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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】ゲノム編集方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/09 20060101AFI20240110BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240110BHJP
   A01H 5/00 20180101ALI20240110BHJP
   A01H 5/10 20180101ALI20240110BHJP
   C07K 17/14 20060101ALI20240110BHJP
   C12N 15/87 20060101ALI20240110BHJP
   C12N 5/04 20060101ALI20240110BHJP
   A01H 1/00 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
C12N15/09 110
C12N5/10 ZNA
A01H5/00 A
A01H5/10
C07K17/14
C12N15/87 Z
C12N5/04
A01H1/00 A
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020557719
(86)(22)【出願日】2019-11-26
(86)【国際出願番号】 JP2019046070
(87)【国際公開番号】W WO2020111029
(87)【国際公開日】2020-06-04
【審査請求日】2022-10-11
(31)【優先権主張番号】P 2018220784
(32)【優先日】2018-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(73)【特許権者】
【識別番号】501203344
【氏名又は名称】国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100107733
【弁理士】
【氏名又は名称】流 良広
(74)【代理人】
【識別番号】100115347
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 奈緒子
(72)【発明者】
【氏名】濱田 晴康
(72)【発明者】
【氏名】柳楽 洋三
(72)【発明者】
【氏名】三木 隆二
(72)【発明者】
【氏名】田岡 直明
(72)【発明者】
【氏名】今井 亮三
【審査官】上條 のぶよ
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/195906(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0186842(US,A1)
【文献】特表2004-532850(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/09
C12N 5/10
A01H 5/00
A01H 5/10
C07K 17/14
C12N 15/87
C12N 5/04
A01H 1/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
両親媒性分子と陽イオン性タンパク質との組み合わせ、及びタンパク質を含む溶液を用い、
前記両親媒性分子と前記陽イオン性タンパク質との組み合わせが、1,4-ビス(3-オレオイルアミドプロピル)ピペラジンとヒストンH1タンパク質を含む組み合わせであり、
前記タンパク質が、CASヌクレアーゼであり、
前記溶液の塩濃度が160mM以下である、金粒子にタンパク質を被覆する方法。
【請求項2】
両親媒性分子と陽イオン性タンパク質との組み合わせ、及びタンパク質を含む溶液を用い、
前記両親媒性分子と前記陽イオン性タンパク質との組み合わせが、1,4-ビス(3-オレオイルアミドプロピル)ピペラジンとヒストンH1タンパク質を含む組み合わせであり、
前記タンパク質が、CASヌクレアーゼであり、
前記溶液の塩濃度が160mM以下である、タンパク質を被覆した被覆金粒子を製造する方法。
【請求項3】
Bis Imidazole Oxalyldiaminopropionic acid、または両親媒性分子と陽イオン性タンパク質との組み合わせ、及びタンパク質を含む溶液を用いて、金粒子を被覆する工程と、
該被覆した金粒子をマクロキャリアにスポットする工程と、
を有
前記両親媒性分子と前記陽イオン性タンパク質との組み合わせが、1,4-ビス(3-オレオイルアミドプロピル)ピペラジンとヒストンH1タンパク質を含む組み合わせであり、
前記タンパク質が、CASヌクレアーゼであり、
前記溶液の塩濃度が160mM以下であり、
前記マクロキャリアが親水性フィルムである、金粒子をスポットしたマクロキャリアの製造方法。
【請求項4】
Bis Imidazole Oxalyldiaminopropionic acid、または両親媒性分子と陽イオン性タンパク質との組み合わせ、及びタンパク質を含む溶液を用いて、金粒子を被覆する工程と、
該被覆した金粒子をマクロキャリアにスポットする工程と、
該マクロキャリアを遺伝子銃に用いて細胞にタンパク質を撃ち込む工程と、
を有
前記両親媒性分子と前記陽イオン性タンパク質との組み合わせが、1,4-ビス(3-オレオイルアミドプロピル)ピペラジンとヒストンH1タンパク質を含む組み合わせであり、
前記タンパク質が、CASヌクレアーゼであり、
前記溶液の塩濃度が160mM以下であり、
前記マクロキャリアが親水性フィルムである、細胞(ただし、ヒト細胞を除く)へのタンパク質導入方法。
【請求項5】
記溶液が、さらに核酸を含む、請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
ゲノム編集方法である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記両親媒性分子と前記陽イオン性タンパク質との組み合わせが、前記1,4-ビス(3-オレオイルアミドプロピル)ピペラジンと前記ヒストンH1タンパク質を3:1の比率で含む組み合わせである、請求項1~6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記CASヌクレアーゼがCas9タンパク質である、請求項1~7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
請求項4に記載の方法によりタンパク質を導入される、もしくは請求項5または6に記載の方法によりタンパク質および/または核酸を導入される、細胞、組織、器官、生物個体または種子の製造方法。
【請求項10】
請求項6に記載の方法によりゲノム編集される、細胞、組織、器官、生物個体または種子の製造方法。
【請求項11】
両親媒性分子と陽イオン性タンパク質との組み合わせ、及びタンパク質を含む溶液を用い、
前記両親媒性分子と前記陽イオン性タンパク質との組み合わせが、1,4-ビス(3-オレオイルアミドプロピル)ピペラジンとヒストンH1タンパク質を含む組み合わせであり、
前記タンパク質が、CASヌクレアーゼであり、
前記溶液の塩濃度が160mM以下である、タンパク質の金粒子への結合を促進する方法。
【請求項12】
前記両親媒性分子と前記陽イオン性タンパク質との組み合わせが、前記1,4-ビス(3-オレオイルアミドプロピル)ピペラジンと前記ヒストンH1タンパク質を3:1の比率で含む組み合わせである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記CASヌクレアーゼがCas9タンパク質である、請求項11または12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンパク質を金粒子に効率よく結合させる技術に関する。より詳しくは、遺伝子銃に使用する金粒子にタンパク質を効率よく結合させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、CRISPRシステムによるゲノム編集技術が開発され、種々の生物に応用されるようになりつつある(特許文献1)
【0003】
しかしながら、形質転換系の開発されていない生物、または、形質転換効率の低い生物については、ゲノム編集技術の適用が困難であった。
【0004】
そこで、形質転換の困難な生物に対するゲノム編集技術の開発が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許公開公報第2014/0068797号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
タンパク質を金粒子に効率よく被覆する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 両親媒性分子及びタンパク質を含む溶液を用いて、金粒子を被覆する方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、タンパク質を効率よく金粒子に結合できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、遺伝子銃を用いてゲノム編集個体を取得する工程を示す概略図である。
図2図2は、両親媒性分子非存在下において、各種buffer(A-H)を用いた際のタンパク質の金粒子への結合量を示すグラフである。
図3図3は、両親媒性分子として1,4-ビス(3-オレオイルアミドプロピル)ピペラジン/ヒストンH1タンパク質を使用し、各種buffer(A-I)を用いた際のタンパク質の金粒子への結合量を示すグラフである。
図4図4は、Tris-HClの終濃度を1.0mM、1,4-ビス(3-オレオイルアミドプロピル)ピペラジン/ヒストンH1タンパク質存在下で、塩濃度がタンパク質の金粒子への結合量に及ぼす影響を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の最終目的は、図1に記載のように、遺伝子銃を用いてゲノム編集個体を作成することである。そのためには、図1のように4つのステップ、1)金粒子の調製、2)マイクロキャリアへの塗布、3)茎頂への撃ち込み、4)ゲノム編集個体の取得が必要となる。本発明においては、これらの工程のうち、特に、1)金粒子の調製、2)親水性フィルムへの塗布の工程、および3)撃ち込み(マクロキャリアからの放出)の工程を改善するものである。
【0011】
本明細書において、「ゲノム編集」とは、ニューブリーディングテクニック(NBT)といわれる技術の一部で、メガヌクレアーゼ、CRISPR-CASなどを用いて、ゲノム上の特定の遺伝子を切断して変異を導入することで遺伝子を破壊すること、もしくは、部位特異的にDNA断片を挿入または置換すること、または、CRISPRシステムから、ヌクレアーゼ活性を除去したものに、脱アミノ化酵素であるデアミナーゼを付加した人工酵素複合体を構築し、細胞中で発現させることで、狙った点変異を高効率に導入して遺伝子機能を改変することも含まれるがこれらに限られず、ゲノムを編集できる技術であればよい。ゲノム編集技術を用いることで、狙った遺伝子を高い効率で破壊できる。遺伝子破壊の場合、遺伝子組換えの痕跡を残さずに狙った遺伝子のみを破壊できることから組換え植物と取り扱わない国もある。また、ゲノム編集によれば、切断配列の両側の配列に相同な断片を、その部位に導入したいDNA断片の両側に連結しておくことで、効率よく部位特異的なDNA断片の挿入または置換が可能である。また、CRISPR-CASなどを通常用いる濃度から下げることで、DNA切断後に起きる置換変異の割合を増加させることも可能である。
【0012】
上記意味で、ゲノム編集は、外来遺伝子がほぼランダムに組み込まれる従来型の植物の形質転換法、例えば、直接導入法やアグロバクテリウム法などとは異なる技術とも言える。ゲノム編集技術では、切断部位をターゲティングできるヌクレアーゼまたはガイドRNAとヌクレアーゼを用いてゲノムDNAを切断する工程を含むことが特徴で、かかるターゲティングできるヌクレアーゼまたはガイドRNAとヌクレアーゼを用いない従来型の形質転換法とは区別できる。ここで、「ヌクレアーゼまたはガイドRNAとヌクレアーゼを用いて」という意味は、ヌクレアーゼタンパク質を細胞に導入してもよく、ヌクレアーゼ遺伝子をコードするDNAおよび/またはRNAを細胞に導入してヌクレアーゼタンパク質を発現させてもよいという意味である。また、ガイドRNAについてもRNAを細胞に導入してもよく、ガイドRNAを発現し得るDNAを導入してガイドRNAを発現させてもよい趣旨である。
【0013】
本明細書において、RNPとは、RNAを含む核タンパク質、即ち、リボ核酸とタンパク質の複合体を意味する。RNPの例としては、例えば、CRISPR-CAS、リボソーム、スプライスソーム、テロメラーゼ、ヴォールト、リボヌクレアーゼP、hnRNP、およびsnRNP等が挙げられるがこれらに限られない。好ましくは、CRISPR-CASを含む、ゲノム編集能力のあるRNPである。
【0014】
上述のように、ゲノム編集においては、ヌクレアーゼなどのタンパク質をターゲットとなる生物の細胞中、特に生殖系列の細胞中に導入することが必要であるが、タンパク質を効率よく遺伝子銃で細胞中に導入することは生物、特に植物の特定の種においては困難な場合があった。そこで、発明者らは、遺伝子銃を用いたゲノム編集技術に用いることができる、タンパク質による金粒子の被覆方法、マクロキャリアにスポットした金粒子の撃ち込み後の残存量を減らす方法を開発し、本発明を完成した。
【0015】
(金粒子を被覆する方法)
本発明の金粒子を被覆する方法は、両親媒性分子及びタンパク質を含む溶液を用いて、金粒子を被覆する方法である。
【0016】
前記両親媒性分子(化合物)は、親水性(水溶性)部分と、疎水性(不溶性)部分とを有している。親水性基は、その化学残基が水を好む性質を有している。親水性基としては、例えば、炭水化物、ポリオキシエチレン、ペプチド、オリゴヌクレオチド並びにアミン、アミド、アルコキシアミド、カルボン酸、イオウ、又は水酸基を含む基が含まれるが、これらに限られない。両親媒性分子(化合物)としては、脂質分子、リポソーム、リポポリプレックス(lipo polyplex)などを含むがこれらに限られない。リポポリプレックスは、例えば、1,4-ビス(3-オレオイルアミドプロピル)ピペラジンを含んでいてもよい。
【0017】
前記疎水性基は、その化学残基は水を排除する性質を有している。かかる化学基は水溶性ではなく、水素結合を形成しない。炭化水素は、疎水性基である。
【0018】
本発明の金粒子のタンパク質被覆方法においては、両親媒性化合物を用いることにより、金粒子へのタンパク質の結合量(結合率)を増加させることができ、さらに、マクロキャリアからの放出率も向上させる(マクロキャリアへの金粒子の残存量を減少させる)ことができる。
【0019】
前記両親媒性化合物は陽イオン性を有していることが好ましい。この陽イオン性両親媒性化合物は、天然由来ではないポリアミンであってもよく、これら1つ以上のアミンは、少なくとも1つの疎水性残基に結合されており、この疎水性残基は、C6-C24アルカン、C6-C24アルケン、ステロール、ステロイド、脂質、脂肪酸又は疎水性ホルモンを有していてもよい。ここでCXのXの数字は炭素数を表す。両親媒性化合物は、リポソームを形成していても形成していなくてもよい。また、両親媒性化合物は、以下の構造を有していてもよい。
【0020】
【化1】
【0021】
R1及びR2は、C6-C24アルカン、C6-C24アルケン、ステロール、ステロイド、脂質、脂肪酸又は疎水性ホルモン及びその他の類似する疎水基からなる群から選択された置換基である。R1及びR2は、同一であっても異なっていてもよい。
前記両親媒性化合物は、1,4-ビス(3-オレオイルアミドプロピル)ピペラジンまたはBis Imidazole ODAP (Bis imODAP, ODAPはOxalyldiaminopropionic acid)であってもよい。
【0022】
前記両親媒性分子(化合物)の、前記両親媒性分子及びタンパク質を含む溶液における濃度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、終濃度が10μg/mL以上が好ましく、100μg/mL以上がより好ましい。
【0023】
本発明においては、前記両親媒性化合物に加えて、ポリカチオンを添加することができる。好ましいポリカリオンとしては、ポリ-L-リジン、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリシラザン、ポリジヒドロイミダゾレニウム、ポリアリルアミン及びこれらに類する化合物などのポリマーなどが挙げられるがこれらに限られない。好適なポリカチオンは、エトキシル化ポリエチレンイミン(ePEI)である。
【0024】
また、前記ポリカチオンは陽イオン性タンパク質であってもよい。陽イオン性タンパク質を添加することにより、タンパク質の金粒子への結合を促進することができる。好適な陽イオン性タンパク質は、DNA結合タンパク質であり、例えばH1、H2A又はH2Bなどのヒストンである。前記ヒストンは、牛胸腺などの天然ソースに由来していてもよいし、バクテリア内で合成された組換えタンパク質であってもよい。ヒストンなどのDNA結合タンパク質は、ポリリジンなどのポリカチオン化合物に比べて種々の点で利点を有している。DNA結合タンパク質は、SV40ラージT抗原核局在化シグナルやヒトヒストンH1のC末端ドメイン(NLS-H1)の両方を有する組換えヒストンであってもよく、これは核局在化シグナルにリンクされている。陽イオン性タンパク質としては両親媒性分子と混合することでタンパク質の金粒子への結合効率が上がるものであれば特に限定されないが、ヒストンH1タンパク質が好ましい。
【0025】
また、前記両親媒性化合物と、前記ポリカチオンを組み合わせて用いてもよい。例えば、1,4-ビス(3-オレオイルアミドプロピル)ピペラジンとヒストンH1タンパク質の比率は、3:1程度が好ましい。
【0026】
前記両親媒性分子及びタンパク質を含む溶液は、さらに、核酸を含むことができる。
前記核酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、DNA、RNA、及びこれらの誘導体などが挙げられる。
【0027】
前記タンパクとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ヌクレアーゼ、又はデアミナーゼなどの核酸代謝酵素が挙げられる。
前記ヌクレアーゼとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、CRISPR-CASシステムのCASヌクレアーゼなどが挙げられる。
前記CASヌクレアーゼとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、I型CRISPR系酵素であるCas3、II型CRISPR系酵素であるCas9などが挙げられる。
【0028】
前記タンパクの、前記両親媒性分子及びタンパク質を含む溶液における濃度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、終濃度が50μg/mL以上が好ましく、300μg/mL以上がより好ましい。
【0029】
前記金粒子としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、少なくとも表面が金であればよく、中実構造のものでもよいし、コアシェル構造のものであっても、中空粒子であってもよく、金ナノロッドなどのナノ粒子であってもよい。
前記金粒子の金の純度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、99%以上が好ましい。
【0030】
前記金粒子の平均粒径の下限値としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.3μm以上が好ましく、0.4μm以上がより好ましく、0.5μm以上がさらに好ましく、0.6μm以上が特に好ましい。
前記微粒子の平均粒径の上限値としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1.5μm以下が好ましく、1.4μm以下がより好ましく、1.3μm以下がさらに好ましく、1.2μm以下が特に好ましく、1.1μm以下がさらに特に好ましく、1.0μm以下が最も好ましい。
【0031】
前記被覆の時間の下限値としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、3分間以上が好ましく、5分間以上がより好ましく、10分間以上がさらに好ましい。
前記被覆の時間の上限値としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、30分間以下が好ましく、20分間以下がより好ましく、10分間以下がさらに好ましい。
【0032】
前記被覆の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、両親媒性分子及びタンパク質を含む溶液と金粒子をピペッティングまたはタッピングにより混合し、静置する方法などが挙げられる。
【0033】
前記金粒子へのタンパク質の結合量の測定方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、金粒子とタンパクの混合液を遠心し、上清に、×2 SDS-PAGE用sample bufferを加え、95℃3分間加熱し、SDS-PAGEによりタンパク質を分離後、CBB染色し、コントロール(金粒子なし)のバンドと比較し、金粒子に吸着したと考えられるタンパク質量を算出することができる。
【0034】
本発明で両親媒性分子及びタンパク質を含む溶液を作成する際に使用する緩衝液の好ましい塩濃度の終濃度としては、20mM以下が好ましく、より好ましくは18mM以下、16mM以下であっても良い。ここで「塩」とは、タンパク質が金粒子に結合するのを阻害する塩をいう。「塩」とは、例えば、食塩(NaCl)、塩化カリウム(KCl)、酢酸カリウム(KOAc)、トリス(Tris・Cl)、Tris-OAc、HEPES等が含まれるが、これらに限られず、タンパク質が金粒子に結合するのを阻害する物質であれば制限なく含まれる。なお、塩化マグネシウム(MgCl)、及びジチオトレイトール(DTT)は塩に含まれない。塩としては、好ましくはアルカリ金属を含む。また「塩濃度」とは、タンパク質が金粒子に結合するのを阻害する塩の濃度をいう。
【0035】
前記両親媒性分子及びタンパク質を含む溶液は、さらに、その他の成分を含むことができる。
前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、MgCl、DTT、ウシ血清アルブミン(BSA)、EDTA、DNase/RNase阻害剤、プロテアーゼ阻害剤、グリセロールなどが挙げられる。
【0036】
前記両親媒性分子及びタンパク質を含む溶液における、MgCl、及びDTTを除く塩濃度は、イオンクロマトグラフ法により測定することができる。前記イオンクロマトグラフ法では、あらかじめMgCl、及びDTTを除く塩の濃度と応答との関係式を求めておき、サンプルについて得られた応答をその関係式に当てはめることで、該当する塩濃度を測定することができる。
【0037】
(被覆金粒子を製造する方法)
本発明の被覆金粒子を製造する方法は、両親媒性分子及びタンパク質を含む溶液を用いて、該タンパク質を被覆した被覆金粒子を製造する方法である。
前記両親媒性分子及びタンパク質を含む溶液を用いて、該タンパク質を被覆した被覆金粒子を製造する方法は、前述の両親媒性分子及びタンパク質を含む溶液を用いて、金粒子を被覆する方法のとおりである。
【0038】
(金粒子をスポットしたマクロキャリアの製造方法)
本発明の金粒子をスポットしたマクロキャリアの製造方法は、両親媒性分子及びタンパク質を含む溶液を用いて、金粒子を被覆する工程と、該被覆した金粒子をマクロキャリアにスポットする工程と、を有し、さらにその他の工程を含むことができる。
前記両親媒性分子及びタンパク質を含む溶液を用いて、金粒子を被覆する工程は、前述の金粒子を被覆する方法のとおりである。
【0039】
前記スポット工程において、金粒子は、ピペットマンなどを用いてマクロキャリヤーフィルムに可能な限り均一に塗布した後、クリーンベンチなどの無菌環境中で乾燥させる。前記マクロキャリヤーフィルムとしては、親水性のマクロキャリヤーフィルム(3M社「SH2CLHF」など)、又は、親水性のコーティング剤によりコーティングしたマクロキャリヤーフィルムを用いるのが好ましい。
【0040】
親水性フィルムやマクロキャリアの親水性のコーティングに用いられる親水性ポリマーとしては、ポリエチレングリコール、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ジヒドロキシエチルメタクリレート、ジエチレングリコールメタクリレート、トリエチレングリコールメタクリレート、ポリエチレングリコールメタクリレート、ビニルピロリドン、アクリル酸、アクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、グルコキシオキシエチルメタクリレート、3-スルホプロピルメタクリルオキシエチルジメチルアンモニウムベタイン、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、1-カルボキシジメチルメタクリロイルオキシエチルメタンアンモニウム等の親水性モノマーの重合体が挙げられる。
【0041】
(細胞へのタンパク質導入方法)
本発明の細胞へのタンパク質導入方法は、両親媒性分子及びタンパク質を含む溶液を用いて、金粒子を被覆する工程と、該被覆した金粒子をマクロキャリアにスポットする工程と、該マクロキャリアを遺伝子銃に用いて細胞にタンパク質を撃ち込む工程と、を有し、さらにその他の工程を含むことができる。
前記両親媒性分子及びタンパク質を含む溶液を用いて、金粒子を被覆する工程は、前述の金粒子を被覆する方法のとおりである。
前記該被覆した金粒子をマクロキャリアにスポットする工程は、前述の金粒子をスポットしたマクロキャリアの製造方法のとおりである。
【0042】
前記細胞にタンパク質を撃ち込む工程において、タンパク質を撃ち込む方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、マクロキャリヤーフィルム、ターゲットの完熟胚の茎頂を置床したプレートをパーティクルガン装置に設置し、ガス加速管から高圧ヘリウムガスをマクロキャリヤーフィルムに向かって発射する方法などが挙げられる。
【0043】
また、本発明の金粒子の被覆方法によれば、マクロキャリアから撃ち出されやすい金粒子が得られる。すなわち、本発明の方法により、タンパク質を金粒子に被覆し、マクロキャリアにスポットして撃ち込んだ場合、通常の金粒子よりもマクロキャリアに残存する金粒子が減少するという効果が得られる。
【0044】
前記細胞へのタンパク質導入方法により、タンパク質および/または核酸を導入された細胞、組織、器官、生物個体ならびに/またはその後代および/もしくは種子を得ることができる。
【0045】
(ゲノム編集方法)
前記金粒子を被覆する方法、前記被覆金粒子を製造する方法、前記金粒子をスポットしたマクロキャリアの製造方法、又は前記細胞へのタンパク質導入方法により、ゲノム編集を行うことができ、その結果、ゲノム編集された細胞、組織、器官、生物個体ならびに/またはその後代および/もしくは種子を得ることができる。
【0046】
本発明におけるゲノム編集の対象となる生物は、遺伝子銃により金粒子が導入される生物であれば、特に制限されず、動物、植物、微生物であってもよい。前記植物としては、被子植物及び裸子植物を含む種子植物であってもよく、前記被子植物には、単子葉植物及び双子葉植物が含まれる。また、以下の植物についても本発明を適用し得る。
【0047】
前記単子葉植物としては、いずれの種類であってもよいが、例えば、イネ科植物、ユリ科植物、バショウ科植物、パイナップル科植物、ラン科植物などが挙げられる。
【0048】
前記イネ科植物としては、イネ、コムギ、オオムギ、トウモロコシ、エンバク、シバ、ソルガム、ライムギ、アワ、サトウキビなどが挙げられる。前記ユリ科植物としては、ネギ、アスパラガスなどが挙げられる。前記バショウ科植物としては、バナナなどが挙げられる。前記パイナップル科植物としては、パイナップルなどが挙げられる。前記ラン科植物としては、ランなどが挙げられる。
【0049】
前記双子葉植物としては、例えば、アブラナ科植物、マメ科植物、ナス科植物、ウリ科植物、ヒルガオ科植物、バラ科植物、クワ科植物、アオイ科植物、キク科植物、ヒユ科植物、およびタデ科植物などが挙げられる。
【0050】
前記アブラナ科植物としては、シロイヌナズナ、ハクサイ、ナタネ、キャベツ、カリフラワー、ダイコンなどが挙げられる。前記マメ科植物としては、ダイズ、アズキ、インゲンマメ、エンドウ、ササゲ、アルファルファなどが挙げられる。前記ナス科植物としては、トマト、ナス、ジャガイモ、タバコ、トウガラシなどが挙げられる。前記ウリ科植物としては、マクワウリ、キュウリ、メロン、スイカなどが挙げられる。前記ヒルガオ科植物としては、アサガオ、サツマイモ(カンショ)、ヒルガオなどが挙げられる。前記バラ科植物としては、バラ、イチゴ、リンゴなどが挙げられる。前記クワ科植物としては、クワ、イチジク、ゴムノキなどが挙げられる。前記アオイ科植物としては、ワタ、ケナフなどが挙げられる。前記キク科植物としては、レタスなどが挙げられる。前記ヒユ科植物としては、テンサイ(サトウダイコン)などが挙げられる。前記タデ科植物としては、ソバなどが挙げられる。
【0051】
前記裸子植物としては、マツ、スギ、イチョウ及びソテツなどが挙げられる。
【0052】
(タンパク質の金粒子への結合を促進する方法)
本発明のタンパク質の金粒子への結合を促進する方法は、陽イオン性タンパク質を添加することにより、タンパク質の金粒子への結合を促進する方法である。
前記陽イオン性タンパク質は、前述のとおりである。
【実施例
【0053】
(実施例1)
用いたbuffer
以下のbufferを用いて実験を行った。
【0054】
【表1】
【0055】
【表2】
【0056】
(実施例2)
Liposome(Lipopolyamine)の影響
方法
(1)1.5mLチューブに3μg SpCas9(TaKaRa)、1μg sgRNA、Nuclease-free water 2.0μL、×10 各種buffer 1μLを加え、ピペッティングにより、よく混ぜる。
(2)両親媒性分子である、Bis Imidazole ODAP(両親媒性分子1)または1,4-ビス(3-オレオイルアミドプロピル)ピペラジン/ヒストンH1タンパク質混粒子(3:1)(両親媒性分子2)(1330μg/mLを1.25μL)、360μg 金粒子(直径0.6μm)を添加し、ピペッティングにより混ぜ、10分間静置(最終volume 10μL)する。
(3)遠心後、上清を新しいエッペンチューブへ移し、×2 SDS-PAGE用sample buffer 10μLを加え、95℃3分間加熱する。
(4)SDS-PAGEによりタンパク質(Cas9)を分離後、CBB染色する。
(5)各処理区において、Cas9タンパク質由来のバンドを定量化する。コントロール(金粒子なし)のバンドと比較し、金粒子に吸着したと考えられるCas9タンパク質量を算出する。
【0057】
結果を図2~4に示す。図2は両親媒性分子非存在下において、各種buffer(A-H)を用いた際のタンパク質の金粒子への結合量を調べた結果である。タンパク質の金粒子への結合量は、各種buffer組成(表1参照)に関わらず、40%-55%と低かった。
【0058】
図3は両親媒性分子として1,4-ビス(3-オレオイルアミドプロピル)ピペラジン/ヒストンH1タンパク質を使用し、各種buffer(A-I)を用いた際のタンパク質の金粒子への結合量を調べた結果である。
1,4-ビス(3-オレオイルアミドプロピル)ピペラジン/ヒストンH1タンパク質存在下における、塩濃度のタンパク質の金粒子への結合量は、各種buffer組成(表1参照)に関わらず高かった(図3)。
【0059】
図4はTris-HClの終濃度を1.0mM、NaClの終濃度を0-35mMとし(表2参照)、両親媒性分子として1,4-ビス(3-オレオイルアミドプロピル)ピペラジン/ヒストンH1タンパク質を使用した際のタンパク質の金粒子への結合量を調べた結果である。図4に示すように、1,4-ビス(3-オレオイルアミドプロピル)ピペラジン/ヒストンH1タンパク質を10%添加した場合、塩濃度にかかわらずほぼ100%のタンパク質の金粒子への結合量を示した。ただし、NaClが0mMの場合は、タンパク質の金粒子への結合量は85%程度に低下し、また、NaClの終濃度が15mMを超えると、タンパク質の金粒子への結合量は減少した。すなわち、1,4-ビス(3-オレオイルアミドプロピル)ピペラジン/ヒストンH1タンパク質を添加した場合の好ましいNaClの終濃度は15mM以下と考えられる。
【0060】
(実施例3)
両親媒性分子添加による茎頂へのRNP導入効率の向上
方法
(1)1.5 mLチューブに12μg SpCas9(TaKaRa)、5μg sgRNA、Ribolock(Rnase inhibitor,Thermo Fisher Scientific) 1μL、×10 Cut Smart buffer 4μL,New England Biolabs、Nuclease-free water 5μLを加え、ピペッティングにより、よく混ぜる。
(2)室温10分間静置した後、Bis Imidazole ODAPまたは1,4-ビス(3-オレオイルアミドプロピル)ピペラジン/ヒストンH1タンパク質混合物(3:1、1330μg/mL)を0.5-5μL加え、さらに室温で5分間静置する。
(3)1800μg金粒子を加え、氷上で10分間静置する。
(4)遠心後上清を捨て、21μL Nuclease-free water+5μL GFP plasmid(1μg/μL)を加え、超音波処理により攪拌する。
(5)疎水性フィルム(マクロキャリア)または親水性フィルムに6μLずつ塗布し、4回/30茎頂/プレートの撃ち込みを行う。
(6)翌日、GFP蛍光を有する茎頂を数え、GFP plasmid(Cas9タンパク質)が撃ち込まれた茎頂の割合を算出する。
【0061】
結果を表3に示す。疎水性フィルムを用いた場合では、本実験条件下においては、両親媒性分子の有無に関わらず、茎頂でのGFP発現は見られなかった。一方、親水性フィルムを用いた場合、両親媒性分子の非存在下では、茎頂でのGFP発現効率は23.3%程度であった。一方、両親媒性分子を添加することで、その効率は80%以上となることがわかった。よって、本発明の被覆方法によれば、金粒子へのタンパク質の結合が促進されるだけでなく、マクロキャリアからの撃ち出しの効率も高くなることがわかった。
【0062】
【表3】
【0063】
(実施例4)
両親媒性分子によるゲノム編集個体の取得
方法
(1)1.5 mLチューブに12μg SpCas9(TaKaRa)、5μg sgRNA、Ribolock(Rnase inhibitor) 1μL、×10 Cut Smart buffer 4μL、Nuclease-free water 5μLを加え、ピペッティングにより、よく混ぜる。
(2)室温10分間静置した後、1,4-ビス(3-オレオイルアミドプロピル)ピペラジン/ヒストンH1タンパク質混合物(3:1、1330μg/mL)を5μL加え、さらに室温で5分間静置する。
(3)1800μg 金粒子を加え、氷上で10分間静置する。
(4)遠心後上清を捨て、26μL Nuclease-free waterを加え、超音波処理により攪拌する。
(5)親水性フィルムに6μLずつ塗布し、4回/30茎頂/プレートの撃ち込みを行う。
(6)翌日、茎頂においてGFP蛍光の見られる個体を選抜し、そのまま生育させる。GFPプラスミドを導入していない場合は、全個体をそのまま生育させる。
(7)T0世代第5葉、止葉およびT1世代幼葉をサンプリングし、CAPS解析により、変異の有無を確認する。
【0064】
ゲノム編集の標的遺伝子としてはコムギTaGASR7遺伝子を用いた。sgRNA標的配列として、CCGCCGGGCACCTACGGCAAC(配列番号1、下線部はPAM配列)
を用いた。sgRNA(crRNA+tracrRNA)のうち、crRNAには、
GUUGCCGUAGGUGCCCGGguuuuagagcuaugcuguuuug(配列番号2)
を用いた。Cas9はTaKaRa社から購入したSpCas9タンパク質を用いた。上記標的配列をCRISPR-Cas9で切断(DSB)し、DSB修復過程で起こる塩基挿入/欠失をCAPS解析(PCR+制限酵素処理)により検出した(特開2017-205104の実施例13参照)。
【0065】
結果を表4に示す。両親媒性分子の未添加時には、ゲノム編集された個体は見られなかった。
【0066】
【表4】
【0067】
1,4-ビス(3-オレオイルアミドプロピル)ピペラジン/ヒストンH1タンパク質を用いて被覆金粒子を調製したところ、GFPプラスミドの有無に関わらず、制限酵素BcnIで切断されないバンドが見られた。すなわち、表4に示すように、ゲノム編集が起きていることが1%以上の効率で確認された。
【0068】
以上より、本発明の金粒子へのタンパク質結合法は植物のゲノム編集に有効であることが示された。
【0069】
本発明の態様としては、例えば、以下のものなどが挙げられる。
<1> 両親媒性分子及びタンパク質を含む溶液を用いて、金粒子を被覆する方法である。
<2> 両親媒性分子及びタンパク質を含む溶液を用いて、該タンパク質を被覆した被覆金粒子を製造する方法である。
<3> 両親媒性分子及びタンパク質を含む溶液を用いて、金粒子を被覆する工程と、該被覆した金粒子をマクロキャリアにスポットする工程と、を有する、金粒子をスポットしたマクロキャリアの製造方法である。
<4> 両親媒性分子及びタンパク質を含む溶液を用いて、金粒子を被覆する工程と、該被覆した金粒子をマクロキャリアにスポットする工程と、該マクロキャリアを遺伝子銃に用いて細胞にタンパク質を撃ち込む工程と、を有する、細胞へのタンパク質導入方法である。
<5> 前記両親媒性分子及びタンパク質を含む溶液が、さらに核酸を含む、前記<1>~<4>のいずれかに記載の方法である。
<6> 前記マクロキャリアが親水性フィルムである、前記<3>~<5>のいずれかに記載の方法である。
<7> 前記両親媒性分子が、リポソーム、1,4-ビス(3-オレオイルアミドプロピル)ピペラジン、またはBis Imidazole ODAPである、前記<1>~<6>のいずれかに記載の方法である。
<8> 前記両親媒性分子及びタンパク質を含む溶液が、さらに、ヒストンH1タンパク質を含む、前記<1>~<7>のいずれかに記載の方法である。
<9> ゲノム編集方法である、前記<5>~<8>のいずれかに記載の方法である。
<10> 前記<4>~<8>のいずれかに記載の方法によりタンパク質および/または核酸を導入された細胞、組織、器官、生物個体ならびに/またはその後代および/もしくは種子である。
<11> 前記<5>~<9>のいずれかに記載の方法によりゲノム編集された、細胞、組織、器官生物個体ならびに/またはその後代および/もしくは種子である。
<12> 陽イオン性タンパク質を添加することにより、タンパク質の金粒子への結合を促進する方法である。
<13> 前記陽イオン性タンパク質がヒストンH1タンパク質である、前記<12>に記載の方法である。
<14> さらに、両親媒性分子を添加することを特徴とする、前記<12>または<13>に記載の方法である。
<15> 前記両親媒性分子が、1,4-ビス(3-オレオイルアミドプロピル)ピペラジンである、前記<14>に記載の方法である。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明は、バイオテクノロジー産業、農業、新品種育種産業等において利用できる。
図1
図2
図3
図4
【配列表】
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