(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】エピハロヒドリン系ゴム組成物、ゴム架橋物、ゴム積層体、およびホース
(51)【国際特許分類】
C08L 71/03 20060101AFI20240110BHJP
B32B 25/14 20060101ALI20240110BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20240110BHJP
C08K 3/26 20060101ALI20240110BHJP
C08K 5/3465 20060101ALI20240110BHJP
F16L 11/04 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
C08L71/03
B32B25/14
C08K3/04
C08K3/26
C08K5/3465
F16L11/04
(21)【出願番号】P 2020559176
(86)(22)【出願日】2019-12-02
(86)【国際出願番号】 JP2019047031
(87)【国際公開番号】W WO2020116391
(87)【国際公開日】2020-06-11
【審査請求日】2022-12-14
(31)【優先権主張番号】P 2018230045
(32)【優先日】2018-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019083154
(32)【優先日】2019-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】弁理士法人とこしえ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】茂▲崎▼ 紫穂
【審査官】谷合 正光
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-185826(JP,A)
【文献】国際公開第2017/150300(WO,A1)
【文献】特開2007-186564(JP,A)
【文献】特開2013-113736(JP,A)
【文献】国際公開第2018/079401(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 71/03
B32B 25/14
C08K 3/04
C08K 3/26
C08K 5/3465
F16L 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エピハロヒドリン系ゴムと、カーボンブラックと、キノキサリン系架橋剤と、ハイドロタルサイト化合物と、を含有するエピハロヒドリン系ゴム組成物であって、
前記カーボンブラックのよう素吸着量が100mg/g以上、かつ、窒素吸着比表面積が95~150m
2/gであり、
前記キノキサリン系架橋剤の含有量が、前記エピハロヒドリン系ゴム100重量部に対し、0.01~2重量部であり、
前記ハイドロタルサイト化合物の含有量が、前記エピハロヒドリン系ゴム100重量部に対し、3重量部超、10重量部未満であるエピハロヒドリン系ゴム組成物。
【請求項2】
前記カーボンブラックのよう素吸着量が、110~150mg/gである請求項1に記載のエピハロヒドリン系ゴム組成物。
【請求項3】
前記カーボンブラックの窒素吸着比表面積が、110~145m
2/gである請求項1または2に記載のエピハロヒドリン系ゴム組成物。
【請求項4】
前記ハイドロタルサイト化合物が、下記一般式(1)で表される化合物である請求項1~3のいずれかに記載のエピハロヒドリン系ゴム組成物。
Mg
XZn
yAl
z(OH)
2(x+y)+3z-2CO
3・mH
2O (1)
(上記一般式(1)中、x=1~10、y=0~9、x+y=1~10、z=1~5、mは0または正の実数を表す。)
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載のエピハロヒドリン系ゴム組成物を架橋してなるゴム架橋物。
【請求項6】
請求項1~4のいずれかに記載のエピハロヒドリン系ゴム組成物からなるエピハロヒドリン系ゴム層(A)と、
フッ素ゴムと、架橋剤とを含有するフッ素ゴム組成物からなるフッ素ゴム層(B)とを備えるゴム積層体。
【請求項7】
前記エピハロヒドリン系ゴム層(A)が、前記エピハロヒドリン系ゴム組成物の架橋物からなる層であり、前記フッ素ゴム層(B)が、前記フッ素ゴム組成物の架橋物からなる層である請求項6に記載のゴム積層体。
【請求項8】
請求項7に記載のゴム積層体を用いてなるホース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エピハロヒドリン系ゴム組成物に関し、さらに詳しくは、引裂強さ、耐熱性、耐圧縮永久歪み性、および耐クリープ性にバランス良く優れ、他のゴム層と積層した際に、高い接着性を示すゴム架橋物を与えることのできるエピハロヒドリン系ゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
エピハロヒドリン系ゴムは耐熱性、耐オゾン性および耐油性において優れた性能バランスを有しており、オイルシール、ダイヤフラム、ガスケットパッキング、燃料油ホースなどの耐油ホースなどの工業用品に広く使用されている。また、エピハロヒドリン系ゴムは、比較的安価であるため、たとえば、耐油ホースやシール材用途などに用いられる際には、内側の薄層としてフッ素ゴムを用い、フッ素ゴムとエピハロヒドリン系ゴムとの積層体として用いられる場合がある。
【0003】
たとえば、特許文献1には、未加硫フッ素ゴム組成物とエピクロルヒドリン系ゴム100重量部に対して、2,3-ジメルカプトキノキサリン誘導体0.1~10重量部およびハイドロタルサイト類1~20重量部からなる配合剤を含有せしめた未加硫エピクロルヒドリン系ゴム組成物とが加熱加硫接着されてなる加硫ゴムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方で、本発明者が検討したところによると、上記特許文献1に開示されたエピクロルヒドリン系ゴム組成物は、これを用いて得られるゴム架橋物の引裂強さ、耐熱性、および耐クリープ性に劣るものであるという問題があった。本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであり、引裂強さ、耐熱性、耐圧縮永久歪み性、および耐クリープ性にバランス良く優れ、他のゴム層と積層した際に、高い接着性を示すゴム架橋物を与えることのできるエピハロヒドリン系ゴム組成物を提供することを目的とする。また、本発明によれば、このようなエピハロヒドリン系ゴム組成物を用いて得られるゴム架橋物、ゴム積層体、およびホースを提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、上記目的を達成するために鋭意研究した結果、特定のよう素吸着量および窒素吸着比表面積を有するカーボンブラックと、特定量のキノキサリン系架橋剤と、特定量のハイドロタルサイト化合物とを含有するエピハロヒドリン系ゴム組成物によれば、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
すなわち、本発明によれば、エピハロヒドリン系ゴムと、カーボンブラックと、キノキサリン系架橋剤と、ハイドロタルサイト化合物と、を含有するエピハロヒドリン系ゴム組成物であって、前記カーボンブラックのよう素吸着量が100mg/g以上、かつ、窒素吸着比表面積が95~150m2/gであり、前記キノキサリン系架橋剤の含有量が、前記エピハロヒドリン系ゴム100重量部に対し、0.01~2重量部であり、前記ハイドロタルサイト化合物の含有量が、前記エピハロヒドリン系ゴム100重量部に対し、3重量部超、10重量部未満であるエピハロヒドリン系ゴム組成物が提供される。
【0008】
本発明のエピハロヒドリン系ゴム組成物において、前記カーボンブラックのよう素吸着量が、110~150mg/gであることが好ましい。
本発明のエピハロヒドリン系ゴム組成物において、前記カーボンブラックの窒素吸着比表面積が、110~145m2/gであることが好ましい。
本発明のエピハロヒドリン系ゴム組成物において、前記ハイドロタルサイト化合物が、下記一般式(1)で表される化合物であることが好ましい。
MgXZnyAlz(OH)2(x+y)+3z-2CO3・mH2O (1)
(上記一般式(1)中、x=1~10、y=0~9、x+y=1~10、z=1~5、mは0または正の実数を表す。)
【0009】
また、本発明によれば、上記のエピハロヒドリン系ゴム組成物を架橋してなるゴム架橋物を提供することができる。
さらに、本発明によれば、上記のエピハロヒドリン系ゴム組成物からなるエピハロヒドリン系ゴム層(A)と、フッ素ゴムと、架橋剤とを含有するフッ素ゴム組成物からなるフッ素ゴム層(B)とを備えるゴム積層体が提供される。
【0010】
本発明のゴム積層体において、前記エピハロヒドリン系ゴム層(A)が、前記エピハロヒドリン系ゴム組成物の架橋物からなる層であり、前記フッ素ゴム層(B)が、前記フッ素ゴム組成物の架橋物からなる層であることが好ましい。
【0011】
また、本発明によれば、上記のゴム積層体を用いてなるホースが提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、引裂強さ、耐熱性、耐圧縮永久歪み性、および耐クリープ性にバランス良く優れ、他のゴム層と積層した際に、高い接着性を示すゴム架橋物を与えることのできるエピハロヒドリン系ゴム組成物を提供することができる。また、本発明によれば、このようなエピハロヒドリン系ゴム組成物を用いて得られるゴム架橋物、ゴム積層体およびホースを提供することもできる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<エピハロヒドリン系ゴム組成物>
本発明のエピハロヒドリン系ゴム組成物は、エピハロヒドリン系ゴムと、カーボンブラックと、キノキサリン系架橋剤と、ハイドロタルサイト化合物と、を含有するエピハロヒドリン系ゴム組成物であって、前記カーボンブラックのよう素吸着量が100mg/g以上、かつ、窒素吸着比表面積が95~150m2/gであり、前記キノキサリン系架橋剤の含有量が、エピハロヒドリン系ゴム100重量部に対し、0.01~2重量部であり、前記ハイドロタルサイト化合物の含有量が、前記エピハロヒドリン系ゴム100重量部に対し、3重量部超、10重量部未満であるものである。
【0014】
<エピハロヒドリン系ゴム>
本発明で用いるエピハロヒドリン系ゴムは、少なくともエピハロヒドリン単量体単位を必須構成単量体単位として含有するゴム重合体であり、具体的には、1種のエピハロヒドリン単量体の単独重合体、もしくは2種以上のエピハロヒドリン単量体の共重合体、またはエピハロヒドリン単量体およびこれと共重合可能な単量体との共重合体などが挙げられるが、エピハロヒドリン単量体と共重合可能な単量体との共重合体が好ましい。また、エピハロヒドリン系ゴムとしては、単量体組成の異なる2種以上の重合体を組み合わせて用いてもよい。
【0015】
エピハロヒドリン単量体単位を形成するエピハロヒドリン単量体としては、たとえば、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、エピヨードヒドリン、2-メチルエピクロロヒドリン、2-メチルエピブロモヒドリン、2-エチルエピクロロヒドリン等が挙げられる。これらは、1種類を単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。これらのなかでも、エピハロヒドリン系ゴム組成物を、得られるゴム架橋物の引裂強さおよび耐圧縮永久歪み性により優れたものとすることができるという観点より、エピクロロヒドリンが好ましい。
【0016】
エピハロヒドリン系ゴム中における、エピハロヒドリン単量体単位の含有割合は、エピハロヒドリン系ゴムを構成する全単量体単位に対して、好ましくは35~95モル%、より好ましくは40~90モル%、さらに好ましくは45~85モル%である。なお、エピハロヒドリン系ゴム中に、後述する不飽和エポキシド単量体単位を含有させる場合には、エピハロヒドリン単量体単位の含有割合は、エピハロヒドリン系ゴムを構成する全単量体単位に対して、55~75モル%とすることが好ましく、55~70モル%とすることがより好ましく、60~65モル%とすることがさらに好ましい。エピハロヒドリン単量体単位の含有割合を上記範囲とすることにより、得られるゴム架橋物を、耐圧縮永久歪み性および耐熱性により優れたものとすることができる。なお、単量体組成の異なる2種以上の重合体を組み合わせて用いる場合には、単量体組成の異なる重合体全体における、エピハロヒドリン単量体単位の量を上記範囲とすることが好ましい。
【0017】
エピハロヒドリン系ゴムを、エピハロヒドリン単量体と、エピハロヒドリン単量体と共重合可能な単量体との共重合体とする場合における、共重合可能な単量体の単位としては、得られるゴム架橋物の耐圧縮永久歪み性をより優れたものとすることができるという観点より、アルキレンオキシド単量体単位が好ましい。
【0018】
アルキレンオキシド単量体単位を形成するアルキレンオキシド単量体としては、たとえば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、1,2-エポキシブタン、1,2-エポキシ-4-クロロペンタン、1,2-エポキシヘキサン、1,2-エポキシオクタン、1,2-エポキシデカン、1,2-エポキシオクタデカン、1,2-エポキシエイコサン、1,2-エポキシイソブタン、2,3-エポキシイソブタン等の直鎖状または分岐鎖状アルキレンオキシド;1,2-エポキシクロロペンタン、1,2-エポキシシクロヘキサン、1,2-エポキシシクロドデカン等の環状アルキレンオキシド;ブチルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、2-メチルオクチルグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、デシルグリシジルエーテル、ステアリルグリシジルエーテルなどのアルキル長鎖または分岐鎖を有するグリシジルエーテル;エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテルなどのオキシエチレン側鎖を有するグリシジルエーテル;等が挙げられ、これらは、ハロゲン原子等の置換基を有するものであってもよい。これらアルキレンオキシド単量体は、1種類を単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。これらのなかでも、直鎖状のアルキレンオキシドが好ましく、得られるゴム架橋物の引裂強さおよび耐圧縮永久歪み性をより優れたものとすることができるという観点より、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドがより好ましく、エチレンオキシドが特に好ましい。
【0019】
エピハロヒドリン系ゴム中にアルキレンオキシド単量体単位を含有させる場合における、アルキレンオキシド単量体単位の含有割合は、エピハロヒドリン系ゴムを構成する全単量体単位に対して、好ましくは5~65モル%、より好ましくは10~60モル%、さらに好ましくは15~55モル%である。なお、エピハロヒドリン系ゴム中に、後述する不飽和エポキシド単量体単位を含有させる場合には、アルキレンオキシド単量体単位の含有割合は、エピハロヒドリン系ゴムを構成する全単量体単位に対して、22~44.9モル%とすることが好ましく、29~44.5モル%とすることがより好ましく、34~39モル%とすることがさらに好ましい。アルキレンオキシド単量体単位の含有割合を上記範囲とすることにより、得られるゴム架橋物の引裂き強さおよび耐熱性をより優れたものとすることができる。なお、単量体組成の異なる2種以上の重合体を組み合わせて用いる場合には、単量体組成の異なる重合体全体における、アルキレンオキシド単量体単位の量を上記範囲とすることが好ましい。
【0020】
また、本発明で用いるエピハロヒドリン系ゴムは、共重合可能な単量体の単位として、不飽和エポキシド単量体単位をさらに含有するものであってもよい。
【0021】
不飽和エポキシド単量体単位を形成する不飽和エポキシド単量体としては、たとえば、ビニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、o-アリルフェニルグリシジルエーテル等の不飽和グリシジルエーテル;ブタジエンエポキシド、クロロプレンエポキシド、4,5-エポキシ-2-ペンテン、エポキシ-1-ビニルシクロヘキセン、1,2-エポキシ-5,9-シクロドデカジエン等のジエンモノエポキシド;グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、グリシジルクロトネート、グリシジル-4-ヘプテネート、グリシジルソルベート、グリシジルリノレート、3-シクロヘキセンカルボン酸グリシジルエステル、4-メチル-3-シクロヘキセンカルボン酸グリシジルエステル、グリシジル-4-メチル-3-ペンテネート等のエチレン性不飽和カルボン酸のグリシジルエステル;等が挙げられ、これらは、ハロゲン原子等の置換基を有するものであってもよい。これら不飽和エポキシド単量体は、1種類を単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。これらのなかでも、不飽和グリシジルエーテルが好ましく、アリルグリシジルエーテルがより好ましい。
【0022】
エピハロヒドリン系ゴム中に不飽和エポキシド単量体単位を含有させる場合における、不飽和エポキシド単量体単位の含有割合は、エピハロヒドリン系ゴムを構成する全単量体単位に対して、好ましくは0.1~8モル%、より好ましくは0.5~6モル%、さらに好ましくは1~4モル%である。なお、単量体組成の異なる2種以上の重合体を組み合わせて用いる場合には、単量体組成の異なる重合体全体における、不飽和エポキシド単量体単位の量を上記範囲とすることが好ましい。
【0023】
本発明で用いるエピハロヒドリン系ゴムの重量平均分子量は、20万~200万であることが好ましく、40万~150万であることがより好ましい。重量平均分子量を上記範囲とすることにより、エピハロヒドリン系ゴム組成物の加工性を良好なものとしながら、得られるゴム架橋物の機械的強度をより高めることができる。
【0024】
エピハロヒドリン系ゴムのムーニー粘度〔ML1+4(100℃)〕は、好ましくは10~200、より好ましくは20~150、さらに好ましくは30~100である。ムーニー粘度を上記範囲とすることにより、エピハロヒドリン系ゴム組成物の加工性を良好なものとしながら、得られるゴム架橋物の機械的強度をより高めることができる。
【0025】
本発明で用いるエピハロヒドリン系ゴムは、溶液重合法または溶媒スラリー重合法などにより、上記各単量体を開環重合することにより得ることができる。重合触媒としては、一般のエピハロヒドリン系ゴム用の触媒であれば、特に限定されない。重合触媒としては、たとえば、有機アルミニウムに水とアセチルアセトンを反応させた触媒(特公昭35-15797号公報)、トリイソブチルアルミニウムにリン酸とトリエチルアミンを反応させた触媒(特公昭46-27534号公報)、トリイソブチルアルミニウムにジアザビシクロウンデセンの有機酸塩とリン酸とを反応させた触媒(特公昭56-51171号公報)、アルミニウムアルコキサイドの部分加水分解物と有機亜鉛化合物とからなる触媒(特公昭43-2945号公報)、有機亜鉛化合物と多価アルコールとからなる触媒(特公昭45-7751号公報)、ジアルキル亜鉛と水とからなる触媒(特公昭36-3394号公報)、有機スズ化合物からなる触媒(特開2000-63656号公報)などが挙げられる。
【0026】
重合溶媒としては、ベンゼン、トルエンなどの芳香族炭化水素;n-ペンタン、n-へキサンなどの直鎖状飽和炭化水素類;シクロペンタン、シクロヘキサンなどの環状飽和炭化水素類;などが用いられる。また、重合反応は、通常0~100℃、好ましくは30~80℃で、回分式、半回分式、連続式などの任意の方法で行うことができる。
【0027】
本発明で用いるエピハロヒドリン系ゴムが共重合体である場合、ブロック共重合、ランダム共重合のいずれの共重合タイプでも構わないが、特に、単量体にエチレンオキサイドを用いる場合、ランダム共重合体の方がよりポリエチレンオキサイドの結晶性を低下させ、ゴム弾性を損ないにくいために好ましい。
【0028】
<カーボンブラック>
本発明のエピハロヒドリン系ゴム組成物は、上述したエピハロヒドリン系ゴムに加えて、よう素吸着量が100mg/g以上であり、かつ、窒素吸着比表面積が95~150m2/gであるカーボンブラックを含有する。
【0029】
本発明で用いるカーボンブラックは、よう素吸着量(IA)が、100mg/g以上であればよく、好ましくは100~160mg/g、より好ましくは110~150mg/gである。よう素吸着量は、カーボンブラックの粒子径を示す指標となり得るものであり、カーボンブラックのよう素吸着量を上記範囲とすることにより、得られるゴム架橋物は引裂強さおよび耐熱性に優れるものとなる。なお、よう素吸着量は、JIS K6217-1:2008に準拠した方法で測定することができる。
【0030】
また、本発明で用いるカーボンブラックは、よう素吸着量(IA)が上記範囲にあることに加え、窒素吸着比表面積(N2SA)が、95~150m2/gの範囲にあるものであり、窒素吸着比表面積は、好ましくは100~145m2/gであり、より好ましくは110~145m2/gである。窒素吸着比表面積を上記範囲とすることにより、得られるゴム架橋物を引裂強さ、耐熱性および耐圧縮永久歪み性にバランス良く優れたものとすることができる。なお、窒素吸着比表面積は、JIS K6217-2:2001に準拠した方法で測定することができる。
【0031】
本発明で用いるカーボンブラックとしては、よう素吸着量および窒素吸着比表面積が上記範囲にあるものであればよく、その種類は、特に限定されず、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック、オースチンブラック、グラファイトなどのいずれであってもよいが、これらのなかでも、ファーネスブラックを用いることが好ましく、その具体例としては、SAF、ISAF、ISAF-HS、ISAF-LS、IISAF-HSなどが挙げられる。これらは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0032】
本発明のエピハロヒドリン系ゴム組成物中における、カーボンブラックの含有量は、エピハロヒドリン系ゴム100重量部に対し、好ましくは1~100重量部であり、より好ましくは5~70重量部であり、さらに好ましくは10~50重量部である。カーボンブラックの含有量を上記範囲とすることにより、得られるゴム架橋物を引裂強さおよび耐熱性、圧縮永久歪み性、耐クリープ性により優れたものとすることができる。
【0033】
なお、本発明の効果を阻害しない範囲で、よう素吸着量あるいは窒素吸着比表面積のうち少なくとも一方が上記範囲外である他のカーボンブラック(たとえば、HAFやFEF等の、よう素吸着量および/または窒素吸着比表面積が本発明の所定の範囲(すなわち、よう素吸着量が100mg/g以上の範囲、窒素吸着比表面積が95~150m2/gの範囲)外であるカーボンブラック)を併用してもよいが、このような他のカーボンブラックの含有量としては、よう素吸着量が100mg/g以上、かつ、窒素吸着比表面積が95~150m2/gであるカーボンブラックの含有量よりも少ない量とすることが好ましい。このような他のカーボンブラックの具体的な含有量としては、よう素吸着量が100mg/g以上、かつ、窒素吸着比表面積が95~150m2/gであるカーボンブラックの含有量よりも少ない量となる範囲とすればよいが、エピハロヒドリン系ゴム100重量部に対する量で、60重量部以下であることがより好ましく、40重量部以下であることがさらに好ましい。
【0034】
<キノキサリン系架橋剤>
本発明のエピハロヒドリン系ゴム組成物は、上述したエピハロヒドリン系ゴムおよびカーボンブラックに加えて、キノキサリン系架橋剤を含有する。本発明で用いるキノキサリン系架橋剤としては、特に限定されず、キノキサリン構造を有し、かつ、エピハロヒドリン系ゴムの架橋剤として作用する化合物であればよいが、たとえば、2,3-ジメルカプトキノキサリン、キノキサリン-2,3-ジチオカーボネート、6-メチルキノキサリン-2,3-ジチオカーボネート、5,8-ジメチルキノキサリン-2,3-ジチカーボネートなどが挙げられ、これらの中でも、6-メチルキノキサリン-2,3-ジチオカーボネートが好適に用いられる。
【0035】
本発明のエピハロヒドリン系ゴム組成物中における、キノキサリン系架橋剤の含有量は、エピハロヒドリン系ゴム100重量部に対し、0.01~2重量部であればよく、好ましくは0.1~2重量部であり、より好ましくは0.5~1.8重量部であり、さらに好ましくは1.0~1.6重量部である。キノキサリン系架橋剤の含有量を上記範囲とすることにより、得られるゴム架橋物の引裂強さ、耐熱性、耐圧縮永久歪み性および耐クリープ性、さらには、他のゴム層と積層して積層体とした際における、他のゴム層との接着性に、バランス良く優れたものとすることができる。
【0036】
<ハイドロタルサイト化合物>
本発明のエピハロヒドリン系ゴム組成物は、上述したエピハロヒドリン系ゴム、カーボンブラック、およびキノキサリン系架橋剤に加えて、ハイドロタルサイト化合物を含有する。
【0037】
本発明によれば、エピハロヒドリン系ゴムに、上記した特定のよう素吸着量および窒素吸着比表面積を有するカーボンブラック、およびキノキサリン系架橋剤に加えて、ハイドロタルサイト化合物を配合することにより、ゴム架橋物とした場合に、得られるゴム架橋物を、引裂強さ、耐熱性、耐圧縮永久歪み性、および耐クリープ性にバランス良く優れ、しかも、他のゴム層と積層した際に、高い接着性を示すものとすることができるものである。
【0038】
本発明におけるハイドロタルサイト化合物は、主として受酸剤として作用する。ハイドロタルサイト化合物としては、下記一般式(1)で表される化合物が好ましい。
MgXZnyAlz(OH)2(x+y)+3z-2CO3・mH2O (1)
(上記一般式(1)中、x=1~10、y=0~9、x+y=1~10、z=1~5、mは0または正の実数を表す。)
【0039】
上記一般式(1)中、耐熱性および耐圧縮永久歪み性により優れたゴム架橋物を得るという観点から、xは、x=2~8であることが好ましく、x=2~6であることが好ましく、yは、y=0~6であることが好ましく、y=0~4であることがより好ましい。また、x+yは、x+y=2~8であることが好ましく、x+y=3~6であることがより好ましく、zは、z=1~3であることが好ましい。
【0040】
また、ハイドロタルサイト化合物としては、引裂強さ、耐熱性、および耐クリープ性により優れたゴム架橋物を得るという観点からは、少なくとも亜鉛原子を含有するものであることが好ましい。たとえば、本発明で用いるハイドロタルサイト化合物が、上記一般式(1)で表されるハイドロタルサイト化合物である場合には、一般式(1)のxが、1≦x<10であり、yが、0<y≦9である化合物であることが好ましく、xが、x=1~9.9であり、yが、y=0.1~9である化合物であることがより好ましく、xが、x=2~7.7であり、yが、y=0.3~6である化合物であることがさらに好ましく、xが、x=2~5.3であり、yが、y=0.7~4である化合物であることがさらにより好ましい。なお、この場合においては、x+y、zおよびmは、上記した範囲とすればよい。
【0041】
なお、本発明で用いるハイドロタルサイト化合物として、亜鉛原子を含有しないものを用いる場合には、たとえば、下記一般式(2)で表される化合物を好適に用いることができる。下記一般式(2)で表される化合物を用いることで、得られるゴム架橋物を、耐圧縮永久歪み性により優れたものとすることができる。
MgxAlz(OH)2x+3z-2CO3・mH2O (2)
(上記一般式(2)中、x=1~10、z=1~5、mは0または正の実数を表す。)
【0042】
上記一般式(2)中、耐熱性および耐圧縮永久歪み性により優れたゴム架橋物を得るという観点から、x=2~8であることが好ましく、x=3~6であることがより好ましく、z=1~3であることが好ましい。
【0043】
また、ハイドロタルサイト化合物は、表面処理されたものであってもよい。ハイドロタルサイト化合物の表面処理に用いる表面処理剤としては、特に限定されないが、たとえば、脂肪酸、シランカップリング剤、界面活性剤等を挙げることができ、これらのなかでも、エピハロヒドリン系ゴム組成物中におけるハイドロタルサイト化合物の分散性を高めることができ、その配合効果をより高めることができることから、脂肪酸が好ましい。
【0044】
ハイドロタルサイト化合物の窒素吸着比表面積(N2SA)は、好ましくは3~15m2/gであり、より好ましくは5~13m2/gであり、さらに好ましくは5~12m2/gであり、特に好ましくは7~11m2/gである。用いるハイドロタルサイト化合物の窒素吸着比表面積を上記範囲とすることにより、得られるゴム架橋物を耐熱性および接着性により優れたものとすることができる。
【0045】
本発明で用いるエピハロヒドリン系ゴム組成物中における、ハイドロタルサイト化合物の含有量は、エピハロヒドリン系ゴム100重量部に対し、3重量部超、10重量部未満であればよく、その下限は、好ましくは4重量部以上、より好ましくは5重量部以上、さらに好ましくは6重量部以上、さらにより好ましくは7重量部以上であり、その上限は、好ましくは9重量部以下であり、より好ましくは8重量部以下である。ハイドロタルサイト化合物の含有量を上記範囲の上限値以下とすることにより、得られるゴム架橋物は引裂強さおよび耐圧縮永久歪み性のバランスに優れるものとなり、ハイドロタルサイト化合物の含有量を上記範囲の下限値以上とすることにより、得られるゴム架橋物は耐熱性および耐クリープ性、さらには、他のゴム層と積層して積層体とした際における、他のゴム層との接着性に優れるものとなる。
【0046】
<エピハロヒドリン系ゴム組成物に配合するその他の配合剤>
本発明のエピハロヒドリン系ゴム組成物は、上記各成分に加えて、シリカをさらに含有してもよい。シリカとしては、たとえば、乾式法シリカ、湿式法シリカ、コロイダルシリカ、沈降シリカなどが挙げられる。
【0047】
本発明のエピハロヒドリン系ゴム組成物中における、シリカの含有量は、エピハロヒドリン系ゴム100重量部に対し、好ましくは1~80重量部、より好ましくは1~60重量部、さらに好ましくは1~40重量部である。シリカの含有量を上記範囲とすることにより、得られるゴム架橋物を引裂強さと耐圧縮永久歪み性とのバランスにより優れたものとすることができる。
【0048】
本発明のエピハロヒドリン系ゴム組成物に、シリカを配合する場合には、上記各成分に加えて、シランカップリング剤をさらに配合してもよい。
【0049】
本発明のエピハロヒドリン系ゴム組成物中における、シランカップリング剤の含有量は、エピハロヒドリン系ゴム100重量部に対し、好ましくは0.1~10重量部、より好ましくは0.2~7重量部、さらに好ましくは0.3~5重量部である。シランカップリング剤の含有量を上記範囲とすることにより、得られるゴム架橋物を耐圧縮永久歪み性、および得られるゴム積層体のエピハロヒドリン系ゴム層と他のゴム層との接着性により優れたものとすることができる。
【0050】
また、本発明のエピハロヒドリン系ゴム組成物には、本発明の効果を損なわない限り、天然ゴム、ポリブタジエンゴム、ポリイソプレンゴム、アクリルゴム、スチレン-ブタジエンゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、クロロプレンゴムなどのゴム;オレフィン系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマー、塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマーなどの熱可塑性エラストマー;ポリ塩化ビニル、クマロン樹脂、フェノール樹脂などの樹脂:などを配合してもよい。これらのゴム、熱可塑性エラストマーまたは樹脂の配合量は、エピハロヒドリン系ゴム100重量部に対して、好ましくは30重量部以下、特に好ましくは10重量部以下である。
【0051】
さらに、本発明のエピハロヒドリン系ゴム組成物には、上述した配合剤以外に、公知のゴムに通常配合されるその他の配合剤を含有していてもよい。このような配合剤としては、特に限定されないが、たとえば、可塑剤;補強剤;架橋遅延剤;架橋促進剤;活性剤;加工助剤;老化防止剤;紫外線吸収剤;耐光安定剤;粘着付与剤;界面活性剤;導電性付与剤;電解質物質;着色剤(染料・顔料);難燃剤;帯電防止剤;などが挙げられる。
【0052】
本発明のエピハロヒドリン系ゴム組成物は、エピハロヒドリン系ゴムに、カーボンブラック、キノキサリン系架橋剤、およびハイドロタルサイト化合物、ならびに必要に応じて用いられる各種配合剤を、所望の方法により調合、混練することにより調製することができる。たとえば、キノキサリン系架橋剤および必要に応じて用いられる架橋促進剤を除く配合剤と、エピハロヒドリン系ゴムとを混練後、その混合物にキノキサリン系架橋剤および必要に応じて用いられる架橋促進剤を混合して、エピハロヒドリン系ゴム組成物を得ることができる。調合、混練に際しては、たとえば、ニーダー、バンバリー、オープンロール、カレンダーロール、押出機など任意の混練成形機を一つあるいは複数組み合わせて用いて混練成形してもよい。キノキサリン系架橋剤および必要に応じて用いられる架橋促進剤を除く添加剤と、エピハロヒドリン系ゴムとの混練温度は、20~200℃が好ましく、20~150℃がより好ましく、その混練時間は、30秒~30分が好ましく、混練物と、キノキサリン系架橋剤および架橋促進剤との混合温度は、100℃以下が好ましく、0~80℃がより好ましい。
【0053】
<ゴム架橋物>
本発明のゴム架橋物は、上述した本発明のエピハロヒドリン系ゴム組成物を架橋することにより得られる。
【0054】
エピハロヒドリン系ゴム組成物を架橋して、ゴム架橋物を得る方法は、特に限定されないが、成形と架橋を同時に行っても、成形後に架橋してもよい。成形時の温度は、20~200℃が好ましく、40~180℃がより好ましい。架橋時の加熱温度は、130~200℃が好ましく、140~200℃がより好ましい。架橋時の温度が低すぎると、架橋時間が長時間必要となったり、得られるゴム架橋物の架橋密度が低くなったりするおそれがある。一方、架橋時の温度が高すぎると、成形不良となるおそれがある。架橋時間は、架橋方法、架橋温度、形状などにより異なるが、1分以上、5時間以下の範囲が架橋密度と生産効率の面から好ましい。加熱方法としては、プレス加熱、オーブン加熱、蒸気加熱、熱風加熱、およびマイクロ波加熱などの方法を適宜選択すればよい。
【0055】
また、ゴム架橋物の形状、大きさなどによっては、表面が架橋していても内部まで十分に架橋していない場合があるので、さらに加熱して二次架橋を行ってもよい。二次架橋を行う際における、加熱温度は、100~220℃が好ましく、130~210℃がより好ましい。加熱時間は、30分~5時間が好ましい。
【0056】
<ゴム積層体>
本発明のエピハロヒドリン系ゴム組成物は、エピハロヒドリン系ゴム層として、他のゴム組成物からなる他のゴム層と積層することで、エピハロヒドリン系ゴム組成物からなるエピハロヒドリン系ゴム層と他のゴム層とを備えるゴム積層体としてもよい。
【0057】
他のゴム層としては、フッ素ゴム組成物からなるフッ素ゴム層、ニトリルゴム組成物からなるニトリルゴム層などを挙げることができ、なかでも、エピハロヒドリン系ゴム層との接着性の観点から、フッ素ゴム層が好ましい。すなわち、エピハロヒドリン系ゴム組成物からなるエピハロヒドリン系ゴム層(A)と、フッ素ゴムと、架橋剤とを含有するフッ素ゴム組成物からなるフッ素ゴム層(B)とを備えるものとすることが好ましい。
【0058】
本発明のゴム積層体のフッ素ゴム層(B)を構成するフッ素ゴム組成物を構成するフッ素ゴムとしては、含フッ素不飽和単量体の単独重合体ゴム、含フッ素不飽和単量体の共重合体ゴムまたは含フッ素不飽和単量体と共重合可能な他の単量体との共重合体ゴムが挙げられる。フッ素ゴムを形成するための含フッ素不飽和単量体としては、ビニリデンフルオライド、ヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン、ペンタフルオロプロピレン、トリフルオロエチレン、トリフルオロクロロエチレン、ビニルフルオライド、パーフルオロメチルビニルエーテル、およびパーフルオロエチルビニルエーテル、ならびに臭素化および/またはヨウ素化不飽和フルオロ炭化水素などの架橋性単量体、などが挙げられる。また、含フッ素不飽和単量体と共重合可能な他の単量体としては、エチレン、およびプロピレンなどが挙げられる。
【0059】
フッ素ゴムの具体例としては、ビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン-プロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン-パーフルオロメチルビニルエーテル共重合体などの二元共重合体ゴム、ビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレン-テトラフルオロエチレン共重合体の三元共重合体ゴムなどが挙げられる。
【0060】
また、架橋剤としては、特に限定されないが、たとえば、ポリオール系架橋剤を挙げることができ、ポリオール系架橋剤としては、得られるゴム積層体における、エピハロヒドリン系ゴム層(A)とフッ素ゴム層(B)との接着強度をより高めることができるという観点より、ポリヒドロキシ化合物が好ましく、ポリヒドロキシ芳香族化合物がより好ましい。また、架橋剤は1種または複数種併せて用いることができる。
【0061】
ポリヒドロキシ芳香族化合物としては、特に限定されず、たとえば、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(以下、「ビスフェノールA」ということがある。)、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)パーフルオロプロパン(以下、「ビスフェノールAF」ということがある。)、レゾルシン、1,3-ジヒドロキシベンゼン、1,7-ジヒドロキシナフタレン、2,7-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、4,4’-ジヒドロキシジフェニル、4,4’-ジヒドロキシスチルベン、2,6-ジヒドロキシアントラセン、ヒドロキノン、カテコール、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、4,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)吉草酸、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)テトラフルオロジクロロプロパン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルケトン、トリ(4-ヒドロキシフェニル)メタン、3,3’,5,5’-テトラクロロビスフェノールA、3,3’,5,5’-テトラブロモビスフェノールAなどが挙げられる。なお、これらのポリヒドロキシ芳香族化合物は、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩などであってもよい。
【0062】
本発明で用いるフッ素ゴム組成物中における、架橋剤の含有量は、フッ素ゴム100重量部に対し、好ましくは0.2~10重量部、より好ましくは0.5~6重量部、さらに好ましくは1~4重量部である。
【0063】
また、本発明で用いるフッ素ゴム組成物は、架橋剤以外に、公知のゴムに通常配合されるその他の配合剤を含有していてもよい。このような配合剤としては、特に限定されないが、たとえば、充填剤;可塑剤;補強剤;架橋遅延剤;架橋促進剤;受酸剤;活性剤;加工助剤;老化防止剤;紫外線吸収剤;耐光安定剤;粘着付与剤;界面活性剤;導電性付与剤;電解質物質;着色剤(染料・顔料);難燃剤;帯電防止剤;などが挙げられる。
【0064】
本発明で用いるフッ素ゴム組成物は、フッ素ゴムに、架橋剤、および必要に応じて用いられる各種配合剤を、所望の方法により調合、混練することにより調製することができる。調合、混練に際しては、たとえば、ニーダー、バンバリー、オープンロール、カレンダーロール、押出機など任意の混練成形機を一つあるいは複数組み合わせて用いて混練成形してもよい。
【0065】
本発明のゴム積層体は、上述したエピハロヒドリン系ゴム組成物からなるエピハロヒドリン系ゴム層と、他のゴム層とを備えるものであればよく、上述したエピハロヒドリン系ゴム組成物からなるエピハロヒドリン系ゴム層(A)と、フッ素ゴム組成物からなるフッ素ゴム層(B)とを備えるものであることが好ましく、エピハロヒドリン系ゴム層(A)がエピハロヒドリン系ゴム組成物の架橋物からなる層であり、かつ、フッ素ゴム層(B)がフッ素ゴム組成物の架橋物からなる層であることがより好ましい。また、エピハロヒドリン系ゴム層と、他のゴム層との積層態様は特に限定されないが、これらを架橋接着させてなるものであることが好ましい。
【0066】
エピハロヒドリン系ゴム層(A)と、フッ素ゴム層(B)とを備える本発明のゴム積層体は、たとえば、次の方法により製造することができる。すなわち、まず、上述したエピハロヒドリン系ゴム組成物およびフッ素ゴム組成物を、それぞれ別々に、プレス成形、ロール成形、押出成形など公知の方法で、厚さが好ましくは0.1~5mm、より好ましくは0.5~3mmで任意の面積のシート(エピハロヒドリン系ゴム層(A)のシート、フッ素ゴム層(B)のシート)に未架橋状態で成形する。次いで、得られた各シートを互いに接触させ、ホットプレスまたは加硫缶を用いて加圧加熱架橋して接着させることにより、本発明のゴム積層体を得ることができる。
【0067】
あるいは、層押出法により、上述したエピハロヒドリン系ゴム組成物およびフッ素ゴム組成物を未架橋の状態で、積層チューブ形状に成形した後、加硫缶を用いて加圧加熱架橋させて接着させる方法を採用してもよい。
【0068】
ホットプレスは、通常、140~200℃の温度で0.2~15MPaの圧力下、5~60分間行なわれる。また、加硫缶による場合は、通常、130~160℃の温度で0.18MPaの圧力下、30~120分間行われる。
また、得られたゴム積層体をさらに熱処理(ポストキュア)してもよい。
【0069】
なお、本発明のゴム積層体は、エピハロヒドリン系ゴム層(A)とフッ素ゴム層(B)とが一層ずつ積層された形態に限定されず、これらが互いに積層された部分を備えるものであれば、これらのうち一方または両方が、複数層形成されたものであってもよい。また、他の材料からなるその他の層を有していてもよい。このような他の材料としては、要求される特性、予定される用途などに応じて適切なものを選択すればよいが、たとえば、アクリルゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴムとポリ塩化ビニルとのブレンドゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴムなどを挙げることができる。
【0070】
以上のように、本発明によれば、引裂強さ、耐熱性、耐圧縮永久歪み性、および耐クリープ性にバランス良く優れ、他のゴム層と積層した際に、高い接着性を示すゴム架橋物を与えることができるエピハロヒドリン系ゴム組成物、さらには、このようなエピハロヒドリン系ゴム組成物を用いて得られるゴム架橋物およびゴム積層体を提供できるものである。そして、本発明のゴム架橋物およびゴム積層体は、本発明のエピハロヒドリン系ゴム組成物を用いて得られるものであるため、上述した各特性を備えるものであり、本発明のゴム架橋物およびゴム積層体は、このような特性を活かして、たとえば、自動車等の輸送機械、一般機器、電気機器等の幅広い分野において、O-リング、ガスケット、パッキン、オイルシール、ベアリングシール等のシール材;オイルチューブ、燃料ホース、エアホース、ターボエアーホース、PCVホース、インレットホースなどのホース類;伝達ベルト、エンドレスベルトなどの工業用ベルト類;緩衝材、防振材;電線被覆材;シート類;ブーツ類;ダストカバー類;等として有用である。なかでも、本発明のゴム積層体は、ホース用途、とりわけ燃料ホース用途に特に好適に用いることができる。
【実施例】
【0071】
以下に、実施例および比較例を挙げて、本発明についてより具体的に説明する。なお、各例中の「部」は、特に断りのない限り、重量基準である。
各種の物性については、以下の方法に従って評価した。
【0072】
[エピハロヒドリン系ゴムのムーニー粘度]
ムーニー粘度(ML1+4,100℃)は、JIS K6300に従って、100℃で測定した。
【0073】
[エピハロヒドリン系ゴム架橋物の常態物性(硬さ、引張強さ、破断伸び)、引裂強さ]
エピハロヒドリン系ゴム組成物を、縦15cm、横15cm、深さ0.2cmの金型に入れ、プレス圧10MPaで加圧しながら160℃で30分間プレス成形してシート状の一次架橋物を得た。次いで、得られた一次架橋物をギヤー式オーブンに移して150℃で4時間二次架橋することで、シート状のゴム架橋物を得た。そして、得られたシート状のゴム架橋物を、3号形ダンベルで打ち抜いて試験片を作製し、得られたこの試験片を用いて、JIS K6251に従い、ゴム架橋物の引張強さおよび破断伸びを、また、JIS K6253に従い、デュロメータ硬さ試験機(タイプA)を用いてゴム架橋物の硬さを、それぞれ測定した。また、JIS K6252-1:2015の試験方法Aに従い、トラウザ形試験片用の打抜き型で打ち抜いて試験片を作製し、引裂強さを測定した。
【0074】
[エピハロヒドリン系ゴム架橋物の耐熱老化試験]
上記常態物性の測定と同様にして得られた試験片(シート状のゴム架橋物を3号形ダンベルで打ち抜いて得られた試験片)について、耐熱老化試験を行った。耐熱老化試験は、JIS K6257(2010)に準拠して、150℃で、168時間の試験条件で行い、耐熱老化試験後の硬さ、引張強さ、および破断伸びを測定した。
【0075】
[エピハロヒドリン系ゴム架橋物の圧縮永久歪み試験]
金型を用いて、エピハロヒドリン系ゴム組成物を、温度160℃で30分間プレスすることにより架橋し、直径29mm、高さ12.5mmの円柱型の一次架橋物を得た。次いで、得られた一次架橋物を、ギヤー式オーブンにて、さらに150℃、4時間の条件で加熱して二次架橋させることにより、円柱型の試験片を得た。そして、得られた試験片を用いて、JIS K6262に従い、試験片を25%圧縮させた状態で、135℃の環境下に22時間置いた後、圧縮永久歪みを測定した。この値が小さいほど、耐圧縮永久歪み性に優れる。
【0076】
[エピハロヒドリン系ゴム架橋物のクリープ試験]
上記常態物性の測定と同様にして得られた試験片(シート状のゴム架橋物を3号形ダンベルで打ち抜いて得られた試験片)について、クリープ試験を行った。クリープ試験は、JIS K6273:2006に準拠して、100℃で2.5MPaの一定引張応力でのクリープ率(%)を求めた。この値が小さいほど、耐クリープ性に優れる。
【0077】
[ゴム積層体の剥離試験]
ゴム積層体を用いて、JIS K6256に従って剥離試験を行うことで、ゴム積層体を構成する両層間の接着性の評価を行った。具体的には、得られたゴム積層体を、幅25.4mm、長さ100mmの短冊状に打ち抜き、この両端を引張り試験機のエアーチャックで掴んで、50mm/分の速さで、180°剥離試験を行い、剥離時の荷重を引張り試験機のロードセルで読み取り、剥離強度TF(N/mm)で求めた。剥離強度が高いほど、接着性に優れると判断できる。
【0078】
[製造例1、重合触媒の製造]
密閉した耐圧ガラス容器を窒素置換して、トルエン200部およびトリイソブチルアルミニウム60部を供給した。このガラス容器を氷水に浸漬して冷却後、ジエチルエーテル230部を添加し、攪拌した。次に、氷水で冷却しながら、リン酸13.6部を添加し、さらに攪拌した。この時、トリイソブチルアルミニウムとリン酸との反応により、容器内圧が上昇するので適時脱圧を実施した。次いで、得られた反応混合物を60℃の温水浴内で1時間熟成反応させて触媒溶液を得た。
【0079】
[製造例2、エピクロロヒドリンゴムの製造]
オートクレーブにエピクロロヒドリン265.2部、アリルグリシジルエーテル13.0部、エチレンオキサイド9.76部、トルエン3250部を入れ、窒素雰囲気下で攪拌しながら内溶液を60℃に昇温し、上記で得た触媒溶液8部を添加して反応を開始した。次に、反応開始からエチレンオキサイド60.91部をトルエン300部に溶解した溶液を5時間かけて等速度で連続添加した。また、反応開始後30分毎に触媒溶液7部ずつを5時間にわたり添加した。次いで、水15部を添加して攪拌し、反応を終了させた。ここにさらに、老化防止剤として4,4’-チオビス-(6-tert-ブチル-3-メチルフェノール)の5重量%トルエン溶液45部を添加し、攪拌した。スチームストリッピングを実施してトルエンを除去し、上澄み水を除去後、60℃にて真空乾燥し、エピクロロヒドリンゴム349部を得た。このエピクロロヒドリンゴムの単量体組成比は、1H-NMRにより測定した結果、エピクロロヒドリン単量体単位62.5モル%、エチレンオキサイド単量体単位35モル%、アリルグリシジルエーテル単量体単位2.5モル%であった。また、得られたエピクロロヒドリンゴムのムーニー粘度は69であった。
【0080】
[実施例1]
[エピハロヒドリン系ゴム組成物の調製]
40℃のオープンロールに、製造例2で得られたエピクロロヒドリンゴム100部を投入し、次いで、ISAFカーボンブラック(製品名「シースト6」、東海カーボン社製、よう素吸着量:121mg/g、窒素吸着比表面積:119m2/g)40部、ポリエーテルエステル系可塑剤(製品名「アデカサイザー RS735」、ADEKA社製)5部、エステル系ワックス(製品名「スプレンダー R300」、花王社製、加工助剤)3部、ハイドロタルサイト(I)(製品名「DHT-4A」、協和化学工業社製、受酸剤、組成式:Mg4.3Al2(OH)12.6CO3・3.3H2O、窒素吸着比表面積:10.1m2/g、脂肪酸による表面処理品)9部、2-メルカプトベンゾイミダゾール(製品名「ノクラックMB」、大内新興化学工業社製、老化防止剤)0.5部、4,4’-ジ-(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン(製品名「ノクラックCD」、大内新興化学工業社製、老化防止剤)1部、ジメチルジチオカルバミン酸銅(製品名「ノクセラーTTCU」、大内新興化学工業社製、老化防止剤)1部、N-(シクロヘキシルチオ)フタルイミド(製品名「RETARDER CTP」、大内新興化学工業社製、架橋遅延剤)1部、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU)のフェノール塩(製品名「U-CAT SA831」、サンアプロ社製、DBU42重量%、架橋促進剤)1部、および6-メチルキノキサリン-2,3-ジチオカーボネート(キノキサリン系架橋剤)1.2部を投入し、10分間混練し混合することにより、エピハロヒドリン系ゴム組成物を調製した。
そして、得られたエピハロヒドリン系ゴム組成物を用いて、常態物性(硬さ、引張強さ、破断伸び)、引裂強さ、耐熱老化試験、圧縮永久歪み、およびクリープ率の測定・試験を行った。結果を表1に示す。
【0081】
[フッ素ゴム組成物の調製]
ポリオール系架橋剤を含有するフッ素ゴム(製品名「VITON A-401C」、ケマーズ社製、ポリオール系架橋剤としてビスフェノールAFを含有するフッ素ゴム)100部に、MTカーボンブラック(製品名「Thermax(登録商標) N990」、Cancarb社製、充填剤)30部、酸化マグネシウム(製品名「キョーワマグ150」、協和化学工業社製、受酸剤)3部、および水酸化カルシウム(製品名「カルディック#1000」、近江化学工業社製、受酸剤)6部を添加し、オープンロールで混練することで、フッ素ゴム組成物を得た。
【0082】
[ゴム積層体の構造]
上記にて得られたエピハロヒドリン系ゴム組成物とフッ素ゴム組成物とを、それぞれ、オープンロールで混練して、約2mmの均一な厚みのシートに分出し、6cm×10cm角に成形することで、シート状の成形体を得た。次いで、得られたシート状の各成形体を張り合わせ、縦6cm、横10cm、深さ0.4cmの金型に入れ、プレス圧50kg/cm2で加圧しながら、160℃で30分間架橋接着させ、さらに二次架橋(二次架橋条件:150℃、4時間)を行うことにより、ゴム積層体を作製した。なお、この際において、上述した剥離試験を行うために、剥離試験時にエアーチャックでつかむ部分に予めセロファン紙を挟むことで、両シートが接着していない部分を形成しておいた。そして、得られたゴム積層体を用いて、上記方法にしたがって、剥離試験を行った。結果を表1に示す。
【0083】
[実施例2~6]
ハイドロタルサイト(I)(製品名「DHT-4A」)の使用量を9部から、8部(実施例2)、7部(実施例3)、6部(実施例4)、5部(実施例5)、および4部(実施例6)に、それぞれ変更した以外は、実施例1と同様にして、エピハロヒドリン系ゴム組成物、フッ素ゴム組成物、およびゴム積層体を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0084】
[実施例7]
ISAFカーボンブラック(製品名「シースト6」、東海カーボン社製、よう素吸着量:121mg/g、窒素吸着比表面積:119m2/g)40部の代わりに、SAFカーボンブラック(製品名「シースト9H」、東海カーボン社製、よう素吸着量:139mg/g、窒素吸着比表面積:142m2/g)40部を使用した以外は、実施例2と同様にして、エピハロヒドリン系ゴム組成物、フッ素ゴム組成物、およびゴム積層体を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0085】
[実施例8]
ハイドロタルサイト(I)(製品名「DHT-4A」)9部の代わりに、ハイドロタルサイト(II)(製品名「ZHT-4A」、協和化学工業社製、受酸剤、組成式:Mg3ZnAl2(OH)12CO3・3.0H2O、窒素吸着比表面積:7m2/g)8部を使用した以外は、実施例1と同様にして、エピハロヒドリン系ゴム組成物、フッ素ゴム組成物、およびゴム積層体を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0086】
[実施例9~10]
ハイドロタルサイト(II)(製品名「ZHT-4A」)の使用量を、8部から、7部(実施例9)、および6部(実施例10)に、それぞれ変更した以外は、実施例8と同様にして、エピハロヒドリン系ゴム組成物、フッ素ゴム組成物、およびゴム積層体を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0087】
[比較例1]
ハイドロタルサイト(I)(製品名「DHT-4A」)の使用量を9部から10部に変更した以外は、実施例1と同様にして、エピハロヒドリン系ゴム組成物、フッ素ゴム組成物、およびゴム積層体を得て、同様に評価を行った。結果を表2に示す。
【0088】
[比較例2]
ハイドロタルサイト(I)(製品名「DHT-4A」)の使用量を9部から3部に変更した以外は、実施例1と同様にして、エピハロヒドリン系ゴム組成物、フッ素ゴム組成物、およびゴム積層体を得て、同様に評価を行った。結果を表2に示す。
【0089】
[比較例3]
ハイドロタルサイト(I)(製品名「DHT-4A」)9部の代わりに、水酸化アルミニウム(製品名「キョーワード200」、協和化学工業社製、受酸剤)8部を使用した以外は、実施例1と同様にして、エピハロヒドリン系ゴム組成物、フッ素ゴム組成物、およびゴム積層体を得て、同様に評価を行った。結果を表2に示す。
【0090】
[比較例4]
ISAFカーボンブラック(製品名「シースト6」、東海カーボン社製、よう素吸着量:121mg/g、窒素吸着比表面積:119m2/g)40部の代わりに、HAFカーボンブラック(製品名「シースト3」、東海カーボン社製、よう素吸着量:80mg/g、窒素吸着比表面積:79m2/g)40部を使用した以外は、実施例2と同様にして、エピハロヒドリン系ゴム組成物、フッ素ゴム組成物、およびゴム積層体を得て、同様に評価を行った。結果を表2に示す。
【0091】
[比較例5]
ISAFカーボンブラック(製品名「シースト6」、東海カーボン社製、よう素吸着量:121mg/g、窒素吸着比表面積:119m2/g)40部の代わりに、FEFカーボンブラック(製品名「シーストSO」、東海カーボン社製、よう素吸着量:44mg/g、窒素吸着比表面積:42m2/g)40部を使用した以外は、実施例2と同様にして、エピハロヒドリン系ゴム組成物、フッ素ゴム組成物、およびゴム積層体を得て、同様に評価を行った。結果を表2に示す。
【0092】
[比較例6]
6-メチルキノキサリン-2,3-ジチオカーボネート(キノキサリン系架橋剤)の使用量を、1.2部から3部に変更した以外は、実施例2と同様にして、エピハロヒドリン系ゴム組成物、フッ素ゴム組成物、およびゴム積層体を得て、同様に評価を行った。結果を表2に示す。
【0093】
[比較例7]
6-メチルキノキサリン-2,3-ジチオカーボネート(キノキサリン系架橋剤)1.2部の代わりに、2-イミダゾリン-2-チオール(製品名「サンセラー22-C」、三新化学工業社製、チオウレア系架橋剤)1.1部およびテトラブチルホスホニウムベンゾトリアゾレート(製品名「ZEONET PB」、日本ゼオン社製、ホスホニウム塩)1部を使用した以外は、実施例2と同様にして、エピハロヒドリン系ゴム組成物、フッ素ゴム組成物、およびゴム積層体を得て、同様に評価を行った。結果を表2に示す。
【0094】
【0095】
【0096】
表1、表2に示すように、エピハロヒドリン系ゴムと、カーボンブラックと、キノキサリン系架橋剤と、ハイドロタルサイト化合物と、を含有するエピハロヒドリン系ゴム組成物であって、前記カーボンブラックのよう素吸着量が100mg/g以上、かつ、窒素吸着比表面積が95~150m2/gであり、前記キノキサリン系架橋剤の含有量が、エピハロヒドリン系ゴム100重量部に対し、0.01~2重量部であり、前記ハイドロタルサイト化合物の含有量が、エピハロヒドリン系ゴム100重量部に対し、3重量部超、10重量部未満であるエピハロヒドリン系ゴム組成物は、得られるゴム架橋物の引裂強さ、耐熱性、耐圧縮永久歪み性、および耐クリープ性、ならびに得られるゴム積層体のエピハロヒドリン系ゴム層と他のゴム層との接着性のバランスに優れたものである(実施例1~10)。
【0097】
一方、エピハロヒドリン系ゴム組成物中におけるハイドロタルサイト化合物の含有量を10重量部以上とした場合には、得られるゴム架橋物の硬度は高く、引張強さは低くなり、圧縮永久歪みも高くなる結果となった(比較例1)。
エピハロヒドリン系ゴム組成物中におけるハイドロタルサイト化合物の含有量を3重量部以下とした場合には、得られるゴム架橋物の耐クリープ性に劣るものであり、耐熱後の引張強さと破断伸びが低く、耐熱性に劣るものであり、エピハロヒドリン系ゴム層(A)とフッ素ゴム層(B)との接着性も劣る結果となった(比較例2)。
エピハロヒドリン系ゴム組成物に、ハイドロタルサイト化合物以外の受酸剤を含有させた場合には、得られるゴム架橋物の引張強さが低くなり、耐熱後の引張強さと破断伸びも低く、耐熱性に劣るものであり、エピハロヒドリン系ゴム層(A)とフッ素ゴム層(B)との接着性も劣る結果となった(比較例3)。
エピハロヒドリン系ゴム組成物に、よう素吸着量が100mg/g未満であり、かつ、窒素吸着比表面積が95m2/g未満であるカーボンブラックを含有させた場合には、得られるゴム架橋物の引張強さ、破断伸び、および引裂強さが低くなる結果となった(比較例4,5)。
エピハロヒドリン系ゴム組成物におけるキノキサリン系架橋剤の含有量を2重量部超とした場合には、得られるゴム架橋物の引張強さ、破断伸び、および引裂強さが低くなり、耐熱後の破断伸びも低く、耐熱性に劣るものであり、エピハロヒドリン系ゴム層(A)とフッ素ゴム層(B)との接着性も劣る結果となった(比較例6)。
エピハロヒドリン系ゴム組成物に、キノキサリン系架橋剤以外の架橋剤を含有させた場合には、得られるゴム架橋物の引張強さおよび引裂強さが低くなり、耐熱後の破断伸びおよび引張強さも低く、耐熱性に劣るものであり、圧縮永久歪みも高くなる結果となった(比較例7)。