(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】有機修飾金属酸化物または半金属酸化物高分子膜
(51)【国際特許分類】
B05D 7/24 20060101AFI20240110BHJP
B32B 9/00 20060101ALI20240110BHJP
H10K 50/10 20230101ALI20240110BHJP
H05B 33/04 20060101ALI20240110BHJP
H05B 33/02 20060101ALI20240110BHJP
C01B 13/14 20060101ALI20240110BHJP
C01B 13/32 20060101ALI20240110BHJP
C01B 33/12 20060101ALI20240110BHJP
C01G 23/04 20060101ALI20240110BHJP
C01G 25/02 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
B05D7/24 302A
B05D7/24 302P
B32B9/00 A
H05B33/14 A
H05B33/04
H05B33/02
C01B13/14 A
C01B13/32
C01B33/12 D
C01G23/04 C
C01G25/02
(21)【出願番号】P 2020544460
(86)(22)【出願日】2019-02-21
(86)【国際出願番号】 EP2019054308
(87)【国際公開番号】W WO2019162374
(87)【国際公開日】2019-08-29
【審査請求日】2022-02-18
(32)【優先日】2018-02-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】アドミル ハジッチ
(72)【発明者】
【氏名】アリ カルッカイネン
(72)【発明者】
【氏名】サミ ピリネン
(72)【発明者】
【氏名】ミリア ハヌ-クーレ
(72)【発明者】
【氏名】ヤルコ レイヴォ
(72)【発明者】
【氏名】ラウナ-レーナ クヴァヤ
(72)【発明者】
【氏名】グレイム ゴードン
(72)【発明者】
【氏名】朝倉 敏景
(72)【発明者】
【氏名】ニール グレゴリー スキラー
(72)【発明者】
【氏名】山本 宏
【審査官】市村 脩平
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-123838(JP,A)
【文献】特開2000-119586(JP,A)
【文献】国際公開第2019/230283(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05D1/00-7/26
B32B1/00-43/00
C01B13/00-13/36
C01G1/00-23/08
C03C15/00-23/00
C09D1/00-10/00
101/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)
a1)次の式(I)の1種類以上の金属化合物または半金属化合物を供給する工程:
M
1(OR
1)
nR
2
m (I)
[式中、M
1は、
Siであり、R
1はそれぞれ独立してC
1~C
10のオルガニルまたはオルガノヘテリル基から選択され、R
2はそれぞれ独立してC
1~C
20のオルガニルまたはオルガノヘテリル基から選択され、nは1~zであり、mはz-1~0であり、n+mはzである];
a2)前記M
1(OR
1)部位を少なくとも部分的に加水分解し、式(I)の金属化合物または半金属化合物を重合する工程;
を含む、第1の容器の中で第1の前駆体組成物(FPC)を製造する工程;
b)
b1a)次の式(II)の金属化合物または半金属化合物を供給する工程:
M
2(OR
3)
o (II)
[式中、M
2は、
Tiおよび/またはZrであり
、R
3
はそれぞれ独立してC
1~C
10のオルガニルまたはオルガノヘテリル基から選択され、oはyである];
b2a)任意選択的に、式(II)の前記金属化合物または半金属化合物を、(OR
3)とは異なる配位子(L)と反応させる工程;
または
b1b)工程b2a)の反応生成物を直接供給する工程;
を含む、第2の容器の中で第2の前駆体組成物(SPC)を製造する工程;
c)前記第1の前駆体組成物(FPC)を前記第2の前駆体組成物(SPC)と混合する工程;
c1)任意選択的に、工程c)の生成物をSi(R
23)
3XまたはSi(R
23)
2X
2と反応させる工程:
[式中、R
23はC
1~C
3アルキル基であり、XはClまたはOR
24を表し、R
24はC
1~C
3アルキル基である];
d)前記基板上に薄層を形成する工程;
e)任意選択的に、工程d)の後に、溶媒が存在する場合には溶媒を部分的にまたは完全に除去する工程;
f)工程e)が存在する場合には工程e)で得られた中間生成物を、または工程e)が存在しない場合には工程d)で得られた中間生成物を硬化させる工程;
を含む、基板上での薄膜の作製方法であって、
- 前記第1の前駆体組成物(FPC)の製造中、
- 前記第2の前駆体組成物(SPC)の製造中、および/または
- 工程c)中、もしくは工程c)の後でかつ工程d)が行われる前に、
任意選択的に(メタ)アクリル酸エステル(ME)を添加し、かつポリビニルアセタールを添加しない、方法。
【請求項2】
工程c)におけるM
1とM
2とのモル比が、1.0:10~10:1.0、好ましくは1.0:10~1.0:1.0、より好ましくは1.0:10~1.0:2.0である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
工程c)の間に、添加剤、例えば界面活性剤、レベリング剤、加工助剤、帯電防止剤、酸化防止剤、水および酸素捕捉剤、触媒、散乱粒子、光開始剤、またはこれらの混合物を添加する、請求項1
または2記載の方法。
【請求項4】
工程d)からf)の間の最高温度が450℃未満、好ましくは300℃未満である、請求項1から
3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
工程c)の後に、
c2)工程c)で得られた前記混合物に溶媒(S)を添加する工程
を含む、請求項1から
4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
工程d)の前の固形分が、75重量%以下、好ましくは55重量%以下である、請求項1から
5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
工程d)の前の固形分が少なくとも90重量%である、請求項1から
4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
工程f)が熱および/または照射による硬化によって行われる、請求項1から
7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
請求項1から
8までのいずれか1項記載の方法により作製される薄膜からなる少なくとも1つの層を含む、多層構造体。
【請求項10】
請求項1から
8までのいずれか1項記載の方法により作製される薄膜からなる少なくとも1つの層の1つの表面が前記基板の1つの表面および/または別の層と直接接触している、請求項
9記載の多層構造体。
【請求項11】
請求項1から
8までのいずれか1項記載の方法により得られる薄膜または請求項
9もしくは
10記載の多層構造体を含む、物品。
【請求項12】
- 光学および電気コーティング;
- High-κ誘電体;
- 光アウトカップリング/取り出し層;
- エッチングおよびCMP停止層;
- OLED保護/シーリング/封止コーティング;
- 有機太陽電池;ならびに
- 光学薄膜フィルタ;
から選択される、請求項
11記載の物品。
【請求項13】
第1の前駆体組成物(FPC)と第2の前駆体組成物(SPC)とを含有する組成物であって、前記第1の前駆体組成物(FPC)が、重合された1種類以上の次の式(I):
M
1(OR
1)
nR
2
m (I)
[式中、M
1は、
Siであり、R
1はそれぞれ独立してC
1~C
10のオルガニルまたはオルガノヘテリル基から選択され、R
2はそれぞれ独立してC
1~C
20のオルガニルまたはオルガノヘテリル基から選択され、nは1~z-1であり、mは1~z-1であり、n+mはzである]の金属化合物または半金属化合物であり、
前記重合が、前記M
1(OR
1)部位を少なくとも部分的に加水分解することによって行われ;
前記第2の前駆体組成物(SPC)が、
b1a)次の式(II)の金属化合物または半金属化合物を供給すること:
M
2(OR
3)
o (II)
[式中、M
2は、
Tiおよび/またはZrであり
、R
3
はそれぞれ独立してC
1~C
10のオルガニルまたはオルガノヘテリル基から選択され、oはyである];
b2a)任意選択的に、式(II)の前記金属化合物または半金属化合物を、(OR
3)とは異なる配位子(L)と反応させること、
または
b1b)工程b2a)の
反応生成物を直接供給すること、
により得られ、前記組成物はポリビニルアセタールを含有しない、組成物。
【請求項14】
第1の容器内の第1の前駆体組成物(FPC)と第2の容器内の第2の前駆体組成物(SPC)とを含むキット・オブ・パーツであって、前記第1の前駆体組成物(FPC)が、重合された1種類以上の次の式(I):
M
1(OR
1)
nR
2
m (I)
[式中、M
1は、
Siであり、R
1はそれぞれ独立してC
1~C
10のオルガニルまたはオルガノヘテリル基から選択され、R
2はそれぞれ独立してC
1~C
20のオルガニルまたはオルガノヘテリル基から選択され、nは1~z-1であり、mは1~z-1であり、n+mはzである]の金属化合物または半金属化合物であり、
前記重合が、前記M
1(OR
1)部位を少なくとも部分的に加水分解することによって行われ;
前記第2の前駆体組成物(SPC)が、
b1a)次の式(II)の金属化合物または半金属化合物を供給すること:
M
2(OR
3)
o (II)
[式中、M
2は、
Tiおよび/またはZrであり
、R
3
はそれぞれ独立してC
1~C
10のオルガニルまたはオルガノヘテリル基から選択され、oはyである];
b2a)任意選択的に、式(II)の前記金属化合物または半金属化合物を、(OR
3)とは異なる配位子(L)と反応させること、
または
b1b)工程b2a)の
反応生成物を直接供給すること、
により得られ、前記キット・オブ・パーツはポリビニルアセタールを含有しない、キット・オブ・パーツ。
【請求項15】
基板上の薄膜、および/または
- 光学および電気コーティング;
- High-κ誘電体;
- 光アウトカップリング/取り出し層;
- エッチングおよびCMP停止層;
- OLED保護/シーリング/封止コーティング;
- 有機太陽電池;または
- 光学薄膜フィルタ;
の作製のための、請求項
13記載の組成物または請求項
14記載のキット・オブ・パーツの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機修飾金属酸化物または半金属酸化物高分子膜の作製方法、コーティング組成物、コーティングを含む物品、およびコーティングを作製するためのコーティング組成物の使用に関する。
【0002】
当該技術分野で知られているように、有機修飾二酸化ケイ素は、「ゾルゲルポリマー」としても知られているオルガノシロキサンポリマーとしてこれらを使用することにより、光学的に透明かつ電気的に十分に絶縁された層を形成するために使用することができる。例えば、最も単純な事例では、テトラエトキシシランまたはテトラクロロシランを加水分解し、この加水分解モノマーを縮重合することでシロキサンポリマーが得られ、これを熱処理下で二酸化ケイ素材料へと変換させることができる。さらに、オルガノシロキサンは、光架橋部位をケイ素酸化物骨格に共有結合させることにより、リソグラフィーでパターニング可能にすることができる。しかしながら、純粋な二酸化ケイ素に基づくケイ素酸化物材料、さらには有機修飾二酸化ケイ素に基づくケイ素酸化物材料は、比較的低い屈折率を示す。これらの材料の屈折率は通常1.5以下であり、これらの誘電率はそれらの構造およびケイ素に結合している部位に応じて約4.2~2.5の範囲である。
【0003】
例えばチタン酸化物ハイブリッドポリマーなどのハイブリッド金属酸化物材料は公知(欧州特許第1761462号明細書)であり、金属ハロゲン化物または金属アルコキシド前駆体を溶液中で加水分解することにより得ることができる。得られる配合物は、例えばスピンオン処理により塗布することができる。得られる膜は、リソグラフィー、エンボス加工、ロール・ツー・ロール印刷/コーティング、またはグラビア印刷/コーティングによるさらなる処理に適している。有機モノマー、例えばメタクリレートが配合物中に存在する場合、UV照射後に未露光の部分をアルカリ性現像液で洗い流すことができるため、材料はリソグラフィープロセスのネガ型レジストとして適している。処理温度は350~500℃の範囲である。
【0004】
国際公開第2006/134218号には、高屈折率と低屈折率の交互の層でコーティングされているフォトニック結晶からなる光学デバイス構造が開示されており、ここでのコーティングは、Ge、Ti、Sn、Sb、Ta、Hf、Zr、およびSiのハロゲン化物またはアルコキシレートなどの反応性金属酸化物前駆体から得ることができる。層は液相から堆積され、リソグラフィープロセスでパターニングできることが開示されている。250~400℃の処理温度が開示されている。
【0005】
前述した手順の欠点は、配合プロセス中に多量のHClが遊離することであり、これには中和、除去、および廃棄が必要とされる。
【0006】
さらに、処理温度が高いため、下にある材料層が熱による損傷を受け易く、高い処理温度に耐え得る材料上の膜としてのポリマーの用途が制限される。そのため、400℃未満、好ましくはさらには100℃未満の温度で処理可能な組成物が望まれる。さらに、材料は、熱硬化のみ、熱硬化とUV硬化との組み合わせ、またはUV硬化のみに適している必要がある。UV硬化のみの系は通常無溶媒またはほぼ無溶媒であり、これは実質的に無溶媒の材料プラットフォームを導入する必要があることを意味する。そのような系では、下にあるデバイス層は有機溶媒による損傷を受けず、硬化プロセス中に揮発性物質は、最小限しか、さらには全く放出されないであろう。加えて、屈折率は632nmで1.5より大きい必要がある。
【0007】
上述した目的は、本発明によって提供される以下の工程により達成できることが見出された。
【0008】
a)
a1)次の式(I)の1種類以上の金属化合物または半金属化合物を供給する工程:
M1(OR1)nR2
m (I)
[式中、M1は原子価zの金属または半金属であり、R1はそれぞれ独立してC1~C10のオルガニルまたはオルガノヘテリル基から選択され、R2はそれぞれ独立してC1~C20のオルガニルまたはオルガノヘテリル基から選択され、nは1~zであり、mはz-1~0であり、n+mはzである];
a2)M1(OR1)部位を少なくとも部分的に加水分解し、式(I)の金属化合物または半金属化合物を重合する工程;
を含む、第1の容器の中で第1の前駆体組成物(FPC)を製造する工程;
b)
b1a)次の式(II)の金属化合物または半金属化合物を供給する工程:
M2(OR3)o (II)
[式中、M2は原子価yの金属または半金属であり、M1およびM2は周期表の異なる元素に基づくものであり、R3はそれぞれ独立してC1~C10のオルガニルまたはオルガノヘテリル基から選択され、oはyである];
b2a)任意選択的に、式(II)の金属化合物または半金属化合物を、(OR3)とは異なる配位子(L)と反応させる工程;
または
b1b)工程b2a)の反応生成物を直接供給する工程;
を含む、第2の容器の中で第2の前駆体組成物(SPC)を製造する工程;
c)第1の前駆体組成物(FPC)を第2の前駆体組成物(SPC)と混合する工程;
c1)任意選択的に、工程c)の生成物をSi(R23)3Xと反応させる工程:
[式中、R23はC1~C3アルキル基であり、XはClまたはOR24を表し、R24はC1~C3アルキル基である];
d)基板上に薄層を形成する工程;
e)任意選択的に、工程d)の後に、溶媒が存在する場合には溶媒を部分的にまたは完全に除去する工程;
f)工程e)が存在する場合には工程e)で得られた中間生成物を、または工程e)が存在しない場合には工程d)で得られた中間生成物を硬化させる工程;
を含む、基板上での薄膜の作製方法であって、
第1の前駆体組成物(FPC)の製造中、第2の前駆体組成物(SPC)の製造中、および/または工程c)中、もしくは工程c)の後でかつ工程d)が行われる前に、任意選択的に、(メタ)アクリル酸エステル(ME)を添加する、方法。
【0009】
このようにして得られる膜は、より高い屈折率を与え、低温で利用することができる。さらに、薄膜の製造中に粒子を必要としないか、粒子を生じさせないため、本発明の薄膜では粒子によって引き起こされる欠陥が発生しない。本発明の薄膜は、アウトカップリング層と薄膜封止層との組み合わせおよび平坦化能力を有している。平坦化と粒子がないことは、ピクセルの寸法と密度がますます小さくなってきている高解像度ディスプレイにとって非常に重要である。さらに、膜は長期間にわたって安定であり、改善された透過率と屈折率の組み合わせを与える。加えて、組成物は、例えばインクジェット印刷やスロットコーティング用に希釈して、あるいは無溶媒系として使用することができる。いずれの場合も、従来の方法、例えばスロットコーティングやインクジェット印刷により塗布することができる。本発明の膜は、必要に応じて、例えば層を散乱層として使用できるOLED照明用などの散乱粒子と共に使用することができる。しかしながら、そこから生じる粒子欠陥はないか、最小限のみである。
【0010】
以下の定義は、そうでないとの明示的な記載がない限り、本発明に適用される。
【0011】
オルガニル基とは、炭素原子に1つの遊離原子価を有する有機置換基である。
【0012】
オルガノヘテリル基とは、炭素原子とは異なる原子に1つの遊離原子価を有する有機置換基である。
【0013】
第1の前駆体組成物
上で概説したように、第1の前駆体組成物(FPC)は、第1の容器の中で製造され、この製造は、
a1)次の式(I)の1種類以上の金属化合物または半金属化合物を供給する工程:
M1(OR1)nR2
m (I)
[式中、M1は原子価zの金属または半金属であり、R1はそれぞれ独立してC1~C10のオルガニルまたはオルガノヘテリル基から選択され、R2はそれぞれ独立してC1~C20のオルガニルまたはオルガノヘテリル基から選択され、nは1~zであり、mはz-1~0であり、n+mはzである];
a2)M1(OR1)部位を少なくとも部分的に加水分解し、式(I)の金属化合物または半金属化合物を重合する工程;
を含む。
【0014】
工程a1)では、最大5種類の式(I)の異なる金属化合物または半金属化合物を供給することができ、通常、3種類以下の式(I)の異なる金属化合物または半金属化合物が供給される。
【0015】
好ましくは、1種類以上の式(I)の金属化合物または半金属化合物は、フッ素を含まない。したがって、2種類以上の式(I)の金属化合物または半金属化合物が供給される場合、それらは好ましくは全てフッ素を含まない。より好ましくは、工程c)が行われる前の第1の前駆体組成物(FPC)の製造中に、任意選択的なフッ素含有溶媒を除いては、フッ素含有化合物は存在せず、さらに好ましくは、溶媒が存在する場合には、存在する溶媒の総重量を基準としたフッ素含有溶媒の量は75重量%以下であり、最も好ましくは、工程c)が行われる前の第1の前駆体組成物(FPC)の製造中に、フッ素含有溶媒などのフッ素含有化合物は存在しない。
【0016】
M1は、好ましくは、Si、Ge、Sb、Ti、Zr、Al、Sn、W、Se、Cr、Ag、またはNiから選択され、より好ましくは、Si、Ti、Zr、Ge、Sbから選択され、最も好ましくは、M1はSiである。
【0017】
R1はそれぞれ独立してC1~C10のオルガニルまたはオルガノヘテリル基から選択される。
【0018】
ヘテロ原子がR1のオルガニル基に存在する場合、それらは好ましくはN、O、P、S、またはSiから選択され、より好ましくはNおよびOから選択される。
【0019】
好ましい基OR1は、アルコキシ、アシルオキシ、およびアリールオキシ基である。
【0020】
M1に結合している酸素原子に結合しているR1のオルガノヘテリル基のヘテロ原子は、通常Oとは異なる。
【0021】
R1のオルガノヘテリル基中に存在するヘテロ原子は、好ましくはN、O、P、またはSから選択され、より好ましくはNおよびOから選択される。
【0022】
R1中のヘテロ原子が存在する場合、その総数は、通常5以下、好ましくは3以下である。
【0023】
好ましくは、R1は3個以下のヘテロ原子を含むC1~C10オルガニル基であり、より好ましくはR1はC1~C10ヒドロカルビル基であり、さらに好ましくはC1~C10の直鎖、分岐、または環状のアルキル基である。
【0024】
好ましくは、上の変形形態のいずれか1つによるR1中に存在する炭素原子の総数は、1~6、より好ましくは1~4である。
【0025】
R2は、それぞれ独立して、C1~C20のオルガニルまたはオルガノヘテリル基から選択される。
【0026】
ヘテロ原子がR2のオルガニル基中に存在する場合、それらは好ましくはN、O、P、S、またはSiから選択され、より好ましくはNおよびOから選択される。
【0027】
M1に結合しているR2のオルガノヘテリル基のヘテロ原子は、通常、Oとは異なる。
【0028】
R2のオルガノヘテリル基中に存在するヘテロ原子は、好ましくはN、O、P、またはSから選択され、より好ましくはNおよびOから選択される。
【0029】
R2中のヘテロ原子が存在する場合、その総数は、通常8以下、好ましくは5以下、最も好ましくは3以下である。
【0030】
好ましくは、R2は3個以下のヘテロ原子を含むC1~C20オルガニル基であり、より好ましくは、R2はC1~C20ヒドロカルビル基、C1~C20メルカプトヒドロカルビル基、C1~C20ヒドロカルビル(メタ)アクリル酸エステル基、およびC1~C20ヒドロカルビルグリシジルエーテルから選択され、より好ましくは、C1~C20アルキル基、C1~C20メルカプトアルキル基、C1~C20アルキル(メタ)アクリル酸エステル基、およびC1~C20アルキルグリシジルエーテルから選択される。前述した変形形態において、示されている炭素原子の数は、R2中に存在する炭素原子の総数を指す。例えば、R2が3-メタクリルオキシプロピル基である場合、炭素原子の数は7である。
【0031】
好ましくは、上の変形形態のいずれか1つによるR2中に存在する炭素原子の総数は、1~15、より好ましくは1~10、最も好ましくは1~7である。
【0032】
好ましくは、nは少なくとも2である。金属または半金属M1の原子価zが4以上である場合、nは好ましくは少なくとも3である。
【0033】
好ましくは、式(I)の少なくとも1種の化合物において、各R1およびR2は、存在する場合、同じである。そのため、R1とR2は依然として異なっていてもよい。
【0034】
より好ましくは、式(I)の各化合物において、それぞれの各R1およびR2は、存在する場合、同じである。そのため、2種類以上の式(I)の化合物が使用される場合、1種類の式(I)の化合物のR1は、式(I)の別の化合物のR1とは依然として異なっていてもよい。
【0035】
工程a1)において式(I)の2種類以上の化合物が提供される場合、好ましくは、少なくとも1種類の式(I)の化合物ではn=zであり、少なくとも1種類の別の式(I)の化合物ではn<zである。
【0036】
式(I)の適切な化合物は、例えば、トリエトキシシラン、テトラエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n-ブチルトリエトキシシラン、メチルジエトキシビニルシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェナントレン-9-トリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、アミノプロピルトリメトキシシラン、n-ヘキシルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、メタクリルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、メルカプトプロピルトリメトキシシラン、メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン(MTMOS)、メチルトリエトキシシラン(MTEOS)、ジメチルジエトキシシラン(DMDEOS)、フェニルトリエトキシシラン(PTEOS)、ジメチルジメトキシシランおよびフェニルトリメトキシシラン、メトキシトリメチルシラン、エトキシトリメチルシラン、n-プロポキシトリメチルシラン、メトキシジメチルエチルシラン、エトキシジメチルエチルシラン、n-プロポキシジメチルエチルシラン、メトキシジメチルビニルシラン、エトキシジメチルビニルシラン、n-プロポキシジメチルビニルシラン、トリメトキシメチルシランおよびトリエトキシメチルシラン、ならびにこれらの混合物である。
【0037】
工程a2)では、次の式(III)の化合物が存在し得る:
R7
t’(OR6’)s’M3’-Y-M3(OR6)sR7
t (III)
[式中、
M3、M3’は同じであるか、または異なっており、それぞれ独立して原子価xの金属または半金属から選択され;
Yは二価の連結基であり;
R6、R6’は同じであるか、または異なっており、それぞれ独立してC1~C10のオルガニルまたはオルガノヘテリル基から選択され;
R7、R7’は同じであるか、または異なっており、それぞれ独立してC1~C20のオルガニルまたはオルガノヘテリル基から選択され;
s、s’は同じであるか、または異なっており、それぞれ独立して1~x-1から選択され;
t、t’は同じであるか、または異なっており、それぞれ独立してx-2~0から選択され;
s+tはx-1であり;
s’+t’はx-1である]。
【0038】
工程a2)において式(III)の化合物が存在する場合、この化合物は、好ましくは、工程a1)の前、後、または一緒に行われ得る追加の工程a1)a)において供給される。
【0039】
M3およびM3’は、好ましくはSi、Ge、Sb、Ti、Zr、Al、Sn、W、Se、Cr、Ag、またはNiから選択され、より好ましくはSi、Ti、Zr、Ge、Sbから選択され、最も好ましくはSiである。
【0040】
好ましくは、M3とM3’は同じである。
【0041】
R6、R6’は、同じであるか、または異なっており、それぞれ独立してC1~C10のオルガニルまたはオルガノヘテリル基から選択される。
【0042】
ヘテロ原子がR6および/またはR6’のオルガニル基に存在する場合、それらは好ましくはN、O、P、S、またはSiから選択され、より好ましくはNおよびOから選択される。
【0043】
好ましい基OR6および/またはOR6’は、アルコキシ、アシルオキシ、およびアリールオキシ基である。
【0044】
M3またはM3’にそれぞれ結合している酸素原子に結合しているR6および/またはR6’のオルガノヘテリル基のヘテロ原子は、通常Oとは異なる。
【0045】
R6および/またはR6’のオルガノヘテリル基に存在するヘテロ原子は、好ましくはN、O、P、またはSから選択され、より好ましくはNおよびOから選択される。
【0046】
R6および/またはR6’中にヘテロ原子が存在する場合、その総数は、通常5以下、好ましくは3以下である。
【0047】
好ましくは、R6および/またはR6’は、3個以下のヘテロ原子を含むC1~C10オルガニル基であり、より好ましくは、R6および/またはR6’は、C1~C10ヒドロカルビル基、さらに好ましくはC1~C10の直鎖、分岐、または環状のアルキル基である。
【0048】
好ましくは、上の変形形態のいずれか1つによるR6および/またはR6’に存在する炭素原子の総数は、1~6、より好ましくは1~4である。
【0049】
好ましくは、R6とR6’は同じである。
【0050】
R7、R7’は、それぞれ独立してC1~C20のオルガニルまたはオルガノヘテリル基から選択される。
【0051】
ヘテロ原子がR7および/またはR7’のオルガニル基に存在する場合、それらは好ましくはN、O、P、S、またはSiから選択され、より好ましくはNおよびOから選択される。
【0052】
M3またはM3’にそれぞれ結合しているR7および/またはR7’のオルガノヘテリル基のヘテロ原子は、通常、Oとは異なる。
【0053】
R7および/またはR7’のオルガノヘテリル基に存在するヘテロ原子は、好ましくはN、O、P、またはSから選択され、より好ましくはNおよびOから選択される。
【0054】
R7および/またはR7’中にヘテロ原子が存在する場合、その総数は、通常8以下、好ましくは5以下、最も好ましくは3以下である。
【0055】
好ましくは、R7および/またはR7’は、3個以下のヘテロ原子を含むC1~C20オルガニル基であり、より好ましくは、R7および/またはR7’は、C1~C20ヒドロカルビル基、さらに好ましくはC1~C20の直鎖、分岐、または環状のアルキル基である。
【0056】
好ましくは、上の変形形態のいずれか1つによるR7および/またはR7’に存在する炭素原子の総数は、1~15、より好ましくは1~10、最も好ましくは1~6である。
【0057】
好ましくは、R7とR7’は同じである。
【0058】
好ましくは、sおよび/またはs’は少なくとも2である。金属または半金属M3および/またはM3’の原子価zが4以上である場合、sおよび/またはs’は好ましくは少なくとも3である。
【0059】
式(III)の適切な化合物は、例えば、1,2-ビス(トリメトキシシリル)メタン、1,2-ビス(トリエトキシシリル)メタン、1,2-ビス(トリメトキシシリル)エタン、1,2-ビス(トリエトキシシリル)エタン、1-(ジメトキシメチルシリル)-1-(トリメトキシシリル)メタン、1-(ジエトキシメチルシリル)-l-(トリエトキシシリル)メタン、1-(トリメトキシメチルシリル)-2-(ジメトキシシリル)エタン、1-(ジメトキシメチルシリル)-2-(トリメトキシシリル)エタン、1-(ジエトキシメチルシリル)-2-(トリエトキシシリル)エタン、ビス(ジメトキシメチルシリル)メタン、ビス(ジエトキシメチルシリル)メタン、1,2-ビス(ジクロロメチルシリル)エタン、1,2-ビス(トリクロロシリル)エタン、1,2-ビス(ジメトキシメチルシリル)エタン、1,2-ビス(ジエトキシメチルシリル)エタン、1,2-ビス(トリメトキシシリル)ベンゼン、1,2-ビス(トリエトキシシリル)ベンゼン、1,3-ビス(トリメトキシシリル)ベンゼン、1,3-ビス(トリエトキシシリル)ベンゼン、1,4-ビス(トリメトキシシリル)ベンゼン、1,4-ビス(トリエトキシシリル)ベンゼン、4,4’-ビス(トリエトキシシリル)-1,1’-ビフェニル、1,4-ビス(トリエトキシシリル)ベンゼン、および1,3-ビス(トリエトキシシリル)ベンゼン、およびこれらの組み合わせである。
【0060】
工程a2)における少なくとも部分的な加水分解は、好ましくは、酸性または塩基性条件下で、硫酸、塩酸、硝酸、酢酸、クエン酸、ギ酸、トリフル酸、ペルフルオロ酪酸、もしくは他の無機酸もしくは有機酸、または塩基、より好ましくはHNO3などの無機酸といった触媒を通常使用して行われる。
【0061】
酸が使用される場合、酸の濃度は、好ましくは0.01mol/l~1.0mol/l、より好ましくは0.05mol/l~0.2mol/lである。酸は、通常、水、または水と有機溶媒、例えばアルコール、ケトン、好ましくはアセトンなどのケトンとの混合物の中に溶解される。
【0062】
工程a2)における少なくとも部分的な加水分解は、好ましくは、50~150℃の間の温度で行われるが、工程a2)で存在する溶媒または溶媒混合物の沸点を超えない。
【0063】
工程a2)における少なくとも部分的な加水分解は、好ましくは1.0~10時間、好ましくは2.5~7.5時間行われる。
【0064】
工程a2)における少なくとも部分的な加水分解の間、塩基性物質、例えばC1~C4トリアルキルアミンなどのアミンが添加されてもよい。
【0065】
好ましくは、工程a2)の生成物の分子量は、250g/mol~6000g/mol、より好ましくは500g/mol~1500g/molである。
【0066】
第1の前駆体組成物の製造中に、1種類以上の追加の有機溶媒が使用されてもよい。
【0067】
好ましくは、溶媒は、好ましくは1~6個の炭素原子を含むアルコール、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エーテルアルコール、例えばプロピレングリコールモノメチルエーテル、ケトン、例えばアセトン、エステル、例えばプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸エチル、ギ酸メチル、およびエーテル、例えばジエチルエーテル、THFから選択され、好ましくはアルコール、エーテルアルコール、またはケトンから選択される。
【0068】
最大で5種類の有機溶媒の混合物が使用されてもよく、好ましくは3種以下の有機溶媒が使用され、最も好ましくは1種の有機溶媒のみが使用される。
【0069】
好ましくは、上で概説したように、第1の前駆体組成物の製造中に使用される有機溶媒はフッ素を含まない。
【0070】
より好ましくは、工程a2)の後、追加の工程a3)が行われる。
【0071】
a3)溶媒が工程a2)に存在する場合に、工程a2)で使用した溶媒を、上で概説した1種類以上の有機溶媒と交換する、
または
溶媒が工程a2)に存在する場合に、溶媒を除去する。
【0072】
工程a2)における少なくとも部分的な加水分解が触媒を使用して行われる場合、工程a3)の各変形形態において、触媒は除去されてもよく、好ましくは除去される。
【0073】
溶媒の交換とは、溶媒交換の前後に存在する溶媒または溶媒混合物が異なることを意味する。通常、少なくとも工程a2)における少なくとも部分的な加水分解において通常存在する水は、溶媒交換により除去される。
【0074】
したがって、例えば、水、および工程a2)における少なくとも部分的な加水分解で使用される任意選択的な有機溶媒、例えばケトンは、異なる有機溶媒、例えばC1~C4アルコールなどのアルコールで置換される。
【0075】
より好ましくは、溶媒は工程a3)で除去され、任意選択的には、工程a2)における少なくとも部分的な加水分解が触媒を使用して行われる場合には、工程a3)の各変形形態において触媒が除去される。
【0076】
第2の前駆体組成物
上記で概説したように、第2の前駆体組成物(SPC)は第2の容器の中で製造され、この製造は、
b1a)次の式(II)の金属化合物または半金属化合物を供給する工程:
M2(OR3)o (II)
[式中、M2は原子価yの金属または半金属であり、M1およびM2は周期表の異なる元素に基づくものであり、R3はそれぞれ独立してC1~C10のオルガニルまたはオルガノヘテリル基から選択され、oはyである];
b2a)任意選択的に、式(II)の金属化合物または半金属化合物を、(OR3)とは異なる配位子(L)と反応させる工程;
または
b1b)工程b2a)の反応生成物を直接供給する工程;
を含む。
【0077】
したがって、式(II)の金属化合物または半金属化合物を使用できるものの、好ましくはこれらは、工程c)の前に(OR3)とは異なる配位子(L)と反応させられる。
【0078】
R3はそれぞれ独立してC1~C20のオルガニルまたはオルガノヘテリル基から選択される。
【0079】
ヘテロ原子がR3のオルガニル基に存在する場合、それらは好ましくはN、O、P、S、またはSiから選択され、より好ましくはNおよびOから選択される。
【0080】
M2に結合しているR3のオルガノヘテリル基のヘテロ原子は、通常、Oとは異なる。
【0081】
R3のオルガノヘテリル基中に存在するヘテロ原子は、好ましくはN、O、P、またはSから選択され、より好ましくはNおよびOから選択される。
【0082】
R3中のヘテロ原子の総数は、存在する場合、通常8以下、好ましくは5以下、最も好ましくは3以下である。
【0083】
好ましくは、R3は3個以下のヘテロ原子を含むC1~C20オルガニル基であり、より好ましくはR3はC1~C20ヒドロカルビル基であり、さらに好ましくはC1~C20の直鎖、分岐、または環状のアルキル基である。
【0084】
好ましくは、上の変形形態のいずれか1つによるR3中に存在する炭素原子の総数は、1~15、より好ましくは1~10、最も好ましくは1~6である。
【0085】
好ましくは、存在する各R3は同じである。
【0086】
M2は、好ましくは、Si、Ge、Sb、Ti、Zr、Al、Sn、W、Se、Cr、Ag、またはNiから選択され、より好ましくは、Si、Ti、Zr、Ge、Sbから選択され、最も好ましくは、M2はTiおよび/またはZrである。
【0087】
適切な式(II)の化合物は、例えば、ジルコニウムテトラメトキシド、ジルコニウムテトラエトキシド、ジルコニウムテトラプロポキシド、ジルコニウムテトラブトキシド、ジルコニウムアセテート、ジルコニウムアセチルアセトネート、チタンテトラメトキシド、チタンテトラエトキシド、チタンテトラプロポキシド、チタンアセテート、チタンテトラブトキシドなどの、R3が直鎖、分岐、または環状の脂肪族炭化水素であるOR3としての、C1~C10アルコールのジルコニウム(IV)化合物およびチタン(IV)化合物である。
【0088】
(OR3)とは異なる配位子(L)は、好ましくは、配位原子がO、N、およびSから選択される、好ましくはOおよびNから選択される、最も好ましくはOである配位子である。
【0089】
(OR3)とは異なる配位子(L)は、有機酸、酸無水物、アルコキシド、ケトン、ベータ-ジケトン、アセチルアセトン、ベンジルアセトン、アリールオキシド、ベータ-ケトエステル、アルカノールアミン、グリゴール、オキシム、アルキルヒドロキシルアミン、ベータ-ケトアミン、シッフ塩基、チオール、およびアルデヒドからなる群から選択される任意の化合物であってもよい。したがって、適切な有機化合物の例としては、限定するものではないが、酢酸、アクリル酸、メタクリル酸、トリフルオロ酢酸が挙げられる。さらなる例は、アセトンやベータ-ジケトンなどのケトン、およびアルデヒドにより形成される。
【0090】
通常、配位子(L)は、1000g/mol以下、より好ましくは750g/mol以下、最も好ましくは500g/mol以下の分子量を有する。
【0091】
(OR
3)とは異なる適切な配位子(L)は、例えば、上で定義した式(III)の化合物または以下の式(IV)、(IV’)、(VI’’)、および(IV’’’)の化合物:
【化1】
であり、式中、
R
8、R
9は、同じであるか、または異なっており、それぞれ独立してC
1~C
10オルガニル基またはC
1~C
10オルガノヘテリル基から選択され、好ましくは、C
1~C
10ヒドロカルビル、C
1~C
10ヒドロカルビルオキシ基、より好ましくは直鎖、分岐、または環状のC
1~C
10アルキル基、C
6~C
10アリール基、C
1~C
10アルコキシ、C
6~C
10アリールオキシ基、およびC
7~C
10アルキルアリールオキシ基から選択され、最も好ましくは直鎖、分岐、または環状のC
1~C
10アルキル基およびC
1~C
10アルコキシ基から選択され;
R
10、R
11は、同じであるか、または異なっており、それぞれ独立して水素、C
1~C
4オルガニル基、またはC
1~C
4オルガノヘテリル基から選択され、より好ましくは水素およびC
1~C
4ヒドロカルビル基から選択され、最も好ましくは水素およびC
1~C
4アルキル基から選択され、例えば水素である。
R
20は、OまたはNR
22が挟まれていてもよいC
2~C
6アルキレン基であり、
R
21は、水素またはC
1~C
6ヒドロカルビル基、好ましくはC
1~C
6アルキル基から独立して選択され、
R
22は水素、メチル基、またはヒドロキシエチル基である。
【0092】
好ましくは、(OR3)とは異なる配位子(L)は、二座または多座配位子(L)であり、より好ましくは、例えば上の式(IV)、(IV’)、および(IV’’’)から、好ましくは上の式(IV)または(IV’)から、最も好ましくは上の式(IV)から選択されるような二座配位子である。
【0093】
ヘテロ原子がR8、R9、R10、およびR11のオルガニル基に存在する場合、それらは好ましくはN、O、P、S、またはSiから選択され、より好ましくはNおよびOから選択される。
【0094】
R8、R9、R10、およびR11のオルガノヘテリル基に存在するヘテロ原子は、好ましくはN、O、P、またはSから選択され、より好ましくはNおよびOから選択される。
【0095】
R8およびR9中のヘテロ原子が存在する場合、その総数は、通常5以下、好ましくは3以下、最も好ましくは1以下である。
【0096】
R10およびR11中のヘテロ原子が存在する場合、その総数は、通常2以下、好ましくは1以下である。
【0097】
第2の前駆体組成物の製造中に、1種類以上の有機溶媒が使用されてもよい。
【0098】
好ましくは、溶媒は、好ましくは1~6個の炭素原子を含むアルコール、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エーテルアルコール、例えばプロピレングリコールモノメチルエーテル、ケトン、例えばアセトン、エステル、例えばプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸エチル、ギ酸メチル、およびエーテル、例えばジエチルエーテル、THFから選択され、好ましくはアルコール、エーテルアルコール、またはケトンから選択される。
【0099】
最大で5種類の有機溶媒の混合物が使用されてもよく、好ましくは3種以下の有機溶媒が使用され、最も好ましくは1種の有機溶媒のみが使用される。
【0100】
工程b2a)が存在する場合、反応時間は、好ましくは1.0時間~10日、より好ましくは2.5日~7.5日である。
【0101】
工程b2a)が存在する場合、反応温度は通常75℃を超えず、より好ましくは50℃を超えない。
【0102】
より好ましくは、工程b1a)の後、または工程b2a)が存在する場合には工程b2a)の後、または工程b1b)が存在する場合には工程b1b)の後に、追加の工程b3)が行われる。
【0103】
b3)工程b1a)とb2a)が存在する場合には、そのうちのいずれか1つに、b1b)が存在する場合には、そこに溶媒が存在する場合に、工程b1a)とb2a)が存在する場合には、その後に、b1b)が存在する場合には、その後に、存在する溶媒を上で概説した1種類以上の有機溶媒と交換する、
または
工程b1a)とb2a)が存在する場合には、そのうちのいずれか1つに、b1b)が存在する場合には、そこに溶媒が存在する場合に、溶媒を除去する。
【0104】
好ましくは、溶媒は交換され、より好ましくは、溶媒は、工程b1a)とb2a)が存在する場合には、そのうちのいずれか1つに、b1b)が存在する場合には、そこに存在する溶媒が除去され、溶媒が添加されることにより交換される。溶媒交換の前後に存在する溶媒は、特に溶媒が除去されてから新しい溶媒が添加される場合に、同じ化合物である場合がある。これは、工程b2a)が存在する場合に特に好ましい。
【0105】
工程c)
工程c)の間、第1の前駆体組成物(FPC)は、第2の前駆体組成物(SPC)と混合される。
【0106】
目標とする最終固形分を得るために、工程c)の間に追加の有機溶媒が添加されてもよい。
【0107】
好ましくは、添加され得る溶媒は、好ましくは1~6個の炭素原子を含むアルコール、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エーテルアルコール、例えばプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコール、エチレングリコール、ケトン、エステル、例えば酢酸エチル、ギ酸メチル、エーテル、プロピレングリコールメチルエーテルから選択され、特に好ましくは、好ましくは1~6個の炭素原子を含むアルコール、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、またはこれらの混合物であり、最も好ましくは、好ましくは1~6個の炭素原子を含むアルコール、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エーテルアルコール、例えばプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、テトラヒドロフルフリルアルコール、シクロヘキサノン、エチレングリコール、またはプロピレングリコールメチルエーテルから選択される。
【0108】
工程c)において、第1の前駆体組成物(FPC)の固形分と第2の前駆体組成物(SPC)の固形分との重量比は、好ましくは10:1.0~1.0:2000、好ましくは5.0:1.0~1.0:1500.0、より好ましくは2.0:1.0~1.0:500.0である。
【0109】
工程c)において、M1とM2とのモル比は、1.0:10~10:1.0、好ましくは1.0:10~1.0:1.0、より好ましくは1.0:10~1.0:2.0であることが好ましい。
【0110】
上で概説したように、方法は、任意選択的に、
c1)工程c)の生成物をSi(R23)3XまたはSi(R23)2X2と反応させる工程
を含んでいてもよく、
式中、
R23はC1~C3アルキル基であり、
XはClまたはOR24を表し、
R24はC1~C3アルキル基である。
【0111】
任意選択的な工程c1)において、第2の前駆体組成物(SPC)とSi(R23)3Xとのモル比は、好ましくは100:1.0~1.0:20、好ましくは10.0:1.0~1.0:5.0、より好ましくは5.0:1.0~1.0:2.0である。
【0112】
c1)の反応温度は、25℃~150℃、好ましくは60℃~120℃である。反応時間は、通常0.1時間~5日、より好ましくは0.5時間~24時間である。
【0113】
さらに、薄膜用のコーティング組成物のために使用される通常の添加剤が、工程c)の間に添加されてもよい。そのような通常の添加剤としては、例えば、界面活性剤、レベリング剤、加工助剤、帯電防止剤、酸化防止剤、水および酸素捕捉剤、触媒、光開始剤、またはこれらの混合物が挙げられる。一部の例では、散乱粒子を薄膜コーティング溶液に入れることが好ましい場合もある。そのような粒子は、通常、例えば照明用途などの特定の要件を満たすための追加の光学効果を付与する。これらの粒子は、例えばSiO2、TiO2、ZrO2、または同様の無機粒子であってもよい。
【0114】
工程c)で添加することができる光開始剤の例は、例えば、カンファーキノン;ベンゾフェノン、ベンゾフェノン誘導体;例えばベンジルジメチルケタール(Omnirad 651)などのケタール化合物;アセトフェノン、例えばα-ヒドロキシシクロアルキルフェニルケトンなどのアセトフェノン誘導体、または例えば2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパノン(Omnirad 1173)、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン(Omnirad 184)、1-(4-ドデシルベンゾイル)-1-ヒドロキシ-1-メチル-エタン、1-(4-イソプロピルベンゾイル)-1-ヒドロキシ-1-メチル-エタン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン(Omnirad 2959)などのα-ヒドロキシアルキルフェニルケトン;2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオニル)-ベンジル]-フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン(Omnirad 127);2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-フェノキシ]-フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン;ジアルコキシアセトフェノン、α-ヒドロキシ-またはα-アミノアセトフェノン、例えば(4-メチルチオベンゾイル)-1-メチル-1-モルホリノエタン(Omnirad 907)、(4-モルホリノベンゾイル)-1-ベンジル-1-ジメチルアミノプロパン(Omnirad 369)、(4-モルホリノベンゾイル)-1-(4-メチルベンジル)-1-ジメチルアミノプロパン(Omnirad 379)、(4-(2-ヒドロキシエチル)アミノベンゾイル)-1-ベンジル-1-ジメチルアミノプロパン)、(3,4-ジメトキシベンゾイル)-1-ベンジル-1-ジメチルアミノプロパン;4-アロイル-1,3-ジオキソラン、ベンゾインアルキルエーテル、およびベンジルケタール、例えばジメチルベンジルケタール、フェニルグリオキサル酸エステルおよびその誘導体、例えばオキソ-フェニル-酢酸2-(2-ヒドロキシ-エトキシ)-エチルエステル、フェニルグリオキサル酸エステル二量体、例えばオキソ-フェニル-酢酸1-メチル-2-[2-(2-オキソ-2-フェニル-アセトキシ)-プロポキシ]-エチルエステル(Omnirad 754);オキシムエステル、例えば1,2-オクタンジオン1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-2-(O-ベンゾイルオキシム)(IRGACURE(登録商標)OXE01)、エタノン1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-1-(O-アセチルオキシム)(IRGACURE(登録商標)OXE02)、メタノン[8-[[(アセチルオキシ)イミノ][2-(2,2,3,3-テトラフルオロプロポキシ)フェニル]メチル]-11-(2-エチルヘキシル)-11H-ベンゾ[a]カルバゾール-5-イル](2,4,6-トリメチルフェニル)、[(E)-[1-[4-[4-(ベンゾフラン-2-カルボニル)フェニル]スルファニルフェニル]-4-メチル-ペンチリデン]アミノ]アセテート、エタノン1-[9-エチル-6-(2-メチル-4-(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラニル)メトキシベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-1-(O-アセチルオキシム)、N-アセトキシ-N-{3-[9-エチル-6-(ナフタレン-1-カルボニル)-9H-カルバゾール-3-イル]-1-メチル-3-アセトキシイミノ-プロピル}-アセトアミド、9H-チオキサンテン-2-カルボキサルデヒド9-オキソ-2-(O-アセチルオキシム)、[(E)-[1-(シクロヘキシルメチル)-2-オキソ-2-(4-フェニルスルファニルフェニル)エチリデン]アミノ]シクロプロパンカルボキシレート)、[(E)-[1-(シクロヘキシルメチル)-2-オキソ-2-(4-フェニルスルファニルフェニル)エチリデン]アミノ]アセテート、[(E)-[1-(シクロヘキシルメチル)-2-[9-エチル-6-(チオフェン-2-カルボニル)カルバゾール-3-イル]-2-オキソ-エチリデン]アミノ]アセテート、[(E)-[1-(o-トリル)-2-オキソ-2-(4-フェニルスルファニルフェニル)エチリデン]アミノ]アセテート、[(E)-1-[1-(4-ベンゾイルフェニル)インドール-3-カルボニル]ヘプチリデンアミノ]アセテート、[(E)-1-[9-エチル-6-(チオフェン-2-カルボニル)カルバゾール-3-イル]エチリデンアミノ]アセテート、[(E)-1-[9-エチル-6-(チオフェン-2-カルボニル)カルバゾール-3-イル]プロピリデンアミノ]アセテート、[(E)-1-(9,9-ジブチル-7-ニトロ-フルオレン-2-イル)エチリデンアミノ]アセテート、[(Z)-[2-(9,9-ジエチルフルオレン-2-イル)-1-メチル-2-オキソ-エチリデン]アミノ]アセテート、国際公開第07/062963号、国際公開第07/071797号、国際公開第07/071497号、国際公開第05/080337号、特開2010-049238号公報、国際公開第2008078678号、特開2010-15025号公報、および特開2010-49238号公報に記載のオキシムエステル;例えば欧州特許第126541号明細書に記載のベンゾフェノンテトラカルボン酸ペルエステルなどの過酸エステル;例えば(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ジフェニルホスフィンオキシド(Omnirad TPO)、エチル(2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニル)ホスフィン酸エステルなどのモノアシルホスフィンオキシド;例えばビス(2,6-ジメトキシ-ベンゾイル)-(2,4,4-トリメチル-ペンチル)ホスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシド(Omnirad 819)、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-2,4-ジペントキシ-フェニルホスフィンオキシドなどのビスアシルホスフィンオキシド;トリスアシルホスフィンオキシド;例えば2-[2-(4-メトキシ-フェニル)-ビニル]-4,6-ビス-トリクロロメチル-[1,3,5]トリアジン、2-(4-メトキシ-フェニル)4,6-ビス-トリクロロメチル-[1,3,5]トリアジン、2-(3,4-ジメトキシ-フェニル)-4,6-ビス-トリクロロメチル-[1,3,5]トリアジン、2-メチル-4,6-ビス-トリクロロメチル-[1,3,5]トリアジンなどのハロメチルトリアジン;例えば2-メルカプトベンズチアゾールと組み合わせたオルト-クロロヘキサフェニル-ビスイミダゾールなどのヘキサアリールビスイミダゾール/共開始剤系;フェロセニウム化合物、または例えばビス(シクロペンタジエニル)-ビス(2,6-ジフルオロ-3-ピリル-フェニル)チタン(Omnirad 784)などのチタノセンのようなラジカル光開始剤である。さらに、例えば米国特許第4772530号明細書、欧州特許第775706号明細書、英国特許第2307474号明細書、英国特許第2307473号明細書、および英国特許第2304472号明細書に記載されているようなボレート化合物である。ボレート化合物は、好ましくは、例えば染料カチオンまたはチオキサントン誘導体などの電子受容体化合物と組み合わせて使用される。
【0115】
Omnirad化合物は、IGM Resins B.V.から入手可能であり、またIRGACURE(登録商標)化合物はBASF SEから入手可能である。
【0116】
追加的な光開始剤のさらなる例は、例えば過酸化ベンゾイルなどの過酸化物化合物(他の適切な過酸化物は米国特許第4950581号明細書第19欄第17~25行目に記載されている)、または米国特許第4950581号明細書、第18欄第60行目から第19欄第10行目までにみられるもののような芳香族スルホニウム塩やヨードニウム塩などのカチオン性光開始剤、または例えば(η6-イソプロピルベンゼン)(η5-シクロペンタジエニル)-鉄(II)ヘキサフルオロホスフェートなどのシクロペンタジエニル-アレーン-鉄(II)錯塩である。
【0117】
工程c)の後の組成物は、無溶媒であっても溶媒を含んでいてもよい。どちらの変形形態が使用されるかは、通常、膜を塗布する方法に依存する。
【0118】
したがって、工程c)の後に得られる組成物の固形分は、組成物全体を基準として100~5重量%であってもよい。
【0119】
方法は、工程c)の後に以下の工程c2)を含んでいてもよい:
c2)工程c)で得られた混合物に溶媒(S)を追加する工程。
【0120】
工程c2)で添加され得る溶媒(S)は、好ましくは1~6個の炭素原子を含むアルコール、例えばメタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、ブタノール、およびエチレングリコール、エーテルアルコール、例えば2-メトキシ-プロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、およびテトラヒドロフルフリルアルコール、ケトン、例えばアセトン、2-ブタノン、シクロペンタノン、エステル、例えばプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、酢酸エチル、ギ酸メチル、およびエーテル、例えばジエチルエーテルおよびTHFから選択され、好ましくは、アルコール、エーテルアルコール、またはケトンから選択される。
【0121】
最大で5種類の有機溶媒の混合物が使用されてもよく、好ましくは3種類以下の有機溶媒が使用される。別の実施形態では、1種類の有機溶媒のみが使用される。
【0122】
溶媒に基づく系の場合、工程c)の後に得られる組成物の固形分は、好ましくは組成物全体を基準として40~5重量%、より好ましくは組成物全体を基準として25~10重量%である。
【0123】
したがって、好ましくは、工程c)の後に得られる組成物の固形分は、好ましくは組成物全体を基準として100重量%または40~5重量%、より好ましくは組成物全体を基準として100重量%または25~10重量%である。
【0124】
通常、工程c)の後の固形分は、工程d)が完了するまで変化しないままである。
【0125】
しかしながら、好ましくは、工程c)後の固形分は、工程d)の前に指定の膜厚が得られるように溶媒で希釈することにより調整される。
【0126】
工程d)の前の固形分は、好ましくは75重量%以下、より好ましくは55重量%以下である。通常、工程d)の前の固形分の下限は、好ましくは0.5重量%である。
【0127】
工程d)が行われる前の工程c)中の温度は、通常150℃を超えず、より好ましくは130℃を超えない。
【0128】
反応時間は通常10日未満、好ましくは30分~5日である。
【0129】
(OR3)と異なる配位子(L)は、第1の前駆体組成物と第2の前駆体組成物との混合の後に添加されてもよい。通常、この場合、工程b2a)は行われない。そのため、1つの変形形態では、工程b1a)が行われるが、工程b2a)は行われない。この変形形態は、工程c)の後に行われる以下の工程c3)およびc4)を含み得る。
【0130】
c3)工程c)の後に得られた混合物を、好ましくは150℃以下、より好ましくは130℃以下の温度まで加熱する;
c4)任意選択的に、上で定義された(OR3)とは異なる配位子(L)を添加する。
【0131】
工程c4)が存在する場合、工程c4)の反応時間は通常10日未満、好ましくは2時間から5日である。
【0132】
工程c3)およびc4)が存在しない場合、工程d)が行われる前の工程c)中の温度は、通常75℃を超えず、より好ましくは50℃を超えない。
【0133】
任意選択的な(メタ)アクリル酸エステル(ME)
上で概説したように、
- 第1の前駆体組成物(FPC)の製造中、
- 第2の前駆体組成物(SPC)の製造中、および/または
- 工程c)中、もしくは工程c)の後でかつ工程d)が行われる前に、
任意選択的に(メタ)アクリル酸エステル(ME)が添加される。
【0134】
(メタ)アクリル酸エステル(ME)は、好ましくは150~5000g/mol、より好ましくは250~1500g/mol、さらに好ましくは250~1000g/molの平均分子量を有する。
【0135】
(メタ)アクリル酸エステル(ME)は、好ましくは、ポリマー状のジオールおよびポリオールを含むジオールまたはポリオールのエステルである。
【0136】
ジオールまたはポリオールは、好ましくはC2~C10のジオールまたはポリオールから選択され、より好ましくはC2~C6のジオールまたはポリオールから選択され、さらに好ましくは、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,4-ブタノールなどのC2~C4のジオールまたはポリオール、例えばエチレングリコール、および/または10個を超える炭素原子を有し少なくとも1つの芳香族部位を含むジオールまたはポリオール、例えばジヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシビフェニル、ビスフェノールAから選択され、またトリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ジ(トリメチロールプロパン)テトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、トリメチロールプロパンエトキシレートトリアクリレート、ビスフェノールAエトキシレートジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、ジヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシビフェニル、ビスフェノールAなどの他のモノ-、ジ-、トリ-、またはテトラアクリレートも使用することができる。
【0137】
したがって、(メタ)アクリル酸エステル(ME)が、ポリマー状のジオールおよびポリオールを含むジオールまたはポリオールのエステルである場合、1つの末端基は(メタ)アクリレートである。好ましくは、この変形形態では、他の末端基はOH部位を含まず、より好ましくは、(メタ)アクリル酸エステル(ME)はOH部位を含まない。
【0138】
好ましい末端基は、モノアルコール、例えばフェノール、フェニル-フェノール、ナフトールなどの芳香族部位を含むアルコールである。
【0139】
好ましくは、(メタ)アクリル酸エステル(ME)は、以下の式(V)および(VI)の化合物:
TG-O-[R12-O]p-TG (V)
TG-[O-R12]p-O-A-O-[R12-O]p-TG (VI)
から選択され、式中、
R12は、C2~C6ジオールから選択され、さらに好ましくは、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,4-ブタノールなどのC2~C4ジオールから選択され、例えばエチレングリコールであり;
pは、それぞれ独立して1~20、より好ましくは1~10から選択され、さらに好ましくは1または2であり;
Aは、10個より多い炭素原子を有し、好ましくは1個以上の芳香族部位を含むジアルコール、例えばジヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシビフェニル、ビスフェノールAであり;
TGは、少なくとも1つのTGが(メタ)アクリル酸エステル基であることを条件として、それぞれ独立して、ビニルエーテル基または(メタ)アクリル酸エステル基またはモノアルコール、例えばフェノール、フェニル-フェノール、ナフトールなどの芳香族部位を含むアルコールから選択される。
【0140】
好ましくは、式(V)において、1つのTGは、例えばアクリル酸エステル基などの(メタ)アクリル酸エステル基から選択され、他方のTGは、例えばフェニル-フェノールなどの、フェノール、フェニル-フェノール、ナフトールのような芳香族部位を含むアルコールから選択される。
【0141】
好ましくは、式(VI)において、いずれのTGも、例えばアクリル酸エステル基などの(メタ)アクリル酸エステル基から選択される。
【0142】
(メタ)アクリル酸エステル(ME)は、好ましくは
- 第2の前駆体組成物(SPC)の製造中、または
- 工程c)の間、または工程c)の後でかつ工程d)が行われる前、
に添加される。
【0143】
(メタ)アクリル酸エステル(ME)が第2の前駆体組成物(SPC)の製造中に添加される場合、第2の前駆体組成物(SPC)の固形分の合計量を基準とした(メタ)アクリル酸エステル(ME)の合計量は、好ましくは2~50重量%、より好ましくは2~40重量%である。
【0144】
(メタ)アクリル酸エステル(ME)が、工程c)中に、または工程c)の後で、かつ工程d)が行われる前に添加される場合、工程d)が行われる前の混合物の固形分の合計量を基準とした(メタ)アクリル酸エステル(ME)の合計量は、好ましくは1~40重量%、より好ましくは1~30重量%である。
【0145】
好ましくは、(メタ)アクリル酸エステル(ME)は、工程c)が行われる前の第1の前駆体組成物(FPC)の製造中に添加されない。
【0146】
工程d)
工程d)では、基板上に薄膜層が形成される。
【0147】
液相大気圧膜堆積および任意選択的なパターニング
薄膜は、ディップコーティング、スロットコーティング、スロット+スピンコーティングの組み合わせ、スピンコーティング、スプレーコーティング、インクジェット印刷、カーテンコーティング、ローラー、ロール・ツー・ロール印刷、スクリーン印刷を使用して、またはバーやブラシを使用して、またはラビングにより、より好ましくはスプレーコーティング、スロットコーティング、ディップコーティング、スピンコーティングにより、最も好ましくはスプレーコーティングおよびスピンコーティングにより、基板上に堆積させることができる(いくつかの典型的な液相堆積法に言及しているが、これらに限定されない)。さらに、薄膜は、リソグラフィープロセス、または他のパターニング方法、例えば、グラビア、印刷、インクジェット、3D/4D印刷による直接パターニングによって、任意選択的にパターニングされてもよい。本発明により、膜および構造体の製造に適した材料が提供される。層は、有機または無機の半導体材料およびLEDまたはOLEDの層のような、ガラス、石英、シリコン、窒化ケイ素、ポリマー、金属、およびプラスチックなどの様々な基板表面に堆積することができる。
【0148】
さらに、材料は、様々な酸化物、ドープされた酸化物、半金属、TFTの層、OLEDおよびLEDの層などの数多くの様々な表面に堆積させることができる。熱および/または照射感受性材料組成物の任意選択的なパターニング/構造化は、直接的なリソグラフィーによるパターニング、従来のリソグラフィーによるマスキングおよびエッチング手順、インプリントおよびエンボス加工により行うことができるが、これらに限定されない。組成物は、例えば80℃以下の比較的低い処理温度で硬化する層を製造するために使用できるが、これは450℃の温度まで安定である。そのため、組成物から形成される層は、高い温度、すなわち、230℃超かつ最大450℃の温度で硬化することもできる。そのような場合、組成物から製造される膜または構造体は、スパッタリング、焼成、熱蒸発、および/またはCVDプロセスなどの後続の高温堆積工程と組み合わせることができる。使用する基板に応じて、材料は、通常、ホットプレート上で、対流式オーブン中で、IRランプ硬化により、または80℃~450℃の強制空気硬化により硬化される。また、特にディスプレイデバイスの基板(または低い硬化温度に耐えることができる他の基板)に既に取り付けられている基板上に材料層が直接堆積させる場合、処理温度は最大100℃、さらには80℃未満に制限される。
【0149】
工程e)
工程d)に溶媒が存在する場合、工程e)では、溶媒は、好ましくは工程d)の後に部分的にまたは完全に除去される。
【0150】
通常、除去は真空乾燥および/またはサーモス乾燥のいずれかによって行われる。真空乾燥は、10~300Paの圧力、好ましくは15~200Paの圧力で行うことができる。サーモス乾燥(プリベーク)は、50~150℃、好ましくは60~100℃の温度で行うことができる。
【0151】
工程f)
工程f)では、工程e)が存在する場合には工程e)で得られた中間生成物が、あるいは工程e)が存在しない場合には工程d)で得られた中間生成物が、硬化される。
【0152】
硬化は、通常、例えば対流式オーブン、ホットプレート、またはIR照射を使用して熱にさらすことにより行われる。
【0153】
硬化に使用される温度は、通常450℃を超えず、好ましくは400℃を超えず、より好ましくは300℃を超えず、最も好ましくは250℃を超えない。
【0154】
硬化時間は、通常、1.0分~5.0時間、好ましくは5.0分~3.0時間、最も好ましくは10分~1.0時間である。
【0155】
工程f)の後の薄膜の厚さは、好ましくは少なくとも50nm、より好ましくは少なくとも100nm、最も好ましくは少なくとも150nmである。通常、工程f)の後の薄膜の厚さは、20μm以下、好ましくは15μm以下、最も好ましくは10μm以下である。
【0156】
通常、工程d)からf)の間の最高温度は450℃未満、好ましくは300℃未満、より好ましくは250℃未満である。特定の実施形態では、工程d)からf)の間の最高温度は100℃であってもよく、さらには80℃未満であってもよい。通常、工程d)およびf)の間の温度は20℃以上である。
【0157】
先に述べたように、基板上に膜を製造するために薄膜コーティング材料を塗布して硬化させる最も簡単な方法は、例えばスロットコーティング、インクジェット印刷、またはスピンコーティング(またはインクジェットの場合は印刷された構造体であってもよい)の後に、熱硬化のみ、熱+UV硬化の組み合わせ、またはUV硬化のみを行うことである。以降では、任意選択的なリソグラフィーによるパターニングも含めて、コーティングの堆積のための例示的な方法をもう少し詳しく説明する。
【0158】
基板へのコーティングの堆積および任意選択的なパターニングの例示的な方法:
1.基板の予備洗浄:水酸化カリウム(KOH)による予備洗浄(KOH溶液は、室温であってもよく、あるいは温度は20℃~55℃の間で変化させることができる;典型的な濃度は0.04%~1%で変化させることができる)が行われた後、UV洗浄および脱イオン水によるすすぎ洗いが行われ、続いて乾燥プロセスが行われる。あるいは、濡れ性および接着性を改善するために、接着促進剤、プライマー、または他の化学的もしくは物理的な、例えばプラズマアッシングな表面改質方法が使用されてもよい。
【0159】
2.材料の堆積:コーティング材料は、スロットコーティング、スロット+スピンコーティングの組み合わせ、スピンコーティング、スプレーコーティング、インクジェット印刷、カーテンコーティング、ローラー、ロール・ツー・ロール、印刷を使用して基板上に堆積する(いくつかの典型的な液相堆積法に言及)。配合(溶媒+添加剤)は、コーティングの適切なコーティング厚、均一性、および平坦化/コンフォーマル性が得られるように調整される(いくつかの典型的な要件について言及)。
【0160】
3.真空乾燥および/またはプリベーク:堆積後、基板は真空乾燥ステーションに移され、かつ/または通常70~120℃で1~3分間、ホットプレート(またはオーブン)でプリベークされる。この工程では、配合溶媒の大部分が除去され、基板には、さらに処理する準備が整った予備硬化された膜が残る。プリベークはUV硬化のみのプロセスでは任意選択的であることは明らかである。
【0161】
4.露光:標準的なフォトリソグラフィープロセスでは、フォトマスクまたはレチクルが、ブロードバンド、g線、h線、i線、またはi線露光で使用される。必要とされる典型的なUV露光量は、g線、h線、i線露光を使用して50~200mJ(またはそれ以上)である。堆積された層のパターニングが必要とされない場合、またはパターニングが他の手段で行われる場合、(フォトマスクやレチクルを全く使用せずに)基板面積全体の露光を使用することができる。露光領域の硬化を改善するために、いわゆる待機工程または露光後ベーク工程を使用することもできる。本発明に記載の材料は、ネガ型レジストとして機能することができ、これは露光される領域がUV光下で重合する(露光された領域を現像液に対して溶解しにくくする)ことを意味する。また、パターニングが不要な場合は、UV露光を使用せずに材料を熱硬化配合物として使用することもできる。この場合、潜在性熱開始剤を利用することができる。
【0162】
5.現像(リソグラフィーパターニングが適用される場合):現像工程では、膜の溶解性が高い領域(上を参照)が現像液により溶解される。溶解性の低い領域(ネガ型材料の場合は露光領域)は、現像後に基板上に残る。いわゆるスプレー現像法またはバドル現像法を使用することができる。現像液溶媒は室温であってもよく、あるいは温度は、20~55℃の間で変化することができる。典型的な現像液としては、水酸化カリウム(KOH)および水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)が挙げられるが、これらに限定されない。典型的な濃度は、例えばKOHについては0.04%~0.7%、TMAHについては0.2%~2.38%である。現像液の塗布の後に、脱イオン水または標準水のリンス噴霧またはバッドル(buddle)が行われる。最終工程として、エアナイフ/ブローおよび/または加熱(ブローまたはIR硬化、ホットプレートまたはオーブン)により水が乾燥される。
【0163】
6.最終硬化:使用する基板および他のコーティング材料層に応じて、材料は対流式オーブン中で、IRランプ硬化により、80~300℃での強制空気硬化により硬化され、あるいはUV硬化のみの場合には、堆積後熱硬化なしにUV露光のみが適用される。
【0164】
また、特にディスプレイ基板に既に取り付けられている基板上に材料層が直接堆積されている場合、処理温度は最大100℃、さらには80℃未満に制限される。典型的な硬化時間は例えば温度で30分であってもよい。
【0165】
最終硬化後の薄膜(またはパターニングされた構造)の厚さは、10nm~15μmの範囲であってもよい。典型的には、ボトムエミッションOLEDデバイスの場合の例では、アウトカップリング層からの必要な厚さは50nm~500nmの範囲であってもよい。トップエミッションOLEDデバイス構成の場合には、層の厚さの要件は1μm~10μmの範囲であってもよい。光学薄膜の場合には、要件は典型的には10nm~200nmの範囲である。
【0166】
多層構造体
本発明はさらに、本発明の方法に従って作製された薄膜からなる少なくとも1つの層を含む多層構造体に関する。これにより、上述したプロセスの全ての実施形態は、多層構造体にも当てはまる。
【0167】
多層構造体は、2層、3層、4層、5層、またはそれ以上、好ましくは20層未満から構成することができる。
【0168】
一実施形態では、多層構造体は2つの層からなる。前記実施形態では、多層構造体は、本発明の方法に従って作製された薄膜からなる1つの層と基板層とからなる。それにより、本発明の方法に従って作製された薄膜からなる層の1つの表面は、基板層の1つの表面と直接接触する。
【0169】
別の実施形態では、多層構造体は2つより多い層からなる。好ましくは、多層構造体は、3層、4層、5層、6層、または7層、好ましくは4層、5層、または6層からなる。
【0170】
前記実施形態では、多層構造体は、好ましくは、本発明の方法に従って作製された薄膜からなる1つの層と、基板層と、1層、2層、3層、4層、または5層、好ましくは2層、3層、または4層の他の層とからなる。他の層は、本発明の方法に従って作製された薄膜からなる1つの層と同じであっても異なっていてもよい。他の層は、本発明の方法に従って作製された薄膜からなる1つの層とは異なることが好ましい。
【0171】
そのため、本発明の方法に従って作製された薄膜からなる層の1つの表面は、基板層の1つの表面と直接接触していることが好ましい。本発明の方法に従って作製された薄膜からなる層の他方の表面は、別の層の1つの表面と直接接触しており、この別の層は、本発明の方法に従って作製された薄膜からなる1つの層と同じであっても異なってもよいが、好ましくは異なる。
【0172】
前記実施形態では、本発明の方法に従って作製された薄膜からなる層は、基板層と別の層とで挟まれる。
【0173】
任意選択的な1つ以上の追加の他の層の表面は、他の層の表面および/または基板層の表面と直接接触していてもよく、好ましくは他の層の表面のみと接触することができる。
【0174】
基板層は、本発明の方法に従って作製された薄膜からなる層を用いた堆積に適した任意の層とすることができる。基板層は、有機層であっても無機層であってもよい。基板層は、薄膜トランジスタ(TFT)回路のように任意選択的に金属回路が堆積される有機または無機の半導体材料およびLEDまたはOLEDの層などの、ガラス、石英、シリコン、窒化ケイ素、ポリマー、金属、およびプラスチックから選択されることが好ましい。
【0175】
任意選択的な他の層は、本発明による多層構造体を作製するのに適した任意の層とすることができる。任意選択的な他の層は、有機層、無機層、または金属層であってもよい。
【0176】
物品
本発明は、さらに、本発明による方法によって得られる薄膜または発明による多層構造体を含む物品に関する。
【0177】
物品は、好ましくは、
光学および電気コーティング;
High-κ誘電体;
光アウトカップリング/取り出し層;
エッチングおよびCMP停止層;
OLED保護/シーリング/封止コーティング;
有機太陽電池;ならびに
光学薄膜フィルタ;
から選択される。
【0178】
本発明の薄膜は、基板上の光学層として、単一の光学層として、または多層光学積層体の一部として、使用することができる。典型的な用途は、デバイス構成における光のアウトカップリングまたはインカップリングを改善することである。
【0179】
例えば、本発明の薄膜は、例えば薄膜トランジスタ(TFT)構造上などの、ボトムエミッション有機発光ダイオード(OLED)デバイスの基板、例えばガラス基板またはプラスチック基板上に直接堆積される。TFTは、典型的には個々のOLEDピクセルを駆動するためのディスプレイデバイスの一部である。トップエミッションOLEDでは、アウトカップリング層は、上部電極の上で直接、あるいはTFE(薄膜封止)積層体の一部として処理する必要がある。ここで理想的には、高屈折率のアウトカップリング層は、2つ以上の無機層(すなわちSiNx)の間に設けられるであろう。高屈折率有機層を設けることは、好ましくはインクジェット印刷により行われる。TFT回路上に実際のOLEDを構築するためには、アウトカップリング層は、TFT(またはその平坦化/パッシベーション層)上で直接処理される電極材料、例えば酸化インジウムスズ、ITO上で直接処理することができ、あるいは特定の設計のカラーフィルタ上で処理されてもよい。ボトムエミッションOLEDデバイスの構成では、後続のITO層の堆積は典型的には比較的高い温度で行われる(低温堆積プロセスも適用することができる)ため、本発明の薄膜は最大250℃の硬化温度に耐えなければならない。より重要なことには、全ての影響を受けやすいOLEDデバイス層が薄膜層の上に堆積されるため、後続のデバイス層堆積工程中とデバイスの寿命の間の薄膜層からのガス放出が非常に少ないことが不可欠である。
【0180】
図1は、ボトムエミッションOLEDデバイスの簡略化された断面図を表している。TFT回路が既に配置されている基板(100)。次の工程として、カラーフィルタ(カラーフィルタオンアレイ、COA設計)も含んでいてもいなくてもよいTFT基板(100)上に材料膜(110)が設けられ、続いてOLED層(120)が堆積される。OLED層の堆積後、デバイスは、デバイス封入層(130)の堆積により完成させることができる。材料コーティング層(110)の屈折率と膜厚の要件は、デバイス効率を改善するために、OLEDデバイス層ピクセルから放出されてTFT基板を通過する光のアウトカップリングを最大にするようなTFT基板(100)とOLED層(120)の設計の光学系によって規定される。ボトムエミッションOLEDデバイス構成では、OLED層のカソードは不透明であり、そのため放出された光を下方向に反射する(
図1の矢印の方向を参照)。材料コーティング層(110)は、見込まれるマイクロキャビティ効果を調整してデバイス効率を改善するためにも使用することができる。
【0181】
OLEDデバイスは照明パネルであってもよく、この場合、ドライバ回路をはるかに単純にすることができる。この場合、本発明の材料層は、薄膜トランジスタ構造上ではなく、デバイス基板、例えばガラスやプラスチック基板上に直接堆積されてもよい。上で述べたように、本発明の薄膜はアウトカップリング強化層(デバイスの外部効率を改善)として機能するが、それと同時に散乱層として機能することができ、これは照明パネル用途の場合の設計要件であろう。この場合、材料コーティング層は基板と接続されて使用され、散乱粒子が薄膜コーティング配合物の中に入れられる。当然、散乱がある場合とない場合の多層アプローチは、理想的な効果を得るために組み合わせることができる。そのような粒子は、通常、例えば照明用途などの特定の要件を満たすため追加の光学効果を付与する。これらの粒子は、例えば、SiO2、TiO2、ZrO2、または類似の無機粒子であってもよい。
【0182】
トップエミッションOLED構成では、本発明の薄膜は光学層として機能するが、封止層としても機能することができる。薄膜は、完全な薄膜封止積層体の一部として、薄膜封止層として使用することができる。通常、封止は3~10層を使用して行われる。さらに、本発明の薄膜は、(後続の薄膜封止(TFE)層の堆積を助けるために)OLEDの上の平坦化層としても機能することができ、デバイスの効率を改善するために見込まれるマイクロキャビティ効果の調整も可能にする。
【0183】
より高い解像度が要求されることに起因してディスプレイデバイスのピクセル密度が高くなるため、平坦化層は、特定の厚い無機TFE層の真空蒸着に典型的に起因し得る粒子欠陥を低減するために役立ち得る。また、本発明の薄膜層は粒子を含まないため、薄膜積層体に粒子欠陥を実質的に生じさせない。粒子欠陥は、ナノ/マイクロ粒子をポリマーマトリックスに混合すると常に一部の粒子の凝集体を抱えることになる現在の技術の潜在的な大きな問題であり、デバイスの欠陥とその寿命の低下の原因となる。また、薄膜封止層をより薄い、最大2~4μmの個々の層へと分割すると、構造の柔軟性を保持するのに役立ち、デバイス構造を柔軟にすることができる。
【0184】
図2は、トップエミッションOLEDデバイスの簡略化された断面図を表す。トップエミッション構成では、最初にOLED層(210)、例えばアノード/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/カソードがTFT基板(200)上に堆積される。材料コーティング層(220)は、OLED層(210)の上に堆積される。材料コーティング層(220)(任意選択的なキャッピング層、本発明のHRI材料であってもよい)の後、デバイス封止層(230)(240)(250)が堆積される。典型的には、層230および250は、窒化ケイ素などの非常に薄い無機層であり、240は、粒子被覆層(PCL)と呼ばれる場合もある本発明のHRI材料である。材料コーティング層は、封止層の一部であってもよく、さらに一部の構成では、封止層の後の最後の層として材料コーティング層を堆積させることが好ましい場合がある((230)および(240)を含む様々な構造を想定することができる)。示されているこの構造では、OLEDデバイスは、光が封止層を通って放出されるトップエミッション構成である(
図2の矢印の方向を参照)。
【0185】
OLEDに関連するもう1つの考え得る構成を
図3に示す。トップエミッション構成では、最初にOLED層(310)、例えばアノード/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/カソードがTFT基板(300)上に堆積される。材料コーティング層(320)は、OLED層(310)上に堆積される。材料コーティング層(320)の後、デバイス封止層(330)(340)(350)が堆積される。典型的には、層330および350は、窒化ケイ素などの非常に薄い無機層であり、(340)は、粒子被覆層(PCL)と呼ばれる場合もある本発明のHRI材料である。材料コーティング層は、封止層の一部であってもよく、さらに一部の構成では、封止層の後の最後の層として材料コーティング層を堆積させることが好ましい場合がある((330)および(340)を含む様々な構造を想定することができる)。そして無機物(330)および材料のコーティング層(340)は、水/酸素の阻止または光学効果の最適な結果に到達させるために、複数回塗布することができる。示されているこの構造では、OLEDデバイスは、光が封止層を通って放出されるトップエミッション構成である(
図3の矢印の方向を参照)。
【0186】
さらに、トップエミッションOLED構造の場合、インクジェット印刷またはスリットコーティングとインクジェット印刷との組み合わせの手法を使用することにより、光学層とFTE層を処理できることが好ましい。これにより、最終的により低い設備投資と生産コストを実現することができる。
【0187】
本発明の方法および本発明の多層構造体の好ましい変形形態および実施形態も、本発明による物品の好ましい変形形態および実施形態である。
【0188】
組成物
本発明は、さらに、第1の前駆体組成物(FPC)と第2の前駆体組成物(SPC)とを含有する組成物に関し、第1の前駆体組成物(FPC)は、重合された1種類以上の次の式(I):
M1(OR1)nR2
m (I)
[式中、M1は原子価zの金属または半金属であり、R1はそれぞれ独立してC1~C10のオルガニルまたはオルガノヘテリル基から選択され、R2はそれぞれ独立してC1~C20のオルガニルまたはオルガノヘテリル基から選択され、nは1~z-1であり、mは1~z-1であり、n+mはzである];
の金属化合物または半金属化合物であり、
重合は、M1(OR1)部位を少なくとも部分的に加水分解することによって行われ;
第2の前駆体組成物(SPC)は、
b1a)次の式(II)の金属化合物または半金属化合物を供給すること:
M2(OR3)o (II)
[式中、M2は原子価yの金属または半金属であり、M1およびM2は周期表の異なる元素に基づくものであり、R3はそれぞれ独立してC1~C10のオルガニルまたはオルガノヘテリル基から選択され、oはyである];
b2a)任意選択的に、式(II)の金属化合物または半金属化合物を、(OR3)とは異なる配位子(L)と反応させること、
または
b1b)工程b2a)の反応生成物を直接供給すること、
により得ることができる。
【0189】
本発明による方法の好ましい特徴は、本発明の組成物の好ましい特徴でもある。
【0190】
本発明は、さらに、第1の容器内の第1の前駆体組成物(FPC)と第2の容器内の第2の前駆体組成物(SPC)とを含むキット・オブ・パーツに関し、第1の前駆体組成物(FPC)は、重合された1種類以上の次の式(I):
M1(OR1)nR2
m (I)
[式中、M1は原子価zの金属または半金属であり、R1はそれぞれ独立してC1~C10のオルガニルまたはオルガノヘテリル基から選択され、R2はそれぞれ独立してC1~C20のオルガニルまたはオルガノヘテリル基から選択され、nは1~z-1であり、mは1~z-1であり、n+mはzである];
の金属化合物または半金属化合物であり、
重合は、M1(OR1)部位を少なくとも部分的に加水分解することによって行われ;
第2の前駆体組成物(SPC)は、
b1a)次の式(II)の金属化合物または半金属化合物を供給すること:
M2(OR3)o (II)
[式中、M2は原子価yの金属または半金属であり、M1およびM2は周期表の異なる元素に基づくものであり、R3はそれぞれ独立してC1~C10のオルガニルまたはオルガノヘテリル基から選択され、oはyである];
b2a)任意選択的に、式(II)の金属化合物または半金属化合物を、(OR3)とは異なる配位子(L)と反応させること、
または
b1b)工程b2a)の反応生成物を直接供給すること、
により得ることができる。
【0191】
本発明による方法および組成物の好ましい特徴は、本発明のキット・オブ・パーツの好ましい特徴でもある。
【0192】
本発明は、さらに、基板上に薄膜を作製するための、本発明による組成物またはキット・オブ・パーツの使用に関する。
【0193】
本発明は、さらに、光学または電気コーティングを作製するための、本発明による組成物またはキット・オブ・パーツの使用に関する。
【0194】
本発明は、さらに、いかのものを作製するための本発明による組成物の使用に関する
- 光学および電気コーティング;
- High-κ誘電体;
- 光アウトカップリング/取り出し層;
- エッチングおよびCMP停止層;
- OLED保護/シーリング/封止コーティング;
- 有機太陽電池;または
- 光学薄膜フィルタ。
【図面の簡単な説明】
【0195】
【
図1】ボトムエミッションOLEDデバイスの簡略化された断面図である。
【
図2】トップエミッションOLEDデバイスの簡略化された断面図である。
【
図3】薄膜封止層を有するトップエミッションOLEDデバイスの簡略化された断面図である。
【
図4】応用実施例19で得られた膜の透過率グラフを示す図である(スペクトルはガラス基板込みである)。
【
図5】応用実施例24で得られた膜の透過率グラフを示す図である(ガラス基板の分が差し引かれたもの)。
【
図6】応用実施例24の熱重量分析(TGA)により決定された重量損失を示す図である。
【0196】
実施の部
測定方法
工程a2)の後に得られるポリマーの分子量
分子量測定に使用したツールはWATERS GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー):waters 1515 Isocratic HPLCポンプ、waters2414屈折率検出器。測定の校正標準としてポリスチレン標準を使用する。測定のための実際のサンプルは、溶離液としてのTHFを使用して4m%のサンプルとして製造される。
【0197】
固形分
分子量を決定するために使用されるツールは、Mettler Toledo HB43ハロゲンドライヤー/天秤である。サンプルをアルミニウム皿/カップ上で秤量し、約1グラムの材料を使用して測定を行う。
【0198】
保管寿命の決定
実際の測定データについては、応用実施例24および24Cを参照のこと。材料の保管寿命は、以下の硬化膜としての材料処理/塗布結果の安定性/再現性により決定される。硬化した膜から観察される値は膜厚および膜の屈折率である。膜厚および屈折率はエリプソメーター(UVISEL-VASE Horiba Jobin-Yvon)を使用して特性評価する。測定は、基板としてゴリラガラス4またはシリコンウェハを使用して行われる(直径:150mm、タイプ/ドーパント:P/Bor、配向:<1-0-0>、抵抗率:1~30ohm・cm、厚さ:675+/-25μm、TTV:<5μm、粒子:<20@0.2μm、表面:研磨、裏面:エッチング、フラット:1 SEMI規格)。材料膜の堆積は、スピンコーティング、ホットプレートを使用した予備硬化、広帯UV光源によるUV露光、および対流式オーブン中での最終ベークを使用することにより行われる。任意選択的には、材料に対してUV硬化のみ、または熱硬化のみが行われてもよい。
【0199】
粘度
機械製造元:Grabner Instruments粘度計MlNIVIS-II。測定方法「落下球式粘度測定」。サンプルは、直径3.175mmの鋼球を使用して20℃で測定される。
【0200】
透過率
Konica Minolta分光光度計CM-3700A(SpectraMagic NXソフトウェア)。試料の準備については、それぞれの実施例に記載する。
【0201】
色およびヘイズの測定
L*(D65)、a*(D65)、b*(D65)、およびヘイズは、Konica Minolta分光光度計CM-3700A(SpectraMagic NXソフトウェア)を使用して決定した。測定は、基材としてゴリラガラス4を使用して行われる。材料膜の堆積は、スピンコーティング、ホットプレートを使用した予備硬化、広帯UV光源によるUV露光、および対流式オーブン中での最終ベークを使用することにより行われる。任意選択的には、材料に対してUV硬化のみ、または熱硬化のみが行われてもよい。同様に任意選択的に、ガラス上への材料のインクジェット堆積が行われてもよい。
【0202】
屈折率
膜の屈折率はエリプソメーター(UVISEL-VASE Horiba Jobin-Yvon)を使用して特性評価する。測定は、基板としてゴリラガラス4またはシリコンウェハを使用して行われる(直径:150mm、タイプ/ドーパント:P/Bor、配向:<1-0-0>、抵抗率:1~30ohm・cm、厚さ:675+/-25μm、TTV:<5μm、粒子:<20@0.2μm、表面:研磨、裏面:エッチング、フラット:1 SEMI規格)。材料膜の堆積は、スピンコーティング、ホットプレートを使用した予備硬化、広帯UV光源によるUV露光、および対流式オーブン中での最終ベークを使用することにより行われる。任意選択的には、材料に対してUV硬化のみ、または熱硬化のみが行われてもよい。同様に任意選択的に、ガラス上への材料のインクジェット堆積が行われてもよい。
【0203】
膜厚
膜厚はエリプソメーター(UVISEL-VASE Horiba Jobin-Yvon)を使用して測定する。測定は、基板としてゴリラガラス4またはシリコンウェハを使用して行われる(直径:150mm、タイプ/ドーパント:P/Bor、配向:<1-0-0>、抵抗率:1~30ohm・cm、厚さ:675+/-25μm、TTV:<5μm、粒子:<20@0.2μm、表面:研磨、裏面:エッチング、フラット:1 SEMI規格)。材料膜の堆積は、スピンコーティング、ホットプレートを使用した予備硬化、広帯UV光源によるUV露光、および対流式オーブン中での最終ベークを使用することにより行われる。任意選択的には、材料に対してUV硬化のみ、または熱硬化のみが行われてもよい。同様に任意選択的に、ガラス上への材料のインクジェット堆積が行われてもよい。
【0204】
熱重量分析(TGA)
重量2.0mgのサンプルをTGA/DTA同時測定装置DTG-60A、Shimadzu Japanの中にセットし、窒素気流雰囲気下で連続的に160℃、230℃、および250℃まで加熱した。加熱速度は10℃/minであり、160℃の温度を60分間保持し、230℃の温度を60分間保持し、250℃の温度を30分間保持した。
【0205】
実験結果:
使用した物質:
MIRAMER M1142、o-フェニルフェノールエチレンオキシドアクリレート、CAS番号72009-86-0、MW=268g/mol、Miwonから供給
MIRAMER M244、ビスフェノールA(エチレンオキシド)3ジアクリレート、CAS番号64401-02-1、MW=468g/mol、Miwonから供給
実施例1
2.34gのメタクリルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、0.5gの水、8gのプロピレングリコールモノメチルエーテル、および0.2gのトリエチルアミンを丸底フラスコの中に入れ、80℃(オイルバス)で30分間撹拌した。16gのプロピレングリコールモノメチルエーテルを反応混合物に添加した。5.2gのオルトチタン酸テトライソプロピルを反応混合物に80℃で滴下した(5分)。(徐々にゆっくりと添加することが重要である。それ以外の場合にはTiO2粒子が生成される)。混合物を80℃で3時間撹拌したところ、透明な溶液が得られた。得られた溶液の固形分(SC)は14重量%であった。
【0206】
実施例2
8.4gのオルトチタン酸テトライソプロピルを使用したことを除き実施例1の手順を繰り返したところ、SCが15重量%の透明な溶液が得られた。
【0207】
実施例3
トリメチルアミンの代わりに0.2gの2,6,10-トリメチル-2,6,10-トリアザウンデカンを使用したことを除き実施例2の手順を繰り返したところ、SCが15重量%の透明な溶液が得られた。
【0208】
実施例4
メタクリルオキシプロピルメチルジメトキシシランの代わりに5.2gの3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシランを使用したことを除き実施例1の手順を繰り返したところ、SCが14重量%の透明な溶液が得られた。
【0209】
実施例5
11gの3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシランを使用したことを除き実施例4の手順を繰り返したところ、SCが20重量%の透明な溶液が得られた。
【0210】
実施例6
4.68gのメタクリルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、1.0gの水、16gのプロピレングリコールモノメチルエーテル、および0.4gのトリエチルアミンを丸底フラスコの中に入れ、80℃(オイルバス)で30分間撹拌した。32gのプロピレングリコールモノメチルエーテルを反応混合物に添加した。16.8gのオルトチタン酸テトライソプロピルを反応混合物に80℃で滴下した(4分)。混合物を130℃で3時間撹拌し、蒸留しながらさらに130℃で4時間撹拌したところ、SCが17重量%の透明な溶液が得られた。
【0211】
実施例7
4.68gのグリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、1.0gの水、16gのプロピレングリコールモノメチルエーテル、および0.4gのトリエチルアミンを丸底フラスコの中に入れ、80℃(オイルバス)で30分間撹拌した。32gのプロピレングリコールモノメチルエーテルを反応混合物に添加した。22gのオルトチタン酸テトライソプロピルを反応混合物に80℃で滴下した(8分)。混合物を130℃で3時間撹拌し、蒸留しながらさらに130℃で4時間撹拌したところ、SCが26重量%の透明な溶液が得られた。
【0212】
実施例8
9.36gのグリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2gの水、32gのプロピレングリコールモノメチルエーテル、および0.8gのトリエチルアミンを丸底フラスコの中に入れ、80℃(オイルバス)で30分間撹拌した。64gのプロピレングリコールモノメチルエーテルを反応混合物に添加した。44gのオルトチタン酸テトライソプロピルを80℃で反応混合物に滴下した(18分)。混合物を80℃で3時間撹拌した。その後、生成したアルコールを減圧下での蒸発により除去したところ、SCが31重量%の透明な溶液が得られた。
【0213】
実施例9
メタクリルオキシプロピルメチルジメトキシシランの代わりに2.34gのメルカプトプロピルメチルジメトキシシランを使用したことを除き実施例1の手順を繰り返したところ、SCが17重量%の透明な溶液が得られた。
【0214】
実施例10
8.4gのオルトチタン酸テトライソプロピルを使用したことを除き実施例9の手順を繰り返したところ、SCが16重量%の透明な溶液が得られた。
【0215】
実施例11
9.36gのグリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2gの水、32gのプロピレングリコールモノメチルエーテル、および0.8gのトリエチルアミンを丸底フラスコの中に入れ、80℃(オイルバス)で30分間撹拌した。64gのプロピレングリコールモノメチルエーテルを反応混合物に添加した。59.6gのチタンテトラn-ブトキシドを80℃で反応混合物に滴下した(9分)。混合物を100℃で3時間撹拌したところ、SCが19重量%の透明な溶液が得られた。
【0216】
実施例12
本発明の実施例5の手順を繰り返して得られた透明な溶液30gに、6gのアセト酢酸エチルを添加し、得られた混合物を25℃で24時間撹拌したところ、SCが17重量%の透明な溶液が得られた。
【0217】
実施例13
本発明の実施例5の手順を繰り返して得られた透明な溶液30gに、12gのアセト酢酸エチルを添加し、得られた混合物を25℃で48時間撹拌したところ、SCが13重量%の透明な溶液が得られた。
【0218】
実施例14
3.12gのグリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、9gのジメチルジエトキシシラン、2gの水、32gのプロピレングリコールモノメチルエーテル、および0.8gのトリエチルアミンを丸底フラスコの中に入れ、80℃(オイルバス)で30分間撹拌した。64gのプロピレングリコールモノメチルエーテルを反応混合物に添加した。44gのオルトチタン酸テトライソプロピルを80℃で反応混合物に滴下した(7分)。混合物を100℃で3時間撹拌したところ、SCが16重量%の透明な溶液が得られた。
【0219】
実施例15
本発明の実施例11の手順を繰り返して得られた透明な溶液20gに、4gのアセト酢酸エチルおよび16gのプロピレングリコールモノメチルエーテルを添加し、得られた混合物を25℃で72時間撹拌したところ、SCが10重量%の透明な溶液が得られた。
【0220】
実施例16
2.11gのメタクリロイルプロピルトリメトキシシラン、0.23gのグリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、0.5gの水、8gのプロピレングリコールモノメチルエーテル、および0.2gのトリエチルアミンを丸底フラスコの中に入れ、80℃(オイルバス)で30分間撹拌した。16gのプロピレングリコールモノメチルエーテルを反応混合物に添加した。8.4gのオルトチタン酸テトライソプロピルを80℃で反応混合物に滴下した。混合物を80℃で6時間撹拌したところ、SCが17重量%の透明な溶液が得られた。
【0221】
実施例17
2.34gのグリシドキシプロピルトリメトキシシラン、0.5gの水、32gのプロピレングリコールモノメチルエーテル、および0.8gのトリエチルアミンを丸底フラスコの中に入れ、80℃(オイルバス)で30分間撹拌した。64gのプロピレングリコールモノメチルエーテルを反応混合物に添加した。11gのオルトチタン酸テトライソプロピルを80℃で反応混合物に滴下した。混合物を80℃で20時間撹拌したところ、SCが23重量%の透明な溶液が得られた。
【0222】
実施例18
1.76gのグリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、0.58gのグリシドキシプロピルトリメトキシシラン、0.5gの水、32gのプロピレングリコールモノメチルエーテル、および0.8gのトリエチルアミンを丸底フラスコの中に入れ、80℃(オイルバス)で30分間撹拌した。64gのプロピレングリコールモノメチルエーテルを反応混合物に添加した。11gのオルトチタン酸テトライソプロピルを80℃で反応混合物に滴下した。混合物を80℃で20時間撹拌したところ、SCが21重量%の透明な溶液が得られた。
【0223】
実施例19
溶液1:メタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン(120g)を反応フラスコに入れ、21gの水(0.1MのHNO3)を添加した。オイルバス中、95℃で反応混合物を3時間40分還流した。溶液を冷却し、トリエチルアミン(0.39g)と2-プロパノール(3.51g)との混合物を添加し、還流を65分間継続した。還流後、溶媒を減圧下で除去した。材料の分子量は1000であった。
【0224】
溶液2:ブタノール(400g)中の80%のジルコニウム(IV)ブトキシド溶液に、アセト酢酸エチル(217.08g)を添加した。溶液を室温で5日間混合した。溶媒の除去は減圧下で行った。
【0225】
混合物の製造:1lの丸底フラスコに、溶液1(2.5g)、1-メトキシ-2-プロパノール(850g)、ジプロピレングリコール(50g)、溶液2(97.5g)、およびBYK333(2.9g)を添加した。溶液を室温で2時間混合した。
【0226】
実施例20
溶液1:2-プロパノール(50g)中の70%のジルコニウム(IV)イソプロポキシド溶液に、アセト酢酸エチル(83.43g)を添加した。溶液を室温で5日間混合した。溶媒の除去は減圧下で行った。
【0227】
溶液2:メタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン(36g)を反応フラスコに入れ、6.3gの水(0.1MのHNO3)を添加した。反応混合物を室温で3日間撹拌した。溶媒の除去は減圧下で行った。材料の分子量は1000であった。
【0228】
混合物の製造:500mlの丸底フラスコに、溶液1(77g)、溶液2(3g)、およびMiramer M1142(20g)を添加した。溶液を室温で2時間混合した。
【0229】
実施例21
溶液1:2-プロパノール(50g)中の70%のジルコニウム(IV)イソプロポキシド溶液に、アセト酢酸エチル(111.24g)を添加した。溶液を室温で5日間混合した。溶媒の除去は減圧下で行った。
【0230】
溶液2:メタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン(36g)を反応フラスコの中に入れ、6.3gの水(0.1MのHNO3)を添加した。反応混合物を室温で3日間撹拌した。溶媒の除去は減圧下で行った。材料の分子量は1000であった。
【0231】
混合物の製造:500mlの丸底フラスコに、溶液1(77g)、溶液2(3g)、およびMiramer M1142(20g)を添加した。溶液を室温で2時間混合した。
【0232】
実施例22
溶液1:2-プロパノール(50g)中の70%のジルコニウム(IV)イソプロポキシド溶液に、アセト酢酸エチル(83.43g)を添加した。溶液を室温で5日間混合した。溶媒の除去は減圧下で行った。溶媒除去後の溶液の質量は96.2gであった。
【0233】
溶液2:メタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン(36g)を反応フラスコの中に入れ、6.3gの水(0.1MのHNO3)を添加した。反応混合物を室温で3日間撹拌した。溶媒の除去は減圧下で行った。材料の分子量は1000であった。
【0234】
混合物の製造:100mlのフラスコに、溶液1(67g)、溶液2(3g)、およびMiramer M244(30g)、およびBYK3700(2g)を添加した。溶液を室温で2時間混合した。
【0235】
実施例23
溶液1:2-プロパノール(200g)中の70%のジルコニウム(IV)イソプロポキシド溶液に、アセト酢酸エチル(222.48g)を添加した。溶液を室温で5日間混合した。溶媒の除去は減圧下で行った。溶媒除去後の溶液の質量は270.46gであった。
【0236】
溶液2:メタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン(36g)を反応フラスコに入れ、6.3gの水(0.1MのHNO3)を添加した。反応混合物を室温で3日間撹拌した。溶媒の除去は減圧下で行った。材料の分子量は1000であった。
【0237】
混合物の製造:100mlのフラスコに、溶液1(67g)、溶液2(3g)、およびMiramer M1142(30g)、およびBYK3700(2g)を添加した。溶液を室温で2時間混合した。
【0238】
実施例24
溶液1:ブタノール(1963g)中の80%のジルコニウム(IV)ブトキシド溶液に、アセト酢酸エチル(1066g)を添加した。溶液を室温で5日間混合した。溶媒の除去は減圧下で行った。
【0239】
溶液2:Miramer 1142(90g)を反応フラスコに入れ、2-プロパノール(60g)および5.1gの水(0.01MのHNO3)を添加した。溶液を室温で16時間撹拌した。
【0240】
溶液3:フェニルトリメトキシシラン(5.42g)を丸底フラスコに入れ、1.42gの水(0.01MのHNO3)を添加した。溶液を室温で16時間撹拌した。
【0241】
混合物の製造:溶液2(155.1g)と溶液1(2372.0g)を混合した。混合した溶液に、2-メトキシ-1-プロパノール(4145.0g)を添加した。溶液3(6.9g)を溶液1+2に添加した。最後に、539.49gの2-メトキシ-1-プロパノールを添加した。溶液を室温で20時間撹拌した。
【0242】
実施例25
溶液1:ブタノール(1963g)中の80%のジルコニウム(IV)ブトキシド溶液に、アセト酢酸エチル(1066g)を添加した。溶液を室温で5日間混合した。溶媒の除去は減圧下で行った。
【0243】
溶液2:Miramer 1142(90g)を反応フラスコに入れ、2-プロパノール(60g)および5.1gの水(0.01MのHNO3)を添加した。溶液を室温で16時間撹拌した。
【0244】
溶液3:フェニルトリメトキシシラン(5.42g)を丸底フラスコに入れ、1.42gの水(0.01MのHNO3)を添加した。溶液を室温で16時間撹拌した。
【0245】
混合物の製造:溶液2(9.36g)と溶液1(144.0g)を混合した。混合した溶液に、2-メトキシ-1-プロパノール(252.0g)を添加した。溶液3(0.41g)を溶液1+2に添加した。最後に、361.38gの2-メトキシ-1-プロパノールを添加した。溶液を室温で一晩撹拌した。
【0246】
実施例26
溶液1:ブタノール(1963g)中の80%のジルコニウム(IV)ブトキシド溶液に、アセト酢酸エチル(1066g)を添加した。溶液を室温で5日間混合した。溶媒の除去は減圧下で行った。
【0247】
溶液2:Miramer 1142(90g)を反応フラスコに入れ、2-プロパノール(60g)および5.1gの水(0.01MのHNO3)を添加した。溶液を室温で16時間撹拌した。
【0248】
溶液3:フェニルトリメトキシシラン(5.42g)を丸底フラスコに入れ、1.42gの水(0.01MのHNO3)を添加した。溶液を室温で16時間撹拌した。
【0249】
混合物の製造:溶液1(1244.3g)と溶液2(80.9g)を混合した。混合した溶液に、2-メトキシ-1-プロパノール(2177.9g)を添加した。溶液3(3.8g)を溶液1+2に添加した。最後に、283.2gの2-メトキシ-1-プロパノールを添加した。溶液を室温で20時間撹拌した。測定粘度3.6mPa・s。あるいは、溶媒PGMEの代わりに、THF-A(テトラヒドロフルフリルアルコール)、PGMEA、シクロヘキサノン、エチレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテルなどの単一の溶媒およびこれらの組み合わせからの様々な溶媒を様々な比率で使用することができる。
【0250】
実施例27
溶液1:ブタノール(1963g)中の80%のジルコニウム(IV)ブトキシド溶液に、アセト酢酸エチル(1066g)を添加した。溶液を室温で5日間混合した。溶媒の除去は減圧下で行った。
【0251】
溶液2:Miramer 1142(90g)を反応フラスコに入れ、2-プロパノール(60g)および5.1gの水(0.01MのHNO3)を添加した。溶液を室温で16時間撹拌した。
【0252】
溶液3:フェニルトリメトキシシラン(5.42g)を丸底フラスコに入れ、1.42gの水(0.01MのHNO3)を添加した。溶液を室温で16時間撹拌した。
【0253】
混合物の製造:溶液1(268g)と溶液2(17.42g)を混合した。混合した溶液に、PGME(2-メトキシ-1-プロパノール、220.43g)を添加した。0.50gの量の溶液3を添加し、最終混合物を室温で一晩撹拌した。測定粘度6.9mPa・s。
【0254】
実施例28
溶液1:ブタノール(1963g)中の80%のジルコニウム(IV)ブトキシド溶液に、アセト酢酸エチル(1066g)を添加した。溶液を室温で5日間混合した。溶媒の除去は減圧下で行った。
【0255】
溶液2:Miramer 1142(90g)を反応フラスコに入れ、2-プロパノール(60g)および5.1gの水(0.01MのHNO3)を添加した。溶液を室温で16時間撹拌した。
【0256】
溶液3:フェニルトリメトキシシラン(5.42g)を丸底フラスコに入れ、1.42gの水(0.01MのHNO3)を添加した。溶液を室温で16時間撹拌した。
【0257】
混合物の製造:溶液1(268g)と溶液2(17.42g)を混合した。混合した溶液に、PGMEA(1-メトキシ-2プロピルアセテート、210.13g)の溶媒混合物を添加した。0.50gの量の溶液3を添加し、最終混合物を室温で一晩撹拌した。測定された溶液の粘度は3.9mPa・sであった。
【0258】
実施例29
溶液1:ブタノール(1963g)中の80%のジルコニウム(IV)ブトキシド溶液に、アセト酢酸エチル(1066g)を添加した。溶液を室温で5日間混合した。溶媒の除去は減圧下で行った。
【0259】
溶液2:Miramer 1142(90g)を反応フラスコに入れ、2-プロパノール(60g)および5.1gの水(0.01MのHNO3)を添加した。溶液を室温で16時間撹拌した。
【0260】
溶液3:フェニルトリメトキシシラン(5.42g)を丸底フラスコに入れ、1.42gの水(0.01MのHNO3)を添加した。溶液を室温で16時間撹拌した。
【0261】
混合物の製造:溶液1(268g)と溶液2(17.42g)を混合した。混合した溶液に、PGMEA(1-メトキシ-2プロピルアセテート、35.18g)とテトラフルフリルアルコール(82.08g)との溶媒混合物を添加した。0.40gの量の溶液3を添加し、最終混合物を室温で一晩撹拌した。測定された溶液の粘度は20.0mPa・sであった。
【0262】
実施例30
2.34gのグリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、0.5gの水、24gのプロピレングリコールモノメチルエーテル、および0.2gのトリエチルアミンを丸底フラスコの中に入れ、80℃(オイルバス)で30分間撹拌した。12gのオルトチタン酸テトライソプロピルを80℃で反応混合物に滴下した。混合物を100℃で3時間撹拌した。室温まで冷却した後、4.6gのクロロトリメチルシランを反応混合物に添加して100℃で1.5時間加熱したところ、SCが22重量%の透明な溶液が得られた。
【0263】
実施例31
2.3gのクロロトリメチルシランを使用したことを除き実施例30の手順を繰り返したところ、SCが21重量%の透明な溶液が得られた。
【0264】
実施例32
2.34gのメルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、0.5gの水、24gのプロピレングリコールモノメチルエーテル、および0.2gのトリエチルアミンを丸底フラスコの中に入れ、80℃(オイルバス)で30分間撹拌した。14.8gのオルトチタン酸テトライソプロピルを80℃で反応混合物に滴下した。混合物を100℃で3時間撹拌した。室温まで冷却した後、2.8gのクロロトリメチルシランを反応混合物に添加して100℃で1.5時間加熱したところ、SCが19重量%の透明な溶液が得られた。
【0265】
実施例33
2.34gのメルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、0.5gの水、24gのプロピレングリコールモノメチルエーテル、および0.2gのトリエチルアミンを丸底フラスコの中に入れ、80℃(オイルバス)で30分間撹拌した。7.4gのオルトチタン酸テトライソプロピルを80℃で反応混合物に滴下した。混合物を100℃で3時間撹拌した。室温まで冷却した後、0.25gの水と5.6gのクロロトリメチルシランを反応混合物に添加して100℃で1.5時間加熱したところ、SCが17重量%の透明な溶液が得られた。
【0266】
実施例34
2.34gのグリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、0.5gの水、24gのプロピレングリコールモノメチルエーテル、および0.2gのトリエチルアミンを丸底フラスコの中に入れ、80℃(オイルバス)で30分間撹拌した。12gのオルトチタン酸テトライソプロピルを80℃で反応混合物に滴下した。混合物を100℃で3時間撹拌した。5gのエトキシトリメチルシランと、0.5gの水と、4gのプロピレングリコールモノメチルエーテルと、0.2gのトリエチルアミンとの混合物を反応混合物に滴下し、100℃で15時間加熱したところ、SCが16重量%の透明な溶液が得られた。
【0267】
実施例35
2.34gのグリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、0.5gの水、24gのプロピレングリコールモノメチルエーテル、および0.2gのトリエチルアミンを丸底フラスコの中に入れ、80℃(オイルバス)で30分間撹拌した。12gのオルトチタン酸テトライソプロピルを80℃で反応混合物に滴下した。混合物を100℃で3時間撹拌した。6.3gのジエトキシジメチルシランと、0.5gの水と、4gのプロピレングリコールモノメチルエーテルと、0.2gのトリエチルアミンとの混合物を反応混合物に滴下し、100℃で18時間加熱したところ、SCが17重量%の透明な溶液が得られた。
【0268】
応用実施例19
実施例19の薄膜コーティング材料を、スプレーコーティング法によりガラス上に堆積させた。コーティング材料の固形分は約9.8%であった。ゴリラガラス4に層を堆積させるスプレーコートパラメータは以下の通りである:走査速度:300mm/s、ピッチ:50mm、ギャップ:50~100mm、流量:3~10ml/min、噴霧空気圧:5kg/cm
2。スプレー堆積後、150℃の対流式オーブンの中で膜を30分間硬化させた。
図4は、得られた材料の透過率グラフを示している。ガラス基板の反射と吸収は差し引かれていない。膜の他の光学特性には、550nmで92.3%の透過率、a
*(D65)0.07、およびb
*(D65)0.46が含まれる。屈折率は1.56(632nm)であり、最終的な硬化した厚さは308nmであった。
【0269】
応用実施例20
実施例20の材料を、シリコンウェハ上の材料を特性評価することにより試験した(直径:150mm、タイプ/ドーパント:P/Bor、配向:<1-0-0>、抵抗率:1~30ohm・cm、厚さ:675+/-25μm、TTV:<5μm、粒子:<20@0.2μm、表面:研磨、裏面:エッチング、フラット:1 SEMI規格)、この事例では堆積方法としてスピンコーティングを使用した。堆積方法として、2000rpmでのスピンコーティングを使用し、100℃で120秒間のプリベーク、100℃で30分間のポストベークを行った。膜厚は3.1μmであり、屈折率は1.608(632nm)であると測定された。
【0270】
応用実施例21
実施例21の材料を、シリコンウェハ上の材料を特性評価することにより試験した(直径:150mm、タイプ/ドーパント:P/Bor、配向:<1-0-0>、抵抗率:1~30ohm・cm、厚さ:675+/-25μm、TTV:<5μm、粒子:<20@0.2μm、表面:研磨、裏面:エッチング、フラット:1 SEMI規格)、この事例では堆積方法としてスピンコーティングを使用した。堆積方法として、2000rpmでのスピンコーティングを使用し、100℃で120秒間のプリベーク、100℃で30分間のポストベークを行った。膜厚は3.3μmであり、屈折率は1.613(632nm)であると測定された。
【0271】
応用実施例22
実施例22の材料を、シリコンウェハ上の材料を特性評価することにより試験した(直径:150mm、タイプ/ドーパント:P/Bor、配向:<1-0-0>、抵抗率:1~30ohm・cm、厚さ:675+/-25μm、TTV:<5μm、粒子:<20@0.2μm、表面:研磨、裏面:エッチング、フラット:1 SEMI規格)。この事例では堆積方法としてスピンコーティングを使用した。堆積方法として、2000rpmでのスピンコーティングを使用し、100℃で120秒間のプリベーク、100℃で30分間のポストベークを行った。膜厚は6.1μmであり、屈折率は1.585(632nm)であると測定された。
【0272】
応用実施例23
実施例23の材料を、シリコンウェハ上の材料を特性評価することにより試験した(直径:150mm、タイプ/ドーパント:P/Bor、配向:<1-0-0>、抵抗率:1~30ohm・cm、厚さ:675+/-25μm、TTV:<5μm、粒子:<20@0.2μm、表面:研磨、裏面:エッチング、フラット:1 SEMI規格)。この事例では堆積方法としてスピンコーティングを使用した。堆積方法として、2000rpmでのスピンコーティングを使用し、100℃で120秒間のプリベーク、100℃で30分間のポストベークを行った。膜厚は6.1μmであり、屈折率は1.653(632nm)であると測定された。
【0273】
応用実施例24
実施例24の薄膜コーティング材料を、Mikasa Co., Ltd., Japanのスピンコーター、1H-DX2を用いて360rpmで30秒間スピンコーティングすることにより、Matsunami Glass Ind., Ltd.,のS2003F3上に堆積させた。プリベークは100℃で120秒間であり、ポストベークは250℃で30分間であった。膜厚は200nmであり、屈折率は1.71(632nm)であると測定された。その後、透過率測定の薄膜干渉効果を排除するためにWako Pure Chemical Industries, Ltd., Japanの1-ブロモナフタレンを58umの厚さでコーティング表面にさらに塗布し、同じスライドガラスプレートで覆った。
図5は、材料の透過率グラフを示している。薄膜の他の光学特性(基板の分が差し引かれたもの)には、550nmで99.1%の透過率、a
*(D65)-0.35、およびb
*(D65)0.45が含まれる。
【0274】
応用実施例24A
ポストベーク工程を各ベーク工程の合間に室温まで冷却しながら250℃で30分間4回行ったことを除き応用実施例24の手順を繰り返した。
【0275】
応用実施例24B
ポストベーク工程を250℃で30分間、引き続き350℃で30分間行ったことを除き応用実施例24の手順を繰り返した。
【0276】
結果を以下の表に示す。
【0277】
【0278】
上の表には、材料のシングルベークおよびマルチベークサイクルの安定性についてまとめられている。ベーク温度を上げると屈折率は1.71から1.87に変化し、膜厚は463nmから301nmに減少した。
【0279】
さらに、応用実施例24のガス放出を熱重量分析(TGA)により決定した。結果を
図6に示し、次の表にまとめる。
【0280】
【0281】
図6および上の表は、実施例24の材料の熱重量分析(TGA)によって決定された、高温であっても材料の重量損失が少ないことを示している。160℃での重量損失は微量の水の除去に起因する。水の除去後、250℃だけでなく230℃でも重量損失はほとんど観察されなかった。これらは、デバイス製造における典型的な処理温度である。したがって、本発明の材料は、製造プロセス中にほとんどガスを放出させない。
【0282】
応用実施例24C
スピンコーティング工程を2000rpmで行ったことを除き応用実施例24の手順を繰り返した。
【0283】
+4℃および+23℃で23週間の間に得られた応用実施例24および応用実施例24Cの得られた膜の厚さを決定した。応用実施例24については、+4℃と+23℃との屈折率の相違も決定した。結果を下の表に示す。
【0284】
【0285】
【0286】
【0287】
上の表のデータは、実施例24の材料の保管寿命安定性データを表している。配合済の配合物の保管寿命は、+4℃と+23℃で分析した。23週間の間に、2つの異なる回転速度と得られる膜厚を、膜厚の一貫性と屈折率の一貫性の観点から分析した。データから、実施例24の材料が両方のエージング温度で非常に安定であることを確認することができる。
【0288】
応用実施例25
実施例25の薄膜コーティング材料を、スピンコーティング法によってゴリラガラス4の上に堆積させた。材料をガラス基板上で特性評価し、堆積方法としてスピンコーティングを使用した。堆積方法として、2000rpmでのスピンコーティングを使用し、100℃で120秒間のプリベーク、250℃でのポストベークを行った。膜厚は56nmであり、屈折率は1.72(632nm)であると測定された。実施例24と25の材料の間の唯一の違いは、サンプル25ではより薄い膜を得るために材料をさらに希釈することである。
【0289】
応用実施例27
実施例26の薄膜コーティング材料を、ゴリラガラス4の上の材料を特性評価することにより試験した。この事例では堆積方法としてスピンコーティングを使用した。堆積方法として、2000rpmでのスピンコーティングを使用し、100℃で120秒間のプリベーク、250℃で30分間のポストベークを行った。
【0290】
応用実施例28
本発明の材料28を使用したことを除き応用実施例27の手順を繰り返した。
【0291】
【0292】
応用実施例28A
実施例28の薄膜コーティング材料を、インクジェット印刷コーティング法によりガラス上に堆積させた。材料を、ゴリラガラス4およびシリコンウェハ(直径:150mm、タイプ/ドーパント:P/Bor、配向:<1-0-0>、抵抗率:1~30ohm・cm、厚さ:675+/-25μm、TTV:<5μm、粒子:<20@0.2μm、表面:研磨、裏面:エッチング、フラット:1 SEMI規格)上で特性評価し、堆積方法としてインクジェットコーティングを使用した。インクジェット印刷(Dimatix Materials Printer DMP-2850;ジェット16、射出周波数5kHz、印加電圧20V、液滴間隔30pm、カートリッジタイプ10pL)を堆積方法として使用し、100℃で120秒間のプリベーク、250℃で30分間のポストベークを行った。膜厚は450nmであり、屈折率は1.71(632nm)であると測定された。
【0293】
応用実施例28BおよびC
実施例28の薄膜コーティング材料を、散乱粒子(200nmの平均粒径を有するTiO
2、Kronosから入手可能)を2つの異なる濃度で材料に入れることによってさらに修飾した。応用実施例28Bは、本発明の実施例28の配合物に3.8重量%の散乱粒子を添加することにより製造し、応用実施例28Cは、本発明の実施例28の配合物に4.8重量%の散乱粒子を添加することにより製造した。本発明の実施例28Bおよび28Cの薄膜コーティング材料を、スピンコーティング法によってゴリラガラス4上に堆積させた。堆積方法として、400rpmでのスピンコーティングを使用し、100℃で120秒間のプリベーク、250℃で30分間のポストベークを行った。膜厚は400nmであると測定された。2つの応用実施例の他の光学データは下の表に記載されている。
【表7】
【0294】
比較例1(対実施例1~18)
0.5gの水、24gのプロピレングリコールモノメチルエーテル、および0.2gのトリエチルアミンを丸底フラスコの中に入れ、80℃(オイルバス)で加熱した。2.34gのメタクリルオキシプロピルメチルジメトキシシランと5.2gのオルトチタン酸テトライソプロピルとの混合物を反応混合物に80℃で滴下した(3分)。添加中に析出物が徐々に生成し、混合物の添加後に溶液は半透明になった。反応混合物を80℃で3時間撹拌することで、半透明の白色分散液を得た。不透明な膜となるため、この組成物からは膜を形成しなかった。