(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-10
(45)【発行日】2024-01-18
(54)【発明の名称】電気回路
(51)【国際特許分類】
G06N 10/20 20220101AFI20240111BHJP
【FI】
G06N10/20
(21)【出願番号】P 2021558245
(86)(22)【出願日】2020-10-27
(86)【国際出願番号】 JP2020040218
(87)【国際公開番号】W WO2021100417
(87)【国際公開日】2021-05-27
【審査請求日】2022-05-06
(31)【優先権主張番号】P 2019209011
(32)【優先日】2019-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020088598
(32)【優先日】2020-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1)平成31年2月11日にプレプリントサーバに論文を発表 (2)令和1年5月23日にCEMS Symposium on Emergent Quantum Materialsにて発表 (3)令和1年7月16日にプレプリントサーバに論文を発表 (4)令和1年5月22日にCEMS Symposium on Emergent Quantum Materialsの講演要旨集 第19頁にて発表 (5)令和1年5月23日に「コーネル大学ウェブサイト」https://arxiv.org/abs/1902.03716v2にて発表 (6)令和1年7月10日に米国物理学会機関誌「Physical Review B」ウェブサイトhttps://journals.aps.org/prb/abstract/10.1103/PhysRevB.100.045407にて発表 (7)令和1年7月15日に米国物理学会機関誌「Physical Review B」第100巻 第4号にて発表 (8)令和1年10月2日に「コーネル大学ウェブサイト」https://arxiv.org/abs/1907.06911v2にて発表 (9)令和2年1月23日に「コーネル大学ウェブサイト」https://arxiv.org/abs/1907.06911v3にて発表 (10)令和2年4月28日に「コーネル大学ウェブサイト」https://arxiv.org/abs/1907.06911v4にて発表
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成28年度国立研究開発法人科学技術振興機構 戦略的創造研究推進事業、産業技術強化法第17条の適用を受けるもの
(73)【特許権者】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】江澤 雅彦
【審査官】坂東 博司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0053113(US,A1)
【文献】LUTCHYN, R. M. ほか,Realizing Majorana zero modes in superconductor-semiconductor heterostructures,arXiv,米国,arXiv,2018年02月24日,1-20,[検索日 2023.07.10], インターネット:<URL:https://arxiv.org/pdf/1707.04899.pdf>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06N 10/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも4つの端点及びインピーダンスが調整可能なトポロジカル相操作回路をそれぞれ含む複数のユニット回路を備え、
前記4つの端点のうちいずれかの端点の交流電流と、当該端点に隣接する端点の交流電圧との比例関係を表す回路ラプラシアンが、量子系のハミルトニアンに対応するように構成され、
前記トポロジカル相操作回路の前記インピーダンスは、前記ハミルトニアンに含まれるパラメータに対応し、
前記ハミルトニアンは、前記パラメータに関する所定の領域でトポロジカル相を有する、
電気回路。
【請求項2】
前記複数のユニット回路は、電子バンドに対応する第1回路及びホールバンドに対応する第2回路をそれぞれ含み、
前記第1回路の交流電圧の位相及び前記第2回路の交流電圧の位相は、互いに逆である、
請求項1に記載の電気回路。
【請求項3】
前記複数のユニット回路は、前記第1回路及び前記第2回路を接続し、交流電圧の位相を変化させる位相操作回路をそれぞれ含む、
請求項2に記載の電気回路。
【請求項4】
前記トポロジカル相操作回路は、前記第1回路又は前記第2回路とグランドとを接続し、前記インピーダンスを切り替えるスイッチを含む、
請求項
2に記載の電気回路。
【請求項5】
前記複数のユニット回路は、分岐接続を含み、T字型に接続されている、
請求項1から4のいずれか一項に記載の電気回路。
【請求項6】
前記複数のユニット回路は、分岐接続を含み、十字型に接続されている、
請求項1から4のいずれか一項に記載の電気回路。
【請求項7】
前記ハミルトニアンは、電子-ホール対称性を有するBogoliubov-de Gennes形式で記述される超伝導体のハミルトニアン、又は、カイラル対称性を有するハミルトニアンである、
請求項1から6のいずれか一項に記載の電気回路。
【請求項8】
前記複数のユニット回路のうちトポロジカル相に対応するユニット回路と前記複数のユニット回路のうちトポロジカルに自明な相に対応するユニット回路との境界に位置する端点の交流電圧又は前記複数のユニット回路のうち端部に位置するユニット回路の端点の交流電圧は、前記ハミルトニアンのエッジ状態に対応する、
請求項7に記載の電気回路。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2019年11月19日に出願された日本出願番号2019-209011号および2020年5月21日に出願された日本出願番号2020-88598号に基づくもので、ここにその記載内容を援用する。
【技術分野】
【0002】
本発明は、電気回路に関する。
【背景技術】
【0003】
半導体集積に関するムーアの法則の限界を突破する技術として量子計算が着目を集めている。古典計算が0と1のビットを用いて計算するのに対して量子計算では0と1の重ね合わせによる量子ビットを用いて計算を行う。量子ビットを用いることで、指数関数的な計算速度の向上が期待される。現在、様々な量子計算方法が研究段階にある。
量子計算を行うためのハードウェアとして、量子ドット、超伝導量子ビット、光量子コンピュータ、核磁気共鳴、イオントラップ、キャビティーQED(Quantum Electrodynamics)、トポロジカル超伝導体(非特許文献1)等が研究されているが、いずれも実用段階には達していない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】Jason Alicea, Yuval Oreg, Gil Refael, Felix von Oppen and Matthew P. A. Fisher, "Non-Abelian statistics and topological quantum information processing in 1D wire networks," Nature Physics 7, 412-417, 2011.
【発明の概要】
【0005】
現行の量子計算では、量子情報が短時間で喪失してしまうデコヒーレンスにどのように対処するかが重要な課題となっている。デコヒーレンスにより生じるエラーを訂正するためには、エラー訂正のためのキュービットが量子計算に必要なキュービットよりも多く必要になる。また、量子情報を長時間にわたり保持することが困難である。
【0006】
この課題を解決する一つの方法として、トポロジカル超伝導体中のマヨラナ粒子をブレイド操作することによって量子計算を行うトポロジカル量子計算が知られている(非特許文献1)。しかし、現状ではマヨラナ粒子を制御する方法が確立しておらず、室温で超伝導が実現できないため、冷却のために大量のヘリウムを必要とし、安価でコンパクトな装置とすることが困難である。さらに、超伝導量子回路を微細集積化する見通しも立っていない。
【0007】
そこで、本発明は、室温で動作し、微細集積化が可能であり、トポロジカル量子計算と同等の計算を行うことができる電気回路を提供する。
【0008】
本発明の一態様に係る電気回路は、少なくとも4つの端点及びインピーダンスが調整可能なトポロジカル相操作回路をそれぞれ含む複数のユニット回路を備え、4つの端点のうちいずれかの端点の交流電流と、当該端点に隣接する端点の交流電圧との比例関係を表す回路ラプラシアンが、量子系のハミルトニアンに対応するように構成され、トポロジカル相操作回路のインピーダンスは、ハミルトニアンに含まれるパラメータに対応し、ハミルトニアンは、パラメータに関する所定の領域でトポロジカル相を有する。
【0009】
この態様によれば、回路ラプラシアンが、所定のパラメータ領域でトポロジカル相を有するような量子系のハミルトニアンに対応するように構成することで、トポロジカル相とトポロジカルに自明な相との間にエッジ状態に相当する電圧状態をつくることができ、その電圧状態をブレイド操作することでトポロジカル量子計算と同等の計算を行うことができる。また、通常の電気回路であるため、室温で動作し、微細集積化が可能である。
【0010】
上記態様において、複数のユニット回路は、電子バンドに対応する第1回路及びホールバンドに対応する第2回路をそれぞれ含み、第1回路の交流電圧の位相及び第2回路の交流電圧の位相は、互いに逆であってもよい。
【0011】
この態様によれば、電子とホールに相当する電圧状態をつくることができ、トポロジカル相とトポロジカルに自明な相との間にマヨラナ粒子に相当する電圧状態をつくることができる。
【0012】
上記態様において、複数のユニット回路は、第1回路及び第2回路を接続し、交流電圧の位相を変化させる位相操作回路をそれぞれ含んでもよい。
【0013】
この態様によれば、超伝導位相に相当するパラメータを実現することができる。
【0014】
上記態様において、トポロジカル相操作回路は、第1回路又は第2回路とグランドとを接続し、インピーダンスを切り替えるスイッチを含んでもよい。
【0015】
この態様によれば、トポロジカル相とトポロジカルに自明な相の長さを任意に調整することができるようになり、エッジ状態に関する多様なブレイド操作を実現することができる。
【0016】
上記態様において、複数のユニット回路は、分岐接続を含み、T字型に接続されていてもよい。
【0017】
この態様によれば、トポロジカル相の両端に現れる2つのエッジ状態の位置を交換する操作を実現することができる。
【0018】
上記態様において、複数のユニット回路は、分岐接続を含み、十字型に接続されていてもよい。
【0019】
この態様によれば、異なるトポロジカル相の両端に現れる2つのエッジ状態の位置を交換する操作を実現することができる。
【0020】
上記態様において、ハミルトニアンは、電子-ホール対称性を有するBogoliubov-de Gennes形式で記述される超伝導体のハミルトニアン、又は、カイラル対称性を有するハミルトニアンでもよい。
【0021】
この態様によれば、電子-ホール対称性又はカイラル対称性により安定なマヨラナ粒子に相当する電圧状態をつくることができる。
【0022】
上記態様において、複数のユニット回路のうちトポロジカル相に対応するユニット回路と複数のユニット回路のうちトポロジカルに自明な相に対応するユニット回路との境界に位置する端点の交流電圧又は複数のユニット回路のうち端部に位置するユニット回路の端点の交流電圧は、ハミルトニアンのエッジ状態に対応してもよい。
【0023】
この態様によれば、トポロジカル相とトポロジカルに自明な相との間にエッジ状態に相当する電圧状態をつくることができ、その電圧状態をブレイド操作することでトポロジカル量子計算と同等の計算を行うことができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、室温で動作し、微細集積化が可能であり、トポロジカル量子計算と同等の計算を行うことができる電気回路を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の実施形態に係る電気回路を示す図である。
【
図2】本実施形態に係る電気回路に含まれる位相操作回路を示す図である。
【
図3】本実施形態に係る位相操作回路に含まれるオペアンプの構成を示す図である。
【
図4】本実施形態に係る位相操作回路によってφ=0の電子-ホール間相互作用を実現する場合を示す図である。
【
図5】本実施形態に係る位相操作回路によってφ=πの電子-ホール間相互作用を実現する場合を示す図である。
【
図6】本実施形態に係る電気回路に含まれ、オン状態であるトポロジカル相操作回路を示す図である。
【
図7】本実施形態に係る電気回路に含まれ、オフ状態であるトポロジカル相操作回路を示す図である。
【
図8】本実施形態に係る電気回路におけるエッジ状態のブレイド操作を模式的に示す図である。
【
図9】本実施形態に係る電気回路においてトポロジカル相の両端に現れる2つのエッジ状態の位置を交換する操作を模式的に示す図である。
【
図10】本実施形態に係る電気回路においてトポロジカルに自明な相を挟んで隣接する2つのエッジ状態の位置を交換する操作を模式的に示す図である。
【
図11】本実施形態に係る電気回路においてトポロジカル相の両端に現れる2つのエッジ状態の位置を交換する操作における波動関数の時間変化を示す図である。
【
図12】本実施形態に係る電気回路においてトポロジカル相の両端に現れる2つのエッジ状態の位置を交換する操作におけるエネルギー固有値とベリー位相の時間変化を示す図である。
【
図13】本実施形態に係る電気回路において異なるトポロジカル相の両端現れるエッジ状態の位置を交換する操作を模式的に示す図である。
【
図14】本実施形態に係る電気回路に記憶回路を設けた一例を示す図である。
【
図15】本実施形態に係るLC共振器を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。なお、各図において、同一の符号を付したものは、同一又は同様の構成を有する。
【0027】
トポロジカル量子計算では、非可換エニオンのブレイド操作を量子ゲートとして用いる。空間が3次元である通常の系では、粒子の交換によって波動関数の位相変化が0又はπとなり、位相変化が0となる粒子をボソンと呼び、位相変化がπとなる粒子をフェルミオンと呼ぶ。一方、空間が2次元である系では、粒子の交換によって波動関数の位相変化が任意の値となるエニオンと呼ばれる粒子が実現できる。例えば、非特許文献1では、1次元超伝導ワイヤのエッジ状態として非可換エニオンを実現している。
【0028】
1次元超伝導ワイヤを単純化したハミルトニアンとして、以下の数式(1)のキタエフモデルが知られている。
【0029】
【0030】
ここで、εk=-t cosk-μであり、tはホッピング振幅、μは化学ポテンシャル、φは超伝導位相、Δはギャップパラメータである。数式(1)のハミルトニアンは、Δがゼロでなく、|μ|>|2t|の場合にトポロジカルに自明な相となり、|μ|<|2t|の場合にトポロジカル相となる。
【0031】
トポロジカル相を特徴付ける位相不変量は、典型的には運動量空間からヒルベルト空間への写像の巻き付き数で定義され、例えば1,2…のような飛び飛びの値しか取らず、トポロジカルに自明な相の位相不変量は0となる。トポロジカル相の内部では、ギャップΔが有限であるため、位相不変量は変化しない。一方、トポロジカルに自明な相の位相不変量は0であるため、トポロジカル相とトポロジカルに自明な相との境界でギャップが閉じ、ギャップレス状態が生じて位相不変量が変化する。このギャップレス状態をエッジ状態と呼ぶ。数式(1)のキタエフモデルでは、エッジ状態として電子とホール(粒子と反粒子)の区別が無いマヨラナ粒子が現れる。
【0032】
本実施形態に係る電気回路10は、数式(1)と同等の回路ラプラシアンを有し、量子系のエッジ状態に対応する電圧状態をつくるものである。また、本実施形態に係る電気回路10は、エッジ状態に対応する電圧状態をブレイド操作して、トポロジカル量子計算と同等の計算を行うことができる。
【0033】
数式(1)のハミルトニアンは、Bogoliubov-de Gennes形式で記述される1次元超伝導体のハミルトンであり、電子-ホール対称性を有する。電子-ホール対称性とは、ハミルトニアンが、電子とホールを交換する演算子ΞについてΞ―1H(k)Ξ=H(-k)を満たす対称性である。このようなハミルトニアンに対応する回路ラプラシアンを有することで、電子-ホール対称性により安定なマヨラナ粒子又はマヨラナ粒子と同様の性質を持つマヨラナ類似状態に相当する電圧状態をつくることができる。
【0034】
また、電子-ホール対称性の代わりにカイラル対称性ΠH(k)+H(k)Π=0を満たす場合にも多重縮退した状態を作ることができる。この場合、多重縮退した状態の位置を交換するブレイド操作により、同様に、トポロジカル量子計算と同等の計算を行うことができる。
【0035】
図1は、本発明の実施形態に係る電気回路10を示す図である。電気回路10は、少なくとも4つの端点及びインピーダンスが調整可能なトポロジカル相操作回路TCSをそれぞれ含む複数のユニット回路を備える。同図では、隣接するユニット回路U1及びユニット回路U2を示している。
【0036】
4つの端点のうちいずれかの端点の交流電流と、当該端点に隣接する端点の交流電圧との比例関係を表す回路ラプラシアンは、量子系のハミルトニアンに対応するように構成されている。ここで、回路ラプラシアンJab(ω)は、端点aの交流電流Ia(ω)と、端点bの交流電圧Vb(ω)とについて、Ia(ω)=ΣbJab(ω)Vb(ω)により定義される量である。
【0037】
具体的には、本実施形態に係る電気回路10の回路ラプラシアンは、以下の数式(2)で表される。
【0038】
【0039】
ここで、Cは、
図1に示すキャパシタンスであり、Lは
図1に示すインダクタンスである。また、C
0は、後に説明するトポロジカル相操作回路TCS1,TCS2に含まれるキャパシタンスであり、C
X
φ=C
Xsinφは、後に説明する位相操作回路PCSに含まれるキャパシタンスであり、R
φ=R
b/cosφは、後に説明する位相操作回路PCSに含まれる抵抗である。ここで、φは、超伝導位相に相当するパラメータである。さらに、σ
x,σ
y,σ
zは、2×2のパウリ行列である。なお、トポロジカル相操作回路TCS1,TCS2には、インダクタンスL
0も含まれる。また、位相操作回路PCSには、インダクタンスL
X
φ=L
X/sinφも含まれる。
【0040】
数式(2)の回路ラプラシアンは、ω=1/√(LC)=1/√(L0C0)=1/√(LXCX)である場合に、Jab(ω)=iωHab(ω)の関係で数式(1)のハミルトニアンに対応する。この場合、トポロジカル相操作回路TCS1,TCS2のインピーダンスは、数式(1)のハミルトニアンに含まれるパラメータt,μに対応する。|μ|>|2t|の場合(トポロジカルに自明な相の場合)は、トポロジカル相操作回路TCS1,TCS2がオフ状態の場合に対応し、|μ|<|2t|の場合(トポロジカル相の場合)は、トポロジカル相操作回路TCS1,TCS2がオン状態の場合に対応する。このように、回路ラプラシアンに対応するハミルトニアンは、パラメータに関する所定の領域でトポロジカル相を有し、電気回路10は、トポロジカル相操作回路TCS1,TCS2のインピーダンスを変化させることで、トポロジカル相とトポロジカルに自明な相とを切り替えることができる。
【0041】
本実施形態に係る電気回路10によれば、所定のパラメータ領域でトポロジカル相を有するような量子系のハミルトニアンに対応するように回路ラプラシアンを構成することで、トポロジカル相とトポロジカルに自明な相との間にエッジ状態に相当する電圧状態をつくることができ、その電圧状態をブレイド操作することでトポロジカル量子計算と同等の計算を行うことができる。また、本実施形態に係る電気回路10は、通常の電気回路であるため、比較的安価であり、室温で動作し、微細集積化が可能である。また、トポロジカル量子計算をシミュレートするため、デコヒーレンスの影響がなく、エラー訂正のために回路を大規模化する必要がない。
【0042】
複数のユニット回路U1,U2は、電子バンドに対応する第1回路E1及びホールバンドに対応する第2回路H1をそれぞれ含み、第1回路E1の交流電圧の位相及び第2回路H1の交流電圧の位相は、互いに逆である。このような構成とすることで、電子とホールに相当する電圧状態をつくることができ、トポロジカル相とトポロジカルに自明な相との間にマヨラナ粒子又はマヨラナ粒子と同様の性質を持つマヨラナ類似状態に相当する電圧状態をつくることができる。
【0043】
複数のユニット回路U1,U2は、第1回路E1及び第2回路H1を接続し、交流電圧の位相を変化させる位相操作回路PCSをそれぞれ含む。位相操作回路PCSによって、量子系のハミルトニアンに含まれる超伝導位相に相当するパラメータを実現することができる。
【0044】
複数のユニット回路U1,U2は、分岐接続を含み、T字型に接続されている。後に説明するように、T字型の分岐を含むことで、トポロジカル相の両端に現れる2つのエッジ状態の位置を交換する操作を実現することができる。なお、T字型の分岐は、Y字型であったり、その他の分岐であったりしてもよい。
【0045】
複数のユニット回路U1、U2のうちトポロジカル相に対応するユニット回路と複数のユニット回路U1、U2のうちトポロジカルに自明な相に対応するユニット回路との境界に位置する端点の交流電圧又は複数のユニット回路U1、U2のうち端部に位置するユニット回路の端点の交流電圧は、ハミルトニアンのエッジ状態に対応する。ここで、複数のユニット回路U1、U2のうち端部に位置するユニット回路の端点は、空気又は通常の絶縁体と接しており、トポロジカルに自明な相と接している。本実施形態に係る電気回路10によれば、トポロジカル相とトポロジカルに自明な相との間にエッジ状態に相当する電圧状態をつくることができ、その電圧状態をブレイド操作することでトポロジカル量子計算と同等の計算を行うことができる。
【0046】
図2は、本実施形態に係る電気回路10に含まれる位相操作回路PCSを示す図である。同図では、左側の2本の線が第1回路E2の端点に接続され、右側の2本の線が第2回路H2の端点に接続される場合を示している。位相操作回路PCSは、オペアンプOP、キャパシタンスC
X
φ及びインダクタンスL
X
φを含む。
【0047】
図3は、本実施形態に係る位相操作回路PCSに含まれるオペアンプOPの構成を示す図である。オペアンプOPは、抵抗R
φを含む。
【0048】
図4は、本実施形態に係る位相操作回路PCSによってφ=0の電子-ホール間相互作用を実現する場合を示す図である。同図では、上側の2本の線が第1回路E1の端点に接続され、下側の2本の線が第2回路H1の端点に接続される場合を示している。
【0049】
図5は、本実施形態に係る位相操作回路によってφ=πの電子-ホール間相互作用を実現する場合を示す図である。同図では、上側の2本の線が第1回路E1の端点に接続され、下側の2本の線が第2回路H1の端点に接続される場合を示している。
【0050】
図6は、本実施形態に係る電気回路10に含まれ、オン状態であるトポロジカル相操作回路TCS1を示す図である。トポロジカル相操作回路TCS1は、キャパシタンスC
0及びインダクタンスL
0を含む。同図では、上側の1本の線がグランドに接続され、下側の1本の線が第1回路E1の端点に接続される場合を示している。
【0051】
トポロジカル相操作回路TCS1は、第1回路E1又は第2回路H1とグランドとを接続し、インピーダンスを切り替えるスイッチを含む。
【0052】
オン状態であるトポロジカル相操作回路TCS1は、第1回路E1の端点を、インダクタンスL0を介してグランドに接続する。
【0053】
図7は、本実施形態に係る電気回路10に含まれ、オフ状態であるトポロジカル相操作回路TCS1を示す図である。同図では、上側の1本の線がグランドに接続され、下側の1本の線が第1回路E1の端点に接続される場合を示している。
【0054】
オフ状態であるトポロジカル相操作回路TCS1は、第1回路E1の端点を、キャパシタンスC0を介してグランドに接続する。
【0055】
第2回路H2に接続されるトポロジカル相操作回路TCS2は、トポロジカル相操作回路TCS1と同じ構成を有するが、トポロジカル相操作回路TCS1に対してオンオフ状態が逆となる。すなわち、オン状態であるトポロジカル相操作回路TCS2は、第2回路H1の端点を、キャパシタンスC0を介してグランドに接続する。また、オフ状態であるトポロジカル相操作回路TCS2は、第2回路H1の端点を、インダクタンスL0を介してグランドに接続する。
【0056】
直線状に並んだ複数のトポロジカル相操作回路TCS1,TCS2のオンオフ状態を切り替えることで、トポロジカル相とトポロジカルに自明な相の長さを任意に調整することができるようになる。また、以下に説明するように、トポロジカル相とトポロジカルに自明な相の境界に現れるエッジ状態に関する多様なブレイド操作を実現することができる。
【0057】
図14は、本実施形態に係る電気回路10に記憶回路を設けた一例を示す図である。同図では、各端点において、トポロジカル相操作回路TCS1,TCS2と並列にLC共振器Rを接続することにより、ブレイド操作の情報を、LC共振器R中の振動電流または振動電圧の振幅と位相で記憶することができる。
【0058】
図15は、LC共振器Rを示す図である。同図に示すとおり、LC共振器Rは、キャパシタンスC
0とインダクタンスL
0とが並列に接続され、その一端がグランドに接続され、他端が第1回路又は第2回路の端点に接続される。
【0059】
図8は、本実施形態に係る電気回路10におけるエッジ状態のブレイド操作を模式的に示す図である。同図では、直線状に並んだ複数のユニット回路のうちトポロジカル相(topological)のユニット回路を比較的太い実線で示し、トポロジカルに自明な相(trivial)のユニット回路を比較的細い実線で示し、トポロジカル相とトポロジカルに自明な相との境界に現れるエッジ状態(電圧状態)を、ハッチングを入れた丸印で示している。
【0060】
同図では、トポロジカル相の両端に現れる2つのエッジ状態(マヨラナ類似状態)M
A
j-1及びM
B
j-1の位置を交換する操作と、トポロジカルに自明な相を挟んで隣接する2つのエッジ状態(マヨラナ類似状態)M
B
j及びM
A
j+1の位置を交換する操作を示している。両操作の詳細は、
図9及び10を用いて説明する。このように、本実施形態に係る電気回路10では、直線状に並んだエッジ状態をブレイド操作することで、量子計算と同等の計算を行う。
【0061】
本実施形態に係る電気回路10は、N個のトポロジカル相とN個のトポロジカルに自明な相とを接触させることで、その境界にトポロジカルに保護されたエッジ状態を2N個生成し、それらを交換するブレイド操作によりトポロジカル量子計算と同等の計算を行う。
【0062】
図9は、本実施形態に係る電気回路10においてトポロジカル相の両端に現れる2つのエッジ状態の位置を交換する操作を模式的に示す図である。同図では、直線状に並んだ複数のユニット回路のうちトポロジカル相のユニット回路を比較的太い実線で示し、トポロジカルに自明な相のユニット回路を比較的細い実線で示し、トポロジカル相の両端に現れるエッジ状態(電圧状態)を、ハッチングを入れた丸印で示している。また、ユニット回路を表す実線に重ねて記載された左向きの矢印及び上向きの矢印は、超伝導位相φ=0を表し、ユニット回路を表す実線に重ねて記載された右向きの矢印及び下向きの矢印は、超伝導位相φ=πを表す。
【0063】
(a)
トポロジカル相の両端に現れているエッジ状態のうち、右端のエッジ状態を中央に移動させるため、ユニット回路のトポロジカル相操作回路TCS1,TCS2のスイッチを右端側からオフに切り替えていく。以下、ユニット回路のまとまりを、図示のとおり、1番、2番及び3番と呼ぶ。1番、2番及び3番のユニット回路のまとまりは、T字型に分岐している。
【0064】
(b)
右端のエッジ状態を中央に移動させた後、3番のユニット回路のまとまりにエッジ状態を移動させる。この操作は、3番のユニット回路のまとまりに含まれるトポロジカル相操作回路TCS1,TCS2のスイッチを分岐側からオンに切り替えていくことで行われる。
【0065】
(c)
当初右端に位置していたエッジ状態を3番のユニット回路のまとまりの端部に移動させた後、左端に位置しているエッジ状態を中央に移動させるため、ユニット回路のトポロジカル相操作回路TCS1,TCS2のスイッチを左端側からオフに切り替えていく。
【0066】
(d)
左端のエッジ状態を中央に移動させた後、3番のユニット回路のまとまりの超伝導位相をφ=0からφ=πに変化させる。
【0067】
(e)
その後、中央に位置していたエッジ状態を右端に移動させる。
【0068】
(f)
3番のユニット回路のまとまりの端部に移動させたエッジ状態を、中央に移動させる。
【0069】
(g)
中央に移動させたエッジ状態を、左端に移動させる。
【0070】
(h)
中央に位置していたエッジ状態を左端に移動させた後、3番のユニット回路のまとまりの超伝導位相をφ=πからφ=0に変化させる。
【0071】
(i)
最終的に、当初左端に位置していたエッジ状態は、右端に位置し、当初右端に位置していたエッジ状態は、左端に位置するようになる。このようにして、2つのエッジ状態の交換操作を行うことができる。
【0072】
図10は、本実施形態に係る電気回路10においてトポロジカルに自明な相を挟んで隣接する2つのエッジ状態の位置を交換する操作を模式的に示す図である。同図では、直線状に並んだ複数のユニット回路のうちトポロジカル相のユニット回路を比較的太い実線で示し、トポロジカルに自明な相のユニット回路を比較的細い実線で示し、トポロジカル相の両端に現れるエッジ状態(電圧状態)を、ハッチングを入れた丸印で示している。また、ユニット回路を表す実線に重ねて記載された左向きの矢印及び上向きの矢印は、超伝導位相φ=0を表し、ユニット回路を表す実線に重ねて記載された右向きの矢印及び下向きの矢印は、超伝導位相φ=πを表す。
【0073】
(a)
左側に位置するトポロジカル相の右端に現れているエッジ状態を中央に移動させるため、ユニット回路のトポロジカル相操作回路TCS1,TCS2のスイッチをトポロジカルに自明な相の左端側からオンに切り替えていく。
【0074】
(b)
当初トポロジカルに自明な相の左端に位置していたエッジ状態を中央に移動させた後、T字型分岐の上側に移動させる。
【0075】
(c)
右側に位置するトポロジカル相の左端に現れているエッジ状態を中央に移動させるため、ユニット回路のトポロジカル相操作回路TCS1,TCS2のスイッチをトポロジカルに自明な相の右端側からオンに切り替えていく。
【0076】
(d)
当初トポロジカルに自明な相の右端に位置していたエッジ状態を中央に移動させた後、T字型分岐上側に位置するユニット回路のまとまりの超伝導位相をφ=0からφ=πに変化させる。
【0077】
(e)
その後、中央に位置していたエッジ状態を左端に移動させる。
【0078】
(f)
T字型分岐上側に位置するユニット回路のまとまりの端部に移動させたエッジ状態を、中央に移動させる。
【0079】
(g)
中央に移動させたエッジ状態を、右端に移動させる。
【0080】
(h)
中央に位置していたエッジ状態を右端に移動させた後、T字型分岐上側に位置するユニット回路のまとまりの超伝導位相をφ=πからφ=0に変化させる。
【0081】
(i)
最終的に、当初左側に位置するトポロジカル相の右端に現れていたエッジ状態は、右側に位置するトポロジカル相の左端に位置し、当初右側に位置するトポロジカル相の左端に現れていたエッジ状態は、左側に位置するトポロジカル相の右端に位置するようになる。このようにして、トポロジカルに自明な相を挟んで隣接する2つのエッジ状態の交換操作を行うことができる。
【0082】
図11は、本実施形態に係る電気回路10においてトポロジカル相の両端に現れる2つのエッジ状態の位置を交換する操作における波動関数の時間変化を示す図である。同図では、
図9に示す(a)から(i)の時間発展に対応するように、波動関数が局在している箇所を示している。なお、波動関数は、本実施形態に係る電気回路10の交流電圧に読み替えられる。そのため、粒子の存在確率は、交流電圧の振幅の2乗に読み替えられる。
【0083】
初期状態(a)において、T字型のユニット回路(T junction)の両端に波動関数が局在しており、トポロジカル相の両端にエッジ状態が形成されていることを示している。その後、(b)において右端のエッジ状態が中央に移動し、(c)において中央のエッジ状態がT字型分岐上側に位置するユニット回路のまとまりの端部に移動する。
【0084】
その後、(d)において、左端のエッジ状態が中央に移動し、T字型分岐上側に位置するユニット回路のまとまりの超伝導位相が変更される。(e)において中央に位置していたエッジ状態が右端に移動する。さらに、(f)において、T字型分岐上側に位置するユニット回路のまとまりの端部に位置していたエッジ状態が中央に移動し、(g)において、中央に移動したエッジ状態が左端に移動する。(h)では、T字型分岐上側に位置するユニット回路のまとまりの超伝導位相が変更される。最後に、(i)の状態となり、当初左端に位置していたエッジ状態は、右端に位置し、当初右端に位置していたエッジ状態は、左端に位置するようになる。
【0085】
図12は、本実施形態に係る電気回路10においてトポロジカル相の両端に現れる2つのエッジ状態の位置を交換する操作におけるエネルギー固有値とベリー位相の時間変化を示す図である。同図では、
図9に示す(a)から(i)の時間発展に対応するように、エネルギー固有値とベリー位相の時間変化を示している。なお、エネルギー固有値は、本実施形態に係る電気回路10のアドミッタンスに読み替えられ、ベリー位相は、交流電圧の位相に読み替えられる。
【0086】
(a)から(i)の操作を行う場合に、エネルギー固有値が正の状態は正のまま、エネルギー固有値が負の状態は負のまま変化している。すなわち、ギャップモードのエネルギーがゼロとなることはなく、ギャップレスのエッジ状態は、ブレイド操作によってバルクのギャップモードと混ざることがない。
【0087】
また、ベリー位相は、(d)から(e)の操作で0からπ/2に変化している。すなわち、(a)から(i)の操作によってトポロジカル相の両端に現れているエッジ状態の位置を交換すると、eiπ/2の位相が生じる。このことは、エッジ状態が非可換エニオンとなっていることを意味する。また、(a)から(i)の操作によって、iσxに相当する量子ゲートが実現できることを意味する。なお、ベリー位相は断熱近似に基づくため、(a)から(i)の操作は、交流周波数ωより十分遅い速度で行う必要がある。
【0088】
(a)から(i)の操作を2回続けて行うと、2つのエッジ状態の位置が元に戻る。しかしながら、ベリー位相はeiπ=-1となり、状態の位相が反転する。このようなエニオンは、イジングエニオンと呼ばれており、トポロジカル量子計算の基本的構成要素として知られている。
【0089】
(a)から(i)の操作を、隣接するエッジ状態j及びエッジ状態j+1を交換するブレイド操作Uj,j+1と表すとき、以下の数式(3)で表される3つのブレイド関係式を全て満たす。
【0090】
【0091】
このように、本実施形態に係る電気回路10によれば、トポロジカルに安定なエッジ状態のブレイド操作による量子計算と同等の計算を行うことができる。また、現実の電気回路を構成する素子にある程度の乱雑さや熱雑音があって、回路ラプラシアンにノイズが含まれたとしても、エッジ状態は摂動に対して安定であるから、トポロジカル量子計算と同等の計算ができることに変わりない。
【0092】
図13は、本実施形態に係る電気回路10において異なるトポロジカル相の両端現れるエッジ状態の位置を交換する操作を模式的に示す図である。同図では、十字型の分岐を含んで格子状に並んだ複数のユニット回路のうちトポロジカル相のユニット回路を比較的太い実線で示し、トポロジカルに自明な相のユニット回路を比較的細い実線で示し、トポロジカル相の両端に現れるエッジ状態(電圧状態)を、ハッチングを入れた丸印で示している。また、ユニット回路を表す実線に重ねて記載された左向きの矢印及び上向きの矢印は、超伝導位相φ=0を表し、ユニット回路を表す実線に重ねて記載された右向きの矢印及び下向きの矢印は、超伝導位相φ=πを表す。同図では、交換対象である2つのエッジ状態に符号A及びBを付している。第1エッジ状態Aは、トポロジカル相の左端に位置するエッジ状態であり、第2エッジ状態Bは、異なるトポロジカル相の右端に位置するエッジ状態である。
【0093】
本例の複数のユニット回路は、分岐接続を含み、十字型に接続されている。以下に説明するように、このような構成によって、異なるトポロジカル相の両端に現れる2つのエッジ状態の位置を交換する操作を実現することができる。
【0094】
(a)
はじめに、第1エッジ状態A及びその対となるエッジ状態を、十字型分岐の上側に移動させるとともに、第2エッジ状態B及びその対となるエッジ状態を、十字型分岐の下側に移動させ、(b)の状態とする。
【0095】
(b)
第1エッジ状態A及び第2エッジ状態Bのいずれか一方を十字型分岐の左側又は右側に退避させ、第1エッジ状態A及び第2エッジ状態Bの位置を交換し、(c)の状態とする。
【0096】
(c)
十字型分岐の下側に位置する第1エッジ状態A及びその対となるエッジ状態を、当初第2エッジ状態Bが位置していた箇所に移動させるとともに、十字型分岐の上側に位置する第2エッジ状態B及びその対となるエッジ状態を、当初第1エッジ状態Aが位置していた箇所に移動させ、(d)の状態とする。
【0097】
(d)
最終的に、当初上側に位置するトポロジカル相の左端に現れていた第1エッジ状態Aは、下側に位置するトポロジカル相の右端に位置し、当初下側に位置するトポロジカル相の右端に現れていた第2エッジ状態Bは、上側に位置するトポロジカル相の左端に位置するようになる。このようにして、異なるトポロジカル相の両端に現れているエッジ状態の交換操作を行うことができる。
【0098】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。実施形態が備える各要素並びにその配置、材料、条件、形状及びサイズ等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、異なる実施形態で示した構成同士を部分的に置換し又は組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0099】
10…電気回路、E1,E2…第1回路、H1,H2…第2回路、OP…オペアンプ、PCS…位相操作回路、TCS…トポロジカル相操作回路、U1,U2…ユニット回路、R…LC共振器(記憶回路)