(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-10
(45)【発行日】2024-01-18
(54)【発明の名称】ポリシリコンの防汚方法
(51)【国際特許分類】
C01B 33/035 20060101AFI20240111BHJP
B29C 48/10 20190101ALI20240111BHJP
B65D 65/38 20060101ALI20240111BHJP
【FI】
C01B33/035
B29C48/10
B65D65/38
(21)【出願番号】P 2020553932
(86)(22)【出願日】2019-10-29
(86)【国際出願番号】 JP2019042330
(87)【国際公開番号】W WO2020090804
(87)【国際公開日】2020-05-07
【審査請求日】2022-08-05
(31)【優先権主張番号】P 2018205330
(32)【優先日】2018-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003182
【氏名又は名称】株式会社トクヤマ
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】浅野 卓也
(72)【発明者】
【氏名】吉村 聡子
【審査官】▲高▼橋 真由
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-237722(JP,A)
【文献】特開2008-174309(JP,A)
【文献】特開2017-056959(JP,A)
【文献】国際公開第2016/047574(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/035
B29C 48/10
B65D 65/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内面と外面とを有するチューブ状樹脂シートを使用してポリシリコンを防汚するに際し、該チューブ状樹脂シートを、その内面が露出されない状態で保持し、使用直前に
該チューブ状樹脂シートの内面が展開可能となるように
長手方向にカットし、上記チューブ状樹脂シートの内面を露出させてポリシリコンと接触せしめることを特徴とする、ポリシリコンの防汚方法。
【請求項2】
内面と外面とを有するチューブ状樹脂シートを使用してポリシリコンを防汚するに際し、該チューブ状樹脂シートを、その内面が展開可能となるように
長手方向にカットし、かつ
カットされたチューブ状樹脂シートの内面が露出されない状態で保持し、使用直前に上記
チューブ状樹脂シートの内面を露出させてポリシリコンと接触せしめることを特徴とする、ポリシリコンの防汚方法。
【請求項3】
使用直前の前記樹脂シートの内面における鉄の存在量が元素換算で1pg/cm
2以下である請求項1または2記載のポリシリコンの防汚方法。
【請求項4】
樹脂シートが添加剤無添加のポリエチレンシートである、請求項1~3のいずれか一項に記載のポリシリコンの防汚方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の防汚方法を含むポリシリコンの製造方法。
【請求項6】
チューブ状樹脂シートを、その内面を露出させずに巻き取った巻回物
であって、長手方向にカットし、その内面を露出させてポリシリコンと接触させて防汚用シートとして用いる、ポリシリコン防汚用樹脂シート。
【請求項7】
チューブ状樹脂シートを、その内面が展開可能となるように
長手方向にカットしてなり、かつ内面が露出されていない樹脂シートの巻回物よりなることを特徴とするポリシリコン防汚用樹脂シート。
【請求項8】
前記チューブ状樹脂シートの内面における鉄の存在量が元素換算で
1pg/cm
2以下である請求項6または7記載のポリシリコン防汚用樹脂シート。
【請求項9】
前記樹脂シートが添加剤無添加のポリエチレンシートである、請求項6~8のいずれか一項に記載のポリシリコン防汚用樹脂シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリシリコンの新規な防汚方法を提供する。詳しくは、使用時までの表面汚染が可及的に防止され、ポリシリコンの防汚時に使用する樹脂シートからのポリシリコンに対する汚染を著しく低減することを可能としたポリシリコンの防汚方法である。
【背景技術】
【0002】
ポリシリコンの防汚は、ロッド状、カットロッド状、破砕物、粉状等の形態のポリシリコンを運搬したり保管したりする際に、ポリシリコンの周囲環境からの汚染を防ぐために樹脂シートにより上記ポリシリコンを覆うことによって行われる。ポリシリコンには高い純度が求められるため、この防汚処理は、開放大気中のみならず、クリーンルーム内でも行われる。
【0003】
上記防汚に使用する樹脂シートとしては、樹脂シートによるポリシリコンの汚染を防止するため、例えば、金属成分や有機物成分のブリードが無い、添加剤無添加の樹脂シートが一般に使用されている。上記防汚処理は、巻回された樹脂シートを適当な長さに巻き出してカットし、載置されたポリシリコンの上に被せたり、場合によっては、ポリシリコンの下に敷いたりするなどの作業により、ポリシリコンを覆うことによって行われる(特許文献1、2参照)。
【0004】
ところで、前記防汚に使用する樹脂シートは、上記したように、その内部は極めて高純度化されているものの、表面は、製造直後から使用するまでの間、外気により汚染され、その使用時点で、外気中に含まれる金属成分、有機物成分、ドーパント成分などの汚染物質による高い汚染が観察されることを本発明者らは見出した。即ち、樹脂シートの製造方法において、押出機のTダイより押し出された樹脂は必要に応じて延伸され、シート状に成形された後、ロール状に巻き取られるが、その間、表面が外気との接触或いはその他の汚染源との接触により、汚染物質が表面に付着してしまい、巻き取られた樹脂シートの表面は既に汚染が進んだ状態となっている。このような汚染源としては巻き取り時に使用するローラーなども考えられる。
【0005】
尚、環状ダイを使用するインフレーション法により樹脂シートが製造される場合もある。この場合、内面と外面とを有するチューブ形状の樹脂シートが得られ、内面は高い清浄性を有する。しかし、樹脂シートとして用いる場合には、チューブ状の樹脂シートは両サイドをカットして、別々のロールに巻き取られるか、もしくは1サイドを切断後、開いて巻き取るのが一般的であり、その巻き取り時に前記と同様の汚染が懸念される。
【0006】
そして、汚染された樹脂シートを使用してポリシリコンを覆うと、樹脂シートに付着している汚染物質によりポリシリコンが汚染されるという問題が発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特表2017-524632号公報
【文献】特開2017-56959号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の目的は、樹脂シートによるポリシリコンの防汚において、樹脂シートに由来するポリシリコンの汚染を効果的に防止することが可能な防汚方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を解決するため検討を重ねた結果、チューブ状の樹脂シートを使用し、そのチューブ内面を防汚に使用する直前まで外気と接触させない状態で扱い、使用直前に内面を露出させて、該内面がポリシリコンと接触するように防汚を行うことにより、前記目的を達成し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明の一実施態様は、内面と外面とを有するチューブ状樹脂シートを使用してポリシリコンを防汚するに際し、該チューブ状樹脂シートを、その内面が露出されない状態で保持し、使用直前に内面が展開可能となるようにカットし、上記内面を露出させてポリシリコンと接触せしめることを特徴とする、ポリシリコンの防汚方法である。
【0011】
また本発明の他の実施態様は、内面と外面とを有するチューブ状樹脂シートを使用してポリシリコンを防汚するに際し、該チューブ状樹脂シートを、その内面が展開可能となるようにカットし、かつ内面が露出されない状態で保持し、使用直前に上記内面を露出させてポリシリコンと接触せしめることを特徴とする、ポリシリコンの防汚方法である。
【0012】
上記防汚方法において、使用直前の樹脂シートの内面における鉄の存在量が元素換算で1pg/cm2以下であることが好ましい。また、前記樹脂シートの突き刺し強度が10N以上であることが好ましい。
【0013】
また、前記樹脂シートは、添加剤無添加のポリエチレンシートであることがシート内部の不純物による汚染を防止するために好ましい。
【0014】
更に、本発明の方法により、防汚シートからの汚染が効果的に防止されたポリシリコンの製造方法が提供される。
【0015】
更にまた、本発明は、チューブ状樹脂シートを、その内面が露出されていない状態で巻き取ってなる巻回物よりなることを特徴とするポリシリコン防汚用樹脂シートをも提供する。更にまた、本発明は、チューブ状樹脂シートを、その内面が展開可能となるようにカットしてなりかつ内面が露出されていない樹脂シートの巻回物よりなることを特徴とするポリシリコン防汚用樹脂シートをも提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の防汚方法によれば、チューブ状樹脂シートを使用し、チューブ状樹脂シートの内面が露出されない状態で保持された樹脂シートを、使用直前に上記内面を露出させ、汚染の無い清浄なシート表面をポリシリコンと接触せしめることにより、外気等による汚染のない樹脂シート面をポリシリコンと接触せしめて防汚を行うことができるため、ポリシリコンの汚染を効果的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図2a】本発明の防汚方法に使用される樹脂シートの一態様を示す概略図
【
図2b】本発明の防汚方法に使用される樹脂シートの一態様を示す概略図
【
図2c】本発明の防汚方法に使用される樹脂シートの一態様を示す概略図
【
図3】チューブ状樹脂シートを製造する代表的な工程を示す概略図
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の一実施態様に係るポリシリコンの防汚方法は、前記したように、内面と外面とを有するチューブ状樹脂シートを使用し、該チューブ状樹脂シートを、その内面が展開可能となるようにカットし、かつ内面が露出されない状態で保持し、使用直前に上記内面を露出させて防汚されるポリシリコンと接触せしめることを特徴とする。
図1は内面2と外面3とを有するチューブ状樹脂シート1を示す。
図1に示すように、内面2は外気や他の装置類との接触が制限され、清浄な状態にある。本発明では、上記のチューブ状樹脂シート1の内面2が展開できるようにカットした樹脂シート10を準備する。カットの態様は特に限定はされず、内面2を露出できるよう展開可能にするすべての態様が含まれる。なお、チューブ状樹脂シート1をカットして得られる樹脂シート10では、内面2同士が密着し、内面2は露出していない状態にある。
【0019】
図2a~
図2cは、チューブ状樹脂シート1の内面が展開可能であり、かつ露出されない状態にある樹脂シートの代表的な態様を示す。
図2aは、チューブ状樹脂シートの長手方向の片側がカットされた樹脂シート10を示す。この態様の樹脂シートは、カット部を開くことなくロール状に巻き取った巻回物11とすることにより、内面2が露出されない状態で保持できる。そして、使用時においては、上記巻回物11より樹脂シート10を巻き出し、カットされた片側から開いてその内面2をポリシリコンと接触させる。
【0020】
図2bは、チューブ状樹脂シートの長手方向の両側がカットされた樹脂シート10を示す。この態様の樹脂シートは、内面2同士が密着した2層シートであり、層間を剥離することなく、ロール状に巻き取った巻回物11とすることにより、内面2が露出されない状態で保持できる。そして、使用時においては、上記巻回物11より樹脂シート10を巻き出し、2層の層間で剥離し、内面側にあった表面をポリシリコンと接触させる。
【0021】
図2cは、
図2aの変形例であり、チューブ状樹脂シートの長手方向の中央部分がカットされた樹脂シート10を示す。この態様の樹脂シートは、
図2aに示した樹脂シートが並列している状態となる。使用時においては、上記巻回物11より樹脂シート10を巻き出し、カットされた片側から開いてその内面2をポリシリコンと接触させる。
【0022】
また、本発明の実施態様では、チューブ状樹脂シートを巻き取り、内面が露出しないように保持した後に、該チューブ状樹脂シートを巻き出し、使用の直前に前記
図2a~
図2cに示されるようにカットしてもよい。
【0023】
尚、本発明において、「防汚」は、ポリシリコンを周囲の環境の汚染から防ぐためにシートにより保護する手段であり、具体的には、保管等の目的で載置されるポリシリコンをシートで覆う方法、ポリシリコンの下にシートを敷く方法、また、ポリシリコンを包む方法などを含む。また、運搬時においては、運搬用の容器の底部にシートを敷き、その上にポリシリコンを収容する方法、さらには容器に収容されたポリシリコンをシートで覆う方法などを含む。また、ポリシリコンには高い純度が求められるため、上記の方法は、開放大気中のみならず、クリーンルーム内でも行われる。クリーンルーム内は清澄性が極めて高いが、ポリシリコンを長時間放置すると汚染が進む。したがって、本発明の防汚方法をクリーンルーム内で使用することで、ポリシリコンを長時間清浄な状態に保つことができる。
【0024】
また、本発明において「内面」とは、チューブ状樹脂シート1の内側の面を言う。本発明では、チューブ状樹脂シート1をカットし、展開して樹脂シート10として使用する。樹脂シートにおける「内面」とは、展開前のチューブ状樹脂シート1の内側の面であった面をいう。
【0025】
また、上記ポリシリコンは、その形態を問わず、例えば、シーメンス法の反応装置より取り出されたロッドの状態、上記ロッドをカットしたカットロッドの状態、或いは、上記ロッドを破砕して得られるポリシリコン破砕物の状態等を含む。一般にポリシリコンは破砕後にエッチングなどにより洗浄され、清浄な表面状態とされる。本発明の防汚方法は、エッチング前のポリシリコンに適用してもよく、エッチング後のポリシリコンに適用してもよい。
【0026】
本発明において、チューブ状樹脂シート1は、インフレーション法等の公知の方法により得られたものが特に制限無く使用される。具体的には、
図3に示すように、環状ダイ5を備えた押出機4より、樹脂を筒状に押し出し、必要に応じて、マンドレルにより延伸してチューブ状樹脂シート1を成形後、ロールに巻いて巻回物12として得ることができる。巻回物12は使用時に巻き出され、前記のようにカットして樹脂シート10を得てもよい。また、チューブ状樹脂シート1の巻き取り前に、前記のようにカットし、本発明の樹脂シート10を得た後にロールに巻いて巻回物11を得てもよい。また、チューブ状樹脂シート1に成形するために供給するブロアー6用の空気は、得られるチューブ状樹脂シートの内面を汚染しないように、清浄な空気を使用することが好ましい。具体的には、0.3μmの粒子が10個/L以下の空気が好適に使用される。このため、フィルター7をブロアー6とダイ5の間に介在させてもよい。フィルター7としてはたとえばHEPAフィルターなどが用いられる。
【0027】
また、使用する樹脂としては、熱可塑性樹脂であれば特に制限されないが、適度な柔軟性を備え、且つ安価な樹脂として、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)などのポリエチレン系樹脂が好適に使用される。
【0028】
更に、樹脂シートの厚みは、ポリシリコンの形状、大きさ、質量により適宜選択すればよいが、一般に、50μm~2mm、特に、150~300μmである。また、前記樹脂シートの突き刺し強度は、10N以上であることが好ましい。
【0029】
更に、樹脂シートを構成する樹脂は、帯電防止剤、可塑剤、酸化防止剤等の添加剤を無添加のものが、添加剤由来の金属元素や有機物のブリードによる汚染を抑制するために好ましい。
【0030】
上記チューブ状樹脂シートは、製造時からロール状に巻き取られる間、内面は外気と接触することなく常に清浄な状態である。例えば、防汚方法において、使用直前の樹脂シートのサンプルについて、内面における鉄の存在量は元素換算で1pg/cm2以下の清浄度を達成することが確認された。一方、外気との接触により汚染された通常の樹脂シート表面の鉄の存在量は、10pg/cm2程度となる。また、鉄の存在量が上記範囲であれば、他の金属の存在量も同程度以上に低減される。例えば、ナトリウムは2pg/cm2以下、カルシウムは5pg/cm2以下、亜鉛は1pg/cm2以下、とすることができる。
【0031】
本発明は、かかるチューブ状樹脂シートの特性を利用して、樹脂シートによる防汚時におけるポリシリコンの汚染を効果的に防止するものである。即ち、本発明の防汚方法は、チューブ状樹脂シートの内面を露出させない状態で取り扱い、防汚に使用する直前で該チューブ状樹脂シートの内面を露出せしめる態様を全て含むものであり、具体的には以下の態様により実施することが好ましい。
【0032】
1.チューブ状樹脂シートをロールに巻かれた巻回物として保持し、使用時に巻き出し、チューブ状樹脂シートを前記のようにカットし、前記チューブ状樹脂シートにおいて内面となっていた面を開いて防汚されるポリシリコンと接触するように防汚を行う方法。
【0033】
2.樹脂シートの製造工程において、チューブ状樹脂シートを前記のようにカットしながらその内面が露出しない二枚重ねの状態でロールに巻き取って巻回物として保持し、上記巻回物より樹脂シートを巻き出し、前記チューブ状樹脂シートにおいて内面となっていた面を開いて防汚されるポリシリコンと接触するように防汚を行う方法。
【0034】
3.前記チューブ状樹脂シートを巻回物の状態で前記のようにカットして保持し、上記巻回物よりカットされた樹脂シートを巻き出し、前記チューブ状樹脂シートにおいて内面となっていた面を開いて防汚されるポリシリコンと接触するように防汚を行う方法。
【0035】
かくして、上述の本発明の防汚方法によれば、樹脂シートの清浄な面とポリシリコンとを接触させるため、樹脂シートからの汚染を効果的に防止できる。
【0036】
尚、インフレーションで製膜した場合であっても、製膜直後に両サイドをカットして、別々のロールに樹脂シート巻きとった場合、樹脂シートの両面が外気や巻きだしロールに接触して汚染される。この結果、樹脂シートをポリシリコンの防汚に用いても、防汚性は不十分となる。よって、樹脂シートの巻き取りを、その内面が露出させずに行うことは、本発明の効果を達成するうえで極めて重要である。
【実施例】
【0037】
以下、本発明の実施形態を説明するが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。
【0038】
(実施例1)
(チューブ状樹脂シートの製造)
帯電防止剤等の添加剤を含まないポリエチレン(LDPE)を、
図3に示す装置によりインフレーション成形し、チューブ状樹脂シートを得た。シートの厚みは250μmとした(突き刺し強度10N以上を満足する。)。得られたチューブ状樹脂シートをロールに巻き取り、巻回物を得た。
尚、インフレーション成形には、0.3μmの粒子が10個/L以下に調整された空気を使用した。
【0039】
(チューブ状樹脂シートのカット)
チューブ状樹脂シートを巻き出すと同時に、
図2aに示すように、シートの長手方向の片側を切断した。切断部からシートを開き、内面を露出させ、内面側がポリシリコンに接触するように、ポリシリコンを樹脂シートで覆った。上記の操作はいずれもクラス1000のクリーンルーム内で行った。以下の評価を行った。
【0040】
(金属の存在量)
樹脂シートの内面および外面の金属の存在量を、以下のように測定した。
樹脂シートの測定対象表面を1質量%の濃度の硝酸水溶液を抽出液として付着金属を抽出し、ICP-MS(誘導結合プラズマ質量分析法)で定量分析して不純物である鉄、Na、CaおよびZnの存在量を測定した。測定は樹脂シートを50×50cmの大きさにカットした10枚のサンプルについて行い、平均値を表1に示す。
【0041】
(防汚性の評価)
ポリシリコンを樹脂シートで覆った後、クラス1000のクリーンルーム内に10日間放置した。ポリシリコンの表面汚染を以下のように評価した。
ポリシリコンの表面を1質量%の濃度の硝酸水溶液を抽出液として付着金属を抽出し、ICP-MS(誘導結合プラズマ質量分析法)で定量分析して不純物である鉄、Na、CaおよびZnの存在量を測定した。測定は任意にピックアップした10個のポリシリコン破砕片を1単位とし、これを10単位実施し、平均値を表2に示す。
【0042】
(比較例1)
樹脂シートの外面(チューブにおいて外面となっていた面)を、ポリシリコンに接触させて防汚を行った以外は、実施例1と同様の操作を行った。結果を表2に示す。
【0043】
【符号の説明】
【0044】
1 チューブ状樹脂シート
2 内面
3 外面
4 押出機
5 環状ダイ
6 ブロアー
7 フィルター
10 樹脂シート(カット済)
11 樹脂シートの巻回物
12 チューブ状樹脂シートの巻回物