(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】切削装置
(51)【国際特許分類】
B24B 55/06 20060101AFI20240110BHJP
H01L 21/301 20060101ALI20240110BHJP
B24B 27/06 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
B24B55/06
H01L21/78 F
B24B27/06 M
(21)【出願番号】P 2019193785
(22)【出願日】2019-10-24
【審査請求日】2022-08-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】寺師 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】ソ ジュンヨン
【審査官】マキロイ 寛済
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-014670(JP,A)
【文献】特開2006-237206(JP,A)
【文献】特開平04-267107(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 55/06
H01L 21/301
B24B 27/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物を切削ブレードで切削する切削ユニットと、該チャックテーブルと該切削ユニットを相対的に移動させる移動ユニットと、を備え、
該切削ユニットは、スピンドルハウジングに回転可能に支持され該切削ブレードが装着されるスピンドルと、該スピンドルハウジングに固定され該切削ブレードを覆うブレードカバーと、該切削ブレードに切削水を供給するノズルとを備える切削装置であって、
該ブレードカバーには、
該切削ブレードの回転によって飛散する該切削水のミストを入口から受け入れ、該入口から離れた出口への案内するダクトと、該ダクト内に設けられ該ミストを気体と液体に分離する気液分離部と、を有し、
該気液分離部は、
該切削ブレードの回転によって飛散した該ミストが衝突する衝突面と、該衝突面から落下した液体を溜める水溜部と、を備え、
該水溜部は、該ダクトの出口まで延在し、該水溜部の水面を通って出口から排気され
、
該ダクトは、スピンドルの先端に装着された切削ブレードの側方から該スピンドルの後端に向かって延在し、該衝突面は、該ミストの飛散方向と交差する第1衝突面と、該スピンドルの後方に案内された該ミストが衝突する第2衝突面を備える切削装置。
【請求項2】
該水溜部は、該ダクトの平坦な底の部分と該底の部分の外縁から上方に立設した部分との内面により構成されている請求項1に記載の切削装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切削装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェーハやパッケージ基板、セラミックス、ガラス等の板状の被加工物を切削ブレードで切削する切削装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。この種の切削装置は、切削ブレードと被加工物に切削水を供給し、加工熱を押さえ、発生する切削屑を洗い流しながら切削加工を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述した切削装置では、切削ブレードが、30000から100000rpmという高速で回転しているため、切削ブレードに供給された切削水が、切削屑を含むミストとなって高速で切削ブレードの後方(側方)に飛散する。このために、切削ブレードとチャックテーブルとを覆う加工室は、ミストが充満しやすく、加工室の排気が不十分だと、ミストを含む雰囲気が加工室から漏れて、電装部品やアクチュエータの軸部に侵入し、これらに切削屑が付着するなどの悪影響を及ぼす恐れがある。そこで、高速で飛散するミストを回転軸方向に案内するダクトにスポンジ状のフィルタを設け、ミストを気液分離するブレードカバーが考案された。
【0005】
しかしながら、このブレードカバーは、切削屑が付着してスポンジ状のフィルタが目詰まりする恐れが残っていた。
【0006】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、加工室からのミストの漏れを抑制しながらブレードカバーの目詰まりを抑制することができる切削装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の切削装置は、被加工物を保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物を切削ブレードで切削する切削ユニットと、該チャックテーブルと該切削ユニットを相対的に移動させる移動ユニットと、を備え、該切削ユニットは、スピンドルハウジングに回転可能に支持され該切削ブレードが装着されるスピンドルと、該スピンドルハウジングに固定され該切削ブレードを覆うブレードカバーと、該切削ブレードに切削水を供給するノズルとを備える切削装置であって、該ブレードカバーには、該切削ブレードの回転によって飛散する該切削水のミストを入口から受け入れ、該入口から離れた出口への案内するダクトと、該ダクト内に設けられ該ミストを気体と液体に分離する気液分離部と、を有し、該気液分離部は、該切削ブレードの回転によって飛散した該ミストが衝突する衝突面と、該衝突面から落下した液体を溜める水溜部と、を備え、該水溜部は、該ダクトの出口まで延在し、該水溜部の水面を通って出口から排気され、該ダクトは、スピンドルの先端に装着された切削ブレードの側方から該スピンドルの後端に向かって延在し、該衝突面は、該ミストの飛散方向と交差する第1衝突面と、該スピンドルの後方に案内された該ミストが衝突する第2衝突面を備えることを特徴とする。
【0008】
前記切削装置において、該水溜部は、該ダクトの平坦な底の部分と該底の部分の外縁から上方に立設した部分との内面により構成されても良い。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、加工室からのミストの漏れを抑制しながらブレードカバーの目詰まりを抑制することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施形態1に係る切削装置の構成例を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示された切削装置の切削ユニットの正面図である。
【
図4】
図4は、
図2に示された切削ユニットのダクトの正面図である。
【
図7】
図7は、実施形態2に係る切削装置の切削ユニットの正面図である。
【
図8】
図8は、実施形態3に係る切削装置の切削ユニットの平面図である。
【
図9】
図9は、
図8に示された切削ユニットのダクトの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0012】
〔実施形態1〕
本発明の実施形態1に係る切削装置を図面に基いて説明する。
図1は、実施形態1に係る切削装置の構成例を示す斜視図である。
図2は、
図1に示された切削装置の切削ユニットの正面図である。
図3は、
図2に示された切削ユニットの平面図である。
【0013】
(切削装置)
実施形態1に係る
図1に示す切削装置1は、被加工物200を切削(加工)する装置である。実施形態1では、被加工物200は、シリコン、サファイア、ガリウムなどを母材とする円板状の半導体ウェーハや光デバイスウェーハ等のウェーハである。被加工物200は、表面201に格子状に形成された複数の分割予定ライン202によって格子状に区画された領域にデバイス203が形成されている。
【0014】
また、本発明の被加工物200は、中央部が薄化され、外周部に厚肉部が形成された所謂TAIKO(登録商標)ウェーハでもよく、ウェーハの他に、樹脂により封止されたデバイスを複数有した矩形状のパッケージ基板、セラミックスされた基板、フェライト基板、又はニッケル及び鉄の少なくとも一方を含む基板、ガラス基板等でも良い。実施形態1において、被加工物200は、裏面204が外周縁に環状フレーム205が装着された粘着テープ206に貼着されて、環状フレーム205に支持されている。
【0015】
図1に示された切削装置1は、被加工物200をチャックテーブル10で保持し分割予定ライン202に沿って切削ブレード21で切削(加工に相当)する装置である。切削装置1は、
図1に示すように、被加工物200を保持面11で吸引保持するチャックテーブル10と、チャックテーブル10に保持された被加工物200を切削ブレード21で切削する切削ユニット20と、チャックテーブル10に保持された被加工物200を撮影する撮像ユニット30と、制御ユニット100とを備える。
【0016】
また、切削装置1は、
図1に示すように、チャックテーブル10と切削ユニット20とを相対的に移動させる移動ユニット40を備える。移動ユニット40は、チャックテーブル10を水平方向及び装置本体2の短手方向と平行なX軸方向に加工送りするX軸移動ユニット41と、切削ユニット20を水平方向及び装置本体2の長手方向と平行でかつX軸方向に直交するY軸方向に割り出し送りするY軸移動ユニット42と、切削ユニット20をX軸方向とY軸方向との双方と直交する鉛直方向に平行なZ軸方向に切り込み送りするZ軸移動ユニット43と、チャックテーブル10をZ軸方向と平行な軸心回りに回転するとともにX軸移動ユニット41によりチャックテーブル10とともにX軸方向に加工送りされる回転移動ユニット44とを備える。切削装置1は、
図1に示すように、切削ユニット20を2つ備えた、即ち、2スピンドルのダイサ、いわゆるフェイシングデュアルタイプの切削装置である。
【0017】
X軸移動ユニット41は、チャックテーブル10を加工送り方向であるX軸方向に移動させることで、チャックテーブル10と切削ユニット20とを相対的にX軸方向に沿って加工送りするものである。X軸移動ユニット41は、チャックテーブル10を被加工物200が搬入出される搬入出領域301と、チャックテーブル10に保持された被加工物200が切削ユニット20により切削加工される加工領域302とに亘ってX軸方向に移動させる。
【0018】
Y軸移動ユニット42は、切削ユニット20を割り出し送り方向であるY軸方向に移動させることで、チャックテーブル10と切削ユニット20とを相対的にY軸方向に沿って割り出し送りするものである。Z軸移動ユニット43は、切削ユニット20を切り込み送り方向であるZ軸方向に移動させることで、チャックテーブル10と切削ユニット20とを相対的にZ軸方向に沿って切り込み送りするものである。
【0019】
X軸移動ユニット41、Y軸移動ユニット42及びZ軸移動ユニット43は、軸心回りに回転自在に設けられた周知のボールねじ、ボールねじを軸心回りに回転させる周知のモータ及びチャックテーブル10又は切削ユニット20をX軸方向、Y軸方向又はZ軸方向に移動自在に支持する周知のガイドレールを備える。
【0020】
チャックテーブル10は、円盤形状であり、被加工物200を保持する保持面11がポーラスセラミック等から形成されている。また、チャックテーブル10は、X軸移動ユニット41により搬入出領域301と加工領域302とに亘ってX軸方向に移動自在に設けられ、かつ回転移動ユニット44によりZ軸方向と平行な軸心回りに回転自在に設けられている。チャックテーブル10は、図示しない真空吸引源と接続され、真空吸引源により吸引されることで、保持面11に載置された被加工物200を吸引、保持する。実施形態1では、チャックテーブル10は、粘着テープ206を介して被加工物200の裏面204側を吸引、保持する。また、チャックテーブル10の周囲には、
図1に示すように、環状フレーム205をクランプするクランプ部12が複数設けられている。
【0021】
切削ユニット20は、チャックテーブル10に保持された被加工物200を切削する切削ブレード21を着脱自在に装着した切削手段である。切削ユニット20は、それぞれ、チャックテーブル10に保持された被加工物200に対して、Y軸移動ユニット42によりY軸方向に移動自在に設けられ、かつ、Z軸移動ユニット43によりZ軸方向に移動自在に設けられている。
【0022】
一方の切削ユニット20は、
図1に示すように、Y軸移動ユニット42、Z軸移動ユニット43などを介して、装置本体2から立設した門型の支持フレーム3の一方の柱部に設けられている。他方の切削ユニット20は、
図1に示すように、Y軸移動ユニット42、Z軸移動ユニット43などを介して、支持フレーム3の他方の柱部に設けられている。なお、支持フレーム3は、柱部の上端同士を水平梁により連結している。切削ユニット20は、Y軸移動ユニット42及びZ軸移動ユニット43により、チャックテーブル10の保持面11の任意の位置に切削ブレード21を位置付け可能となっている。
【0023】
切削ユニット20は、
図2及び
図3に示すように、Y軸移動ユニット42及びZ軸移動ユニット43によりY軸方向及びZ軸方向に移動自在に設けられたスピンドルハウジング22と、スピンドルハウジング22に軸心回りに回転可能に設けられかつ図示しないモータにより回転されるとともに先端に切削ブレード21が装着されるスピンドル23と、スピンドルハウジング22の先端面221に固定されたブレードカバー24と、切削ブレード21に切削水を供給するノズル25とを備える。
【0024】
切削ブレード21は、略リング形状を有する極薄の切削砥石である。実施形態1において、切削ブレード21は、円環状の円形基台211と、円形基台211の外周縁に配設されて被加工物200を切削する円環状の切り刃212とを備える所謂ハブブレードである。切り刃212は、ダイヤモンドやCBN(Cubic Boron Nitride)等の砥粒と、金属や樹脂等のボンド材(結合材)とからなり所定厚みに形成されている。なお、本発明では、切削ブレード21は、切り刃212のみで構成された所謂ワッシャーブレードでもよい。
【0025】
スピンドル23は、モータにより軸心回りに回転することで、切削ブレード21を
図2中の矢印400方向に回転させる。実施形態1において、スピンドル23の回転数は、30000rpm以上でかつ100000rpm以下である。なお、以下、本明細書では、矢印400で示す方向を切削ブレード21の回転方向と記す。切削ブレード21は、スピンドル23により軸心回りに回転方向400に回転されるため、被加工物200を切削する切り刃212の下端において、切り刃212の下端の回転方向400の後側に向かう方向401に被加工物200を切削して生じる切削屑とともに切削水を噴射する。なお、スピンドル23の回転数が、30000rpm以上でかつ100000rpm以下の高速であるために、切削ブレード21の切り刃212の下端より回転方向400の後側に向かう方向401に飛散される切削水は、ミストになった状態で飛散される。このように、後側に向かう方向401は、切削ブレード21の切り刃212の下端からのミストの飛散方向であり、以下飛散方向と記す。
【0026】
ブレードカバー24は、切削ブレード21を覆うものである。ブレードカバー24は、スピンドルハウジング22の先端面221に固定され、かつ切削ブレード21の上側を覆うカバー本体241と、カバー本体241に固定され、かつ切削ブレード21の搬入出領域301側の前側を覆う前側カバー242とを備える。カバー本体241は、加工領域302側の後側に下方に向かって延在した一対のノズル支持部材243を備える。
【0027】
ノズル25は、前側カバー242に設けられたシャワーノズル251と、カバー本体241のノズル支持部材243に支持された一対のクーラーノズル252とを備える。シャワーノズル251は、切削ブレード21の切り刃212の刃先とX軸方向に対面し、切削中に切削ブレード21の切り刃212の刃先に切削水を供給する。クーラーノズル252は、X軸方向と平行に延在し、互いにY軸方向に間隔をあけて配置されている。クーラーノズル252は、互いの間に切削ブレード21の切り刃212の下端を位置づけており、切削中に切削ブレード21の切り刃212の下端に切削水を供給する。
【0028】
(ダクト)
また、ブレードカバー24は、カバー本体241の加工領域302側の後側に固定されたダクト26を有する。
図4は、
図2に示された切削ユニットのダクトの正面図である。
図5は、
図4に示されたダクトの斜視図である。
図6は、
図5中のVI-VI線に沿う断面図である。
【0029】
ダクト26は、切削中の切削ブレード21の回転によって切削ブレード21の切り刃212の下端から飛散方向401に沿って飛散する切削水のミストを入口261から受け入れ、入口261から離れた出口262へと案内するものである。ダクト26は、入口261と出口262とを連通した通路を内側に設けた中空状に形成されている。
【0030】
ダクト26は、
図4、
図5及び
図6に示すように、入口261を設けた入口部263と、入口部263のY軸方向の側方に連なった延在部264と、延在部264の先端に連なり出口262を設けた出口部265とを一体に備えている。実施形態1に係るダクト26は、入口部263は、切削ブレード21とX軸方向に並べられ、延在部264が入口部263からY軸方向に延在し、延在部264と出口部265とがY軸方向に並べられている。
【0031】
入口部263は、カバー本体241の加工領域302側に固定され、カバー本体241に対面する入口261が形成された筒状に形成されている。入口部263は、入口261から切削ブレード21の切り刃212の下端から飛散される切削水のミストが侵入する。また、実施形態1では、入口部263は、
図5に示すように、X軸方向に延在した一対の側壁266と一対の側壁266の下端同士を連結した連結壁267とを備えている。側壁266及び連結壁267は、入口261の内縁に連なっている。実施形態1では、一方の側壁266は、カバー本体241の側面に重ねられる。
【0032】
延在部264は、一端が入口部263のカバー本体241から離れた側の端に連なっている。延在部264は、入口部263に連なった一端から他端がY軸方向に沿ってスピンドルハウジング22の後端側に延在した筒状に形成されている。延在部264は、上壁が一端から他端に向かうにしたがって徐々に下方に向かって傾斜している。出口部265は、延在部264の他端の下端部に連なり上方に開口である出口262が形成された扁平な筒状に形成されている。出口部265は、切削水のミストのうち気体をダクト26の外部に排出する。
【0033】
このように、ダクト26は、入口部263と、延在部264と、出口部265とを一体に備えて、スピンドル23の先端に装着された切削ブレード21の側方からスピンドル23の後端に向かって延在している。
【0034】
また、ダクト26は、内側に気液分離部27を有している。気液分離部27は、切削水のミストを気体と液体である切削水とに分離するものである。実施形態1では、気液分離部27は、衝突面である第1衝突面271と、衝突面である第2衝突面272と、水溜部273とを備える。
【0035】
第1衝突面271及び第2衝突面272は、切削ブレード21の回転によって飛散したミストが衝突するものである。第1衝突面271は、入口261からダクト26内に飛散方向401に沿って侵入した切削水のミストが衝突してミストを気体と切削水とに分離するものであり、実施形態1では、入口部263の入口261とX軸方向に対面する内面である。第1衝突面271は、切削ブレード21の切り刃212の下端から切削水のミストが飛散する飛散方向401と交差することとなる。第1衝突面271に衝突し、気体と切削水とに分離されなかったミストは、出口部265即ちスピンドル23の後方である延在部264の他端側に
図3及び
図6中の矢印402に沿って案内される。
【0036】
第2衝突面272は、第1衝突面271に衝突しても気体と切削水とに分離されなかったミストが衝突してミストを気体と切削水とに分離するものであり、実施形態1では、延在部264の上壁の内面である。第2衝突面272は、第1衝突面271から延在部264の他端側に案内されたミストが衝突する。水溜部273は、第1衝突面271と第2衝突面272とに衝突して気体から分離されて、衝突面271,272から落下した切削水を溜めるものであり、実施形態1では、出口部265の内面により構成されている。このため、水溜部273は、ダクト26の出口262まで延在している。
【0037】
このように、実施形態1に係る切削装置1は、ブレードカバー24のダクト26内に吸水性を有するスポンジ状等のフィルタを設けていない。
【0038】
撮像ユニット30は、切削ユニット20と一体的に移動するように、切削ユニット20に固定されている。撮像ユニット30は、チャックテーブル10に保持された切削前の被加工物200の分割すべき領域を撮影する撮像素子を備えている。撮像素子は、例えば、CCD(Charge-Coupled Device)撮像素子又はCMOS(Complementary MOS)撮像素子である。撮像ユニット30は、チャックテーブル10に保持された被加工物200を撮影して、被加工物200と切削ブレード21との位置合わせを行なうアライメントを遂行するため等の画像を得、得た画像を制御ユニット100に出力する。
【0039】
また、切削装置1は、チャックテーブル10のX軸方向の位置を検出するため図示しないX軸方向位置検出ユニットと、切削ユニット20のY軸方向の位置を検出するための図示しないY軸方向位置検出ユニットと、切削ユニット20のZ軸方向の位置を検出するためのZ軸方向位置検出ユニットとを備える。X軸方向位置検出ユニット及びY軸方向位置検出ユニットは、X軸方向、又はY軸方向と平行なリニアスケールと、読み取りヘッドとにより構成することができる。Z軸方向位置検出ユニットは、モータのパルスで切削ユニット20のZ軸方向の位置を検出する。X軸方向位置検出ユニット、Y軸方向位置検出ユニット及びZ軸方向位置検出ユニットは、チャックテーブル10のX軸方向、切削ユニット20のY軸方向又はZ軸方向の位置を制御ユニット100に出力する。なお、実施形態1では、切削装置1の各構成要素のX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向の位置は、予め定められた図示しない基準位置を基準とした位置で定められる。
【0040】
また、切削装置1は、切削前後の被加工物200を収容するカセット61が載置されかつカセット61をZ軸方向に移動させるカセットエレベータ60と、切削後の被加工物200を洗浄する洗浄ユニット70と、カセット61に被加工物200を出し入れするとともに被加工物200を搬送する搬送ユニット80を備える。
【0041】
また、切削装置1は、
図1に示すように、加工領域302の外側を囲って切削水の拡散を抑制する加工室壁6と、加工室用の排気ダクト8とを備えている。実施形態1において、加工室壁6は、加工領域302に位置付けられたチャックテーブル10及び切削ユニット20を収容する加工室303を切削装置1内に形成する。排気ダクト8は、一端が加工室壁6に連なって図示しない排気用のファンなどにより加工室壁6内即ち加工室303内の雰囲気を切削装置1外に排気する。
【0042】
制御ユニット100は、切削装置1の上述した各ユニットをそれぞれ制御して、被加工物200に対する加工動作を切削装置1に実施させるものである。なお、制御ユニット100は、CPU(central processing unit)のようなマイクロプロセッサを有する演算処理装置と、ROM(read only memory)又はRAM(random access memory)のようなメモリを有する記憶装置と、入出力インターフェース装置とを有するコンピュータである。制御ユニット100の演算処理装置は、記憶装置に記憶されているコンピュータプログラムに従って演算処理装置が演算処理を実施して、切削装置1を制御するための制御信号を入出力インターフェース装置を介して切削装置1の上述した構成要素に出力する。
【0043】
また、制御ユニット100は、加工動作の状態や画像などを表示する液晶表示装置などにより構成される表示ユニット102と、オペレータが加工内容情報などを登録する際に用いる入力ユニットとに接続されている。入力ユニットは、表示ユニット102に設けられたタッチパネルと、キーボード等の外部入力装置とのうち少なくとも一つにより構成される。
【0044】
前述した構成の切削装置1は、オペレータが加工内容情報を制御ユニット100に登録し、被加工物200を収容したカセット61をカセットエレベータ60に載置し、オペレータからの加工動作の開始指示を制御ユニット100が受け付けると、加工動作を開始する。加工動作を開始すると、切削装置1は、スピンドル23を軸心回りに回転し、搬送ユニット80がカセット61内から被加工物200を一枚取り出して、チャックテーブル10の保持面11に粘着テープ206を介して裏面204側を載置する。
【0045】
切削装置1は、粘着テープ206を介して被加工物200を保持面11に吸引保持し、クランプ部12で環状フレーム205を挟持する。切削装置1は、移動ユニット40によりチャックテーブル10を撮像ユニット30の下方まで移動し、撮像ユニット30によりチャックテーブル10に吸引保持した被加工物200を撮像して、アライメントを遂行する。
【0046】
切削装置1は、加工内容情報に基づいて、移動ユニット40により、切削ブレード21と被加工物200とを分割予定ライン202に沿って相対的に移動させながらノズル251,252から切削水を供給しながら、被加工物200の分割予定ライン202に切削ブレード21を粘着テープ206に到達するまで切り込ませて切削する。切削装置1は、被加工物200の全ての分割予定ライン202を切削すると、搬送ユニット80により被加工物200を洗浄ユニット70に搬送し、洗浄ユニット70で洗浄した後、搬送ユニット80によりカセット61内に搬入する。
【0047】
切削装置1は、カセット61内の被加工物200を順に切削加工する。切削装置1は、カセット61内の全ての被加工物200を切削加工すると、加工動作を終了する。また、切削装置1は、切削中に切削ブレード21の切り刃212の下端から飛散する切削水のミストが飛散方向401に沿って入口261を通ってダクト26の入口部263内に案内され第1衝突面271に衝突して一部が気体と切削水とに分離される。切削装置1は、ダクト26の入口部263内に侵入し、第1衝突面271に衝突して気体と切削水とに分離されたミストが第2衝突面272に衝突して、気体と切削水と分離される。
【0048】
切削装置1は、ミストから分離された切削水が衝突面271,272から落下して出口部265に設けられた水溜部273内に溜められ、水溜部273の上端を超えた切削水を出口262を通してダクト26外に排出する。また、切削装置1は、気液分離できなかったミストをダクト26の水溜部273内に溜められた切削水の水面上に通して、切削水に接触させて、さらに、気液分離して、気体及び気液分離しきれなかったミストが出口262からダクト26外に排気される。また、実施形態1に係る切削装置1は、加工動作を実施している間、排気ダクト8から加工室壁6内即ち加工室303内の雰囲気を切削装置1外に排気する。
【0049】
以上説明したように、実施形態1に係る切削装置1は、ブレードカバー24の入口261からミストを受け入れて出口262に案内するダクト26が、切削屑を含むミストが衝突する衝突面271,272と、衝突面271,272から落下した切削液を溜める水溜部273とを備え、水溜部273がダクト26の出口部265に設けられているので、衝突面271,272で気液分離された切削水が水溜部273に常に供給され、ダクト26内の気液分離されなかったミストが水溜部273内に溜められた切削水の水面上を通って出口262から排気される。このため、切削装置1は、ミストを衝突面271,272で気液分離するのに加え、水溜部273内に溜められた切削水の水面上を通すことでミストを気液分離することができ、高い気液分離効果があり、加工室303がミストで充満させることが抑制される。その結果、切削装置1は、加工室303内からミストが漏れることを抑制できる。
【0050】
また、切削装置1は、ブレードカバー24のダクト26がスポンジ状のフィルタを備えていないので、切削屑でダクト26内が目詰まりすることもなく、ダクト26等のメンテナンス頻度が低いという効果もある。その結果、実施形態1に係る切削装置1は、加工室303からのミストの漏れを抑制しながらブレードカバー24のダクト26内の目詰まりを抑制することができるという効果を奏する。
【0051】
また、実施形態1に係る切削装置1は、切削ブレード21の切り刃212の下端からのミストの飛散方向401に対して交差する第1衝突面271と、第1衝突面271に衝突した後に矢印402に沿ってスピンドル23の後方に案内されたミストが衝突する第2衝突面272とを備えるので、各衝突面271,272にミストを確実の衝突させることができる。
【0052】
〔実施形態2〕
本発明の実施形態2に係る切削装置を図面に基いて説明する。
図7は、実施形態2に係る切削装置の切削ユニットの正面図である。なお、
図7は、実施形態1と同一部分に同一符号を付して説明を省略する。
【0053】
実施形態2に係る切削装置1-2のダクト26-2は、第1衝突面271を備えずに、
図7に示すように、入口部263と延在部264と出口部265とがX軸方向に並んでいること以外、実施形態1と同じである。実施形態2に係る切削装置1-2は、切削中に切削ブレード21の切り刃212の下端から飛散する切削水のミストが飛散方向401に沿って入口261を通ってダクト26-2の入口部263内に案内され第2衝突面272に衝突して一部が気体と切削水とに分離される。
【0054】
切削装置1-2は、ミストから分離された切削水が第2衝突面272から落下して出口部265に設けられた水溜部273内に溜められ、水溜部273の上端を超えた切削水を出口262を通してダクト26-2外に排出する。また、切削装置1は、気液分離できなかったミストをダクト26-2の水溜部273内に溜められた切削水の水面上に通して、切削水に接触させて、さらに、気液分離して、気体及び気液分離しきれなかったミストが出口262からダクト26外に排気される。
【0055】
実施形態2に係る切削装置1-2は、ブレードカバー24の入口261からミストを受け入れて出口262に案内するダクト26-2が、第2衝突面272と、水溜部273とを備え、水溜部273がダクト26-2の出口部265に設けられているので、実施形態1と同様に、第2衝突面272で気液分離された切削水が水溜部273に常に供給され、ダクト26-2内の気液分離されなかったミストが水溜部273内に溜められた切削水の水面上を通って出口262から排気される。その結果、実施形態2に係る切削装置1-2は、ミストを第2衝突面272で気液分離するのに加え、水溜部273内に溜められた切削水の水面上を通すことでミストを気液分離することができ、高い気液分離効果を奏するとともに、ブレードカバー24のダクト26-2がスポンジ状のフィルタを備えていないので、実施形態1と同様に、加工室303からのミストの漏れを抑制しながらブレードカバー24のダクト26-2内の目詰まりを抑制することができるという効果を奏する。
【0056】
〔実施形態3〕
本発明の実施形態3に係る切削装置を図面に基いて説明する。
図8は、実施形態3に係る切削装置の切削ユニットの平面図である。
図9は、
図8に示された切削ユニットのダクトの断面図である。なお、
図8及び
図9は、実施形態1と同一部分に同一符号を付して説明を省略する。
【0057】
実施形態3に係る切削装置1-3のダクト26-3は、
図8及び
図9に示すように、気液分離部27が衝突面である第3衝突面274を備えていること以外、実施形態1と同じである。実施形態3に係る切削装置1-3のダクト26-3の第3衝突面274は、延在部264から出口部265に案内されたミストが衝突して、ミストを気液分離ものである。実施形態3において、第3衝突面274は、出口部265を構成する外壁のうち延在部264から最も離れ延在部264とY軸方向に対面する外壁から立設した立設壁268の内面である。
【0058】
実施形態3に係る切削装置1-3は、ブレードカバー24の入口261からミストを受け入れて出口262に案内するダクト26-3が、衝突面271,272,274と、水溜部273とを備え、水溜部273がダクト26-3の出口部265に設けられているので、衝突面271,272,274で気液分離された切削水が水溜部273に常に供給され、ダクト26-3内の気液分離されなかったミストが水溜部273内に溜められた切削水の水面上を通って出口262から排気される。その結果、実施形態2に係る切削装置1-3は、ミストを衝突面271,272,274で気液分離するのに加え、水溜部273内に溜められた切削水の水面上を通すことでミストを気液分離することができ、高い気液分離効果を奏するとともに、ブレードカバー24のダクト26-3がスポンジ状のフィルタを備えていないので、実施形態1と同様に、加工室303からのミストの漏れを抑制しながらブレードカバー24のダクト26-3内の目詰まりを抑制することができるという効果を奏する。
【0059】
また、実施形態3に係る切削装置1-3のダクト26-3は、第1衝突面271及び第2衝突面272に加え、第3衝突面274を備えるので、実施形態1に係るダクト26よりも高い気液分離効果を奏することとなる。
【0060】
なお、本発明は、上記実施形態及び変形例に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0061】
1 切削装置
10 チャックテーブル
20 切削ユニット
21 切削ブレード
22 スピンドルハウジング
23 スピンドル
24 ブレードカバー
25 ノズル
26 ダクト
27 気液分離部
40 移動ユニット
261 入口
262 出口
271 第1衝突面(衝突面)
272 第2衝突面(衝突面)
273 水溜部
274 第3衝突面(衝突面)
200 被加工物
401 飛散方向