(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】レジスト下層膜形成組成物
(51)【国際特許分類】
G03F 7/11 20060101AFI20240110BHJP
H01L 21/027 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
G03F7/11 502
G03F7/11 503
H01L21/30 573
(21)【出願番号】P 2021520736
(86)(22)【出願日】2020-05-14
(86)【国際出願番号】 JP2020019179
(87)【国際公開番号】W WO2020235427
(87)【国際公開日】2020-11-26
【審査請求日】2022-12-28
(31)【優先権主張番号】P 2019095886
(32)【優先日】2019-05-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】緒方 裕斗
(72)【発明者】
【氏名】広原 知忠
(72)【発明者】
【氏名】西巻 裕和
(72)【発明者】
【氏名】中島 誠
【審査官】塚田 剛士
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/052130(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/105648(WO,A1)
【文献】特開2018-173520(JP,A)
【文献】特開2014-174428(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/11
H01L 21/027
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(A)で表される化合物の少なくとも一種又は二種以上、下記式(B)で表される重合体の一種又は二種以上、及び溶剤を含むレジスト下層膜形成組成物。
【化1】
(式(A)中、Xは炭素原子数2~50のn価の有機基を表し、n個のYは、それぞれ独立に、少なくとも1つ以上のヒドロキシル基を有する炭素原子数6~60の芳香族炭化水素基を表し、nは1~4の整数を表す。)
【化2】
[式(B)中、R
1は水素原子又はメチル基を表し、R
2は下記式(B-1)~(B-3)から選ばれる少なくとも一つの基を表す。
【化3】
(式(B-1)~(B-3)中、*は隣接する酸素原子との結合手を表す。)]
【請求項2】
前記式(A)中のXが、1つ以上のベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、ピレン環又はそれらの組み合わせを含む、請求項1に記載のレジスト下層膜形成組成物。
【請求項3】
前記式(A)中のn個のYが、それぞれ独立に、少なくとも1つ以上のヒドロキシル基を有するベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環若しくはピレン環又はそれらの組み合わせを含む、請求項1に記載のレジスト下層膜形成組成物。
【請求項4】
前記式(A)中のnが2である、請求項1に記載のレジスト下層膜形成組成物。
【請求項5】
前記溶剤の沸点が、160℃以上である請求項1に記載のレジスト下層膜形成組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載のレジスト下層膜形成組成物からなる塗布膜の焼成物であることを特徴とするレジスト下層膜。
【請求項7】
半導体基板上に請求項1~5のいずれか1項に記載のレジスト下層膜形成組成物を用いてレジスト下層膜を形成する工程、
形成されたレジスト下層膜の上にレジスト膜を形成する工程、
形成されたレジスト膜に対する光又は電子線の照射と現像によりレジストパターンを形成する工程、
形成されたレジストパターンを介して前記レジスト下層膜をエッチングし、パターン化する工程、及び
パターン化されたレジスト下層膜を介して半導体基板を加工する工程
を含む半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高いエッチング耐性、良好なドライエッチング速度比及び光学定数を示し、いわゆる段差基板に対しても被覆性が良好で、埋め込み後の膜厚差が小さく、平坦な膜を形成し得るレジスト下層膜形成組成物、当該レジスト下層膜形成組成物を用いたレジスト下層膜、及び半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、多層レジストプロセス用のレジスト下層膜材料には、特に短波長の露光に対して反射防止膜として機能し、適当な光学定数を有すると共に、基板加工におけるエッチング耐性をも併せ持つことが求められており、ベンゼン環を含む繰返し単位を有する重合体の利用が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
レジストパターンの微細化に伴い求められるレジスト層の薄膜化のため、レジスト下層膜を少なくとも2層形成し、該レジスト下層膜をマスク材として使用する、リソグラフィープロセスが知られている。これは、半導体基板上に、少なくとも一層の有機膜(下層有機膜)と、少なくとも一層の無機下層膜とを設け、上層レジスト膜に形成したレジストパターンをマスクとして無機下層膜をパターニングし、該パターンをマスクとして下層有機膜のパターニングを行う方法であり、高アスペクト比のパターンを形成できるとされている。前記少なくとも2層を形成する材料として、有機樹脂(例えば、アクリル樹脂、ノボラック樹脂)と、無機系材料(ケイ素樹脂(例えば、オルガノポリシロキサン)、無機ケイ素化合物(例えば、SiON、SiO2)等)の組み合わせが挙げられる。さらに近年では、1つのパターンを得るために2回のリソグラフィーと2回のエッチングを行うダブルパターニング技術が広く適用されており、それぞれの工程にて上記の多層プロセスが用いられている。その際、最初のパターンが形成された後に成膜する有機膜には段差を平坦化する特性が必要とされている。
【0005】
しかしながら、被加工基板上に形成されたレジストパターンに高低差や疎密のあるいわゆる段差基板に対して、レジスト下層膜形成用組成物による被覆性が低く、埋め込み後の膜厚差が大きくなり、平坦な膜を形成しにくいという問題もある。
【0006】
本発明は、このような課題解決に基づいてなされたものであり、高いエッチング耐性、良好なドライエッチング速度比及び光学定数を示し、いわゆる段差基板に対しても被覆性が良好で、埋め込み後の膜厚差が小さく、平坦な膜を形成し得るレジスト下層膜形成組成物を提供することを目的とする。また本発明は、当該レジスト下層膜形成組成物を用いたレジスト下層膜、及び半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は以下を包含する。
[1] 下記式(A)で表される化合物の少なくとも一種又は二種以上、下記式(B)で表される重合体の一種又は二種以上、及び溶剤を含むレジスト下層膜形成組成物。
【化1】
(式(A)中、Xは炭素原子数2~50のn価の有機基を表し、n個のYは、それぞれ独立に、少なくとも1つ以上のヒドロキシル基を有する炭素原子数6~60の芳香族炭化水素基を表し、nは1~4の整数を表す。)
【化2】
[式(B)中、R
1は水素原子又はメチル基を表し、R
2は下記式(B-1)~(B-3)から選ばれる少なくとも一つの基を表す。
【化3】
(式(B-1)~(B-3)中、*は隣接する酸素原子との結合手を表す。)]
[2] 前記式(A)中のXが、1つ以上のベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、ピレン環又はそれらの組み合わせを含む、[1]に記載のレジスト下層膜形成組成物。
[3] 前記式(A)中のn個のYが、それぞれ独立に、少なくとも1つ以上のヒドロキシル基を有するベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環若しくはピレン環又はそれらの組み合わせを含む、[1]に記載のレジスト下層膜形成組成物。
[4] 前記式(A)中のnが2である、[1]に記載のレジスト下層膜形成組成物。
[5] 前記溶剤の沸点が、160℃以上である[1]に記載のレジスト下層膜形成組成物。
[6] [1]~[5]のいずれか1項に記載のレジスト下層膜形成組成物からなる塗布膜の焼成物であることを特徴とするレジスト下層膜。
[7] 半導体基板上に[1]~[5]のいずれか1項に記載のレジスト下層膜形成組成物を用いてレジスト下層膜を形成する工程、
形成されたレジスト下層膜の上にレジスト膜を形成する工程、
形成されたレジスト膜に対する光又は電子線の照射と現像によりレジストパターンを形成する工程、
形成されたレジストパターンを介して前記レジスト下層膜をエッチングし、パターン化する工程、及び
パターン化されたレジスト下層膜を介して半導体基板を加工する工程
を含む半導体装置の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明のレジスト下層膜形成組成物は、高エッチング耐性、良好なドライエッチング速度比及び光学定数を有するだけでなく、得られるレジスト下層膜は、いわゆる段差基板に対しても被覆性が良好で、埋め込み後の膜厚差が小さく、平坦な膜を形成し、より微細な基板加工が達成される。
特に、本発明のレジスト下層膜形成組成物は、レジスト膜厚の薄膜化を目的としたレジスト下層膜を少なくとも2層形成し、該レジスト下層膜をエッチングマスクとして使用するリソグラフィープロセスに対して有効である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[レジスト下層膜形成組成物]
本発明に係るレジスト下層膜形成組成物は、下記式(A)で表される化合物の少なくとも一種又は二種以上、下記式(B)で表される重合体の一種又は二種以上、及び溶剤を含むものである。
【化4】
(式(A)中、Xは炭素原子数2~50のn価の有機基を表し、n個のYは、それぞれ独立に、少なくとも1つ以上のヒドロキシル基を有する炭素原子数6~60の芳香族炭化水素基を表し、nは1~4の整数を表す。)
【化5】
[式(B)中、R
1は水素原子又はメチル基を表し、R
2は下記式(B-1)~(B-3)から選ばれる少なくとも一つの基を表す。
【化6】
(式(B-1)~(B-3)中、*は隣接する酸素原子との結合手を表す。)]
以下に順に説明する。
【0010】
[式(A)で表される化合物]
【0011】
式(A)におけるXは炭素原子数2~50のn価の有機基である。n価の有機基とは、炭素含有化合物からn個の水素を取り去った基をいう。nは1、2、3、又は4である。炭素含有化合物は、炭化水素化合物を含み、炭化水素化合物は、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素を含む。炭素含有化合物は、その分子中に炭素及び水素以外の原子、例えば、酸素、窒素、イオウ、ハロゲン、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属等の一種又は二種以上の原子を含んでもよい。有機基に含まれる炭素原子数は2~50であり、好ましくは4以上、6以上、8以上、10以上、42以下、34以下、26以下、又は18以下である。
【0012】
式(A)におけるn個のYは、それぞれ独立に、少なくとも1つ以上のヒドロキシル基を有する炭素原子数6~60の芳香族炭化水素基である。
【0013】
炭素原子数6~60の芳香族炭化水素基とは、
(a)ベンゼン、フェノール、フロログルシノールのような単環化合物、
(b)ナフタレン、ジヒドロキシナフタレンのような縮合環化合物、
(c)フラン、チオフェン、ピリジン、カルバゾールのような複素環化合物、
(d)ビフェニル、フェニルインドール、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、α,α,α’,α’-テトラキス(4-ヒドロキシフェニル)-p-キシレンのように(a)~(c)の芳香族環が単結合で結合された化合物、又は
(e)フェニルナフチルアミンのように-CH2-、-(CH2)n-(n=1~20)、-CH<、-CH=CH-、-C≡C-、-N=N-、-NH-、-NR-、-NHCO-、-NRCO-、-S-、-COO-、-O-、-CO-及び-CH=N-で例示されるスペーサーで(a)~(d)の芳香族環が連結された化合物
から1個の水素原子を取り去った基をいう。
【0014】
芳香族化合物としては、ベンゼン、チオフェン、フラン、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、ピロール、オキサゾール、チアゾール、イミダゾール、ナフタレン、アントラセン、キノリン、カルバゾール、キナゾリン、プリン、インドリジン、ベンゾチオフェン、ベンゾフラン、インドール、フェニルインドール、アクリジン等が挙げられる。
【0015】
更に、上記芳香族化合物は少なくとも1つ以上のヒドロキシル基を有する。
そのような少なくとも1つ以上のヒドロキシル基を有する芳香族化合物は、好ましくはフェノール性ヒドロキシ基含有化合物である。
フェノール性ヒドロキシ基含有化合物としては、フェノール、ジヒドロキシベンゼン、トリヒドロキシベンゼン、ヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシナフタレン、トリヒドロキシナフタレン、トリス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2-テトラキス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、多核フェノール等が挙げられる。
【0016】
上記多核フェノールとしては、ジヒドロキシベンゼン、トリヒドロキシベンゼン、ヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシナフタレン、トリヒドロキシナフタレン、トリス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,2’-ビフェノール、又は1,1,2,2-テトラキス(4-ヒドロキシフェニル)エタン等が挙げられる。
【0017】
上記炭素原子数6~60の芳香族化合物の水素原子は、炭素原子数1~20のアルキル基、縮環基、複素環基、ヒドロキシ基、アミノ基、ニトロ基、エーテル基、アルコキシ基、シアノ基、及びカルボキシル基で置換されていてもよい。
【0018】
上記炭素原子数1~20のアルキル基としては、置換基を有しても、有さなくてもよい直鎖または分岐を有するアルキル基が挙げられ、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、シクロヘキシル基、2-エチルヘキシル基、n-ノニル基、イソノニル基、p-tert-ブチルシクロヘキシル基、n-デシル基、n-ドデシルノニル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基およびエイコシル基などが挙げられる。好ましくは炭素原子数1~12のアルキル基、より好ましくは炭素原子数1~8のアルキル基、更に好ましくは炭素原子数1~4のアルキル基である。
【0019】
酸素原子、硫黄原子又はアミド結合により中断された炭素原子数1~20のアルキル基としては、例えば、構造単位-CH2-O-、-CH2-S-、-CH2-NHCO-又は-CH2-CONH-を含有するものが挙げられる。-O-、-S-、-NHCO-又は-CONH-は前記アルキル基中に一単位又は二単位以上あってよい。-O-、-S-、-NHCO-又は-CONH-単位により中断された炭素原子数1~20のアルキル基の具体例は、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基、メチルカルボニルアミノ基、エチルカルボニルアミノ基、プロピルカルボニルアミノ基、ブチルカルボニルアミノ基、メチルアミノカルボニル基、エチルアミノカルボニル基、プロピルアミノカルボニル基、ブチルアミノカルボニル基等であり、更には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基又はオクタデシル基であって、その各々がメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基、メチルカルボニルアミノ基、エチルカルボニルアミノ基、メチルアミノカルボニル基、エチルアミノカルボニル基等により置換されたものである。好ましくはメトキシ基、エトキシ基、メチルチオ基、エチルチオ基であり、より好ましくはメトキシ基、エトキシ基である。
【0020】
縮環基とは、縮合環化合物に由来する置換基であり、具体的にはフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基、ナフタセニル基、トリフェニレニル基、ピレニル基及びクリセニル基が挙げられるが、これらの中でもフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基及びピレニル基が好ましい。
【0021】
複素環基とは、複素環式化合物に由来する置換基であり、具体的にはチオフェン基、フラン基、ピリジン基、ピリミジン基、ピラジン基、ピロール基、オキサゾール基、チアゾール基、イミダゾール基、キノリン基、カルバゾール基、キナゾリン基、プリン基、インドリジン基、ベンゾチオフェン基、ベンゾフラン基、インドール基、アクリジン基、イソインドール基、ベンゾイミダゾール基、イソキノリン基、キノキサリン基、シンノリン基、プテリジン基、クロメン基(ベンゾピラン基)、イソクロメン基(ベンゾピラン基)、キサンテン基、チアゾール基、ピラゾール基、イミダゾリン基、アジン基が挙げられるが、これらの中でもチオフェン基、フラン基、ピリジン基、ピリミジン基、ピラジン基、ピロール基、オキサゾール基、チアゾール基、イミダゾール基、キノリン基、カルバゾール基、キナゾリン基、プリン基、インドリジン基、ベンゾチオフェン基、ベンゾフラン基、インドール基及びアクリジン基が好ましく、最も好ましいのはチオフェン基、フラン基、ピリジン基、ピリミジン基、ピロール基、オキサゾール基、チアゾール基、イミダゾール基及びカルバゾール基である。
【0022】
なお、以上の芳香族炭化水素基は、単結合又はスペーサーによって連結されていてもよい。
スペーサーの例としては-CH2-、-(CH2)n-(n=1~20)、-CH<、-CH=CH-、-C≡C-、-N=N-、-NH-、-NR-、-NHCO-、-NRCO-、-S-、-COO-、-O-、-CO-及び-CH=N-の一種又は二種以上の組合せが挙げられる。これらのスペーサーは2つ以上連結していてもよい。
【0023】
上記芳香族炭化水素基は、1つ以上のベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、ピレン環又はそれらの組み合わせを含むことが好ましく、2つ以上のベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、ピレン環又はそれらの組み合わせを含むことがより好ましい。
【0024】
[化合物(A)の調製]
式(A)で表される化合物は、当業者に公知の任意の方法によって調製することができる。例えば、nが2のときを例に取ると、下記のような合成スキームによって調製することができる。
【化7】
【0025】
上記合成スキームにおいては、1分子のジグリシジル化合物と2分子のカルボン酸化合物とを反応させることにより、ジグリシジル化合物の2つのエポキシ基の各々が開環して2つのカルボン酸化合物を連結し、化合物(A)を得ることができる。
【0026】
上記反応で用いられるエポキシ基を活性化させる触媒としては、例えばエチルトリフェニルホスホニウムブロマイドのような第4級ホスホニウム塩、ベンジルトリエチルアンモニウムクロリドのような第4級アンモニウム塩が挙げられる。その使用量は、通常、エポキシ基1当量に対して、0.001乃至1当量である。
【0027】
上記の反応は無溶媒でも行われるが、通常溶媒を用いて行われる。溶媒としては反応を阻害しないものであれば全て使用することができる。例えば1,2-ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類が挙げられる。
反応温度は通常40℃乃至200℃である。反応時間は反応温度によって種々選択されるが、通常30分乃至50時間程度である。
【0028】
このようにして得られた粗生成物は、陰イオン交換樹脂及び/又は陽イオン交換樹脂を添加して、常法によりイオン交換処理に供してもよい。
【0029】
以上のようにして得られる化合物の重量平均分子量Mwは、通常500乃至1,000、又は600乃至900である。
【0030】
[式(B)で表される重合体]
式(B)で表される重合体は、上記式(B-1)~(B-3)から選ばれる少なくとも一つの基を有する(メタ)アクリル酸又はその誘導体を、当業者に公知の任意の方法によって重合させることによって調製することができる。
式(B)で表される重合体の重量平均分子量には特段の制限はないが、好ましくは1,000以上、2,000以上、5,000以上、50,000以下、20,000以下、又は10,000以下である。
【0031】
[溶剤]
本発明に係るレジスト下層膜形成組成物の溶剤としては、上記化合物(A)、上記重合体(B)その他の成分を溶解できる溶剤であれば、特に制限なく使用することができる。特に、本発明に係るレジスト下層膜形成組成物は均一な溶液状態で用いられるものであるため、その塗布性能を考慮すると、リソグラフィー工程に一般的に使用される溶剤を併用することが推奨される。
【0032】
そのような溶剤としては、例えば、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、メチルイソブチルカルビノール、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエテルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、2-ヒドロキシプロピオン酸エチル、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2-ヒドロキシ-3-メチルブタン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテルプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジプロピルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル、乳酸エチル、乳酸プロピル、乳酸イソプロピル、乳酸ブチル、乳酸イソブチル、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、ギ酸イソプロピル、ギ酸ブチル、ギ酸イソブチル、ギ酸アミル、ギ酸イソアミル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル、酢酸イソアミル、酢酸ヘキシル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸イソプロピル、プロピオン酸ブチル、プロピオン酸イソブチル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸プロピル、酪酸イソプロピル、酪酸ブチル、酪酸イソブチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオン酸エチル、3-メトキシ-2-メチルプロピオン酸メチル、2-ヒドロキシ-3-メチル酪酸メチル、メトキシ酢酸エチル、エトキシ酢酸エチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-メトキシブチルアセテート、3-メトキシプロピルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルプロピオネート、3-メチル-3-メトキシブチルブチレート、アセト酢酸メチル、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルブチルケトン、2-ヘプタノン、3-ヘプタノン、4-ヘプタノン、シクロヘキサノン、N、N-ジメチルホルムアミド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、4-メチル-2-ペンタノール、及びγ-ブチロラクトン等を挙げることができる。これらの溶剤は単独で、または二種以上の組み合わせで使用することができる。
【0033】
また、WO2018/131562A1に記載された下記の化合物を用いることもできる。
【化8】
(式(i)中のR
1、R
2及びR
3は各々水素原子、酸素原子、硫黄原子又はアミド結合で中断されていてもよい炭素原子数1~20のアルキル基を表し、互いに同一であっても異なっても良く、互いに結合して環構造を形成しても良い。)
【0034】
炭素原子数1~20のアルキル基としては、置換基を有しても、有さなくてもよい直鎖または分岐を有するアルキル基が挙げられ、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、シクロヘキシル基、2-エチルヘキシル基、n-ノニル基、イソノニル基、p-tert-ブチルシクロヘキシル基、n-デシル基、n-ドデシルノニル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基およびエイコシル基などが挙げられる。好ましくは炭素原子数1~12のアルキル基、より好ましくは炭素原子数1~8のアルキル基、更に好ましくは炭素原子数1~4のアルキル基である。
【0035】
酸素原子、硫黄原子又はアミド結合により中断された炭素原子数1~20のアルキル基としては、例えば、構造単位-CH2-O-、-CH2-S-、-CH2-NHCO-又は-CH2-CONH-を含有するものが挙げられる。-O-、-S-、-NHCO-又は-CONH-は前記アルキル基中に一単位又は二単位以上あってよい。-O-、-S-、-NHCO-又は-CONH-単位により中断された炭素原子数1~20のアルキル基の具体例は、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基、メチルカルボニルアミノ基、エチルカルボニルアミノ基、プロピルカルボニルアミノ基、ブチルカルボニルアミノ基、メチルアミノカルボニル基、エチルアミノカルボニル基、プロピルアミノカルボニル基、ブチルアミノカルボニル基等であり、更には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基又はオクタデシル基であって、その各々がメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基、メチルカルボニルアミノ基、エチルカルボニルアミノ基、メチルアミノカルボニル基、エチルアミノカルボニル基等により置換されたものである。好ましくはメトキシ基、エトキシ基、メチルチオ基、エチルチオ基であり、より好ましくはメトキシ基、エトキシ基である。
【0036】
これらの溶剤は比較的高沸点であることから、レジスト下層膜形成組成物に高埋め込み性や高平坦化性を付与するためにも有効である。
【0037】
以下に式(i)で表される好ましい化合物の具体例を示す。
【化9】
【0038】
上記の中で、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、N,N-ジメチルイソブチルアミド、及び
下記式:
【化10】
で表される化合物が好ましく、式(i)で表される化合物として特に好ましいのは、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、及びN,N-ジメチルイソブチルアミドである。
【0039】
これらの溶剤は単独で、または二種以上の組み合わせで使用することができる。これらの溶剤の中で沸点が160℃以上であるものが好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、乳酸エチル、乳酸ブチル、シクロヘキサノン、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、N,N-ジメチルイソブチルアミド、2,5-ジメチルヘキサン-1,6-ジイルジアセテート(DAH;cas,89182-68-3)、及び1,6-ジアセトキシヘキサン(cas,6222-17-9)等が好ましい。特にプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、N,N-ジメチルイソブチルアミドが好ましい。
【0040】
[架橋剤、酸及び/又は酸発生剤]
上記式(B)で表される重合体は、熱のみで架橋が進行し、しかも脱離成分が無いため、形成される膜に収縮が発生せず、平坦な膜を実現できるという利点がある。しかし、上記式(B)で表される重合体以外の架橋剤を配合すると、架橋の過程での官能基の脱離、又は架橋のために要する加熱などにより膜収縮が引き起こされ、結果として得られる膜の平坦性に悪影響を与えるおそれがある。そこで、本発明のレジスト下層膜形成組成物は、上記式(B)で表される重合体以外に、架橋剤を含まない。ここでいう「架橋剤」とは、一般に、少なくとも2個の架橋形成置換基を有する低分子化合物又は重合体を包含する。
【0041】
本発明のレジスト下層膜形成組成物に含まれない架橋剤としては、メラミン系、置換尿素系、またはそれらのポリマー系等が挙げられる。より具体的には、少なくとも2個の架橋形成置換基を有する架橋剤であり、メトキシメチル化グリコールウリル、ブトキシメチル化グリコールウリル、メトキシメチル化メラミン、ブトキシメチル化メラミン、メトキシメチル化ベンゾグワナミン、ブトキシメチル化ベンゾグワナミン、メトキシメチル化尿素、ブトキシメチル化尿素、またはメトキシメチル化チオ尿素等の化合物である。また、これらの化合物の縮合体も含まない。
【0042】
また、本発明のレジスト下層膜形成組成物に含まれない架橋剤としては、分子内に芳香族環(例えば、ベンゼン環、ナフタレン環)を有する架橋形成置換基を含有する耐熱性の高い架橋剤が挙げられる。
【0043】
このような、本発明のレジスト下層膜形成組成物に含まれない架橋剤としては、下記式(4)の部分構造を有する化合物や、下記式(5)の繰り返し単位を有するポリマー又はオリゴマーが挙げられる。
【化11】
上記R
11、R
12、R
13、及びR
14は水素原子又は炭素数1乃至10のアルキル基である。
【0044】
式(4)及び式(5)の化合物、ポリマー、オリゴマーは以下に例示される。
【化12】
【化13】
【0045】
したがってまた、本発明のレジスト下層膜形成組成物は、上記「架橋剤」と共に慣用される「酸」及び「酸発生剤」も含まない。
【0046】
本発明のレジスト下層膜形成組成物に含まれない酸としては例えば、p-トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ピリジニウムp-トルエンスルホン酸、サリチル酸、5-スルホサリチル酸、4-フェノールスルホン酸、カンファースルホン酸、4-クロロベンゼンスルホン酸、ベンゼンジスルホン酸、1-ナフタレンスルホン酸、クエン酸、安息香酸、ヒドロキシ安息香酸、ナフタレンカルボン酸等が挙げられる。
【0047】
本発明のレジスト下層膜形成組成物に含まれない酸発生剤としては、熱酸発生剤や光酸発生剤が挙げられる。
本発明のレジスト下層膜形成組成物に含まれない熱酸発生剤としては、2,4,4,6-テトラブロモシクロヘキサジエノン、ベンゾイントシレート、2-ニトロベンジルトシレート、その他有機スルホン酸アルキルエステル等が挙げられる。
【0048】
本発明のレジスト下層膜形成組成物に含まれない光酸発生剤としては、オニウム塩化合物、スルホンイミド化合物、及びジスルホニルジアゾメタン化合物等が挙げられる。
【0049】
本発明のレジスト下層膜形成組成物に含まれないオニウム塩化合物としてはジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフエート、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムノナフルオロノルマルブタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムパーフルオロノルマルオクタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムカンファースルホネート、ビス(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムカンファースルホネート及びビス(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート等のヨードニウム塩化合物、及びトリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウムノナフルオロノルマルブタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムカンファースルホネート及びトリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート等のスルホニウム塩化合物等が挙げられる。
【0050】
本発明のレジスト下層膜形成組成物に含まれないスルホンイミド化合物としては、例えばN-(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)スクシンイミド、N-(ノナフルオロノルマルブタンスルホニルオキシ)スクシンイミド、N-(カンファースルホニルオキシ)スクシンイミド及びN-(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)ナフタルイミド等が挙げられる。
【0051】
本発明のレジスト下層膜形成組成物に含まれないジスルホニルジアゾメタン化合物としては、例えば、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(フェニルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(p-トルエンスルホニル)ジアゾメタン、ビス(2,4-ジメチルベンゼンスルホニル)ジアゾメタン、及びメチルスルホニル-p-トルエンスルホニルジアゾメタン等が挙げられる。
【0052】
[その他の成分]
本発明のレジスト下層膜形成組成物には、ピンホールやストレーション等の発生がなく、表面むらに対する塗布性をさらに向上させるために、界面活性剤を配合することができる。界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンオクチルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェノールエーテル等のポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタントリオレエート、ソルビタントリステアレート等のソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類等のノニオン系界面活性剤、エフトップEF301、EF303、EF352(株式会社トーケムプロダクツ製、商品名)、メガファックF171、F173、R-40、R-40N、R-40LM(DIC株式会社製、商品名)、フロラードFC430、FC431(住友スリーエム株式会社製、商品名)、アサヒガードAG710、サーフロンS-382、SC101、SC102、SC103、SC104、SC105、SC106(旭硝子株式会社製、商品名)等のフッ素系界面活性剤、オルガノシロキサンポリマーKP341(信越化学工業株式会社製)等を挙げることができる。これらの界面活性剤の配合量は、レジスト下層膜材料の全固形分に対して通常2.0質量%以下、好ましくは1.0質量%以下である。これらの界面活性剤は単独で使用してもよいし、また二種以上の組み合わせで使用することもできる。界面活性剤が使用される場合、その割合としては、レジスト下層膜形成組成物の固形分100質量部に対して0.0001乃至5質量部、または0.001乃至1質量部、または0.01乃至0.5質量部である。
【0053】
本発明のレジスト下層膜形成組成物には、吸光剤、レオロジー調整剤、接着補助剤などを添加することができる。レオロジー調整剤は、下層膜形成組成物の流動性を向上させるのに有効である。接着補助剤は、半導体基板またはレジストと下層膜の密着性を向上させるのに有効である。
【0054】
吸光剤としては例えば、「工業用色素の技術と市場」(CMC出版)や「染料便覧」(有機合成化学協会編)に記載の市販の吸光剤、例えば、C.I.Disperse Yellow 1,3,4,5,7,8,13,23,31,49,50,51,54,60,64,66,68,79,82,88,90,93,102,114及び124;C.I.Disperse Orange1,5,13,25,29,30,31,44,57,72及び73;C.I.Disperse Red 1,5,7,13,17,19,43,50,54,58,65,72,73,88,117,137,143,199及び210;C.I.Disperse Violet 43;C.I.Disperse Blue 96;C.I.Fluorescent Brightening Agent 112,135及び163;C.I.Solvent Orange2及び45;C.I.Solvent Red 1,3,8,23,24,25,27及び49;C.I.Pigment Green 10;C.I.Pigment Brown 2等を好適に用いることができる。上記吸光剤は通常、レジスト下層膜形成組成物の全固形分に対して10質量%以下、好ましくは5質量%以下の割合で配合される。
【0055】
レオロジー調整剤は、主にレジスト下層膜形成組成物の流動性を向上させ、特にベーキング工程において、レジスト下層膜の膜厚均一性の向上やホール内部へのレジスト下層膜形成組成物の充填性を高める目的で添加される。具体例としては、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジイソブチルフタレート、ジヘキシルフタレート、ブチルイソデシルフタレート等のフタル酸誘導体、ジノルマルブチルアジペート、ジイソブチルアジペート、ジイソオクチルアジペート、オクチルデシルアジペート等のアジピン酸誘導体、ジノルマルブチルマレート、ジエチルマレート、ジノニルマレート等のマレイン酸誘導体、メチルオレート、ブチルオレート、テトラヒドロフルフリルオレート等のオレイン酸誘導体、またはノルマルブチルステアレート、グリセリルステアレート等のステアリン酸誘導体を挙げることができる。これらのレオロジー調整剤は、レジスト下層膜形成組成物の全固形分に対して通常30質量%未満の割合で配合される。
【0056】
接着補助剤は、主に基板あるいはレジストとレジスト下層膜形成組成物の密着性を向上させ、特に現像においてレジストが剥離しないようにするための目的で添加される。具体例としては、トリメチルクロロシラン、ジメチルメチロールクロロシラン、メチルジフェニルクロロシラン、クロロメチルジメチルクロロシラン等のクロロシラン類、トリメチルメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルジメトキシシラン、ジメチルメチロールエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン等のアルコキシシラン類、ヘキサメチルジシラザン、N,N’-ビス(トリメチルシリル)ウレア、ジメチルトリメチルシリルアミン、トリメチルシリルイミダゾール等のシラザン類、メチロールトリクロロシラン、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のシラン類、ベンゾトリアゾール、ベンズイミダゾール、インダゾール、イミダゾール、2-メルカプトベンズイミダゾール、2-メルカプトベンゾチアゾール、2-メルカプトベンゾオキサゾール、ウラゾール、チオウラシル、メルカプトイミダゾール、メルカプトピリミジン等の複素環式化合物や、1,1-ジメチルウレア、1,3-ジメチルウレア等の尿素、またはチオ尿素化合物を挙げることができる。これらの接着補助剤は、レジスト下層膜形成組成物の全固形分に対して通常5質量%未満、好ましくは2質量%未満の割合で配合される。
【0057】
本発明に係るレジスト下層膜形成組成物の固形分は通常0.1乃至70質量%、好ましくは0.1乃至60質量%とする。固形分はレジスト下層膜形成組成物から溶剤を除いた全成分の含有割合である。固形分中における上記化合物(A)と上記重合体(B)との合計の割合(上記化合物(A)、上記重合体(B)を2種以上含む場合はそれらの合計)は、1乃至100質量%、1乃至99.9質量%、50乃至99.9質量%、50乃至95質量%、50乃至90質量%の順で好ましい。
【0058】
レジスト下層膜形成組成物が均一な溶液状態であるかどうかを評価する尺度の一つは、特定のマイクロフィルターの通過性を観察することであるが、本発明に係るレジスト下層膜形成組成物は、孔径0.1μmのマイクロフィルターを通過し、均一な溶液状態を呈する。
【0059】
上記マイクロフィルター材質としては、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)などのフッ素系樹脂、PE(ポリエチレン)、UPE(超高分子量ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、PSF(ポリスルフォン)、PES(ポリエーテルスルホン)、ナイロンが挙げられるが、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)製であることが好ましい。
【0060】
[レジスト下層膜及び半導体装置の製造方法]
以下、本発明に係るレジスト下層膜形成組成物を用いたレジスト下層膜及び半導体装置の製造方法について説明する。
【0061】
半導体装置の製造に使用される基板(例えば、シリコンウエハー基板、シリコン/二酸化シリコン被覆基板、シリコンナイトライド基板、ガラス基板、ITO基板、ポリイミド基板、及び低誘電率材料(low-k材料)被覆基板等)の上に、スピナー、コーター等の適当な塗布方法により本発明のレジスト下層膜形成組成物が塗布され、その後、焼成することによりレジスト下層膜が形成される。焼成する条件としては、焼成温度80℃乃至250℃、焼成時間0.3乃至60分間の中から適宜、選択される。好ましくは、焼成温度150℃乃至250℃、焼成時間0.5乃至2分間である。ここで、形成される下層膜の膜厚としては、例えば、10乃至1000nmであり、または20乃至500nmであり、または30乃至400nmであり、または50乃至300nmである。
【0062】
また、本発明に係る有機レジスト下層膜上に無機レジスト下層膜(ハードマスク)を形成することもできる。例えば、WO2009/104552A1に記載のシリコン含有レジスト下層膜(無機レジスト下層膜)形成組成物をスピンコートで形成する方法の他、Si系の無機材料膜をCVD法などで形成することができる。
【0063】
また、本発明に係るレジスト下層膜形成組成物を、段差を有する部分と段差を有しない部分とを有する半導体基板(いわゆる段差基板)上に塗布し、焼成することにより、当該段差を有する部分と段差を有しない部分との段差が3~50nmの範囲内である、レジスト下層膜を形成することができる。
【0064】
次いでそのレジスト下層膜の上にレジスト膜、例えばフォトレジストの層が形成される。フォトレジストの層の形成は、周知の方法、すなわち、フォトレジスト組成物溶液の下層膜上への塗布及び焼成によって行なうことができる。フォトレジストの膜厚としては例えば50乃至10000nmであり、または100乃至2000nmであり、または200乃至1000nmである。
【0065】
レジスト下層膜の上に形成されるフォトレジストとしては露光に使用される光に感光するものであれば特に限定はない。ネガ型フォトレジスト及びポジ型フォトレジストのいずれも使用できる。ノボラック樹脂と1,2-ナフトキノンジアジドスルホン酸エステルとからなるポジ型フォトレジスト、酸により分解してアルカリ溶解速度を上昇させる基を有するバインダーと光酸発生剤からなる化学増幅型フォトレジスト、酸により分解してフォトレジストのアルカリ溶解速度を上昇させる低分子化合物とアルカリ可溶性バインダーと光酸発生剤とからなる化学増幅型フォトレジスト、及び酸により分解してアルカリ溶解速度を上昇させる基を有するバインダーと酸により分解してフォトレジストのアルカリ溶解速度を上昇させる低分子化合物と光酸発生剤からなる化学増幅型フォトレジストなどがある。例えば、シプレー社製商品名APEX-E、住友化学工業株式会社製商品名PAR710、及び信越化学工業株式会社製商品名SEPR430等が挙げられる。また、例えば、Proc.SPIE,Vol.3999,330-334(2000)、Proc.SPIE,Vol.3999,357-364(2000)、やProc.SPIE,Vol.3999,365-374(2000)に記載されているような、含フッ素原子ポリマー系フォトレジストを挙げることができる。
【0066】
次に、光又は電子線の照射と現像によりレジストパターンを形成する。まず、所定のマスクを通して露光が行なわれる。露光には、近紫外線、遠紫外線、又は極端紫外線(例えば、EUV(波長13.5nm))等が用いられる。具体的には、KrFエキシマレーザー(波長248nm)、ArFエキシマレーザー(波長193nm)及びF2エキシマレーザー(波長157nm)等を使用することができる。これらの中でも、ArFエキシマレーザー(波長193nm)及びEUV(波長13.5nm)が好ましい。露光後、必要に応じて露光後加熱(post exposure bake)を行なうこともできる。露光後加熱は、加熱温度70℃乃至150℃、加熱時間0.3乃至10分間から適宜、選択された条件で行われる。
【0067】
また、本発明ではレジストとしてフォトレジストに変えて電子線リソグラフィー用レジストを用いることができる。電子線レジストとしてはネガ型、ポジ型いずれも使用できる。酸発生剤と酸により分解してアルカリ溶解速度を変化させる基を有するバインダーからなる化学増幅型レジスト、アルカリ可溶性バインダーと酸発生剤と酸により分解してレジストのアルカリ溶解速度を変化させる低分子化合物からなる化学増幅型レジスト、酸発生剤と酸により分解してアルカリ溶解速度を変化させる基を有するバインダーと酸により分解してレジストのアルカリ溶解速度を変化させる低分子化合物からなる化学増幅型レジスト、電子線によって分解してアルカリ溶解速度を変化させる基を有するバインダーからなる非化学増幅型レジスト、電子線によって切断されアルカリ溶解速度を変化させる部位を有するバインダーからなる非化学増幅型レジストなどがある。これらの電子線レジストを用いた場合も照射源を電子線としてフォトレジストを用いた場合と同様にレジストパターンを形成することができる。
【0068】
次いで、現像液によって現像が行なわれる。これにより、例えばポジ型フォトレジストが使用された場合は、露光された部分のフォトレジストが除去され、フォトレジストのパターンが形成される。
現像液としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物の水溶液、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、コリンなどの水酸化四級アンモニウムの水溶液、エタノールアミン、プロピルアミン、エチレンジアミンなどのアミン水溶液等のアルカリ性水溶液を例として挙げることができる。さらに、これらの現像液に界面活性剤などを加えることもできる。現像の条件としては、温度5乃至50℃、時間10乃至600秒から適宜選択される。
【0069】
そして、このようにして形成されたフォトレジスト(上層)のパターンを保護膜として無機下層膜(中間層)の除去が行われ、次いでパターン化されたフォトレジスト及び無機下層膜(中間層)からなる膜を保護膜として、有機下層膜(下層)の除去が行われる。最後に、パターン化された無機下層膜(中間層)及び有機下層膜(下層)を保護膜として、半導体基板の加工が行なわれる。
【0070】
まず、フォトレジストが除去された部分の無機下層膜(中間層)をドライエッチングによって取り除き、半導体基板を露出させる。無機下層膜のドライエッチングにはテトラフルオロメタン(CF4)、パーフルオロシクロブタン(C4F8)、パーフルオロプロパン(C3F8)、トリフルオロメタン、一酸化炭素、アルゴン、酸素、窒素、六フッ化硫黄、ジフルオロメタン、三フッ化窒素及び三フッ化塩素、塩素、トリクロロボラン及びジクロロボラン等のガスを使用することができる。無機下層膜のドライエッチングにはハロゲン系ガスを使用することが好ましく、フッ素系ガスによることがより好ましい。フッ素系ガスとしては、例えば、テトラフルオロメタン(CF4)、パーフルオロシクロブタン(C4F8)、パーフルオロプロパン(C3F8)、トリフルオロメタン、及びジフルオロメタン(CH2F2)等が挙げられる。
【0071】
その後、パターン化されたフォトレジスト及び無機下層膜からなる膜を保護膜として有機下層膜の除去が行われる。有機下層膜(下層)は酸素系ガスによるドライエッチングによって行なわれることが好ましい。シリコン原子を多く含む無機下層膜は、酸素系ガスによるドライエッチングでは除去されにくいからである。
【0072】
最後に、半導体基板の加工が行なわれる。半導体基板の加工はフッ素系ガスによるドライエッチングによって行なわれることが好ましい。
フッ素系ガスとしては、例えば、テトラフルオロメタン(CF4)、パーフルオロシクロブタン(C4F8)、パーフルオロプロパン(C3F8)、トリフルオロメタン、及びジフルオロメタン(CH2F2)等が挙げられる。
【0073】
また、レジスト下層膜の上層には、フォトレジストの形成前に有機系の反射防止膜を形成することができる。そこで使用される反射防止膜組成物としては特に制限はなく、これまでリソグラフィープロセスにおいて慣用されているものの中から任意に選択して使用することができ、また、慣用されている方法、例えば、スピナー、コーターによる塗布及び焼成によって反射防止膜の形成を行なうことができる。
【0074】
本発明では基板上に有機下層膜を成膜した後、その上に無機下層膜を成膜し、更にその上にフォトレジストを被覆することができる。これによりフォトレジストのパターン幅が狭くなり、パターン倒れを防ぐためにフォトレジストを薄く被覆した場合でも、適切なエッチングガスを選択することにより基板の加工が可能になる。例えば、フォトレジストに対して十分に早いエッチング速度となるフッ素系ガスをエッチングガスとしてレジスト下層膜に加工が可能であり、また無機下層膜に対して十分に早いエッチング速度となるフッ素系ガスをエッチングガスとして基板の加工が可能であり、更に有機下層膜に対して十分に早いエッチング速度となる酸素系ガスをエッチングガスとして基板の加工を行うことができる。
【0075】
レジスト下層膜形成組成物より形成されるレジスト下層膜は、また、リソグラフィープロセスにおいて使用される光の波長によっては、その光に対する吸収を有することがある。そして、そのような場合には、基板からの反射光を防止する効果を有する反射防止膜として機能することができる。さらに、本発明のレジスト下層膜形成組成物で形成された下層膜はハードマスクとしても機能し得るものである。本発明の下層膜は、基板とフォトレジストとの相互作用の防止するための層、フォトレジストに用いられる材料又はフォトレジストへの露光時に生成する物質の基板への悪作用を防ぐ機能とを有する層、加熱焼成時に基板から生成する物質の上層フォトレジストへの拡散を防ぐ機能を有する層、及び半導体基板誘電体層によるフォトレジスト層のポイズニング効果を減少させるためのバリア層等として使用することも可能である。
【0076】
また、レジスト下層膜形成組成物より形成される下層膜は、デュアルダマシンプロセスで用いられるビアホールが形成された基板に適用され、ホールを隙間なく充填することができる埋め込み材として使用できる。また、凹凸のある半導体基板の表面を平坦化するための平坦化材として使用することもできる。
【実施例】
【0077】
以下、本発明のレジスト下層膜形成組成物の具体例を、下記実施例を用いて説明するが、これによって本発明が限定されるものではない。
【0078】
下記合成例で得られた反応生成物の重量平均分子量の測定に用いた装置等を示す。
装置:東ソー株式会社製HLC-8320GPC
GPCカラム:TSKgel Super-MultiporeHZ-N(2本)
カラム温度:40℃
流量:0.35ml/分
溶離液:THF
標準試料:ポリスチレン(昭和電工株式会社)
【0079】
下記合成例に使用した試薬の化学構造は下記のとおりである。
【化14】
【化15】
【化16】
【0080】
<合成例1>
プロピレングリコールモノメチルエーテル(以下、本明細書ではPGMEと略称する。)149.42gに、商品名HP-4032D(DIC株式会社製)25.00g、3,7-ジヒドロキシ-2-ナフトイックアシッド(みどり化学株式会社製)37.34g、及び触媒としてエチルトリフェニルホスホニウムブロマイド1.70gを添加した後、140℃で24時間反応させ、反応生成物を含む溶液を得た。陰イオン交換樹脂(製品名:ダウエックス[登録商標]MONOSPHERE[登録商標]550A、ムロマチテクノス株式会社)64.00gと陽イオン交換樹脂(製品名:アンバーリスト[登録商標]15JWET、オルガノ株式会社)64.00gを加え、25℃乃至30℃で4時間撹拌後ろ過した。
得られた反応生成物のGPC分析を行ったところ、標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量は680であった。得られた反応生成物は、下記式(1)で表される構造単位を有する化合物と推定される。
【化17】
【0081】
<合成例2>
PGME154.07gに、商品名YX8800(三菱ケミカル株式会社製)30.00g、3,7-ジヒドロキシ-2-ナフトイックアシッド(みどり化学株式会社製)34.46g、及び触媒としてエチルトリフェニルホスホニウムブロマイド1.57gを添加した後、140℃で24時間反応させ、反応生成物を含む溶液を得た。陰イオン交換樹脂(製品名:ダウエックス[登録商標]MONOSPHERE[登録商標]550A、ムロマチテクノス株式会社)66.00gと陽イオン交換樹脂(製品名:アンバーリスト[登録商標]15JWET、オルガノ株式会社)66.00gを加え、25℃乃至30℃で4時間撹拌後ろ過した。
得られた反応生成物のGPC分析を行ったところ、標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量は690であった。得られた反応生成物は、下記式(2)で表される構造単位を有する化合物と推定される。
【化18】
【0082】
<合成例3>
PGME35.18gに、商品名YX4000(三菱ケミカル株式会社製)7.00g、3,7-ジヒドロキシ-2-ナフトイックアシッド(みどり化学株式会社製)7.73g、及び触媒としてエチルトリフェニルホスホニウムブロマイド0.35gを添加した後、140℃で24時間反応させ、反応生成物を含む溶液を得た。陰イオン交換樹脂(製品名:ダウエックス[登録商標]MONOSPHERE[登録商標]550A、ムロマチテクノス株式会社)15.00gと陽イオン交換樹脂(製品名:アンバーリスト[登録商標]15JWET、オルガノ株式会社)15.00gを加え、25℃乃至30℃で4時間撹拌後ろ過した。
得られた反応生成物のGPC分析を行ったところ、標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量は820であった。得られた反応生成物は、下記式(3)で表される構造単位を有する化合物と推定される。
【化19】
【0083】
<合成例4>
PGME34.22gに、商品名HP-4032D(DIC株式会社製)6.00g、6-ヒドロキシ-2-ナフトイックアシッド(東京化成工業株式会社製)8.27g、及び触媒としてエチルトリフェニルホスホニウムブロマイド0.41gを添加した後、140℃で24時間反応させ、反応生成物を含む溶液を得た。陰イオン交換樹脂(製品名:ダウエックス[登録商標] MONOSPHERE[登録商標]550A、ムロマチテクノス株式会社)14.70gと陽イオン交換樹脂(製品名:アンバーリスト[登録商標]15JWET、オルガノ株式会社)14.70gを加え、25℃乃至30℃で4時間撹拌後ろ過した。
得られた反応生成物のGPC分析を行ったところ、標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量は720であった。得られた反応生成物は、下記式(4)で表される構造単位を有する化合物と推定される。
【化20】
【0084】
<合成例5>
PGME34.22gに、商品名HP-4032D(DIC株式会社製)6.00g、6-ヒドロキシ-1-ナフトイックアシッド(東京化成工業株式会社製)8.27g、及び触媒としてエチルトリフェニルホスホニウムブロマイド0.41gを添加した後、140℃で24時間反応させ、反応生成物を含む溶液を得た。陰イオン交換樹脂(製品名:ダウエックス[登録商標]MONOSPHERE[登録商標]550A、ムロマチテクノス株式会社)14.70gと陽イオン交換樹脂(製品名:アンバーリスト[登録商標]15JWET、オルガノ株式会社)14.70gを加え、25℃乃至30℃で4時間撹拌後ろ過した。
得られた反応生成物のGPC分析を行ったところ、標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量は680であった。得られた反応生成物は、下記式(5)で表される構造単位を有する化合物と推定される。
【化21】
【0085】
<架橋剤合成例1>
グリシジルメタクリレート(東京化成工業株式会社)20.00g、2,2’-アゾビス(イソ酪酸)ジメチル(富士フイルム和光純薬株式会社)1.00gをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下、本明細書ではPGMEAと略称する。)21.00gに溶解させた後、加熱し100℃に保ったPGMEA28.00g中に添加し、24時間反応させ、反応生成物を含む溶液を得た。メタノール(630g、関東化学株式会社製)を用いて再沈殿させた。得られた沈殿物をろ過し、減圧乾燥機で60℃、24時間乾燥し、目的とするポリマーを得た。
反応生成物のGPC分析を行ったところ、標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量は8,100であった。得られた反応生成物は、下記式(6)で表される構造単位を有する重合体と推定される。
【化22】
【0086】
〔レジスト下層膜形成組成物の調製〕
<実施例1>
前記合成例1で得た化合物1.66gを含む溶液(溶剤は合成時に用いたPGME、固形分は25.94質量%)6.38gに、前記架橋剤合成例1で得た重合体0.74gを含む溶液(溶剤はPGMEA、固形分は32.20質量%)2.31g、PGME3.56g、PGMEA17.70g、及び界面活性剤(DIC株式会社製、商品名:R-40)1質量%PGMEA溶液0.050gを混合し、8.0質量%溶液とした。その溶液を、孔径0.2μmのポリテトラフルオロエチレン製ミクロフィルターを用いてろ過して、レジスト下層膜形成組成物を調製した。
【0087】
<実施例2>
前記合成例2で得た化合物1.16gを含む溶液(溶剤は合成時に用いたPGME、固形分は26.05質量%)4.45gに、前記架橋剤合成例1で得た重合体0.52gを含む溶液(溶剤はPGMEA、固形分は32.20質量%)1.62g、PGME2.21g、PGMEA12.44g、及び界面活性剤(DIC株式会社製、商品名:R-40)1質量%PGMEA溶液0.035gを混合し、8.4質量%溶液とした。その溶液を、孔径0.2μmのポリテトラフルオロエチレン製ミクロフィルターを用いてろ過して、レジスト下層膜形成組成物を調製した。
【0088】
<実施例3>
前記合成例3で得た化合物1.45gを含む溶液(溶剤は合成時に用いたPGME、固形分は25.92質量%)5.59gに、前記架橋剤合成例1で得た重合体0.65gを含む溶液(溶剤はPGMEA、固形分は32.20質量%)2.02g、PGME2.73g、PGMEA14.62g、及び界面活性剤(DIC株式会社製、商品名:R-40)1質量%PGMEA溶液0.043gを混合し、8.4質量%溶液とした。その溶液を、孔径0.2μmのポリテトラフルオロエチレン製ミクロフィルターを用いてろ過して、レジスト下層膜形成組成物を調製した。
【0089】
<実施例4>
前記合成例4で得た化合物1.45gを含む溶液(溶剤は合成時に用いたPGME、固形分は24.35質量%)5.95gに、前記架橋剤合成例1で得た重合体0.65gを含む溶液(溶剤はPGMEA、固形分は32.20質量%)2.02g、PGME2.37g、PGMEA14.62g、及び界面活性剤(DIC株式会社製、商品名:R-40)1質量%PGMEA溶液0.043gを混合し、8.4質量%溶液とした。その溶液を、孔径0.2μmのポリテトラフルオロエチレン製ミクロフィルターを用いてろ過して、レジスト下層膜形成組成物を調製した。
【0090】
<実施例5>
前記合成例5で得た化合物1.45gを含む溶液(溶剤は合成時に用いたPGME、固形分は24.67質量%)5.87gに、前記架橋剤合成例1で得た重合体0.65gを含む溶液(溶剤はPGMEA、固形分は32.20質量%)2.02g、PGME2.45g、PGMEA14.62g、及び界面活性剤(DIC株式会社製、商品名:R-40)1質量%PGMEA溶液0.043gを混合し、8.4質量%溶液とした。その溶液を、孔径0.2μmのポリテトラフルオロエチレン製ミクロフィルターを用いてろ過して、レジスト下層膜形成組成物を調製した。
【0091】
<比較例1>
商品名TEP-TPA(旭有機材株式会社製、下記式(7))0.87gに、前記架橋剤合成例1で得た重合体0.39gを含む溶液(溶剤はPGMEA、固形分は32.20質量%)1.21g、PGME4.12g、PGMEA8.77g、及び界面活性剤(DIC株式会社製、商品名:R-40)1質量%PGMEA溶液0.026gを混合し、8.4質量%溶液とした。その溶液を、孔径0.2μmのポリテトラフルオロエチレン製ミクロフィルターを用いてろ過して、レジスト下層膜形成組成物を調製した。
【化23】
【0092】
<比較例2>
商品名TEP-DF(旭有機材株式会社製、下記式(8))0.87gに、前記架橋剤合成例1で得た重合体0.39gを含む溶液(溶剤はPGMEA、固形分は32.20質量%)1.21g、PGME4.12g、PGMEA8.77g、及び界面活性剤(DIC株式会社製、商品名:R-40)1質量%PGMEA溶液0.026gを混合し、8.4質量%溶液とした。その溶液を、孔径0.2μmのポリテトラフルオロエチレン製ミクロフィルターを用いてろ過して、レジスト下層膜形成組成物を調製した。
【化24】
【0093】
<比較例3>
商品名GNC-8(群栄化学工業株式会社製、下記式(9))0.87gを含む溶液(溶剤はPGMEA、固形分は29.10質量%)2.99gに、前記架橋剤合成例1で得た重合体0.39gを含む溶液(溶剤はPGMEA、固形分は32.20質量%)1.21g、PGME4.12g、PGMEA6.65g、及び界面活性剤(DIC株式会社製、商品名:R-40)1質量%PGMEA溶液0.026gを混合し、8.4質量%溶液とした。その溶液を、孔径0.2μmのポリテトラフルオロエチレン製ミクロフィルターを用いてろ過して、レジスト下層膜形成組成物を調製した。
【化25】
【0094】
〔溶解性試験〕
実施例1乃至実施例5、及び比較例1乃至比較例3で調製されたレジスト下層膜形成組成物に不溶物がないか確認を行った。不溶物がない場合、その結果を下記表1に“○”で表した。比較例2は調製した時点で不溶物が確認されたため、その後の評価は実施しなかった。
【0095】
〔フォトレジスト溶剤への溶出試験〕
実施例1乃至実施例5、比較例1、及び比較例3で調製されたレジスト下層膜形成組成物を、それぞれ、スピナーにより、シリコンウエハー上に塗布した。その後、ホットプレート上で下記表1に示す温度で1分間ベークし、レジスト下層膜(膜厚0.2μm)を形成した。これらのレジスト下層膜を、フォトレジスト溶液に使用される溶剤であるPGME/PGMEA混合溶剤(PGME/PGMEAの質量基準の混合比率は70/30)に浸漬し、溶剤に不溶であることを確認し、その結果を下記表1に“○”で表した。
【0096】
〔光学パラメーターの試験〕
実施例1乃至実施例5、比較例1、及び比較例3で調製されたレジスト下層膜形成組成物を、スピナーにより、シリコンウエハー上に塗布した。その後、ホットプレート上で下記表1に示す温度で1分間ベークし、レジスト下層膜(膜厚0.2μm)を形成した。そして、これらのレジスト下層膜を光エリプソメーター(J.A.Woollam社製、VUV-VASE VU-302)を用い、波長193nmでの、屈折率(n値)及び減衰係数(k値)を測定した。その結果を下記表1に示す。上記レジスト下層膜が十分な反射防止機能を有するためには、波長193nmでのk値は0.1以上、0.5以下であることが望ましい。
【0097】
【0098】
〔段差基板への被覆試験〕
平坦化性の評価として、100nm膜厚のSiO2基板で、トレンチ幅10nm、ピッチ100nmのデンスエリア(DENSE)とトレンチ幅100nm、ピッチ10μmのアイソトレンチパターンエリア(ISO)の被覆膜厚の比較を行った。実施例1乃至実施例5、比較例1、及び比較例3のレジスト下層膜形成組成物を上記基板上に240nmの膜厚で塗布後、ホットプレート上で上記表1に示す温度で1分間ベークし、レジスト下層膜(膜厚0.24μm)を形成した。この基板の段差被覆性を日立ハイテクノロジーズ株式会社製走査型電子顕微鏡(S-4800)を用いて観察し、段差基板のデンスエリア(パターン部)とアイソトレンチパターンエリアとの膜厚差(デンスエリアとアイソトレンチパターンエリアとの塗布段差でありBiasと呼ぶ)を測定することで平坦化性を評価した。各エリアでの膜厚と塗布段差の値を表2に示した。平坦化性評価はBiasの値が小さいほど、平坦化性が高い。なお、上記表1では、塗布段差50nm未満を「〇」、50nm以上を「×」として表示した。
【0099】
【0100】
平坦化性を比較すると、実施例1乃至実施例5の結果はデンスエリアとアイソトレンチパターンエリアとの塗布段差が、比較例1、及び比較例3の結果よりも小さいことから、実施例1乃至実施例5のレジスト下層膜形成組成物から得られたレジスト下層膜は平坦化性が良好と言える。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本願発明のレジスト下層膜形成組成物は基板に塗布後、焼成工程によって高いリフロー性が発現し、段差を有する基板上でも平坦に塗布でき、平坦な膜を形成することができる。また、適切な反射防止効果を有しているため、レジスト下層膜形成組成物として有用である。