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特許7416084細胞評価装置、プログラム、及び細胞評価方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】細胞評価装置、プログラム、及び細胞評価方法
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/34 20060101AFI20240110BHJP
【FI】
C12M1/34 D
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2021553750
(86)(22)【出願日】2020-11-02
(86)【国際出願番号】 JP2020041058
(87)【国際公開番号】W WO2021085648
(87)【国際公開日】2021-05-06
【審査請求日】2022-04-25
(31)【優先権主張番号】P 2019198412
(32)【優先日】2019-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(72)【発明者】
【氏名】石川 桃太郎
(72)【発明者】
【氏名】山下 真史
(72)【発明者】
【氏名】清田 泰次郎
【審査官】斉藤 貴子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/151223(WO,A1)
【文献】特開2016-123366(JP,A)
【文献】特開2011-229413(JP,A)
【文献】国際公開第2018/203568(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
時系列に撮像された細胞を含む画像を取得する画像取得部と、
ユーザーが選択した、前記細胞の評価条件を取得する評価条件取得部と、
前記評価条件取得部によって取得された前記評価条件に基づいて、前記細胞を含む画像から得られる評価指標であって、前記評価条件の正例と負例とを分離する精度を表す値が所定の値以上となる評価指標を選択し、且つ、前記評価指標の評価に用いる画像を取得するのに好適な時間を特定する評価指標選択部と、
前記特定された時間に取得された画像における、前記評価指標の指標値を算出する指標値算出部と、
前記指標値算出部によって算出された前記評価指標の指標値に基づいて、前記細胞を前記評価条件について評価する評価部と、
を備え、
前記評価指標選択部は、前記評価条件の正例と負例とを分離する精度を表す値を前記評価条件の正例群と負例群の指標値から導出する
細胞評価装置。
【請求項2】
前記評価指標選択部は、前記評価条件の正例と負例とを分離する精度を表す値に基づいて、前記時間を特定する、
請求項1に記載の細胞評価装置。
【請求項3】
前記評価指標選択部は、前記評価条件の正例と負例とを分離する精度を表す値である受信者動作特性曲線のAUCの値を前記評価条件の正例群と負例群の指標値から導出する、
請求項2に記載の細胞評価装置。
【請求項4】
前記評価指標選択部は、有意確からz検定により算出した値をサンプルサイズの平方根によって除した値を、前記評価条件の正例群と負例群の指標値に基づいて算出し、前記有意確からz検定により算出した値をサンプルサイズの平方根によって除した値を前記評価条件の正例と負例とを分離する精度を表す値とする、
請求項2に記載の細胞評価装置。
【請求項5】
前記評価条件には、細胞の歩留りの良否を評価することが含まれ、
前記評価部は、前記評価条件の正例と負例である前記細胞の歩留りの良否を評価する、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の細胞評価装置。
【請求項6】
前記評価条件には、全細胞数に対する、目的の細胞まで培養された細胞の数が増加する早さの良否を評価することが含まれ、前記評価部は、前記評価条件の正例と負例である、前記全細胞数に対する、前記目的の細胞まで培養される細胞の数が増加する早さの良否を評価する、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の細胞評価装置。
【請求項7】
前記評価条件には、前記細胞が、培養対象の細胞か否かを評価することが含まれ、
前記評価部は、前記評価条件の正例と負例である、前記細胞が培養対象の細胞か否かを評価する、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の細胞評価装置。
【請求項8】
前記評価条件には、前記細胞に対して行われる手技が均一か否かを評価することが含まれ、
前記評価部は、前記評価条件の正例と負例である、前記手技が均一か否かを評価する、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の細胞評価装置。
【請求項9】
前記評価部は、前記細胞を評価した結果、負例が成立すると評価した場合、前記評価指標とは異なる評価指標を用いて、再度、前記細胞を評価する、
請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の細胞評価装置。
【請求項10】
コンピュータに、
時系列に撮像された細胞を含む画像を取得させ、
前記細胞の評価条件を取得させ、
取得された前記評価条件に基づいて、前記細胞を含む画像から得られる評価指標であって、前記評価条件の正例と負例とを分離する精度を表す値が所定の値以上となる評価指標を選択させるとともに、前記評価指標の評価に用いる画像を取得するのに好適な時間を特定させ、
前記特定された時間に取得された前記画像における、前記評価指標の指標値を算出させ、
前記算出された前記評価指標の指標値に基づいて、前記細胞を前記評価条件について評価させ、
前記評価条件の正例と負例とを分離する精度を表す値を前記評価条件の正例群と負例群の指標値から導出させる
プログラム。
【請求項11】
時系列に撮像された細胞を含む画像を取得することと、
前記細胞の評価条件を取得することと、
取得された前記評価条件に基づいて、前記細胞を含む画像から得られる評価指標であって、前記評価条件の正例と負例とを分離する精度を表す値が所定の値以上となる評価指標を選択し、且つ、前記評価指標の評価に用いる画像を取得するのに好適な時間を特定することと、
前記特定された時間に取得された前記画像における、前記評価指標の指標値を算出することと、
前記算出された前記評価指標の指標値に基づいて、前記細胞を前記評価条件について評価することと、
前記評価条件の正例と負例とを分離する精度を表す値を前記評価条件の正例群と負例群の指標値から導出することと、
を含む細胞評価方法。
【請求項12】
前記時間を特定することは、前記評価条件の正例と負例とを分離する精度を表す値に基づいて特定することを含む、
請求項11に記載の細胞評価方法。
【請求項13】
前記評価指標を選択することは、受信者動作特性曲線のAUCの値を前記評価条件の正例群と負例群の指標値から、前記評価条件の正例と負例とを分離する精度を表す値を導出することを含む、
請求項11又は請求項12に記載の細胞評価方法。
【請求項14】
前記評価指標を選択することは、有意確からz検定により算出した値をサンプルサイズの平方根によって除した値を、前記評価条件の正例群と負例群の指標値に基づいて算出し、前記有意確からz検定により算出した値をサンプルサイズの平方根によって除した値を前記評価条件の正例と負例とを分離する精度を表す値とする、
請求項11又は請求項12に記載の細胞評価方法。
【請求項15】
前記評価条件には、細胞の歩留りの良否の評価することが含まれ、
前記評価することは、前記評価条件の正例と負例である、前記細胞の歩留りの良否を評価することを含む、
請求項11から請求項14のいずれか一項に記載の細胞評価方法。
【請求項16】
前記評価条件には、全細胞数に対する、目的の細胞まで培養された細胞の数が増加する早さの良否を評価することが含まれ、
前記評価することは、前記評価条件の正例と負例である、全細胞数に対する、前記目的の細胞まで培養された細胞の数が増加する早さの良否を評価することを含む、
請求項11から請求項14のいずれか一項に記載の細胞評価方法。
【請求項17】
前記評価条件には、前記細胞が、培養対象の細胞か否かを評価することが含まれ、
前記評価することは、前記評価条件の正例と負例である、前記細胞が、培養対象の細胞か否かを評価することを含む、
請求項11から請求項14のいずれか一項に記載の細胞評価方法。
【請求項18】
前記評価条件には、前記細胞に対して行われる手技が均一か否かを評価することが含まれ、
前記評価することは、前記評価条件の正例と負例である、前記手技が均一か否かを評価することを含む、
請求項11から請求項14のいずれか一項に記載の細胞評価方法。
【請求項19】
前記評価することは、前記細胞を評価した結果、負例が成立すると評価した場合、前記評価指標とは異なる評価指標を用いて、再度、前記細胞を評価することを含む、
請求項11から請求項18のいずれか一項に記載の細胞評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞評価装置、プログラム、及び細胞評価方法に関するものである。
本願は、2019年10月31日に、日本に出願された特願2019-198412号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
近年、幹細胞から分化細胞への分化誘導法を確立し、細胞の安定した培養に関する技術が知られている。特許文献1には、組織再構築に基づくヒト機能細胞の終末分化誘導法による細胞の培養に関する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2013/047639号
【発明の概要】
【0004】
ここで、細胞は、さまざまな評価条件によって評価される場合がある。この評価条件とは、例えば、品質、歩留まりや培養の早さ等である。この場合、細胞は、評価条件に応じた評価指標に基づいて評価されることが好ましい。
【0005】
そこで、本発明は、さまざまな評価条件によって細胞の状態を評価する細胞評価装置、プログラム、及び細胞評価方法を提供することを目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】第1実施形態に係る細胞評価システムの一例を示す図である。
図2】第1実施形態に係る評価情報の内容の一例を示す図である。
図3】第1実施形態に係る細胞評価装置の構成の一例を示す図である。
図4】ユーザに評価条件を選択させる際に表示装置に表示させる画像の一例を示す図である。
図5】第1実施形態に係る接着細胞領域指標の効果量の一例を示す図である。
図6】第1実施形態に係る指標値の符号変換の一例を示す図である。
図7】第1実施形態に係る評価指標群の一例を示す図である。
図8】第1実施形態に係る細胞評価装置の動作の一例を示す流れ図である。
図9図8に示すステップS130の処理の詳細を示す流れ図である。
図10】AUCのしきい値及び評価完了時間のしきい値を取得する際に表示される画像の一例を示す図である。
図11】評価指標の評価に用いる好適な時間を特定する他の例を示す図である。
図12】対象細胞の種類を取得する際に表示される画像の一例を示す図である。
図13】同一作業者の手技起因による培養の状態の不均一性を評価する場合の評価情報の内容の一例を示す図である。
図14】他の評価指標群を使用し、対象細胞を評価する処理の一例を示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
[第1実施形態]
以下、図面を参照して細胞評価装置及びプログラムに係る第1実施形態について説明する。
【0008】
<細胞評価システム1の概要>
図1は、第1実施形態に係る細胞評価システム1の一例を示す図である。図1に示される通り、細胞評価システム1は、細胞評価装置10と、記憶部20と、撮像部30と、表示装置40と、入力装置50と、を備える。細胞評価装置10には、記憶部20と、撮像部30と、表示装置40と、入力装置50とが接続される。なお、細胞評価システム1には、細胞を培養するためのインキュベータが設けられていてもよい。この場合、インキュベータの中には、培地と共に培養する細胞が含まれた培養容器が入っており細胞が培養されている。なお、細胞評価システム1にインキュベータが設けられていなくてもよく、細胞評価システム1の外にあるインキュベータから不図示の搬送装置で評価する細胞(培養容器)を細胞評価システム1に搬送し、評価してもよい。
【0009】
撮像部30は、培地(図示する培地)中において培養される細胞(以下、対象細胞TC)を時系列に撮像(タイムラプス撮像)する。撮像部30は、対象細胞TCを撮像し、生成した画像(以下、対象画像TP)を細胞評価装置10に供給する。以下、撮像部30が備える撮像素子の各画素における信号強度を表す画像データについても、単に「画像」と記載する。記憶部20は、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、フラッシュメモリ、またはこれらのうち複数が組み合わされたハイブリッド型記憶装置などにより実現される。記憶部20には、評価情報21が記憶される。評価情報21の詳細については後述する。
【0010】
細胞評価装置10は、対象画像TPと、評価情報21とに基づいて、対象画像TPに示される対象細胞TCをさまざまな評価条件によって評価する。細胞評価装置10は、対象細胞TCを評価した評価結果を示す評価結果画像を表示装置40に出力する。表示装置40は、細胞評価装置10から出力された評価結果画像を表示する。表示装置40は、例えば、液晶ディスプレイパネルや、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイパネル等である。入力装置50は、細胞評価装置10の使用者(以下、単に「ユーザ」と記載する。)による情報の入力を受け付ける。入力装置50は、例えば、キーボード、マウス及びタッチパッド等である。
【0011】
図2は、第1実施形態に係る評価情報21の内容の一例を示す図である。評価情報21は、対象細胞TCとの種類と、培地中において対象細胞TCを培養した期間と、当該期間においてタイムラプス撮像された複数の教師画像PP(図示する、教師画像PP11~PP1n)と、教師画像PPが取得された日時と、対象細胞TCを評価する評価指標MKと、対応付けられた教師画像PPに基づいて算出された各評価指標MKの値(以下、指標値MKV)と、培養の手順(以下、プロトコール)と、各評価条件CD1~CD3の評価結果とが、複数の教師画像PPのセットを識別可能な識別情報(図示するセットID)毎に対応付けられた情報である。教師画像PPは、例えば、対象画像TPが撮像されるよりも以前に撮像された画像である。以降の説明において、評価情報21には、ある特定の種類の細胞(図示する「〇〇細胞」)について取得されたデータが含まれる場合について説明する。特定の種類の細胞は、例えば、体細胞(神経細胞、血液細胞、膵臓細胞、腎臓細胞、心臓細胞など)、生殖細胞、幹細胞(iPS細胞、ES細胞、Muse細胞など)、がん細胞等、既存の細胞である。
【0012】
評価情報21には、例えば、接着細胞領域指標MK1と、浮遊細胞領域指標MK2と、凝集細胞領域指標MK3と、非細胞領域指標MK4とのうち、少なくともいずれか1つの評価指標MKが含まれる。接着細胞領域指標MK1は、教師画像PPのうち、培養容器に接着している単層の細胞の領域の面積を示す指標である。浮遊細胞領域指標MK2は、教師画像PPのうち、細胞が培養容器に接着せず、培地中を浮遊している細胞の領域の面積を示す指標である。凝集細胞領域指標MK3は、教師画像PPのうち、培養容器に接着している、複数の細胞が凝集した多層の細胞の領域の面積を示す指標である。非細胞領域指標MK4は、教師画像PPのうち、細胞が存在していない領域の面積を示す指標である。
【0013】
プロトコールは、例えば、培養に用いられる培地の種類、培地に添加される溶液の種類、培地に添加される試薬の種類、細胞の状態の検出に用いられる色素の種類及び培養の各工程の順序(例えば、培地の交換タイミング)等である。
【0014】
評価結果は、対象細胞TCの培養が完了したタイミングで、評価条件CD1~CD3によって最終的にユーザの目視によって評価した結果(例えば、品質が良い/悪い、歩留まりが良い/悪い、培養の早さが早い/遅い)である。
【0015】
評価条件CD1(細胞の品質の良否を評価すること)によってユーザが教師画像PPを目視によって評価する場合は、同様の培養した細胞の形態や色などに基づいて、複数の一連の培養で取得した画像を細胞の品質が良い教師画像と細胞の品質が悪い教師画像とに選別する。この場合、目視によって評価する教師画像PPは、培養の終了時刻の近傍で撮影された画像が好ましい。例えば、培養終了時刻の近傍で撮影された教師画像について細胞の品質が良いと評価した場合、その教師画像を含む一連の培養で取得した画像について同じ評価をしてもよい(細胞の品質が悪いと評価した場合も同様)。なお、一連の培養で目視によって評価する教師画像PPは1枚でもよいし、複数枚でもよい。また、培養の終了時刻の近傍で撮影された画像でなくてもよい。また、細胞の品質を目視で評価する方法は他の既存の方法を用いてもよい。
【0016】
また、評価条件CD2(細胞の歩留りの良否を評価すること)によってユーザが教師画像PPを目視によって評価する場合は、培養した細胞が存在する領域の面積などに基づいて、複数の一連の培養で取得した画像を細胞の歩留りが良い教師画像と細胞の歩留りが悪い教師画像とに選別する。この場合、目視によって評価する教師画像PPは、培養の終了時刻の近傍で撮影された画像が好ましい。例えば、培養終了時刻の近傍で撮影された教師画像について細胞の歩留りが良いと評価した場合、その教師画像を含む一連の培養で取得した画像について同じ評価をしてもよい(細胞の歩留りが悪いと評価した場合も同様)。なお、一連の培養で目視によって評価する教師画像PPは1枚でもよいし、複数枚でもよい。また、培養の終了時刻の近傍で撮影された画像でなくてもよい。なお、細胞の歩留りを目視で評価する方法は他の既存の方法を用いてもよい。
【0017】
また、評価条件CD3(目的の細胞まで培養される早さの良否を評価すること)によってユーザが教師画像PPを目視によって評価する場合は、目的とする細胞の数や全細胞数に対する割合などに基づいて、複数の一連の培養で取得した画像を目的の細胞まで培養される早さが早い(つまり、早さが良の)教師画像と目的の細胞まで培養される早さが遅い(つまり、早さが否の)教師画像を選別する。そして、任意の教師画像について、目的の細胞まで培養される早さが早いと評価した場合、その教師画像を含む一連の培養で取得した画像について同じ評価をしてもよい(目的の細胞まで培養される早さが遅い場合も同様)。なお、一連の培養で目視によって評価する教師画像PPは1枚でも複数枚でもよい。また、目的とする細胞まで培養される早さを目視で評価する方法は他の既存の方法を用いてもよい。
【0018】
評価情報21は、細胞評価装置10によって生成されてもよく、他の装置によって生成された評価情報21が予め記憶部20に記憶されてもよい。以下、細胞評価装置10が評価情報21を生成する場合の処理について説明する。
【0019】
細胞評価装置10が評価情報21を生成する場合、細胞評価装置10は、タイムラプス撮像された複数の教師画像PPと、教師画像PPに係る情報とを他の装置から取得する。教師画像PPに係る情報とは、教師画像PPを撮像した日時と、教師画像PPが取得されたタイミングにおいて適用されていたプロトコールとを教師画像PP毎に示す情報である。細胞評価装置10は、取得した教師画像PP毎に、接着細胞領域指標MK1、浮遊細胞領域指標MK2、凝集細胞領域指標MK3、及び非細胞領域指標MK4の各指標値MKVを算出する。また、細胞評価装置10は、取得した複数の教師画像PPのうち、教師画像PPに示される細胞の培養が完了したタイミングに取得された教師画像PP(つまり、最新の日時に取得された教師画像PP)を表示装置40に表示させる。ユーザは、表示装置40に表示された教師画像PPを、評価条件CD1~CD3によって評価し、評価結果を入力装置50に入力する。細胞評価装置10は、入力装置50によって入力された評価結果を取得する。そして、細胞評価装置10は、取得した複数の教師画像PPと、教師画像PPが取得された日時と、各評価指標MKの指標値MKVと、プロトコールと、培養が完了したタイミングにおける評価条件CDの評価結果とを互いに対応付けて、評価情報21を生成し、記憶部20に記憶させる。
【0020】
なお、上述では、評価情報21に含まれる評価結果が、対象細胞TCの培養が完了したタイミングで、最終的にユーザの目視によって評価した評価結果である場合について説明したが、これに限られない。評価情報21には、例えば、教師画像PP毎の評価結果が対応付けられていてもよい。この場合、細胞評価装置10は、取得した教師画像PPをそれぞれ表示装置40に表示させる。ユーザは、表示装置40に表示された教師画像PPを、評価条件CD1~CD3によって評価し、評価結果を入力装置50に入力する。細胞評価装置10は、入力装置50によって入力された評価結果を取得する。そして、細胞評価装置10は、取得した複数の教師画像PPと、教師画像PPが取得された日時と、対象細胞TCを評価する各評価指標MKの指標値MKVと、プロトコールと、評価条件CDと評価結果とを互いに対応付けて、評価情報21を生成し、記憶部20に記憶させる。
【0021】
また、上述では、評価情報21の各教師画像PPには、細胞評価装置10が評価する全ての評価条件CDと、各評価条件CDの評価結果とが対応付けられる場合について説明したが、これに限られない。評価情報21の各教師画像PPには、例えば、細胞評価装置10が評価する評価条件CDのうち、一部の評価条件CDと、当該評価条件CDの評価結果とが対応付けられる構成であってもよい。
【0022】
また、評価情報21には、教師画像PPが取得された日時に代えて(或いは、加えて)、細胞の培養が開始されてから経過した時間が対応付けられてもよい。また、評価情報21には、必ずしも、プロトコールと、評価結果とが含まれていなくてもよい。
【0023】
<細胞評価装置10の概要について>
図3は、第1実施形態に係る細胞評価装置10の構成の一例を示す図である。図3に示される通り、細胞評価装置10は、制御部100を備える。制御部100は、CPU(Central Processing Unit)などのハードウェアプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。制御部100は、例えば、対象画像取得部110と、評価条件取得部120と、評価指標抽出部130と、指標値算出部140と、評価部150と、表示制御部160と、をその機能部として備える。また、これらの構成要素のうち一部または全部(内包する記憶部を除く)は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)などのハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。
【0024】
対象画像取得部110は、撮像部30から対象画像TPを取得する。対象画像取得部110は、取得した対象画像TPを指標値算出部140に供給する。評価条件取得部120は、入力装置50に対する入力された情報であり、ユーザによって選択された評価条件CD1~CD3のうち、少なくともいずれか一つを示す情報を取得する。図4は、ユーザに評価条件CDを選択させる際に表示装置40に表示させる画像IM1の一例を示す図である。例えば、表示装置40には、細胞評価装置10の制御に基づいて、評価条件CDの入力を促す画像IM1が表示される。この画像IM1は、例えば、対象細胞TCの評価条件CDとして、対象細胞TCの品質の良否を評価すること(以下、評価条件CD1)、対象細胞TCの歩留りの良否を評価すること(評価条件CD2)、及び対象細胞TCが目的の細胞まで培養される早さの良否を評価すること(以下、評価条件CD3)のうち、どの評価条件CDによって対象細胞TCを評価するかをユーザに選択させる画像である。ユーザは、画像IM1に示される評価条件CDのうち、いずれか一つの評価条件CDを選択する操作を入力装置50に入力する。
【0025】
図3に戻り、評価条件取得部120は、ユーザによって選択された評価条件CDを入力装置50から取得し、評価指標抽出部130に供給する。評価指標抽出部130は、評価条件取得部120から取得した評価条件CDと、評価情報21とに基づいて、当該評価条件CDを評価する際に用いられる評価指標MKを評価情報21から抽出する。評価指標抽出部130は、評価情報21から抽出した評価指標MKの指標値MKVに基づいて、評価部150の評価に用いられる評価指標MK同士の組合せ(以下、評価指標群MKS)を導出する。なお、評価指標抽出部130は、数ある評価指標MKの中から、特定の評価指標MKを選択するため、評価指標選択部とも言い換えられる。
【0026】
指標値算出部140は、対象画像取得部110から取得した対象画像TPと、評価指標抽出部130によって導出された評価指標群MKSとに基づいて、評価指標群MKSに含まれる評価指標MKの指標値MKVを、対象画像TPに基づいて算出する。評価部150は、指標値算出部140によって算出された指標値MKVに基づいて、対象画像TPに示される対象細胞TCを、評価条件CDによって評価する。表示制御部160は、評価部150の評価結果を示す評価結果画像を表示装置40に表示させる。
【0027】
以下、制御部100の各部のうち、評価指標抽出部130、指標値算出部140及び評価部150の詳細について説明する。
【0028】
<評価指標抽出部130について>
以下、評価指標抽出部130の処理の詳細について説明する。まず、評価指標抽出部130は、評価情報21の中で、評価条件取得部120から取得した評価条件CDが対応付けられた評価指標MKであり、評価条件CDの正例が対応付けられた評価指標MKのみ、評価条件CDの負例が対応付けられた評価指標MKのみ、又は評価条件CDの正例が対応付けられた評価指標MKと負例が対応付けられた評価指標MKの両方を取得する。以下、評価指標抽出部130が評価条件CDの正例が対応付けられた評価指標MKと負例が対応付けられた評価指標MKの両方を取得するものとする。評価条件CDの正例は、例えば、評価条件CD1の場合「品質が良い」ことであり、評価条件CD2の場合「歩留まりが良い」ことであり、評価条件CD3の場合「培養の早さが早い」ことである。評価条件CDの負例は、例えば、評価条件CD1の場合「品質が悪い」ことであり、評価条件CD2の場合「歩留まりが悪い」ことであり、評価条件CD3の場合「培養の早さが遅い」ことである。
【0029】
次に、評価指標抽出部130は、評価情報21から抽出した指標値MKVの中で、正例が対応付けられた一以上の指標値MKVと、負例が対応付けられた一以上の評価指標MKとについて、それぞれ評価に用いる好適な時間を特定する。以下、正例が対応付けられた一以上の評価指標MKのグループを正例群と記載し、負例が対応付けられた一以上の評価指標MKのグループを負例群と記載する。評価指標抽出部130は、抽出された正例群と、負例群との有意差検定を評価指標MK毎に行う。以下、評価指標抽出部130が評価指標MKのうち、接着細胞領域指標MK1の有意差検定を行う場合について説明する。評価指標抽出部130は、正例群の接着細胞領域指標MK1の指標値MKVと、負例群の接着細胞領域指標MK1の指標値MKVとに基づいて、マン・ホイットニーのU検定より、有意確率(p値)を算出する。ここで、p値は、正例群の数と、負例群の数と総和(サンプル数)によって変化する。このため、評価指標抽出部130は、算出したp値からz検定によりz値を算出し、効果量rを算出する。効果量rは、z値をサンプル数の平方根によって除した値であり、式(1)によって定められる。一般に、効果量rが0.5以上であれば、有意差があるといえる。
【0030】
【数1】
【0031】
図5は、第1実施形態に係る接着細胞領域指標MK1の効果量rの一例を示す図である。評価指標抽出部130は、対象細胞TCの培養を開始してから経過した時間であって、効果量rが0.5以上である値(例えば、最大値)を示す時間を、評価指標MKの評価に用いる好適な時間として特定する。図5に示される一例では、接着細胞領域指標MK1の効果量rは、対象細胞TCの培養を開始してから246時間が経過したタイミングにおいて、最も大きい値を示す。したがって、評価指標抽出部130は、対象細胞TCの培養を開始してから246時間後を、接着細胞領域指標MK1を評価に用いる好適な時間として特定する。評価指標抽出部130は、上述した処理を、各評価指標MKに対して行い、各評価指標MKを評価に用いる好適な時間を特定する。なお、評価指標抽出部130は、評価指標MKの評価に用いる好適な時間として、効果量rが0.5以上である値を示す時間を特定したがこれに限られない。例えば、効果量rが0.5より大きい値以上を示す時間を評価指標MKの評価に用いる好適な時間として特定してもよいし、効果量rが0.5以下の値となる時間を評価指標MKの評価に用いる好適な時間として特定してもよい。
【0032】
次に、評価指標抽出部130は、評価条件CDの正例と、負例とを精度高く分離できる評価指標群MKSを特定する。図6は、第1実施形態に係る指標値MKVの符号変換の一例を示す図である。ここで、指標値MKVは、いずれの評価指標MKにおいても変化の方向が一致することが好ましい。具体的には、指標値MKVは、負例群の指標値MKVから正例群の指標値MKVに昇順に変化することが好ましい。これに伴い、評価指標抽出部130は、ある評価指標MKの正例群の指標値MKVの平均値が、負例群の指標値MKVの平均値より小さい場合、指標値MKVの符号を反転し、負例群の指標値MKVから正例群の指標値MKVに昇順に変化するように値を変換する変換処理を行う。なお、評価指標抽出部130は、予め、正例群の指標値MKVの平均値が負例群の指標値MKVの平均値よりも大きい場合は、値を変換しなくてもよい。
【0033】
なお、評価指標抽出部130は、指標値MKVの変化の方向が一致すればよいため、例えば、負例群の平均値が正例群の平均値より小さい評価指標MKについて、その指標値MKVの符号を反転し、正例群の指標値MKVから負例群の指標値MKVに昇順に変化するように値を変換してもよい。また、評価指標抽出部130は、ある評価指標MKの正例群の平均値が、負例群の平均値より小さい場合、指標値MKVの符号を反転したが、平均値の比較でなくてもよい。例えば、評価指標抽出部130は、ある評価指標MKの正例群の最大値が、負例群の最大値より小さい場合、指標値MKVの符号を反転するようにしてもよい。
【0034】
また、本実施形態において、接着細胞領域指標MK1、浮遊細胞領域指標MK2、凝集細胞領域指標MK3、及び非細胞領域指標MK4は、いずれも面積に係る評価指標MKであるが、対象細胞TCの評価には、面積ではない評価指標MKが用いられる場合がある。
この場合、指標値MKVは、それぞれスケールが異なる可能性がある。これに伴い、評価指標抽出部130は、各指標値MKVのスケールをそろえる標準化処理を行う。具体的には、評価指標抽出部130は、各指標値MKVの平均が「0」であって、分散が「1」となる標準化処理を行う。具体的には、各指標値MKVを式(2)によって変換する。
【0035】
【数2】
【0036】
評価指標抽出部130は、上述した符号変換処理が行われた指標値MKVと、効果量rとに基づいて、指標値MKVに重み付けを行う。ここで、効果量rは、「0」から「1」までのいずれかの値をとり、値が「1」に近いほど、有意差がある。評価指標抽出部130は、式(3)によって指標値MKVに重み付けを行う。
【0037】
【数3】
【0038】
評価指標抽出部130は、重み付けが行われた後の指標値MKVに基づいて、評価条件CDの正例と、負例とを精度高く分離できる評価指標群MKSを特定する。評価指標抽出部130は、指標値MKVについて、正例群と、負例群とからROC(Receiver Operating Characteristic)曲線を導出し、全ての評価指標MKの組み合わせのうち、評価条件CDの正例と負例とを分離する精度を表す値であるAUC(Area Under the Curve)が「1」に近い(つまり、正例と、負例との分離精度の高い)評価指標群MKSを特定する。なお、評価指標MKの組み合わせに対するAUCの値によっては評価指標群MKSに含まれる評価指標MKは1つになるが、評価指標MKが1つであっても評価指標群MKSと称する。なお、ROC曲線の導出方法やAUCの算出方法は既知であるため、その方法の説明は省略する。なお、評価指標抽出部130は、AUCの値が最も「1」に近い評価指標群MKSを特定しなくてもよい。
【0039】
図7は、第1実施形態に係る評価指標群MKSの一例を示す図である。図7は、対象細胞TCを評価条件CD1によって評価する際に用いられる評価指標群MKSの一例を示す図である。図7に示される一例において、最も分離精度が高い(つまり、AUCの値が高い(図示では、AUC=0.957))評価指標群MKSには、対象細胞TCの培養を開始してから162時間後の浮遊細胞領域指標MK2と、対象細胞TCの培養を開始してから162時間後の凝集細胞領域指標MK3と、対象細胞TCの培養を開始してから147時間後の接着細胞領域指標MK1とが含まれる。
【0040】
ここで、評価条件CDの正例と負例とを分離する精度を表す値は、評価条件CDの良否を分離する精度を表す値と言い換えることができる。このため、評価条件CDの良否を分離する精度を表す値はAUCに限られない。例えば、上述の効果量rも評価条件CDの良否を分離する精度を表す値であるし、正例と負例を分離する精度を求める他の公知の方法を用いてもよい。なお、正例と負例を分離する精度とは、評価する対象(評価条件CD1の場合は細胞の品質)が正例と負例とを正確に分離できる程度であり、当該精度が高ければ高いほど、より正確に評価する対象を正例と負例とに分離できる。
【0041】
なお、評価指標抽出部130は、評価情報21に基づいて、予め分離精度の値と、評価指標群MKSと、評価条件CDとを対応付ける処理を行い、当該処理によって生成された評価情報21を記憶部20に記憶させてもよい。また、効果量rによる評価指標MKの重み付けは必ずしも行われなくてもよい。
【0042】
<指標値算出部140について>
以下、指標値算出部140の処理の詳細について説明する。まず、指標値算出部140は、例えば、評価指標抽出部130が対応付けた評価指標群MKSのうち、最も分離精度が高い評価指標群MKSを用いて、指標値MKVを算出する。例えば、図7に示される評価指標群MKSのうち、最も分離精度が高い評価指標群MKSに基づいて指標値MKVを算出する場合、指標値算出部140は、対象細胞TCの培養開始から162時間後の対象画像TPに基づく浮遊細胞領域指標MK2の指標値MKVと、対象細胞TCの培養開始から162時間後の対象画像TPに基づく凝集細胞領域指標MK3の指標値MKVと、対象細胞TCの培養開始から147時間後の対象画像TPに基づく接着細胞領域指標MK1を算出する。指標値算出部140が算出する指標値MKVには、上述した符号変換処理や重み付けが行われる。なお、指標値MKVのスケールが異なる場合には、指標値算出部140は、上述した標準化処理を行ってもよい。
【0043】
指標値算出部140が指標値MKVを算出するタイミングは、例えば、対象画像取得部110から対象画像TPを取得するタイミングと同じタイミングである。なお、指標値算出部140が指標値MKVを算出するタイミングは、対象画像TPを取得するタイミングと異なるタイミングであってもよい。一例として、指標値算出部140が、対象画像TPを取得してから所定の時間毎に指標値MKVを算出してもよい。この所定の時間とは、例えば、細胞の変化を検出可能な時間間隔(例えば、数時間毎)であってもよい。また、指標値算出部140は、評価指標群MKSに含まれる評価指標MKが複数である場合、各指標値MKVの総和を(以下、総指標値MKVT)算出する。評価指標群MKSに含まれる評価指標MKが1つである場合、指標値算出部140は、当該評価指標MKの指標値MKVを総指標値MKVTとして算出する。なお、評価指標抽出部130は、各総指標値MKVTに代えて、複数の指標値MKVの平均値や中央値等の統計値を評価部150に供給してもよい。
【0044】
<評価部150について>
以下、評価部150の処理の詳細について説明する。評価部150は、指標値算出部140によって算出された総指標値MKVTに基づいて、対象画像TPに示される対象細胞TCを、ユーザによって入力された評価条件CDによって評価する。評価部150は、例えば、指標値算出部140が算出した総指標値MKVTに所定の値を乗じた値をしきい値として、対象細胞TCを評価する。なお、評価指標MK毎に評価するしきい値が異なる場合、総指標値MKVTに所定の値を乗じた値は、評価指標MK毎のしきい値の総和であってもよいし、評価指標MK毎のしきい値の平均値に評価指標群MKSに含まれる評価指標MKの数を乗じた値であってもよい。例えば、図7に示される評価指標群MKSのうち、最も分離精度が高い評価指標群MKSには、評価指標MKが三つ含まれる。この場合、評価部150は、所定の値に「3」を乗じた値であるしきい値と、指標値算出部140によって算出された総指標値MKVTとを比較し、対象細胞TCを評価する。評価部150は、例えば、総指標値MKVTの総和がしきい値以上である場合、評価条件CDの正例が成立する状態であると対象細胞TCを評価する。また、評価部150は、総指標値MKVTがしきい値未満である場合、評価条件CDの負例が成立する状態であると対象細胞TCを評価する。評価部150は、評価結果を示す情報を表示制御部160に供給する。なお、評価部150は、評価指標抽出部130から取得した総指標値MKVTが指標値MKVの統計値(例えば、平均値や中央値)である場合、当該統計値のしきい値を用いて対象細胞TCを評価するものとする。
【0045】
<細胞評価装置10の動作について>
図8は、第1実施形態に係る細胞評価装置10の動作の一例を示す流れ図である。対象画像取得部110は、撮像部30によって撮像された対象画像TPを取得する。(ステップS110)。次に、評価条件取得部120は、入力装置50に入力された評価条件CDを取得する(ステップS120)。次に、評価指標抽出部130は、取得された評価条件CDと、評価情報21とに基づいて、評価指標群MKSを導出する(ステップS130)。ステップS130の処理の詳細については、後述する。次に、指標値算出部140は、評価指標抽出部130によって導出された評価指標群MKSに基づいて、対象画像TPに示される対象細胞TCの総指標値MKVTを算出する(ステップS140)。指標値算出部140は、例えば、評価指標抽出部130によって導出された評価指標群MKSに対して効果量rに係る重み付けを行い、総指標値MKVTを算出する。次に、評価部150は、指標値算出部140によって算出された総指標値MKVTに基づいて、対象画像TPに示される対象細胞TCを、評価条件CDによって評価する(ステップS150)。評価部150は、総指標値MKVTがしきい値以上である場合(ステップS150;YES)、対象細胞TCが評価条件CDの正例が成立する状態であると評価(判定)する(ステップS160)。また、評価部150は、指標値MKV又は各総指標値MKVTがしきい値未満である場合(ステップS150;NO)、対象細胞TCが評価条件CDの負例が成立する状態であると評価(判定)する(ステップS170)。表示制御部160は、評価部150によって評価された評価結果を示す評価結果画像を表示装置40に表示する(ステップS180)。
【0046】
図9は、図8に示すステップS130の処理の詳細を示す流れ図である。まず、評価指標抽出部130は、評価条件取得部120によって取得された評価条件CDに基づいて、当該評価条件CDに係る、正例群の指標値MKVを評価情報21から抽出する(ステップS200)。次に、評価指標抽出部130は、当該評価条件CDに係る負例群の指標値MKVを評価情報21から抽出する(ステップS202)。評価指標抽出部130は、正例群の指標値MKVと、負例群の指標値MKVとに基づいて、効果量rを算出する(ステップS204)。次に、評価指標抽出部130は、負例群の指標値MKVから正例群の指標値MKVに昇順に変化するように、指標値MKVに符号変化処理を行う(ステップS206)。次に、評価指標抽出部130は、符号変換処理を行った後の指標値MKVに効果量rに基づく重み付けを行う(ステップS208)。次に、評価指標抽出部130は、重み付けが行われた後の指標値MKVに基づいて、評価条件CDの正例と負例とを分離する精度を表す値であるAUCが「1」に近い(つまり、正例と、負例との分離精度の高い)評価指標群MKSを特定する(ステップS210)。
【0047】
なお、ステップS200~S202において取得された指標値MKVが、すでに負例群の指標値MKVから正例群の指標値MKVまで昇順である場合には、ステップS206の処理を行わなくてもよい。また、指標値MKVのスケールがそれぞれ異なる場合、ステップS206の処理に代えて(或いは、加えて)、指標値MKVを標準化する標準化処理を行ってもよい。
【0048】
また、上述では、評価条件取得部120が、評価条件CD1~CD3のうち、いずれか一つを取得する場合について説明したが、これに限られない。例えば、評価条件取得部120は、評価条件CD1~CD3のうち、複数の評価条件CDを取得してもよい。この場合、ユーザは、表示装置40に表示される画像IM1(図4参照)を参照し、複数の評価条件CDを選択する操作を入力装置50に入力する。
なお、上述では、評価条件取得部120が評価条件CDを取得(ステップS120)した後に、評価指標抽出部130が評価指標群MKSを導出(ステップS130)したが、評価指標抽出部130は、予め評価指標群MKSを導出してもよい。この場合、例えば、評価指標抽出部130は、予め撮像部30で取得された一連の対象画像TP(教師画像PP)を用いて評価条件CD毎の評価指標群MKSを導出し、記憶部20に記憶させておく。そして、評価条件取得部120が評価条件CDを取得(ステップS120)した後、ステップS140において、指標値算出部140は取得された評価条件に対応する評価指標群MKSを記憶部20から読み出し、その評価指標群MKSの総指標値MKVTを算出するようにしてもよい。言い換えると、細胞評価装置10の動作としては、図8のステップS130(図9のサブルーチン)が予め実行され、その後、ステップS110からS180の内、ステップS130を抜いた動作が上述のように実行される。
【0049】
また、上述では、細胞評価装置10が、評価指標群MKSと指標値MKVの好適な時刻との両方を取得する場合について説明したが、これに限られない。評価指標抽出部130は、例えば、評価指標群MKSのみを導出するものであってもよく、指標値MKVの好適な時間のみを算出するものであってもよい。評価指標群MKSのみを用いる場合、評価指標抽出部130は、評価指標MK毎に各時刻におけるAUCの値の平均値を算出する。そして、評価指標抽出部130は、各指標値MKVの平均値としきい値とを比較し、しきい値以上となる評価指標群MKSを導出する。指標値MKVの好適な時間のみを算出する場合、評価指標抽出部130は、評価指標MK毎に各時刻における効果量rの平均値を算出する。そして、評価指標抽出部130は、各指標値MKVの平均値としきい値とを比較し、しきい値以上となる評価指標群MKSを導出する。なお、評価指標抽出部130は、平均値に代えて、他の統計値が用いて評価指標群MKSを導出してもよい。
【0050】
<ACUの値や評価完了時間を指定する場合について>
なお、上述では、入力装置50によって評価条件CDのみを受け付ける場合について説明したが、これに限られない。入力装置50は、例えば、評価に係る情報であれば、評価条件CD以外の情報を受け付ける構成であってもよい。図10は、AUCのしきい値及び評価完了時間のしきい値を取得する際に表示される画像IM2の一例を示す図である。図10に示される通り、表示制御部160は、表示装置40にAUCのしきい値及び対象細胞TCの培養が開始されてから評価条件CDによる評価を完了するまでの時間(以下、評価完了時間)のしきい値を受け付ける画像IM2を表示させる。入力装置50には、AUCのしきい値がユーザによって入力される。この場合、評価指標抽出部130は、入力装置50によって受け付けられたAUCのしきい値以上である評価指標群MKSを特定する。これにより、細胞評価装置10は、ユーザの所望の分離精度が保たれた評価指標群MKSによって、対象細胞TCを評価することができる。また、入力装置50には、評価完了時間のしきい値がユーザによって入力される。この場合、評価指標抽出部130は、効果量rが0.5以上となる時間が、入力装置50が受け付けた評価完了時間までの時間である評価指標群MKSを特定する。これにより、細胞評価装置10は、ユーザの所望の評価完了時間までに対象細胞TCを評価することができる。なお、AUCの値を表示装置40に表示しなくてもよい。例えば、AUCの値の大きさに応じて高、中、及び低の3つに分けて表示装置40に表示し、いずれかの選択を受け付けるようにしてもよい。また、画像IM2は、AUCのしきい値と、評価完了時間とのうち、いずれか一方を受け付ける画像であってもよい。また、画像IM2の縦軸は、AUCに代えて効果量rであってもよい。
【0051】
<評価指標MKを評価に用いる好適な時間の特定方法の他の例>
また、上述では、評価指標抽出部130は、対象細胞TCの培養を開始してから効果量rが0.5以上である値(例えば、最大値)を示す時間を、評価指標MKの評価に用いる好適な時間として特定する場合について説明したが、これに限られない。評価指標抽出部130は、例えば、効果量r以外の値に基づいて、評価指標MKの評価に用いる好適な時間を特定する構成であってもよい。
【0052】
図11は、評価指標MKの評価に用いる好適な時間を特定する他の例を示す図である。具体的には、図11は、ある評価指標MKの指標値MKVの正例群の平均値と、負例群の平均値との差及びある評価指標MKの指標値MKVの正例群の平均値と、負例群の平均値との比の時間変化を示す図である。評価指標抽出部130は、例えば、ある評価指標MKの指標値MKVの正例群の平均値と、負例群の平均値との差が最も大きい時間(つまり、有意差がある時間)を評価指標MKの評価に用いる好適な時間として特定してもよい。また、評価指標抽出部130は、例えば、ある評価指標MKの指標値MKVの正例群の平均値と、負例群の平均値との比が最も大きい時間(つまり、有意差がある時間)を評価指標MKの評価に用いる好適な時間として特定してもよい。
【0053】
なお、評価指標抽出部130は、ある評価指標MKの指標値MKVの正例群の平均値と、負例群の平均値との差だけで評価指標MKの評価に用いる好適な時間を特定してもよいし、ある評価指標MKの指標値MKVの正例群の平均値と、負例群の平均値との比だけで評価指標MKの評価に用いる好適な時間を特定してもよいし、差と比の両方の値に基づいて評価指標MKの評価に用いる好適な時間を特定してもよい。なお、評価指標抽出部130は、ある評価指標MKの指標値MKVの正例群の平均値と、負例群の平均値との差が所定の値よりも大きい時間を評価指標MKの評価に用いる好適な時間として特定してもよいし、ある評価指標MKの指標値MKVの正例群の平均値と、負例群の平均値との比が所定の値よりも大きい時間を評価指標MKの評価に用いる好適な時間として特定してもよい。また、評価指標抽出部130は、ある評価指標MKの正例群の指標値MKVに基づく正例群の効果量rと、負例群の指標値MKVに基づく負例群の効果量rとを時間毎に算出し、正例群の効果量rと、負例群の効果量rとの差が最も大きい時間を、評価指標MKの評価に用いる好適な時間として特定してもよい。なお、評価指標抽出部130は、正例群の効果量rと、負例群の効果量rとの差が所定の値よりも大きい時間を、評価指標MKの評価に用いる好適な時間として特定してもよいし、正例群の効果量rと、負例群の効果量rとの比が所定の値よりも大きい時間を評価指標MKの評価に用いる好適な時間として特定してもよい。
【0054】
[第2実施形態]
以下、図面を参照して本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態では、評価条件CD1~CD3以外の評価条件CDによって細胞を評価する場合について説明する。なお、上述した第1実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0055】
<細胞の取り違え評価について>
以下、図面を参照して、細胞評価装置10が対象細胞TCの取り違えを評価する場合について説明する。以降の説明において、対象細胞TCの取り違えを評価することを、「評価条件CD4」と記載する。図12は、対象細胞TCの種類を取得する際に表示される画像IM3の一例を示す図である。ここで、検体から誤った細胞を対象細胞TCとして採取することや、ヒューマンエラーによる培地の取り違えること等が原因となり、培養する対象とは異なる細胞(以下、異細胞)が対象細胞TCとして培養される場合がある。この場合、細胞評価装置10は、対象細胞TCを評価し、異細胞が対象細胞TCとして培養されていることを、ユーザに提示することが好ましい。この評価を行う場合の細胞評価装置10の詳細について説明する。細胞評価装置10が評価条件CD4によって対象細胞TCを評価する場合、評価情報21には、複数の種類の細胞(例えば、「□□細胞」、「△△細胞」)について取得されたデータ(教師画像PP、評価指標MK、指標値MKV、プロトコール、評価条件CD4の評価結果等)が含まれる。「〇〇細胞」以外の複数の種類の細胞について評価情報21を生成する構成については、上述した第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0056】
ユーザは、表示装置40に表示された画像IM3を参照し、入力装置50にユーザが培養を所望する対象細胞TC(つまり、異細胞ではない細胞)の種類を入力する。図示する例では、ユーザは、入力装置50を介して対象細胞TCの種類として「〇〇細胞」を入力する。評価指標抽出部130は、評価情報21に基づいて、評価条件CD4の正例群の評価指標MKと、評価条件CD4の負例群の評価指標MKとを抽出し、評価指標群MKSを導出する。この時、評価指標抽出部130は、正例と負例との分離精度が高い評価指標群MKSであり、且つ評価指標群MKSに含まれる指標値MKVを、評価に用いる好適な時間が、対象細胞TCの培養を開始してからより早い時間である評価指標群MKSを導出する。以降、指標値算出部140が、評価指標抽出部130によって導出された評価指標群MKSと、対象画像TPとに基づいて、総指標値MKVTを算出する処理と、評価部150が、指標値算出部140によって算出された指標値MKVに基づいて、対象細胞TCを評価条件CD4によって評価する処理とは、上述と同様であるため、説明を省略する。
【0057】
表示制御部160は、評価部150の評価結果を示す画像を表示装置40に表示させる。例えば、評価結果が、異細胞が対象細胞TCとして培養されていることを示す場合、表示制御部160は、例えば、「意図する細胞とは異なる細胞が培養されています」等の提示がされた画像を表示装置40に表示させる。例えば、対象画像TPが培養途中の対象細胞TCに係る対象画像TPである場合、ユーザは、当該表示に基づいて、培養中の細胞が、ユーザが培養を所望する対象細胞TC(つまり、異細胞ではない細胞)であるか否かがわかるため、不要な培養を即座に中止することができる。
【0058】
なお、ユーザは、例えば、評価完了時間のしきい値を設定する構成であってもよい。この場合、表示制御部160は、評価完了時間のしきい値を受け付ける画像IMを表示装置40に表示させ、入力装置50によって当該しきい値を取得する。評価指標抽出部130は、評価に用いる好適な時刻が当該しきい値以下の指標値MKVを含む評価指標群MKSを導出する。これにより、ユーザが所望する時刻までに、培養中の細胞が、ユーザが培養を所望する対象細胞TCであるか否かを提示することができる。なお、評価完了時間のしきい値は、細胞評価装置10によって自動に設定されてもよい。この場合、細胞評価装置10は、過去のログから対象細胞TCの評価完了時間のしきい値として高頻度によって用いられる値を取得し、設定するものであってもよく、対象細胞TCの評価完了時間のしきい値として適応的可能な最小値を設定するものであってもよい。
【0059】
なお、評価指標抽出部130は、ユーザが意図する細胞の指標値MKVを正例群とし、他の細胞の指標値MKVを負例群とする評価指標群MKSを、評価情報21に含まれる細胞の種類毎に導出するものであってもよい。評価部150は、例えば、細胞毎の評価指標群MKSに基づいて算出された各総指標値MKVTに基づいて、異細胞がどの細胞であるかを特定することができる。この場合、表示制御部160は、「意図する細胞とは異なる▲▲細胞が培養されています」等の異細胞の種類を提示する画像を表示装置40に表示させ、より詳細な評価結果をユーザに提示させることができる。
【0060】
<培養の状態の不均一性の評価について>
以下、細胞評価装置10が対象細胞TCの培養の状態の不均一性を評価する場合について説明する。ここで、あるプロトコールにおいて、作業者による手技が行われる場合、当該手技のばらつきが起因となり、対象細胞TCの培養の状態に不均一が生じる場合がある。対象細胞TCの培養の状態の不均一とは、例えば、複数の細胞間において分化の早さにばらつきが生じたり、複数の細胞間において成熟の早さにばらつきが生じたり、培養容器(培地)に発生するコンタミの量にばらつきが生じるなどである。この場合、細胞評価装置10は、対象細胞TCの培養において行われた手技に対して、対象細胞TCの不均一性の評価を行うことが好ましい。以下、この評価を行う場合の、細胞評価装置10の詳細について説明する。以下、細胞評価装置10は、同種の細胞のみが培養されているものとして説明する。
【0061】
<同一作業者の手技起因による培養の状態の不均一性の評価について>
以下、細胞評価装置10が同一作業者の手技の不均一性を評価する場合について説明する。図13は、同一作業者の手技起因による培養の状態の不均一性を評価する場合の評価情報21の内容の一例を示す図である。以降の説明において、同一作業者の手技起因による培養の状態の不均一性を評価することを、「評価条件CD8」と記載する。図13に示される通り、細胞評価装置10が評価条件CD8によって対象細胞TCを評価する場合、評価情報21には、プロトコールを行った作業者を識別可能な情報(以下、作業者ID)が、プロトコール毎に対応付けられる。作業者IDは、例えば、教師画像PPセットに対して、作業者の作業履歴情報(不図示)に基づいて、細胞評価装置10が既知の方法によって対応付けるものであってもよく、手技を行っている最中の作業者が自身の作業者IDを示すオブジェクトを撮像部30に撮像されるように培地の近傍に配置し、細胞評価装置10が教師画像PPを画像認識することによって作業者IDを取得するものであってもよい。また、評価情報21には、評価条件CD8(同一作業者の手技起因による培養の状態の不均一性の有無を評価すること)によって教師画像PPを評価した評価結果が、複数の教師画像PPのセット毎に対応付けられる。以下、この場合の評価情報21を生成する細胞評価装置10の具体的な構成について説明する。
【0062】
細胞評価装置10は、同一の作業者IDが対応付けられた教師画像PPセットであり、同一のウェル、且つ異なる培地中で培養された、第1細胞と、第2細胞に係る教師画像PPセットをそれぞれ取得する。細胞評価装置10は、取得した第1細胞、及び第2細胞に係る複数の教師画像PPのうち、最新、且つ同一の日時に取得された2つの教師画像PPを並べて表示装置40に表示させる。ユーザは、表示装置40に表示された2つの教師画像PPを、評価条件CD8によって評価し、評価結果を入力装置50に入力する。具体的には、ユーザは、表示装置40に表示された2つの教師画像PPに、不均一性が生じている場合(例えば、第1細胞は培養状態が良く、第2細胞は培養状態が悪い等)、第1細胞に係る教師画像PPセットに対しては、評価条件CD8の評価結果として不均一性が無いことを入力装置50に入力し、第2細胞に係る教師画像PPセットに対しては、評価条件CD8の評価結果として不均一性が有ることを入力装置50に入力する。細胞評価装置10は、入力装置50によって入力された評価結果を取得する。そして、細胞評価装置10は、取得した複数の教師画像PPと、教師画像PPが取得された日時と、各評価指標MKの指標値MKVと、プロトコールと、作業者IDと、評価条件CD8の評価結果とを互いに対応付けて、評価情報21を生成し、記憶部20に記憶させる。
【0063】
評価指標抽出部130は、評価情報21に基づいて、対象細胞TCのプロトコールを行った作業者と同一の作業者IDが対応付けられた評価指標MKであり、評価条件CD8の正例群の評価指標MKと、評価条件CD8の負例群の評価指標MKとを取得する。以降、評価指標抽出部130が、正例群の評価指標MKと、負例群の評価指標MKとに基づいて、評価指標群MKSを導出する処理と、指標値算出部140が、評価指標抽出部130によって導出された評価指標群MKSと、対象画像TPとに基づいて、総指標値MKVTを算出する処理と、評価部150が、指標値算出部140によって算出された指標値MKVに基づいて、対象細胞TCを評価条件CD8によって評価する処理とは、上述と同様であるため、説明を省略する。
【0064】
表示制御部160は、評価部150の評価結果が同一作業者による手技が起因となる対象細胞TCの不均一が生じていることを示す場合、不均一が生じていることを示す画像を表示装置40に表示させる。例えば、対象画像TPが培養途中の対象細胞TCに係る対象画像TPである場合、ユーザは、当該表示に基づいて、培養中に不均一が発生していることがわかるため、必要に応じて対処(添加物の付与、培地の交換など)することでリアルタイムに不均一を解消することができる。また、対象画像TPが培養途中の対象細胞TCに係る対象画像TPである場合、ユーザは、当該表示に基づいて、不均一が発生した時間帯(つまり、不均一が発生する原因となる手技)を把握することができるので、作業者に対して手技のばらつきを解消させるためのフィードバック(例えば、作業者の手技のトレーニングや作業者への注意喚起など)を行うことができる。また、これらの処理によって、不均一を解消することで、対象細胞TCの品質や歩留りを向上させることができる。
【0065】
<異なる作業者の手技起因による培養の状態の不均一性の評価について>
以下、異なる作業者の手技起因による培養の状態の不均一性を評価する場合について説明する。以降の説明において、異なる作業者の手技起因による培養の状態の不均一性を評価することを、「評価条件CD9」と記載する。また、この場合、評価情報21には、評価条件CD9によって教師画像PPを評価した評価結果が、複数の教師画像PPのセット毎に対応付けられる。以下、この場合の評価情報21を生成する細胞評価装置10の具体的な構成について説明する。
【0066】
細胞評価装置10は、同一のプロトコールが対応付けられた教師画像PPセットであり、ある作業者ID(以下、作業者ID1)が対応付けられた教師画像PPセットと、作業者ID1以外の作業者ID(以下、作業者ID2)が対応付けられた教師画像PPセットとをそれぞれ取得する。細胞評価装置10は、取得した作業者ID1、及び作業者ID2に係る複数の教師画像PPのうち、最新、且つ同一の日時に取得された2つの教師画像PPを並べて表示装置40に表示させる。ユーザは、表示装置40に表示された2つの教師画像PPを、評価条件CD9によって評価し、評価結果を入力装置50に入力する。具体的には、ユーザは、表示装置40に表示された2つの教師画像PPに、不均一性が生じている場合(例えば、作業者ID1の細胞は培養状態が良く、作業者ID2の細胞は培養状態が悪い等)、作業者ID1に係る教師画像PPセットに対しては、評価条件CD9の評価結果として不均一性が無いことを入力装置50に入力し、作業者ID2に係る教師画像PPセットに対しては、評価条件CD9の評価結果として不均一性が有ることを入力装置50に入力する。細胞評価装置10は、入力装置50によって入力された評価結果を取得する。そして、細胞評価装置10は、取得した複数の教師画像PPと、教師画像PPが取得された日時と、各評価指標MKの指標値MKVと、プロトコールと、作業者IDと、評価条件CD9の評価結果とを互いに対応付けて、評価情報21を生成し、記憶部20に記憶させる。
【0067】
評価指標抽出部130は、評価情報21に基づいて、対象細胞TCのプロトコールを行った作業者と同一の作業者IDが対応付けられた評価指標MKであり、評価条件CD9の正例群の評価指標MKと、評価条件CD9の負例群の評価指標MKとを取得する。以降、評価指標抽出部130が、正例群の評価指標MKと、負例群の評価指標MKとに基づいて、評価指標群MKSを導出する処理と、指標値算出部140が、評価指標抽出部130によって導出された評価指標群MKSと、対象画像TPとに基づいて、総指標値MKVTを算出する処理と、評価部150が、指標値算出部140によって算出された指標値MKVに基づいて、対象細胞TCを評価条件CD9によって評価する処理とは、上述と同様であるため、説明を省略する。
【0068】
表示制御部160は、評価部150の評価結果が異なる作業者による手技が起因となる対象細胞TCの不均一が生じていることを示す場合、不均一が生じていることを示す画像を表示装置40に表示させる。例えば、対象画像TPが培養途中の対象細胞TCに係る対象画像TPである場合、ユーザは、当該表示に基づいて、培養中に不均一が発生していることがわかるため、必要に応じて対処することでリアルタイムに不均一を解消することができる。また、ユーザは、当該表示に基づいて、ある作業者について不均一が発生していることを把握することができるので、作業者に対して手技のばらつきを解消させるためのフィードバック(例えば、作業者の手技のトレーニングや作業者への注意喚起など)を行うことができる。また、これらの処理によって、不均一を解消することで、対象細胞TCの品質や歩留りを向上させることができる。
【0069】
<異なる実験間の手技起因による培養の状態の不均一性の評価について>
以下、異なる実験間の手技起因による培養の状態の不均一性を評価する場合について説明する。以降の説明において、異なる実験間の手技起因による培養状態の不均一性を評価することを、「評価条件CD10」と記載する。また、この場合、評価情報21には、評価条件CD10によって教師画像PPを評価した評価結果が、複数の教師画像PPのセット毎に対応付けられる。以下、この場合の評価情報21を生成する細胞評価装置10の具体的な構成について説明する。
【0070】
細胞評価装置10は、同一の作業者IDが対応付けられた教師画像PPセットであり、異なるプロトコールが対応付けられた教師画像PPセットを取得する。以下、異なるプロコールが、プロトコールA、及びプロトコールBであるものとする。細胞評価装置10は、取得したプロトコールA、及びプロトコールBの教師画像PPのうち、最新、且つ同一の日時に取得された2つの教師画像PPを並べて表示装置40に表示させる。ユーザは、表示装置40に表示された2つの教師画像PPを、評価条件CD10によって評価し、評価結果を入力装置50に入力する。具体的には、ユーザは、表示装置40に表示された2つの教師画像PPに、不均一性が生じている場合(例えば、プロトコールAの細胞は培養状態が良く、プロトコールBの細胞は培養状態が悪い等)、プロトコールAに係る教師画像PPセットに対しては、評価条件CD10の評価結果として不均一性が無いことを入力装置50に入力し、プロトコールBに係る教師画像PPセットに対しては、評価条件CD10の評価結果として不均一性が有ることを入力装置50に入力する。細胞評価装置10は、入力装置50によって入力された評価結果を取得する。そして、細胞評価装置10は、取得した複数の教師画像PPと、教師画像PPが取得された日時と、各評価指標MKの指標値MKVと、プロトコールと、作業者IDと、評価条件CD10の評価結果とを互いに対応付けて、評価情報21を生成し、記憶部20に記憶させる。
【0071】
評価指標抽出部130は、評価情報21に基づいて、対象細胞TCのプロトコールを行った作業者と同一の作業者IDが対応付けられ、且つ対象細胞TCと異なるプロトコールが対応付けられた評価指標MKであり、評価条件CD10の正例群の評価指標MKと、評価条件CD10の負例群の評価指標MKとを取得する。以降、評価指標抽出部130が、正例群の評価指標MKと、負例群の評価指標MKとに基づいて、評価指標群MKSを導出する処理と、指標値算出部140が、評価指標抽出部130によって導出された評価指標群MKSと、対象画像TPとに基づいて、総指標値MKVTを算出する処理と、評価部150が、指標値算出部140によって算出された指標値MKVに基づいて、対象細胞TCを評価条件CD10によって評価する処理とは、上述と同様であるため、説明を省略する。
【0072】
表示制御部160は、評価部150の評価結果が、異なる実験間の手技起因による対象細胞TCの不均一性が生じていることを示す場合、不均一が生じていることを示す画像を表示装置40に表示させる。例えば、対象画像TPが培養途中の対象細胞TCに係る対象画像TPである場合、ユーザは、当該表示に基づいて、培養中に不均一が発生していることがわかるため、必要に応じて対処することでリアルタイムに不均一を解消することができる。また、ユーザは、当該表示に基づいて、あるプロトコールについて不均一が発生していることを把握することができるので、作業者に対して手技のばらつきを解消させるためのフィードバック(例えば、作業者の手技のトレーニングや作業者への注意喚起など)を行うことができる。また、これらの処理によって、不均一を解消することで、対象細胞TCの品質や歩留りを向上させることができる。
【0073】
<評価結果について>
なお、上述では、評価情報21に含まれる評価結果が2値(例えば、良い/悪い、早い/遅い、有/無等)で示される場合について説明したが、評価結果は、2値以上(例えば、段階的、又は線形的)で示されていてもよい。以下、この場合の評価情報21を生成する細胞評価装置10の具体的な構成について説明する。細胞評価装置10は、教師画像PPセットに含まれる教師画像PPをそれぞれ表示装置40に表示させる。ユーザは、各評価条件CDによって、表示装置40に表示された教師画像PPを目視によって評価する場合、教師画像PPに含まれる対象細胞TCの中で、評価条件CDを満たす(つまり、正例の)対象細胞TCの割合と、評価条件CDを満たさない(つまり、負例の)対象細胞TCの割合とを、評価結果として入力装置50に入力する。そして、細胞評価装置10は、評価結果として入力された割合がそれぞれ教師画像PP等に対応付けられた評価情報21を生成する。この評価情報21を用いて評価することにより、細胞評価装置10は、各評価条件CDによって評価された評価結果をより詳細にユーザに提示することができる。ユーザは、評価結果を確認することにより、対象細胞TCの評価結果の正例率が低すぎる(或いは、負例率が高すぎる)場合、不要な培養を即座に中止することができる。また、ユーザは、評価結果を確認することにより、対象細胞TCの評価結果の負例率が低い(或いは、正例率が高い)場合、評価結果が2値である場合と比して、添加物の付与や培地の交換などの対処を行うことを検討可能となり、対象細胞TCの培養の指針を決定することができる。
【0074】
<評価指標群MKSの変更について>
また、上述では、タイムラプス撮像されたいずれの対象画像TPに対して、同様の評価指標群MKSを使用する場合について説明したが、これに限られない。例えば、細胞評価装置10は、ある評価指標群MKSに基づいて対象細胞TCを評価した結果、所望の評価結果が得られなかった場合、他の評価指標群MKSを使用し、対象細胞TCを評価するものであってもよい。図14は、他の評価指標群MKSを使用し、対象細胞TCを評価する処理の一例を示す流れ図である。図14に示すステップS110からステップS180までの処理は、図8に示す同一の符号が付されたステップSの処理と同様であるため、説明を省略する。この一例では、ステップS180において表示装置40に表示される評価結果画像に、「この評価に用いられた評価指標群MKS以外の評価指標群MKSを用いて、更に評価を行うか否か」をユーザに問い合わせる画像が含まれるものとする。
【0075】
細胞評価装置10は、ステップS180において評価結果画像が表示装置40に表示された後、この評価に用いられた評価指標群MKS以外の評価指標群MKSを用いて、更に評価を行うことを示す入力が、入力装置50に対して行われたか否かを判定する(ステップS190)。細胞評価装置10は、入力装置50に対して、更に評価を行うことを示す入力が行われなかった場合、処理を終了する。評価指標抽出部130は、入力装置50に対して、更に評価を行うことを示す入力が行われた場合、先の評価に用いられた評価指標群MKSの次に分離精度が高い評価指標群MKSを導出し(ステップS192)、処理をステップS140に進める。なお、評価指標抽出部130は、ステップS130において、複数の評価指標群MKSを導出するものであってもよい。この場合、指標値算出部140は、評価指標抽出部130によって導出された複数の評価指標群MKSの中で、分離精度が高い評価指標群MKSから順に用いて総指標値MKVTを算出する。また、分離精度が高い評価指標群MKSが複数存在する場合、指標値算出部140は、先の評価に用いられた評価指標群MKSと同様の分離精度の評価指標群MKSを用いて総指標値MKVTを算出してもよい。
【0076】
ここで、評価指標群MKSは、それぞれ評価に用いる評価指標MKが異なるため、ある評価指標群MKSによる評価結果が負例であっても、異なる評価指標群MKSによる評価結果が正例となる場合があり、その逆で、ある評価指標群MKSによる評価結果が正例であっても、異なる評価指標群MKSによる評価結果が負例となる場合がある。したがって、上述した処理により、複数の評価指標群MKSを用いて対象細胞TCを評価することにより、細胞評価装置10は、多様な対象細胞TCの評価を行うことができる。
【0077】
なお、上述では、ユーザの入力装置50に対する入力に基づいて、他の評価指標群MKSを用いた再評価を行う場合について説明したが、これに限られない。細胞評価装置10は、例えば、評価部150によって負例が成立すると評価された場合に、他の評価指標群MKSを用いた再評価を行うものであってもよく、評価部150によって正例が成立すると評価された場合であっても、他の評価指標群MKSを用いた再評価を行うものであってもよい。
【0078】
以上、本発明の実施形態を、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。上述した各実施形態に記載の構成を組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0079】
10…細胞評価装置、110…対象画像取得部、120…評価条件取得部、130…評価指標抽出部、140…指標値算出部、150…評価部、160…表示制御部
図1
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