IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社KOKUSAI ELECTRICの特許一覧

特許7417569基板処理装置、半導体装置の製造方法及びプログラム
<>
  • 特許-基板処理装置、半導体装置の製造方法及びプログラム 図1
  • 特許-基板処理装置、半導体装置の製造方法及びプログラム 図2
  • 特許-基板処理装置、半導体装置の製造方法及びプログラム 図3
  • 特許-基板処理装置、半導体装置の製造方法及びプログラム 図4
  • 特許-基板処理装置、半導体装置の製造方法及びプログラム 図5
  • 特許-基板処理装置、半導体装置の製造方法及びプログラム 図6
  • 特許-基板処理装置、半導体装置の製造方法及びプログラム 図7
  • 特許-基板処理装置、半導体装置の製造方法及びプログラム 図8
  • 特許-基板処理装置、半導体装置の製造方法及びプログラム 図9
  • 特許-基板処理装置、半導体装置の製造方法及びプログラム 図10
  • 特許-基板処理装置、半導体装置の製造方法及びプログラム 図11
  • 特許-基板処理装置、半導体装置の製造方法及びプログラム 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-10
(45)【発行日】2024-01-18
(54)【発明の名称】基板処理装置、半導体装置の製造方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/31 20060101AFI20240111BHJP
   C23C 16/50 20060101ALI20240111BHJP
   H05H 1/46 20060101ALI20240111BHJP
   H01L 21/316 20060101ALN20240111BHJP
【FI】
H01L21/31 C
C23C16/50
H05H1/46 L
H01L21/316 A
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2021178348
(22)【出願日】2021-10-29
(65)【公開番号】P2023067273
(43)【公開日】2023-05-16
【審査請求日】2022-09-26
(73)【特許権者】
【識別番号】318009126
【氏名又は名称】株式会社KOKUSAI ELECTRIC
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉野 晃生
(72)【発明者】
【氏名】大橋 直史
(72)【発明者】
【氏名】高崎 唯史
【審査官】長谷川 直也
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-284291(JP,A)
【文献】特開2020-188229(JP,A)
【文献】特開2000-012296(JP,A)
【文献】特開2017-083220(JP,A)
【文献】特開2010-021590(JP,A)
【文献】特開2019-036513(JP,A)
【文献】特開2020-161541(JP,A)
【文献】特開平07-057893(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0118792(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/31
C23C 16/50
H05H 1/46
H01L 21/316
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を処理する基板処理室と、
前記基板処理室に連通するプラズマ生成室と、
前記プラズマ生成室内にガスを供給可能なガス供給部と、
前記プラズマ生成室を囲うように配置され、高周波電力が供給される第1コイルと、
前記プラズマ生成室を囲うように配置され、前記第1コイルと軸方向が同じで且つ前記第1コイルと巻径が異なり、高周波電力が供給され、該高周波電力の供給によって生じる電圧分布のピークが前記第1コイルで生じる電圧分布のピークと重ならないよう構成されている第2コイルと、
を備え
前記プラズマ生成室の外周には、前記第1コイルを構成する導体と前記第2コイルを構成する導体とが前記軸方向に交互に配置される第1配置領域と、前記第1コイルの導体のみが前記軸方向に間隔をあけて配置される第2配置領域が形成されている基板処理装置。
【請求項2】
前記第2コイルは、軸方向と直交する方向において、電圧分布のピークが前記第1コイルの電圧分布のピークと重ならないよう構成されている請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記第2コイルは、軸方向において、電圧分布のピークが前記第1コイルの電圧分布のピークと重ならないよう構成されている請求項1または請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記第1コイルの巻径は、前記第2コイルの巻径よりも小さくなるよう構成されている請求項1から請求項のうち、いずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記第2配置領域は、前記軸方向において、前記第1配置領域よりも前記基板が載置される基板載置部に近い側に形成されている
請求項1から請求項4のうち、いずれか一項に記載の基板処理装置
【請求項6】
前記基板載置部の外周から前記ガスを排気可能な排気部を有する
請求項に記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記第1配置領域では、前記第1コイルの導体と前記第2コイルの導体とがアーク放電しない距離で離隔するよう構成され、
前記第2配置領域においては、前記第1コイルの導体間がアーク放電しない距離で離隔するよう構成されている
請求項~請求項のうち、いずれか1項に記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記第2配置領域は、前記軸方向において、前記第1配置領域よりも前記基板が載置される基板載置部から遠い側に形成されている
請求項1から請求項4のうち、いずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項9】
前記プラズマ生成室の外周には、前記第2配置領域を挟んで前記第1配置領域の反対側に、前記第1コイルの導体と前記第2コイルの導体とが前記軸方向に交互に配置される第3配置領域が形成されている
請求項~請求項のうち、いずれか1項に記載の基板処理装置。
【請求項10】
前記第1コイルは、アースに接続可能な一対のアース接続部を有し、前記一対のアース接続部間の電気的な長さが前記第1コイルに供給される高周波電力の波長の逓倍の長さとなるよう構成されている
請求項1から請求項のうち、いずれか1項に記載の基板処理装置。
【請求項11】
前記第2コイルは、アースに接続可能な一対のアース接続部を有し、前記一対のアース接続部間の電気的な長さが前記第2コイルに供給される高周波電力の波長の逓倍の長さとなるよう構成されている
請求項10に記載の基板処理装置。
【請求項12】
前記第1コイルの電気的な長さと前記第2コイルの電気的な長さが等しくなるよう、前記第1コイル及び前記第2コイルの少なくとも一方に電気的な長さを補正する波形調整回路が接続されている
請求項1~請求項11のうち、いずれか1項に記載の基板処理装置。
【請求項13】
前記波形調整回路は、可変コンデンサである
請求項12に記載の基板処理装置。
【請求項14】
前記波形調整回路は、導電体で構成された線である
請求項12に記載の基板処理装置。
【請求項15】
前記第1コイルの軸方向一方側に位置する前記アース接続部は、前記第2コイルの軸方向一方側に位置する前記アース接続部と前記軸方向における位置が異なるよう構成されている
請求項10又は請求項11に記載の基板処理装置。
【請求項16】
前記第1コイルの軸方向他方側に位置する前記アース接続部は、前記第2コイルの軸方向他方側に位置する前記アース接続部と前記軸方向における位置が異なるよう構成されている
請求項10、請求項11又は請求項15に記載の基板処理装置。
【請求項17】
前記第1コイルに接続される電源から発生する高周波は、前記第2コイルに接続される電源から発生する高周波と同じ周波数である
請求項1~請求項16のうち、いずれか1項に記載の基板処理装置。
【請求項18】
前記第1コイルと前記第2コイルとに高周波電力を供給した状態で、前記プラズマ生成室に前記ガスを供給するよう制御する制御部を備えている
請求項1~請求項17のうち、いずれか1項に記載の基板処理装置。
【請求項19】
プラズマ生成室を囲うように第1コイルが配置されると共に前記プラズマ生成室を囲うように該第1コイルと軸方向が同じで且つ前記第1コイルと巻径が異なる第2コイルが配置され、前記プラズマ生成室の外周に前記第1コイルを構成する導体と前記第2コイルを構成する導体とが前記軸方向に交互に配置される第1配置領域と、前記第1コイルの導体のみが前記軸方向に間隔をあけて配置される第2配置領域とが形成されている基板処理装置の前記第1コイルと、前記第2コイルとに、前記第1コイルで生じる電圧分布のピークと前記第2コイルで生じる電圧分布のピークとが重ならないよう高周波電力を供給する工程と、
前記プラズマ生成室にガスを供給して、前記プラズマ生成室に連通する基板処理室に配置された基板を処理する工程と、
を有する半導体装置の製造方法。
【請求項20】
プラズマ生成室を囲うように第1コイルが配置されると共に前記プラズマ生成室を囲うように該第1コイルと軸方向が同じで且つ前記第1コイルと巻径が異なる第2コイルが配置され、前記プラズマ生成室の外周に前記第1コイルを構成する導体と前記第2コイルを構成する導体とが前記軸方向に交互に配置される第1配置領域と、前記第1コイルの導体のみが前記軸方向に間隔をあけて配置される第2配置領域とが形成されている基板処理装置の前記第1コイルと、前記第2コイルとに、前記第1コイルで生じる電圧分布のピークと前記第2コイルで生じる電圧分布のピークとが重ならないよう高周波電力を供給する手順と、
前記プラズマ生成室にガスを供給して、前記プラズマ生成室に連通する基板処理室に配置された基板を処理する手順と、
をコンピュータによって前記基板処理装置に実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理装置、半導体装置の製造方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、二つのコイルに高周波電力を供給することにより処理ガスをプラズマ励起して基板処理を行う基板処理装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-161541号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記基板処理装置では、二つのコイルが同径で且つ同軸上に配置されている。そのため、基板の面内方向におけるプラズマ密度に偏りが生じて、基板処理の面内均一性が低下することがある。
【0005】
本開示の目的は、基板処理の面内均一性を向上させることが可能な技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様によれば、
基板を処理する基板処理室と、
前記基板処理室に連通するプラズマ生成室と、
前記プラズマ生成室内にガスを供給可能なガス供給部と、
前記プラズマ生成室を囲うように配置され、高周波電力が供給される第1コイルと、
前記プラズマ生成室を囲うように配置され、前記第1コイルと軸方向が同じで且つ前記第1コイルと巻径が異なり、高周波電力が供給され、該高周波電力の供給によって生じる電圧分布のピークが前記第1コイルで生じる電圧分布のピークと重ならないよう構成されている第2コイルと、
を備える技術が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、基板処理の面内均一性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の一態様で好適に用いられる基板処理装置の概略構成図である。
図2】本開示の比較例で用いられる第1共振コイルを示す図である。
図3図2の第1共振コイルにおける電流と電圧の関係を示す説明図である。
図4図2の第1共振コイルを用いて処理ガスをプラズマ励起した場合の処理炉内の様子を示す図である。
図5図4の第1共振コイルの軸方向中央部における水平断面図である。
図6】本開示の一態様で好適に用いられる第2共振コイルを示す図である。
図7】第1共振コイル及び第2共振コイルにおける電流と電圧の関係を示す説明図である。
図8図7の第1共振コイル及び第2共振コイルを用いて処理ガスをプラズマ励起した場合の処理炉内の様子を示す図である。
図9図8の第1共振コイル及び第2共振コイルの軸方向中央部における水平断面図である。
図10】本開示の一態様で好適に用いられる基板処理装置の制御部(制御手段)の構成を示す図である。
図11】本開示の一態様で好適に用いられる基板処理工程を示すフロー図である。
図12】本開示の一態様で好適に用いられる共振コイルの変形例を用いて処理ガスをプラズマ励起した場合の処理炉内の様子を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の一態様について図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明において用いられる図面は、いずれも模式的なものであり、図面に示される、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は、現実のものとは必ずしも一致していない。また、複数の図面の相互間においても、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は必ずしも一致していない。
【0010】
(1)基板処理装置の構成
本開示の一態様に係る基板処理装置100について、図1図10を用いて以下に説明する。本開示の一態様に係る基板処理装置は、主に基板面上に形成された膜や下地に対して酸化処理を行うように構成されている。
【0011】
(処理室)
基板処理装置100は、基板としてのウエハ200をプラズマ処理する処理炉202を備えている。処理炉202には、処理室201を構成する処理容器203が設けられている。処理容器203は、第1の容器であるドーム型の上側容器210と、第2の容器である碗型の下側容器211とを備えている。上側容器210が下側容器211の上に被さることにより、処理室201が形成されている。この上側容器210は、処理ガスがプラズマ励起されるプラズマ生成空間201Aを形成するプラズマ容器を構成している。
【0012】
また、下側容器211の下部側壁には、ゲートバルブ244が設けられている。ゲートバルブ244は、開いているときに、搬送機構(図示省略)を用いることによって、搬入出口245を介して、処理室201内へウエハ200を搬入したり、処理室201外へとウエハ200を搬出したりすることができるように構成されている。ゲートバルブ244は、閉まっているときに処理室201内の気密性を保持する仕切弁となるように構成されている。
【0013】
処理室201は、プラズマ生成空間201Aと、基板処理空間201Bと、を有する。プラズマ生成空間201Aは、周囲に電極としてのコイルである第1共振コイル212及び第2共振コイル214が設けられている空間であり、プラズマが生成される空間である。プラズマ生成空間201Aは、処理室201の内、第1共振コイル212の下端より上方であって、且つ第1共振コイル212の上端より下方の空間を言う。基板処理空間201Bは、プラズマ生成空間201Aに連通し、ウエハ200が処理される空間である。基板処理空間201Bは、ウエハ200がプラズマを用いて処理される空間であって、第1共振コイル212の下端より下方の空間を言う。本開示の一態様では、プラズマ生成空間201Aと基板処理空間201Bの水平方向の径は略同一となるように構成されている。プラズマ生成空間201Aを形成する構成はプラズマ生成室とも呼ばれ、基板処理空間を形成する構成は基板処理室とも呼ばれる。また、プラズマ生成空間201Aは、処理室201内におけるプラズマ生成領域と言い換えてもよい。また、基板処理空間201Bは、処理室201内における基板処理領域と言い換えてもよい。
【0014】
(サセプタ)
処理室201の底側中央には、ウエハ200を載置する基板載置部としてのサセプタ(基板載置台)217が配置されている。サセプタ217は、処理室201内の第1共振コイル212の下方に設けられている。
【0015】
サセプタ217の内部には、加熱機構としてのヒータ217Bが一体的に埋め込まれている。ヒータ217Bは、電力が供給されると、ウエハ200を加熱することができるように構成されている。
【0016】
サセプタ217は、下側容器211とは電気的に絶縁されている。インピーダンス調整電極217Cは、サセプタ217に載置されたウエハ200上に生成されるプラズマの密度の均一性をより向上させるために、サセプタ217内部に設けられている。そして、インピーダンス調整電極217Cは、インピーダンス調整部としてのインピーダンス可変機構275を介して接地されている。
【0017】
サセプタ217には、サセプタ217を昇降させる駆動機構を備えるサセプタ昇降機構268が設けられている。また、サセプタ217には貫通孔217Aが設けられるとともに、下側容器211の底面にはウエハ突上げピン266が設けられている。サセプタ昇降機構268によりサセプタ217が下降させられたときには、ウエハ突上げピン266がサセプタ217とは非接触な状態で、貫通孔217Aを突き抜けるように構成されている。
【0018】
(ガス供給部)
処理室201の上方、つまり上側容器210の上部には、ガス供給ヘッド236が設けられている。ガス供給ヘッド236は、キャップ状の蓋体233と、ガス導入口234と、バッファ室237と、開口238と、遮蔽プレート240と、ガス吹出口239とを備え、反応ガスを処理室201内へ供給できるように構成されている。バッファ室237は、ガス導入口234より導入される反応ガスを分散する分散空間としての機能を有する。
【0019】
ガス導入口234には、酸素含有ガスを供給する酸素含有ガス供給管232Aの下流端と、水素含有ガスを供給する水素含有ガス供給管232Bの下流端と、不活性ガスを供給する不活性ガス供給管232Cと、が合流管232で合流するように接続されている。酸素含有ガス供給管232Aは、単にガス供給管232Aとも呼び、水素含有ガス供給管232Bは、単にガス供給管232Bとも呼び、不活性ガス供給管232Cは単にガス供給管232Cとも呼ぶ。酸素含有ガス供給管232Aには、上流側から順に、酸素含有ガス供給源250A、流量制御装置としてのマスフローコントローラ(MFC)252A、開閉弁としてのバルブ253Aが設けられている。水素含有ガス供給管232Bには、上流側から順に、水素含有ガス供給源250B、MFC252B、バルブ253Bが設けられている。不活性ガス供給管232Cには、上流側から順に、不活性ガス供給源250C、MFC252C、バルブ253Cが設けられている。酸素含有ガス供給管232Aと水素含有ガス供給管232Bと不活性ガス供給管232Cとが合流した下流側には、バルブ243Aが設けられ、ガス導入口234の上流端に接続されている。バルブ253A,253B,253C,243Aを開閉させることによって、MFC252A,252B,252Cによりそれぞれのガスの流量を調整しつつ、ガス供給管232A,232B,232Cを介して、酸素含有ガス、水素含有ガス、不活性ガス等の処理ガスを処理室201内へ供給できるように構成されている。
【0020】
また、酸素含有ガス供給管232A、MFC252A、バルブ253A及びバルブ243Aにより、本開示の一態様に係る酸素含有ガス供給系が構成されている。さらに、水素含有ガス供給管232B、MFC252B、バルブ253B及びバルブ243Aにより、本開示の一態様に係る水素含有ガス供給系が構成されている。さらに、不活性ガス供給管232C、MFC252C、バルブ253C及びバルブ243Aにより、本開示の一態様に係る不活性ガス供給系が構成されている。
【0021】
主に、酸素含有ガス供給管232A、水素含有ガス供給管232B、不活性ガス供給管232C、MFC252A,252B,252C、バルブ253A,253B,253C及びバルブ243Aにより、本開示の一態様に係るガス供給部(ガス供給系)が構成されている。ガス供給部(ガス供給系)は、処理容器203内に処理ガスを供給するよう構成されていればよく、例えばいずれかのガス供給系やそれらの組み合わせをガス供給部と呼んでもよい。
【0022】
(排気部)
下側容器211の側壁には、処理室201内から反応ガスを排気するガス排気口235が設けられている。ガス排気口235には、ガス排気管231の上流端が接続されている。ガス排気管231には、上流側から順に圧力調整器(圧力調整部)としてのAPC(Auto Pressure Controller)バルブ242、開閉弁としてのバルブ243B、真空排気装置としての真空ポンプ246が設けられている。主に、ガス排気口235、ガス排気管231、APCバルブ242、バルブ243Bにより、本開示の一態様に係る排気部が構成されている。尚、真空ポンプ246を排気部に含めてもよい。
【0023】
(プラズマ生成部)
処理容器203の外側には、処理容器203の外周を囲うように第1共振コイル212及び第2共振コイル214がそれぞれ配置されている。具体的には、処理容器203においてプラズマ生成空間201Aに対応する部分(領域)の外周(プラズマ生成室の外周)を囲うように第1共振コイル212及び第2共振コイル214がそれぞれ配置されている。
第1共振コイル212は、線状又は紐状の導体212Aを同一方向に螺旋状に複数回巻き回したものである。第1共振コイル212の両端(図8では上端212B及び下端212C)はそれぞれ接地されており、第1共振コイル212の両端間の部分が処理容器203の外周を外囲いしている。具体的には、第1共振コイル212は、処理室201の外周部、すなわち上側容器210の側壁の外周を囲っている。言い換えると、第1共振コイル212の内側に処理容器203が挿入されている。なお、本実施形態では、第1共振コイル212により発生する高周波電磁界が実質的に処理容器203内の処理ガスをプラズマ励起する程度に、第1共振コイル212と処理容器203の外周(外面)が近接している。また、本実施形態の第1共振コイル212は、巻径が第1共振コイル212上のいずれの位置においても一定であり同一である。第1共振コイル212には、高周波電力が供給されるように構成されている。
【0024】
第2共振コイル214は、線状又は紐状の導体214Aを同一方向に螺旋状に複数回巻き回したものである。第2共振コイル214の両端(上端214B及び下端214C)はそれぞれ接地されており、第2共振コイル214の上端214Bと下端214Cとの間の部分が処理容器203の外周を外囲いしている。具体的には、第2共振コイル214は、処理室201の外周部、すなわち上側容器210の側壁の外周を囲っている。言い換えると、第2共振コイル214の内側に処理容器203が挿入されている。本実施形態では、第1共振コイル212と同様に、第2共振コイル214により発生する高周波電磁界が実質的に処理容器203内の処理ガスをプラズマ励起する程度に、第2共振コイル214と処理容器203の外周(外面)が近接している。なお、本実施形態の第2共振コイル214は、巻径が第2共振コイル214上のいずれの位置においても一定であり同一である。また、本実施形態では、第1共振コイル212の巻径D1と第2共振コイル214の巻径D2が異なる。具体的には、第2共振コイル214の巻径D2が第1共振コイル212の巻径D1よりも大きい。ここで巻径D2は、巻径D1の101%~125%、好ましくは、105%~120%の範囲内に設定することが好ましい。
【0025】
図8に示されるように、第1共振コイル212の軸方向(すなわち、第1共振コイル212の螺旋軸に沿った方向)と第2共振コイル214の軸方向(すなわち、第2共振コイル214の螺旋軸に沿った方向)は同じ方向である。より詳細には、本実施形態では、第1共振コイル212の螺旋軸と第2共振コイル214の螺旋軸とが同軸となっている。なお、本実施形態では、各共振コイルの軸方向は、装置上下方向と同じ方向であり、鉛直方向(垂直方向)とも同じ方向である。なお、図7では、装置上方を矢印Uで示し、処理容器203の径方向を矢印Rで示している。ここで、処理容器203の径方向は、装置の水平方向と同じ方向であり、各共振コイルの螺旋軸と直交する方向とも同じ方向である。また、第1共振コイル212を構成する導体212Aと、第2共振コイル214を構成する導体214Aとは、垂直方向(共振コイルの軸方向)に交互に配置されている。ここで、第1共振コイル212と第2共振コイル214を垂直方向から見ると、第2共振コイル214の内周部に第1共振コイル212の外周部が重なっている。このように垂直方向から見て、第2共振コイル214の一部に第1共振コイル212の一部が重なることで、各コイルを覆う容器(図示せず)が径方向にサイズアップするのを抑制できる。一方、垂直方向から見て、第1共振コイル212と第2共振コイル214とが重ならない、すなわち、第1共振コイル212と第2共振コイル214との間に隙間がある場合、第1共振コイル212と第2共振コイル214との間の距離が確保されてアーク放電の発生が抑制される。なお、第1共振コイル212と第2共振コイル214との間の距離を予めアーク放電しない距離に設定してもよい。また、第2共振コイル214には、高周波電力が供給されるように構成されている。
【0026】
図8に示されるように、第1共振コイル212のコイル部の軸方向の長さ(螺旋軸に沿った長さ)は、第2共振コイル214のコイル部の軸方向の長さ(螺旋軸に沿った長さ)よりも長い。このため、第2共振コイル214の導体214Aは、第1共振コイル212の導体212Aに対して垂直方向の上側から中央部付近まで垂直方向(共振コイルの軸方向)に交互に配置されている。ここで処理容器203の外周には、第1共振コイル212と第2共振コイル214が配置される領域が形成される。具体的には、第1共振コイル212と第2共振コイル214が配置される領域を第1配置領域と呼び、符号FAで示す(図8参照)。また、第1共振コイル212のみが配置される領域を第2配置領域と呼び、符号SAで示す(図8参照)。この第2配置領域SAは、装置上下方向(垂直方向)において、第1配置領域FAよりもサセプタ217に近い側に形成されている。
【0027】
第1共振コイル212には、RFセンサ272、高周波電源273、高周波電源273のインピーダンスや出力周波数の整合を行う整合器274が接続されている。
【0028】
高周波電源273は、共振コイル212に高周波電力(RF電力)を供給するものである。RFセンサ272は高周波電源273の出力側に設けられ、供給される高周波電力の進行波や反射波の情報をモニタするものである。RFセンサ272によってモニタされた反射波電力は整合器274に入力され、整合器274は、RFセンサ272から入力され反射波の情報に基づいて、反射波が最小となるよう、高周波電源273のインピーダンスや出力される高周波電力の周波数を制御するものである。
【0029】
高周波電源273は、発振周波数及び出力を規定するための高周波発振回路及びプリアンプを含む電源制御手段(コントロール回路)と、所定の出力に増幅するための増幅器(出力回路)とを備えている。電源制御手段は、操作パネルを通じて予め設定された周波数及び電力に関する出力条件に基づいて増幅器を制御する。増幅器は、伝送線路を介して共振コイル212に一定の高周波電力を供給する。RFセンサ272、整合器274をまとめて高周波電力供給部271と呼ぶ。高周波電源273を高周波電力供給部271に含めてもよい。
【0030】
第2共振コイル214には、RFセンサ282、高周波電源283、高周波電源283のインピーダンスや出力周波数の整合を行う整合器284が接続されている。
【0031】
高周波電源283は、第2共振コイル214に高周波電力(RF電力)を供給するものである。RFセンサ272は高周波電源283の出力側に設けられ、供給される高周波電力の進行波や反射波の情報をモニタするものである。RFセンサ282によってモニタされた反射波電力は整合器284に入力され、整合器284は、RFセンサ282から入力され反射波の情報に基づいて、反射波が最小となるよう、高周波電源283のインピーダンスや出力される高周波電力の周波数を制御するものである。
【0032】
高周波電源283は、発振周波数及び出力を規定するための高周波発振回路及びプリアンプを含む電源制御手段(コントロール回路)と、所定の出力に増幅するための増幅器(出力回路)とを備えている。電源制御手段は、操作パネルを通じて予め設定された周波数及び電力に関する出力条件に基づいて増幅器を制御する。増幅器は、第2共振コイル214に伝送線路を介して一定の高周波電力を供給する。RFセンサ282、整合器284をまとめて高周波電力供給部281と呼ぶ。高周波電源283を高周波電力供給部281に含めてもよい。
【0033】
第1共振コイル212は、所定の波長の定在波を形成するため、一定の波長で共振するように巻径、巻回ピッチ、巻数が設定される。すなわち、第1共振コイル212の電気的長さは、高周波電源273から供給される高周波電力の所定周波数における1波長の整数倍(1倍、2倍、…)に相当する長さに設定される。
【0034】
また、第2共振コイル214は、所定の波長の定在波を形成するため、一定の波長で共振するように巻径、巻回ピッチ、巻数が設定される。すなわち、第2共振コイル214の電気的長さは、高周波電源283から供給される高周波電力の所定周波数における1波長の整数倍(1倍、2倍、…)に相当する長さに設定される。
【0035】
具体的には、印加する電力や発生させる磁界強度又は適用する装置の外形などを勘案し、第1共振コイル212は、例えば、800kHz~50MHz、0.1~5kWの高周波電力によって0.01~10ガウス程度の磁場を発生し得る様に設定される。そして、第1共振コイル212は、50~300mm2の断面積であって且つ200~500mmのコイル直径とされ、プラズマ生成空間201Aを形成する部屋の外周側に2~60回程度巻き回される。
同様に、印加する電力や発生させる磁界強度又は適用する装置の外形などを勘案し、第2共振コイル214は、例えば、800kHz~50MHz、0.1~5kWの高周波電力によって0.01~10ガウス程度の磁場を発生し得る様に設定される。そして、第2共振コイル214は、50~300mm2の断面積であって且つ200~500mmのコイル直径とされ、プラズマ生成空間201Aを形成する部屋の外周側に2~60回程度巻き回される。
【0036】
図7に示されるように、第1共振コイル212及び第2共振コイル214は、定在波の腹の位置が重ならないように配置されている。言い換えると、第1共振コイル212の電圧分布のピークと、第2共振コイル214の電圧分布のピークとが重ならない。また、第1共振コイル212及び第2共振コイル214の間の距離は、それぞれの共振コイルの導体間でアーク放電しない距離に設定される。
【0037】
第1共振コイル212及び第2共振コイル214を構成する素材としては、銅パイプ、銅の薄板、アルミニウムパイプアルミニウム薄板、ポリマーベルトに銅又はアルミニウムを蒸着した素材などが使用される。第1共振コイル212及び第2共振コイル214は、絶縁性材料にて平板状に形成され、且つベースプレート248の上端面に鉛直に立設された複数のサポート(図示省略)によって支持される。
【0038】
第1共振コイル212の両端は電気的に接地されている。第1共振コイル212の両端のうちの一端(図1及び図2では上端)212Bは、装置の最初の設置の際又は処理条件の変更の際に第1共振コイル212の電気的長さを微調整するため、可動タップ300を介して接地される。また、第1共振コイル212の他端(図1及び図6では下端)212Cは、固定グランドとして接地される。さらに、装置の最初の設置の際又は処理条件の変更の際に第1共振コイル212のインピーダンスを微調整するため、第1共振コイル212の接地された両端の間には、可動タップ305によって給電部が構成される。また、可動タップ305は、第1共振コイル212の共振特性を高周波電源273と略等しくするように位置が調整される。第1共振コイル212が可変式グランド部及び可変式給電部を備えていることによって、後述するように、処理室201の共振周波数及び負荷インピーダンスを調整するにあたり、より一層簡便に調整することができる。なお、本実施形態の第1共振コイル212の上端212Bは、本開示における第1アース接続部の一例である。また、第1共振コイル212の下端212Cは、本開示における第2アース接続部の一例である。なお、第1共振コイル212の上端212B近傍が接地された場合には、その部分が接地点となり第1アース接続部となる。そして第1共振コイル212の下端212C近傍が接地された場合には、その部分が接地点となり第2アース接続部となる。
【0039】
第2共振コイル214の両端は電気的に接地されている。第2共振コイル214の両端のうちの一端(図1及び図6では上端)214Bは、装置の最初の設置の際又は処理条件の変更の際に第2共振コイル212の電気的長さを微調整するため、可動タップ302を介して接地される。また、第1共振コイル212の他端(図1及び図6では下端)214Bは、固定グランドとして接地される。さらに、装置の最初の設置の際又は処理条件の変更の際に第2共振コイル214のインピーダンスを微調整するため、第2共振コイル214の接地された両端の間には、可動タップ306によって給電部が構成される。また、可動タップ306は、第2共振コイル214の共振特性を高周波電源283と略等しくするように位置が調整される。第2共振コイル214が可変式グランド部及び可変式給電部を備えていることによって、後述するように、処理室201の共振周波数及び負荷インピーダンスを調整するにあたり、より一層簡便に調整することができる。なお、本実施形態の第2共振コイル214の上端214Bは、本開示における第3アース接続部の一例である。また、第2共振コイル212の下端214Cは、本開示における第4アース接続部の一例である。なお、第2共振コイル214の上端214B近傍が接地された場合には、その部分が接地点となり第3アース接続部となる。そして第2共振コイル214の下端214C近傍が接地された場合には、その部分が接地点となり第4アース接続部となる。
【0040】
第1共振コイル212の一端及び他端の少なくとも一方には、位相電流及び逆位相電流が第1共振コイル212の電気的中点に関して対称に流れる様に、共振コイル及びシールドによって構成される波形調整回路308が挿入される。波形調整回路308は、第1共振コイル212を電気的に非接続状態とするか、又は、電気的に等価の状態に設定することにより開路に構成する。なお、第1共振コイル212の端部は、チョーク直列抵抗によって非接地とし、固定基準電位に直流接続されてもよい。
【0041】
また、第2共振コイル214の一端及び他端の少なくとも一方には、位相電流及び逆位相電流が第2共振コイル214の電気的中点に関して対称に流れる様に、共振コイル及びシールドによって構成される波形調整回路309が挿入される。波形調整回路309は、第2共振コイル214を電気的に非接続状態とするか、又は、電気的に等価の状態に設定することにより開路に構成する。なお、第2共振コイル214の端部は、チョーク直列抵抗によって非接地とし、固定基準電位に直流接続されてもよい。
【0042】
なお、波形調整回路は、第1共振コイル212及び第2共振コイル214の少なくとも一方に配置されればよい。ここで、波形調整回路308、309としては、例えば、可変コンデンサを用いてもよいし、導電体で構成された線(コイル)であってもよい。
【0043】
遮蔽板223は、第1共振コイル212及び第2共振コイル214の外側の電界を遮蔽すると共に、共振回路を構成するのに必要な容量成分(C成分)を第1共振コイル212又は第2共振コイル214との間に形成するために設けられる。遮蔽板223は、一般的には、アルミニウム合金などの導電性材料を使用して円筒状に構成される。遮蔽板223は、第1共振コイル212及び第2共振コイル214のそれぞれの外周から5~150mm程度隔てて配置される。
【0044】
主に、第1共振コイル212、RFセンサ272、整合器274により、本開示の一態様に係る第1プラズマ生成部が構成されている。なお、第1プラズマ生成部として高周波電源273を含めてもよい。
また、主に、第2共振コイル214、RFセンサ282、整合器284により、本開示の一態様に係る第2プラズマ生成部が構成されている。なお、第2プラズマ生成部として高周波電源283を含めてもよい。
第1プラズマ生成部と第2プラズマ生成部を合わせてプラズマ生成部と呼ぶ。
【0045】
次に、本開示の一態様に係る装置のプラズマ生成原理及び生成されるプラズマの性質について説明する。第1共振コイル212及び第2共振コイル214のプラズマ生成原理は同じであるので、ここでは一つの第1共振コイル212を用いた場合を例として説明する(図3図5参照)。
【0046】
第1共振コイル212によって構成されるプラズマ発生回路はRLCの並列共振回路で構成される。高周波電源273から供給される高周波電力の波長と第1共振コイル212の電気的長さが同じ場合、第1共振コイル212の共振条件は、第1共振コイル212の容量成分又は誘導成分によって作り出されるリアクタンス成分が相殺され、純抵抗になることである。しかしながら、上記プラズマ発生回路においては、プラズマを発生させた場合、第1共振コイル212の電圧部とプラズマとの間の容量結合の変動、プラズマ生成空間201Aとプラズマとの間の誘導結合の変動及びプラズマの励起状態等により、実際の共振周波数は僅かながら変動する。
【0047】
そこで、本開示の一態様の基板処理装置100は、プラズマ発生時の第1共振コイル212における共振のずれを電源側で補償するため、プラズマが発生した際の第1共振コイル212からの反射波電力をRFセンサ272において検出し、検出された反射波電力に基づいて整合器274が高周波電源273の出力を補正する機能を有する。
【0048】
具体的には、整合器274は、RFセンサ272において検出されたプラズマが発生した際の第1共振コイル212からの反射波電力に基づいて、反射波電力が最小となる様に高周波電源273のインピーダンス或いは出力周波数を増加又は減少させる。インピーダンスを制御する場合、整合器274は、予め設定されたインピーダンスを補正する可変コンデンサ制御回路により構成される。周波数を制御する場合、整合器274は、予め設定された高周波電源273の発振周波数を補正する周波数制御回路により構成される。なお、高周波電源273と整合器274は一体として構成されてもよい。
【0049】
上記構成により、本開示の一態様における第1共振コイル212では、プラズマを含む当該共振コイルの実際の共振周波数による高周波電力が供給されるので(或いは、プラズマを含む当該共振コイルの実際のインピーダンスに整合するように高周波電力が供給されるので)、位相電圧と逆位相電圧が常に相殺される状態の定在波が形成される(図3参照)。そして第1共振コイル212の電気的長さが高周波電力の波長と同じ場合、第1共振コイル212の電気的中点(電圧がゼロのノード)に最も高い位相電流が生起される。具体的には、第1共振コイル212には、高周波電源273から高周波電力が供給され、第1共振コイル212の線路上の両端間の区間において、高周波電力の例えば1波長分の長さを有する電流及び電圧の定在波が形成される。図3の右側の波形のうち、破線は電流を、実線は電圧を示している。図3の右側の波形で示されているように、第1共振コイル212の両端及びその中点(すなわち電気的中点)において電流の定在波の振幅が最大となる。
第1共振コイル212の電気的中点の近傍においては、処理室壁やサセプタ217との容量結合が殆どなく、電気的ポテンシャルの極めて低いドーナツ状の誘導プラズマ(ICP(Inductively Coupled Plasma))310が形成される。具体的には、電流の振幅が最大となる第1共振コイル212の電気的中点の近傍では高周波磁界が形成され、この高周波磁界により誘起された高周波電磁界が上側容器210内のプラズマ生成空間201A内に供給された処理ガスの放電を発生させる。この放電に伴って処理ガスが励起されることにより、処理ガスのプラズマが第1共振コイル212の電気的中点の近傍において生成される。以下、このように電流の振幅が大きい位置(領域)の近傍において形成される高周波電磁界によって生成される処理ガスのプラズマを誘導結合プラズマと称する。ICPは、図4に示されるように、上側容器210内の内壁面に沿った空間のうち、第1共振コイル212の中点の近傍となる領域にドーナツ状に生成され、ウエハ200の面内方向にプラズマ密度が均一なICPが生成される。また、同様の原理により、第1共振コイル212の軸方向の両端側にも、誘導プラズマが生成される。
【0050】
次に、第1共振コイル212及び第2共振コイル214を用いてプラズマを生成した状態について説明する。
【0051】
図8に示す本開示の一態様の基板処理装置100では、図4に示す第1共振コイル212が一つのみの態様と同様に、プラズマ生成空間201Aの周囲に第1共振コイル212及び第2共振コイル214がそれぞれ配置されている。そして、プラズマ生成空間201Aに処理ガスが供給された状態で第1共振コイル212に高周波電力を供給すると、前述の原理により、図7の右側に示されるように電圧及び電流が発生すると共に、図8に示されるようにプラズマ生成空間201AにICP310が生成される。
【0052】
同様に、プラズマ生成空間201Aに処理ガスが供給された状態で第2共振コイル214に高周波電力を供給すると、前述の原理により、図7の左側に示されるように電圧及び電流が発生すると共に、図8に示されるようにプラズマ生成空間201AにICP312が発生する。
【0053】
このように、複数の共振コイルを用いることで、一つの共振コイルでプラズマを生成するのに比べて、多くのプラズマを生成することができる。すなわち、プラズマ中のラジカル成分を多く生成できる。
【0054】
本実施形態では、第2共振コイル214の巻径D2を第1共振コイル212の巻径D1と異ならせていることから、図7に示されるように、第1共振コイル212の電圧分布のピークと第2共振コイル214の電圧分布のピークを径方向にずらすことができる。すなわち、各共振コイルの電圧分布のピークが互いに重ならない。このように2つの共振コイルの電圧分布のピークをずらすことで、濃度の高い誘導プラズマの径方向の密度を均一化させることができる(図9参照)。これにより、基板面内(ウエハ表面内)の均一化を実現することができる。
【0055】
また、本実施形態の第2共振コイル214は、軸方向と直交する方向(水平方向)において、電圧分布のピークが第1共振コイル212の電圧分布のピークと重ならないよう構成されている。このように水平方向の電圧分布のピークをずらすことで、プラズマ密度の均一化が可能となる。例えば、図9に示されるように、2つの共振コイルから別部のICPが形成されることにより、径方向のプラズマ量が多くなる。
【0056】
また、本実施形態の第2共振コイル214は、軸方向(垂直方向)において、電圧分布のピークが第1共振コイル212の電圧分布のピークと重ならないよう構成されている。このように垂直方向の電圧分布のピークをずらすことで、一方の誘導プラズマの粗状態を、他方の誘導プラズマで補うことができる。したがって誘導プラズマ全体の寿命を延ばすことができる。
【0057】
また、本実施形態では、処理容器203の外周に第1配置領域FAと第2配置領域SAが形成されている。ここで第2配置領域SAには、第1共振コイル212のみが連続して配置されているため、プラズマ生成空間201Aに対するコイル長の物理的な長さが調整可能となる。これにより、設計に対するフレキシブル性を確保できる。
【0058】
また、本実施形態では、第1共振コイル212の巻径D1は、第2共振コイル214の巻径D2よりも小さくなるよう構成されている。このように第2共振コイル214よりも小さい巻径で電圧分布のピークを形成できるため、基板(ウエハ)中心領域に密度の高い誘導プラズマを供給できる。
【0059】
また、本実施形態の第2配置領域SAは、軸方向(垂直方向)において、第1配置領域FAよりも処理容器203のウエハ200が載置されるサセプタ217に近い側に形成されている。ここで、サセプタ217に近い側の共振コイルの巻径を小さくすることで、直下のウエハ200の中心領域へのプラズマ供給を容易にできる。
【0060】
また、本実施形態の処理容器203は、サセプタ217の外周から処理ガスを排気可能な排気部を有している。これにより、ウエハ200の中心領域に供給された誘導プラズマの流れをサセプタ217の外周方面に拡散できる。すなわち、ウエハの中心領域に供給された密度の高いプラズマを外周方向に拡散することができ、したがってウエハ200の面内の処理を均一にできる。
【0061】
また、本実施形態では、第1配置領域FAにおいて、第1共振コイル212の導体212Aと第2共振コイル214の導体214Aとがアーク放電しない距離で離隔するよう構成されている。さらに、第2配置領域SAにおいて、第1共振コイル212の導体212A間がアーク放電しない距離で離隔するよう構成されている。ここで、共振コイル間の電圧差が閾値以上になるとアーク放電が発生し、それにより電力が漏洩する恐れがあり、漏洩した場合、所望の誘導プラズマを形成できない。これに対して、本実施形態では、導体212Aと導体214Aとを、アーク放電しない距離とすることで漏電を抑制して、所望の誘導プラズマを抑制することができる。
【0062】
また、本実施形態の第1共振コイル212は、接地される両端間の電気的な長さが第1共振コイル212に供給される高周波電力の波長の逓倍の長さとなるよう構成されている。このように第1共振コイルの両端を接地することで、供給される高周波電力の波長の逓倍を形成できる。これにより、図7に示される電圧のサインカーブを形成できるため、第1共振コイル212の電圧分布のピークのコントロールが容易になる。
【0063】
また、本実施形態の第2共振コイル214は、接地される両端間の電気的な長さが第2共振コイル214に供給される高周波電力の波長の逓倍の長さとなるよう構成されている。このように第2共振コイル214の両端を接地することで、供給される高周波電力の波長の逓倍を形成できる。これにより、図7に示される電圧のサインカーブを形成できるため、第2共振コイル214の電圧分布のピークのコントロールが容易になる。
【0064】
また、本実施形態では、第1共振コイル212の電気的な長さと第2共振コイル214の電気的な長さが等しくなるよう、第1共振コイル212及び第2共振コイル214の両方に電気的な長さを補正する波形調整回路308、309が接続されている。アースで調整できない場合に、上記のように波形調整回路308、309を用いることで電気的長さを調整することができる。
【0065】
また、本実施形態では、第1共振コイル212の接地された上端212Bは、第2共振コイル214の接地された上端214Bに対して垂直方向における位置が異なるよう構成されている。このように、各共振コイルの上端同士の接地の高さを異ならせることで、より確実に電圧分布のピークの位置をずらすことができる。
【0066】
また、本実施形態では、第1共振コイル212の接地された下端212Cは、第2共振コイル214の接地された下端214Cに対して垂直方向における位置が異なるよう構成されている。このように、各共振コイルの下端同士の接地の高さを異ならせることで、より確実に電圧分布のピークの位置をずらすことができる。
【0067】
また、本実施形態では、第1共振コイル212に接続される高周波電源273から発生する高周波が第2共振コイル214に接続される高周波電源283から発生する高周波と同じ周波数である。このように高周波電源273と高周波電源283の周波数を同じとすると、高周波電源273、283の波長を同じとすることができるので、電圧分布のピーク位置の制御が容易となる。
【0068】
また、本実施形態では、後述するコントローラ221が第1共振コイル212と第2共振コイル214とに高周波電力を供給した状態で、処理室201に処理ガスを供給するよう制御する。このため、プラズマ生成空間201Aに、二種類の誘導プラズマを生成できるので、誘導プラズマをより確実に均一化できる。
【0069】
(制御部)
制御部としてのコントローラ221は、信号線Aを通じてAPCバルブ242、バルブ243B及び真空ポンプ246を制御するように構成されている。また、コントローラ221は、信号線Bを通じてサセプタ昇降機構268を制御するように構成されている。また、コントローラ221は、信号線Cを通じてヒータ電力調整機構276及びインピーダンス可変機構275を制御するように構成されている。また、コントローラ221は、信号線Dを通じてゲートバルブ244を制御するように構成されている。また、コントローラ221は、信号線Eを通じてRFセンサ272、高周波電源273及び整合器274、並びに、RFセンサ282、高周波電源283及び整合器284を制御するように構成されている。また、コントローラ221は、信号線Fを通じてMFC252A~252C、バルブ253A~253C、及び24バルブ243Aを制御するように構成されている。
【0070】
図10に示すように、制御部(制御手段)であるコントローラ221は、CPU(Central Processing Unit)221A、RAM(Random Access Memory)221B、記憶装置221C及びI/Oポート221Dを備えたコンピュータとして構成されている。RAM221B、記憶装置221C及びI/Oポート221Dは、内部バス221Eを介して、CPU221Aとデータ交換可能なように構成されている。コントローラ221には、例えばタッチパネルやディスプレイ等として構成された入出力装置225が接続されている。
【0071】
記憶装置221Cは、例えばフラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)等で構成されている。記憶装置221C内には、基板処理装置の動作を制御する制御プログラムや、後述する基板処理の手順や条件などが記載されたプログラムレシピ等が読み出し可能に格納されている。プロセスレシピは、後述する基板処理工程における各手順をコントローラ221に実行させ、所定の結果を得ることが出来るように組み合わされたものであり、プログラムとして機能する。以下、このプログラムレシピや制御プログラム等を総称して、単にプログラムともいう。なお、本明細書においてプログラムという言葉を用いた場合は、プログラムレシピ単体のみを含む場合、制御プログラム単体のみを含む場合、又は、その両方を含む場合がある。また、RAM221Bは、CPU221Aによって読み出されたプログラムやデータ等が一時的に保持されるメモリ領域(ワークエリア)として構成されている。
【0072】
I/Oポート221Dは、上述のMFC252A~252C、バルブ253A~253C,バルブ243A、243B、ゲートバルブ244、APCバルブ242、真空ポンプ246、RFセンサ272、高周波電源273、整合器274、RFセンサ282、高周波電源283、整合器284、サセプタ昇降機構268、インピーダンス可変機構275、ヒータ電力調整機構276等に接続されている。
【0073】
CPU221Aは、記憶装置221Cからの制御プログラムを読み出して実行すると共に、入出力装置225からの操作コマンドの入力等に応じて記憶装置221Cからプロセスレシピを読み出すように構成されている。そして、CPU221Aは、読み出されたプロセスレシピの内容に沿うように、I/Oポート221D及び信号線Aを通じてAPCバルブ242の開度調整動作、バルブ243Bの開閉動作、及び真空ポンプ246の起動・停止を制御するように構成されている。また、CPU221Aは、上記プロセスレシピの内容に沿うように、信号線Bを通じてサセプタ昇降機構268の昇降動作を制御するように構成されている。また、CPU221Aは、上記プロセスレシピの内容に沿うように、信号線Cを通じてヒータ電力調整機構276によるヒータ217Bへの供給電力量調整動作(温度調整動作)や、インピーダンス可変機構275によるインピーダンス値調整動作を制御するように構成されている。また、CPU221Aは、上記プロセスレシピの内容に沿うように、信号線Dを通じてゲートバルブ244の開閉動作を制御するように構成されている。また、CPU221Aは、上記プロセスレシピの内容に沿うように、信号線Eを通じてRFセンサ272、整合器274及び高周波電源273並びに、RFセンサ282、整合器284及び高周波電源283の動作を制御するように構成されている。また、CPU221Aは、上記プロセスレシピの内容に沿うように、信号線Fを通じてMFC252A~252Cによる各種処理ガスの流量調整動作、バルブ253A~253C及びバルブ243Aの開閉動作を制御するように構成されている。なお、CPU221Aは、上記以外の装置構成部品の動作を制御してもよい。
【0074】
コントローラ221は、外部記憶装置(例えば、磁気テープ、フレキシブルディスク、及びハードディスク等の磁気ディスク、CDやDVD等の光ディスク、MOなどの光磁気ディスク、USBメモリやメモリカード等の半導体メモリ)226に格納された上述のプログラムをコンピュータにインストールすることにより構成することができる。記憶装置221C及び外部記憶装置226は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体として構成されている。以下、これらを総称して、単に記録媒体ともいう。本開示において、記録媒体という言葉を用いた場合は、記憶装置221C単体のみを含む場合、外部記憶装置226単体のみを含む場合、又は、その両方を含む場合が有る。なお、コンピュータへのプログラムの提供は、外部記憶装置226を用いず、インターネットや専用回線等の通信手段を用いて行ってもよい。
【0075】
(2)基板処理工程
次に、本開示の一態様における基板処理工程について、主に図11を用いて説明する。図11は、本開示の一態様に係る基板処理工程を示すフロー図である。本開示の一態様に係る基板処理工程は、例えばフラッシュメモリ等の半導体デバイスの製造工程の一工程として、上述の基板処理装置100により実施される。以下の説明において、基板処理装置100を構成する各部の動作は、コントローラ221により制御される。
【0076】
なお、図示は省略するが、本開示の一態様に係る基板処理工程で処理されるウエハ200の表面には、アスペクト比の高い凹凸部を有するトレンチが予め形成されている。本開示の一態様においては、トレンチの内壁に露出した例えばシリコン(Si)の層に対して、プラズマを用いた処理として酸化処理を行う。
【0077】
(基板搬入工程S110)
まず、上記のウエハ200を処理室201内に搬入する。具体的には、サセプタ昇降機構268によってウエハ200の搬送位置までサセプタ217を下降させる。そして、サセプタ217の貫通孔217Aにウエハ突上げピン266を貫通させる。その結果、ウエハ突き上げピン266が、サセプタ217表面よりも所定の高さ分だけ突出した状態となる。
【0078】
続いて、ゲートバルブ244を開く。そして、ウエハ搬送機構(図示省略せず)を用いて、処理室201に隣接する真空搬送室から処理室201内にウエハ200を搬入する。搬入されたウエハ200は、サセプタ217の表面から突出したウエハ突上げピン266上に水平姿勢で支持される。処理室201内にウエハ200を搬入後、ウエハ搬送機構を処理室201外へ退避させる。そして、ゲートバルブ244を閉じて処理室201内を密閉する。サセプタ昇降機構268を用いてサセプタ217を上昇させることにより、ウエハ200がサセプタ217の上面に支持される。
【0079】
(昇温・真空排気工程S120)
続いて、処理室201内に搬入されたウエハ200の昇温を行う。ヒータ217Bは予め加熱されており、ヒータ217Bが埋め込まれたサセプタ217上にウエハ200を保持する。この保持により、例えば150~750℃の範囲内の所定値にウエハ200が加熱される。また、ウエハ200の昇温を行う間、真空ポンプ246によりガス排気管231を介して処理室201内を真空排気し、処理室201内の圧力を所定の値とする。真空ポンプ246は、少なくとも後述の基板搬出工程S160が終了するまで作動させておく。
【0080】
(反応ガス供給工程S130)
次に、反応ガスとして、酸素含有ガスと水素含有ガスの供給を開始する。具体的には、バルブ253A及びバルブ253Bを開け、MFC252A及びMFC252Bにて流量制御しながら、処理室201内へ酸素含有ガス及び水素含有ガスの供給を開始する。このとき、酸素含有ガスの流量を、例えば20~2000sccmの範囲内の所定値とする。また、水素含有ガスの流量を、例えば20~1000sccmの範囲内の所定値とする。
【0081】
また、処理室201内の圧力が、例えば1~250PAの範囲内の所定圧力となるように、APCバルブ242の開度を調整して処理室201内の排気を制御する。このように、処理室201内を適度に排気しつつ、後述のプラズマ処理工程S140の終了時まで酸素含有ガス及び水素含有ガスの供給を継続する。
【0082】
酸素含有ガスとしては、例えば、酸素(O2)ガス、亜酸化窒素(N2O)ガス、一酸化窒素(NO)ガス、二酸化窒素(NO2)ガス、オゾン(O3)ガス、水蒸気(H2Oガス)、一酸化炭素(CO)ガス、二酸化炭素(CO2)ガス等を用いることができる。酸素含有ガスとしては、これらのうち1以上を用いることができる。
【0083】
また、水素含有ガスとしては、例えば、水素(H2)ガス、重水素(D2)ガス、H2Oガス、アンモニア(NH3)ガス等を用いることができる。水素含有ガスとしては、これらのうち1以上を用いることができる。なお、酸素含有ガスとしてH2Oガスを用いる場合は、水素含有ガスとしてH2Oガス以外のガスを用いることが好ましく、水素含有ガスとしてH2Oガスを用いる場合は、酸素含有ガスとしてH2Oガス以外のガスを用いることが好ましい。
【0084】
不活性ガスとしては、例えば、窒素(N2)ガスを用いることができ、この他、アルゴン(Ar)ガス、ヘリウム(HE)ガス、ネオン(NE)ガス、キセノン(XE)ガス等の希ガスを用いることができる。不活性ガスとしては、これらのうち1以上を用いることができる。
【0085】
(プラズマ処理工程S140)
プラズマ処理工程S140では、まず、ガス供給部から処理ガスを供給すると共に、高周波電力供給部271から第1共振コイル212に高周波電力を供給し、高周波電力供給部281から第2共振コイル214には高周波電力を供給しない。
具体的には、処理室201内の圧力が安定したら、第1共振コイル212に対して高周波電源273からRFセンサ272を介して、高周波電力の印加を開始する。
【0086】
これにより、酸素含有ガス及び水素含有ガスが供給されているプラズマ生成空間201A内に高周波電磁界が形成される。この高周波電磁界により、プラズマ生成空間201Aの第1共振コイル212の電気的中点に相当する高さ位置に、最も高いプラズマ密度を有するドーナツ状のICP310が励起される。プラズマ状の酸素含有ガス及び水素含有ガスは解離し、酸素を含む酸素ラジカル(酸素活性種)、酸素イオン、水素を含む水素ラジカル(水素活性種)、水素イオン等の反応種が生成される。
【0087】
基板処理空間201Bでサセプタ217上に保持されているウエハ200には、誘導プラズマにより生成されたラジカルと加速されない状態のイオンがトレンチ内に均一に供給される。供給されたラジカル及びイオンは側壁と均一に反応し、表面の層(例えばSi層)をステップカバレッジが良好な酸化層(例えばSi酸化層)へと改質する。
【0088】
その後、所定の処理時間、例えば10~300秒が経過したら、高周波電源273からの電力の出力を停止する。
【0089】
次に、ガス供給部から処理ガスを供給すると共に、高周波電力供給部281から第2共振コイル214に高周波電力を供給し、高周波電力供給部271から第1共振コイル212への高周波の供給を停止する。具体的には、処理室201内の圧力が安定したら、第2共振コイル214に対して高周波電源283からRFセンサ282を介して、高周波電力の印加を開始する。
【0090】
これにより、酸素含有ガス及び水素含有ガスが供給されているプラズマ生成空間201A内に高周波電磁界が形成される。この高周波電磁界により、プラズマ生成空間201Aの第2共振コイル214の電気的中点に相当する高さ位置に、最も高いプラズマ密度を有するドーナツ状のICP312が励起される。プラズマ状の酸素含有ガス及び水素含有ガスは解離し、酸素を含む酸素ラジカル(酸素活性種)、酸素イオン、水素を含む水素ラジカル(水素活性種)、水素イオン等の反応種が生成される。
【0091】
基板処理空間201Bでサセプタ217上に保持されているウエハ200には、誘導プラズマにより生成されたラジカルと、第1共振コイル212によって生じた誘導プラズマによって本工程で長寿命化されたラジカルと、加速されない状態のイオンがトレンチ内に均一に供給される。供給されたラジカル及びイオンは側壁と均一に反応し、表面の層(例えばSi層)をステップカバレッジが良好な酸化層(例えばSi酸化層)へと改質する。
【0092】
その後、所定の処理時間、例えば10~300秒が経過したら、高周波電源283からの電力の出力を停止して、処理室201内におけるプラズマ放電を停止する。
【0093】
また、バルブ253A及びバルブ253Bを閉めて、酸素含有ガス及び水素含有ガスの処理室201内への供給を停止する。以上により、プラズマ処理工程S140が終了する。
【0094】
(真空排気工程S150)
酸素含有ガス及び水素含有ガスの供給を停止したら、ガス排気管231を介して処理室201内を真空排気する。これにより、処理室201内の酸素含有ガスや水素含有ガス、これらガスの反応により発生した排ガス等を処理室201外へと排気する。その後、APCバルブ242の開度を調整し、処理室201内の圧力を処理室201に隣接する真空搬送室(図示省略)と同じ圧力に調整する。なお、真空搬送室は、ウエハ200の搬出先である。
【0095】
(基板搬出工程S160)
処理室201内が所定の圧力となったら、サセプタ217をウエハ200の搬送位置まで下降させ、ウエハ突上げピン266上にウエハ200を支持させる。そして、ゲートバルブ244を開き、ウエハ搬送機構を用いてウエハ200を処理室201外へ搬出する。
【0096】
以上により、本開示の一態様に係る基板処理工程を終了する。
【0097】
<他の態様>
以上、本開示の種々の典型的な実施形態及び変形例を説明してきたが、本開示はそれらの実施形態に限定されず、適宜組み合わせて用いることもできる。
【0098】
上記態様においては、第2配置領域SAが装置上下方向(垂直方向)において、第1配置領域FAよりもサセプタ217に近い側に形成されているが、本開示はこれに限定されない。例えば、第2配置領域SAが装置上下方向(垂直方向)において、第1配置領域FAよりもサセプタ217から遠い側に形成されてもよい。
【0099】
また、上記態様においては、処理容器203の外周には、図8に示されるように、第1配置領域FAと第2配置領域SAとが形成されているが、本開示はこれに限定されない。例えば、図12に示されるように、第2配置領域SAを挟んで第1配置領域FAの反対側に、第1共振コイル212の導体212Aと第2共振コイル214の導体214Aとが軸方向(垂直方向)に交互に配置される第3配置領域TAが形成されていてもよい。この場合には、第1共振コイル212の両端側にアースを接続することで、供給される高周波電力の波長の逓倍を形成でき、これにより電圧のサインカーブを形成できる。これにより、第1共振コイル212の電圧分布のピークのコントロールが容易になる。
【0100】
また、上記態様においては、第1共振コイル212のコイル部の軸方向の長さと第2共振コイル214のコイル部の軸方向の長さを異ならせたが、本開示はこれに限定されない。第1共振コイル212のコイル部の軸方向の長さと第2共振コイル214のコイル部の軸方向の長さが同じ長さであってもよい。ここで、例えば、第1共振コイル212と第2共振コイル214を全体として重なるように配置してもよいし、第1共振コイル212の下部と第2共振コイル214の上部が重なるように配置してもよい。なお、第1共振コイル212のコイル部の軸方向の長さと第2共振コイル214のコイル部の軸方向の長さが異る場合も上記と同様に、第1共振コイル212のコイル部の軸方向の一部と第2共振コイル214のコイル部の軸方向の一部とが重なるように配置してもよい。
【0101】
上記態様においては、処理容器203によって構成される処理室201がプラズマ生成室と基板処理室とを有している、すなわち、プラズマ生成室と基板処理室とが同じ処理容器203によって構成されているが、本開示はこの構成に限定されない。例えば、プラズマ生成室と基板処理室とがそれぞれ別々の容器で構成されてもよい。
【0102】
また、上記態様においては、プラズマを用いて基板表面に対して酸化処理を行う例について説明したが、その他にも、処理ガスとして窒素含有ガスを用いた窒化処理に対して適用してもよい。また、窒化処理及び酸化処理に限らず、プラズマを用いて基板に対して処理を施すあらゆる技術に適用してもよい。例えば、プラズマを用いて行う基板表面に形成された膜に対する改質処理、ドーピング処理、酸化膜の還元処理、当該膜に対するエッチング処理、及び、レジストのアッシング処理等に適用してもよい。
【0103】
また、上記態様においては、二つの共振コイルを用いて説明したが、本開示はこれに限るものではない。例えば、三つ以上の共振コイルを用いてもよい。
【0104】
なお、本開示を特定の実施形態及び変形例について詳細に説明したが、本開示は係る実施形態及び変形例に限定されるものではなく、本開示の範囲内にて他の種々の実施形態をとることが可能であることは当業者にとって明らかである。
【0105】
<本開示の好ましい態様>
以下、本開示の好ましい態様について付記する。
【0106】
(付記1)
本開示の一態様によれば、
基板を処理する基板処理室と、
前記基板処理室に連通するプラズマ生成室と、
前記プラズマ生成室内にガスを供給可能なガス供給部と、
前記プラズマ生成室を囲うように配置され、高周波電力が供給される第1コイルと、
前記プラズマ生成室を囲うように配置され、前記第1コイルと軸方向が同じで且つ前記第1コイルと巻径が異なり、高周波電力が供給され、該高周波電力の供給によって生じる電圧分布のピークが前記第1コイルで生じる電圧分布のピークと重ならないよう構成されている第2コイルと、
を備える基板処理装置が提供される。
【0107】
(付記2)
付記1に記載の基板処理装置であって、好ましくは、
前記第2コイルは、軸方向と直交する方向において、電圧分布のピークが前記第1コイルの電圧分布のピークと重ならないよう構成されている。
【0108】
(付記3)
付記1又は付記2に記載の基板処理装置であって、好ましくは、
前記第2コイルは、軸方向において、電圧分布のピークが前記第1コイルの電圧分布のピークと重ならないよう構成されている。
【0109】
(付記4)
付記1に記載の基板処理装置であって、好ましくは、
前記プラズマ生成室の外周には、前記第1コイルを構成する導体と前記第2コイルを構成する導体とが前記軸方向に交互に配置される第1配置領域と、前記第1コイルの導体のみが前記軸方向に間隔をあけて配置される第2配置領域が形成されている。
【0110】
(付記5)
付記1から付記4のいずれか1項に記載の基板処理装置であって、好ましくは、
前記第1コイルの巻径は、前記第2コイルの巻径よりも小さくなるよう構成されている。
【0111】
(付記6)
付記4又は付記5に記載の基板処理装置であって、好ましくは、
前記第2配置領域は、前記軸方向において、前記第1配置領域よりも前記基板が載置される基板載置部に近い側に形成されている。
【0112】
(付記7)
付記6に記載の基板処理装置であって、好ましくは、
前記基板載置部の外周から前記ガスを排気可能な排気部を有する。
【0113】
(付記8)
付記4~付記7のいずれか1項に記載の基板処理装置であって、好ましくは、
前記第1配置領域では、前記第1コイルの導体と前記第2コイルの導体とがアーク放電しない距離で離隔するよう構成され、
前記第2配置領域においては、前記第1コイルの導体間がアーク放電しない距離で離隔するよう構成されている。
【0114】
(付記9)
付記4又は付記5に記載の基板処理装置であって、好ましくは、
前記第2配置領域は、前記軸方向において、前記第1配置領域よりも前記基板が載置される基板載置部から遠い側に形成されている。
【0115】
(付記10)
付記4~付記7のいずれか1項に記載の基板処理装置であって、好ましくは、
前記プラズマ生成室の外周には、前記第2配置領域を挟んで前記第1配置領域の反対側に、前記第1コイルの導体と前記第2コイルの導体とが前記軸方向に交互に配置される第3配置領域が形成されている。
【0116】
(付記11)
付記1から付記10いずれか1項に記載の基板処理装置であって、好ましくは、
前記第1コイルは、アースに接続可能な一対のアース接続部を有し、前記一対のアース接続部間の電気的な長さが前記第1コイルに供給される高周波電力の波長の逓倍の長さとなるよう構成されている。
【0117】
(付記12)
付記11に記載の基板処理装置であって、好ましくは、
前記第2コイルは、アースに接続可能な一対のアース接続部を有し、前記一対のアース接続部間の電気的な長さが前記第2コイルに供給される高周波電力の波長の逓倍の長さとなるよう構成されている。
【0118】
(付記13)
付記1~付記12のいずれか1項に記載の基板処理装置であって、好ましくは、
前記第1コイルの電気的な長さと前記第2コイルの電気的な長さが等しくなるよう、前記第1コイル及び前記第2コイルの少なくとも一方に電気的な長さを補正する波形調整回路が接続されている。
【0119】
(付記14)
付記13に記載の基板処理装置であって、好ましくは、
前記波形調整回路は、可変コンデンサである。
【0120】
(付記15)
付記13に記載の基板処理装置であって、好ましくは、
前記波形調整回路は、導電体で構成された線である。
【0121】
(付記16)
付記11又は付記12に記載の基板処理装置であって、好ましくは、
前記第1コイルの軸方向一方側に位置する前記アース接続部は、前記第2コイルの軸方向一方側に位置する前記アース接続部と前記軸方向における位置が異なるよう構成されている。
【0122】
(付記17)
付記11、付記12又は付記16に記載の基板処理装置であって、好ましくは、
前記第1コイルの軸方向他方側に位置する前記アース接続部は、前記第2コイルの軸方向他方側に位置する前記アース接続部と前記軸方向における位置が異なるよう構成されている。
【0123】
(付記18)
付記1~付記17のいずれか1項に記載の装置であって、好ましくは、
前記第1コイルに接続される電源から発生する高周波は、前記第2コイルに接続される電源から発生する高周波と同じ周波数である。
【0124】
(付記19)
付記1~付記18のいずれか1項に記載の装置であって、好ましくは、
前記第1コイルと前記第2コイルとに高周波電力を供給した状態で、前記プラズマ生成室に前記ガスを供給するよう制御する制御部を備えている。
【0125】
(付記20)
本開示の他の態様によれば、
プラズマ生成室を囲うように配置された第1コイルと、前記プラズマ生成室を囲うように配置され該第1コイルと軸方向が同じで且つ前記第1コイルと巻径が異なる第2コイルとに、前記第1コイルで生じる電圧分布のピークと前記第2コイルで生じる電圧分布のピークとが重ならないよう高周波電力を供給する工程と、
前記プラズマ生成室にガスを供給して、前記プラズマ生成室に連通する基板処理室に配置された基板を処理する工程と、
を有する半導体装置の製造方法が提供される。
【0126】
(付記21)
本開示のさらに他の態様によれば、
プラズマ生成室を囲うように配置された第1コイルと、前記プラズマ生成室を囲うように配置され該第1コイルと軸方向が同じで且つ前記第1コイルと巻径が異なる第2コイルとに、前記第1コイルで生じる電圧分布のピークと前記第2コイルで生じる電圧分布のピークとが重ならないよう高周波電力を供給する手順と、
前記プラズマ生成室にガスを供給して、前記プラズマ生成室に連通する基板処理室に配置された基板を処理する手順と、
をコンピュータによって基板処理装置に実行させるプログラムが提供される。
【符号の説明】
【0127】
200 ウエハ(基板)
212 第1共振コイル(第1コイル)
214 第2共振コイル(第2コイル)
FA 第1配置領域
SA 第2配置領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12