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特許7415917組成物、および有機電界発光素子の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】組成物、および有機電界発光素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H10K 71/15 20230101AFI20240110BHJP
   C09K 11/06 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
H10K71/15
C09K11/06 690
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020517055
(86)(22)【出願日】2019-04-24
(86)【国際出願番号】 JP2019017489
(87)【国際公開番号】W WO2019212022
(87)【国際公開日】2019-11-07
【審査請求日】2022-01-05
(31)【優先権主張番号】P 2018088327
(32)【優先日】2018-05-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】大嶋 優記
(72)【発明者】
【氏名】山平 瑞喜
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 秀樹
【審査官】辻本 寛司
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-108374(JP,A)
【文献】特開2015-050095(JP,A)
【文献】特開2015-185640(JP,A)
【文献】国際公開第2012/001744(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/220766(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/079331(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/055379(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/182667(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/095381(WO,A1)
【文献】D.I. SAGDEEV et al.,“Experimental study of the density and viscosity of polyethylene glycols and their mixtures at temperatures from 293K to 473K and at atmospheric pressure”,The Journal of Chemical Thermodynamics,2011年06月25日,Vol. 43, No. 12,p.1824-1843,DOI: 10.1016/j.jct.2011.06.013(参考技術を示す文献)
【文献】Daisuke KODAMA et al.,“Density, viscosity, and solubility of carbon dioxide in glymes”,Fluid Phase Equilibria,2010年08月24日,Vol. 302、No. 1-2,p.103-108,DOI: 10.1016/j.fluid.2010.08.014(参考技術を示す文献)
【文献】Xavier ESTEVE et al.,“Liquid Densities, Kinematic Viscosities, and Heat Capacities of Some Alkylene Glycol Dialkyl Ethers”,Journal of Chemical & Engineering Data,2003年01月14日,Vol. 48, No. 2,p.392-397,DOI: 10.1021/je025606c(参考技術を示す文献)
【文献】Dianne Jeanne Luning PRAK,“Binary Mixtures of Benzene and Cyclohexane with n-Alkyl Functional Groups up to 12 Carbons Long: Densities, Viscosities, and Speeds of Sound within the Temperature Range (288.15333.15) K”,Journal of Chemical & Engineering Data,2022年05月10日,Vol. 67, No. 6,p.1378-1396,DOI: 10.1021/acs.jced.2c00048(参考技術を示す文献)
【文献】Abbas ROSTAMKOLAHI et al.,“Thermodynamic properties of dimethyl phthalate + vinyl acetate, diethyl phthalate + vinyl acetate or bromocyclohexane, and dibutyl phthalate + vinyl acetate or 1,2-dichlorobenzene at T = 298.15308.15 K”,Chemical Papers,2013年01月01日,Vol. 67、No. 11,p.1433-1441,DOI: 10.2478/s11696-013-0400-2(参考技術を示す文献)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10K 71/15
C09K 11/06
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機能性材料と、第1溶媒および第2溶媒とを含む組成物であって、
該第1溶媒は非水溶性芳香族溶媒であり、
該第1溶媒の沸点が該第2溶媒の沸点より高く、該第1溶媒と該第2溶媒との沸点の差が10℃以上であり、
該第1溶媒は、流動活性化エネルギーが22kJ/mol以上35kJ/mol以下であり、
該第1溶媒の流動活性化エネルギーが、該第2溶媒の流動活性化エネルギーよりも5kJ/mol以上大きく、
該第1溶媒の含有割合は、該第1溶媒と該第2溶媒の総量に対して5~50重量%であり、
該組成物に含まれる溶媒の全量に対する該第1溶媒と該第2溶媒の合計の含有量が95重量%以上であり、
該第2溶媒の沸点は245℃以上であり、
前記第1溶媒及び前記第2溶媒が、それぞれ置換基を有していてもよい、ナフタレン、安息香酸エステル、芳香族エーテルのいずれかである組成物。
【請求項2】
機能性材料と、第1溶媒および第2溶媒とを含む組成物であって、
該第1溶媒は非水溶性芳香族溶媒であり、
該第1溶媒の沸点が該第2溶媒の沸点より高く、該第1溶媒と該第2溶媒との沸点の差が10℃以上であり、
該第1溶媒は、流動活性化エネルギーが22kJ/mol以上35kJ/mol以下であり、
該第1溶媒の流動活性化エネルギーが、該第2溶媒の流動活性化エネルギーよりも5kJ/mol以上大きく、
該第1溶媒の含有割合は、該第1溶媒と該第2溶媒の総量に対して5~50重量%であり、
該組成物に含まれる溶媒の全量に対する該第1溶媒と該第2溶媒の合計の含有量が95重量%以上であり、
該第2溶媒の沸点は245℃以上であり、
前記第1溶媒は、安息香酸2-エチルヘキシル、安息香酸ベンジル、アセチルナフタレン、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、エチルビフェニル、イソプロピルビフェニル、ジイソプロピルビフェニル、トリイソプロピルビフェニル、イソ酪酸2-フェノキシエチルのいずれかであり、
前記第2溶媒は、メチルナフタレン、エチルナフタレン、イソプロピルナフタレン、メトキシナフタレン、安息香酸ブチル、安息香酸ペンチル、安息香酸イソペンチル、ジフェニルメタン、ベンジルトルエンのいずれかである組成物。
【請求項3】
前記機能性材料の分子量が50,000以下である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記第2溶媒の23℃における粘度が5mPas以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
前記第1溶媒の沸点と前記第2溶媒の沸点の差が30℃以上である、請求項1~のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記第1溶媒の表面張力が30mN/m以上である、請求項1~のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
請求項1~のいずれか1項に記載の組成物を用いて湿式成膜する工程を含む、有機電界発光素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機電界発光素子の製造において、機能性材料からなる有機膜である機能性膜の形成に好適に用いられる組成物と、この組成物を用いた有機電界発光素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機電界発光素子の製造方法としては、有機材料を真空蒸着法により成膜し、積層する製造方法が一般的であるが、近年、より材料使用効率に優れた製造方法として、溶液化した有機材料をインクジェット法等により成膜し、積層する湿式成膜による製造方法の研究が盛んになってきている。
【0003】
湿式成膜による有機電界発光素子、特に有機ELディスプレイの製造においては、各画素をバンクと呼ばれる隔壁で区画し、バンク内の微小な領域に、有機電界発光素子を構成する有機膜を形成するための有機電界発光素子形成用組成物であるインクをインクジェット法にて吐出させて成膜する方法が検討されている。この際、インクに種々の表面改質剤を混合することにより、バンクで囲まれた領域内において、より平坦な膜を得る技術が提案されている(特許文献1及び2)。
【0004】
しかし、従来法では、バンクで囲まれた領域内における膜の平坦性は十分ではなかった。
【0005】
特許文献3には、乾燥・固化後に断面形状がほぼフラットな機能層を形成することを目的として、沸点の異なる2種以上の溶媒を用いる技術の開示がある。
【0006】
【文献】国際公開第2010/104183号
【文献】特開2002-056980号公報
【文献】特開2015-185640号公報
【0007】
インクジェット装置で塗布する場合、粘度が高すぎるインクは吐出性に問題があり、粘度が低すぎるインクはヘッドに保持できないため、ある程度の適正粘度範囲がある。一方で、液膜の乾燥過程では、濃度勾配による液移動やマランゴニ対流など、様々な流動が存在するため、乾燥膜の形状が複雑化してしまう傾向がある。この複雑な膜形状をコントロールするためには、インクの粘度をある程度高くし、流動する速度を遅くすることでコントロールが容易になる。しかし、高粘度とすることで、インクジェット用のインクとして適正に吐出できる粘度範囲を超えてしまう可能性があり、適正範囲の粘度調整が難しい。特に、吐出されるインクに溶解している溶質が主に低分子材料である場合は、インクの粘度は溶媒の粘度と同程度であるため、ある程度溶媒が揮発してもインクの粘度が大きく変化せず、液の流動によって乾燥膜が平坦になりにくいという問題が起こりやすい。
【0008】
特許文献3のように沸点の異なる複数の溶媒を用いた場合でも、インクを塗布したパネルの端部の平坦性に依然として改善の余地がある。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、有機電界発光素子を構成する有機膜を湿式成膜により形成する場合において、バンクに囲まれた領域内における膜厚の均一性を改善し、さらに、インクを塗布したパネルの中央部のみならず、端部においても平坦性を良好なものとすることできる組成物と、この組成物を用いた有機電界発光素子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、バンクに囲まれた領域内に有機電界発光素子を構成する有機膜を湿式成膜により形成する場合において、沸点の異なる2種以上の溶媒を混合した混合溶媒と機能性材料を含む組成物において、沸点が高い方の溶媒として粘度の温度依存性(流動活性化エネルギー)が高いものを用いることで、バンクに囲まれた領域内に有機膜を湿式成膜する際に、膜厚の均一性を良好にすることができることを見出した。また、沸点が低い方の溶媒の沸点を245℃以上とすることで、パネルの中央部だけでなく、端部においても平坦性を改善できることを見出した。
【0011】
即ち、本発明は、以下の構成を有する。
【0012】
[1] 機能性材料と、第1溶媒および第2溶媒とを含む組成物であって、該第1溶媒は非水溶性芳香族溶媒であり、該第1溶媒の沸点が該第2溶媒の沸点より高く、該第1溶媒と該第2溶媒との沸点の差が10℃以上であり、該第1溶媒は、流動活性化エネルギーが22kJ/mol以上35kJ/mol以下であり、該第1溶媒の含有割合は、該第1溶媒と該第2溶媒の総量に対して5~50重量%であり、該第2溶媒の沸点は245℃以上である組成物。
【0013】
[2] 前記組成物中の前記第1溶媒と前記第2溶媒の合計の含有量が50重量%以上である[1]に記載の組成物。
【0014】
[3] 前記機能性材料の分子量が50,000以下である、[1]又は[2]に記載の組成物。
【0015】
[4] 前記第2溶媒の23℃における粘度が5mPas以下である、[1]~[3]のいずれかに記載の組成物。
【0016】
[5] 前記第1溶媒の沸点と前記第2溶媒の沸点の差が30℃以上である、[1]~[4]のいずれかに記載の組成物。
【0017】
[6] 前記第1溶媒の流動活性化エネルギーが、前記第2溶媒の流動活性化エネルギーよりも5kJ/mol以上大きいものである、[1]~[5]のいずれかに記載の組成物。
【0018】
[7] 前記第1溶媒の表面張力が30mN/m以上である、[1]~[6]のいずれかに記載の組成物。
【0019】
[8] 前記第1溶媒及び前記第2溶媒が、それぞれ置換基を有していてもよい、ナフタレン、安息香酸エステル、芳香族エーテルのいずれかである、[1]~[7]のいずれかに記載の組成物。
【0020】
[9] 前記第1溶媒は、安息香酸2-エチルヘキシル、安息香酸ベンジル、アセチルナフタレン、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、エチルビフェニル、イソプロピルビフェニル、ジイソプロピルビフェニル、トリイソプロピルビフェニル、イソ酪酸2-フェノキシエチルのいずれかであり、前記第2溶媒は、メチルナフタレン、エチルナフタレン、イソプロピルナフタレン、メトキシナフタレン、安息香酸ブチル、安息香酸ペンチル、安息香酸イソペンチル、ジフェニルメタン、ベンジルトルエンのいずれかである[1]~[7]のいずれかに記載の組成物。
【0021】
[10] [1]~[9]のいずれかに記載の組成物を用いて湿式成膜する工程を含む、有機電界発光素子の製造方法。
【発明の効果】
【0022】
本発明の組成物によれば、バンクに囲まれた領域内における機能性膜の膜厚の均一性を良好にすることができる。また、インクを塗布したパネルの中央部のみならず、端部においても平坦性を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の有機電界発光素子の構造例を示す断面の模式図である。
図2】参考例1の発光層とブランクのプロファイルを示す図である。
図3】参考例2の発光層とブランクのプロファイルを示す図である。
図4】比較例1の発光層とブランクのプロファイルを示す図である。
図5】比較例2の発光層とブランクのプロファイルを示す図である。
図6】比較例3の発光層とブランクのプロファイルを示す図である。
図7】実施例1の測定箇所1の平坦性評価のプロファイルを示す図である。
図8】実施例1の測定箇所2の平坦性評価のプロファイルを示す図である。
図9】実施例2の測定箇所1の平坦性評価のプロファイルを示す図である。
図10】実施例2の測定箇所2の平坦性評価のプロファイルを示す図である。
図11】実施例3の測定箇所1の平坦性評価のプロファイルを示す図である。
図12】比較例4の測定箇所1の平坦性評価のプロファイルを示す図である。
図13】比較例4の測定箇所2の平坦性評価のプロファイルを示す図である。
図14】比較例5の測定箇所1の平坦性評価のプロファイルを示す図である。
図15】比較例5の測定箇所2の平坦性評価のプロファイルを示す図である。
図16】比較例6の測定箇所1の平坦性評価のプロファイルを示す図である。
図17】比較例6の測定箇所2の平坦性評価のプロファイルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
〔組成物〕
本発明の組成物は、機能性材料と、第1溶媒および第2溶媒とを含む組成物であって、該第1溶媒は非水溶性芳香族溶媒であり、該第1溶媒の沸点が該第2溶媒の沸点より高く、該第1溶媒と該第2溶媒との沸点の差が10℃以上であり、該第1溶媒は、流動活性化エネルギーが22kJ/mol以上35kJ/mol以下であり、該第1溶媒の含有割合は、該第1溶媒と該第2溶媒の総量に対して5~50重量%であり、該第2溶媒の沸点は245℃以上であることを特徴とする。
【0025】
本発明の組成物に含まれる溶媒は、第2溶媒の沸点が245℃以上で、第1溶媒の沸点が第2溶媒の沸点より高い、即ち、両溶媒の沸点が245℃以上であることで、微小ノズルから吐出可能なインクとして使用可能である。本発明の組成物は、常温では適度な低粘度を示すが、真空乾燥される過程で気化熱により温度が下がると急激な粘度上昇を起こす。これにより、液の流動速度が遅くなり、膜形状をコントロールすることができるようになって、平坦な膜を得ることができる。この効果は、溶媒が蒸発して液の固形分濃度が高くなっても粘度上昇しにくい、溶質が低分子である組成物においてより顕著である。また、沸点が低い方の第2の溶媒の沸点も245℃以上であることにより、特に乾燥が速いパネル端部においても真空乾燥過程の前に溶媒が気化することを防ぐことができる。このため、真空乾燥過程時に十分温度を下げることができ、平坦な膜を得ることができる。
【0026】
本明細書においては、本発明の組成物を、インクジェットなどのノズルから吐出するインクとして用いる場合、単にインクと称する場合がある。
本発明の組成物をインクジェットなどのノズルから吐出するインクとして用い、ノズルから吐出してバンクに囲まれた領域内に塗布した場合、バンクに囲まれた領域内のインクを液、または液膜と称する場合があり、ノズルから吐出されたインクを液滴と称する場合がある。
バンクに囲まれた領域内の液膜を乾燥させ、溶媒が揮発することによって液膜の溶媒組成比が変化したものも液または液膜と称する場合がある。
本発明の組成物を塗布成膜し、有機溶媒を揮発させて乾燥させて得られた、機能性材料を含む膜を機能性膜と称する。また、有機化合物を含む膜であって、溶媒を含まないか又は実質的に溶媒を揮発させて乾燥した膜を有機膜と称する。機能性膜は有機膜の一種である。
【0027】
[溶媒]
<溶媒の種類>
本発明では、温度低下、急激な粘度上昇による平坦性向上、および、パネル端部での平坦性確保の観点から、第1溶媒および第2溶媒として共に沸点245℃以上のものを用いる。
沸点245℃以上の溶媒としては、特に限定されないが、好ましくは、芳香族炭化水素系溶媒、芳香族エステル系溶媒、芳香族エーテル系溶媒、芳香族ケトン系溶媒といった非水溶性の芳香族系溶媒が挙げられる。
【0028】
芳香族炭化水素系溶媒としては、ベンゼン誘導体、ナフタレン誘導体、水素化ナフタレン誘導体、ビフェニル誘導体が好ましい。
【0029】
ベンゼン誘導体としては、置換基の総炭素数が5以上12以下であって、直鎖、分岐、または脂環のアルキル基を置換として有するベンゼン誘導体が好ましく、n-オクチルベンゼル、n-ノニルベンゼン、n-デシルベンゼン、ドデシルベンゼンが挙げられる。
【0030】
ナフタレン誘導体としては、特に限定はされないが、アルキル基で置換されたナフタレン誘導体が好ましく、1-メチルナフタレン、2-エチルナフタレン、2-イソプロピルナフタレン、2,6-ジメチルナフタレン、1-メトキシナフタレンが挙げられる。
【0031】
水素化ナフタレン誘導体としては、例えばテトラリン、1,2-ジヒドロナフタレン、1,4-ジヒドロナフタレン等が挙げられ、これらは炭素数1~6のアルキル基で置換されていてもよい。
【0032】
ビフェニル誘導体としては、特に限定はされないが、炭素数1~6のアルキル基で置換されたビフェニル誘導体が好ましく、例えば3-エチルビフェニル、4-イソプロピルビフェニル等が挙げられる。
【0033】
他の好ましい芳香族炭化水素系溶媒としては、ジフェニルメタン、メチルジフェニルメタンが挙げられる。
【0034】
芳香族エステル系溶媒としては、安息香酸エステル系溶媒、フェニル酢酸エステル系溶媒、フタル酸エステル系溶媒が挙げられる。
【0035】
安息香酸エステル系溶媒は、安息香酸とエステル結合を有する化合物であり、置換基を有していてもよい安息香酸と、炭素数2以上12以下のアルコールとがエステル結合した化合物を用いることができる。有していてもよい置換基は、炭素数1以上6以下の、直鎖又は分岐のアルキル基、炭素数1以上6以下の、直鎖又は分岐のアルコキシ基が好ましい。これら置換基は複数であってもよく、複数の場合は置換基としての総炭素数が6以下が好ましい。安息香酸エステル系溶媒としては、例えば安息香酸ブチル、安息香酸n-ペンチル、安息香酸イソアミル、安息香酸n-ヘキシル、安息香酸2-エチルヘキシル、安息香酸ベンジル、4-メトキシ安息香酸エチル等が挙げられる。
【0036】
フェニル酢酸エステル系溶媒としては、フェニル酢酸エチル等が挙げられる。
【0037】
フタル酸エステル系溶媒としては、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチルが挙げられる。
【0038】
他の好ましい芳香族エステル系溶媒としては、酢酸2-フェノキシエチル、イソ酪酸2-フェノキシエチル、等が挙げられる。
【0039】
芳香族エーテル系溶媒は、芳香環とエーテル結合とを有する化合物であり、以下のようなものが挙げられる。
炭素数1以上6以下の直鎖又は分岐のアルキル基が置換していてもよいジフェニルエーテル誘導体として、例えばジフェニルエーテル、2-フェノキシトルエン、3-フェノキシトルエン、4-フェノキシトルエン;
炭素数1以上6以下の直鎖又は分岐のアルキル基とのエーテル結合を2個有するベンゼン誘導体として、例えば1,4-ジエトキシベンゼン、1-エトキシ-4-ヘキシルオキシベンゼン;
炭素数4以上12以下の直鎖又は分岐のアルキル基とエーテル結合を1個有するベンゼン誘導体として、例えばフェニルヘキシルエーテル;
ベンジルエーテル系溶媒として、例えばジベンジルエーテル;
その他の芳香族エーテル系溶媒として、2-フェノキシエタノール:
【0040】
芳香族ケトン系溶媒は、芳香環とケトン構造とを有する化合物であり、例えば1-アセチルナフタレン等が挙げられる。
【0041】
本発明で用いる溶媒は、沸点245℃以上の非水溶性の非芳香族系溶媒であってもよく、非水溶性の非芳香族系溶媒としては、例えばエーテル系溶媒、グリコールエステル系溶媒などが挙げられる。
ただし、第1溶媒としては、非水溶性芳香族溶媒を用いる。
【0042】
<沸点>
第1溶媒は、沸点245℃以上の第2溶媒よりも沸点が10℃以上高く、流動活性化エネルギーが22kJ/mol以上35kJ/mol以下の非水溶性芳香族系溶媒である。
本発明の組成物に含まれる溶媒の中で、沸点245℃以上の非水溶性芳香族系溶媒であって、流動活性化エネルギーが22kJ/mol以上35kJ/mol以下であるものは全て第1溶媒に相当する溶媒であり、第1溶媒とは第1溶媒に相当する溶媒全てである。
【0043】
本発明で用いる第1溶媒及び第2溶媒の沸点は共に245℃以上であって、さらに、第1溶媒の沸点は、第2溶媒の沸点よりも10℃以上高い。そのため、塗布後の乾燥工程時、通常は沸点の低い第2溶媒が第1溶媒よりも先に揮発する。後述するように、バンク内に吐出された組成物によって液膜を形成し、該液膜を真空乾燥等で乾燥する際、沸点の低い第2溶媒が先に揮発する。このとき、気化熱が奪われることによって液膜の温度が低下する。このとき、液膜中に残存する第1溶媒の流動活性化エネルギーが上記範囲であると粘度が急激に上昇し、液の流動速度が遅くなり、膜形状をコントロールすることができるようになり、平坦な膜を得ることができる。
【0044】
本発明の組成物に含まれる溶媒の中で、(a)沸点245℃以上であり、(b)第1溶媒に相当する溶媒以外であり、かつ、(c)第1溶媒に相当する全ての溶媒の沸点より低い沸点を有する溶媒、の(a)~(c)の3つの条件を全て満たす溶媒は、全て第2溶媒に相当する溶媒であり、第2溶媒とは第2溶媒に相当する溶媒全てである。
本発明の組成物中に第1溶媒に相当する溶媒が複数含まれる場合は、該複数の第1溶媒に相当する溶媒全てが第1溶媒であり、第1溶媒の沸点とは、第1溶媒に相当する溶媒全ての加重平均沸点とする。同様に、本発明の組成物中に第2溶媒に相当する溶媒が複数含まれる場合は、該複数の第2溶媒に相当する溶媒全てが第2溶媒であり、第2溶媒の沸点とは、第2溶媒に相当する溶媒全ての加重平均沸点とする。
加重平均沸点とは、個々の溶媒の沸点に該溶媒の重量配合比率を乗じた値の総和である。本発明においては、特に断りの無い限り、第1溶媒の沸点とは第1溶媒に相当する溶媒全ての加重平均沸点であり、第2溶媒の沸点とは第2溶媒に相当する溶媒全ての加重平均沸点である。
【0045】
第1溶媒の沸点と第2溶媒の沸点の差は、10℃以上であり、好ましくは15℃以上、さらに好ましくは20℃以上であり、25℃以上であるとより顕著に第2溶媒が第1溶媒よりも早く揮発する傾向がありためさらに好ましく、より好ましくは30℃以上、特に好ましくは35℃以上である。沸点差がこの値以上であると、乾燥工程時、特に真空乾燥時に、先に第2溶媒を多く揮発させ、そのあと第1溶媒を揮発させるように乾燥条件、特に真空乾燥条件を調整しやすく好ましい。
さらに好ましくは、前記沸点差に加え、第1溶媒に相当する溶媒が複数含まれる場合は最も重量配合比率の高い溶媒の沸点と、第2溶媒に相当する溶媒が複数含まれる場合は最も重量配合比率の高い溶媒の沸点との差も10℃以上であり、好ましくは15℃以上、さらに好ましくは20℃以上であり、25℃以上であるとより顕著に第2溶媒が第1溶媒よりも早く揮発する傾向がありためさらに好ましく、より好ましくは30℃以上、特に好ましくは35℃以上である。乾燥工程は、最も重量配合比率の高い溶媒の揮発性が反映される傾向にあるため、最も重量配合比率の高い溶媒の沸点差が前記値以上であることが好ましい。
【0046】
乾燥工程にて溶媒を揮発しやすい観点、特に真空乾燥にて溶媒を揮発させやすい観点から、第1溶媒の沸点は400℃以下が好ましく、第2溶媒の沸点は370℃以下が好ましい。従って、第1溶媒と第2溶媒の沸点差の上限は155℃である。
【0047】
第2溶媒は、沸点245℃以上の非水溶性芳香族系溶媒であってもよく、沸点245℃以上の非水溶性である非芳香族系溶媒であってもよい。第2溶媒は特に好ましくは、沸点245℃以上の非水溶性芳香族系溶媒である。沸点が245℃以上であることにより、乾燥の速いパネルの端部であっても真空乾燥過程の前に溶媒が気化することを防ぐことができる。このため、真空乾燥過程時に十分温度を下げることができ、パネルの端部でも平坦な膜を得ることができる。第2溶媒の沸点は、好ましくは250℃以上、より好ましくは255℃以上であり、最も好ましくは260℃以上である。第2溶媒は乾燥工程時に第1溶媒よりも先に揮発することが好ましいため、第2溶媒の沸点は320℃以下が好ましく、300℃以下がより好ましく、280℃以下が特に好ましい。
【0048】
第1溶媒に含まれる第1溶媒に相当する溶媒は、第1溶媒の大半すなわち第1溶媒の80重量%以上を占める溶媒の数として5以下が好ましく、さらに好ましくは3以下であり、特に好ましくは2以下である。第1溶媒の数がこの範囲であることで、組成物の管理がしやすい。また、第1溶媒の乾燥工程を制御しやすく平坦な膜を得られやすいと考えられる。
第2溶媒に含まれる第2溶媒に相当する溶媒は、第2溶媒の大半すなわち第2溶媒の80重量%以上を占める溶媒の数として5以下が好ましく、さらに好ましくは3以下であり、特に好ましくは2以下であり、最も好ましくは1である。第2溶媒の数がこの範囲であることで、組成物の管理がしやすい。また、第2溶媒の数がこの範囲であることで、乾燥工程の初期工程を制御しやすく、乾燥初期に第2溶媒の大半を揮発させやすく、気化熱による温度低下と第1溶媒の粘度上昇を制御しやすいと考えられる。
【0049】
なお、本発明において、溶媒の沸点は大気圧下で測定された値である。
【0050】
<流動活性化エネルギー>
流動活性化エネルギーとは、下記式(I)におけるEである。流動活性化エネルギーは、溶媒の粘度を温度を変えて測定し、温度の逆数に対する粘度の対数をプロットし、その傾きから求める。
η=Aexp(E/RT) (I)
η:粘度(cP)
A:定数
E:流動活性化エネルギー(kJ/mol)
R:気体定数(8.314J/K/mol)
T:温度(K)
【0051】
第1溶媒の流動活性化エネルギーは、22kJ/mol以上35kJ/mol以下である。第1溶媒の流動活性化エネルギーの下限は、好ましくは23kJ/mol以上であり、更に好ましくは24kJ/mol以上である。第1溶媒の流動活性化エネルギーの上限は、好ましくは34kJ/mol以下であり、より好ましくは32kJ/mol以下であり、更に好ましくは30kJ/mol以下である。
【0052】
第1溶媒の流動活性化エネルギーが上記下限値以上であると、温度低下時の粘度上昇が適度に速く起こり、機能性膜の平坦性を制御しやすい。第1溶媒の流動活性化エネルギーが上記上限値以下であると、温度低下時の粘度上昇速度が速すぎず、かつ到達粘度が高すぎず、機能性膜の平坦性を制御しやすく好ましい。
【0053】
第1溶媒の流動活性化エネルギーは、第2溶媒の流動活性化エネルギーよりも5kJ/mol以上大きいことが好ましい。言い換えると、第2溶媒の流動活性化エネルギーは第1溶媒の流動活性化エネルギーより5kJ/mol以上低いことが好ましい。この範囲であることで、第1溶媒の流動活性化エネルギーと第2溶媒の役割を明確化し、設計が容易になる。
【0054】
バンク内に組成物を塗布し、乾燥して成膜する場合、バンク内の液量が比較的多く、溶媒が揮発しながら液量が徐々に減少しているときは、気化熱を奪われて液温が低下しても、流動活性化エネルギーが低い第2溶媒がある程度存在しているため、増粘しにくく、液の流動性が保たれる。真空乾燥等の乾燥工程時、バンク内で溶媒が揮発しつつ液面が低下しているとき、液の流動性が保たれていると、液面の低下に伴ってバンク側面の液も濡れ下がり、バンク側面に液が残りにくい。その結果、バンク際部の膜厚を均一にしやすくなると考えられる。逆に、第1溶媒と第2溶媒の流動活性化エネルギー差が小さいと、第2溶媒がある程度残っていてもそれぞれが気化熱で冷却され増粘してしまう場合がある。本発明では、粘度の増加が適切な範囲にあることが望ましいため、一方の溶媒を増粘しにくい溶媒、もう一方の溶媒を増粘しやすい溶媒とすることで、最適な増粘状態を、膜厚や材料、乾燥プロファイルなどによって容易に選択可能になるため、第1溶媒と第2溶媒とで上記のように流動活性化エネルギーに差を設けることが好ましい。
【0055】
乾燥初期に、組成物が流動性を保ってバンク側面を濡れ下がりやすい観点から、第1溶媒と第2溶媒の流動活性化エネルギー差は特に5.2kJ/mol以上、とりわけ5.5kJ/mol以上であることが好ましく、21.0kJ/mol以下、特に20.0kJ/mol以下であることが好ましい。
【0056】
第1溶媒として好適な媒流動活性化エネルギーが22kJ/mol以上35kJ/mol以下の非水溶性芳香族系溶媒としては、安息香酸2-エチルヘキシル(23.4kJ/mol)、安息香酸ベンジル(24.5kJ/mol)、フタル酸ジエチル(27.5kJ/mol)、酢酸2-フェノキシエチル(28.6kJ/mol)、イソプロピルビフェニル(24.0kJ/mol)等が挙げられる。
また、このような第1溶媒に対して、流動活性化エネルギーが5kJ/mol以上小さい第2溶媒としては、ジベンジルエーテル(18.7kJ/mol)、3-フェノキシトルエン(20.1kJ/mol)、ジフェニルエーテル(18.3kJ/mol)等が挙げられる。
【0057】
<粘度>
第2溶媒は、23℃における粘度が5mPas以下であることが好ましい。第2溶媒の粘度が上記上限以下であることにより、組成物を調製する際に、粘度が高めの第1溶媒や、粘度を高くしやすい機能性材料も選択できるようになり、第1溶媒や機能性材料の選択の幅、インク濃度の選択の幅が広がる。
第2溶媒の粘度は、特に4.5mPas以下であることが好ましい。一方、インクジェットヘッドに充填された際に、ヘッド内にインクを保持しやすい観点から、第2溶媒の粘度は1.0mPas以上が好ましい。
本発明において、溶媒の粘度はE型粘度計RE85L(東機産業製)を用いて、23℃環境下にて、コーンプレート回転数20rpm~100rpmにより測定することができる。
第1溶媒の粘度は、3mPas以上20mPas以下が好ましい。
【0058】
<表面張力>
第1溶媒の表面張力は、30mN/m以上が好ましく、45mN/m以下であることが好ましい。第1溶媒の表面張力がこの範囲であることで、インク全体としての表面張力を適正な範囲に保ち、インクジェット装置での安定吐出が可能になると考えられる。また、第1溶媒の表面張力がこの範囲であることで、バンク内の液面が平坦化しやすく好ましいと考えられる。第1溶媒の表面張力が上記下限値以上であることで、乾燥中に液表面に一定以上の張力が発生し、表面積が小さくなろうとするために、膜にシワなどが発生しにくい。一方で、第1溶媒の表面張力が上記上限値以下であることで、乾燥中に表面張力差が発生しにくく、無駄なマランゴニ対流などが発生しにくくなるため、平坦な膜を形成しやすく好ましい。
本発明において、溶媒の表面張力は23.0℃の環境にて、白金プレートを用いたプレート法により測定することができる。
【0059】
<溶媒の組み合わせ>
本発明の組成物に含まれる第1溶媒及び第2溶媒は、それぞれ1種であっても複数種であってもよい。
特に、第1溶媒が2種以上含まれていることで、溶媒の対流を生み出しやすい表面張力を調整できるため、平坦性をより一層高めることができ、好ましい。
本発明の組成物に含まれる第1溶媒および第2溶媒は、いずれも非水溶性溶媒であることが好ましく、第1溶媒および第2溶媒とも非水溶性芳香族系溶媒であることが更に好ましい。
【0060】
特に、機能性材料がよく溶解し、乾燥過程においても容易に析出してこないというの観点から、第1溶媒及び第2溶媒は、それぞれ置換基を有していてもよい、ナフタレン、安息香酸エステル、芳香族エーテルのいずれかであることが好ましい。
【0061】
また、前述の溶媒のうち、好ましい第1溶媒と第2溶媒の組み合わせとしては、以下のものが挙げられる。
【0062】
第1溶媒:好ましくは、安息香酸2-エチルヘキシル、安息香酸ベンジル、1-アセチルナフタレン、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、エチルビフェニル、イソプロピルビフェニル、ジイソプロピルビフェニル、トリイソプロピルビフェニル、イソ酪酸2-フェノキシエチルの少なくともいずれか、より好ましくは、安息香酸2-エチルヘキシル、安息香酸ベンジル、1-アセチルナフタレン、フタル酸ジメチル、イソ酪酸2-フェノキシエチルの1種又は2種以上である。
【0063】
第2溶媒:好ましくは、メチルナフタレン、エチルナフタレン、イソプロピルナフタレン、メトキシナフタレン、安息香酸ブチル、安息香酸ペンチル、安息香酸イソペンチル、ジフェニルメタン、ベンジルトルエンのいずれか、より好ましくは、メチルナフタレン、エチルナフタレン、安息香酸ブチルの1種又は2種以上である。
【0064】
さらに、第1溶媒と第2溶媒の好ましい組み合わせとしては、主に安息香酸2-エチルヘキシルとメチルナフタレン、安息香酸2-エチルヘキシルとエチルナフタレン、安息香酸2-エチルヘキシルとイソプロピルナフタレン、安息香酸2-エチルヘキシルと安息香酸ブチル、安息香酸2-エチルヘキシルと安息香酸イソペンチル、安息香酸ベンジルとメチルナフタレン、安息香酸ベンジルとエチルナフタレン、安息香酸ベンジルとイソプロピルナフタレン、安息香酸ベンジルと安息香酸ブチル、安息香酸ベンジルと安息香酸イソペンチルの組み合わせが挙げられる。
【0065】
本発明の組成物が第1溶媒を2種以上含む場合、その好ましい組み合わせとしては、例えば安息香酸2-エチルヘキシルと安息香酸ベンジル、安息香酸2-エチルヘキシルとフタル酸ジメチル、安息香酸2-エチルヘキシルと1-アセチルナフタレンの組み合わせなどが挙げられる。
【0066】
[第1溶媒と第2溶媒の含有量]
本発明の組成物中の溶媒の全量に対して、第1溶媒の含有量は、5~50重量%である。第2溶媒の揮発によって第1溶媒の温度を効率的に下げるためには、揮発成分を多くしておくことが必要であるため、第1溶媒の含有量は50重量%以下であり、好ましくは40重量%以下、より好ましくは30重量%以下である。第2溶媒の揮発時に機能性材料を溶解した状態とするために、第1溶媒の含有量は5重量%以上であり、好ましくは10重量%以上、より好ましくは15重量%以上である。
【0067】
組成物中に含まれる溶媒の全量に対する第1溶媒と第2溶媒の合計の含有量は50重量%以上が好ましく、70重量%以上がより好ましく、80重量%以上がさらに好ましく、85重量%以上が特に好ましく、90重量%以上がとりわけ好ましく、最も好ましくは95重量%以上であり、上限としては100重量%である。第1溶媒と第2溶媒の合計の含有量が上記下限以上であることで、微小ノズルから吐出可能なインクとして使用可能であり、溶媒の乾燥を制御しやすく、本発明の効果が得られやすい。
【0068】
<その他の溶媒>
本発明の組成物は、第1溶媒および第2溶媒以外の溶媒を含んでいてもよい。
第1溶媒および第2溶媒以外の溶媒としては、沸点245℃未満の溶媒の1種又は2種以上、例えば高沸点成分として流動活性化エネルギーが低いジベンジルエーテルや、ベンジルトルエンを用いることができる。
これらのその他の溶媒を含むことで、温度低下に伴う増粘効果を、材料によって調整できるメリットがあるが、第1溶媒及び第2溶媒を含むことによる本発明の効果を確実に得る上で、第1溶媒及び第2溶媒以外のその他の溶媒の含有量は、本発明の組成物に含まれる溶媒全体に対して50重量%以下が好ましく、30重量%以下がより好ましく、20重量%以下がさらに好ましく、15重量%以下が特に好ましく、10重量%以下がとりわけ好ましく、5重量%以下が最も好ましい。
【0069】
[機能性材料]
本発明における機能性材料は、分子量50,000以下であることが好ましい。本発明における機能性材料は、低分子材料であっても高分子材料であってもよいが、低分子材料である場合により顕著な効果を得ることができる。ここで、低分子材料とは、分子量10,000以下であることが好ましく、更に好ましくは分子量5,000以下である。
【0070】
本発明における機能性材料としては、後述の発光層用材料、正孔注入層用材料、正孔輸送層用材料または電子輸送層用材料を用いることができ、好ましくは発光層用材料、正孔注入層用材料、または正孔輸送層用材料であり、特に好ましくは、低分子の発光層用材料である。
【0071】
本発明の組成物には、機能性材料の1種のみが含まれていてもよく、2種以上が含まれていてもよい。
【0072】
[溶媒と機能性材料の含有量]
本発明の組成物中の機能性材料の含有量には特に制限はないが、好ましくは0.1重量%以上、さらに好ましくは0.5重量%以上、より好ましくは1.0重量%以上であり、好ましくは20重量%以下、さらに好ましくは15重量%以下、より好ましくは10重量%以下である。
【0073】
本発明の組成物としては、具体的には、後述の発光層形成用組成物、正孔注入層形成用組成物、正孔輸送層形成用組成物、電気輸送層形成用組成物が挙げられ、その溶媒の好ましい含有量は、各々の層形成用組成物において後述する通りである。また、機能性材料の含有量についても、各々の層形成用組成物において後述する発光層用材料、正孔注入層用材料、正孔輸送層用材料、電子輸送層用材料の含有量が該当する。
【0074】
[湿式成膜法による成膜]
本発明の組成物は有機電界発光素子の製造において、機能性膜の形成に好適に用いられる。有機電界発光素子の構成は後述の通りである。
本発明における有機電界発光素子は通常、電極が設けられた基板に、発光画素をバンクと呼ばれる隔壁で区画された微小領域を有する。このバンクで区画された微小領域内に本発明の組成物を吐出し、乾燥して、適宜加熱することによって機能性膜を形成する。
【0075】
吐出方法は、微小なノズルからバンクで区画された微小領域よりも小さい液滴を吐出する方法であり、複数の液滴を吐出することによってバンクで区画された微小領域を本発明の組成物で満たすことが好ましい。吐出法としては好ましくはインクジェット法である。
【0076】
湿式成膜法では、バンクで区画された微小領域を本発明の組成物で満たしたのち、真空乾燥する。真空乾燥とは、減圧することにより溶媒を揮発させることである。本発明においては、第1溶媒の方が第2溶媒よりも沸点が高いことから、通常は第2溶媒の方が蒸気圧が高く、第1溶媒よりも先に第2溶媒が揮発する。第2溶媒が揮発すると気化熱が奪われ、バンク内の組成物温度が徐々に低下する。第2溶媒は温度低下による粘度上昇が大きくないことが好ましい。従って、前述の通り、第2溶媒の流動活性化エネルギーは第1溶媒の流動活性化エネルギーよりも低いことが好ましい。そうすると、第2溶媒がある程度残っている間はあまり粘度上昇しないが、第2溶媒の大半が揮発するとさらに組成物温度が低下し、組成物内に残っている流動活性化エネルギーが高い第1溶媒により、組成物の粘度が急激に上昇し、液が流動しにくくなる。そのため、バンクで区画された微小領域内の組成物内では濃度勾配による液移動やマランゴニ対流などが起こりにくくなる。これにより、溶媒が揮発している最中の組成物の流動による液面形状の乱れを抑制することが可能となり、溶媒揮発後の乾燥膜の表面を均一になるように乾燥条件を制御することが可能となる。
【0077】
第1溶媒及び第2溶媒はともに真空乾燥により大半は揮発させることが可能であるが、十分乾燥させるために、次いで加熱乾燥を行う。加熱温度は機能性膜が結晶化または凝集しない温度および時間とすることが好ましい。
【0078】
機能性材料が低分子材料である場合、加熱温度は通常50℃以上、好ましくは80℃以上、更に好ましくは100℃以上、より好ましくは120℃以上であり、通常200℃以下、好ましくは180℃以下、更に好ましくは150℃以下である。加熱時間は通常1分以上、好ましくは3分以上、より好ましくは5分以上であり、通常120分以下、好ましくは90分以下、より好ましくは60分以下である。
【0079】
機能性材料が高分子材料である場合、加熱温度は通常80℃以上、好ましくは100℃以上、更に好ましくは150℃以上、より好ましくは200℃以上であり、通常300℃以下、好ましくは270℃以下、更に好ましくは240℃以下である。加熱時間は通常1分以上、好ましくは3分以上、より好ましくは5分以上であり、通常120分以下、好ましくは90分以下、より好ましくは60分以下である。
【0080】
加熱方法は、ホットプレート、オーブン、赤外線照射等により実施することができる。分子振動を直接与える赤外線照射の場合の加熱時間は上記下限に近い時間で十分であり、熱源に基板が直接接するかまたは熱源と基板が極めて近くに配置されるホットプレート加熱の場合は赤外線照射よりは長い時間が必要である。オーブン加熱の場合、即ち、オーブン内の気体、通常は空気または窒素若しくはアルゴンなどの不活性ガスによる加熱の場合は、温度上昇に時間を要するため、上記加熱時間の上限に近い加熱時間が好ましい。加熱方法によって加熱時間は適宜調整される。
【0081】
〔機能性膜〕
機能性膜中に含まれる機能性材料は通常70重量%以上であり、好ましくは80重量%以上、さらに好ましくは90重量%以上、特に好ましくは95重量%以上であり、実質的に100重量%であることが最も好ましく、上限は100重量%である。実質的に100重量%であるとは、機能性膜に微量の添加剤、残留溶媒及び不純物が含まれる場合があるということである。機能性膜中の機能性材料の含有量がこの範囲であることにより、機能性材料の機能をより効果的に発現させることができる。
【0082】
〔有機電界発光素子の層構成と形成方法〕
本発明の組成物を用いて製造される有機電界発光素子(以下、「本発明の有機電界発光素子」と称す場合がある。)の層構成及びその形成方法の実施の形態の好ましい例を、図1を参照して説明する。
【0083】
図1は本発明の有機電界発光素子10の構造例を示す断面の模式図である。図1において、1は基板、2は陽極、3は正孔注入層、4は正孔輸送層、5は発光層、6は正孔阻止層、7は電子輸送層、8は電子注入層、9は陰極を各々表す。
【0084】
本発明の有機電界発光素子は、陽極、発光層及び陰極を必須の構成層とするが、必要に応じて、図1に示すように陽極2と発光層5及び陰極9と発光層5との間に他の機能層を有していてもよい。
【0085】
[基板]
基板1は、有機電界発光素子の支持体となるものである。基板1としては、石英やガラスの板、金属板や金属箔、プラスチックフィルムやシート等が用いられる。特にガラス板;ポリエステル、ポリメタクリレート、ポリカーボネート、ポリスルホン等の透明な合成樹脂の板が好ましい。合成樹脂基板を使用する場合には、ガスバリア性に留意するのが好ましい。基板のガスバリア性
は、基板を通過した外気による有機電界発光素子の劣化が起こり難いので、大きいことが好ましい。このため、合成樹脂基板の少なくとも片面に緻密なシリコン酸化膜等を設けてガスバリア性を確保する方法も好ましい方法の一つである。
【0086】
[陽極]
陽極2は、発光層5側の層への正孔注入の役割を果たす電極である。
陽極2は、通常、アルミニウム、金、銀、ニッケル、パラジウム、白金等の金属、インジウム及び/又はスズの酸化物等の金属酸化物、ヨウ化銅等のハロゲン化金属、カーボンブラック、或いは、ポリ(3-メチルチオフェン)、ポリピロール、ポリアニリン等の導電性高分子等により構成される。
【0087】
陽極2の形成は、通常、スパッタリング法、真空蒸着法等の方法により行われることが多い。
銀等の金属微粒子、ヨウ化銅等の微粒子、カーボンブラック、導電性の金属酸化物微粒子、導電性高分子微粉末等を用いて陽極2を形成する場合には、これらの微粒子などを適当なバインダー樹脂溶液に分散させて、基板1上に塗布することにより、陽極2を形成することもできる。
導電性高分子の場合は、電解重合により直接基板1上に薄膜を形成することもできる。
基板1上に導電性高分子を塗布して陽極2を形成することもできる(Appl.Phys.Lett.,60巻,2711頁,1992年)。
【0088】
陽極2は通常は単層構造であるが、所望により複数の材料からなる積層構造とすることも可能である。
【0089】
陽極2の厚みは、必要とする透明性などに応じて適宜選択すればよい。透明性が必要とされる場合は、可視光の透過率を、通常60%以上、好ましくは80%以上とすることが好ましい。この場合、陽極2の厚みは、通常5nm以上、好ましくは10nm以上で、通常1000nm以下、好ましくは500nm以下程度である。不透明でよい場合は、陽極2の厚みは任意である。陽極2の機能を兼ね備えた基板1を用いてもよい。上記の陽極2の上に異なる導電材料を積層することも可能である。
【0090】
陽極2に付着した不純物を除去し、イオン化ポテンシャルを調整して正孔注入性を向上させることを目的に、陽極2表面を紫外線(UV)/オゾン処理したり、酸素プラズマ、アルゴンプラズマ処理したりすることは好ましい。
【0091】
[正孔注入層]
正孔注入層3は、陽極2から発光層5へ正孔を輸送する層である。正孔注入層3を設ける場合は、正孔注入層3は、通常、陽極2上に形成される。
【0092】
正孔注入層3の形成方法は、真空蒸着法でも、湿式成膜法でもよく、特に制限はない。正孔注入層3は、ダークスポット低減の観点から湿式成膜法により形成することが好ましい。
正孔注入層3の膜厚は、通常5nm以上、好ましくは10nm以上で、通常1000nm以下、好ましくは500nm以下の範囲である。
【0093】
(正孔輸送材料)
正孔注入層形成用組成物は通常、正孔注入層3の構成材料として正孔輸送材料及び溶剤を含有する。
【0094】
正孔輸送材料は、通常、有機電界発光素子の正孔注入層3に使用される、正孔輸送性を有する化合物であれば、重合体などの高分子化合物であっても、単量体などの低分子化合物であってもよいが、高分子化合物であることが好ましい。
【0095】
正孔輸送材料としては、陽極2から正孔注入層3への電荷注入障壁の観点から4.5eV~6.0eVのイオン化ポテンシャルを有する化合物が好ましい。正孔輸送材料の例としては、芳香族アミン誘導体、フタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体、オリゴチオフェン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ベンジルフェニル誘導体、フルオレン基で3級アミンを連結した化合物、ヒドラゾン誘導体、シラザン誘導体、シラナミン誘導体、ホスファミン誘導体、キナクリドン誘導体、ポリアニリン誘導体、ポリピロール誘導体、ポリフェニレンビニレン誘導体、ポリチエニレンビニレン誘導体、ポリキノリン誘導体、ポリキノキサリン誘導体、カーボン等が挙げられる。
【0096】
本発明において誘導体とは、例えば芳香族アミン誘導体を例にするならば、芳香族アミンそのもの及び芳香族アミンを主骨格とする化合物を含むものであり、重合体であっても、単量体であってもよい。
【0097】
正孔注入層3の材料として用いられる正孔輸送材料は、このような化合物のうち何れか1種を単独で含有していてもよく、2種以上を含有していてもよい。2種以上の正孔輸送材料を含有する場合、その組み合わせは任意であるが、芳香族三級アミン高分子化合物1種又は2種以上と、その他の正孔輸送材料1種又は2種以上とを併用することが好ましい。
【0098】
正孔輸送材料としては、上記例示した中でも非晶質性、可視光の透過率の点から、芳香族アミン化合物が好ましく、特に芳香族三級アミン化合物が好ましい。芳香族三級アミン化合物とは、芳香族三級アミン構造を有する化合物であって、芳香族三級アミン由来の基を有する化合物も含む。
【0099】
芳香族三級アミン化合物の種類は特に制限されないが、表面平滑化効果による均一な発光の点から、重量平均分子量が1000以上、1000000以下の高分子化合物(繰り返し単位が連なる重合型化合物)がさらに好ましい。芳香族三級アミン高分子化合物の好ましい例として、下記式(1)又は下記式(11)で表される繰り返し単位を有する高分子化合物が挙げられる。
【0100】
【化1】
【0101】
(式(1)中、
Arは、置換基を有していてもよい、芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基を表し、
Arは、置換基を有していてもよい、二価の芳香族炭化水素基又は二価の芳香族複素環基、若しくは、該芳香族炭化水素基及び芳香族複素環基が、直接又は連結基を介して、複数個連結した二価の基を表す。)
【0102】
前記式(1)において、芳香族炭化水素基及び芳香族複素環基が、連結基を介して複数個連結したものである場合の連結基は、二価の連結基であり、例えば-O-基、-C(=O)-基及び(置換基を有していていてもよい)-CH-基から選ばれる基を任意の順番で1~30個、好ましくは1~5個、更に好ましくは1~3個連結してなる基が挙げられる。
連結基の中では、発光層への正孔注入に優れる点で、式(1)中のArが、下記式(2)で表される連結基を介して複数個連結された芳香族炭化水素基または芳香族複素環基であることが好ましい。
【0103】
【化2】
【0104】
(式(2)中、
dは1~10の整数を表し、
及びRは、各々独立して、水素原子又は置換基を有していてもよい、アルキル基、芳香族炭化水素基、又は芳香族複素環基を表す。
、Rが複数個存在する場合、同じであっても異なっていてもよい。)
【0105】
【化3】
【0106】
上記式(11)中、j、k、l、m、n、pは、各々独立に、0以上の整数を表す。但し、l+m≧1である。Ar11、Ar12、Ar14は、それぞれ独立に、置換基を有していても良い炭素数30以下の2価の芳香環基を表す。Ar13は、置換基を有していても良い炭素数30以下の2価の芳香環基または下記式(12)で表される2価の基を表し、Q11、Q12は、各々独立に、酸素原子、硫黄原子、置換基を有していても良い炭素数6以下の炭化水素鎖を表し、S~Sは、各々独立に、下記式(13)で表される基で表される。
なお、ここでいう芳香環基とは、芳香族炭化水素環基及び芳香族複素環基のことを言う。
【0107】
Ar11、Ar12、Ar14の芳香環基の例としては、単環、2~6縮合環又はこれらの芳香族環が2つ以上連結した基が挙げられる。単環又は2~6縮合環の芳香環基の具体例としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ペリレン環、テトラセン環、ピレン環、ベンズピレン環、クリセン環、トリフェニレン環、アセナフテン環、フルオランテン環、フルオレン環、ビフェニル基、ターフェニル基、クアテルフェニル基、フラン環、ベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、インドール環、カルバゾール環、ピロロイミダゾール環、ピロロピラゾール環、ピロロピロール環、チエノピロール環、チエノチオフェン環、フロピロール環、フロフラン環、チエノフラン環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、シノリン環、キノキサリン環、フェナントリジン環、ベンゾイミダゾール環、ペリミジン環、キナゾリン環、キナゾリノン環もしくはアズレン環由来の2価の基が挙げられる。中でも負電荷を効率良く非局在化すること、安定性、耐熱性に優れることから、ベンゼン環、ナフタレン環、フルオレン環、ピリジン環もしくはカルバゾール環由来の2価の基またはビフェニル基が好ましい。
Ar13の芳香環基の例としては、Ar11、Ar12、Ar14の場合と同様である。
【0108】
【化4】
【0109】
上記式(12)中、R11は、アルキル基、芳香環基または炭素数40以下のアルキル基と芳香環基からなる3価の基を表し、これらは置換基を有していても良い。R12は、アルキル基、芳香環基または炭素数40以下のアルキル基と芳香環基からなる2価の基を表し、これらは置換基を有していても良い。Ar31は、1価の芳香環基、又は1価の架橋基を表し、これらの基は置換基を有していても良い。qは1~4を表す。qが2以上の場合、複数のR12は同一であっても異なっていてもよく、複数のAr31は同一であっても異なっていてもよい。アスタリスク(*)は式(11)の窒素原子との結合手を示す。
【0110】
11の芳香環基としては、炭素数3以上30以下の単環又は縮合環である芳香環基1つであるか、又はそれらが2~6連結した基が好ましく、具体例としては、ベンゼン環、フルオレン環、ナフタレン環、カルバゾール環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環及びこれらが2~6連結した基由来の3価の基が挙げられる。
11のアルキル基としては、炭素数1以上12以下の直鎖、分岐、又は環を含むアルキル基が好ましく、具体例としては、メタン、エタン、プロパン、イソプロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、ヘキサン、オクタン由来の基等が挙げられる。
11の炭素数40以下のアルキル基と芳香環基からなる基としては、好ましくは炭素数1以上12以下の直鎖、分岐、又は環を含むアルキル基と、炭素数3以上30以下の単環又は縮合環である芳香環基1つ又は2~6連結した基とが連結した基が挙げられる。
【0111】
12の芳香環基の具体例としては、ベンゼン環、フルオレン環、ナフタレン環、カルバゾール環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環及びこれらが連結した炭素数30以下の連結環由来の2価の基が挙げられる。
12のアルキル基の具体例としては、メタン、エタン、プロパン、イソプロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、ヘキサン、オクタン由来の2価の基等が挙げられる。
【0112】
Ar31の芳香環基の具体例としては、ベンゼン環、フルオレン環、ナフタレン環、カルバゾール環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環及びこれらが連結した炭素数30以下の連結環由来の1価の基が挙げられる。
【0113】
式(12)の好ましい構造の例としては以下の構造が挙げられ、R11の部分構造である下記構造における主鎖のベンゼン環またはフルオレン環はさらに置換基を有していてもよい。
【0114】
【化5】
【0115】
Ar31の架橋基の例としては、ベンゾシクロブテン環、ナフトシクロブテン環またはオキセタン環由来の基、ビニル基、アクリル基等が挙げられる。化合物の安定性からベンゾシクロブテン環またはナフトシクロブテン環由来の基が好ましい。
【0116】
【化6】
【0117】
上記式(13)中、x,yは、0以上の整数を表す。Ar21、Ar23は、それぞれ独立に、2価の芳香環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。Ar22は置換基を有していても良い1価の芳香環基を表し、R13は、アルキル基、芳香環基、またはアルキル基と芳香環基からなる2価の基を表し、これらは置換基を有していても良い。Ar32は1価の芳香環基又は1価の架橋基を表し、これらの基は置換基を有していても良い。アスタリスク(*)は式(11)の窒素原子との結合手を示す。
【0118】
Ar21、Ar23の芳香環基の例としては、Ar11、Ar12、Ar14の場合と同様である。
【0119】
Ar22、Ar32の芳香環基の例としては、単環、2~6縮合環又はこれらの芳香族環が2つ以上連結した基が挙げられる。具体例としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ペリレン環、テトラセン環、ピレン環、ベンズピレン環、クリセン環、トリフェニレン環、アセナフテン環、フルオランテン環、フルオレン環、ビフェニル基、ターフェニル基、クアテルフェニル基、フラン環、ベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、インドール環、カルバゾール環、ピロロイミダゾール環、ピロロピラゾール環、ピロロピロール環、チエノピロール環、チエノチオフェン環、フロピロール環、フロフラン環、チエノフラン環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、シノリン環、キノキサリン環、フェナントリジン環、ベンゾイミダゾール環、ペリミジン環、キナゾリン環、キナゾリノン環もしくはアズレン環由来の1価の基が挙げられる。中でも負電荷を効率良く非局在化すること、安定性、耐熱性に優れることから、ベンゼン環、ナフタレン環、フルオレン環、ピリジン環もしくはカルバゾール環由来の1価の基またはビフェニル基が好ましい。
【0120】
13のアルキル基または芳香環基の例としては、R12と同様である。
【0121】
Ar32の架橋基は特に限定しないが、好ましい例としては、ベンゾシクロブテン環、ナフトシクロブテン環もしくはオキセタン環由来の基、ビニル基、アクリル基等が挙げられる。
【0122】
上記Ar11~Ar14、R11~R13、Ar21~Ar23、Ar31~Ar32、Q11、Q12はいずれも、本発明の趣旨に反しない限りにおいて、更に置換基を有していても良い。置換基の分子量としては、400以下が好ましく、中でも250以下がより好ましい。置換基の種類は特に制限されないが、例としては、下記の置換基群Wから選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。
【0123】
[置換基群W]
メチル基、エチル基等の、炭素数が1以上、好ましくは10以下、さらに好ましくは8以下のアルキル基;ビニル基等の、炭素数が2以上、好ましくは11以下、さらに好ましくは5以下のアルケニル基;エチニル基等の、炭素数が2以上、好ましくは11以下、さらに好ましくは5以下のアルキニル基;メトキシ基、エトキシ基等の、炭素数が1以上、好ましくは10以下、さらに好ましくは6以下のアルコキシ基;フェノキシ基、ナフトキシ基、ピリジルオキシ基等の、炭素数が4以上、好ましくは5以上、好ましくは25以下、さらに好ましくは14以下のアリールオキシ基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等の、炭素数が2以上、好ましくは11以下、さらに好ましくは7以下のアルコキシカルボニル基;ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等の、炭素数が2以上、好ましくは20以下、さらに好ましくは12以下のジアルキルアミノ基;ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基、N-カルバゾリル基等の、炭素数が10以上、好ましくは12以上、好ましくは30以下、さらに好ましくは22以下のジアリールアミノ基;フェニルメチルアミノ基等の、炭素数が6以上、さらに好ましくは7以上、好ましくは25以下、さらに好ましくは17以下のアリールアルキルアミノ基;アセチル基、ベンゾイル基等の、炭素数が2以上、好ましくは10以下、さらに好ましくは7以下のアシル基;フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子;トリフルオロメチル基等の、炭素数が1以上、好ましくは8以下、さらに好ましくは4以下のハロアルキル基;メチルチオ基、エチルチオ基等の、炭素数が1以上、好ましくは10以下、さらに好ましくは6以下のアルキルチオ基;フェニルチオ基、ナフチルチオ基、ピリジルチオ基等の、炭素数が4以上、好ましくは5以上、好ましくは25以下、さらに好ましくは14以下のアリールチオ基;トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基等の、炭素数が2以上、好ましくは3以上、好ましくは33以下、さらに好ましくは26以下のシリル基;トリメチルシロキシ基、トリフェニルシロキシ基等の、炭素数が2以上、好ましくは3以上、好ましくは33以下、さらに好ましくは26以下のシロキシ基;シアノ基;フェニル基、ナフチル基等の、炭素数が6以上、好ましくは30以下、さらに好ましくは18以下の芳香族炭化水素基;チエニル基、ピリジル基等の、炭素数が3以上、好ましくは4以上、好ましくは28以下、さらに好ましくは17以下の芳香族複素環基。
【0124】
上記置換基群Wのうち、溶解性を向上させる観点からアルキル基又はアルコキシ基が好ましく、電荷輸送性及び安定性の観点から芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基が好ましい。
【0125】
特に、式(11)で表される繰り返し単位を有する高分子化合物の中でも、下記式(14)で表される繰り返し単位を有する高分子化合物が、正孔注入・輸送性が非常に高くなるので好ましい。
【0126】
【化7】
【0127】
上記式(14)中、R21~R25は各々独立に、任意の置換基を表す。R21~R25の置換基の具体例は、前述の[置換基群W]に記載されている置換基と同様である。
s、tは各々独立に、0以上、5以下の整数を表す。
u、v、wは各々独立に、0以上、4以下の整数を表す。
【0128】
芳香族三級アミン高分子化合物の好ましい例として、下記式(15)及び/又は式(16)で表される繰り返し単位を含む高分子化合物が挙げられる。
【0129】
【化8】
【0130】
上記式(15)、式(16)中、Ar45、Ar47及びAr48は各々独立して、置換基を有していても良い1価の芳香族炭化水素基又は置換基を有していても良い1価の芳香族複素環基を表す。Ar44及びAr46は各々独立して、置換基を有していても良い2価の芳香族炭化水素基、又は置換基を有していても良い2価の芳香族複素環基を表す。R41~R43は各々独立して、水素原子又は任意の置換基を表す。
【0131】
Ar45、Ar47及びAr48の具体例、好ましい例、有していても良い置換基の例及び好ましい置換基の例は、Ar22と同様であり、Ar44及びAr46の具体例、好ましい例、有していても良い置換基の例及び好ましい置換基の例は、Ar11、Ar12及びAr14と同様である。R41~R43として好ましくは、水素原子又は前述の[置換基群W]に記載されている置換基であり、更に好ましくは、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基、芳香族炭化水素基または芳香族複素環基である。
【0132】
以下に、本発明において適用可能な、式(15)、式(16)で表される繰り返し単位の好ましい具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0133】
【化9】
【0134】
(電子受容性化合物)
正孔注入層形成用組成物は、正孔注入層3の構成材料として、電子受容性化合物を含有していることが好ましい。
【0135】
電子受容性化合物とは、酸化力を有し、上述の正孔輸送材料から1電子受容する能力を有する化合物が好ましい。具体的には、電子受容性化合物としては、電子親和力が4.0eV以上である化合物が好ましく、5.0eV以上の化合物がさらに好ましい。
【0136】
このような電子受容性化合物としては、例えばトリアリールホウ素化合物、ハロゲン化金属、ルイス酸、有機酸、オニウム塩、アリールアミンとハロゲン化金属との塩、アリールアミンとルイス酸との塩よりなる群から選ばれる1種又は2種以上の化合物等が挙げられる。さらに具体的には、電子受容性化合物としては、4-イソプロピル-4’-メチルジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、トリフェニルスルホニウムテトラフルオロボラート等の有機基の置換したオニウム塩(国際公開2005/089024号、国際公開2017/164268号);塩化鉄(III)(特開平11-251067号公報)、ペルオキソ二硫酸アンモニウム等の高原子価の無機化合物;テトラシアノエチレン等のシアノ化合物、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン(特開2003-31365号公報)等の芳香族ホウ素化合物;フラーレン誘導体;ヨウ素;ポリスチレンスルホン酸イオン、アルキルベンゼンスルホン酸イオン、ショウノウスルホン酸イオン等のスルホン酸イオン等が挙げられる。
【0137】
電子受容性化合物は、正孔輸送材料を酸化することにより正孔注入層3の導電率を向上させることができる。
【0138】
(その他の構成材料)
正孔注入層3の材料としては、本発明の効果を著しく損なわない限り、上述の正孔輸送材料や電子受容性化合物に加えて、さらに、その他の成分を含有させてもよい。
【0139】
(溶剤)
湿式成膜法に用いる正孔注入層形成用組成物の溶剤のうち少なくとも1種は、上述の正孔注入層3の構成材料を溶解しうる化合物であることが好ましい。
【0140】
正孔注入層形成用組成物が本発明の組成物である場合は、溶剤は本発明の前記第1溶媒と前記第2溶媒である。
【0141】
溶剤として例えばエーテル系溶剤、エステル系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤、アミド系溶剤などが挙げられる。
【0142】
エーテル系溶剤としては、例えばエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコール-1-モノメチルエーテルアセタート(PGMEA)等の脂肪族エーテル;1,2-ジメトキシベンゼン、1,3-ジメトキシベンゼン、アニソール、フェネトール、2-メトキシトルエン、3-メトキシトルエン、4-メトキシトルエン、2,3-ジメチルアニソール、2,4-ジメチルアニソール等の芳香族エーテル等が挙げられる。
【0143】
エステル系溶剤としては、例えば酢酸フェニル、プロピオン酸フェニル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸n-ブチル等の芳香族エステル等が挙げられる。
【0144】
芳香族炭化水素系溶剤としては、例えばトルエン、キシレン、シクロヘキシルベンゼン、3-イソプロピルビフェニル、1,2,3,4-テトラメチルベンゼン、1,4-ジイソプロピルベンゼン、メチルナフタレン等が挙げられる。
【0145】
アミド系溶剤としては、例えばN,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等が挙げられる。
その他、ジメチルスルホキシド等も用いることができる。
中でも好ましくは、芳香族エステル、芳香族エーテルである。
【0146】
これらの溶剤は1種類を単独で用いてもよく、また2種類以上を任意の組み合わせ、及び比率で用いてもよい。
【0147】
正孔注入層形成用組成物中の正孔輸送材料の濃度は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。正孔注入層形成用組成物中の正孔輸送材料の濃度は、膜厚の均一性の点から、好ましくは0.01重量%以上、より好ましくは0.1重量%以上、さらに好ましくは0.5重量%以上である。正孔注入層形成用組成物中の正孔輸送材料の濃度は、好ましくは70重量%以下、より好ましくは60重量%以下、さらに好ましくは50重量%以下である。この濃度は、膜厚ムラが生じ難い点では小さいことが好ましい。また、この濃度は、成膜された正孔注入層に欠陥が生じ難い点では大きいことが好ましい。
【0148】
(湿式成膜法による正孔注入層の形成)
湿式成膜法により正孔注入層3を形成する場合、通常は、正孔注入層3を構成する材料を適切な溶剤(正孔注入層用溶剤)と混合して成膜用の組成物(正孔注入層形成用組成物)を調製し、この正孔注入層3形成用組成物を適切な手法により、正孔注入層の下層に該当する層(通常は、陽極2)上に塗布して成膜し、乾燥することにより正孔注入層3を形成する。
【0149】
(真空蒸着法による正孔注入層3の形成)
真空蒸着法により正孔注入層3を形成する場合には、例えば以下のようにして正孔輸送層3を形成することができる。正孔注入層3の構成材料(前述の正孔輸送材料、電子受容性化合物等)の1種又は2種以上を真空容器内に設置されたるつぼに入れ(2種以上の材料を用いる場合は各々のるつぼに入れ)、真空容器内を適当な真空ポンプで10-4Pa程度まで排気する。この後、るつぼを加熱して(2種以上の材料を用いる場合は各々のるつぼを加熱して)、蒸発量を制御して蒸発させ(2種以上の材料を用いる場合は各々独立に蒸発量を制御して蒸発させ)、るつぼと向き合って置かれた基板1の陽極2上に正孔注入層3を形成させる。2種以上の材料を用いる場合は、それらの混合物をるつぼに入れ、加熱、蒸発させて正孔注入層3を形成することもできる。
【0150】
蒸着時の真空度は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されない。蒸着時の真空度は、通常0.1×10-6Torr(0.13×10-4Pa)以上、9.0×10-6Torr(12.0×-4Pa)以下である。蒸着速度は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されない。蒸着速度は、通常0.1Å/秒以上、5.0Å/秒以下である。蒸着時の成膜温度は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されない。蒸着時の成膜温度は、好ましくは10℃以上、50℃以下で行われる。
【0151】
[正孔輸送層]
正孔輸送層4は、陽極2から発光層5へ輸送する層である。正孔輸送層4は、本発明の有機電界発光素子に必須の層ではないが、正孔輸送層4を設ける場合は、通常、正孔輸送層4は、正孔注入層3がある場合には正孔注入層3の上に、正孔注入層3が無い場合には陽極2の上に形成する。
【0152】
正孔輸送層4の形成方法は、真空蒸着法でも、湿式成膜法でもよく、特に制限はない。正孔輸送層4は、ダークスポット低減の観点から湿式成膜法により形成することが好ましい。
【0153】
正孔輸送層4を形成する材料としては、正孔輸送性が高く、かつ、注入された正孔を効率よく輸送することができる材料であることが好ましい。そのために、正孔輸送層4を形成する材料は、イオン化ポテンシャルが小さく、可視光の光に対して透明性が高く、正孔移動度が大きく、安定性に優れ、トラップとなる不純物が製造時や使用時に発生しにくいことが好ましい。多くの場合、正孔輸送層4は、発光層5に接するため、発光層5からの発光を消光したり、発光層5との間でエキサイプレックスを形成して効率を低下させたりしないことが好ましい。
【0154】
正孔輸送層4の材料としては、従来、正孔輸送層4の構成材料として用いられている材料であればよい。正孔輸送層4の材料としては、例えばアリールアミン誘導体、フルオレン誘導体、スピロ誘導体、カルバゾール誘導体、ピリジン誘導体、ピラジン誘導体、ピリミジン誘導体、トリアジン誘導体、キノリン誘導体、フェナントロリン誘導体、フタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体、シロール誘導体、オリゴチオフェン誘導体、縮合多環芳香族誘導体、金属錯体などが挙げられる。
【0155】
正孔輸送層4の材料としては、例えばポリビニルカルバゾール誘導体、ポリアリールアミン誘導体、ポリビニルトリフェニルアミン誘導体、ポリフルオレン誘導体、ポリアリーレン誘導体、テトラフェニルベンジジンを含有するポリアリーレンエーテルサルホン誘導体、ポリアリーレンビニレン誘導体、ポリシロキサン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリ(p-フェニレンビニレン)誘導体等が挙げられる。これらは、交互共重合体、ランダム重合体、ブロック重合体又はグラフト共重合体のいずれであってもよい。また、主鎖に枝分かれがあり末端部が3つ以上ある高分子や、所謂デンドリマーであってもよい。
【0156】
中でも、正孔輸送層4の材料としては、ポリアリールアミン誘導体やポリアリーレン誘導体が好ましい。
ポリアリールアミン誘導体及びポリアリーレン誘導体の具体例等は、特開2008-98619号公報に記載のものなどが挙げられる。
ポリアリールアミン誘導体としては、前記芳香族三級アミン高分子化合物を用いることが好ましい。
【0157】
湿式成膜法で正孔輸送層4を形成する場合は、上記正孔注入層3の形成と同様にして、正孔輸送層形成用組成物を調製した後、湿式成膜後、乾燥させる。
正孔輸送層形成用組成物には、上述の正孔輸送材料の他、溶剤を含有する。用いる溶剤は、上記正孔注入層形成用組成物に用いたものと同様である。また、成膜条件、乾燥条件等も正孔注入層3の形成の場合と同様である。
正孔輸送層形成用組成物が本発明の組成物である場合は、溶剤は本発明の前記第1溶媒と前記第2溶媒である。
真空蒸着法により正孔輸送層4を形成する場合もまた、その成膜条件等は上記正孔注入層3の形成の場合と同様である。
【0158】
正孔輸送層4の膜厚は、発光層中の低分子材料の浸み込みや正孔輸送材料の膨潤など要素を考慮し、通常5nm以上、好ましくは10nm以上で、通常300nm以下、好ましくは200nm以下である。
【0159】
[発光層]
発光層5は、電界を与えられた電極間において、陽極2から注入された正孔と、陰極9から注入された電子との再結合により励起されて、主たる発光源となる層である。発光層5は、通常、正孔輸送層4がある場合には正孔輸送層4の上に、正孔輸送層4が無く、正孔注入層3がある場合には正孔注入層3の上に、正孔輸送層4も正孔注入層3も無い場合は、陽極2の上に形成する。
【0160】
<発光層用材料>
発光層用材料は、通常、発光材料とホストとなる電荷輸送材料を含む。
【0161】
<発光材料>
発光材料としては、通常、有機電界発光素子の発光材料として使用されている任意の公知の材料を適用することができ、特に制限はなく、所望の発光波長で発光し、発光効率が良好である物質を用いればよい。発光材料は、蛍光発光材料であってもよく、燐光発光材料であってもよいが、内部量子効率の観点から、好ましくは燐光発光材料である。さらに好ましくは、赤発光材料と緑発光材料は燐光発光材料であり、青発光材料は蛍光発光材料である。
【0162】
本発明の組成物が発光層形成用組成物である場合、以下の燐光発光材料、蛍光発光材料及び電荷輸送材料を用いることが好ましい。
【0163】
<燐光発光材料>
燐光発光材料とは、励起三重項状態から発光を示す材料をいう。例えば、Ir、Pt、Euなどを有する金属錯体化合物がその代表例であり、材料の構造として、金属錯体を含むものが好ましい。
【0164】
金属錯体の中でも、三重項状態を経由して発光する燐光発光性有機金属錯体として、長周期型周期表(以下、特に断り書きの無い限り「周期表」という場合には、長周期型周期表を指すものとする。)第7~11族から選ばれる金属を中心金属として含むウェルナー型錯体又は有機金属錯体化合物が挙げられる。このような燐光発光材料としては、例えば、国際公開第2014/024889号、国際公開第2015-087961号、国際公開第2016/194784、特開2014-074000号に記載の燐光発光材料が挙げられる。好ましくは、下記式(201)で表される化合物、又は下記式(205)で表される化合物が好ましく、より好ましくは下記式(201)で表される化合物である。
【0165】
【化10】
【0166】
式(201)において、環A1は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環構造又は置換基を有していてもよい芳香族複素環構造を表す。
環A2は置換基を有していてもよい芳香族複素環構造を表す。
201、R202は各々独立に式(202)で表される構造であり、“*”は環A1又は環A2との結合位置を表す。R201、R202は同じであっても異なっていてもよく、R201、R202がそれぞれ複数存在する場合、それらは同じであっても異なっていてもよい。
【0167】
Ar201、Ar203は、各々独立に、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環構造、又は置換基を有していてもよい芳香族複素環構造を表す。
Ar202は、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環構造、置換基を有していてもよい芳香族複素環構造、又は置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素構造を表す。
環A1に結合する置換基同士、環A2に結合する置換基同士、又は環A1に結合する置換基と環A2に結合する置換基同士は、互いに結合して環を形成してもよい。
【0168】
201-L200-B202は、アニオン性の2座配位子を表す。B201及びB202は、それぞれ独立に、炭素原子、酸素原子又は窒素原子を表し、これらの原子は環を構成する原子であってもよい。L200は、単結合、又は、B201及びB202とともに2座配位子を構成する原子団を表す。B201-L200-B202が複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。
【0169】
なお、式(201)、(202)において、
i1、i2はそれぞれ独立に、0以上12以下の整数を表し、
i3は、Ar202に置換可能な数を上限とする0以上の整数を表し、
i4は、Ar201に置換可能な数を上限とする0以上の整数を表し、
k1及びk2はそれぞれ独立に、環A1、環A2に置換可能な数を上限とする0以上の整数を表し、
zは1~3の整数を表す。
【0170】
(置換基)
特に断りのない場合、置換基としては、次の置換基群Sから選ばれる基が好ましい。
【0171】
<置換基群S>
・アルキル基、好ましくは炭素数1~20のアルキル基、より好ましくは炭素数1~12のアルキル基、さらに好ましくは炭素数1~8のアルキル基、特に好ましくは炭素数1~6のアルキル基。
・アルコキシ基、好ましくは炭素数1~20のアルコキシ基、より好ましくは炭素数1~12のアルコキシ基、さらに好ましくは炭素数1~6のアルコキシ基。
・アリールオキシ基、好ましくは炭素数6~20のアリールオキシ基、より好ましくは炭素数6~14のアリールオキシ基、さらに好ましくは炭素数6~12のアリールオキシ基、特に好ましくは炭素数6のアリールオキシ基。
・ヘテロアリールオキシ基、好ましくは炭素数3~20のヘテロアリールオキシ基、より好ましくは炭素数3~12のヘテロアリールオキシ基。
・アルキルアミノ基、好ましくは炭素数1~20のアルキルアミノ基、より好ましくは炭素数1~12のアルキルアミノ基。
・アリールアミノ基、好ましくは炭素数6~36のアリールアミノ基、より好ましくは炭素数6~24のアリールアミノ基。
・アラルキル基、好ましくは炭素数7~40のアラルキル基、より好ましくは炭素数7~18のアラルキル基、さらに好ましくは炭素数7~12のアラルキル基。
・ヘテロアラルキル基、好ましくは炭素数7~40のヘテロアラルキル基、より好ましくは炭素数7~18のヘテロアラルキル基、
・アルケニル基、好ましくは炭素数2~20のアルケニル基、より好ましくは炭素数2~12のアルケニル基、さらに好ましくは炭素数2~8のアルケニル基、特に好ましくは炭素数2~6のアルケニル基。
・アルキニル基、好ましくは炭素数2~20のアルキニル基、より好ましくは炭素数2~12のアルキニル基。
・アリール基、好ましくは炭素数6~30のアリール基、より好ましくは炭素数6~24のアリール基、さらに好ましくは炭素数6~18のアリール基、特に好ましくは炭素数6~14のアリール基。
・ヘテロアリール基、好ましくは炭素数3~30のヘテロアリール基、より好ましくは炭素数3~24のヘテロアリール基、さらに好ましくは炭素数3~18のヘテロアリール基、特に好ましくは炭素数3~14のヘテロアリール基。
・アルキルシリル基、好ましくはアルキル基の炭素数が1~20であるアルキルシリル基、より好ましくはアルキル基の炭素数が1~12であるアルキルシリル基。
・アリールシリル基、好ましくはアリール基の炭素数が6~20であるアリールシリル基、より好ましくはアリール基の炭素数が6~14であるアリールシリル基。
・アルキルカルボニル基、好ましくは炭素数2~20のアルキルカルボニル基。
・アリールカルボニル基、好ましくは炭素数7~20のアリールカルボニル基。
【0172】
以上の基は一つ以上の水素原子がフッ素原子で置き換えられているか、若しくは1つ以上の水素原子が重水素原子で置き換えらえられていてもよい。
特に断りのない限り、アリールは芳香族炭化水素環であり、ヘテロアリールは芳香族複素環である。
・水素原子、重水素原子、フッ素原子、シアノ基、又は、-SF5。
【0173】
上記置換基群Sのうち、好ましくは、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アリールアミノ基、アラルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルキルシリル基、アリールシリル基、及びこれらの基の一つ以上の水素原子がフッ素原子で置き換えられている基、フッ素原子、シアノ基、又は-SFであり、
より好ましくはアルキル基、アリールアミノ基、アラルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロアリール基であり、及びこれらの基の一つ以上の水素原子がフッ素原子で置き換えられている基、フッ素原子、シアノ基、又は-SFであり、
さらに好ましくは、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アリールアミノ基、アラルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルキルシリル基、アリールシリル基であり、
特に好ましくはアルキル基、アリールアミノ基、アラルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロアリール基であり、
最も好ましくはアルキル基、アリールアミノ基、アラルキル基、アリール基、ヘテロアリール基である。
【0174】
これら置換基群Sにはさらに置換基群Sから選ばれる置換基を置換基として有していてもよい。有していてもよい置換基の好ましい基、より好ましい基、さらに好ましい基、特に好ましい基、最も好ましい基は置換基群Sの中の好ましい基と同様である。
【0175】
(環A1)
環A1は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環構造又は置換基を有していてもよい芳香族複素環構造を表す。
【0176】
芳香族炭化水素環としては、好ましくは炭素数6~30の芳香族炭化水素環である。具体的には、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、トリフェニリル環、アセナフテン環、フルオランテン環、フルオレン環が好ましい。
【0177】
芳香族複素環としては、ヘテロ原子として窒素原子、酸素原子、又は硫黄原子のいずれかを含む、炭素数3~30の芳香族複素環が好ましい。さらに好ましくは、フラン環、ベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環である。
環A1としてより好ましくは、ベンゼン環、ナフタレン環、フルオレン環であり、特に好ましくはベンゼン環又はフルオレン環であり、最も好ましくはベンゼン環である。
【0178】
(環A2)
環A2は置換基を有していてもよい芳香族複素環構造を表す。
芳香族複素環としては、好ましくはヘテロ原子として窒素原子、酸素原子、又は硫黄原子のいずれかを含む、炭素数3~30の芳香族複素環である。具体的には、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアジン環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾイミダゾール環、キノリン環、イソキノリン環、キノキサリン環、キナゾリン環、ナフチリジン環、フェナントリジン環が挙げられ、好ましくは、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、イミダゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環、キノリン環、イソキノリン環、キノキサリン環、キナゾリン環であり、より好ましくは、ピリジン環、イミダゾール環、ベンゾチアゾール環、キノリン環、イソキノリン環、キノキサリン環、キナゾリン環であり、最も好ましくは、ピリジン環、イミダゾール環、ベンゾチアゾール環、キノリン環、キノキサリン環、キナゾリン環である。
【0179】
(環A1と環A2との組み合わせ)
環A1と環A2の好ましい組み合せとしては、(環A1-環A2)と表記すると、(ベンゼン環-ピリジン環)、(ベンゼン環-キノリン環)、(ベンゼン環-キノキサリン環)、(ベンゼン環-キナゾリン環)、(ベンゼン環-ベンゾチアゾール環)、(ベンゼン環-イミダゾール環)、(ベンゼン環-ピロール環)、(ベンゼン環-ジアゾール環)、及び(ベンゼン環-チオフェン環)である。
【0180】
(環A1、環A2の置換基)
環A1、環A2が有していてもよい置換基は任意に選択できるが、好ましくは前記置換基群Sから選ばれる1種又は複数種の置換基である。
【0181】
(Ar201、Ar202、Ar203
Ar201、Ar203は、各々独立に、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環構造、又は置換基を有していてもよい芳香族複素環構造を表す。
Ar202は、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環構造、置換基を有していてもよい芳香族複素環構造、又は置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素構造を表す。
【0182】
Ar201、Ar202、Ar203のいずれかが置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環構造である場合、該芳香族炭化水素環構造としては、好ましくは炭素数6~30の芳香族炭化水素環である。具体的には、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、トリフェニリル環、アセナフテン環、フルオランテン環、フルオレン環が好ましく、より好ましくはベンゼン環、ナフタレン環、フルオレン環が好ましく、最も好ましくはベンゼン環である。
【0183】
Ar201、Ar202のいずれかが置換基を有していてもよいベンゼン環である場合、少なくとも一つのベンゼン環がオルト位又はメタ位で隣接する構造と結合していることが好ましく、少なくとも一つのベンゼン環がメタ位で隣接する構造と結合していることがより好ましい。
【0184】
Ar201、Ar202、Ar203のいずれかが置換基を有していてもよいフルオレン環である場合、フルオレン環の9位及び9’位は、置換基を有するか又は隣接する構造と結合していることが好ましい。
【0185】
Ar201、Ar202、Ar203のいずれかが置換基を有していてもよい芳香族複素環構造である場合、芳香族複素環構造としては、好ましくはヘテロ原子として窒素原子、酸素原子、又は硫黄原子のいずれかを含む、炭素数3~30の芳香族複素環であり、具体的には、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアジン環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾイミダゾール環、キノリン環、イソキノリン環、キノキサリン環、キナゾリン環、ナフチリジン環、フェナントリジン環、カルバゾール環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環が挙げられ、好ましくは、ピリジン環、ピリミジン環、トリアジン環、カルバゾール環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環である。
【0186】
Ar201、Ar202、Ar203のいずれかが置換基を有していてもよいカルバゾール環である場合、カルバゾール環のN位は、置換基を有するか又は隣接する構造と結合していることが好ましい。
【0187】
Ar202が置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素構造である場合、直鎖、分岐鎖、又は環状構造を有する脂肪族炭化水素構造であり、好ましくは炭素数が1以上24以下であり、さらに好ましくは炭素数が1以上12以下であり、より好ましくは炭素数が1以上8以下である。
【0188】
(i1、i2、i3、i4、k1、k2)
i1、i2はそれぞれ独立に、0~12の整数を表し、好ましくは1~12、さらに好ましくは1~8、より好ましくは1~6である。この範囲であることにより、溶解性向上や電荷輸送性向上が見込まれる。
i3は好ましくは0~5の整数を表し、さらに好ましくは0~2、より好ましくは0又は1である。
i4は好ましくは0~2の整数を表し、さらに好ましくは0又は1である。
k1、k2はそれぞれ独立に、好ましくは0~3の整数を表し、さらに好ましくは1~3であり、より好ましくは1又は2であり、特に好ましくは1である。
【0189】
(Ar201、Ar202、Ar203の好ましい置換基)
Ar201、Ar202、Ar203が有していてもよい置換基は任意に選択できるが、好ましくは前記置換基群Sから選ばれる1種又は複数種の置換基であり、好ましい基も前記置換基群Sの通りであるが、より好ましくは無置換(水素原子)、アルキル基、アリール基であり、特に好ましくは無置換(水素原子)、アルキル基であり、最も好ましくは無置換(水素原子)またはターシャリーブチル基であり、ターシャリーブチル基はAr203が存在する場合はAr203に、Ar203が存在しない場合はAr202に、Ar202とAr203が存在しない場合はAr201に置換していることが好ましい。
【0190】
(式(201)で表される化合物の好ましい態様)
前記式(201)で表される化合物は、下記(I)~(IV)のうちのいずれか1以上を満たす化合物であることが好ましい。
(I)フェニレン連結式
式(202)で表される構造はベンゼン環が連結した基を有する構造、すなわち、ベンゼン環構造、i1が1~6で、少なくとも一つの前記ベンゼン環がオルト位又はメタ位で隣接する構造と結合していることが好ましい。
このような構造であることによって、溶解性が向上し、かつ電荷輸送性が向上することが期待される。
【0191】
(II)(フェニレン)-アラルキル(アルキル)
環A1又は環A2に、アルキル基若しくはアラルキル基が結合した芳香族炭化水素基若しくは芳香族複素環基を有する構造、すなわち、Ar201が芳香族炭化水素構造又は芳香族複素環構造、i1が1~6、Ar202が脂肪族炭化水素構造、i2が1~12、好ましくは3~8、Ar203がベンゼン環構造、i3が0又は1である構造、好ましくは、Ar201は前記芳香族炭化水素構造であり、さらに好ましくはベンゼン環が1~5連結した構造であり、より好ましくはベンゼン環1つである。
このような構造であることによって、溶解性が向上し、かつ電荷輸送性が向上することが期待される。
【0192】
(III)デンドロン
環A1又は環A2に、デンドロンが結合した構造、例えば、Ar201、Ar202がベンゼン環構造、Ar203がビフェニル又はターフェニル構造、i1、i2が1~6、i3が2、jが2である。
このような構造であることによって、溶解性が向上し、かつ電荷輸送性が向上することが期待される。
【0193】
(IV)B201-L200-B202
201-L200-B202で表される構造は下記式(203)又は下記式(204)で表される構造であることが好ましい。
【0194】
【化11】
【0195】
式(203)中、R211、R212、R213はそれぞれ独立に置換基を表す。
式(204)中、環B3は、置換基を有していてもよい、窒素原子を含む芳香族複素環構造を表す。環B3は好ましくはピリジン環である。
【0196】
(好ましい燐光発光材料)
前記式(201)で表される燐光発光材料としては特に限定はされないが、好ましいものとして以下のものが挙げられる。
【0197】
【化12】
【0198】
【化13】
【0199】
また、下記式(205)で表される燐光発光材料も好ましい。
【0200】
【化14】
【0201】
[式(205)中、Mは金属を表し、Tは炭素原子又は窒素原子を表す。R92~R95は、それぞれ独立に置換基を表す。但し、Tが窒素原子の場合は、R94及びR95は無い。]
【0202】
式(205)中、Mの具体例としては、周期表第7~11族から選ばれる金属が挙げられる。中でも好ましくは、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金又は金が挙げられ、特に好ましくは、白金、パラジウム等の2価の金属が挙げられる。
【0203】
また、式(205)において、R92及びR93は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アラルキル基、アルケニル基、シアノ基、アミノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルボキシル基、アルコキシ基、アルキルアミノ基、アラルキルアミノ基、ハロアルキル基、水酸基、アリールオキシ基、芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基を表す。
【0204】
更に、Tが炭素原子の場合、R94及びR95は、それぞれ独立に、R92及びR93と同様の例示物で表される置換基を表す。また、Tが窒素原子の場合は該Tに直接結合するR94又はR95は存在しない。また、R92~R95は、更に置換基を有していてもよい。置換基としては、前記の置換基とすることができる。更に、R92~R95のうち任意の2つ以上の基が互いに連結して環を形成してもよい。
【0205】
(分子量)
燐光発光材料の分子量は、好ましくは5000以下、更に好ましくは4000以下、特に好ましくは3000以下である。また、燐光発光材料の分子量は、好ましくは800以上、より好ましくは1000以上、更に好ましくは1200以上である。この分子量範囲であることによって、燐光発光材料同士が凝集せず電荷輸送材料と均一に混合し、発光効率の高い発光層を得ることができると考えられる。
【0206】
燐光発光材料の分子量は、Tgや融点、分解温度等が高く、燐光発光材料及び形成された発光層の耐熱性に優れる点、及び、ガス発生、再結晶化及び分子のマイグレーション等に起因する膜質の低下や材料の熱分解に伴う不純物濃度の上昇等が起こり難い点では大きいことが好ましい。一方、燐光発光材料の分子量は、有機化合物の精製が容易である点では小さいことが好ましい。
【0207】
<電荷輸送材料>
発光層に用いる電荷輸送材料は、電荷輸送性に優れる骨格を有する材料であり、電子輸送性材料、正孔輸送性材料及び電子と正孔の両方を輸送可能な両極性材料から選ばれることが好ましい。
【0208】
電荷輸送性に優れる骨格としては、具体的には、芳香族構造、芳香族アミン構造、トリアリールアミン構造、ジベンゾフラン構造、ナフタレン構造、フェナントレン構造、フタロシアニン構造、ポルフィリン構造、チオフェン構造、ベンジルフェニル構造、フルオレン構造、キナクリドン構造、トリフェニレン構造、カルバゾール構造、ピレン構造、アントラセン構造、フェナントロリン構造、キノリン構造、ピリジン構造、ピリミジン構造、トリアジン構造、オキサジアゾール構造又はイミダゾール構造等が挙げられる。
【0209】
電子輸送性材料としては、電子輸送性に優れ構造が比較的安定な材料である観点から、ピリジン構造、ピリミジン構造、トリアジン構造を有する化合物がより好ましく、ピリミジン構造、トリアジン構造を有する化合物であることがさらに好ましい。
【0210】
正孔輸送性材料は、正孔輸送性に優れた構造を有する化合物であり、前記電荷輸送性に優れた中心骨格の中でも、カルバゾール構造、ジベンゾフラン構造、トリアリールアミン構造、ナフタレン構造、フェナントレン構造又はピレン構造が正孔輸送性に優れた構造として好ましく、カルバゾール構造、ジベンゾフラン構造又はトリアリールアミン構造がさらに好ましい。
【0211】
発光層に用いる電荷輸送材料は、3環以上の縮合環構造を有することが好ましく、3環以上の縮合環構造を2以上有する化合物又は5環以上の縮合環を少なくとも1つ有する化合物であることがさらに好ましい。これらの化合物であることで、分子の剛直性が増し、熱に応答する分子運動の程度を抑制する効果が得られ易くなる。さらに、3環以上の縮合環及び5環以上の縮合環は、芳香族炭化水素環又は芳香族複素環を有することが電荷輸送性及び材料の耐久性の点で好ましい。
【0212】
3環以上の縮合環構造としては、具体的には、アントラセン構造、フェナントレン構造、ピレン構造、クリセン構造、ナフタセン構造、トリフェニレン構造、フルオレン構造、ベンゾフルオレン構造、インデノフルオレン構造、インドロフルオレン構造、カルバゾール構造、インデノカルバゾール構造、インドロカルバゾール構造、ジベンゾフラン構造、ジベンゾチオフェン構造等が挙げられる。電荷輸送性ならびに溶解性の観点から、フェナントレン構造、フルオレン構造、インデノフルオレン構造、カルバゾール構造、インデノカルバゾール構造、インドロカルバゾール構造、ジベンゾフラン構造及びジベンゾチオフェン構造からなる群より選択される少なくとも1つが好ましく、電荷に対する耐久性の観点からカルバゾール構造又はインドロカルバゾール構造がさらに好ましい。
【0213】
本発明においては、有機電界発光素子の電荷に対する耐久性の観点から、発光層の電荷輸送材料の内、少なくとも一つはピリミジン骨格又はトリアジン骨格を有する材料であることが好ましい。
【0214】
発光層の電荷輸送材料は、可撓性に優れる観点では高分子材料であることが好ましい。可撓性に優れる材料を用いて形成された発光層は、フレキシブル基板上に形成された有機電界発光素子の発光層として好ましい。発光層に含まれる電荷輸送材料が高分子材料である場合、分子量は、好ましくは5,000以上1,000,000以下、より好ましくは10,000以上、500,000以下、さらに好ましくは10,000以上100,000以下である。
【0215】
また、発光層の電荷輸送材料は、合成及び精製のしやすさ、電子輸送性能及び正孔輸送性能の設計のしやすさ、溶媒に溶解した時の粘度調整のしやすさの観点からは、低分子であることが好ましい。発光層に含まれる電荷輸送材料が低分子材料である場合、分子量は、5,000以下が好ましく、さらに好ましくは4,000以下であり、特に好ましくは3,000以下であり、最も好ましくは2,000以下であり、好ましくは300以上、より好ましくは350以上、さらに好ましくは400以上である。
【0216】
<蛍光発光材料>
蛍光発光材料としては特に限定されないが、下記式(211)で表される化合物が好ましい。
【0217】
【化15】
【0218】
上記式(211)において、Ar241は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素縮合環構造を表し、Ar242、Ar243は各々独立に置換基を有していてもよいアルキル基、芳香族炭化水素基、芳香族複素基又はこれらが結合した基を表す。n41は1~4の整数である。
【0219】
Ar241は好ましくは炭素数10~30の芳香族炭化水素縮合環構造を表し、具体的な環構造としては、ナフタレン、アセナフテン、フルオレン、アントラセン、フェナトレン、フルオランテン、ピレン、テトラセン、クリセン、ペリレン等が挙げられる。
Ar241はより好ましくは炭素数12~20の芳香族炭化水素縮合環構造であり、具体的な環構造としては、アセナフテン、フルオレン、アントラセン、フェナトレン、フルオランテン、ピレン、テトラセン、クリセン、ペリレンが挙げられる。
Ar241はさらに好ましくは炭素数16~18の芳香族炭化水素縮合環構造であり、具体的な環構造としては、フルオランテン、ピレン、クリセンが挙げられる。
【0220】
n41は1~4であり、好ましくは1~3、さらに好ましくは1~2、最も好ましくは2である。
【0221】
Ar242、Ar243のアルキル基としては、炭素数1~12のアルキル基が好ましく、より好ましくは炭素数1~6のアルキル基である。
Ar242、Ar243の芳香族炭化水素基としては、炭素数6~30の芳香族炭化水素基が好ましく、より好ましくは炭素数6~24の芳香族炭化水素基であり、最も好ましくはフェニル基、ナフチル基である。
Ar242、Ar243の芳香族複素基としては、炭素数3~30の芳香族複素基が好ましく、より好ましくは炭素数5~24の芳香族炭化水素基であり、具体的にはカルバゾリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチオフェニル基が好ましく、ジベンゾフラニル基がより好ましい。
【0222】
Ar241、Ar242、Ar243が有していてもよい置換基は、前記置換基群Sから選ばれる基が好ましく、より好ましくは置換基群Sに含まれる、炭化水素基であり、さらに好ましくは置換基群Sとして好ましい基の中の炭化水素基である。
【0223】
上記蛍光発光材料と共に用いる電荷輸送材料としては特に限定されないが、下記式(212)で表されるものが好ましい。
【0224】
【化16】
【0225】
上記式(212)において、R251、R252はそれぞれ独立に式(213)で表される構造であり、R253は置換基を表し、R253が複数ある場合、同一であっても異なっていてもよく、n43は0~8の整数である。
【0226】
【化17】
【0227】
上記式(213)において、*は式(212)のアントラセン環との結合手を表し、Ar254、Ar255はそれぞれ独立に、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素構造、又は置換基を有していてもよい複素芳香環構造を表し、Ar254、Ar255はそれぞれ複数存在する場合、同一であっても異なっていてもよく、n44は1~5の整数、n45は0~5の整数である。
【0228】
Ar254は好ましくは、置換基を有していてもよい、炭素数6~30の単環又は縮合環である芳香族炭化水素構造であり、より好ましくは、置換基を有していてもよい、炭素数6~12の単環又は縮合環である芳香族炭化水素構造である。
【0229】
Ar255は好ましくは、置換基を有していてもよい、炭素数6~30の単環もしくは縮合環である芳香族炭化水素構造、又は置換基を有していてもよい炭素数6~30の縮合環である芳香族複素環構造である。Ar255はより好ましくは、置換基を有していてもよい、炭素数6~12の単環もしくは縮合環である芳香族炭化水素構造、又は置換基を有していてもよい炭素数12の縮合環である芳香族複素環構造である。
【0230】
n44は好ましくは1~3の整数であり、より好ましくは1又は2である。
n45は好ましくは0~3の整数であり、より好ましくは0~2である。
【0231】
置換基であるR253、Ar254及びAr255が有していてもよい置換基は、前記置換基群Sから選ばれる基が好ましい。より好ましくは置換基群Sに含まれる炭化水素基であり、さらに好ましくは置換基群Sとして好ましい基の中の炭化水素基である。
【0232】
蛍光発光材料及び電荷輸送材料の分子量は5,000以下が好ましく、さらに好ましくは4,000以下であり、特に好ましくは3,000以下であり、最も好ましくは2,000以下である。また、好ましくは300以上であり、より好ましくは350以上、さらに好ましくは400以上である。
【0233】
[正孔阻止層]
発光層5と後述の電子注入層8との間に、正孔阻止層6を設けてもよい。正孔阻止層6は、電子輸送層のうち、更に陽極2から移動してくる正孔を陰極9に到達するのを阻止する役割をも担う層である。正孔阻止層6は、発光層5の上に、発光層5の陰極9側の界面に接するように積層される層である。
【0234】
正孔阻止層6は、陽極2から移動してくる正孔を陰極9に到達するのを阻止する役割と、陰極9から注入された電子を効率よく発光層5の方向に輸送する役割とを有する。
【0235】
正孔阻止層6を構成する材料に求められる物性としては、電子移動度が高く正孔移動度が低いこと、エネルギーギャップ(HOMO、LUMOの差)が大きいこと、励起三重項エネルギー準位(T1)が高いことなどが挙げられる。このような条件を満たす正孔阻止層6の材料としては、例えばビス(2-メチル-8-キノリノラト)(フェノラト)アルミニウム、ビス(2-メチル-8-キノリノラト)(トリフェニルシラノラト)アルミニウム等の混合配位子錯体、ビス(2-メチル-8-キノラト)アルミニウム-μ-オキソ-ビス-(2-メチル-8-キノリノラト)アルミニウム二核金属錯体等の金属錯体、ジスチリルビフェニル誘導体等のスチリル化合物(特開平11-242996号公報)、3-(4-ビフェニルイル)-4-フェニル-5(4-tert-ブチルフェニル)-1,2,4-トリアゾール等のトリアゾール誘導体(特開平7-41759号公報)、バソクプロイン等のフェナントロリン誘導体(特開平10-79297号公報)などが挙げられる。更に、国際公開第2005/022962号公報に記載の2,4,6位が置換されたピリジン環を少なくとも1個有する化合物も、正孔阻止層6の材料として好ましい。
【0236】
正孔阻止層6の形成方法に制限はない。正孔阻止層6は、湿式成膜法、蒸着法や、その他の方法で形成できる。
正孔阻止層6の膜厚は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。正孔阻止層6の膜厚は、通常0.3nm以上、好ましくは0.5nm以上で、通常100nm以下、好ましくは50nm以下である。
【0237】
[電子輸送層]
電子輸送層7は、発光層5と陰極9の間に設けられた電子を輸送するための層である。
【0238】
電子輸送層7の電子輸送材料としては、通常、陰極9又は陰極9側の隣接層からの電子注入効率が高く、かつ、高い電子移動度を有し注入された電子を効率よく輸送することができる化合物を用いる。このような条件を満たす化合物としては、例えば8-ヒドロキシキノリンのアルミニウム錯体やリチウム錯体などの金属錯体(特開昭59-194393号公報)、10-ヒドロキシベンゾ[h]キノリンの金属錯体、オキサジアゾール誘導体、ジスチリルビフェニル誘導体、シロール誘導体、3-ヒドロキシフラボン金属錯体、5-ヒドロキシフラボン金属錯体、ベンズオキサゾール金属錯体、ベンゾチアゾール金属錯体、トリスベンズイミダゾリルベンゼン(米国特許第5645948号明細書)、キノキサリン化合物(特開平6-207169号公報)、フェナントロリン誘導体(特開平5-331459号公報)、2-t-ブチル-9,10-N,N’-ジシアノアントラキノンジイミン、トリアジン化合物誘導体、n型水素化非晶質炭化シリコン、n型硫化亜鉛、n型セレン化亜鉛などが挙げられる。
【0239】
電子輸送層7に用いられる電子輸送材料としては、バソフェナントロリン等の含窒素複素環化合物や8-ヒドロキシキノリンのアルミニウム錯体などの金属錯体に代表される電子輸送性有機化合物に、ナトリウム、カリウム、セシウム、リチウム、ルビジウム等のアルカリ金属をドープさせることにより(特開平10-270171号公報、特開2002-100478号公報、特開2002-100482号公報などに記載)、電子注入輸送性と優れた膜質を両立させることが可能となるため好ましい。また、上述の電子輸送性有機化合物にフッ化リチウムや炭酸セシウムなどのような無機塩をドープすることも有効である。
【0240】
電子輸送層7の形成方法に制限はない。電子輸送層7は、湿式成膜法、蒸着法や、その他の方法で形成することができる。
【0241】
電子輸送層7の膜厚は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。電子輸送層7の膜厚は常1nm以上、好ましくは5nm以上で、通常300nm以下、好ましくは100nm以下である。
【0242】
[電子注入層]
陰極9から注入された電子を効率良く発光層5に注入するために、電子輸送層7と後述の陰極9との間に電子注入層8を設けてもよい。電子注入層8は、無機塩などからなる。
【0243】
電子注入層8の材料としては、例えばフッ化リチウム(LiF)、フッ化マグネシウム(MgF)、酸化リチウム(LiO)、炭酸セシウム(II)(CsCO)等が挙げられる(Applied Physics Letters, 1997年, Vol.70、pp.152;特開平10-74586号公報;IEEE Transactions on Electron Devices, 1997年,Vol.44, pp.1245;SID 04 Digest, pp.154等参照)。
【0244】
電子注入層8は、電荷輸送性を伴わない場合が多いため、電子注入を効率よく行なうには、極薄膜として用いることが好ましく、その膜厚は、通常0.1nm以上、好ましくは5nm以下である。
【0245】
[陰極]
陰極9は、発光層5側の層に電子を注入する役割を果たす電極である。
【0246】
陰極9の材料としては、通常、アルミニウム、金、銀、ニッケル、パラジウム、白金等の金属、インジウム及び/又はスズの酸化物等の金属酸化物、ヨウ化銅等のハロゲン化金属、カーボンブラック、或いは、ポリ(3-メチルチオフェン)、ポリピロール、ポリアニリン等の導電性高分子等が挙げられる。これらのうち、効率よく電子注入を行なうには、仕事関数の低い金属が好ましく、例えばスズ、マグネシウム、インジウム、カルシウム、アルミニウム、銀等の適当な金属又はそれらの合金などが用いられる。具体例としては、マグネシウム-銀合金、マグネシウム-インジウム合金、アルミニウム-リチウム合金等の低仕事関数の合金電極などが挙げられる。
【0247】
陰極9の材料は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0248】
陰極9の膜厚は、必要とする透明性により異なる。透明性が必要とされる場合は、可視光の透過率を、通常60%以上、好ましくは80%以上とすることが好ましい。この場合、陰極9の厚みは通常5nm以上、好ましくは10nm以上で、通常1000nm以下、好ましくは500nm以下程度である。不透明でよい場合は陰極9の厚みは任意であり、陰極は基板と同一でもよい。
【0249】
陰極9の上に異なる導電材料を積層することも可能である。
例えばナトリウムやセシウム等のアルカリ金属、バリウムやカルシウム等のアルカリ土類金属等からなる低仕事関数の金属からなる陰極を保護する目的で、この上に更に、仕事関数が高く大気に対して安定な金属層を積層すると、素子の安定性が増すので好ましい。この目的のために、例えばアルミニウム、銀、銅、ニッケル、クロム、金、白金等の金属が使われる。これらの材料は、1種のみで用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0250】
[その他の層]
本発明の有機電界発光素子は、その趣旨を逸脱しない範囲において、別の構成を有していてもよい。例えばその性能を損なわない限り、陽極2と陰極9との間に、上記説明にある層の他に任意の層を有していてもよく、また、上記説明にある層のうち必須でない層が省略されていてもよい。
【0251】
以上説明した層構成において、基板以外の構成要素を逆の順に積層することも可能である。例えば図1の層構成であれば、基板1上に他の構成要素を陰極9、電子注入層8、電子輸送層7、正孔阻止層6、発光層5、正孔輸送層4、正孔注入層3、陽極2の順に設けてもよい。
【0252】
本発明の有機電界発光素子は、単一の有機電界発光素子として構成してもよく、複数の有機電界発光素子がアレイ状に配置された構成に適用してもよく、陽極と陰極がX-Yマトリックス状に配置された構成に適用してもよい。
【0253】
上述した各層には、本発明の効果を著しく損なわない限り、材料として説明した以外の成分が含まれていてもよい。
【0254】
<有機電界発光デバイス>
互いに異なる色に発光する有機電界発光素子を2つ以上設けて有機EL表示装置や有機EL照明などの有機電界発光デバイスとすることができる。この有機電界発光デバイスにおいて、少なくとも一つ、好ましくはすべての有機電界発光素子を本発明の有機電界発光素子とすることで、高品質の有機電界発光デバイスを提供できる。
【0255】
<有機EL表示装置>
本発明の有機電界発光素子を用いた有機EL表示装置の型式や構造については特に制限はなく、本発明の有機電界発光素子を用いて常法に従って組み立てることができる。
例えば「有機ELディスプレイ」(オーム社、平成16年8月20日発行、時任静士、安達千波矢、村田英幸著)に記載されているような方法で、有機EL表示装置を形成することができる。
【0256】
<有機EL照明>
本発明の有機電界発光素子を用いた有機EL照明の型式や構造については特に制限はなく、本発明の有機電界発光素子を用いて常法に従って組み立てることができる。
【実施例
【0257】
以下、実施例を示して本発明について更に具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、本発明はその要旨を逸脱しない限り任意に変更して実施できる。
【0258】
[用いた溶媒]
以下の実施例及び比較例で用いた溶媒の物性は下記表1に示す通りである。
【0259】
【表1】
【0260】
[評価I:パネル中央部の平坦性の評価]
<基板Iの準備>
膜厚0.7mmのガラス基板に、スパッタ法によってインジウム・スズ酸化物(ITO)膜を製膜した基板上に、撥液性を有するアクリル系樹脂を、厚さ1.7μmでスピンコート法により塗布し、一般的なフォトリソグラフィー法によって開口部を作製した。開口部のサイズは、長軸約170μm、短軸約50μmである。
【0261】
<下地層1の塗布>
アリールアミンポリマーを主成分とする下地層を溶媒に溶解させた下地層1用組成物を調製し、インクジェットプリンター(富士フイルム社製DMP-2831)を用いて、基板Iの上記開口部に対して、下地層1用組成物を塗布し、真空乾燥および焼成し、膜厚が約30nmとなるように成膜した。
【0262】
<下地層2の塗布>
アリールアミンポリマーを主成分とする下地層を溶媒に溶解させた下地層2用組成物を調製し、インクジェットプリンター(富士フイルム社製DMP-2831)を用いて、上記開口部の下地層1上に、下地層2用組成物を塗布し、真空乾燥および焼成し、膜厚が約20nmとなるように成膜した。
【0263】
<発光層形成用固形分の準備>
下記に示す電荷注入輸送材料である化合物(H-1)および(H-2)と発光材料である(D-1)を重量比で30:70:20となるように混合し、発光層形成用固形分I-1とした。
【0264】
【化18】
【0265】
<平坦度の定義>
開口部内に形成された有機膜に対して、該有機膜の面に垂直な面で該有機膜を分割した際の断面図を、該有機膜の断面プロファイルとする。有機膜断面プロファイル中で、開口長さの25%~75%の長さにおける該有機膜の平均膜厚Daを算出し、ある位置xでの該有機膜の膜厚Do(x)が下記式を満たす領域をX1とする。
Da-Da×5%<Do(x)<Da+Da×5% (式1)
開口部の長さをX2としたとき、平坦度の定義をX1/X2×100(%)とした。
【0266】
<参考例1>
フタル酸ジエチルとシクロヘキシルベンゼンを、重量比で15:85になるように混合し、有機溶媒I-1とした。発光層形成用固形分I-1を1.7重量%になるように有機溶媒I-1に溶解させ、発光層形成用組成物I-1とした。
上記開口部の下地層2上に、インクジェットプリンター(富士フイルム社製DMP-2831)を用いて、発光層形成用組成物I-1を、滴下ドロップ数を5ドロップとして塗布した。その後、真空乾燥により有機溶媒を除去して発光層形成用組成物I-1を乾燥し、120℃で3分間焼成し、機能性膜である発光層I-1を形成した。
【0267】
発光層I-1の平坦性を評価するために、有機膜が形成されたITO基板を触針式の表面段差計(小坂研究所社製ET200)を用いて測定した。表面段差の測定は、開口部の長軸方向に対して走査し、基板中央付近の発光層I-1の段差プロファイルを2つ分取得して平均化し、発光層I-1の段差プロファイルとした。同様にして、何も塗布を行っていない開口部分のプロファイルも2つ分取得し、平均化してブランクプロファイルとした。次いで、発光層I-1とブランクの2つのプロファイルを重ねて表示し、開口部分に対してどのように有機膜が形成されているかの断面図とした。上記定義に従って平坦度を計算すると、93.8%であった。発光層I-1とブランクのプロファイルを図1に示す。
【0268】
<参考例2>
酢酸2-フェノキシエチルと安息香酸エチルを、重量比で30:70になるように混合し、有機溶媒I-2とした。発光層形成用固形分I-1を1.7重量%になるように有機溶媒I-2に溶解させ、発光層形成用組成物I-2とした。
【0269】
発光層形成用組成物I-1の代りに発光層形成用組成物I-2を用いたこと以外は参考例1と同様にして発光層I-2を形成し、同様にその平坦性を評価したところ、上記定義で計算すると96.2%であった。発光層I-2とブランクのプロファイルを図2に示す。
【0270】
<比較例1>
ジベンジルエーテルとシクロヘキシルベンゼンを、重量比で20:80になるように混合し、有機溶媒I-3とした。発光層形成用固形分I-1を1.7重量%になるように有機溶媒I-3に溶解させ、発光層形成用組成物I-3とした。
【0271】
発光層形成用組成物I-1の代りに発光層形成用組成物I-3を用いたこと以外は参考例1と同様にして発光層I-3を形成し、同様にその平坦性を評価したところ、上記定義で計算すると50.1%であった。発光層I-3とブランクのプロファイルを図3に示す。
【0272】
<比較例2>
3-フェノキシトルエンとシクロヘキシルベンゼンを、重量比で20:80になるように混合し、有機溶媒I-4とした。発光層形成用固形分I-1を1.7重量%になるように有機溶媒I-4に溶解させ、発光層形成用組成物I-4とした。
【0273】
発光層形成用組成物I-1の代りに発光層形成用組成物I-4を用いたこと以外は参考例1と同様にして発光層I-4を形成し、同様にその平坦性を評価したところ、上記定義で計算すると67.7%であった。発光層I-4とブランクのプロファイルを図4に示す。
【0274】
<比較例3>
2-フェノキシエタノールとシクロヘキシルベンゼンを、重量比で20:80になるように混合し、有機溶媒I-5とした。発光層形成用固形分I-1を1.7重量%になるように有機溶媒I-5に溶解させ、発光層形成用組成物I-5とした。
【0275】
発光層形成用組成物I-1の代りに発光層形成用組成物I-5を用いたこと以外は参考例1と同様にして発光層I-5を形成し、同様にその平坦性を評価したところ、上記定義で計算すると42.4%であった。発光層I-5とブランクのプロファイルを図5に示す。
【0276】
<参考例1,2と比較例1~3の結果>
参考例1,2と比較例1~3の溶媒の組合せと平坦度を表2に示す。
【0277】
【表2】
【0278】
<考察>
参考例1および2では、プロファイルから明らかなように、平坦領域の改善に加え、開口部の隔壁部分への濡れ上がり(以降メニスカスと呼称する。)が非常に少なく、発光素子として有効な領域が広くなっていることが分かる。流動活性化エネルギーを適切な範囲で選択することで、液の無駄な流動を抑え、平坦な有機膜を得ることができる。
比較例1および2では、流動活性化エネルギーが非常に低い溶媒どうしで設計されているため、乾燥過程で液が流動してしまい、隔壁部分の方へ液が移動してしまっているため、メニスカスが太ってしまっている。また、液が中央から隔壁の方へ動いてしまっているため、同じ液滴を入れているにもかかわらず、参考例1や2に比較して、膜厚が薄くなってしまっている。
【0279】
比較例3においては、流動活性化エネルギーを非常に高い値に設定した有機溶媒を設計している。この場合は、流動を抑えることは可能だが、乾燥過程で液膜が濡れ下がらないことに起因して、メニスカスが太っていると推測される。すなわち、平坦な有機膜を得るためには、乾燥初期段階では液が濡れ下がってくるだけの流動性が必要であり、一方で乾燥終盤では、流動性をなくして無駄な液の動きをなくす必要がある。
【0280】
上記の参考例1,2と比較例1~3の対比から、参考例1,2は開口部の平坦性において優れているが、これら参考例1,2は、第2溶媒として沸点が245℃未満のものを用いているため、後掲の比較例4のように、パネル端部の平坦性が著しく劣るものとなる。
【0281】
[評価II:パネル中央部の平坦性の評価]
<基板IIの準備>
評価Iにおける基板Iの準備と同様に、長軸約170μm、短軸約50μmの開口部を、少なくとも長軸方向で21個分、短軸方向で65個分を有する基板IIを作製した。
【0282】
<固形分の準備>
下記に示す正孔輸送材料P-1と、電子吸引性ドーパントD-2を、重量比で100:10となるように混合して固形分II-1を調製した。
【0283】
【化19】
【0284】
<平坦度の定義>
前記開口の長さをLaとしたとき、開口端部からの距離xが0.25<x/La<0.75の領域の平均膜厚Daを算出し、ある位置xでの該有機膜の膜厚Do(x)が下記式2を満たす領域をLbとする。
Da-Da×5%<Do(x)<Da+Da×5% (式2)
開口部の長さLaに対して、平坦度の定義をLb/La×100(%)とした。
【0285】
<実施例1>
2-イソプロピルナフタレンに対して、固形分II-1の割合が5重量%になるように調整し、撹拌子を用いて420rpmで撹拌しながら、110℃で3時間加熱し、標準組成物II-1を作製した。
標準組成物II-1、2-イソプロピルナフタレン、安息香酸2-エチルヘキシルを、それぞれ重量比で50:20.75:29.25の割合で混ぜ合せ、一定時間撹拌したのちに孔径0.2μmのメンブレンフィルタで濾過し、組成物II-1を調製した。組成物II-1は固形分II-1の濃度が2.5重量%で、2-イソプロピルナフタレンと安息香酸2-エチルヘキシルの重量比が70:30の組成物である。
【0286】
インクジェットプリンター(富士フイルム社製DMP-2831)を用いて、基板IIの開口部に対して組成物II-1を塗布し、真空乾燥して有機膜を得た。当該有機膜は、130℃のホットプレートで3分間焼成されたのち、230℃のホットプレートで30分間焼成して有機膜II-1とした。塗布量は、乾燥膜厚がほぼ100nm程度になるように調整した。長軸方向に開口部の21個分、短軸方向に開口部の65個分塗布し、短軸方向は5個分塗布するごとに1個分塗布しないようなパターンで塗布し、画素群1とした。これにより、画素群1は短軸方向で開口部6個分を周期として、塗布された開口部と塗布されない開口部を繰り返した周期構造をとっている。
【0287】
平坦性を評価するために、有機膜II-1の短軸方向の膜厚プロファイルを、触針式の表面段差計(小坂研究所社製ET200)を用いて測定した。測定する開口部は、21×65の画素群1の面内で、以下の2か所とした。
測定箇所1:長軸及び短軸両側の端から数えて長軸の開口部11個目、短軸の開口部33個目の場所(画素群1のセンター領域)
測定箇所2:長軸及び短軸両側の端から数えて長軸の開口部3個目、短軸の開口部9個目の場所(画素群1のエッジ領域)
【0288】
測定箇所1の平坦性評価結果を図7に、測定箇所2の平坦性評価結果を図8に示す。式2の平坦度の定義から、上記2箇所の有機膜1の平坦度を算出すると、測定箇所1で81.0%、測定箇所2で84.3%と、良好な平坦性が得られた。また、測定箇所1及び測定箇所2での膜の形状は、ほぼ同等の形状をとっていた。
【0289】
<実施例2>
安息香酸ブチルに対して、固形分II-1の割合が5重量%になるように調整し、撹拌子を用いて420rpmで撹拌しながら、110℃で3時間加熱し、標準組成物II-2を作製した。
標準組成物II-2、安息香酸ブチル、安息香酸2-エチルヘキシルを、それぞれ重量比で50:20.75:29.25の割合で混ぜ合せ、組成物II-2を調製した。組成物II-2は固形分II-1の濃度が2.5重量%で、安息香酸ブチルと安息香酸2-エチルヘキシルの重量比が70:30の組成物である。
【0290】
組成物II-2を用いて、実施例1と同様の手順で有機膜II-2を形成し、平坦性を評価した。
測定箇所1の平坦性評価結果を図9に、測定箇所2の平坦性評価結果を図10に示す。式2の平坦度の定義から、上記2箇所の有機膜II-2の平坦度を算出すると、測定箇所1で55.8%、測定箇所2で58.7%と、比較的良好な平坦性が得られた。また、測定箇所1及び測定箇所2での膜の形状は、ほぼ同等の形状をとっていた。
【0291】
<実施例3>
標準組成物II-1、2-イソプロピルナフタレン、安息香酸2-エチルヘキシル、安息香酸ベンジルを、それぞれ重量比で50:20.75:29.25の割合で混ぜ合せ、一定時間撹拌したのちに孔径0.2μmのメンブレンフィルタで濾過し、組成物II-3を調製した。組成物II-3は固形分II-1の濃度が2.5重量%で、2-イソプロピルナフタレンと安息香酸2-エチルヘキシルと安息香酸ベンジルの重量比が70:20:10の組成物である。
【0292】
組成物II-3を用いて、実施例1と同様の手順で有機膜II-3を形成し、平坦性を評価した。
測定箇所1の平坦性評価結果を図11に示す。式2の平坦度の定義から、有機膜II-3の平坦度を算出すると、測定箇所1で90.2%と、良好な平坦性が得られた。
【0293】
<比較例4>
標準組成物II-1、2-イソプロピルナフタレン、ジベンジルエーテルを、それぞれ重量比で50:20.75:29.25の割合で混ぜ合せ、一定時間撹拌したのちに孔径0.2μmのメンブレンフィルタで濾過し、組成物II-4を調製した。組成物II-4は固形分II-1の濃度が2.5重量%で、2-イソプロピルナフタレンとジベンジルエーテルの重量比が70:30の組成物である。
【0294】
組成物II-4を用いて、実施例1と同様の手順で有機膜II-4を形成し、平坦性を評価した。
測定箇所1の平坦性評価結果を図12に、測定箇所2の平坦性評価結果を図13に示す。式2の平坦度の定義から、上記2箇所の有機膜II-4の平坦度を算出すると、測定箇所1で16.2%、測定箇所2で31.5%と、平坦な膜は得られなかった。測定箇所1及び測定箇所2での膜の形状は、中央部が窪んだ形状をとっており、同様の形状となっていた。
【0295】
<比較例5>
シクロヘキシルベンゼンに対して、固形分II-1の割合が5重量%になるように調整し、撹拌子を用いて420rpmで撹拌しながら、110℃で3時間加熱し、標準組成物II-3を作製した。
標準組成物II-3、シクロヘキシルベンゼン、安息香酸2-エチルヘキシルを、それぞれ重量比で50:20.75:29.25の割合で混ぜ合せ、組成物II-5を調製した。組成物II-5は固形分II-1の濃度が2.5重量%で、シクロヘキシルベンゼンと安息香酸2-エチルヘキシルの重量比が70:30の組成物である。
【0296】
組成物II-5を用いて、前記実施例1と同様の手順で有機膜II-5を形成し、平坦性を評価した。
測定箇所1の平坦性評価結果を図14に、測定箇所2の平坦性評価結果を図15に示す。式2の平坦度の定義から、上記2箇所の有機膜II-5の平坦度を算出すると、測定箇所1では68.9%と良好な平坦性が得られたが、測定箇所2では4.1%と平坦な膜は得られなかった。
【0297】
<比較例6>
安息香酸2-エチルヘキシルに対して、固形分II-1の割合が2.5重量%になるように調整し、撹拌子を用いて420rpmで撹拌しながら、110℃で3時間加熱し、組成物II-6を調製した。
【0298】
組成物II-6を用いて、前記実施例1と同様の手順で有機膜II-6を形成し、平坦性を評価した。
測定箇所1の平坦性評価結果を図16に、測定箇所2の平坦性評価結果を図17に示す。式2の平坦度の定義から、上記2箇所の有機膜II-6の平坦度を算出すると、測定箇所1では43.3%、測定箇所2では53.4%と、平坦な膜は得られなかった。測定箇所1及び測定箇所2での膜の形状は、ほぼ同等の形状をとっていた。
【0299】
実施例1~3及び比較例4~6の結果を表3にまとめる。これらの結果から、第2溶媒の沸点が245℃以上である場合、パネルの中央部と端部で同等の平坦性が得られることが分かった。特に第2溶媒の沸点が260℃以上の場合、パネルの中央部と端部両方で80%を超える平坦性が得られることが分かった。
【0300】
【表3】
【0301】
本発明を特定の態様を用いて詳細に説明したが、本発明の意図と範囲を離れることなく様々な変更が可能であることは当業者に明らかである。
本出願は、2018年5月1日付で出願された日本特許出願2018-088327に基づいており、その全体が引用により援用される。
【符号の説明】
【0302】
1 基板
2 陽極
3 正孔注入層
4 正孔輸送層
5 発光層
6 正孔阻止層
7 電子輸送層
8 電子注入層
9 陰極
10 有機電界発光素子
図1
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