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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-10
(45)【発行日】2024-01-18
(54)【発明の名称】地図データの生成方法
(51)【国際特許分類】
   G01C 21/32 20060101AFI20240111BHJP
   G08G 1/042 20060101ALI20240111BHJP
   G08G 1/00 20060101ALI20240111BHJP
   G09B 29/10 20060101ALI20240111BHJP
   G09B 29/00 20060101ALI20240111BHJP
【FI】
G01C21/32
G08G1/042 A
G08G1/00 A
G09B29/10 A
G09B29/00 Z
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021558477
(86)(22)【出願日】2020-11-20
(86)【国際出願番号】 JP2020043478
(87)【国際公開番号】W WO2021100866
(87)【国際公開日】2021-05-27
【審査請求日】2022-08-05
(31)【優先権主張番号】P 2019211865
(32)【優先日】2019-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000116655
【氏名又は名称】愛知製鋼株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129654
【弁理士】
【氏名又は名称】大池 達也
(72)【発明者】
【氏名】山本 道治
(72)【発明者】
【氏名】青山 均
【審査官】北村 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-015735(JP,A)
【文献】特開2001-028095(JP,A)
【文献】特開2004-279154(JP,A)
【文献】特開2004-151752(JP,A)
【文献】国際公開第2019/142737(WO,A1)
【文献】特開平09-292236(JP,A)
【文献】特開2019-185294(JP,A)
【文献】特開2019-049500(JP,A)
【文献】特開2019-124555(JP,A)
【文献】特開2019-067353(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 21/32
G08G 1/042
G08G 1/00
G09B 29/10
G09B 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走路の表面をなす路面側から作用する磁気を計測可能な車両が自車位置を推定するために利用する地図データを、複数の磁気センサが車幅方向に沿って配列されたセンサアレイを備える計測車両を用いて生成する方法であって、
該計測車両の位置を取得する測位処理と、
前記センサアレイを構成する前記複数の磁気センサが同時に磁気の大きさを計測することで、路面上で1次元的に分布する磁気データを計測する磁気計測処理と、
前記地図データにおける前記計測車両の位置を基準とした1次元的な領域に位置する複数の点に、前記1次元的に分布する磁気データを対応付ける対応付け処理と、を含み、
前記計測車両の移動中に前記対応付け処理を繰り返し実行し、前記地図データに対して前記1次元的に分布する磁気データを順次、対応付けることにより、前記計測車両が走行した軌跡に沿って前記1次元的に分布する磁気データを積み上げ、これにより、前記計測車両が走行した軌跡に沿う2次元的な帯状領域において分布する磁気データが対応付けられた地図データを生成し、
前記測位処理では、前記計測車両の位置に加えて、前記計測車両の方位を取得し、
前記対応付け処理では、前記計測車両の位置を中心として前記1次元的に分布する磁気データを前記計測車両の方位に応じて前記地図データが表す地図上で回転させることで当該地図上における前記1次元的に分布する磁気データの姿勢を特定したうえで、当該1次元的に分布する磁気データを地図データに対応付ける地図データの生成方法。
【請求項2】
走路の表面をなす路面側から作用する磁気を計測可能な車両が自車位置を推定するために利用する地図データを、複数の磁気センサが配列され、複数箇所の磁気データを同時に取得可能なセンサアレイを備える計測車両を用いて生成する方法であって、
前記地図データは、少なくとも道路構造を表す構造地図M1と、2次元エリアの磁気データの分布である路面磁気分布M2と、が絶対位置を表す位置データを介在して対応付けられていることにより、前記構造地図M1と前記路面磁気分布M2とが相互に対面するレイヤーデータ構造をなす地図データであり、
前記計測車両の位置を取得する測位処理と、
前記センサアレイを構成する前記複数の磁気センサが同時に路面上の磁気データを計測する磁気計測処理と、
前記測位処理で取得された前記計測車両の位置に対応する前記路面磁気分布M2上の複数の点に、前記磁気計測処理により前記複数の磁気センサにより同時に計測された路面上の複数箇所の磁気データを対応付ける対応付け処理と、を実行し、
前記測位処理では、前記計測車両の位置に加えて、前記計測車両の方位を取得し、
前記対応付け処理では、前記センサアレイが取得した前記複数箇所の磁気データを前記路面磁気分布M2に対応付けるに当たって、前記路面磁気分布M2上にて、前記計測車両の位置を中心として前記複数箇所の磁気データの分布を前記計測車両の方位に応じて回転させることにより、当該路面磁気分布M2における当該複数箇所の磁気データの分布の姿勢を特定し、当該複数箇所の磁気データの分布を前記路面磁気分布M2に対応付ける地図データの生成方法。
【請求項3】
請求項において、前記対応付け処理を施す前の路面磁気分布M2では、各点に前記磁気データが対応付けられてない一方、絶対位置を表す位置データを介在して前記構造地図M1に対応付けられており、
前記磁気計測処理の実行に応じて前記対応付け処理を実行し、前記路面磁気分布M2の対応する点に、順次、前記磁気データをひも付ける地図データの生成方法。
【請求項4】
請求項2または3において、前記路面磁気分布M2は、前記車両が計測した1次元あるいは2次元の磁気データの分布と照合可能であって、当該磁気データの分布との一致度が高い対応領域を特定可能なように構成されている地図データの生成方法。
【請求項5】
請求項において、磁性材料が混入する舗装材料によって舗装された路面を磁化することで磁気的な特異点を形成する処理を含み、
当該特異点を形成する処理を実行することで、前記車両が計測した1次元あるいは2次元の磁気データの分布と照合する際、磁気的な特異点の一致を前提とした照合が可能な地図データを生成する、地図データの生成方法。
【請求項6】
請求項において、前記路面磁気分布M2は、前記車両が計測した1次元あるいは2次元の磁気データの分布と照合可能であって、当該磁気データの分布との一致度が高い対応領域を特定可能に構成されていると共に、
前記磁気的な特異点の一致を前提として、前記磁気データの分布と照合可能なように構成されている地図データの生成方法。
【請求項7】
請求項2~6のいずれか1項において、前記路面磁気分布M2は、路面から高さ方向に離れた各点の磁気データの分布を少なくとも含む地図データの生成方法。
【請求項8】
請求項において、前記地図データは、磁気データの分布として、路面上の高さが異なる2種類以上の路面磁気分布M2を含む地図データの生成方法。
【請求項9】
請求項2~8のいずれか1項において、地図データ上の各位置には、高さ方向における磁気的な強度の減衰度合いを表す式が対応付けられている地図データの生成方法。
【請求項10】
請求項2~9のいずれか1項において、前記路面磁気分布M2をなす磁気データは、磁気の強度及び作用方向の情報を含む磁気ベクトルのデータである地図データの生成方法。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項において、前記磁気データは、磁気勾配である地図データの生成方法。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項において、車両の走路には、磁気発生源となる磁気マーカが絶対位置を特定可能な状態で敷設されており、
前記測位処理では、前記磁気マーカに対する前記計測車両の相対位置を特定することで該計測車両の位置を測位する地図データの生成方法。
【請求項13】
請求項12において、走路には、絶対方位を特定可能な所定の方向に沿って2つの磁気マーカが隣り合わせで配置され、
前記測位処理では、前記2つの磁気マーカが隣り合う前記所定の方向に対する前記計測車両の方位を取得する地図データの生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の運転支援制御に利用可能な地図及びその生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両の運転負担を低減するための運転支援技術が各種提案され、実現されつつある。運転支援技術としては、例えば、自動ブレーキ機能におけるブレーキ制御や車線維持機能における操舵制御など、車両制御の一部を車両側が担う運転支援技術がある(例えば下記の特許文献1参照。)。さらに、操舵制御やブレーキ制御を含む車両制御のほぼ全てを車両側が実行し、ドライバー側の操作負担をゼロに近づけて自動運転を実現する高度な運転支援技術などの提案もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-185294号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
高度な運転支援技術の実現には、車両制御に利用される地図の中で自車両の位置が精度高く把握できていることが必要である。地図中で自車両の位置を精度高く把握できていない場合、周囲の道路構造を車両側で精度高く把握できず、車両の移動を伴う自律的な車両制御が困難になる。
【0005】
本発明は、前記従来の問題点に鑑みてなされたものであり、自車両の位置を推定するために利用可能な地図データ及びその生成方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、走路の表面をなす路面側から作用する磁気を計測可能な車両が自車位置を推定するために利用する地図を、磁気センサを備える計測車両を用いて生成する方法であって、
該計測車両の位置を取得する測位処理と、
前記磁気センサを用いて路面上の磁気データを計測する磁気計測処理と、
前記測位処理で取得された前記計測車両の位置に対応する地図上の点に、前記磁気計測処理により計測された磁気データを対応付ける対応付け処理と、を実行する地図の生成方法にある。
【0007】
本発明の一態様は、車両の運転支援あるいは車両の自動運転のための制御に利用可能な地図であって、
走路の表面をなす路面上の各点の磁気データの分布である路面磁気分布が対応付けられている地図にある。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る地図は、路面上の各点に磁気データが対応付けられた地図である。例えば磁気センサを備える車両であれば、地図に対応付けられた磁気データの分布と照合可能な磁気データの分布を取得できる。地図に対応付けられた磁気データの分布と、車両側で取得された磁気データの分布と、を照合すれば、地図に対応付けられた磁気データの分布の中で、車両側で取得された磁気データの分布に対応する領域を特定できる。そして、地図の中でこの対応領域を特定できれば、地図中で車両の位置を推定できる。
【0009】
このように本発明に係る地図は、自車両の位置を推定するために利用可能である。本発明の方法によれば、自車両の位置を推定するために利用可能なこの地図を生成できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例1における、地図の説明図。
図2】実施例1における、計測車両の側面図。
図3】実施例1における、計測車両の構成を示すブロック図。
図4】実施例1における、路面磁気分布中の1次元磁気分布を示す説明図。
図5】実施例1における、計測車両が路面磁気分布を生成する様子の説明図。
図6】実施例1における、地図を利用する車両の説明図。
図7】実施例1における、地図を利用する車両の構成を示すブロック図。
図8】実施例1における、車両が生成する2次元磁気分布の説明図。
図9】実施例1における、路面磁気分布と2次元磁気分布とを照合する様子の説明図。
図10】実施例2における、磁気マーカが配置された道路の上面図。
図11】実施例2における、磁気マーカを通過する際の進行方向の磁気計測値の変化を例示する説明図。
図12】実施例2における、車幅方向に配列された磁気センサCnによる車幅方向の磁気計測値の分布曲線を例示する説明図。
図13】実施例2における、車両が生成する2次元磁気分布の説明図。
図14】実施例2における、路面磁気分布と2次元磁気分布とを照合する様子の説明図。
図15】実施例3における、磁気マーカの斜視図。
図16】実施例3における、計測車両の方位を推定する様子の説明図。
図17】実施例4における、地図の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明において、地図上の点に対応付ける磁気データとしては、路面上の各点の磁気の大きさのほか、磁気勾配が好適である。磁気勾配は、例えば、路面上の2か所の磁気の大きさの差分により求めることができる。また例えば、磁気センサが配列されたセンサアレイを利用して路面上の磁気を計測する場合であれば、例えば、隣り合う磁気センサによる磁気計測値の差分により磁気勾配を求めることができる。また例えば、一の磁気センサによる異なる時点の磁気計測値の差分により時間的な磁気勾配を求めることも良い。さらに例えば、時間的な磁気勾配をなすこのような差分を2つの磁気センサについてそれぞれ求め、当該2つの磁気センサ間でさらに差分をとることで磁気勾配を求めることも考えられる。
【0012】
磁気勾配では、磁気センサに対して一様、あるいは一様に近く作用する磁気成分が抑制されている。それ故、磁気勾配では、比較的遠くに存在する磁気発生源から作用する磁気成分が抑制され、比較的近くに存在する路面等の磁気発生源から作用する磁気成分が相対的に強調されている。したがって、地図上の点に対応付ける磁気データとして磁気勾配を採用すれば、周囲の車両や、ガードレールや、看板などの磁気発生源による影響や、地磁気による影響を抑制でき、路面上の磁気が精度高く反映された地図となる。
【0013】
本発明の実施の形態につき、以下の実施例を用いて具体的に説明する。
(実施例1)
本例は、道路(走路の一例)の路面上の各点の磁気分布である路面磁気分布M2が対応付けられた地図1及びその生成方法に関する例である。この内容について、図1図9を参照して説明する。
【0014】
本例の地図1図1)は、道路構造などを表す構造地図M1に対して路面磁気分布M2が対応付けられた地図である。構造地図M1と路面磁気分布M2とは、絶対位置を表す位置データを介在して対応付けられている。路面磁気分布M2における各位置は、構造地図M1上のいずれかの位置に一意に対応している。したがって、車両が計測した路面の磁気分布と同じ分布パターンの領域を、路面磁気分布M2の中で特定できれば、地図1における自車位置(車両の位置)を推定できる。
【0015】
図1は、例えば図2及び図3に例示する計測車両11を利用して生成できる。計測車両11は、磁気データを対応付ける前の白紙状態の路面磁気分布M2を元にして、路面磁気分布M2中の各点に磁気データを対応付けることで、地図上の各点に磁気データを対応付ける(対応付け処理)。なお、白紙状態であっても路面磁気分布M2の各点には、絶対位置の位置データがひも付けられ、構造地図M1と対応付けられている。
【0016】
計測車両11は、GPSユニット15と、磁気を検出する計測ユニット2と、制御ユニット13と、地図データベース(地図DB)17と、を備えている。GPSユニット15は、GPS(Global Positioning System)衛星を利用して絶対位置を測位する測位処理を実行するユニットである。このGPSユニット15は、RTK(RealTime Kinematic Global Positioning System)と呼ばれる相対測位方式に対応している。GPSユニット15は、基準局を利用する相対測位によって数cmの精度で測位が可能である。なお、GPSユニット15は、センサアレイ21の中央の位置(後述する磁気センサC8の位置)を計測位置POSとして測位するように構成されている。GPSユニット15は、計測位置POSを表す位置情報を制御ユニット13に入力する。
【0017】
計測ユニット2は、図3のごとく、磁気センサCnを含むセンサアレイ21と、IMU(Inertial Measurement Unit)22と、が一体化された細長い棒状のユニットである。計測ユニット2は、路面100Sと近接する状態で車幅方向に沿って取り付けられる。計測ユニット2は、路面100Sとセンサアレイ21との隙間が2~5cmとなるように、計測車両11の底面から吊り下げられている。センサアレイ21によれば、路面上の磁気データとして、路面近くの各点の磁気データを取得できる。なお、路面100Sとの隙間を一定に保持できるように、計測ユニット2は、高さ調節機構2Hを介して計測車両11に取り付けられている。
【0018】
センサアレイ21は、長手方向に沿って0.1m間隔で配列された15個の磁気センサCn(nは1~15の整数)と、各種の演算処理を実行する検出処理回路212と、を備えている。検出処理回路212は、0.1m間隔で配置された15個の磁気センサCnが同時に計測した磁気計測値(磁気の大きさ)を取得できるように各磁気センサCnを制御する。複数の磁気センサCnが配列されたセンサアレイ21によれば、路面上の複数箇所の磁気計測値を、磁気データとして同時に取得可能である。ここで、同時とは、物理的に厳密な同時を意味するものではない。同時とは、例えば繰り返し実行される演算処理ループ中の同一ループ中である等、演算処理において同時とみなすことができる程度の同時性を意味している。なお、本例では、路面上の各点の磁気の大きさを、路面上の各点に対応付ける磁気データとして採用している。
【0019】
磁気センサCnは、アモルファスワイヤなどの感磁体のインピーダンスが外部磁界に応じて敏感に変化するという公知のMI効果(Magneto Impedance Effect)を利用して磁気を検出するセンサである。本例の磁気センサCnは、磁束密度の測定レンジが±0.6mTであって、測定レンジ内の磁束分解能が0.02μTという高感度の検出性能を有している。
【0020】
磁気センサCnでは、直交する2軸方向に沿って感磁体が配置され、これら直交する2軸方向に作用する磁気の検出が可能となっている。本例では、車幅方向に沿って計測車両11に取り付けられたセンサアレイ21が進行方向及び車幅方向の磁気成分を検出できるよう、磁気センサCnがセンサアレイ21に組み込まれている。
【0021】
なお、本例の計測車両11では、15個の磁気センサCnのうちの真ん中の磁気センサC8の位置が、上記の計測位置POSに対応している。
【0022】
センサアレイ21の検出処理回路212は、磁気計測処理等を実行する演算回路である。この検出処理回路212は、各種の演算を実行するCPU(central processing unit)のほか、ROM(read only memory)やRAM(random access memory)などのメモリ素子等を利用して構成されている。
【0023】
検出処理回路212は、各磁気センサCnが出力するセンサ信号(磁気計測値)を、例えば3kHzの頻度で取得する。例えば磁気センサCnによる磁気計測を3kHzの頻度で実施すれば、計測車両11が走行中に地図1を生成可能である。検出処理回路212は、各磁気センサCnについて、進行方向の磁気成分と、車幅方向の磁気成分と、を合成し、作用する磁気の大きさを特定する。そして、検出処理回路212は、進行方向と車幅方向とにより規定される水平面に沿って作用する磁気の大きさ(磁気データの一例をなす磁気計測値)を磁気センサCn毎に求める。検出処理回路212は、各磁気センサCnが同時に計測した磁気計測値よりなる1次元磁気分布を制御ユニット13に入力する。
【0024】
計測ユニット2に組み込まれたIMU22は、慣性航法により計測車両11の相対位置を推定する慣性航法ユニットである。IMU22は、方位を計測する電子コンパスである2軸磁気センサ221と、加速度を計測する2軸加速度センサ222と、角速度を計測する2軸ジャイロセンサ223と、を備えている。
【0025】
IMU22は、加速度の二重積分により時々刻々の変位量を演算すると共に、角速度の積分である方位の変化量や計測方位等を利用して計測車両11の時々刻々の方位を精度高く算出する。そしてIMU22は、計測車両11の方位に沿って変位量を積算することで基準位置に対する相対位置を演算する。IMU22が推定する相対位置を利用すれば、トンネルやビルの谷間などGPSによる測位が不安定となる環境下でも計測位置POSの推定が可能になる。IMU22は、相対位置を表す情報のほか、計測車両11の方位dirを表す方位情報を制御ユニット13に入力する。
【0026】
制御ユニット13(図3)は、センサアレイ21による1次元磁気分布を路面磁気分布M2に割り付けることで地図1を生成するユニットである。制御ユニット13は、各種の演算を実行するCPUのほか、ROMやRAMなどのメモリ素子等が実装された電子基板(図示略)を備えている。制御ユニット13には、ハードディスクドライブなどの記憶デバイスが接続されている。記憶デバイスの記憶領域には、地図データベース(地図DB)17が設けられている。計測車両11が生成する地図1は、この地図DB17に格納される。
【0027】
図1は、上記のごとく、構造地図M1に対して路面磁気分布M2を対応付けた地図である(図1参照。)。構造地図M1と路面磁気分布M2とは、位置データを介在して対応付けられている。地図1の生成に際して予め地図DB17に格納されている路面磁気分布M2は、各点に磁気データが対応付けられる前の白紙状態の磁気分布である。ただし、白紙状態の路面磁気分布M2の各点には、絶対位置を表す位置データがひも付けられている。道路100を計測車両11が走行することで、計測車両11による磁気計測値(磁気データ)を、路面磁気分布M2中の点に順次、対応付けできる。
【0028】
制御ユニット13は、(1)計測位置POSを推定する位置推定部131、(2)計測ユニット2による1次元磁気分布を路面磁気分布M2に割り付ける分布割付部133、としての機能を備えている。
【0029】
(1)位置推定部
位置推定部131としての制御ユニット13は、GPSユニット15から計測位置POSを取得できたとき、その計測位置POSをセンサアレイ21の中央の位置(磁気センサC8の位置)として推定する。一方、GPSユニット15から精度が確保された位置情報を取得できないときは、計測ユニット2(IMU22)から取得する相対位置情報を利用して計測位置POSを推定する。具体的には、制御ユニット13は、GPSユニット15による直近の測位位置(過去の計測位置POS)を基準位置とし、相対位置の分だけずらした位置を計測位置POSとして推定する。
【0030】
(2)分布割付部
分布割付部133としての制御ユニット13は、地図DB17に格納された白紙状態の路面磁気分布M2に対して、センサアレイ21から取得した1次元磁気分布を順次、割り付ける。分布割付部133は、1次元磁気分布を構成する複数箇所の磁気計測値(磁気データの一例である磁気量)を地図上の複数の点に対応付ける対応付け処理により、路面磁気分布M2に対して1次元磁気分布を割り付ける。
【0031】
制御ユニット13は、図4のごとく、まず、位置推定部131が推定する計測位置POSに対応する点を、路面磁気分布M2の中で特定する。このように路面磁気分布M2の中で特定された点は、計測ユニット2から取得した1次元磁気分布の中心、すなわち磁気センサC8の磁気計測値を対応付ける点である。
【0032】
さらに制御ユニット13は、IMU22から取得した方位情報が表す計測車両11の方位dirに基づいて、路面磁気分布M2における1次元磁気分布Lの姿勢を特定する(図4)。制御ユニット13は、計測車両11の方位dirに対して直交するように計測位置POSを中心として1次元磁気分布Lを回転させ、これにより1次元磁気分布Lの姿勢を特定する。そして、制御ユニット13は、路面磁気分布M2の中で1次元磁気分布Lが占有する1次元的な領域の各点に、1次元磁気分布Lを構成する磁気計測値(磁気量の計測値)をそれぞれ対応付ける。
【0033】
以上のように構成された計測車両11を道路100に沿って走行させると、図5のごとく、計測車両11が走行した軌跡に沿う帯状領域10Rの磁気分布を、路面磁気分布M2に対して割り付け可能である。車幅方向の位置を変更しながら計測車両11を繰り返し走行させれば、路面100Sの全域近くに亘って磁気分布を生成できる。
【0034】
センサアレイ21によれば、一直線上に並ぶ15点の複数箇所の磁気計測値を同時に取得でき、1次元磁気分布Lを取得できる。このセンサアレイ21が車幅方向に沿って取り付けられた計測車両11を走行させれば、センサアレイ21が走査した2次元的な帯状領域10Rの磁気分布を効率良く取得でき、路面磁気分布M2を効率良く生成できる。
【0035】
ここで参考例として、構造地図M1に対して路面磁気分布M2が対応付けられた地図1図1)を利用し、車両5が自車位置を推定する方法の一例を説明する。車両5は、図6及び図7のごとく、磁気センサCnを含むセンサアレイ52、地図1図1参照。)を格納する地図データベース(地図DB)55、及び各種の演算を実行する制御ユニット50等を備えている。さらに、制御ユニット50には、GPS衛星を利用した測位演算等を実行するGPSユニット531、操舵方向を検出するステアリング舵角センサ533、車速センサ535等が接続されている。
【0036】
センサアレイ52は、計測車両11のセンサアレイ21と同様、15個の磁気センサCn(nは1~15の整数)と、図示しないCPU等を内蔵した検出処理回路521と、を備える細長い棒状のユニットである。センサアレイ52は、計測車両11が装備するセンサアレイ21とほぼ同様の構成を有している。センサアレイ52は、0.1m毎の磁気計測値よりなる1次元磁気分布を取得し、制御ユニット50に入力する。
【0037】
制御ユニット50は、地図1図1参照。)上で自車位置を推定するための演算等を実行するユニットである。制御ユニット50は、各種の演算を実行するCPUのほか、ROMやRAMなどのメモリ素子等が実装された電子基板(図示略)を備えている。制御ユニット50は、センサアレイ52から取得した1次元磁気分布を利用して自車位置を推定する。
【0038】
制御ユニット50は、センサアレイ52から取得した1次元磁気分布を走行軌跡Hに沿って積み上げて2次元磁気分布Aを生成する(図8)。そして制御ユニット50は、路面磁気分布M2と2次元磁気分布Aとを照合し、路面磁気分布M2の中で2次元磁気分布Aとの一致度が高い対応領域を特定する。制御ユニット50は、地図中のこの対応領域の位置に基づいて自車位置を推定する。
【0039】
具体的には、制御ユニット50は、路面磁気分布M2の中で2次元磁気分布Aの位置をずらしながら、両者の一致度を表す相互相関計数を各位置で求める(図9)。そして、路面磁気分布M2のうち、相互相関係数が最も高くなる2次元磁気分布Aの占有領域を特定する。車両5が生成する2次元磁気分布Aは、車両5が備えるセンサアレイ52が対面する路面の1次元領域に対応する1次元磁気分布Lを端部とし、走行軌跡Hに沿って延びる領域である。路面磁気分布M2における2次元磁気分布Aの対応領域を特定できれば、地図上で自車位置の推定が可能である。
【0040】
なお、路面磁気分布M2の中で、車両5が生成した2次元磁気分布Aの対応領域を無作為に探索することは、効率が良好ではないおそれがある。GPSユニット531による測位位置を利用し、測位位置を基準とした近傍の範囲を探索範囲として設定することも良い。この場合には、路面磁気分布M2の中の一部である探索範囲に限定して2次元磁気分布Aの対応領域を探索することで、自車位置を効率良く推定できる。
【0041】
本例の地図1図1)を利用すれば、GPSの衛星電波の受信状態が不安定となるトンネルやビルの谷間の道路などでも、自車位置を推定できる。また、地図1を利用する自車位置の推定では、慣性航法による位置推定とは異なり位置的な誤差が累積することがない。
【0042】
路面磁気分布M2と、車両5が生成した2次元磁気分布Aと、を照合すれば、路面磁気分布M2の中での2次元磁気分布Aの位置や姿勢を特定できる。例えば自車位置を推定できた後であれば、路面磁気分布M2の中での2次元磁気分布Aの位置や姿勢を特定することで、推定済みの自車位置を基準とした相対位置や方位(車両の向き)の変化を把握できる。したがって、路面磁気分布M2と、2次元磁気分布Aと、を照合して車両5の位置を推定する構成は、IMUを代替できる。
【0043】
図1を構成する路面磁気分布M2では、路面100Sを形成する舗装材料に混入した磁性材料や、路面100Sに設置された金属製のマンホールや橋の継ぎ目などの磁気発生源によって磁気量の大小が形成される。これらの磁気発生源は路面100S上で位置的に固定されているため、位置的な変動が少ない。位置的に固定されている磁気発生源に由来する路面磁気分布M2を利用すれば、地図上での自車位置を精度高く推定できる。
【0044】
なお、酸化鉄の磁粉などの磁性材料が混入する舗装材料を利用して舗装された路面であっても良い。この場合には、舗装材料中の磁性材料が磁化されて、路面磁気分布M2の起伏が大きくなる傾向になる。磁気分布の起伏が拡大すれば、磁気分布の照合が容易となり精度を向上できる。なお、磁性材料が混入する舗装材料によって舗装された路面を、不均一に磁化することも良い。この場合には、磁気分布の起伏を一層拡大でき、磁気分布の照合が容易となる。磁性材料が混入する舗装材料と、磁性材料を含まない通常の舗装材料と、を準備することも良い。この場合、2種類の舗装材料を混合することなく不均一に路面に供給することも良い。路面の位置に応じて磁性材料の構成比に違いが生じるため、これにより磁気分布の起伏を拡大できる。
【0045】
磁性材料が混入する舗装材料を利用して路面を舗装した後、路面を磁化することも良い。例えば、磁気の強い矩形エリアと、磁気の弱い矩形エリアと、が交互に現れる市松模様などの所定パターンをなすように路面を磁化することも良い。磁気の強弱が形成する模様を利用すれば磁気分布間の照合が容易となり、位置推定の精度を向上できる。また、所定パターンをなすように路面を磁化する場合には、例えば、磁気量の大きい矩形エリアと、磁気量の小さい矩形エリアと、の区分線を利用することで、計測磁気分布の照合を効率良く実行できる。例えば、計測磁気分布に区分線が含まれる場合、路面磁気分布M2の中の区分線との一致を前提として照合を実行すれば良い。所定パターンは、1次元あるいは2次元のバーコードなど、情報を読み出し可能なパターンであっても良い。
【0046】
さらに、磁性材料が混入する舗装材料によって舗装された路面100Sにおいて、磁気的な特異点が現れるように路面100Sを磁化することも良い。このように酸化鉄の磁粉などで磁気的な特異点を作れば、磁気分布間の照合が容易となる。特異点の一致を前提とすれば、磁気分布間の照合の際、特異点が不一致の組合せを排除でき、照合を効率良く実行できる。
【0047】
なお、本例では、路面100Sと計測ユニット2との隙間が2~5cmに設定された計測車両11を利用して地図1を生成する手順を説明した。一般的な車両における磁気センサの取付高さとして想定される100~250mmの範囲に、計測ユニット2を取り付けることも良い。この場合、計測ユニット2は、路面に近い各点の磁気データではなく、路面100Sから高さ方向に離れた各点に作用する路面上の磁気データを計測することになる。路面磁気分布M2としては、このように路面100Sから高さ方向に離れた各点の磁気データの分布であっても良い。
【0048】
地図を利用する車両では、路面100Sから高さ方向に離れた各点の路面磁気分布と、計測した磁気分布と、の照合を実行しても良い。あるいは、路面100Sから高さ方向に離れた各点の磁気データから路面表面の各点の磁気分布を推定し、計測した磁気分布との照合を実行しても良い。
計測車両11において、取付高さが異なる2つの磁気センサを鉛直方向に沿って配置することも良い。この場合には、高さ方向の磁気の減衰率を把握できる。高さ方向の磁気の減衰率を利用すれば、路面100Sから高さ方向に離れた各点の磁気データから路面の各点の磁気分布を推定する際の精度を向上できる。
【0049】
本例では、路面からの高さ2~5cmにセンサアレイ21を取り付けた計測車両11を例示している。センサアレイ21を第1のセンサアレイとし、路面から高さ方向に離れて取り付けられた第2のセンサアレイを採用しても良い。路面磁気分布M2として、路面近くの磁気データの分布である第1の路面磁気分布M2と、路面上の高さ〇〇cmの磁気データの分布である第2の路面磁気分布M2と、を生成することも良い。この場合の地図は、構造地図M1のほか、第1及び第2の路面磁気分布M2により構成される。高さが異なる2種類以上の路面磁気分布があれば、磁気の減衰率などを把握でき、特定の高さの磁気分布の推定精度を向上できる。
【0050】
路面から高さ方向に離れて取り付けられたセンサアレイあるいは磁気センサとして、高さが異なる複数のセンサアレイ等を設け、計測高さが異なる複数種類の路面磁気分布M2を含む地図1を構成しても良い。この場合には、いずれかの車両が計測した磁気分布との照合を実行する際、その車両におけるセンサアレイあるいは磁気センサの取付高さに近い高さで計測された路面磁気分布M2を選択し、照合を実行すると良い。また、地図1上の各位置に対して、高さ方向における磁気的な強度(磁気の大きさ、磁気勾配など。)の減衰の度合いを表す式を対応付けることも良い。この場合には、路面磁気分布M2に基づき、特定の高さにおける磁気データの分布を容易に推定できるようになる。地図1上の各位置に対応付ける式(磁気的な強度の減衰の度合いを表す式)は、理論上の式であっても良いが、上記の第1の路面磁気分布M2中の磁気データから第2の路面磁気分布M2中の磁気データに至る変化を表す近似式であっても良い。
【0051】
本例では、路面磁気分布M2の各点の磁気データとして、進行方向と車幅方向とにより規定される水平面に沿って作用する磁気量を例示している。これに代えて、鉛直方向の磁気成分を検出する磁気センサを採用すると共に、鉛直方向の磁気量を路面磁気分布M2の各点の磁気データとしても良い。さらに、磁気センサが計測した進行方向の成分と車幅方向の成分とによって表されるベクトルを、路面磁気分布M2の各点の磁気データとしても良い。直交する3軸方向の磁気成分を計測可能な磁気センサを採用すると共に、3軸方向の磁気成分によって表されるベクトルを、路面磁気分布M2の各点の磁気データとしても良い。
【0052】
本例では、一直線上に磁気センサが配列されたセンサアレイ21が車幅方向に沿って取り付けられた計測車両11によって地図1を生成している。磁気センサが一直線上に配列されたセンサアレイ21は必須の構成ではなく、磁気センサを1つ備える計測車両であっても良い。この計測車両が走行すれば、走行軌跡に沿う1次元的な磁気分布を取得できる。磁気センサによるこの1次元磁気分布を順次、路面磁気分布M2に対応付ける(割り付ける)ことで、地図1を生成できる。
【0053】
本例では、地図1の構成を分かり易くすることを目的として、構造地図M1とは別に路面磁気分布M2を設け、相互に対応付ける構成を図1に例示している。道路構造などが記述された構造地図M1から独立して路面磁気分布M2を設けることは必須ではない。地図1の各点に磁気データをひも付けることも良い。地図1の各点にひも付けられた磁気データは、路面上の磁気分布を表している。
【0054】
なお、地図1の各点にひも付ける磁気データは、磁気勾配であっても良い。磁気勾配は、例えば、隣り合う点の磁気量の差分として求めることができる。また例えば、磁気センサが配列されたセンサアレイ等を利用して路面上の磁気を計測する場合であれば、例えば、隣り合う磁気センサによる磁気計測値の差分により磁気勾配を求めることができる。
【0055】
磁気勾配では、磁気センサに対して一様、あるいは一様に近く作用する磁気成分が抑制されている。それ故、磁気勾配では、比較的遠くに存在する磁気発生源から作用する磁気成分が抑制され、比較的近くに存在する路面等の磁気発生源から作用する磁気成分が相対的に強調されている。地図は、地表を区画して表したものである。したがって、地図の各点にひも付ける磁気データとしては、地表近くに存在する路面等の磁気発生源から作用する磁気成分を反映する磁気勾配が好適である。磁気勾配を各点に対応付けた地図であれば、周囲の車両や、ガードレールや、看板などの磁気発生源による影響や、地磁気による影響を抑制でき、地図を利用する位置推定の精度を向上できる。
【0056】
なお、例えば、取得時点が異なる磁気計測値の差分を、別途与えられる車速情報に基づいて特定される距離当たりの差分に変換することも良い。2つの磁気センサについてそれぞれ距離当たりの差分を求めておき、当該2つの磁気センサ間でさらに差分をとって磁気勾配を求めることも良い。この場合には、路上に配置された磁気マーカの間隔を予め与えることなく、上記の磁気勾配を求めることができるという効果を期待できる。さらに例えば、一の磁気センサによる異なる時点の磁気計測値の差分による磁気勾配を求めるに当たって、別途与えられる車速情報により特定される距離当たりの差分による磁気勾配を求めることも良い。この場合には、車載のセンサユニットを前後に2台設置する必要性が少なくなる。一つのセンサユニットで磁気勾配を求めることができれば、センサユニットの搭載位置を確保するための設計上の負担を軽減できると同時に、センサユニットの搭載コストを低減できるという効果を期待できる。
【0057】
路面の各点に磁気データをひも付けた路面磁気分布に対して、車両5が取得した2次元磁気分布を照合すれば、路面磁気分布の中での2次元磁気分布の位置や姿勢を特定できることを上述した。磁気勾配を各点にひも付けた路面磁気分布の場合、照合する2次元磁気分布についても、磁気勾配の分布であると良い。この場合には、磁気勾配である磁気データの変化の態様が同様となるので、照合が容易になる。
【0058】
(実施例2)
本例は、実施例1に基づいて、例えば10m毎に磁気マーカ10が敷設された道路100(図10)に対応する地図、及びその生成方法の例である。この内容について、図10図14を参照して説明する。
【0059】
本例の計測車両11は、センサアレイ21(検出処理回路212)が磁気マーカ10を検出するマーカ検出処理を実行する点で、実施例1の構成とは相違している。また、本例の地図は、磁気マーカ10の位置であるマーカ配置点10Pがプロットされている点で、実施例1の地図とは相違している。マーカ配置点10Pは、磁気マーカ10の敷設位置である旨を表す情報の一例である。センサアレイ21は、磁気センサCnを用いて3kHzの頻度でマーカ検出処理を実行する。
【0060】
実施例1で説明した通り、磁気センサCnは、計測車両11の進行方向及び車幅方向の磁気成分を計測するように構成されている。例えばこの磁気センサCnが、進行方向に移動して磁気マーカ10の真上を通過するとき、進行方向の磁気計測値は、図11のごとく磁気マーカ10の前後で正負が反転すると共に、磁気マーカ10の真上の位置でゼロを交差するように変化する。したがって、計測車両11の走行中では、いずれかの磁気センサCnが検出する進行方向の磁気について、その正負が反転するゼロクロスZcが生じたとき、センサアレイ21が磁気マーカ10の真上に位置すると判断できる。検出処理回路212は、このようにセンサアレイ21が磁気マーカ10の真上に位置し、進行方向の磁気計測値のゼロクロスZcが生じたとき、磁気マーカ10を検出したと判断する。
【0061】
また例えば、磁気センサCnと同じ仕様の磁気センサについて、磁気マーカ10の真上を通過する車幅方向の仮想線に沿う移動を想定してみる。車幅方向の磁気計測値は、磁気マーカ10を挟んだ両側で正負が反転すると共に、磁気マーカ10の真上の位置でゼロを交差するように変化する。15個の磁気センサCnを車幅方向に配列したセンサアレイ21の場合には、磁気マーカ10を介してどちらの側にあるかによって磁気センサCnが検出する車幅方向の磁気の正負が異なってくる(図12)。
【0062】
センサアレイ21の各磁気センサCnの車幅方向の磁気計測値を例示する図12の分布曲線に基づけば、車幅方向の磁気の正負が反転するゼロクロスZcを挟んで隣り合う2つの磁気センサCnの中間の位置、あるいは検出する車幅方向の磁気がゼロであって両外側の磁気センサCnの正負が反転している磁気センサCnの直下の位置が、磁気マーカ10の車幅方向の位置となる。検出処理回路212は、センサアレイ21の中央の位置(磁気センサC8の位置)に対する磁気マーカ10の車幅方向の位置の偏差を、磁気マーカ10に対する計測車両11の横ずれ量として計測できる。例えば、図12の場合であれば、ゼロクロスZcの位置がC9とC10との中間辺りのC9.5に相当する位置となっている。上記のように磁気センサC9とC10の間隔は10cmであるから、磁気マーカ10に対する計測車両11の横ずれ量は、車幅方向においてセンサアレイ21の中央に位置するC8を基準として(9.5-8)×10=15cmとなる。
【0063】
制御ユニット13は、センサアレイ21によって磁気マーカ10が検出されたとき、そのときの計測位置POSに基づいて磁気マーカ10の位置を特定する。具体的には、磁気マーカ10の検出時に計測された横ずれ量の分だけ、計測位置POSからずらした位置を磁気マーカ10の位置として特定する。そして制御ユニット13は、磁気マーカ10の敷設位置を表すマーカ配置点10Pを、路面磁気分布M2にプロットする。このように本例の地図1は、マーカ配置点10Pが路面磁気分布M2にプロットされ、磁気マーカ10の位置がひも付けされた地図である。
【0064】
ここで参考例として、本例の地図1を利用する車両を示す。この車両のセンサアレイは、計測車両のセンサアレイと同様、マーカ検出処理を実行可能である。車両のセンサアレイは、計測車両によるマーカ検出処理と同様のマーカ検出処理を実行し、道路100(図10)に敷設された磁気マーカ10を検出する。
【0065】
車両が生成する2次元磁気分布A(図13)は、センサアレイが出力する1次元磁気分布を2次元的に積み上げたものである点で、実施例1と同様である。本例の2次元磁気分布Aは、磁気マーカ10の位置を表すマーカ配置点10Pがプロットされている点で、実施例1とは相違している。マーカ配置点10Pは、磁気分布の中の磁気的な特異点として活用できる。このマーカ配置点10Pを利用すれば、図14のごとく、マーカ配置点10Pが一致する10m毎の各位置で2次元磁気分布Aの照合を実行できる。
【0066】
このようにマーカ配置点10Pのプロットがある路面磁気分布M2と2次元磁気分布Aとの組み合わせであれば、10m刻みで2次元磁気分布Aを照合すれば良く、路面磁気分布M2に対して2次元磁気分布Aを照合するための演算量を格段に抑制できる。
なお、その他の構成及び作用効果については、実施例1と同様である。
【0067】
(実施例3)
本例は、実施例2の計測車両の構成に基づき、計測位置POSの測位方法を追加した例である。この内容について図15及び図16を参照して説明する。
本例で想定する道路では、車線の中央に沿って磁気マーカ10が2m(マーカスパンS=2m)毎に配置されている。磁気マーカ10(図15)は、直径20mm、高さ28mmの柱状をなしている。磁気マーカ10は、路面100Sに設けられた孔に収容された状態で埋設される。
【0068】
磁気マーカ10には、位置情報及び方位情報を無線送信するRF-IDタグ105が付設されている。RF-IDタグ105は、例えば図15のごとく円柱状の磁気マーカ10の上端面に貼り付けられている。図示は省略するが、計測車両11には、RF-IDタグ105との無線通信を実行するタグリーダが搭載されている。
【0069】
RF-IDタグ105が送信する位置情報は、対応する磁気マーカ10の絶対位置を表す情報である。同様の方位情報は、対応する磁気マーカ10と、この磁気マーカ10に対して道路の方向における下流側に隣り合う磁気マーカ10と、を結ぶ仮想線の方向Mx(所定の方向の一例)の絶対方位を表す情報である。
【0070】
計測車両11の制御ユニットは、計測位置POSを推定する位置推定部及び分布割付部(図3中の符号13)に加えて、自車の向きを表す方位dirを推定する方位推定部を備えている。位置推定部は、実施例1の構成に加えて、磁気マーカ10を利用して計測位置POSを推定可能である。位置推定部は、RF-IDタグ105から取得した位置情報に係る絶対位置(磁気マーカ10の敷設位置)を基準として、計測位置POSを推定する(測位処理)。
【0071】
位置推定部は、磁気マーカ10の検出時には、検出処理回路212によって計測される横ずれ量の分だけ、磁気マーカ10の絶対位置をずらした位置を計測位置POSとして推定する。また位置推定部は、磁気マーカ10を検出した後、次の磁気マーカ10を検出するまでの期間は、その期間にIMU22が推定した相対位置を取得し、直近の磁気マーカ10の検出時に推定された計測位置POSを基準として計測位置POSを推定する。
【0072】
方位推定部は、隣り合う2つの磁気マーカ10を結ぶ仮想線の方向Mxを基準として計測車両11の方位を推定するための方位推定処理を実行する。方位推定部は、隣り合う2つの磁気マーカ10に対する横ずれ量の差分を利用し、方向Mxに対する計測車両11の進行方向の偏差である方位ずれ角Rfを特定する。計測車両11の方位dirは、絶対方位である方向Mxを基準として方位ずれ角Rfの分だけ角度的にずらした絶対方位として推定可能である(測位処理)。
【0073】
方位推定部は、隣り合う2つの磁気マーカ10を計測車両11が通過したとき、1つ目の磁気マーカ10に対する横ずれ量Of1と、2つ目の磁気マーカ10に対する横ずれ量Of2と、の差分Ofdを演算する。方位推定部は、この差分Ofd、マーカスパンSを利用し、次式の通り、方位ずれ角Rfを演算する。上記のごとく、この方位ずれ角Rfが求まれば、方向Mxを基準として計測車両11の方位dirを推定可能である。
【数1】
【0074】
路面100Sに埋設された磁気マーカ10は位置的な変動が生じるおそれが少なく、位置的な精度が高い。位置的な精度が高い磁気マーカ10を利用すれば、計測位置POS及び方位dirを精度高く推定可能である。高精度の計測位置POS及び方位dirを推定できれば、計測車両11が取得する1次元磁気分布Lを路面磁気分布M2に対して位置精度高く割り付けできる。
なお、その他の構成及び作用効果については、実施例2と同様である。
【0075】
(実施例4)
本例は、実施例2の構成に基づいて、構造地図M1及び路面磁気分布M2にひも付ける位置データの構成を変更した例である。この内容について図17を参照して説明する。
実施例2の構成では、実施例1と同様、構造地図M1及び路面磁気分布M2の各点に絶対位置を表す位置データがひも付けられている。一方、本例の構造地図M1及び路面磁気分布M2では、絶対位置を表す位置データ、及び相対位置を表す位置データのうちのいずれかが各点にひも付けられている。
【0076】
構造地図M1及び路面磁気分布M2のうち、磁気マーカの位置であるマーカ配置点10Pには、絶対位置を表す位置データがひも付けられている。そして、構造地図M1及び路面磁気分布M2のうち、マーカ配置点10P以外の各点には、近傍の磁気マーカを基準とした相対位置を表す位置データがひも付けられている。
【0077】
絶対位置を表す位置データと、近傍の磁気マーカを基準の位置とした相対位置を表す位置データと、を比較した場合、後者の位置データの方がデータサイズが格段に小さい。本例の地図では、マーカ配置点10P以外の大部分の各点に、相対位置を表すデータサイズが小さい位置データをひも付けることで、地図全体のデータサイズが小さく抑えられている。マーカ配置点10P以外の地図上の各点では、ひも付けられた位置データに係る相対位置の情報によって、基準の位置(近傍の磁気マーカの位置)との相対的な位置関係を特定できる。基準の位置は、絶対位置を特定可能であるので、この基準の位置に基づいて地図上の各点の絶対位置を特定可能である。
【0078】
地図を利用する側の車両(参考例)では、地図上のいずれかの点に自車位置が位置すると推定できたとき、まず、その点にひも付けられた位置データに係る相対位置が取得される。さらに、この車両では、その相対位置の分だけ地図上でずらしたマーカ配置点10Pにひも付けられた位置データに係る絶対位置が取得される。車両では、基準となる磁気マーカの絶対位置と、その磁気マーカからの相対位置と、を組み合わせることで、自車位置の絶対位置の推定が可能である。
なお、その他の構成及び作用効果については実施例2と同様である。
【0079】
以上、実施例のごとく本発明の具体例を詳細に説明したが、これらの具体例は、特許請求の範囲に包含される技術の一例を開示しているにすぎない。言うまでもなく、具体例の構成や数値等によって、特許請求の範囲が限定的に解釈されるべきではない。特許請求の範囲は、公知技術や当業者の知識等を利用して前記具体例を多様に変形、変更あるいは適宜組み合わせた技術を包含している。
【符号の説明】
【0080】
1 地図
10 磁気マーカ(マーカ)
10P マーカ配置点
100 道路(走行路)
100S 路面
11 計測車両
13 制御ユニット
131 位置推定部
133 分布割付部
15 GPSユニット
2 計測ユニット
21 センサアレイ
212 検出処理回路
5 車両
50 制御ユニット
52 センサアレイ
Cn 磁気センサ
M1 構造地図
M2 路面磁気分布
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17