(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】ポインティング装置
(51)【国際特許分類】
G06F 3/0346 20130101AFI20240110BHJP
G03B 21/00 20060101ALI20240110BHJP
G03B 21/26 20060101ALI20240110BHJP
G03H 1/04 20060101ALI20240110BHJP
G06F 3/01 20060101ALI20240110BHJP
G06F 3/038 20130101ALI20240110BHJP
G06F 3/04815 20220101ALI20240110BHJP
G06T 7/70 20170101ALI20240110BHJP
【FI】
G06F3/0346 422
G03B21/00 D
G03B21/26
G03H1/04
G06F3/01 510
G06F3/038 310
G06F3/04815
G06T7/70 A
(21)【出願番号】P 2018246528
(22)【出願日】2018-12-28
【審査請求日】2021-10-25
【審判番号】
【審判請求日】2023-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】504174180
【氏名又は名称】国立大学法人高知大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 直樹
(72)【発明者】
【氏名】老川 稔
(72)【発明者】
【氏名】森 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 康平
【合議体】
【審判長】岩間 直純
【審判官】山内 裕史
【審判官】野崎 大進
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-163968(JP,A)
【文献】特開2005-114996(JP,A)
【文献】特開2015-149648(JP,A)
【文献】国際公開第2015/072150(WO,A1)
【文献】特開2016-149094(JP,A)
【文献】川島 徹也,”ホログラフィックプロジェクタによる非平行面への映像投影”,IMPS IMAGE MEDIA PROCESSING SYMPOSIUM 2014,2014年12月22日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/01
G06F 3/03-3/038
G06F 3/048-3/04895
G03H 1/00-5/00
G03B 21/00-21/30
G06T 7/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザが操作体を用いて
該操作体から離間した対象領域内にポインティングを行うためのポインティング装置であって、
前記操作体の映像を取得する撮影手段と、
前記操作体の映像に基づいて、前記操作体が前記対象領域内において指し示す位置である指示位置を特定する指示位置特定手段と、
前記指示位置特定手段によって特定された指示位置に、計算機合成ホログラムによる点状の立体像を表示させる立体像表示手段と、
を備えた、ポインティング装置。
【請求項2】
前記立体像表示手段は、前記指示位置が移動した場合に、移動前の指示位置における立体像の表示を継続させる、請求項1に記載のポインティング装置。
【請求項3】
前記対象領域とは異なる場所に設けられた第2の対象領域における前記指示位置と対応する位置に、計算機合成ホログラムによる第2の立体像を表示させる第2の立体像表示手段をさらに備えた、請求項1または2に記載のポインティング装置。
【請求項4】
前記第2の対象領域は、前記対象領域と合同または相似である、請求項3に記載のポインティング装置。
【請求項5】
前記第2の立体像表示手段は、前記指示位置が移動した場合に、移動前の指示位置に対応する第2の立体像の表示を継続させる、請求項3または4に記載のポインティング装置。
【請求項6】
前記撮影手段は、前記操作体の位置座標を測定可能な深度カメラであり、
前記指示位置特定手段は、前記操作体の映像および位置座標に基づいて、前記指示位置を特定する、請求項1~5のいずれかに記載のポインティング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザが操作体を用いて対象領域内にポインティングを行うためのポインティング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、プロジェクタの投影画像等に対して離れた場所からポインティングを行うために、レーザーポインタが用いられている。さらに、特許文献1および非特許文献1~3には、レーザーポインタに代わるポインティング技術が開示されている。
【0003】
特許文献1には、ユーザの指をポインティングデバイスとして撮影し、撮影した画像に基づいてプロジェクタの投影画像における指示位置を特定し、特定された指示位置にアイコンを表示する技術が開示されている。さらに、特許文献1には、複数のユーザの指示位置の対応関係をわかりやすく提示する技術も開示されている。
【0004】
非特許文献1は、任意の空間に自由に手書きで文字や絵を書き込むことのできる装置に関する従来技術である。非特許文献1では、空中に手書きで書き込むために、ユーザの立ち位置やペンの空間座標を取り込むための位置センサ、ペンの動きや顔の向きを検出する加速度センサ、ユーザごとのペンの動きを記録し複数のユーザに配信するためのサーバと無線LAN、サーバからの情報を視覚化する小型PC、および、書き込まれた情報を見るためのHMD(Head Mounted Display)を用いている。
【0005】
同様に、非特許文献2は、任意の空間に自由に手書きで文字や絵を書き込むことのできる装置に関する従来技術である。非特許文献2では、仮想空間に指によって描かれた軌跡を手書き情報として共有するために、スマートグラスを用いている。
【0006】
非特許文献3は、インタラクティブな3Dディスプレイで、ペンで示した空間中に3次元的なスケッチを描いたり、商品や展示物などの現実物体の上に立体映像を重ねたり、展示台の上に立体映像を投影して展示台を動かした時に3D映像も動くように実物体を介したインタラクションを行う、といった現実空間と情報空間とが3次元的に融合したインタラクティブ体験を提供する従来技術である。非特許文献3では、3D表示について、モーションキャプチャセンサ、液晶ディスプレイ、フレネルレンズ、およびアクティブシャッターを用いて両眼視差により実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【非特許文献】
【0008】
【文献】山本吉紳、椎尾一郎、「空気ペン―空間への描画による情報共有-」、情報処理学会第59回全国大会講演論文集 第4分冊、pp.39-40、1999年
【文献】長田剛典、佐々木雅茂、島田秀輝、佐藤健哉、「スマートグラスを用いた仮想空間への手書き情報共有システム」、情報処理学会第77回全国大会講演論文集、第1分冊、pp.205-206、2015年
【文献】Y. Ueda、H. Nii、K. Minamizawa、S. Tachi、「HaptoMIRAGE: An Active-Shuttered Real Imaged Auto-Stereoscopic Display」、Proceedings of International Display Workshops、vol.22、pp.796-799、2015年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1の従来技術では、アイコンがプロジェクタによって表示されるため、平坦ではない3次元的な物体の表面に対しては、アイコンの焦点を合わすことができないという問題がある。また、非特許文献1および2の従来技術では、HMDやスマートグラスといった専用の装置が必要になるという問題がある。また、非特許文献3の従来技術では、システムが大規模となる、3D表示できる空間の大きさがLCDパネルの大きさに依存している、ポインティングデバイスに専用のペンが必要となる、といった問題があり、両眼視差を用いていることによる視覚疲労も懸念される。
【0010】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであって、専用のデバイスを用いることなく、容易にポインティング操作を行うことができるポインティング装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、計算機合成ホログラム(CGH)による立体像を指示位置に表示することにより、上記課題を解決できることを見出した。
【0012】
本発明はかかる知見に基づいて完成したものであり、下記の態様を有する。
項1.
ユーザが操作体を用いて対象領域内にポインティングを行うためのポインティング装置であって、
前記操作体が前記対象領域内において指し示す位置である指示位置を特定する指示位置特定手段と、
前記指示位置特定手段によって特定された指示位置に、計算機合成ホログラムによる立体像を表示させる立体像表示手段と、
を備えた、ポインティング装置。
項2.
前記立体像表示手段は、前記指示位置が移動した場合に、移動前の指示位置における立体像の表示を継続させる、項1に記載のポインティング装置。
項3.
前記対象領域とは異なる場所に設けられた第2の対象領域における前記指示位置と対応する位置に、計算機合成ホログラムによる第2の立体像を表示させる第2の立体像表示手段をさらに備えた、項1または2に記載のポインティング装置。
項4.
前記第2の対象領域は、前記対象領域と合同または相似である、項3に記載のポインティング装置。
項5.
前記第2の立体像表示手段は、前記指示位置が移動した場合に、移動前の指示位置に対応する第2の立体像の表示を継続させる、項3または4に記載のポインティング装置。
項6.
前記立体像表示手段の代わりに、
前記指示位置特定手段によって特定された指示位置に、立体像ではないポインタを表示させるポインタ表示手段を備えた、項3~5のいずれかに記載のポインティング装置。
項7.
前記操作体の映像を取得する撮影手段をさらに備え、
前記指示位置特定手段は、前記操作体の映像に基づいて、前記指示位置を特定する、項1~6のいずれかに記載のポインティング装置。
項8.
前記撮影手段は、前記操作体の位置座標を測定可能な深度カメラであり、
前記指示位置特定手段は、前記操作体の映像および位置座標に基づいて、前記指示位置を特定する、項7に記載のポインティング装置。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、専用のデバイスを用いることなく、容易にポインティング操作を行うことができるポインティング装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係るポインティング装置の概略図である。
【
図2】
図1に示すポインティング装置のブロック図である。
【
図3】空間光位相変調器に表示されるCGHの一例である。
【
図4】立体像の軌跡を描くためのポインティング操作の説明図である。
【
図5】立体像の軌跡を描くためのポインティング操作の説明図である。
【
図9】本発明の変形例に係るポインティング装置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。なお、本発明は、下記の実施形態に限定されるものではない。
【0016】
(装置構成)
図1は、本発明の一実施形態に係るポインティング装置1の概略図であり、
図2は、ポインティング装置1のブロック図である。ポインティング装置1は、ユーザが操作体を用いて対象領域内にポインティングを行うためのシステムであり、本実施形態では、ホワイトボードBを用いて講師が受講生(ユーザ)に対し講義を行う会場に設置されている。
図1に示すように、ポインティング装置1は、2台の深度カメラ2a,2bと、情報処理装置3と、ホログラフィックプロジェクタ4とを備えている。深度カメラ2a,2bおよびホログラフィックプロジェクタ4は、有線または無線によって情報処理装置3に接続されている。
【0017】
深度カメラ2aは、操作体の映像を取得する撮影手段である。本実施形態において、操作体はユーザの指Fであるが、ペンやスティックなど、ホワイトボードBの任意の位置を指し示すことができるものであれば特に限定されない。受講生が複数である場合、深度カメラ2aは、受講生全員を撮影可能な位置に設置されることが好ましい。深度カメラ2aは、被写体の位置座標を計測することが可能であり、深度カメラ2aによって取得された映像および位置座標のデータは、情報処理装置3に送信される。
【0018】
深度カメラ2bは、ホワイトボードBを撮影可能な位置に設置されている。深度カメラ2bによって取得された映像および位置座標のデータは、情報処理装置3に送信される。
【0019】
情報処理装置3は、操作体が対象領域内において指し示す位置である指示位置を特定する指示位置特定手段である。前記対象領域は、ユーザが指し示す対象となる領域であり、本実施形態では、ホワイトボードBの表面である。
【0020】
情報処理装置3は、例えば汎用のパーソナルコンピュータで構成することができる。
図2に示すように、情報処理装置3は機能ブロックとして、受信部31と、操作体/対象領域検出部32と、指示位置算出部33と、CGH作成部34とを備えている。これらの機能ブロックは、情報処理装置3のCPU(Central Processing Unit)および/またはGPU(Graphics Processing Unit)が所定のプログラムを実行することによりソフトウェア的に実現してもよいし、集積回路などによってハードウェア的に実現してもよい。
【0021】
受信部31は、深度カメラ2a,2bから映像および被写体の座標位置のデータを受信する。
【0022】
操作体/対象領域検出部32は、受信部31が受信したデータに基づいて、操作体および対象領域の形状および位置座標を検出する。操作体の検出は、公知の画像認識手法により、指Fの形状を映像から検出することにより行われる。対象領域の検出は、公知の画像認識手法により、ホワイトボードBの表面の形状および位置座標を検出することにより行われる。
【0023】
指示位置算出部33は、操作体/対象領域検出部32によって検出された操作体および対象領域の形状および位置座標に基づき、操作体が対象領域内において指し示す位置である指示位置を算出する。本実施形態では、操作体である指Fの指し示す方向(人差し指の長手方向)とホワイトボードBの表面との交点を指示位置として算出する。以上のようにして、情報処理装置3は、操作体が対象領域内において指し示す位置である指示位置を特定する。
【0024】
なお、指Fの指し示す方向がホワイトボードBの表面を通過しない場合、指示位置算出部33は指示位置が無いと判定する。
【0025】
CGH作成部34は、ホログラフィックプロジェクタ4が計算機合成ホログラム(CGH)による立体像を表示させるためのホログラムデータ(CGHデータ)を作成する機能ブロックである。より詳細には、CGH作成部34は、指示位置算出部33が算出した指示位置に基づき、ホワイトボードBにおける当該指示位置に立体像を表示するためのCGHデータを作成する。作成されたCGHデータは、ホログラフィックプロジェクタ4に送信される。
【0026】
ホログラフィックプロジェクタ4は、情報処理装置3によって特定された指示位置にCGHによる立体像Sを表示させる立体像表示手段であり、少なくともホワイトボードBの表面を含む領域に立体像Sを表示させることができる位置に設置されている。
図2に示すように、ホログラフィックプロジェクタ4は、光源41と、対物レンズ42と、コリメータレンズ43と、空間光位相変調器44とを備えている。
【0027】
光源41は、立体像の再生に使用される光源であり、コヒーレント光もしくは部分的なコヒーレント光を参照光として発生する。光源41としては、このような参照光を発生するものであれば特に限定されず、例えば、レーザ光源やLED光源を用いることができる。また、光源41の個数および光源41が発生する参照光の色も、特に限定されない。例えば、3つの光源からR、G、Bの3色の参照光を発生させることにより、あらゆる色の立体像を再生することができる。
【0028】
対物レンズ42およびコリメータレンズ43は、光源41から出射された参照光を平行光にするために用いる光学素子である。なお、コリメータレンズ43を通過した光は、必ずしも平行でなくてもよい。
【0029】
空間光位相変調器44は、前記参照光を回折させることによって立体像Sを再生させる素子である。CGH作成部34からのCGHデータに基づき、空間光位相変調器44にはCGHが表示され、CGHが空間光位相変調器44に入射した参照光を回折させることにより、空間光位相変調器44の参照光の入射面と反対側の空間上に立体像Sが再生される。空間光位相変調器44として、透過型または反射型の液晶ディスプレイ(LCD)やデジタルマイクロミラーデバイス(DMD)を用いることができる。
【0030】
図3は、空間光位相変調器44に表示されるCGH6の一例を示している。CGH6の白い部分は、参照光が空間光位相変調器44を透過する領域であり、CGH6の黒い部分は、参照光が空間光位相変調器44を透過しない領域である。CGH6によって、参照光が回折することにより、
図1および
図2に示すような立体像Sが現実空間に再生される。
【0031】
このようにして、ホログラフィックプロジェクタ4は、情報処理装置3によって特定された指示位置に、CGHによる立体像Sを表示させる。立体像Sの形状および大きさは、特に限定されないが、本実施形態では、直径が1cm程度の球形である。また、立体像Sの色および輝度も特に限定されないが、立体像Sが表示される位置の背景の色や明るさ等に応じて、適宜設定される。なお、ホログラフィックプロジェクタ4は、情報処理装置3の一部または全部の機能を兼ね備えていてもよい。
【0032】
ポインティング装置1を以上のように構成することにより、
図1に示すように、受講生がホワイトボードBの所望の地点を指Fで指し示した場合、深度カメラ2a,2bが指FおよびホワイトボードBの映像および位置座標を取得し、情報処理装置3が指示位置を特定する。そして、ホログラフィックプロジェクタ4が、情報処理装置3によって特定された指示位置に、CGHによる立体像Sを表示させる。これにより、受講生は、ホワイトボードB上の所望の位置を指し示すだけで、当該位置に点状の光を生成することができ、座席から移動することなく質問等を容易に行うことができる。
【0033】
さらに、本実施形態では、ホログラフィックプロジェクタ4は、指示位置が移動した場合に、移動前の指示位置における立体像の表示を継続させることができる。具体的には、
図2に示すCGH作成部34は、指示位置算出部33が算出する指示位置が変化するたびに、新たな指示位置に対応する現実空間の位置に立体像Sが追加的に表示されるようにCGHデータを更新する。これにより、指示位置の軌跡が表示されるため、線分、図形、さらには、これらを組み合わせた絵をCGHによって描くことができる。
【0034】
例えば、
図4に示すように、円周を描くように指Fを移動させた場合、これに伴い立体像Sも円周方向に移動する。このとき、立体像Sが移動するたびに、移動前の立体像Sの表示が継続するため、
図5に示すように、立体像Sの円形の軌跡が示される。
【0035】
このように、ポインティング装置1によって表示される立体像SはCGHによる立体像であるため、非特許文献1および2の従来技術のように、HMDやスマートグラスのような専用の装置を用いることなく、立体像Sを多人数で共有することができる。また、非特許文献3の従来技術とは異なり、立体像を表示できる空間の大きさの制約もなく、ポインティングのための専用のペンも不要であり、両眼視差を用いることによる視覚疲労の懸念もない。
【0036】
したがって、ユーザは、専用のデバイスを用いることなく、容易にポインティング操作を行うことができる。
【0037】
(適用例)
ポインティング装置1は、立体像Sをポインタとして表示するため、ホワイトボードのような平面だけでなく、凹凸のある3次元的な立体面にも明瞭でぼけがなく、ピントの合った立体像Sを表示することができる。
【0038】
例えば、
図6に示すように、展示されている車を指Fで指し示すことにより、車の表面上に立体像Sを表示することができる。これにより、展示物の説明やディスカッションを容易にすることができる。
【0039】
また、
図7に示すように、カップの側面を指Fによって非接触でなぞることにより、カップの表面に立体像Sからなる絵を描くことができ、且つ、何度も描き直すことができる。これにより、カップのデザインの検討が容易になる。なお、立体像Sによる線分の描写を開始および終了する方法は特に限定されないが、例えば、指の動き、もしくは、手の動きによるジェスチャによって行うことができる。
【0040】
(変形例)
上述の実施形態では、ユーザと立体像が表示される領域とが近接していたが、本変形例では、ユーザと立体像が表示される領域とが離れた場所に存在している形態について説明する。なお、本変形例において、上述の実施形態と同一の機能を有する部材については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0041】
図8は、本変形例の説明図であり、
図9は、本変形例に係るポインティング装置1’のブロック図である。
【0042】
図8に示すように、講師と受講生(ユーザ)とは互いに離れた場所に存在している。受講生が閲覧するホワイトボードB、および、講師が閲覧するホワイトボードB’には、それぞれプロジェクタ5,5’によって、同一の画像(円、正方形および正三角形)が表示されている。
【0043】
ホワイトボードB’の表面は、特許請求の範囲に記載の第2の対象領域に対応する。ホワイトボードB’の表面は、ホワイトボードBの表面と合同または相似であってもよいし、形状および大きさが多少異なってもよい。
【0044】
図9に示すように、ポインティング装置1’は、深度カメラ2a,2bと、情報処理装置3と、ホログラフィックプロジェクタ4と、情報処理装置3’と、ホログラフィックプロジェクタ4’とを備えている。情報処理装置3と情報処理装置3’とは、インターネットなどの通信ネットワークNによって接続されており、情報処理装置3’とホログラフィックプロジェクタ4’とは、有線または無線によって接続されている。なお、
図8においては、ポインティング装置1’の構成部材のうちホログラフィックプロジェクタ4,4’のみ示されている。
【0045】
情報処理装置3’は、例えば汎用のパーソナルコンピュータで構成することができる。
図9に示すように、情報処理装置3’は、機能ブロックとして、受信部35と、CGH作成部36とを備えている。
【0046】
受信部35は、情報処理装置3の指示位置算出部33が算出した指示位置のデータを受信する。
【0047】
CGH作成部36は、ホログラフィックプロジェクタ4’がCGHによる立体像を表示させるためのCGHデータを作成する機能ブロックである。より詳細には、CGH作成部36は、情報処理装置3の指示位置算出部33が算出した指示位置に基づき、ホワイトボードB’における当該指示位置と対応する位置に立体像を表示するためのCGHデータを作成する。作成されたCGHデータは、ホログラフィックプロジェクタ4’に送信される。なお、情報処理装置3でホワイトボードB’に表示するCGHを作成し、作成されたCGHを受信部35へ転送してもかまわない。その場合は、CGH作成部36はCGHデータの画像表示のみ行う。
【0048】
ホログラフィックプロジェクタ4’は、CGHによる立体像(第2の立体像)S’を表示させる機器であり、特許請求の範囲に記載の第2の立体表示手段に対応する。ホログラフィックプロジェクタ4’は、少なくともホワイトボードB’の表面を含む領域に立体像S’を表示させることができる位置に設置されている。ホログラフィックプロジェクタ4’の具体的な構成は、ホログラフィックプロジェクタ4と同一であることができ、ホログラフィックプロジェクタ4と同様、指示位置が移動した場合に、移動前の指示位置における立体像の表示を継続させることができる。また、ホログラフィックプロジェクタ4’は、情報処理装置3’の機能の一部または全部を兼ね備えていてもよい。
【0049】
ポインティング装置1’を上述のように構成することにより、
図8に示すように、受講生がホワイトボードB上の正三角形の図形を囲うように指し示した場合、上述の実施形態と同様に、深度カメラ2a,2bおよび情報処理装置3によって指示位置が特定され、ホログラフィックプロジェクタ4によって、ホワイトボードB上における正三角形の周囲に立体像Sの軌跡が描かれる。同時に、指示位置のデータが情報処理装置3’にも転送され、ホログラフィックプロジェクタ4’によって、ホワイトボードB’上における同じ位置、すなわち、正三角形の周囲に立体像S’の軌跡が描かれる。
【0050】
このように、ポインティング装置1’を遠隔講義システムに適用することにより、離れた場所で受講する受講生からの意志伝達をリアルタイムで容易に行うことができる。なお、本変形例は、
図6および
図7に示すような立体面に対するポインティング操作にも適用可能である。
【0051】
(付記事項)
本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、実施形態に開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0052】
例えば、上記の実施形態では、深度カメラ2a,2bを用いて操作体および対象領域の映像および位置情報を取得し、これに基づいて指示位置を特定していたが、指示位置を特定する手法は特に限定されない。例えば、被写体の位置情報を検知しない通常のカメラを用いて操作体の映像を取得し、映像のみに基づいて指示位置を特定してもよい。また、対象領域の位置情報を情報処理装置3に設定しておけば、深度カメラ2bを省略することができる。さらには、カメラなどの撮像装置を用いずに、指示位置を特定してもよい。
【0053】
また、
図8に示す例では、ホワイトボードB’だけでなく、受講生が閲覧しているホワイトボードB上にも立体像Sが表示される構成であったが、例えば、特許文献1に記載の技術のように、ホワイトボードB上には立体像ではないポインタを表示する構成としてもよい。すなわち、ホログラフィックプロジェクタ4の代わりに、情報処理装置3によって特定された指示位置に、立体像ではないポインタを表示させるポインタ表示手段を設けた構成としてもよい。
【符号の説明】
【0054】
1 ポインティング装置
1’ ポインティング装置
2a 深度カメラ(撮影手段)
2b 深度カメラ
3 情報処理装置(指示位置特定手段)
31 受信部
32 操作体/対象領域検出部
33 指示位置算出部
34 CGH作成部
3’ 情報処理装置
35 受信部
36 CGH作成部
4 ホログラフィックプロジェクタ(立体像表示手段)
41 光源
42 対物レンズ
43 コリメータレンズ
44 空間光位相変調器
4’ ホログラフィックプロジェクタ(第2の立体像表示手段)
5 プロジェクタ
5’ プロジェクタ
6 CGH
B ホワイトボード(対象領域)
B’ ホワイトボード(第2の対象領域)
F 指(操作体)
S 立体像
S’ 立体像