(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】研磨パッド、両面研磨装置及びウェーハの両面研磨方法
(51)【国際特許分類】
B24B 37/22 20120101AFI20240110BHJP
B24B 37/08 20120101ALI20240110BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
B24B37/22
B24B37/08
H01L21/304 611A
H01L21/304 622F
(21)【出願番号】P 2020190714
(22)【出願日】2020-11-17
【審査請求日】2022-10-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000190149
【氏名又は名称】信越半導体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【氏名又は名称】小林 俊弘
(72)【発明者】
【氏名】上野 淳一
【審査官】須中 栄治
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-034940(JP,A)
【文献】特開2015-038174(JP,A)
【文献】特表平11-503191(JP,A)
【文献】特開2015-078348(JP,A)
【文献】特開2004-323679(JP,A)
【文献】特開2011-122069(JP,A)
【文献】特開2018-107261(JP,A)
【文献】特開2004-001160(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B37/00-37/34
H01L21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェーハの表面を研磨する研磨層と、該研磨層を両面研磨装置の上定盤に貼り付けるための両面テープとを有する研磨パッドであって、
前記両面テープは、90°引き剥がし粘着力Aが2000g/cm以上であり、かつ、前記90°引き剥がし粘着力Aと180°引き剥がし粘着力Bの比A/Bが1.05以上であり、
前記両面テープは、基材と、前記研磨層に貼り付ける側の研磨層側粘着層と、前記上定盤に貼り付ける側の上定盤側粘着層とを有するものであり、
前記研磨層側粘着層と前記上定盤側粘着層の厚さの合計が80μm以下で
あり、
前記研磨層側粘着層と前記上定盤側粘着層はアクリル系粘着剤からなるものであり、
前記基材はPETシートであることを特徴とする研磨パッド。
【請求項2】
前記両面テープは、前記研磨層側粘着層の厚さが40μm以下、かつ、前記上定盤側粘着層の厚さが40μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の研磨パッド。
【請求項3】
研磨パッドと、該研磨パッドがそれぞれ貼り付けられた回転可能な上下定盤と、該上下定盤間でウェーハを保持するための保持孔が形成されたキャリアと、該キャリアに保持された前記ウェーハに研磨スラリーを供給するためのスラリー供給口とを有する両面研磨装置であって、
前記上定盤に貼り付けられた研磨パッドは、請求項1または請求項2に記載の研磨パッドであることを特徴とする両面研磨装置。
【請求項4】
両面研磨装置のキャリアに保持されたウェーハを、研磨パッドがそれぞれ貼り付けられた上下定盤で挟み込み、該上下定盤を回転させながら研磨スラリー供給口より研磨スラリーを供給し、前記ウェーハの両面を同時に研磨するウェーハの両面研磨方法であって、
前記両面研磨装置として、請求項3に記載の両面研磨装置を用いることを特徴とするウェーハの両面研磨方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨パッド、両面研磨装置及びウェーハの両面研磨方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
両面研磨装置で使用する研磨パッドは、ウェーハの表面を研磨する研磨層と、定盤に貼り付けるための両面テープとを有しており、上定盤と下定盤に貼り付けられる。上定盤はウェーハの研磨加工部へ研磨スラリーを供給する為にスラリー供給口を有しており、上定盤側の研磨パッドはスラリー供給口の位置をくり抜いた状態で、上定盤に両面テープで固定される。
【0003】
しかし、上定盤側の研磨パッドをくり抜いた場所の両面テープに、側面から研磨スラリーが染み込むことで粘着力が低下し、さらに重力により上定盤から垂直に剥がれる方向に力が加わっているため、研磨パッド剥がれが発生する事がある。
図8にこのような研磨パッド剥がれの発生する箇所を示す。上下定盤102、103にそれぞれ研磨パッド104が貼り付けられており、上定盤側の研磨パッド104は、研磨スラリーを供給するためにスラリー供給口109の位置がくり抜かれている。研磨パッド104は、ウェーハの表面を研磨する研磨層111と、該研磨層111を定盤に貼り付けるための両面テープ112とを有している。
研磨パッド剥がれ箇所Pは、スラリー供給口109内の側面であり、上定盤102と研磨パッド104の接着面である。この部分に研磨スラリーが染み込むことで、上記の研磨パッド剥がれの発生に繋がる。
この研磨パッドの剥がれは、研磨加工するウェーハの形状(フラットネス)悪化に繋がる。一方、下定盤側の研磨パッド104は、くり抜きが無い上に下定盤103から垂直に剥がれる方向の力が掛かる事も無く、上定盤102に比べて研磨パッド104の剥がれる可能性が低い。
このような研磨スラリーによる上定盤側の研磨パッドの剥がれを防止するため、例えば、酸及びアルカリへの耐性に優れた粘着剤を用いた両面テープが用いられている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来の研磨パッドに用いられる両面テープの粘着力の規定は、定盤の表面に沿った方向の引き剥がしに対する180°引き剥がし粘着力の規定であり、定盤と垂直方向の引き剥がしに対する90°引き剥がし粘着力は考えられていなかった。そこで、本発明者が従来の両面テープの90°引き剥がし粘着力と180°引き剥がし粘着力を計測し、その比(90°引き剥がし粘着力/180°引き剥がし粘着力)を確認すると、約0.93で180°引き剥がし粘着力が90°引き剥がし粘着力より強い物であった。また、両面テープの構造は基材である厚さが25μmのPETを中心に、研磨層に貼り付ける側の研磨層側粘着層の厚さが40μm、上定盤に貼り付ける側の上定盤側粘着層の厚さが40μmの物を使用していた。
【0006】
上記のような両面テープを使用した研磨パッドでウェーハの研磨加工を行うと、時間経過とともに、研磨されたウェーハのフラットネスのグローバル形状が悪化する事があった。この時に研磨パッド交換を行うとフラットネスは元のレベルに戻り、交換時のパッド剥がしの際に上定盤側の研磨パッドにスラリー供給口近傍の剥離が確認されていた事から、上定盤側の研磨パッドの粘着力不足が窺えた。下定盤側の研磨パッドは粘着力不足が確認されない事から、研磨パッドサイズの研磨パッド重量を考慮した、より強い90°引き剥がし粘着力が必要であると考えた。
【0007】
また、両面テープの粘着層の厚さを厚くする事でも定盤への接着力は上がるが、ウェーハが研磨パッドに押し付けられた際に粘着層の厚さが厚いと、粘着層のクリープ変形が発生して研磨ウェーハのフラットネス(特にエッジフラットネス)の悪化に繋がる。
【0008】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、時間経過による研磨パッドの剥がれを防止し、かつ、粘着層のクリープ変形を抑制し、両面研磨時にウェーハのフラットネスが悪化することを抑制できる研磨パッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明では、ウェーハの表面を研磨する研磨層と、該研磨層を両面研磨装置の上定盤に貼り付けるための両面テープとを有する研磨パッドであって、
前記両面テープは、90°引き剥がし粘着力Aが2000g/cm以上であり、かつ、前記90°引き剥がし粘着力Aと180°引き剥がし粘着力Bの比A/Bが1.05以上であり、
前記両面テープは、基材と、前記研磨層に貼り付ける側の研磨層側粘着層と、前記上定盤に貼り付ける側の上定盤側粘着層とを有するものであり、
前記研磨層側粘着層と前記上定盤側粘着層の厚さの合計が80μm以下であることを特徴とする研磨パッドを提供する。
【0010】
このような研磨パッドであれば、両面テープの90°引き剥がし粘着力Aが十分に強く、重力による剥がれを防止することができる。さらに、粘着層の厚さが厚すぎないため、研磨時の粘着層のクリープ変形を抑制することができる。これらの結果、研磨ウェーハのフラットネス(特に、GBIRとESFQRmaxの両方)の悪化を抑制することができる。
【0011】
また、前記両面テープは、前記研磨層側粘着層の厚さが40μm以下、かつ、前記上定盤側粘着層の厚さが40μm以下であるものとすることができる。
このようなものであれば、各粘着層の厚さが厚すぎないため、より確実に粘着層のクリープ変形を抑制することができる。
【0012】
また、本発明では、研磨パッドと、該研磨パッドがそれぞれ貼り付けられた回転可能な上下定盤と、該上下定盤間でウェーハを保持するための保持孔が形成されたキャリアと、該キャリアに保持された前記ウェーハに研磨スラリーを供給するためのスラリー供給口とを有する両面研磨装置であって、
前記上定盤に貼り付けられた研磨パッドは、上記の研磨パッドであることを特徴とする両面研磨装置を提供する。
このような両面研磨装置であれば、両面研磨時に時間経過による研磨パッドの剥がれを防止でき、かつ、粘着層のクリープ変形を抑制できるため、研磨ウェーハのフラットネスの悪化を抑制することができる。
【0013】
また、本発明では、両面研磨装置のキャリアに保持されたウェーハを、研磨パッドがそれぞれ貼り付けられた上下定盤で挟み込み、該上下定盤を回転させながら研磨スラリー供給口より研磨スラリーを供給し、前記ウェーハの両面を同時に研磨するウェーハの両面研磨方法であって、
前記両面研磨装置として、上記の両面研磨装置を用いることを特徴とするウェーハの両面研磨方法を提供する。
このようなウェーハの両面研磨方法であれば、研磨ウェーハのフラットネスの悪化を抑制することができる両面研磨方法となる。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明の研磨パッド、両面研磨装置及び両面研磨方法によれば、ウェーハの両面研磨を行う際に、研磨パッドの剥がれ防止や両面テープの粘着層のクリープ変形の抑制を図ることができ、研磨したウェーハのフラットネスが悪化することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】上定盤に貼り付けた本発明の研磨パッドの構造を示す概略図である。
【
図2】本発明の研磨パッドを上定盤に備えた本発明の両面研磨装置の一例を示す模式図である。
【
図3】90°引き剥がし粘着力の測定装置の一例を示す説明図である。
【
図4】180°引き剥がし粘着力の測定装置の一例を示す説明図である。
【
図5】実施例1-1~1-4及び比較例1-1~1-3のGBIRの測定結果を示すグラフである。
【
図6】実施例1-1及び比較例1-1の日数経過によるGBIRの推移を示すグラフである。
【
図7】実施例1-1、2-1及び比較例2-1~2-2のESFQRmaxの測定結果を示すグラフである。
【
図8】上定盤に貼り付けた従来の研磨パッドの剥がれ箇所を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明について、実施態様の一例として、図を参照しながら詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0017】
図2は、後述する本発明の研磨パッドを上定盤に備えた本発明の両面研磨装置の一例である。構成部品とその仕組み、役割について説明する。
図2に示すように、両面研磨装置1は円筒形の上定盤2及び下定盤3を有し、この上定盤2には本発明の研磨パッド4が、下定盤3には研磨パッド4’が、それぞれその研磨面が対向するように貼り付けられている。なお、下定盤側の研磨パッド4’については特に限定されず、例えば、本発明の研磨パッド4と同様のものを用いることもできるし、従来の研磨パッドを用いることもできる。下定盤3の内側にはサンギヤ7、外側にはインターナルギヤ8が取り付けられている。上下定盤2、3とサンギヤ7、インターナルギヤ8は同じ回転中心軸を有しており、当該軸周りに互いに独立に回転運動することができる。
【0018】
キャリア5にはウェーハWを保持するための保持孔6が設けられ、複数のキャリア5が上下定盤2、3の間に挟まれるようになっている。1つのキャリア5には複数の保持孔6が設けられバッチ毎に複数のウェーハWを研磨できるようになっている。また、キャリア5はサンギヤ7およびインターナルギヤ8とそれぞれ噛合し、サンギヤ7およびインターナルギヤ8の回転数に応じて上下定盤間で自転および公転する。このようなキャリア5の保持孔6にウェーハWを挿入して保持し、上定盤2が下降することでウェーハW及びキャリア5を挟み込んで研磨荷重を加える。そして、上定盤2に設けられたスラリー供給口9を介して、ノズル10から供給された研磨スラリーを上下定盤間に流し込みながら上定盤2と下定盤3を互いに逆方向に回転させてウェーハWの両面を同時に研磨する仕組みになっている。
【0019】
ここで本発明の研磨パッドについて詳しく説明する。
図1は上定盤に貼り付けた本発明の研磨パッドの構造を示す概略図である。なお、下定盤側の研磨パッド4’も併せて図示している。上定盤側の研磨パッド4は、研磨スラリーを供給するためにスラリー供給口9の位置がくり抜かれている。研磨パッド4は、ウェーハWの表面を研磨する研磨層11と、該研磨層11を上定盤2に貼り付けるための両面テープ12とを有している。この両面テープ12は、基材12aと、研磨層11に貼り付ける側の研磨層側粘着層12bと、上定盤2に貼り付ける側の上定盤側粘着層12cとで構成されている。
【0020】
ここで、上記両面テープ12は、90°引き剥がし粘着力Aが2000g/cm以上であり、かつ、90°引き剥がし粘着力Aと180°引き剥がし粘着力Bの比A/B(以下、縦横比とも言う。)が1.05以上のものである。このようなものであれば、スラリー供給口9から研磨スラリーが染み込み粘着力が低下し、重力により研磨パッド4に対して上定盤2と垂直方向に引き剥がす力が加わったとしても、90°引き剥がし粘着力Aが十分に強いため、研磨パッド4の剥がれを防止することができる。これにより、研磨ウェーハのGBIRの悪化を抑制することが可能となる。
【0021】
なお、90°引き剥がし粘着力A及び180°引き剥がし粘着力Bの測定方法は特に限定されないが、例えば、粘着テープの剥離強度測定法であるJIS Z0237:2009に準じて以下のように行うことができる。
図3に90°引き剥がし粘着力の測定装置の一例を、
図4に180°引き剥がし粘着力の測定装置の一例を示す。それぞれ、左図が正面図を、右図が側面図を示している。90°引き剥がし粘着力の測定装置21では、試験板22に貼り付けた試験片23の一端を上部チャック24で保持し、90°方向に引き剥がす。この時、引き剥がす動きに合わせて試験板22がスライドガイド25に沿って水平方向に移動し、引き剥がす方向を90°に維持できるようになっている。
一方、180°引き剥がし粘着力測定装置31では、試験板32に貼り付けた試験片33の一端を上部チャック34で保持し、180°方向に引き剥がす。この時、試験板32は下部チャック35に固定されている。
試験方法としては、例えば、PET裏打ちした幅100mm×長さ250mmの試験片23、33を、SUS製の試験板22、32へ2kgゴムローラーで1往復して圧着し、温度20℃、湿度65%で20分間放置する。その後、試験片23、33の一端を上部チャック24、34で保持し、90°及び180°方向に速度300mm/分で引き剥がす。
すなわち、90°引き剥がし粘着力の測定では、試験片23の一端を90°折り返し、試験板22に対して垂直方向に速度300mm/分で引っ張る。その引っ張りに合わせて、試験板22も同じ速度で水平方向にスライドする。
一方、180°引き剥がし粘着力の測定では、試験片33の一端を180°折り返し、試験板32に沿った方向にめくるように速度300mm/分で引っ張る。試験板32は動かないように固定されている。
このようにして、90°及び180°方向の引き剥がし粘着力を測定することができる。
【0022】
また、この両面テープ12は、研磨層側粘着層12bと上定盤側粘着層12cの厚さの合計が80μm以下である。このように粘着層の厚さが厚すぎないものであれば、研磨時の粘着層のクリープ変形を防止することができ、研磨ウェーハWのフラットネス(特にエッジフラットネス)の悪化を抑制することができる。
厚さの合計が80μm以下であれば、研磨層側粘着層12b及び上定盤側粘着層12cのそれぞれの厚さは特に限定されないが、例えば、研磨層側粘着層12bの厚さが40μm以下、かつ、上定盤側粘着層12cの厚さが40μm以下とすることができる。このように各々の粘着層の厚さが厚すぎないものであれば、より確実にクリープ変形を抑制することができる。
なお、基材12aの厚さや素材については特に限定されないが、例えば、厚さ25μmのPETシートとすることができる。
【0023】
両面テープ12の粘着層に用いる粘着剤については特に限定されないが、例えば、ゴム系(天然ゴム、合成ゴム)、アクリル系、ビニル-エーテル系、ウレタン系、フッ素系の粘着剤とすることができる。また、天然ゴム系の場合には、天然ゴム、合成ゴム、粘着付与性樹脂、軟化剤からなるものとすることができ、ゴム重量部に対する天然ゴムの重量部割合を変えることで、90°引き剥がし粘着力A及び180°引き剥がし粘着力Bを調整することができる。アクリル系の場合には、アクリル酸エステル共重合体、架橋剤、粘着付与性樹脂からなるものとすることができ、粘着付与性樹脂(ロジン)のアクリル系共重合体重量部に対する重量部割合を変えることで、90°引き剥がし粘着力A及び180°引き剥がし粘着力Bを調整することができる。
【0024】
上記のような本発明の研磨パッドを、
図2に示すような両面研磨装置の上定盤側の研磨パッドに用いることで、両面研磨時に時間経過による研磨パッドの剥がれやクリープ変形を防止でき、ウェーハのフラットネスの悪化を抑制することができる。
【0025】
以下、本発明の両面研磨装置による本発明のウェーハの両面研磨方法について説明する。
上定盤2に、本発明の研磨パッド4を貼り付けた
図2に示すような両面研磨装置1を用意する。下定盤側の研磨パッド4’は特に限定されず、ここでは従来品と同様のものとした。キャリア5の保持孔6に保持されたウェーハWを上下定盤2、3で挟み込み、上下定盤2、3を互いに逆方向に回転させながらスラリー供給口9より研磨スラリーを供給することで、ウェーハWの両面を同時に研磨する。
この時、時間経過とともに上定盤側の研磨パッド4の両面テープ12にスラリー供給口9から研磨スラリーが染み込むが、両面テープ12の90°引き剥がし粘着力が十分に強いため、研磨パッド4の剥がれを防止することができる。また、研磨層側粘着層12b及び上定盤側粘着層12cの厚さの合計が厚すぎないため、粘着層のクリープ変形を抑制することができる。その結果、研磨されたウェーハのフラットネスの悪化を抑制することができる。
【実施例】
【0026】
以下、実施例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0027】
(実施例1-1~1-4)
厚さ25μmのPETシートに研磨層側粘着層と上定盤側粘着層の厚さをそれぞれ40μm(合計80μm)で積層した両面テープにおいて、研磨層及び両面テープの構造(厚さ)は同じにして、粘着剤を変えることで接着力の縦横比を変えた研磨パッドを作製した。なお、接着力の縦横比は前述のJIS Z0237:2009に準じた方法で
図3、4に示す装置を用い、180°引き剥がし試験と90°引き剥がし試験を行い算出した。
具体的には、アクリル系粘着剤を用い、アクリル系共重合体重量部に対する粘着付与性樹脂(ロジン)の重量部割合を、実施例1-1は15重量部、実施例1-2は12重量部、実施例1-3は10重量部、実施例1-4は9重量部のように変えた結果、実施例1-1~1-4の縦横比はそれぞれ1.054、1.100、1.200、1.210であった。また、90°引き剥がし粘着力はいずれも2000g/cm以上であった。
【0028】
作製した研磨パッドを上定盤に貼り付けた両面研磨装置でウェーハの両面研磨加工を10日間行った。10日目の加工を行った後、KLA社製WaferSight2により、ウェーハのグローバルフラットネスであるGBIRの測定を行った。研磨加工条件、及び品質評価条件は以下の通りとした。
(研磨加工条件)
装置 :不二越機械製両面研磨機
加工ウェーハ:直径300mm Si P-品<100>
研磨層 :発泡ウレタンタイプ
両面テープ :研磨層側粘着層の厚さ40μm、上定盤側粘着層の厚さ40μm、
基材(PETシート)の厚さ25μm
研磨スラリー:KOHベースコロイダルシリカ
(品質評価条件)
装置:WaferSight2 KLA社製フラットネス測定機
条件;Edge Exclusion=2mm
ESFQR: L 30mm 72Sites(5°間隔)
【0029】
(比較例1-1~1-3)
研磨パッドの両面テープにおいて、従来と同じ天然ゴム系粘着剤を用い、ゴム重量部に対する天然ゴムの重量部割合を、比較例1-1は30重量部、比較例1-2は50重量部、比較例1-3は35重量部のように変えた結果、比較例1-1~1-3の縦横比はそれぞれ0.933、0.964、1.050であった。比較例1-1と1-3は90°引き剥がし粘着力が2000g/cm未満のもので、比較例1-2は2000g/cm以上のものとした。そして、実施例1-1と同様の条件でウェーハの両面研磨加工を行い、ウェーハのGBIRの測定を行った。
【0030】
実施例1-1~1-4及び比較例1-1~1-3の測定結果を表1及び
図5に示す。
図5において、実施例は●、比較例は○で示す。
以下、上定盤側の研磨パッドの両面テープの条件と、研磨ウェーハのGBIRの関係について考察する。
【0031】
【0032】
表1及び
図5に示すように、90°引き剥がし粘着力Aが2000g/cm以上であり、かつ、粘着力の縦横比A/Bが1.05以上(90°引き剥がし粘着力が180°引き剥がし粘着力に比べて十分に強い)研磨パッドで加工する事により、GBIRが100nm程度以下の研磨ウェーハを得ることができる。つまり、GBIR品質がフラットになることがわかる。一方、90°引き剥がし粘着力Aが2000g/cm未満か、粘着力の縦横比A/Bが1.05未満だと、GBIR品質が悪くなってしまっている。
【0033】
なお、上記のように粘着層の厚さの合計は80μmである。実施例1-1~1-4では、ウェーハのエッジフラットネスであるESFQRmaxを測定した結果、全ての実施例が10nm未満といった良好な値であった。
【0034】
また、GBIRの推移を確認するため、実施例1-1と比較例1-1のGBIRを1日ごとに測定した。その測定結果を
図6に示す。比較例1-1では7日目からGBIRが次第に悪化したのに対し、実施例1-1では日数経過によりGBIRが悪化することなく安定していた。このようにGBIRが安定している事により、研磨パッドの剥がれが発生していない事が確認できる。
【0035】
(実施例2-1)
研磨パッドの両面テープにおいて、実施例1-1と同様に、アクリル系粘着剤を用い、アクリル系共重合体重量部に対する粘着付与性樹脂(ロジン)の重量部割合を15重量部とした。また、研磨層側粘着層と上定盤側粘着層の厚さをそれぞれ30μm(合計60μm)とした。この両面テープの90°引き剥がし粘着力Aは2048g/cmで、180°引き剥がし粘着力Bは1932g/cm(縦横比1.060)であった。そして、実施例1-1と同様の条件でウェーハの両面研磨加工を行い、ウェーハのGBIRと、エッジフラットネスであるESFQRmaxの測定を行った。
【0036】
(比較例2-1~2-2)
両面テープの研磨層側粘着層と上定盤側粘着層の厚さをそれぞれ60μm(合計120μm)とした。また、比較例2-1は縦横比を1.020、比較例2-2は縦横比を1.051とした。具体的には、アクリル系粘着剤を用い、アクリル系共重合体重量部に対する粘着付与性樹脂(ロジン)の重量部割合を、比較例2-1は15重量部、比較例2-2は9重量部とした。そして、実施例1-1と同様の条件でウェーハの両面研磨加工を行い、ウェーハのGBIRと、エッジフラットネスであるESFQRmaxの測定を行った。
【0037】
実施例2-1及び比較例2-1~2-2の測定結果を表2及び
図7に示す。また、実施例1-1のデータについても併せて示した。
【0038】
【0039】
表2及び
図7に示すように、研磨層側粘着層と上定盤側粘着層の厚さの合計が80μm以下の両面テープを用いた研磨パッドで加工する事により、エッジフラットネスであるESFQRmax品質がフラットになることがわかる。比較例2-2は、90°引き剥がし粘着力Aは2000g/cm以上、かつ、縦横比が1.05以上であり、GBIRの値は良好なものの、ESFQRmaxが悪化する結果となった。
【0040】
以上のように本発明の研磨パッド、両面研磨装置及び両面研磨方法であれば、上定盤側の研磨パッドの剥がれを防止でき、かつ、粘着層のクリープ変形を抑制できるため、両面研磨を行った際にウェーハのフラットネス(GBIRとESFQRmaxのどちらも)が悪化することを抑制することができる。
【0041】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0042】
1…本発明の両面研磨装置、 2、102…上定盤、 3、103…下定盤、
4…本発明の研磨パッド、 4’、104…研磨パッド、 5…キャリア、
6…保持孔、 7…サンギヤ、 8…インターナルギヤ、
9、109…スラリー供給口、 10…ノズル、 11、111…研磨層、
12、112…両面テープ、 12a…基材、 12b…研磨層側粘着層、
12c…上定盤側粘着層、 21…90°引き剥がし粘着力の測定装置、
22、32…試験板、 23、33…試験片、 24、34…上部チャック、
25…スライドガイド、 31…180°引き剥がし粘着力の測定装置、
35…下部チャック、 P…研磨パッド剥がれ箇所、 W…ウェーハ。