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特許7416227プラスチック積層体をリサイクル原料に再生するために用いるインキ洗浄剤、インキ膜剥離方法、及び剥離したインキ膜の分離回収方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】プラスチック積層体をリサイクル原料に再生するために用いるインキ洗浄剤、インキ膜剥離方法、及び剥離したインキ膜の分離回収方法
(51)【国際特許分類】
   B29B 17/02 20060101AFI20240110BHJP
   C11D 1/90 20060101ALI20240110BHJP
   C11D 1/62 20060101ALI20240110BHJP
   C11D 1/72 20060101ALI20240110BHJP
   C11D 1/722 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
B29B17/02 ZAB
C11D1/90
C11D1/62
C11D1/72
C11D1/722
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022520915
(86)(22)【出願日】2021-08-19
(86)【国際出願番号】 JP2021030321
(87)【国際公開番号】W WO2022044941
(87)【国際公開日】2022-03-03
【審査請求日】2022-04-05
(31)【優先権主張番号】P 2020141783
(32)【優先日】2020-08-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020177226
(32)【優先日】2020-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100214673
【弁理士】
【氏名又は名称】菅谷 英史
(74)【代理人】
【識別番号】100186646
【弁理士】
【氏名又は名称】丹羽 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】千手 康弘
(72)【発明者】
【氏名】若原 圭佑
(72)【発明者】
【氏名】工藤 隆晃
【審査官】岡田 三恵
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-082178(JP,A)
【文献】特開2005-046770(JP,A)
【文献】国際公開第2020/066652(WO,A1)
【文献】特開平08-100140(JP,A)
【文献】特開2000-127419(JP,A)
【文献】特開2016-060156(JP,A)
【文献】特開2003-253298(JP,A)
【文献】特許第7004124(JP,B1)
【文献】特開2001-350411(JP,A)
【文献】特開2013-028880(JP,A)
【文献】特表2015-520684(JP,A)
【文献】特表2011-520009(JP,A)
【文献】特表2018-508629(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B 17/02
C11D 1/90
C11D 1/62
C11D 1/72
C11D 1/722
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カチオン性界面活性剤、無機塩基及び水を含有するインキ洗浄剤を使用し、前記インキ洗浄剤中に、印刷インキ膜を有するプラスチック基材を浸漬し、前記プラスチック基材から前記印刷インキ膜を剥離除去したのちに、剥離した印刷インキ膜を回収するインキ膜回収方法であり、
前記カチオン性界面活性剤が塩化物イオンと塩を形成した4級アンモニウム骨格で表される少なくとも1種の化合物を含有し、
前記インキ洗浄剤中で前記印刷インキ膜を有するプラスチック基材の破砕及び圧送を行う
インキ膜回収方法。
【請求項2】
前記プラスチック基材が、樹脂フィルム層と、樹脂フィルム層、金属箔層又は蒸着膜層から選択される層との少なくとも2以上の層を有し、該層の間にインキ層を有する積層フィルムであり、前記インキ洗浄剤中で積層フィルムを破砕及び圧送しながら、積層フィルムを単層に分離し、且つ、積層フィルムからインキ層を剥離除去する請求項1記載のインキ膜回収方法。
【請求項3】
前記カチオン性界面活性剤が、一般式(2a)で表される少なくとも1種の化合物又はその塩を含有することを特徴とする請求項1又は2記載のインキ膜回収方法。
R1-N(R2R3)-R4 (2a)
(一般式(2a)中、R1は直鎖あるいは分岐鎖のアルキル基、又は直鎖あるいは分岐鎖のアルケニル基を示し、該アルキル基又はアルケニル基中の少なくとも一つ以上の-CH-は-C(=O)-、-NH-又は-C(=O)-NH-で置換されてもよく、R2及びR3は水素原子、直鎖あるいは分岐鎖のアルキル基又は直鎖あるいは分岐鎖のアルケニル基を示し、R4は水素原子、直鎖あるいは分岐鎖のアルキル基、直鎖あるいは分岐鎖のアルケニル基又はフェニル基を示し、該アルキル基又はアルケニル基中の末端の-CHは、カルボキシ基、又はフェニル基で置換されてもよい。)
【請求項4】
前記カチオン性界面活性剤が、一般式(2a-1)で表される少なくとも1種の化合物又はその塩を含有する4級アンモニウム骨格であるカチオン性界面活性剤であることを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載のインキ膜回収方法。
2n+1(CHR4 (2a-1)
(一般式(2a-1)中、nは平均付加モル数を示し、R4は請求項6に記載の一般式(2a)中のR4と同じ意味を示す。)
【請求項5】
前記印刷インキ膜が熱硬化型インキである請求項1又は2記載のインキ膜回収方法。
【請求項6】
前記カチオン性界面活性剤は、塩化アルキルトリメチルアンモニウム型、塩化ジアルキルジメチルアンモニウム型、塩化アルキルベンザルコニウム型から選ばれる化合物である、請求項1記載のインキ膜回収方法。
【請求項7】
前記インキ洗浄剤が(a)~(c)のいずれかの化合物を含有する請求項1~6のいずれか一項に記載のインキ膜回収方法。
(a)前記無機塩基を前記インキ洗浄剤全量に対し0.1~10重量%含有する。
(b)一般式(2)で表されるアルキレングリコールアルキルエーテルを前記インキ洗浄剤全量に対し10重量%~50重量%含有する。
-O-[CH-CH(X)-O]n-H (2)
(一般式(2)中、Rは炭素原子数3以上のアルキル基を表し、nは1~3の整数を表し、Xは水素又はメチル基を示す。)
(c)沸点150~200℃の1級あるいは2級モノアルカノールアミンを前記インキ洗浄剤全量に対し10重量%~50重量%含有する。
【請求項8】
前記インキ洗浄剤の温度を50℃以上として印刷インキ膜を剥離する請求項1~7のいずれか一項に記載のインキ膜回収方法。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載のインキ膜回収方法を使用し、印刷インキ膜を有するプラスチック基材から印刷インキ膜を剥離除去するインキ膜剥離方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック積層体をリサイクル原料に再生するために用いるインキ洗浄剤、インキ膜剥離方法、及び剥離したインキ膜の分離回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、プラスチックごみの分別回収しているリサイクル率は、世界全体でみると製造されたプラスチックの9%である。ゴミとなった91%のプラスチックのうち、焼却処分されたものは12%であり、79%は埋め立て処分されたか、もしくは環境中に漏れ出ている(非特許文献1)。このようにリサイクル率が低い状態が続いている理由の一つに、分別回収システムの困難性があげられる。プラスチックをリサイクルするためには、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等の異種のプラスチック材料が一体化された廃プラスチックを、材料ごとに分離して回収する必要がある。しかし、積層フィルムをはじめとするプラスチック製品の多くは、異種プラスチック材料が接着して積層されていることから、材料ごとに分離・回収することが困難な状況である。そのため、廃プラスチックを簡易に分離・回収可能なリサイクルシステムの構築が強く求められている。
【0003】
また、リサイクルされたプラスチック製品は、コストの観点から同じ製品に戻ることは難しく、基本的にはリサイクルするたびに劣化するため、品質が落ちた製品に生まれ変わらざるを得ない。再生プラスチックの品質が落ちる理由としては、プラスチックにインキや顔料が不純物として混在していることがあげられる。しかし、多くのプラスチック製品はその表面に印刷加工が施されているため、リサイクル工程で脱色することが難しく、結果として再生プラスチック製品は着色している。このような顔料やインキなどを含んだ再生プラスチックは、着色のため商品価値が著しく低いだけではなく、不純物が起点となって物性的に劣化したプラスチックにしかならないのが実情であり、良品質の再生プラスチックを生み出すリサイクル方法も求められている。
【0004】
このような課題に対して、特許文献1は、プラスチック製品に印刷されたインキをアルカリ溶液中で剥離させるため、高酸価樹脂を主体としたインキを提供しているが、組成変化に伴う大幅な印刷適性劣化には述べられていない。特許文献2は、プラスチック製品から印刷層を剥離する方法として、加熱したアルカリ溶液中で攪拌する方法が提供されているが、印刷層を剥離するためには印刷層の下に高酸価樹脂による剥離層が必須となっている。これらの検討はインキおよび/または剥離層に、フマル酸やフタル酸、マレイン酸を初めとした高酸価樹脂を用いているが、積層フィルムを作製するにあたり剥離層を形成する必要があり、工程的にもコスト的にも最良の方策とはいえない。
【0005】
一方で、塗料や樹脂膜を溶解させるため、特許文献3は、鋼板を洗浄可能なアルカリ洗浄剤として5%水酸化ナトリウム水溶液に、添加剤としてポリオキシエチレンアルキルエーテルを用いている。また、特許文献4~7は、それぞれの目的に合わせて、アミン化合物、水、グリコールエーテルの構成の洗浄液を用いている。ところが、例示されているこれら洗浄剤を用いても本願が目的とするフィルムに印刷されたインキ膜は剥離することはできなかった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】Science Advances 19 Jul 2017:Vol. 3, no. 7, e1700782
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2001-031899号公報
【文献】国際公開第2020/066652号公報
【文献】特開平10-280179号公報
【文献】特開平08-123043号公報
【文献】特開平08-245989号公報
【文献】特開平09-087668号公報
【文献】特開2006-83351号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来技術における洗浄剤の多くは、配管内の乾いた塗料を溶解する、もしくはエッチングレジスト樹脂を溶解するために開発された洗浄剤であり、フィルムをはじめとするプラスチック基材上に印刷されたインキ膜を剥離させる目的ではなく、またそれらの洗浄剤にそのような効果はなかった。また、高品質の再生プラスチックを得るため、更に洗浄剤を再利用するためには、インキ膜を剥離したのちに、プラスチック基材とインキ膜のそれぞれを洗浄剤から分離・回収する必要があるが、従来技術の多くは、その洗浄対象がプラスチック基材上にインキ膜が設けられたプラスチック積層体ではなかったため、プラスチック基材と剥離したインキ膜のそれぞれを回収することを考慮されていない。
【0009】
更に、近年は包装材の多様化に伴い、インキ膜のプラスチック基材への密着性の向上や印刷物の高意匠性がより一層求められていることから、インキの種類の多様化が進み、また、多色や多層のインキ膜の形成も一般的に行われている。それと同時に、インキ膜の剥離はより困難となる状況である。例えば、インキは用いられる樹脂の種類によって、熱可塑型タイプのインキ及び熱硬化型タイプのインキに大別できるが、熱硬化型タイプのインキはインキ膜が強固に結合しプラスチック基材に密着することから、インキ膜の剥離はより困難となる。そのため、多様なインキ膜に対してインキ膜を剥離できる方法が望まれている。
【0010】
しかしながら、例えば特許文献1及び特許文献2に記載のインキ膜の剥離方法は、高酸価樹脂を主体としたインキ又は高酸化樹脂を主体とした剥離層によりインキを剥離するものであり、剥離可能なインキの種類や層構成が限られている。このように、従来開発された洗浄剤の多くは特定の種類のインキ膜を剥離可能なものであり、特に、熱硬化可塑型タイプのインキ膜に対しても対応できるものは知られていない。
【0011】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、プラスチック基材上に印刷された種々の種類のインキ膜を容易に剥離することができ、且つ、剥離したインキ膜を容易に回収可能なインキ膜回収方法、該インキ膜回収方法に適用できるインキ洗浄剤、及びインキ膜剥離方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、前記した課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、特定の洗浄剤中でインキ膜を有するプラスチック基材からインキ膜を容易に剥離沈殿させ、インキ膜のみを分離回収する方法を見出した。
【0013】
また、本発明者らは、特定の洗浄剤中で、熱可塑型タイプのインキ膜のみならず、熱硬化型タイプのインキ膜(以下、熱硬化型タイプのインキ膜を「インキの硬化膜」という)を有するプラスチック基材からインキ膜を容易に剥離沈殿させ、インキ膜のみを分離回収する方法を見出した。
【0014】
即ち本発明は、両性界面活性剤、及び水を含有するインキ洗浄剤を使用し、インキ膜を有するプラスチック基材からインキ膜を剥離除去したのちに、剥離したインキ膜を回収するインキ膜回収方法を提供する。
【0015】
また本発明は、インキ膜回収方法に使用するインキ洗浄剤であって、両性界面活性剤、及び水を含有するインキ洗浄剤を提供する。
【0016】
また本発明は、インキ膜回収方法に使用するインキ洗浄剤を使用し、インキ膜を有するプラスチック基材からインキ膜を剥離除去するインキ膜剥離方法を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明により、インキ膜を有するプラスチック基材からインキ膜を容易に分離と同時に沈殿させることができ、プラスチック基材とインキ膜のそれぞれを回収分別再利用することができる。そのため、インキが付着していないプラスチック基材を容易に回収することができ、再生プラスチックの品質を向上することができる。また、インキ膜の回収プロセスを容易にすることができ、洗浄剤の再利用を簡素化することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明のインキ膜回収方法及びインキ膜剥離方法では、プラスチック積層体を破砕しながら単層に分離可能な湿式破砕設備や、浸漬や攪拌や超音波などを用いて、後述する工程1(インキ膜の剥離工程)において、水及び両性界面活性剤又はカチオン性界面活性剤のいずれか一種以上を含有する洗浄剤を使用する。
【0019】
プラスチック基材からインキ膜を除去する場合、溶剤などで溶解させることが最も単純で容易な方法であるが、工業的に溶剤で溶解させるためには溶剤コストが非常にかかり、また、環境負荷が大きい。溶解させずに剥離する方法として、洗浄剤の主成分を水とした水溶性の有機溶剤を用いることでインキ膜を剥離させることができるが、その場合には洗浄剤にインキ膜の一部が溶けてインキ膜の分離・回収が困難となったり、洗浄剤を70℃以上の高温かつ30分以上の長時間の条件で適用することが必要となったりするため、簡便な解決方法ではないことがわかった。
【0020】
また、これまで知られているインキ洗浄剤は、プラスチック基材に印刷するインキが熱可塑型のインキに限られ、インキの硬化膜については洗浄することができなかった。
【0021】
そこで、本発明者らは種々のインキ洗浄剤を検討した結果、両性界面活性剤、及び水を含有するインキ洗浄剤を用いることで、従来の方法に比べて低温且つ短時間でプラスチック基材からインキ膜を剥離できることを見出した。また、従来の方法では剥離が困難であった多色印刷や、インキ膜が複数設けられた重ね印刷物においても、膜としての剥離が可能であることを見出した。
【0022】
また、カチオン性界面活性剤、及び水を含有するインキ洗浄剤を用いることで、従来の方法では剥離が困難であった多色印刷や、インキ膜が複数設けられた重ね印刷物、さらには洗浄剤では困難であった熱硬化型タイプのインキを用いた印刷物においても、膜としての剥離が可能であることを見出した。
【0023】
以下、本発明の具体的態様について順次説明するが、以下に挙げる具体例に限定されるものではない。
【0024】
<インキ洗浄剤>
本発明で使用するインキ洗浄剤は、インキ膜が設けられたプラスチック基材からインキ膜を容易に剥離することができ、インキ膜が剥離されたプラスチック基材を回収・分別・再利用するために用いられるもので、水及び両性界面活性剤を含有するものである。
【0025】
ここで、インキ膜の剥離とはインキ膜の剥離工程において、プラスチック基材から剥離されたインキ膜がインキ洗浄剤中で溶解していない状態のことをいう。
【0026】
本発明では、両性界面活性剤又はカチオン性界面活性剤のいずれか一種を用いることにより、インキ膜を溶解することなく剥離することができる。そのため、洗浄剤の透明性を維持できるので、プラスチック基材やインキ膜の回収作業を行いやすく、また、プラスチック基材を回収する際に、プラスチック基材にインキ成分やインキ溶解物が付着することを防止することができる。また、インキ塗膜が溶解しないため、フィルムは綺麗な状態で回収することができ、かつ洗浄剤は特別なリサイクル工程なく再利用することができる。また、剥離したインキ膜は洗浄剤中に沈降するので回収が容易となり、更に、両性界面活性剤がインキ膜に対して濡れ性に優れていることから、他の界面活性剤を用いた場合に比べて剥離時間が格段に速いので、作業時間を短縮できる。
【0027】
(両性界面活性剤)
本発明の洗浄剤に使用可能な両性活性剤の種類は特に限定されず、公知の両性界面活性剤を使用できる。両性界面活性剤として具体的には、ベタイン型の両面活性剤が好ましく、例えば一般式(1a)で表される少なくとも1種の化合物を含有するアルキルカルボキシベタイン骨格又はアルキルアミドカルボキシベタイン骨格の両性界面活性剤を含有することがより好ましい。
【0028】
R1-R2-N(CHCHCOO (1a)
(一般式(1a)中、R1は水素又はC(=O)R3-NH-(R3は直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基を示す)を示し、R2はアルキレン基、アルケニレン基を示す。)
一般式(1a)中、R1は水素原子を表すことが好ましい。
一般式(1a)で表される化合物は、一般式(1a-1)で表されるアルキルカルボキシベタイン骨格である両性界面活性剤であることが好ましい。
【0029】
2n+1(CHCHCOO (1a-1)
(一般式(1)中、nは平均付加モル数を示す。)
一般式(1-1a)において、nは8以上であることが好ましく、10以上であることが好ましく、11以上であることが好ましい。
【0030】
一般式(1a)に該当する具体的な製品としては、日油社製では、ニッサンアノンBDF(登録商標)-R、ニッサンアノンBDF(登録商標)-SF、ニッサンアノンBDC-SF、ニッサンアノンBDL-SF、第一工業製薬社製では、アモーゲンCB-H、アモーゲンHB-C、新日本理化社製では、リカビオンB-200、リカビオンB-300、東邦化学工業社製では、オバゾリンCAB-30、オバゾリンISABなどがあげられる。また、一般式(1a-1)に該当する具体的な製品としては、第一工業製薬社製では、アモーゲンS、アモーゲンS-H、アモーゲンK、花王社製では、アンヒトール20BS、アンヒトール24B、アンヒトール86B、日油社製では、ニッサンアノンBF、ニッサンアノンBL、ニッサンアノンBL-SF、新日本理化社製では、リカビオンA-100、リカビオンA-200、リカビオンA-700、東邦化学社製では、オバゾリンLB、オバゾリンLB-SF、などがあげられるが、これらに限定されるものではない。
【0031】
また、ベタイン型の両性界面活性剤としては、イミダゾリニウムベタイン骨格を有するものでもよく、該当する具体的な製品としては日油社製では、ニッサンアノンGLM-R、ニッサンアノンGLM-R-LV、花王社製ではアンヒトール20Y-Bなどがあげられるが、これらに限定されるものではない。
【0032】
また、両性界面活性剤としては、以下の一般式(1b)で表される界面活性剤であってもよい。
【0033】
R4-(NHCnb-N(R5) (1b)
(一般式(1b)中、R4は直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基を示し、nbは0~5の整数を表し、R5は水素、-CHCOONa又は-CHCOOHを示すが、2つ存在するR5は同一であっても異なってもよく、少なくとも一つのR5は-CHCOONaを示す。)
一般式(1b)中、R4は直鎖のアルキル基を表すことが好ましく、R4の炭素原子数は8以上であることが好ましく、10以上であることが好ましく、12以上であることが好ましい。
【0034】
一般式(1b)に該当する具体的な製品としては、日油社製では、ニッサンアノンLG-R、ニッサンアノンLAなどがあげられるが、これらに限定されるものではない。。
【0035】
また、両性界面活性剤としては、以下の一般式(1c)で表されるアミンオキサイド型の界面活性剤であってもよい。
【0036】
R6-N(CH (1c)
(一般式(1c)中、R6は直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基を示す。)
一般式(1c)中、 R6は一般式(1b)中、R4は直鎖のアルキル基を表すことが好ましく、R4の炭素原子数は8以上であることが好ましく、10以上であることが好ましく、12以上であることが好ましい。
【0037】
一般式(1c)に該当する具体的な製品としては、第一工業製薬社製では、アモーゲンAOL、花王社製ではアンヒトール20Nなどがあげられるが、これらに限定されるものではない。
【0038】
これらの両性界面活性剤は、単独で用いることもでき、又2種類以上を混合して用いることもできる。その添加量はインキ洗浄剤全量に対し0.01~5重量%の範囲が好ましく、0.1~2重量%であることがより好ましい。
【0039】
(カチオン性界面活性剤)
本発明の洗浄剤に使用可能なカチオン性活性剤の種類は特に限定されず、公知のカチオン性界面活性剤を使用できる。両性界面活性剤として具体的には、4級アンモニウム骨格のカチオン性面活性剤が好ましく、例えば一般式(2a)で表される少なくとも1種の化合物を含有する4級アンモニウム骨格のカチオン性界面活性剤を含有することがより好ましい。
【0040】
R1-N(R2R3)-R4 (2a)
(一般式(2a)中、R1は直鎖あるいは分岐鎖のアルキル基、又は直鎖あるいは分岐鎖のアルケニル基を示し、該アルキル基又はアルケニル基中の-CH-は-C(=O)-、-NH-又は-C(=O)-NH-で置換されてもよく、R2及びR3は水素原子、直鎖あるいは分岐鎖のアルキル基又は直鎖あるいは分岐鎖のアルケニル基を示し、R4は水素原子、直鎖あるいは分岐鎖のアルキル基、直鎖あるいは分岐鎖のアルケニル基又はフェニル基を示し、該アルキル基又はアルケニル基中の末端の-CHは、カルボキシ基、又はフェニル基で置換されてもよい。)
一般式(2a)中、R1は、インキの剥離性をより高めるために、長鎖のアルキル基又はアルケニル基であることが好ましく、具体的には炭素素原子数8~30のアルキル基又はアルケニル基であることが好ましく、炭素原子数10~25のアルキル基であることが好ましく、炭素原子数12~22のアルキル基又はアルケニル基であることが好ましい。アルキル基又はアルケニル基は直鎖であっても分岐していてもよいが、直鎖であることが好ましく、直鎖のアルキル基であることがより好ましい。
【0041】
R1は、アルキル基又はアルケニル基中の少なくとも一つ以上の-CH-が-C(=O)-、-NH-又は-C(=O)-NH-で置換されてもよい。中でも、アルキル基又はアルケニル基中の少なくとも一つ以上の-CH-が-C(=O)-NH-又は-NH-C(=O)で置換されていることが好ましく、アルキル基中の一つの-CH-が-C(=O)-NH-又は-NH-C(=O)で置換されていることが好ましく、R1中にアミドプロピル骨格を有することがより好ましい。
【0042】
R2及びR3は直鎖あるいは分岐鎖のアルキル基又は直鎖あるいは分岐鎖のアルケニル基を示すことが好ましく、直鎖あるいは分岐鎖のアルキル基を表すことが好ましい。中でも、炭素原子数1~3直鎖のアルキル基を表すことが好ましく、メチル基を表すことがより好ましい。
【0043】
R4は、直鎖あるいは分岐鎖のアルキル基、直鎖あるいは分岐鎖のアルケニル基又はフェニル基を示すことが好ましく、直鎖あるいは分岐鎖のアルキル基を表すことがより好ましい。また、アルキル基又はアルケニル基中の末端の-CHは、カルボキシ基、又はフェニル基で置換されていることが好ましい。
【0044】
R4の炭素原子数1~8であることが好ましく、1~5であることが好ましく、1~3であることが好ましく、1又は2を表すことがより好ましい。
【0045】
R4がメチル基を表す場合は、R2及びR3もメチル基を表し、一般式(2a)がアルキルトリメチルアンモニウム骨格を示すことが好ましい。
【0046】
また、R4がエチル基を表す場合は、エチル基中の末端の-CHは、カルボキシ基、又はフェニル基で置換されていることが好ましい。つまり、R4が-CH-(C(=O)OHを表すか、若しくは、ベンジル基を表すことが好ましい。
一般式(2a)で表される化合物は、一般式(2a-1)で表される4級アンモニウム骨格のカチオン性界面活性剤が好ましい。
【0047】
2n+1(CHR4 (2a-1)
(一般式(2a-1)中、nは平均付加モル数を示し、R4は一般式(2a)中のR4と同じ意味を示す。)
一般式(2a-1)において、nが示す炭素原子数は8以上が好ましい。炭素原子数は、8を超えて多いほどインキ剥離性がよく好ましい。具体的な炭素原子数は、炭素原子数8のオクチル基、炭素原子数9のノニル基、炭素原子数10のデシル基、炭素原子数11のウンデシル基、炭素原子数12のラウリル基、炭素原子数13のトリデシル基、炭素原子数14のミリスチル基、炭素数15のペンタデシル基本、炭素原子数16のセチル基、炭素原子数18のオレイル基、ステアリル基があげられる。
【0048】
R4の好ましい基は、一般式(2a)と同様である。
これらの4級アンモニウム骨格のカチオン性面活性剤は、ハロゲンと塩を形成した4級アンモニウム骨格塩型であることが好ましく、Clと塩を形成することが好ましいく、より好ましくはBrと塩を形成することが好ましく、更に好ましくは、Iと塩を形成することが好ましい。ハロゲンと塩を形成した4級アンモニウム骨格塩は、ハロゲンの求核作用によりインキ膜の加水分解を促進することから、インキの剥離性を向上させると考えられる。
【0049】
中でも、塩化アルキルトリメチルアンモニウム型、塩化ジアルキルジメチルアンモニウム型、塩化アルキルベンザルコニウム型の化合物が好ましい。
【0050】
一般式(2a)あるいは(2a-1)に該当する具体的な製品としては、日油社製では、ニッサンカチオンMA、ニッサンカチオンSA、ニッサンカチオンBB、ニッサンカチオンFB、ニッサンカチオンPB-300、ニッサンカチオンABT2-500、ニッサンカチオンAB、ニッサンカチオンAB-600、ニッサンカチオンVB-Mフレーク、ニッサンカチオンVB-F、ニッサンカチオン2-DB-500E、ニッサンカチオン2-DB-800E、ニッサンカチオン2ABT、ニッサンカチオン2-OLR、ニッサンカチオンF-50R、ニッサンカチオンM-100Rがあげられ、第一工業社製では、カチオーゲンTML、カチオーゲンTMP、カチオーゲンTMS、カチオーゲンDDM-PG、カチオーゲンBC-50、カチオーゲンTBBがあげられ、花王社では、コータミン24P、コータミン86Pコンク、コータミン60W、コータミン86W、サニゾールC、サニゾールB-50があげられ、ライオン社製では、リポガードC-50、リポガードT-28、リポガードT-30、リポガードT-50、リポガードT-800、リポガード16-29、リポガード16-50E、リポガード18-63、リポガード22-80、リポガードCB-50、リポガード210-80E、リポガード2C-75、リポガード2HP-75、リポガード2HPフレーク、リポガード2HT-75、リポガード2HTフレーク、リポガード20-75l、リポガード41-50、TMAC-50、TPAH-40、TBAB-50A、TBAB-100A、TBAH-40、リポガードPH-100、BTMAC-50、BTMAC-100A、BTEAC-50、BTEAC-100A、BTBAC-50A、などがあげられるが、これらに限定されるものではない。
【0051】
また、カチオン性界面活性剤は、1級~2級のアルカノールアミン骨格で表される少なくとも1種の化合物を含有することが好ましく、モノアルカノールアミン骨格で表される少なくとも1種の化合物を含有することが好ましい。
1級のモノアルカノールアミンとしては、炭素原子数1~4の低級アルカノールであることが好ましく、具体的には、モノエタノールアミン、2-アミノイソブタノールなどがあげられ、2級のモノアルカノールアミンとしては、N-メチルエタノールアミン、2-エチルアミノエタノール、イソプロパノールアミンなどがあげられるが、例示以外の物質も適宜使用することができる。また、これらモノアルカノールアミン系化合物は1種を単独でまたは2種以上を適宜に組合せて使用でき、水に混合して使用することもできる。
これらのモノアルカノールアミン骨格のカチオン性面活性剤は、ハロゲンと塩を形成したモノアルカノールアミン塩型であることが好ましく、Clと塩を形成することが好ましい。
【0052】
これらのカチオン性界面活性剤は、単独で用いることもでき、又2種類以上を混合して用いることもできる。その添加量はインキ洗浄剤全量に対し0.01~5重量%の範囲が好ましく、0.1~2重量%であることがより好ましい。
【0053】
(他の洗浄剤)
本発明で使用するインキ膜の洗浄剤は、無機塩基(以下、化合物(a)と称する)、一般式(2)で表されるアルキレングリコールアルキルエーテル(以下、化合物(b)と称する)、及び沸点150~200℃の1級あるいは2級モノアルカノールアミン(以下、化合物(c)と称する)のいずれかの化合物を含有することが好ましい。両性界面活性剤と化合物(a)~(c)を併用することにより、剥離効果の向上や、剥離時間を短縮することができる。中でも、化合物(a)を含有することが好ましく、また、化合物(b)~(c)のうち少なくともいずれか1種を化合物(a)に適宜に組合せて使用することも好ましい。
【0054】
(化合物(a))
化合物(a)即ち無機塩基は、前記インキ洗浄剤全量に対し0.1~10重量%含有することが好ましい。無機塩基として具体的には水酸化ナトリウムや水酸化カリウムが挙げられ、これら化合物の水溶液を使用することが好ましい。水酸化ナトリウム水溶液や水酸化カリウム水溶液は0.1重量%~10重量%の濃度の水溶液が好ましく、0.1重量%~5重量%の濃度の水溶液がより好ましい。またpHは10以上が好ましい。
【0055】
(化合物(b))
化合物(b)即ち一般式(2)で表されるアルキレングリコールアルキルエーテルは、前記インキ洗浄剤全量に対し10重量%~50重量%含有することが好ましい。
【0056】
R2-O-[CH-CH(X2)-O]n2-H (2)
(一般式(2)中、R2は炭素原子数3以上のアルキル基を表し、n2は1~3の整数を表し、X2は水素又はメチル基を示す。)
一般式(2)で表されるアルキレングリコールアルキルエーテルの中でさらに好ましくは、水溶性のアルキレングリコールアルキルエーテルである。
【0057】
一般式(2)で表される水溶性のアルキレングリコールアルキルエーテルとしては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコール-tert-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテルなどが例示できる。
【0058】
さらに、化合物(b)を使用した場合、インキ洗浄剤全量に対して水の含有%が、50重量%を大きく超えて配合される組成でも剥離性を維持できる点では、R2は炭素原子数3以上のアルキル基、n2は1~3、X2は水素又はメチル基であるものが好ましい。
【0059】
具体的には、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコール-tert-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテルなどが例示できる。これらアルキレングリコールアルキルエーテルは1種を単独でまたは2種以上を適宜に組合せて使用でき、水に混合して使用することもできる。
【0060】
さらに、これらの中でも環境特性、引火性、消泡性の点から、エチレングリコールモノ-tert-ブチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテルが特に好ましい。
【0061】
(化合物(c))
化合物(c)即ち沸点150~200℃の1級~2級モノアルカノールアミンは、前記インキ洗浄剤全量に対し10重量%~50重量%含有することが好ましい。
【0062】
1級のモノアルカノールアミンとしては、モノエタノールアミン、2-アミノイソブタノールなどがあげられ、2級のモノアルカノールアミンとしては、N-メチルエタノールアミン、2-エチルアミノエタノール、イソプロパノールアミンなどがあげられるが、1級~2級のモノアルカノールアミンにおいて、沸点150~200℃内であれば、例示以外の物質も適宜使用することができる。また、これらモノアルカノールアミン系化合物は1種を単独でまたは2種以上を適宜に組合せて使用でき、水に混合して使用することもできる。
【0063】
(他の界面活性剤)
本発明で使用するインキ膜の洗浄剤は、前述した両性界面活性剤又はカチオン性界面活性剤以外の他の界面活性剤を含有してもよい。特に両性界面活性剤は、他の界面活性剤を併用することにより、剥離効果を向上することができる。
【0064】
他の界面活性剤は特に限定されるものではないが、例えば、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、などが挙げられる。中でも、ノニオン系界面活性剤と併用することが好ましく、HLB値が14以下のノニオン系界面活性剤と併用することが好ましく、HLB値が13.5以下のノニオン系界面活性剤と併用することが好ましく、HLB値が13以下のノニオン系界面活性剤と併用することが好ましく、HLB値が10以下のノニオン系界面活性剤と併用することが好ましく、HLB値が8.5以下のノニオン系界面活性剤と併用することが好ましい。
【0065】
なお、ここでいうHLB値とは、界面活性剤の水と油(水に不溶性の有機化合物)への親和性の程度を表す値であり、グリフィン法(HLB値=20×親水部の式量の総和/分子量)で定義されるものである。
【0066】
ノニオン系界面活性剤と併用する場合は、化合物(a)として水酸化ナトリウムや水酸化カリウムを含有したアルカリ性の水溶液中で用いることが好ましく、また、ノニオン系界面活性剤のHLB値は14以下であることが好ましい。このようなアルカリ性の水溶液中では、両性界面活性剤はイオン化されてアニオン系界面活性剤となり、該アニオン系界面活性剤とノニオン系界面活性剤とが複合ミセルを形成する。この複合ミセルが、インキ膜と洗浄剤の間の表面張力を低下させ、濡れ性が上昇することにより、インキ膜剥離を促進するものと推察される。
【0067】
ノニオン系界面活性剤としては一般的には、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、オクチルフェノールエトキシレート、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、脂肪酸アルキロールアミド、アルキルアルカノールアミド、アセチレングリコール、アセチレングリコールのオキシエチレン付加物、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールブロックコポリマー、などをあげることができ、これらの中では、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸アルキロールアミド、アセチレングリコール、アセチレングリコールのオキシエチレン付加物、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールブロックコポリマーがあげられる。
【0068】
さらに好ましくは、前記ノニオン系界面活性剤が、一般式(1)で表される少なくとも1種の化合物を含有するポリオキシアルキレン系界面活性剤である。
【0069】
R1-O-[CH-CH(X1)-O]n1-H (1)
一般式(1)中、R1は直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基又はオクチルフェノール基を表し、n1は平均付加モル数を表し、X1は水素又は短鎖アルキル基を示す。
【0070】
このようなノニオン系界面活性剤としては、両性界面活性剤と併用したときに複合ミセルを形成しやすくするために、アルキル鎖長が長く、EO付加モル数の小さいものを用いることが好ましい。
【0071】
一般式(1)のうちR1が直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基のときは、R1が示す炭素原子数は10以上が好ましい。炭素原子数は、10を超えて多いほどインキ剥離性がよく好ましい。具体的な炭素原子数は、炭素原子数10のデシル基、炭素原子数12のラウリル基、炭素原子数13のトリデシル基、炭素原子数14のミリスチル基、炭素原子数16のセチル基、炭素原子数18のオレイル基、ステアリル基があげられる。
【0072】
R1が示す炭素原子数が大きい方が両性界面活性剤と複合ミセルを形成しやすいが、その一方で、界面活性剤の分子構造が大きくなりすぎると、両性界面活性剤との複合ミセルを形成しにくくなる傾向があることから、R1が直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基のときは、R1が示す炭素原子数は14以下であることが好ましい。両性界面活性剤との複合ミセルを形成しやすくするために、より具体的には、アルキル鎖が14以上の場合はHLB値が10以下となる界面活性剤を用いることが好ましく、アルキル鎖が12又は13の場合はHLB値が13以下となる界面活性剤を用いることが好ましく、アルキル鎖が11以下の場合はHLB値が14以下となる界面活性剤を用いることが好ましい。
【0073】
具体的な製品としては、第一工業製薬社製のノイゲンシリーズ,DSK NL-Dashシリーズ,DKS-NLシリーズ、日油社製のノニオンシリーズ、花王の社製エマルゲンシリーズ、ライオン社製のレオックスシリーズ,レオコールシリーズ,ライオノールシリーズなどのうち、一般式(1)であらわされるノニオン系界面活性剤のうちR1が示す炭素原子数が10以上であれば好ましいが、これに限定されるものではない。
【0074】
一般式(1)のうちR1がオクチルフェノール基のとき、オクチルフェノールエトキシレートが好ましい。
【0075】
具体的な製品としては、ダウケミカル社TRITON(登録商標)シリーズ、ローディア社のIgepal CAシリーズ、シェルケミカルズ社のNonidet Pシリーズ、日光ケミカルズ社のNikkol OPシリーズがあげられるが、これに限定されるものではない。
【0076】
また、R1がオクチルフェノール基のとき、一般式(1)のうちn1が8.0以上であることが好ましい。n1が8.0以上と大きい値であるほど、インキ膜に対する濡れ性が向上し、インキ剥離性がよく好ましい。
【0077】
以上のとおり、積層体からインキ膜を短時間で剥離させるためには、HLB値が14以下の界面活性剤を用い、かつ、前記一般式(1)で表される界面活性剤のうち、R1が示す炭素原子数が10以上14以下の界面活性剤を用いることが好ましい。
【0078】
HLB値が14以下であり、かつ、前記一般式(1)で表されるノニオン系界面活性剤のうち、R1の炭素原子数が10以上の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基を示す具体的な界面活性剤は、第一工業製薬社では、ノイゲンXL-41、ノイゲンXL-61、ノイゲンXL-6190、ノイゲンXL-70、ノイゲンXL-80、ノイゲンLF-40X、ノイゲンLF-60X、ノイゲンLF-80X、ノイゲンTDS-30、ノイゲンTDS-50、ノイゲンTDS-70、ノイゲンTDS-80、ノイゲンTDS-100、ノイゲンTDX-50、ノイゲンTDX-80、ノイゲンTDX-80D、ノイゲンTDX-100D、ノイゲンSD-30、ノイゲンSD-60、ノイゲンSD-70、DKS NL-15、DKS NL-30、DKS NL-40、DKS NL-50、DKS NL-60、DKS NL-70、DKSえ NL-80、DKS NL-90、DKS NL-100、ノイゲンET-83、ノイゲンET-102、DSK Dash400、DSK Dash403、DSK Dash404、DSK Dash410、ノイゲンLP-55、ノイゲンLP-70、ノイゲンLP-80、ノイゲンLP-100、ノイゲンET-65、ノイゲンET-95、ノイゲンET-115、ノイゲンET-135、ノイゲンET-69、ノイゲンET-89、ノイゲンET-109、ノイゲンET-129、ノイゲンET-149、ノイゲンET-159、日油社製では、ノニオンK-204、パーソフトNK-60、パーソフトNH-90C、パーソフトNK-100、パーソフトNK-100C、ノニオンP-208、ノニオンP-210、ノニオンE-202、ノニオンE-202S、ノニオンE-205、ノニオンE-205S、ノニオンE-212、ノニオンS-202、ノニオンS-207、ノニオンEH-204、ノニオンID-203、ノニオンID-206、ディスパノールTOC、ノニオンHT-505、ノニオンHT-507、ノニオンHT-510、ノニオンHT-512、花王社製では、エマルゲン102KG、エマルゲン103、エマルゲン104P、エマルゲン105、エマルゲン106、エマルゲン108、エマルゲン109P、エマルゲン210P、エマルゲン320P、エマルゲン404、エマルゲン408、エマルゲン409PV、エマルゲン420、エマルゲン705、エマルゲン707、エマルゲン709、エマルゲン1108、ライオン社製では、レオックスCL-30、レオックスCL-40、レオックスCL-50、レオックスCL-60、レオックスCL-70、レオックスCL-90、レオコールNL-30C、レオコールTD-50、レオコールTD-70、レオコールTD-90、レオコールTD-90D、レオコールSC-80、レオコールSC-50、レオコールSC-70、レオコールSC-80、レオコールSC-90などが例示できるが、これに限定されるものではない。
【0079】
HLB値が14.0以下であり、かつ前記一般式(1)で表されるノニオン系界面活性剤のうち、R1の炭素原子数が10以上のオクチルフェノール基を示す具体的な界面活性剤は、ダウケミカル社のTRITON(登録商標)X-100などが例示できるが、これに限定されるものではない。
【0080】
これらの他の界面活性剤は、両性界面活性剤と併用する形で単独で用いることもできるし、他の界面活性剤の2種類以上を混合して用いることもできる。その添加量はインキ洗浄剤全量に対し0.01~5重量%の範囲が好ましく、0.1~2重量%であることがより好ましい。
【0081】
(消泡剤)
本発明で使用するインキ膜の洗浄剤は、消泡剤を含んでいてもよい。プラスチック基材からインキ膜を剥離させる工程において、攪拌や後述する破砕工程において多量の泡が発生する場合があり、泡が残るとプラスチックフィルムやインキ膜の回収工程において泡があふれ出すことがある。また、プラスチック基材の破砕工程においては、洗浄剤中に泡を多量に巻き込んだ場合に、プラスチック基材が所望のサイズに破砕されない場合がある。
消泡剤として一般的に用いられる化合物として、水溶性の有機溶剤やHLB値の低いノニオン性界面活性剤が使われるが、消泡能力が高いという点で特に好ましい化合物としてはシリコーン系化合物である。中でもエマルジョン型や自己乳化型のシリコーン化合物が好ましい。
【0082】
具体的な消泡剤として、自己乳化型としては、信越化学社製、X-50-1176、KS-530、KS-537があげられ、エマルジョン型としては、信越化学社製KM-7750D、KM-7752、KM-98、ナガセケムスペック社製FS Antifoam 025、FS Antifoam 80、FS Antifoam 92、FS Antifoam 93、DKQ1-1183、DKQ1-1247などが例示できるが、これに限定されるものではない。
【0083】
(インキ洗浄剤温度)
本発明においては、インキ洗浄剤の温度即ち液温は特に限定されるものではいが、洗浄効果がより高いのは液温が高い方であることから、好ましくは50℃以上であり、より効果が高い液温としては70℃以上であり、より好ましくは85℃以上である。液温の上限は、液体状態が保てれば特段限定されないが、通常は90℃以下が好ましい。
【0084】
(剥離設備)
前記インキ洗浄剤は、インキ膜に素早く浸透しインキ膜を膨潤させることでフィルムからインキ膜を剥離させることができるため、インキ膜を剥離させる設備や方法は特に限定されるものではないが、具体的には、容器内でインキ洗浄剤を攪拌することができる攪拌翼付きモータを具備した装置、超音波を発生させる装置を具備した装置、容器ごと激しく振盪することができる装置などがあげられる。その他に、インキ剥離と共にプラスチック基材の破砕を同時に行う場合には、湿式破砕機やコロイドミルなどを例示することができる。
【0085】
(湿式破砕機)
本発明のインキ膜の回収方法に用いられる湿式破砕機の例の1つは、液体中の固形物を破砕・分散・混合・圧送を同時に行うことが出来る湿式破砕機である。具体的には剪断力及び/又は摩擦力より液体中の固形物を破砕する機構を有するものが好ましく、且つプラスチック基材を破砕して圧送できる機構を有する破砕機が好ましい。このような湿式破砕機としては、湿式破砕ポンプやコロイドミルが挙げられる。
【0086】
(湿式破砕ポンプ)
本発明で使用する湿式破砕ポンプは、液中で固形物を圧送しながら、固形物を固定刃と回転刃により破砕する機構を有することが好ましく、より好ましい機構は、切刃、破砕羽根車、シュラウドリング、グリッドの4点部品の組み合わせにより、3段階に破砕される機構である。
【0087】
湿式破砕ポンプにより、プラスチック基材は3段階で破砕される。プラスチック基材は、固定刃の切刃と回転刃の破砕羽根車の入り口のエッジによって荒切りされ、次いで軸流型の破砕羽根車によって攪拌圧送され、一部のプラスチック基材は固定刃のシュラウドリングの刃部に当たって切断される。破砕羽根車を通った積層フィルムは格子との間でさらに細かく破砕攪拌され、グリッドを通って加圧羽根車により加圧され、次工程に圧送される。
【0088】
圧送速度は特に限定されるものではないが、インキ膜の剥離や、プラスチック基材が積層したプラスチック積層体を各層に分離する際の剥離と分離効率を考慮すると、0.03m/min以上が好ましい。圧送速度の上限は特に限定されなく、装置の標準的な運転速度、例えば1.4m/minでも十分に、インキの剥離とプラスチック積層体の単層への分離をすることが出来る。
【0089】
グリッド形状は特に限定されない。グリッド口径は積層フィルムの破砕後の大きさに関与するため、グリッド口径は0.1~50mmが好ましく、破砕効率や破砕後の積層フィルムの大きさを考慮すると、より好ましくは1~20mmである。
【0090】
具体的な湿式破砕ポンプとしては、ハスクバーナ・ゼノア社のKDシリーズ、ニクニ社のサンカッタシリーズ、古河産機システムズ社のディスインテグレータシリーズ、相川鉄工社のインクラッシャーシリーズ、三和ハイドロテック社のスキャッターなどが例示できる。
【0091】
(コロイドミル)
本発明で使用するコロイドミルは、粒子が液体中を浮遊している分散系において粒子サイズを低減するために使用される機械である。コロイドミルは、ロータとステータの組み合わせからなり、固定されたステータに対してロータは高速で回転する。高速回転により、生じる高レベルの剪断により液中の粒子サイズを小さくするために使用される。
【0092】
コロイドミルの破砕部は、歯形状をした円錐台形状のロータと、ステータの組み合わせからなり、ロータとステータは吐出口に近づくにつれて狭くなるようなテーパ形状となっている。プラスチック基材は、吐出口に近づくにつれて狭くなるリング状の間隙で、強力な剪断、圧縮、衝撃を繰り返し与えられ破砕される。
【0093】
具体的なコロイドミルは、一般的にコロイドミルと呼称される分散機であれば特に限定されないが、IKA社のコロイドミルMKシリーズ、イワキ社のWCMシリーズ、マウンテック社のPUCコロイドミルシリーズ、ユーロテック社のキャビトロンなどが例示できる。
【0094】
(粉砕ミル)
本発明で使用する粉砕ミルは、固形物が液体中を浮遊している系において固形物を粉砕するために使用される機械であり、フードプロセッサーのような機能及び外観である。ここでいう粉砕ミルは、回転刃の高速回転により、生じる高レベルの剪断により液体中の固形物サイズを小さくするために使用される。
【0095】
具体的な粉砕ミルは、バッチ式であり、液中に固形物を入れ回転刃によって粉砕することができる機械であれば特に限定されないが、IKA社のMultiDriveシリーズ、大阪ケミカル社のマイティ―ブレンダーシリーズ、ワーリングシリーズ、ブレンダーシリーズ各種が例示できる。
【0096】
前記湿式破砕機を用いて洗浄剤で破砕することにより、異種プラスチックが積層したプラスチック積層体を単層のフィルムやプラスチック基板に分離することができる。また、プラスチック積層体には、接着剤の他、商品名等の表示や装飾性を付与するための印刷インキ膜を設けている場合が殆どであるため、インキ膜が設けられたプラスチック積層体においては、洗浄剤中でプラスチック積層体を破砕することにより、インキ膜をより効率的に剥離除去することができる。このように、浄剤中でプラスチック積層体を破砕することにより、プラスチック積層体に設けられたインキ膜の剥離除去とプラスチック積層体の単層分離とを同時に行うことができる。そのため、インキ膜が最外層に存在せず、2種以上のプラスチック基材の間にインキ膜を有する積層体構造においても、インキ膜の剥離除去を簡素なプロセスで行える。例えば、食品包装用をはじめとしたプラスチック積層フィルムに最も多く使用されているインキはグラビアインキやフレキソインキであるが、洗浄剤を用いた湿式破砕工程においては、該印刷インキ膜も剥離させることができる。また、積層フィルムにはアルミニウム等の金属の箔や蒸着膜が積層している場合もあるが、本発明においては金属の箔や蒸着膜も剥離あるいは溶解させることができる。
【0097】
(回収設備)
インキ膜を回収する設備や方法は特に限定されるものではない。本発明において、剥離したインキ膜は洗浄剤中に沈降することから、沈降物を取り除く公知の方法を適宜利用できる。具体的には、例えば、濾過機、遠心分離機などを用いることができる。本発明のインキ洗浄剤を用いて剥離したインキ膜の大きさは、インキ膜の剥離工程において使用した剥離設備の条件によって変わるが、洗浄剤に浸漬しただけの条件であると、最長部の平均が例えば10μm以上、100μm以上、さらには1000μm以上の破片となり、沈降している。そのため、1μm程度、更にもっと目の粗いフィルターを用いても十分分離可能であり、沈降物の除去を容易に行える。
【0098】
インキ膜の回収と同時に、プラスチック基材の回収を同時に行ってもよいし、別々に行ってもよい。
【0099】
(インキ膜を有するプラスチック基材)
本発明のインキ膜回収方法、インキ膜剥離方法に用いられるインキ膜を有するプラスチック基材は、プラスチック基材にインキ膜が付着しているものであれば特に限定されるものではない。インキ膜は、例えば、グラビア印刷機、フレキソ印刷機、オフセット印刷機、インクジェット印刷機等を使用し、有機溶剤型印刷インキ、水性型又は活性エネルギー線硬化型インキを印刷された印刷インキである。複数のインキ種を用いる「多色印刷」のインキ膜であってもよい。
【0100】
インキの種類は特に限定されるものではなく、本発明のインキ洗浄剤を用いることによりインキの種類を問わずインキ膜を剥離できる。本発明のインキ洗浄剤が水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等の併用によりアルカリ性を示す場合は、アルカリに弱い樹脂を含むインキ、例えばインキに使用している樹脂に硝化綿を含むことや、酸化を持つ樹脂を含むことが、より剥離しやすくなるため好ましい。
【0101】
プラスチック基材は、素材、形状など特に限定されるものではなく、また、単層構造であっても、異種プラスチックが積層されたプラスチック積層体であってもよい。
(プラスチック積層体)
本発明のインキ膜回収方法、インキ膜剥離方法に用いられるプラスチック積層体は、少なくとも2以上の層を有するプラスチック積層体であり、プラスチック基板上に、インキ膜、接着剤層、他のプラスチック層等の複数の層がラミネートされた積層体である。このような積層体としては、特に限定なく食品包装用や生活用品に使用されている反応性接着剤でラミネート接着された積層フィルムがあげられるが、もちろん非反応性の接着剤、例えば熱可塑性樹脂接着剤でラミネート接着された積層フィルムや、押し出し積層法で熱融着して得られた積層フィルムも、本発明の分離回収方法で各々の単層フィルムに分離回収することができる。また、シート状や容器形状の積層体であってもよい。
【0102】
また、例えばペットボトルなどの容器には、商品名等の表示や装飾性を付与するために、筒状に形成された積層フィルムであるシュリンクラベルが用いられており、リサイクル時には該シュリンクラベルを消費者がはがして、ペットボトル本体とシュリンクラベルとを別々に廃棄することが多いが、本発明のインキ膜回収方法、インキ膜剥離方法では、ペットボトル本体とシュリンクラベルとが一体となった状態でも、インキ膜を剥離・回収できる。特に、湿式粉破砕機を用いた場合には、インキ剥離と共に、ペットボトル本体からシュリンクラベルを分離し、且つシュリンクラベルを各々の単層フィルムに分離することができる。
【0103】
反応性接着剤でラミネート接着された積層フィルムは、少なくとも2つの樹脂フィルム層または金属箔や蒸着膜層の間に前記反応性接着剤からなる接着剤層を積層されていることが多い。具体的には、該積層フィルムにおいて、樹脂フィルム層を(F)と表現し、金属箔や蒸着膜層の金属箔層を(M)と表現し、前記反応性接着剤等の接着剤層を(AD)と表現すると、積層フィルムの具体的態様として以下の構成が考えられるが、もちろんこれに限定されることはない。
(F)/(AD)/(F)、
(F)/(AD)/(F)/(AD)/(F)、
(F)/(AD)/(M)/(AD)/(F)、
(F)/(AD)/(M)、
(F)/(AD)/(F)/(AD)/(M)/(AD)/(F)、
(F)/(AD)/(M)/(AD)/(F)/(AD)/(F)、
(M)/(AD)/(M)、
(M)/(AD)/(F)/(AD)/(M)、
(AD)/(F)/(AD)/(M)、
(AD)/(F)/(AD)/(F)/(AD)、等。
【0104】
本発明のインキ膜回収方法、インキ膜剥離方法に用いられるプラスチック積層体は、樹脂フィルム層にインキ膜を有する構成であるが、インキ膜の設けられる場所は特に限定されない。例えば、インキ膜は積層フィルムの最外層に設けられていてもよいし、樹脂フィルム層(F)と接着剤層(AD)の間であってもよい。
積層フィルムは、さらに、紙層、酸素吸収層、アンカーコート層、インキ剥離層等を有することもある。
【0105】
樹脂フィルム層(F)は、求められる役割で分類すると、基材フィルム層(F1)や包装材料を形成する際にヒートシール部位となるシーラント層(F2)などとして機能する。
【0106】
例えば基材フィルム層(F1)となる樹脂フィルムとしては、例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直線状低密度ポリエチレン、OPP(2軸延伸ポリプロピレン)、CPP(無延伸ポリプロピレン)などのポリオレフィン系フィルム;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系フィルム;ナイロン6、ナイロン6,6、メタキシレンアジパミド(N-MXD6)などのポリアミド系フィルム;ポリ乳酸などの生分解性フィルム;ポリアクリロニトリル系フィルム;ポリ(メタ)アクリル系フィルム;ポリスチレン系フィルム;ポリカーボネート系フィルム;エチレン-酢酸ビニル共重合体鹸化物(EVOH)系フィルム;ポリビニルアルコール系フィルム;ポリ塩化ビニリデン、等のKコート等、これらの顔料を含むフィルムが挙げられる。これらフィルムにアルミナ、またはシリカ等の蒸着した透明蒸着フィルムも使用してよい。
【0107】
また前記フィルム材料の表面に火炎処理、コロナ放電処理、またはプライマー等のケミカル処理などの各種表面処理が実施されていることもある。
【0108】
シーラント層(F2)となる可撓性ポリマーフィルムとしては、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、エチレン-酢酸ビニル共重合体などのポリオレフィン系フィルム、イオノマー樹脂、EAA樹脂、EMAA樹脂、EMA樹脂、EMMA樹脂、生分解樹脂のフィルムなどが好ましい。汎用名では、CPP(無延伸ポリプロピレン)フィルム、VMCPP(アルミ蒸着無延伸ポリプロピレンフィルム)、LLDPE(直鎖状低密度ポリエチレン)、LDPE(低密度ポリエチレン)、HDPE(高密度ポリエチレン)、VMLDPE(アルミ蒸着無低密度ポリエチレンフィルム)フィルム、これらの顔料を含むフィルム等が挙げられる。フィルムの表面には火炎処理、コロナ放電処理、またはプライマー等のケミカル処理などの各種表面処理が実施されていてもよい。
金属箔層(M)としては、例えば金、銀、銅、亜鉛、鉄、鉛、錫及びこれらの合金、スチール、ステンレス、アルミニウム等の、展延性に優れた金属の箔があげられる。
【0109】
紙層としては、天然紙や合成紙などが挙げられる。第1および第2のシーラント層は、上述のシーラント層と同様の材料で形成されていることもある。
他の層には、公知の添加剤や安定剤、例えば帯電防止剤、非反応性接着剤層、易接着コート剤、可塑剤、滑剤、酸化防止剤などを含んでいる場合もある。
【0110】
本発明のインキ膜回収方法及びインキ膜剥離方法について、具体的態様の一例を述べて詳細に説明する。
【0111】
(工程1:インキ膜の剥離工程)
まず、インキ膜が設けられたプラスチック基材をインキ洗浄剤に浸漬する。浸漬する時間は、60分以内の範囲であることが多い。なお本発明においては、インキ膜がフィルムから100%完全に剥離する必要はなく、後述の工程2でフィルムを回収しその後のリサイクル工程において不都合がない程度であれば、ある程度のインキ膜がフィルムに残存していてもよい。具体的には積層フィルムから75重量%以上のインキ膜が剥離されていればよい。両面活性剤を含有する本発明の洗浄剤を用いることにより、インキ膜の剥離時間を短縮することができるため、インキ膜が剥離されていれば浸漬時間は30分以内でもよいし、15分以内でもよいし、10分以内でもよいし、5分以内でもよい。
【0112】
工程1において、インキ洗浄剤に浸漬する回数は1回でも数回に分けて行ってもよい。浸漬回数を1回行ったのち、分離したフィルムやインキ膜を回収する工程2を行ってもよいし、浸漬回数を数回行ったのち工程2を行ってもよい。また工程1において複数浸漬を行う場合は、インキ洗浄剤の種類や濃度を変更したりしてもよい。また工程の間に、水洗や水切り、脱水、乾燥など、公知の工程を適宜加えてもよい。
【0113】
工程1において、前述した湿式破砕機や超音波洗浄機を用いてもよい。
【0114】
(工程2:分離したフィルム及びインキ膜の回収工程)
プラスチック基材から分離したインキ膜は、インキ洗浄剤に溶解せずにインキ洗浄剤中で残渣となって沈降している。即ち工程1におけるインキ洗浄剤中には、剥離したフィルムと、印刷インキなどの残渣が浮遊したり沈降したりしている状態となっている。これらを洗浄液から取り出した後、分別して回収する。
【0115】
プラスチック基材種の具体的な分別方法の一例としては、例えば、浮上選別において、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン等の比重の軽いプラスチックと(浮物)、ポリオレフィンより比重の重いポリエステル、ナイロン等の縮合合成系フィルム、もしくは剥離したインキ等の重量物を選別し、重量物を取り除く。
例えば、水よりも比重が軽いPP,PEなどは浮遊し、水よりも比重の重いフィルムやインキ膜のみが沈降するため、フローテータなどで比重の軽いフィルムだけを容易に回収することもできる。
【0116】
次に、洗浄脱水工程で回収したプラスチックを洗浄・脱水し、遠心分離で比重の異なるプラスチックを分別する。例えば水に沈む比重1以上の塩化ビニル樹脂やポリエチレンテレフタレート等を含むプラスチック分離物と、塩化ビニル樹脂を含まないポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂を含むプラスチック分離物に分けることができる。
【0117】
さらなる分別は、浮遊分別で使用する液体、例えば水と有機溶剤や塩との配合比率を適宜変更することにより比重を変化させることで可能である。
【0118】
比重分離で荒い分別回収したのちに、プラスチックの固有帯電特性を利用した静電分離などを用いて高度分別をしても良い。
具体的な方法の一例としては、あらかじめ帯電したプラスチック混合物を電圧の印加された平行平板電極間に落下することで分離する方法である。比重分離では分離困難な比重差の小さいプラスチックの組合せも分別することができる。
【0119】
(工程3:洗浄溶液の回収、再利用)
工程1~2で使用したインキ洗浄剤は、インキ洗浄剤を回収するために濾過機、遠心分離機、限外濾過機から選ばれるいずれか1つ以上の洗浄剤リサイクル機に供給し、固形物や残渣の濃縮物を取り除いたのちに再利用される。工程1~2においてインキ膜の剥離工程、比重分離工程を行いながら、その一方で洗浄剤の再利用工程を連続的に運転し、固形物や残渣の濃縮物をインキ洗浄剤から分離することもできる。
【0120】
(工程4:プラスチック分離物の乾燥)
工程2において分離したプラスチック分離物各種を分取後、残留水分を除去するために減圧加熱乾燥、熱風乾燥、加圧圧縮乾燥から選ばれるいずれか1つ以上のフィルム乾燥を行う。これらを組み合わせて使用することができる。工程5でのリサイクルペレットを作製する事前処理として、フィルムの乾燥後もしくは乾燥中にブリケットマシンのような加圧圧縮機を用いてブリケットを作製してもよい。
【0121】
本発明で使用されるインキ洗浄剤は、両性界面活性剤が存在することでインキの硬化膜をはじめとする種々の種類のインキ膜への濡れ性が向上する。また、インキ膜とプラスチック基材との界面に作用しその密着力を著しく低減させることで、界面剥離を生じさせると推定される。界面剥離を生じさせているので、短時間で効率よく分離回収が行える。また、インキ洗浄剤に、両性界面活性剤又はカチオン性界面活性剤のいずれか一種を含有することで、剥離したインキ膜はインキ洗浄剤に溶解することなく沈降した状態となる。そのため、洗浄工程後に容易にインキ膜の沈降物を回収破棄することができ、インキ洗浄剤は何度でもリサイクルして使用することができる。両性界面活性剤又はカチオン性界面活性剤のいずれか一種を含有する洗浄剤は、例えばノニオン系界面活性剤等の他の界面活性剤と比較してインキ膜の剥離性に優れると共に格段に早く、また、他の界面活性剤と併用することにより複合ミセルを形成しやすくするために、インキ膜が剥離しやすいと推定される。
【実施例
【0122】
以下に、本発明の内容および効果を実施例により更に詳細に説明する。
【0123】
まず、両性界面活性剤を用いた検討を以下に示す。各実施例及び比較例で原料として用いたフィルム、印刷インキ、反応性接着剤を以下に示す。
【0124】
(積層フィルムに使用するフィルム)
OPP:2軸延伸ポリプロピレンフィルム 20um
CPP:無延伸ポリプロピレンフィルム 35um
VMCPP:アルミ蒸着無延伸ポリプロピレンフィルム 25um
(印刷インキ)
INK11:DICグラフィックス社製グラビアインキ グロッサ 507藍 S2
INK12:DICグラフィックス社製グラビアインキ グロッサ BM709白
INK13:DICグラフィックス社製グラビアインキ コーラス 507原色藍 KT2
INK14:DICグラフィックス社製グラビアインキ ファインラップ NTV白 RD-2
INK15:DICグラフィックス社製 フィナート R507原色藍
INK16:DICグラフィックス社製 フィナート R794白 S
(反応性接着剤)
AD1:溶剤型接着剤 ディックドライ LX-401AとSP-60との2液型接着剤(エーテル系接着剤)
AD2:無溶剤接着剤 ディックドライ 2K-SF-400AとHA-400Bとの2液型接着剤(エステル系接着剤)
(積層フィルムの製造方法)
積層フィルムは、下記印刷方法により対象とするフィルムに印刷後、下記ラミネート方法により対象とするフィルムを貼りあわせて作成した。フィルムの層構成や反応性接着剤、印刷インキの種類は表1の組み合わせにより行った。
【0125】
(印刷方法)
印刷インキであるグラビアインキは、プルーファーを用いて各インキをフィルム「Film1」に展色した。
【0126】
(ラミネート方法)
印刷インキを展色したフィルム「Film1」の印刷インキの展色面に、反応性接着剤「AD」をラミネーターで固形分3g/m2の塗膜量になるように塗布し、フィルム「Film2」と貼り合わせた。貼り合わせた積層フィルムは、40℃で72時間エージング反応させた。表1に示す積層フィルム「LAM11」~「LAM18」を得た。なお空欄は、構成が存在しないことを示す。
【0127】
【表1】
【0128】
積層フィルム「LAM11」~「LAM18」を2cm×6cmのサイズにカットし試験片を得た。
【0129】
(洗浄剤温度)
剥離工程に用いる洗浄剤の液温は50℃とした。
【0130】
(洗浄工程)
PRO11:ニクニ製 サンカッタ C125H を使用し、0.1m3/minで圧送した。
PRO12:超音波洗浄機を使用し、28kHzで5分間浸漬した。
PRO13:洗浄剤に静かに浸漬した。
PRO14:IKA製 MultiDrive を使用し、20000rpmで1分間運転した。
【0131】
(インキ洗浄剤)
水と、表2に示す界面活性剤を0.3重量%と、水酸化ナトリウムを2重量%とを混合して、実施例1~3、6~9と比較例1~6のインキ洗浄剤を調整した。
実施例4及び5においては、界面活性剤1と界面活性剤2をそれぞれ0.15重量%ずつ用いた以外は実施例1と同様にして、実施例4及び5のインキ洗浄剤を調整した。
【0132】
【表2】
【0133】
(積層フィルムからのインキ除去性)
表3~5の結果1は、積層フィルムからのインキ除去状態を示している。各洗浄工程で積層フィルムを洗浄し乾燥したのちに、印刷部のインキ除去性について、光学顕微鏡を用いて撮影された写真の画像処理にて面積を算出し、以下式を用いてインキ除去率を求めることで判定した。
インキ除去率(%)=(1-洗浄後のインキ付着面積/洗浄前のインキ付着面積)×100
○:印刷部の100%が除去。
〇△:印刷部の75~99%が除去。
△:印刷部もしくは積層部の50~74%が除去。
× :印刷部もしくは積層部の0~49%が除去。
なお、○、〇△は実用上問題がない範囲である。
【0134】
(インキ膜の剥離性)
表3~5の結果2は、剥離工程後に洗浄剤を1時間静置した際のインキ膜の溶解もしくは剥離状態を示している。インキ膜の剥離試験後の洗浄剤について、全量1umフィルター濾過を行い、インキ膜の溶解もしくは剥離状態を評価した。
○ :剥離したインキ膜は、フィルターで捕捉され、濾液は無色透明である。
× :溶解したインキ膜は、フィルターでは捕捉できずに、濾液は着色している。
なお、○は実用上問題がない範囲である。
【0135】
【表3】
【0136】
【表4】
【0137】
【表5】
【0138】
実施例1~17より、両性界面活性剤を用いたSUR13又はSUR14は、積層フィルム構成であるLAM11~13、17及び18でインキ膜剥離をすることができた。また、実施例14~16より、2枚のフィルムの間にインキ膜を設けたLAM14~16においても、PRO11によりインキ膜剥離ができた。しかし、両性界面活性剤を含有しない比較例1では、インキ膜を剥離することができなかった。両性界面活性剤を含有しない場合は、比較例2において洗浄剤の温度を70℃にした場合でもインキ膜を剥離できなかった。
【0139】
実施例8~17より、両性界面活性剤を用いたSUR13は、複数のインキを用いた多色かつ多層印刷のLAM11~16においてもインキ膜を剥離することができた。また、実施例11及び12より、ノニオン系界面活性剤を併用した洗浄剤を用いることにより、インキ膜の剥離性が向上して剥離時間を短縮できることがわかった。
【0140】
一方、比較例3~6より、ノニオン系界面活性剤であるSUR11及び12は、結果1に示すようにインキ膜の除去が不十分であったり、あるいは結果2に示すようにフィルターでは捕捉できずに濾液は着色していることから、剥離ができていないことがわかった。本発明のインキ膜洗浄剤を用いることにより、膜を剥離できるので、フィルターを用いて簡便にインキ膜やインキ洗浄剤の回収を行えることがわかった。
【0141】
続いて、カチオン性界面活性剤を用いた検討を以下に示す。
【0142】
(積層フィルムに使用するフィルム)
OPP:2軸延伸ポリプロピレンフィルム 20um
CPP:無延伸ポリプロピレンフィルム 35um
PET:ポリエチレンテレフタレートフィルム 12um
VMCPP:アルミ蒸着無延伸ポリプロピレンフィルム 25um
【0143】
(印刷インキ)
INK21:DICグラフィックス社製グラビアインキ コーラス 507原色藍 KT2
INK22:DICグラフィックス社製グラビアインキ ファインラップ NTV白 RD-2とDIC製硬化剤 CVLハードナー#10との2液硬化型インキ
INK23:DICグラフィックス社製 フィナート R507原色藍
INK24:DICグラフィックス社製 フィナート R794白 SとDIC製硬化剤 CVLハードナー#10との2液硬化型インキ
【0144】
(反応性接着剤)
AD1:溶剤型接着剤 ディックドライ LX-401AとSP-60との2液型接着剤(エーテル系接着剤)
AD2:無溶剤接着剤 ディックドライ 2K-SF-400AとHA-400Bとの2液型接着剤(エステル系接着剤)
【0145】
(積層フィルムの製造方法)
積層フィルムは、下記印刷方法により対象とするフィルムに印刷後、下記ラミネート方法により対象とするフィルムを貼りあわせて作成した。フィルムの層構成や反応性接着剤、印刷インキの種類は表6の組み合わせにより行った。
【0146】
(印刷方法)
印刷インキであるグラビアインキは、プルーファーを用いて各インキをフィルム「Film1」に展色した。
(ラミネート方法)
印刷インキを展色したフィルム「Film1」の印刷インキの展色面に、反応性接着剤「AD」をラミネーターで固形分3g/mの塗膜量になるように塗布し、フィルム「Film2」と貼り合わせた。貼り合わせた積層フィルムは、40℃で72時間エージング反応させた。表6に示す積層フィルム「LAM21」~「LAM28」を得た。なお空欄は、構成が存在しないことを示す。
【0147】
【表6】
【0148】
積層フィルム「LAM21」~「LAM28」を2cm×6cmのサイズにカットし試験片を得た。
【0149】
(洗浄剤温度)
剥離工程に用いる洗浄剤の液温は50℃とした。
【0150】
(洗浄工程)
PRO21:ニクニ製 サンカッタ C125H を使用し、0.1m3/minで圧送した。
PRO22:IKA製 MultiDrive を使用し、10000rpmで1分間運転した。
PRO23:洗浄剤に静かに15分間浸漬した。
【0151】
(インキ洗浄剤)
水と、表7に示す界面活性剤を0.3重量%と、水酸化ナトリウムを2重量%とを混合して、実施例18~26と比較例7~9のインキ洗浄剤を調整した。
【0152】
【表7】
【0153】
(積層フィルムからのインキ除去性)
表8~表10の結果1は、積層フィルムからのインキ除去状態を示している。各洗浄工程で積層フィルムを洗浄し、綿棒を45°の角度で押し当て500gの力で往復20回のラビングを行い、乾燥したのちに、印刷部のインキ除去性について、光学顕微鏡を用いて撮影された写真の画像処理にて面積を算出し、以下式を用いてインキ除去率を求めることで判定した。
インキ除去率(%)=(1-洗浄後のインキ付着面積/洗浄前のインキ付着面積)×100
○:印刷部の100%が除去。
○△:印刷部の75~99%が除去。
△:印刷部もしくは積層部の50~74%が除去。
× :印刷部もしくは積層部の0~49%が除去。
なお、○、○△は実用上問題がない範囲である。
【0154】
(インキ膜の剥離性)
表3~5の結果2は、洗浄工程後に、洗浄剤中で綿棒を45°の角度で押し当て500gの力で往復20回のラビングを行い、ラビング処理後の洗浄剤を1時間静置した際のインキ膜の溶解もしくは剥離状態を示している。インキ膜の剥離試験後の洗浄剤について、全量1umフィルター濾過を行い、インキ膜の溶解もしくは剥離状態を評価した。
○ :剥離したインキ膜は、フィルターで捕捉され、濾液は無色透明である。
× :溶解したインキ膜は、フィルターでは捕捉できずに、濾液は着色している。
なお、○は実用上問題がない範囲である。
【0155】
【表8】
【0156】
【表9】
【0157】
【表10】
【0158】
実施例18、19、20より、熱硬化型のインキを多色印刷したLAM21、22、23でもカチオン性界面活性剤SUR24を使用することにより、インキ膜を剥離することができた。実施例21、22より、インキ単色印刷したLAM27、28でも、インキ膜を硬化型熱可塑型ともに剥離することができた。また、実施例23~26より、2枚のフィルムの間に熱硬化型インキ膜を設けたLAM24~26においても、PRO21又はPRO22によりインキ膜剥離ができた。しかし、カチオン性界面活性剤を含有しない比較例7~9では、インキ膜を剥離することができなかった。