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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-10
(45)【発行日】2024-01-18
(54)【発明の名称】シャワープレート、プラズマ処理装置
(51)【国際特許分類】
   H05H 1/46 20060101AFI20240111BHJP
   H01L 21/31 20060101ALI20240111BHJP
   C23C 16/455 20060101ALI20240111BHJP
【FI】
H05H1/46 M
H01L21/31 C
C23C16/455
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022064498
(22)【出願日】2022-04-08
(65)【公開番号】P2023154874
(43)【公開日】2023-10-20
【審査請求日】2023-04-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000231464
【氏名又は名称】株式会社アルバック
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(72)【発明者】
【氏名】小林 忠正
(72)【発明者】
【氏名】西方 靖
【審査官】藤本 加代子
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-501291(JP,A)
【文献】特開2010-050466(JP,A)
【文献】特開2009-035821(JP,A)
【文献】特開平11-149998(JP,A)
【文献】特開2009-253102(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0090300(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0137647(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05H 1/00-1/54
H01L 21/31
C23C 16/455
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマ処理装置におけるチャンバ内のプラズマ形成空間へ処理ガスを均一に供給するとともにアノード電極に対向して配置されカソード電極となるシャワープレートであって、
前記アノード電極に対向してプラズマ形成空間に接するプラズマ形成表面と、
前記プラズマ形成表面の裏面がガス供給空間に接するガス供給表面と、
前記ガス供給表面から前記プラズマ形成表面へ厚さ方向に連通する複数のガス流路と、
前記プラズマ形成表面に形成された複数のホローカソードスリットと、
を有し、
複数の前記ホローカソードスリットが、前記プラズマ形成表面を覆うとともに互いに交差しない配置とされ、
前記ホローカソードスリットの内部には、前記ガス流路が開口し前記プラズマ形成表面の全域で処理ガスを均等に供給するガス噴出口が複数配置され、
前記ガス噴出口は、各前記ホローカソードスリットの長さ方向に沿って一列で形成されるとともに、前記ホローカソードスリットの長さ方向で均等なガス供給可能に配置され、
前記プラズマ形成表面の中心領域から縁部領域に向かう径方向に沿って分割される深度設定領域毎に、前記厚さ方向の前記ホローカソードスリットの深さが大きくなるように設定され、
前記深度設定領域の境界と、前記ホローカソードスリットと、が互いに交差しない配置とされる、
ことを特徴とするシャワープレート。
【請求項2】
平面視して互いに最近接する前記ガス噴出口どうしの距離が全て均一に設定される、
ことを特徴とする請求項1記載のシャワープレート。
【請求項3】
全ての前記ホローカソードスリットは、平面視して直線状に形成される、
ことを特徴とする請求項1または2記載のシャワープレート。
【請求項4】
隣接する前記ホローカソードスリットは、長辺が互いに平行に配置される、
ことを特徴とする請求項1または2記載のシャワープレート。
【請求項5】
前記深度設定領域の境界は、前記ホローカソードスリットの長辺に沿って配置する、
ことを特徴とする請求項1または2記載のシャワープレート。
【請求項6】
前記厚さ方向における前記ガス噴出口の位置が等しく、かつ、前記プラズマ形成表面が湾曲して形成されて、各前記深度設定領域での前記ホローカソードスリットの深さが設定される、
ことを特徴とする請求項1または2記載のシャワープレート。
【請求項7】
前記プラズマ形成表面が平面に形成されて、かつ、前記厚さ方向における前記ガス噴出口の位置が変化して形成されて、各前記深度設定領域での前記ホローカソードスリットの深さが設定される、
ことを特徴とする請求項1または2記載のシャワープレート。
【請求項8】
前記中心領域より前記縁部領域に近接する各前記深度設定領域が周方向に分割された周方向領域を形成し、それぞれの前記周方向領域では全ての前記ホローカソードスリットが平行に同一方向を向いて配置されるとともに、
前記中心領域では前記ホローカソードスリットが隣接するいずれかの前記周方向領域の前記ホローカソードスリットと平行に同一方向を向いて配置される
ことを特徴とする請求項1または2記載のシャワープレート。
【請求項9】
前記縁部領域内で隣接する前記周方向領域の境界では、互いの領域の前記ホローカソードスリットの端部が前記径方向に互い違いに配置される、
ことを特徴とする請求項8記載のシャワープレート。
【請求項10】
前記ガス流路には、前記ガス噴出口から前記ガス供給表面に向けてオリフィスが形成され、前記オリフィスは、全ての前記ガス流路で前記厚さ方向の長さが等しく形成される、
ことを特徴とする請求項1または2記載のシャワープレート。
【請求項11】
平面視して互いに最近接する前記ガス噴出口どうしの距離が、前記プラズマ形成空間を挟むプラズマ形成電極の間の距離よりも小さく設定される、
ことを特徴とする請求項1または2記載のシャワープレート。
【請求項12】
高周波電源に接続された電極フランジと、
側壁および底部を有する前記チャンバと、
前記チャンバと前記電極フランジとの間に配置された絶縁フランジと、
前記チャンバと前記電極フランジと前記絶縁フランジとから構成されてプラズマ形成空間を有する処理室と、
前記処理室内に収容され処理面を有する基板が載置されるとともにアノード電極となる支持部と、
前記電極フランジと対向して離間し前記ガス供給空間を形成するとともに前記支持部と対向して離間しプラズマ形成空間を形成するカソード電極となる請求項1または2記載のシャワープレートと、
を有する、
ことを特徴とするプラズマ処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシャワープレート、プラズマ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、プラズマを用いて原料ガスを分解し、例えば、基板の被成膜面に薄膜を形成するプラズマ処理装置が知られている。このプラズマ処理装置においては、例えば、特許文献1,2に示すように、チャンバと、電極フランジと、チャンバおよび電極フランジによって挟まれた絶縁フランジとによって、処理室が構成されている。処理室は、成膜空間(反応室)を有する。
【0003】
処理室内には、シャワープレートと、基板が配置されるサセプタとが設けられている。シャワープレートは、電極フランジに接続され複数の噴出口を有する。シャワープレートと電極フランジとの間には空間が形成される。この空間は、原料ガスが導入されるガス供給空間である。つまり、シャワープレートは、処理室内を、基板に膜が形成される成膜空間と、ガス供給空間とに区画している。
【0004】
ここで、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイなどのFPD(flat panel display,フラットパネルディスプレイ)の製造では、大面積でのプラズマCVD等の処理をおこなう。このような大面積でのプラズマ処理では、膜厚分布制御が難しく、面内の電子密度、Plasma密度、ラジカル密度を精度よく制御する必要がある。
【0005】
このような制御をおこなうために、カソードとなるシャワープレートにCathode cavityを設けて、Hollow cathode効果を用いることが知られている。具体的には、Cathode cavityとして、シャワープレートの基板対向面に深い穴、あるいは、溝といった凹形状を設け、さらに、その深さを深くする、あるいは基板対向面に沿った径方向外側でその開口を大きくする手法が知られている(特許文献1)。
同様に、シャワープレート表面に溝を形成する手法が知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許第10262837号明細書
【文献】特開2002-025984号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、従来の技術であると、プラズマ発生密度の制御が充分ではなく、膜厚分布の正確性が充分ではなく、これを改善したいという要求があった。さらに、また、大面積のガスシャワープレートでSlit(溝)を用いて、膜厚分布を良好になるよう設計すると、Slit内に突起、鋭角、段差が生じ異常放電が起きるという問題があった。
【0008】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、以下の目的を達成しようとするものである。
1.膜厚分布をより良好にすること。
2.高い密度でのプラズマ発生を可能とすること。
3.形成されたプラズマ分布密度を処理面に沿って安定させて、処理の均一性を向上すること。
4.異常放電の発生を抑制すること。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明の一態様にかかるシャワープレートは、
プラズマ処理装置におけるチャンバ内のプラズマ形成空間へ処理ガスを均一に供給するとともにアノード電極に対向して配置されカソード電極となるシャワープレートであって、
前記アノード電極に対向してプラズマ形成空間に接するプラズマ形成表面と、
前記プラズマ形成表面の裏面がガス供給空間に接するガス供給表面と、
前記ガス供給表面から前記プラズマ形成表面へ厚さ方向に連通する複数のガス流路と、
前記プラズマ形成表面に形成された複数のホローカソードスリットと、
を有し、
複数の前記ホローカソードスリットが、前記プラズマ形成表面を覆うとともに互いに交差しない配置とされ、
前記ホローカソードスリットの内部には、前記ガス流路が開口し前記プラズマ形成表面の全域で処理ガスを均等に供給するガス噴出口が複数配置され、
前記ガス噴出口は、各前記ホローカソードスリットの長さ方向に沿って一列で形成されるとともに、前記ホローカソードスリットの長さ方向で均等なガス供給可能に配置され、
前記プラズマ形成表面の中心領域から縁部領域に向かう径方向に沿って分割される深度設定領域毎に、前記厚さ方向の前記ホローカソードスリットの深さ寸法が大きくなるように設定され、
前記深度設定領域の境界と、前記ホローカソードスリットと、が互いに交差しない配置とされる、
ことにより上記課題を解決した。
(2)本発明のシャワープレートは、
平面視して互いに最近接する前記ガス噴出口どうしの距離が全て均一に設定される、
ことができる。
(3)本発明のシャワープレートは、
全ての前記ホローカソードスリットは、平面視して直線状に形成される、
ことができる。
(4)本発明のシャワープレートは、
隣接する前記ホローカソードスリットは、長辺が互いに平行に配置される、
ことができる。
(5)本発明のシャワープレートは、
前記深度設定領域の境界は、前記ホローカソードスリットの長辺に沿って配置する、
ことができる。
(6)本発明のシャワープレートは、
前記厚さ方向における前記ガス噴出口の位置が等しく、かつ、前記プラズマ形成表面が湾曲して形成されて、各前記深度設定領域での前記ホローカソードスリットの深さ寸法が設定される、
ことができる。
(7)本発明のシャワープレートは、
前記プラズマ形成表面が平面に形成されて、かつ、前記厚さ方向における前記ガス噴出口の位置が変化して形成されて、各前記深度設定領域での前記ホローカソードスリットの深さ寸法が設定される、
ことができる。
(8)本発明のシャワープレートは、
前記中心領域より前記縁部領域に近接する各前記深度設定領域が周方向に分割された周方向領域を形成し、それぞれの前記周方向領域では全ての前記ホローカソードスリットが平行に同一方向を向いて配置されるとともに、
前記中心領域では前記ホローカソードスリットが隣接するいずれかの前記周方向領域の前記ホローカソードスリットと平行に同一方向を向いて配置される
ことができる。
(9)本発明のシャワープレートは、
前記縁部領域内で隣接する前記周方向領域の境界では、互いの領域の前記ホローカソードスリットの端部が前記径方向に互い違いに配置される、
ことができる。
(10)本発明のシャワープレートは、
前記ガス流路には、前記ガス噴出口から前記ガス供給表面に向けてオリフィスが形成され、前記オリフィスは、全ての前記ガス流路で前記厚さ方向の長さが等しく形成される、
ことができる。
(11)本発明のシャワープレートは、
平面視して互いに最近接する前記ガス噴出口どうしの距離が、前記プラズマ形成空間を挟むプラズマ形成電極の間の距離よりも小さく設定される、
ことができる。
(12)本発明の他の態様にかかる真空処理装置は、
高周波電源に接続された電極フランジと、
側壁および底部を有する前記チャンバと、
前記チャンバと前記電極フランジとの間に配置された絶縁フランジと、
前記チャンバと前記電極フランジと前記絶縁フランジとから構成されてプラズマ形成空間を有する処理室と、
前記処理室内に収容され処理面を有する基板が載置されるとともにアノード電極となる支持部と、
前記電極フランジと対向して離間し前記ガス供給空間を形成するとともに前記支持部と対向して離間しプラズマ形成空間を形成するカソード電極となる上記(1)から(11)のいずれか記載のシャワープレートと、
を有する、
ことができる。
【0010】
(1)本発明の一態様にかかるシャワープレートは、
プラズマ処理装置におけるチャンバ内のプラズマ形成空間へ処理ガスを均一に供給するとともにアノード電極に対向して配置されカソード電極となるシャワープレートであって、
前記アノード電極に対向してプラズマ形成空間に接するプラズマ形成表面と、
前記プラズマ形成表面の裏面がガス供給空間に接するガス供給表面と、
前記ガス供給表面から前記プラズマ形成表面へ厚さ方向に連通する複数のガス流路と、
前記プラズマ形成表面に形成された複数のホローカソードスリットと、
を有し、
複数の前記ホローカソードスリットが、前記プラズマ形成表面を覆うとともに互いに交差しない配置とされ、
前記ホローカソードスリットの内部には、前記ガス流路が開口し前記プラズマ形成表面の全域で処理ガスを均等に供給するガス噴出口が複数配置され、
前記ガス噴出口は、各前記ホローカソードスリットの長さ方向に沿って一列で形成されるとともに、前記ホローカソードスリットの長さ方向で均等なガス供給可能に配置され、
前記プラズマ形成表面の中心領域から縁部領域に向かう径方向に沿って分割される深度設定領域毎に、前記厚さ方向の前記ホローカソードスリットの深さ寸法が大きくなるように設定され、
前記深度設定領域の境界と、前記ホローカソードスリットと、が互いに交差しない配置とされる、
ことにより上記課題を解決した。
【0011】
上記の構成によれば、プラズマ形成空間に露出するシャワープレートのプラズマ形成表面において、その全域を互いに交差しないホローカソードスリットで覆うことができ、平面状のプラズマ形成表面を有するシャープレートに比べてプラズマ密度、ラジカル密度、電子密度を増大した状態で、プラズマ処理をおこなうことができる。
【0012】
しかも、この状態で、前記ホローカソードスリットには、その幅方向には単一の前記ガス噴出口が形成されるとともに、その長さ方向には前記ホローカソードスリットの長さ方向で均等なガス供給可能に前記ガス噴出口が配置されることで、それぞれのホローカソードスリット内でのガス噴出口の配置が長さ方向で均一供給可能であり、かつ、プラズマ形成面の全体でガス噴出口の配置が均一供給可能な配置であるため、プラズマ密度がプラズマ形成空間全域で均一な状態を実現することができる。
【0013】
また、径方向外方に向かう深度設定領域毎に、前記厚さ方向の前記ホローカソードスリットの深さ寸法が大きくなるように設定されることで、平面状のプラズマ形成表面を有するシャワープレートのように、中心に比べて周縁部でプラズマ密度が減少してしまうことを防止して、プラズマ形成表面の全域で、均等なプラズマ密度を実現することが可能となる。
【0014】
さらに、前記深度設定領域の境界と、前記ホローカソードスリットと、が互いに交差しないことで、ホローカソードスリットの内部およびプラズマ形成空間に露出する面で段差および突起などの突出した部分が形成されないために、プラズマ発生中における異常放電の発生を防止することができる。
これらにより、プラズマ処理特性の処理面に沿った二次元分布における均一性を担保すること、および、プラズマ処理特性の安定性を向上することが可能となる。
【0015】
ここで、ホローカソードスリットが、プラズマ形成表面を覆うとは、プラズマ形成表面における複数のホローカソードスリットの開口が、互いに所定の距離離間した状態で近接して配置されるとともに、プラズマ形成表面の全域で、ホローカソードスリットの開口どうしの離間距離が変化しない状態で配置されることを意味する。たとえば、長手方向が同じ向きとなるように、複数のホローカソードスリットの開口が、互いに平行に配置されることを例示できる。この場合、平面視して均等に配置される多数のガス噴出口が、ホローカソードスリットの幅方向中央位置で、長手方向複数に開口するようにホローカソードスリットの開口を配置することができる。
【0016】
また、ホローカソードスリットが、互いに交差しない配置とは、プラズマ形成表面におけるホローカソードスリットの開口が、鋭角鈍角のいずれの状態でも折れ曲がった角部を形成していない状態を意味する。例えば、ホローカソードスリットの開口が、互いにその長さ方向が揃った平行な配置とされることを例示できる。あるいは、異なる方向に延在するホローカソードスリットの開口どうしが近接した際に、一方のホローカソードスリットの開口端部が、他方のホローカソードスリットの開口のいずれの箇所にも接続されていない状態を意味する。言い換えると、ホローカソードスリットの開口縁の長手方向において、互いに平行に対向する辺は、その対向距離が変化することがない。
あるいは、ホローカソードスリットの長手方向が互いに交差した場合に、それぞれのホローカソードスリットの開口どうしが接続されていない配置である。
【0017】
(2)本発明のシャワープレートは、
平面視して互いに最近接する前記ガス噴出口どうしの距離が全て均一に設定される、
ことができる。
【0018】
上記の構成によれば、プラズマ形成空間に対して均一な分布でガスを供給することができる。これにより、プラズマ密度分布、ラジカル密度分布、電子密度分布が均一な状態で、プラズマ処理をおこなうことができる。したがって、プラズマ処理特性の処理面に沿った二次元分布における均一性を担保すること、および、プラズマ処理特性の安定性を向上することが可能となる。
【0019】
(3)本発明のシャワープレートは、
全ての前記ホローカソードスリットは、平面視して直線状に形成される、
ことができる。
【0020】
上記の構成によれば、多数のホローカソードスリットを長手方向に平行となるように配置することが容易に可能となり、同時に、深度設定領域の境界とホローカソードスリットとを平行に配置することが容易となる。これにより、異常放電の発生を防止しながら均一なプラズマ密度分布、均一なラジカル密度分布、均一な電子密度分布を実現することが容易となる。したがって、プラズマ処理特性の処理面に沿った二次元分布における均一性を担保すること、および、プラズマ処理特性の安定性を向上することが可能となる。
【0021】
(4)本発明のシャワープレートは、
隣接する前記ホローカソードスリットは、長辺が互いに平行に配置される、
ことができる。
【0022】
上記の構成によれば、ホローカソードスリットを均一な間隔で配置することが容易となり、深度設定領域内で、均一な密度でホローカソードスリットを配置することが容易となる。これにより、異常放電の発生を防止しながら均一なプラズマ密度分布、均一なラジカル密度分布、均一な電子密度分布を実現することが容易となる。したがって、プラズマ処理特性の処理面に沿った二次元分布における均一性を担保すること、および、プラズマ処理特性の安定性を向上することが可能となる。
【0023】
(5)本発明のシャワープレートは、
前記深度設定領域の境界は、前記ホローカソードスリットの長辺に沿って配置する、
ことができる。
【0024】
上記の構成によれば、深度設定領域の境界とホローカソードスリットとを平行に配置することが容易となる。これにより、異常放電の発生を防止しながら均一なプラズマ密度分布、均一なラジカル密度分布、均一な電子密度分布を実現することが容易となる。したがって、プラズマ処理特性の処理面に沿った二次元分布における均一性を担保すること、および、プラズマ処理特性の安定性を向上することが可能となる。
【0025】
(6)本発明のシャワープレートは、
前記厚さ方向における前記ガス噴出口の位置が等しく、かつ、前記プラズマ形成表面が湾曲して形成されて、各前記深度設定領域での前記ホローカソードスリットの深さ寸法が設定される、
ことができる。
【0026】
上記の構成によれば、プラズマ形成表面の径方向に沿ってホローカソードスリットの深さ寸法を変化させる際に、同一深さ寸法のホローカソードスリットを全面で形成した後に、それぞれの深度設定領域で設定されるホローカソードスリットの深さ寸法に合わせて、プラズマ形成表面を中心領域で深く、周縁領域に向かうほど浅く除去することで、所定の深さ寸法を有するホローカソードスリットを容易に形成することが可能となる。また、平板の表面を削るだけで多数の深さ寸法の異なるホローカソードスリットを全面に精度よく形成することができ、製造工程における工程数を削減し、製造時間を短縮し、製造コストを体現することが可能となる。同時に、加工精度よくシャワープレートを製造することが可能となるため、プラズマ処理特性の処理面に沿った二次元分布における均一性を担保すること、および、プラズマ処理特性の安定性を向上することが容易に可能となる。
【0027】
(7)本発明のシャワープレートは、
前記プラズマ形成表面が平面に形成されて、かつ、前記厚さ方向における前記ガス噴出口の位置が変化して形成されて、各前記深度設定領域での前記ホローカソードスリットの深さ寸法が設定される、
ことができる。
【0028】
上記の構成によれば、プラズマ形成表面の径方向に沿ってホローカソードスリットの深さ寸法を深度設定領域で設定される値に変化させて形成するとともに、厚さ方向で変化するホローカソードスリット内の底部位置に対応してガス噴出口およびガス流路を形成することで、所定の深さ寸法を有するホローカソードスリットを容易に形成することが可能となる。同時に、カソード電極であるプラズマ形成表面を平面のまま維持することが可能であるため、プラズマ形成電極間の距離によって変動するプラズマ処理特性に対する影響を低減することが容易となる。
【0029】
(8)本発明のシャワープレートは、
前記中心領域より前記縁部領域に近接する各前記深度設定領域が周方向に分割された周方向領域を形成し、それぞれの前記周方向領域では全ての前記ホローカソードスリットが平行に同一方向を向いて配置されるとともに、
前記中心領域では前記ホローカソードスリットが隣接するいずれかの前記周方向領域の前記ホローカソードスリットと平行に同一方向を向いて配置される
ことができる。
【0030】
上記の構成によれば、全てのホローカソードスリットが平行に同一方向を向いて配置されることで、それぞれの前記周方向領域では均一なガス供給を容易におこなうとともに、それぞれの前記周方向領域で均一なプラズマ密度分布、均一なラジカル密度分布、均一な電子密度分布を実現することが容易となる。同時に、中心領域でもホローカソードスリットを均一に配置することが容易となるため、異常放電の発生を防止しながら均一なプラズマ密度分布、均一なラジカル密度分布、均一な電子密度分布を実現することが容易となる。
【0031】
(9)本発明のシャワープレートは、
前記縁部領域内で隣接する前記周方向領域の境界では、互いの領域の前記ホローカソードスリットの端部が前記径方向に互い違いに配置される、
ことができる。
【0032】
上記の構成によれば、プラズマ形成空間において、プラズマ形成表面に沿って、その中心から径方向外向きに流れる処理ガスが、その流れの途中でホローカソードスリットを横切らないでプラズマ形成表面の縁部に到達することを防止することができる。つまり、周方向領域の境界で端部が互い違いとなるように配置されたホローカソードスリットに対して、プラズマ形成表面に沿って流れる処理ガスの流れと交差するように配置することが容易に可能となる。これにより、ホローカソード効果を充分に発揮して必要なプラズマ密度分布、ラジカル密度分布、電子密度分布を径方向に沿ったガス流の全長で実現することが容易となる。
【0033】
(10)本発明のシャワープレートは、
前記ガス流路には、前記ガス噴出口から前記ガス供給表面に向けてオリフィスが形成され、前記オリフィスは、全ての前記ガス流路で前記厚さ方向の長さが等しく形成される、
ことができる。
【0034】
上記の構成によれば、ガス噴出口からホローカソードスリット内に噴出される処理ガス流量をオリフィスで制御して、それぞれのガス噴出口で均一にすることができる。さらに、深さ寸法の異なるホローカソードスリットにおいても、全てのオリフィスでその長さが等しくされることで、ガス流量を制御することができる。
【0035】
(11)本発明のシャワープレートは、
平面視して互いに最近接する前記ガス噴出口どうしの距離が、前記プラズマ形成空間を挟むプラズマ形成電極の間の距離よりも小さく設定される、
ことができる。
【0036】
上記の構成によれば、プラズマ形成空間で形成されるブラズマ密度、ラジカル密度、電子密度を、実施するプラズマ処理に対応した値とするために必要な処理ガスを、プラズマ形成表面に沿って満遍なくプラズマ形成空間に対して供給することが可能となる。
【0037】
(12)本発明の他の態様にかかる真空処理装置は、
高周波電源に接続された電極フランジと、
側壁および底部を有する前記チャンバと、
前記チャンバと前記電極フランジとの間に配置された絶縁フランジと、
前記チャンバと前記電極フランジと前記絶縁フランジとから構成されてプラズマ形成空間を有する処理室と、
前記処理室内に収容され処理面を有する基板が載置されるとともにアノード電極となる支持部と、
前記電極フランジと対向して離間し前記ガス供給空間を形成するとともに前記支持部と対向して離間しプラズマ形成空間を形成するカソード電極となる上記(1)から(11)のいずれか記載のシャワープレートと、
を有する、
ことができる。
【0038】
上記の構成によれば、プラズマ形成空間に露出するシャワープレートのプラズマ形成表面において、その全域を互いに交差しないホローカソードスリットで覆うことができ、平面状のプラズマ形成表面を有するシャープレートに比べてプラズマ密度、ラジカル密度、電子密度を増大した状態で、支持部に支持された基板にプラズマCVDによる成膜等のプラズマ処理をおこなうことができる。
【0039】
しかも、この状態で、前記ホローカソードスリットには、その幅方向には単一の前記ガス噴出口が形成されるとともに、その長さ方向には前記ホローカソードスリットの長さ方向で均等なガス供給可能に前記ガス噴出口が配置されることで、それぞれのホローカソードスリット内でのガス噴出口の配置が長さ方向で均一供給可能であり、かつ、プラズマ形成面および基板の全面でガス噴出口の配置が均一供給可能な配置であるため、プラズマ密度がプラズマ形成空間全域で均一な状態による均一な成膜等を実現することができる。
【0040】
また、径方向外方に向かう深度設定領域毎に、前記厚さ方向の前記ホローカソードスリットの深さ寸法が大きくなるように設定されることで、ホローカソードスリットのない平面状のプラズマ形成表面を有するシャープレートのように、中心に比べて周縁部でプラズマ密度が減少してしまうことを防止して、プラズマ形成表面の全域で、均等なプラズマ密度を実現して均一な成膜等をおこなうことが可能となる。
【0041】
さらに、前記深度設定領域の境界と、前記ホローカソードスリットと、が互いに交差しないことで、ホローカソードスリットの内部およびプラズマ形成空間に露出する面で段差および突起などの突出した部分が形成されないために、プラズマ発生中における異常放電の発生を防止することができる。
これらにより、プラズマ処理による成膜特性の処理面に沿った二次元分布における均一性を担保すること、および、異常放電による成膜特性の悪化を防止してその安定性を向上することが可能となる。
【発明の効果】
【0042】
本発明によれば、膜厚分布をより良好にし、高いプラズマ密度で処理の均一性を向上することができるシャワープレート、プラズマ処理装置を提供することができるという効果を奏することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1】本発明に係るプラズマ処理装置の第1実施形態を示す概略縦断面図である。
図2】本発明に係るプラズマ処理装置の第1実施形態におけるシャワープレートのガス噴出口を示す模式平面図である。
図3】本発明に係るプラズマ処理装置の第1実施形態におけるシャワープレートのガス流路、ガス噴出口およびホローカソードスリットの部分を透視して示す斜視図である。
図4】本発明に係るプラズマ処理装置の第1実施形態におけるシャワープレートのガス流路、ガス噴出口およびホローカソードスリットの部分の他の例を透視して示す斜視図である。
図5】本発明に係るプラズマ処理装置の第1実施形態におけるシャワープレートのホローカソードスリットの開口およびガス噴出口を示す平面図である。
図6】本発明に係るプラズマ処理装置の第1実施形態におけるシャワープレートのホローカソードスリットの開口およびガス噴出口の他の例を示す平面図である。
図7】本発明に係るプラズマ処理装置の第1実施形態におけるシャワープレートのホローカソードスリットの開口およびガス噴出口の他の例を示す平面図である。
図8】本発明に係るプラズマ処理装置の第1実施形態におけるシャワープレートの周縁領域付近のホローカソードスリットを示す斜視図である。
図9】本発明に係るプラズマ処理装置の第1実施形態におけるシャワープレートの中心領域付近のホローカソードスリットを示す斜視図である。
図10】本発明に係るプラズマ処理装置の第1実施形態におけるシャワープレートのホローカソードスリットの深度設定領域を示す平面図である。
図11】本発明に係るプラズマ処理装置の第1実施形態におけるシャワープレートのホローカソードスリットの深度設定領域を示す断面図である。
図12】本発明に係るプラズマ処理装置の第1実施形態におけるシャワープレートの隣接する深度設定領域の境界を示す断面図である。
図13】ホローカソードスリットの深度とプラズマ形成表面との関係を示す断面図である。
図14】本発明に係るプラズマ処理装置の第1実施形態におけるシャワープレートのホローカソードスリットでのプラズマ形成状態を示す断面図である。
図15】シャワープレートのホローカソードスリットの例を示す斜視図である。
図16】本発明に係るプラズマ処理装置の第1実施形態におけるシャワープレートのホローカソードスリットの深度設定領域の他の例を示す断面図である。
図17】本発明に係るプラズマ処理装置の第2実施形態におけるシャワープレートのホローカソードスリットの深度設定領域を示す断面図である。
図18】本発明に係るプラズマ処理装置の第2実施形態におけるシャワープレートのホローカソードスリットのプラズマ形成状態を示す断面図である。
図19】本発明に係るプラズマ処理装置の第2実施形態におけるシャワープレートのホローカソードスリットの深度設定領域の境界を示す断面図である。
図20】ホローカソードスリットの深度設定を示す断面図である。
図21】本発明に係るプラズマ処理装置の第3実施形態におけるシャワープレートのガス噴出口とホローカソードスリットの深度設定領域とを示す平面図である。
図22】本発明に係るプラズマ処理装置の第4実施形態におけるシャワープレートのガス噴出口とホローカソードスリットの深度設定領域とを示す平面図である。
図23】本発明に係るプラズマ処理装置の第5実施形態におけるシャワープレートのガス噴出口とホローカソードスリットの深度設定領域とを示す平面図である。
図24】本発明に係るプラズマ処理装置の第6実施形態におけるシャワープレートのガス噴出口とホローカソードスリットの深度設定領域とを示す平面図である。
図25】本発明に係るプラズマ処理装置の第7実施形態におけるシャワープレートのガス噴出口とホローカソードスリットの深度設定領域とを示す平面図である。
図26】本発明に係るプラズマ処理装置の第8実施形態におけるシャワープレートのガス噴出口とホローカソードスリットの深度設定領域とを示す平面図である。
図27】本発明に係るシャワープレート、プラズマ処理装置の実施例を示す図である。
図28】本発明に係るシャワープレート、プラズマ処理装置の実施例を示す図である。
図29】本発明に係るシャワープレート、プラズマ処理装置の実施例を示す図である。
図30】本発明に係るシャワープレート、プラズマ処理装置の実施例を示す図である。
図31】本発明に係るシャワープレート、プラズマ処理装置の実施例を示す図である。
図32】本発明に係るシャワープレート、プラズマ処理装置の実施例を示す図である。
図33】本発明に係るシャワープレート、プラズマ処理装置の実施例を示す図である。
図34】本発明に係るシャワープレート、プラズマ処理装置の実施例を示す図である。
図35】本発明に係るシャワープレート、プラズマ処理装置の実施例を示す図である。
図36】本発明に係るシャワープレート、プラズマ処理装置の実施例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、本発明に係るシャワープレート、プラズマ処理装置の第1実施形態を、図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態におけるプラズマ処理装置を示す概略断面図であり、図において、符号1は、プラズマ処理装置である。
また、以下の説明に用いる各図においては、各構成要素を図面上で認識し得る程度の大きさとするため、適宜、各構成要素の寸法および比率を実際のものとは異ならせた場合がある。
【0045】
本実施形態に係るプラズマ処理装置1は、プラズマCVD法を用いた成膜装置である。
プラズマ処理装置1は、図1に示すように、反応室であるプラズマ形成空間(成膜空間)2aを有する処理室3を含む。
処理室3は、真空チャンバ(チャンバ)2と、カソードフランジ(電極フランジ)4と、真空チャンバ2およびカソードフランジ4に挟持された絶縁フランジ23とから構成されている。
【0046】
真空チャンバ2は、底部(内底面)11と、底部(内底面)11の周縁から立設された側壁(壁部)24と、側壁(壁部)24の上端開口に周設された取付フランジ21と、を有する。
真空チャンバ2は、アルミニウム、アルミニウム合金で形成される。
【0047】
真空チャンバ2の底部(内底面)11には、開口部が形成されている。この開口部には支柱16が挿通され、支柱16は真空チャンバ2の下部に配置されている。
支柱16の先端は、真空チャンバ2内に位置する。支柱16の先端には、板状のサセプタ(支持部)15が接続されている。サセプタ15は、後述するシャワープレート100の下面であるプラズマ形成表面100aと平行に配置される。
底部(内底面)11と側壁(壁部)24とは、アルミニウム、アルミニウム合金で形成される。
【0048】
支柱16は、真空チャンバ2の外部に設けられた昇降駆動部(昇降機構)16Aに接続されている。支柱16は、昇降駆動部(昇降機構)16Aによって、上下方向に移動可能である。つまり、支柱16の先端に接続されているサセプタ15は、上下方向に昇降可能に構成されている。
【0049】
真空チャンバ2の外部においては、支柱16の外周を覆うようにベローズ(不図示)が設けられている。ベローズにより、支柱16が上下動した際に、プラズマ形成空間2aの密閉が維持される。
【0050】
真空チャンバ2には、サセプタ15よりも底部11に近接する位置に、排気管27が接続されている。排気管27の先端には、真空ポンプ28が設けられている。真空ポンプ28は、真空チャンバ2内が真空状態となるように減圧する。
【0051】
真空チャンバ2の上部には、絶縁フランジ23を介してカソードフランジ4が取り付けられている。
真空チャンバ2において、壁部24の上端には、その開口から径方向外向きに突出する取付フランジ21が周設されている。壁部24と取付フランジ21とは、それぞれ導電材で構成されている。壁部24と取付フランジ21とは、一体とされてもよいし、別部材とされてもよい。壁部24と取付フランジ21とは、アルミニウム、アルミニウム合金などで形成される。
取付フランジ21の上面21aは、略水平な平面形状を有する。
【0052】
カソードフランジ4は略平板状とされ、取付フランジ21で形成される真空チャンバ2の開口前面を覆っている。カソードフランジ4の周縁部4aは、その下面が取付フランジ21の上面21aに対向している。カソードフランジ4の周縁部4aの下面は、取付フランジ21の上面21aと略平行に位置する。
【0053】
カソードフランジ4の上方には、シールドカバーが載置されてもよい。カソードフランジ4の下方には、上下方向に離間してシャワープレート100が配置される。
シャワープレート100は、カソードフランジ4の下方で、取付フランジ21よりも径方向内側に位置する。シャワープレート100は、カソードフランジ4の下面と平行に配置される。シャワープレート100の上面であるガス供給表面100bは、カソードフランジ4の下面と平行に配置される。シャワープレート100は、カソードフランジ4に吊り下げられる。シャワープレート100は、カソードフランジ4の下面から下方に延在する支持柱部4bにより支持される。支持柱部4bは導体から構成される。支持柱部4bは、複数本設けられることができる。
【0054】
カソードフランジ4とシャワープレート100とは、支持柱部4bにより電気的に導通される。シャワープレート100の周縁部外方には、絶縁支持部8が配置される。絶縁支持部8は、シャワープレート100の径方向外側に配置される。絶縁支持部8は、取付フランジ21よりも径方向内側に位置する。絶縁支持部8と取付フランジ21とは、径方向において互いに離間している。絶縁支持部8の上端はカソードフランジ4に吊り下げられる。
【0055】
絶縁支持部8の径方向内側には、シャワープレート100が接している。絶縁支持部8下端の径方向内側輪郭は、カソードフランジ4およびシャワープレート100がプラズマ形成空間2aに露出する範囲を制限している。絶縁支持部8は、電極絶縁カバーとして機能する。
カソードフランジ4とシャワープレート100とは上下方向に離間して、互いに略平行に配置される。これにより、カソードフランジ4とシャワープレート100との間にガス供給空間2cが形成される。
【0056】
カソードフランジ4の下面4cは、シャワープレート100に対向している。カソードフランジ4には、ガス導入口7aが貫通して設けられている。
また、処理室3の外部に設けられたプロセスガス供給部7bとガス導入口42との間には、ガス導入管7が設けられている。
【0057】
ガス導入管7の一端は、ガス導入口7aに接続される。ガス導入管7の他端は、プロセスガス供給部7bに接続されている。
ガス導入管7は、シールドカバーを貫通している。ガス導入管7を通じて、プロセスガス供給部7bからガス供給空間2cにプロセスガスが供給される。
【0058】
ガス供給空間2cは、プロセスガスが導入されるガス流、ガス組成、ガス圧等を安定させる空間として機能する。
シャワープレート100には、後述するように複数のガス噴出口102、ホローカソードスリット110が形成されている。
ガス供給空間2c内に導入されたプロセスガスは、ガス噴出口6から真空チャンバ2内のプラズマ形成空間(成膜空間)2aに噴出される。
【0059】
カソードフランジ4とシャワープレート100は、それぞれ導電材で構成されている。
カソードフランジ4の周囲には、カソードフランジ4を覆うようにシールドカバーが設けられてもよい。この場合、シールドカバーは、カソードフランジ4と非接触である。シールドカバーは、真空チャンバ2に電気的に接続するように配置されている。
【0060】
カソードフランジ4には、真空チャンバ2の外部に設けられた高周波電源9(高周波電源)がマッチングボックス12を介して接続されている。
マッチングボックス12は、シールドカバーに取り付けられている。
カソードフランジ4およびシャワープレート100は、カソード電極として構成されている。
真空チャンバ2は、シールドカバーを介して接地されている。シールドカバーの周縁下端は取付フランジ21外周と接して取り付けられてもよい。
【0061】
サセプタ15は、表面が平坦に形成された板状の部材である。サセプタ15の上面には、基板10が載置される。サセプタ15は、載置された基板10の法線方向が、支柱16の軸線と平行となるように形成される。
サセプタ15は、ヒータ14を内蔵してもよい。サセプタ15は、載置した基板10をヒータ14によって加熱および温度調節可能としてもよい。
【0062】
サセプタ15は、接地電極、つまりアノード電極として機能する。このため、サセプタ15は、導電性を有する金属等で形成されている。例えば、サセプタ15は、アルミニウム、アルミニウム合金などで形成されている。
【0063】
サセプタ15は、アルミニウム、アルミニウム合金の表面にアルマイト処理したものとされる。
基板10がサセプタ15上に配置されると、基板10とシャワープレート100とは互いに近接して平行に位置される。
サセプタ15の上面は、取付フランジ21の上面21aと平行な状態を維持するようになっている。サセプタ15の上面は、昇降駆動部(昇降機構)16Aによって、上下方向に移動して高さ位置が変化した場合でも、取付フランジ21の上面21aと平行な状態を維持する。
【0064】
サセプタ15に基板10が配置された状態で、ガス導入口7aからプロセスガスを噴出させると、プロセスガスはガス供給空間2cおよびシャワープレート100を介して基板10の処理面10a上のプラズマ形成空間2aに供給される。
サセプタ15は、内部のヒータ14によって基板10を含めてその温度が所定の温度に調整される。
【0065】
ヒータ14は、サセプタ15の略中央部および支柱16に形成された貫通孔の内部に挿通されたヒータ線14aにより真空チャンバ2の外部の電源14bに接続されている。ヒータ線は、サセプタ15の鉛直方向から見たサセプタ15の略中央部の裏面から下方に向けて突出されている。電源14bは、ヒータ14に供給する電力に応じて、サセプタ15および基板10の温度を調節する。
【0066】
サセプタ15の上面には、基板10の径方向外側に隣接する位置に、基板絶縁カバーが周設されてもよい。基板絶縁カバーは、基板10の全周に設けられる。基板絶縁カバーの高さは、基板10の処理面10aよりも上向きに突出することができる。基板絶縁カバーの高さは、基板10の処理面10aと同じとすることができる。基板絶縁カバーの高さは、基板10の処理面10aよりも低くすることができる。
【0067】
真空チャンバ2の側壁24には、基板10を搬出又は搬入するために用いられる搬出入部26(搬出入口)が形成されている。
真空チャンバ2の側壁24における外側面には、搬出入部26を開閉するドアバルブ26aが設けられている。ドアバルブ26aは、例えば上下方向にスライド可能である。
【0068】
ドアバルブ26aが下方(真空チャンバ2の底部11に向けた方向)にスライド移動したときは、搬出入部26が開口され、基板10を搬出又は搬入することができる。
一方、ドアバルブ26aが上方(カソードフランジ4に向けた方向)にスライド移動したときは、搬出入部26が閉口され、基板10の処理(成膜処理)をおこなうことができる。
【0069】
図2は、本実施形態に係るプラズマ処理装置のシャワープレートにおけるガス噴出口の配置を示す平面図である。図3は、本実施形態に係るプラズマ処理装置のシャワープレートにおけるガス流路およびホローカソードスリットを透視して示す斜視図である。
シャワープレート100には、ガス供給表面100bからプラズマ形成表面100aへ厚さ方向に連通する複数のガス流路101が多数形成される。
【0070】
ガス流路101は、ガス噴出口102としてプラズマ形成表面100aに開口する。
ガス噴出口102は、図2に示すように、シャワープレート100のプラズマ形成表面100aに、平面視して均等に配置されている。つまり、近接するガス噴出口102は、最近接するガス噴出口102どうしの間の距離が、平面視したプラズマ形成表面100aに、互いに等しい距離を有して離間している。ガス噴出口102の配置間隔、つまり、ピッチは、プラズマ形成表面100aの全面において等しく設定される。
【0071】
本実施形態においては、複数のガス噴出口102が、プラズマ形成表面100aに隙間無く配置された正三角形の頂点となる位置にそれぞれ配置される。すなわち、複数のガス噴出口102を結ぶ直線が互いに60°または120°をなすように配置される。
ここで、ガス噴出口102の配置される正三角形は、図中で上下方向に延在する辺が、プラズマ形成表面100aの輪郭の短手方向の縦辺と平行である。
【0072】
ガス噴出口102は、いずれも、プラズマ形成表面100aに形成されたホローカソードスリット110内に位置する。つまり、ガス噴出口102は、いずれも、プラズマ形成表面100aに直接開口してホローカソードスリット110の外に位置するものは形成されない。なお、図2では、ホローカソードスリット110を図示しておらず、ガス噴出口102の配置を優先して示している。
【0073】
ガス流路101には、ガス噴出口102に近接する位置、つまり、プラズマ形成空間2aに近接する位置に、ガス供給空間2cからプラズマ形成空間2aに向かうガス流を制御するオリフィス102aが形成される。つまり、ガス流路101には、ガス噴出口102に近接する位置の太さが細くなっている。オリフィス102aは、いずれのガス流路101においても、その長さが等しく設定される。これにより、複数のガス噴出口102から噴出されるガス流が等しくなるように構成されている。オリフィス102aの太さと、オリフィス102aの長さとは、いずれも、プラズマ処理装置1でおこなわれるプラズマ処理に対応して規定される処理条件に応じて設定される。
【0074】
オリフィス102aは、シャワープレート100の厚さ方向に延在する。オリフィス102aは、ホローカソードスリット110に接続するように形成される。オリフィス102aの下端部開口は、ガス噴出口102を構成する。1本のガス流路101には、1本のオリフィス102aが対応して形成される。
【0075】
ホローカソードスリット110は、幅方向110Wの寸法に対して、長さ方向110Lの寸法が長い溝状の凹部としてプラズマ形成表面100aに形成される。なお、後述するように、ホローカソードスリット110は、プラズマ形成表面100aの全面を覆うように多数配置されるため、幅方向110W寸法と長さ方向110L寸法とが同程度となる場合も含まれてもよい。ホローカソードスリット110の形状は、あくまで、ホローカソード効果をプラズマ形成表面100aの全面で均等に発揮しうること、および、プラズマ形成表面100aの全面で異常放電を発生させないことを主眼として設定される。
【0076】
ホローカソードスリット110内におけるガス噴出口102の開口位置は、図3に示すように、ホローカソードスリット110の頂部面111における、幅方向110Wの中央に位置する。つまり、ガス噴出口102の開口位置は、図3に示すように、ホローカソードスリット110の長さ方向(長手方向)110Lに延在して互いに対向する側壁面112の間で、ちょうど中央となる頂部面111に開口する。
【0077】
さらに、ホローカソードスリット110内におけるガス噴出口102の開口位置は、図3に示すように、ホローカソードスリット110の頂部面111において、長さ方向110Lにほぼ均等な間隔を有して離間するように配置される。
なお、ガス噴出口102の開口位置は、プラズマ形成表面100aにおけるホローカソードスリット110の配置よりも、プラズマ形成表面100aにおけるガス供給の均一性を優先することが好ましい。このため、ガス噴出口102の開口位置は、ホローカソードスリット110に開口していれば、上記の配置以外の構成となることを妨げない。
【0078】
ホローカソードスリット110の頂部面111は、図3に示すように、幅方向110Wの中央に向かってその両側が傾斜していてもよい、つまり、頂部面111は、幅方向110Wの中央が、長さ方向110Lに沿って最上位置となる。ホローカソードスリット110は、幅方向110Wの断面が五角形となることができる。幅方向110Wの断面が五角形となるホローカソードスリット110では、最上位置となる頂点にガス噴出口102がいずれも開口することが好ましい。
【0079】
図4は、本実施形態に係るプラズマ処理装置のシャワープレートにおけるガス流路およびホローカソードスリットの他の例を透視して示す斜視図である。
あるいは、ホローカソードスリット110の頂部面111は、図4に示すように、プラズマ形成表面100aと平行な平面としてもよい、つまり、頂部面111は、幅方向110Wの中央が、長さ方向110Lに沿って最上位置となる。ホローカソードスリット110は、幅方向110Wの断面が四角形となることができる。この場合、基本的にプラズマ形成表面100aと平行な四角形の上辺にガス噴出口102が開口していればよい。なお、ガス噴出口102は、四角形の上辺の幅方向100Wの中央位置に開口することが好ましいが、多少幅方向100Wにずれることもできる。
【0080】
ただし、図3図4のいずれの場合でも、ホローカソードスリット110の幅方向110Wには、単数のガス噴出口102が形成される。ガス噴出口102は、ホローカソードスリットの長さ方向110Lにおける形成密度が均一となるように配置される。つまり、ガス噴出口102は、ホローカソードスリットの幅方向110Wには複数形成されることは好ましくない。これは、ホローカソードスリット110の幅方向110Wおよび長さ方向110Lにおいて、ホローカソードスリット110内に噴出するガス量を均一とするためである。
【0081】
図5は、本実施形態に係るプラズマ処理装置のシャワープレートにおけるシャワープレートのホローカソードスリットの開口およびガス噴出口を示す平面図である。
ホローカソードスリット110は、所定の形状を有する開口113を有する。
開口113は、図5に示すように、平面視して矩形形状を有することができる。開口113は、長辺が互いに平行に配置される。
開口113は、等しい幅方向100Wの寸法を有する。つまり、開口113は、長さ方向(長手方向)110Lに延在して互いに平行に対向する側壁面112の間の距離に対応した形状を有する。
【0082】
ホローカソードスリット110は、図3図4に示すように、その深さ寸法110Dが長さ方向(長手方向)110Lで均一となるように形成される。つまり、ホローカソードスリット110の頂部面111から開口113までの寸法は、長さ方向(長手方向)110Lで均一となるように形成される。基本的に、1本のホローカソードスリット110では、その深さ寸法110Dは均一に設定されて、変化しない。
【0083】
また、図3図4のいずれの場合でも、ホローカソードスリット110の幅方向110Wの側壁面112は、互いに平行でシャワープレート100の厚さ方向に平行とすることができる。あるいは、ホローカソードスリット110の幅方向110Wの側壁面112は、シャワープレート100の厚さ方向に頂部面111から開口113に向かって、互いの離間距離が格外するように傾斜していてもよい。
【0084】
図6は、本実施形態に係るプラズマ処理装置のシャワープレートにおけるシャワープレートのホローカソードスリットの開口の他の例およびガス噴出口を示す平面図である。
図7は、本実施形態に係るプラズマ処理装置のシャワープレートにおけるシャワープレートのホローカソードスリットの開口の他の例およびガス噴出口を示す平面図である。
開口113は、図6に示すように、平面視して角を丸めた矩形形状を有することができる。開口113は、図7に示すように、平面視して長円形状を有することができる。
【0085】
図8は、本実施形態に係るプラズマ処理装置のシャワープレートにおけるシャワープレートの周縁領域付近のホローカソードスリットを示す斜視図である。図9は、本実施形態に係るプラズマ処理装置のシャワープレートにおけるシャワープレートの中心領域付近のホローカソードスリットを示す斜視図である。
複数のホローカソードスリット110は、図8に示すように、プラズマ形成表面100aの全域を覆って形成される。ここで、ホローカソードスリット110が、プラズマ形成表面100aの全域を覆うとは、平行に隣接して配置されたホローカソードスリット110の配置ピッチが、ガス噴出口102のピッチと等しく、かつ、プラズマ形成表面100aの全域で、ホローカソードスリット110の配置ピッチが、変化しないことを意味する。
【0086】
あるいは、ホローカソードスリット110が、プラズマ形成表面100aの全域を覆うとは、シャワープレート100のプラズマ形成表面100aにおいて、その中心から縁部に向けて流れるガスが、ホローカソードスリット110を横断しない場所が存在しないことを意味する。ここで、シャワープレート100のプラズマ形成表面100aにおいて、その中心から縁部に向けて流れるガスが、ホローカソードスリット110を横断しなければ、その一部で縦断する場所が存在してもよい。
【0087】
複数のホローカソードスリット110が、プラズマ形成表面100aを覆って互いに交差しない配置とされる。
互いに交差しないとは、ホローカソードスリット110は、図8に示すように、幅方向110Wに隣接するホローカソードスリット110が、基本的には、長手方向が互いに平行となるように配置されることを意味する。
【0088】
さらに、複数のホローカソードスリット110は、プラズマ形成表面100aの全域において、互いに交差せず分割される。つまり、プラズマ形成表面100aの全面で、いずれも、ホローカソードスリット110が、直線状に形成される。直線状のホローカソードスリット110は、その長さが異なる場合でも、平行に隣接して配置される。
つまり、ホローカソードスリット110は、図9に示すように、延在する長手方向が異なる場合には、交差せずに、全ての部ブナが直線状を維持するように分割される。
ホローカソードスリット110の向きは、深度設定領域および深度設定領域が周方向に分割された周方向領域毎に設定される。
【0089】
以下、深度設定領域および周方向領域について説明する。
図10は、本実施形態に係るプラズマ処理装置のシャワープレートにおけるシャワープレートのホローカソードスリットの深度設定領域を示す平面図である。図11は、本実施形態に係るプラズマ処理装置のシャワープレートにおけるホローカソードスリットの深度設定領域を示す断面図である。
本実施形態においては、シャワープレート100のプラズマ形成表面100aに深度設定領域R01~R20が設定される。深度設定領域R01~R20は、シャワープレート100のプラズマ形成表面100aの中心から周縁に向かって、環状にそれぞれ設定される。
【0090】
深度設定領域R01~R20は、図10図11に示すように、シャワープレート100のプラズマ形成表面100aの中心を含む中心領域(深度設定領域)R01から、プラズマ形成表面100aの縁部に接する周縁領域(深度設定領域)R20までそれぞれ設定される。本実施形態においては、20箇所の深度設定領域R01~R20を設定したが、領域の設定数は20に限定されることはなく、他の領域数とすることもできる。深度設定領域R01~R20の設定数は、プラズマ形成表面100aの全域で均一なプラズマ密度が実現できればよい。
【0091】
深度設定領域R01~R20は、シャワープレート100の厚さ方向でホローカソードスリット110の深さ寸法110Dが異なるように設定される。それぞれの深度設定領域R01~R20の領域内では、いずれも同一のホローカソードスリット110の深さ寸法110Dを有するように設定される。
【0092】
深度設定領域R01~R20は、中心領域R01から、周縁領域R20まで番号が上がるにつれて、ホローカソードスリット110の深さが深くなるように設定される。つまり、深度設定領域(中心領域)R01に比べて径方向外側に隣接する深度設定領域R02はホローカソードスリット110の深さ寸法110Dが大きくなる。
【0093】
深度設定領域R02に比べて径方向外側に隣接する深度設定領域R03はホローカソードスリット110の深さ寸法110Dが大きくなる。以下同様に、深度設定領域R17まで番号が上がるにつれて、ホローカソードスリット110の深さ寸法110Dが大きくなり、さらに、深度設定領域R18に比べて径方向外側に隣接する深度設定領域R19はホローカソードスリット110の深さ寸法110Dが大きくなる。深度設定領域R19に比べて径方向外側に隣接する深度設定領域R20はホローカソードスリット110の深さ寸法110Dが大きくなる。
【0094】
なお、図10に示すように、深度設定領域R08~R20は環状の一部のみが設定されているが、矩形輪郭であるプラズマ形成表面100aによって環状の一部のみが切り取られた状態で構成される。
深度設定領域R01~R20の外側輪郭形状は、ガス噴出口102を結ぶ直線に沿って設定される。このため、本実施形態においては、深度設定領域R01~R20の外側輪郭形状が六角形に設定される。特に、中心領域R01の外側輪郭形状は、正六角形に設定される。つまり、深度設定領域R01~R20の外側輪郭形状は、ガス噴出口102の配置によって規定されている。
ホローカソードスリット110は、深度設定領域R01~R20の境界RRに沿って配置される。言い換えると、深度設定領域R01~R20の境界RR、つまり、深度設定領域R01~R20の外側輪郭形状は、ホローカソードスリット110の長辺に沿って配置される。
【0095】
中心領域R01よりプラズマ形成表面100aの外縁に近接する各深度設定領域R02~R20が、それぞれ周方向に分割された周方向領域を形成する。例えば、深度設定領域R03では、周方向に分割された周方向領域R03a~R03fを形成する。周方向領域R03a~R03fでは、いずれも同一のホローカソードスリット110の深さを有するように設定される。同様に、深度設定領域R06では、周方向に分割された周方向領域R06a~R06fを形成する。周方向領域R06a~R06fでは、いずれも同一のホローカソードスリット110の深さ寸法110Dを有するように設定される。
【0096】
それぞれの周方向領域R02a~R20fでは、その領域内において、全てのホローカソードスリット110が平行に同一方向を向いて配置される。同時に、それぞれの周方向領域R02a~R20fでは、その領域内において、全てのホローカソードスリット110が周方向領域R02a~R20fの外周輪郭と平行に同一方向を向いて配置される。
【0097】
例えば、図10に示す深度設定領域R03では、六角形の各辺に平行となり中心を通る直線の境界Rab,Rbc,Rcd,Rde,Refによって、時計回りに周方向領域R03a~R03fに分割される。
図10の右側で上下方向中央位置に示す周方向領域R03aでは、深度設定領域R03の外周の境界RRとなる直線が図中の上下方向に延在する。したがって、周方向領域R03aの領域内に配置される全てのホローカソードスリット110が、互いに平行、かつ、図中で上下方向を向いて配置される。
【0098】
図10の右上側で周方向領域R03aより上側位置に示す周方向領域R03bでは、深度設定領域R03の外周境界となる直線が図中の左右方向中央から右側に向かって水平方向よりも60°下方に傾斜する方向に延在する。したがって、周方向領域R03bの領域内に配置される全てのホローカソードスリット110が、互いに平行、かつ、図中で左右方向中央から右側に向かって水平方向よりも60°下方に傾斜する方向を向いて配置される。
【0099】
図10の左上側で周方向領域R03bより左側位置に示す周方向領域R03cでは、深度設定領域R03の外周境界RRとなる直線が図中の左右方向中央から左側に向かって水平方向よりも60°下方に傾斜する方向に延在する。したがって、周方向領域R03bの領域内に配置される全てのホローカソードスリット110が、互いに平行、かつ、図中で左右方向中央から左側に向かって水平方向よりも60°下方に傾斜する方向を向いて配置される。
【0100】
図10の左側で上下方向中央位置に示す周方向領域R03dでは、深度設定領域R03の外周境界RRとなる直線が図中の上下方向に延在する。したがって、周方向領域R03dの領域内に配置される全てのホローカソードスリット110が、互いに平行、かつ、図中で上下方向を向いて配置される。
【0101】
図10の左下側で周方向領域R03dより下側位置に示す周方向領域R03dでは、深度設定領域R03の外周境界RRとなる直線が図中の左右方向中央から左側に向かって水平方向よりも60°上方に傾斜する方向に延在する。したがって、周方向領域R03dの領域内に配置される全てのホローカソードスリット110が、互いに平行、かつ、図中で左右方向中央から左側に向かって水平方向よりも60°上方に傾斜する方向を向いて配置される。
【0102】
図10の右下側で周方向領域R03dより右側位置かつ周方向領域R03aより下側位置に示す周方向領域R03fでは、深度設定領域R03の外周境界RRとなる直線が図中の左右方向中央から右側に向かって水平方向よりも60°上方に傾斜する方向に延在する。したがって、周方向領域R03fの領域内に配置される全てのホローカソードスリット110が、互いに平行、かつ、図中で左右方向中央から右側に向かって水平方向よりも60°上方に傾斜する方向を向いて配置される。
【0103】
図10の深度設定領域R03以外の深度設定領域R02,R04~R07においても、同様に、それぞれ、同じように周方向領域R02a~R07fが設定され、それぞれ、深度設定領域R02,R04~R07の外周境界に沿って全てのホローカソードスリット110が、互いに平行に配置される。
【0104】
なお、全周の環状から欠けてしまった深度設定領域R08~R20においても、同じように周方向領域R08b~R20fが設定され、それぞれ、深度設定領域R08~R20の外周境界RRに沿って全てのホローカソードスリット110が、互いに平行に配置される。
【0105】
本実施形態における中心領域R01では、ホローカソードスリット110が、互いに平行、かつ、図中で上下方向を向いて配置される。
中心領域R01では、中心領域R01の外周境界RRに沿って全てのホローカソードスリット110が、互いに平行に配置されるが、正六角形である外周境界RRのいずれか一辺を選択して、中心領域R01内の全てのホローカソードスリット110が、選択された一辺と互いに平行に配置される。
【0106】
本実施形態では、図9に示すように、縦方向に並べた配置とすることができる。本実施形態の中心領域R01では全てのホローカソードスリット110が、周方向領域R02aおよび周方向領域R02dの領域内でのホローカソードスリット110と平行に配置されることができる。なお、中心領域R01では隣接する周方向領域R02a~R02fのいずれかと平行にホローカソードスリット110が配置されていればよい。
【0107】
これは、中心領域R01では、正六角形である外周境界RRごとに周方向領域を設定すると、直線状のホローカソードスリット110の長さ方向100L寸法が短くなりすぎるためである。また、中心領域R01においても、領域内における、全てのホローカソードスリット110が互いに平行に配置される必要があるためである。
言い換えると、中心領域R01では、領域内における全てのホローカソードスリット110が、隣接する周方向領域R02aまたは周方向領域R02dのホローカソードスリット110と平行に同一方向を向いて配置される。
【0108】
また、それぞれの周方向領域R02a~R20fの外周境界RRは、周方向で同じ向きとなる。すなわち、深度設定領域R02において、隣接する周方向領域R02aと周方向領域R02bとの境界Rabは、径方向で外側に隣接する深度設定領域R03で、周方向に対応して配置される周方向領域R03aと周方向領域R03bとの境界Rabに一致する。
【0109】
同様に、周方向領域R02bと周方向領域R02cとの境界Rbcは、周方向領域R03bと周方向領域R03cとの境界Rbcに一致する。周方向領域R02cと周方向領域R02dとの境界Rcdは、周方向領域R03cと周方向領域R03dとの境界Rcdに一致する。周方向領域R02dと周方向領域R02eとの境界Rdeは、周方向領域R03dと周方向領域R03eとの境界Rdeに一致する。
【0110】
周方向領域R02eと周方向領域R02fとの境界Refは、周方向領域R03eと周方向領域R03fとの境界Refに一致する。周方向領域R02fと周方向領域R02aとの境界Rfaは、周方向領域R03fと周方向領域R03aとの境界Rfaに一致する。このように、すべての深度設定領域R02~R20において、図9図10に示すように、隣接する周方向領域の境界は周方向で対応する位置で一致している。
【0111】
隣接する深度設定領域R02~R20において、それぞれ周方向に隣接する領域内におけるホローカソードスリット110は、同じ方向を向いて平行に配置される。例えば、深度設定領域R02と隣接する深度設定領域R02とでは、周方向領域R02aと周方向領域R03aとの境界RRでも、ホローカソードスリット110は、同じ方向を向いて平行に配置される。
【0112】
これに対して、同じ番号である同径方向位置にあって隣接する周方向領域の境界において、それぞれ周方向に隣接する領域内におけるホローカソードスリット110は、異なる方向を向いて配置される。
例えば、深度設定領域R03において、隣接する周方向領域R02aと周方向領域R02bとの境界Rabでは、ホローカソードスリット110は、図9に示すように、異なる方向を向いて配置される。同様に、境界Rbcでは、ホローカソードスリット110は、図9に示すように、互いに60°あるいは120°を為す方向を向いて配置される。
【0113】
ここで、同じ径方向位置にあって周方向領域の境界においては、互いの領域のホローカソードスリット110の端部115が径方向に互い違いに配置される。
このような周方向領域の境界においては、図9に示すように、互いの領域のホローカソードスリット110の端部115が、相手の領域にはみ出すように、かつ、互いに接続されないように、配置される。
【0114】
つまり、周方向領域の境界においては、図9に示すように、ホローカソードスリット110の端部115は、プラズマ形成表面100aに沿ってプラズマ形成空間2aの中心から径方向外向きに流れる処理ガスが、その流れの途中でホローカソードスリット110を横切らないでプラズマ形成表面100aの縁部に到達することを防止するように配置される。
【0115】
例えば、深度設定領域R03において、周方向領域R03bと周方向領域R03cとの境界Rbcにおいて、図9に示すように、ある径方向位置におけるホローカソードスリット110の端部115が、周方向領域R03bから境界Rbcよりも周方向領域R03cに向かって左方向に突出した場合、周方向領域R03bにおいて、径方向外側に隣接するホローカソードスリット110の端部115は、境界Rbcよりも周方向領域R03bに向かって右方向に引っ込んでいる。
【0116】
同時に、境界Rbcにおいて、図9に示すように、ある径方向位置におけるホローカソードスリット110の端部115が、周方向領域R03cから境界Rbcよりも周方向領域R03bに向かって右方向に突出した場合、周方向領域R03cにおいて、径方向外側に隣接するホローカソードスリット110の端部115は、境界Rbcよりも周方向領域R03cに向かって左方向に引っ込んでいる。
【0117】
ここで、周方向領域R03cから境界Rbcよりも周方向領域R03bに向かって右方向に突出した端部115と、周方向領域R03bから境界Rbcよりも周方向領域R03cに向かって左方向に突出した端部115とは、周方向でほぼ等しい位置に配置される。
【0118】
つまり、周方向領域R03cから境界Rbcよりも周方向領域R03bに向かって右方向に突出した端部115と、周方向領域R03bから境界Rbcよりも周方向領域R03cに向かって左方向に突出した端部115とは、プラズマ形成表面100aの中心から径方向に沿って外縁に向かう同一の直線上に配置される。
【0119】
また、右方向に突出した端部115は、いずれも、周方向でほぼ等しい位置に配置される。つまり、径方向で異なる位置に配置されそれぞれ右方向に突出した端部115は、いずれも、プラズマ形成表面100aの中心から径方向に沿って外縁に向かう同一の直線上に配置される。
【0120】
また、左方向に突出した端部115は、いずれも、周方向でほぼ等しい位置に配置される。つまり、径方向で異なる位置に配置されそれぞれ左方向に突出した端部115は、いずれも、プラズマ形成表面100aの中心から径方向に沿って外縁に向かう同一の直線上に配置される。
【0121】
また、右方向に引っ込んだ端部115は、いずれも、周方向でほぼ等しい位置に配置される。つまり、径方向で異なる位置に配置されそれぞれ右方向に引っ込んだ端部115は、いずれも、プラズマ形成表面100aの中心から径方向に沿って外縁に向かう同一の直線上に配置される。
【0122】
また、左方向に引っ込んだ端部115は、いずれも、周方向でほぼ等しい位置に配置される。つまり、径方向で異なる位置に配置されそれぞれ左方向に引っ込んだ端部115は、いずれも、プラズマ形成表面100aの中心から径方向に沿って外縁に向かう同一の直線上に配置される。
【0123】
つまり、周方向に突出あるいは引っ込んだ端部115は、深度設定領域R02~R20で、対応するものが、それぞれ径方向でほぼ直線上に位置する。
【0124】
つまり、同じ径方向位置にあって周方向領域の境界で、ホローカソードスリット110の端部115が互い違いとなるように配置されることで、プラズマ形成表面100aに沿って流れる処理ガスの流れと交差するように配置する。
この際、一方のホローカソードスリット110の端部115は、他方の側壁面112に近接するが、接触しない。つまり、全てのホローカソードスリット110はいずれも直線状を維持する。
【0125】
図12は、本実施形態に係るプラズマ処理装置のシャワープレートにおける隣接する深度設定領域の境界を示す断面図である。
本実施形態においては、深度設定領域R01~R20の境界RRでは、図12に示すように、その両側に位置するホローカソードスリット110の深さ寸法110Dが異なるように構成される。
【0126】
ここで、本実施形態のホローカソードスリット110は、シャワープレート100の厚さ方向におけるガス噴出口102の位置はプラズマ形成表面100aの全域で変わらない。そのため、深度設定領域R01~R20ごとに、プラズマ形成表面100aの開口113がシャワープレート100の厚さ方向に変位することで、ホローカソードスリット110の深さ寸法110Dが変化している。
【0127】
すなわち、図12に示すように、境界RRよりも図中左側で示した中心領域R01に近接する位置における深さ寸法110Dに対して、境界RRよりも図中右側で示した周縁領域R20に近接する位置における深さ寸法110Dは大きくなるように設定される。また、図12では、境界RRの両側における深さ寸法110Dの変化を模式的に示しているが、実際には、ホローカソードスリット110の内部において段差・凸部等の異常放電の発生を誘発する形状は回避する。
【0128】
つまり、境界RRに対応するプラズマ形成表面100aには、図13で示すような段差等の異常放電発生原因箇所DDは形成されておらず、なめらかにその形状は変化する。すなわち、図11に示すように、プラズマ形成表面100aが中心で緩く凹むとともに、シャワープレート100の外周縁に向けて厚さ方向の断面下端輪郭が円弧状に湾曲した凹部が形成される。この曲面に形成されたプラズマ形成表面100aに開口113が形成されることで、ホローカソードスリット110の深さ寸法110Dが変化して設定されることになる。
【0129】
具体的には、プラズマ形成表面100aは、平面視して一辺の長さが1000mm以上の矩形輪郭であるのに対し、厚さ方向でのプラズマ形成表面100aの凹部深さは数mm程度である。
【0130】
したがって、本実施形態のシャワープレート100を製造する際には、まず、均一厚さの板体に対して、多数のガス流路101、オリフィス102a、ガス噴出口102、および、ホローカソードスリットを形成するための多数の溝を形成する。このとき、厚さ方向におけるオリフィス102aの長さ、厚さ方向におけるガス噴出口102の位置、および、ホローカソードスリットを形成するための多数の溝の深さは、いずれも均一となるように形成する。その後、あらかじめ設定した深度設定領域R01~R20に対応して、プラズマ形成表面100aを中央で深くなるように削るあるいは除去することで、所定の状態を有するホローカソードスリット110の深さ寸法110Dの分布を実現することが可能となる。
【0131】
次に、プラズマ処理装置1を用いて基板10の処理面10aに膜を形成する場合の作用について説明する。
【0132】
<プラズマ処理工程>
処理を開始する際にはまず、真空ポンプ28を用いて真空チャンバ2内を減圧する。真空チャンバ2内が真空に維持された状態で、ドアバルブ26aが開き、真空チャンバ2の搬出入部26を介して、真空チャンバ2の外部から成膜空間2aに向けて基板10が搬入される。基板10は、サセプタ15上に載置される。基板10は、基板絶縁カバーや他の構成によって、サセプタ15上における載置位置を規定されてアライメントされる。
【0133】
基板10を搬入した後、ドアバルブ26aが閉じる(閉動作)。
基板10を載置する前は、サセプタ15は真空チャンバ2内の下方に位置している。基板10を載置する前は、サセプタ15は搬出入部26よりも下方に位置している。
つまり、サセプタ15とシャワープレート100との間隔が広くなっているので、ロボットアーム(不図示)を用いて基板10をサセプタ15上に容易に載置することができる。
【0134】
基板10がサセプタ15上に載置された後には、昇降駆動部16Aが起動し、支柱16を上昇する。上方へ押し上げられたサセプタ15上に載置された基板10も上方へ移動する。これによって、適切に成膜を行うために必要な間隔になるようにシャワープレート100と基板10との間隔が所望の値に決定され、この間隔が維持される。シャワープレート100のプラズマ形成表面100aと基板10の処理面10aとの間隔が、プラズマ形成空間2aにおけるプラズマ形成電極間距離100T(図18参照)として、処理条件に応じて設定される。
さらに、基板10を載置したサセプタ15を、電源14bからヒータ線14aを介して電力供給したヒータ14により加熱して、所定の温度状態とする。
【0135】
その後、プロセスガス供給部7bからガス導入管7およびガス導入口7aを介してガス供給空間2cにプロセスガスが導入される。そして、シャワープレート100のガス噴出口102およびホローカソードスリット110を介して、成膜空間であるプラズマ形成空間2a内にプロセスガスが噴出される。
【0136】
図14は、本実施形態に係るプラズマ処理装置のシャワープレートにおけるプラズマ形成状態を示す断面図である。
次に、高周波電源9を起動してカソードフランジ4に高周波電力を印加する。
すると、カソードフランジ4の表面からシャワープレート100の表面を伝って高周波電流が流れ、シャワープレート100とサセプタ15との間に放電が生じる。そして、シャワープレート100と基板10の処理面10aとの間にプラズマが発生する。
同時に、図14に示すように、ホローカソードスリット110の内部においても、ホローカソード効果により、平板電極に比べて高いプラズマ密度でプラズマが発生する。
【0137】
こうして発生したプラズマ内でプロセスガスが分解され、プラズマ状態のプロセスガスが得られ、基板10の処理面10aで気相成長反応が生じ、薄膜が処理面10a上に成膜される。
サセプタ15に伝達された高周波電流は、側壁24、シールドカバーを伝ってリターンされる(リターン電流)。
【0138】
本実施形態のプラズマ処理装置1において、隣接するホローカソードスリット110の間隔は、ガス噴出口102の開口分布によって規定されている。ガス噴出口102は、最近接する隣のガス噴出口102との間隔が、シャワープレート100のプラズマ形成表面100aと基板10の処理面10aとの間隔であるプラズマ形成電極間距離よりも小さく設定される。このため、成膜空間であるプラズマ形成空間2a内に均一にプロセスガスが供給される。同時に、ホローカソード効果により、高いプラズマ密度、高いラジカル密度、高い電子密度を実現することが可能である。
【0139】
特に、プラズマ形成表面100aへのガス流路の開口が、個別のガス流路毎に拡径された、いわゆるホールタイプのホローカソード効果を有する構成に比べても、高いプラズマ密度、高いラジカル密度、高い電子密度を実現することが可能となり、より好適なプラズマ処理特性、成膜特性を得ることが可能となる。
【0140】
さらに、本実施形態のプラズマ処理装置1において、深度設定領域R01~R20に応じて、ホローカソードスリット110の深さ寸法110Dの分布を中心よりも外周縁で大きくなるように設定したことで、通常、外縁で小さくなるプラズマ密度、ラジカル密度、電子密度をいずれも、プラズマ形成表面100aの径方向で均一となるように分布形成させることができる。
【0141】
ここで、ホローカソードスリット110の深さ寸法110Dが大きい(深い)と電子密度は高くなる。これはホローカソードスリット110の単位長さあたりのホローカソードスリット110内部の空間体積が増大するためであり、ホローカソードスリット110の幅方向110W寸法が大きいほうが電子密度は高くなる。
【0142】
これにより、プラズマ処理特性の均一な分布、つまり、成膜時の均一な膜厚分布を実現することが容易に可能となる。しかも、成膜する膜の組成に応じて、特性分布変動を抑制するように容易に制御可能とすることができる。
【0143】
また、図15に示すように、平面視して屈曲したホローカソードスリット内に角部を有する構成とは異なり、本実施形態のプラズマ処理装置1においては、全てのホローカソードスリット110が直線で形成され、互いに交差しておらず、その状態でシャワープレート100のプラズマ形成表面100aの全域を覆うように配置されていることで、ホローカソード効果を生じるスリット内に凸部、突起、段差等の異常放電発生原因箇所DDが形成されていないので、成膜特性に悪影響を与える異常放電の発生を回避することが可能となる。これにより、成膜特性が低下することがない。
【0144】
さらに、深度設定領域R01~R20に応じて、ホローカソードスリット110の深さ寸法110Dをプラズマ形成表面100aの径方向に沿って、中心から外周縁に向かって大きくなるように設定することで、プラズマ密度、ラジカル密度、電子密度を均一に設定した状態で、プラズマ密度、ラジカル密度、電子密度を所望の状態に制御することが容易となる。
【0145】
つまり、深度設定領域R01~R20に対応して、プラズマ形成表面100aを中心が外周に比べて凹むように加工するだけで、ホローカソードスリット110の深さ寸法110Dをプラズマ形成表面100aの径方向に沿って変化するように形成することができる。したがって、加工精度よくホローカソードスリット110の深さ寸法110Dを設定することが容易となる。
同時に、深度設定領域R01~R20とホローカソードスリット110とが交差しない構成を有するため、異常放電発生原因箇所DDを形成することなく、高いプラズマ密度、高いラジカル密度、高い電子密度を均一に実現することが可能である。
【0146】
同時に、本実施形態のプラズマ処理装置1においては、成膜する膜の組成に応じて、特性分布変動を抑制するように容易に制御可能とすることができる。
ここで、プラズマ形成パワーによる特性変化が大きくなる種類の成膜と、プラズマ形成電極間距離による特性変化の大きい種類の成膜と、の両方に対応して、これらの特性の差異を抑制することが可能となる。
【0147】
成膜する膜の組成は、供給するプロセスガスによって変化するが、同時に、ガス種類の変化によって、処理特性も変化する。すなわち、異なる組成の成膜をおこなうと、電力、および電極間距離の変化に対する振る舞い(Behaviour)、特に、感度が変化する。
【0148】
すなわち、深度設定領域R01~R20によって、密度分布の均一性を維持したままで、密度そのものを変化させることが容易なため、プラズマパワーの変動をおこなっても、プラズマ形成表面100aに沿った特性分布を維持することが可能となる。また、プラズマ形成電極間距離を変化した際に、プラズマ形成表面100aに沿った特性分布を維持することが可能なため、電極間距離変化による特性を効果的に成膜に利用することが可能となる。
【0149】
これにより、良好な膜厚分布をプラズマ密度が高いホローカソードスリット110を用いて異常放電なく実現することができるシャワープレート100を備えたプラズマ処理装置1を提供することが可能となる。
【0150】
図16は、本実施形態に係るプラズマ処理装置のシャワープレートにおけるシャワープレートのホローカソードスリットの深度設定領域の他の例を示す断面図である。
さらに、図11に示した例に比べて、図16に示すように、深度設定領域R01~R20に対応して、プラズマ形成表面100aを中心が外周に比べてより凹むように加工するだけで、ホローカソードスリット110の深さ寸法110Dをプラズマ形成表面100aの径方向に沿って大きく変化するように形成することができる。
これにより、プラズマ形成表面100aの径方向で膜厚分布の差の大きな成膜をおこなう際にも、均一な膜厚分布での成膜を実現することができる。
【0151】
以下、本発明に係るシャワープレート、プラズマ処理装置の第2実施形態を、図面に基づいて説明する。
図17は、本実施形態に係るプラズマ処理装置のシャワープレートにおけるホローカソードスリットの深度設定領域を示す断面図である。図18は、本実施形態に係るプラズマ処理装置のシャワープレートにおける隣接する深度設定領域の境界を示す断面図である。本実施形態において、上述した第1実施形態と異なるのは、ホローカソードスリット110の深さ寸法110Dの設定に関する点であり、これ以外の上述した第1実施形態と対応する構成には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0152】
本実施形態に係るプラズマ処理装置1は、図17図18に示すように、シャワープレート100におけるプラズマ形成表面100aが平面に形成されて、かつ、シャワープレート100の厚さ方向におけるガス噴出口102の位置が変化して形成される。
これにより、各深度設定領域R01~R20でのホローカソードスリット110の深さ寸法110Dが設定される。
【0153】
本実施形態においては、深度設定領域R01~R20の境界RRでは、図18に示すように、その両側に位置するホローカソードスリット110の深さ寸法110Dが異なるように構成される。
【0154】
ここで、本実施形態のホローカソードスリット110は、シャワープレート100の厚さ方向における開口113の位置はプラズマ形成表面100aの全域で変わらない。すなわち、プラズマ形成表面100aは、その全面で平面として構成されている。
これに対して、シャワープレート100の厚さ方向におけるガス噴出口102の位置が、深度設定領域R01~R20ごとに、シャワープレート100の厚さ方向に変位することで、ホローカソードスリット110の深さ寸法110Dが変化している。
【0155】
ここで、シャワープレート100の厚さ寸法が均一に設定された場合には、オリフィス102aよりもガス供給表面100bに近接するガス流路101は、ホローカソードスリット110の深さ寸法110Dに対応して変化している。
【0156】
すなわち、図18に示すように、境界RRよりも図中左側で示した中心領域R01に近接する位置における深さ寸法110Dに対して、境界RRよりも図中右側で示した周縁領域R20に近接する位置における深さ寸法110Dは大きくなるように設定される。また、図18では、境界RRの両側における深さ寸法110Dの変化を模式的に示しているが、実際には、ホローカソードスリット110の内部において段差・凸部等の異常放電の発生を誘発する形状は回避する。
【0157】
ここで、複数のホローカソードスリット110における頂部面111は、図17に示すように、下凸の球面100dに沿って形成される。
この球面100dは、複数のホローカソードスリット110にわたって頂部面111のガス噴出口102を結んで形成される。この球面100dは、前述した第1実施形態で上凸の曲面として形成されたプラズマ形成表面100aに対応する。すなわち、この球面100dのシャワープレート100の厚さ方向位置によって、当該ホローカソードスリット110の深さ寸法110Dが設定される。
【0158】
ここで、ホローカソードスリット110の頂部面111には、図19で示すような段差等の異常放電発生原因箇所DDは形成されていない。また、個々のホローカソードスリット110は、深度設定領域の境界RRを跨がないため、1本のホローカソードスリット110における頂部面111は、図19に示す段差は形成されていない。
平面のプラズマ形成表面100aに対して、ガス噴出口102の厚さ方向位置が中心で緩く近づくとともに、シャワープレート100の外周縁に向けてガス噴出口102の厚さ方向位置が円弧状に湾曲した曲面に沿って、プラズマ形成表面100aから離間して形成される。これにより、ホローカソードスリット110の深さ寸法110Dが変化して設定されることになる。
【0159】
具体的には、プラズマ形成表面100aは、平面視して一辺の長さが1000mm以上の矩形輪郭であるのに対し、平面のプラズマ形成表面100aから厚さ方向でのガス噴出口102の厚さ方向位置の離間距離の差は数mm程度である。
【0160】
本実施形態においては、第1実施形態と同様に、各深度設定領域R01~R20に対応してホローカソードスリット110の深さ寸法110Dが設定されるとともに、プラズマ形成表面100aが平面であることにより、図18に示すように、プラズマ形成空間2aの全域におけるプラズマ形成電極間距離100Tが均一な状態を維持することができる。これにより、電極間距離100Tの変動に対して敏感なプラズマ処理に対しても、プラズマ形成表面100aの全域で、均一なプラズマ処理、例えば成膜処理をおこなうことが可能となる。
【0161】
本実施形態のシャワープレート100を製造する際には、均一厚さの板体に対して、あらかじめ設定した深度設定領域R01~R20に対応して、シャワープレート100の厚さ方向にそれぞれ変化させた、多数のガス流路101、オリフィス102a、ガス噴出口102、および、ホローカソードスリット110を形成する。このとき、厚さ方向におけるオリフィス102aの長さは、いずれも均一となるように形成する。これにより、平面状のプラズマ形成表面100aに対して、所定の状態を有するホローカソードスリット110の深さ寸法110Dの分布を実現することが可能となる。
【0162】
図20は、本実施形態に係るプラズマ処理装置のシャワープレートにおけるプラズマ形成状態を示す断面図である。
本実施形態においても、高周波電源9を起動してカソードフランジ4に高周波電力を印加すると、シャワープレート100とサセプタ15との間に放電が生じる。そして、シャワープレート100と基板10の処理面10aとの間にプラズマが発生する。
同時に、図20に示すように、ホローカソードスリット110の内部においても、ホローカソード効果により、平板電極に比べて高いプラズマ密度でプラズマが発生する。
【0163】
本実施形態においては、上述した実施形態と同等の効果を奏することができる。
【0164】
以下、本発明に係るシャワープレート、プラズマ処理装置の第3実施形態を、図面に基づいて説明する。
図21は、本実施形態におけるプラズマ処理装置のシャワープレートのガス噴出口の配置パターンとホローカソードスリットの深度設定領域の境界配置パターンとを示す平面図である。
本実施形態において上述した第1および第2実施形態と異なるのはガス噴出口および深度設定領域の配置パターンに関する点であり、これ以外の対応する構成要素に関しては、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0165】
本実施形態のプラズマ処理装置1では、図21に示すように、シャワープレート100のプラズマ形成表面100aにおけるガス噴出口102の配置パターンが、隣接した正三角形の頂点の位置に対応した構成であることは同じであるが、矩形のプラズマ形成表面100aの輪郭辺に対する向きが異なる。
つまり、ガス噴出口102が頂点に配置される正三角形は、図中で左右方向に延在する下辺が、プラズマ形成表面100aの輪郭の長手方向の辺と平行である。
【0166】
本実施形態の深度設定領域は、図21に示すように、ガス噴出口102が頂点に配置される正三角形の辺に平行となる部分を有する六角形を境界RRとして設定される。このとき、深度設定領域の境界RRは、プラズマ形成表面100aの輪郭の長手方向の辺と平行な辺を有する。
【0167】
また、本実施形態の深度設定領域は、第1,第2実施形態に比べて、その幅方向寸法が小さく設定される。すなわち、本実施形態の深度設定領域は、第1,第2実施形態に比べて、領域分割数が小さく設定される。
また、本実施形態の深度設定領域の境界RRは、ほぼ均等な径方向の離間距離を有する。なお、プラズマ処理条件に応じて、深度設定領域の境界RRは、径方向位置に応じて異なる径方向の離間距離を有することもできる。
【0168】
本実施形態においては、上述した実施形態と同等の効果を奏することができる。
【0169】
以下、本発明に係るシャワープレート、プラズマ処理装置の第4実施形態を、図面に基づいて説明する。
図22は、本実施形態におけるプラズマ処理装置のシャワープレートのガス噴出口の配置パターンとホローカソードスリットの深度設定領域の境界配置パターンとを示す平面図である。
本実施形態において上述した第3実施形態と異なるのはガス噴出口および深度設定領域の配置パターンに関する点であり、これ以外の対応する構成要素に関しては、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0170】
本実施形態のプラズマ処理装置1では、図22に示すように、シャワープレート100のプラズマ形成表面100aにおけるガス噴出口102の配置パターンが、隣接した正三角形の頂点の位置に対応した構成であることは第3実施形態と同じであるが、矩形のプラズマ形成表面100aの輪郭辺に対する向きが第1実施形態と同じである。
つまり、ガス噴出口102が頂点に配置される正三角形は、図中で上下方向に延在する辺が、プラズマ形成表面100aの輪郭の短手方向の上下方向に延在する辺と平行である。
【0171】
本実施形態の深度設定領域は、図22に示すように、ガス噴出口102が頂点に配置される正三角形の辺に平行となる部分を有する六角形を境界RRとして設定される。このとき、深度設定領域の境界RRは、プラズマ形成表面100aの輪郭の短手方向の辺と平行な辺を有する。
また、本実施形態の深度設定領域は、第1~第3実施形態に比べて、その幅方向寸法が小さく設定される。すなわち、本実施形態の深度設定領域は、第1~第3実施形態に比べて、領域分割数が小さく設定される。
また、本実施形態の深度設定領域の境界RRは、ほぼ均等な径方向の離間距離を有することができる。なお、プラズマ処理条件に応じて、深度設定領域の境界RRは、径方向位置に応じて異なる径方向の離間距離を有することもできる。
【0172】
本実施形態においては、上述した実施形態と同等の効果を奏することができる。
【0173】
以下、本発明に係るシャワープレート、プラズマ処理装置の第5実施形態を、図面に基づいて説明する。
図23は、本実施形態におけるプラズマ処理装置のシャワープレートのガス噴出口の配置パターンとホローカソードスリットの深度設定領域の境界配置パターンとを示す平面図である。
本実施形態において上述した第4実施形態と異なるのはガス噴出口および深度設定領域の配置パターンに関する点であり、これ以外の対応する構成要素に関しては、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0174】
本実施形態のプラズマ処理装置1では、図23に示すように、シャワープレート100のプラズマ形成表面100aにおけるガス噴出口102の配置パターンが、隣接した正三角形の頂点の位置に対応した構成であることは第4実施形態と同じであり、矩形のプラズマ形成表面100aの輪郭辺に対する向きも第4実施形態と同じである。
つまり、ガス噴出口102が頂点に配置される正三角形は、図中で上下方向に延在する辺が、プラズマ形成表面100aの輪郭の短手方向の上下方向に延在する辺と平行である。
【0175】
本実施形態の深度設定領域は、図23に示すように、ガス噴出口102が頂点に配置される正三角形の辺に平行となる部分を有する六角形を境界RRとして設定される。このとき、深度設定領域の境界RRは、プラズマ形成表面100aの輪郭の短手方向の辺と平行な辺を有する。
【0176】
また、本実施形態の深度設定領域は、第4実施形態に比べて、さらに幅方向寸法が小さく設定される。すなわち、本実施形態の深度設定領域は、第4実施形態に比べて、領域分割数が小さく設定される。具体的には、プラズマ形成表面100aの輪郭の隅部付近にのみ、深度設定領域の境界RRが設定される。
また、プラズマ形成表面100aの輪郭の隅部付近の深度設定領域の境界RRは、ほぼ均等な径方向の離間距離を有することができる。なお、プラズマ処理条件に応じて、深度設定領域の境界RRは、径方向位置に応じて異なる径方向の離間距離を有することもできる。
【0177】
本実施形態においては、上述した実施形態と同等の効果を奏することができる。
【0178】
以下、本発明に係るシャワープレート、プラズマ処理装置の第6実施形態を、図面に基づいて説明する。
図24は、本実施形態におけるプラズマ処理装置のシャワープレートのガス噴出口の配置パターンとホローカソードスリットの深度設定領域の境界配置パターンとを示す平面図である。
本実施形態において上述した第4および第5実施形態と異なるのはガス噴出口および深度設定領域の配置パターンに関する点であり、これ以外の対応する構成要素に関しては、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0179】
本実施形態のプラズマ処理装置1では、図24に示すように、シャワープレート100のプラズマ形成表面100aにおけるガス噴出口102の配置パターンが、隣接した正三角形の頂点の位置に対応した構成であることは第4および第5実施形態と同じであり、矩形のプラズマ形成表面100aの輪郭辺に対する向きも第4および第5実施形態と同じである。
つまり、ガス噴出口102が頂点に配置される正三角形は、図中で上下方向に延在する辺が、プラズマ形成表面100aの輪郭の短手方向の上下方向に延在する辺と平行である。
【0180】
本実施形態の深度設定領域は、図24に示すように、ガス噴出口102が頂点に配置される正三角形の辺に平行となる部分を有する六角形を境界RRとして設定される。このとき、深度設定領域の境界RRは、プラズマ形成表面100aの輪郭の短手方向の辺と平行な辺を有する。さらに、本実施形態の深度設定領域は、ガス噴出口102が頂点に配置される正三角形の辺に平行となる部分を境界RRとして有する四角形がその一部に設定される。なお、この四角形は、菱形とされる。
【0181】
また、本実施形態の深度設定領域は、第4実施形態に比べて、ほぼ同じ幅方向寸法を有するように設定される。すなわち、本実施形態の深度設定領域は、第4実施形態に比べて、領域分割数とほぼ同じように設定される。具体的には、第5実施形態のようにプラズマ形成表面100aの輪郭の隅部付近に深度設定領域の境界RRが設定されるとともに、さらに、中心付近に四角形の輪郭を有する深度設定領域の境界RRと、六角形の輪郭を有する深度設定領域の境界RRと、が設定される。
【0182】
また、本実施形態の深度設定領域の境界RRは、ほぼ均等な径方向の離間距離を有することができる。なお、プラズマ処理条件に応じて、深度設定領域の境界RRは、径方向位置に応じて異なる径方向の離間距離を有することもできる。
【0183】
本実施形態においては、上述した実施形態と同等の効果を奏することができる。
【0184】
以下、本発明に係るシャワープレート、プラズマ処理装置の第7実施形態を、図面に基づいて説明する。
図25は、本実施形態におけるプラズマ処理装置のシャワープレートのガス噴出口の配置パターンとホローカソードスリットの深度設定領域の境界配置パターンとを示す平面図である。
本実施形態において上述した第1~第6実施形態と異なるのはガス噴出口および深度設定領域の配置パターンに関する点であり、これ以外の対応する構成要素に関しては、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0185】
本実施形態のプラズマ処理装置1では、図25に示すように、シャワープレート100のプラズマ形成表面100aにおけるガス噴出口102の配置パターンが、第1~第6実施形態とは異なり、隣接した正方形の頂点の位置に対応した構成である。また、第1~第6実施形態とは異なり、ガス噴出口102が頂点に配置される正方形は、矩形のプラズマ形成表面100aの輪郭辺に対する向きが45°を為すように設定される。
つまり、ガス噴出口102が頂点に配置される正方形は、図中で上下方向に延在するプラズマ形成表面100aの輪郭の辺に対して、いずれも、各辺が45°を為すように設定される。
【0186】
本実施形態の深度設定領域は、図25に示すように、ガス噴出口102が頂点に配置される正方形の辺に平行となる部分を有する四角形を境界RRとして設定される。このとき、深度設定領域の境界RRは、プラズマ形成表面100aの輪郭の辺と45°を為す辺を有する。さらに、本実施形態の深度設定領域の境界RRは、ガス噴出口102が頂点に配置される正方形の辺に平行な同心状の複数の正方形として設定される。
【0187】
また、本実施形態の深度設定領域の境界RRは、第1~第6実施形態とは異なり、ほぼ同じ離間距離を有するように設定される。本実施形態の深度設定領域は、第6実施形態と同程度の領域分割数を有するように設定される。具体的には、第1~第6実施形態とは異なり、プラズマ形成表面100aの全域で、均等な径方向距離を有して深度設定領域の境界RRが設定される。
【0188】
また、本実施形態の深度設定領域の境界RRは、ほぼ均等な径方向の離間距離を有することができる。なお、プラズマ処理条件に応じて、深度設定領域の境界RRは、径方向位置に応じて異なる径方向の離間距離を有することもできる。
【0189】
本実施形態においては、上述した実施形態と同等の効果を奏することができる。
【0190】
以下、本発明に係るシャワープレート、プラズマ処理装置の第8実施形態を、図面に基づいて説明する。
図26は、本実施形態におけるプラズマ処理装置のシャワープレートのガス噴出口の配置パターンとホローカソードスリットの深度設定領域の境界配置パターンとを示す平面図である。
本実施形態において上述した第1~第7実施形態と異なるのはガス噴出口および深度設定領域の配置パターンに関する点であり、これ以外の対応する構成要素に関しては、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0191】
本実施形態のプラズマ処理装置1では、図26に示すように、シャワープレート100のプラズマ形成表面100aにおけるガス噴出口102の配置パターンが、第1~第7実施形態とは異なり、同心状の複数の円上に離間して配置される構成である。また、第1~第7実施形態と同様に、プラズマ形成表面100aの輪郭中心と、ガス噴出口102の配置される円の中心とは、一致するように設定される。
【0192】
本実施形態の深度設定領域は、図26に示すように、ガス噴出口102が同心状に配置される円形に平行となる同心円を境界RRとして設定される。このとき、深度設定領域の境界RRは円形であるため、プラズマ形成表面100aの輪郭とは一致しない。さらに、本実施形態の各深度設定領域の内部のホローカソードスリット110も、いずれも深度設定領域の境界RRと同心状に配置された複数の円形に形成される。この配置であれば。ホローカソードスリット110が深度設定領域の境界RRと交差することはない。
【0193】
また、本実施形態の深度設定領域の境界RRは、第7実施形態と同様に、ほぼ同じ離間距離を有するように設定される。本実施形態の深度設定領域は、第7実施形態よりも少ない領域分割数を有するように設定される。
【0194】
また、本実施形態の深度設定領域の境界RRは、ほぼ均等な径方向の離間距離を有することができる。なお、プラズマ処理条件に応じて、深度設定領域の境界RRは、径方向位置に応じて異なる径方向の離間距離を有することもできる。
【0195】
本実施形態においては、上述した実施形態と同等の効果を奏することができる。
【0196】
なお、上記の各実施形態においては、個々の構成をそれぞれ適宜選択して組み合わせた構成とすることが可能である。
また、本明細書で開示した実施形態のうち、複数の要素で構成されているものは、当該複数の要素を一体化してもよく、逆に一つの要素で構成されているものを複数の要素に分けることができる。一体化されているか否かにかかわらず、発明の目的を達成できるように構成されていればよい。
【実施例
【0197】
以下、本発明にかかる実施例を説明する。
【0198】
ここで、本発明におけるシャワープレート、プラズマ処理装置の具体例としておこなう成膜特性の確認試験について説明する。
【0199】
<実験例1>
実験例1として、本発明のホローカソードスリット110が形成されたシャワープレート100での、電子密度の増大確認試験をおこなった。
まず、ホローカソードスリット110の深さ寸法110Dを変化させた際の電子密度変化をシミュレーションにより求めた。
【0200】
ここでは、図8図10に示すように、ホローカソードスリット110が形成されたシャワープレート100での、ホローカソードスリット110の深さ寸法110Dを変化させた際の電子密度の変化を確認する試験における諸元を示す。
【0201】
シャワープレート寸法;1978mm×1628mm
ホローカソードスリット幅方向110W寸法;5.7mm~6.7mm
ホローカソードスリット深さ寸法110D;3mm~8mm
ガス噴出口102配置間隔(ピッチ);一辺7mmの正三角形
プラズマ形成電極間距離100T;18mm
供給電力;9kW
高周波電力周波数;13.56MHz
真空チャンバ内圧力;120Pa
【0202】
この結果を図27にSlitとして示す。
同様に、ホールタイプのホローカソード効果を奏するシャワープレートを用いて、同様に深さ寸法と電子密度の変化を算出した。
ここで、ホールタイプのホローカソード効果を奏するシャワープレートとしては、ガス噴出口の配置は、上記と同様に、一辺7mmの正三角形とし、各ガス噴出口のオリフィスよりもプラズマ形成表面側が、上記の幅方向110W寸法;5.7mm~6.7mmと同じ径寸法を有する個別に分離された円形凹部とした。
この結果を図27にHoleとして示す。
【0203】
この図27に示す結果から、深さ寸法110Dを変化させた際の電子密度の変化は、ホールタイプ(Hole)に比べて、本発明のようなホローカソードスリット110(Slit)の方が大きい変化量となることがわかる。
【0204】
<実験例2>
次に、実験例2として、実験例1で求めた電子密度の変化量の差から、2つのタイプのシャワープレートの間で、面内均一性を維持するために、どの程度の形状の差が生じるかを比較した。ここでは、上述した条件を用いてその比較をおこなった。
【0205】
すなわち、ホールタイプのホローカソード効果を奏するシャワープレートを用いて、均一な電子密度分布を実現するためには、シャワープレートの中心で、上記の深さのうち最も小さい3.0mmとし、同じシャワープレートの外縁部で、上記の深さのうち最も大きい7.5mmとすることが必要である。つまり、ホールタイプのホローカソード効果を奏するシャワープレートにおける、ホールの深さ寸法の差ΔHoleを4.5mmに設定することが必要である。
【0206】
これに対し、本発明のホローカソードスリット110を有するシャワープレート100を用いて、シャワープレート100の中心で、上記のホローカソードスリット110の深さ寸法110Dのうち最も小さい3.0mmとした際に、均一な電子密度分布を実現するために、同じシャワープレート100の外縁部で、同等の均一な電子密度を得るために必要な、ホローカソードスリット110の深さ寸法110Dを算出した。
【0207】
ここで、ホールタイプのホローカソード効果を奏するシャワープレート、および、本発明のホローカソードスリット110を有するシャワープレート100において、いずれも深さを変化させるために、プラズマ形成表面100aの中心を凹ませるものとした。
【0208】
その結果、図27に示す結果から、電子密度を同じにするためには、上記のホローカソードスリット110では、その深さ寸法110Dが4.5mmであることが必要なこと、すなわち、深さ寸法110Dの差ΔSlitが3.5mmであることが必要なことがわかった。
【0209】
つまり、Slitタイプでは深さに対しての電子密度の変化がHoleタイプより大きいことがわかる。また、プラズマ形成表面100aが湾曲した構造の場合、ΔSlitは3.5mmの湾曲で済むのに対し、ΔHoleは4.5mmの湾曲が必要となり、本発明のホローカソードスリット110を有するシャワープレート100は、シャワープレート100のプラズマ形成表面100aの湾曲を小さくできる構造であることがわかる。
【0210】
すなわち、本発明のホローカソードスリット110を有するシャワープレート100では、ホールタイプのホローカソード効果を奏するシャワープレートに比べて、プラズマ形成表面100aに沿ったプラズマ形成電極間距離100Tの差を小さくすることが可能となる。
同様に、平面のプラズマ形成表面100aで異なる深さ寸法110Dのホローカソードスリット110を形成したFlat構造の場合でも、ホールタイプよりも深さの差、すなわち、ガス噴出口102の形成位置変化が小さいことがわかる。
【0211】
なお、平面として形成されてホローカソード効果を有さないプラズマ形成表面を有するシャワープレートでは、ホールタイプよりも、さらにプラズマ形成表面に沿った電子密度の差が大きくなり、これを解消することができない。
【0212】
<実験例3>
次に、実験例3として、異なる組成を有する膜を成膜した際の、それぞれのタイプのシャワープレートにおけるパラメータ依存性を検証した。
ここでは、例として、SiN(窒化シリコン)とSiO(酸化シリコン)との成膜速度とパラメータの依存性とに対する差を示す。
ここで、SiNとSiOとの成膜における成膜条件を、それぞれ図28に示す。
【0213】
SiNとSiOとの成膜において、パラメータとして電極間距離110Tを変化させた際に、成膜速度(Deposition rate)の変化を、それぞれ規格化した状態で、図29に示した。
同様に、SiNとSiOとの成膜において、パラメータとしてRf powerを変化させた際に、成膜速度(Deposition rate)の変化を、それぞれ規格化した状態で、図30に示した。
ここで、Rf powerは、電極間に印加するプラズマ形成電力であるが、成膜条件として、すなわちプラズマ密度、電子密度の変化に対応する。
【0214】
図29の結果から、SiNの成膜速度とSiOの成膜速度とを比べると、横軸である電極間距離の変化に対する縦軸の成膜速度の変化は、SiOの傾きに比べてSiNの傾きが小さい。つまり、SiNの成膜速度は、電極間距離に対する依存性が、SiOの成膜速度に比べて小さいことがわかる。逆に言えば、SiOの成膜速度は、電極間距離に対する依存性が、SiNの成膜速度に比べて大きい。
【0215】
図30の結果から、SiNの成膜速度とSiOの成膜速度とを比べると、横軸であるRf powerの変化に対する縦軸の成膜速度の変化は、SiNの傾きに比べてSiOの傾きが小さい。つまり、SiOの成膜速度は、Rf powerに対する依存性が、SiNの成膜速度に比べて小さいことがわかる。逆に言えば、SiNの成膜速度は、Rf powerに対する依存性が、SiOの成膜速度に比べて大きい。
すなわち、SiNの成膜速度は、SiOの成膜に比べてプラズマ密度、電子密度に依存することがわかる。
【0216】
これら図29の結果と図30の結果とを踏まえて、SiNとSiOとの成膜において、実験例1,2と同様に、プラズマ形成表面100aを湾曲させた構造で、中心よりも外周側のホローカソードスリット110の深さ寸法110Dを深くした、Slitタイプのシャワープレート100を用いることで、電子密度を増大させた際における成膜速度への影響を考える。
ここで、ホローカソードスリット110の深さ寸法110Dは、図10に示した深度設定領域R01~R20を設定し、それぞれの領域毎に設定した。深度設定領域R01~R20におけるホローカソードスリット110の深さ寸法110Dを図31に示す。
ここで、深度設定領域R01~R20を領域1~19として示している。なお、深度設定領域R19と深度設定領域R20とは、同じ深さ寸法110Dとしたため、領域19として示している。
【0217】
すると、プラズマ形成表面100aを湾曲させたシャワープレートの場合、中心に近い内側の電極間距離100Tよりも、周縁に近い外側の電極間距離100Tが相対的に近くなる。
【0218】
同じように、図29の結果と図30の結果とを踏まえて、SiNとSiOとの成膜において、プラズマ形成表面を湾曲させた構造で、中心よりも外周側のホールの深さを深くした、Holeタイプのシャワープレートを用いることで、電子密度を増大させた際における成膜速度への影響を考える。
【0219】
同様に、比較対象として、SiNとSiOとの成膜において、HoleのSlitも形成されていないFlatなプラズマ形成表面を有するFlatタイプのシャワープレートを用いた際における成膜速度への影響を考える。
この場合、成膜速度の変化は、図32に示すように、SiNの成膜における規格化された成膜速度の基板面内位置における変化ΔFlat-SiNは、22.6%となった。同様に、SiOの成膜における規格化された成膜速度の基板面内位置における変化ΔFlat-SiOは、3.3%となった。
ここで、図32、後述する図34および図35の横軸である基板位置(mm)としては、図33に示すように、矩形のガラス基板における対角線上の各点での値を示す。
【0220】
Holeタイプのシャワープレートを用いた場合、成膜速度の変化は、図34に示すように、SiNの成膜における規格化された成膜速度の基板面内位置における変化ΔHole-SiNは、2.8%となった。すなわち、Holeタイプのシャワープレートを用いた場合、基板面内位置におけるSiNの成膜における成膜速度の変化を、Flatタイプのシャワープレートを用いた場合に比べて、大幅に抑制することができた。Holeタイプのシャワープレートを用いた場合、基板面内位置におけるSiNの成膜における成膜速度の変化を、Flatタイプのシャワープレートを用いた場合に比べて、一桁削減することができた。
【0221】
また、Holeタイプのシャワープレートを用いた場合、成膜速度の変化は、図34に示すように、SiOの成膜における規格化された成膜速度の基板面内位置における変化ΔHole-SiOは、5.7%となった。Holeタイプのシャワープレートを用いた場合、基板面内位置におけるSiOの成膜における成膜速度の変化は、Flatタイプのシャワープレートを用いた場合に比べて、SiNよりも抑制できていなかった。
【0222】
これに対し、Slitタイプのシャワープレートを用いた場合、成膜速度の変化は、図35に示すように、SiNの成膜における規格化された成膜速度の基板面内位置における変化ΔSlit-SiNは、2.0%となった。すなわち、Slitタイプのシャワープレートを用いた場合、基板面内位置におけるSiNの成膜における成膜速度の変化を、Flatタイプのシャワープレートを用いた場合に比べて、大幅に抑制することができた。同時に、Slitタイプのシャワープレートを用いた場合、基板面内位置におけるSiNの成膜における成膜速度の変化を、Flatタイプのシャワープレートを用いた場合に比べても、削減することができた。
【0223】
さらに、Slitタイプのシャワープレートを用いた場合、成膜速度の変化は、図35に示すように、SiOの成膜における規格化された成膜速度の基板面内位置における変化ΔSlit-SiOは、2.5%となった。すなわち、Slitタイプのシャワープレートを用いた場合、基板面内位置におけるSiOの成膜における成膜速度の変化を、Flatタイプのシャワープレートを用いた場合に比べて、抑制することができた。Slitタイプのシャワープレートを用いた場合、基板面内位置におけるSiOの成膜における成膜速度の変化は、Holeタイプのシャワープレートを用いた場合に比べて、大幅に削減することができた。
【0224】
つまり、Slitタイプのシャワープレートを用いた場合、SiNの変化ΔSlit-SiNに加えて、SiOの変化ΔSlit-SiOも同時にかつ同程度に3%以下に抑制することが可能であることがわかる。
【0225】
この結果は、プラズマ形成表面100aを湾曲させたことで、中心に近い内側の電極間距離100Tよりも、周縁に近い外側の電極間距離100Tが相対的に近くなったため、HoleタイプではSiOの膜厚分布が悪化してしまうのに対して、Slitタイプでは、Holeタイプに比べて対してプラズマ形成表面の湾曲を小さくすることが可能なため、SiOの膜厚分布が良好であると考えられる。
【0226】
なお、ガス噴出口102の厚さ方向位置を変化させたタイプの構造では、プラズマ形成表面の湾曲がないため、上記の湾曲構造によるSiOの影響はほとんどない。
また、図32図34図35に示したグラフにおけるそれぞれの数値を、データとして図36に再掲する。
【0227】
<実験例4>
次に、実験例4として、異常放電の抑制を確認した。
ここでは、図8図10に示すように、直線状のホローカソードスリット110のみが形成されたシャワープレート100と、図15に示したように、径寸法の異なる六角形のホローカソードスリットが同心状に形成され、かつ、そのホローカソードスリットが折れ曲がってスリット内に角部DDが形成されたシャワープレートとで、異常放電の発生を比較した。
供給電触等の条件を以下に示す。
【0228】
ガス噴出口102配置間隔(ピッチ);一辺7mmの正三角形
周波数;13.56MHz
供給電力;9kW
供給電力;13kW
直線状のホローカソードスリット110では、いずれの供給電力であっても異常放電が発生しなかったのに対し、角部DDが形成されたシャワープレートでは、一部の条件では、異教放電が観察された。
この結果から、本発明の直線状のホローカソードスリット110のみが形成されたシャワープレート100では、異常放電の発生をほぼ抑制することが可能なことがわかる。
【0229】
さらに、供給する処理ガスの種類を変えて、異常放電の発生を検証した。
その条件を以下に示す。なお、電力条件は上記と同じである。
【0230】
・Arのみ
・SiH,NO,Ar
・SiH,NH,N
【0231】
これらの結果から、ガス種によっても、本発明の直線状のホローカソードスリット110のみが形成されたシャワープレート100では、異常放電の発生をほぼ抑制することが可能なことがわかった。
【符号の説明】
【0232】
1…プラズマ処理装置
2a…プラズマ形成空間
2c…ガス供給空間
100…シャワープレート
100a…プラズマ形成表面
100b…ガス供給表面
101…ガス流路
102…ガス噴出口
102a…オリフィス
110…ホローカソードスリット
110D…深さ寸法
R01~R20…深度設定領域
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