(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】加工システム及び光学装置
(51)【国際特許分類】
B23K 26/342 20140101AFI20240110BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20240110BHJP
【FI】
B23K26/342
B33Y30/00
(21)【出願番号】P 2022532925
(86)(22)【出願日】2020-07-01
(86)【国際出願番号】 JP2020025862
(87)【国際公開番号】W WO2022003870
(87)【国際公開日】2022-01-06
【審査請求日】2022-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】100104765
【氏名又は名称】江上 達夫
(72)【発明者】
【氏名】倉見 俊光
(72)【発明者】
【氏名】上野 和樹
【審査官】柏原 郁昭
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/116943(WO,A1)
【文献】特開2008-279472(JP,A)
【文献】特開2006-095563(JP,A)
【文献】特表2017-515678(JP,A)
【文献】実開昭54-156896(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/342
B33Y 30/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
造形物を形成する加工システムであって、
エネルギービームを第1照射位置に集光する第1光学系と、
前記第1照射位置に造形材料を供給可能な材料供給装置と
を有し、
前記材料供給装置により供給された前記造形材料に、前記第1光学系からの前記エネルギービームを照射することにより前記造形物を形成可能であり、
前記第1光学系からの前記エネルギービームを第2光学系により前記造形物の表面に照射して前記造形物を加工する
加工システム。
【請求項2】
前記第2光学系は、前記エネルギービームを前記第1光学系の光軸に交差する交差方向に偏向させる偏向部材を含み、
前記第1光学系を含む第1収容部材と、
前記第2光学系を含む第2収容部材と
を更に有し、
前記第2収容部材は、前記第1収容部材に対して脱着可能であり、
前記第1光学系の光軸と交わる方向の前記第2収容部材の最大幅は、前記第1光学系の光軸と交わる方向の前記第1収容部材の最大幅よりも短い
請求項1に記載の加工システム。
【請求項3】
前記造形物の表面は、前記第2光学系の光軸を挟み込む又は取り囲むように前記光軸側を向いた筒状の内壁面を含み、
前記造形物の表面に前記エネルギービームが照射される期間の少なくとも一部において、前記第2光学系により前記エネルギービームが集光される第2照射位置に前記内壁面の少なくとも一部が配置される
請求項1又は2に記載の加工システム。
【請求項4】
前記第2光学系に気体を供給する気体供給装置と、
前記第2光学系を収容空間に収容する第2収容部材と
を更に備え、
前記気体供給装置は、前記収容空間に気体を供給することで、前記第2光学系に気体を供給する
請求項1から3のいずれか一項に記載の加工システム。
【請求項5】
前記第2光学系は、複数の光学部材を含み、
前記収容空間に面する前記第2収容部材の内壁には、前記複数の光学部材が並ぶ方向に沿って延びる溝が形成されており、
前記第2収容部材に供給された気体は、前記溝を介して流れる
請求項4に記載の加工システム。
【請求項6】
前記第2光学系は結像光学系を含む
請求項1から5のいずれか一項に記載の加工システム。
【請求項7】
前記結像光学系は、前記第1光学系により前記第1照射位置に形成された前記エネルギービームの像を、第2照射位置に形成する
請求項6に記載の加工システム。
【請求項8】
前記第2光学系により前記エネルギービームが集光される前記第2照射位置は、前記第1照射位置から前記第1光学系の光軸に交差する交差方向に沿って離れている
請求項7に記載の加工システム。
【請求項9】
前記第2光学系は、前記エネルギービームを前記第1光学系の光軸に交差する交差方向に偏向させる偏向部材を含む
請求項1から8のいずれか一項に記載の加工システム。
【請求項10】
前記第1光学系を含む第1収容部材と、
前記第2光学系を含む第2収容部材と
を更に有し、
前記第2収容部材は、前記第1収容部材に対して脱着可能である
請求項1から9のいずれか一項に記載の加工システム。
【請求項11】
前記第1光学系の光軸と交わる方向の前記第2収容部材の最大幅は、前記第1光学系の光軸と交わる方向の前記第1収容部材の最大幅よりも短い
請求項10に記載の加工システム。
【請求項12】
前記第2収容部材は、前記第1収容部材の取付部に対して脱着可能な第1部材と、前記第2光学系を保持する第2部材とで構成される
請求項2、10又は11に記載の加工システム。
【請求項13】
前記取付部には、前記造形材料を遮蔽するためのカバー部材が取り付け可能である
請求項12に記載の加工システム。
【請求項14】
前記第2収容部材が前記第1収容部材に取り付けられていない場合には、前記材料供給装置により供給された前記造形材料に、前記第1光学系からの前記エネルギービームを照射することにより前記造形物を形成する加工が可能であり、
前記第2収容部材が前記第1収容部材に取り付けられている場合には、前記第1光学系からの前記エネルギービームを前記第2光学系により前記造形物の表面に照射して、前記造形物の表面を滑らかにするための加工が可能である
請求項2及び10から13のいずれか一項に記載の加工システム。
【請求項15】
前記第2光学系は、前記造形物の表面に対して前記エネルギービームが斜入射するように、前記エネルギービームを前記造形物の表面に照射する
請求項1から14のいずれか一項に記載の加工システム。
【請求項16】
前記第2光学系と前記造形物との相対的な位置関係を変更する位置変更装置を更に備える
請求項1から15のいずれか一項に記載の加工システム。
【請求項17】
前記位置変更装置は、前記第1光学系と前記造形物との相対的な位置関係を維持したまま、前記第2光学系と前記造形物との相対的な位置関係を変更する
請求項16に記載の加工システム。
【請求項18】
前記第2光学系は、前記第1光学系に対して移動可能となるように前記第1光学系に取り付けられている
請求項16又は17に記載の加工システム。
【請求項19】
前記位置変更装置は、第1位置変更装置であり、
前記第1光学系と前記造形物との相対的な位置関係を変更する第2位置変更装置を更に備える
請求項16から18のいずれか一項に記載の加工システム。
【請求項20】
前記第2位置変更装置は、前記第1光学系と前記第2光学系との相対的な位置関係を維持したまま、前記第1光学系と前記造形物との相対的な位置関係を変更する
請求項19に記載の加工システム。
【請求項21】
前記造形物の表面は、前記第2光学系の光軸を挟み込む又は取り囲むように前記光軸側を向いた筒状の内壁面を含み、
前記造形物の表面に前記エネルギービームが照射される期間の少なくとも一部において、前記第2光学系の少なくとも一部が前記内壁面の少なくとも一部によって取り囲まれる
請求項1から20のいずれか一項に記載の加工システム。
【請求項22】
前記第2光学系は、前記第1光学系からの前記エネルギービームを平行ビームに変換する第3光学系と、前記第3光学系からの前記エネルギービームを第2照射位置に照射する第4光学系とを含む
請求項1から21のいずれか一項に記載の加工システム。
【請求項23】
前記第3光学系は、前記第2光学系の光軸に沿った方向において間の距離を変更可能な少なくとも二つの光学部材を含む
請求項22に記載の加工システム。
【請求項24】
前記第2照射位置は、前記第1照射位置から前記第1光学系の光軸に交差する交差方向に沿って離れており、
前記第4光学系は、前記第3光学系からの前記エネルギービームを前記交差方向に沿って偏向することで、前記第3光学系からの前記エネルギービームを前記第2照射位置に照射する偏向部材を含む
請求項22又は23に記載の加工システム。
【請求項25】
前記第2光学系に気体を供給する気体供給装置を更に備える
請求項1から24のいずれか一項に記載の加工システム。
【請求項26】
前記第2光学系を収容空間に収容する第2収容部材を更に備え、
前記気体供給装置は、前記収容空間に気体を供給することで、前記第2光学系に気体を供給する
請求項25に記載の加工システム。
【請求項27】
前記第2光学系は、複数の光学部材を含み、
前記収容空間に面する前記第2収容部材の内壁には、前記複数の光学部材が並ぶ方向に沿って延びる溝が形成されており、
前記第2収容部材に供給された気体は、前記溝を介して流れる
請求項26に記載の加工システム。
【請求項28】
前記溝には、隣り合う二つの光学部材の間において前記溝を介して流れる気体を遮る障壁部材が形成されている
請求項5又は
27に記載の加工システム。
【請求項29】
前記気体供給装置は、前記第1光学系を収容する第1収容部材に取り付けられたカバー部材の内部空間に前記気体を供給可能であり、
前記カバー部材には、前記内部空間に供給された前記気体が前記内部空間から流出する流出口が形成されており、
前記材料供給装置は、材料供給口から前記第1照射位置に前記造形材料を供給し、
前記カバー部材は、前記流出口が前記材料供給口から所定距離以下の範囲に位置するように配置される
請求項4及び26から28のいずれか一項に記載の加工システム。
【請求項30】
エネルギービームを物体に照射する第1光学系と、
前記第1光学系を収容する第1収容部材と
前記第1光学系からの前記エネルギービームの照射位置に造形材料を供給する材料供給装置と、
第1収容部材に取り付け可能な、前記第1光学系からの前記エネルギービームを集光する第2光学系を収容する第2収容部材と
を備える加工システム。
【請求項31】
エネルギービームを物体に照射する第1光学系と、
前記第1光学系を収容する第1収容部材と
前記第1光学系からの前記エネルギービームの照射位置に造形材料を供給する材料供給装置と
を備え、
前記第1収容部材には、前記第1光学系からの前記エネルギービームを集光する第2光学系を収容する第2収容部材を前記第1収容部材に取り付けるための取付部が形成されている
加工システム。
【請求項32】
エネルギービームを第1照射位置に集光する第1光学系と、前記第1照射位置に造形材料を供給可能な材料供給装置と備え、前記材料供給装置により前記造形材料を供給して、前記第1光学系からの前記エネルギービームにより、造形物を形成する加工システムに取り付け可能な光学装置であって、
前記第1光学系からの前記エネルギービームを前記造形物の表面に照射して前記造形物を加工するための第2光学系を有する
光学装置。
【請求項33】
エネルギービームを物体に照射する第1光学系と、前記第1光学系を収容する第1収容部材と、前記第1光学系からの前記エネルギービームの照射位置に造形材料を供給する材料供給装置とを備える加工システムに取り付け可能な光学装置であって、
前記第1収容部材に取り付け可能な、前記第1光学系からのエネルギービームを集光する第2光学系を収容する第2収容部材を有する
光学装置。
【請求項34】
造形物を形成する加工方法であって、
第1光学系を用いて、エネルギービームを第1照射位置に集光することと、
材料供給装置を用いて、前記第1照射位置に造形材料を供給することと
を含み、
前記材料供給装置により供給された前記造形材料に、前記第1光学系からの前記エネルギービームを照射することにより前記造形物を形成可能であり、
前記加工方法は更に、前記第1光学系からの前記エネルギービームを第2光学系により前記造形物の表面に照射して前記造形物を加工することを含む
加工方法。
【請求項35】
第1収容部材に収容された第1光学系を用いて、エネルギービームを物体に照射することと、
材料供給装置を用いて、前記第1光学系からの前記エネルギービームの照射位置に造形材料を供給することと、
第2収容部材に収容された第2光学系を用いて、前記第1光学系からの前記エネルギービームを集光することと
を含み、
前記第2収容部材は、前記第1収容部材に取り付け可能である
加工方法。
【請求項36】
第1収容部材に収容された第1光学系を用いて、エネルギービームを物体に照射することと、
材料供給装置を用いて、前記第1光学系からの前記エネルギービームの照射位置に造形材料を供給することと、
第2収容部材に収容された第2光学系を用いて、前記第1光学系からの前記エネルギービームを集光することと
を含み、
前記第1収容部材には、前記第2収容部材を前記第1収容部材に取り付けるための取付部が形成されている
加工方法。
【請求項37】
加工システムに取り付け可能な光学装置を用いた加工方法であって、
前記加工方法は、
第1光学系を用いて、エネルギービームを第1照射位置に集光することと、
材料供給装置を用いて、前記第1照射位置に造形材料を供給することと
を含み、
前記加工方法は、前記材料供給装置により前記造形材料を供給して、前記第1光学系からの前記エネルギービームにより、造形物を形成し、
前記加工方法は、前記光学装置が有する第2光学系を用いて、前記第1光学系からの前記エネルギービームを前記造形物の表面に照射して前記造形物を加工することを更に含む
加工方法。
【請求項38】
加工システムに取り付け可能な光学装置を用いた加工方法であって、
第1収容部材に収容された第1光学系を用いて、エネルギービームを物体に照射することと、
材料供給装置を用いて、前記第1光学系からの前記エネルギービームの照射位置に造形材料を供給することと、
前記光学装置が有し且つ前記第1収容部材に取り付け可能な第2収容部材に収容された第2光学系を用いて、前記第1光学系からのエネルギービームを集光することと
を含む加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、造形物を形成可能な加工システム及び加工システムに用いられる光学装置の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
造形物を形成可能な加工システムの一例が、特許文献1に記載されている。このような加工システムが有する技術的課題の一つとして、造形物を適切に形成することがあげられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許出願公開第2017/0014909号明細書
【発明の概要】
【0004】
第1の態様によれば、造形物を形成する加工システムであって、エネルギービームを第1照射位置に集光する第1光学系と、前記第1照射位置に造形材料を供給可能な材料供給装置とを有し、前記材料供給装置により供給された前記造形材料に、前記第1光学系からの前記エネルギービームを照射することにより前記造形物を形成可能であり、前記第1光学系からの前記エネルギービームを第2光学系により前記造形物の表面に照射して前記造形物を加工する加工システムが提供される。
【0005】
第2の態様によれば、エネルギービームを物体に照射する第1光学系と、前記第1光学系を収容する第1収容部材と、前記第1光学系からの前記エネルギービームの照射位置に造形材料を供給する材料供給装置と、第1収容部材に取り付け可能な、前記第1光学系からのエネルギービームを集光する第2光学系を収容する第2収容部材とを備える加工システムが提供される。
【0006】
第3の態様によれば、エネルギービームを物体に照射する第1光学系と、前記第1光学系を収容する第1収容部材と、前記第1光学系からの前記エネルギービームの照射位置に造形材料を供給する材料供給装置とを備え、前記第1収容部材には、前記第1光学系からのエネルギービームを集光する第2光学系を収容する第2収容部材を前記第1収容部材に取り付けるための取付部が形成されている加工システムが提供される。
【0007】
第4の態様によれば、エネルギービームを物体に照射する第1光学系と、前記第1光学系を収容する第1収容部材とを備え、前記第1収容部材には、前記第1光学系からのエネルギービームを集光する第2光学系を収容する第2収容部材を前記第1収容部材に取り付けるための取付部が形成されている加工システムが提供される。
【0008】
第5の態様によれば、エネルギービームを第1照射位置に集光する第1光学系と、前記第1照射位置に造形材料を供給可能な材料供給装置と備え、前記材料供給装置により前記造形材料を供給して、前記第1光学系からの前記エネルギービームにより、造形物を形成する加工システムに取り付け可能な光学装置であって、前記第1光学系からの前記エネルギービームを前記造形物の表面に照射して前記造形物を加工するための第2光学系を有する光学装置が提供される。
【0009】
第6の態様によれば、エネルギービームを物体に照射する第1光学系と、前記第1光学系を収容する第1収容部材と、前記第1光学系からの前記エネルギービームの照射位置に造形材料を供給する材料供給装置とを備える加工システムに取り付け可能な光学装置であって、前記第1収容部材に取り付け可能な、前記第1光学系からのエネルギービームを集光する第2光学系を収容する第2収容部材を有する光学装置が提供される。
【0010】
第7の態様によれば、造形物を形成する加工システムであって、エネルギービームを第1照射位置に集光する第1光学系と、前記第1照射位置に造形材料を供給可能な材料供給装置とを備え、前記材料供給装置により供給された前記造形材料に、前記第1光学系からのエネルギービームを照射することにより前記造形物を形成可能な第1加工装置と、エネルギービームを第2光学系により前記造形物の表面に照射して前記造形物を加工する第2加工装置とを有する加工システムが提供される。
【0011】
本発明の作用及び他の利得は次に説明する実施するための形態から明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本実施形態の加工システムの構造を示す断面図である。
【
図2】
図2は、本実施形態の加工システムのシステム構成を示すシステム構成図である。
【
図3】
図3は、本実施形態の加工ヘッドの構造を示す断面図である。
【
図4】
図4(a)から
図4(e)のそれぞれは、ワーク上のある領域に加工光を照射し且つ造形材料を供給した場合の様子を示す断面図である。
【
図5】
図5(a)から
図5(c)のそれぞれは、3次元構造物を形成する過程を示す断面図である。
【
図6】
図6(a)から
図6(c)のそれぞれは、溶融動作(平滑化動作)が行われている過程での加工対象面の状態を示す断面図である。
【
図7】
図7(a)から
図7(b)のそれぞれは、集光面と加工対象面との相対的な位置関係を示す断面図である。
【
図8】
図8は、第1のヘッド装置の構造を示す断面図である。
【
図9】
図9は、第1のヘッド装置における加工光の光路及びパージガスの流路を示す断面図である。
【
図10】
図10は、第2のヘッド装置の構造を示す断面図である。
【
図11】
図11は、第1のヘッド装置における加工光の光路を示す
【
図12】
図12は、第2のヘッド装置におけるパージガスの流路を示す
【
図13】
図13は、パージガスの供給経路が形成された筒状部材の一例を示す透過斜視図である。
【
図14】
図14は、パージガスの供給経路が形成された筒状部材の一例を示す断面図である。
【
図15】
図15は、筒状の形状を有する3次元構造物を加工するための加工光を射出する第2のヘッド装置を、3次元構造物と共に示す断面図である。
【
図16】
図16は、筒状の空隙が形成された3次元構造物を示す透過斜視図である。
【
図17】
図17は、筒状の空隙が形成された3次元構造物の内壁面に照射される加工光を示す断面図である。
【
図18】
図18は、筒状の空隙が形成された3次元構造物の内壁面に照射される加工光を示す断面図である。
【
図19】
図19は、第2のヘッド装置の変形例の構造を示す断面図である。
【
図20】
図20は、第2のヘッド装置の変形例における加工光の光路を示す断面図である
【
図21】
図21は、第2のヘッド装置の変形例における加工光の光路を示す断面図である
【
図22】
図22は、加工システムの変形例の構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、本発明の加工システムの一実施形態である加工システムSYSについて説明する。本実施形態の加工システムSYSは、付加加工を行うことで、「造形物」の一具体例である3次元構造物STを形成可能な加工システムである。加工システムSYSは、例えば、レーザ肉盛溶接法(LMD:Laser Metal Deposition)に基づく付加加工を行うことで3次元構造物STを形成可能である。尚、レーザ肉盛溶接法(LMD)は、ダイレクト・メタル・デポジション、ダイレクト・エナジー・デポジション、レーザクラッディング、レーザ・エンジニアード・ネット・シェイピング、ダイレクト・ライト・ファブリケーション、レーザ・コンソリデーション、シェイプ・デポジション・マニュファクチャリング、ワイヤ-フィード・レーザ・デポジション、ガス・スルー・ワイヤ、レーザ・パウダー・フージョン、レーザ・メタル・フォーミング、セレクティブ・レーザ・パウダー・リメルティング、レーザ・ダイレクト・キャスティング、レーザ・パウダー・デポジション、レーザ・アディティブ・マニュファクチャリング、レーザ・ラピッド・フォーミングと称してもよい。
【0014】
以下の説明では、互いに直交するX軸、Y軸及びZ軸から定義されるXYZ直交座標系を用いて、加工システムSYSを構成する各種構成要素の位置関係について説明する。尚、以下の説明では、説明の便宜上、X軸方向及びY軸方向のそれぞれが水平方向(つまり、水平面内の所定方向)であり、Z軸方向が鉛直方向(つまり、水平面に直交する方向であり、実質的には上下方向或いは重力方向)であるものとする。また、X軸、Y軸及びZ軸周りの回転方向(言い換えれば、傾斜方向)を、それぞれ、θX方向、θY方向及びθZ方向と称する。ここで、Z軸方向を重力方向としてもよい。また、XY平面を水平方向としてもよい。
【0015】
(1)加工システムSYSの構造
初めに、
図1及び
図2を参照しながら、本実施形態の加工システムSYSの構造について説明する。
図1は、本実施形態の加工システムSYSの構造の一例を示す断面図である。
図2は、本実施形態の加工システムSYSのシステム構成の一例を示すシステム構成図である。
【0016】
加工システムSYSは、3次元構造物(つまり、3次元方向のいずれの方向においても大きさを持つ3次元の物体であり、立体物、言い換えると、X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向において大きさを持つ物体)STを形成するための造形動作を行うことが可能である。加工システムSYSは、3次元構造物STを形成するための基礎(つまり、母材)となるワークW上に、3次元構造物STを形成可能である。加工システムSYSは、ワークWに付加加工を行うことで、3次元構造物STを形成可能である。ワークWが後述するステージ31である場合には、加工システムSYSは、ステージ31上に、3次元構造物STを形成可能である。ワークWがステージ31に載置されている(或いは、ステージ31に載置されている)既存構造物である場合には、加工システムSYSは、既存構造物上に、3次元構造物STを形成可能であってもよい。この場合、加工システムSYSは、既存構造物と一体化された3次元構造物STを形成してもよい。既存構造物と一体化された3次元構造物STを形成する動作は、既存構造物に新たな構造物を付加する動作と等価とみなせる。尚、既存構造物は例えば欠損箇所がある要修理品であってもよい。加工システムSYSは、要修理品の欠損箇所を埋めるように、要修理品に3次元構造物STを形成してもよい。或いは、加工システムSYSは、既存構造物と分離可能な3次元構造物STを形成してもよい。尚、
図1は、ワークWが、ステージ31によって保持されている既存構造物である例を示している。また、以下でも、ワークWがステージ31によって保持されている既存構造物である例を用いて説明を進める。
【0017】
上述したように、加工システムSYSは、レーザ肉盛溶接法により3次元構造物STを形成可能である。つまり、加工システムSYSは、積層造形技術を用いて物体を形成する3Dプリンタであるとも言える。尚、積層造形技術は、ラピッドプロトタイピング(Rapid Prototyping)、ラピッドマニュファクチャリング(Rapid Manufacturing)、又は、アディティブマニュファクチャリング(Additive Manufacturing)とも称されてもよい。
【0018】
加工システムSYSは、造形材料Mを加工光ELで加工して3次元構造物STを形成する。造形材料Mは、所定強度以上の加工光ELの照射によって溶融可能な材料である。このような造形材料Mとして、例えば、金属性の材料及び樹脂性の材料の少なくとも一方が使用可能である。但し、造形材料Mとして、金属性の材料及び樹脂性の材料とは異なるその他の材料が用いられてもよい。造形材料Mは、粉状の又は粒状の材料である。つまり、造形材料Mは、粉粒体である。但し、造形材料Mは、粉粒体でなくてもよい。例えば、造形材料Mとして、ワイヤ状の造形材料及びガス状の造形材料の少なくとも一方が用いられてもよい。
【0019】
本実施形態では更に、加工システムSYSは、3次元構造物STを形成するための造形動作に加えて又は代えて、造形動作によって(つまり、付加加工によって)形成された3次元構造物STを加工するための加工動作を行うことが可能である。例えば、加工システムSYSは、造形動作を行うために用いる加工光ELを、造形動作によって形成された3次元構造物STに対して照射することで、3次元構造物STを加工してもよい。
【0020】
3次元構造物STを形成するための造形動作及び3次元構造物STを加工するための加工動作の少なくとも一方を行うために、加工システムSYSは、
図1及び
図2に示すように、材料供給源1と、加工ユニット2と、ステージユニット3と、光源4と、気体供給装置5と、筐体6と、制御装置7とを備える。加工ユニット2とステージユニット3とのそれぞれの少なくとも一部は、筐体6の内部のチャンバ空間63IN内に収容されている。
【0021】
材料供給源1は、加工ユニット2に造形材料Mを供給する。材料供給源1は、3次元構造物STを形成するために単位時間あたりに必要とする分量の造形材料Mが加工ユニット2に供給されるように、当該必要な分量に応じた所望量の造形材料Mを供給する。
【0022】
加工ユニット2は、材料供給源1から供給される造形材料Mを加工して3次元構造物STを形成する。3次元構造物STを形成するために、加工ユニット2は、加工ヘッド21と、ヘッド駆動系22とを備える。更に、加工ヘッド21は、照射光学系211と、材料ノズル(つまり造形材料Mを供給する供給系)212と、戻り光検出器213と、鏡筒214と、ヘッド筐体215とを備えている。尚、以下の加工ヘッド21の説明においては、
図1及び
図2に加えて、加工ヘッド21の構造を示す断面図である
図3も適宜参照する。加工ヘッド21と、ヘッド駆動系22とは、チャンバ空間63IN内に収容されている。但し、加工ヘッド21及び/又はヘッド駆動系22の少なくとも一部が、筐体6の外部の空間である外部空間64OUTに配置されていてもよい。尚、外部空間64OUTは、加工システムSYSのオペレータが立ち入り可能な空間であってもよい。
【0023】
照射光学系211は、加工光ELを射出するための光学系である。具体的には、照射光学系211は、加工光ELを発する光源4と、光ファイバ及びライトパイプ等の少なくとも一つを含む光伝送部材41を介して光学的に接続されている。照射光学系211は、光伝送部材41を介して光源4から伝搬してくる加工光ELを射出する。照射光学系211は、照射光学系211から下方(つまり、-Z側)に向けて加工光ELを照射する。このため、照射光学系211の光軸AXは、Z軸に沿った軸であってもよい。照射光学系211の下方には、ステージ31が配置されている。ステージ31にワークWが載置されている場合には、照射光学系211は、物体であるワークWに加工光ELを照射する。具体的には、照射光学系211は、加工光ELが照射される(典型的には、集光される)領域としてワークW上に又はワークWの近傍に設定される目標照射領域EAに加工光ELを照射可能である。つまり、照射光学系211は、目標照射領域EAが設定された位置に加工光ELを照射する。更に、照射光学系211の状態は、制御装置7の制御下で、目標照射領域EAに加工光ELを照射する状態と、目標照射領域EAに加工光ELを照射しない状態との間で切替可能である。尚、照射光学系211から射出される加工光ELの方向は真下(つまり、-Z軸方向と一致)には限定されず、例えば、Z軸に対して所定の角度だけ傾いた方向であってもよい。
【0024】
照射光学系211は、ワークWに向けて射出した加工光ELを、光軸AXに交差する集光面211FPに集光してもよい。このため、照射光学系211は、集光光学系と称されてもよい。集光面211FPは、典型的には、ワークW上に又はワークWの近傍に設定される。このため、ワークW上に又はワークWの近傍に設定される上述した目標照射領域EAは、集光面211FPに設定されてもよい。つまり、目標照射領域EAと集光面211FPとは、少なくとも部分的に重複していてもよい。この場合、照射光学系211は、集光面211FPが設定される位置に加工光ELを照射しているとみなしてもよい。尚、このような集光面211FPは、典型的には、照射光学系211の後側焦点位置に設定される。
【0025】
照射光学系211は、鏡筒214の内部空間2141に収容される。つまり、鏡筒214は、照射光学系211のその内部空間2141内に含んでいる。このため、鏡筒214は、収容部材と称されてもよい。鏡筒214は、内部空間2141に収容されている照射光学系211を保持してもよい。鏡筒214には、照射光学系211から射出される加工光ELが射出可能な開口である射出口2142が形成されている。このため、照射光学系211は、射出口2142を介して、鏡筒214の内部から鏡筒214の外部に向けて加工光ELを射出する。
【0026】
鏡筒214は更に、ヘッド筐体215に収容されている。この場合、照射光学系211は、ヘッド筐体215に収容されているとみなしてもよい。このため、ヘッド筐体215もまた、収容部材と称されてもよい。鏡筒214は、少なくとも射出口2142がヘッド筐体215の外部に露出するように配置されている。その結果、鏡筒214がヘッド筐体215に収容されていたとしても、照射光学系211は、射出口2142を介して鏡筒214の外部(更には、ヘッド筐体215の外部)に向けて加工光ELを射出することができる。尚、ヘッド筐体215と鏡筒214とが一体化されていてもよい。或いは、加工ヘッド21は、ヘッド筐体215を備えていなくてもよい。この場合、鏡筒214がヘッド筐体215として用いられてもよい。
【0027】
鏡筒214には、後に詳述するヘッド装置23(例えば、
図8及び
図10等参照)が脱着可能である。つまり、鏡筒214には、外付けのヘッド装置23を取り付け可能であり、且つ、鏡筒214に取り付けられたヘッド装置23は、鏡筒214から取り外し可能である。鏡筒214が加工システムSYSを構成しているため、ヘッド装置23は、加工システムSYSに対して脱着可能であるとみなしてもよい。但し、ヘッド装置23は、鏡筒214に固定されていてもよい。つまり、ヘッド装置23は、鏡筒214から取り外し可能でなくてもよい。
【0028】
鏡筒214には、鏡筒214に対してヘッド装置23を取り付けるために利用可能な取付部2143が形成されている。取付部2143は、例えば、ヘッド装置23の少なくとも一部が嵌め合わせられる部材を含んでいてもよい。一例として、
図3に示すように、取付部2143は、周囲から突き出た(
図3に示す例では、下方に向かって突き出た)突出部材を含んでいてもよい。
図3に示す例では、突出部材は、射出口2142を取り囲むように形成されている。或いは、取付部2143は、ヘッド装置23を鏡筒214に取り付けるための力をヘッド装置23に付与可能な部材を含んでいてもよい。例えば、取付部2143は、負圧を利用してヘッド装置23を吸引可能な真空チャック及び静電力を利用してヘッド装置23を吸引可能な静電チャックの少なくとも一方を含んでいてもよい。或いは、鏡筒214に加えて又は代えて、ヘッド筐体215が、ヘッド筐体215に対して脱着可能なヘッド装置23を取り付けるための取付部2143を備えている。以下では、説明の便宜上、鏡筒214が、ヘッド装置23の少なくとも一部が嵌め合わせられる取付部2143を備える例(つまり、
図3に示す例)について説明を進める。
【0029】
ヘッド筐体215には更に、材料ノズル212が取り付けられている。
図1及び
図3に示す例では、ヘッド筐体215には、二つの材料ノズル212が取り付けられている。しかしながら、ヘッド筐体215には、一つの材料ノズル212が取り付けられていてもよいし、三つ以上の材料ノズル212が取り付けられていてもよい。尚、上述したように加工ヘッド21がヘッド筐体215を備えていない場合には、材料ノズル212は、鏡筒214(或いは、その他の任意の支持部材)に取り付けられていてもよい。
【0030】
材料ノズル212には、開口である材料供給口2121が形成されている。材料ノズル212は、材料供給口2121から造形材料Mを供給する(例えば、射出する、噴射する、噴出する、又は、吹き付ける)。材料ノズル212は、供給管11及び混合装置12を介して造形材料Mの供給源である材料供給源1と物理的に接続されている。材料ノズル212は、供給管11及び混合装置12を介して材料供給源1から供給される造形材料Mを供給する。材料ノズル212は、供給管11を介して材料供給源1から供給される造形材料Mを圧送してもよい。即ち、材料供給源1からの造形材料Mと搬送用の気体(つまり、圧送ガスであり、例えば、窒素及びアルゴン等の少なくとも一つを含む不活性ガス)とは、混合装置12で混合された後に供給管11を介して材料ノズル212に圧送されてもよい。その結果、材料ノズル212は、搬送用の気体と共に造形材料Mを供給する。搬送用の気体として、例えば、気体供給装置5から供給されるパージガスが用いられる。但し、搬送用の気体として、気体供給装置5とは異なる気体供給装置から供給される気体が用いられてもよい。尚、
図1及び
図3において材料ノズル212は、チューブ状に描かれているが、材料ノズル212の形状は、この形状に限定されない。材料ノズル212は、材料ノズル212から下方(つまり、-Z側)に向けて造形材料Mを供給する。材料ノズル212の下方には、ステージ31が配置されている。ステージ31にワークWが搭載されている場合には、材料ノズル212は、ワークW又はワークWの近傍に向けて造形材料Mを供給する。尚、材料ノズル212から供給される造形材料Mの進行方向はZ軸方向に対して所定の角度(一例として鋭角)だけ傾いた方向であるが、-Z側(つまり、真下)であってもよい。また、ヘッド筐体214に複数の材料ノズル212が取り付けられる場合、照射光学系211の光軸AXに沿った方向における複数の材料供給口2121のそれぞれと集光面211FPとの距離は同じであってもよい。
【0031】
本実施形態では、材料ノズル212は、照射光学系211が加工光ELを照射する位置(つまり、目標照射領域EA)に向けて造形材料Mを供給するように、照射光学系211に対して位置合わせされている。つまり、材料ノズル212が造形材料Mを供給する領域としてワークW上に又はワークWの近傍に設定される目標供給領域MAと目標照射領域EAとが一致する(或いは、少なくとも部分的に重複する)ように、材料ノズル212と照射光学系211とが位置合わせされている。尚、照射光学系211から射出された加工光ELによって形成される後述の溶融池MP(
図4参照)に材料ノズル212が造形材料Mを供給するように、材料ノズル212と照射光学系211とが位置合わせされていてもよい。尚、材料ノズル212は、溶融池MPに材料を供給しなくてもよい。例えば、加工システムSYSは、材料ノズル212からの造形材料MがワークWに到達する前に当該造形材料Mを照射光学系211によって溶融させ、溶融した造形材料MをワークWに付着させてもよい。
【0032】
戻り光検出器213は、加工光ELが照射されたワークWからの戻り光を検出可能である。戻り光は、ワークWからの加工光ELの反射光を含んでいてもよい。戻り光は、ワークWからの加工光ELの散乱光を含んでいてもよい。戻り光は、ワークWからの加工光ELの透過光を含んでいてもよい。戻り光検出器213による加工光ELの検出結果は、戻り光検出器213から制御装置7に出力される。戻り光検出器213による加工光ELの検出結果の用途は、後に詳述する。但し、加工ヘッド21は、戻り光検出器213を備えていなくてもよい。
【0033】
ヘッド駆動系22は、加工ヘッド21を移動させる。ヘッド駆動系22は、例えば、X軸、Y軸、Z軸、θX方向、θY方向及びθZ方向の少なくとも一つに沿って加工ヘッド21を移動させる。ヘッド駆動系22が加工ヘッド21を移動させると、加工ヘッド21とステージ31との相対位置が変わる。更に、ステージ31にワークWが載置されている場合には、加工ヘッド21とワークWとの相対位置が変わる。更に、ステージ31に載置されたワークWに3次元構造物STが形成されている場合には、加工ヘッド21と3次元構造物STとの相対位置が変わる。このため、ヘッド駆動系22は、加工ヘッド21と、ステージ31、ワークW及び3次元構造物STのそれぞれとの相対的な位置関係を変更するための位置変更装置として機能してもよい。また、加工ヘッド21が照射光学系211を備えているがゆえに、加工ヘッド21の移動に伴って照射光学系211が移動する。このため、ヘッド駆動系22は、照射光学系211と、ステージ31、ワークW及び3次元構造物STのそれぞれとの相対的な位置関係を変更するための位置変更装置として機能してもよい。また、上述したように、加工ヘッド21の鏡筒214にヘッド装置23が取り付けられている場合には、加工ヘッド21の移動に伴ってヘッド装置23が移動する。このため、ヘッド駆動系22は、ヘッド装置23と、ステージ31、ワークW及び3次元構造物STのそれぞれとの相対的な位置関係を変更するための位置変更装置として機能してもよい。
【0034】
ステージユニット3は、ステージ31を備えている。ステージ31は、チャンバ空間63INに収容される。ステージ31には、ワークWが載置可能である。ステージ31は、ステージ31に載置されたワークWを保持可能であってもよい。この場合、ステージ31は、ワークWを保持するために、機械的なチャック、静電チャック及び真空吸着チャック等の少なくとも一つを備えていてもよい。或いは、ステージ31は、ステージ31に載置されたワークWを保持可能でなくてもよい。この場合、ワークWは、クランプレスでステージ31に載置されていてもよい。ステージ31がチャンバ空間63INに収容されるため、ステージ31が支持するワークWもまた、チャンバ空間63INに収容される。更に、ステージ31は、ワークWが保持されている場合には、保持したワークWをリリース可能である。上述した照射光学系211は、ステージ31にワークWが載置されている期間の少なくとも一部において加工光ELを照射する。更に、上述した材料ノズル212は、ステージ31にワークWが載置されている期間の少なくとも一部において造形材料Mを供給する。
【0035】
ステージ駆動系32は、ステージ31を移動させる。ステージ駆動系32は、例えば、X軸、Y軸、Z軸、θX方向、θY方向及びθZ方向の少なくとも一つに沿ってステージ31を移動させる。ステージ駆動系32がステージ31を移動させると、加工ヘッド21とステージ31との相対位置が変わる。このため、ステージ駆動系32は、上述したヘッド駆動系22と同様に、加工ヘッド21と、ステージ31、ワークW及び3次元構造物STのそれぞれとの相対的な位置関係を変更するための位置変更装置として機能してもよい。ステージ駆動系32は、上述したヘッド駆動系22と同様に、ヘッド装置23と、ステージ31、ワークW及び3次元構造物STのそれぞれとの相対的な位置関係を変更するための位置変更装置として機能してもよい。
【0036】
光源4は、例えば、赤外光、可視光及び紫外光のうちの少なくとも一つを、加工光ELとして射出する。但し、加工光ELとして、その他の種類の光が用いられてもよい。加工光ELは、複数のパルス光(つまり、複数のパルスビーム)を含んでいてもよい。加工光ELは、連続光(CW:Continuous Wave)を含んでいてもよい。加工光ELは、レーザ光であってもよい。この場合、光源4は、レーザ光源(例えば、レーザダイオード(LD:Laser Diode)等の半導体レーザを含んでいてもよい。レーザ光源は、ファイバ・レーザ、CO2レーザ、YAGレーザ及びエキシマレーザ等のうちの少なくとも一つを含んでいてもよい。但し、加工光ELは、レーザ光でなくてもよい。光源4は、任意の光源(例えば、LED(Light Emitting Diode)及び放電ランプ等の少なくとも一つ)を含んでいてもよい。
【0037】
気体供給装置5は、チャンバ空間63INをパージするためのパージガスの供給源である。パージガスは、不活性ガスを含む。不活性ガスの一例として、窒素ガス及びアルゴンガスの少なくとも一方があげられる。気体供給装置5は、筐体6の隔壁部材61に形成された供給口62及び気体供給装置5と供給口62とを接続する供給管51を介して、チャンバ空間63INに接続されている。気体供給装置5は、供給管51及び供給口62を介して、チャンバ空間63INにパージガスを供給する。その結果、チャンバ空間63INは、パージガスによってパージされた空間となる。チャンバ空間63INに供給されたパージガスは、隔壁部材61に形成された不図示の排出口から排出されてもよい。尚、気体供給装置5は、不活性ガスが格納されたボンベであってもよい。不活性ガスが窒素ガスである場合には、気体供給装置5は、大気を原料として窒素ガスを発生する窒素ガス発生装置であってもよい。
【0038】
気体供給装置5からのパージガスは、
図3に示すように、鏡筒214の内部空間2141に供給されてもよい。内部空間2141に照射光学系211が収容されているため、気体供給装置5は、照射光学系211にパージガスを供給してもよい。照射光学系211に供給されたパージガスは、照射光学系211を冷却するために用いられてもよい。照射光学系211に供給されたパージガスは、照射光学系211に不要物質が付着するのを防止するために用いられてもよい。不要物質は、例えば、ワークWに対する加工光ELの照射によって発生するヒュームを含んでいてもよい。不要物質は、例えば、材料ノズル212から供給される造形材料Mの少なくとも一部(特に、3次元構造物STの形成に用いられなかった造形材料M)を含んでいてもよい。照射光学系211に供給されたパージガスは、
図3に示すように、鏡筒214の射出口2142を介して、鏡筒214の内部から鏡筒214の外部に向けて流出してもよい。
【0039】
上述したように、材料ノズル212がパージガスと共に造形材料Mを供給する場合には、気体供給装置5は、チャンバ空間63INに加えて材料供給源1からの造形材料Mが供給される混合装置12にパージガスを供給してもよい。具体的には、気体供給装置5は、気体供給装置5と混合装置12とを接続する供給管52を介して混合装置12と接続されていてもよい。その結果、気体供給装置5は、供給管52を介して、混合装置12にパージガスを供給する。この場合、材料供給源1からの造形材料Mは、供給管52を介して気体供給装置5から供給されたパージガスによって、供給管11内を通って材料ノズル212に向けて供給(具体的には、圧送)されてもよい。つまり、気体供給装置5は、供給管52、混合装置12及び供給管11を介して、材料ノズル212に接続されていてもよい。その場合、材料ノズル212は、材料供給口2121から、造形材料Mを圧送するためのパージガスと共に造形材料Mを供給することになる。
【0040】
筐体6は、筐体6の内部空間であるチャンバ空間63INに少なくとも加工ユニット2及びステージユニット3のそれぞれの少なくとも一部を収容する収容装置である。筐体6は、チャンバ空間63INを規定する隔壁部材61を含む。隔壁部材61は、チャンバ空間63INと、筐体6の外部空間64OUTとを隔てる部材である。隔壁部材61は、その内壁面611を介してチャンバ空間63INに面し、その外壁面612を介して外部空間64OUTに面する。この場合、隔壁部材61によって囲まれた空間(より具体的には、隔壁部材61の内壁面611によって囲まれた空間)が、チャンバ空間63INとなる。尚、隔壁部材61には、開閉可能な扉が設けられていてもよい。この扉は、ワークWをステージ31に載置する際に開かれてもよい。扉は、ステージ31からワークW及び/又は3次元構造物STを取り出す際に開かれてもよい。扉は、造形動作及び加工動作の夫々が行われている期間中には閉じられていてもよい。なお、筐体6の外部空間64OUTからチャンバ空間63INを視認するための観察窓(不図示)が、隔壁部材61に形成されていてもよい。
【0041】
制御装置7は、加工システムSYSの動作を制御する。制御装置7は、例えば、演算装置と、記憶装置とを備えていてもよい。演算装置は、例えば、CPU(Central Processing Unit)及びGPU(Graphics Processing Unit)の少なくとも一方を含んでいてもよい。記憶装置は、例えば、メモリを含んでいてもよい。制御装置7は、演算装置がコンピュータプログラムを実行することで、加工システムSYSの動作を制御する装置として機能する。このコンピュータプログラムは、制御装置7が行うべき後述する動作を演算装置に行わせる(つまり、実行させる)ためのコンピュータプログラムである。つまり、このコンピュータプログラムは、加工システムSYSに後述する動作を行わせるように制御装置7を機能させるためのコンピュータプログラムである。演算装置が実行するコンピュータプログラムは、制御装置7が備える記憶装置(つまり、記録媒体)に記録されていてもよいし、制御装置7に内蔵された又は制御装置7に外付け可能な任意の記憶媒体(例えば、ハードディスクや半導体メモリ)に記録されていてもよい。或いは、演算装置は、実行するべきコンピュータプログラムを、ネットワークインタフェースを介して、制御装置7の外部の装置からダウンロードしてもよい。
【0042】
例えば、制御装置7は、照射光学系211による加工光ELの射出態様を制御してもよい。射出態様は、例えば、加工光ELの強度及び加工光ELの射出タイミングの少なくとも一方を含んでいてもよい。加工光ELが複数のパルス光を含む場合には、射出態様は、例えば、パルス光の発光時間、パルス光の発光周期、及び、パルス光の発光時間の長さとパルス光の発光周期との比(いわゆる、デューティ比)の少なくとも一つを含んでいてもよい。更に、制御装置7は、ヘッド駆動系22による加工ヘッド21の移動態様を制御してもよい。制御装置7は、ステージ駆動系32によるステージ31の移動態様を制御してもよい。移動態様は、例えば、移動量、移動速度、移動方向及び移動タイミング(移動時期)の少なくとも一つを含んでいてもよい。更に、制御装置7は、材料ノズル212による造形材料Mの供給態様を制御してもよい。供給態様は、例えば、供給量(特に、単位時間当たりの供給量)及び供給タイミング(供給時期)の少なくとも一方を含んでいてもよい。
【0043】
制御装置7は、加工システムSYSの内部に設けられていなくてもよい。例えば、制御装置7は、加工システムSYS外にサーバ等として設けられていてもよい。この場合、制御装置7と加工システムSYSとは、有線及び/又は無線のネットワーク(或いは、データバス及び/又は通信回線)で接続されていてもよい。有線のネットワークとして、例えばIEEE1394、RS-232x、RS-422、RS-423、RS-485及びUSBの少なくとも一つに代表されるシリアルバス方式のインタフェースを用いるネットワークが用いられてもよい。有線のネットワークとして、パラレルバス方式のインタフェースを用いるネットワークが用いられてもよい。有線のネットワークとして、10BASE-T、100BASE-TX及び1000BASE-Tの少なくとも一つに代表されるイーサネット(登録商標)に準拠したインタフェースを用いるネットワークが用いられてもよい。無線のネットワークとして、電波を用いたネットワークが用いられてもよい。電波を用いたネットワークの一例として、IEEE802.1xに準拠したネットワーク(例えば、無線LAN及びBluetooth(登録商標)の少なくとも一方)があげられる。無線のネットワークとして、赤外線を用いたネットワークが用いられてもよい。無線のネットワークとして、光通信を用いたネットワークが用いられてもよい。この場合、制御装置7と加工システムSYSとはネットワークを介して各種の情報の送受信が可能となるように構成されていてもよい。また、制御装置7は、ネットワークを介して加工システムSYSにコマンドや制御パラメータ等の情報を送信可能であってもよい。加工システムSYSは、制御装置7からのコマンドや制御パラメータ等の情報を、上記ネットワークを介して受信する受信装置を備えていてもよい。加工システムSYSは、制御装置7に対してコマンドや制御パラメータ等の情報を、上記ネットワークを介して送信する送信装置(つまり、制御装置7に対して情報を出力する出力装置)を備えていてもよい。或いは、制御装置7が行う処理のうちの一部を行う第1制御装置が加工システムSYSの内部に設けられている一方で、制御装置7が行う処理のうちの他の一部を行う第2制御装置が加工システムSYSの外部に設けられていてもよい。
【0044】
尚、制御装置7が実行するコンピュータプログラムを記録する記録媒体としては、CD-ROM、CD-R、CD-RWやフレキシブルディスク、MO、DVD-ROM、DVD-RAM、DVD-R、DVD+R、DVD-RW、DVD+RW及びBlu-ray(登録商標)等の光ディスク、磁気テープ等の磁気媒体、光磁気ディスク、USBメモリ等の半導体メモリ、及び、その他プログラムを格納可能な任意の媒体の少なくとも一つが用いられてもよい。記録媒体には、コンピュータプログラムを記録可能な機器(例えば、コンピュータプログラムがソフトウェア及びファームウェア等の少なくとも一方の形態で実行可能な状態に実装された汎用機器又は専用機器)が含まれていてもよい。更に、コンピュータプログラムに含まれる各処理や機能は、制御装置7(つまり、コンピュータ)がコンピュータプログラムを実行することで制御装置7内に実現される論理的な処理ブロックによって実現されてもよいし、制御装置7が備える所定のゲートアレイ(FPGA、ASIC)等のハードウェアによって実現されてもよいし、論理的な処理ブロックとハードウェアの一部の要素を実現する部分的ハードウェアモジュールとが混在する形式で実現してもよい。
【0045】
(2)加工システムSYSの動作
続いて、加工システムSYSの動作について説明する。上述したように、加工システムSYSは、ワークWに対して付加加工を行うことで3次元構造物STを形成するための造形動作を行う。更に、加工システムSYSは、形成動作によって形成された3次元構造物STを加工するための加工動作を行う。このため、以下では、造形動作と、加工動作とについて順に説明する。
【0046】
(2-1)造形動作
初めに、造形動作について説明する。上述したように、加工システムSYSは、レーザ肉盛溶接法により3次元構造物STを形成する。このため、加工システムSYSは、レーザ肉盛溶接法に準拠した既存の造形動作を行うことで、3次元構造物STを形成してもよい。以下、レーザ肉盛溶接法を用いて3次元構造物STを形成する造形動作の一例について簡単に説明する。
【0047】
加工システムSYSは、形成するべき3次元構造物STの3次元モデルデータ(例えば、CAD(Computer Aided Design)データ)等に基づいて、ワークW上に3次元構造物STを形成する。3次元モデルデータとして、加工システムSYS内に設けられた不図示の計測装置及び加工システムSYSとは別に設けられた3次元形状計測機の少なくとも一方で計測された立体物の計測データが用いられてもよい。加工システムSYSは、3次元構造物STを形成するために、例えば、Z軸方向に沿って並ぶ複数の層状の部分構造物(以下、“構造層”と称する)SLを順に形成していく。例えば、加工システムSYSは、3次元構造物STのモデルをZ軸方向に沿って輪切りにすることで得られる複数の層のデータに基づいて複数の構造層SLを1層ずつ順に形成していく。その結果、複数の構造層SLが積層された積層構造体である3次元構造物STが形成される。以下、複数の構造層SLを1層ずつ順に形成していくことで3次元構造物STを形成する動作の流れについて説明する。
【0048】
まず、各構造層SLを形成する動作について
図4(a)から
図4(e)を参照して説明する。加工システムSYSは、制御装置7の制御下で、ワークWの表面又は形成済みの構造層SLの表面に相当する造形面MS上の所望領域に目標照射領域EAが設定されるように、加工ヘッド21及びステージ31の少なくとも一方を移動させる。その後、加工システムSYSは、目標照射領域EAに対して照射光学系211から加工光ELを照射する。この際、Z軸方向において加工光ELが集光される集光面211FPは、造形面MSに一致していてもよい。或いは、Z軸方向において集光面211FPは、造形面MSから外れていてもよい。その結果、
図4(a)に示すように、加工光ELが照射された造形面MS上に溶融池(つまり、加工光ELによって溶融した金属等のプール)MPが形成される。更に、加工システムSYSは、制御装置7の制御下で、材料ノズル212から造形材料Mを供給する。ここで、上述したように造形材料Mが供給される目標供給領域MAが目標照射領域EAと一致しているため、目標供給領域MAは、溶融池MPが形成された領域の少なくとも一部を含む。このため、加工システムSYSは、
図4(b)に示すように、溶融池MPに対して、材料ノズル212から造形材料Mを供給する。その結果、溶融池MPに供給された造形材料Mが溶融する。その後、加工ヘッド21及びステージ31の少なくとも一方の移動に伴って溶融池MPに加工光ELが照射されなくなると、溶融池MPにおいて溶融した造形材料Mは、冷却されて固化(つまり、凝固)する。その結果、
図4(c)に示すように、固化した造形材料Mが造形面MS上に堆積される。つまり、固化した造形材料Mの堆積物による造形物が形成される。
【0049】
加工システムSYSは、このような加工光ELの照射による溶融池MPの形成、溶融池MPへの造形材料Mの供給、供給された造形材料Mの溶融及び溶融した造形材料Mの固化を含む一連の造形処理を、
図4(d)に示すように、造形面MSに対して加工ヘッド21をXY平面に沿って移動させながら繰り返す。この際、加工システムSYSは、造形面MS上において造形物を形成したい領域に加工光ELを照射する一方で、造形面MS上において造形物を形成したくない領域に加工光ELを照射しない。つまり、加工システムSYSは、造形面MS上を所定の移動軌跡に沿って目標照射領域EAを移動させながら、造形物を形成したい領域の分布の態様に応じたタイミングで加工光ELを造形面MSに照射する。その結果、溶融池MPもまた、目標照射領域EAの移動軌跡に応じた移動軌跡に沿って造形面MS上を移動することになる。具体的には、溶融池MPは、造形面MS上において、目標照射領域EAの移動軌跡に沿った領域のうち加工光が照射された部分に順次形成される。その結果、
図4(e)に示すように、造形面MS上に、溶融した後に固化した造形材料Mによる造形物の集合体に相当する構造層SLが形成される。つまり、溶融池MPの移動軌跡に応じたパターンで造形面MS上に形成された造形物の集合体に相当する構造層SL(つまり、平面視において、溶融池MPの移動軌跡に応じた形状を有する構造層SL)が形成される。尚、造形物を形成したくない領域に目標照射領域EAが設定されている場合、加工システムSYSは、加工光ELを目標照射領域EAに照射するとともに、造形材料Mの供給を停止してもよい。また、造形物を形成したくない領域に目標照射領域EAが設定されている場合に、加工システムSYSは、造形材料Mを目標照射領域EAに供給するとともに、溶融池MPができない強度の加工光ELを目標照射領域EAに照射してもよい。
【0050】
加工システムSYSは、このような構造層SLを形成するための動作を、制御装置7の制御下で、3次元モデルデータに基づいて繰り返し行う。具体的には、まず、制御装置7は、3次元モデルデータを積層ピッチでスライス処理してスライスデータを作成する。尚、加工システムSYSの特性に応じてこのスライスデータを一部修正したデータが用いられてもよい。加工システムSYSは、ワークWの表面WSに相当する造形面MS上に1層目の構造層SL#1を形成するための動作を、構造層SL#1に対応する3次元モデルデータ(つまり、構造層SL#1に対応するスライスデータ)に基づいて行う。その結果、造形面MS上には、
図5(a)に示すように、構造層SL#1が形成される。その後、加工システムSYSは、構造層SL#1の表面(つまり、上面)を新たな造形面MSに設定した上で、当該新たな造形面MS上に2層目の構造層SL#2を形成する。構造層SL#2を形成するために、制御装置7は、まず、ステージ31に対して加工ヘッド21がZ軸に沿って移動するように、ヘッド駆動系22及びステージ駆動系32の少なくとも一方を制御する。具体的には、制御装置7は、ヘッド駆動系22及びステージ駆動系32の少なくとも一方を制御して、目標照射領域EA及び目標供給領域MA(更には、必要に応じて集光面211FP)が構造層SL#1の表面(つまり、新たな造形面MS)に設定されるように、+Z側に向かって加工ヘッド21を移動させる及び/又は-Z側に向かってステージ31を移動させる。その後、加工システムSYSは、制御装置7の制御下で、構造層SL#1を形成する動作と同様の動作で、構造層SL#2に対応するスライスデータに基づいて、構造層SL#1上に構造層SL#2を形成する。その結果、
図5(b)に示すように、構造層SL#2が形成される。以降、同様の動作が、ワークW上に形成するべき3次元構造物STを構成する全ての構造層SLが形成されるまで繰り返される。その結果、
図5(c)に示すように、複数の構造層SLが積層された積層構造物によって、3次元構造物STが形成される。尚、
図5(a)から
図5(c)は、筒状の3次元構造物STが形成される例を示している。
【0051】
このように、加工システムSYSは、材料ノズル212により供給された造形材料Mに、照射光学系211からの加工光ELを照射することにより3次元構造物STを形成可能である。つまり、加工システムSYSは、材料ノズル212と照射光学系211とを用いて3次元構造物STを形成するための付加加工を行う。このため、材料ノズル212と照射光学系211とは、3次元構造物STを形成するための付加加工を行う加工装置として機能しているとみなしてもよい。材料ノズル212と照射光学系211とは、3次元構造物STを形成するための造形動作を行う造形装置として機能しているとみなしてもよい。
【0052】
(2-2)加工動作
続いて、上述した造形動作によって形成された3次元構造物STを加工するための加工動作について説明する。
【0053】
加工システムSYSは、3次元構造物STの表面の少なくとも一部に加工光ELを照射することで、3次元構造物STの表面の少なくとも一部を加工する加工動作を行ってもよい。例えば、加工システムSYSは、3次元構造物STの表面の少なくとも一部に加工光ELを照射することで、3次元構造物STの表面の少なくとも一部を除去する加工動作を行ってもよい。この場合、加工動作は、除去加工動作と称されてもよい。例えば、加工システムSYSは、3次元構造物STの表面の少なくとも一部に加工光ELを照射することで、3次元構造物STの表面の少なくとも一部にマークを形成する加工動作を行ってもよい。この場合、加工動作は、マーキング動作と称されてもよい。例えば、加工システムSYSは、3次元構造物STの表面の少なくとも一部に加工光ELを照射することで、3次元構造物STの表面の少なくとも一部を溶融する加工動作を行ってもよい。この場合、加工動作は、溶融動作(或いは、リメルト動作)と称されてもよい。以下では、3次元構造物STの表面の少なくとも一部を溶融する加工動作(つまり、溶融動作)について詳細に説明する。
【0054】
加工システムSYSは、3次元構造物STの表面の少なくとも一部である加工対象面PS(後述する
図6等参照)を滑らかにするために、溶融動作を行ってもよい。この場合、加工動作(つまり、溶融動作)は、平滑化動作と称されてもよい。尚、本実施形態では、「加工対象面PSを滑らかにする平滑化動作」は、「平滑化動作を行う前と比較して、加工対象面PSの表面を滑らかにする、加工対象面PSの平坦度を上げる(つまり、平坦にする)、及び/又は、加工対象面PSの表面粗さを細かくする(つまり、小さくする)動作」を含んでいてもよい。
【0055】
具体的には、上述したように、本実施形態では、粉状の又は粒状の造形材料Mを溶融した後に固化させることで3次元構造物STが形成される。このため、3次元構造物STの表面の少なくとも一部には、溶融しなかった造形材料Mが付着している可能性がある。更には、3次元構造物STの表面の少なくとも一部には、意図しなかった形状で再固化してしまった造形材料Mが付着している可能性がある。この場合、溶融しなかった造形材料M及び意図しなかった形状で固化してしまった造形材料Mの少なくとも一方が付着している面は、加工対象面PSに設定されてもよい。
【0056】
例えば、上述したように、本実施形態では、各構造層SLが形成される期間中において、加工ヘッド21及びステージ31の少なくとも一方が、X軸及びY軸のそれぞれに沿って(つまり、XY平面に沿って)移動する。この場合、加工ヘッド21及びステージ31の少なくとも一方の移動態様によっては、XY平面に沿った構造層SLの表面(ひいては、3次元構造層STの表面)の少なくとも一部に、加工ヘッド21及びステージ31の少なくとも一方の移動パターン(典型的には、移動のピッチ)に応じた規則的な又は不規則な凹凸が現れる可能性がある。また、上述したように、本実施形態では、複数の構造層SLが積層されることで3次元構造物STが形成される。この場合、3次元構造物STの表面(特に、積層方向に沿った又は傾斜した面である、構造層SLの積層方向に交差する方向を向いた面)には、複数の構造層SLの積層のピッチに応じた規則的な又は不規則な凹凸が現れる可能性がある。この場合、規則的な又は不規則な凹凸が現れる面は、加工対象面PSに設定されてもよい。
【0057】
ここで、
図6(a)から
図6(c)を参照しながら、加工対象面PSの少なくとも一部を溶融させる溶融動作(平滑化動作)を行うことで、加工対象面PSが平滑化される技術的理由について説明する。
図6(a)から
図6(c)のそれぞれは、溶融動作(平滑化動作)が行われている過程での加工対象面PSの状態を示す断面図である。尚、
図6(a)から
図6(c)の説明においては、3次元構造物STは、造形時の姿勢とは異なる姿勢で配置されている。
【0058】
溶融動作を行うために、加工システムSYSは、制御装置7の制御下で、
図6(a)に示すように、加工対象面PSに目標照射領域EAを設定する。この際、加工光ELが集光される集光面211FPは、加工対象面PSに一致していてもよい。或いは、集光面211FPは、加工対象面PSから外れていてもよい。その後、加工システムSYSは、目標照射領域EAに対して照射光学系211から加工光ELを照射する。一方で、加工システムSYSは、加工対象面PSに対して材料ノズル212から造形材料Mを供給しなくてもよい。尚、
図6(a)は、加工対象面PSが、規則的な又は不規則な凹凸が現れる面である例を示している。目標照射領域EAに光ELが照射されると、
図6(b)に示すように、加工対象面PS内の固体状の造形材料Mが、加工光ELによって溶融する。凹凸を形成するように固化していた造形材料Mが溶融すると、溶融した造形材料Mの自重及び表面張力の少なくとも一方の作用により、溶融した造形材料Mの表面(つまり、界面)が平面に近づく又は平面になる。つまり、溶融した造形材料Mの表面(つまり、界面)の滑らかさが向上する。その後、加工ヘッド21及びステージ31の少なくとも一方の移動に伴って溶融した造形材料Mに加工光ELが照射されなくなると、溶融した造形材料Mは、冷却されて再度固化(つまり、凝固)する。その結果、
図6(c)に示すように、滑らかになった(或いは、平坦度が向上した、及び/又は、表面粗さが細かくなった)表面を有するように再固化した造形材料Mが、加工対象面PSを構成することになる。このように、平滑化動作によって加工対象面PS(つまり、3次元構造物STの表面)が平滑化される。
【0059】
制御装置7は、このような加工光ELの照射による造形材料Mの溶融及び溶融した造形材料Mの固化を含む一連の平滑化処理を、加工ヘッド21及びステージ31の少なくとも一方を移動させながら繰り返し行う。つまり、制御装置7は、一連の平滑化処理を、加工ヘッド21とステージ31が支持する3次元構造物STとの相対的な位置関係を変更しながら繰り返し行う。具体的には、加工システムSYSは、3次元構造物STの形状及び位置(つまり、ワークW上での位置)の少なくとも一方に関する情報に基づいて、3次元構造物STの表面のうちの所望の面部分を加工対象面PSに設定し、設定した加工対象面PSに加工光ELが照射されるように、加工ヘッド21及びステージ31の少なくとも一方を移動してもよい。尚、加工システムSYSは、造形動作を行なった後に平滑化動作を行うがゆえに、平滑化動作の対象である3次元構造物STの形状及び位置の少なくとも一方に関する情報は、通常、加工システムSYSにとって既知の情報である。但し、加工システムSYSは、造形動作によって3次元構造物STが計測された後に、計測装置を用いて3次元構造物STの位置及び形状の少なくとも一方を計測し、計測装置の計測結果に基づいて、加工対象面PSに加工光ELが照射されるように、加工ヘッド21及びステージ31の少なくとも一方を移動してもよい。
【0060】
3次元構造物STの表面は、曲面を含んでいる場合がある。この場合、加工ヘッド21と3次元構造物STの相対的な位置関係が変わると、加工光ELが集光される集光面211FPと加工対象面PSとの相対的な位置関係(特に、加工光ELの進行方向に沿った位置関係であり、
図6(a)から
図6(c)に示す例では、Z軸方向に沿った位置関係)が変わる可能性がある。例えば、
図7(a)は、+Z側に向かって突き出る曲面である加工対象面PSの第1部分p1に集光面211FPが一致する状態で加工対象面PSの第1部分p1に照射される加工光ELを示している。この場合、加工対象面PSの第1部分p1には、当該第1部分p1に集光された加工光ELが照射される。一方で、7(a)に示す状態において、加工ヘッド21がXY平面に沿った方向(例えば、Y軸方向)に沿って移動すると、
図7(b)に示すように、加工光ELは、Z軸方向において集光面211FPから外れた加工対象面PSの第2部分p2に照射される。この場合、第2部分p2には、当該第2部分p2に集光されていない加工光ELが照射される。つまり、第2部分p2には、デフォーカス状態にある加工光ELが照射される。このため、加工光ELの進行方向における集光面211FPと加工対象面PSとの相対的な位置関係が変わると、加工対象面PSにおける加工光ELのフルエンスが変わる可能性がある。加工対象面PSにおける加工光ELのフルエンスが変わると、加工対象面PSの溶融量が変わる可能性がある。その結果、加工対象面PSが適切に平滑化されない可能性がある。そこで、加工システムSYSは、制御装置7の制御下で、加工対象面PSが適切に平滑化されるように、集光面211FPと加工対象面PSとの相対的な位置関係を制御してもよい。例えば、集光面211FPの位置(つまり、加工光ELのフォーカス位置)を制御可能な集光制御光学部材を照射光学系211が備えている場合には、加工システムSYSは、制御装置7の制御下で、集光面211FPと加工対象面PSとの相対的な位置関係が維持されるように、集光制御光学部材を制御してもよい。例えば、加工システムSYSは、制御装置7の制御下で、集光面211FPと加工対象面PSとの相対的な位置関係が維持されるように、加工ヘッド21及び3次元構造物STを支持するステージ31の少なくとも一方を移動させてもよい。尚、上述したように、3次元構造物STの形状及び位置の少なくとも一方に関する情報が加工システムSYSにとって既知の情報であるため、加工システムSYSは、当該情報に基づいて、集光面211FPと加工対象面PSとの相対的な位置関係が維持されるように、集光面211FPと加工対象面PSとの相対的な位置関係を制御してもよい。
【0061】
上述したように、平滑化動作が行われる場合には、材料ノズル212から造形材料Mが供給されない。このため、加工光ELを射出する照射光学系211と、加工光ELが照射される加工対象面PSとの間には、加工光ELの少なくとも一部を遮光する可能性がある造形材料Mは存在しない。この場合、加工光ELが照射された加工対象面PSによって加工光ELが反射された場合には、加工光ELの反射光は、一定の強度を維持したまま照射光学系211に戻ってくる可能性がある。その結果、照射光学系211に戻ってきた加工光ELの反射光によって、照射光学系211が損傷してしまう可能性がある。特に、加工光ELが加工対象面PSに垂直入射する場合に、加工光ELの反射光は、一定の強度を維持したまま照射光学系211に戻ってくる可能性が高くなる。そこで、加工システムSYSは、制御装置7の制御下で、加工光ELが加工対象面PSに対して斜入射するように、加工ヘッド21と3次元構造物STとの相対的な位置関係を変更してもよい。具体的には、加工システムSYSは、制御装置7の制御下で、加工光ELが加工対象面PSに対して斜入射するように、加工ヘッド21及び3次元構造物STを支持するステージ31の少なくとも一方を移動、典型的には回転移動させてもよい。
【0062】
加工光ELが加工対象面PSに対して斜入射するように加工ヘッド21及びステージ31の少なくとも一方を移動させる場合には、制御装置7は、戻り光検出器213による加工光ELの検出結果に基づいて、加工光ELが加工対象面PSに対して斜入射しているか否かを判定してもよい。具体的には、加工光ELが加工対象面PSに対して斜入射している場合には、加工光ELが加工対象面PSに対して垂直入射している場合と比較して、戻り光の強度が低くなると想定される。このため、制御装置7は、戻り光の強度が所定の第1強度閾値よりも低い場合には、加工光ELが加工対象面PSに対して斜入射していると判定してもよい。一方で、制御装置7は、戻り光の強度が所定の第1強度閾値(或いは、第1強度よりも高い所定の第2強度閾値)よりも高い場合には、加工光ELが加工対象面PSに対して垂直入射していると判定してもよい。加工光ELが加工対象面PSに対して垂直入射していると判定された場合には、制御装置7は、加工光ELが加工対象面PSに対して斜入射するように加工ヘッド21及びステージ31の少なくとも一方を移動させてもよい。
【0063】
加工システムSYSは、平滑化動作を行う場合における加工対象面PSでの加工光ELのエネルギ量(具体的には、単位時間あたりに加工光ELが加工対象面PSに与えるエネルギ量)、造形動作を行う場合における加工対象面PSでの加工光ELのエネルギ量よりも小さくなるように、加工光ELのフルエンスを制御してもよい。加工光ELのエネルギ量が小さくなるほど、造形材料Mの溶融量(例えば、単位時間当たりの溶融量)が少なくなる。このため、加工システムSYSは、加工光ELのエネルギ量を制御することで、必要以上の分量の造形材料Mを溶融させることなく、平滑化動作を行うことができる。つまり、加工システムSYSは、加工対象面PSを平滑化するために必要な分量の造形材料Mを溶融させることで、平滑化動作を完了することができる。その結果、必要以上の分量の造形材料Mが溶融してしまう場合と比較して、平滑化動作が行われた加工対象面PSがより滑らかになる可能性や、3次元構造物STの寸法精度が悪化しなくなる可能性がある。
【0064】
加工システムSYSは、光源4及び/又は照射光学系211に設けられた光量調整部材(不図示)を制御することで、加工光ELのエネルギ量を制御してもよい。加工システムSYSは、集光面211FPと加工対象面PSとの相対的な位置関係を制御することで、加工光ELのエネルギ量を制御してもよい。なぜならば、集光面211FPと加工対象面PSとが離れるほど、加工光ELのエネルギ量が小さくなるからである。加工システムSYSは、加工対象面PSを加工光ELが走査する速度を制御することで、加工光ELのエネルギ量を制御してもよい。なぜならば、加工対象面PSを加工光ELが走査する速度が速くなるほど、加工光ELのエネルギ量が小さくなるからである。
【0065】
加工システムSYSは、加工対象面PSの同じ部分に複数回加工光ELを照射してもよい。具体的には、加工システムSYSは、加工対象面PSの一の部分に加工光ELを照射することで当該一の部分の造形材料Mを溶融させ、当該一の部分で溶融した造形材料Mが固化した後に当該一の部分に再度加工光ELを照射してもよい。つまり、加工システムSYSは、加工対象面PSを徐々に平滑化してもよい。その結果、加工対象面PSが一度に平滑化される場合と比較して、平滑化動作が行われた加工対象面PSがより滑らかになる可能性がある。
【0066】
尚、加工システムSYSは、3次元構造物STの表面の少なくとも一部を平滑化する目的とは異なる目的で、溶融動作を行ってもよい。例えば、加工システムSYSは、3次元構造物STを他の物体と接続する(典型的には、一体化させる)ために、溶融動作を行ってもよい。溶融物を用いて二つの物体を接続する動作の一例として、溶接動作があげられる。このため、加工システムSYSは、3次元構造物STと他の物体とを溶接するために、溶融動作を行ってもよい。この場合、溶融動作は、溶接動作と称されてもよい。具体的には、上述したように、3次元構造物ST(或いは、他の物体)に加工光ELが照射されると、3次元構造物STを構成していた造形材料M(或いは、他の物体を構成していた材料)が溶融する。加工システムSYSは、当該溶融した造形材料M(或いは、溶融した任意の材料)を溶加材として用いることで、3次元構造物STを他の物体と接続してもよい。
【0067】
尚、加工システムSYSが溶融動作を行うときには、加工光ELの照射位置を取り囲む雰囲気を不活性ガスの雰囲気としてもよい。この場合、溶融箇所の酸化を低減させることができる。
【0068】
(3)ヘッド装置23の構造
続いて、加工ヘッド21(特に、鏡筒214)に対して脱着可能なヘッド装置23について説明する。本実施形態では、加工ヘッド21には、第1のヘッド装置23#1及び第2のヘッド装置23#2のうちの少なくとも一つを取り付けることが可能である。このため、以下では、第1のヘッド装置23#1及び第2のヘッド装置23#2の構造について順に説明する。
【0069】
(3-1)第1のヘッド装置23#1の構造
初めに、
図8を参照しながら、第1のヘッド装置23#1について説明する。
図8は、第1のヘッド装置23#1の構造を示す断面図である。
【0070】
図8に示すように、第1のヘッド装置23#1は、筒状部材2311#1を備えている。筒状部材2311#1は、内部に内部空間2312#1が形成された筒状の部材である。
図8に示す例では、筒状部材2311#1は、長手方向(
図8に示す例では、Z軸方向)に沿って延びる筒状の部材である。筒状部材2311#1の短手方向(つまり、長手方向に交差する方向であって、
図8に示す例では、例えば、XY平面に沿った方向)に沿った軸を含む筒状部材2311#1の断面の形状は、円形であるが、その他の形状(例えば、楕円形又は多角形)であってもよい。内部空間2312#1は、筒状部材2311#1によって取り囲まれた空間である。このため、
図8に示す例では、内部空間2312#1は、筒状部材2311#1の長手方向(
図8に示す例では、Z軸方向)に沿って延びる空間となる。
【0071】
筒状部材2311#1は、鏡筒214に対して脱着可能である。このため、筒状部材2311#1には、上述した鏡筒214の取付部2143に取り付け可能な取付部2313#1が形成されている。
図8に示す例では、筒状部材2311#1の長手方向に沿った一方の端部に、取付部2313#1が形成されている。取付部2313#1は、例えば、鏡筒214の取付部2143が嵌め合わせられる部材を含んでいてもよい。一例として、
図8に示すように、取付部2313#1は、周囲から突き出た(
図8に示す例では、上方に向かって突き出た)突出部材を含んでいてもよい。或いは、取付部2313#1は、筒状部材2311#1を鏡筒214に取り付けるための力を鏡筒214に付与可能な部材を含んでいてもよい。例えば、取付部2313#1は、負圧を利用して鏡筒214を吸引可能な真空チャック及び静電力を利用して鏡筒214を吸引可能な静電チャックの少なくとも一方を含んでいてもよい。但し、第1のヘッド装置23#1(特に、筒状部材2311#1)を取付部2143に取り付けるための力を第1のヘッド装置23#1に付与可能な取付部2143が鏡筒214に形成されている場合には、筒状部材2311#1には、取付部2313#1が形成されていなくてもよい。逆に、筒状部材2311#1を鏡筒214に取り付けるための力を鏡筒214に付与可能な取付部2313#1が筒状部材2311#1に形成されている場合には、鏡筒214には、取付部2143が形成されていなくてもよい。以下では、説明の便宜上、鏡筒214の少なくとも一部が嵌め合わせられる取付部2313#1が筒状部材2311#1に形成されている例について説明を進める。
【0072】
筒状部材2311#1の長手方向に沿った一方の端部には、開口2314#1が形成されている。つまり、筒状部材2311#1の取付部2313#1には、開口2314#1が形成されている。開口2314#1は、筒状部材2311#1の長手方向に交差する。筒状部材2311#1の長手方向に沿った他方の端部(つまり、一方の端部とは反対側の端部)には、開口2315#1が形成されている。開口2315#1は、筒状部材2311#1の長手方向に交差する。開口2314#1及び2315#1のそれぞれは、内部空間2312#1と筒状部材2311#1の外部の空間とを接続する。
【0073】
第1のヘッド装置23#1は、鏡筒214の射出口2142と第1のヘッド装置23#1の開口2314#1とが接続されるように、取付部2143及び2313#1を介して鏡筒214に取り付けられる。つまり、第1のヘッド装置23#1は、射出口2142及び開口2314#1を介して鏡筒214の内部空間2141と第1のヘッド装置23#1の内部空間2312#1とが接続されるように、取付部2143及び2313#1を介して鏡筒214に取り付けられる。尚、鏡筒214に取り付けられた第1のヘッド装置23#1が
図9に示されている。
【0074】
上述したように、鏡筒214の射出口2142からは、加工光ELが射出される。このため、第1のヘッド装置23#1における加工光の光路を示す断面図である
図9に示すように、射出口2142から射出された加工光ELは、開口2314#1を介して、第1のヘッド装置23#1の内部空間2312#1に入射する。このため、開口2314#1は、入射口と称されてもよい。内部空間2312#1に入射した加工光ELは、内部空間2312#1を通過して開口2315#1に到達する。このため、開口2314#1及び2315#1の夫々は、鏡筒214から射出された加工光EL(つまり、照射光学系211から射出された加工光EL)が開口2314#1及び2315#1の双方を通過可能となるように、適切な位置に形成されていてもよい。例えば、開口2314#1及び2315#1のそれぞれは、照射光学系211の光軸AX上に形成されていてもよい。開口2315#1に到達した加工光ELは、開口2315#1を介して内部空間2312#1から第1のヘッド装置23#1の外部へと射出される。このため、開口2315#1は、射出口と称されてもよい。
【0075】
上述したように、鏡筒214の射出口2142からは、加工光ELに加えて又は代えて、気体供給装置5から供給されるパージガスが流出する。このため、第1のヘッド装置23#1におけるパージガスの流路を示す断面図である
図9に示すように、射出口2142から流出したパージガスは、開口2314#1を介して、第1のヘッド装置23#1の内部空間2312#1に流入する。このため、開口2314#1は、流入口と称されてもよい。この場合、気体供給装置5は、第1のヘッド装置23#1の内部空間2312#1にパージガスを供給しているとみなしてもよい。内部空間2312#1に流入したパージガスは、内部空間2312#1を通過して開口2315#1に到達する。開口2315#1に到達したパージガスは、開口2315#1を介して内部空間2312#1から第1ヘッド装置23#1の外部へと流出する。このため、開口2315#1は、流出口と称されてもよい。
【0076】
第1のヘッド装置23#1は、例えば、加工システムSYSが3次元構造物STを形成するための造形動作を行っている期間の少なくとも一部において、鏡筒214に取り付けられてもよい。この場合、加工システムSYSは、照射光学系211から射出された加工光ELを、第1のヘッド装置23#1を介してワークWに照射可能である。具体的には、
図9に示すように、加工システムSYSは、照射光学系211から射出された加工光ELを、第1のヘッド装置23#1の開口2315#1から、材料ノズル212がワークWに供給する造形材料M(或いは、溶融池MP)に向けて射出する。その結果、加工システムSYSは、第1のヘッド装置23#1が鏡筒214に取り付けられている場合であっても、3次元構造物STを適切に形成することができる。
【0077】
第1のヘッド装置23#1が鏡筒214に取り付けられている場合には、第1のヘッド装置23#1が鏡筒214に取り付けられていない場合と比較して、上述した不要物質(例えば、ヒューム及び不要な造形材料Mの少なくとも一方)が照射光学系211に付着する可能性がより一層低くなる。なぜならば、第1のヘッド装置23#1の筒状部材2311#1が不要物質を遮蔽するカバー部材として機能可能であるからである。更には、第1のヘッド装置23#1の開口2315#1からパージガスが流出しているため、開口2315#1を介して不要物質が第1のヘッド装置23#1の内部空間2312#1に侵入する可能性も低い。この意味においても、第1のヘッド装置23#1の内部空間2312#1を介して不要物質が照射光学系211に到達する可能性が低くなる。
【0078】
加工システムSYSが造形動作を行っている期間の少なくとも一部において第1のヘッド装置23#1が鏡筒214に取り付けられる場合には、
図9に示すように、第1のヘッド装置23#1は、第1のヘッド装置23#1の開口2315#1が材料ノズル212の材料供給口2121の近傍に配置されるように、鏡筒214に取り付けられてもよい。言い換えれば、第1のヘッド装置23#1は、第1のヘッド装置23#1の開口2315#1が材料ノズル212の材料供給口2121の近傍に配置される状態を実現可能な形状及びサイズを有していてもよい。尚、「開口2315#1が材料供給口2121の近傍に配置される」状態は、「開口2315#1が材料供給口2121から所定距離以下の範囲に位置する」状態を意味していてもよい。この場合、開口2315#1から流出したパージガスの少なくとも一部は、材料供給口2121の周辺でパージガスの流れを形成する。典型的には、開口2315#1から流出したパージガスの少なくとも一部は、材料供給口2121に吹き付けられる。その結果、開口2315#1から流出したパージガスが材料供給口2121の周辺でパージガスの流れを形成しない場合と比較して、ヒューム等の不要物質が材料供給口2121(更には、材料ノズル212)に付着する可能性が低くなる。そして、開口2315#1から流出したパージガスの少なくとも一部は、目標照射領域EAに吹き付けられる。その結果、目標照射領域EAの周囲の雰囲気の酸素濃度が低減する可能性が高くなる。
【0079】
尚、第1のヘッド装置23#1は、加工システムSYSが3次元構造物STを加工するための加工動作を行っている期間の少なくとも一部において、鏡筒214に取り付けられてもよい。つまり、加工システムSYSは、照射光学系211から射出された加工光ELを、第1のヘッド装置23#1を介して3次元構造物STの表面(特に、加工対象面PS)に照射してもよい。その結果、加工システムSYSは、第1のヘッド装置23#1が鏡筒214に取り付けられている場合であっても、3次元構造物STを適切に加工することができる。特に、第1のヘッド装置23#1が鏡筒214に取り付けられている場合には、加工システムSYSは、照射光学系211の光軸AXに沿って加工光ELを射出する。このため、加工システムSYSは、光軸AXに交差する加工対象面PSを加工することができる。
【0080】
(3-2)第2のヘッド装置23#2の構造
続いて、
図10を参照しながら、第2のヘッド装置23#2について説明する。
図10は、第2のヘッド装置23#2の構造を示す断面図である。
【0081】
図10に示すように、第2のヘッド装置23#2は、筒状部材2311#2を備えている。筒状部材2311#2は、内部に内部空間2312#2が形成された筒状の部材である。
図10に示す例では、筒状部材2311#2は、長手方向(
図10に示す例では、Z軸方向)に沿って延びる筒状の部材である。筒状部材2311#2の短手方向(つまり、長手方向に交差する方向であって、
図10に示す例では、例えば、XY平面に沿った方向)に沿った軸を含む筒状部材2311#2の断面の形状は、円形であるが、その他の形状(例えば、楕円形又は多角形)であってもよい。内部空間2312#2は、筒状部材2311#2によって取り囲まれた空間である。このため、
図10に示す例では、内部空間2312#2は、筒状部材2311#2の長手方向(
図10に示す例では、Z軸方向)に沿って延びる空間となる。
【0082】
筒状部材2311#2は、鏡筒214に対して脱着可能である。このため、筒状部材2311#2には、上述した鏡筒214の取付部2143に取り付け可能な取付部2313#2が形成されている。
図10に示す例では、筒状部材2311#2の長手方向に沿った一方の端部に、取付部2313#2が形成されている。尚、第2のヘッド装置23#2の取付部2313#2は、上述した第1のヘッド装置23#1の取付部2313#1と同一の特徴を有していてもよい。このため、取付部2313#2の説明については省略する。
【0083】
筒状部材2311#2の長手方向に沿った一方の端部には、開口2314#2が形成されている。つまり、筒状部材2311#2の取付部2313#2には、開口2314#2が形成されている。開口2314#2は、筒状部材2311#2の長手方向に交差する。筒状部材2311#2の長手方向に沿った他方の端部(つまり、一方の端部とは反対側の端部)には、開口2315#2が形成されている。開口2315#2は、筒状部材231#2の長手方向に交差する。開口2314#2及び2315#2のそれぞれは、内部空間2312#2と筒状部材2311#2の外部の空間とを接続する。
【0084】
筒状部材2311#2は、鏡筒214の射出口2142と筒状部材2311#2の開口2314#2とが接続されるように、取付部2143及び2313#2を介して鏡筒214に取り付けられる。つまり、筒状部材2311#2は、射出口2142及び開口2314#2を介して鏡筒214の内部空間2141と筒状部材2311#2の内部空間2312#2とが接続されるように、取付部2143及び2313#2を介して鏡筒214に取り付けられる。尚、鏡筒214に取り付けられた筒状部材2311#2が
図11及び
図12に示されている。
【0085】
尚、上述した第1のヘッド装置23#1の筒状部材2311#1が、第2のヘッド装置23#2の筒状部材2311#2として用いられてもよい。
【0086】
第2のヘッド装置23#2は更に、筒状部材2321#2を備えている。筒状部材2321#2は、筒状部材2311#2とは別個の部材である。しかしながら、筒状部材2321#2は、筒状部材2311#2と一体化されていてもよい。筒状部材2321#2は、内部に内部空間2322#2が形成された筒状の部材である。
図10に示す例では、筒状部材2321#2は、筒状部材2311#2と同様に、長手方向(
図10に示す例では、Z軸方向)に沿って延びる筒状の部材である。筒状部材2321#2の短手方向(つまり、長手方向に交差する方向であって、
図10に示す例では、例えば、XY平面に沿った方向)に沿った軸を含む筒状部材2321#2の断面の形状は、円形であるが、その他の形状(例えば、楕円形又は多角形)であってもよい。内部空間2322#2は、筒状部材2321#2によって取り囲まれた空間である。このため、
図10に示す例では、内部空間2322#2は、筒状部材2321#2の長手方向(
図10に示す例では、Z軸方向)に沿って延びる空間となる。
【0087】
筒状部材2321#2の長手方向に沿った一方の端部には、開口2323#2が形成されている。開口2323#2は、筒状部材2321#2の長手方向に交差する。筒状部材2321#2は、筒状部材2321#2の開口2323#2と筒状部材2311#2の開口2315#2とを介して、筒状部材2321#2の内部空間2322#2と筒状部材2311#2の内部空間2312#2とが接続されるように、筒状部材2311#2に取り付けられる。具体的には、筒状部材2311#2及び2321#2は、筒状の部材である。この場合、筒状部材2311#2及び2321#2の一方が、筒状部材2311#2及び2321#2の他方に挿入されるように、筒状部材2321#2が筒状部材2311#2に取り付けられていてもよい。
図10に示す例では、筒状部材2311#2の他方の端部(つまり、-Z側の端部)が、筒状部材2321#2の開口2323#2を介して筒状部材2321#2の内部空間2322#2に挿入されるように、筒状部材2321#2が筒状部材2311#2に取り付けられている。このため、
図10に示す例では、筒状部材2321#2の開口2323#2のサイズは、筒状部材2311#2の開口2315#2のサイズよりも大きくなる。筒状部材2311#2が筒状部材2321#2の内部空間2322#2に挿入される場合、筒状部材2311#2及び2321#2は、筒状部材2311#2及び2321#2の長手方向(つまり、Z軸方向であり、照射光学系211の光軸AXに沿った方向)に沿って並ぶ。
【0088】
筒状部材2321#2は、筒状部材2311#2に対して移動可能となるように筒状部材2311#2に取り付けられる。より具体的には、筒状部材2321#2は、筒状部材2321#2の長手方向に沿った軸(つまり、Z軸であり、照射光学系211の光軸AXに沿った軸)廻りに回転可能となるように、(つまり、回転移動可能となるように)筒状部材2311#2に取り付けられる。例えば、筒状部材2321#2は、筒状部材2311#2に対して筒状部材2321#2を移動させることが可能な駆動系233#2を介して、筒状部材2311#2に取り付けられていてもよい。駆動系233#2は、筒状部材2321#2の長手方向に沿った軸廻りに筒状部材2321#2を回転させることが可能な任意の駆動系である。駆動系233#2は、例えば、中空モータを含んでいてもよい。
【0089】
上述したように、鏡筒214の射出口2142からは、加工光ELが射出される。このため、第2のヘッド装置23#2における加工光ELの光路を示す
図11に示すように、射出口2142から射出された加工光ELは、開口2314#2を介して、筒状部材2311#2の内部空間2312#2に入射する。このため、開口2314#2は、入射口と称されてもよい。内部空間2312#2に入射した加工光ELは、内部空間2312#2を通過して開口2315#2に到達する。このため、開口2314#2及び2315#2のそれぞれは、鏡筒214から射出された加工光EL(つまり、照射光学系211から射出された加工光EL)が開口2314#2及び2315#2の双方を通過可能となるように、適切な位置に形成されていてもよい。例えば、開口2314#2及び2315#2のそれぞれは、照射光学系211の光軸AX上に形成されていてもよい。開口2315#2に到達した加工光ELは、開口2315#2及び開口2315#2に接続されている開口2323#2を介して、筒状部材2321#2の内部空間2322#2に入射する。
【0090】
再び
図10において、第2のヘッド装置23#2は、照射光学系234#2を更に備える。照射光学系234#2は、内部空間2312#2及び2322#2の少なくとも一方における加工光ELの光路上に配置される。照射光学系234#2が内部空間2312#2に配置されている場合、筒状部材2311#2は、内部空間2312#2に配置されている照射光学系234#2を保持してもよい。照射光学系234#2が内部空間2322#2に配置されている場合、筒状部材2321#2は、内部空間2322#2に配置されている照射光学系234#2を保持してもよい。筒状部材2311#2及び2321#2の少なくとも一方は、照射光学系234#2を収容する(つまり、照射光学系234#2を含む)収容部材として機能してもよい。また、第2のヘッド装置23#2は、照射光学系234#2を備えているがゆえに、光学装置と称されてもよい。尚、以下の説明では、照射光学系234#2が内部空間2322#2に配置される例について説明する。
【0091】
図11に示すように、照射光学系234#2には、照射光学系211から射出された加工光ELが入射する。照射光学系234#2は、照射光学系211から射出された加工光ELを、照射光学系211が加工光ELを集光する集光面211FPとは異なる位置に設定される集光面234FPに集光する。つまり、照射光学系234#2は、照射光学系211が加工光ELを集光する位置とは異なる位置に加工光ELを集光する。
【0092】
集光面211FPとは異なる集光面234FPに加工光ELを集光するために、照射光学系234#2は、集光光学系2341#2を備える。集光光学系2341#2は、集光光学系2341#2に入射する加工光ELを、集光面234FPに集光する。集光光学系2341#2は、照射光学系211が集光面211FPに形成した像を、集光面234FPに形成する。このため、集光光学系2341#2は、結像光学系と称されてもよい。この場合、集光面234FPは、集光面211FPと光学的に共役になる。つまり、集光光学系2341#2は、集光面211FPと光学的に共役な集光面234FPに加工光ELを集光する。尚、集光光学系2341#2の光軸は、照射光学系211の光軸AXと一致しているが、異なっていてもよい。
【0093】
集光面234FPは、集光面211FPから、光軸AXに交差する交差方向(
図11に示す例では、XY平面に沿った方向)に沿って離れている。つまり、照射光学系234#2は、照射光学系211から射出された加工光ELを、集光面211FPから光軸AXに交差する交差方向に沿って離れた位置に設定される集光面234FPに集光する。集光面211FPが光軸AXに交差する光学面であるため、集光面234FPは、光軸AXから、光軸AXに交差する交差方向(
図11に示す例では、XY平面に沿った方向)に沿って離れている。つまり、照射光学系234#2は、照射光学系211から射出された加工光ELを、光軸AXから光軸AXに交差する交差方向に沿って離れた位置に設定される集光面234FPに集光する。集光面211FPから光軸AXに交差する交差方向に沿って離れた集光面234FPに加工光ELを集光するために、照射光学系234#4は、偏向光学系2342#2を更に備える。偏向光学系2342#2は、集光光学系2341#2から射出される加工光ELを、光軸AXに交差する交差方向に向けて偏向する。つまり、偏向光学系2342#2は、加工光ELの進行方向が光軸AXに沿った方向から光軸AXに交差する交差方向へと変わるように、加工光ELを偏向する。例えば、偏向光学系2342#2は、集光光学系2341#2から射出される加工光ELを、光軸AXに交差する交差方向に向けて反射することで、加工光ELを偏向してもよい。
【0094】
偏向光学系2342#2を収容する筒状部材2321#2には、偏向光学系2342#2が偏向した加工光ELが通過可能な開口2324#2が形成されている。このため、偏向光学系2342#2が偏向した加工光ELは、開口2324#2を介して、内部空間2322#2から筒状部材2321#2の外部(つまり、第2のヘッド装置23#2の外部)へと射出される。このため、開口2324#2は、射出口と称されてもよい。開口2324#2から射出された加工光ELは、集光面234FPに集光される。このため、集光面234FPは、第2のヘッド装置23#2の外部に設定される。
【0095】
但し、集光面234FPは、集光面211FPから、照射光学系211の光軸AXに交差する交差方向に沿って離れていなくてもよい。集光面234FPと集光面211FPとは、光軸AXに沿って並んでいてもよい。この場合、照射光学系234#2は、偏向光学系2342#2を備えていなくてもよい。
【0096】
上述したように筒状部材2321#1は、駆動系233#2によって光軸AX廻りに回転可能である。このため、筒状部材2321#2の回転に伴い、筒状部材2321#2が保持する照射光学系234#2もまた、光軸AX廻りに回転する。照射光学系234#2が光軸AX廻りに回転すると、偏向光学系2342#2が光軸AX廻りに回転する。その結果、偏向光学系2342#2による加工光ELの偏向方向が、光軸AX廻りに変更される。つまり、偏向光学系2342#2からの加工光ELの射出方向(つまり、偏向光学系2342#2から射出された加工光ELの進行方向)が、光軸AX廻りに変更される。照射光学系234#2が光軸AX廻りに回転すると、加工光ELを射出する開口2324#2(射出口)も光軸AX廻りに回転する。その結果、開口2324#2からの加工光ELの射出方向も光軸AX廻りに変更される。
【0097】
上述したように、鏡筒214の射出口2142からは、加工光ELに加えて又は代えて、気体供給装置5から供給されるパージガスが流出する。このため、第2のヘッド装置23#2におけるパージガスの流路を示す
図12に示すように、射出口2142から流出したパージガスは、開口2314#2を介して、筒状部材2311#2の内部空間2312#2に流入する。このため、開口2314#2は、流入口と称されてもよい。内部空間2312#2に流入した加工光ELは、内部空間2312#2を通過して開口2315#2に到達する。開口2315#2に到達したパージガスは、開口2315#2及び2323#2を介して、筒状部材2321#2の内部空間2322#2に流入する。この場合、気体供給装置5は、第2のヘッド装置23#2の内部空間2312#2及び2322#2にパージガスを供給しているとみなしてもよい。内部空間2322#2に流入したパージガスは、内部空間2322#2を通過して開口2324#2に到達する。開口2324#2に到達したパージガスは、開口2324#2を介して内部空間2322#2から第2のヘッド装置23#2の外部へと流出する。このため、開口2324#2は、流出口と称されてもよい。
【0098】
内部空間2322#2には、照射光学系234#2が配置されている。この場合、気体供給装置5は、照射光学系234#2にパージガスを供給しているとみなしてもよい。つまり、気体供給装置5は、内部空間2322#2にパージガスを供給することで、照射光学系234#2にパージガスを供給しているとみなしてもよい。照射光学系234#2に供給されたパージガスは、照射光学系234#2を冷却するために用いられてもよい。照射光学系234#2に供給されたパージガスは、照射光学系234#2に不要物質が付着するのを防止するために用いられてもよい。
【0099】
但し、上述したように筒状部材2321#2が照射光学系234#2を保持している場合には、筒状部材2321#2は、照射光学系234#2を構成する光学部材と筒状部材2321#2とが密着するように照射光学系234#2を保持する可能性がある。この場合には、筒状部材2321#2の内部空間2322#2に流入したパージガスは、内部空間2322#2において局所的に滞留してしまう可能性がある。その結果、照射光学系234#2が適切に冷却されない可能性がある。具体的には、照射光学系234#2が複数の光学部材を備えている場合には、内部空間2322#2に流入したパージガスは、複数の光学部材のうち開口2323#2に最も近い一の光学部材に供給される。一方で、一の光学部材が筒状部材2321#2に密着している場合には、一の光学部材に供給されたパージガスの流れは、一の光学部材によって遮られる。その結果、複数の光学部材のうち一の光学部材以外の他の光学部材には、パージガスが供給されなくなる。
【0100】
そこで、筒状部材2321#2には、照射光学系234#2が備える複数の光学部材のそれぞれにパージガスを供給するための供給経路が形成されていてもよい。例えば、パージガスの供給経路が形成された筒状部材2321#2の一例を示す透過斜視図である
図13及びパージガスの供給経路が形成された筒状部材2321#2の一例を示す断面図である
図14に示すように、筒状部材2321#2の内壁面(つまり、内部空間2322#2に面する面)には、パージガスを供給するための供給経路として機能可能な溝2325#2が形成されていてもよい。溝2325#2は、照射光学系234#2が備える複数の光学部材2343#2が並ぶ方向(
図13及び
図14に示す例では、Z軸方向)に沿って延びる。この場合、パージガスは、溝2325#2を介して照射光学系234#2が備える複数の光学部材2343#2に順に供給される。尚、光学部材2343#2は、集光光学系2341#2を構成する光学部材を含んでいてもよいし、偏向光学系2342#2を構成する光学部材を含んでいてもよい。
【0101】
溝2325#2には、溝2325#2を流れるパージガスを遮る少なくとも一つの障壁部材2326#2が形成されていてもよい。障壁部材2326#2は、溝2325#2のうち隣り合う二つの光学部材2343#2の間に位置する部分に形成されていてもよい。障壁部材2326#2が形成される場合には、溝2325#2を流れるパージガスは、障壁部材2326#2によって溝2325#2から離れる方向に向かって流出する。その結果、パージガスが溝2325#2を流れ続ける(つまり、パージガスが溝2325#2から離れる方向に向かって流出しない)場合と比較して、各光学部材2343#2のうちのパージガスに触れる部分が多くなる。その結果、各光学部材2343#2がより適切に冷却される。
【0102】
第2のヘッド装置23#2は、例えば、加工システムSYSが3次元構造物STを加工するための加工動作を行っている期間の少なくとも一部において、鏡筒214に取り付けられてもよい。この場合、加工システムSYSは、照射光学系211から射出された加工光ELを、第2のヘッド装置23#2を介して(つまり、第2のヘッド装置23#2によって)3次元構造物STに照射可能である。その結果、加工システムSYSは、第2のヘッド装置23#2が鏡筒214に取り付けられている場合であっても、3次元構造物STを適切に加工することができる。この場合、第2のヘッド装置23#2は、3次元構造物STを加工するために用いられるがゆえに、加工装置と称されてもよい。
【0103】
本実施形態では特に、偏向光学系2342#2によって、光軸AXに交差する方向に向かって加工光ELが偏向される。このため、加工システムSYSは、第2のヘッド装置23#2から射出された加工光ELを、光軸AXに沿った加工対象面PS(例えば、Z軸に沿った加工対象面PS)に照射することができる。その結果、加工システムSYSは、偏向光学系2342#2を備えていない場合には加工光ELを照射することが難しい加工対象面PSに対して、加工光ELを照射することができる。このため、加工システムSYSは、偏向光学系2342#2を備えていない場合には加工することが難しい3次元構造物STを加工することができる。
【0104】
例えば、
図15は、筒状の形状を有する3次元構造物STを加工するための加工光ELを射出する第2のヘッド装置23#2の断面を、3次元構造物STの断面と共に示している。この場合、3次元構造物STには、筒の中心の空間に相当する空隙STpが形成されている。この空隙STpに面する3次元構造物STの表面は、光軸AXに交差する底面STbのみならず、光軸AXに沿った内壁面STsを含んでいる。加工システムSYSは、第2のヘッド装置23#2を用いることで、内壁面STsに加工光ELを照射することができる。具体的には、加工システムSYSは、内壁面STsに目標照射領域EAが設定される(つまり、集光面234FPの位置に内壁面STsが配置される)ように、3次元構造物STと第2のヘッド装置23#2との相対的な位置関係を制御する。加工システムSYSは、第2のヘッド装置23#2が取り付けられた加工ヘッド21及び3次元構造物STが載置されたステージ31の少なくとも一方を移動させることで、3次元構造物STと第2のヘッド装置23#2との相対的な位置関係を制御してもよい。加工システムSYSは、駆動系233#2を用いて第2のヘッド装置23#2を移動させることで、3次元構造物STと第2のヘッド装置23#2との相対的な位置関係を制御してもよい。その結果、加工システムSYSは、内壁面STsに加工光ELを照射することができる。このため、加工システムSYSは、第2のヘッド装置23#2を用いることで、内壁面STsを適切に加工することができる。尚、第2のヘッド装置23#2が鏡筒214から取り外されれば、加工システムSYSは、底面STbに加工光ELを照射することができる。その結果、加工システムSYSは、底面STbも適切に加工することができる。
【0105】
加工システムSYSが内壁面STsを加工する場合には、加工光ELを射出する第2のヘッド装置23#2の少なくとも一部は、内壁面STsに面する空隙STpに挿入されてもよい。このため、第2のヘッド装置23#2のサイズ(具体的には、光軸AXに交差する方向における幅)は、第2のヘッド装置23#2が空隙STpに挿入可能となる程度のサイズに設定されていてもよい。一方で、第2のヘッド装置23#2が取り付けられている鏡筒214は、空隙STpに挿入されなくてもよい。このため、鏡筒214の最大幅(具体的には、光軸AXに交差する方向における幅の最大値)は、第2のヘッド装置23#2の最大幅よりも長くてもよい。言い換えれば、第2のヘッド装置23#2の最大幅は、鏡筒214の最大幅よりも短くてもよい。
【0106】
図15に示す例では、内壁面STsは、筒状の面である。このため、空隙STpに第2のヘッド装置23#2の少なくとも一部が挿入されている場合には、内壁面STsは、照射光学系211の光軸AX(つまり、集光光学系2341#2の光軸)を挟み込む又は取り囲むように光軸AX側を向いた面となる。また、第2のヘッド装置23#2の少なくとも一部(特に、照射光学系234#2の少なくとも一部)は、内壁面STsによって挟まれる又は取り囲まれる。従って、空隙STpに第2のヘッド装置23#2の少なくとも一部が挿入されている場合には、照射光学系234#2は、光軸AX及び照射光学系234#2の少なくとも一部を挟む又は取り囲む内壁面STsに加工光ELを照射することになる。
【0107】
第2のヘッド装置23#2からは、一方向に向かって加工光ELが射出される。一方で、上述したように、内壁面STsは、第2のヘッド装置23#2の少なくとも一部を挟む又は取り囲む面である。このため、加工システムSYSは、第2のヘッド装置23#2から一方向に向かって加工光ELを射出するだけでは、内壁面STsの一部にしか加工光ELを照射することができない。このため、加工システムSYSは、駆動系233#2を制御して照射光学系234#2(特に、偏向光学系2342#2)を移動させる(具体的には、回転させる)ことで、内壁面STs上での加工光ELの照射位置を変更してもよい。具体的には、上述したように、駆動系233#2は、光軸AX廻りに筒状部材2321#2を回転させる。その結果、筒状部材2321#2の回転に合わせて、筒状部材2321#2が保持する照射光学系234#2(特に、偏向光学系2342#2)もまた、光軸AX廻りに回転する。このため、筒状の空隙STpが形成された3次元構造物STを示す透過斜視図である
図16に示すように、加工システムSYSは、加工光ELの照射位置を、光軸AXを取り囲む輪帯状の領域RA内において変更することができる。その結果、筒状の空隙STpが形成された3次元構造物STの内壁面STsに照射される加工光ELを示す断面図である
図17に示すように、加工システムSYSは、輪帯状の領域RAを加工光ELで走査するように、輪帯状の領域RAに加工光ELを照射することができる。更に、加工システムSYSは、加工ヘッド21及びステージ31の少なくとも一方を光軸AXに沿った方向に移動させることで、内壁面STs上において、輪帯状の領域RAを光軸AXに沿った方向(
図16及び
図17に示す例では、Z軸方向)に移動させることができる。その結果、加工システムSYSは、内壁面STsのうち加工するべき部分(つまり、加工対象面PS)を適切に加工することができる。尚、照射光学系234#2が回転する(つまり、移動する)と、照射光学系234#2と3次元構造物STとの相対的な位置関係が変わる。このため、照射光学系234#2を回転可能な駆動系233#2は、照射光学系234#2と3次元構造物STとの相対的な位置関係を変更可能な位置変更装置として機能してもよい。
【0108】
加工システムSYSは、ヘッド駆動系22及びステージ駆動系32を用いて加工ヘッド21及びステージ31を移動させることなく、駆動系233#2を用いて照射光学系234#2を移動(この場合、回転)させてもよい。具体的には、加工システムSYSは、加工ヘッド21が備える照射光学系211とステージ31に載置されている3次元構造物STとの相対的な位置関係を維持したまま、照射光学系234#2と3次元構造物STとの相対的な位置関係を変更してもよい。例えば、空隙STpの幅(
図16及びが比較的小さい場合には、加工システムSYSは、照射光学系234#2を回転させれば、内壁面STs上の加工対象面PSの全体に加工光ELを照射できる可能性が高い。このため、空隙STpの幅が比較的小さい場合には、加工システムSYSは、加工ヘッド21及びステージ31を移動させることなく照射光学系234#2を回転させることで、3次元構造物STを加工してもよい。
【0109】
或いは、加工システムSYSは、ヘッド駆動系22及びステージ駆動系32を用いて加工ヘッド21及びステージ31を移動させ、且つ、駆動系233#2を用いて照射光学系234#2を移動(この場合、回転)させてもよい。つまり、加工システムSYSは、照射光学系211と3次元構造物STとの相対的な位置関係を変更し、且つ、照射光学系234#2と3次元構造物STとの相対的な位置関係を変更してもよい。例えば、空隙STpの幅が比較的大きい場合には、加工システムSYSは、照射光学系234#2を回転させるだけでは、内壁面STs上の加工対象面PSの全体に加工光ELを照射できない可能性がある。このため、空隙STpの幅が比較的大きい場合には、加工システムSYSは、加工ヘッド21及びステージ31を移動させ且つ照射光学系234#2を回転させることで、3次元構造物STを加工してもよい。例えば、筒状の空隙STpが形成された3次元構造物STの内壁面STsに照射される加工光ELを示す断面図である
図18に示すように、加工システムSYSは、第2のヘッド装置23#2が内壁面STsに沿った円形の移動軌跡に沿って移動するように加工ヘッド21を移動させ、且つ、第2のヘッド装置23#2が内壁面STsに向かって加工光ELを射出するように照射光学系234#2を回転させてもよい。
【0110】
照射光学系234#2と3次元構造物STとの相対的な位置関係が変わると、加工光ELが集光される集光面234FPと加工対象面PSとの相対的な位置関係(特に、加工光ELの進行方向に沿った位置関係)が変わる可能性がある。その結果、集光面211FPと加工対象面PSとの相対的な位置関係が変わる場合と同様に、加工対象面PSが適切に平滑化されない可能性がある。そこで、第2のヘッド装置23#2が鏡筒214に取り付けられている場合においても、加工システムSYSは、加工対象面PSが適切に平滑化されるように、集光面234FPと加工対象面PSとの相対的な位置関係を制御してもよい。つまり、加工システムSYSは、加工対象面PSが適切に平滑化されるように集光面211FPと加工対象面PSとの相対的な位置関係を制御する場合と同様に、加工対象面PSが適切に平滑化されるように集光面234FPと加工対象面PSとの相対的な位置関係を制御してもよい。
【0111】
加工光ELが加工対象面PSに対して斜入射するように加工システムSYSが加工ヘッド21と3次元構造物STとの相対的な位置関係を変更してもよいことは上述したとおりである。第2のヘッド装置23#2が鏡筒214に取り付けられている場合においても、加工光ELが加工対象面PSに対して斜入射するように加工システムSYSが加工ヘッド21と3次元構造物STとの相対的な位置関係を変更してもよい。或いは、第2のヘッド装置23#2が鏡筒214に取り付けられる場合には、加工対象面PSに対して斜入射する加工光ELを射出可能な第2のヘッド装置23#2が鏡筒214に取り付けられてもよい。例えば、第2のヘッド装置23#2が鏡筒214に取り付けられる場合には、加工対象面PSに対する加工光ELの入射角度は、偏向光学系2342#2に依存する。例えば、偏向光学系2342#2が反射面で加工光ELを反射することで加工光ELを偏向する場合には、加工対象面PSに対する加工光ELの入射角度は、偏向光学系2342#2の反射面の角度(具体的には、加工光ELの進行方向に対する角度)に依存する。このため、光学特性(具体的には、偏向方向に関する光学特性であり、例えば、反射面の角度)が異なる複数の偏向光学系2342#2をそれぞれ備える複数の第2のヘッド装置23#2を用意しておき、当該複数の第2のヘッド装置23#2のうち加工対象面PSに対して加工光ELが斜入射するように加工光ELを偏向可能な一の偏向光学系2342#2が、鏡筒214に取り付けられてもよい。その結果、加工ヘッド21と3次元構造物STとの相対的な位置関係が変更されなくても、加工光ELが加工対象面PSに対して斜入射することになる。或いは、偏向光学系2342#2の光学特性(例えば、反射面の角度)が変更可能である場合には、加工システムSYSは、加工光ELが加工対象面PSに対して斜入射するように、偏向光学系2342#2の光学特性を変更してもよい。
【0112】
尚、加工システムSYSが加工動作の一例である溶接動作を行ってもよいことは上述したとおりである。加工システムSYSは、第2のヘッド装置23#2が鏡筒214に取り付けられている場合においても、溶接動作を行ってもよい。例えば、加工システムSYSは、筒状の3次元構造物STの一例である第1の配管と、筒状の3次元構造物STの一例である第2の配管とを溶接してもよい。具体的には、加工システムSYSは、第1及び第2の配管の管路に第2のヘッド装置23#2を挿入し、第1及び第2の配管の内壁面の境界に加工光ELを照射することで、第1及び第2の配管を溶接してもよい。
【0113】
また、第2のヘッド装置23#2は、加工システムSYSが3次元構造物STを形成するための造形動作を行っている期間の少なくとも一部において、鏡筒214に取り付けられてもよい。つまり、加工システムSYSは、照射光学系211から射出された加工光ELを、第2のヘッド装置23#2を介してワークWに照射することで、3次元構造物STに形成してもよい。その結果、加工システムSYSは、第2のヘッド装置23#2が鏡筒214に取り付けられている場合であっても、3次元構造物STを適切に形成することができる。第2のヘッド装置23#2が鏡筒214に取り付けられる場合には、材料ノズル212が造形材料Mを供給する目標供給領域MAは、第2のヘッド装置23#2が加工光ELを集光する集光面234FP又は集光面234FPの近傍に設定されてもよい。例えば、加工システムSYSは、材料ノズル212を移動させることで、目標供給領域MAを、第1のヘッド装置23#1が加工光ELを集光する集光面211FP又は集光面211FPの近傍から、集光面234FP又は集光面234FPの近傍に変更してもよい。
【0114】
(4)第2のヘッド装置23#2の変形例
続いて、
図19を参照しながら、第2のヘッド装置23#2の変形例について説明する。
図19は、第2のヘッド装置23a#2の変形例の構造を示す断面図である。以下では、第2のヘッド装置23#2の変形例を“第2のヘッド装置23a#2”と称することで、上述した第2のヘッド装置23#2と区別する。
【0115】
図19に示すように、第2のヘッド装置23a#2は、上述した第2のヘッド装置23#2と比較して、筒状部材2321#2に代えて、筒状部材2321a#2を備えているという点で異なる。更に、第2のヘッド装置23a#2は、上述した第2のヘッド装置23#2と比較して、照射光学系234#2に代えて、照射光学系234a#2を備えているという点で異なる。第2のヘッド装置23a#2のその他の特徴は、第2のヘッド装置23#2のその他の特徴と同一であってもよい。
【0116】
筒状部材2321a#2は、筒状部材2321#2と比較して、テレスコピックな構造(つまり、伸縮自在な入れ子構造)を有しているという点で異なる。つまり、筒状部材2321a#2は、径が異なる複数の筒状部材が組み合わせられた部材である。このため、筒状部材2321a#2は、筒状部材2321a#2の長手方向(
図19に示す例では、Z軸方向であり、光軸AXに沿った方向)に沿って伸縮可能である。筒状部材2321a#2のその他の特徴は、筒状部材2321#2のその他の特徴と同一であってもよい。
【0117】
照射光学系234a#2は、照射光学系234#2と比較して、平行光学系2344a#2を備えているという点で異なる。照射光学系234a#2のその他の特徴は、照射光学系234#2のその他の特徴と同一であってもよい。
【0118】
平行光学系2344a#2は、不図示の照射光学系211から非平行光として射出される加工光ELを平行光に変換可能な光学系である。例えば、
図19に示すように、平行光学系2344aは、光軸AXに沿って並ぶ光学部材2345a#2及び2346a#2を備えていてもよい。光学部材2345a#2は、加工光ELの光路を示す断面図である
図20に示すように、照射光学系211から非平行光として射出される加工光ELを平行光に変換する。ここで、光学部材2345a#2は、その前側焦点位置が集光面211FP上になるように位置決めされている。光学部材2346a#2は、
図20に示すように、光学部材2345a#2から平行光として射出される加工光ELを非平行光に変換する。光学部材2346a#2から非平行光として射出される加工光ELは、集光光学系2341#2に入射する。ここで、集光光学系2341#2による集光面234FPと光学的に共役な面に、光学部材2346a#2の後側焦点位置が位置している。
【0119】
平行光学系2344a#2は、光学部材2345a#2及び2346a#2の間の距離(具体的には、光軸AXに沿った距離)を変更してもよい。光学部材2345a#2及び2346a#2の間の距離が変わると、加工光ELが平行光として進行する光路の長さが変わる。このとき、光学部材2345a#2の前側焦点位置が集光面211FPに位置したままで、且つ光学部材2345a#2の後側焦点位置が集光面234FPと光学的に共役な面に位置したままでよい。光学部材2345a#2の前側焦点位置が集光面211FPに位置したままであることから、光学部材2345a#2からの加工光は常に平行光となり、光学部材2345a#2の後側焦点位置が集光面234FPと光学的に共役な面に位置したままであることから、光学部材2345a#2からの加工光は集光面234FPと光学的に共役な面に常に集光される。
【0120】
このような第2のヘッド装置23a#2は、筒状部材2321a#2を伸縮させ且つ筒状部材2321a#2の伸縮に合わせて光学部材2345a#2及び2346a#2の間の距離を変更することで、第2のヘッド装置23a#2が加工光ELを集光する集光面234FPを、光軸AXに沿って移動させることができる。例えば、
図20は、に短い(つまり、縮んだ)筒状部材2321a#2を示しており、
図21は、長い)つまり、伸びた)筒状部材2321a#2を示している。この場合、
図20に示すように、筒状部材2321a#2が短い場合には、光学部材2345a#2及び2346a#2の間の距離が短くなる。一方で、
図21に示すように、筒状部材2321a#2が長い場合には、光学部材2345a#2及び2346a#2の間の距離が長くなる。その結果、筒状部材2321a#2が伸縮したとしても、第2のヘッド装置23a#2は、集光面234FPに適切に加工光ELを集光することができる。このとき、
図20及び
図21に示すように、筒状部材2321a#2の伸縮に伴って集光面234FPが光軸AXに沿って移動する際に、集光面234FPの光軸垂直方向(XY平面内の)の位置は維持される。
【0121】
(5)その他の変形例
上述した説明では、加工システムSYSは、同じ照射光学系211から射出される加工光ELを用いて、造形動作及び加工動作の双方を行っている。しかしながら、加工システムSYSの変形例を示す
図22に示すように、加工システムSYSは、造形動作を行うための加工光ELを射出する照射光学系211(以降、“照射光学系211#1”と称する)と、加工動作を行うための加工光ELを射出する照射光学系211(以降、“照射光学系211#2”と称する)とを別々に備えていてもよい。この場合、照射光学系211#1及び211#2は、別々の鏡筒214に収容されてもよい。照射光学系211#1を収容する鏡筒214(以降、“鏡筒214#1”と称する)には、上述した第1のヘッド装置23#1が取り付けられるが、第2のヘッド装置23#2が取り付けられてもよい。照射光学系211#2を収容する鏡筒214(以降、“鏡筒214#2”と称する)には、上述した第2のヘッド装置23#2が取り付けられるが、第1のヘッド装置23#1が取り付けられてもよい。
【0122】
上述した説明では、加工システムSYSは、造形材料Mに加工光ELを照射することで、造形材料Mを溶融させている。しかしながら、加工システムSYSは、任意のエネルギービームを造形材料Mに照射することで、造形材料Mを溶融させてもよい。この場合、加工システムSYSは、照射光学系211に加えて又は代えて、任意のエネルギービームを照射可能なビーム照射光学系を備えていてもよい。任意のエネルギービームの一例として、荷電粒子ビーム及び電磁波等の少なくとも一方があげられる。荷電粒子ビームの一例として、電子ビーム及びイオンビーム等の少なくとも一方があげられる。
【0123】
上述した説明では、加工システムSYSは、レーザ肉盛溶接法により付加加工を行っている。しかしながら、加工システムSYSは、造形材料Mに加工光EL(或いは、任意のエネルギビーム)を照射することで3次元構造物STを形成可能なその他の方式により造形材料Mから3次元構造物STを形成してもよい。或いは、加工システムSYSは、造形材料Mに加工光EL(或いは、任意のエネルギビーム)を照射する方式とは異なる、付加加工のための任意の方式により3次元構造物STを形成してもよい。
【0124】
上述の各実施形態の構成要件の少なくとも一部は、上述の各実施形態の構成要件の少なくとも他の一部と適宜組み合わせることができる。上述の各実施形態の構成要件のうちの一部が用いられなくてもよい。また、法令で許容される限りにおいて、上述の各実施形態で引用した全ての公開公報及び米国特許の開示を援用して本文の記載の一部とする。
【0125】
本発明は、上述した実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う加工システム及び光学装置もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0126】
SYS 加工システム
1 材料供給源
2 加工ユニット
21 加工ヘッド
211 照射光学系
212 材料ノズル
213 戻り光検出器
214 鏡筒
215 ヘッド筐体
22 ヘッド駆動系
23、23#1、23#2 ヘッド装置
234#2 照射光学系
2341#2 集光光学系
2342#2 偏向光学系
3 ステージユニット
31 ステージ
32 ステージ駆動系
7 制御装置
W ワーク
M 造形材料
EL 加工光