(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-10
(45)【発行日】2024-01-18
(54)【発明の名称】亀裂検出装置及び方法
(51)【国際特許分類】
G01B 11/22 20060101AFI20240111BHJP
【FI】
G01B11/22 Z
(21)【出願番号】P 2019108233
(22)【出願日】2019-06-10
【審査請求日】2022-05-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【氏名又は名称】松浦 憲三
(74)【代理人】
【識別番号】100170069
【氏名又は名称】大原 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128635
【氏名又は名称】松村 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100140992
【氏名又は名称】松浦 憲政
(72)【発明者】
【氏名】百村 和司
【審査官】眞岩 久恵
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-133997(JP,A)
【文献】特開2001-007173(JP,A)
【文献】特開2015-078852(JP,A)
【文献】特開平09-307217(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00-11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物に対面する位置に配置された集光レンズと、
前記集光レンズを介して前記被加工物に検出光を偏射照明する測定照明用光源と、
前記測定照明用光源からの前記検出光を前記集光レンズに結像する結像レンズと、
前記偏射照明が行われた場合に前記被加工物で反射した前記検出光の反射光を、前記集光レンズを介して検出し、前記検出光の前記反射光に対応する検出信号を出力する光検出部と、
前記検出信号に基づき、前記被加工物の内部に形成された亀裂の亀裂を検出する亀裂検出部と、
前記結像レンズの下流側に配置された撮像素子を備え、前記亀裂の検出を行う前に、前記集光レンズ
及び前記結像レンズを介して、前記被加工物に形成されたレーザー加工領域を含むアライメント用画像を
、前記撮像素子により撮像する撮像光学系と、
前記アライメント用画像から前記レーザー加工領域を検出し、前記レーザー加工領域と前記集光レンズのアライメントを行う制御部と、
を備える亀裂検出装置。
【請求項2】
前記集光レンズと前記結像レンズとの間に配置されたハーフミラーであって、前記偏射照明が行われた場合に前記被加工物で反射した前記検出光の前記反射光を前記光検出部に導光し、前記アライメント用画像の撮像時に前記被加工物からの光を前記結像レンズ側に透過させるハーフミラーを備える請求項1記載の亀裂検出装置。
【請求項3】
前記撮像光学系は
、照明光を出射する光源
を備え、
前記集光レンズを介して前記照明光を前記被加工物に照射した場合に
、前記撮像素子により前記被加工物で反射した前記照明光の反射光を受光し、前記アライメント用画像を撮像する
、請求項1
又は2記載の亀裂検出装置。
【請求項4】
前記集光レンズよりも低倍率のアライメント用レンズをさらに備え、
前記撮像素子は、前記アライメント用レンズを介して前記照明光を前記被加工物に照射した場合に前記被加工物で反射した前記照明光の反射光を受光して、前記アライメント用画像よりも広視野の予備アライメント用画像を撮像し、
前記制御部は、前記予備アライメント用画像から前記レーザー加工領域を検出し、前記レーザー加工領域と前記集光レンズの予備的なアライメントを行う請求項
3記載の亀裂検出装置。
【請求項5】
集光レンズ及び結像レンズを介して、被加工物に形成されたレーザー加工領域を含むアライメント用画像を
、前記結像レンズの下流側に配置された撮像素子により撮像する
撮像ステップと、
前記アライメント用画像からレーザー加工領域を検出し、前記レーザー加工領域と集光レンズのアライメントを行うステップと、
測定用光源からの検出光を前記結像レンズにより前記集光レンズに結像し、前記集光レンズを介して前記被加工物に
前記検出光を偏射照明するステップと、
前記偏射照明が行われた場合に前記被加工物で反射した前記検出光の反射光を、前記集光レンズを介して
光検出部により検出し、前記検出光の前記反射光に対応する検出信号を出力する
検出ステップと、
前記検出信号に基づき、前記被加工物の内部に形成された亀裂を検出するステップと、
を備える亀裂検出方法。
【請求項6】
前記撮像ステップでは、前記集光レンズと前記結像レンズとの間に配置されたハーフミラーと、前記結像レンズとを順次透過した前記被加工物からの光を前記撮像素子により受光して、前記アライメント用画像を撮像し、
前記検出ステップでは、前記偏射照明が行われた場合に前記被加工物で反射した前記検出光の前記反射光を、前記ハーフミラーにより反射して前記光検出部に導光する、請求項5記載の亀裂検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は亀裂検出装置及び方法に係り、被加工物の内部に形成された亀裂を検出する亀裂検出装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シリコンウェーハやガラスウェーハ等の基板(以下、「被加工物」という。)の内部に集光点を合わせてレーザー光を切断予定ラインに沿って照射し、加工ラインに沿って被加工物の内部に切断の起点となるレーザー加工領域を形成するレーザー加工装置(レーザーダイシング装置ともいう。)が知られている。レーザー加工領域が形成された被加工物は、その後、エキスパンドやブレーキングといった割断プロセスによって切断予定ラインで割断されて個々のチップに分断される。
【0003】
ところで、レーザー加工装置により被加工物にレーザー加工領域を形成すると、そのレーザー加工領域から被加工物の厚さ方向に亀裂(クラック)が伸展する。その亀裂が被加工物の表面(レーザー光入射面)若しくは反対側の裏面まで到達していれば、割断プロセスにおいてチップへの分断を適正に行うことができる。その理由としては、被加工物の内部に形成された亀裂は、被加工物を分断する際の起点となるため、その亀裂の伸展度合いが被加工物の分断率を左右することによる。また、厚い被加工物の場合には、亀裂が被加工物の表面又は裏面に到達しないことがあるため、被加工物の表面又は裏面に亀裂が到達したか否かでは必ずしもレーザー加工領域が適正に形成されたか否かを適切に判断できない場合がある。
【0004】
したがって、レーザー加工装置によりレーザー加工領域を形成した後、割断プロセス前において、被加工物を分断する際の起点となるレーザー加工領域が適正に形成されたか否か、すなわち、被加工物の内部に形成された亀裂の亀裂深さを検出することによって、割断プロセスにおけるチップへの分断の良否を正確に予測することが可能となる。そして、被加工物の内部にレーザー加工領域が適正に形成されていない箇所があれば、その部分だけ、再度、レーザー加工装置により再加工することや、割断プロセスにおける割断方法を変えるなどの対応が可能となる。これによって、その後の割断プロセスにおけるチップの損失を無くすことができる。また、不良箇所の発生状況などを参考にしてレーザー加工装置における加工条件を修正することもでき、その後に加工する被加工物でのレーザー加工領域の不良箇所の発生を低減させることができる。不良箇所のレーザー加工領域を再加工する場合には、不良箇所の発生を低減させることによって、再加工に要する時間の損失も低減させることができる。
【0005】
一方、被加工物の内部に発生した亀裂の評価は、従来、試料を切断研磨するか、限られた条件下での観察が行われていた。そのため、レーザー加工装置を用いた加工プロセスへの適用は困難であった。
【0006】
これに対し、被加工物の内部に形成された亀裂を非破壊で検査する技術が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【0007】
特許文献1に開示された技術では、亀裂の一方から光を入射させ、亀裂を含む領域を透過した光を検出し、亀裂により入射光が散乱されることに起因する検出光量の低下を利用して亀裂の検査を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に開示された技術では、亀裂に光を入射させるための集光レンズを被加工物に対して水平方向に走査して、被加工物の面方向における亀裂の位置を探索する。次に、集光レンズを被加工物の厚さ方向に走査することにより、亀裂の亀裂深さを検出する。すなわち、被加工物の内部に形成された面方向における亀裂の位置を、集光レンズを水平方向に走査することにより探索するため、被加工物の面方向における亀裂の位置の特定に時間がかかるという問題があった。また、被加工物の内部の亀裂以外の構造を検出する可能性があった。
【0010】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、亀裂検出の効率を向上させ、亀裂検出の信頼性を高めることが可能な亀裂検出装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様に係る亀裂検出装置は、被加工物に対面する位置に配置された集光レンズと、集光レンズを介して被加工物に検出光を偏射照明する測定照明用光源と、偏射照明が行われた場合に被加工物で反射した検出光の反射光を、集光レンズを介して検出し、検出光の反射光に対応する検出信号を出力する光検出部と、検出信号に基づき、被加工物の内部に形成された亀裂の亀裂を検出する亀裂検出部と、亀裂の検出を行う前に、集光レンズを介して、被加工物に形成されたレーザー加工領域を含むアライメント用画像を撮像する撮像光学系と、アライメント用画像からレーザー加工領域を検出し、レーザー加工領域と集光レンズのアライメントを行う制御部とを備える。
【0012】
本発明の第2の態様に係る亀裂検出装置は、第1の態様において、撮像光学系は、照明光を出射する光源と、集光レンズを介して照明光を被加工物に照射した場合に被加工物で反射した照明光の反射光を受光し、アライメント用画像を撮像する撮像素子とを備える。
【0013】
本発明の第3の態様に係る亀裂検出装置は、第2の態様において、集光レンズよりも低倍率のアライメント用レンズをさらに備え、撮像素子は、アライメント用レンズを介して照明光を被加工物に照射した場合に被加工物で反射した照明光の反射光を受光して、アライメント用画像よりも広視野の予備アライメント用画像を撮像し、制御部は、予備アライメント用画像からレーザー加工領域を検出し、レーザー加工領域と集光レンズの予備的なアライメントを行うようにしたものである。
【0014】
本発明の第4の態様に係る亀裂検出方法は、被加工物に形成されたレーザー加工領域を含むアライメント用画像を撮像するステップと、アライメント用画像からレーザー加工領域を検出し、レーザー加工領域と集光レンズのアライメントを行うステップと、集光レンズを介して被加工物に検出光を偏射照明するステップと、偏射照明が行われた場合に被加工物で反射した検出光の反射光を、集光レンズを介して検出し、検出光の反射光に対応する検出信号を出力するステップと、検出信号に基づき、被加工物の内部に形成された亀裂を検出するステップとを備える。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、亀裂検出の前にアライメント用画像を用いて集光レンズと被加工物のアライメントを行うことにより、亀裂検出の効率を向上させ、かつ、亀裂検出の信頼性を高めることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る亀裂検出装置を示す図である。
【
図3】
図3は、本発明の第1の実施形態に係る亀裂検出方法を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、本発明の第2の実施形態に係る亀裂検出装置を示す図である。
【
図5】
図5は、本発明の第2の実施形態に係る亀裂検出方法を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、本発明の第3の実施形態に係る亀裂検出装置を示す図である。
【
図7】
図7は、本発明の第4の実施形態に係る亀裂検出装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面に従って本発明に係る亀裂検出装置及び方法の実施の形態について説明する。
【0018】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る亀裂検出装置を示す図である。なお、
図1では、被加工物Wが載置されるステージSTをXY平面と平行な平面とし、Z方向を被加工物Wの厚さ方向とする3次元直交座標系を用いる。
【0019】
本実施形態に係る亀裂検出装置1は、被加工物Wに対して検出光を照射(偏射照明)し、被加工物Wからの反射光を検出することで、被加工物Wの内部に形成された亀裂の亀裂深さを検出する。本実施形態に係る亀裂検出装置1は、亀裂の検出の前に、被加工物Wの撮像を行い、撮像画像からレーザー加工領域を検出し、測定対物レンズ14を含む測定部と被加工物Wの位置制御を行う。
【0020】
なお、亀裂検出装置1は、被加工物Wの内部にレーザー加工領域を形成するレーザーダイシング装置(不図示)と組み合わせて使用されるが、以下の説明では、亀裂検出装置1に係る構成要素について説明し、レーザーダイシング装置については説明を省略する。
【0021】
図1に示すように、本実施形態に係る亀裂検出装置1は、制御部10、駆動部12及び測定対物レンズ14を含んでいる。
【0022】
制御部10は、亀裂検出装置1の各部の動作を制御するCPU(Central Processing Unit)、制御プログラムを格納するROM(Read Only Memory)、及びCPUの作業領域として使用可能なSDRAM(Synchronous Dynamic Random Access Memory)を含んでいる。制御部10としては、例えば、パーソナルコンピュータ又はワークステーションを用いることができる。制御部10には、操作者による操作入力を受け付けるための操作部(例えば、キーボード、並びにマウス及びタッチパネル等のポインティングデバイス)、操作GUI(Graphical User Interface)及び画像(例えば、亀裂の検出結果等)を表示する表示部(例えば、液晶ディスプレイ)が接続されていてもよい。
【0023】
駆動部12は、Z方向並びにX及びY方向に測定対物レンズ14を含む測定部を移動させるための動力源(例えば、モーター等)を備えている。駆動部12により測定部を移動させることにより、測定対物レンズ14は、被加工物Wに対面する位置に配置され、被加工物Wに照射される検出光L1の集光点の位置を走査することができる。
【0024】
なお、本実施形態では、測定部を移動させるようにしたが、本発明はこれに限定されない。例えば、ステージST及び測定部の両方、若しくはステージSTを移動させることにより、検出光L1の集光点の位置を走査することができる。
【0025】
(撮像光学系)
次に、被加工物Wの撮像を行うための撮像光学系について説明する。なお、本実施形態では、撮像光学系、測定照明光学系及び検出光学系は光軸(主光軸)を共有している。以下の説明では、主光軸をAXと記載する。
【0026】
図1に示すように、本実施形態に係る亀裂検出装置1の撮像光学系は、光源16、照明レンズ18、ハーフミラー20及び22、結像レンズ24並びに撮像素子28を含んでいる。
【0027】
光源16は、被加工物Wを照明するための照明光を出射する。ここで、照明光としては、可視光又は赤外光を用いることができる。光源16としては、例えば、発光ダイオードを用いることができる。光源16は、測定対物レンズ14のレンズ瞳(射出瞳)と共役関係になる位置に配置されている。光源16は、制御部10と接続されており、制御部10により光源16の出射制御が行われる。
【0028】
光源16から出射された照明光は、光軸AX1に沿って出射され、照明レンズ18(例えば、凸レンズ、平凸レンズ)によってコリメート光に変換される。ハーフミラー20及び22によって反射され測定対物レンズ14に導光される照明光の光軸AX1は、測定対物レンズ14の光軸(主光軸AX)と一致する。
【0029】
次に、照明光は、ハーフミラー20及び22によって反射されて結像レンズ24に導光される。結像レンズ24は、その前側焦点位置が測定対物レンズ14のレンズ瞳に一致するように配置されている。光源16から出射された照明光は、結像レンズ24によって測定対物レンズ14のレンズ瞳に結像された後、測定対物レンズ14により被加工物Wに結像される。測定対物レンズ14及び結像レンズ24は、それぞれのレンズ光軸が光軸AXと同軸に配置されている。ここで、測定対物レンズ14は、本発明の集光レンズとして機能する。
【0030】
撮像素子28は、結像レンズ24の後側焦点位置に配置されている。被加工物Wからの反射光(照明光の反射光)は、測定対物レンズ14の主光軸AXに沿って進み、撮像素子28に結像する。撮像素子28は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)又はCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等のイメージセンサーを含んでいる。撮像素子28は、イメージセンサーの各受光素子が検出した光強度を示すアナログ又はデジタルの検出信号を生成し、制御部10に出力する。
【0031】
制御部10は、被加工物Wの画像(アライメント用画像)に対して画像認識処理を施して、レーザー加工領域R1を検出し、レーザー加工領域R1と測定対物レンズ14の位置合わせ(アライメント)を行う。
【0032】
図2は、被加工物の画像を示す図である。
図2に示すように、被加工物Wの画像において、レーザー加工領域R1は、黒い略直線状又は帯状の領域として検出され、レーザー加工領域R1以外の領域は、レーザー加工領域R1よりも輝度が高い(白い)。制御部10は、被加工物Wの画像に対して画像認識処理を施して、黒い略直線状又は帯状の領域をレーザー加工領域R1として検出する。
【0033】
次に、制御部10は、駆動部12を制御して、主光軸AX上にレーザー加工領域R1が位置するように測定対物レンズ14と被加工物Wの相対位置を調整し、亀裂検出時の測定対物レンズ14の水平方向(Y方向)の走査範囲R2を設定する。ここで、走査範囲R2は、レーザー加工領域R1を包含する領域である。レーザー加工領域R1に沿って伸びる線L1を含む平面がZX平面と平行とした場合、制御部10は、線L1に対して、±Y方向に所定距離の領域を走査範囲R2として設定することが可能である。
【0034】
これにより、亀裂検出を行う範囲をレーザー加工領域R1の近傍に限定することができるので、亀裂検出の効率化と信頼性の向上を実現することができる。
【0035】
なお、本実施形態では、被加工物Wに照明光を照射して被加工物Wを観察する同軸落斜照明系(明視野照明系)を用いたが、本発明はこれに限定されない。明視野照明系に代えて暗視野照明系を用いて被加工物Wの観察を行うことも可能である。
【0036】
暗視野照明系を用いる場合、例えば、被加工物Wの周囲に配置されたリング照明から照射される光、又は円錐レンズを用いてリング状に変換された光(暗視野照明光)を被加工物Wに照射する。そして、被加工物Wからの散乱光を観察することにより、レーザー加工領域R1の検出を行う。
【0037】
ここで、レーザー加工領域は、明視野照明系を用いる場合には被加工物Wの画像において黒い画像領域として検出されるが、暗視野照明系を用いる場合には白い画像領域として検出される。したがって、暗視野照明系を用いる場合には、画像処理により白黒を反転させることにより、明視野照明系を用いる場合と同等の画像を得ることが可能になる。
【0038】
(測定照明光学系)
次に、亀裂検出のための検出光L1の照射を行うための測定照明光学系について説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る亀裂検出装置1の測定照明光学系は、レーザー光源30、照明レンズ32、ハーフミラー22、結像レンズ24及び測定対物レンズ14を含んでいる。ここで、ハーフミラー22及び結像レンズ24は、測定照明光学系の構成要素であり、かつ、撮像光学系の構成要素でもある。測定照明光学系は、照明レンズ32と結像レンズ24とからなる4F光学系を含んでいる。
【0039】
レーザー光源(測定照明用光源)30は、被加工物Wの界面の検出及び被加工物Wの内部に形成された亀裂の検出に用いられる検出光L1を、光軸AX2に平行かつ光軸AX2から偏心した光源光軸に沿って出射する。レーザー光源30としては、例えば、LD(Laser Diode)光源を用いることができる。レーザー光源30において検出光L1を射出するレーザー開口は、測定対物レンズ14のレンズ瞳と共役関係になる位置に配置されている。レーザー光源30は、制御部10と接続されており、制御部10によりレーザー光源30の出射制御が行われる。なお、偏射照明を行う際には、レーザー光源30のレーザー開口を光軸AX2に対してずらして配置することにより、検出光L1を光軸AX2に対して偏心させるようにしてもよいし、光軸AX2に対して偏心した位置にピンホールを形成した遮光部材をレーザー開口に配置して検出光L1を光軸AX2に対して偏心させるようにしてもよい。光軸AX2は、ハーフミラー22により折り曲げられることにより、測定対物レンズ14の光軸(主光軸AX)と一致する。
【0040】
照明レンズ(例えば、凸レンズ)32は、レーザー光源30から出射された検出光L1を集光する。照明レンズ32によって集光された検出光L1は、ハーフミラー20を透過し、ハーフミラー22によって反射されて結像レンズ24に導光され、平行光束として照明レンズ32と結像レンズ24とからなる4F光学系から射出される。
【0041】
結像レンズ24によって結像された検出光L1は、測定対物レンズ14によって被加工物Wに所定の傾きで入射(偏射照明)されて集光(合焦)される。
【0042】
駆動部12は、測定対物レンズ14及びステージSTの相対位置を調整して、被加工物Wに偏射照明される検出光L1の集光点の位置を移動させる。
【0043】
測定対物レンズ14によって被加工物Wに集光されて反射された反射光(L2、L3)は、検出光学系に導光され、被加工物Wの亀裂検出に用いられる。
【0044】
(検出光学系)
次に、亀裂検出を行うための検出光学系について説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る亀裂検出装置1の検出光学系は、ハーフミラー26、リレーレンズ34、36及び検出器38を含んでいる。検出光学系は、リレーレンズ34と36とからなる4F光学系を含んでいる。
【0045】
被加工物Wからの反射光(L2、L3、検出光の反射光)は、ハーフミラー26によって反射された後、光軸AX3に沿ってリレーレンズ34に入射し、リレーレンズ34及び36を経て、検出器38(光検出部)の受光面に結像される。
【0046】
検出器38の受光面は、測定対物レンズ14の集光点の位置と光学的に共役関係になるように配置されている。
【0047】
検出器38としては、被加工物Wから受光した反射光(L2、L3)を検出信号(電気信号)に変換して制御部10に出力するフォトディテクタ(例えば、フォトダイオード)を用いることができる。検出器38は、反射光(L2、L3)の集光点の位置を分離して検出可能なアレイ状のフォトダイオードであってもよいし、その受光面が反射光(L2、L3)をそれぞれ受光するための2つの領域に分割されたものであってもよい。なお、検出器38として赤外線カメラを用いて、画像処理を行うことにより反射光(L2、L3)の集光点の位置を検出するようにしてもよい。
【0048】
(亀裂深さの検出の第1の例)
制御部10(亀裂検出部)は、被加工物Wに検出光L1を照射(偏射照明)しながら、測定対物レンズ14とステージSTとをZ方向に相対的に移動させる。そして、制御部10は、反射光(L2、L3)の検出信号の出力に基づいて被加工物Wの亀裂検出を行う。なお、亀裂検出方法としては、特開2017-133997号公報(特許文献1)に開示された方法を用いることができる。以下、簡単に説明する。
【0049】
検出光L1の集光点に亀裂が存在しない場合には、検出光L1は被加工物Wの裏面で反射されて、その反射光L2は測定対物レンズ14のレンズ瞳の検出光L1と反対側の領域に到達する。一方、検出光L1の集光点に亀裂が存在する場合には、検出光L1は亀裂で全反射されて、その反射光L3は測定対物レンズ14のレンズ瞳の検出光L1と同じ側の領域に到達する。また、検出光L1の集光点と亀裂下端位置又は亀裂上端位置とが一致する場合には、検出光L1は、亀裂で全反射されずに被加工物Wの裏面で反射される反射光L2と、亀裂で全反射される反射光L3とに分割される。
【0050】
検出器38から出力される反射光L2及びL3の検出信号の出力をそれぞれD1及びD2としたとき、反射光L2及びL3の検出信号の評価値Sは、次式で表すことができる。
【0051】
S=(D1-D2)/(D1+D2) ・・・(1)
式(1)において、S=0の条件を満たすとき、すなわち、検出器38によって検出される反射光L2及びL3の光量が一致するとき、測定対物レンズ14の集光点と亀裂下端位置(又は亀裂上端位置)とが一致した状態を示す。
【0052】
制御部10は、駆動部12を制御して、測定対物レンズ14の集光点を、被加工物Wの厚さ方向(Z方向)に順次変化させながら、反射光L2及びL3の検出信号を順次取得し、この検出信号に基づいて式(1)で示される評価値Sを算出する。そして、制御部10は、この評価値Sを評価することによって亀裂の亀裂深さ(亀裂下端位置又は亀裂上端位置)を検出することができる。
【0053】
(亀裂深さの検出の第2の例)
また、別の例として、反射光L2のみを用いて亀裂の検出を行うことも可能である。本例では、検出光L1の集光点に亀裂が存在しない場合の反射光L2の光量と、検出光L1の集光点に亀裂が存在する場合の反射光L2の光量とに基づいて亀裂の検出を行う。
【0054】
ここで、測定対物レンズ14の集光点を、被加工物Wの下面側から+Z方向に移動させる場合について説明する。まず、集光点が亀裂下端位置に近づくにつれて、検出光L1の一部が亀裂によって反射され、反射光L2の光量が減少していき、反射光L2の光量がゼロになる。そして、集光点が亀裂上端位置に到達し、亀裂上端位置から遠ざかるにつれて、反射光L2の光量が増加し、検出光L1の集光点に亀裂が存在しない場合の反射光L2の光量に戻る。本例では、反射光L2の検出信号の出力D1の減少分及び増加分を、それぞれ、反射光L3の検出信号の出力D2の増加分及び減少分として評価して、亀裂の検出を行う。ここで、検出光L1の集光点に亀裂が存在しない場合の反射光L2の検出信号の出力をD10とすると、本例における反射光L2の検出信号の評価値S2は、式(2)で表すことができる。
【0055】
S2=D1/D10 ・・・(2)
式(2)において、S2=0.5の条件を満たすとき、すなわち、検出器38によって検出される反射光L2の光量が、検出光L1の集光点に亀裂が存在しない場合の反射光L2の光量の約2分の1のとき、測定対物レンズ14の集光点と亀裂下端位置(又は亀裂上端位置)とが一致する。
【0056】
制御部12は、駆動部12を制御して、測定対物レンズ14の集光点を、被加工物Wの厚さ方向(Z方向)に順次変化させながら、反射光L2の検出信号を順次取得し、この検出信号に基づいて式(2)で示される評価値S2が約0.5になる位置を2か所検出する。これにより、亀裂の亀裂深さ(亀裂下端位置又は亀裂上端位置)を検出することができる。
【0057】
なお、本例では、反射光L2のみを用いて亀裂の検出を行ったが、例えば、反射光L3のみを用いて、上記と同様に亀裂の検出を行ってもよい。
【0058】
(亀裂検出方法)
図3は、本発明の第1の実施形態に係る亀裂検出方法を示すフローチャートである。
【0059】
まず、撮像光学系により被加工物Wを撮像する(ステップS10)。制御部10は、ステップS10において撮像した画像からレーザー加工領域R1を検出し(ステップS12)、測定対物レンズ14の走査範囲R2を設定し、測定対物レンズ14とステージSTとを相対的に移動させる(ステップS14)。
【0060】
次に、制御部10は、駆動部12を制御して、測定対物レンズ14の集光点を、被加工物Wの厚さ方向(Z方向)に順次変化させながら、反射光L2及びL3の検出信号を順次取得し、亀裂深さ(亀裂下端位置及び亀裂上端位置)を検出する(ステップS16)。そして、制御部10は、亀裂下端位置及び亀裂上端位置に基づいて、亀裂の長さを算出する(ステップS18)。上記のようにして取得した亀裂深さ及び亀裂の長さは、被加工物Wの加工条件のフィードバック等に用いられる。
【0061】
本実施形態によれば、撮像光学系によりレーザー加工領域R1を検出し、測定対物レンズ14の走査範囲を特定の範囲に限定するようにしたので、亀裂検出を効率的に行うことが可能になる。さらに、レーザー加工領域R1をあらかじめ検出した上で、測定対物レンズ14の走査範囲を設定するので、レーザー加工領域R1以外の被加工物Wの内部の構造物等が亀裂として検出されることを防止することができる。
【0062】
なお、本実施形態では、
図1に示すように、検出光学系のハーフミラー26は、撮像光学系及び測定照明光学系の構成要素の1つであるハーフミラー22よりも測定対物レンズ14に近い側(下流側)に配置されている。すなわち、検出光学系が測定対物レンズ14により近い位置に配置されるので、検出光学系(4F光学系)を構成するリレーレンズ34及び36の焦点距離を短くすることができ、検出光学系の全長を短くすることができる。これにより、亀裂検出装置1のサイズをコンパクトにすることが可能になる。
【0063】
また、本実施形態では、測定照明光学系と検出光学系とを別々に設けたが、本発明はこれに限定されない。例えば、測定照明光学系及び検出光学系の構成要素の一部を共用する配置にすることも可能である。
【0064】
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。以下の説明において、第1の実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0065】
図4は、本発明の第2の実施形態に係る亀裂検出装置を示す図である。
図4に示すように、本実施形態に係る亀裂検出装置1Aは、アライメント光学系を備えている。
【0066】
本実施形態では、撮像光学系を用いたレーザー加工領域R1の検出の前に、撮像光学系よりも低倍率で広視野のアライメント光学系を用いて被加工物Wの撮像を行う。そして、制御部10は、広視野の画像からレーザー加工領域R1の位置を検出する。制御部10は、広視野の画像から検出したレーザー加工領域R1の位置に基づいて、測定対物レンズ14とステージSTの予備的なアライメントを行って、駆動部12により、測定対物レンズ14をレーザー加工領域R1に近づける制御を行う。
【0067】
次に、制御部10は、撮像光学系を用いて、広視野の画像から検出したレーザー加工領域R1を含む周辺領域の撮像を行い、レーザー加工領域R1の検出を行う。
【0068】
(アライメント光学系)
図4に示すように、アライメント光学系は、光源16、照明レンズ18、ハーフミラー20及び22、ミラー(全反射ミラー)50、結像レンズ52並びに撮像素子28を含んでいる。ここで、光源16、照明レンズ18、ハーフミラー20及び22並びに撮像素子28は、アライメント光学系の構成要素であり、かつ、撮像光学系の構成要素でもある。
【0069】
光源16は、光軸AX1に沿って照明光を出射する。光源16から出射された照明光は、照明レンズ18(例えば、凸レンズ、平凸レンズ)によってコリメート光に変換された後、ハーフミラー20及びミラー50によって反射されて結像レンズ52に導光される。
【0070】
結像レンズ52(アライメント用レンズ)は、測定対物レンズ14よりも低倍率で広視野のレンズである。光源16から出射された照明光は、結像レンズ52によって被加工物Wに照射される。
【0071】
撮像素子28は、結像レンズ52の後側結像位置に配置されており、被加工物Wからの反射光を受光する。被加工物Wからの反射光は、ミラー50及びハーフミラー22により順次反射されて撮像素子28に結像される。これにより、アライメント用画像よりも広視野の被加工物Wの画像(予備アライメント用画像)が撮像される。
【0072】
制御部10は、広視野の被加工物Wの画像からレーザー加工領域R1を検出し、駆動部12により、測定対物レンズ14とステージSTの相対位置を移動させて、予備的なアライメントを行う。他の動作は第1の実施形態と同様である。
【0073】
(亀裂検出方法)
図5は、本発明の第2の実施形態に係る亀裂検出方法を示すフローチャートである。
【0074】
図5に示すように、本実施形態では、撮像光学系を用いて被加工物Wの撮像を行う(ステップS34)前に、アライメント光学系を用いて被加工物Wの低倍率で広視野の画像が撮像される(ステップS30)。そして、制御部10は、この画像から検出されたレーザー加工領域R1の位置に基づいて、駆動部12により予備的なアライメントを行う(ステップS32)。なお、ステップS34からS42については、
図3のステップS10からS18とそれぞれ同様であるため説明を省略する。
【0075】
本実施形態では、撮像光学系よりも低倍率で広視野のアライメント光学系により撮像した広視野の画像を撮像し、この広視野の画像を用いて予備的なアライメントを行う。そして予備的なアライメントを行った後で、撮像光学系を用いた高倍率の画像を用いて測定対物レンズ14と被加工物Wとのアライメントを行う。このとき、撮像光学系を用いた撮像範囲をレーザー加工領域R1の周辺領域に限定することができるので、レーザー加工領域R1の位置の検出精度を高めることができる。
【0076】
なお、本実施形態の光源16は、アライメント光学系と撮像光学系で共通である。このため、光源16は、結像レンズ52及び結像レンズ24の開口を満足する位置及び大きさのものを用いることが好ましい。この場合、光源16と結像レンズ52のレンズ瞳の位置とが共役関係にはない場合でも、視野ムラ等の問題が生じない範囲が比較的広くなる。このため、視野ムラ等の問題が生じない範囲で、結像レンズ52及び結像レンズ24の倍率の照明条件を満足する構成とすることができる。
【0077】
また、本実施形態では、アライメント光学系と撮像光学系における照明のための光源を共通にしたが、別々に設けてもよい。この場合、アライメント光学系及び撮像光学系の各光源としては、それぞれ結像レンズ52及び結像レンズ24の開口に対応する位置及び大きさのものを用いることができる。
【0078】
[第3の実施形態]
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。以下の説明において、第1及び第2の実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0079】
図6は、本発明の第3の実施形態に係る亀裂検出装置を示す図である。
図6に示すように、本実施形態に係る亀裂検出装置1Bは、撮像光学系の光源16B及び照明レンズ18Bの位置が第1の実施形態と異なっている。
【0080】
図6に示すように、測定対物レンズ14とハーフミラー26との間にハーフミラー60が配置されている。光源16からの照明光は、照明レンズ18Bを通ってハーフミラー60により折り曲げられて、被加工物Wに照射される。
【0081】
本実施形態によれば、光源16Bと測定対物レンズ14及び被加工物Wとの間の距離を短くすることができる。このため、光源16Bとしては、より小型のものを用いても照度を確保することが可能になる。
【0082】
[第4の実施形態]
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。以下の説明において、第1から第3の実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0083】
図7は、本発明の第4の実施形態に係る亀裂検出装置を示す図である。
図7に示すように、本実施形態に係る亀裂検出装置1Cは、撮像光学系と検出光学系が光軸AXを共有しつつ互いに分離されている点で、第3の実施形態と異なっている。
【0084】
具体的には、撮像光学系の照明レンズ18Bとハーフミラー60との間にハーフミラー70が追加されており、被加工物Wから撮像光学系の撮像素子28Cに至る光路が測定照明光学系及び検出光学系の光路と分離されている。そして、本実施形態に係る測定照明光学系は、ハーフミラー22に代えて、ミラー(全反射ミラー)22Cを備えている。
【0085】
光源16Bから被加工物Wに照射された照明光は、被加工物Wで反射された後、ハーフミラー60及び70を通って結像レンズ72に導光される。
【0086】
撮像素子28Cは、結像レンズ72の後側焦点位置に配置されており、被加工物Wからの反射光は、結像レンズ72により撮像素子28Cに結像される。
【0087】
本実施形態では、撮像光学系の結像レンズ72と測定照明光学系の結像レンズ24とが分離されるので、光源16B及びレーザー光源30に応じて結像レンズ72及び結像レンズ24を個別に調整することができる。これにより、亀裂検出装置1Cの光学系の設計の自由度を高めることができる。
【符号の説明】
【0088】
1、1A、1B、1C…亀裂検出装置、10…制御部、12…駆動部、14…測定対物レンズ、16、16B…光源、18、18B…照明レンズ、20、22…ハーフミラー、22C…ミラー、24…結像レンズ、26…ハーフミラー、28…撮像素子、30…レーザー光源、32…照明レンズ、34、36…リレーレンズ、38…検出器、50…ミラー、52…結像レンズ、60…ハーフミラー、70…ハーフミラー、72…結像レンズ、ST…ステージ、W…被加工物