(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】撮像素子
(51)【国際特許分類】
H01L 27/146 20060101AFI20240110BHJP
H04N 25/70 20230101ALI20240110BHJP
【FI】
H01L27/146 A
H04N25/70
H01L27/146 D
(21)【出願番号】P 2019205876
(22)【出願日】2019-11-14
【審査請求日】2022-10-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】井口 義則
【審査官】小山 満
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-039078(JP,A)
【文献】特開2002-043555(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0042577(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2002/0020845(US,A1)
【文献】国際公開第2016/111004(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/051876(WO,A1)
【文献】特開2019-096988(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 27/146
H04N 25/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画素エリアを有する画素基板と信号処理回路基板とを積層して備え、マイクロレンズを配列してなるマイクロレンズアレイを前記画素エリアに対向させるインテグラル方式の撮像素子であって、
前記画素基板の回路と前記信号処理回路基板の回路とを電気的に接続するTSV(Through Silicon Via)構造を備え、
前記画素エリアには、複数の画素から構成される画素ブロックが前記マイクロレンズに対向するように配列され、
前記画素ブロックは、前記マイクロレンズよりも小さく、
前記マイクロレンズにおいて光が十分に入射するマイクロレンズ中心部の周辺に位置するマイクロレンズ周辺部、および、隣接するマイクロレンズの間の少なくともいずれかを、前記画素エリアに投影した領域に、前記TSV構造が形成されて
おり、
前記TSV構造は、
前記画素基板を貫通して形成されて前記信号処理回路基板の回路に電気的に接続された第1のTSVと、
前記画素基板の回路に電気的に接続された第2のTSVと、
前記画素基板の前記画素エリアが配置された面において第1のTSVと第2のTSVとを電気的に接続する中継電極と、を備えることを特徴とする撮像素子。
【請求項2】
前記画素ブロックごとに前記TSV構造を備えている請求項
1に記載の撮像素子。
【請求項3】
前記TSV構造は、前記画素ブロックにおける画素列内の全ての画素に接続された配線に接続されている請求項
2に記載の撮像素子。
【請求項4】
前記TSV構造は、前記画素ブロック内の全ての画素に接続された配線に接続されている請求項
2に記載の撮像素子。
【請求項5】
前記TSV構造は、隣接する複数の画素ブロックの各画素に接続された配線に接続されている請求項
1に記載の撮像素子。
【請求項6】
前記マイクロレンズアレイを備える請求項1から請求項
5のいずれか一項に記載の撮像素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像素子に係り、特にインテグラル立体方式の映像を撮影する撮像素子に関する。
【背景技術】
【0002】
撮像素子の前面にマイクロレンズを配置し、光学レンズで結像した画像を要素画像に分割して撮像することで、視差を持つ立体映像を得るインテグラル方式の撮像素子が知られている(例えば、非特許文献1参照)。非特許文献1に開示されたインテグラル方式の撮像素子は、撮像素子(二次元イメージセンサ)と、マイクロレンズアレイとを組み合わせている。この撮像素子は、画素数が、15,360(H)×8,640(V)(約1億3,300万画素)であり、画素ピッチは2.45μmである。また、マイクロレンズアレイは、マイクロレンズ数が376(H)×211(V)(約79,000レンズ)であり、レンズピッチが0.1mmである。このインテグラル方式の撮像素子で撮影した立体映像の画素数は、マイクロレンズの個数と同数になり、376(H)×211(V)である。また、レンズピッチ(0.1mm)と画素ピッチ(2.45μm)から計算すると、約40(H)×40(V)画素ごとに1つのマイクロレンズが配置されている。つまり、要素画素数は、40(H)×40(V)である。1つのマイクロレンズに対応する画素数(要素画素数と呼ぶ)が多いほど、視差を正確に再現できる。したがって、高精細で自然な視差を持つ立体映像を撮影するためには、極めて多画素の撮像素子の実現が望まれる。
【0003】
また、積層型の撮像素子は、量産型のスマートフォンやデジタルスチルカメラ等に搭載されて市場に出回っている。例えば、撮像チップとしての画素基板と、信号処理チップとしてのA/D変換回路基板とを積層してなる撮像素子が知られている(特許文献1参照)。特許文献1に開示された撮像素子では、TSV(Through Silicon Via:シリコン貫通電極)が画素基板とA/D変換回路基板とを貫通している。この撮像素子には、画素エリアの外側に、TSVを配置する領域が設けられている。
【0004】
TSV構造を用いたインテグラル方式の積層型の撮像素子の従来の構成例について
図9~
図11を参照して説明する。
図9(a)および
図9(b)に示す撮像素子101は、画素基板120が、信号処理基板としてのA/D変換回路基板130の上に積層されている。画素基板120の上方にはマイクロレンズアレイ11が配置される。マイクロレンズアレイ11は、
図10(a)に示すように、行列状に配置された複数のマイクロレンズ11aを備えている。画素基板120は、
図10(b)に示すように、画素エリア121と、画素エリア121の外部(図において下側)のTSV形成領域122と、を備えている。画素エリア121には、複数の画素123が行列状に配置されて形成されている。TSV形成領域122はTSVが形成される領域である。TSVは、画素基板120の画素と、A/D変換回路基板130のA/D変換回路とを電気的に接続する。
【0005】
より詳細には、A/D変換回路基板130は、
図11(b)に示すように、例えば、支持基板133と、A/D変換回路132と、各A/D変換回路132に接続された配線131と、配線を絶縁するための絶縁層17と、を備えている。A/D変換回路132は、例えばトランジスタで構成され、チャネル領域14と、拡散層15と、ゲート16と、を備えている。また、画素基板120は、
図11(a)および
図11(b)に示すように、例えば、画素123と、各画素123に接続された配線127と、配線を絶縁するための絶縁層18と、を備えている。TSV124は、画素基板120の上面からA/D変換回路基板130の配線131に接続するように形成されている。TSV126は、画素基板120の上面から画素基板120の配線127に接続するように形成されている。TSV124とTSV126とは中継電極125を介して繋がっている。中継電極125は、TSV形成領域122の上面である光入射面に形成されている。
【0006】
図9~
図11に示すようなTSV構造を有した撮像素子101は、画素基板120とA/D変換回路基板130とを接合した後、画素エリア121外にTSV124,126を形成して上下の回路を電気的に接続することで製造される。TSV124,126を中継する中継電極125は光入射面に露出してしまうため、通常、TSV124,126が画素エリア121に形成されることはない。
【0007】
積層型の撮像素子において、TSV構造を有した撮像素子以外に、ハイブリッドボンディング構造の撮像素子も開発されているのが現状である(非特許文献2参照)。ハイブリッドボンディングは、あらかじめ表面に接続用の電極を形成した集積回路を、電極の位置を合わせて接合する技術である。一般的に、ハイブリッドボンディングでは、接続電極(金属)と絶縁体が混在する基板の接合面を平坦化した後、プラズマによる表面活性化処理等を行い、常温または比較的低温で基板同士を接合する。この構造を有した撮像素子は、画素基板とA/D変換回路基板とに、上下の両回路を電気的に接続するための接続電極を形成した後、ハイブリッドボンディングの手法により両基板を接合することで製造される。ハイブリッドボンディングによれば、接合と同時に上下の回路が電気的に接続され、接続電極を画素エリア内に形成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【非特許文献】
【0009】
【文献】Arai et al., “Progress Overview of Capturing Method for Integral 3-D Imaging Displays”, Poceedings of the IEEE, Vol.105, No.5, pp.837-849 (2017)
【文献】後藤正英、萩原啓、井口義則、大竹浩著、「画素並列信号処理を行う撮像デバイスの実現に向けた3次元集積回路の作製」、NHK技研R&D No.153 p.22-p.28、2015年9月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
例えばハイビジョン画素数のインテグラル方式の撮像素子を実現しようとすると、マイクロレンズ数は1,920(H)×1,080(V)となる。このような多数のマイクロレンズを備えるマイクロレンズアレイと組み合わせる撮像素子に必要な画素数は、例えば、要素画素数が非特許文献1に記載の技術と同様に、40(H)×40(V)である場合、76,800(H)×43,200(V)(約33億画素)と試算される。このような超多画素の撮像素子では、一般に用いられている列並列信号処理方式のA/D変換回路では、A/D変換時間が長くなり、動画撮影時のフレームレートが低下するといった問題がある。なお、列並列信号処理方式では、画素エリアに並んだ1列分の画素を1つのA/D変換回路が受け持っている。
【0011】
多画素の撮像素子において、A/D変換時間を短縮してフレームレートを向上させるためには、画素エリアに並んだ1列分の画素を複数の処理単位に分割して、1つのA/D変換回路が受け持つ画素数を減らすことが必要である。例えば、1列分の画素を、平面視で上下2つの処理単位に分割して、上側の処理単位を画素エリアの上側に配置されたA/D変換回路が分担し、下側の処理単位を画素エリアの下側に配置されたA/D変換回路が分担すれば、A/D変換時間を半減できる。一方、さらなる時間短縮を試みようとして1列を3つ以上の処理単位に分割すると、中央の側に配置された処理単位を担当するA/D変換回路を配置することができず、中央の側に配置された処理単位から信号を読み出すことができない。ただし、接続電極を画素エリア内に形成することができる積層型の撮像素子であれば、中央の処理単位からも容易に信号を読み出すことができる。そのため、画素エリアの信号を、処理単位ごとに分割した信号を、下層のA/D変換回路基板に読み出すためには、一般的にはハイブリッドボンディング構造をとる必要がある。しかしながら、ハイブリッドボンディング構造は、接合時の基板の位置合わせ精度や接合のプロセス条件が厳しく、難易度が高いといった問題がある。
【0012】
本発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであり、インテグラル方式の撮像素子においてTSVを用いてもフレームレートの低下を抑制できる撮像素子を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を解決するために、本発明に係る撮像素子は、画素エリアを有する画素基板と信号処理回路基板とを積層して備え、マイクロレンズを配列してなるマイクロレンズアレイを前記画素エリアに対向させるインテグラル方式の撮像素子であって、前記画素基板の回路と前記信号処理回路基板の回路とを電気的に接続するTSV(Through Silicon Via)構造を備え、前記画素エリアには、複数の画素から構成される画素ブロックが前記マイクロレンズに対向するように配列され、前記画素ブロックは、前記マイクロレンズよりも小さく、前記マイクロレンズにおいて光が十分に入射するマイクロレンズ中心部の周辺に位置するマイクロレンズ周辺部、および、隣接するマイクロレンズの間の少なくともいずれかを、前記画素エリアに投影した領域に、前記TSV構造が形成されており、前記TSV構造は、前記画素基板を貫通して形成されて前記信号処理回路基板の回路に電気的に接続された第1のTSVと、前記画素基板の回路に電気的に接続された第2のTSVと、前記画素基板の前記画素エリアが配置された面において第1のTSVと第2のTSVとを電気的に接続する中継電極と、を備えることとした。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、以下に示す優れた効果を奏するものである。
本発明に係る撮像素子によれば、画素エリアにおいて、マイクロレンズ周辺部、および、隣接するマイクロレンズの間の少なくともいずれかに対応した領域にTSVが形成されているので、画素エリアに並んだ1列分の画素を3つ以上の処理単位に分割して、1つのA/D変換回路が受け持つ画素数を容易に減らすことができる。したがって、インテグラル方式の超多画素の撮像素子においてTSVを用いても動画撮影時のフレームレートの低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るインテグラル方式の撮像素子の模式図であって、(a)は平面図であり、(b)は
図1のIB-IB線における断面図である。
【
図2】
図1のインテグラル方式の撮像素子を分解して示す平面図であって、(a)はマイクロレンズアレイを示し、(b)は画素基板を示している。
【
図3】
図1のインテグラル方式の撮像素子の模式図であって、(a)は
図1のP部の拡大図であり、(b)は
図3(a)のIIIB-IIIB線における模式的な断面図である。
【
図4】
図1のインテグラル方式の撮像素子の模式図であって、(a)は、
図1のP部に配置されたマイクロレンズの拡大図であり、(b)は、
図3(a)のR部に配置された中継電極の拡大図である。
【
図5】(a)-(b)は、本発明の実施形態に係るインテグラル方式の撮像素子の製造工程を模式的に示す断面図である。
【
図6】(a)-(b)は、本発明の実施形態に係るインテグラル方式の撮像素子の製造工程を模式的に示す断面図である。
【
図7】本発明の第2実施形態に係るインテグラル方式の撮像素子の模式図であって、(a)は
図1のP部に相当する平面図であり、(b)は
図7(a)のVIIB-VIIB線における模式的な断面図である。
【
図8】本発明の第3実施形態に係るインテグラル方式の撮像素子の模式図であって、(a)は
図1のP部に相当する平面図であり、(b)は
図8(a)のVIIIB-VIIIB線における模式的な断面図である。
【
図9】従来のインテグラル方式の撮像素子の模式図であって、(a)は平面図であり、(b)は
図9(a)のIXB-IXB線における模式的な断面図である。
【
図10】従来のインテグラル方式の撮像素子を分解して示す平面図であって、(a)は、マイクロレンズアレイを示し、(b)は画素基板を示している。
【
図11】従来のインテグラル方式の撮像素子の模式図であって、(a)は
図9のQ部の拡大図であり、(b)は
図11(a)のXIB-XIB線における模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の各実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明では、同一の名称および符号は原則として同一のまたは同質の要素を示すものであり、詳細な説明を適宜省略する。また、以下の説明において参照する図面は、実施形態を概略的に示したものであるため、各部材のスケールや間隔、位置関係などが誇張、あるいは、部材の一部の図示が省略されている場合がある。また、
図1(b)および
図9(b)は、基板の断面を単一のハッチングで模式的に示している。また、
図3(b)、
図5、
図6、
図7(b)、
図8(b)、
図11(b)は、基板の構成要素の電気的な接続や導通の可否等を正確に描くことを意図したものではなく、基板の構成要素の断面レイアウトを模式的に示す概念図である。
【0017】
(第1実施形態)
[撮像素子の構成]
第1実施形態に係る撮像素子の構成について
図1~
図4を参照して説明する。なお、
図9~
図11を参照して説明した撮像素子101と同じ構成には同じ符号を付して説明を適宜省略する。
撮像素子1は、画素基板12と、信号処理回路基板としてのA/D変換回路基板13と、を備えている。撮像素子1は、例えばCCD(Charge Coupled Devices)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の二次元イメージセンサで構成される。
図1(b)に示すように、画素基板12はA/D変換回路基板13の上に積層され、画素基板12の上方にはマイクロレンズアレイ11が配置される。
【0018】
第1実施形態に係るインテグラル方式の撮像素子は、撮像素子1と、マイクロレンズアレイ11とを組み合わせて構成される。マイクロレンズアレイ11は、マイクロレンズ11aを配列してなる。
図1および
図2では、簡潔に説明するためにマイクロレンズアレイ11を、マイクロレンズ数が15(H)×10(V)(150レンズ)のもので表す。マイクロレンズ11aの個数は、これに限定されるものではなく、マイクロレンズアレイ11は、例えば非特許文献1に記載されたものを用いてもよい。この場合、マイクロレンズアレイは、マイクロレンズ数が376(H)×211(V)(約79,000レンズ)であり、レンズピッチが0.1mmである。また、ハイビジョン画素数のインテグラル方式の撮像素子を実現しようとすると、マイクロレンズ数は1,920(H)×1,080(V)となる。
【0019】
ここでは、マイクロレンズ11aは平面視円形の平凸レンズであるものとした。また、ここでは、複数のマイクロレンズ11aは、
図2(a)に示すように正方格子配列で配置されている。マイクロレンズアレイ11は、画素基板12の画素エリア121に対面して配置される。マイクロレンズ11aは、
図4(a)に示すように、マイクロレンズ中心部30と、マイクロレンズ周辺部31とからなる。マイクロレンズ中心部30は、マイクロレンズ11aにおいて光が十分に入射する領域である。マイクロレンズ周辺部31は、マイクロレンズ中心部30の周辺に位置する領域である。光が十分に入射する領域とは、マイクロレンズアレイと撮像素子とを組み合わせて構成されるインテグラル方式の撮像素子において、撮像素子の画素において十分な光が届く画素や、クロストークが発生しない画素にそれぞれ対向したマイクロレンズ領域を意味する。
【0020】
ここで、光が十分に入射する領域について、さらに従来の撮像素子(
図9~
図11)を参照して説明する。従来のインテグラル方式の撮像素子は、
図10(b)に示すように、複数の画素123が縦横に一定のピッチで隙間がないように並んだ画素アレイを画素エリア121に備える画素基板120と、A/D変換回路基板130と、を有した撮像素子101と、マイクロレンズアレイ11と、が組み合わせられて構成されている。
【0021】
図11(a)に示す従来の撮像素子において、撮像に好適な画素に対向したマイクロレンズ領域が、マイクロレンズ中心部30(
図4(a))に相当し、それを取り囲む領域がマイクロレンズ周辺部31(
図4(a))に相当する。従来の撮像素子では、マイクロレンズ周辺部31(
図4(a))に対向して位置する画素123には、十分な光が届かない、あるいは、両隣のマイクロレンズ11aから光が届き、クロストークが発生するといった問題があり、これらの画素は、撮像には用をなさない。加えて、
図11(a)に示す従来の撮像素子では、隣接するマイクロレンズ11aの間に位置する画素123に、十分な光が届かない、あるいは、両隣のマイクロレンズ11aから光が届き、クロストークが発生するといった問題があり、これらの画素も、撮像には用をなさない。
【0022】
図3(a)および
図3(b)に示すように、画素基板12は、例えば、複数の画素123から構成される画素ブロック20と、各画素123に接続された配線127と、配線127を絶縁するための絶縁層18と、を備えている。画素123は、一般的な構造を有し、例えば、光に応じた電荷を生成する光電変換部としてのフォトダイオード、フォトダイオードに接続されたトランジスタ、信号の供給や出力のための配線等を備えている。配線127の材料としては、例えば、Al、Cu、Au、Wなどの金属を用いることができる。絶縁層18の材料としては、例えばSiO
2やAl
2O
3等の酸化膜を用いることができる。
【0023】
図2(b)に示すように、画素基板12は、画素エリア121を有する。なお、
図10(b)に示す従来の撮像素子の画素基板120とは異なり、画素エリア121の外側にTSV形成領域122は存在しない。
画素エリア121には、複数の画素ブロック20が正方格子状に配置されて形成されている。画素ブロック20は、マイクロレンズ11aに対向するように配列されている。画素ブロック20の配設ピッチは、マイクロレンズ11aの配設ピッチと同じである。画素ブロック20は、複数の画素123から構成され、マイクロレンズ11aよりも小さい。
【0024】
ここで、簡潔に説明するために、画素ブロック20を構成する画素数は、
図1(a)および
図2(b)では3(H)×3(V)で表し、
図3(a)では8(H)×8(V)で表す。画素ブロック20を構成する画素数は、多いほど視差を正確に再現でき、例えば非特許文献1に記載された要素画素数40(H)×40(V)や、それ以上であってもよい。
【0025】
また、画素ブロック20がマイクロレンズ11aよりも小さいとは、画素ブロック20を構成するすべての画素の全体部分が、マイクロレンズ11aを画素エリアに投影した領域に完全に含まれることを意味する。言い換えると、
図3(a)に示すように、平面視において、画素ブロック20を構成するすべての画素の全体部分が、マイクロレンズ11aの輪郭内に配置されていてマイクロレンズ11aの輪郭に重なることがないことを意味する。例えば画素ブロック20の全体形状が正方形でマイクロレンズ11aの形状が正円であれば、その正方形は、正円に内接する正方形よりも小さいことになる。
【0026】
図3(b)に示すように、A/D変換回路基板13は、例えば、支持基板133と、A/D変換回路132と、各A/D変換回路132に接続された配線131と、配線を絶縁するための絶縁層17と、を備えている。支持基板133は、例えばシリコン基板からなる。A/D変換回路132は、例えばNチャネルMOSトランジスタやPチャネルMOSトランジスタで構成され、チャネル領域14と、拡散層15と、ゲート16と、を備えている。配線131の材料としては、例えば、Al、Cu、Au、Wなどの金属を用いることができる。絶縁層17の材料としては、例えばSiO
2やAl
2O
3等の酸化膜を用いることができる。
【0027】
図3(b)に示すように、画素基板12の回路と、A/D変換回路基板13の回路とは、TSV構造によって接続されている。このTSV構造は、TSV124(第1のTSV)と、TSV126(第2のTSV)と、中継電極125と、を備えている。TSV124は、画素基板12を貫通して形成されてA/D変換回路基板13の回路(A/D変換回路132、配線131)に電気的に接続されている。TSV126は、画素基板12の回路(画素123、配線127)に電気的に接続されている。中継電極125は、画素基板12の画素エリア121が配置された面においてTSV124とTSV126とを電気的に接続する。
【0028】
図3および
図4に示すように、TSV124、中継電極125およびTSV126(以下、TSV構造という)は、マイクロレンズ周辺部31、および、隣接するマイクロレンズの間32を、画素エリアに投影した領域に形成されている。なお、
図3(a)および
図4(b)に示すように、画素エリアの表面(光入射面)には中継電極125が配置されており、TSV124,126は中継電極125の直下に配置されて隠れていることから画素エリアの表面(光入射面)には視認されない。
【0029】
撮像素子1は、
図3(a)に示すように、画素ブロック20ごとにTSV構造を備えており、TSV構造は、画素ブロック20内の画素123に接続された配線127に接続されている。言い換えると、撮像素子1では、画素ブロック20それぞれに対応するようにTSV構造が形成されており、対応するTSV構造が形成されていない画素ブロックは存在しない。また、配線127は、画素ブロック20内の画素123にだけ接続されており、隣接する画素ブロック20内の画素123には接続されていない。
【0030】
撮像素子1は、
図3(a)に示すように、TSV構造が、画素ブロック20における画素列内の全ての画素123に接続された配線127に接続されている。言い換えると、撮像素子1では、配線127は、画素ブロック20内における画素列ごとに形成されている。
【0031】
図3(b)に示すように、TSV126は、例えば、画素基板12の上面から画素基板12の配線127に接続するように形成されている。TSV124は、画素基板12の上面からA/D変換回路基板13の配線131に接続するように形成されている。TSV126とTSV124とは中継電極125を介して繋がっている。
【0032】
TSV構造の材料としては、接合に適した材料、例えばCuやAuなどの金属を用いることができる。TSV124,126の平面視サイズは、例えば約3μmであり、非特許文献1に記載されたレンズピッチ(0.1mm)より十分に小さく、非特許文献1に記載された画素ピッチ(2.45μm)程度である。
【0033】
中継電極125は、画素ブロック20において画素123の列毎に形成され、かつ、画素ブロック20の外に配置される。そのために、中継電極125の平面視形状は、当該中継電極125で互いに接続されるTSV124,126の並び方向(
図3(a)における縦方向)に長い形状である。中継電極125は、
図4(b)に示すように、平面視で、TSV124,126を完全に覆うサイズを有している。中継電極125が、TSV124,126が並んでいる列方向に長いので、TSV124,126のサイズが画素ピッチ程度であっても、本実施形態のように、マイクロレンズ11aごとに、かつ、画素ブロック20内の1列分の画素123ごとに、中継電極125を形成することができる。画素ブロック20ごとに中継電極125で接続されることにより、撮像素子1は、各マイクロレンズ11aのさらに画素列ごとに処理単位を形成している。
【0034】
[撮像素子の製造方法]
第1実施形態に係る撮像素子の製造方法の一例について
図5~
図6を参照して説明する。なお、ここでは、TSV構造の製造方法について着目して説明を行い、それ以外の工程については説明を省略する。
図5(a)に、積層される前の画素基板12aとA/D変換回路基板13aとを示す。画素基板12aには、複数の画素123からなる画素ブロック20と、各画素123に接続された配線127と、配線127を絶縁するための絶縁層18と、が形成されている。なお、積層される前の画素基板12aには支持基板128が付随している。また、A/D変換回路基板13aには、支持基板133と、A/D変換回路132と、各A/D変換回路132に接続された配線131と、配線131を絶縁するための絶縁層17と、が形成されている。また、これら画素基板12aとA/D変換回路基板13aとの接合面は、平坦化しておく。平坦化の方法としては、化学機械研磨(Chemical Mechanical Polishing:CMP)等を用いることができる。
【0035】
次に、画素基板12aとA/D変換回路基板13aとを接合し、その後、支持基板128を研削やCMP等の方法を用いて除去する。続けて、
図5(b)に示すように、画素基板12aの上面からA/D変換回路基板13aの配線131に達するスルーホール3と、画素基板12aの上面から画素基板12aの配線127に達するスルーホール5とを形成する。スルーホール3,5は、例えばフォトリソグラフィとエッチングにより形成される。
次に、画素基板12aの上面にフォトレジストを塗布し、フォトリソグラフィにより中継電極125となる部分を開口する。次に、図示しないバリアメタル材料をスパッタにより堆積し、続いて、
図6(a)に示すように、フォトレジスト6の上、およびフォトレジスト6の開口8内に、メッキ処理により埋め込み電極材料7を堆積する。
【0036】
次に、
図6(b)に示すように、フォトレジスト6を剥離する。このとき、フォトレジスト6上のバリアメタル材料と埋め込み電極材料7がリフトオフされ、TSV124、TSV126、中継電極125が一体で形成される。以上により、撮像素子1が完成する。
【0037】
第1実施形態に係る撮像素子1は、画素123が、個々のマイクロレンズ11aの直下のみに限定的に配置された構造を有している。そのため、画素エリア121において画素123の配置されていない部分にTSV構造を形成することができる。このようにTSV構造を画素エリアに形成できることから、画素エリアに並んだ1列分の画素を3つ以上の複数の処理単位に分割して、画素からの信号を読み出すA/D変換回路が受け持つ画素数を容易に減らすことができる。したがって、超多画素のインテグラル方式の撮像素子において、フレームレートの低下を抑制することができる。その結果、超多画素を高フレーム周波数で読みだす必要があるスーパーハイビジョン用の撮像機器等に対しても好適なものとすることができる。また、この撮像素子の製造工程においては、画素基板12aとA/D変換回路基板13aとを積層する際に、難易度の高いハイブリッドボンディングを行わずに済むため、製造が容易である。
【0038】
(第2実施形態)
第2実施形態に係る撮像素子の構成について
図7を参照して説明する。
図7(a)は
図1のP部に相当する平面図であり、
図7(b)は
図7(a)のVIIB-VIIB線における模式的な断面図である。第1実施形態と同じ構成には同じ符号を付して説明を適宜省略する。
【0039】
第2実施形態では、画素基板12Bは、複数の画素ブロック20にわたるように配線127が列方向に延設している。同様に、A/D変換回路基板13Bは、複数の画素ブロック20に亘るように配線131が列方向に延設している。また、TSV124、中継電極125およびTSV126(TSV構造)は、隣接する複数の画素ブロック20の各画素123に接続された配線127に接続されている。言い換えると、第2実施形態の撮像素子1では、画素ブロック20それぞれに対応するようにTSV構造が形成されているわけではなく、
図7(b)に示すように、対応するTSV構造が形成されていない画素ブロック20(
図7(b)において右側)が存在する。
【0040】
中継電極125は、TSV124,126が並んでいる列方向(
図7(a)における縦の列方向)に隣接する2つのマイクロレンズ11aにわたって、かつ、画素ブロック20内の1列分の画素ごとに形成されている。これにより、第2実施形態の撮像素子1は、隣接する2つのマイクロレンズ11aの直下のすべての画素をまとめた隣接画素ブロック群の画素列ごとに処理単位を形成している。
【0041】
第2実施形態に係る撮像素子1は、第1実施形態と同様の効果を奏することができることに加え、TSV構造の個数を低減することができるため、製造が容易である。
また、ここでは、画素基板12の配線127が、隣接する2つの画素ブロック20にわたって形成されていることとしたが、一列に隣接する3つ以上の画素ブロック20にわたって形成されていても構わない。これにより、第2実施形態の変形例に係る撮像素子1は、隣接する3つ以上のマイクロレンズ11aの直下のすべての画素をまとめた隣接画素ブロック群の画素列ごとに処理単位を形成することができる。
【0042】
(第3実施形態)
第3実施形態に係る撮像素子の構成について
図8を参照して説明する。
図8(a)は
図1のP部に相当する平面図、
図8(b)は
図8(a)のVIIIB-VIIIB線における模式的な断面図である。第1実施形態と同じ構成には同じ符号を付して説明を適宜省略する。なお、
図8(a)のVIIIB-VIIIB線の位置は、
図3(a)のIIIB-IIIB線の位置から右側にシフトしている。そのため、
図8(b)には、マイクロレンズ11aの端面も表示されている。
【0043】
第3実施形態では、
図8(a)に平面視で示すように、1つのマイクロレンズ11aについてTSV構造(TSV124、中継電極125およびTSV126)を1ヶ所にまとめた配置とした点が第1実施形態と異なっている。なお、
図8(b)に示す画素基板12とA/D変換回路基板13の断面レイアウトは、
図3(b)に示す画素基板12とA/D変換回路基板13の断面レイアウトと同様である。
【0044】
第3実施形態では、TSV構造は、画素ブロック20内の全ての画素123に接続された配線127に接続されている。言い換えると、第3実施形態の撮像素子1では、配線127は、平面視で、画素ブロック20内の全ての画素123をくまなく経由し、画素ブロック20内の全ての画素123に接続するように形成されている。
図8(a)に示した例では、配線127は、右端の1列分の画素を経由した後、左隣の1列分の画素を経由する、といった往復を繰り返す経路で画素ブロック20内の全ての画素123に接続している。中継電極125は、画素ブロック20ごとに形成されている。これにより、第3実施形態の撮像素子1は、画素ブロック20ごとに処理単位を形成している。
【0045】
第3実施形態に係る撮像素子1は、第1実施形態と同様の効果を奏することができることに加え、TSV構造の個数を低減することができるため、製造が容易である。また、回路規模が小さくなるので消費電力を低減できる。なお、配線127の平面視における形状は、一筆書きで全ての画素123を経由するように選択することができれば、
図8(a)に示した形状に限るものではない。
【0046】
以上、本発明の各実施形態に係る撮像素子について説明したが、本発明の趣旨はこれらの記載に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて広く解釈されなければならない。また、これらの記載に基づいて種々変更、改変などしたものも本発明の趣旨に含まれることはいうまでもない。例えば、
図3および
図4に示した例では、TSV124は、マイクロレンズ周辺部31、および、隣接するマイクロレンズの間32を、画素エリアに投影した領域に形成されているとして説明したが、マイクロレンズ周辺部31、または、隣接するマイクロレンズの間32を、画素エリアに投影した領域に形成されていることとしてもよい。
【0047】
前記実施形態では、撮像素子1は、画素基板12と、A/D変換回路基板13と、の2層構造として説明したが、3層以上の積層構造であっても構わない。3層目は、例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory)等の画像メモリを有するチップとすることもできる。3層構造の場合、2層目と3層目とを繋ぐTSV、または、1層目と3層目とを繋ぐTSVを配置する。
【0048】
前記実施形態では、撮像素子1は、二次元イメージセンサであるものとして説明したが、撮像素子1は、マイクロレンズアレイ11をさらに備えて、二次元イメージセンサ部とマイクロレンズアレイ部との組立体であってもよい。この場合、マイクロレンズアレイ11を、画素基板12の光入射面から、マイクロレンズの焦点距離等に応じた所定距離だけ離間させて保持するマイクロレンズアレイホルダ等を備える。
【0049】
前記実施形態では、マイクロレンズ11aが平凸レンズであるものとしたが、レンズ種類はこれに限らず、平凸レンズのほか、例えば凸レンズ、ボールレンズ、屈折率分布レンズ、回折光学素子、凹レンズ、あるいは、これらの組み合せでもよい。マイクロレンズ11aの平面視における形状が円形であるものとしたが、レンズ形状はこれに限らず、正円のほか、例えば楕円、横長の矩形、正六角形等の多角形でもよい。マイクロレンズ11aの配置は、正方格子配列であるものとしたが、より細密な配列が可能なデルタ配列であってもよい。マイクロレンズアレイは、2次元状に微小レンズを配列したものだけでなく、水平方向に縦長のレンズを並べたレンチキュラーレンズや、ピンホールアレイを用いてもよい。
【符号の説明】
【0050】
1 撮像素子
11 マイクロレンズアレイ
11a マイクロレンズ
12 画素基板
13 A/D変換回路基板(信号処理回路基板)
14 チャネル領域
15 拡散層
16 ゲート
17,18 絶縁層
20 画素ブロック
30 マイクロレンズ中心部
31 マイクロレンズ周辺部
32 隣接するマイクロレンズの間
121 画素エリア
123 画素
124 TSV(第1のTSV)
125 中継電極
126 TSV(第2のTSV)
127 画素基板の配線
128 支持基板
131 A/D変換回路基板の配線
132 A/D変換回路
133 支持基板