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特許7416404新規ダイズ根粒菌、植物生育促進剤、及びダイズ植物の栽培方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】新規ダイズ根粒菌、植物生育促進剤、及びダイズ植物の栽培方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/20 20060101AFI20240110BHJP
   A01G 7/00 20060101ALI20240110BHJP
   A01G 22/40 20180101ALI20240110BHJP
   A01H 6/54 20180101ALI20240110BHJP
   A01N 63/30 20200101ALN20240110BHJP
   A01P 21/00 20060101ALN20240110BHJP
【FI】
C12N1/20 A
A01G7/00 605Z
A01G22/40
A01H6/54
A01N63/30 ZNA
A01P21/00
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019224008
(22)【出願日】2019-12-11
(65)【公開番号】P2021090395
(43)【公開日】2021-06-17
【審査請求日】2022-08-22
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 研究集会名:第5回植物微生物共生と窒素固定に関するアジア国際会議 開催日 :2019年5月15日~17日 開催場所:東北大学片平キャンパスさくらホール
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度、平成31年・令和元年度、国立研究開発法人科学技術振興機構 国際科学技術共同研究推進事業「日欧ネットワークによる気候変動下におけるダイズ栽培技術革新」の委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
【微生物の受託番号】NPMD  NITE P-03029
【微生物の受託番号】NPMD  NITE P-03030
【微生物の受託番号】NPMD  NITE P-03031
【微生物の受託番号】NPMD  NITE P-03032
【微生物の受託番号】NPMD  NITE P-03033
(73)【特許権者】
【識別番号】504132881
【氏名又は名称】国立大学法人東京農工大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大津 直子
(72)【発明者】
【氏名】元 坤
(72)【発明者】
【氏名】横山 正
【審査官】坂崎 恵美子
(56)【参考文献】
【文献】臼木 一英, 土田 勝一,大豆の根粒菌接種において接種資材が根粒着生に及ぼす影響,日本作物学会講演会要旨集,Vol.223,2007年,100,https://doi.org/10.14829/jcsproc.223.0.100.0
【文献】北海道農研・北海道畑輪作研究チーム、中央農研・大豆生産安定研究チーム,大豆の根粒菌接種では菌液の局所接種やスプレー接種の効果が高い,北海道農業研究成果情報,2007年,https://www.naro.affrc.go.jp/org/harc/seika/h19/103.html
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/20
A01G 7/00
A01G 22/40
A01H 6/54
A01N 63/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
栽培環境における最高気温が25℃以下においてダイズ植物に根粒を形成し、受託番号NITE P-03029、NITE P-03030、NITE P-03031、NITE P-03032及びNITE P-03033で特定されるブラディリゾビウム エスピー(Bradyrhizobium sp.)GMF14株、GMM36株、GMF57株、GMM71株及びGEM96株のいずれかであるダイズ根粒菌。
【請求項2】
請求項記載のダイズ根粒菌を含む、植物生育促進剤。
【請求項3】
請求項記載のダイズ根粒菌若しくは請求項記載の植物生育促進剤をダイズ植物に作用させる、ダイズ植物の製造方法。
【請求項4】
上記ダイズ根粒菌又は上記植物生育促進剤を、上記ダイズ植物の根圏に供給することを特徴とする請求項記載のダイズ植物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイズの根に共生して窒素固定を行う新規なダイズ根粒菌(ブラディリゾビウムBradyrhizobium属細菌)、当該ダイズ根粒菌を含む植物生育促進剤及び当該ダイズ根粒菌を利用したダイズ植物の栽培方法に関する。
【背景技術】
【0002】
窒素固定細菌は作物根圏に緩く共生し、植物体に窒素栄養を供給することで生育促進効果を奏する細菌として知られている。窒素固定細菌のなかでもダイズの根に共生して窒素固定を行うダイズ根粒菌としては、ブラディリゾビウム ジャポニカム(Bradyrhizobium japonicum)やブラディリゾビウム エルカニ(Bradyrhizobium elkanii)等が知られている。
【0003】
しかし、これら従来公知のダイズ根粒菌は、低温環境における感染能力が著しく低いため、使用できる温度環境を厳密にコントロールするか、寒冷地を除く土地で使用する必要があった。例えば、特許文献1には、低温環境でも共生窒素固定活性が高いヘアリーベッチ根粒菌(Rhizobium lecuminosarum)について記載されている。また、特許文献2には、アルファルファおよびクローバー根粒菌であるRhizobium melilotiに属する低温耐性菌について記載されている。
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されたRhizobium lecuminosarum及び特許文献2に記載されたRhizobium melilotiのいずれもダイズ根に共生することはできず、ダイズ栽培における接種材として利用することはできない。
【0005】
また、非特許文献1には、ベネゼイラの土壌から高塩濃度及び高アルミニウムイオン耐性を有するダイズ根粒菌を探知したことが開示されている。しかし、非特許文献1で単離されたダイズ根粒菌は、低温条件下においてダイズ根に共生することはできず、低温環境下のダイズ栽培における接種材として利用することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第4955431号
【文献】国際公開WO1994/025568
【非特許文献】
【0007】
【文献】Microbes Environ. Vol. 34, No. 1, 43-58, 2019
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、上述したような実情に鑑み、低温環境においてダイズ植物の根に共生して窒素固定を行う新規なダイズ根粒菌、当該ダイズ根粒菌を利用した植物生育促進剤及びダイズ植物の栽培方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した目的を達成するため、本発明者らが鋭意検討した結果、ドイズライプニッツ農業景観研究センター周辺の圃場の土壌を分離源として新規なダイズ根粒菌を単離、同定することができた。本発明は、これら新規ダイズ根粒菌が有する窒素固定能に基づいてなされたものである。
【0010】
本発明は以下を包含する。
(1)低温条件下においてダイズ植物に根粒を形成し、ブラディリゾビウム(Bradyrhizobium)属に分類されるダイズ根粒菌。
(2)受託番号NITE P-03029、NITE P-03030、NITE P-03031、NITE P-03032及びNITE P-03033で特定されるブラディリゾビウム エスピー(Bradyrhizobium sp.)GMF14株、GMM36株、GMF57株、GMM71株及びGEM96株のいずれか又はその変異株であることを特徴とする(1)記載のダイズ根粒菌。
(3)上記(1)又は(2)記載のダイズ根粒菌を含む、植物生育促進剤。
(4)上記(1)又は(2)記載のダイズ根粒菌若しくは上記(3)記載の植物生育促進剤をダイズ植物に作用させる、ダイズ植物の製造方法。
(5)上記ダイズ根粒菌又は上記植物生育促進剤を、上記ダイズ植物の根圏に供給することを特徴とする(4)記載のダイズ植物の製造方法。
(6)最高気温20℃以下の温度環境で上記ダイズ植物を栽培することを特徴とする(4)記載のダイズ植物の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る新規なダイズ根粒菌は、低温環境下において優れた窒素固定能を有するため、ダイズ植物に対して優れた生育促進作用を示す。したがって、本発明に係るダイズ根粒菌を利用することによって、低温環境下で優れた生育促進作用を有する植物生育促進剤を提供することができる。また、本発明に係るダイズ根粒菌をダイズ植物の栽培に利用することによって、当該ダイズ植物の生育を低温環境下で促進できることとなり、植物製造に係るコストを大幅に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施例で使用した18種類の土壌の特徴をまとめた表である。
図2】ダイズ根粒菌を接種した後に栽培したダイズの地上部を撮像した写真である。
図3】ダイズ根粒菌を接種した後に栽培したダイズの地上部乾燥重量を測定した結果を示す特性図である。
図4】ダイズ根粒菌を接種した後に栽培したダイズの根粒乾燥重量を測定した結果を示す特性図である。
図5】ダイズ根粒菌を接種した後に栽培したダイズの地上部を撮像した写真である。
図6】ダイズ根粒菌を接種した後に栽培したダイズの葉の乾燥重量を測定した結果を示す特性図である。
図7】ダイズ根粒菌を接種した後に栽培したダイズの根の乾燥重量を測定した結果を示す特性図である。
図8】ダイズ根粒菌を接種した後に栽培したダイズの根粒の乾燥重量を測定した結果を示す特性図である。
図9】ダイズ根粒菌を接種した後に栽培したダイズの根粒の数を測定した結果を示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0014】
<新規ダイズ根粒菌>
本発明に係るダイズ根粒菌は、ブラディリゾビウム(Bradyrhizobium)属に分類され、低温環境下でダイズ植物の根部に共生する細菌である。ここで、窒素固定能とは、気体の窒素分子(N2)をアンモニアに変換する能力を意味する。本発明に係るダイズ根粒菌は、窒素固定能を有するために、根圏に生息することによって植物に窒素を供給することができる。
【0015】
窒素固定能については、いわゆるアセチレン還元法を用いて評価することができる。アセチレン還元法は、窒素固定を担うニトロゲナーゼがアセチレン等の窒素原子間の三重結合を有する化合物を還元する反応に基づいている。具体的に、アセチレン還元法では、アセチレンと根粒とを反応させ、エチレンの生成量を測定する。アセチレン還元法では、エチレンの生成量が多いほど、根粒菌による窒素固定能が高いと判断する。
【0016】
なお、窒素固定能については、例えば、窒素安定同位体自然存在比(δ15N値)を用いて評価することもできる。δ15N値は元素分析計を接続した質量分析計を用いて測定することができる。この方法は、土壌における15Nの自然存在比が高いために土壌由来窒素の原子量は重くなるのに対して、空気中における15Nの自然存在比が低いために空気由来窒素の原子量は軽くなるという原理に基づいている。すなわち、化学肥料由来の窒素や微生物による窒素固定で供給された窒素は、土壌中に存在する土壌由来の窒素原子より原子量が軽くなる。そのため、化学窒素肥料や微生物による窒素固定で供給された窒素を蓄積した植物体は、原子量の軽い窒素を多く含むこととなる。一方、土壌由来の窒素を吸収した植物体は、原子量の高い窒素を多く含むこととなる。したがって、供試微生物を植物体の根圏に生息させた後、当該植物体のδ15N値を測定することによって、微生物における窒素固定能を評価することができる。
【0017】
また、低温環境下でダイズ植物の根圏に共生するとは、例えば、栽培環境における最高気温が25℃以下、好ましくは20℃以下、より好ましくは18℃以下、更に好ましくは17℃以下といった低温条件下において、ダイズに対して根粒を形成することを意味する。すなわち、所定の細菌が低温環境下でダイズ植物の根圏に共生するか否かは、微生物として当該細菌のみを含む土壌を使用して上記低温条件下でダイズ植物を栽培し、栽培したダイズ植物における根粒の有無を確認する。根粒が形成されている場合には、供試した細菌が低温環境下でダイズ植物の根圏に共生する能力を有すると判断できる。
【0018】
本発明者らは、このような手法によってドイズライプニッツ農業景観研究センター周辺の圃場の土壌からブラディリゾビウム(Bradyrhizobium)属に分類され、低温環境下でダイズ植物の根部に共生する新規なダイズ根粒菌を複数単離している。本発明者は、これらのうち5つの新規ダイズ根粒菌をそれぞれブラディリゾビウム エスピー(Bradyrhizobium sp.)GMF14株、GMM36株、GMF57株、GMM71株及びGEM96株と命名し、独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター(NITE特許微生物寄託センター:〒292-0818千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8)に2019年9月26日付けで、それぞれ受託番号NITE P-03029、NITE P-03030、NITE P-03031、NITE P-03032及びNITE P-03033として寄託している。
【0019】
本発明に係るダイズ根粒菌は、当該受託番号NITE P-03029、NITE P-03030、NITE P-03031、NITE P-03032又はNITE P-03033で特定されるブラディリゾビウム エスピー(Bradyrhizobium sp.)GMF14株、GMM36株、GMF57株、GMM71株及びGEM96株並びに、当該GMF14株、GMM36株、GMF57株、GMM71株又はGEM96株と同一の株に分類され、且つ低温条件下で窒素固定能を有するブラディリゾビウム(Bradyrhizobium)属細菌に微生物を含むこととなる。
【0020】
また、受託番号NITE P-03029、NITE P-03030、NITE P-03031、NITE P-03032及びNITE P-03033で特定されるブラディリゾビウム(Bradyrhizobium)属細菌は、それぞれ配列番号1~5に示す塩基配列を含む16SrDNAを有している。したがって、本発明に係るダイズ根粒菌は、配列番号1~5に示す塩基配列のいずれかに対して95%以上、好ましくは98%以上、より好ましくは99%以上の相同性を有する塩基配列を含む16SrDNAを有するブラディリゾビウム(Bradyrhizobium)属細菌であって、低温条件下で窒素固定能を有する細菌を含むこととなる。
【0021】
さらに、受託番号NITE P-03029、NITE P-03030、NITE P-03031、NITE P-03032及びNITE P-03033で特定されるブラディリゾビウム(Bradyrhizobium)属細菌は、それぞれ配列番号6~10に示す塩基配列を含むrecA遺伝子を有している。したがって、本発明に係るダイズ根粒菌は、配列番号6~10に示す塩基配列のいずれかに対して95%以上、好ましくは98%以上、より好ましくは99%以上の相同性を有する塩基配列を含むrecA遺伝子を有するブラディリゾビウム(Bradyrhizobium)属細菌であって、低温条件下で窒素固定能を有する細菌を含むこととなる。
【0022】
さらにまた、受託番号NITE P-03029、NITE P-03030、NITE P-03031、NITE P-03032及びNITE P-03033で特定されるブラディリゾビウム(Bradyrhizobium)属細菌は、それぞれ配列番号11~15に示す塩基配列を含むatpD遺伝子を有している。したがって、本発明に係るダイズ根粒菌は、配列番号11~15に示す塩基配列のいずれかに対して95%以上、好ましくは98%以上、より好ましくは99%以上の相同性を有する塩基配列を含むatpD遺伝子を有するブラディリゾビウム(Bradyrhizobium)属細菌であって、低温条件下で窒素固定能を有する細菌を含むこととなる。
【0023】
<植物生育促進剤>
本発明に係るダイズ根粒菌における低温条件下における窒素固定能を利用することによって、植物に栄養窒素を供給することができる。すなわち、本発明に係るダイズ根粒菌は低温環境下において使用可能な植物生育促進剤として使用することができる。ここで、低温環境とは、例えば、栽培環境における最高気温が25℃以下、好ましくは20℃以下、より好ましくは18℃以下、更に好ましくは17℃以下である環境とすることができる。
【0024】
本発明に係るダイズ根粒菌を植物生育促進剤として利用する場合、例えば、以下に例示列挙するような培地を使用して適切な条件下で培養する。すなわち、使用可能な培地としては、ブラディリゾビウム(Bradyrhizobium)属細菌を培養可能な従来公知の培地を特に制限することなく使用することができる。例えば、Yeast extract-mannitol agar (YMA)培地(1Lの容量に対して、Yeast extract 0.4g、Mannitol 10g、K2HPO4 0.38g、MgSO4 7H2O 0.2g、NaCl 0.1g及びAgar 15g)等を使用することができる。また、培養条件としては、培養温度を20~30度、好ましくは28度とすることができ、培地pHは6.8が望ましい。
【0025】
以上のように培養された本発明に係るダイズ根粒菌を植物生育促進剤とする場合、本発明に係るダイズ根粒菌を単独で使用しても良いが、当該ダイズ根粒菌と他の任意成分とを配合して特定の製剤としてもよい。製剤の形態としては、例えば、液剤、粉剤、粒剤、乳剤、油剤、懸濁剤、水和剤、水溶剤、粒剤、ペースト剤、カプセル剤、煙霧剤(エアゾール剤)等を挙げることができる。
【0026】
他の任意配合としては、例えば、液体担体や固体担体等のダイズ根粒菌を担持するための担体、乳化剤、分散剤、消泡剤、補助剤等が挙げられる。液体担体としては、リン酸緩衝液、炭酸緩衝液、生理食塩水等が挙げられる。固体担体としては、カオリン、粘土、タルク、ベントナイト、チョーク、石英、アタパルジャイト、モンモリロナイト、ホワイトカーボン、珪藻土等の天然鉱物粉末、ケイ酸、アルミナ、ケイ酸塩等の合成鉱物粉末、チャコール、結晶性セルロース、コーンスターチ、ゼラチン、アルギン酸等の高分子性天然物が挙げられる。また、固体担体としては、例えば、バーミキュライト、ケイ砂、雲母、軽石、石こう、炭酸カルシウム、ドロマイト、マグネシウム、消石灰、リン石灰、ゼオライト、硫安などの無機物質を使用しても良い。また、固体担体としては、例えば、コンポスト、ピート、籾殻、糠、大豆粉、タバコ粉、クルミ粉、小麦粉、木粉、でんぷん、結晶セルロースなどの植物性有機物質を使用しても良い。さらに、固体担体としては、クマロン樹脂、石油樹脂、アルキド樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリアルキレングリコール、ケトン樹脂、エステルガム、コーパルガム、ダンマルガムなどの合成または天然の高分子化合物や、カルナバロウ、蜜ロウなどのワックス類及び尿素類等を使用しても良い。
【0027】
本発明に係る植物成長促進剤のダイズ根粒菌の含有量は、特に限定されないが、107~108cfu/mlとすることができる。
【0028】
一方、上述のように構成された植物生育促進剤は、特にダイズ植物ダイズ(Glycine max)の根圏に供給されることでダイズ植物の生育を促進する。但し、本発明に係る植物生育促進剤は、ダイズ以外の植物に対して利用され、ダイズ以外の植物の生育促進のために使用しても善い。ダイズ以外の植物としては、特に限定されないが、例えば、マメ科に属する植物(下記参照)が挙げられるが、これらの植物に限定されるものではない。マメ科植物としては、エンドウ(Pisum sativum)、ソラマメ(Vicia faba)、フジ(Wisteria floribunda)、ラッカセイ(Arachis hypogaea)、ミヤコグサ(Lotus corniculatus var. japonicus)、インゲンマメ(Phaseolus vulgaris)、アズキ(Vigna angularis)及びアカシア(Acacia)等をあげることができる。特に、本発明に係る植物生育促進剤は、ダイズ、アズキ等に使用することが好ましい。
【0029】
また、Mitchell Andrews et al., J. Mol. Sci. 2017, 18, 705に開示されるようにブラディリゾビウム(Bradyrhizobium)属細菌が感染しうる植物として以下を列挙することができる。すなわち、ブラディリゾビウム(Bradyrhizobium)属細菌が感染しうる植物としては、アカシア・アウリカリフォルミス(Acacia auriculiformis)、アカシア・マンギウム(Acacia mangium)、アカシア・マンギウム×アカシア(Acacia mangium × A. auriculiformis)、アカシア・メラノキシロン(Acacia melanoxylon)、アカシア ・サルグナ(Acacia saligna)、エスキノメネ・アフラスペラ(Aeschynomene afraspera)、エスキノメネ・アメリカーナ(Aeschynomene americana)、エスキノメネ・シリアタ(Aeschynomene ciliata)、エスキノメネ・エラフロキシロン(Aeschynomene elaphroxylon)、エスキノメネ・インディカ(Aeschynomene indica)、エスキノメネ・ルディス(Aeschynomene rudis)、エスキノメネ・スカブラ(Aeschynomene scabra)、エスキノメネ・センシティバ(Aeschynomene sensitiva)、エスキノメネ・シンペリ(Aeschynomene shimperi)、アモルファ・フルティコサ(Amorpha fruticosa)、アンフィカルパエア・ブラクレアタ(Amphicarpaea bracteata)、アンフィカルパエア・エジウオルティ(Amphicarpaea edgeworthii)、アラキス・デュラネンシス(Arachis duranensis)、アラキス・ヒポガイア(Arachis hypogaea)、アスパラサス・リネアリス(Aspalathus linearis)、カヤヌス・カジャン(Cajanus cajan)、カラガナ・インターメディア(Caragana intermedia)、セントロロビウム・パラエンセ(Centrolobium paraense)、セントロセマ・パセカオラム(Centrosema pascuorum)、セントロセマ・パベセンス(Centrosema pubescens)、クロタラリア・コモサ(Crotalaria comosa)、クロタラリア・ハイソピフォリア(Crotalaria hyssopifolia)、クロタラリア・ララチロイデス(Crotalaria lathyroides)、クロタラリア・パリダ(Crotalaria pallida)、シチサス・アエオリカス(Cytisus aeolicus)、シチサス・バランサエ(Cytisus balansae)、シチサス・ラバーナム(Cytisus laburnum)、シチサス・マルチフロラス(Cytisus multiflorus)、シチサス・プロリフェラス(Cytisus proliferus)、シチサス・パーガンス(Cytisus purgans)、シチサス・スコパリウス(Cytisus scoparius)、シチサス・ストリアタス(Cytisus striatus)、シチサス・ビロサス(Cytisus villosus)、ダルベルギア・バローニ(Dalbergia baroni)、ダルベルギア・ルーベリ(Dalbergia louveli)、ダルベルギア・マダガスカリエンシス(Dalbergia madagascariensis)、ダルベルギア・マリティマ(Dalbergia maritima)、ダルベルギア・モンティコラ(Dalbergia monticola)、ダルベルギア・プルプラセン(Dalbergia purpurascens)、ダルベルギア sp.(Dalbergia sp.)、デスモジウム・コーディタム(Desmodium caudatum)、デスモジウム・エレガンス(Desmodium elegans)、デスモジウム・ファラクス(Desmodium fallax)、デスモジウム・ガンゲティカム(Desmodium gangeticum)、デスモジウム・ヘテロカルパン(Desmodium heterocarpan)、デスモジウム・ミクロフィラム(Desmodium microphyllum)、デスモジウム・ラセモサム(Desmodium racemosum)、デスモジウム・セクアックス(Desmodium sequax)、デスモジウム・トリフロラム(Desmodium triflorum)、ファイデルビア・アルビダ(Faidherbia albida)、ジェニスタ・ヒステリック(Genista hystrix)、ジェニスタ・ステノペチュラ(Genista stenopetula)、ジェニスタ・ベルシカラー(Genista versicolor)、グリシン・マックス(Glycine max)、グリシン・ソジャ(Glycine soja)、インディゴフェラ・アストラガリナ(Indigofera astragalina)、インディゴフェラ・ヒルスタ(Indigofera hirsuta)、インディゴフェラ・セネガセンシス(Indigofera senegalensis)、インディゴフェラ・ティンクトリア(Indigofera tinctoria)、インガ・エデュリス(Inga edulis)、インガ・ラウリナ(Inga laurina)、クンメロビア・スティプラセア(Kummerowia stipulacea)、クンメロビア・ストリアタ(Kummerowia striata)、ラブラブ・パープレウス(Lablab purpureus)、レスペデザ・バイカラー(Lespedeza bicolor)、レスペデザ・カピタータ(Lespedeza capitata)、レスペデザ・クネアータ(Lespedeza cuneata)、レスペデザ・ダウリカ(Lespedeza daurica)、レスペデザ・ジュンセア(Lespedeza juncea)、レスペデザ・プロカンベンス(Lespedeza procumbens)、レスペデザ・スチプラセア(Lespedeza stipulacea)、レスペデザ・ストリアタ(Lespedeza striata)、ロトノニス sp(Lotononis sp.)、ロータス・ウリギノサス(Lotus uliginosus)、ルピナス・アルベセンス(Lupinus albescens)、ルピナス・アルバス(Lupinus albus)、ルピナス・アングスティフォリウス(Lupinus angustifolius)、ルピナス・ルテウス(Lupinus luteus)、ルピナス・マリアエ-ジョセファエ(Lupinus mariae-josephae)、ルピナス・ミクランサス(Lupinus micranthus)、ルピナス・モンタナス(Lupinus montanus)、ルピナス・ポリフィラス(Lupinus polyphyllus)、ルピナス sp(Lupinus sp.)、ミクロロビウス・フォエティダス(Microlobius foetidus)、ミレティア・レウカンサ(Milletia leucantha)、ミモザ・プディカ(Mimosa pudica)、ネオノトニア ・ウエイティ(Neonotonia wightii)、オーニトプス・コンプレサス(Ornithopus compressus)、オーニトプス・サティバス(Ornithopus sativus)、パキリヒス・エロサス(Pachyrhizus erosus)、パキリヒス・フェラギネウス(Pachyrhizus ferrugineus)、パキリヒス・ツベロス(Pachyrhizus tuberosus)、ファセオラス・ルナタス(Phaseolus lunatus)、ファセオラス・バルガリス(Phaseolus vulgaris)、プロソピス・アルバ(Prosopis alba)、ソラレア・ピンナタ(Psoralea pinnata)、プテロカルプス・インディカス(Pterocarpus indicus)、プテロカルプス・オフィシナリス(Pterocarpus officinalis)、プエラリア・パセオロイデス(Pueraria phaseoloides)、レタマ・モノスペルマ(Retama monosperma)、レタマ・レイタム(Retama raetam)、レタマ・スファエロカルパ(Retama sphaerocarpa)、リンコシア・ミニマ(Rhynchosia minima)、リンコシア・トッタ(Rhynchosia totta)、セスバニア・ロストラタ(Sesbania rostrata)、ソフォラ・フラベセンス(Sophora flavescens)、スパルチアム・ジュンセラム(Spartium junceum)、ストリフェノデンドロン sp(Stryphnodendron sp.)、テフィロシア・カペンシス(Tephrosia capensis)、テフィロシア・ファルシフォルミス(Tephrosia falciformis)、テフィロシア・パープレア(Tephrosia purpurea)、テフィロシア・ビローサ(Tephrosia villosa)、トリフォリウム・ファギフェラス(Trifolium fragiferum)、トリフォリウム・レペンス(Trifolium repens)、ユレックス・ユーロパエウス(Ulex europaeus)、ヴァケリア・ヌビカ(Vachellia nubica)、ヒグナ・アンギュラリス(Vigna angularis)、ヒグナ・ラジアータ(Vigna radiata)、ヒグナ・シネンシス(Vigna sinensis)、ヒグナ・サブテラナエ(Vigna subterranea)、ヒグナ・アングイカラタa(Vigna unguiculata)、キシリア・キシロカルパ(Xylia xylocarpa)及びゾロニア・グロキディアタ(Zornia glochidiata)を挙げることができる。
【実施例
【0030】
以下、実施例を用いて本発明を更に詳細に説明するが、本発明の技術的範囲は以下の実施例に限定されるものではない。
【0031】
〔実施例1〕
(ダイズ根粒菌の分離)
2017年11月に、ドイツライプニッツ農業景観研究センター周辺の18か所の圃場から採取した土壌を、植物防疫所の手続きを経て、日本に同年12月に輸入した。これら18か所の圃場の情報を図1にまとめた。これら土壌からの根粒菌の分離は下記の手順で行った。ダイズは日本及び欧州の代表的な品種であるエンレイ及びメルリンを用いた。エンレイ及びメルリンはそれぞれ以下のような特徴を有する。なお、エンレイは日本の代表的な品種であり、外観品質がよく広域適応性の高い中生種である。エンレイはタンパク質含有率が高く豆腐加工に好適で、味噌加工にも適している。メルリンは中央欧州で広く用いられている早熟性の品種である。エンレイと比較すると低温耐性はあるが、タンパク質含有率は低く、家畜飼料として用いられている。
【0032】
<<手順>>
1. ダイズ種子の表面を70%エタノールで1分間、続いて3%次亜塩素酸で2分間殺菌した。
2. 速やかに滅菌蒸留水で繰り返し8回洗浄し、次亜塩素酸を十分に洗い流した。
3. 表面殺菌したダイズ種子を暗黒下で20℃、3日培養し、発芽させた。
4. オートクレーブで滅菌したバーミキュライト(ヒルイシ化学社製、Hirukon S)を300mlのガラス瓶に詰め、さらに上記土壌5gを全体に混合し、滅菌した窒素を含まない植物培養液で湿らせた。
5. 上記3.で発芽処理したダイズ種子を上記4.で調製した培地に深さ約1cmで播種した。
6. ダイズ植物を25℃、16時間明、8時間暗の光条件で28日間栽培した。
7. 根に着生した根粒表面を70%エタノールで1分間、続いて3%次亜塩素酸で2分間殺菌した。
8. 上記7.で殺菌した根粒を、1個の根粒あたり0.5 mlの15%グリセロール溶液中でつぶし、懸濁液をYeast extract-mannitol (YEM)平面培地上に塗布した。
9. 30℃、暗条件のインキュベーター内で3~7日間培養した。
10. 根粒菌の単一コロニーを取り、新しいYEM培地に移し替えた。
【0033】
上記10.においてYEM培地に塗布した単一コロニーを4、15、28、37又は44℃の各温度下で7~14日培養した。その結果、18種類の異なる土壌サンプルから77種類のダイズ根粒菌を得ることができ、その中でも15℃以下で生育できる5つの根粒菌を単離することができた。これら5つの根粒菌をGMF14、GMM36、GMF57、GMM71及びGEM96と命名した。これらGMF14とGMF57は4℃という低温でも増殖できる根粒菌であることがわかった。また、これら全ての根粒菌は、44℃では増殖できず、37℃で増殖できることがわかった。
【0034】
(分離したダイズ根粒菌の同定)
分離した5つの根粒菌GMF14、GMM36、GMF57、GMM71及びGEM96の全ゲノムDNAをDNA抽出キット(プロメガ社製、Wizard (登録商標)Genomic DNA Purification Kit)を用いてそれぞれ抽出した。抽出したゲノムDNAを鋳型として、分離した根粒菌の16SrRNA遺伝子、recA遺伝子及びatpD遺伝子のほぼ全領域をPCRで増幅した。なお、16SrRNA遺伝子、recA遺伝子及びatpD遺伝子を増幅するためのユニバーサルプライマーの塩基配列を表1に示した。
【0035】
【表1】
【0036】
また、各遺伝子についてPCRの温度サイクル条件を表2に示した。
【0037】
【表2】
【0038】
PCR産物はアガロースゲル電気泳動を行い、ニッポンジーン社製FastGene Gel/PCR Extractionキットにより精製後、ユーロフィンジェノミクス社のDNAシークエンス解析により塩基配列を決定した。そして、得られた塩基配列情報を用いてMultilocus sequence (MLSA)解析を行った。MLSA解析では、決定した16SrRNA遺伝子、recA遺伝子及びatpD遺伝子の塩基配列を合わせ、GenBankに登録されている既存の塩基配列と比較する方法を採用した。この方法により、GMF14、GMM36、GMF57、GMM71及びGEM96は、既存の菌株の中ではBradyrhizobium sp. VAF1269と最も相同性が高く、Bradyrhizobium sp.と同定された。ただし、比較した全ての塩基配列は100%一致ではなかったため、既存のBradyrhizobium sp. VAF1269とは異なる新規のBradyrhizobium sp.株であることが明らかとなった。
【0039】
なお、本実施例で決定したGMF14、GMM36、GMF57、GMM71及びGEM96における16SrRNA遺伝子、recA遺伝子及びatpD遺伝子の塩基配列に関する配列番号を表3にまとめて示した。
【0040】
【表3】
【0041】
以上、本実施例では、18種類の異なる土壌サンプルから、GMF14、GMM36、GMF57、GMM71及びGEM96を含む77種類のダイズ根粒菌を分離したが、そのうち71%がブラディリゾビウム属と同定され、29%がリゾビウム属と同定された。
【0042】
また、GMF14、GMM36、GMF57、GMM71及びGEM96について、nodD遺伝子及びnifH遺伝子の塩基配列を比較分析したところ、有意な違いは示されなかった。この結果から、GMF14、GMM36、GMF57、GMM71及びGEM96における共生遺伝子が1つのタイプのみに属することが示唆された。なお、nodD遺伝子は根粒を形成する際に働くタンパク質をコードし、nifHは窒素固定を担う酵素であるニトロゲナーゼタンパク質をコードしている。
【0043】
本実施例で単離したBradyrhizobium sp. GMF14、GMM36、GMF57、GMM71及びGEM96は、上記MLSA解析の結果と、低温条件下でダイズに根粒を形成する点で公知のBradyrhizobium sp. VAF1269(Microbes Environ. Vol. 34, No. 1, 43-58, 2019)とは異なる新規株である判定した。本実施例で単離したBradyrhizobium sp. GMF14、GMM36、GMF57、GMM71及びGEM96は、独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター(NITE特許微生物寄託センター:〒292-0818千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8)に2019年9月26日付けで受託番号NITE P-03029、NITE P-03030、NITE P-03031、NITE P-03032及びNITE P-03033でとしてそれぞれ寄託した。
【0044】
〔実施例2〕
本実施例では、実施例1で単離・同定したBradyrhizobium sp. GMF14、GMM36、GMF57、GMM71及びGEM96について、低温条件下におけるダイズポッド栽培での根粒菌接種試験を行った。なお、本実施例では、コントロールとして既知のモデル根粒菌であるBradyrhizobium USDA110株を使用した。
【0045】
本実施例では、先ず、ダイズ品種メルリンの種子を、実施例1の<<手順>>と同様に表面殺菌し、その後、発芽処理を行った。発芽種子は、実施例1と同様に滅菌したバーミキュライトを詰めて無窒素水耕液で締めさせた300mlガラスポッドに播種した。その際、2mlの根粒菌培養液(107の菌数を含む)を、播種した箇所にかけることにより接種した。ダイズは温度及び光を、16時間20℃明、8時間10℃暗の低温条件で約6週間栽培した。この低温条件は、ドイツ北部の5月の最高気温と最低気温にあたる。5月はダイズ初期成育の時期である。
【0046】
Bradyrhizobium sp. GMF14、GMM36、GMF57、GMM71及びGEM96を接種したダイスと、Bradyrhizobium USDA110株を接種したダイズの地上部を撮像した写真を図2に示し、ダイズ地上部の乾燥重量を測定した結果(n=3)を図3に示した。なお、図2及び3におけるコントロール(Control)はダイズ根粒菌非接種のダイズである。さらに、Bradyrhizobium sp. GMF14、GMM36、GMF57、GMM71及びGEM96を接種したダイズと、Bradyrhizobium USDA110株を接種したダイズについて、根粒の乾燥重量を測定した結果(n=3)を図4に示した。
【0047】
これら図2~4に示すように、実施例1で単離・同定したBradyrhizobium sp. GMF14、GMM36、GMF57、GMM71及びGEM96は、低温条件においてダイズに対して根粒を形成することができ、地上部バイオマスを増大させる効果を有することが明らかとなった。
【0048】
また、比較のためにBradyrhizobium sp. GMF14、GMM36、GMF57、GMM71及びGEM96と系統が比較的近いBradyrhizobium sp. VAF1269(Microbes Environ. Vol. 34, No. 1, 43-58, 2019)についても、同様に低温条件下におけるダイズに対する接種試験を行った。Bradyrhizobium sp. GMF14、GMM36、GMF57及びGMM71を接種したダイスと、Bradyrhizobium USDA110株を接種したダイズと、Bradyrhizobium sp. VAF1269を接種したダイズの地上部を撮像した写真を図5に示し、葉の乾燥重量を測定した結果を図6に示し、根の乾燥重量を図7に示し、根粒の乾燥重量を図8に示し、根粒の数を図9に示した。その結果、Bradyrhizobium sp. VAF1269は、本実施例に使用したメルリン品種に対して根粒着生が悪く、根粒の乾燥重が低いことがわかった。なお、それにも関わらず、Bradyrhizobium sp. VAF1269を接種したところ葉と根の乾燥重が増加していた。この結果は、Bradyrhizobium sp. VAF1269の共生により窒素固定ではなく、その他の成長促進効果(ホルモンの分泌など)によるものと考えられた。この結果から、Bradyrhizobium sp. VAF1269は、低温条件下ではダイズに根粒を形成できす、窒素固定活性を上げるものではないと結論付けた。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【配列表】
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