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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-10
(45)【発行日】2024-01-18
(54)【発明の名称】円板状ワークの加工方法
(51)【国際特許分類】
   B24B 49/03 20060101AFI20240111BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20240111BHJP
   B24B 41/06 20120101ALI20240111BHJP
   B24B 7/00 20060101ALI20240111BHJP
   B24B 37/04 20120101ALI20240111BHJP
【FI】
B24B49/03 Z
H01L21/304 631
H01L21/304 621B
H01L21/304 622S
H01L21/304 622R
B24B41/06 L
B24B7/00 A
B24B37/04
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019194320
(22)【出願日】2019-10-25
(65)【公開番号】P2020093381
(43)【公開日】2020-06-18
【審査請求日】2022-08-24
(31)【優先権主張番号】P 2018229799
(32)【優先日】2018-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】弁理士法人東京アルパ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 雄貴
【審査官】マキロイ 寛済
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-201422(JP,A)
【文献】特開2000-077369(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 49/03
H01L 21/304
B24B 41/06
B24B 7/00
B24B 37/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
保持テーブルの保持面に保持させた円板状ワークを研削砥石で研削及び研磨パッドで研磨する円板状ワークの加工方法であって、
該保持テーブルに円板状ワークを保持させる保持工程と、
該円板状ワークと研削ホイールとをそれぞれ回転させ該研削砥石で該円板状ワークを研削する研削工程と、
該研削工程後、該円板状ワークと該研磨パッドとをそれぞれ回転させて該研磨パッドが該円板状ワークを覆った状態で研磨する研磨工程と、
該研磨工程後に、該円板状ワークの中心の第1の測定点と、該円板状ワークの外周縁近くの第2の測定点との少なくとも2つの測定点において該円板状ワークの厚みを測定する測定工程と、
該測定工程で測定した該2つの測定点における該円板状ワークの厚みから該円板状ワークの径方向における厚み傾向を認識する厚み傾向認識工程と、
次の該研削工程で該厚み傾向認識工程で認識した該厚み傾向に反する厚み傾向の円板状ワークを形成させるために、該研削ホイールが装着された回転軸と該保持テーブルの回転軸との傾き関係を変更する傾き変更工程と、を備え、
研磨工程前に該第1の測定点と、該第2の測定点との少なくとも2つの測定点において該円板状ワークの厚みを測定する研磨前測定工程と、
該傾き変更工程前に、該研磨前測定工程で測定した該2つの測定点における該円板状ワークの厚みから該測定工程で測定した該2つの測定点における該円板状ワークの厚みを差し引いて該2つの測定点における研磨除去量を算出する算出工程と、を含み、
該傾き変更工程では、該厚み傾向認識工程で認識した厚み傾向から該研磨除去量を差し引いた該円板状ワークの厚み傾向に反する厚み傾向の円板状ワークを次の該研削工程で形成させるために、該研削ホイールが装着された回転軸と該保持テーブルの回転軸との傾き関係を変更する円板状ワークの加工方法。
【請求項2】
前記測定工程では、前記2つの測定点と、前記第1の測定点と前記第2の測定点との中間点である第3の測定点との少なくとも3つの測定点において前記円板状ワークの厚みを測定して、
前記厚み傾向認識工程では、少なくとも該3つの測定点における該円板状ワークの厚みから該円板状ワークの径方向における厚み傾向を認識し、
前記研磨前測定工程では、少なくとも該3つの測定点において該円板状ワークの厚みを測定し、
該測定工程では、少なくとも該3つの測定点において該円板状ワークの厚みを測定し、
前記算出工程では、該研磨前測定工程で測定した該3つの測定点における該円板状ワークの厚みから該測定工程で測定した該3つの測定点における該円板状ワークの厚みを差し引いて該3つの測定点における研磨除去量を算出し、
該厚み傾向認識工程では、少なくとも該3つの測定点における該円板状ワークの厚みから該円板状ワークの径方向における厚み傾向を認識する請求項1記載の円板状ワークの加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円板状ワークを研削及び研磨する加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
円板状ワークからデバイスチップを製造する場合等においては、特許文献1に開示されているように、円板状ワークを研削砥石で研削して薄化した後に、円板状ワークの被研削面を覆う面積の研磨面を備える研磨パッドで被研削面を研磨している。
【0003】
研削加工では、研削砥石を環状に配設した研削ホイールを回転させ、研削砥石で円板状ワークを均一な厚みに研削している。円板状ワークを均一な厚みに研削するために特許文献2に開示されているように、研削加工中に研削を一時停止させて、円板状ワークの半径において、半径の中点と、該中点から中心方向と外周方向とに同じ距離離反する2点との計3点での円板状ワーク厚みを測定する。そして、その3つの測定点の円板状ワークの厚み差が無くなるように、研削ホイールを回転させるスピンドル軸と円板状ワークを保持する保持テーブルのテーブル回転軸との傾き関係を変更している。
【0004】
均一な厚みに研削された円板状ワークを研磨した場合、研磨パッドが接触する時間が長い円板状ワークの中央部分が多く研磨され中凹形状の円板状ワークになってしまうことがある。また、研削と研磨とが同じ保持テーブルを使用する研削研磨装置では、保持テーブルの保持面が中心を頂点とする円錐形状になっている。その円錐形状の保持テーブルが保持する研削後の円板状ワークを研磨すると、円板状ワークの中心部分に研磨パッドが強くあてられるため中心部分が研磨されやすい。その対策として、特許文献3に開示されているように、研磨パッドの研磨面を部分的にドレスして、研磨面の中央が円板状ワークに強くあたらないように研磨面を形成することで、研磨後の円板状ワークの厚みが均一になるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2005-153090号公報
【文献】特開2013-119123号公報
【文献】特開2015-223636号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、研磨パッドを円板状ワークに押し付ける時間を長くする研磨加工では、特許文献3に開示されているように研磨パッドの研磨面を所望の形にドレスした場合であっても、研磨パッドが押しつぶされ、研磨後の円板状ワークは中凹形状になってしまうという問題がある。
さらに、ドレスによって研磨パッドが薄くなると研磨パッドのクッション性が小さくなり、保持テーブルが保持する円板状ワークの中心部分に研磨パッドが強く押し付けられ、研磨後の円板状ワークは中凹形状になってしまうという問題がある。
よって、円板状ワークを加工する場合には、研磨後の円板状ワークが均一な厚みになるように加工するという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明は、保持テーブルの保持面に保持させた円板状ワークを研削砥石で研削及び研磨パッドで研磨する円板状ワークの加工方法であって、該保持テーブルに該円板状ワークを保持させる保持工程と、該円板状ワークと該研削ホイールとをそれぞれ回転させ該研削砥石で該円板状ワークを研削する研削工程と、該研削工程後、該円板状ワークと該研磨パッドとをそれぞれ回転させて該研磨パッドが該円板状ワークを覆った状態で研磨する研磨工程と、該研磨工程後に、該円板状ワークの中心の第1の測定点と、該円板状ワークの外周縁近くの第2の測定点との少なくとも2つの測定点において該
円板状ワークの厚みを測定する測定工程と、該測定工程で測定した該2つの測定点における該円板状ワークの厚みから該円板状ワークの径方向における厚み傾向を認識する厚み傾向認識工程と、次の該研削工程で該厚み傾向認識工程で認識した該厚み傾向に反する厚み傾向の円板状ワークを形成させるために、該研削ホイールが装着された回転軸と該保持テーブルの回転軸との傾き関係を変更する傾き変更工程と、を備え、該研磨研削工程前に該第1の測定点と、該第2の測定点との少なくとも2つの測定点において該円板状ワークの厚みを測定する研磨前測定工程と、該傾き変更工程前に、該研磨前測定工程で測定した該2つの測定点における該円板状ワークの厚みから該測定工程で測定した該2つの測定点における該円板状ワークの厚みを差し引いて該2つの測定点における研磨除去量を算出する算出工程と、を含み、該傾き変更工程では、該厚み傾向認識工程で認識した厚み傾向から該研磨除去量を差し引いた該円板状ワークの厚み傾向に反する厚み傾向の円板状ワークを次の該研削工程で形成させるために、該研削ホイールが装着された回転軸と該保持テーブルの回転軸との傾き関係を変更する円板状ワークの加工方法である。
【0008】
本発明に係る円板状ワークの加工方法においては、前記測定工程では、前記2つの測定点と、前記第1の測定点と前記第2の測定点との中間点である第3の測定点との少なくとも3つの測定点において前記円板状ワークの厚みを測定して、前記厚み傾向認識工程では、少なくとも該3つの測定点における該円板状ワークの厚みから該円板状ワークの径方向における厚み傾向を認識し、前記研磨前測定工程では、少なくとも該3つの測定点において該円板状ワークの厚みを測定し、該測定工程では、少なくとも該3つの測定点において該円板状ワークの厚みを測定し、前記算出工程では、該研磨前測定工程で測定した該3つの測定点における該円板状ワークの厚みから該測定工程で測定した該3つの測定点における該円板状ワークの厚みを差し引いて該3つの測定点における研磨除去量を算出し、該厚み傾向認識工程では、少なくとも該3つの測定点における該円板状ワークの厚みから該円板状ワークの径方向における厚み傾向を認識すると好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る円板状ワークの加工方法は、保持テーブルに円板状ワークを保持させる保持工程と、円板状ワークと研削ホイールとをそれぞれ回転させ研削砥石で円板状ワークを研削する研削工程と、研削工程後、円板状ワークと研磨パッドとをそれぞれ回転させて研磨パッドが円板状ワークを覆った状態で研磨する研磨工程と、研磨工程後に、円板状ワークの中心の第1の測定点と、円板状ワークの外周縁近くの第2の測定点との少なくとも2点において円板状ワークの厚みを測定する測定工程と、測定工程で測定した2つの測定点における円板状ワークの厚みから円板状ワークの径方向における厚み傾向(例えば、中凹状となる傾向)を認識する厚み傾向認識工程と、次の研削工程で厚み傾向認識工程で認識した厚み傾向に反する厚み傾向(例えば、中凸状となる傾向)の円板状ワークを形成させるために、研削ホイールが装着された回転軸と保持テーブルの回転軸との傾き関係を変更する傾き変更工程と、を備えることで、新たな円板状ワークを先に研磨加工された円板状ワークよりも研磨後に高精度に平坦化することが可能となる。
なお、研削研磨加工中に、研磨パッドは定期的にドレスを行っており、ドレスが繰り返され研磨パッドの厚みが薄くなると、研磨パッドはさらに中凹状になりやすいという現象があるが、本発明に係る円板状ワークの加工方法は、研磨パッドに定期的にドレスを施した場合でも、新たな円板状ワークを先に研磨加工された円板状ワークよりも研磨後に高精度に平坦化することが可能となる。
【0012】
本発明に係る円板状ワークの加工方法においては、測定工程では、前記2つの測定点と、第1の測定点と第2の測定点との中間点である第3の測定点との少なくとも3つの測定点において円板状ワークの厚みを測定して、厚み傾向認識工程では、少なくとも3つの測定点における円板状ワークの厚みから円板状ワークの径方向における厚み傾向を認識することで、傾き変更工程において研削ホイールが装着された回転軸と保持テーブルの回転軸との傾き関係を変更する際に、測定点が2つである場合よりも適切に該傾き関係を変更することが可能となる。
【0013】
本発明に係る円板状ワークの加工方法において、研磨工程前に第1の測定点と、第2の測定点との少なくとも2つの測定点において円板状ワークの厚みを測定する研磨前測定工程と、傾き変更工程前に、研磨前測定工程で測定した2つの測定点における円板状ワークの厚みから測定工程で測定した2つの測定点における円板状ワークの厚みを差し引いて2つの測定点における研磨除去量を算出する算出工程と、を含み、傾き変更工程では、厚み傾向認識工程で認識した厚み傾向から算出した研磨除去量を差し引いた円板状ワークの厚み傾向に反する厚み傾向の円板状ワークを次の研削工程で形成させるために、研削ホイールが装着された回転軸と保持テーブルの回転軸との傾き関係を変更することで、新たな円板状ワークを先に研磨加工された円板状ワークよりも研磨後に高精度に平坦化することが可能となる。
【0014】
本発明に係る円板状ワークの加工方法においては、研磨前測定工程では、前記2つの測定点と、第1の測定点と第2の測定点との中間点である第3の測定点との少なくとも3つの測定点において円板状ワークの厚みを測定し、測定工程では、少なくとも3つの測定点において円板状ワークの厚みを測定し、算出工程では、研磨前測定工程で測定した3つの測定点における円板状ワークの厚みから測定工程で測定した3つの測定点における円板状ワークの厚みを差し引いて3つの測定点における研磨除去量を算出し、厚み傾向認識工程では、少なくとも3つの測定点における円板状ワークの厚みから円板状ワークの径方向における厚み傾向を認識することで、傾き変更工程において研削ホイールが装着された回転軸と保持テーブルの回転軸との傾き関係を変更する際に、測定点が2つである場合よりも適切に該傾き関係を変更することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】研削研磨装置の一例を示す斜視図である。
図2】位置調整ユニットと保持テーブルと保持テーブル回転手段とを示す斜視図である。
図3】傾き調整手段を構成する位置調整ユニットの配置例を示す説明図である。
図4】位置調整ユニットの例を示す断面図である。
図5】実施形態1の円板状ワークの加工方法の各工程の流れを説明するフローチャートである。
図6】保持テーブルに円板状ワークを保持させた状態を説明する断面図である。
図7】板状ワークと研削ホイールとをそれぞれ回転させ研削砥石で円板状ワークを研削している状態を説明する断面図である。
図8】研削加工中における研削砥石による円板状ワークの加工領域を上方から見た場合の説明図である。
図9】円板状ワークと研磨パッドとをそれぞれ回転させて研磨パッドが円板状ワークを覆った状態で研磨を行っている状態を説明する断面図である。
図10】研磨加工における研磨パッドによる円板状ワークの加工領域を下方から見た場合の説明図である。
図11】円板状ワークの中心の第1の測定点と、円板状ワークの外周縁近くの第2の測定点と、第1の測定点と第2の測定点との中間点である第3の測定点との3点において円板状ワークの厚みを測定している状態を説明する断面図である。
図12】次の新たな円板状ワークに対する研削工程で厚み傾向認識工程で認識した厚み傾向に反する厚み傾向の円板状ワークを形成させるために、研削ホイールが装着された回転軸と保持テーブルの回転軸との傾き関係を変更している状態を説明する断面図である。
図13】実施形態2の円板状ワークの加工方法の各工程の流れを説明するフローチャートである。
図14】保持テーブルに一枚目の円板状ワークを保持させた状態を説明する断面図である。
図15】一枚目の板状ワークと研削ホイールとをそれぞれ回転させ研削砥石で円板状ワークを研削している状態を説明する断面図である。
図16】研磨前の一枚目の円板状ワークの中心の第1の測定点と、円板状ワークの外周縁近くの第2の測定点と、第1の測定点と第2の測定点との中間点である第3の測定点との3点において円板状ワークの厚みを測定している状態を説明する断面図である。
図17】一枚目の円板状ワークと研磨パッドとをそれぞれ回転させて研磨パッドが円板状ワークを覆った状態で研磨を行っている状態を説明する断面図である。
図18】研磨後の一枚目の円板状ワークの中心の第1の測定点と、円板状ワークの外周縁近くの第2の測定点と、第1の測定点と第2の測定点との中間点である第3の測定点との3点において円板状ワークの厚みを測定している状態を説明する断面図である。
図19】一枚目の円板状ワークについての厚み傾向認識工程で認識した厚み傾向、及び認識した厚み傾向から研磨除去量を差し引いた厚み傾向、並びに研磨除去量を差し引いた厚み傾向に反し次の研削工程で二枚目の円板状ワークに形成すべき厚み傾向を説明するための説明図である。
図20】厚み傾向認識工程で認識した厚み傾向から算出した研磨除去量を差し引いた一枚目の円板状ワークの厚み傾向に反する厚み傾向の二枚目の円板状ワークを次の研削工程で形成させるために、保持テーブルの回転軸の傾きを変更する場合を説明する断面図である。
図21】二枚目の円板状ワークを保持テーブルで保持して所望厚みになるように研削している状態を説明する断面図である。
図22】研磨前の二枚目の円板状ワークの中心の第1の測定点と、円板状ワークの外周縁近くの第2の測定点と、第1の測定点と第2の測定点との中間点である第3の測定点との3点において円板状ワークの厚みを測定している状態を説明する断面図である。
図23】二枚目の円板状ワークと研磨パッドとをそれぞれ回転させて研磨パッドが円板状ワークを覆った状態で研磨を行っている状態を説明する断面図である。
図24】研磨後の二枚目の円板状ワークの中心の第1の測定点と、円板状ワークの外周縁近くの第2の測定点と、第1の測定点と第2の測定点との中間点である第3の測定点との3点において円板状ワークの厚みを測定している状態を説明する断面図である。
図25】二枚目の円板状ワークにおける傾き変更工程における傾き維持を説明する断面図である。
図26】三枚目の円板状ワークを保持テーブルで保持して所望厚みになるように研削している状態を説明する断面図である。
図27】研磨前の三枚目の円板状ワークの中心の第1の測定点と、円板状ワークの外周縁近くの第2の測定点と、第1の測定点と第2の測定点との中間点である第3の測定点との3点において円板状ワークの厚みを測定している状態を説明する断面図である。
図28】三枚目の円板状ワークと研磨パッドとをそれぞれ回転させて研磨パッドが円板状ワークを覆った状態で研磨を行っている状態を説明する断面図である。
図29】研磨後の三枚目の円板状ワークの中心の第1の測定点と、円板状ワークの外周縁近くの第2の測定点と、第1の測定点と第2の測定点との中間点である第3の測定点との3点において円板状ワークの厚みを測定している状態を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1に示す研削研磨装置1は、粗研削手段30、仕上げ研削手段31、及び研磨手段4を備え、いずれかの保持テーブル5上に保持された円板状ワークWを粗研削手段30及び仕上げ研削手段31により研削し、さらに、研磨手段4により研磨する装置である。
研削研磨装置1は、例えば、第1の装置ベース10の後方(+Y方向側)に第2の装置ベース11を連結して構成されている。第1の装置ベース10上は、円板状ワークWの搬出入等が行われる搬出入領域Aとなっている。第2の装置ベース11上は、粗研削手段30、仕上げ研削手段31又は研磨手段4によって保持テーブル5で保持された円板状ワークWが加工される加工領域Bとなっている。
【0017】
図1に示す円板状ワークWは、例えば、シリコン母材等からなる円形の半導体ウェーハであり、図1においては下方を向いている円板状ワークWの表面Waは、複数のデバイスが形成されており、図示しない保護テープが貼着されて保護されている。円板状ワークWの裏面Wbは、研削加工や研磨加工が施される被加工面となる。なお、円板状ワークWはシリコン以外にガリウムヒ素、サファイア、窒化ガリウム又はシリコンカーバイド等で構成されていてもよい。
【0018】
第1の装置ベース10の正面側(-Y方向側)には、第1のカセット載置部150及び第2のカセット載置部151が設けられており、第1のカセット載置部150には加工前の円板状ワークWが収容される第1のカセット150aが載置され、第2のカセット載置部151には加工後の円板状ワークWが収容される第2のカセット151aが載置される。
【0019】
第1のカセット150aの+Y方向側の開口の後方には、第1のカセット150aから加工前の円板状ワークWを搬出するとともに加工後の円板状ワークWを第2のカセット151aに搬入するロボット155が配設されている。ロボット155に隣接する位置には、仮置き領域152が設けられており、仮置き領域152には位置合わせ手段153が配設されている。位置合わせ手段153は、第1のカセット150aから搬出され仮置き領域152に載置された円板状ワークWを、縮径する位置合わせピンで所定の位置に位置合わせ(センタリング)する。
【0020】
位置合わせ手段153と隣接する位置には、円板状ワークWを保持した状態で旋回するローディングアーム154aが配置されている。ローディングアーム154aは、位置合わせ手段153において位置合わせされた円板状ワークWを保持し、加工領域B内に配設されているいずれかの保持テーブル5へ搬送する。ローディングアーム154aの隣には、加工後の円板状ワークWを保持した状態で旋回するアンローディングアーム154bが設けられている。アンローディングアーム154bと近接する位置には、アンローディングアーム154bにより搬送された加工後の円板状ワークWを洗浄する枚葉式の洗浄手段156が配置されている。洗浄手段156により洗浄された円板状ワークWは、ロボット155により第2のカセット151aに搬入される。
【0021】
第2の装置ベース11上の後方(+Y方向側)には第1のコラム12が立設されており、第1のコラム12の前面には粗研削送り手段20が配設されている。粗研削送り手段20は、鉛直方向(Z軸方向)の軸心を有するボールネジ200と、ボールネジ200と平行に配設された一対のガイドレール201と、ボールネジ200に連結しボールネジ200を回動させるモータ202と、内部のナットがボールネジ200に螺合し側部がガイドレール201に摺接する昇降板203と、昇降板203に連結され粗研削手段30を保持するホルダ204とから構成され、モータ202がボールネジ200を回動させると、これに伴い昇降板203がガイドレール201にガイドされてZ軸方向に往復移動し、ホルダ204に支持された粗研削手段30もZ軸方向に往復移動する。
【0022】
粗研削手段30は、軸方向が鉛直方向(Z軸方向)である回転軸300と、回転軸300を回転可能に支持するハウジング301と、回転軸300を回転駆動するモータ302と、回転軸300の下端に接続された円形状のマウント303と、マウント303の下面に着脱可能に接続された研削ホイール304とを備える。そして、研削ホイール304は、ホイール基台304aと、ホイール基台304aの底面に環状に配設された略直方体形状の複数の粗研削砥石304bとを備える。粗研削砥石304bは、例えば、砥石中に含まれる砥粒が比較的大きな砥石である。
例えば、回転軸300の内部には、Z軸方向に延びる研削水流路が形成されており、この研削水流路に図示しない研削水供給手段が連通している。研削水供給手段から回転軸300に対して供給される研削水は、研削水流路の下端の開口から粗研削砥石304bに向かって下方に噴出し、粗研削砥石304bと円板状ワークWとの接触部位に到達する。
【0023】
また、第2の装置ベース11上の後方には、第2のコラム13が第1のコラム12にX軸方向に並んで立設しており、第2のコラム13の前面には仕上げ研削送り手段21が配設されている。仕上げ研削送り手段21は、粗研削送り手段20と同様に構成されており、仕上げ研削手段31をZ軸方向に研削送りすることができる。仕上げ研削手段31は、砥石中に含まれる砥粒が比較的小さな仕上げ研削砥石314bを備えており、その他の構成は粗研削手段30と同様となっている。
【0024】
第2の装置ベース11上の片側(-X方向側)には、第3のコラム14が立設されており、第3のコラム14の前面には、Y軸方向移動手段24が配設されている。Y軸方向移動手段24は、Y軸方向の軸心を有するボールネジ240と、ボールネジ240と平行に配設された一対のガイドレール241と、ボールネジ240を回動させるモータ242と、内部のナットがボールネジ240に螺合し側部がガイドレール241に摺接する可動板243とから構成される。そして、モータ242がボールネジ240を回動させると、これに伴い可動板243がガイドレール241にガイドされてY軸方向に移動し、可動板243上に配設された研磨手段4が可動板243の移動に伴いY軸方向に移動する。
【0025】
可動板243上には、研磨手段4を保持テーブル5に対して接近又は離間するZ軸方向に昇降させる研磨送り手段25が配設されている。研磨送り手段25は、鉛直方向の軸心を有するボールネジ250と、ボールネジ250と平行に配設された一対のガイドレール251と、ボールネジ250に連結しボールネジ250を回動させるモータ252と、内部のナットがボールネジ250に螺合し側部がガイドレール251に摺接する昇降板253と、昇降板253に連結され研磨手段4を保持するホルダ254とから構成され、モータ252がボールネジ250を回動させると昇降板253がガイドレール251にガイドされてZ軸方向に移動し、ホルダ254に支持された研磨手段4もZ軸方向に移動する。
【0026】
研磨手段4は、例えば、軸方向が鉛直方向である回転軸40と、回転軸40を回転可能に支持するハウジング41と、回転軸40を回転駆動するモータ42と、回転軸40の下端に固定された円形板状のマウント43と、マウント43の下面に着脱可能に取り付けられた円形の研磨パッド44とから構成されている。研磨パッド44は、例えば、フェルト等の不織布からなり、中央部分にスラリ(遊離砥粒を含む研磨液)が通液される貫通孔が形成されている。研磨パッド44の直径は、マウント43の直径と同程度の大きさとなっており、また、保持テーブル5の直径よりも大径となっている。
【0027】
回転軸40の内部には、軸方向に延びるスラリ流路が形成されており、該スラリ流路に図示しないスラリ供給手段が連通している。スラリ供給手段から回転軸40に対して供給されるスラリは、スラリ流路の下端の開口から研磨パッド44に向かって噴出し、研磨パッド44の貫通孔を通り研磨パッド44と円板状ワークWとの接触部位に到達する。
【0028】
図1に示すように、第2の装置ベース11上には、ターンテーブル6が配設され、ターンテーブル6の上面には、例えば保持テーブル5が周方向に等間隔を空けて4つ配設されている。ターンテーブル6の下面側にはエアを供給する図示しないエア供給源が接続されている。該エア供給源が供給するエアをターンテーブル6の下面に吹きつけることにより、ターンテーブル6を浮上させZ軸方向の軸心周りに回転可能な状態にすることができる。また、ターンテーブル6の中心には、ターンテーブル6を自転させるための図示しない回転軸が配設されており、回転軸を中心としてターンテーブル6をZ軸方向の軸心周りに自転させることができる。ターンテーブル6が自転することで、4つの保持テーブル5を公転させ、仮置き領域152の近傍から、粗研削手段30の下方、仕上げ研削手段31の下方、研磨手段4の下方へと保持テーブル5を順次位置付けることができる。
【0029】
図1に示すように、保持テーブル5は、上部にポーラス部材50を備えており、ポーラス部材50は、枠体502によって囲繞されつつ支持されているとともに、図示しない吸引源に連通している。ポーラス部材50の上面は、円板状ワークWの表面Waを保持する保持面50aとなっており、また、保持テーブル5の回転中心を頂点とする極めて緩やか傾斜を備える円錐面に形成されている。そして、円板状ワークWも、円錐面である保持面50aにならって保持される。なお、保持面50aの傾斜は、肉眼では認識できないほどのわずかな傾斜である。
【0030】
保持テーブル5は、保持面50aの中心を通る回転軸571を中心として回転可能となっている。図2に示すように、回転軸571には配管571bが貫通して形成されており、配管571bは、図示しない保持面50aの吸引力を生み出す吸引源に連通している。
【0031】
保持テーブル5は、図2に示す保持テーブル回転手段57によって回転可能となっている。保持テーブル回転手段57は、例えば、前記回転軸571と、保持テーブル5の中心を軸に保持テーブル5を回転させる駆動源となるモータ572とを備えたプーリ機構である。モータ572のシャフトには、プーリ573が取り付けられており、プーリ573には無端ベルト574が巻回されている。無端ベルト574は、回転軸571にも巻回されている。モータ572がプーリ573を回転駆動することで、プーリ573の回転に伴って無端ベルト574が回動し、無端ベルト574が回動することで回転軸571及び保持テーブル5が回転する。
【0032】
図2に示すように、個々の保持テーブル5は、回転軸571の傾きを調整する傾き変更手段51を備えている。
傾き変更手段51は、支持台52と、支持台52に連結された位置調整ユニット53とから構成されている。支持台52は、円筒状に形成された支持筒部520と、支持筒部520から拡径したフランジ部521とから構成されている。支持台52は、回転軸571の上部側を囲繞しており、その内部に配設された図示しないベアリングを介して保持テーブル5の回転軸571を回転可能に支持している。そして、傾き変更手段51は、フランジ部521の傾きを調整することにより、回転軸571の傾き、即ち、保持面50aの傾きを調整する機能を有する。
【0033】
図2に示した位置調整ユニット53は、フランジ部521に周方向に等間隔空けて2つ以上設けられている。例えば図3に示すように、120度間隔で、2つの位置調整ユニット53と、フランジ部521を固定する固定ユニット53aとが配設される。また、位置調整ユニット53が3つ以上配設されるようにしてもよい。
【0034】
図2、4に示すように、位置調整ユニット53は、ビス539によってターンテーブル6に固定された筒部531と、筒部531を貫通するシャフト532と、シャフト532の下端に連結された駆動部533と、シャフト532の上端においてフランジ部521に固定された固定部534とから構成されている。駆動部533は、シャフト532を回転させるモータ533aと、シャフト532の回転速度を弱める減速機533bとから構成されている。
【0035】
図4に示すように、シャフト532の上端部には、第1の雄ねじ532aが形成されている。一方、固定部534は、第1の雄ねじ532aに螺合する第1の雌ねじ535aを有するナット535と、ボルト536aによってナット535に固定された挟持ナット536とから構成され、ナット535と挟持ナット536とでフランジ部521を挟持している。ボルト536aとシャフト532との間にはスプリング536bが介在している。
【0036】
筒部531は、ターンテーブル6に形成された孔6cにおいて支持されている。また、シャフト532の下端部には、カップリング532cを介して減速機533b及びモータ533aが連結されており、モータ533aによる駆動によりシャフト532を回転させることができる。その結果、フランジ部521の傾きを変化させることができる。
【0037】
例えば、図1に示すように、ターンテーブル6の中央には、円柱状の支持台64が設けられており、支持台64上には、粗研削厚み測定手段65、仕上げ研削厚み測定手段66、及び研磨厚み測定手段67が配設されている。粗研削厚み測定手段65、仕上げ研削厚み測定手段66、及び研磨厚み測定手段67の構成は同様であるため、以下粗研削厚み測定手段65の構成について説明する。
【0038】
粗研削厚み測定手段65は、第2の装置ベース11に水平に延びるアーム650を備えており、アーム650は、支持台64上に固定された移動手段659によって水平に旋回移動可能となっている。
アーム650には、その延在方向に光センサ652、光センサ653、光センサ651が直線状に均等に離して並ぶように配設されている。
【0039】
図1に示すように、研削研磨装置1は、例えば、装置全体の制御を行う制御手段9を備えている。制御手段9は、制御プログラムに従って演算処理するCPU及びメモリ等の記憶部90を備えており、粗研削送り手段20、仕上げ研削送り手段21、粗研削手段30、仕上げ研削手段31及び保持テーブル回転手段57(図2参照)等に電気的に接続されている。そして、制御手段9の制御の下で、粗研削送り手段20(仕上げ研削送り手段21)による粗研削手段30(仕上げ研削手段31)のZ軸方向への研削送り動作、及び粗研削手段30(仕上げ研削手段31)における研削ホイール304の回転動作、保持テーブル回転手段57による保持テーブル5の回転動作等が制御される。
【0040】
(加工方法の実施形態1)
以下に、上記図1に示す研削研磨装置1を用いて円板状ワークWに研削加工及び研磨加工を施す場合の各工程について説明する。本発明に係る円板状ワークの加工方法(以下、実施形態1の加工方法とする。)の各工程は、例えば、図5に示すフローチャートに示す順番で実施されていく。
【0041】
(1)保持工程
まず、図1に示すターンテーブル6が自転することで、円板状ワークWが載置されていない状態の保持テーブル5が公転し、保持テーブル5がローディングアーム154aの近傍まで移動する。ロボット155が第1のカセット150aから一枚の円板状ワークWを引き出し、円板状ワークWを仮置き領域152に移動させる。次いで、位置合わせ手段153により円板状ワークWがセンタリングされた後、ローディングアーム154aが、センタリングされた円板状ワークWを保持テーブル5上に移動させる。そして、図6に示すように、保持テーブル5の中心と円板状ワークWの中心とが略合致するように、円板状ワークWが裏面Wbを上に向けた状態で保持面50a上に載置される。なお、図6においては傾き変更手段51や保持テーブル回転手段57等の構成を簡略化して示している。
【0042】
そして、図示しない吸引源が作動して生み出された吸引力が、図2に示す配管571bを通り保持面50aに伝達されることで、保持テーブル5により円板状ワークWが保持される。また、緩やかな円錐面である保持面50aが図1に示す粗研削手段30の粗研削砥石304bの研削面(下面)に対して平行になるように、図2に示す傾き変更手段51によって保持テーブル5の傾き(回転軸571の傾き)が調整されることで、図7に示すように、円錐面である保持面50aにならって吸引保持されている円板状ワークWの裏面Wbが、粗研削砥石304bの研削面に対して略平行になる。
【0043】
(2)研削工程
図1に示すターンテーブル6が+Z方向から見て反時計回り方向に自転することで、円板状ワークWを吸引保持した状態の保持テーブル5が公転し、粗研削手段30の粗研削砥石304bと保持テーブル5に保持された円板状ワークWとの位置合わせがなされる。位置合わせは、例えば、図7図8に示すように、粗研削砥石304bの回転中心が円板状ワークWの回転中心に対して所定の距離だけ水平方向にずれ、粗研削砥石304bの回転軌跡が円板状ワークWの回転中心を通るように行われる。
【0044】
図7に示すように、モータ302により回転軸300が所定の回転速度で回転されるのに伴って、粗研削砥石304bが回転する。また、粗研削手段30が粗研削送り手段20により-Z方向へと送られ、回転する粗研削砥石304bが保持テーブル5で保持された円板状ワークWの裏面Wbに当接することで研削加工が行われる。また、保持テーブル回転手段57が保持テーブル5を所定の回転速度で回転させるのに伴い保持面50a上に保持された円板状ワークWも回転するので、粗研削砥石304bが円板状ワークWの裏面Wb全面の粗研削加工を行う。粗研削加工中において、図示しない研削水供給手段が、研削水を回転軸300中の研削水流路を通して粗研削砥石304bと円板状ワークWの裏面Wbとの接触部位に供給して、接触部位を冷却・洗浄する。
【0045】
円板状ワークWは保持テーブル5の緩やかな円錐面である保持面50aにならって吸引保持されているため、図8に示すように、粗研削砥石304bの回転軌跡中の矢印R1で示す範囲内において、粗研削砥石304bは円板状ワークWに当接し研削を行う。
【0046】
仕上げ厚みの手前まで円板状ワークWが粗研削された後、図7に示す粗研削送り手段20が粗研削手段30を上昇させ円板状ワークWから離間させる。そして、図1に示すターンテーブル6が+Z方向から見て反時計回り方向に回転して、円板状ワークWを吸引保持する保持テーブル5が仕上げ研削手段31の下方まで移動する。
【0047】
図1に示す仕上げ研削手段31の仕上げ研削砥石314bと保持テーブル5で吸引保持された円板状ワークWとの位置合わせが粗研削加工の場合と同様に行われた後、仕上げ研削手段31が仕上げ研削送り手段21により下方へと送られ、回転する仕上げ研削砥石314bが円板状ワークWの裏面Wbに当接し、また、保持テーブル5が回転することに伴って保持面50aに保持された円板状ワークWが回転して、円板状ワークWの裏面Wbの全面が仕上げ研削される。また、研削水が仕上げ研削砥石314bと円板状ワークWとの接触部位に対して供給され、接触部位が冷却・洗浄される。なお、保持テーブル5の傾き(回転軸571の傾き)は、粗研削時と同様となっている。
【0048】
(3)研磨工程
所望の仕上げ厚み(例えば、100μm)になるように研削され裏面Wbの平坦性がより高められた円板状ワークWから仕上げ研削砥石314bを離間させた後、図1に示すターンテーブル6が+Z方向から見て反時計回り方向に自転することで、仕上げ研削後の円板状ワークWを保持する保持テーブル5が公転し、研磨手段4が円板状ワークWを研磨する所定の研磨加工位置に保持テーブル5が位置付けられる。研磨手段4の研磨パッド44に対する円板状ワークWの位置合わせは、例えば、図9、10に示すように、研磨パッド44の回転中心が、円板状ワークWの回転中心に対して所定の距離だけ水平方向にずれ、円板状ワークWの裏面Wbの全面を研磨パッド44で覆った状態にする。なお、図示の例においては、研磨パッド44の外周と円板状ワークWの外周とが一部重なる状態となっているが、この状態に限られるものではない。
【0049】
図9に示すように、モータ42により回転軸40が回転駆動されるのに伴って研磨パッド44が回転する。また、研磨手段4が研磨送り手段25により-Z方向へと送られ、研磨パッド44が円板状ワークWの裏面Wbに当接することで研磨加工が行われる。また、保持テーブル回転手段57が保持テーブル5を所定の回転速度で回転させるのに伴い保持面50a上に保持された円板状ワークWも回転するので、研磨パッド44が円板状ワークWの裏面Wb全面の研磨加工を行う。また、研磨加工中は、スラリを研磨パッド44と円板状ワークWの裏面Wbとの接触部位に対して供給する。
【0050】
円板状ワークWは保持テーブル5の緩やかな円錐面である保持面50aにならって吸引保持されているため、図10に示すように、研磨パッド44の研磨面中の矢印R2で示す範囲内において、研磨パッド44は円板状ワークWに当接し研磨を行う。
【0051】
なお、研磨加工中に研磨手段4を円板状ワークWの面方向(水平方向)に移動させない場合、裏面Wbに縞模様が形成される場合があり、これは円板状ワークWの抗折強度を低下させる要因となる。そこで、研磨加工中においては、Y軸方向移動手段24が研磨手段4をY軸方向に往復移動させて、研磨パッド44を円板状ワークWの裏面Wb上でY軸方向に摺動させてもよい。
【0052】
一枚の円板状ワークWの研磨を完了させた後、図9に示す研磨送り手段25により研磨手段4を+Z方向へと移動させて研磨加工済みの円板状ワークWから離間させる。
【0053】
(4)測定工程
研磨工程後に、例えば、図11に示す円板状ワークWの中心の第1の測定点P1と、円板状ワークWの外周縁近くの第2の測定点P2と、第1の測定点P1と第2の測定点P2との中間点である第3の測定点P3との少なくとも3点において円板状ワークWの厚みを測定する。なお、測定点は第1の測定点P1と第2の測定点P2との2つだけであってもよい。具体的には、保持テーブル5の回転が停止された後に、例えば、図1に示す研磨厚み測定手段67のアーム650が旋回移動して円板状ワークWの半径の上方に位置付けられ、光センサ651、653、652の直下にそれぞれ第1の測定点P1、第3の測定点P3、第2の測定点P2が位置付けられる。
【0054】
例えば、光センサ651、653、652は、その下方に位置付けられた円板状ワークWに対して、内蔵された投光素子が測定光を照射し、反射光を受光素子で受光する。そして、円板状ワークWの裏面Wbで反射した反射光と円板状ワークWを透過した後に表面Waで反射した反射光とを受光素子が受けた際の光路差を算出して、該算出値を基に干渉分光法の原理等から第1の測定点P1、第2の測定点P2、第3の測定点P3における円板状ワークWの厚みT1、T2、T3をそれぞれ測定する。
【0055】
(5)厚み傾向認識工程
研磨厚み測定手段67の光センサ651、652、653が、測定した円板状ワークWの第1の測定点P1、第2の測定点P2、第3の測定点P3の厚みT1、T2、T3についての情報を図1に示す制御手段9に送る。制御手段9に送られた該情報は、制御手段9の記憶部90に記憶される。
制御手段9は、例えば、測定された第1の測定点P1、第2の測定点P2、第3の測定点P3における円板状ワークWの厚みT1、T2、T3から円板状ワークWの径方向における厚み傾向を認識する厚み傾向認識部91を備えている。例えば、測定された第1の測定点P1、第2の測定点P2、第3の測定点P3における円板状ワークWの厚みが、厚みT1=99μm、T2=102μm、T3=101μmであるとする。この場合には、厚み傾向認識部91は、研磨後の円板状ワークWが径方向外側に向かって厚くなる傾向、換言すれば、研磨後の円板状ワークWは中凹状になる傾向があると判断する。
【0056】
(6)傾き変更工程
また、ターンテーブル6が+Z方向から見て反時計回り方向に自転することで、研磨加工後の円板状ワークWを保持する保持テーブル5が公転し、保持テーブル5が図1に示すアンローディングアーム154bの近傍まで移動する。
次いで、保持テーブル5上に吸引保持されている研磨加工が施された円板状ワークWを、アンローディングアーム154bが吸引保持し、また、図示しない吸引源による吸引を止めて、保持テーブル5による円板状ワークWの吸引保持を解除する。アンローディングアーム154bが保持テーブル5から洗浄手段156へと円板状ワークWを搬送し、洗浄手段156で円板状ワークWの洗浄が行われる。洗浄が行われた円板状ワークWは、ロボット155により第2のカセット151a内に収容される。
【0057】
制御手段9は、例えば、新たな研削前の円板状ワークWに対して研削を施す場合に、次の新たな円板状ワークWに対する研削工程において、厚み傾向認識工程で認識した厚み傾向(径方向外側に向かって厚くなる傾向)に反する厚み傾向の円板状ワークWを形成させるために、粗研削手段30及び仕上げ研削手段31の研削ホイール304が装着された回転軸300と保持テーブル5の回転軸571との傾き関係を変更する。
【0058】
例えば、図2に示す位置調整ユニット53の駆動部533のモータ533aが、図示しないパルス発振器から供給される駆動パルスによって動作するパルスモータである場合には、制御手段9が、モータ533aに供給される駆動パルス数をカウントすることで、各位置調整ユニット53によるフランジ部521の傾け角度を把握して、粗研削手段30の研削ホイール304が装着された鉛直方向の回転軸300に対する保持テーブル5の回転軸571の相対的な傾きを傾き変更手段51を介して変更する。即ち、本実施形態においては、図12に示すように、制御手段9による制御の下で、傾き変更手段51が保持テーブル5の外周側が+Z方向に所定距離持ち上がるように、回転軸571の傾き角度を変更する。
【0059】
なお、位置調整ユニット53の駆動部533のモータ533aをサーボモータとし、サーボモータにロータリエンコーダが接続された構成としてもよい。ロータリエンコーダは、サーボアンプとしての機能も有する制御手段9に接続されており、制御手段9からサーボモータに対して動作信号が供給された後、エンコーダ信号(サーボモータの回転数)を制御手段9に対して出力する。制御手段9は受け取ったエンコーダ信号により、傾き変更手段51による回転軸571の傾け角度を把握する。
【0060】
研削ホイール304が装着された回転軸300と保持テーブル5の回転軸571との傾き関係が変更されることで、次の保持テーブル5に保持された新たな円板状ワークWに対して研削工程において研削を施す際に、先に研削研磨された円板状ワークWにおいて研磨後に円板状ワークW中の第1の測定点P1より厚くなる第2の測定点P2及び第3の測定点P3が、粗研削砥石304b(仕上げ研削砥石314b)の研削面に対して第1の測定点P1に対して相対的に上方に上げられた状態で研削を行っていくことができる。したがって、先に研磨加工し終わった円板状ワークWの厚み傾向(径方向外側に向かって厚くなる傾向)に反する厚み傾向(径方向内側に向かって厚くなる傾向)の円板状ワークW、換言すれば中凸状の円板状ワークWを研削工程の完了によって形成できる。
【0061】
次いで、径方向内側に向かって厚くなる傾向の円板状ワークWに先に説明した研磨加工を施すことで、先に実施した研磨加工において研磨されにくかった円板状ワークWの第2の測定点P2及び第3の測定点P3がより研磨されやすい状態(研磨パッド44により接触しやすい状態)で研磨が行われていくため、新たな研磨加工後の円板状ワークWは先に研削研磨加工が施された円板状ワークWより高精度に平坦化された状態になる。
【0062】
上記のように、本発明に係る円板状ワークの加工方法は、保持テーブル5に円板状ワークWを保持させる保持工程と、円板状ワークWと研削ホイール304とをそれぞれ回転させ粗研削砥石304b(仕上げ研削砥石314b)で円板状ワークWを研削する研削工程と、研削工程後、円板状ワークWと研磨パッド44とをそれぞれ回転させて研磨パッド44が円板状ワークWを覆った状態で研磨する研磨工程と、研磨工程後に、円板状ワークWの中心の第1の測定点P1と、円板状ワークWの外周縁近くの第2の測定点P2と例えば第3の測定点P3との3点において円板状ワークWの厚みを測定する測定工程と、測定工程で測定した3つの測定点P1、P2、P3における円板状ワークWの厚みT1、T2、T3から円板状ワークWの径方向における厚み傾向(例えば、中凹状となる傾向)を認識する厚み傾向認識工程と、次の新たな円板状ワークWについての研削工程で厚み傾向認識工程で認識した厚み傾向に反する厚み傾向(例えば、中凸状となる傾向)の円板状ワークWを形成させるために、研削ホイール304が装着された回転軸300と保持テーブル5の回転軸571との傾き関係を変更する傾き変更工程と、を備えることで、新たな円板状ワークWを先に研磨加工された円板状ワークWよりも研磨加工を施すことで高精度に平坦化することが可能となる。
なお、研削研磨加工中に、研磨パッド44について定期的にドレスを行う場合、ドレスが繰り返され研磨パッド44の厚みが薄くなると、研磨パッド44はさらに中凹状になりやすいという現象があるが、本発明に係る円板状ワークWの加工方法は、研磨パッド44に定期的にドレスを施した場合でも、新たな円板状ワークWを先に研磨加工された円板状ワークWよりも研磨後に高精度に平坦化することが可能となる。
【0063】
本実施形態のように、測定工程では、2つの測定点P1、P2と、第1の測定点P1と第2の測定点P2との中間点である第3の測定点P3との少なくとも3つの測定点において円板状ワークWの厚みを測定して、厚み傾向認識工程では、少なくとも3つの測定点P1~P3における円板状ワークWの厚みT1~T3から円板状ワークWの径方向における厚み傾向を認識することで、測定点が第1の測定点P1と第2の測定点P2との2つのみである場合よりも、傾き変更工程においてより適切に前記傾き関係を変更することが可能となる。
【0064】
(加工方法の実施形態2)
以下に、上記図1に示す研削研磨装置1を用いて円板状ワークWに研削加工及び研磨加工を施す場合の各工程について説明する。本発明に係る円板状ワークの加工方法(以下、実施形態2の加工方法とする。)の各工程は、例えば、図13に示すフローチャートに示す順番で実施されていく。
【0065】
(1)一枚目の円板状ワークについての保持工程~(2)研削工程
保持工程は、実施形態1の場合と同様に行われ、図14に示すように、保持テーブル5により円板状ワークW(以下、一枚目の円板状ワークWとする)が保持される。さらに、研削工程において実施形態1の場合と同様に粗研削と仕上げ研削とが行われ、図15に示すように、円板状ワークWが所望の仕上げ厚み(例えば、100μm)になるように研削される。
【0066】
(3)一枚目の円板状ワークについての研磨前測定工程
次いで、図16に示す円板状ワークWの中心の第1の測定点P1と、円板状ワークWの外周縁近くの第2の測定点P2と、第1の測定点P1と第2の測定点P2との中間点である第3の測定点P3との少なくとも3点において円板状ワークWの仕上げ研削後の厚みを測定する。なお、測定点は第1の測定点P1と第2の測定点P2との2つだけであってもよい。具体的には、保持テーブル5の回転が停止され、円板状ワークWから仕上げ研削砥石314bを離間させた後に、例えば、図1に示す仕上げ研削厚み測定手段66のアーム650が旋回移動して円板状ワークWの半径の上方に位置付けられ、光センサ651、652、653の直下にそれぞれ第1の測定点P1、第2の測定点P2、第3の測定点P3が位置付けられる。そして、第1の測定点P1、第2の測定点P2、第3の測定点P3における円板状ワークWの厚みT11、T12、T13が、光センサ651、652、653によってそれぞれ測定される。
【0067】
仕上げ研削厚み測定手段66の光センサ651、652、653が、測定した円板状ワークWの第1の測定点P1、第2の測定点P2、第3の測定点P3の厚みT11、T12、T13についての情報を図1に示す制御手段9に送る。制御手段9に送られた該情報は、制御手段9の記憶部90に記憶される。例えば、測定された第1の測定点P1、第2の測定点P2、第3の測定点P3における円板状ワークWの仕上げ研削後の厚みは、厚みT11=102μm、T12=100μm、T13=101μmであるとする。
【0068】
(4)一枚目の円板状ワークについての研磨工程
次いで、仕上げ厚みまで研削され裏面Wbの平坦性がより高められた円板状ワークWが研磨手段4の下方まで移動し、図17に示すように、実施形態1の場合と同様に円板状ワークWが研磨される。そして、一枚目の円板状ワークWの研磨を完了させた後、図18に示すように研磨手段4を+Z方向へと移動させて研磨加工済みの円板状ワークWから離間させる。
【0069】
(5)一枚目の円板状ワークについての測定工程
保持テーブル5の回転が停止された後に、研磨厚み測定手段67の光センサ651、652、653の直下にそれぞれ第1の測定点P1、第2の測定点P2、第3の測定点P3が位置付けられる。そして、第1の測定点P1、第2の測定点P2、第3の測定点P3における円板状ワークWの厚みT21、T22、T23を、研磨厚み測定手段67の光センサ651、652、653がそれぞれ測定する。例えば、厚みT21=95μm、T22=98μm、T23=97μmとなる。なお、測定点は第1の測定点P1と第2の測定点P2との2つだけであってもよい。
【0070】
(6)一枚目の円板状ワークについての算出工程
例えば制御手段9のCPUが、研磨前測定工程で測定した図16に示す第1の測定点P1、第2の測定点P2、第3の測定点P3における一枚目の円板状ワークWの仕上げ研削後の厚みT11=102μm、T12=100μm、T13=101μmから、測定工程で測定した図18に示す第1の測定点P1、第2の測定点P2、第3の測定点P3における円板状ワークWの研磨後の厚みT21=95μm、T22=98μm、T23=97μmを差し引いて3つの測定点における研磨除去量L1=102μm-95μm=7μm、L2=100μm-98μm=2μm、及びL3=101μm-97μm=4μmを算出する。
【0071】
(7)一枚目の円板状ワークについての厚み傾向認識工程
研磨厚み測定手段67の光センサ651、652、653が、測定した円板状ワークWの第1の測定点P1、第2の測定点P2、第3の測定点P3の厚みT21、T22、T23についての情報を図1に示す制御手段9に送る。例えば、図18に示す測定された厚みT21=95μm、T22=98μm、T23=97μmであるため、厚み傾向認識部91は、研磨後の円板状ワークWが径方向外側に向かって厚くなる傾向、換言すれば、研磨後の円板状ワークWは中凹状になる傾向があると判断する。
【0072】
図1に示すターンテーブル6が+Z方向から見て反時計回り方向に自転することで、保持テーブル5がアンローディングアーム154bの近傍まで移動する。次いで、アンローディングアーム154bが保持テーブル5から洗浄手段156へと円板状ワークWを搬送する。洗浄が行われた一枚目の円板状ワークWは、ロボット155により第2のカセット151a内に収容される。
【0073】
(8)一枚目の円板状ワークにおける傾き変更工程
本実施形態2における傾き変更工程では、厚み傾向認識工程で認識した厚み傾向(一枚目の円板状ワークWが中凹状になる傾向)から算出工程で算出した第1の測定点P1、第2の測定点P2、第3の測定点P3における研磨除去量L1=7μm、L2=2μm、及びL3=4μmを差し引いた円板状ワークWの厚み傾向に反する厚み傾向の円板状ワークW(二枚目の円板状ワークW)を次の研削工程で形成させるために、粗研削手段30及び仕上げ研削手段31の研削ホイール304が装着された回転軸300と保持テーブル5の回転軸571との傾き関係を変更する。一枚目の円板状ワークWにおいて、厚み傾向認識工程で認識した3つの測定点P1~P3の厚み傾向から各研磨除去量L1~L3を差し引いた厚み傾向は、図19に示すように、研磨後の一枚目の円板状ワークWの中凹状になる厚み傾向よりも、さらに傾斜の急な中凹状の厚み傾向となる。したがって、各研磨除去量L1~L3を差し引いた厚み傾向に反する二枚目の円板状ワークWの厚み傾向(次の研削工程で形成すべき厚み傾向)は、図19に示すように中凸状の厚み傾向となる。
【0074】
粗研削手段30及び仕上げ研削手段31の研削ホイール304が装着された回転軸300と保持テーブル5の回転軸571との傾き関係の変更の具体的な例については、例えば、図1に示す制御手段9によって、第1の測定点P1、第2の測定点P2、第3の測定点P3における研磨除去量L1=7μm、L2=2μm、及びL3=4μmの中の、最大の研磨除去量L1と最小の研磨除去量L2との差(L1-L2=5μm)が算出される。そして、該差は回転軸300と回転軸571との傾き関係を適切に変更するための補正値S1=5μmとなる。本実施形態においては、図20に示すように、制御手段9による制御の下で、傾き変更手段51が保持テーブル5の回転軸571の傾き角度を変更(例えば、保持テーブル5の外周側の保持面50aを所定距離上げる)して、仕上げ研削後の厚みが中凸5μm(補正値S1=5μm)となるように、即ち、第1の測定点P1の仕上げ研削後の厚みが所望の仕上げ厚み100μm+5μm(補正値S1)=105μmとなるようにする。
【0075】
(9)二枚目の円板状ワークについての保持工程~(10)研削工程
新たに研削が施される円板状ワークW(以下、二枚目の円板状ワークW)についての保持工程が、一枚目の円板状ワークWに対する場合と同様に行われ、図20に示すように、保持テーブル5により円板状ワークWが保持される。さらに、研削工程における粗研削及び仕上げ研削が、保持テーブル5の回転軸571の傾きが変更されている点以外は一枚目の円板状ワークWに対する場合と同様に行われ、図21に示すように、円板状ワークWが所望の仕上げ厚み(例えば、100μm)になるように研削されることで、研削後の二枚目の円板状ワークWを中凸状の厚み傾向とすることができる。
【0076】
(11)二枚目の円板状ワークについての研磨前測定工程
次いで、図22に示す二枚目の円板状ワークWの前記第1の測定点P1~第3の測定点P3の3点において円板状ワークWの仕上げ研削後の厚みを測定する。保持テーブル5の回転が停止され、円板状ワークWから仕上げ研削砥石314bを離間させた後に、図1に示す仕上げ研削厚み測定手段66の光センサ651、652、653によって、第1の測定点P1、第2の測定点P2、第3の測定点P3における円板状ワークWの厚みT31、T32、T33が測定される。なお、測定点は第1の測定点P1と第2の測定点P2との2つだけであってもよい。
【0077】
仕上げ研削厚み測定手段66の光センサ651、652、653が、測定した円板状ワークWの第1の測定点P1、第2の測定点P2、第3の測定点P3の厚みT31、T32、T33についての情報を図1に示す制御手段9に送る。例えば、測定された第1の測定点P1、第2の測定点P2、第3の測定点P3における円板状ワークWの仕上げ研削後の厚みは、厚みT31=105μm、T32=100μm、T33=102μmとなり、中凸状となる。
【0078】
(12)二枚目の円板状ワークについての研磨工程
次いで、仕上げ厚みまで研削され裏面Wbの平坦性がより高められた円板状ワークWが研磨手段4の下方まで移動し、図23に示すように、保持テーブル5の回転軸571の傾きが変更されている点以外は一枚目の円板状ワークWに対する場合と同様に研磨が行われる。そして、二枚目の円板状ワークWの研磨を完了させた後、研磨送り手段25により研磨手段4を+Z方向へと移動させて研磨加工済みの円板状ワークWから離間させる。
【0079】
(13)二枚目の円板状ワークについての測定工程
保持テーブル5の回転が停止された後に、研磨厚み測定手段67の光センサ651、652、653によって、図24に示すように、第1の測定点P1、第2の測定点P2、第3の測定点P3における二枚目の円板状ワークWの厚みT41、T42、T43を、研磨厚み測定手段67の光センサ651、652、653がそれぞれ測定する。例えば、厚みT41=98μm、T42=98μm、T43=98μmであるとする。なお、測定点は第1の測定点P1と第2の測定点P2との2つだけであってもよい。
【0080】
(14)二枚目の円板状ワークについての算出工程
制御手段9のCPUが、図22に示す研磨前測定工程で測定した第1の測定点P1、第2の測定点P2、第3の測定点P3における一枚目の円板状ワークWの仕上げ研削後の厚みT31=105μm、T32=100μm、T33=102μmから、図24に示す測定工程で測定した第1の測定点P1、第2の測定点P2、第3の測定点P3における円板状ワークWの研磨後の厚みT41=98μm、T42=98μm、T43=98μmを差し引いて3つの測定点における研磨除去量L11=105μm-98μm=7μm、L12=100μm-98μm=2μm、及びL13=102μm-98μm=4μmを算出する。
【0081】
(15)二枚目の円板状ワークについての厚み傾向認識工程
研磨厚み測定手段67の光センサ651、652、653が、図24に示す測定した厚みT41、T42、T43についての情報を図1に示す制御手段9に送る。例えば、第1の測定点P1、第2の測定点P2、第3の測定点P3における円板状ワークWの研磨後の厚みは、厚みT41=98μm、T42=98μm、T43=98μmであるため、厚み傾向認識部91は、研磨後の円板状ワークWが平坦であると判断する。
その後、二枚目の円板状ワークWが保持テーブル5から搬出され、図1に示す第2のカセット151aに収納される。
【0082】
本発明に係る円板状ワークの加工方法において、研磨工程前に第1の測定点P1と、第2の測定点P2と、例えば第3の測定点P3との少なくとも3つの測定点P1、P2、P3において図16に示す円板状ワークWの厚みT11、T12、T13を測定する研磨前測定工程と、傾き変更工程前に、研磨前測定工程で測定した図16に示す3つの測定点P1、P2、P3における円板状ワークWの厚みT11、T12、T13から測定工程で測定した図18に示す3つの測定点P1、P2、P3における円板状ワークWの厚みT21、T22、T23を差し引いて3つの測定点P1、P2、P3における研磨除去量L1、L2、及びL3を算出する算出工程と、を含み、傾き変更工程では、厚み傾向認識工程で認識した厚み傾向(一枚目の円板状ワークWが中凹状になる傾向)から算出工程で算出した第1の測定点P1、第2の測定点P2、第3の測定点P3における研磨除去量L1~L3を差し引いた一枚目の円板状ワークWの厚み傾向(中凹状の厚み傾向)に反する厚み傾向(中凸状の厚み傾向)の新たな二枚目の円板状ワークWを次の研削工程で形成させるために、研削ホイール304が装着された回転軸300と保持テーブル5の回転軸571との傾き関係を変更することで、図22に示すように、二枚目の円板状ワークWを研削工程後に中凸状の厚み傾向とすることができ、新たな円板状ワークW(二枚目の円板状ワークW)を先に研磨加工された一枚目の円板状ワークWよりも研磨後に高精度に平坦化することが可能となる。
【0083】
本実施形態のように、研磨前測定工程では、2つの測定点P1及びP2と、第1の測定点P1と第2の測定点P2との中間点である第3の測定点P3との少なくとも3つの測定点P3において円板状ワークWの厚みT11~T13を測定し、測定工程では、少なくとも3つの測定点P1~P3において円板状ワークWの厚みT21~T23を測定し、算出工程では、研磨前測定工程で測定した3つの測定点P1~P3における円板状ワークWの厚みT11~T13から測定工程で測定した3つの測定点P1~P3における円板状ワークWの厚みT21~T23を差し引いて3つの測定点P1~P3における研磨除去量L1~L3を算出し、厚み傾向認識工程では、少なくとも3つの測定点P1~P3における研磨後の円板状ワークWの厚みから円板状ワークWの径方向における厚み傾向を認識することで、測定点が第1の測定点P1と第2の測定点P2との2つのみである場合よりも、傾き変更工程においてより適切に前記傾き関係を変更することが可能となる。
【0084】
(16)二枚目の円板状ワークにおける傾き変更工程
本実施形態2における傾き変更工程では、厚み傾向認識工程で認識した厚み傾向(二枚目の研磨後の円板状ワークWが平坦となる傾向)から算出工程で算出した第1の測定点P1、第2の測定点P2、第3の測定点P3における研磨除去量L11=7μm、L12=2μm、及びL13=4μmを差し引いた円板状ワークWの厚み傾向(中凹状の厚み傾向)に反する厚み傾向(中凸状の厚み傾向)の三枚目の円板状ワークWを次の研削工程で形成させるために、粗研削手段30及び仕上げ研削手段31の研削ホイール304が装着された回転軸300と保持テーブル5の回転軸571との傾き関係を変更する。
【0085】
具体的には、例えば、制御手段9によって、第1の測定点P1、第2の測定点P2、第3の測定点P3における研磨除去量L11=7μm、L12=2μm、及びL13=4μmの中の最大の研磨除去量L11と最小の研磨除去量L12との差(L11-L12=5μm)が算出される。そして、該差は回転軸300と回転軸571との傾き関係を適切に変更するための補正値S2=5μmとなる。該補正値S2=5μmは、一枚目の円板状ワークWにおける傾き変更工程で算出された補正値S1=5μmと同じ値であるため、研削ホイール304が装着された回転軸300と保持テーブル5の回転軸571との傾き関係は図25に示すように維持され、次の三枚目の円板状ワークWの第1の測定点P1の仕上げ研削後の厚みが、二枚目の円板状ワークWと同じ所望の仕上げ厚み100μm+5μm(補正値S2)=105μmとなるようにする。
【0086】
(17)三枚目の円板状ワークについての保持工程~(18)研削工程
新たに研削が施される円板状ワークW(以下、三枚目の円板状ワークW)についての保持工程が、二枚目の円板状ワークWに対する場合と同様に行われ、図26に示すように、保持テーブル5により円板状ワークWが保持される。さらに、二枚目の円板状ワークWに対する場合と同様に、円板状ワークWが所望の仕上げ厚み(例えば、100μm)になるように粗研削及び仕上げ研削が行われることで、研削後の三枚目の円板状ワークWの厚み傾向を中凸状とすることができる。
【0087】
(19)三枚目の円板状ワークについての研磨前測定工程
次いで、図27に示す三枚目の第1の測定点P1と、第2の測定点P2と、第3の測定点P3との少なくとも3点において円板状ワークWの仕上げ研削後の厚みを測定する。保持テーブル5の回転が停止され、円板状ワークWから仕上げ研削砥石314bを離間させた後に、図1に示す仕上げ研削厚み測定手段66の光センサ651、652、653によって、第1の測定点P1、第2の測定点P2、第3の測定点P3における円板状ワークWの厚みT51、T52、T53が測定される。
仕上げ研削厚み測定手段66の光センサ651、652、653が、測定した厚みT51、T52、T53についての情報を図1に示す制御手段9に送る。例えば、測定された厚みは、厚みT51=105μm、T52=100μm、T53=102μmとなる。
【0088】
(20)三枚目の円板状ワークについての研磨工程
次いで、仕上げ厚みまで研削された円板状ワークWが研磨手段4の下方まで移動し、図28に示すように、二枚目の円板状ワークWに対する場合と同様に研磨が行われる。そして、三枚目の円板状ワークWの研磨を完了させた後、研磨送り手段25により研磨手段4を+Z方向へと移動させて研磨加工済みの円板状ワークWから離間させる。
【0089】
(21)三枚目の円板状ワークについての測定工程
保持テーブル5の回転が停止された後に、図29に示すように、研磨厚み測定手段67の光センサ651、652、653によって、第1の測定点P1、第2の測定点P2、第3の測定点P3における三枚目の円板状ワークWの厚みT61、T62、T63がそれぞれ測定される。例えば、厚みT61=97.9μm、厚みT62=98μm、厚みT63=98μmとなる。
【0090】
(22)三枚目の円板状ワークについての算出工程
例えば制御手段9のCPUが、図27に示す研磨前測定工程で測定した第1の測定点P1、第2の測定点P2、第3の測定点P3における三枚目の円板状ワークWの仕上げ研削後の厚みT51=105μm、T52=100μm、T53=102μmから、図29に示す測定工程で測定した第1の測定点P1、第2の測定点P2、第3の測定点P3における円板状ワークWの研磨後の厚みT61=97.9μm、T62=98μm、T63=98μmを差し引いて3つの測定点における研磨除去量L21=105μm-97.9μm=7.1μm、L22=100μm-98μm=2μm、及びL23=102μm-98μm=4μmを算出する。
【0091】
(23)三枚目の円板状ワークについての厚み傾向認識工程
研磨後の円板状ワークWの測定された厚みは、図29に示すように厚みT61=97.9μm、T62=98μm、T63=98μmであるため、厚み傾向認識部91は、研磨後の円板状ワークWが僅かに中凹状で有ると判断する。即ち、研磨パッド44の変形等により研磨除去量が変化したことで、研磨後の円板状ワークWの平坦度が僅かに低下したと判断する。
その後、三枚目の円板状ワークWは、保持テーブル5から搬出されて図1に示す第2のカセット151a内に収容される。
【0092】
(24)三枚目の円板状ワークにおける傾き変更工程
本実施形態2における傾き変更工程では、厚み傾向認識工程で認識した厚み傾向(三枚目の円板状ワークWが僅かに中凹状になる傾向)から算出工程で算出した第1の測定点P1、第2の測定点P2、第3の測定点P3における研磨除去量L21=7.1μm、L22=2μm、及びL23=4μmを差し引いた三枚目の円板状ワークWの厚み傾向(中凹状の厚み傾向)に反する厚み傾向(中凸状の厚み傾向)の円板状ワークW(四枚目の円板状ワークW)を次の研削工程で形成させるために、粗研削手段30及び仕上げ研削手段31の研削ホイール304が装着された回転軸300と保持テーブル5の回転軸571との傾き関係を変更する。
【0093】
具体的には、例えば、制御手段9によって、研磨除去量L21=7.1μm、L22=2μm、及びL23=4μmの中の最大の研磨除去量L21と最小の研磨除去量L22との差(L21-L22=5.1μm)が算出される。そして、該差は、研磨後の三枚目の円板状ワークWの中心の第1の測定点P1が、0.1μmだけ多く二枚目の円板状ワークWよりも研磨される傾向となってきたことに対して、回転軸300と回転軸571との傾き関係を適切に変更するための補正値S3=5.1μmとなる。
【0094】
本実施形態2においては、制御手段9による制御の下で、傾き変更手段51が保持テーブル5の回転軸571の傾き角度を変更(例えば、保持テーブル5の外周側の保持面50aを所定距離上げる変更)して、次の四枚目の円板状ワークWの仕上げ研削後の厚みが中凸5.1μm(補正値S3=5.1μm)となるように、即ち、四枚目の円板状ワークWの第1の測定点P1の仕上げ研削後の厚みが所望の仕上げ厚み100μm+5.1μm(補正値S3)=105.1μmとなるようにする。これによって、研磨パッド44の変形等による研磨除去量の変化によって研磨後に図29に示すように平坦度に僅かに差が生じてしまった三枚目の円板状ワークWと異なり、四枚目の円板状ワークWの研磨後の平坦度に差が生じてしまわないように研磨除去量の変化に追従するように加工条件が補正され、四枚目の円板状ワークWの研削工程後の厚み傾向を適切に変更できる。
【0095】
その結果、次の四枚目の円板状ワークWを研削工程後に中凸状の厚み傾向に形成でき、さらに、次の四枚目の円板状ワークWを先に研磨加工された三枚目の円板状ワークWよりも研磨後に高精度に平坦化する、即ち、第1の測定点P1、第2の測定点P2、第3の測定点P3における四枚目の円板状ワークWの研磨後の厚みを、二枚目の円板状ワークWと同様に例えば98μmにそろえることが可能となる。
【0096】
本発明に係る円板状ワークの加工方法は上記実施形態1又は2に限定されず、その技術的思想の範囲内において種々異なる形態にて実施されてよいことは言うまでもない。また、添付図面に図示されている研削研磨装置1の各構成についても、これに限定されず、本発明の効果を発揮できる範囲内で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0097】
W:円板状ワーク
1:研削研磨装置 10:第1の装置ベース A:搬出入領域
150:第1のカセット載置部 150a:第1のカセット 151:第2のカセット載置部 151a:第2のカセット
152:仮置き領域 153:位置合わせ手段 154a:ローディングアーム
154b:アンローディングアーム 155:ロボット 156:洗浄手段
11:第2の装置ベース B:加工領域
12:第1のコラム 20:粗研削送り手段 30:粗研削手段 304b:粗研削砥石
13:第2のコラム 21:仕上げ研削送り手段 31:仕上げ研削手段 314b:仕上げ研削砥石
14:第3のコラム 24:Y軸方向移動手段 25:研磨送り手段 4:研磨手段
6:ターンテーブル
64:支持台 65:粗研削厚み測定手段 650:アーム部 659:移動手段
651~653:光センサ
66:仕上げ研削厚み測定手段
67:研磨厚み測定手段
5:保持テーブル 50:ポーラス部材 50a:保持面 502:枠体
51:傾き調整手段
52:支持台 520:支持筒部 521:フランジ部
53:位置調整ユニット 531:筒部 532:シャフト 532a:第1の雄ねじ
533:駆動部 533a:モータ 533b:減速機 534:固定部 535:ナット 536:挟持ナット
53a:固定ユニット
57:保持テーブル回転手段 571:回転軸 571b:配管 572:モータ 573:プーリ 574:無端ベルト
9:制御手段 90:記憶部 91:厚み傾向認識部
図1
図2
図3
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