被着体の前記第4の主面に接する下台を備え、
前記下台は、前記第2被着体を着脱自在に保持する第2保持部材を有する、請求項
1に記載の割裂接着強さ試験機。
【請求項3】
前記第1支持部は、前記第1被着体の前記第1の主面に接する上台を備え、
前記上台は、前記第1被着体を着脱自在に保持する第1保持部材を有する、請求項
1又は2に記載の割裂接着強さ試験機。
【請求項4】
第1の主面と、前記第1の主面と反対側に位置する第2の主面と、を有する板状の第1被着体と、
第3の主面と、前記第3の主面と反対側に位置する第4の主面と、を有する板状の第2被着体と、
前記第1被着体の前記第1の主面に取り付けられる第1支持部と、
前記第2被着体の前記第4の主面に取り付けられる第2支持部と、
前記第1被着体の前記第2の主面と、前記第2被着体の前記第3の主面との間に介在する接着剤と、
移動機構部と、
を備える割裂接着強さ試験機であって、
前記第1支持部は、第1軸受部と、前記第1軸受部に対し第1水平軸を中心に回転自在に設けられた第1ピンと、を有し、
前記第2支持部は、第2軸受部と、前記第2軸受部に設けられ、前記第1水平軸と平行な第2水平軸を中心に回転自在に設けられた第2ピンと、を有し、
前記第2支持部は、前記第1支持部に対し鉛直方向下側に配置され、
前記第2支持部は、前記第2被着体の前記第4の主面に接する下台を備え、
前記下台は、前記第2被着体を着脱自在に保持する第2保持部材を有
し、
前記移動機構部は、前記第1ピン及び前記第2ピンのうち一方のピンに連結された固定部と、前記第1ピン及び前記第2ピンのうち他方のピンに連結され、前記一方のピンに対して前記他方のピンを鉛直方向において離間する方向に駆動する駆動部と、を有し、
前記移動機構部によって、前記第1支持部と前記第2支持部とは鉛直方向において相対的に離間する方向に移動される、割裂接着強さ試験機。
【請求項5】
前記第1支持部は、前記第1被着体の前記第1の主面に接する上台を備え、
前記上台は、前記第1被着体を着脱自在に保持する第1保持部材を有する、請求項
4に記載の割裂接着強さ試験機。
【請求項6】
第1の主面と、前記第1の主面と反対側に位置する第2の主面と、を有する板状の第1被着体と、
第3の主面と、前記第3の主面と反対側に位置する第4の主面と、を有する板状の第2被着体と、
前記第1被着体の前記第1の主面に取り付けられる第1支持部と、
前記第2被着体の前記第4の主面に取り付けられる第2支持部と、
前記第1被着体の前記第2の主面と、前記第2被着体の前記第3の主面との間に介在する接着剤と、
移動機構部と、
を備える割裂接着強さ試験機であって、
前記第1支持部は、第1軸受部と、前記第1軸受部に対し第1水平軸を中心に回転自在に設けられた第1ピンと、を有し、
前記第2支持部は、第2軸受部と、前記第2軸受部に設けられ、前記第1水平軸と平行な第2水平軸を中心に回転自在に設けられた第2ピンと、を有し、
前記第2支持部は、前記第1支持部に対し鉛直方向下側に配置され、
前記第1支持部は、前記第1被着体の前記第1の主面に接する上台を備え、
前記上台は、前記第1被着体を着脱自在に保持する第1保持部材を有
し、
前記移動機構部は、前記第1ピン及び前記第2ピンのうち一方のピンに連結された固定部と、前記第1ピン及び前記第2ピンのうち他方のピンに連結され、前記一方のピンに対して前記他方のピンを鉛直方向において離間する方向に駆動する駆動部と、を有し、
前記移動機構部によって、前記第1支持部と前記第2支持部とは鉛直方向において相対的に離間する方向に移動される、割裂接着強さ試験機。
【請求項7】
前記第1軸受部と及び前記第2軸受部との間には、前記接着剤が介在していない、請求項
1から6のいずれか1項に記載の割裂接着強さ試験機。
【請求項8】
前記接着剤の厚み方向の中心線を水平方向に仮想線を延ばしたときに、前記第1軸受部の中心から前記仮想線までの鉛直方向の長さと、前記第2軸受部の中心から前記仮想線までの鉛直方向の長さが同じである、請求項
1から
7のいずれか1項に記載の割裂接着強さ試験機。
【請求項9】
前記第2被着体は、ガラス板である、請求項1から
8のいずれか1項に記載の割裂接着強さ試験機。
【請求項10】
前記第1被着体は、樹脂板である、請求項1から
9のいずれか1項に記載の割裂接着強さ試験機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、割裂接着強さ試験機に関する。
【背景技術】
【0002】
接着剤の剥離強度を測定する測定方法として、例えば、JIS K 6853:1994に規定された割裂接着強さ試験が知られている。
【0003】
上記の試験では、一対の被着体(「試験片」とも言う。)を準備して、一対の被着体の対向面同士を接着剤によって接着する。その後、一対の被着体に荷重を掛けて接着剤が破壊するとき、又は接着剤が被着体から剥離するときの最大荷重を測定することで接着剤の剥離強度を測定する。
【0004】
特許文献1には、接着テープの接着力を計るための剥離試験機の一例が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、ガラス板のうち、例えば自動車用の窓ガラスは、ルームミラーはもとより、ドライブレコーダー用の車載カメラや雨滴感知センサ等の付属部材が備えられている。これらの付属部材は、一般的に接着剤によって窓ガラスに接着されている。よって、このような窓ガラスでは、窓ガラスに対する付属部材の接着力を評価することが望ましい。
【0007】
しかしながら、JIS K 6853:1994で規定されたような割裂接着強さ試験機は、被着体として金属製のブロック体を使用しており、例えばガラス板のような脆性材料からなる実部材を被着体として使用する場合、被着体を特許文献1に開示されているようなJIS K 6853:1994に準拠した試験片の形状に加工することは極めて困難である。つまり、従来の割裂接着強さ試験機では、実部材に対する接着剤の剥離強度を測定するものがなかった。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、被着体として実部材を適用した場合でもJIS K 6853:1994に準拠した割裂接着強さ試験を実施できる割裂接着強さ試験機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の割裂接着強さ試験機は、上記の目的を達成するために、第1の主面と、第1の面と反対側に位置する第2の主面と、を有する板状の第1被着体と、第3の主面と、第3の面と反対側に位置する第4の主面と、を有する板状の第2被着体と、第1被着体の第1の主面に取り付けられる第1支持部と、第2被着体の第4の主面に取り付けられる第2支持部と、第1被着体の第2の主面と、第2被着体の第3の主面との間に介在する接着剤と、移動機構部と、を備える割裂接着強さ試験機であって、第2支持部は、第1支持部に対し鉛直方向下側に配置され、移動機構部によって、第1支持部と第2支持部とは鉛直方向において相対的に離間する方向に移動される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、被着体として実部材を適用した場合でもJIS K 6853:1994に準拠した割裂接着強さ試験を実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1実施形態に係る割裂接着強さ試験機を斜め上方から見た斜視図
【
図2】
図1に示した割裂接着強さ試験機の組立斜視図
【
図4】
図1に示した割裂接着強さ試験機の動作説明図
【
図5】スペーサの軸長を変更して牽引角度を変更した割裂接着強さ試験機の説明図
【
図6】力点と作用点との水平方向距離Lを変更した割裂接着強さ試験機の説明図
【
図7】第2実施形態に係る割裂接着強さ試験機を斜め上方から見た斜視図
【
図9】第3実施形態に係る割裂接着強さ試験機を斜め上方から見た斜視図
【
図11】ブラケットが接着剤によって第2被着体に接着された斜視図
【
図12】第4実施形態に係る割裂接着強さ試験機を斜め上方から見た斜視図
【
図14】実部材が接着剤によって第2被着体に接着された斜視図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面に従って本発明に係る割裂接着強さ試験機の実施形態について説明する。
【0013】
図1は、第1実施形態に係る割裂接着強さ試験機10を斜め上方から見た斜視図、
図2は、割裂接着強さ試験機10の組立斜視図、
図3は、割裂接着強さ試験機10の側面図である。この割裂接着強さ試験機10は、後述するように被着体として実部材(例えば、ガラス板及び樹脂板)を適用した場合でもJIS K 6853:1994に準拠した試験を実施可能とした試験機であり、以下の構成を有する。
【0014】
すなわち、割裂接着強さ試験機10は、
図1乃至
図3に示すように、第1支持部12と、下台14を備える第2支持部16と、移動機構部18(
図3参照)とを備えている。また、割裂接着強さ試験機10は、実部材に相当する第1被着体20と第2被着体24とを備え、かつ、第1被着体20の下面20bと第2被着体24の上面24aとの間に介在して、第1被着体20と第2被着体24とを接着する接着剤22を備えている。
【0015】
第1被着体20は、上面20aと、上面20aの反対側に位置する下面20bとを有し、上面20aに第1支持部12が取り付けられる。ここで上面20aは第1の主面、下面20bは第2の主面に相当する。第2被着体24は、上面24aと、上面24aの反対側に位置する下面24bとを有し、下面24bに第2支持部16が取り付けられる。ここで上面24aは第3の主面、下面24bは第4の主面に相当する。なお、第2被着体24の下面24bに第2支持部16を直接取り付けてもよい。第2支持部16は、第1支持部12に対し矢印Vで示す鉛直方向の下側に配置されている。移動機構部18は、第1支持部12と第2支持部16とを鉛直方向Vにおいて相対的に離間する方向に移動させる機能を有している。以下、割裂接着強さ試験機10の具体的な構成を説明する。
【0016】
第1支持部12は、
図2に示すように、一例として短冊状に形成された第1被着体20の上面20aの右側、すなわち、接着剤22が取り付けられている第1被着体20の下面20bの反対側の端部の上面20aに取り付けられる。この第1支持部12は、上面20aから上方に突設された高さ調整用のスペーサ26と、このスペーサ26の上部に設けられた環状の第1軸受部28と、第1軸受部28に挿入されて矢印H1(
図2参照)で示す水平軸を中心に回転自在に設けられた第1ピン30と、を有している。
【0017】
スペーサ26は、第1被着体20に物理的に取り付けられている。例えば、スペーサ26は、ネジによって構成されており、第1被着体20に孔、もしくは凹部を設け、第1被着体20の上面20aに対し鉛直方向Vに沿って螺入されていてもよい。スペーサ26が第1被着体20に螺入されている場合、スペーサ26の螺入量を調整すれば、鉛直方向Vにおける第1軸受部28の位置を調整でき、これによって、後述の割裂中心軸Pと水平軸H1(第1軸受部28の中心に相当)との鉛直方向の長さd1を調整できる。なお、スペーサ26は第1被着体20とは、螺入以外の方法で取り付けられていてもよい。スペーサ26に爪を設け、第1被着体20に設けた孔、又は凹部と係合させてもよい。また、スペーサ26は第1被着体20の上面20aとは接着剤22よりも接着力の強い接着剤で取り付けられていてもよい。この場合、スペーサ26の高さを調整すれば、鉛直方向Vにおける第1軸受部28の位置を調整することができる。
【0018】
上記の割裂中心軸Pとは、接着剤22の厚み方向Tの中心線を水平方向に延ばした仮想線である。また、上記の長さd1の調整に関しては、ネジによる螺入量調整に限定されるものではなく、軸長の異なる複数本のスペーサ26を揃えておき、その中から選択した長さのものを上面20aに取り付けて長さ調整を行うようにしてもよい。
【0019】
第2支持部16は、第2被着体24の下面24bに接する下台14を備えている。この下台14は、一例として矩形状に構成された金属板であり、その上面14aには、第2被着体24を着脱自在に保持する保持部材32が備えられる。保持部材32は、第2保持部材に相当する。
図2に示すように、第2保持部材は、一対の保持部材32、32であってもよい。
【0020】
第2被着体24は、一例として短冊状に構成されており、その長手方向が第1被着体20の長手方向と直交するように、上記の一対の保持部材32、32によってその両端部分が上面14aに固定されている。また、第2被着体24は、長手方向の中央部の上面24aが、第1被着体20の左側の下面20bに上記の接着剤22によって接着されている。これにより、第1被着体20と第2被着体24とは上面視においてT字状に接着されている。
【0021】
また、第2支持部16は、下台14の下面14bに設けられた一対の環状の第2軸受部34、34と、第2軸受部34、34に挿入されて、水平軸H1と平行な水平軸H2を中心に回転自在に設けられた第2ピン36と、を有している。また、本例の割裂接着強さ試験機10においては、第2軸受部34、34と第1軸受部28との間に接着剤22が介在しない構成となっている。
【0022】
移動機構部18は、第2ピン36に連結された固定部38と、第1ピン30に連結され、第2ピン36に対して第1ピン30を鉛直方向Vにおいて離間する上方向に駆動する駆動部40と、を有している。なお、第2ピン36に駆動部40を連結し、第1ピン30に固定部38を連結してもよい。また、固定部38としては、第2ピン36又は第1ピン30を移動不能に固定する構造体が適用される。また、駆動部40は、油圧シリンダ等の牽引装置と、牽引装置で検出した荷重を測定する荷重測定部(不図示)とを含んでいる。
【0023】
次に、上記の如く構成された割裂接着強さ試験機10を用いて接着剤22の剥離強度を測定する測定方法の一例について説明する。
【0024】
本例の測定方法は、実部材を用いて試験を行うために、第1被着体20として合成樹脂製の樹脂板を使用し、第2被着体24としてガラス板を使用した。換言すれば、本例の試験は、例えば、自動車用の窓ガラスに接着された合成樹脂製の付属部品の剥離強度を評価する試験に相当する。
【0025】
まず、
図1に示すように、第2被着体24を下台14に保持部材32、32を用いて固定し、その後、
図3に示すように、第1被着体20と第2被着体24とを接着剤22によって接着する。
【0026】
次に、
図3に示すように、鉛直方向Vにおいて、割裂中心軸Pから水平軸H1までの長さd1が、割裂中心軸Pから水平軸H2までの長さd2と等しくなるように第1軸受部28の高さをスペーサ26によって調整する。
【0027】
次に、第2ピン36を固定部38に連結して移動不能とし、第1ピン30を駆動部40に連結する。以上で、測定準備が完了する。
【0028】
この後、駆動部40を駆動して第1ピン30を上昇させていく。そうすると、駆動部40の力は、
図4の4Aで示すように、接着剤22において割裂中心軸Pの右端の始点部P1に作用することから、
図4の4Bで示すように、始点部P1に亀裂が発生する。そして、駆動部40により第1ピン30の上昇を継続していくと、接着剤22は、割裂中心軸Pに沿って裂かれていき、結果的に
図4の4Cで示すように、接着剤22が割裂中心軸Pに沿って分断される。一方、荷重測定部は、接着剤22が破壊していくときの荷重を検出しており、上記の分断後に最大荷重を出力する。以上で、実部材を使用した場合の剥離強度試験が終了する。
【0029】
上記のように、第1実施形態の割裂接着強さ試験機10は、第1被着体20の上面20aに取り付けられる第1支持部12と、第1支持部12に対して鉛直方向下側に配置され、かつ、第2被着体24の下面24bに取り付けられる第2支持部16と、第1被着体20と第2被着体24とを接着する接着剤22と、移動機構部18と、を備えているので、第1被着体20及び第2被着体24として実部材を適用した場合でもJIS K 6853:1994に準拠した割裂接着強さ試験を実施できる。
【0030】
また、第1実施形態の割裂接着強さ試験機10では、例えば、
図5に示すように、第1ピン30(力点)と始点部P1(作用点)との水平方向距離Lを変更したり、
図6に示すように、軸長の異なるスペーサ26Aを使用して牽引角度αを変更したりして試験を実施できる。これにより、多種の実部材に対応した割裂接着強さ試験を実施できる。なお、
図6において、スペーサ26Aの軸長をスペーサ26(
図5参照)よりも長くした場合には、その差分の軸長を有するスペーサ26Bを下台14と第2支持部16との間に配置することが好ましい。また、牽引角度αとは、側面視において、水平軸H1と始点部P1とを結ぶ線分Aと割裂中心軸Pとの交角を指す。
【0031】
図7は、第2実施形態に係る割裂接着強さ試験機50を斜め上方から見た斜視図、
図8は、割裂接着強さ試験機50の側面図である。なお、
図1乃至
図6で示した第1実施形態の割裂接着強さ試験機10と同一若しくは類似する部材については同一の符号を付して説明する。
【0032】
割裂接着強さ試験機10に対する割裂接着強さ試験機50の構成の相違点は、第1支持部12に、第1被着体20の上面20aに接する上台52が備えられ、この上台52の上面52aに第1軸受部28が取り付けられている点にあり、他の構成は同一である。この上台52は、下台14と同様に剛性の高い金属板で構成されている。
【0033】
割裂接着強さ試験機50では、第1被着体20が上台52に取り付けられた状態で剥離試験を行う。このため、実部材を想定した第1被着体20として、例えば、剛性が低く、かつ、厚さの薄いフィルム状部材を適用した場合でも、フィルム状部材を上台52によって補強した状態で剥離試験を実施できる。このように上台52を備えた割裂接着強さ試験機50によれば、第1被着体20として適用される実部材のバリエーションを広げることができる。なお、上台52に対する第1被着体20の取り付け形態は、例えば、
図1に示した保持部材32と同様の保持部材32を用いて着脱自在とする形態が好ましい。
【0034】
図9は、第3実施形態に係る割裂接着強さ試験機60を斜め上方から見た斜視図、
図10は、割裂接着強さ試験機60の側面図である。なお、
図7乃至
図8で示した第2実施形態の割裂接着強さ試験機50と同一若しくは類似する部材については同一の符号を付して説明する。
【0035】
割裂接着強さ試験機50に対する割裂接着強さ試験機60の構成の相違点は、
図11に示すように、第1被着体として実部材であるブラケット62を上台52(
図9及び
図10参照)に取り付け、このブラケット62を、接着剤22によって第2被着体24に接着した点にあり、他の構成は同一である。
【0036】
割裂接着強さ試験機60は、実部材であるブラケット62を直接使用して剥離試験を実施するので、正確な評価が得られる。なお、
図11に示すブラケット62は、自動車用窓ガラスに直接接着され、車載カメラや雨滴感知センサと係合されるものであり、合成樹脂製の成型品である。
【0037】
図12は、第4実施形態に係る割裂接着強さ試験機70を斜め上方から見た斜視図、
図13は、割裂接着強さ試験機70の側面図である。なお、
図7乃至
図8で示した第2実施形態の割裂接着強さ試験機50と同一若しくは類似する部材については同一の符号を付して説明する。
【0038】
割裂接着強さ試験機50に対する割裂接着強さ試験機70の構成の相違点は、
図14に示すように、第1被着体として円弧状の実部材72を上台52(
図12及び
図13参照)に取り付け、この実部材72を、接着剤22によって第2被着体24に接着した点にあり、他の構成は同一である。
【0039】
割裂接着強さ試験機70は、実部材72を直接使用して剥離試験を実施するので、正確な評価が得られる。
【0040】
なお、第1被着体20として合成樹脂製の樹脂板として、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン、ポリカーボネート(PC)、ナイロン6、ナイロン6,6等のポリアミド(PA)、高耐熱ポリアミド(PA6T/PA9T、MXD6)、ポリイミド(PI)、ポリエーテルイミド(PEI)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)、ポリアセタール(POM)、ポリ塩化ビニル(PVC)等が挙げられる。
【0041】
なお、第2被着体24に適用したガラス板として、ソーダライムガラス、アルミノシリケートガラス、ホウ珪酸ガラス、無アルカリガラス、石英ガラス等の無機ガラス、又は有機ガラスが挙げられる。有機ガラスの材料として、ポリカーボネート、例えばポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン等の透明樹脂が挙げられる。
【0042】
以上、本発明について説明したが、本発明は、上記の例には限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、いくつかの改良又は変形を行ってもよい。
【符号の説明】
【0043】
10…割裂接着強さ試験機、12…第1支持部、14…下台、16…第2支持部、18…移動機構部、20…第1被着体、22…接着剤、24…第2被着体、26…スペーサ、28…第1軸受部、30…第1ピン、32…保持部材、34…第2軸受部、36…第2ピン、38…固定部、40…駆動部、50…割裂接着強さ試験機、52…上台、60…割裂接着強さ試験機、62…ブラケット、70…割裂接着強さ試験機、72…実部材