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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-10
(45)【発行日】2024-01-18
(54)【発明の名称】液状農薬組成物
(51)【国際特許分類】
   A01N 25/02 20060101AFI20240111BHJP
   A01N 43/713 20060101ALI20240111BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20240111BHJP
【FI】
A01N25/02
A01N43/713
A01P3/00
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019220624
(22)【出願日】2019-12-05
(65)【公開番号】P2021088540
(43)【公開日】2021-06-10
【審査請求日】2022-10-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】多田 啓人
【審査官】神野 将志
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-065043(JP,A)
【文献】国際公開第2019/052898(WO,A1)
【文献】特表2000-508291(JP,A)
【文献】特開2019-119714(JP,A)
【文献】特開平08-225413(JP,A)
【文献】国際公開第2014/119519(WO,A1)
【文献】特開2016-056099(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N
A01P
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)メチルテトラプロール、
(b)ε-カプロラクトンである第1溶媒、
(c)25℃における水溶解度が1質量%以下である第2溶媒、及び
(d)界面活性剤
を含有し、
前記第1溶媒の含有量がメチルテトラプロールの含有量の1.2質量倍以上15質量倍以下であり、
前記第2溶媒の含有量がメチルテトラプロールの含有量の6.5質量倍以上25質量倍以下である液状農薬組成物。
【請求項2】
メチルテトラプロールの含有量が3質量%以上10質量%以下である請求項1に記載の液状農薬組成物。
【請求項3】
前記第1溶媒の含有量が3.6質量%以上60質量%以下である請求項1又は2に記載の液状農薬組成物。
【請求項4】
前記第2溶媒の含有量が19.5質量%以上85質量%以下である請求項1~3のいずれか1項に記載の液状農薬組成物。
【請求項5】
前記界面活性剤の含有量が1質量%以上30質量%以下である請求項1~4のいずれか1項に記載の液状農薬組成物。
【請求項6】
前記第1溶媒の含有量がメチルテトラプロールの含有量の1.3質量倍以上15質量倍以下である請求項1~5のいずれか1項に記載の液状農薬組成物。
【請求項7】
前記第2溶媒の含有量がメチルテトラプロールの含有量の6.5質量倍以上21質量倍以下である請求項1~6のいずれか1項に記載の液状農薬組成物。
【請求項8】
前記第2溶媒が芳香族炭化水素を含む請求項1~7のいずれか1項に記載の液状農薬組成物。
【請求項9】
前記芳香族炭化水素が、アルキルベンゼン及びアルキルナフタレンからなる群より選ばれる1種以上を含む請求項8に記載の液状農薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状農薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2016-065043号公報(特許文献1)には、特定のテトラゾリノン化合物と、特定のアミド化合物とを含有する植物病害防除組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-065043号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、メチルテトラプロールを含有する液状農薬組成物であって、低温において良好な保存安定性を有するとともに、水と混合したときの乳化安定性が良好な液状農薬組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下に示す液状農薬組成物を提供する。
[1] (a)メチルテトラプロール、
(b)ε-カプロラクトンである第1溶媒、
(c)25℃における水溶解度が1質量%以下である第2溶媒、及び
(d)界面活性剤
を含有し、
前記第1溶媒の含有量がメチルテトラプロールの含有量の1.2質量倍以上15質量倍以下であり、
前記第2溶媒の含有量がメチルテトラプロールの含有量の6.5質量倍以上25質量倍以下である液状農薬組成物。
[2] メチルテトラプロールの含有量が3質量%以上10質量%以下、好ましくは4質量%以上10質量%以下である[1]に記載の液状農薬組成物。
[3] 前記第1溶媒の含有量が3.6質量%以上60質量%以下、好ましくは5質量%以上60質量%以下である[1]又は[2]に記載の液状農薬組成物。
[4] 前記第2溶媒の含有量が19.5質量%以上85質量%以下、好ましくは25質量%以上85質量%以下である[1]~[3]のいずれかに記載の液状農薬組成物。
[5] 前記界面活性剤の含有量が1質量%以上30質量%以下、好ましくは5質量%以上20質量%以下である[1]~[4]のいずれかに記載の液状農薬組成物。
[6] 前記第1溶媒の含有量がメチルテトラプロールの含有量の1.3質量倍以上15質量倍以下である[1]~[5]のいずれかに記載の液状農薬組成物。
[7] 前記第2溶媒の含有量がメチルテトラプロールの含有量の6.5質量倍以上21質量倍以下である[1]~[6]のいずれかに記載の液状農薬組成物。
[8] 前記第2溶媒が芳香族炭化水素を含む[1]~[7]のいずれかに記載の液状農薬組成物。
[9] 前記芳香族炭化水素が、アルキルベンゼン及びアルキルナフタレンからなる群より選ばれる1種以上を含む[8]に記載の液状農薬組成物。
【発明の効果】
【0006】
メチルテトラプロールを含有する液状農薬組成物であって、低温において良好な保存安定性を有するとともに、水と混合したときの乳化安定性が良好な液状農薬組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明に係る液状農薬組成物(以下、単に「液状農薬組成物」ともいう。)は、
(a)メチルテトラプロール、
(b)ε-カプロラクトンである第1溶媒、
(c)25℃における水溶解度が1質量%以下である第2溶媒、及び
(d)界面活性剤
を含有する。
【0008】
本明細書において「液状」とは、25℃において流動性を示すことをいう。液状農薬組成物は、好ましくは、それが含有する成分のうち、少なくとも農薬活性成分が溶媒に完全に又はほぼ完全に溶解している液体である。液状農薬組成物は、より好ましくは、それが含有する成分のうち、少なくとも農薬活性成分及び界面活性剤が溶媒に完全に又はほぼ完全に溶解している液体である。液状農薬組成物は、さらに好ましくは、それが含有する成分のすべてが溶媒に完全に又はほぼ完全に溶解している液体である。
液状農薬組成物は、農薬分野において乳剤(EC:Emulsifiable Concentrate)と称される液体農薬製剤として好適に用いることができる。
以下、本発明に係る液状農薬組成物が含有する又は含有し得る成分について詳細に説明する。
【0009】
(a)メチルテトラプロール
液状農薬組成物は、メチルテトラプロール(metyltetraprole)を含有する。本発明によれば、難水溶性であるメチルテトラプロールを含有するにもかかわらず、低温において良好な保存安定性を有するとともに、水と混合したときの乳化安定性が良好な液状農薬組成物を提供することができる。
【0010】
メチルテトラプロールは、下記式(A):
【化1】

で表される化合物であり、化学名は、1-[2-({[1-(4-クロロフェニル)-1H-ピラゾール-3-イル]オキシ}メチル)-3-メチルフェニル]-4-メチル-1,4-ジヒドロ-5H-テトラゾール-5-オンである。
【0011】
液状農薬組成物の全量を100質量%とするとき、液状農薬組成物中におけるメチルテトラプロールの含有量は、好ましくは3質量%以上10質量%以下であり、より好ましくは3.5質量%以上10質量%以下であり、さらに好ましくは4質量%以上10質量%以下であり、なおさらに好ましくは4質量%以上8質量%以下である。該含有量の他の好ましい範囲は、例えば、3質量%以上8質量%以下、3質量%以上6質量%以下、3.5質量%以上8質量%以下、5質量%以上10質量%以下又は5質量%以上8質量%以下である。
メチルテトラプロールの含有量を上記範囲内に調整することは、液状農薬組成物中のメチルテトラプロールの含有量を適度に高めつつ、液状農薬組成物の低温における保存安定性及び水と混合したときの乳化安定性を良好なものとするうえで好適である。
【0012】
(b)第1溶媒
液状農薬組成物は、ε-カプロラクトンである第1溶媒を含有する。
液状農薬組成物の全量を100質量%とするとき、液状農薬組成物中における第1溶媒の含有量は、好ましくは3.6質量%以上60質量%以下であり、より好ましくは5質量%以上60質量%以下であり、さらに好ましくは5質量%以上40質量%以下であり、なおさらに好ましくは10質量%以上40質量%以下であり、特に好ましくは10質量%以上30質量%以下である。該含有量の他の好ましい範囲は、例えば、3.6質量%以上50質量%以下、3.6質量%以上40質量%以下、3.6質量%以上30質量%以下、5質量%以上50質量%以下、5質量%以上30質量%以下、6質量%以上60質量%以下、6質量%以上50質量%以下、6質量%以上40質量%以下又は6質量%以上30質量%以下である。
【0013】
第1溶媒の含有量は、メチルテトラプロールの含有量の通常1.2質量倍以上15質量倍以下であり、好ましくは1.2質量倍以上10質量倍以下であり、より好ましくは1.2質量倍以上9.0質量倍以下であり、さらに好ましくは1.2質量倍以上8.0質量倍以下であり、なおさらに好ましくは1.3質量倍以上6.0質量倍以下であり、特に好ましくは1.3質量倍以上3.3質量倍以下である。メチルテトラプロールの含有量に対する第1溶媒の含有量の比(質量比)の他の好ましい範囲は、1.2質量倍以上6.0質量倍以下、1.2質量倍以上3.3質量倍以下、1.3質量倍以上15質量倍以下、1.3質量倍以上10質量倍以下、1.3質量倍以上9.0質量倍以下又は1.3質量倍以上8.0質量倍以下である。
【0014】
メチルテトラプロールの含有量に対する第1溶媒の含有量の比(質量比)を上記範囲内に調整することは、メチルテトラプロールの含有量に対する第2溶媒の含有量の比(質量比)を特定の範囲内に調整することを前提として、液状農薬組成物の低温における保存安定性及び水と混合したときの乳化安定性を良好なものとするうえで好適である。
【0015】
(c)第2溶媒
液状農薬組成物は、1種又は2種以上の第2溶媒を含有する。第2溶媒は、25℃における水溶解度が1質量%以下である溶媒である。
【0016】
第2溶媒としては、例えば、
オクタノール及びポリプロピレングリコール等のアルコール;
カプリル酸メチル、ラウリン酸メチル、ミリスチン酸メチル、サリチル酸メチル、パルミチン酸メチル、オレイン酸メチル、酢酸エチル、パルミチン酸エチル、酢酸オクチル、酢酸ベンジル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、2-メチルグルタル酸ジメチル、2-エチルコハク酸ジメチル、アジピン酸ジメチル、コハク酸ジオクチル、アジピン酸ジデシル、アセト酢酸tert-ブチル、アセト酢酸アリル及び乳酸2-エチルヘキシル等のエステル;
プロピレングリコールフェニルエーテル等のエーテル;
アセトフェノン等のケトン;
N,N-ジメチルオクタンアミド、N,N-ジメチルデカンアミド、N,N-ジメチルドデカンアミド、N,N-ジメチルテトラデカンアミド、N,N-ジメチルオクタデカンアミド、N,N-ジメチル-9-デセンアミド、脂肪酸ジメチルアミド等のアミド;
N-オクチル-カプロラクタム、N-デシル-カプロラクタム、N-ドデシル-カプロラクタム、N-オクチル-ピロリドン、N-デシル-ピロリドン、N-ドデシル-ピロリドン、N-オクチル-バレロラクタム、N-デシル-バレロラクタム及びN-ドデシル-バレロラクタム等のラクタム;
イミダゾリジノン;
環状尿素誘導体;
環状の炭酸エステル;
デカン、トリデカン、テトラデカン、ヘキサデカン、オクタデカン、ノルマルパラフィン、イソパラフィン、シクロパラフィン、1-ウンデセン及び1-ヘンエイコセン等の脂肪族炭化水素;
トルエン、キシレン、エチルベンゼン、オクタデシルベンゼン、ジアルキルベンゼン及びトリアルキルベンゼン等のアルキルベンゼン、メチルナフタレン、ジメチルナフタレン、ドデシルナフタレン及びトリデシルナフタレン等のアルキルナフタレン、並びにフェニルキシリルエタン及び1-フェニル-1-エチルフェニルエタン、並びにこれらの混合物等の芳香族炭化水素;
オレイン酸、カプリン酸及びエナント酸等の脂肪酸;
オリーブ油、大豆油、菜種油、ヒマシ油、亜麻仁油、綿実油、パーム油、アボカド油及びサメ肝油等の動植物油;
マシン油等の鉱物油
等が挙げられる。
【0017】
第2溶媒として、市販されている溶媒を用いてもよい。第2溶媒の市販品としては、例えば、いずれも商品名で、Agnique AMD810(N,N-ジメチルオクタンアミドとN,N-ジメチルデカンアミドとの混合物、BASF社製)、Agnique AMD10(N,N-ジメチルデカンアミド、BASF社製)、Agnique AMD12(N,N-ジメチルドデカンアミド、BASF社製)、Rhodiasolv ADMA810(N,N-ジメチルオクタンアミドとN,N-ジメチルデカンアミドとの混合物、ソルベイ日華製)、Rhodiasolv ADMA-10(N,N-ジメチルデカンアミド、ソルベイ日華製)、Hallcomid M-8-10(N,N-ジメチルオクタンアミドとN,N-ジメチルデカンアミドとの混合物、Stepan社製)、Hallcomid M-10(N,N-ジメチルデカンアミド、Stepan社製)、Hallcomid M-12(N,N-ジメチルドデカンアミド、Stepan社製)、Hallcomid M-18(N,N-ジメチルオクタデカンアミド、Stepan社製)、Hallcomid 1025(N,N-ジメチル-9-デセンアミド、Stepan社製)、Genagen 4166(脂肪酸ジメチルアミド、Clariant社製)、Genagen 4296(脂肪酸ジメチルアミド、Clariant社製)、Rhodiasolv Iris(2-メチルグルタル酸ジメチル、2-エチルコハク酸ジメチル及びアジピン酸ジメチルの混合物、ソルベイ社製)、PURASOLV EHL(L-乳酸2-エチルヘキシル、Corbion purac社製)、AGSOLEX 8(N-オクチル-ピロリドン、Ashland社製)、AGSOLEX 12(N-ドデシル-ピロリドン、Ashland社製)、Stepan C-25(カプリル酸メチル、Stepan社製)、Stepan C-42(ラウリン酸メチル及びミリスチン酸メチルの混合物、Stepan社製)、Stepan C-65(パルミチン酸メチル及びオレイン酸メチルの混合物、Stepan社製)、Dowanol PPh(プロピレングリコールフェニルエーテル、ダウケミカル社製)、日石ハイゾールSAS-296(1-フェニル-1-キシリルエタンと1-フェニル-1-エチルフェニルエタンの混合物、JX日鉱日石エネルギー製)、ソルベッソ 100(芳香族炭化水素として主にC9-C10のジアルキル及びトリアルキルベンゼン、エクソンモービルケミカル製)、ソルベッソ 150(芳香族炭化水素として主にC10-C11のアルキルベンゼン、エクソンモービルケミカル製)、ソルベッソ 150ND(芳香族炭化水素として主にC10-C11のアルキルベンゼン、エクソンモービルケミカル製)、ソルベッソ 200(芳香族炭化水素として主にC10-C13のアルキルナフタレン、エクソンモービルケミカル製)、ソルベッソ 200ND(芳香族炭化水素として主にC10-C13のアルキルナフタレン、エクソンモービルケミカル製)等が挙げられる。
【0018】
第2溶媒は、液状農薬組成物の低温における保存安定性及び水と混合したときの乳化安定性の観点から、好ましくは芳香族炭化水素を含む。芳香族炭化水素は、好ましくは、アルキルベンゼン及びアルキルナフタレンからなる群より選ばれる1種以上を含み、より好ましくは、C9-C12のアルキルベンゼン及びC10-C15のアルキルナフタレンからなる群より選ばれる1種以上を含む。第2溶媒は、芳香族炭化水素からなっていてもよい。
【0019】
液状農薬組成物の低温における保存安定性及び水と混合したときの乳化安定性の観点から、第2溶媒が上記芳香族炭化水素とアミドとを含むことも好ましい。アミドは、好ましくは、アルキル鎖長がC6-C18のN,N-ジメチルアルカンアミドである。アルキル鎖長がC6-C18のN,N-ジメチルアルカンアミドとしては、例えば、N,N-ジメチルオクタンアミド及びN,N-ジメチルデカンアミドからなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。第2溶媒は、芳香族炭化水素とアミドとからなっていてもよい。
【0020】
第2溶媒の25℃における水溶解度は1質量%以下であり、例えば0.9質量%以下であってもよく、さらには0.8質量%以下であってもよい。液状農薬組成物が該範囲内の水溶解度を有する第2溶媒を含有することは、乳剤としての液状農薬組成物を水と混合させたときにエマルションを形成しやすくなるため好ましい。第2溶媒の25℃における水溶解度は、通常0質量%以上であり、10-5質量%以上であってもよい。
【0021】
本明細書において、25℃における水溶解度とは、温度が25℃であり、pHが7である水への溶解度をいう。25℃における水溶解度が例えば1質量%であるとは、温度が25℃であり、pHが7である水1gへの溶解度が1×10-2gであることを意味する。
【0022】
第2溶媒の水溶解度としては、国際純正・応用化学連合(IUPAC)又はアメリカ国立標準技術研究所(NIST)のデータベース(Solubility Database)に記載の数値を採用することができる。該データベースに記載されていない場合、第2溶媒の水溶解度は、高速液体クロマトグラフィを用い、温度が25℃であり、pHが7である水への飽和溶解量を定量することによって測定することができる。
【0023】
液状農薬組成物の全量を100質量%とするとき、液状農薬組成物中における第2溶媒の含有量は、好ましくは19.5質量%以上85質量%以下であり、より好ましくは25質量%以上85質量%以下であり、さらに好ましくは25質量%以上80質量%以下であり、なおさらに好ましくは30質量%以上80質量%以下であり、とりわけ好ましくは40質量%以上80質量%以下であり、特に好ましくは50質量%以上75質量%以下である。該含有量の他の好ましい範囲は、例えば、19.5質量%以上80質量%以下、19.5質量%以上75質量%以下、25質量%以上75質量%以下、30質量%以上85質量%以下、30質量%以上75質量%以下、40質量%以上85質量%以下、40質量%以上75質量%以下、50質量%以上85質量%以下又は50質量%以上80質量%以下である。
【0024】
第2溶媒の含有量は、メチルテトラプロールの含有量の通常6.5質量倍以上25質量倍以下であり、好ましくは6.5質量倍以上21質量倍以下であり、より好ましくは6.5質量倍以上16質量倍以下であり、さらに好ましくは6.6質量倍以上15質量倍以下であり、なおさらに好ましくは6.6質量倍以上13質量倍以下であり、特に好ましくは7.0質量倍以上11質量倍以下である。メチルテトラプロールの含有量に対する第2溶媒の含有量の比(質量比)の他の好ましい範囲は、6.5質量倍以上15質量倍以下、6.5質量倍以上13質量倍以下、6.5質量倍以上11質量倍以下、6.6質量倍以上11質量倍以下、6.6質量倍以上9質量倍以下、7.0質量倍以上25質量倍以下、7.0質量倍以上21質量倍以下、7.0質量倍以上16質量倍以下、7.0質量倍以上15質量倍以下又は7.0質量倍以上13質量倍以下である。
【0025】
液状農薬組成物が第2溶媒を2種以上含有する場合、上述の第2溶媒の含有量は、該2種以上の第2溶媒の合計含有量である。液状農薬組成物が含有する又は含有し得る、他の成分についても同様であり、該成分の含有量は、2種以上を含有する場合には、特記しない限りそれらの合計含有量である。
【0026】
メチルテトラプロールの含有量に対する第2溶媒の含有量の比(質量比)を上記範囲内に調整することは、メチルテトラプロールの含有量に対する第1溶媒の含有量の比(質量比)を上記特定の範囲内に調整することを前提として、液状農薬組成物の低温における保存安定性及び水と混合したときの乳化安定性を良好なものとするうえで好適である。
【0027】
液状農薬組成物の低温における保存安定性及び水と混合したときの乳化安定性の観点から、液状農薬組成物は、好ましくは、以下示すメチルテトラプロールの含有量に対する第1溶媒の含有量の質量比(以下、「第1溶媒/メチルテトラプロール」ともいう。)及びメチルテトラプロールの含有量に対する第2溶媒の含有量の質量比(以下、「第2溶媒/メチルテトラプロール」ともいう。)を有する。
(1)第1溶媒/メチルテトラプロール:1.2以上15以下
第2溶媒/メチルテトラプロール:6.5以上25以下、6.5以上21以下、6.5以上16以下、6.6以上15以下、6.6以上13以下若しくは7.0以上11以下、又は
(2)第1溶媒/メチルテトラプロール:1.2以上10以下
第2溶媒/メチルテトラプロール:6.5以上25以下、6.5以上21以下、6.5以上16以下、6.6以上15以下、6.6以上13以下若しくは7.0以上11以下、又は
(3)第1溶媒/メチルテトラプロール:1.2以上9.0以下
第2溶媒/メチルテトラプロール:6.5以上25以下、6.5以上21以下、6.5以上16以下、6.6以上15以下、6.6以上13以下若しくは7.0以上11以下、又は
(4)第1溶媒/メチルテトラプロール:1.2以上8.0以下
第2溶媒/メチルテトラプロール:6.5以上25以下、6.5以上21以下、6.5以上16以下、6.6以上15以下、6.6以上13以下若しくは7.0以上11以下、又は
(5)第1溶媒/メチルテトラプロール:1.3以上15以下
第2溶媒/メチルテトラプロール:6.5以上25以下、6.5以上21以下、6.5以上16以下、6.6以上15以下、6.6以上13以下若しくは7.0以上11以下、又は
(6)第1溶媒/メチルテトラプロール:1.3以上6.0以下
第2溶媒/メチルテトラプロール:6.5以上25以下、6.5以上21以下、6.5以上16以下、6.6以上15以下、6.6以上13以下若しくは7.0以上11以下、又は
(7)第1溶媒/メチルテトラプロール:1.3以上3.3以下
第2溶媒/メチルテトラプロール:6.5以上25以下、6.5以上21以下、6.5以上16以下、6.6以上15以下、6.6以上13以下若しくは7.0以上11以下。
【0028】
(d)界面活性剤
液状農薬組成物は、1種又は2種以上の界面活性剤を含有する。界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤及び両性界面活性剤が挙げられる。液状農薬組成物は、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤及び両性界面活性剤からなる群より選ばれる1種又は2種以上の界面活性剤を含有することができる。
【0029】
非イオン性界面活性剤としては、例えば、
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー;
ポリオキシエチレン脂肪酸エステル及びポリオキシエチレンポリオキシプロピレン脂肪酸エステル等のポリオキシアルキレン脂肪酸エステル;
ポリオキシエチレンアルキルエーテル及びポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルエーテル;
ポリオキシエチレントリスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリアリールエーテル及びポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリアリールエーテル等のポリオキシアルキレンポリアリールエーテル;
ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル及びポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルアリールエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルアリールエーテル;
ポリオキシエチレンヒマシ油及びポリオキシエチレンポリオキシプロピレンヒマシ油等のポリオキシアルキレン植物油;
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等のポリオキシアルキレン硬化植物油;
グリセリン脂肪酸エステル;
ソルビタンラウレート、ソルビタンステアレート、ソルビタンオレエート及びソルビタントリオレエート等のソルビタン脂肪酸エステル;
ポリオキシエチレンソルビタンラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンオレエート及びポリオキシエチレンソルビタントリオレエート等のポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル
等が挙げられる。
【0030】
アニオン性界面活性剤としては、例えば、
ドデシルベンゼンスルホン酸塩及びアルキルナフタレンスルホン酸塩等のアルキルアリールスルホン酸塩;
ジ(2-エチルヘキシル)スルホコハク酸塩等のジアルキルスルホコハク酸塩;
ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテル硫酸エステル塩等のポリオキシアルキレンポリアリールエーテル硫酸エステル塩
等が挙げられる。
上記スルホン酸塩、上記硫酸エステル塩における塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、アンモニウム塩等が挙げられる。
【0031】
カチオン性界面活性剤としては、例えば、
ドデシルアミン塩酸塩等のアルキルアミン塩酸塩;
ドデシルトリメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩、アルキルイソキノリニウム塩及びジアルキルモルホリニウム塩等のアルキル四級アンモニウム塩;
塩化ベンゼトニウム;
ポリアルキルビニルピリジニウム塩
等が挙げられる。
【0032】
両性界面活性剤としては、例えば、N-ラウリルアラニン、N,N,N-トリメチルアミノプロピオン酸、N,N,N-トリヒドロキシエチルアミノプロピオン酸、N-ヘキシル-N,N-ジメチルアミノ酢酸、1-(2-カルボキシエチル)ピリミジニウムベタイン、及びレシチン等が挙げられる。
【0033】
界面活性剤として、市販されている界面活性剤を用いてもよい。
市販されている非イオン性界面活性剤としては、例えば、いずれも商品名で、Toximul 8323(ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー、Stepan社製)、Atlas G5000(ブチルブロックコポリマー、Croda社製)、Atlas G5002L(ブチルブロックコポリマー、Croda社製)、Antarox B/848(ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ソルベイ社製)、ペグノール24-O(ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、東邦化学工業製)、ペグノール14-S(ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、東邦化学工業製)、ペグノールST-7(ポリオキシエチレンアルキルエーテル、東邦化学工業製)、ATPLUS245(ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、Croda社製)、Synperonic AB6(ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、HLB:12、Croda社製)、Brij O3(ポリオキシエチレンオレイルエーテル、HLB:7、Croda社製)、Genapol X060(ポリオキシエチレンアルキルエーテル、Clariant社製)、Genapol X150(ポリオキシエチレンアルキルエーテル、Clariant社製)、Emulsogen TS200(ポリオキシエチレントリスチリルフェニルエーテル、Clariant社製)、Emulsogen TS290(ポリオキシエチレントリスチリルフェニルエーテル、Clariant社製)、Emulsogen TS540(ポリオキシエチレントリスチリルフェニルエーテル、Clariant社製)、Emulsogen TS600(ポリオキシエチレントリスチリルフェニルエーテル、Clariant社製)、Emulsogen EL360(ポリオキシエチレンヒマシ油、Clariant社製)、Emulsogen EL400(ポリオキシエチレンヒマシ油、Clariant社製)、Emulsogen EL540(ポリオキシエチレンヒマシ油、Clariant社製)、ソルポール T26(ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、東邦化学工業製)、Alkamuls OR/40(ポリオキシエチレンヒマシ油、ソルベイ社製)、NIKKOL HCO-20(ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、日光ケミカルズ製)、Geronol TE/250(ポリオキシエチレンヒマシ油とポリオキシエチレンポリオキシプロピレンモノブチルエーテルの混合物、ソルベイ社製)、NIKKOL MGU(グリセリン脂肪酸エステル、日光ケミカルズ製)、NIKKOL DGS-80(グリセリン脂肪酸エステル、日光ケミカルズ製)、ニューコール20(ソルビタンラウレート、日本乳化剤製)、ニューコール25(ポリオキシエチレンソルビタンラウレート、日本乳化剤製)等が挙げられる。
【0034】
市販されているアニオン性界面活性剤としては、例えば、いずれも商品名で、Rhodacal 70(分岐鎖ドデシルベンゼンスルホン酸カルシウム塩、ソルベイ社製)、Rhodacal 70/B(直鎖ドデシルベンゼンスルホン酸カルシウム塩、ソルベイ社製)、Rhodacal LDS-25/AP(直鎖ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩、ソルベイ社製)、Calsogen 4814(ドデシルベンゼンスルホン酸カルシウム塩、Clariant社製)、Phenylsulfonat cal(ドデシルベンゼンスルホン酸カルシウム塩、Clariant社製)、Geropon CYA/75(ジ(2-エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム塩、ソルベイ社製)、Soprophor DSS/7(ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩、ソルベイ社製)等が挙げられる。
【0035】
液状農薬組成物は、好ましくは、非イオン性界面活性剤を含有する。例えば、液状農薬組成物は、好ましくは、1種又は2種以上の非イオン性界面活性剤を含有するか、1種以上の非イオン性界面活性剤と1種以上のアニオン性界面活性剤とを含有する。
1種以上の非イオン性界面活性剤と1種以上のアニオン性界面活性剤との組み合わせを用いる場合、それらの含有量比は、例えば1:0.1~1:40(質量比)である。
非イオン性界面活性剤は、好ましくは、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル及びポリオキシアルキレン植物油からなる群より選ばれる1種以上である。
アニオン性界面活性剤は、好ましくはアルキルアリールスルホン酸塩である。
【0036】
液状農薬組成物の全量を100質量%とするとき、液状農薬組成物中における界面活性剤の含有量は、好ましくは1質量%以上30質量%以下であり、より好ましくは4質量%以上28質量%以下であり、さらに好ましくは5質量%以上25質量%以下であり、なおさらに好ましくは5質量%以上20質量%以下であり、特に好ましくは7質量%以上20質量%以下である。
界面活性剤の含有量は、メチルテトラプロールの含有量の好ましくは0.3質量倍以上10質量倍以下であり、より好ましくは1質量倍以上10質量倍以下であり、さらに好ましくは1質量倍以上7質量倍以下である。
【0037】
液状農薬組成物の全量を100質量%とするとき、液状農薬組成物中におけるメチルテトラプロール、第1溶媒、第2溶媒、及び界面活性剤の合計含有量は、好ましくは60質量%以上であり、より好ましくは70質量%以上であり、さらに好ましくは75質量%以上である。該合計含有量は、100質量%であってもよく、95質量%以下であってもよく、90質量%以下であってもよく、85質量%以下であってもよい。
【0038】
(e)その他の成分
液状農薬組成物は、必要に応じて、上記以外の他の成分を含有することができる。
他の成分としては、例えば、メチルテトラプロール以外の農薬活性成分、第1溶媒及び第2溶媒以外の溶媒、並びに製剤用助剤等が挙げられる。
【0039】
液状農薬組成物に含有される農薬活性成分の全量を100質量%とするとき、液状農薬組成物に含有されるすべての農薬活性成分におけるメチルテトラプロールの含有量は、例えば20質量%以上100質量%以下又は30質量%以上100質量%以下であってもよい。該含有量は、例えば、50質量%以上100質量%以下、60質量%以上100質量%以下、80質量%以上100質量%以下、90質量%以上100質量%以下又は95質量%以上100質量%以下である。
【0040】
メチルテトラプロール以外の農薬活性成分としては、特に制限されず、殺虫活性成分、殺菌活性成分及び除草活性成分が挙げられる。液状農薬組成物は、メチルテトラプロール以外の農薬活性成分として、殺虫活性成分、殺菌活性成分及び除草活性成分からなる群より選ばれる1種以上の農薬活性成分を含有することができる。殺虫活性成分、殺菌活性成分及び除草活性成分は、それぞれ、1種又は2種以上の成分を含んでいてもよい。
【0041】
メチルテトラプロール以外の農薬活性成分の融点は、通常10℃以上であり、例えば20℃以上であってもよく、さらには30℃以上であってもよい。該融点は、通常300℃以下であり、200℃以下であってもよく、180℃以下であってもよい。該融点は、好ましくは20℃以上300℃以下であり、より好ましくは30℃以上200℃以下であり、さらに好ましくは30℃以上180℃以下である。
農薬活性成分の融点としては、文献値を採用することができる。文献値が存在しない場合、農薬活性成分の融点は、毛管に充填した試料を加熱し、試料が毛管内で溶融して固体が認められなくなった温度として融点を測定することができる。
【0042】
液状農薬組成物の低温における保存安定性及び水と混合したときの乳化安定性の観点から、液状農薬組成物に含有される溶媒の全量を100質量%とするとき、液状農薬組成物に含有されるすべての溶媒における第1溶媒及び第2溶媒の合計含有量は、好ましくは70質量%以上であり、より好ましくは80質量%以上であり、さらに好ましくは90質量%以上であり、なおさらに好ましくは95質量%以上であり、とりわけ好ましくは98質量%以上であり、特に好ましくは100質量%である。
【0043】
製剤用助剤としては、消泡剤及び増粘剤等が挙げられる。消泡剤としては、シリコーン系消泡剤等が挙げられる。
【0044】
消泡剤として、市販されている消泡剤を用いてもよい。消泡剤の市販品としては、例えば、いずれも商品名で、Antifoam C emulsion(シリコーン系消泡剤、東レ・ダウコーニング製)、Antifoam A compound(シリコーン系消泡剤、東レ・ダウコーニング製)、TSA730(シリコーン系消泡剤、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン製)、TSA720(シリコーン系消泡剤、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン製)、SAG1572(シリコーン系消泡剤、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン製)、SAG1538(シリコーン系消泡剤、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン製)、KS-538(シリコーン系消泡剤、信越化学工業製)、BYK-019(シリコーン系消泡剤、ビックケミー・ジャパン製)等が挙げられる。
【0045】
液状農薬組成物が消泡剤を含有する場合、その含有量は、液状農薬組成物の全量を100質量%とするとき、通常0.001質量%以上1質量%以下であり、好ましくは0.002質量%以上0.8質量%以下である。
【0046】
増粘剤としては、有機溶媒溶解性又は有機溶媒分散性の増粘剤が挙げられる。有機溶媒溶解性又は有機溶媒分散性の増粘剤としては、例えば、有機粘土、有機ベントナイト、有機モンモリロナイト、有機修飾されたヒマシ油誘導体等が挙げられる。
【0047】
増粘剤として、市販されている有機溶媒溶解性又は有機溶媒分散性の増粘剤を用いてもよい。有機溶媒溶解性又は有機溶媒分散性の増粘剤の市販品としては、例えば、いずれも商品名で、BENTONE SD-1(有機ベントナイト、ELEMENTIS SPECIALTIES社製)、BENTONE SD-2(有機ベントナイト、ELEMENTIS SPECIALTIES社製)、BENTONE 34(有機ベントナイト、ELEMENTIS SPECIALTIES社製)、BENTONE 38(有機ベントナイト、ELEMENTIS SPECIALTIES社製)、THIXATROL ST(有機修飾されたヒマシ油誘導体、ELEMENTIS SPECIALTIES社製)、THIXCIN R(ヒマシ油誘導体、ELEMENTIS SPECIALTIES社製)、THIXATROL 53X(有機修飾されたヒマシ油誘導体、ELEMENTIS SPECIALTIES社製)等が挙げられる。
【0048】
液状農薬組成物が増粘剤を含有する場合、その含有量は、液状農薬組成物の全量を100質量%とするとき、通常0.01質量%以上5質量%以下である。
【0049】
(f)液状農薬組成物の製造及び使用
液状農薬組成物は、農薬分野において乳剤と称される液体農薬製剤として好適に用いることができる。
液状農薬組成物は、乳剤の製造方法として一般的な方法で製造することができ、例えば、メチルテトラプロール、第1溶媒、第2溶媒及び界面活性剤、並びに必要に応じて添加される成分を混合することによって製造することができる。
【0050】
液状農薬組成物は、乳剤として通常用いられる方法で、病害虫や雑草を防除するために施用される。具体的には、液状農薬組成物を水と混合して乳濁液を調製し、該乳濁液を植物又は植物を栽培する土壌に施用する。
該乳濁液は、乳剤の体積に対して、通常2~10000倍、好ましくは10~8000倍、より好ましくは15~6000倍の水と混合して調製される。
【実施例
【0051】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例のみに限定されるものではない。
【0052】
<製造例1~25:液状農薬組成物の調製及び評価>
(1)液状農薬組成物の調製
表1~6に記載の配合成分を、表1~6に記載の質量割合(%)で混合し、均一な溶液となるまで撹拌して、液状農薬組成物をそれぞれ得た。
表1~6中、「第1溶媒/メチルテトラプロール」とは、メチルテトラプロールの含有量に対する第1溶媒の含有量の質量比を示し、「第2溶媒/メチルテトラプロール」とは、メチルテトラプロールの含有量に対する第2溶媒の含有量の質量比を示す。
【0053】
(2)液状農薬組成物の評価
(2-1)低温での保存安定性
室温環境下で、液状農薬組成物20mLと、メチルテトラプロールの結晶3粒(結晶の大きさ:約1mm)とをガラス容器に入れた後、直ちに0℃で保管した。保管開始から5日後に、結晶の大きさ及び数の変化を目視観察し、下記評価基準に従って液状農薬組成物の低温での保存安定性を評価した。結果を表1~6に示す。評価がA又はBであれば、低温において結晶が析出又は成長しにくいといえ、低温での保存安定性が良好であると評価できる。
A:結晶の大きさが元の大きさより小さいか、溶解して消失している
B:結晶の大きさ及び数に変化がない
C:結晶の数に変化はないが、結晶の大きさが元の大きさより大きい
D:結晶の数が増加しており、かつ結晶の大きさが元の大きさより大きい
【0054】
(2-2)水と混合したときの乳化安定性
室温環境下で、100mL容栓付きメスシリンダーに30℃のCIPAC標準水D(硬度:342ppm)99mLを加え、水面から約8cmの高さから液状農薬組成物1mLをゆっくりと滴下した。メスシリンダーに栓をして、メスシリンダーを1秒で180°転倒させ1秒で元に戻す操作を10回繰り返し、次いで30℃の恒温水槽中でメスシリンダーを24時間静置した。静置後、メスシリンダー内の状態を目視観察し、下記評価基準に従って水と混合したときの乳化安定性を評価した。結果を表1~6に示す。評価がA、B又はCであれば、結晶が析出及び成長しにくいといえ、水と混合したときの乳化安定性が良好であると評価できる。
A:結晶析出が認められない
B:微小な結晶が析出しており、その数が10粒未満
C:微小な結晶が析出しており、その数が10粒以上100粒未満
D:微小な結晶が析出しており、その数が100粒以上
E:B~Dと比較して大きな結晶が析出している
【0055】
【表1】
【0056】
【表2】
【0057】
【表3】
【0058】
【表4】
【0059】
【表5】
【0060】
【表6】
【0061】
表1~6に記載の配合成分の詳細は次のとおりである。
〔1〕ソルベッソ 200ND:芳香族炭化水素として主にC10-C13のアルキルナフタレン、エクソンモービルケミカル製
〔2〕Agnique AMD810:N,N-ジメチルオクタンアミドとN,N-ジメチルデカンアミドとの混合物、BASF社製
〔3〕Phenylsulfonat cal:ドデシルベンゼンスルホン酸カルシウム塩、Clariant社製
〔4〕Emulsogen EL360:ポリオキシエチレンヒマシ油、Clariant社製
〔5〕ATPLUS245:ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、Croda社製
〔6〕Geronol TE/250:ポリオキシエチレンヒマシ油とポリオキシエチレンポリオキシプロピレンモノブチルエーテルの混合物、ソルベイ社製
〔7〕Atlas G5000:ブチルブロックコポリマー、Croda社製
〔8〕BYK-019:シリコーン系消泡剤、ビックケミー・ジャパン製