(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】光学装置、露光装置、フラットパネルディスプレイの製造方法、及びデバイス製造方法
(51)【国際特許分類】
G03F 7/20 20060101AFI20240110BHJP
【FI】
G03F7/20 501
G03F7/20 521
(21)【出願番号】P 2021570119
(86)(22)【出願日】2021-01-08
(86)【国際出願番号】 JP2021000578
(87)【国際公開番号】W WO2021141128
(87)【国際公開日】2021-07-15
【審査請求日】2022-06-21
(32)【優先日】2020-01-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【氏名又は名称】小林 淳一
(72)【発明者】
【氏名】水野 恭志
(72)【発明者】
【氏名】加藤 正紀
【審査官】植木 隆和
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-245911(JP,A)
【文献】特開2006-049635(JP,A)
【文献】特開2006-191063(JP,A)
【文献】特表2009-521108(JP,A)
【文献】特開2017-142526(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
G03F 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に所定パターンを露光する露光装置において、
光源と、
前記光源から
の光を、前記所定パターンを記述したパターンデータに基づいて空間変調する空間光変調器と、
空間変調された前記
光を前記基板へ投影する投影光学系と、
前記光源から順次発振された
前記光の光路を切り替えて、複数設けられた前記空間
光変調器に順に導く光路切替え機と、を備え、
前記光路切替え機は、前記光路を第1光路と第2光路とのどちらか一方へ切り替える第1切替え機と、前記第1光路へ導かれた前記光を複数の
前記空間光変調器のうち第1群の空間光変調器へ
導き、前記第2光路へ導かれた前記光を複数の
前記空間光変調器のうち第2群の空間
光変調器
へ導く第2切替え機と、を有する、露光装置。
【請求項2】
前記第1切替え機は、前記光源から第1期間内に発振された前記光を前記第1光路へ導く第1領域と、前記光源から前記第1期間とは異なる第2期間内に発振された前記光を前記第2光路へ導く第2領域と、を有する、請求項
1に記載の露光装置。
【請求項3】
前記第2切替え機は、第3期間に、前記第1光路へ導かれた前記光の光路を、前記第1群の空間光変調器のそれぞれに順次切り替え、前記第3期間とは異なる第4期間に、前記第2光路へ導かれた前記光の光路を、前記第2群の空間光変調器のそれぞれに順次、切り替える、請求項2に記載の露光装置。
【請求項4】
前記第1領域は、前記光を反射し、
前記第2領域は、前記光を透過する、請求項
2に記載の露光装置。
【請求項5】
前記第1領域は、前記光に対して第1角度に傾けて設けられ、前記光を反射して前記光を前記第1光路へ導き、
前記第2領域は、前記光に対して前記第1角度とは異なる第2角度に傾けて設けられ、前記光を反射して前記光を前記第2光路へ導く、請求項
2に記載の露光装置。
【請求項6】
前記第2切替え機は、前記第1群の空間光変調器へ前記光を反射させる第一反射面と、前記第2群の空間光変調器へ前記光を反射させ
る第二反射面と、を有する、請求項
1から
5の何れか一項に記載の露光装置。
【請求項7】
前記第2切替え機は、前記第1群の空間光変調器へ前記光を導く第一切替え機と、前記第2群の空間光変調器へ前記光を導く第二切替え機と、を有する、請求項
1から
5の何れか一項に記載の露光装置。
【請求項8】
前記パターンデータを前記空間光変調器へ送信するデータ送信部、を備え、
前記空間光変調器は、露光中に前記基板が移動される第1方向と交差する第2方向に複数並んで設けられた第1空間光変調器と第2空間光変調器とを有し、
前記データ送信部は、前記パターンデータを、前記第1空間光変調器へ送信される第1パターンデータと、前記第2空間光変調器へ送信される第2パターンデータとに分割し、前記第1パターンデータと前記第2パターンデータとの前記第1方向に関する位置を相対的にシフトさせる、請求項
1から
7の何れか一項に記載の露光装置。
【請求項9】
前記パターンデータを前記空間光変調器へ送信するデータ送信部、を備え、
前記空間光変調器は、第1空間光変調器と第2空間光変調器とを有し、
前記データ送信部は、前記パターンデータを、前記第1空間光変調器へ送信される第1パターンデータと、前記第2空間光変調器へ送信される第2パターンデータとに分割し、前記第1パターンデータと前記第2パターンデータとの位置を相対的にシフトさせる、請求項
1から
7の何れか一項に記載の露光装置。
【請求項10】
前記第2切替え機は、ポリゴンミラーである、請求項
1から
9の何れか一項に記載の露光装置。
【請求項11】
前記投影光学系は、
前記第1群の空間光変調器のそれぞれにより空間変調された前記光を前記基板に投影する、前記第1群の空間光変調器のそれぞれに対応する第1群の投影光学系と、
前記第2群の空間光変調器のそれぞれにより空間変調された前記光を前記基板に投影する、前記第2群の空間光変調器のそれぞれに対応する第2群の投影光学系と、を有する、請求項1から10の何れか一項に記載の露光装置。
【請求項12】
第1方向へ移動中の基板に対して、前記第1方向と交差する第2方向に並んで配置された第1空間光変調器
と第2
空間光変調器とを
有する空間光変調器を介して、所定パターンを露光する露光装置において、
光源と、
前記所定パターンに基づいて記述されるパターンデータを前記第1空間光変調器および前記第2空間光変調器へ送信するデータ送信部、
前記パターンデータの一部であり前記
データ送信部により送信された第1パターンデータに基づいて前記第1空間
光変調器により空間変調された
前記光源からの光を前記基板へ投影する第1投影光学系と、
前記パターンデータの他部であり前記
データ送信部により送信された第2パターンデータに基づいて
前記第
2空間光変調器
により空間変調された前記
光を前記基板へ投影する第2投影光学系と、
前記光源から順次発振された
前記光の光路を切り替えて、前記第
1空間
光変調器、前記第
2空間
光変調器の順に導く光路切替え機と、を備え、
前記データ送信部は、前記パターンデータを、前記第1パターンデータと、前記第2パターンデータとに分割し、前記第1パターンデータと前記第2パターンデータとの前記第1方向に関する位置を相対的にシフトさせる、露光装置。
【請求項13】
前記光源と、前記空間光変調器と、前記光路切替え機との少なくとも2つを同期させるマスタークロックを発する発振器を備える、請求項
1から
12の何れか一項に記載の露光装置。
【請求項14】
複数の前記光源からそれぞれ発せられた前記光を合成する合成器を、さらに備え、
前記光路切替え機は、前記合成器により合成された前記光の前記光路を切り替える、請求項
1から
13の何れか一項に記載の露光装置。
【請求項15】
請求項
1から
14の何れか一項に記載の露光装置を用いて前記基板を露光することと、露光された前記基板を現像することと、を含むフラットパネルディスプレイの製造方法。
【請求項16】
請求項
1から
14の何れか一項に記載の露光装置を用いて前記基板を露光することと、
露光された前記基板を現像することと、を含むデバイス製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ光源を備える光学装置、露光装置、フラットパネルディスプレイの製造方法、及びデバイス製造方法に関する。
本願は、2020年1月10日に出願された米国特許仮出願第62/959,178号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
様々な分野でレーザビームが使用される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
レーザビームを使用する装置において、処理精度の向上及びエネルギー効率の向上が絶えず望まれる。例えば、レーザビームのエネルギー損失の低減、レーザビームの出力強度の適切な制御、スペックルの抑制、ビーム出力タイミングの適切な制御、及び/又は出力ビーム波形の適切な制御が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一態様において、光学装置は、複数のレーザ光源と、光変調器を有する出力モジュールと、前記複数のレーザ光源と前記出力モジュールとの間に配され、前記複数のレーザ光源から出射されたレーザ光を時間的に分割する時分割器と、を備える。
【0005】
本発明の別の一態様において、光学装置は、複数のレーザ光源と、各々が光変調器を有する複数の出力モジュールと、前記複数のレーザ光源と前記複数の出力モジュールとの間に配され、前記複数のレーザ光源から出射されたレーザ光を時間的に分割する時分割器と、を備える。
【0006】
本発明の別の一態様において、光学装置は、各々が光変調器を有する複数の出力モジュールと、前記複数のレーザ光源と前記複数の出力モジュールとの間に配され、前記複数のレーザ光源から出射されたレーザ光を時間的に分割する時分割器と、前記複数のレーザ光源と前記時分割器との間、又は前記時分割器と前記複数の出力モジュールとの間、に配される副分割器と、を備える。
【0007】
本発明の別の一態様において、光学装置は、レーザ光源と、出力モジュールと、前記レーザ光源と前記出力モジュールとの間に配され、前記レーザ光源から出射されたレーザ光を時間的に分割する時分割器と、を備える。前記時分割器は、複数の反射面を用いて前記レーザ光を分割する。
【0008】
本発明の別の一態様において、光学装置は、レーザ光源と、複数の出力モジュールと、前記レーザ光源と前記複数の出力モジュールとの間に配され、前記レーザ光源から出射されたレーザ光を時間的に分割する時分割器と、を備える。前記時分割器は、複数の反射面を用いて前記レーザ光を分割する。
【0009】
本発明の別の一態様において、光学装置は、レーザ光源と、光変調器を有する出力モジュールと、前記光源と前記出力モジュールとの間に配された音響光学素子と、を備える。
【0010】
本発明の別の一態様において、光学装置は、レーザ光源と、各々が光変調器を有する複数の出力モジュールと、前記レーザ光源と前記出力モジュールとの間に配された音響光学素子と、を備える。
【0011】
本発明の別の一態様において、光学装置は、パルス光を出射するレーザ光源と、光変調器を有する出力モジュールと、前記レーザ光源と前記出力モジュールとの間に配され、前記パルス光を時間的に分割する時分割器と、前記パルス光の周波数に基づいて、前記時分割器による前記パルス光の分割を制御するコントローラと、を備える。
【0012】
本発明の別の一態様において、光学装置は、パルス光を出射するレーザ光源と、各々が光変調器を有する複数の出力モジュールと、前記レーザ光源と前記複数の出力モジュールとの間に配され、前記パルス光を時間的に分割する時分割器と、前記パルス光の周波数に基づいて、前記時分割器による前記パルス光の分割を制御するコントローラと、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、レーザ光源を備えるレーザビームシステム(光学装置)の様々な形態例を示す模式図である。
【
図2】
図2は、レーザ光源を備えるレーザビームシステム(光学装置)の別の様々な形態例を示す模式図である。
【
図3】
図3は、パルスレーザビームの合成制御の例を示す図である。
【
図4】
図4は、CWレーザビームの合成制御の例を示す図である。
【
図6】
図6は、出力ビームの別の例を示す図である。
【
図7】
図7は、時分割器(回転デバイス)として、ポリゴンミラーデバイスが適用された例を示す図である。
【
図8】
図8は、時分割器(回転デバイス)として、ポリゴンミラーデバイスが適用された例を示す図である。
【
図9】
図9は、時分割器(回転デバイス)として、光スイッチデバイスが適用された例を示す図である。
【
図10】
図10は、時分割器(回転デバイス)として、光スイッチデバイスが適用された例を示す図である。
【
図11】
図11は、光スイッチデバイスが副分割器(動的時分割器)として適用され、ポリゴンミラーデバイスが時分割器(動的時分割器)として適用された例を示す図である。
【
図12】
図12は、電気光学変調器が時分割器として適用され、偏光ビームスプリッタが副分割器(静的分割器)として適用された例を示す図である。
【
図13】
図13は、電気光学変調器が副分割器(動的時分割器)として適用され、偏光ビームスプリッタが副分割器(静的分割器)として適用された例を示す図である。
【
図14】
図14は、光路上に配置されたアパーチャデバイスを備える例を示す図である。
【
図15】
図15は、露光装置の全体構成を概略的に示す図である。
【
図17】
図17は、レーザビームの繰返し周波数とSLMの動作周波数との関係を説明するための図である。
【
図18】
図18は、光源と出力モジュールとの組み合わせを説明するための図である。
【
図19】
図19は、SLMを備えない露光装置の構成の一例を示す図である。
【
図20】
図20は、SLMを備える露光装置の構成の一例を示す図である。
【
図21】
図21は、パターン線幅と発光時間との関係を説明するための図である。
【
図22】
図22は、ビームのエネルギーロスを説明するための図である。
【
図23】
図23は、ビームの時分割を説明するための図である。
【
図24】
図24は、照射タイミングに基づく複数のSLMの間での投影位置のずれを説明するための図である。
【
図25】
図25は、機械的及び/又は光学的なシフト調整を説明するための図である。
【
図26】
図26は、スキャン動作に対応したシフト調整を説明するための図である。
【
図27】
図27は、別のスキャン動作に対応したシフト調整を説明するための図である。
【
図28】
図28は、シフト調整にかかる、露光装置の構成例を示す図である。
【
図36】
図36は、同期制御にかかる、露光装置の構成例を示す図である。
【
図37】
図37は、ポリゴンミラーの回転制御の一例を説明するための図である。
【
図38】
図38は、ポリゴンミラーの同期制御の一例を説明するための図である。
【
図39】
図39は、複数のデバイスの動作タイミングを説明するための図である。
【
図40】
図40は、回転プレートの同期制御の一例を説明するための図である。
【
図41】
図41は、追加加工が施された回転プレートの同期制御の一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。本発明の以下の詳細な説明は、例示的なものに過ぎず、限定するものではない。図面及び以下の詳細な説明の全体にわたって、同じ又は同様の参照符号が使用される。
【0015】
図1及び
図2は、レーザ光源を備えるレーザビームシステム(光学装置)の様々な形態例を示す模式図である。
図1(a)、
図1(b)、
図1(c)、
図1(d)、
図2(a)、
図2(b)、
図2(c)、及び
図2(d)の各例において、レーザビームシステムは、レーザ光源20を備える。
【0016】
一実施形態において、レーザビームシステム(光学装置)は、レーザ光源20と、出力モジュール30と、コントローラ40と、前記レーザ光源20と前記出力モジュール30との光学的な間(optically between)に配される時分割器50と、を備える。
【0017】
レーザ光源20は、様々なタイプのものが適用可能である。例えば、レーザ光源20として、ガスレーザ(ヘリウムネオンレーザ、アルゴンレーザ、炭酸ガスレーザ、エキシマレーザ、窒素レーザ等)、半導体レーザ、固体レーザ(YAGレーザ、Nd(ネオジム)レーザ、ルビーレーザ、ファイバーレーザ、チタンレーザ等)、金属レーザ(銅蒸着レーザ、ヘリウムカドミウムレーザ、金蒸着レーザ等)、液体レーザ等が例示される。本開示の技術は、パルス発振、連続波(CW)発振等、様々な発振形態に適用可能である。
【0018】
出力モジュール30は、レーザビームの用途に応じて設定される。例えば、レーザビームは、レーザ加工装置、レーザ溶融装置、レーザ溶接装置、レーザマーキング装置、レーザ測長装置、半導体露光装置、フラットパネルディスプレイ露光装置、回路基板露光装置、レーザ照明装置、レーザ表示装置、レーザ探知装置、レーザ推進装置、レーザ検査装置、レーザ顕微鏡、レーザ医療装置等の光学装置に使用される。本開示の技術は、これらの装置を含む、様々な分野の装置に適用可能である。
【0019】
特定の実施形態において、出力モジュール30は、空間光変調器(SLM:Spatial Light Modulator)60を含む。例えば、SLM60は、液晶素子、デジタルミラーデバイス(デジタルマイクロミラーデバイス、DMD)、磁気光学空間光変調器(Magneto Optic Spatial Light Modulator、MOSLM)等を含む。
【0020】
時分割器(時分配器、動的時分割器、光学的時分割器、光スイッチ、光シャッター、動的スイッチ、動的シャッター、動的セパレータ、光路切替え機)50は、コントローラ40によって制御され、レーザビームを時間的に分割するように構成される。例えば、時分割器50として、ポリゴンミラーデバイス、ガルバノミラーデバイス、電気光学変調器(EOM)、音響光学変調器(AOM)、振動デバイス、その他の光スイッチデバイス(液晶スイッチ等)等が例示される。時分割されたビームは、選択的に利用可能である。さらに、時分割された複数のビームは、合成、混合、及び/又は収束され得る。例えば、時分割器50からの、選択的に抽出されたビームが、出力モジュール30に入る。一例において、時分割されたビームは、時間軸上の所定スパンごとに、複数の光学経路に導かれる。複数の時間分割されたビーム(分配された複数のビーム)が、複数の経路にそれぞれ供給される。
【0021】
特定の実施形態において、時分割器50は、出力モジュール30のSLM60と同期的に駆動するように制御される。例えば、SLM60の駆動タイミングに対応する時分割ビームがSLM60に供給される。例えば、一般に、SLM60の動作周波数(例えば、画像更新周波数)は、パルスビームの繰返し周波数に比べて低い。時分割されたビームのうち、SLM60の動作タイミングに対応するビームが選択的に利用される。時分割されたビームのうちの残りのビームは、他の用途に利用可能である。別の実施形態において、時分割器50は、出力モジュール30のSLM60と非同期的に駆動するように制御され得る。
【0022】
特定の実施形態において、レーザビームシステムは、複数のレーザ光源20を備える。レーザ光源20の数は、任意に設定可能である。例えば、レーザ光源20の数は、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、又はそれ以上にできる。一例において、所定のデバイスを介して、複数のレーザ光源20からのビームが合成、混合、及び/又は収束され、時分割器50に入る。複数のレーザ光源20からのビームは、時分割器50によって分割された後であっても、比較的高エネルギー値を有することができる。他の例において、複数のレーザ光源20からのビームがそれぞれ独立して時分割器50に入る。一例において、複数のパルスレーザ光源20からのビームは、互いにパルス幅、及びピーク値(パルス波形、波形プロファイル)が実質的に同じになるように設定される。他の例において、複数のパルスレーザ光源20からのビームは、互いにパルス幅、及びピーク値(パルス波形、波形プロファイル)の少なくとも1つが異なるように設定される。
【0023】
複数のレーザ光源20とSLM60を有する出力モジュール30とが組み合わされた形態において、例えば、レーザビームのエネルギー損失が低減される、エネルギー効率が向上する、レーザビームの出力強度が適切に制御される、及び/又は、スペックルが抑制される。一例において、時分割器50からのビームが適切なタイミングでSLM60に供給される。最適な時間に限定的にビームが供給されたSLM60において、SLM60でのエネルギー損失が低減されるとともに、高エネルギービーム(高パワービーム)が出力モジュール30から出力される。
【0024】
特定の実施形態において、レーザビームシステムは、複数の出力モジュール30を備える。例えば、第1の時分割ビームが第1出力モジュール30に供給され、第2の時分割ビームが第2出力モジュール30に供給される。出力モジュール30の数は、任意に設定可能である。例えば、出力モジュール30の数は、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、又はそれ以上にできる。
【0025】
特定の実施形態において、複数の出力モジュール30の各々がSLM60を有する。複数のSLM60は、互いに同期的又は非同期的に駆動される。一例において、第1、第2、第3、及び第4のSLM60が、ある時分割ビームに対応する、同じタイミングで駆動される。他の例において、第1及び第2のSLM60が第1の時分割ビームに対応する同じタイミングで駆動され、第3及び第4のSLM60が第2の時分割ビームに対応する別のタイミングで駆動される。さらに他の例において、第1のSLM60が第1の時分割ビームに対応するタイミングで駆動され、第2のSLM60が第2の時分割ビームに対応する別のタイミングで駆動され、第3のSLM60が第3の時分割ビームに対応するさらに別のタイミングで駆動され、第4のSLM60が第4の時分割ビームに対応するまたさらに別のタイミングで駆動される。
【0026】
時分割器50と複数のSLM60とが組み合わされた形態において、例えば、レーザビームのエネルギー損失が低減される、エネルギー効率が向上する、レーザビームの出力強度が適切に制御される、ビーム出力タイミングが適切に制御される、及び/又は、出力ビーム波形が適切に制御される。一例において、複数のSLM60の駆動タイミングにそれぞれ対応するように、レーザ光源20からのビームが複数のSLM60に導かれる。ビームの遮光期間(ビーム不使用期間)の低減は、エネルギー効率の向上、漏れ光の低減、及び/又は熱影響の回避に有利である。
【0027】
特定の実施形態において、レーザビームシステムは、レーザ光源20と時分割器50との光学的な間、又は時分割器50と出力モジュール30との光学的な間、に配される副分割器(時分配器、動的時分割器、光学的時分割器、光スイッチ、光シャッター、動的スイッチ、動的シャッター、動的セパレータ、光路切替え機)70をさらに備える。副分割器70は、動的分割器又は静的分割器を含み、レーザビームを偏光分離、周波数分離、又は時間的に分割するように構成される。動的分割器とは、分割器の駆動に伴ってレーザビームを分離又は分割する構成を意味し、静的分割器とは、分割器の駆動を伴わずにレーザビームを分離又は分割する構成を意味する。例えば、動的分割器として、上述した時分割器と同様のもの等が適用可能である。例えば、静的分割器として、偏光ビームスプリッタ、ハーフミラー、ダイクロイックミラー、周波数分離器等が例示される。一例において、ビームの進行方向に沿って、時分割器50、及び静的分割器70が順に光軸上に配置される。別の例において、ビームの進行方向に沿って、静的分割器70、及び時分割器50が順に光軸上に配置される。さらに別の例において、ビームの進行方向に沿って、時分割器(前位置、前段時分割器)70、及び時分割器(後位置、後段時分割器)50が順に光軸上に配置される。一例において、複数の時分割器50、70が組み合わされる。別の例において、1つの時分割器50と複数の静的分割器70とが組み合わされる。さらに別の例において、複数の時分割器50と1つの静的分割器70とが組み合わされる。またさらに別の例において、複数の時分割器50と複数の静的分割器70とが組み合わされる。時分割器50及び副分割器70の数は、任意に設定可能である。例えば、時分割器50及び副分割器70の合計数は、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、又はそれ以上にできる。
【0028】
時分割器50と静的分割器70とが組み合わされた形態において、例えば、レーザビームのエネルギー損失が低減される、エネルギー効率が向上する、レーザビームの出力強度が適切に制御される、ビーム出力タイミングが適切に制御される、及び/又は、出力ビーム波形が適切に制御される。一例において、ビームの分割数が拡大される、及び/又は波長帯域に応じてビームが複数に分割される。
【0029】
時分割器(前位置)70と時分割器(後位置)50とが組み合わされた形態において、例えば、レーザビームのエネルギー損失が低減される、エネルギー効率が向上する、レーザビームの出力強度が適切に制御される、ビーム出力タイミングが適切に制御される、及び/又は、出力ビーム波形が適切に制御される。一例において、ビームの分割数が拡大される、及び/又は、エネルギー損失が抑制されつつ時分割器における非安定ゾーン及び/又は非好適ゾーンの使用が回避される。
【0030】
一例において、時間軸上の第1スパンにおいて前位置時分割器70からの時分割ビームが後位置時分割器50に入り、後位置時分割器50の安定ゾーン及び/又は好適ゾーンが優先的及び/又は好適に(specifically and/or preferentially)使用される。一方、時間軸上の第2スパンにおいて、前位置時分割器70からの時分割ビームは後位置時分割器50に実質的に入らず、後位置時分割器50の非安定ゾーン及び/又は非好適ゾーンの使用が回避される。例えば、後位置における第1時分割器50と第2時分割器50とに交互に時分割ビームが供給されることにより、ビームを実質的に連続利用しつつ時分割器50における非安定ゾーン及び/又は非好適ゾーンの使用が回避される。換言すると、後位置の複数の時分割器50の各々は、安定ゾーン(好適ゾーン)と非安定ゾーン(非好適ゾーン)とを有する。駆動時の安定状態が互いに異なるタイミングになるように後位置の複数の時分割器50が駆動される。後位置の各時分割器50の安定状態に合うように、前位置の時分割器70からの時分割ビームが振り分けられる。
【0031】
特定の実施形態において、出力モジュール30は光ファイバを有する。光ファイバは、時分割器50又は副分割器70からの複数の時分割ビームを受光するように構成される。一例において、一の出力モジュール30に対して一の光ファイバが設けられる。他の例において、一の出力モジュール30に対して複数の光ファイバが設けられる。この例において、複数の光ファイバからの複数の時分割ビームが一の出力モジュール30に入射する。
【0032】
特定の実施形態において、レーザビームシステムは、複数の出力モジュール30を有する。複数の出力モジュール30のそれぞれはファイバを備える。例えば、第1のタイミングの時分割ビームが第1光ファイバに供給され、第2のタイミングの時分割ビームが第2光ファイバに供給される。一例において、複数の出力モジュール30の各々に対して一の光ファイバが設けられる。他の例において、複数の出力モジュール30の各々に対して複数の光ファイバが設けられる。この例において、複数の光ファイバからの複数の時分割ビームが複数の出力モジュール30の各々に入射する。
【0033】
図3は、パルスレーザビームの合成制御の例を示す図である。
図4は、CWレーザビームの合成制御の例を示す図である。
図5及び
図6は、出力ビームの例を示す図である。各例において、パワーが制御されたレーザビームがレーザビームシステムから出力される。
【0034】
一例において、複数の光源20から出射された複数のレーザビームが合成される。合成は、レンズ、ビームスプリッタ、ハービングまたはミラー等を含む光学系により行われ得る。合成されたレーザビームは、時分割器50に入射し、時分割器50を介して第1の繰り返しタイミングに対応する合成ビーム(第1パルスの合成ビーム)が第1光ファイバ80に導かれる(
図3(b)、
図4(b))。第2の繰り返しタイミングに対応する合成ビーム(第2パルスの合成ビーム)が時分割器50を介して第2光ファイバ80に導かれる(
図3(c)、
図4(c))。第3の繰り返しタイミングに対応する合成ビーム(第3パルスの合成ビーム)が時分割器50を介して第3光ファイバ80に導かれる(
図3(d)、
図4(d))。第4の繰り返しタイミングに対応する合成ビーム(第4パルスの合成ビーム)が時分割器50を介して第4光ファイバ80に導かれる(
図3(e)、
図4(e))。第5の繰り返しタイミングに対応する合成ビーム(第5パルスの合成ビーム)が時分割器50を介して第5光ファイバ80に導かれる(
図3(f)、
図4(f))。第1、第2、第3、第4、及び第5の繰り返しタイミングは、順に時間シフトしている。これにより、各光ファイバ80に、高エネルギー(高パワー)の合成ビームが導かれる。例えば、SLM60を有する出力モジュール30において、比較的低速度なSLM60の動作タイミングに合わせて光ファイバ80に合成ビームが導かれる。
【0035】
別の例において、時分割及び合成の組み合わせの応用により、複数の出力モジュール30の間で、出力パワーが互いに異なるように制御され得る。例えば、比較的高エネルギー(高パワー)のビームが第1出力モジュール30から出力される(
図5(a))。中間エネルギー(中間パワー)のビームが第2出力モジュール30から出力される(
図5(b))。比較的低エネルギー(低パワー)のビームが第3出力モジュール30から出力される(
図5(c))。
【0036】
さらに別の例において、時分割及び合成の組み合わせの応用により、1つ又は複数の出力モジュール30からの出力ビーム波形が適切に制御される(
図6(a)、(b))。及び/又は、1つ又は複数の出力モジュール30からのビーム出力タイミングが適切に制御される(
図6(c))。
【0037】
特定の実施形態において、時分割器50として、回転デバイス(回転スイッチ)が適用される。回転デバイス50は、コントローラ40によって回転制御され、レーザビームを時間的に分割するように構成される。
【0038】
一例において、回転デバイス50として、ポリゴンミラーデバイスが適用される(
図7)。レーザ光源20からのビームが、ポリゴンミラーデバイス50における、ポリゴンミラー51の複数の反射面52の各々で反射される。複数の出力モジュール30のそれぞれは、入口部を有する光ファイバ80を有する。ポリゴンミラーデバイス50において、ポリゴンミラー51の回転角度に応じて、ビームが時間的に分割される。ポリゴンミラー51の回転角度に応じて、ポリゴンミラー51で反射されたビームが複数の光ファイバ80のいずれか1つの入口部(入射面)に向かう。つまり、ポリゴンミラー51が回転することによりビームに対するポリゴンミラー51の反射面の角度が変化し、反射面に反射されたビームが向かう先が時間によって変化する。そのため、レーザ光源20からの第1パルスのビームが第1光ファイバに入射し、第2パルスのビームが第1光ファイバとは位置が異なる第2光ファイバに入射する。1つのポリゴンミラー51に対して多数の光ファイバ80が配置可能である。ポリゴンミラー51からの時分割ビームは、複数の光ファイバ80のいずれかに振り分けられる。換言すると、ポリゴンミラー51は、ビームが入射される光ファイバを切り替えている。また、換言すると、ポリゴンミラー51は、ビームの光路の位置を切り替えている。ポリゴンミラー51と光ファイバ80との間に、必要に応じて少なくとも1つのレンズ85、86が配置される(
図8)。例えば、光ファイバ80の入口部(入射面)とポリゴンミラー51の反射面とが共役である場合、ポリゴンミラー51の回転に基づく、光ファイバ80に対するビームの入射位置のずれ(位置ずれ)が抑制される。なお、ポリゴンミラー51の回転に基づく、光ファイバ80に対するビームの入射角度のわずかな変化は、スペックルの抑制に有利である。パルスビームに代えて、CWビームも同様に本形態に適用され得る。
【0039】
他の例において、回転デバイス50として、円板型の光スイッチデバイスが適用される(
図9)。円板型光スイッチデバイス50において、回転プレート55の回転角度に応じて、ビームが時間的に分割される。例えば、レーザ光源20からのビームが、回転プレート55の回転角度に応じて、光スイッチデバイス50における、回転プレート55の光学面56、57で反射又は透過される(
図9(a))。回転プレート55は、周方向に並ぶ透過面56と反射面57とを有する。例えば、回転プレート55を透過したビームが第1経路“A”に向かい、回転プレート55で反射したビームが第2経路“B”に向かう(
図10)。また、例えば、レーザ光源20からのビームが、回転プレート55の回転角度に応じて、光スイッチデバイス50における、回転プレート55の光学面56、57で異なる方向に反射される(
図9(b))。回転プレート55は、向きが互いに異なる第1反射面56と第2反射面57とを有する。例えば、回転プレート55の第1反射面56で反射したビームが第1経路”A”に向かい、回転プレート55の第2反射面57で反射したビームが第2経路”B”に向かう。また、例えば、レーザ光源20からのビームが、回転プレート55の回転角度に応じて、回転プレート55の異なる高さ位置で反射される(
図9(c))。回転プレート55は、回転軸方向の高さ位置が異なる第1反射面56と第2反射面57とを有する。例えば、回転プレート55の第1反射面56で反射したビームが第1経路”A”に向かい、回転プレート55の第1反射面を透過しかつ第2反射面57で反射したビームが第2経路”B”に向かう。なお、回転型光スイッチデバイス50における、ビーム分割数は、2に限定されない。分割数は、3、4、5、6、7、8、9、10、又はそれ以上にできる。例えば、回転プレート55は、向きが互いに異なる3以上の反射面を有することができる。
【0040】
特定の実施形態において、上述した円板型光スイッチデバイスが副分割器(動的時分割器)70として適用され、ポリゴンミラーデバイスが時分割器(動的時分割器)50として適用される(
図11)。この形態において、非安定ゾーン及び/又は非好適ゾーン59としての、ポリゴンミラー51の角(corner)の使用が回避され得る。例えば、時間軸上の第1スパンにおいて光スイッチデバイス70からのビームが経路”A”を介してポリゴンミラーデバイス50の反射面52内の第1位置に向かい、ポリゴンミラー51(反射面52A)の安定ゾーン58で優先的及び/又は好適に(specifically and/or preferentially)反射されて時分割される。時間軸上の第2スパンにおいて光スイッチデバイス70からのビームが経路”B”を介してポリゴンミラーデバイス50の反射面52Aとは異なる反射面52Bに向かい、ポリゴンミラー51(反射面52B)の安定ゾーン58で優先的及び/又は好適に反射されて時分割される。ポリゴンミラー51の反射面52A及び反射面52Bに対してビームが交互に供給される。第1時間スパンでは、反射面52Bにビームは入らず、ポリゴンミラー51(反射面52A)の非安定ゾーン(角部分)59、つまりポリゴンミラー51を形成する反射面と反射面とが交わる部分(境界部分)の使用が回避される。第2時間スパンでは、反射面52Aにビームは入らず、ポリゴンミラー51(反射面52B)の非安定ゾーン(角部分)59の使用が回避される。時分割ビームの振り分けにより、ビームを実質的に連続利用しつつ、ポリゴンミラー51(時分割器50)における非安定ゾーンの使用が回避される。ポリゴンミラー51(時分割器50)における非安定ゾーンの使用が回避される詳細については後述する。なお、反射面52Aおよび反射面52Bは、ポリゴンミラー51の回転により、時間と共に変更される。つまり、反射面52Aは、経路“A”を介してポリゴンミラーデバイス50にビームが入射される面である。また、反射面52Bは、経路“B”を介してポリゴンミラーデバイス50にビームが入射される面である。
【0041】
特定の実施形態において、電気光学変調器(EOM、EO)が時分割器50として適用され、偏光ビームスプリッタ(PBS)が副分割器(静的分割器)70として適用される(
図12)。一例において、ビームの進行方向に沿って、EOM50、及びPBS70が順に光軸上に配置される。この形態において、EOM50からのビームがPBS70によって波長帯域に応じて複数に分岐される。例えば、EOM50からの時分割ビームのp偏光ビームがPBS70を透過する。EOM50からの時分割ビームのs偏光ビームがPBS70で反射される。
【0042】
特定の実施形態において、電気光学変調器(EOM、EO)が副分割器(動的時分割器)70として適用され、偏光ビームスプリッタ(PBS)が副分割器(静的分割器)70として適用され、複数のポリゴンミラーデバイスが時分割器50として適用される(
図13)。複数のポリゴンミラーデバイスのポリゴンミラー51A、51Bは、光路に対して並列の位置関係になるように配される。一例において、ビームの進行方向に沿って、EOM70、PBS70、及びポリゴンミラー50が順に光軸上に配置される。この形態において、EOM70からビームがPBS70によって波長帯域に応じて分岐される。PBS70を透過したp偏光ビームが第1ポリゴンミラー51Aによって時分割され、PBS70で反射されたs偏光ビームが第2ポリゴンミラー51Bによって時分割される。
【0043】
特定の実施形態において、レーザビームシステムは、時分割器50(又は副分割器70)と光ファイバ80(又は出力モジュール30)との光学的な間に配されるアパーチャデバイス90をさらに備える(
図14)。アパーチャデバイス90は、アパーチャ91を有し、コントローラ40によって、ビームが通過する開口の面積が制御される。アパーチャ91は、複数の開口を有する。この形態において、例えば、時分割器50からのビームのうち、アパーチャ91の第1開口を通過したビームが第1時分割ビームとして第1ファイバに入り、第2開口を通過したビームが第2時分割ビームとして第2ファイバに入る。また、アパーチャ91の開口面積が制御されることによって、各時分割ビームの光量が調整される。この形態は、発光時間が比較的長いCWレーザビーム等のビームに好ましく適用される。
【0044】
一実施形態において、レーザビームシステムは、半導体素子、液晶表示素子、有機EL素子等のデバイス(電子デバイス又はマイクロデバイス)を製造するためのフォトリソグラフィシステムに適用される。一例において、ステッパー等の一括露光型の露光装置、又はスキャニングステッパー等の走査露光型の露光装置が使用される。例えば、露光装置において、所定のパターンが投影光学系を介してウエハ又はガラスプレート等の基板の各ショット領域に形成される。
【0045】
露光装置の一例において、マスクステージに保持されたマスク(あるいはレチクル)に形成されたパターンが、投影光学系を介した露光光の照射により基板に転写される。
【0046】
露光装置の他の例において、マスクの代わりに、空間光変調器(SLM(spatial light modulators))を用いて、投影光学系の物体面に可変のパターンが生成される(マスクレス方式の露光装置)。
【0047】
各種露光装置の構成の少なくとも一部について、例えば、US2009/0117494A1、US2010/0099049A1、US2013/0222781A1、US2013/0278912A1、US2013/0314683A1、US2014/0320835A1、US2015/0077732A1、US6552775B1の開示が本明細書に援用され得る。
【0048】
特定の実施形態において、レーザビームシステムは、フラットパネルディスプレイ(液晶表示装置、有機EL表示装置等)を製造するためのフォトグラフィシステムとしての露光装置に適用される。
【0049】
図15及び16は、マスクレス方式の露光装置1000の一実施形態の構成を概略的に示す図である。露光装置1000は、レーザ光源20を含む光源モジュール1100と、時分割器50及び副分割器70を含む分配モジュール(合成・分配モジュール)1200と、出力モジュール(光ファイバ80と照明光学系(照明系)1310とSLM60と投影光学系(投影レンズ)1330を含む)30を含む照明システム1300と、基板(ワークピース)1410が搭載される基板ステージ1400と、コントローラ40及びデータ送信部を含む制御システム1500と、を備える。
【0050】
図15及び
図16において、光源モジュール1100は、光エネルギーのレーザビームを放射する。光源モジュール1100からのビームは、分配モジュール1200を介して、照明系1310に入射する。照明系1310からのビームは、SLM60を照明する。コントローラは40、基板1410上に形成したい露光パターンに基づいて、パターンデータを生成する。コントローラ40は、パターンデータをSLM60に送信し、SLM60を制御する。SLM60は、コントローラ40によって制御され、パターンデータ(単に、画像データ、画像とも表現される)に基づいて、照明系からのビームを基板1410へ導く。投影レンズ1330は、SLM60からのビームを基板1410上に投影し、基板1410上の所定領域に結像する。なお、複数のSLM60により基板1410上に露光パターンを形成する場合、コントローラ40は、生成したパターンデータを各SLM60用に分割し、分割したパターンデータを各SLM60に送信する。
【0051】
SLMを用いたスキャン方式の露光装置において、基板が載置された基板ステージ1400の移動中に、レーザビームが発光され、照明光学系1310を介してレーザビームがSLMへ導かれる。SLM上に形成される画像は、レーザビームの1回の発光で露光することが好ましい。SLM上に形成される画像を、レーザビームの2回以上の発光で露光すると、同じパターンデータが発光毎に基板上に投影されることとなる。基板1410は、基板ステージ1400によりレーザビームの発光と発光との間も移動しているため、同じパターンデータが基板上に投影されると、あたかも像が流れているように露光されてしまう。スループット向上のためにスキャン速度を高めると、レーザビームの発光と発光との間の移動距離が長くなり、像がより流れてしまう。スループット向上のためにスキャン速度を高めつつ、像が流れにくくするには、1回の発光時間を短くしなければならない。1回の発光時間が短い場合、SLMを介して基板1410上に照射されるレーザビームのエネルギーが低くなるため、露光エネルギーが足りず露光不良(感光不良)が生じる可能性がある。一般に、SLMの動作周波数(例えば、画像更新周波数)は、レーザビームの発光繰返し周波数(発振周波数)に比べて低く、例えば、数kHz~数十kHzである。
図17の比較例において、レーザビームは、50kHz(10W)であり、SLMは、10kHzである。
図17及び
図18(a)の比較例に示すように、像が流れることを防ぐため低周波数の発振周波数、かつ露光不良の発生が生じない高エネルギーの光源が望まれるものの、波長の条件も含めて考慮すると、現状ではレーザ光源の選択肢が極めて限定される。上記数値は一例であり、本発明はこれに限定されない。
【0052】
一実施形態において、先の
図3及び
図4を用いて説明したように、複数ビームの合成と時分割との組み合わせにより、低周波数かつ高エネルギーのビーム出力が実現される。
図18(b)の例において、分配モジュール1200は、5つの光源20からのビームを合成かつ時分割する。50kHzの周波数で5つの光源から発信されたビームは、合成されることにより高エネルギーのビームとなる。合成されたビーム(50kHz、高エネルギー)は、分配モジュール1200により5つのSLM60(及び5つの投影レンズ1330)にそれぞれ時分割されて案内される。そのため、第1~第5SLMのそれぞれには、10kHzの周波数で高エネルギーのビームが到達することとなる。なお、
図18(a)の比較例、及び
図18(b)の例の両方において、全体で50Wの光源が5モジュールで使用される。なお、
図17の比較例において、レーザビームは、50kHz(10W)であり、SLMは、10kHzであるため、5つのSLMへ分配モジュール1200によって光が分配(振り分け、切り替え)される。レーザビームの発振周波数は、SLMの画像更新周波数の整数倍であることが好ましい。換言すると、上記の整数倍の個数のSLMに、分配モジュール1200はレーザビームを分配する。上記数値は一例であり、本発明はこれに限定されない。
【0053】
一例において、一のSLMに照射されるレーザビームの強度(例えば、パルスエネルギー、平均パワー)E2は、一のレーザ光源から射出されるレーザビームの強度(例えば、パルスエネルギー、平均パワー)E1と同等又はそれ以上である。例えば、E2/E1は、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、100又はそれ以上にできる。また、一のSLMに照射されるビームの周波数(照射周波数)F2、又はSLMの画像更新周波数F3は、レーザ光源の発光繰返し周波数(発振周波数、光源周波数)F1に比べて低い。例えば、F2/F1(又はF3/F1)は、約1/2、1/3、1/4、1/5、1/6、1/7、1/8、1/9、1/10、1/11、1/12、1/13、1/14、1/15、1/16、1/17、1/18、1/19、1/20、1/25、1/30、1/35、1/40、1/45、1/50、1/100又はそれ以下にできる。
【0054】
代替的に、複数ビームの合成と時分割との組み合わせは、
図19に示すように、SLMを備えないシステム(例えば、露光装置)にも適用可能である。
図19の例(露光装置1000)において、時間軸上の所定スパンごとに、複数の時間分割されたビーム(分配された複数のビーム)が生成される。比較的低周波数かつ高エネルギーのビームが複数のモジュール30の各々に供給される。
【0055】
出力モジュール30の数(分配数)は、前述したように、任意に設定可能である。
図20の例において、分配モジュール1200は、4つの光源20からのビームを合成かつ時分割する。時分割されたビームは、4つのSLM60(モジュール30)にそれぞれ供給される。
【0056】
図21の例において、パターンの線幅が2μmであり、スキャン速度が400mm/sである。例えば、パターンの線幅の10%が許容されるとき、必要発光時間は0.5μs以内である。上記数値は一例であり、本発明はこれに限定されない。
【0057】
図22(a)の比較例において、SLMの動作周波数(画像更新周波数)は10kHzである。
図21の例と同様の仕様において、10kHzは100μsに相当する。CW光源において、必要発光時間が0.5μsであるとき、0.5μs以降にSLMにビームを照射すると、SLM上の画像が更新されていないために、同じ投影像が移動する基板1410に形成され、上述したように、あたかも像が流れてしまう。像が流れることを防止するために、0.5μs以降から次にSLM上の画像が更新されるまでの時間には、SLMにビームが照射されないように、たとえばCW光源からSLMまでの光路中でビームを遮光する。この場合、0.5μs以降から次にSLM上の画像が更新されるまでの時間は、実質的に休止時間となる。この比較例において、光源からのエネルギーの1/200のエネルギーでしか、基板1410が露光されない。
【0058】
同様に、
図22(b)の比較例において、SLMの動作周波数(画像更新周波数)は10kHzである。パルス光源からのビームのうち、SLMとパルス光源とが同期するタイミングのビームのみ使用可能である。この比較例において、光源の周波数が400kHzのとき、SLMの動作周波数/光源周波数=1/40であり、光源からのエネルギーの1/40しか利用されない。つまりパルス光源から発振される40パルスのうち1パルスしかSLMを照射しないこと、換言すると39パルスはSLMを照射せず、その39パルスは基板1410の露光に寄与していないこととなる。そのため、
図22(a)、(b)の比較例においては、露光エネルギーが足りず露光不良(感光不良)が生じる可能性がある。上記数値は一例であり、本発明はこれに限定されない。
【0059】
図23の例において、分配モジュール1200からの時分割されたビームは、基板1410が露光中に移動されるスキャン方向(走査方向、X方向)と交差する非スキャン方向(非走査方向、Y方向)に第1、第2、第3のSLMを含む複数のSLM60(投影レンズ1330)にそれぞれ案内される。第1、第2、第3のSLMは、基板1410が露光中に移動される走査方向と交差する非走査方向に並んで配置される。第2のSLMにビームが照射されるタイミングは、第1のSLMにビームが照射されるタイミングと異なる。同様に、第3のSLMの照射タイミングは、第1及び第2のSLMの照射タイミングと異なる。例えば、複数のSLM60において、照射タイミングが時間的に順次シフトされる。これにより、
図22(a)、(b)の比較例で示した露光に寄与していない光源からのエネルギーを、異なるSLMにビームを振り分けることで、基板1410を露光することができる。
【0060】
図24に示すように、露光装置において、複数のSLMの間で照射タイミングが異なる場合、SLM上の画像が同じタイミングで更新され、ビーム照射のタイミングの差に応じてパターンの投影位置(露光位置)がずれる可能性がある。例えば、第1のSLM(SLM(1))に対応する第1パルスに比べて、第2のSLM(SLM(2))に対応する第2パルスの投影位置がスキャン方向にシフトする。また、第2のSLM(SLM(2))に対応する第2パルスに比べて、第3のSLM(SLM(3))に対応する第3パルスの投影位置がスキャン方向にさらにシフトする。
【0061】
図25に示すように、露光装置を機械的及び/又は光学的に調整することにより、複数のSLMの間で照射タイミングが異なる場合でも、パターンの投影位置(露光位置)のずれが補償される。一例において、複数のSLMに対する照射タイミングのずれに基づき、複数のSLMからの投影像が所定の位置関係になるように、複数のSLMの形状、取付け位置、及び/又は姿勢が機械的に設定される。代替的及び/又は追加的に、複数のSLMからの投影像が、複数のSLMに対する照射タイミングのずれに基づく所定の位置関係になるように、露光装置が光学的に設定される。例えば、投影光学系(投影レンズ)1330内の光学素子の調整により基板1410上の投影像の位置を移動させたり、ビームに対してSLMを移動させ基板1410上の投影像の位置を移動させたりする。
【0062】
図26に示すように、複数のSLMに供給されるパターンの描画データを調整することにより、複数のSLMの間で照射タイミングが異なる場合でも、パターンの投影位置(露光位置)のずれが補償される。例えば、スキャン方向に順次シフトした投影位置に対応するデータが複数のSLMにそれぞれ供給される。一例において、複数のSLMに対する照射タイミングのずれに基づき、複数のSLMからの投影像が所定の位置関係になるように、パターンデータの少なくとも一部が補正される。例えば、複数のSLMの少なくとも1つに供給されるパターンデータは、照射タイミングの違いに基づいて設定された、基準位置に対して所定の方向にシフトした補正データを含む。代替的及び/又は追加的に、パターンデータは、基板ステージ1400の移動速度、SLMの表示更新周波数、レーザビームの発振周波数、時分割器としてのポリゴンミラーデバイス(回転デバイス)50の回転速度、SLM60(投影レンズ1330)の個数、等の少なくとも1つに基づいて、基準位置に対する所定の方向へのシフト量を決めるようにしても良い。
【0063】
図27に示すように、スキャン方向(例えば、基板ステージの移動方向)が+方向と-方向との間(一方向とその逆方向との間)で切り替えて基板1410上に1つのパターンを露光する露光装置において、複数のSLMに供給されるパターンのデータは、対応するタイミングでのスキャン方向に応じて調整され得る。例えば、複数のSLMの少なくとも1つに供給されるパターンデータは、基準位置に対してスキャン方向の+方向にシフトした第1補正データと、基準位置に対してスキャン方向の-方向にシフトした第2補正データとを含む。
【0064】
代替的及び/又は追加的に、スキャン方向(例えば、基板ステージの移動方向)が+方向と-方向との間(一方向とその逆方向との間)で切り替わる露光装置において、スキャン方向の切替のタイミングごとに機械的及び/又は光学的に露光装置が調整され得る。
【0065】
図28に示すように、露光装置(光学装置)1000は、機械的調整用の駆動機構1510、及び光学的調整用の駆動機構1520を備えることができる。また、露光装置1000は、データ補正用の設定パラメータ及び/又はプログラムが保存されたデータベース1530(又は記憶部)を備えることができる。こうしたシフト調整は、例えば、参照センサ等を含む参照システム1540の出力結果に基づき、実行され得る。なお、SLMを露光装置1000に取りつける際に、取り付け位置を予めずらして配置した場合、駆動機構1510を省くこともできる。また、SLMの取り付け位置を予めずらして配置した場合であっても、取り付け誤差を補償するために、駆動機構1510を用いるようにしてもよい。
【0066】
複数のSLMの間でビームが照射されるタイミングが互いに異なる露光装置1000の一例において、制御システム1500は、複数のSLMの各々の照射タイミングに基づき、(a-1)駆動機構1510を用いた露光装置1000の機械的な調整、(a-2)駆動機構1520を用いた露光装置1000の光学的な調整、(a-3)データベース1530を用いたパターンデータの補正、の少なくとも1つを制御することができる。例えば、上記の(a-1)、(a-2)、及び(a-3)のすべてを組み合わせたシフト調整が実行される。あるいは、上記の(a-1)、(a-2)、及び(a-3)の1つ又は2つの組み合わせに基づくシフト調整が実行される。一例において、パターンデータの補正が、比較的大きいシフト調整及び/又は比較的粗いシフト調整に適用され、機械的及び/又は光学的な調整が、比較的小さいシフト調整及び/又は比較的微細なシフト調整に適用される。他の例において、上記と異なる別の方法が適用され得る。
【0067】
代替的及び/又は追加的に、上記のシフト調整は、ビームの使用タイミングに基づいて実行され得る。ビームが未使用とされる所定期間(例えば、未使用パルス)が生じる場合でも、上記のシフト調整により、パターンの投影位置(露光位置)のずれが補償される。例えば、パターンの投影位置のずれを回避しつつ、比較的不安定な期間のビームが不使用とされ、安定的なビームが選択的に用いられる。
【0068】
一実施形態において、露光装置1000は、
図29に示すように、複数のレーザ光源20と、複数のSLM60を有する複数の出力モジュール30と、複数のレーザ光源20と出力モジュール30との間に配され、複数のレーザ光源20から出射され合成されたレーザビームを時間的に分割する時分割器としてのポリゴンミラーデバイス(回転デバイス)50とを備える。レーザ光源20からのビームが、ポリゴンミラーデバイス50における、ポリゴンミラー51の複数の反射面52の各々で反射される。ポリゴンミラー51の回転角度に応じて、ビームが時間的に分割される。ポリゴンミラー51の回転角度に応じて、ポリゴンミラー51で反射されたビームが複数の光ファイバ80を介して複数のSLM60に振り分けられる。一例において、ポリゴンミラー51からの時分割ビームは、5つのSLM60に振り分けられる。例えば、第1のSLMに、第1パルス、第6パルス・・・に対応するビームが入射する。第2のSLMに、第2パルス、第7パルス・・・に対応するビームが入射する。
【0069】
一実施形態において、露光装置1000は、
図30に示すように、複数のレーザ光源20と、複数のSLM60を有する複数の出力モジュール30と、複数のレーザ光源20と複数の出力モジュール30との間に配され複数のレーザ光源20から出射され合成されたレーザビームを時間的に分割する時分割器としてのポリゴンミラーデバイス(回転デバイス)50と、複数のレーザ光源20とポリゴンミラーデバイス50との間に配される副分割器70としての光スイッチデバイス70と、を備える。一例において、時間軸上の第1スパンにおいて光スイッチデバイス70からのビームが経路"A"を介してポリゴンミラーデバイス50の第1位置に向かい、ポリゴンミラー51(反射面52A)で反射される。時間軸上の第2スパンにおいて光スイッチデバイス70からのビームが経路"B"を介してポリゴンミラーデバイス50の第2位置に向かい、ポリゴンミラー51(反射面52B)で反射される。ポリゴンミラー51の第1位置及び第2位置に対してビームが交互に供給される。ポリゴンミラー51の回転角度に応じて、ビームが時間的にさらに分割される。すなわち、本例において、光路に沿って直列に2つの時分割器が配置され、ビームが時間的に2段に分割される。一例において、ポリゴンミラー51からの時分割ビームは、10のSLM60に振り分けられる。例えば、第1のSLMに、第1パルス、第11パルス・・・に対応するビームが入射する。第2のSLMに、第2パルス、第12パルス・・・に対応するビームが入射する。換言すると、ポリゴンミラー51の反射面52Aで反射されたビームは第1のSLM群(
図30においては第1のSLMから第5のSLM)に導かれ、反射面52Bで反射されたビームは第2のSLM群(
図30においては第6のSLMから第10のSLM)に導かれる。
【0070】
一実施形態において、露光装置1000は、
図31に示すように、複数のレーザ光源20と、複数のSLM60を有する複数の出力モジュール30と、複数のレーザ光源20と複数の出力モジュール30との間に配され複数のレーザ光源20から出射され合成されたレーザビームを時間的に分割する時分割器としての複数のポリゴンミラーデバイス(回転デバイス)50と、複数のレーザ光源20と複数のポリゴンミラーデバイス50との間に配される副分割器としての光スイッチデバイス70と、を備える。複数のポリゴンミラーデバイス50の複数のポリゴンミラー51A、51Bは、光路に対して並列の位置関係になるように配される。一例において、時間軸上の第1スパンにおいて光スイッチデバイス70からのビームがポリゴンミラー51Aに向かい、ポリゴンミラー51Aの反射面で反射される。時間軸上の第2スパンにおいて光スイッチデバイス70からのビームがポリゴンミラー51Bに向かい、ポリゴンミラー51Bの反射面で反射される。ポリゴンミラー51A、51Bの回転角度に応じて、ビームが時間的にさらに分割される。一例において、ポリゴンミラー51Aからの時分割ビームは、5つのSLM60に振り分けられる。ポリゴンミラー51Bからの時分割ビームは、別の5つのSLM60に振り分けられる。例えば、第1のSLMに、第1パルス、第11パルス・・・に対応するビームが入射する。第6のSLMに、第6パルス、第16パルス・・・に対応するビームが入射する。換言すると、ポリゴンミラー51Aで反射されたビームは第1のSLM群(
図31においては第1のSLMから第5のSLM)に導かれ、ポリゴンミラー51Bで反射されたビームは第2のSLM群(
図30においては第6のSLMから第10のSLM)に導かれる。
【0071】
一実施形態において、露光装置1000は、
図32に示すように、複数のレーザ光源20と、複数のSLM60を有する複数の出力モジュール30と、複数のレーザ光源20と複数の出力モジュール30との間に配され複数のレーザ光源20から出射され合成されたレーザビームを時間的に分割する時分割器としての複数の光スイッチデバイス50と、複数のレーザ光源20と複数の光スイッチポリゴンミラーデバイス50との間に配される副分割器としての光スイッチデバイス70と、を備える。複数の光スイッチデバイス50の複数の光学部材55A、55B、55Cは、光路に対して並列の位置関係になるように配される。一例において、時間軸上の第1スパンにおいて光スイッチデバイス70からのビームが光学部材55Aに向かい、光学部材55Aで時分割される。時間軸上の第2スパンにおいて光スイッチデバイス70からのビームが光学部材55Bに向かい、光学部材55Bで時分割される。時間軸上の第3スパンにおいて光スイッチデバイス70からのビームが光学部材55Cに向かい、光学部材55Cで時分割される。一例において、光学部材55Aからの時分割ビームは、3つのSLM60に振り分けられる。光学部材55Bからの時分割ビームは、別の3つのSLM60に振り分けられる。光学部材55Cからの時分割ビームは、さらに別の3つのSLM60に振り分けられる。例えば、第1のSLMに、第1パルス、第10パルス・・・に対応するビームが入射する。第4のSLMに、第4パルス、第13パルス・・・に対応するビームが入射する。第7のSLMに、第7パルス、第16パルス・・・に対応するビームが入射する。換言すると、光学部材55Aで時分割されたビームは第1のSLM群(
図32においては第1のSLMから第3のSLM)に導かれ、光学部材55Bで時分割されたビームは第2のSLM群(
図32においては第4のSLMから第6のSLM)に導かれ、光学部材55Cで時分割されたビームは第3のSLM群(
図32においては第7のSLMから第9のSLM)に導かれる。
【0072】
一実施形態において、露光装置1000は、
図33に示すように、レーザ光源20と、複数のSLM60と、レーザ光源20と複数のSLM60との間に配される時分割器としての複数のポリゴンミラー51A、51B、51Cと、レーザ光源20と複数のポリゴンミラー51A、51B、51Cとの間に配される副分割器としての複数の光スイッチデバイス70(光学部材75A、75B)と、を備える。例えば、光学部材75A、75Bは、周方向に反射領域と透過領域とが並んで配置された回転プレートである。一例において、時間軸上の第1スパンにおいて光学部材75Aで反射したビームがポリゴンミラー51Aに向かい、ポリゴンミラー51の反射面で反射される。時間軸上の第2スパンにおいて光学部材75Aを透過し光学部材75Bで反射したビームがポリゴンミラー51Bに向かい、ポリゴンミラー51Bの反射面で反射される。時間軸上の第3スパンにおいて光学部材75Bを透過したビームがポリゴンミラー51Cに向かい、ポリゴンミラー51Cの反射面で反射される。ポリゴンミラー51A、51B、51Cの回転角度に応じて、ビームが時間的にさらに分割される。ポリゴンミラー51A-51Cの回転に基づく、ビームの入射角度のわずかな変化は、スペックルの抑制に有利である。
【0073】
一実施形態において、露光装置1000は、
図34に示すように、複数のレーザ光源20と、複数のSLM60と、複数のレーザ光源20と複数のSLM60との間に配される時分割器としての複数のポリゴンミラー51A、51B、51C、51D、51E、51Fと、複数のレーザ光源20と複数のポリゴンミラー51A-51Fとの間に配される副分割器としての複数の光スイッチデバイス70(光学部材75A、75B、75C、75D、75E、75F)と、を備える。例えば、光学部材75A-75Fは、AOM(音響光学変調器)である。一例において、時間軸上の第1スパンにおいて、光学部材75Cで分岐されたビームがポリゴンミラー51Cに向かうとともに、光学部材75Fで分岐されたビームがポリゴンミラー51Fに向かう。時間軸上の第2スパンにおいて、光学部材75Bで分岐されたビームがポリゴンミラー51Bに向かうとともに、光学部材75Eで分岐されたビームがポリゴンミラー51Eに向かう。時間軸上の第3スパンにおいて、光学部材75Aで分岐されたビームがポリゴンミラー51Aに向かうとともに、光学部材75Dで分岐されたビームがポリゴンミラー51Dに向かう。ポリゴンミラー51A-51Fの回転角度に応じて、ビームが時間的にさらに分割される。ポリゴンミラー51A-51Fの回転に基づく、ビームの入射角度のわずかな変化は、スペックルの抑制に有利である。
【0074】
図35に示す例において、パルス発光のタイミングに応じて、複数の出力モジュールからのビームによって基板1410が順次露光される。すなわち、複数の出力モジュール(1、2、3、・・・n)からのビームに基づき、基板1410上に、パルス発光のタイミングに応じて、複数のパターンが順次投影される。
【0075】
一実施形態において、露光装置1000は、
図36に示すように、同期用の基準となるマスタークロック(マスタークロックを発する発振器)4010を備える。
図36の露光装置1000において、少なくとも、レーザ光源20、時分割器(例えば、ポリゴンミラーデバイス)50、副分割器(例えば、光スイッチデバイス)70、SLM(例えば、DMD)60、及び基板ステージ1400の各デバイスが、マスタークロック4010を基準として駆動される。
図37に示すように、各デバイスには必要に応じて原点センサ4020が設けられる。
【0076】
例えば、
図37において、制御システム1500は、原点センサ4020からの出力データに基づき、ポリゴンミラー51の回転に関する情報を取得する。制御システム1500は、各デバイスからの情報と、マスタークロック4010からの情報とに基づいて、各デバイスを制御できる。
【0077】
図38に示すように、制御システム1500は、ポリゴンミラー51の回転情報に基づき、マスタークロック4010のクロック周波数に合うように、ポリゴンミラー51の回転数を調整する。さらに、制御システム1500は、マスタークロック4010のクロックタイミングに合うように、ポリゴンミラー51の位相を調整する。その結果、マスタークロック4010に同期して、ポリゴンミラー51が回転制御される。副分割器(光スイッチデバイス70)(
図36)についても同様に調整可能である。
【0078】
また、制御システム1500は、マスタークロック4010を基準として、SLM60における画像表示開始のトリガー信号を制御可能、つまり画像更新周波数を制御可能である。制御システム1500は、マスタークロック4010を基準として、基板を支持する基板ステージ1400の動作を制御可能である。また、制御システム1500は、基板ステージ1400との位置ずれが解消するように、SLM60を支持するSLMステージ1430の動作を制御可能である。SLMステージ1430を動作することにより、先述したとおり、基板1410上に投影される投影像の位置を移動させることができる。マスタークロック4010の参照により、
図39に示すように、各デバイスの動作タイミングが個別に適切に調整されるとともに、複数のデバイスの間の動作タイミングの関係が適切に設定される。
【0079】
ここで、時分割器50及び副分割器70において、時分割用に設けられた複数の領域の境界部分にビームが入射すると、射出されるビームが不安定になる可能性がある。例えば、先の
図9(b)に示した回転プレート55において、第1反射面56と第2反射面57との間の境界部分に位置する頂部又は底部にビームが入射すると、反射したビームが散乱したり、ビームの向きに乱れが生じたりする可能性がある。
【0080】
図40に示すように、レーザ光源20の発振タイミングに応じて、回転プレート55の回転を適切に制御することにより、回転プレート55における第1反射面56と第2反射面57との間の境界部分へのビームの入射が回避される。例えば、(n+1)番目のパルスと(n+2)番目のパルスとの間のタイミングにおいて、ビームの目標照射位置に、回転プレート55における光学的な境界(最頂部又は最底部)が位置するように、回転プレート55の回転が制御される。これにより、ビームの利用効率が向上する。
【0081】
代替的及び/又は追加的に、時分割器50(又は副分割器70)における分割用の光学的な境界は、他の領域と異なる加工が施行され得る。一例において、
図41に示すように、回転プレート55における第1反射面56と第2反射面57との間の境界付近(底部近傍)に追加的に加工が施される。例えば、回転プレート55の境界付近に、比較的高精度の追加加工が施される。光学的境界の近傍領域における高い面精度に基づき、ビームの利用効率が向上する。
【0082】
図41の例において、回転プレート55における第1反射面56と第2反射面57との間の境界付近(底部近傍)に追加工の痕としての段差55A、55Bが形成されている。レーザ光源20の発振タイミングに応じて、回転プレート55の回転を適切に制御することにより、回転プレート55における段差55A、55Bへのビームの入射が回避される。例えば、(n)番目のパルスと(n+1)番目のパルスとの間のタイミングにおいて、ビームの目標照射位置に、回転プレート55における段差55Aが位置するように、回転プレート55の回転が制御される。また、(n+2)番目のパルスと(n+3)番目のパルスとの間のタイミングにおいて、ビームの目標照射位置に、回転プレート55における段差55Bが位置するように、回転プレート55の回転が制御される。
【0083】
一実施形態において、基板上に所定パターンを露光する露光装置(1000)は、光源(20)と、前記光源(20)からの前記光を、前記所定パターンを記述したパターンデータに基づいて空間変調する空間光変調器(60)と、前記空間変調された前記光の投影像を前記基板へ投影する投影光学系(1330)と、前記光源(20)から順次発振された光の光路を切り替えて、複数設けられた前記空間変調器(60)に順に導くよう、前記光の光路を切り替える光路切替え機(50、70)と、を備え、前記光路切替え機(50、70)は、前記光路を第1光路と第2光路とのどちらか一方へ切り替える第1切替え機(70)と、前記第1光路へ導かれた前記光を複数の空間光変調器のうち第1群の空間光変調器(60)へ、前記第2光路へ導かれた前記光を複数の空間光変調器のうち第2群の空間変調器(60)へ、前記光をそれぞれ導く第2切替え機(50)と、を有する。
【0084】
一例において、前記第1切替え機(70)は、前記光源(20)から第1期間内に発振された前記光を前記第1光路へ導く第1領域と、前記光源(20)から前記第1期間とは異なる第2期間内に発振された前記光を前記第2光路へ導く第2領域と、を有する。
【0085】
例えば、前記第1領域は、前記光を反射し、前記第2領域は、前記光を透過する。
【0086】
例えば、前記第1領域は、前記光に対して第1角度に傾けて設けられ、前記光を反射して前記光を前記第1光路へ導き、前記第2領域は、前記光に対して前記第1角度とは異なる第2角度に傾けて設けられ、前記光を反射して前記光を前記第2光路へ導く。
【0087】
別の例において、前記第2切替え機(50)は、前記第1群の空間光変調器(60)へ前記光を反射させる第一反射面(52A)と、前記第2群の空間光変調器(60)へ前記光を反射させる導く第二反射面(52B)と、を有する。
【0088】
前記第2切替え機(50)は、前記第1群の空間光変調器(60)へ前記光を導く第一切替え機(50、51A)と、前記第2群の空間光変調器(60)へ前記光を導く第二切替え機(50、51B)と、を有する。
【0089】
代替的及び/又は追加的に、露光装置(1000)は、前記パターンデータを前記空間光変調器(60)へ送信するデータ送信部(1500)、を備え、前記空間光変調器(60は、露光中に前記基板が移動される第1方向と交差する第2方向に複数並んで設けられた第1空間光変調器(60)と第2空間光変調器(60)とを有し、前記データ送信部(1500)は、前記パターンデータを、前記第1空間光変調器(60)へ送信される第1パターンデータと、前記第2空間光変調器(60)へ送信される第2パターンデータとに分割し、前記第1パターンデータと前記第2パターンデータとの前記第1方向に関する位置を相対的にシフトさせる。
【0090】
代替的及び/又は追加的に、露光装置(1000)は、前記パターンデータを前記空間光変調器(60)へ送信するデータ送信部(1500)、を備え、前記空間光変調器(60)は、第1空間光変調器(60)と第2空間光変調器(60)とを有し、前記データ送信部(1500)は、前記パターンデータを、前記第1空間光変調器(60)へ送信される第1パターンデータと、前記第2空間光変調器(60)へ送信される第2パターンデータとに分割し、前記第1パターンデータと前記第2パターンデータとの位置を相対的にシフトさせる。
【0091】
例えば、前記第2切替え機(50)は、ポリゴンミラーである。
【0092】
一実施形態において、露光装置(1000)は、第1方向へ移動中の基板に対して、前記第1方向と交差する第2方向に並んで配置された第1空間光変調器(60)と前記第2光変調器(60)とを介して、所定パターンを露光する。露光装置(1000)は、光源(20)と、前記所定パターンに基づいて記述されるパターンデータを前記第1空間光変調器(60)および前記第2空間光変調器(60)へ送信するデータ送信部(1500)、前記光源(20)からの前記光が、前記パターンデータの一部であり前記送信部(1500)により送信された第1パターンデータに基づいて前記第1空間変調器(60)により空間変調された前記光の投影像を前記基板へ投影する第1投影光学系(1330)と、前記光源(20)からの前記光が、前記パターンデータの他部であり前記送信部(1500)により送信された第2パターンデータに基づいて空間変調する第2の空間光変調器(60)と、前記第2の空間変調された前記光の投影像を前記基板へ投影する第2投影光学系(1330)と、前記光源(20)から順次発振された光の光路を切り替えて、前記第1の空間変調器(60)、前記第2の空間変調器(60)の順に導く光路切替え機(50)と、を備え、前記データ送信部(1500)は、前記パターンデータを、前記第1パターンデータと、前記第2パターンデータとに分割し、前記第1パターンデータと前記第2パターンデータとの前記第1方向に関する位置を相対的にシフトさせる。
【0093】
一例において、露光装置(1000)は、前記光源(20)と、前記空間光変調器(60)と、前記光路切替え機(50)との少なくとも2つを同期させるマスタークロックを発する発振器(4010)を備える。
【0094】
例えば、露光装置は、複数の前記光源(20)からそれぞれ発せられた前記光を合成する合成器(1200)を、さらに備え、前記光路切替え機(50)は、前記合成器(1200)により合成された前記光の前記光路を切り替える。
【0095】
一実施形態において、フラットパネルディスプレイの製造方法は、上記の露光装置(1000)を用いて前記基板を露光することと、露光された前記基板を現像することと、を含む。
【0096】
一実施形態において、デバイス製造方法は、上記の露光装置(1000)を用いて前記基板を露光することと、露光された前記基板を現像することと、を含む。
【0097】
なお、露光装置1000は、例えば、ウエハ上に集積回路パターンを露光する半導体フォトリソグラフィシステム又は薄膜磁気ヘッドを製造するフォトリソグラフィシステムとしても使用可能である。
【0098】
なお、上述した複数の実施形態において、複数ビームの合成と時分割との組み合わせにより、低周波数かつ高エネルギーのビーム出力が実現されることを説明したが、これに限定されない。レーザ光源から高エネルギーのビーム出力される場合、複数ビームを合成しなくともよい。
【0099】
なお、複数ビームの合成とは、複数光源から発したレーザビームのそれぞれの光軸が一致し合成される場合を含む。また、複数光源から発したレーザビームのそれぞれの光軸が一致しない場合であっても、それらの光軸が十分に近い場合は高エネルギーのビーム出力となるたり、ビームが合成されていることも含む。
【0100】
上述のフォトリソグラフィシステムは、所定の機械的正確さ、電気的正確さ、及び光学的正確さが維持されるように、種々のサブシステムを組み立てることにより構築可能である。組立の前後に種々の正確さを維持するために、各光学システムは、その光学的正確さを達成するように調整される。同様に、機械的システム及び電気的システムはすべて、機械的正確さ及び電気的正確さを達成するように調整される。フォトリソグラフィシステムに各サブシステムを組み立てるプロセスには、各サブシステム間の機械的インタフェース、電気回路配線接続、及び空気圧配管接続が含まれる。種々のサブシステムからフォトリソグラフィシステムを組み立てるのに先立って、各サブシステムを組み立てるプロセスも存在する。種々のサブシステムを使用して一旦フォトリソグラフィシステムが組み立てられると、完全なフォトリソグラフィシステムにおいて正確さを確実に維持するように、あらゆる調整を実施する。さらに、温度及び清浄度が制御されるクリーンルームにおいて露光システムを製造することが望ましい。
【0101】
また、露光対象となる基板はガラスプレートに限られず、例えばウエハ、セラミック基板、フィルム部材、あるいはマスクブランクスなど、他の物体でも良い。また、露光対象物がフラットパネルディスプレイ用の基板である場合、その基板の厚さは特に限定されず、例えばフィルム状(可撓性を有するシート状の部材)のものも含まれる。なお、本実施形態の露光装置は、一辺の長さ、又は対角長が500mm以上の基板が露光対象物である場合に特に有効である。
【0102】
液晶表示素子(あるいは半導体素子)などの電子デバイスは、デバイスの機能・性能設計を行うステップ、この設計ステップに基づいたマスク(あるいはレチクル)を製作するステップ、ガラス基板(あるいはウエハ)を製作するステップ、上述した各実施形態の露光装置、及びその露光方法によりマスク(レチクル)のパターンをガラス基板に転写するリソグラフィステップ、露光されたガラス基板を現像する現像ステップ、レジストが残存している部分以外の部分の露出部材をエッチングにより取り去るエッチングステップ、エッチングが済んで不要となったレジストを取り除くレジスト除去ステップ、デバイス組み立てステップ、検査ステップ等を経て製造される。この場合、リソグラフィステップで、上記実施形態の露光装置を用いて前述の露光方法が実行され、ガラス基板上にデバイスパターンが形成されるので、高集積度のデバイスを生産性良く製造することができる。
【0103】
上記の本開示のシステムにより、目的を達成し、効果を提供することができる。これらは実施形態の例示であり、構成又は設計を詳細に限定する意図はない。
【符号の説明】
【0104】
20:レーザ光源、30:出力モジュール、40:コントローラ、50:時分割器、51:ポリゴンミラー、60:空間光変調器(SLM)、70:副分割器、80:光ファイバ、1000:露光装置(光学装置)、1100:光源モジュール、1200:分配モジュール、1300:照明システム、1310:照明系、1330:投影レンズ、1400:基板ステージ、1410:基板、1500:制御システム