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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】液体クロマトグラフ装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 30/02 20060101AFI20240110BHJP
   G01N 30/86 20060101ALI20240110BHJP
   G01N 30/26 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
G01N30/02 Z
G01N30/86 Q
G01N30/86 L
G01N30/26 E
G01N30/26 A
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020032790
(22)【出願日】2020-02-28
(65)【公開番号】P2021063791
(43)【公開日】2021-04-22
【審査請求日】2022-10-14
(31)【優先権主張番号】P 2019186549
(32)【優先日】2019-10-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】503460323
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテクサイエンス
(74)【代理人】
【識別番号】100113022
【弁理士】
【氏名又は名称】赤尾 謙一郎
(74)【代理人】
【氏名又は名称】下田 昭
(74)【代理人】
【氏名又は名称】栗原 和彦
(72)【発明者】
【氏名】福田 真人
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 正人
(72)【発明者】
【氏名】松下 美由紀
(72)【発明者】
【氏名】橋本 誠
【審査官】西浦 昌哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-024603(JP,A)
【文献】特開2015-166725(JP,A)
【文献】特開2011-099704(JP,A)
【文献】特開平10-104241(JP,A)
【文献】特開2015-135240(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B02J 20/281-20/292
G01N 30/00-30/96
G01N 35/00-35/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御部を備え、同一試料又は異なる試料を同一カラムにて所定の測定条件で測定する液体クロマトグラフ装置であって、
前記制御部は、現在の測定が終了し、次の測定を開始する際、前記現在の測定の前記測定条件のうち予め決められた比較条件を、前記次の測定の前記測定条件における前記比較条件と比較し、
比較結果が所定の閾値内で一致する場合、装置の調整を行わずに前記次の測定を実行し、前記閾値を超えて不一致である場合、前記閾値に応じて決められた前記装置の調整を実行することを特徴とする液体クロマトグラフ装置。
【請求項2】
前記比較条件は、前記カラムの送液条件又は液組成、測定波長、及び測定温度の群から選ばれる1種以上を含む請求項1に記載の液体クロマトグラフ装置。
【請求項3】
前記装置の調整は、第1時間待機、ノイズチェック、及びドリフトチェックの群から選ばれる1種以上を含む請求項2に記載の液体クロマトグラフ装置。
【請求項4】
前記制御部は、第2時間内に前記装置の調整が行われたか否かを判定し、
否定判定の場合、前記カラムに所定の試料の測定に対応した溶液を送液し、前記試料の標準試料を測定して前記装置の正常性を確認する請求項1~3のいずれか一項に記載の液体クロマトグラフ装置。
【請求項5】
前記カラムの送液が停止状態の場合、前記制御部は、前記カラムの送液を開始してから第3時間待機してから前記比較を行う請求項1~4のいずれか一項に記載の液体クロマトグラフ装置。
【請求項6】
前記現在の測定の終了から前記次の測定の測定開始までに第4時間が経過した場合、前記制御部は、前記カラムの送液流量を低下させる請求項1~5のいずれか一項に記載の液体クロマトグラフ装置。
【請求項7】
予め複数の前記測定毎の測定条件を測定順に連続測定条件として記憶する記憶部をさらに備え、
前記制御部は、連続測定を行う旨の所定の信号を受信すると、前記連続測定条件を取得し、前記測定条件のそれぞれに対応する前記測定を、前記比較条件を参照して連続して自動で行う請求項1~6のいずれか一項に記載の液体クロマトグラフ装置。
【請求項8】
前記制御部は、第1の前記連続測定条件による前記測定を実行してから所定時間経過後に第2の前記連続測定条件に基づく連続測定を行う旨の所定の信号を受信すると、
前記所定時間が所定の時間閾値を超えた場合に、前記第1の前記連続測定条件の最後の測定条件における前記比較条件に拘わらず、前記装置の調整を促し、
前記所定時間が所定の時間閾値を超えない場合に、前記第1の前記連続測定条件の最後の測定条件における前記比較条件と、前記第2の前記連続測定条件の最初の測定条件における前記比較条件とを比較し、前記装置の調整の有無を判定する、請求項7に記載の液体クロマトグラフ装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記比較後に前記次の測定を実行する前に、前記試料が適切にセットされているか否かを判定し、適切にセットされている場合に前記次の測定を実行する請求項1~8のいずれか一項に記載の液体クロマトグラフ装置。
【請求項10】
前記試料が適切にセットされるまでの時間が閾値を超えた場合に、装置の所定の安定性を判定する請求項9に記載の液体クロマトグラフ装置。
【請求項11】
前記制御部は、前記液体クロマトグラフ装置が起動すると、前記次の測定において、前記比較条件の比較と、前記次の測定の実行又は前記装置の調整と、を自動測定として連続して自動的に実行することを特徴とする請求項1~10のいずれか一項に記載の液体クロマトグラフ装置。
【請求項12】
前記制御部は、前記自動測定において、前記次の測定を実行する前で、かつ前記比較条件の比較と、必要に応じて前記装置の調整を行った後、前記試料の設置状態の可否を判断することを特徴とする請求項11に記載の液体クロマトグラフ装置。
【請求項13】
前記試料の設置状態の可否の判断はユーザによる指示か、又は前記制御部による所定の条件に基づく判断であることを特徴とする請求項12に記載の液体クロマトグラフ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体クロマトグラフ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体クロマトグラフ(HPLC)装置による測定の際、試料が変わると、分析(測定)条件を変更し、装置の準備や事前の安定化運転(コンデショニング)が必要となる。その理由は、例えば(i)カラムに送液する液組成が変わる場合、流路の液置換に時間を要し(置換)、(ii) 測定条件が変わる場合、カラムが新たな測定条件に対して平衡化するまで送液する必要があり(平衡化)、(iii)測定波長が変わった場合、検知器内で波長位置等を移動させるので、その位置の状態が安定するまで待機する必要(ドリフト要因)があるからである。
一方、液体クロマトグラフ装置の測定や調整を自動化する要望があり、ポンプパージ等の所定の準備工程をユーザが選択して省略又は時間を短縮させて作業効率の向上を図る技術も開発されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5481520号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記した技術の場合、準備工程のうち省略又は時間を短縮させる工程をユーザが判断しなければならず、作業が煩雑になると共に自動化に逆行することになる。
一方で、この判断を行わずに一定の準備工程を一律に自動的に行う場合、例えばほとんどコンデョニングが不要であるのに準備工程に待ち時間を要し、実際の測定を行う有効時間が減少し、作業効率が低下するという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、測定に際し、装置の調整の有無を自動的に判定し、さらに調整も自動で行うので、ユーザの負担を軽減し、かつ不必要な調整を回避して作業効率を向上できる液体クロマトグラフ装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、制御部を備え、同一試料又は異なる試料を同一カラムにて所定の測定条件で測定する液体クロマトグラフ装置であって、前記制御部は、現在の測定が終了し、次の測定を開始する際、前記現在の測定の前記測定条件のうち予め決められた比較条件を、前記次の測定の前記測定条件における前記比較条件と比較し、比較結果が所定の閾値内で一致する場合、装置の調整を行わずに前記次の測定を実行し、前記閾値を超えて不一致である場合、前記閾値に応じて決められた前記装置の調整を実行することを特徴とする。
【0007】
この液体クロマトグラフ装置によれば、制御部が現在及び次の測定の比較条件を比較し、比較結果の一致、不一致によって装置の調整の有無を自動的に判定し、さらに調整も自動で行うので、ユーザの負担を軽減し、かつ不必要な調整を回避して実際の測定を行う有効時間が増えるので、作業効率を向上できる。
【0008】
本発明の液体クロマトグラフ装置において、前記比較条件は、前記カラムの送液条件又は液組成、測定波長、及び測定温度の群から選ばれる1種以上を含んでもよい。
この液体クロマトグラフ装置によれば、装置の調整の有無に大きく影響する条件を選ぶので、比較を確実に行える。
【0009】
本発明の液体クロマトグラフ装置において、前記装置の調整は、第1時間待機、ノイズチェック、及びドリフトチェックの群から選ばれる1種以上を含んでもよい。
この液体クロマトグラフ装置によれば、装置の調整として効果の大きい項目を選んでいるので、調整を確実に行える。
【0010】
本発明の液体クロマトグラフ装置において、前記制御部は、第2時間内に前記装置の調整が行われたか否かを判定し、否定判定の場合、前記カラムに所定の試料の測定に対応した溶液を送液し、前記試料の標準試料を測定して前記装置の正常性を確認してもよい。
この液体クロマトグラフ装置によれば、例えば毎日のスパンである第2時間内に調整が行われておらずに装置の安定性が低下することを抑制できる。
【0011】
本発明の液体クロマトグラフ装置において、前記カラムの送液が停止状態の場合、前記制御部は、前記カラムの送液を開始してから第3時間待機してから前記比較を行ってもよい。
この液体クロマトグラフ装置によれば、制御部がカラムの送液が停止中か否かを判定し、送液停止中の場合は送液を開始して第3時間待機してから比較を行えば、第3時間経過する前のカラムが不安定な状態で測定することを抑制できる。
【0012】
本発明の液体クロマトグラフ装置において、前記現在の測定の終了から前記次の測定の測定開始までに第4時間が経過した場合、前記制御部は、前記カラムの送液流量を低下させてもよい。
この液体クロマトグラフ装置によれば、カラムの安定性を損なわない程度に流量を絞って移動相が無駄になることを抑制できる。
【0013】
本発明の液体クロマトグラフ装置は、予め複数の前記測定毎の測定条件を測定順に連続測定条件として記憶する記憶部をさらに備え、前記制御部は、連続測定を行う旨の所定の信号を受信すると、前記連続測定条件を取得し、前記測定条件のそれぞれに対応する前記測定を、前記比較条件を参照して連続して自動で行ってもよい。
この液体クロマトグラフ装置によれば、予め記憶した複数の測定を測定順に自動的に行いつつ、一の測定に続く次の測定における調整の有無を自動的に判定できる。
【0014】
本発明の液体クロマトグラフ装置において、前記制御部は、第1の前記連続測定条件による前記測定を実行してから所定時間経過後に第2の前記連続測定条件に基づく連続測定を行う旨の所定の信号を受信すると、前記所定時間が所定の時間閾値を超えた場合に、前記第1の前記連続測定条件の最後の測定条件における前記比較条件に拘わらず、前記装置の調整を促し、前記所定時間が所定の時間閾値を超えない場合に、前記第1の前記連続測定条件の最後の測定条件における前記比較条件と、前記第2の前記連続測定条件の最初の測定条件における前記比較条件とを比較し、前記装置の調整の有無を判定してもよい。
この液体クロマトグラフ装置によれば、直前の一群の連続測定が終わった後、例えば数日経過等の時間閾値を超えて次の一群の連続測定を行いたい場合には、時間が経ち過ぎて直前の連続測定の条件から変化している可能性が大きいので、強制的に装置の調整を行わせることができる。又、直前の一群の連続測定が終わってから時間が経過せず、時間閾値を超えない場合には、次の一群の連続測定における調整の有無を自動的に判定できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、新たな測定に際し、装置の調整の有無を自動的に判定し、ユーザの負担を軽減し、かつ不必要な調整を回避して作業効率を向上できる液体クロマトグラフ装置が得られる。
【0016】
本発明の液体クロマトグラフ装置において、前記制御部は、前記比較後に前記次の測定を実行する前に、前記試料が適切にセットされているか否かを判定し、適切にセットされている場合に前記次の測定を実行してもよい。
この液体クロマトグラフ装置によれば、試料の設置が適切に行われたときに測定を行うので、試料の設置が不適切にもかかわらず測定が行わることを防止できる。又、時間内に試料が設置されない場合は、測定を終了することで、無駄な時間が経過して移動相が消費されることを抑制できる。
【0017】
本発明の液体クロマトグラフ装置において、前記試料が適切にセットされるまでの時間が閾値を超えた場合に、装置の所定の安定性を判定してもよい。
この液体クロマトグラフ装置によれば、セットされるまでの時間が掛かって装置が不安定なときに測定することを回避し、安定なときに測定するので、データ再現性が向上する。
【0018】
本発明の液体クロマトグラフ装置において、前記制御部は、前記液体クロマトグラフ装置が起動すると、前記次の測定において、前記比較条件の比較と、前記次の測定の実行又は前記装置の調整と、を自動測定として連続して自動的に実行してもよい。
この液体クロマトグラフ装置によれば、本装置を起動する入力(例えば、キーボードのエンターボタン等の「ワンクリック」など)を行うと、次の測定において、比較条件の比較と、次の測定の実行又は装置の調整までを自動で実施でき、その間にユーザが都度指示する必要がなく、測定終了まで自動で実施することができる。
【0019】
本発明の液体クロマトグラフ装置において、前記制御部は、前記自動測定において、前記次の測定を実行する前で、かつ前記比較条件の比較と、必要に応じて前記装置の調整を行った後、前記試料の設置状態の可否を判断してもよい。
この液体クロマトグラフ装置によれば、自動測定において、試料の設置状態の可否を判断することで、試料が適切に設置されていれば、次の測定まで進み、さらに次の次の試料をも自動測定できる。
【0020】
本発明の液体クロマトグラフ装置において、前記試料の設置状態の可否の判断はユーザによる指示か、又は前記制御部による所定の条件に基づく判断であってもよい。
この液体クロマトグラフ装置によれば、試料の設置状態を、ユーザによる人を介した判断又は制御部により自動で判断できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施形態に係る液体クロマトグラフ装置の構成を示す図である。
図2】比較条件及び装置の調整項目を含むテーブルのデータ構成を示す図である。
図3】制御部が行う装置の自動調整処理フローを示す図である。
図4】記憶部に記憶された連続測定条件に基づき、複数の測定を連続して自動で行う態様を示す図である。
図5】制御部が行う装置の自動調整処理フローの内のサブルーチンを示す図である
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る液体クロマトグラフ装置100の構成を示す図である。
液体クロマトグラフ装置100は、全体を制御するデータ処理装置(制御部)7、移動相(溶離液と溶媒の混合溶液)1、移動相1を送液するポンプ2、試料を注入するオートサンプラ3、成分を分離するカラム4、カラム4を恒温にするカラムオーブン5、分離された成分を検出する検出器6、表示部10を備える。
データ処理装置7は、分析を実行し分析結果を解析する制御部(CPU)9、分析結果または解析結果を保存する記憶部(ハードディスク等)8を有するコンピュータから構成される。表示部(モニタ)10は、分析結果や解析結果を表示する。
【0023】
検出器6は信号強度を検出する素子を有し、時間に対する信号強度を検出する。検出器として、検出素子を複数有し、複数波長において同時に取得可能な3次元検出器を用いることも可能である。
試料は、オートサンプラ3のインジェクタ(図示せず)から注入され、ポンプ2から送液される移動相1とともにカラム4を通過し、試料中の種々の成分に分離される。
成分に分離された試料は、検出器6で検出される。検出器6の信号はデータ処理装置7に送られてデータ処理が行われる。
カラム4は、移動相1中に存在する試料の成分を分離する分離部として一般的に使用される装置である。カラム4としては、充填型カラムやモノリスカラム等がある。カラム4のカラム充填剤としては、吸着型、分配型、イオン交換型等の種々のタイプのものを使用することができる。カラム4を恒温に保ち、再現性よく試料の分離ができるように、カラム4は、カラムオーブン5内に設置されていることが望ましい。
【0024】
試料を定量分析又は定性分析するため、記憶部8は、試料の種類毎の測定条件や、検量線データ等を記憶する。
又、記憶部8は、測定条件のうち予め決められた比較条件を現在及び次の測定につき比較した結果につき、所定の閾値を記憶する。さらにこの閾値を超えて不一致の場合に、この閾値に応じて決められた装置の調整内容を記憶する。
【0025】
具体的には、図2に示すように、本例では比較条件は、カラムの送液条件(移動相の流量)及び液組成(移動相中の溶離液と溶媒の混合比)、測定波長、並びに測定温度である。
そして、装置の調整の項目としては、所定の第1時間待機、ノイズチェック、及びドリフトチェックがあり、このうち、第1時間待機は送液安定化待機、温度到達待機、ランプ安定化待機の3つがある。
【0026】
そして、比較条件の各項目の比較結果が一致か不一致かの組み合わせ毎に、装置の調整の項目がテーブル6Tとして記憶されている。
具体的には、例えば比較結果のパターン2として、カラムの送液条件が不一致であり(図2の×)、測定波長と測定温度が一致する場合、装置の調整の項目として、送液安定化待機、ノイズチェック、及びドリフトチェックを行うようにテーブル6Tに設定されている(図2の○)。
以下、比較結果のパターン3~5として、所定の比較条件が異なる場合における装置の調整の項目が設定されている。
なお、パターン1は、比較結果がすべて一致し、装置の調整の項目は設定されておらず、調整不要である。
【0027】
一方、比較条件の比較結果が一致するとみなす閾値は、以下のように記憶部8に記憶されている。
カラムの送液条件(移動相の流量)及び液組成(移動相中の溶離液と溶媒の混合比)の一致の閾値は、移動相の流量及び混合比が所定範囲内にある場合である。測定波長と測定温度の一致の閾値は、それぞれ測定波長と測定温度が所定範囲内にある場合である。又、測定温度は実測値であり、その他の比較条件は、測定条件として規定された値である。
又、第1時間待機において、送液安定化待機は、送液条件を変更してから所定時間待機する。温度到達待機は、次の測定条件において設定された目標温度に所定範囲内で到達するまでの時間待機する。ランプ安定化待機は、測定波長を変更してから所定時間待機する。
送液安定化待機の時間を、装置状態(送液ポンプの停止の有無、混合比が同一か否か)によってさらに変えてもよい。
【0028】
次に、図3を参照し、制御部9が行う装置の自動調整処理について説明する。
まず、制御部9は、液体クロマトグラフ装置100(以下、適宜「装置」という)の停止時間が1日超えたか否かを判定する(ステップS2)。ステップS2でYesであれば、制御部9は、パージ、洗浄等の本格調整を適宜実行させる(ステップS4)。ここで、本格調整は、本発明における装置の調整とは異なる調整項目であり、本実施形態では、よりシビアな(パージ、ポンププランジャの洗浄等)調整項目となっている。
つまり、本実施形態では、本格調整より軽微な装置の調整を対象とするが、勿論、よりシビアな調整に適用することも可能である。
又、本実施形態では、同一試料又は異なる試料を同一カラムにて所定の測定条件で測定することを前提とする。
【0029】
ステップS2でNoの場合、及びステップS4を終了した場合、制御部9は、第2時間内に装置調整したか否かを判定する(ステップS6)。第2時間は、例えば1日であり、この期間に調整していない場合は装置の安定性が低下するおそれがある。ステップS6でYesであればステップS12に移行する。ステップS6でNoであれば、制御部9は、QCサンプルの測定を実施し(ステップS8)、QCサンプルの測定結果が正常か否かを判定する(ステップS10)。
QCサンプルは標準試料の一種であり、内部標準と標準試料を含む。QCサンプルを測定することで標準試料のピーク高さが所定の値以上であるか、つまりQCサンプルの測定結果の正常性を確認できる。勿論、標準試料であればQCサンプルに限られない。
【0030】
ステップS10でYesであれば、装置は正常とみなせるから、さらにステップS12へ移行する。ステップS10でNoであれば、制御部9は、装置は正常でないとみなし、ステップS30へ移行する。
ステップS12で制御部9は、カラムの送液が停止中か否かを判定する。送液停止中であると、カラムが平衡化しておらず測定が不安定になるおそれがある。そして、ステップS12でYes(停止中)であると、制御部9は、ステップS14で送液を開始して第3時間待機してから次のステップS16へ移行する。これにより、カラムが平衡化して安定になる。第3時間は例えば5分程度である。
一方、ステップS12でNoであればそのままステップS16へ移行する。
【0031】
ステップS16で制御部9は、現在の測定が終了し、例えばユーザの入力や自動処理により次の測定指示があると、次の測定の前記測定条件(比較条件含む)を取得する。
次に、ステップS18で制御部9は、現在の測定の比較条件を、次の測定の比較条件と比較し、閾値内で一致するか否かを判定する。「比較条件」及び「閾値」は既に説明した通りである。
ステップS18でYesであれば、制御部9は、装置の調整を行わず、次の測定を実行する(ステップS22)。
ステップS18でNoであれば、制御部9は、装置の調整を行う(ステップS20)。例えば、図2のテーブル6Tに示すように、比較条件として、カラムの送液条件(移動相の流量)及び液組成(混合比)が不一致の場合、パターン2として、送液安定化待機、及びノイズチェック、ドリフトチェックを調整項目として自動で行う。
【0032】
なお、ステップS16で制御部9が判断を行う際、次の測定指示をユーザの入力でなく自動処理とすれば、ユーザがステップS2より前に本装置を起動する入力(例えば、キーボードのエンターボタン等の「ワンクリック」など)を行うと、図3のステップS2からS20までを自動で実施でき、その間にユーザが都度指示する必要がなく、測定終了まで自動で実施することができる(以下、「自動測定」という)。
ステップS20が終了すると、必要に応じてサブルーチン「サンプル(試料)設置」を処理した後、ステップS22へ移行する。サブルーチン「サンプル設置」については図5を参照して後述する。
【0033】
ステップS22の測定(次の測定)が終了すると、制御部9は、次の次(ステップS22で終了した測定の次)の測定指示があるか否かを判定する(ステップS24)。
ステップS24でYesであれば、ステップS30で測定終了でない(Noである)限り、ステップS2へ戻る。例えばユーザの入力で「測定終了」が指示されると、制御部9は、ステップS30で「Yes」と判定し、測定を終了する。
一方、ステップS24でNoであれば、制御部9は、第4時間が経過したか否かを判定し(ステップS26)、ステップS26でYesであればカラムの送液流量を低下させる(ステップS28)。一方、ステップS26でNoであれば、ステップS24へ戻る。
このステップS26の処理は、現在の測定と、その次の測定との間で第4時間が経過した場合、測定条件での送液流量をそのまま続けると移動相が無駄になるため、カラムの安定性を損なわない程度に流量を絞るためである。第4時間は例えば数分である。
ステップS28が終了するとステップS30に移行する。
【0034】
以上のように、制御部9が現在及び次の測定の比較条件を比較し、比較結果の一致、不一致によって装置の調整の有無を自動的に判定し、さらに調整も自動で行うので、測定時のユーザの負担を軽減し、かつ不必要な調整を回避して実際の測定を行う有効時間が増えるので、作業効率を向上できる。
又、制御部9が第2時間内に装置の調整が行われたか否かを判定すれば、第2時間内に調整が行われておらずに装置の安定性が低下することを抑制できる。
【0035】
又、制御部9がカラムの送液が停止中か否かを判定し、送液停止中の場合は送液を開始して第3時間待機してから比較を行えば、第3時間経過する前のカラムが不安定な状態で測定することを抑制できる。
又、制御部9が2つの測定の間で第4時間が経過したか否かを判定し、経過した場合にカラムの送液流量を低下させれば、カラムの安定性を損なわない程度に流量を絞って移動相が無駄になることを抑制できる。
【0036】
又、図4に示すように、記憶部8が、予め複数の測定A,B毎の測定条件を測定順に連続測定条件として記憶し、制御部9は、連続測定を行う旨の所定の信号を受信すると、連続測定条件を取得し、測定条件のそれぞれに対応する複数の測定A,Bを、比較条件を参照して連続して行ってもよい。
これにより、予め記憶した複数の測定A,Bの測定を測定順に自動的に行いつつ、測定Aの次の測定Bにおける調整の有無を、測定A,Bの比較条件に基づき、自動的に判定できる。比較条件に基づく判定は既に述べた通りである。
なお、「連続測定を行う旨の所定の信号」とは特に制限されず、例えば、装置の電源ON、装置内で制御部9によりカラム送液や検出ランプ点灯の動作を行う際、制御部9によりポンプがグラジェント動作を行なう際、測定の開始に当たって測定条件を取得する際、等が挙げられる。つまり、装置の電源ONなどのユーザの意思による指示に限らず、制御部9による装置の起動処理等の中の所定のタイミングで自動的に指示するようにしてもよい。
【0037】
又、図4に示すように、制御部9は、第1の連続測定条件による測定A,Bを実行してから所定時間経過後に第2の連続測定条件に基づく連続測定C,Dを行う旨の所定の信号を受信すると、所定時間が所定の時間閾値を超えた場合に、第1の連続測定条件の最後の測定条件(測定B)における比較条件に拘わらず、装置の調整を促してもよい。
一方、制御部9は、所定時間が時間閾値を超えない場合に、第1の連続測定条件の最後の測定条件における比較条件と、第2の連続測定条件の最初の測定条件(測定C)における比較条件とを比較し、装置の調整の有無を判定してもよい。
【0038】
このようにすると、直前の一群の連続測定A,Bが終わった後、例えば数日経過等の時間閾値を超えて次の一群の連続測定C,Dを行いたい場合には、時間が経ち過ぎて連続測定の測定Bの条件から変化している可能性が大きいので、強制的に装置の調整を行わせることができる。又、連続測定A,Bが終わってから時間が経過せず(例えば同日中)、時間閾値を超えない場合には、次の連続測定C、Dにおける調整の有無を自動的に判定できる。比較条件に基づく判定は既に述べた通りである。
【0039】
次に、図5を参照してサブルーチン「サンプル設置」について説明する。
まず、制御部9は、サンプルが指定位置に設置(セット)されているか否かを判定する(ステップS102)。ステップS102でYesであれば、サブルーチンを終了してステップS22へ移行する。一方、ステップS102でNoであれば、制御部9は、ステップS104で警告表示して設置を待ち、ステップS106へ移行する。
ステップS106で、制御部9は、サンプルが指定位置に設置されているか否かを再度判定し、YesであればステップS110へ移行し、NoであればステップS108へ移行する。
【0040】
なお、ステップS102、S106の判断は、ユーザによる指示(キーボード等の入力)か、又は制御部9による所定の条件に基づく判断であってもよい。
制御部9による所定の条件に基づく判断としては、試料ラック又はバイアル位置でのセンサによる信号解析が例示できる。
【0041】
ステップS108で、制御部9は、ステップS104の開始時間から積算したタイムカウントが所定の待ち時間(例えば10分)以内か否かを判定し、YesであればステップS106へ戻り、Noであれば測定中止と判断してステップS28へ移行する。
ステップS110で、制御部9は、ステップS104の開始時間から積算した設置までの時間が閾値以下か否かを判定し、Yesであればサブルーチンを終了してステップS22へ移行する。一方、NoであればステップS112へ移行する。
なお、「閾値」は、サンプル設置まで時間が掛かった場合に、測定精度が低下するまでの時間として設定することができる。
【0042】
ステップS112で、制御部9は、ノイズ、ドリフトの確認を行い、ノイズ、ドリフト値が所定の閾値以下か否かを判定し、Yesであればサブルーチンを終了してステップS22へ移行する。一方、Noであれば測定中止と判断してステップS28へ移行する。
ノイズは、例えば検出器6から取得されるサンプルを含まない信号値(ベースライン)を所定時間(1分間)取得した場合の、その最大値と最小値の差(絶対値)として得ることができ、この差を所定の閾値と比較する。ノイズは、信号値のS/N比(サンプル/ノイズ比)として検出感度に影響する。
ドリフトは、例えば検出器6から取得されるサンプルを含まない信号値(ベースライン)を所定時間(1分間)取得した場合の、ベースラインの傾きである。この傾きは、例えば所定の時間間隔で信号値をサンプリングして最小二乗法で求められる。ドリフトが大きいと、液体クロマトグラフで検出されるピークの高さ、面積値の算出値に影響を与える。
【0043】
このように、サブルーチン「サンプル設置」を行えば、サンプルの設置が適切に行われたときにステップS22以降で自動的に測定を行うので、サンプルの設置が不適切にもかかわらず測定が行わることを防止できる。
又、S108の判定により、時間内にサンプルが設置されない場合は、測定を終了することで、無駄な時間が経過して移動相が消費されることを抑制できる。
又、S110、S112の処理により、サンプル設置まで時間が掛かった場合に、ノイズ、ドリフトの状態(装置の安定性)を確認してから測定することで、データ再現性が向上する。
なお、サンプルが指定位置に指定数設置されていること、及び待ち時間や閾値のカウントは各種センサや画像解析で判別することができる。
【0044】
また、上述の自動測定後であって、S106の待ち時間以内にサンプルが設置できないことが、予めわかっている場合には、一旦、サブルーチン処理を手動または自動で中断することも可能であるが、再度分析を開始時に上述の自動測定が実施されるので、分析時間を短縮しつつ、適切な分析条件で測定できる。
【0045】
又、上述の自動測定において、S18及びS20の終了後であって、S22の測定開始前に上述のサブルーチン「サンプル設置」にて試料の設置状態の可否を判断することで、サンプルが適切に設置されていれば、次の測定まで進み、さらにS24で次の次の試料をも自動測定できる。
【0046】
本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の思想と範囲に含まれる様々な変形及び均等物に及ぶことはいうまでもない。
例えば、比較条件及び装置の調整項目は上記に限られない。
【符号の説明】
【0047】
4 カラム
9 制御部
100 液体クロマトグラフ装置
図1
図2
図3
図4
図5