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特許7415957重合体、硬化性組成物、硬化物、粘着シート、積層体及びフレキシブルディスプレイ
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  • 特許-重合体、硬化性組成物、硬化物、粘着シート、積層体及びフレキシブルディスプレイ 図1A
  • 特許-重合体、硬化性組成物、硬化物、粘着シート、積層体及びフレキシブルディスプレイ 図1B
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】重合体、硬化性組成物、硬化物、粘着シート、積層体及びフレキシブルディスプレイ
(51)【国際特許分類】
   C08F 290/06 20060101AFI20240110BHJP
   C08F 265/04 20060101ALI20240110BHJP
   C08L 55/00 20060101ALI20240110BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20240110BHJP
   C09J 133/14 20060101ALI20240110BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
C08F290/06
C08F265/04
C08L55/00
C09J7/38
C09J133/14
B32B27/30 A
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020571104
(86)(22)【出願日】2020-01-27
(86)【国際出願番号】 JP2020002716
(87)【国際公開番号】W WO2020162245
(87)【国際公開日】2020-08-13
【審査請求日】2022-08-04
(31)【優先権主張番号】P 2019018958
(32)【優先日】2019-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 牧人
(72)【発明者】
【氏名】菊川 尚也
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 千登志
【審査官】中村 英司
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-104921(JP,A)
【文献】特開2008-001896(JP,A)
【文献】国際公開第2016/017568(WO,A1)
【文献】特開2012-162705(JP,A)
【文献】特開平10-036688(JP,A)
【文献】特開2017-066349(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 290/06
C08F 265/04
C08L 55/00
C09J 7/38
C09J 133/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の単量体に基づく単位及び第2の単量体に基づく単位を含み、全構成単位に対する前記第2の単量体に基づく単位の割合が10~40質量%である重合体であって、
前記第1の単量体は、分子量が1,000以下である(メタ)アクリル酸エステルであり、
前記第2の単量体は、その分子量が5,000~25,000であり、1分子中に1個以上のポリオキシアルキレン鎖及び1個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する、(メタ)アクリル酸エステルであり、
前記第2の単量体は、下記式(3)で表される化合物3、下記式(4)で表される化合物4、及び下記式(5a)で表される化合物5aと下記式(3b)で表される化合物3bとを反応させて得られる官能基数が1のオリゴマーからなる群から選択される少なくとも1種であり、
前記重合体の数平均分子量が25,000~1,000,000であり、
前記重合体について、示差走査熱量計を用いて、サンプル量10mg、昇温速度10℃/分、温度範囲-80~25℃の条件で測定したガラス転移温度が、-80~-40℃である、重合体。
【化1】
式3において:
11は、水素原子又はメチル基である。
12は、炭素数2~4のアルキレン基であり、1分子中に存在する複数のR12は互いに同じであっても異なってもよく、1分子中に2種以上のR12が存在する場合、-OR12-の連鎖はブロックでもよくランダムでもよい。
13は、炭素数1~20のアルキル基、又はR13と結合する酸素原子とともに炭素数1~20のカルボン酸残基を示す。
bは、1~8の整数である。
cは、20~500の整数である。
式4において:
21は、水素原子又はメチル基である。
22は、炭素数2~4のアルキレン基であり、1分子中に存在する複数のR22は互いに同じであっても異なってもよく、1分子中に2種以上のR22が存在する場合、-OR22-の連鎖はブロックでもよくランダムでもよい。
23は、炭素数1~20のアルキル基、又はR23と結合する酸素原子とともに炭素数1~20のカルボン酸残基を示す。
24は、イソホロンジイソシアネート又はヘキサメチレンジイソシアネートから2つのNCO基を除いた残基である。
dは、1~8の整数である。
eは、20~500の整数である。
式5aにおいて:
32は、炭素数2~8のアルキレン基であり、1分子中に存在する複数のR32は互いに同じであっても異なってもよく、1分子中に2種以上のR32が存在する場合、-OR32-の連鎖はブロックでもよくランダムでもよい。
fは、20~500の整数である。
式3bにおいて:
11は、水素原子又はメチル基である。
bは、1~8の整数である。
【請求項2】
前記第2の単量体における分子量が、数平均分子量である、請求項1に記載の重合体。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の重合体と架橋剤を含む、硬化性組成物。
【請求項4】
さらに、光重合開始剤を含む、請求項3に記載の硬化性組成物。
【請求項5】
前記硬化性組成物の総量に対する前記重合体の合計の割合が80質量%以上である、請求項3又は4に記載の硬化性組成物。
【請求項6】
請求項3~5のいずれか一項に記載の硬化性組成物の硬化物。
【請求項7】
80℃における貯蔵弾性率E’(80℃)(kPa)に対する-20℃における貯蔵弾性率E’(-20℃)(kPa)の比を表すE’(-20℃)/E’(80℃)が、1.5~4である、請求項6に記載の硬化物。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の硬化物からなる粘着層を含む、粘着シート。
【請求項9】
前記粘着層の厚さが10~150μmである、請求項8に記載の粘着シート。
【請求項10】
請求項6又は7に記載の硬化物からなる粘着層と、前記粘着層を介して積層したフレキシブル部材とを有する、積層体。
【請求項11】
前記粘着層の厚さが10~150μmである、請求項10に記載の積層体。
【請求項12】
前記フレキシブル部材が、表面保護パネル、光学フィルム、タッチパネル及び表示パネル本体からなる群から選択される少なくとも1つである、請求項10又は11に記載の積層体。
【請求項13】
請求項10~12のいずれか一項に記載の積層体を備える、フレキシブルディスプレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重合体、硬化性組成物、硬化物、粘着シート、積層体及びフレキシブルディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、リジッドなディスプレイパネルに加えて、湾曲性又は屈曲性を有するフレキシブルディスプレイパネルが開発されている。
フレキシブルディスプレイパネルは、フレキシブルディスプレイパネル本体に粘着層を介してフレキシブル部材が積層されたフレキシブル積層体を含む。上記フレキシブルディスプレイパネル本体は、例えば、有機EL(Electronic Luminescent)ディスプレイパネルである。上記フレキシブル部材は、例えば、光学フィルム又は保護フィルムである。
特許文献1及び2は、フレキシブル積層体を形成するのに好適な粘着剤として、特定のモノマー組成を有する(メタ)アクリル酸エステル共重合体及び架橋剤を含む組成物を記載する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】日本国特開2017-95654号公報
【文献】国際公開第2018/173896号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
周辺技術の発達により、フレキシブル積層体の折曲げ耐久性及び形状回復性に対する要求水準がますます高くなっている。折曲げ耐久性は、折曲げによるフレキシブル積層体の剥がれ、浮き又はクラック等の欠陥が発生しにくいという特性である。形状回復性は、曲げ応力又は引張り応力によるフレキシブル積層体の恒久的な変形が起こりにくいという特性である。
しかし、特許文献1及び2に記載された粘着剤を用いて形成したフレキシブル積層体は、これらの特性が充分ではない。
本発明の課題は、折曲げ耐久性及び形状回復性が優れたフレキシブル積層体を形成できる重合体、硬化性組成物、硬化物、粘着シート、積層体及びフレキシブルディスプレイの提供である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
[1] 第1の単量体に基づく単位及び第2の単量体に基づく単位を含み、全構成単位に対する前記第2の単量体に基づく単位の割合が10~40質量%である重合体であって、
前記第1の単量体は、分子量が1,000以下である(メタ)アクリル酸エステルであり、
前記第2の単量体は、その分子量が5,000~25,000であり、1分子中に1個以上のポリオキシアルキレン鎖及び1個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する、(メタ)アクリル酸エステルであり、
前記第2の単量体は、下記式(3)で表される化合物3、下記式(4)で表される化合物4、及び下記式(5a)で表される化合物5aと下記式(3b)で表される化合物3bとを反応させて得られる官能基数が1のオリゴマーからなる群から選択される少なくとも1種であり、
前記重合体の数平均分子量が25,000~1,000,000であり、
前記重合体について、示差走査熱量計を用いて、サンプル量10mg、昇温速度10℃/分、温度範囲-80~25℃の条件で測定したガラス転移温度が、-80~-40℃である、重合体。
【化1】
式3において:
11は、水素原子又はメチル基である。
12は、炭素数2~4のアルキレン基であり、1分子中に存在する複数のR12は互いに同じであっても異なってもよく、1分子中に2種以上のR12が存在する場合、-OR12-の連鎖はブロックでもよくランダムでもよい。
13は、炭素数1~20のアルキル基、又はR13と結合する酸素原子とともに炭素数1~20のカルボン酸残基を示す。
bは、1~8の整数である。
cは、20~500の整数である。
式4において:
21は、水素原子又はメチル基である。
22は、炭素数2~4のアルキレン基であり、1分子中に存在する複数のR22は互いに同じであっても異なってもよく、1分子中に2種以上のR22が存在する場合、-OR22-の連鎖はブロックでもよくランダムでもよい。
23は、炭素数1~20のアルキル基、又はR23と結合する酸素原子とともに炭素数1~20のカルボン酸残基を示す。
24は、イソホロンジイソシアネート又はヘキサメチレンジイソシアネートから2つのNCO基を除いた残基である。
dは、1~8の整数である。
eは、20~500の整数である。
式5aにおいて:
32は、炭素数2~8のアルキレン基であり、1分子中に存在する複数のR32は互いに同じであっても異なってもよく、1分子中に2種以上のR32が存在する場合、-OR32-の連鎖はブロックでもよくランダムでもよい。
fは、20~500の整数である。
式3bにおいて:
11は、水素原子又はメチル基である。
bは、1~8の整数である。
[2] 前記第2の単量体における分子量が、数平均分子量である、[1]に記載の重合体。
[3] [1]又は[2]に記載の重合体と架橋剤を含む、硬化性組成物。
[4] さらに、光重合開始剤を含む、[3]に記載の硬化性組成物。
[5] 前記硬化性組成物の総量に対する前記重合体の合計の割合が80質量%以上である、[3]又は[4]に記載の硬化性組成物。
[6] [3]~[5]のいずれかに記載の硬化性組成物の硬化物。
[7] 80℃における貯蔵弾性率E’(80℃)(kPa)に対する-20℃における貯蔵弾性率E’(-20℃)(kPa)の比を表すE’(-20℃)/E’(80℃)が、1.5~4である、[6]に記載の硬化物。
[8] [6]又は[7]に記載の硬化物からなる粘着層を含む、粘着シート。
[9] 前記粘着層の厚さが10~150μmである、[8]に記載の粘着シート。
[10] [6]又は[7]に記載の硬化物からなる粘着層と、前記粘着層を介して積層したフレキシブル部材とを有する、積層体。
[11] 前記粘着層の厚さが10~150μmである、[10]に記載の積層体。
[12] 前記フレキシブル部材が、表面保護パネル、光学フィルム、タッチパネル及び表示パネル本体からなる群から選択される少なくとも1つである、[10]又は[11]に記載の積層体。
[13] [10]~[12]のいずれかに記載の積層体を備える、フレキシブルディスプレイ。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、折曲げ耐久性及び形状回復性が優れたフレキシブル積層体を形成できる重合体、硬化性組成物、硬化物、粘着シート、積層体及びフレキシブルディスプレイを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1A図1Aは、クリープ回復率の測定方法における、引張試験前のサンプルの一例を表す正面図である。
図1B図1Bは、クリープ回復率の測定方法における、引張試験後のサンプルの一例を表す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書において、式1で表される化合物を化合物1と記す。他の式で表される化合物も同様に記す。
本明細書における用語の定義は以下である。
「単位」は、単量体(以下「モノマー」ともいう。)の重合により直接形成された原子団を意味する。
「ポリオキシアルキレン鎖」は、アルキレンオキシド単量体に基づく単位から形成される重合鎖を意味する。
「(メタ)アクリレート」は、アクリレート及びメタクリレートのいずれか一方又は両方を意味する。
「(メタ)アクリロイルオキシ」は、アクリロイルオキシ及びメタクリロイルオキシのいずれか一方又は両方を意味する。
「官能基数」は、特に断りのない限り、1分子中の(メタ)アクリロイルオキシ基の数を意味する。
「平均官能基数」は、特に断りのない限り、化学式に基づいて得られる式量で表される分子量当たりの平均の(メタ)アクリロイルオキシ基の数又は数平均分子量を1単位とする1分子中の平均の(メタ)アクリロイルオキシ基の数を意味する。
「プレポリマー」は、特に断りのない限り、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを意味する。
「インデックス」は、イソシアネート化合物のイソシアネート基のモル数をオキシアルキレン重合体の水酸基のモル数で除した値を100倍した値である。
「シート」は、シート、フィルム及びテープを概念的に包含する。
「フレキシブル」は、屈曲可能である性状又は湾曲可能である性状を意味する。「フレキシブル」は、例えば、屈曲半径3mm未満に折り畳んでも形状が回復する性状(Foldable)、屈曲半径3mm以上に折り曲げ又は丸めても形状が回復する性状(Rollable)及び湾曲した状態で固定しても破損しない性状(Bendable)を包含する。
【0009】
ポリオールの水酸基価は、JIS K 1557:2007に準拠した測定により得られる値である。
水酸基換算分子量は、水酸基価を、「{56100/(水酸基価)}×(開始剤の水酸基の数)」の式に当てはめて算出した値である。
数平均分子量(以下「Mn」ともいう。)は、分子量既知の標準ポリスチレン試料を用いて作成した検量線を用い、ゲル・パーミエイション・クロマトグラフィー(GPC)で測定して得られるポリスチレン換算分子量である。分子量分布は質量平均分子量(以下「Mw」ともいう。Mwは、Mnと同様に、GPCで測定して得られるポリスチレン換算分子量である。)をMnで除した値(以下「Mw/Mn」ともいう。)である。GPCの測定において、未反応の低分子量成分(例えば、モノマー)のピークが現れる場合は、そのピークを除外してMn及びMwを求める。
化合物の分子量がMnで規定されている場合において、Mw/Mnが存在しないときは、その化合物の化学式に基づいて得られる式量で表される分子量をMnとみなす。
【0010】
硬化物のガラス転移温度は、その硬化物の動的粘弾性測定において得られるtanδピーク温度である。
重合体のガラス転移温度は、その重合体の示差走査熱量測定(DSC)によって得られた値である。
反応性オリゴマーのガラス転移温度は、その反応性オリゴマーの硬化物の動的粘弾性測定において得られるtanδピーク温度である。上記反応性オリゴマーの硬化物は、上記反応性オリゴマーのみに光開始剤を添加し、硬化させて得られる硬化物である。
硬化物の貯蔵弾性率は、試験サンプルの歪み1%の条件下における貯蔵弾性率E’(kPa)である。上記試験サンプルは、硬化性組成物を、幅5mm×長さ15mm×厚さ2mmの大きさに硬化させて調製する。貯蔵弾性率E’は、上記試験サンプルを用いて、動的粘弾性測定装置(EXSTAR 6100,セイコーインスツル社製品名)によって、次の測定条件で測定する。
モード:引張モード
温度範囲:-80~130℃
昇温速度:3℃/min
測定周波数:1Hz
【0011】
[重合体]
本発明の重合体(以下「ポリマーX」ともいう。)は、第1の単量体(以下「モノマーA」ともいう。)に基づく単位及び第2の単量体(以下「モノマーB」ともいう。)に基づく単位を含む。
【0012】
<モノマーA>
モノマーAは、そのMnが1,000以下である(メタ)アクリル酸エステルである。
モノマーAとしては、例えば、国際公開第2018/173896号の[0095]~[0110]に記載された、アルキル(メタ)アクリレート、カルボキシ基含有モノマー、水酸基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー、アミド基含有モノマー、ビニルモノマー及びマクロモノマーが挙げられる。
モノマーAは、2種以上を併用してもよい。
【0013】
モノマーAの好適な例として、モノマーa1、モノマーa2、モノマーa3及びモノマーa4が挙げられる。
モノマーa1:(メタ)アクリロイルオキシ基に炭素数4~18のアルキル基が結合したアルキル(メタ)アクリレート。上記炭素数4~18のアルキル基は、直鎖状又は分岐鎖状が好ましい。
モノマーa2:カルボキシ基を有し、モノマーa1と共重合可能なモノマー。
モノマーa3:有機官能基を有し、モノマーa1と共重合可能なモノマー。上記有機官能基は、ヒドロキシ基及びアミド基からなる群から選択される少なくとも1種が好ましく、ヒドロキシ基がより好ましい。
モノマーa4:ポリオキシアルキレンモノオールの(メタ)アクリル酸エステル。
【0014】
モノマーa1の具体例は、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、ネオペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、へプチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート及びイソステアリル(メタ)アクリレートである。
モノマーAとして(メタ)アクリロイルオキシ基に炭素数4~18の直鎖状アルキル基が結合したアルキル(メタ)アクリレートを用いると、本発明の硬化物が柔軟になりやすい。
【0015】
モノマーa2の具体例は、(メタ)アクリル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルヘキサヒドロフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルマレイン酸、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルマレイン酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルコハク酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸及びイタコン酸である。
モノマーAとしてモノマーa2を用いると、本発明の硬化物が、高温高湿度の条件下で白濁しにくい(耐湿熱性)。また、本発明の硬化物の粘着力が向上しやすい。
【0016】
モノマーa3の具体例は、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-メチロールプロパン(メタ)アクリルアミド、N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド、マレイン酸アミド及びマレイミドである。
モノマーAとしてモノマーa3を用いると、本発明硬化物の耐湿熱性が向上しやすい。モノマーa3としては、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0017】
モノマーa4の具体例は、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシルポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、オクトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ラウロキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ステアロキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシルポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、オクトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ラウロキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ステアロキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシルポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、オクトキシポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ラウロキシポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ステアロキシポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート及びフェノキシポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレートである。
【0018】
モノマーa4を構成するポリオキシアルキレンモノオールとしては、後述の化合物3aであって、水酸基価が56.1mgKOH/g以上であるものが好ましい。
モノマーa4としては、ポリオキシエチレンモノオール(メタ)アクリル酸エステル及びポリオキシプロピレンモノオール(メタ)アクリル酸エステルからなる群から選択される少なくとも1つが好ましい。
【0019】
ポリマーXにおけるモノマーAに基づく単位の構成は、以下の(1)又は(2)の態様が好ましい。
(1)モノマーAに基づく単位の総量に対して、モノマーa1に基づく単位の割合が50~99.9質量%であり、モノマーa2に基づく単位の割合が0.1~5.0質量%であり、これらの合計の割合が50.1~100質量%である。
(2)モノマーAに基づく単位の総量に対して、モノマーa1に基づく単位の割合が50~99.9質量%であり、モノマーa3に基づく単位の割合が1.0~20.0質量%であり、これらの合計の割合が51.0~100質量%である。
【0020】
モノマーAの式量に基づく分子量は1,000以下であり、70~1,000が好ましく、70~700がより好ましく、80~400がさらに好ましい。モノマーAの式量に基づく分子量が上記範囲の上限値以下であると、本発明の硬化物が柔軟になりやすい。
モノマーAを2種以上用いる場合は、その2種以上のモノマーAの式量に基づく分子量のそれぞれが上記範囲内であることが好ましい。
モノマーAのMnは1,000以下であり、70~1,000が好ましく、70~700がより好ましく、80~400がさらに好ましい。モノマーAのMnが上記範囲の上限値以下であると、本発明の硬化物が柔軟になりやすい。
モノマーAを2種以上用いる場合は、その2種以上のモノマーAのMnのそれぞれが上記範囲内であることが好ましい。
【0021】
<モノマーB>
モノマーBは、そのMnが5,000~25,000であり、1分子中に1個以上のポリオキシアルキレン鎖及び1個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する、(メタ)アクリル酸エステルである。
モノマーBは、2種以上を併用してもよい。
ポリマーX中のモノマーBに基づく単位は、本発明の硬化性組成物の硬化時の収縮低減に寄与し、本発明の硬化物の弾性率の低減及び低Tg化に寄与する。本発明の硬化物を積層体の粘着層として用いることにより、本発明の積層体の折曲げ耐久性及び形状回復性を向上できる。
【0022】
モノマーBとしては、1分子中に1個以上のウレタン結合を有するオリゴマー(以下「オリゴマーB’」ともいう。)が好ましい。オリゴマーB’の1分子中のウレタン結合の数は、1個が好ましい。オリゴマーB’の1分子中のウレタン結合の数が1個であると、本発明の硬化性組成物の硬化時の収縮が低減されやすく、本発明の硬化物の弾性率が低減されやすい。
オリゴマーB’の全質量に対するウレタン結合の割合は、0.3~1.9質量%が好ましく、0.32~1.6質量%がより好ましく、0.35~1.3質量%がさらに好ましい。オリゴマーB’の全質量に対するウレタン結合の割合が上記範囲内であると、本発明の硬化物が良好な粘着性を得やすい。
オリゴマーB’の全質量に対するウレタン結合の割合は、以下の計算式より算出する。
ウレタン結合の割合(単位:%)={Mi×59/Wb}×100
Wb:モノマーBの総質量
Mi:質量WbのモノマーBの製造に用いたイソシアネート化合物に存在するイソシアネート基の全モル数
ただし、オリゴマーB’の製造に用いたイソシアネート化合物に存在するイソシアネート基の全部がウレタン結合(分子量59)を形成しているとみなす。
【0023】
モノマーBの製造工程においては、生成物(以下「生成物B」ともいう。)中に、モノマーB以外の副生成物が混在する場合がある。
生成物Bの全質量に対するモノマーBの割合は、80質量%以上が好ましく、85~100質量%がより好ましい。生成物Bの全質量に対するモノマーBの割合が80質量%以上であると、生成物BはモノマーBとしての機能を充分に発揮できる。生成物Bが、その全質量に対して80質量%以上のモノマーBを含むと、生成物BがモノマーBの機能を充分に発揮できるため、生成物BをモノマーBとみなすことができる。
【0024】
生成物BをモノマーBとみなすことができる場合には、生成物BのMn及び官能基数から求めた生成物Bの平均官能基数は、モノマーBの平均官能基数とみなすことができる。この場合の生成物Bの平均官能基数は、0.8~1.3が好ましく、0.9~1.2がより好ましい。生成物Bの平均官能基数が上記範囲内であると、生成物BがモノマーBの機能を充分に発揮しやすい。生成物Bの平均官能基数は、モノマーBの製造原料に含まれる不純物量及び後述のインデックスで調整できる。また、本明細書において、(メタ)アクリロイルオキシ基の平均数は、後述の原料の平均官能基数及びインデックスを用いて、計算で求めることができる。
【0025】
モノマーBのMnは、5,000~25,000であり、6,000~24,500が好ましく、7,000~24,000がより好ましい。モノマーBのMnが上記範囲内であると、本発明の硬化性組成物の粘度を調整しやすい。また、モノマーBのMnが上記範囲の下限値以上であると、本発明の硬化性組成物の硬化時の硬化収縮率を低減しやすい。
モノマーBを2種以上用いる場合は、その2種以上のモノマーBのMnのそれぞれが上記範囲内であることが好ましい。
モノマーBのMw/Mnは、1.03~1.2が好ましく、1.04~1.15がより好ましく、1.05~1.14がさらに好ましい。
モノマーBを2種以上用いる場合は、その2種以上のモノマーBのMw/Mnのそれぞれが上記範囲内であることが好ましい。
モノマーBのガラス転移温度は、-55℃以下が好ましく、-58℃以下がより好ましく、-60℃以下がさらに好ましい。モノマーBのガラス転移温度が上記範囲の上限値以下であると、本発明の積層体の低温での曲げ耐久性がより優れる。
モノマーBのガラス転移温度は、-85℃以上が好ましく、-80℃以上がより好ましく、-75℃以上がさらに好ましい。モノマーBのガラス転移温度が上記範囲の下限値以上であると、本発明の積層体のクリープ回復率が向上しやすい。
モノマーBのガラス転移温度は、-85℃~-55℃が好ましく、-80℃~-58℃がより好ましく、-75℃~-60℃がさらに好ましい。モノマーBのガラス転移温度が上記範囲の上限値以下であると、本発明の積層体の低温での曲げ耐久性がより優れる。
モノマーBを2種以上用いる場合は、その2種以上のモノマーBのガラス転移温度のそれぞれが-85~-55℃の範囲内であることが好ましい。
【0026】
モノマーBの具体例は、以下に記載するモノマーB-1、モノマーB-2及びモノマーB-3である。モノマーB-1、モノマーB-2及びモノマーB-3は、2種以上を併用してもよい。
【0027】
モノマーBは、モノマーB-1及びモノマーB-2からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
モノマーBの全質量に対する、モノマーB-1及びモノマーB-2の合計の割合は、50質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、100質量%が特に好ましい。モノマーBの全質量に対する、モノマーB-1及びモノマーB-2の合計の割合が、上記範囲の下限値以上であると、本発明の硬化性組成物の硬化時の硬化収縮率を低減しやすい。また、本発明の硬化物の柔軟性を向上しやすい。モノマーB-1とモノマーB-2の質量比を表す(B-1):(B-2)は、1:0~1:1が好ましい。
【0028】
(モノマーB-1)
モノマーB-1は、ポリオキシアルキレンモノオールと、イソシアネート基及び(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物との等モル反応物である。
上記ポリオキシアルキレンモノオールは、1個の活性水素を有する開始剤に、アルキレンオキシドを開環重合させて得られる化合物である。上記ポリオキシアルキレンモノオールは、開始剤残基、ポリオキシアルキレン鎖及び開始剤の活性水素の数に対応する水酸基を有する。
上記アルキレンオキシドは、炭素数2~4のアルキレンオキシドが好ましい。上記アルキレンオキシドの具体例は、プロピレンオキシド、エチレンオキシド、1,2-ブチレンオキシド及び2,3-ブチレンオキシドである。
上記開始剤における活性水素含有基の例は、水酸基、カルボキシ基、及び窒素原子に結合した水素原子を1個有するアミノ基である。上記活性水素含有基としては、水酸基及びカルボキシ基からなる群から選択される少なくとも1種が好ましく、水酸基がより好ましく、アルコール性水酸基がさらに好ましい。
上記1個の活性水素を有する開始剤の例は、1価アルコール、1価フェノール、1価カルボン酸、及び窒素原子に結合した水素原子を1個有するアミン化合物である。上記1個の活性水素を有する開始剤としては、1価脂肪族アルコール及び1価脂肪族カルボン酸からなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。上記1個の活性水素を有する開始剤としては、目的のポリオキシアルキレンモノオールよりも低分子量のポリオキシアルキレンモノオール(以下「低分子量ポリオキシアルキレンモノオール」ともいう。)を使用してもよい。
上記1価脂肪族アルコールの炭素数は、1~20が好ましく、2~8がより好ましい。
上記1価脂肪族カルボン酸の炭素数は、カルボキシ基中の炭素原子を含め、2~20が好ましく、2~8がより好ましい。
上記ポリオキシアルキレンモノオールの中のオキシアルキレン基としては、オキシプロピレン基のみからなるか又はオキシプロピレン基とそれ以外の基との組合せからなることが好ましく、オキシプロピレン基以外のオキシアルキレン基としてはオキシエチレン基が好ましい。上記ポリオキシアルキレンモノオール中の全オキシアルキレン基に対するオキシプロピレン基の割合は、50~100質量%が好ましく、80~100質量%がより好ましい。開始剤として上記低分子量ポリオキシアルキレンモノオールを使用する場合、上記低分子量ポリオキシアルキレンモノオール中のオキシアルキレン基は、得られるポリオキシアルキレンモノオール中のオキシアルキレン基とみなす。
【0029】
低水酸基価の(すなわち、高分子量の)ポリオキシアルキレンモノオールは、複合金属シアン化物錯体触媒の存在下に、開始剤に炭素数3以上のアルキレンオキシド(特にプロピレンオキシド)を開環重合させて製造できる。
オキシエチレン基を有する低水酸基価のポリオキシアルキレンモノオールは、オキシエチレン基を有する高水酸基価(50mgKOH/g以上が好ましい)のポリオキシアルキレンモノオールを開始剤とし、複合金属シアン化物錯体触媒の存在下に、炭素数3以上のアルキレンオキシド(特にプロピレンオキシド)を開環重合させて製造できる。
高水酸基価のポリオキシアルキレンモノオールは、KOH等のアルカリ触媒の存在下に、開始剤に炭素数3以上のアルキレンオキシドを開環重合させて製造できる。
モノマーB-1の製造に用いられるポリオキシアルキレンモノオールは、2種以上のポリオキシアルキレンモノオールの混合物であってもよい。この場合、各々のポリオキシアルキレンモノオールは、上記範疇に含まれるポリオキシアルキレンモノオールが好ましい。
上記ポリオキシアルキレンモノオールの製造においては、反応系内に投入される開始剤及びアルキレンオキシドは、通常、減圧脱気等の手段によって水分を除去した、水分の少ないものを使用する。
ポリオキシアルキレンモノオールの製造における開始剤の水分量は少ないほど好ましい。具体的には、上記開始剤の水分量は、上記開始剤の全量に対して、500質量ppm以下が好ましく、300質量ppm以下がより好ましい。上記開始剤の水分量が、上記開始剤の全量に対して、500質量ppm以下であると、水から生成するポリオキシアルキレンジオールの生成量が充分に抑制されるため、最終的にポリオキシアルキレンジオールに起因する副生成物の生成量が少なくなり、得られるポリオキシアルキレンモノオールの平均水酸基数の上限を1.2以下に調整しやすい。
ポリオキシアルキレンモノオールの製造において原料として用いるポリオキシアルキレンモノオールの水分量は少ないほど好ましい。具体的には、上記ポリオキシアルキレンモノオールの水分量は、上記ポリオキシアルキレンモノオールの全量に対して、300質量ppm以下が好ましく、250質量ppm以下がより好ましく、50~200質量ppmがさらに好ましい。上記ポリオキシアルキレンモノオールの水分量が、上記ポリオキシアルキレンモノオールの全量に対して、300質量ppm以下であると、水分とイソシアネート基含有化合物との反応生成物である副生成物の生成が少なく、反応生成物の安定性が向上する。さらに、本発明の硬化性組成物の経時的な外観の変化が抑制されやすく、本発明の硬化物の弾性率が良好となりやすい。
モノマーB-1の製造に用いられるイソシアネート基及び(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物は、イソシアネート基を1個有する(メタ)アクリレートが好ましく、イソシアネートアルキル(メタ)アクリレートがより好ましい。
上記イソシアネート基を1個有する(メタ)アクリレートとしては、脂肪族炭化水素基又は脂環式炭化水素基に結合したイソシアネート基を有する(メタ)アクリレートが好ましく、イソシアネート基アルキル(メタ)アクリレートが特に好ましい。イソシアネート基アルキル基のイソシアネート基を除くアルキル基の炭素数は8以下が好ましく、4以下がより好ましい。
上記イソシアネート基を1個有する(メタ)アクリレートの具体例は、2-イソシアネートエチル(メタ)アクリレート及びイソシアネートメチルメタクリレートである。上記イソシアネート基を1個有する(メタ)アクリレートの市販品としては、カレンズ-AOI及びカレンズ-MOI(いずれも、昭和電工社製品名)が挙げられる。
モノマーB-1のMnの好ましい範囲は、上記モノマーBと同様である。
モノマーB-1は、後述の化合物3が好ましい。
【0030】
モノマーB-1は、化合物3aと、化合物3bとを反応させて得られる化合物3が好ましい。化合物3a及び化合物3bは、1分子中に存在するウレタン化反応が可能な基が各々1個であるため、モノマーB-1の1分子中のウレタン結合を1個に制御しやすい。モノマーB-1の1分子中のウレタン結合の数が少ないと、本発明の硬化性組成物の粘度が低くなりやすい。したがって、本発明の硬化性組成物がより低粘度となり、本発明の硬化物がより柔軟性に優れる点で、モノマーBがモノマーB-1を含むことがより好ましい。
【0031】
【化2】
【0032】
【化3】
【0033】
式3、3a及び3bにおいて:
11は、水素原子又はメチル基であり、水素原子が好ましい。
12は、炭素数2~4のアルキレン基であり、1分子中に存在する複数のR12は互いに同じであっても異なってもよい。1分子中に2種以上のR12が存在する場合、-OR12-の連鎖はブロックでもよくランダムでもよい。R12はエチレン基及び/又はプロピレン基であることが好ましい。
13は、炭素数1~20のアルキル基、又はR13と結合する酸素原子とともに炭素数1~20のカルボン酸残基を示す。上記カルボン酸残基は、カルボキシ基中の炭素原子を含む炭素数が1~20であるモノカルボン酸からカルボキシ基中の水素原子を1個除いた1価の基である。R13は、反応が容易な点で炭素数1~20のアルキル基が好ましく、炭素数2~8のアルキル基が好ましい。
bは、1~8の整数であり、1~4の整数が好ましい。
cは、20~600の整数であり、35~500の整数が好ましく、65~250の整数がより好ましい。
【0034】
化合物3aはポリオキシアルキレンモノオールである。化合物3aは、アルコール又はアルコールにアルキレンオキシドを付加した化合物を開始剤としてアルキレンオキシドを開環重合させる公知の方法、又はモノカルボン酸のカルボキシ基にアルキレンオキシドを開環重合させる公知の方法により得られる。
化合物3aの水酸基価は2.3mgKOH/g以上56.1mgKOH/g未満が好ましく、3~14mgKOH/gがより好ましい。
化合物3aの水酸基換算分子量は1,000超25,000以下が好ましく、4,000~15,000がより好ましい。化合物3aの水酸基換算分子量が上記範囲内であると、モノマーB-1のMnを5,000~25,000の範囲内に調整できる。また、化合物3aの水酸基換算分子量が上記範囲内であると、生成するモノマーB-1の平均官能基数を0.8~1.3の範囲内に調整しやすい。上記水酸基換算分子量が小さい方が、上記平均官能基数の上限を1.3以下に調整しやすい。
【0035】
化合物3aの製造において減圧脱気等の手段による水分の除去は特に必要なく、反応系内に投入される原料等に通常含まれる水分量は許容される。系中の水分量は少ないほどよい。系中の水分量は、500ppm以下が好ましく、300ppm以下がより好ましい。系中の水分量が上記上限値以下であると、水から生成するジオールの生成量が抑制される。その結果、最終的に上記ジオールに(メタ)アクリロイルオキシ基が付加した副生成物の生成量が抑制され、上記副生成物とモノマーBを含む生成物Bの平均官能基数の上限を1.2以下に調整しやすい。
【0036】
化合物3bは、市販品を用いることができる。化合物3bの市販品の具体例は、カレンズ-AOI(式3bにおけるR11=H、b=1)及びカレンズ-MOI(式3bにおけるR11=CH、b=1)(いずれも、昭和電工社製品名)である。
モノマーB-1の製造工程においては、生成物(以下「生成物B-1」ともいう。)中に、モノマーB-1以外の副生成物が混在する場合がある。
化合物3aと化合物3bとの反応はウレタン化反応であり、公知の手法を用いて行うことができる。
化合物3aと化合物3bとを反応させる際の、化合物3aに対する、化合物3bの配合比は、インデックス(NCO/OH比)で80~100が好ましく、90~100がより好ましく、100が最も好ましい。インデックスが上記範囲内であると、生成物B-1の平均官能基数を0.8~1.2の範囲内に調整しやすい。
【0037】
生成物B-1の全質量に対するモノマーB-1の割合は、80質量%以上が好ましく、85~100質量%がより好ましい。生成物B-1の全質量に対するモノマーB-1の割合が80質量%以上であると、生成物B-1がモノマーB-1の機能を充分に発揮できるため、生成物BをモノマーBとみなすことができる。
【0038】
生成物B-1をモノマーB-1とみなすことができる場合には、生成物B-1のMn及び官能基数から求めた生成物B-1の平均官能基数は、モノマーB-1の平均官能基数とみなすことができる。この場合の生成物B-1の平均官能基数は、0.8~1.3が好ましく、0.9~1.2がより好ましい。生成物B-1の平均官能基数が上記範囲内であると、本発明の硬化性組成物の硬化時の収縮が低減されやすく、本発明の硬化物の弾性率が低減されやすい。
【0039】
モノマーB-1は、化合物3であって、かつ1分子中に存在するR12の全量に対してプロピレン基を50~100モル%含むモノマーB-1-POを含むことが好ましい。
【0040】
モノマーB-1-POにおいて、R12の全量に対するプロピレン基の割合は、80~100モル%がより好ましく、100モル%が特に好ましい。1分子中に存在するR12のうち、プロピレン基以外のアルキレン基はエチレン基であることが好ましい。
【0041】
モノマーB-1-POを用いる場合、モノマーBの全量に対する、モノマーB-1-POの割合は、50~100質量%が好ましく、80~100質量%がより好ましい。モノマーBの全量に対する、モノマーB-1-POの割合が上記範囲の下限値以上であると、本発明の硬化性組成物がより低粘度であり、本発明の硬化物がより柔軟性に優れる。
【0042】
(モノマーB-2)
モノマーB-2は、ポリオキシアルキレンモノオールと、ジイソシアネートと、イソシアネート基と反応する基及び(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物との、等モル反応生成物である。
モノマーB-2におけるポリオキシアルキレンモノオールは、上述したモノマーB-1におけるポリオキシアルキレンモノオールと同様である。
イソシアネート基と反応する基及び(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物におけるイソシアネート基と反応する基の例は、水酸基、及び水素原子が結合した窒素原子を有するアミノ基等である。上記イソシアネート基と反応する基における水酸基の数又は窒素原子に結合した水素原子の数は、1個が好ましい。上記イソシアネート基と反応する基としては、脂肪族炭化水素基又は脂環式炭化水素基に結合した水酸基が好ましい。
上記イソシアネート基と反応する基及び(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物の例は、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート及びヒドロキシシクロアルキル(メタ)アクリレートネートである。上記イソシアネート基と反応する基及び(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物としては、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート又はヒドロキシシクロアルキル(メタ)アクリレートネートが好ましく、ヒドロキシアルキル基の炭素数が8以下のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが特に好ましい。ヒドロキシアルキル基の炭素数が8以下のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの具体例は、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート及び6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレートである。
上記イソシアネート基と反応する基及び(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物の市販品としては、ライトエステルHO-250(N)、ライトエステルHOP(N)、ライトエステルHOA(N)、ライトエステルHOP-A(N)及びライトエステルHOB(N)(いずれも、共栄化学社製品名)、並びに4-HBA(大阪有機化学工業社製品名)が挙げられる。
モノマーB-2のMnの好ましい範囲は、上記モノマーBと同様である。
モノマーB-2は、後述の化合物4が好ましい。
モノマーB-2は、化合物4aと、化合物4bとを反応させて末端にイソシアネート基を有するプレポリマー(イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー)を得た後、上記プレポリマーのイソシアネート基に化合物4cを反応させて得られる化合物4が好ましい。
【0043】
【化4】
【0044】
【化5】
【0045】
式4、4a、4b及び4cにおいて:
21は、水素原子又はメチル基であり、水素原子が好ましい。
22は、炭素数2~4のアルキレン基であり、1分子中に存在する複数のR22は互いに同じであっても異なってもよい。1分子中に2種以上のR22が存在する場合、-OR22-の連鎖はブロックでもよくランダムでもよい。R22はエチレン基及び/又はプロピレン基であることが好ましい。
23は、炭素数1~20のアルキル基、又はR23と結合する酸素原子とともに炭素数1~20のカルボン酸残基を示す。上記カルボン酸残基は、カルボキシ基中の炭素原子を含む炭素数が1~20であるモノカルボン酸からカルボキシ基中の水素原子を1個除いた1価基である。R23は、反応が容易な点で炭素数1~20のアルキル基が好ましく、炭素数2~8のアルキル基が好ましい。
【0046】
24は、化合物4bからイソシアネート基を除いた2価の基である。化合物4bとしては、例えば、イソシアネート基を2個有する化合物が挙げられ、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートが好ましい。
dは、1~8の整数であり、1~4の整数が好ましい。
eは、20~600の整数であり、35~500の整数が好ましく、65~250の整数がより好ましい。
【0047】
化合物4aはポリオキシアルキレンモノオールである。化合物4aは、アルコール又はアルコールにアルキレンオキシドを付加した化合物を開始剤としてアルキレンオキシドを開環重合させる公知の方法、又はモノカルボン酸のカルボキシ基にアルキレンオキシドを開環重合させる公知の方法により得られる。
化合物4aの水酸基価は2.3mgKOH/g以上56.1mgKOH/g未満が好ましく、3~14mgKOH/gがより好ましい。
化合物4aの水酸基換算分子量は1,000超25,000以下が好ましく、4,000~15,000がより好ましい。化合物4aの水酸基換算分子量が上記範囲内であると、モノマーB-2のMnを5,000~25,000の範囲内に調整できる。
【0048】
化合物4aを製造する場合の水分量及び分子量は、化合物3aを製造する場合と同様である。化合物4aを製造する場合においても、化合物3aを製造する場合と同様に、原料に含まれる水から生成するジオールに(メタ)アクリロイルオキシ基が付加した副生成物とモノマーB-2を含む生成物(以下「生成物B-2」ともいう。)が得られる場合がある。
【0049】
化合物4aと化合物4bとを反応させて、末端にイソシアネート基を有するプレポリマー(イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー)を得る反応はウレタン化反応であり、公知の手法を用いて行うことができる。
化合物4aと化合物4bとを反応させる際の、化合物4aに対する、化合物4bの配合比は、インデックス(NCO/OH比)で100~200が好ましく、180~200がより好ましく、200が最も好ましい。
【0050】
インデックスを上記範囲内とすることで、生成物B-2の平均官能基数を0.8~1.3の範囲内に調整できる。
【0051】
上記イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーと化合物4cとの反応はウレタン化反応であり、公知の手法を用いて行うことができる。
【0052】
上記イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーと化合物4cとを反応させる際の、上記イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーと化合物4cの配合比は、上記イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー中のイソシアネート基のモル数:化合物4c中の水酸基のモル数で、1:1.0~1.1が好ましく、1:1.0~1.05がより好ましい。上記配合比が上記範囲内であると、生成物B-2の平均官能基数を0.8~1.2の範囲に調整しやすい。
生成物B-2の全質量に対するモノマーB-2の割合は、80質量%以上が好ましく、85~100質量%がより好ましい。生成物B-2の全質量に対するモノマーB-2の割合が80質量%以上であると、生成物B-2がモノマーB-2としての機能を充分に発揮できるため、生成物B-2をモノマーB-2とみなすことができる。
【0053】
生成物B-2をモノマーB-2とみなすことができる場合には、生成物B-2のMn及び官能基数から求めた平均官能基数は、モノマーB-2の平均官能基数とみなすことができる。この場合の生成物B-2の平均官能基数は、0.8~1.3が好ましく、0.9~1.2がより好ましい。生成物B-2の平均官能基数が上記範囲内であると、本発明の硬化性組成物の硬化時の収縮が低減されやすく、本発明の硬化物の弾性率が低減されやすい。
【0054】
モノマーB-2は、化合物4であって、かつ1分子中に存在するR22の全量に対してプロピレン基を50~100モル%含むモノマーB-2-POを含むことが好ましい。
【0055】
モノマーB-2-POにおいて、R22の全量に対するプロピレン基の割合は、80~100モル%がより好ましく、100モル%が特に好ましい。1分子中に存在するR22のうち、プロピレン基以外のアルキレン基はエチレン基であることが好ましい。
【0056】
モノマーB-2-POを用いる場合、モノマーBの全量に対する、モノマーB-2-POの割合は、50~100質量%が好ましく、80~100質量%がより好ましい。モノマーBの全量に対する、モノマーB-2-POの割合が上記範囲の下限値以上であると、本発明の硬化性組成物がより低粘度であり、本発明の硬化物がより柔軟性に優れる。
【0057】
(モノマーB-3)
モノマーB-3は、ポリオキシアルキレンポリオールと、イソシアネート基及び(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物との等モル反応生成物である。
上記ポリオキシアルキレンポリオールは、2個以上の活性水素を有する開始剤に、アルキレンオキシドを開環重合させて得られる化合物である。上記ポリオキシアルキレンポリオールは、開始剤残基、ポリオキシアルキレン鎖及び開始剤の活性水素の数に対応する水酸基を有する。
上記アルキレンオキシドは、炭素数2~4のアルキレンオキシドが好ましい。上記アルキレンオキシドの具体例は、プロピレンオキシド、エチレンオキシド、1,2-ブチレンオキシド及び2,3-ブチレンオキシドである。
上記2個以上の活性水素を有する開始剤は活性水素含有基を有する。上記活性水素含有基の例は、水酸基、カルボキシ基、及び窒素原子に結合した水素原子を有するアミノ基である。上記活性水素含有基としては、水酸基が好ましく、アルコール性水酸基がより好ましい。
上記2個以上の活性水素を有する開始剤の例は、多価アルコール、多価フェノール、多価カルボン酸、及び窒素原子に結合した水素原子を2個以上有するアミン化合物である。上記2個以上の活性水素を有する開始剤としては、水酸基を2個以上有する化合物が好ましく、2価脂肪族アルコールがより好ましい。上記2個以上の活性水素を有する開始剤としては、目的のポリオキシアルキレンポリオールよりも低分子量のポリオキシアルキレンポリオール(以下「低分子量ポリオキシアルキレンポリオール」ともいう。)を使用してもよい。
上記2価脂肪族アルコールの炭素数は、2~8が好ましい。
上記2価脂肪族アルコールの具体例は、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングルコール等のポリプロピレングリコール、及び1,4-ブタンジオールである。
【0058】
上記ポリオキシアルキレンポリオールの中のオキシアルキレン基としては、オキシプロピレン基のみからなるか又はオキシプロピレン基とそれ以外の基との組合せからなることが好ましく、オキシプロピレン基以外のオキシアルキレン基としてはオキシエチレン基が好ましい。上記ポリオキシアルキレンポリオール中の全オキシアルキレン基に対するオキシプロピレン基の割合は、50~100質量%が好ましく、80~100質量%がより好ましい。開始剤として上記低分子量ポリオキシアルキレンポリオールを使用する場合、上記低分子量ポリオキシアルキレンポリオール中のオキシアルキレン基は、得られるポリオキシアルキレンポリオール中のオキシアルキレン基とみなす。
【0059】
低水酸基価の(すなわち、高分子量の)ポリオキシアルキレンポリオールは、複合金属シアン化物錯体触媒の存在下に、開始剤に炭素数3以上のアルキレンオキシド(特にプロピレンオキシド)を開環重合させて製造できる。上記低水酸基価のポリオキシアルキレンポリオールとしては、水酸基価40mgKOH/g以下のポリオキシアルキレンポリオールが挙げられる。
オキシエチレン基を有する低水酸基価のポリオキシアルキレンポリオールは、オキシエチレン基を有する高水酸基価(50mgKOH/g以上が好ましい)のポリオキシアルキレンポリオールを開始剤とし、複合金属シアン化物錯体触媒の存在下に、炭素数3以上のアルキレンオキシド(特にプロピレンオキシド)を開環重合させて製造できる。
高水酸基価のポリオキシアルキレンポリオールは、KOH等のアルカリ触媒の存在下に、開始剤に炭素数3以上のアルキレンオキシドを開環重合させて製造できる。
【0060】
モノマーB-3の製造に用いられるポリオキシアルキレンポリオールは、2種以上のポリオキシアルキレンポリオールの混合物であってもよい。この場合、各々のポリオキシアルキレンポリオールは、上記範疇に含まれるポリオキシアルキレンポリオールが好ましく、上記範疇に含まれるポリオキシアルキレンジオールがより好ましい。
モノマーB-3の製造に用いられるイソシアネート基及び(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物は、モノマーB-1の製造に用いられるイソシアネート基及び(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物と同様のものを用いることができる。
モノマーB-3のMnの好ましい範囲は、上記モノマーBと同様である。
モノマーB-3としては、式(V)で表される化合物が好ましい。
32-NH-C(=O)-Z ・・・(V)
式(V)において:
32は、(メタ)アクリロイルオキシ基を1個有する1価の有機基を表す。
Zは、ポリオキシアルキレンポリオールにおける水酸基の1個から、水素原子の1個を除いたポリオキシアルキレンポリオールの残基である。
【0061】
モノマーB-3は、化合物5aと、化合物3bとを反応させて得られる、官能基数が1のオリゴマーがより好ましい。
【0062】
【化6】
【0063】
式5aにおいて:
32は、炭素数2~8のアルキレン基であり、1分子中に存在する複数のR32は互いに同じであっても異なってもよい。1分子中に2種以上のR32が存在する場合、-OR32-の連鎖はブロックでもよくランダムでもよい。R32はエチレン基及び/又はプロピレン基であることが好ましい。R32の全量に対するプロピレン基の割合は50~100モル%が好ましく、80~100モル%がより好ましい。1分子中に存在するR32のうち、プロピレン基以外のアルキレン基がエチレン基であることが好ましい。
【0064】
fは、20~600の整数であり、35~500の整数が好ましく、65~250の整数がより好ましい。fが20~600の整数であると、モノマーB-3のMnを5,000~25,000の範囲内に調整できる。
【0065】
化合物5aと化合物3bとの反応はウレタン化反応であり、公知の手法を用いて行うことができる。
化合物5aと化合物3bとの反応においては、化合物5aの両末端の水酸基が化合物3bと反応し得るため、官能基数が1であるオリゴマーの他に、副生成物として、官能基数が2であるオリゴマーを含む生成物(以下「生成物B-3)ともいう。)が得られる場合がある。
生成物B-3の平均官能基数は0.8~1.3が好ましく、0.9~1.2がより好ましい。
【0066】
化合物5aと化合物3bとを反応させる際の、化合物5aに対する、化合物3bの配合比は、インデックス(NCO/OH比)で30~50が好ましく、40~50がより好ましく、50が最も好ましい。インデックスが上記範囲内であると、化合物5aの1分子に化合物3bの1分子が反応した化合物が得られやすく、生成物B-3の平均官能基数を0.8~1.2の範囲内に調整しやすい。
【0067】
生成物B-3の全質量に対するモノマーB-3の割合は、80質量%以上が好ましく、85~100質量%がより好ましい。生成物B-3の全質量に対するモノマーB-3の割合が80質量%以上であると、生成物B-3がモノマーB-3としての機能を充分に発揮できるため、生成物B-3をモノマーB-3とみなすことができる。
【0068】
生成物B-3をモノマーB-3とみなすことができる場合には、生成物B-3のMn及び官能基数から求めた平均官能基数は、モノマーB-3の平均官能基数とみなすことができる。この場合の生成物B-3の平均官能基数は、0.8~1.3が好ましく、0.9~1.2がより好ましい。生成物B-3の平均官能基数が上記範囲内であると、本発明の硬化性組成物の硬化時の収縮が低減されやすく、本発明の硬化物の弾性率が低減されやすい。
【0069】
<ポリマーX>
ポリマーXの全構成単位に対するポリマーBに基づく単位の割合は、0.1~50質量%であり、5~45質量%が好ましく、10~40質量%がより好ましく、15~40質量%がさらに好ましい。ポリマーXの全構成単位に対するポリマーBに基づく単位の割合が上記範囲の下限値以上であると、本発明の硬化物の低温での曲げ耐久性が向上する。ポリマーXの全構成単位に対するポリマーBに基づく単位の割合が上記範囲の上限値以下であると、本発明の硬化性組成物の粘度が低く、塗工性がより優れる。
【0070】
ポリマーXは、モノマーAに基づく単位及びモノマーBに基づく単位の他に、その他の単量体に基づく単位を含んでもよい。
上記その他の単量体は、モノマーA及びモノマーBと共重合可能であればよい。ポリマーXの全構成単位に対する、モノマーAに基づく単位及びモノマーBに基づく単位の合計の割合は、70質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、100質量%であってもよい。
【0071】
ポリマーXは、モノマーA及びモノマーBを含む単量体混合物を共重合させて得られる。共重合方法は、(メタ)アクリロイルオキシ基を有する単量体を、ラジカル重合開始剤を用いて重合させる公知の方法を適用できる。重合方法としては、例えば、溶液重合法、懸濁重合法、塊状重合法及び乳化重合法等の公知の重合方法を適用できる。
【0072】
ポリマーXのMwは、200,000超2,000,000以下が好ましく、240,000~1,600,000がより好ましく、280,000~1,200,000がさらに好ましく、280,000~960,000がいっそう好ましい。ポリマーXのMwが上記範囲の下限値以上であると、本発明の硬化物のクリープ回復率及びカール残存率がより良好となりやすい。ポリマーXのMwが上記範囲の上限値以下であると、本発明の硬化性組成物がより低粘度となりやすく、良好な塗工性が得られやすい。
本発明の硬化性組成物がポリマーXを2種以上含む場合は、その2種以上のポリマーXのMwのそれぞれが上記範囲内であることが好ましい。
ポリマーXのMnは、25,000~1,000,000が好ましく、30,000~500,000がより好ましく、35,000~200,000がさらに好ましく、35,000~120,000がいっそう好ましい。ポリマーXのMnが上記範囲の下限値以上であると、本発明の硬化物のクリープ回復率及びカール残存率がより良好となりやすい。ポリマーXのMnが上記範囲の上限値以下であると、本発明の硬化性組成物がより低粘度となりやすく、良好な塗工性が得られやすい。
本発明の硬化性組成物がポリマーXを2種以上含む場合は、その2種以上のポリマーXのMnのそれぞれが上記範囲内であることが好ましい。
ポリマーXのMw/Mnは、2.0~8.0が好ましく、2.1~7.8がより好ましく、2.2~7.5がさらに好ましい。ポリマーXのMw/Mnが上記範囲の下限値以上であると、本発明の硬化物の粘着力がより良好となりやすい。ポリマーXのMw/Mnが上記範囲の上限値以下であると、本発明の硬化物のクリープ回復率がより良好となりやすい。
本発明の硬化性組成物がポリマーXを2種以上含む場合は、その2種以上のポリマーXのMw/Mnのそれぞれが上記範囲内であることが好ましい。
【0073】
ポリマーXのガラス転移温度は、-80~-40℃が好ましく、-75~-45℃がより好ましく、-75~―60℃がさらに好ましい。ポリマーXのガラス転移温度が上記範囲内であると、本発明の硬化物は低温での曲げ試験で剥がれが発生しにくい。
本発明の硬化性組成物がポリマーXを2種以上含む場合は、その2種以上のポリマーXのガラス転移温度のそれぞれが上記範囲内であることが好ましい。
【0074】
本発明の硬化性組成物はポリマーXを含むので、硬化した際、温度による物性変化が小さい硬化物が得られる。この硬化物を積層体の粘着層として用いることにより、積層体の折曲げ耐久性及び形状回復性を向上できる。
【0075】
[硬化性組成物]
本発明の硬化性組成物は、ポリマーXを含む。
本発明の硬化性組成物は、ポリマーXの他に、必要に応じて架橋剤、光重合開始剤及び他の成分を含んでもよい。
【0076】
<架橋剤>
本発明の硬化性組成物は、架橋剤を含むことが好ましい。上記架橋剤は、架橋性官能基を2個以上有する化合物である。本発明の硬化性組成物に上記架橋剤を配合すると、本発明の硬化物の耐熱性をより向上しやすい。
上記架橋性官能基は、(メタ)アクリロイル基、エポキシ基、イソシアネー卜基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、カルボジイミド基、オキサゾリン基、アジリジン基、ビニル基、アミノ基、イミノ基及びアミド基からなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
上記架橋剤の1分子中の上記架橋性官能基の数は、2~4個が好ましく、2個又は3個がより好ましく、2個がさらに好ましい。
上記架橋性官能基は、脱保護可能な保護基で保護されていてもよい。
【0077】
上記架橋剤としては、多官能(メタ)アクリレート及び多官能イソシアネート化合物が好ましい。上記多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、国際公開第2018/173896号の[0136]に記載された多官能(メタ)アクリレートが挙げられる。上記多官能イソシアネート化合物としては、例えば、日本国特許第6375467号公報の[0062]に記載された化合物が挙げられる。
上記架橋剤は、多官能(メタ)アクリレートがより好ましく、本発明の硬化物のクリープ回復率が向上しやすい点で、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート及びトリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレートからなる群から選択される少なくとも1種がさらに好ましい。
上記架橋剤は2種以上を併用してもよい。
【0078】
上記架橋剤の使用量は、ポリマーXの100質量部に対して、0.3~5質量部が好ましく、0.5~2質量部がさらに好ましい。上記架橋剤の使用量が上記範囲の下限値以上であると、本発明の硬化物の耐熱性が良好となりやすい。上記架橋剤の使用量が上記範囲の上限値以下であると、本発明の硬化物のクリープ回復率が向上しやすい。
【0079】
<光重合開始剤>
本発明の硬化性組成物は、光硬化性樹脂組成物であってもよく、熱硬化性樹脂組成物であってもよい。低温で硬化でき、かつ硬化速度が速い点から、本発明の硬化性組成物は光硬化性樹脂組成物が好ましい。
本発明の硬化性組成物が光硬化性樹脂組成物である場合、本発明の硬化性組成物は、光重合開始剤を含有することが好ましい。本発明の硬化性組成物はが光硬化性樹脂組成物であれば、例えば、表示装置の製造に用いたときに、高い温度を必要としないことから、高温による表示デバイスの損傷のおそれも少ない。
【0080】
上記光重合開始剤は、上記架橋剤の架橋反応における反応開始助剤としての機能を果たす。上記光重合開始剤としては、波長380nm以下の紫外線に感応する光重合開始剤が、架橋反応の制御のしやすさの点から好ましい。
上記光重合開始剤の具体例は、国際公開第2018/173896号の[0147]~[0151]に記載された光重合開始剤である。
上記光重合開始剤としては、光励起した開始剤と系中の水素供与体とが励起錯体を形成し、水素供与体の水素を転移させる水素引抜型光重合開始剤が好ましい。上記水素引抜型光重合開始剤の具体例は、ベンゾフェノン、4-メチルベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾフェノン、4-フェニルベンゾフェノン、3,3’-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン、4-(メタ)アクリロイルオキシベンゾフェノン、4-[2-((メタ)アクリロイルオキシ)エトキシ]ベンゾフェノン、4-(メタ)アクリロイルオキシ-4’-メトキシベンゾフェノン、2-ベンゾイル安息香酸メチル及びベンゾイルギ酸メチルである。
上記光重合開始剤は2種以上を併用してもよい。
【0081】
上記光重合開始剤の使用量は、上記架橋剤の100質量部に対して0.1~10質量部が好ましく、0.2~5質量部がより好ましい。上記光重合開始剤の使用量が上記範囲内であると、本発明の硬化性組成物は活性エネルギー線に対する適度な反応感度が得られやすい。
【0082】
<その他の成分>
本発明の硬化性組成物は、ポリマーX、上記架橋剤及び上記光重合開始剤以外の他の成分として、必要に応じて従来公知の成分を含んでもよい。
上記その他の成分の例は、シランカップリング剤、粘着付与樹脂、酸化防止剤、光安定化剤、金属不活性化剤、防錆剤、老化防止剤、吸湿剤、加水分解防止剤、帯電防止剤、消泡剤及び無機粒子である。
本発明の硬化性組成物は、必要に応じて、反応触媒(三級アミン系化合物、四級アンモニウム系化合物又はラウリル酸スズ化合物等)を含んでもよい。
本発明の硬化性組成物は、必要に応じて、溶媒を含んでもよい。
【0083】
本発明の硬化性組成物は、ポリマーX、必要に応じた架橋剤、光重合開始剤及びその他の成分の混合物を硬化させて目的の硬化物を得る。
本発明の硬化性組成物中のポリマーXは、1種でもよいし、2種以上でもよい。
本発明の硬化性組成物を調製する際の各成分の混合順序は特に限定されない。各成分を混合した後に紫外線を照射してもよいし、熱処理してもよい。
本発明の硬化性組成物が含む各成分は、予め混合してもよく、硬化させる直前に混合してもよい。例えば、光重合開始剤以外の成分を予め混合した予備混合物に、硬化させる直前に光重合開始剤を添加してもよい。
本発明の硬化性組成物は、溶剤を含まなくても使用できる。本発明の硬化性組成物は、必要に応じて溶剤を含んでもよい。本発明の硬化性組成物が溶剤を含む場合、硬化時又は硬化後に上記溶媒を除去することが好ましい。
【0084】
硬化性組成物に対する、本発明の重合体の合計の割合は80質量%以上が好ましく、85%以上がより好ましく、90%以上がさらに好ましい。
【0085】
[硬化物]
本発明の硬化物は、本発明の硬化性組成物の硬化物である。
本発明の硬化物は、例えば、本発明の硬化性組成物を所望の形状に成形し、紫外線を照射して硬化させることにより得られる。
本発明の硬化性組成物を所望の形状に成形する方法としては、例えば、基材上に塗布する方法、押出成形する方法及び型に注入する方法が挙げられる。
本発明の硬化性組成物を光硬化させる際の紫外線の照射量は、0.1~5J/cmが好ましく、0.3~4J/cmがより好ましく、0.5~3J/cmがさらに好ましい。上記照射量が上記範囲の下限値以上であると、本発明の硬化物の耐熱性及びクリープ回復率がより良好となる。上記照射量が上記範囲の上限値以下であると、本発明の硬化物がより着色しにくい。
【0086】
本発明の硬化物のガラス転移温度は、-35℃以下が好ましく、-37℃以下がより好ましく、-38℃以下がさらに好ましく、-40℃以下が特に好ましい。本発明の硬化物のガラス転移温度が上記範囲の上限値以下であると、本発明の硬化物の低温での曲げ耐久性がより優れる。本発明の硬化物のガラス転移温度は、-80℃以上が好ましく、-70℃以上がより好ましく、-60℃以上がさらに好ましい。例えば、硬化物のガラス転移温度は、-80℃~-35℃が好ましく、-70℃~-37℃がより好ましく、-60℃~-38℃がさらに好ましく、-60℃~-40℃が特に好ましい。本発明の硬化物のガラス転移温度が上記範囲の下限値以上であると、本発明の硬化物の残存カール率が良好になりやすい。本発明の硬化物のガラス転移温度は、本発明の硬化物の動的粘弾性のtanδピーク温度である。
【0087】
本発明の硬化物の、80℃における貯蔵弾性率E’(80℃)(kPa)に対する-20℃における貯蔵弾性率E’(-20℃)(kPa)の比を表す「E’(-20℃)/E’(80℃)」は、1.5~4が好ましく、1.6~3.9がより好ましく、1.8~3.8がさらに好ましい。本発明の硬化物の「E’(-20℃)/E’(80℃)」が1.5~4の範囲内であると、本発明の硬化物の弾性率の温度による変化が少なく、柔軟性を維持しやすく、積層体の粘着シートに用いた際に、積層体の折曲げ耐久性及び形状回復性をより向上できる。
【0088】
[粘着シート]
本発明の粘着シートは、本発明の硬化物からなる粘着層を含む。
本発明の硬化物は、粘着層として使用できる。本発明の粘着シートは、本発明の硬化物からなるシート状の粘着層を有する。本発明の粘着シートでは、上記粘着層の両面に接するように離型フィルムを設けることが好ましい。上記離型フィルムとしては、公知の離型フィルムを用いることができる。
本発明の粘着シートは、例えば、第1の離型フィルム上に本発明の硬化性組成物を塗布して硬化させた後、その上に第2の離型フィルムを積層する方法で製造できる。
また、本発明の粘着シートは、第1の離型フィルム上に本発明の硬化性組成物を塗布し、その上に第2の離型フィルムを積層した後、硬化させる方法でも製造できる。
【0089】
本発明の粘着シートにおいて、上記粘着層の厚さは、10~150μmが好ましく、20~120μmがより好ましく、25~100μmがさらに好ましい。上記粘着層の厚さが上記範囲の下限値以上であると、上記粘着層が平滑になりやすく、上記範囲の上限値以下であると、本発明の粘着シートの繰返し曲げ耐久性がより優れる。
【0090】
[積層体]
本発明の積層体は、本発明の硬化物からなる粘着層と、その粘着層を介して積層したフレキシブル部材とを備える。
上記フレキシブル部材として、フレキシブルディスプレイパネルを構成する部材が例示できる。上記フレキシブル部材は、例えば、表面保護パネル、光学フィルム、タッチパネル及び表示パネル本体からなる群から選択される少なくとも1つである。
上記表面保護パネルの例としては、薄板状のカバーガラス及びカバーフィルムが挙げられる。
上記光学フィルムは光学機能を有する部材であり、例えば、偏光フィルム、位相差フィルム、光学フィルタ、反射防止フィルム、近赤外線カットフィルム及び電磁波シールドフィルムが挙げられる。
上記タッチパネルは、例えば、薄板状のガラス基材又はプラスチック基材に、タッチセンサーが搭載された構成を有する。
上記表示パネル本体としては、例えば、有機ELディスプレイパネルが挙げられる。
【0091】
本発明の積層体は、フレキシブルであり、静置した状態で湾曲している形状に固定しても破損しない性状(Bendable)、屈曲半径3mm以上に折り曲げ又は丸めても形状が回復する性状(Rollable)、及び屈曲半径3mm未満に折り畳んでも形状が回復する性状(Foldable)のうち1つ以上を有することが好ましい。
【0092】
本発明の積層体において、上記粘着層の厚さは10~150μmが好ましく、20~120μmがより好ましく、25~100μmがさらに好ましい。上記粘着層の厚さが上記範囲の下限値以上であると、上記粘着層が平滑になりやすく、上記範囲の上限値以下であると、本発明の積層体の繰返し曲げ耐久性がより優れる。
【0093】
[フレキシブルディスプレイ]
本発明のフレキシブルディスプレイは、本発明の積層体を含む。
本発明の硬化性組成物は、ポリマーXを含むことにより、後述の実施例に示されるように、硬化物の弾性率を低下し、弾性率の温度による変化を低下し、ガラス転移温度を低下できる。このため、例えば、フレキシブルディスプレイを構成する部材間の粘着層に用いた場合でも、折曲げ耐久性及び形状回復性を両立できる。
フレキシブルディスプレイとして、特に、表示画面を折り畳める構造を有する、フォルダブルディスプレイが好適である。
【実施例
【0094】
以下に、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。
[測定方法・評価方法]
<分子量の測定>
質量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)及び分子量分布(Mw/Mn)は、以下の条件で、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)により測定した。
・分析装置:HLC-8120GPC(東ソー社製品名)
・カラム:G7000HXL+GMHXL+GMHXL(東ソー社製品名)
・カラムサイズ:各7.8mmφ×30cm、計90cm
・カラム温度:40℃
・流量:0.8mL/min
・注入量:100μL
・溶離液:テトラヒドロフラン
・検出器:示差屈折計(RI)
・標準試料:ポリスチレン
【0095】
<重合体Aのガラス転移温度の測定>
各例で得られた重合体Aについて、示差走査熱量計(EXSTAR 6000 DSC 6200,セイコーインスツル社製品名)を用いて、サンプル量約10mg、昇温速度10℃/分、温度範囲-80~25℃の条件でガラス転移温度を測定した。
【0096】
<硬化物の貯蔵弾性率、ガラス転移温度の測定>
各例で作製した硬化性組成物を、幅5mm×長さ15mm×厚さ2mmのシリコーン型に流し込み、窒素環境下でコンベヤ型UV照射機(ORC社製)を用い、HgXeランプ、照度100mW/cm、積算光量1J/cmの条件下で硬化させた。得られた硬化物を試験サンプルとした。
試験サンプルについて、動的粘弾性測定装置(EXSTAR 6000 DMS 6100,セイコーインスツル社製品名)を用いて、引張モードで、-80℃~130℃の温度範囲において、昇温速度3℃/min、測定周波数1Hz、歪み1%の条件下における貯蔵弾性率E’(kPa)を測定した。また、測定で得られたtanδが最大値を示す温度(tanδピーク温度)をガラス転移温度とした。
測定結果として、-20℃、25℃及び80℃における貯蔵弾性率E’、ガラス転移温度、並びに80℃におけるE’に対する-20℃におけるE’の比を表す「E’(-20℃)/E’(80℃)」を表に示す。
【0097】
<積層体の折曲げ耐久性及び形状回復性の評価方法>
以下のフィルムを使用した。
・シリコーン処理PET:シリコーン処理(剥離処理)を施した厚さ75μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(SP-PET-01-75BU,三井化学東セロ社製品名)。
・カプトンフィルム:200EN(厚さ50μm;東レデュポン社製品名)。
・コロナ処理PET:ルミラーS10(厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム;東レ社製品名)にコロナ処理加工を施したもの。
【0098】
(繰返し曲げ試験)
各例の硬化性組成物を、シリコーン処理PETのシリコーン処理面に、硬化後の粘着層の厚さが25μmになるように、ドクターブレードをセットした自動塗工機(PI1210,テスター産業社製品名)を用いて塗布した。次いで、窒素環境下でコンベヤ型UV照射機(ORC社製)を用い、HgXeランプ、照度100mW/cm、積算光量1J/cmの条件下で硬化させて粘着層を形成した。粘着層側を、カプトンフィルムに貼り合わせた。次いで、シリコーン処理PETを剥がしたのち、現れた粘着層に、コロナ処理PETのコロナ処理面を貼り合わせ、試験用積層体を作成した。
U字型面状曲げ試験機(DLDM111LH,ユアサシステム機器社製品名)を用いて、得られた試験用積層体を折り曲げる操作を繰り返した。具体的には、屈曲半径が1.5mmになるように、かつカプトンフィルム側が内側になるようにU字型に折り曲げ、次いで折り曲げた力を開放する操作(180°開放)を1回の操作として、1分あたり60回の速度で10万回繰り返した。試験後の試験用積層体の外観を目視で観察し、下記基準で評価した。
A:白化、剥がれ、浮き及びクラックのいずれも発生せず、外観上の変化が全くない。
B:白化、剥がれ、浮き及びクラックのうち1つ以上が発生したが、わずかであり実用上の問題はない。
C:白化、剥がれ、浮き及びクラックのうち1つ以上が著しく発生し、実用上問題がある。
【0099】
(静的曲げ試験)
繰返し曲げ試験と同様に作成した試験用積層体を、静的曲げ試験用サンプルとして用いた。当該試験用積層体は、幅50mm、長さ100mm、厚さ0.125mmであった。端面が曲面(屈曲半径1.5mm)に加工された厚さ3mmの板の外形に沿って、静的曲げ試験用サンプルを、カプトンフィルム側が内側になるように密着させてテープで固定した。-20℃又は室温(25℃)の条件下に20日間静置し、試験後の試験用積層体の外観を目視で観察し、繰返し曲げ試験と同じ基準で評価した。
【0100】
(カール試験、カール残存率)
繰返し曲げ試験と同様に作成した試験用積層体を、幅10mm、長さ50mmに切断してカール試験用サンプルとした。端面が曲面(屈曲半径2mm)に加工された厚さ4mmの板の外形に沿って、カール試験用サンプルの長さ方向の中心位置を折り曲げ、テープで固定し室温で1日放置した。次いで、板からカール試験用サンプルを取り外し、折り曲げた面が上になるように水平面上に置き、水平面から折り曲げ面までの高さh(mm)を測定した。下記式によりカール残存率(単位:%)を算出した。カール残存率が低いほど形状回復性に優れる。なお、試験中に剥がれが生じたものはNと表記した。
カール残存率(%)={h/25}×100
【0101】
(クリープ回復率)
図1Aに示すクリープ試験用サンプルを、繰返し曲げ試験と同様の手順で作製した。図中符号1はカプトンフィルム、2は粘着層、3はコロナ処理PETである。せん断方向(X方向)において、カプトンフィルム1及びコロナ処理PET3のそれぞれの長さは60mm、カプトンフィルム1の端部1aからコロナ処理PET3の端部3aまでの長さ(以下、X方向の全長という。)の初期値は110mmとした。粘着層2の厚さは25μmとした。X方向及び厚さ方向の両方に垂直な方向において、カプトンフィルム1及びコロナ処理PET3のそれぞれの幅は10mmとした。
図1Bに示すように、カプトンフィルム1の端部1aとコロナ処理PET3の端部3aを引張試験機にそれぞれ固定し、X方向の全長が初期値より300μm長くなるように、X方向に伸長した後、伸長した力を開放する操作を1回として、10回繰り返した後、1分静置した。静置後の残留歪量を光学顕微鏡(マイクロスコープVHX‐1000,KEYENCE社製品名)にて観察し、下記式によりクリープ回復率(単位:%)を算出した。クリープ回復率が高いほど形状回復性に優れる。
クリープ回復率(%)={(初期位置からのずれ幅(μm)-300μm)/300μm}×100
【0102】
[製造例1-1]
撹拌機及び窒素導入管を備えた耐圧反応容器に、亜鉛へキサシアノコバルテート-tert-ブチルアルコール錯体(以下「DMC-TBA触媒」ともいう。)の0.2g及びn-ブタノールの30gを加えて、130℃の窒素雰囲気とし、プロピレンオキシド(以下「PO」ともいう。)の3970gを一定の速度で7時間かけて投入した。次いで、耐圧反応容器の内圧の低下が止まったことを確認して生成物を抜き出し、水酸基価5.6mgKOH/g(水酸基換算分子量:10,000)のポリオキシアルキレンモノオール(モノオール1)の4,000gを得た。
【0103】
[製造例1-2]
n-ブタノールを21g、POを3979gとする他は製造例1-1と同様にして、水酸基価4.1mgKOH/g(水酸基換算分子量:13,680)のポリオキシアルキレンモノオール(モノオール2)の4000gを得た。
[製造例1-3]
撹拌機及び窒素導入管を備えた耐圧反応容器に、DMC-TBA触媒の0.5g及びn-ブタノールの74gを加えて、130℃の窒素雰囲気とし、POの7941gとエチレンオキシド(以下、EOという。)の1985gの混合液を一定の速度で15時間かけて投入した。次いで、耐圧反応容器の内圧の低下が止まったことを確認して生成物を抜き出し、水酸基価5.2mgKOH/g(水酸基換算分子量:10,790)のポリオキシアルキレンモノオール(モノオール3)の10000gを得た。モノオール3において、POとEOの合計に対するPOの割合は、約74モル%であった。
[製造例1-4]
DMC-TBAを0.25g、POを3743g、EOを1182gとする他は製造例1-3と同様にして、水酸基価11.8mgKOH/g(水酸基換算分子量:4,750)のポリオキシアルキレンモノオール(モノオール4)の5000gを得た。モノオール4において、POとEOの合計に対するPOの割合は、約71モル%であった。
【0104】
[製造例2-1]
イソシアネート化合物1として2-アクリロイルオキシエチルイソシアネート(カレンズ-AOI,昭和電工株式会社製品名:以下「AOI」ともいう。)を用いた。
撹拌機及び窒素導入管を備えた反応容器内に、モノオール1(平均水酸基数:1.08)の964.9g及び2-アクリロイルオキシエチルイソシアネートの13.1gを加えて、2-エチルヘキサン酸ビスマスの25%トルエン溶液0.08gの存在下、70℃で3時間撹拌し、モノマーB1を得た。モノオール1のOH基に対する2-アクリロイルオキシエチルイソシアネートのNCO基の比率(インデックス(NCO基の数/OH基の数))は100であった。生成物中のモノマーB1の割合は、84質量%であった。
得られたモノマーB1のMn、Mw/Mn、平均官能基数、ウレタン結合の割合、ガラス転移温度を表1に示す(以下、同様である。)。
【0105】
[製造例2-2]
製造例2-1において、モノオール1の代わりにモノオール2(平均水酸基数:1.11)の928.1g及びAOIの8.6gを用いたほかは同様にしてモノマーB2を得た。生成物中のモノマーB2の割合は80質量%であった。
[製造例2-3]
製造例2-1において、モノオール1の代わりにモノオール3(平均水酸基数:1.11)の500.2g及びAOIの6.6gを用いたほかは同様にしてモノマーB3を含む生成物を得た。生成物中のモノマーB3の割合は96質量%であった。
[製造例2-4]
製造例2-1において、モノオール1の代わりにモノオール4(平均水酸基数:1.11)の501.0g及びAOIの14.9gを用いたほかは同様にしてモノマーB4を含む生成物を得た。生成物中のモノマーB4の割合は89質量%であった。
【0106】
【表1】
【0107】
[製造例3-1]
撹拌機及び窒素導入管を備えた反応容器内に酢酸エチルの200gを加えて、70℃に維持した。次いで、アクリル酸ブチル(以下、BAという。分子量(式量)は128である。)の156.8g、アクリル酸(以下、AAという。分子量(式量)は86である。)の4.0g、アクリル酸2-エチルヘキシル(以下、2-EHAという。分子量(式量)は184である。)の39.2g及び2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(以下、V-65という)の0.2gの混合液を、70±2℃に維持した反応容器内に、2時間かけて一定速度で滴下した。滴下終了後、70±2℃で2時間維持した後、130℃で2時間減圧脱気し、酢酸エチル及び未反応モノマーを除去し、重合体1を得た。
得られた重合体1のMw、Mn、Mw/Mn、ガラス転移温度を表2に示す(以下、同様である。)。
【0108】
[製造例3-2]
撹拌機及び窒素導入管を備えた反応容器内に酢酸エチルの100gを加えて、70℃に維持した。次いで2-EHAの196g、AAの4.0g及びV-65の0.2gの混合液を、70±2℃に維持した反応容器内に、2時間かけて一定速度で滴下した。滴下終了後、70±2℃で2時間維持した後、130℃で2時間減圧脱気し、酢酸エチル及び未反応モノマーを除去し、重合体2を得た。
【0109】
[製造例3-3]
製造例3-1において、2-EHAの代わりに、製造例2-1で得たモノマーB1の39.2gを用いたほかは同様にして重合体3を得た。
【0110】
[製造例3-4]
製造例3-3において、BAの使用量を116.8g、モノマーB1の使用量を78.4gに変更したほかは同様にして重合体4を得た。
【0111】
[製造例3-5]
撹拌機及び窒素導入管を備えた反応容器内に酢酸エチルの500gを加えて、70℃に維持した。次いでBAの78.0g、AAの4.0g、2-EHAの78.0g、製造例2-1で得たモノマーB1の39.2g及びV-65の0.2gの混合液を、70±2℃に維持した反応容器内に、2時間かけて一定速度で滴下した。滴下終了後、70±2℃で2時間維持した後、130℃で2時間減圧脱気し、酢酸エチル及び未反応モノマーを除去し、重合体5を得た。
【0112】
[製造例3-6]
製造例3-1において、2-EHAの代わりに、製造例2-2で得たモノマーB2の39.2gを用いたほかは同様にして重合体6を得た。
[製造例3-7]
撹拌機及び窒素導入管を備えた反応容器内に酢酸エチルの400gを加えて、70℃に維持した。次いでBAの52.8g、2-EHAの92.0g、4-ヒドロキシブチルアクリレート(以下、「4-HBA」ともいう。分子量(式量)は144である。)の16.0g、製造例2-3で得たモノマーB3の39.2g及びV-65の0.2gの混合液を、70±2℃に維持した反応容器内に、2時間かけて一定速度で滴下した。滴下終了後、70±2℃で2時間維持した後、130℃で2時間減圧脱気し、酢酸エチル及び未反応モノマーを除去し、重合体7を得た。
【0113】
【表2】
【0114】
[例1~7]
例1及び2は比較例、例3~7は実施例である。
表3に示す配合(単位:質量部)で、遊星式攪拌機(EMC社製)を用いて全成分を混合し、硬化性組成物を製造した。表中の架橋剤1は1,9-ノナンジオールジアクリレート、光重合開始剤1は4-メチルベンゾフェノンである。
上記の測定方法及び評価方法で表に示す項目について、測定又は評価した。結果を表3に示す。
【0115】
【表3】
【0116】
表3の結果に示されるように、モノマーAに基づく単位とモノマーBに基づく単位を含む重合体を含有する、例3~例6の硬化性組成物は、硬化物のガラス転移温度が低く、弾性率が低く、積層体の折曲げ耐久性及び形状回復性の両方に優れる。また、同様にモノマーAに基づく単位とモノマーBに基づく単位を含む重合体を含有する、例7の硬化性組成物は、硬化物のガラス転移温度が低く、積層体の折曲げ耐久性及び形状回復性の両方に優れる。
【0117】
本願は、2019年2月5日に、日本に出願された特願2019-018958号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【符号の説明】
【0118】
1 カプトンフィルム
2 粘着層
3 コロナ処理PET
4 初期値からのずれ幅
図1A
図1B