(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】アンテナシステム
(51)【国際特許分類】
H01Q 1/42 20060101AFI20240110BHJP
B60J 1/00 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
H01Q1/42
B60J1/00 B
(21)【出願番号】P 2020557588
(86)(22)【出願日】2019-11-20
(86)【国際出願番号】 JP2019045393
(87)【国際公開番号】W WO2020105670
(87)【国際公開日】2020-05-28
【審査請求日】2022-08-04
(31)【優先権主張番号】P 2018219406
(32)【優先日】2018-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】竹内 彰一
(72)【発明者】
【氏名】東海林 英明
【審査官】佐藤 当秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-025585(JP,A)
【文献】特開2005-109601(JP,A)
【文献】特開2017-161431(JP,A)
【文献】特開昭59-127406(JP,A)
【文献】特開昭54-107655(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 1/00- 1/52
B60J 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さが1.1mm以上のガラス板と、
前記ガラス板の一方の主面と接触する樹脂層と、
前記樹脂層に対して前記ガラス板が位置する側とは反対側に位置し、前記樹脂層から離れて配置されるアンテナとを備え、
前記樹脂層は、厚さが0.2mm以上10mm以下であり、
周波数3GHz以上の所定の周波数をFとし、
周波数Fの入射電波に対する、前記ガラス板の単体の透過係数S21をS21
G[dB]とし、
周波数Fの入射電波に対する、前記ガラス板および前記樹脂層を含む積層体の透過係数S21をS21
GR[dB]とし、
前記ガラス板の単体の透過係数S21が極大になる入射電波の周波数のうち周波数Fに最も近い周波数をF
Pとし、
周波数F
Pの入射電波に対する、前記ガラス板の単体の透過係数S21をS21
GP[dB]とし、
前記ガラス板の単体の透過係数S21が極小になる入射電波の周波数のうち周波数Fに最も近い周波数をF
Vとし、
周波数F
Vの入射電波に対する、前記ガラス板の単体の透過係数S21をS21
GV[dB]とするとき
、
S21
GR-S21
G≧(S21
GP-S21
GV)×0.2
が成立する、アンテナシステム。
【請求項2】
前記樹脂層は、樹脂部と、前記一方の
主面と前記樹脂部との間に介在する接着部とを有する、請求項1に記載のアンテナシステム。
【請求項3】
前記接着部は、厚さが0.1mm以上2.0mm以下である、請求項2に記載のアンテナシステム。
【請求項4】
前記樹脂層は、単層の樹脂部からなる、請求項1に記載のアンテナシステム。
【請求項5】
前記樹脂部は、比誘電率が1.5以上10以下である、請求項2から4のいずれか一項に記載のアンテナシステム。
【請求項6】
前記樹脂部は、
前記アンテナを支持するブラケットとは別の部材または前記ブラケットの一部分である、請求項2から5のいずれか一項に記載のアンテナシステム。
【請求項7】
前記ガラス板は、誘電正接が0.05以下である、請求項1から6のいずれか一項に記載のアンテナシステム。
【請求項8】
前記ガラス板は、比誘電率が3以上9以下である、請求項1から7のいずれか一項に記載のアンテナシステム。
【請求項9】
前記アンテナは、前記樹脂層から0.5mm以上10mm以下離れて配置される、請求項1から8のいずれか一項に記載のアンテナシステム。
【請求項10】
前記アンテナは、ブラケットによって支持され、
前記ブラケットの材料は、前記樹脂層と同じ材料を含む、請求項1から9のいずれか一項に記載のアンテナシステム。
【請求項11】
前記ブラケットは、前記樹脂層の少なくとも一部を含む部分と、前記アンテナの少なくとも一部を囲う部分とを有する、請求項10に記載のアンテナシステム。
【請求項12】
周波数Fは、5~6GHzの範囲に含まれる、請求項1から11のいずれか一項に記載のアンテナシステム。
【請求項13】
周波数Fは、26~29GHzの範囲に含まれる、請求項1から11のいずれか一項に記載のアンテナシステム。
【請求項14】
周波数Fは、38~40GHzの範囲に含まれる、請求項1から11のいずれか一項に記載のアンテナシステム。
【請求項15】
周波数Fは、57~66GHzの範囲に含まれる、請求項1から11のいずれか一項に記載のアンテナシステム。
【請求項16】
周波数Fは、76~81GHzの範囲に含まれる、請求項1から11のいずれか一項に記載のアンテナシステム。
【請求項17】
S21
G≦-(S21
GP-S21
GV)×0.5
が成立する、請求項1から16のいずれか一項に記載のアンテナシステム。
【請求項18】
S21
GR-S21
Gで表される改善量は、0.50dB以上である、請求項1から17のいずれか一項に記載のアンテナシステム。
【請求項19】
前記ガラス板は、窓ガラスである、請求項1から18のいずれか一項に記載のアンテナシステム。
【請求項20】
前記窓ガラスは、車両用窓ガラスである、請求項19に記載のアンテナシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、4G LTEから5G(sub6)への移行など、マイクロ波やミリ波の周波数帯を使用する高速・大容量の無線通信システムを利用するサービスが拡がる動きがある。具体的には、3GHz帯域から5~6GHz帯域まで、そのようなサービスの使用帯域が広がる傾向にある。そして、このような周波数帯に対応可能であって、指向性及び受信感度の良好なアンテナが求められている。また、車車間通信および路車間通信として期待されているV2X(Vehicle to Everything)は、例えば5.9GHz帯において米国で使用されるなど、多くの用途に展開されている。さらに、sub6よりも高い周波数(例えば、28GHz帯、40GHz帯、60GHz帯、70GHz帯)を用いた無線通信システムの普及に向けた試みも行われている。
【0003】
このような高周波数帯域の通信を行うため、例えば、車内に備えられたミリ波レーダーによる送受を行う場合、これまでの比較的低い、例えば1GHz未満の周波数帯の通信において顕著ではなかった、窓ガラスによる利得の減衰が起こることがある。そこで、高周波数帯域の通信において高い利得を得るために、窓ガラスの一部に電波透過材を嵌め込む構成が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の技術では、窓ガラスそのものに機械的な加工を施したり、窓ガラスとは別の部材を、窓ガラスが通常存在する部分に包含させたりするため、構成が複雑になり、生産性が低下する問題があった。
【0006】
そこで、本開示は、厚さが1.1mm以上のガラス板を用いて、そのガラス板の構成を複雑化させることなく、所定の高周波帯の電波を送受可能なアンテナシステムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、
厚さが1.1mm以上のガラス板と、
前記ガラス板の一方の主面と接触する樹脂層と、
前記樹脂層に対して前記ガラス板が位置する側とは反対側に位置し、前記樹脂層から離れて配置されるアンテナとを備え、
前記樹脂層は、厚さが0.2mm以上10mm以下であり、
周波数3GHz以上の所定の周波数をFとし、
周波数Fの入射電波に対する、前記ガラス板の単体の透過係数S21をS21G[dB]とし、
周波数Fの入射電波に対する、前記ガラス板および前記樹脂層を含む積層体の透過係数S21をS21GR[dB]とし、
前記ガラス板の単体の透過係数S21が極大になる入射電波の周波数のうち周波数Fに最も近い周波数をFPとし、
周波数FPの入射電波に対する、前記ガラス板の単体の透過係数S21をS21GP[dB]とし、
前記ガラス板の単体の透過係数S21が極小になる入射電波の周波数のうち周波数Fに最も近い周波数をFVとし、
周波数FVの入射電波に対する、前記ガラス板の単体の透過係数S21をS21GV[dB]とするとき、
S21GR-S21G≧(S21GP-S21GV)×0.2
が成立する、アンテナシステムを提供する。
【発明の効果】
【0008】
本開示の技術によれば、厚さが1.1mm以上のガラス板を用いて、そのガラス板の構成を複雑化させることなく、所定の高周波帯の電波における透過係数の低下を抑制したアンテナシステムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】入射電波に対するガラス板の単体の透過係数の周波数特性を例示する図である。
【
図2】本実施形態におけるアンテナシステムを例示する部分断面図である。
【
図3】入射電波に対するガラス板の単体の透過係数の周波数特性を例示する図である。
【
図4】樹脂層の厚さの違いによる透過係数の周波数特性を例示する図である。
【
図5】積層体の第1の構成例における透過係数の周波数特性を例示する図である。
【
図6】積層体の第2の構成例における透過係数の周波数特性を例示する図である。
【
図7】積層体の第3の構成例における透過係数の周波数特性を例示する図である。
【
図8】積層体の第4の構成例における透過係数の周波数特性を例示する図である。
【
図9】積層体の第5の構成例における透過係数の周波数特性を例示する図である。
【
図10】積層体の第6の構成例における透過係数の周波数特性を例示する図である。
【
図11】ガラス板の単体における透過係数の周波数特性を例示する図である。
【
図12】積層体の第7の構成例における透過係数の周波数特性を例示する図である。
【
図13】積層体の第8の構成例における透過係数の周波数特性を例示する図である。
【
図14】積層体の第9の構成例における透過係数の周波数特性を例示する図である。
【
図15】ガラス板の単体における透過係数の周波数特性を例示する図である。
【
図16】アンテナセットの第1の構成例を示す部分断面図である。
【
図17】アンテナセットの第2の構成例を示す部分断面図である。
【
図18】アンテナセットの第3の構成例を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本開示に係る実施形態の説明を行う。なお、各形態において、平行、直角、直交、水平、垂直、上下、左右などの方向には、本発明の効果を損なわない程度のずれが許容される。また、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向は、それぞれ、X軸に平行な方向、Y軸に平行な方向、Z軸に平行な方向を表す。X軸方向とY軸方向とZ軸方向は、互いに直交する。XY平面、YZ平面、ZX平面は、それぞれ、X軸方向及びY軸方向に平行な仮想平面、Y軸方向及びZ軸方向に平行な仮想平面、Z軸方向及びX軸方向に平行な仮想平面を表す。
【0011】
本実施形態におけるアンテナシステムは、例えば、マイクロ波やミリ波等の高周波帯(例えば、3GHz~300GHz)の信号の伝搬に使用される。そのような高周波帯には、3~30GHzのSHF帯、30~300GHzのEHF帯が含まれる。
【0012】
本実施形態におけるアンテナシステムは、例えば、第5世代移動通信システム(いわゆる、5G)、IEEE802.11ac及びIEEE802.11ad等の無線LAN(Local Area Network)規格で使用されてもよい。また、本実施形態におけるアンテナシステムは、車両で使用される場合、レーダーを照射する車載レーダーシステムや車車間通信や路車間通信等のV2X通信システム、移動体通信システムの標準規格の仕様の検討や調整を行う3GPP(3rd Generation Partnership Project)による規格Cellular V2X(C-V2X)で使用されてもよい。
【0013】
本実施形態におけるアンテナシステムは、車両用に限られず、建物用でもよいし、電子機器用でも適用可能である。
【0014】
本実施形態におけるアンテナシステムは、厚さが1.1mm以上のガラス板と、そのガラス板の表面から離れて配置されるアンテナとを備える。アンテナがガラス板を介して電波を受信又は送信する場合、高周波数帯になるほど電波はガラス板を透過する際に減衰して伝わる傾向があるので、ガラス板による電波の透過損失(Transmission Loss)を抑えることが要求される。なお、ガラス板は、例えば、車両用の1枚のガラスであれば、2mm以上の厚さ、3mm以上の厚さ、又は4mm以上の厚さのガラスが使用される。また、厚さの上限はとくに無いが、車両用の1枚のガラスであれば6mm以下の厚さ、又は5mm以下の厚さのガラスが使用される。
【0015】
図1は、ガラス板にその主表面の法線方向から入射する電波の周波数に対する、ガラス板の単体の透過係数S21のシミュレーション結果を例示する図である。透過係数S21は、Sパラメータ(Scattering parameter)の一つであり、対象物に入射する電波がその対象物を透過する度合いを表す指標である。透過係数S21は負値であり、透過係数S21が大きいほど(零に近づくほど)、減衰度合いが小さい(つまり、透過損失が小さい)ことを表す。凡例は、各々のガラス板の厚さ(単位:mm)t1において、周波数27.9GHzにおける透過係数S21(単位:dB)を示している。
【0016】
図1に示されるように、透過係数S21は、ガラス板に入射する電波の周波数に応じて異なり、周波数に関して略周期的に変化する。また、透過係数S21は、ガラス板の厚さt1によっても変化する。したがって、使用する電波の周波数に対する透過係数S21が比較的低い場合、厚さt1を変えることで、透過係数S21を大きくするような調整もできる。例えば、使用する電波の周波数が27.9GHzの場合において、厚さt1が3.1mmのとき、透過係数S21は約-3.69dBである。これに対し、厚さt1を4.1mmに変更すると、透過係数S21を約-0.40dBに大きくできるので、透過損失の抑制が可能となる。
【0017】
しかしながら、例えば、車両や建物等の窓ガラスに用いられるガラス板の厚さは、強度等の要求仕様などから所定の厚さの範囲となるように決められている場合が多い。そのため、ガラス板は、その厚さを自由に変更することは難しい場合が多い。
【0018】
そこで、本実施形態におけるアンテナシステムは、ガラス板の厚さの変更と等価的な効果を奏する構成を有する。次に、本実施形態におけるアンテナシステムの構成について詳細に説明する。
【0019】
図2は、本実施形態におけるアンテナシステムを例示する部分断面図である。
図2に示すアンテナシステム1000は、積層体70と、積層体70からX軸方向に離れて配置されるアンテナ73とを備える。積層体70は、ガラス板71と樹脂層72とがX軸方向に積層する構成を有する。X軸方向は、ガラス板71の主表面の法線方向に対応する。
【0020】
ガラス板71は、その主表面として、第1主面77と、第1主面77とは反対側の第2主面76とを有し、厚さt1が1.1mm以上である。なお、ガラス板71は、例えば、車両用のガラスであれば、2mm以上の厚さ、3mm以上の厚さ、又は4mm以上のガラスが使用される。第1主面77は、ガラス板71の一方の主面であり、第2主面76は、ガラス板71の他方の主面である。厚さt1は、第1主面77と第2主面76との間のX軸方向における厚さを表す。
【0021】
なお、厚さt1の上限は、アンテナ73に要求される利得が確保される限り、特に限定されない。例えば、ガラス板71が車両用の窓ガラスに使用される場合、厚さt1は6mm以下であったり、5mm以下であったりする。ガラス板71が、例えば、2枚のガラス板で樹脂などの中間膜を挟み積層した構造を備える合わせガラスの場合、厚さt1は10mm(=5mm×2)+中間膜厚さ以下である。なお、合わせガラスに用いる中間膜の厚さは、通常、0.2mm~2mmである。そのため、合わせガラスの厚さは12mm以下の場合が多い。また、例えば、鉄道車両用等の合わせガラスの場合、厚さt1は6mm超とすることが多く、このような用途を鑑みると、合わせガラスの厚さは12mm以下に限らず25mm以下でもよい。
【0022】
樹脂層72は、ガラス板71の第1主面77と接触する。
図2に示す形態では、樹脂層72は、主成分を樹脂とする樹脂部75と、第1主面77と樹脂部75との間に介在する接着部74とを有し、接着部74は、樹脂部75を第1主面77に接着させる。なお、樹脂層72は、単層からなる形態、より具体的には、接着部74のみからなる形態、又は接着部74が存在しない形態でもよい。
【0023】
アンテナ73は、樹脂層72に対してガラス板71が位置する側とは反対側に位置し、樹脂層72から離れて配置されている。例えば、アンテナ73は、樹脂層72の表面(
図2の場合、樹脂部75の表面)から離れて配置されるように、ガラス板71の第1主面77の側に不図示の箱型のブラケットを介して取り付けられている。なお、樹脂部75は、アンテナ73を支持するブラケットの一部でもよい。ブラケットの材料は、樹脂層72と同じ材料を含むことにより、樹脂層72とブラケットとの一体化が容易になり、この場合、ブラケットのうち樹脂層72に相当する部分の厚さt2を調整することで、高周波数帯の透過係数S21を大きくできる。
【0024】
アンテナ73は、周波数3GHz以上の所定の周波数Fの電波を送受可能に形成されている。アンテナ73は、所定の周波数Fの電波を送受可能に形成されていれば、その形態は限定されない。アンテナ73の具体例として、マイクロストリップアンテナ等の平面アンテナが挙げられる。
【0025】
図3は、ガラス板71の表面の法線方向からガラス板71に入射する電波の周波数に対する、ガラス板71の単体の透過係数S21のシミュレーション結果を例示する図である。
図3は、ガラス板71の厚さt1が3.1mmの場合と3.5mmの場合とを示している。
【0026】
ここで、周波数Fの入射電波に対する、ガラス板71の単体の透過係数S21をS21G[dB]とする。また、ガラス板71の単体の透過係数S21が極大になる入射電波の周波数のうち周波数Fに最も近い周波数をFPとする。また、周波数FPの入射電波に対する、ガラス板71の単体の透過係数S21をS21GP[dB]とする。また、ガラス板71の単体の透過係数S21が極小になる入射電波の周波数のうち周波数Fに最も近い周波数をFVとする。さらに、周波数FVの入射電波に対する、ガラス板71の単体の透過係数S21をS21GV[dB]とする。入射電波とは、ガラス板71の主表面にその法線方向から入射する電波を表す。[dB]は、単位“デシベル”を表す。
【0027】
また、
図2に示す形態において、周波数Fの入射電波に対する、ガラス板71および樹脂層72を含む積層体70の透過係数S21をS21
GR[dB]とする。この形態において、本発明者は、『S21
GR-S21
G≧(S21
GP-S21
GV)×0.2』を満足するように、樹脂層72の厚さt2を調整すると、ガラス板71の厚さt1を変更せずに、周波数Fの電波を効率的に送受できることを見出した。つまり、樹脂層72が、『S21
GR-S21
G≧(S21
GP-S21
GV)×0.2』を満足する厚さt2を有することにより、樹脂層72が無い場合に比べて、透過係数S21が大きくなり、透過損失の抑制が可能となる。
【0028】
図3から明らかなように、(S21
GP-S21
GV)は、周波数F近傍の周波数帯域でのS21の波高値を表す。したがって、『S21
GR-S21
G≧(S21
GP-S21
GV)×0.2』は、S21の波高値(S21
GP-S21
GV)を100%とするとき、樹脂層72を追加すると、透過係数S21がその波高値に対して20%以上改善することを意味している。
【0029】
本実施形態では、周波数Fにおけるガラス板71の単体の透過係数S21Gが比較的低い場合、例えば、『S21G≦-(S21GP-S21GV)×0.5』が成立する場合、樹脂層72の追加による透過係数S21の改善効果が高い。
【0030】
また、本実施形態では、周波数Fが、5~6GHz帯、28GHz帯(26~29GHz)、40GHz帯(38~40GHz)、60GHz帯(57~66GHz)、70GHz帯(76~81GHz)のいずれかの範囲に含まれるとき、それら以外の範囲に含まれる場合に比べて、樹脂層72の追加による透過係数S21の改善効果が高い。
【0031】
透過損失を抑制する点で、樹脂層72は、『S21GR-S21G≧(S21GP-S21GV)×0.4』を満足する厚さt2とすることがより好ましく、『S21GR-S21G≧(S21GP-S21GV)×0.6』を満足する厚さt2とすることがさらに好ましい。さらに、樹脂層72は、『S21GR-S21G≧(S21GP-S21GV)×0.8』を満足する厚さt2とすることがとくに好ましく、『S21GR-S21G≧(S21GP-S21GV)×0.9』を満足する厚さt2とすることが最も好ましい。
【0032】
図4は、樹脂層72の厚さt2の違いによる透過係数S21の周波数特性を例示する図である。積層体70にその主表面の法線方向から入射する電波の周波数に対する、積層体70の透過係数S21のシミュレーション結果が示されている。凡例は、各々の樹脂層72の厚さt2(単位:mm)において、周波数Fが27.9GHzのときの透過係数S21(単位:dB)を示している。なお、t2=0のときの波形は、樹脂層72が無い場合を示し、ガラス板71の単体の透過係数S21の変化を示す。また、ガラス板71は、厚さt1を3.1mm、比誘電率を7、誘電正接(いわゆる、tanδ)を0.01に設定している。また、樹脂層72は、比誘電率を3.6、誘電正接を0.01に設定している。ここで、樹脂層72は、樹脂部75のみからなり、例として、PBT-GF30(ポリブチレンテレフタレート ガラス繊維30%)を想定した。なお、樹脂層72は、接着部74および樹脂部75からなる場合、又は、接着部74のみからなる場合にも、適宜、所定の比誘電率、誘電正接を有する材料を所定の厚さで適用できる。
【0033】
なお、ガラス板の比誘電率、誘電正接は、同軸共振器法による測定装置を用い室温 24℃、湿度 30%の環境において3GHzにおける測定値である。また、PBT-GF30の比誘電率、誘電正接は、日本産業規格(JIS C2565)に準拠する空洞共振器法による測定装置を用い室温 23℃、湿度 40%の環境において5GHzにおける測定値である。この他マイクロ波における比誘電率、誘電正接測定には日本産業規格(JIS R 1641:2007)に規定されている平板測定用共振器を用いることができる。また、準ミリ波帯、ミリ波帯においても同様に空洞共振器法による方法、ファブリ・ペロー開放型共振器を用いる方法、導波管サンプルホルダを用いる方法、自由空間法による測定法が提案されており、これらの方法も使用可能である。ガラスの比誘電率は周波数上昇に伴い漸減し、ガラスの誘電正接は周波数上昇に伴い漸増することが知られている。なお、ガラスの比誘電率や誘電正接の実際の測定は、上記方法による測定確度、測定サンプルの形状により、ばらつきも生じ得る。しかし、所定の周波数範囲における比誘電率や誘電正接の値の変化が小さいため、後述するシミュレーションにおいては、所定の周波数での比誘電率や誘電正接の値を代表値(一定値)として、透過率(S21パラメータ)を計算した。
【0034】
樹脂層72が無い場合(t2=0)、周波数F(=27.9GHz)に対するガラス板71の単体の透過係数S21Gは、約-3.69dBである。これに対し、ガラス板71の第1主面77に厚さt2の樹脂層72(この場合、樹脂部75)を設けることによって、周波数Fに対する積層体70の透過係数S21GRは増加する。ガラス板71の第1主面77に厚さt2が約1.34mmの樹脂層72(この場合、樹脂部75)を設けることによって、周波数Fにおける透過係数S21GRは、約-0.76dBまで改善する。このとき、ガラス板71の単体の場合に対する改善量(S21GR-S21G)は、約2.93dB(=-0.76-(-3.69))である。この改善量は、『S21GR-S21G≧(S21GP-S21GV)×0.2』を十分に満足し、さらに『S21GR-S21G≧(S21GP-S21GV)×0.8』も満足する。なお、改善量(S21GR-S21G)は、ガラス板71単体での所定周波数FにおけるS21Gにもよるが、0.50dB以上あればよく、1.00dB以上が好ましく、2.00dB以上がより好ましく、2.50dB以上がさらに好ましい。
【0035】
次に、本実施形態におけるアンテナシステム1000の構成について、より詳細に説明する。
【0036】
接着部74は、具体例として、接着剤、接着テープなどが挙げられる。接着部74の厚さt4は、透過損失を抑制する点で、0.1mm以上2.0mm以下が好ましく、0.2mm以上1.8mm以下がより好ましい。厚さt4が0.1mm未満であると、0.1mm以上の場合に比べて、接着部74の強度が低下するおそれがある。厚さt4が2.0mmを超えると、2.0mm以下の場合に比べて、樹脂層72の厚さt2の寸法精度が低下するおそれがある。
【0037】
樹脂部75は、具体例として、車両用の内装材でブラケットなどに用いられるPBT-GF30(ポリブチレンテレフタレート ガラス繊維30%)などが挙げられる。樹脂部75は、透過損失を低減するうえで、比誘電率はガラス板71の比誘電率に近く、誘電正接が低い樹脂が好ましい。しかし、樹脂部75については、求められる強度、耐熱性等により、樹脂の種類、添加されるガラス繊維等のフィラーの種類や量も決定できる。また、樹脂部75については、射出成形により作製される場合、成形性により樹脂の種類を適宜選択できる。樹脂部75は、PBT-GF30に限らず、PC(ポリカーボーネート)やそのガラス繊維等のフィラー添加品やABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)とPCのポリマーアロイ、PEI(ポリエーテルイミド)、ASA(アクリロニトリル・スチレン・アクリルゴム)等、車両に用いられる樹脂が使用可能である。また、樹脂部75が、射出成形によって得られる樹脂成形品であれば、ガラス面形状に沿うように作製できる。樹脂部75の比誘電率は、透過損失を抑制する点で、1.5以上10以下が好ましく、2.0以上8以下がより好ましい。
【0038】
樹脂部75の厚さt5は、透過損失を抑制できればとくに制限はないが、透過損失の抑制効果と小型化(低背化)の両方を実現する点で、0.2mm以上10mm以下が好ましく、0.5mm以上8mm以下がより好ましい。また、上記の好ましい範囲であっても、透過損失を抑制できる樹脂部75の厚さt5が複数存在する場合、その中でも薄い厚さt5であれば、より小型化(低背化)が実現でき、好ましい。しかし、樹脂部75の厚さt5は、樹脂部75の強度や製作方法(例えば射出成形)を考慮し決められる。
【0039】
ガラス板71の誘電正接は、透過損失を抑制する点で、3GHz以上の周波数において、0.05以下が好ましく、0.01以下がより好ましい。接着部74及び樹脂部75の誘電正接も、透過損失の低減の点で、比較的低い値が好ましい。
【0040】
ガラス板71の比誘電率は、透過損失を抑制する点で、比較的低い値であればよく、3GHz以上の周波数において、3以上9以下が好ましく、4以上8以下がより好ましい。
【0041】
アンテナ73は、誘電体であるガラス板71の近接によるアンテナ73単体の共振特性等に影響を与えない点で、樹脂層72のうちガラス板71側と対向する側の面から0.5mm以上10mm以下の距離D離れて配置されることが好ましい。距離Dは、1mm以上9mm以下が好ましく、2mm以上8mm以下がより好ましい。
【0042】
なお、アンテナ73が平面アンテナであって、アンテナ面が樹脂層72とガラス板71との少なくとも一方に対して傾いている場合など、アンテナ73と樹脂層72との間の距離Dが部位によって異なる場合、距離Dは、各部位での距離の平均値で定義してもよい。また、アンテナ73が平面アンテナであって、アンテナ面がガラス板71に対して傾いている場合(非平行な場合)、アンテナ73とガラス板71との距離の平均値に基づいて、電波透過性が高くなるように樹脂層72の厚さt2を調整してもよい。
【0043】
次に、
図5から
図15を参照して、樹脂層72をガラス板71の第1主面77に設けた積層体70の透過係数S21のシミュレーション結果について説明する。なお、特に断りのない限り、ガラス板71は、比誘電率を7、誘電正接を0.01に設定している。また、接着部74は、比誘電率を2、誘電正接を0.01に設定し、例として、アクリルフォームテープを想定した。なお、シミュレーションにおいては平面波が垂直に入射するものとして計算した。
【0044】
図5は、接着部74の厚さt4が0mmのときの(つまり、接着部74が無いときの)積層体70の透過係数S21の周波数特性を例示する図である。
図6は、接着部74の厚さt4が0.4mmのときの積層体70の透過係数S21の周波数特性を例示する図である。表1は、
図5,6のシミュレーション条件とその結果をまとめて示している。なお、
図5,6において、樹脂部75は、比誘電率を3.6、誘電正接を0.01に設定し、例としてPBT-GF30(ポリブチレンテレフタレート ガラス繊維30%)を想定した。なお、各部材の比誘電率、誘電正接は、とくに断りが無い場合、上述の規格に基づく値とし、とくに周波数Fとして27.9GHzにおける値とした。すなわち、ガラス板71は、同軸共振器法による測定装置を用いて得られる値であり、樹脂部75はJIS C2565によって得られる値とした。
【0045】
【0046】
表1は、
図5,6において、周波数Fが27.9GHzのときに積層体70の透過係数S21
Gが極大になる樹脂部75の厚さt5を示している。周波数Fが27.9GHzにおいて、厚さt1が3.1mmのガラス板71の単体の透過係数S21は約-3.69dBである。つまり、ガラス板71の第1主面77に樹脂層72を設けた
図5,6のいずれの場合も、ガラス板71の単体の場合に比べて、27.9GHzにおける透過係数S21が改善し、
図5では約2.93dB、
図6では約2.86dB改善する。
【0047】
図7は、接着部74の厚さt4が0mmのときの(つまり、接着部74が無いときの)積層体70の透過係数S21の周波数特性を例示する図である。
図8は、接着部74の厚さt4が0.4mmのときの積層体70の透過係数S21の周波数特性を例示する図である。表2は、
図7,8のシミュレーション条件とその結果をまとめて示している。なお、
図7,8において、樹脂部75は、比誘電率を5、誘電正接を0.01に設定し、例としてポリウレタン樹脂、ポリクロロプレンゴム、ニトリルゴムを想定した。
【0048】
【0049】
表2は、
図7,8において、周波数Fが27.9GHzのときに積層体70の透過係数S21
Gが極大になる樹脂部75の厚さt5を示している。周波数Fが27.9GHzにおいて、厚さt1が3.1mmのガラス板71の単体の透過係数S21は約-3.69dBである。つまり、ガラス板71の第1主面77に樹脂層72を設けた
図7,8のいずれの場合も、ガラス板71の単体の場合に比べて、27.9GHzにおける透過係数S21が改善し、
図7では約3.24dB、
図8では約3.07dB改善する。
【0050】
図9は、接着部74の厚さt4が0mmのときの積層体70の透過係数S21の周波数特性を例示する図である。
図10は、接着部74の厚さt4が0.4mmのときの積層体70の透過係数S21の周波数特性を例示する図である。
図11は、ガラス板71の単体の透過係数S21の周波数特性を例示する図である。表3は、
図9~11におけるシミュレーション条件とその結果をまとめて示している。なお、
図9~11において、樹脂部75は、周波数Fとして39GHzにおける比誘電率を3.6、誘電正接を0.01に設定し、例としてPBT-GF30(ポリブチレンテレフタレート ガラス繊維30%)を想定した。
【0051】
【0052】
表3は、
図9,10において、周波数Fが39GHzのときに積層体70の透過係数S21
Gが極大になる樹脂部75の厚さt5を示している。また、表3は、
図11において、周波数Fが39GHzのときのガラス板71の単体の透過係数S21が約-1.24dBであることを示している。つまり、ガラス板71の第1主面77に樹脂層72を設けた
図9,10のいずれの場合も、ガラス板71の単体の場合に比べて、39GHzにおける透過係数S21が改善し、
図9では約0.88dB、
図10では約0.85dB改善する。
【0053】
図12は、接着部74の厚さt4が0mmのときの積層体70の透過係数S21の周波数特性を例示する図である。
図13は、接着部74の厚さt4が0.4mmのときの積層体70の透過係数S21の周波数特性を例示する図である。
図14は、接着部74の厚さt4が0.4mmのときの積層体70の透過係数S21の周波数特性を例示する図である。
図15は、ガラス板71の単体の透過係数S21の周波数特性を例示する図である。表4は、
図12~15におけるシミュレーション条件とその結果をまとめて示している。なお、
図12~15において、樹脂部75は、周波数Fとして79GHzにおける比誘電率を3.6、誘電正接を0.01に設定し、例としてPBT-GF30(ポリブチレンテレフタレート ガラス繊維30%)を想定した。
【0054】
【0055】
表4は、
図12~14において、周波数Fが79GHzのときに積層体70の透過係数S21
Gが極大になる樹脂部75の厚さt5を示している。なお、樹脂部75の厚さt5を1.18mmに設定すると、
図13の測定時での極大値(≒-1.38dB)よりも大きな透過係数S21(≒-1.29dB)となった(
図14参照)。また、表4は、
図15において、周波数Fが79GHzのときのガラス板71の単体の透過係数S21が約-3.37dBであることを示している。つまり、ガラス板71の第1主面77に樹脂層72を設けた
図12~14のいずれの場合も、ガラス板71の単体の場合に比べて、79GHzにおける透過係数S21が改善し、
図12では約2.36dB、
図13では約1.99dB、
図14では約2.08dB改善する。
【0056】
図16は、アンテナセットの第1の構成例を示す部分断面図である。
図16に示すアンテナセット2Aは、窓ガラス120に取り付けられている。以下、アンテナセット2Aは、車両用の窓ガラスに取り付ける場合を例にして説明する。
【0057】
図16において、アンテナセット2Aは、2つのアンテナ13,14を備えているが、1つ又は3つ以上のアンテナを備えてもよい。2つのアンテナ13,14は、例えば、同じ周波数帯の電波を送受できる構成でもよく、異なる周波数帯の電波を送受できる構成でもよい。アンテナセット2Aが、3つ以上のアンテナを備える場合も各々、仕様に合わせて適宜、送受できる周波数帯を設定すればよい。また、アンテナセットは、窓ガラス等の誘電体の近傍に設けられてもよいし、誘電体に貼り付け又は内蔵等により直接設けられてもよい。また、取り付けるアンテナセット2A近傍の誘電体は、窓ガラスに限られず、ピラーに貼り合わされたガラス、さらには樹脂等でもよい。2つのアンテナ13,14(アンテナセット2A)は、例えば、車両の一部として車室内のインストルメントパネルや内張りなどの樹脂部材近傍に取り付けてもよく、アンテナ13,14を支持するブラケットとともに、車室内ルーフに取り付けてもよい。後述のアンテナセットについても同様である。
【0058】
アンテナセット2Aは、アンテナ13,14を、基板53,54を介して支持するブラケット121Aを備える。なお、アンテナ13,14が平面アンテナの場合、基板53,54の面に所定の形状のアンテナパターンが備わっていればよい。また、基板53,54の面は、窓ガラス120の面に平行に配置されてもよく、傾いて配置されてもよい。ブラケット121Aは、アンテナ13,14の少なくとも一部を覆う部分であるカバー部179と、カバー部179の上下両端から伸びるフランジ部179aとを有する。ブラケット121Aは、アンテナ13,14が窓ガラス120とカバー部179との間の空間に位置するように、窓ガラス120の表面に取り付けられる。フランジ部179aは、接着剤又は接着テープ等の接着部材178により窓ガラス120の表面に接着される。
【0059】
アンテナセット2Aは、樹脂板172がアンテナ13,14と窓ガラス120との間に位置するように、窓ガラス120の表面にフランジ部179aで接着部材178により接着される。樹脂板172は、上述の樹脂部75(又は、単層の樹脂層72)の一例であり、ブラケット121Aとは別の部材である。樹脂板172は、例えば、窓ガラス120の表面に(不図示の)接着部74を介して貼付されてもよい。接着部74がない場合、樹脂板172を窓ガラス120の表面に物理的に接触させるように樹脂板172を固定させる他の部品を設けてもよい。又は、接着部74の有無を問わず、樹脂板172を窓ガラス120との間に挟み込む爪状の突起部179bを、ブラケット121Aの内側のうちフランジ部179aの近傍に設けてもよい。この場合、樹脂部である樹脂板172がブラケット121Aとは別の部材であるので、樹脂板172の厚さ等の寸法や素材の変更が容易になり、透過損失の抑制度合いを容易に調整できる。その結果、アンテナ利得を事後的に調整することが容易になる。
【0060】
図17は、アンテナセットの第2の構成例を示す部分断面図である。
図17に示すアンテナセット2Bは、窓ガラス120に取り付けられている。上述のアンテナセットと同様の点については、上述の説明を援用することで省略する。
【0061】
アンテナセット2Bは、アンテナ13,14を、基板53,54を介して支持するブラケット121Bを備える。ブラケット121Bは、アンテナ13,14の少なくとも一部を覆う部分であるカバー部179と、カバー部179の上下両端から伸びるフランジ部179aと、カバー部179との間に空間を形成するベース部175とを有する。ブラケット121Bは、アンテナ13,14が窓ガラス120とカバー部179との間の空間に位置するように、窓ガラス120の表面に取り付けられる。フランジ部179a及びベース部175は、接着剤又は接着テープ等の接着部材174により窓ガラス120の表面に接着される。
【0062】
アンテナセット2Bは、ベース部175がアンテナ13,14と窓ガラス120との間に位置するように、窓ガラス120の表面にフランジ部179a及びベース部175で接着部材174により接着される。ベース部175は、上述の樹脂部75の一例であり、ブラケット121Bの一部分である。接着部材174は、上述の接着部74の一例である。ベース部175及び接着部材174は、上述の樹脂層72の少なくとも一部を含む部分である。樹脂部であるベース部175がブラケット121Bの一部分であるので、透過損失の抑制とアンテナの取り付けやすさの向上の両立を図ることができる。
【0063】
図18は、アンテナセットの第3の構成例を示す部分断面図である。
図18に示すアンテナセット2Cは、窓ガラス120に取り付けられている。上述のアンテナセットと同様の点については、上述の説明を援用することで省略する。
【0064】
アンテナセット2Cは、アンテナ13,14を、基板53,54を介して支持するブラケット121Cを備える。ブラケット121Cは、アンテナ13,14の少なくとも一部を覆う部分であるカバー部179と、カバー部179の上下両端から伸びるフランジ部179aと、カバー部179との間に空間を形成するベース部175とを有する。ブラケット121Cは、アンテナ13,14が窓ガラス120とカバー部179との間の空間に位置するように、窓ガラス120の表面に取り付けられる。フランジ部179aは、接着剤又は接着テープ等の接着部材178により窓ガラス120の表面に接着される。
【0065】
アンテナセット2Cは、ベース部175がアンテナ13,14と窓ガラス120との間に位置するように、窓ガラス120の表面にフランジ部179aで接着部材178により接着される。ベース部175は、上述の単層の樹脂層72(つまり、接着部74がない形態)の一例であり、ブラケット121Cの一部分である。ベース部175は、上述の樹脂層72の少なくとも一部を含む部分である。樹脂部であるベース部175がブラケット121Cの一部分であるので、透過損失の抑制とアンテナの取り付けやすさの向上の両立を図ることができる。
【0066】
以上、アンテナシステムを実施形態により説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。他の実施形態の一部又は全部との組み合わせや置換などの種々の変形及び改良が、本発明の範囲内で可能である。
【0067】
例えば、ガラス板は、車両用に限られず、建物用でもよいし、電子機器用でもよい。また、ガラス板は、窓ガラスに限られず、ガラス板の用途は、窓ガラス以外でもよい。
【0068】
本国際出願は、2018年11月22日に出願した日本国特許出願第2018-219406号に基づく優先権を主張するものであり、日本国特許出願第2018-219406号の全内容を本国際出願に援用する。
【符号の説明】
【0069】
2A,2B,2C アンテナセット
13,14 アンテナ
53,54 基板
70 積層体
71 ガラス板
72 樹脂層
73 アンテナ
74 接着部
75 樹脂部
76 第2主面
77 第1主面
1000 アンテナシステム
120 窓ガラス
121A,121B,121C ブラケット