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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-10
(45)【発行日】2024-01-18
(54)【発明の名称】自動分析装置および自動分析方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/01 20060101AFI20240111BHJP
   G01N 21/59 20060101ALI20240111BHJP
   G01N 35/00 20060101ALI20240111BHJP
【FI】
G01N21/01 D
G01N21/59 Z
G01N35/00 Z
G01N35/00 E
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022575145
(86)(22)【出願日】2021-12-13
(86)【国際出願番号】 JP2021045749
(87)【国際公開番号】W WO2022153753
(87)【国際公開日】2022-07-21
【審査請求日】2023-05-15
(31)【優先権主張番号】P 2021003284
(32)【優先日】2021-01-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】加呂 光
(72)【発明者】
【氏名】西墻 憲一
【審査官】嶋田 行志
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-037929(JP,A)
【文献】特開平11-037930(JP,A)
【文献】特開平11-037931(JP,A)
【文献】特開2007-236855(JP,A)
【文献】特開平10-160666(JP,A)
【文献】特開平10-054794(JP,A)
【文献】特開平06-317517(JP,A)
【文献】特開2017-090325(JP,A)
【文献】特開平08-136444(JP,A)
【文献】特表2017-501395(JP,A)
【文献】特開2019-066475(JP,A)
【文献】国際公開第2005/088275(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00-G01N 21/61
G01N 35/00-G01N 35/10
G01N 37/00
G01J 3/00-G01J 3/52
G02F 1/00-G02F 1/39
G02F 2/00-G02F 2/02
G02F 7/00
H01S 3/00-H01S 3/30
A61B 5/00-A61B 5/398
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料に向けて光を照射する第1の光源と、
断続的または連続的に周波数が変化する第1の駆動電流を前記第1の光源に供給する駆動回路と、
前記試料を透過した光に基づいて光検出信号を出力する受光器と、
前記光検出信号を、前記第1の駆動電流の周波数に応じて復調し、復調結果に基づいて計測信号を出力する信号処理回路と、を備える
ことを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
前記試料に向けて光を照射する、前記第1の光源とは異なる第2の光源をさらに備え、
前記駆動回路は、前記第1の駆動電流と同一の周波数を有する第2の駆動電流を前記第2の光源に供給する
ことを特徴とする請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項3】
前記第1の駆動電流は、直流成分と交流成分とを有する脈流電流であり、
前記駆動回路は、前記直流成分を制御する直流成分制御部と、前記交流成分を制御する交流成分制御部と、を備え、
前記信号処理回路は、
前記光検出信号の周波数成分のうち、前記交流成分の最低周波数よりも低い遮断周波数以下の成分を減衰させる高帯域通過フィルタを備え、
前記直流成分制御部は、前記第1の光源に対する通電時間の経過とともに前記直流成分を低下させる機能を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項4】
断続的または連続的に周波数が変化する第1の駆動電流を第1の光源に供給することによって前記第1の光源から試料に光を照射する過程と、
前記試料を透過した光に基づいて光検出信号を出力する過程と、
前記光検出信号を、前記第1の駆動電流の周波数に応じて復調し、復調結果に基づいて計測信号を出力する過程と、を有する
ことを特徴とする自動分析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動分析装置および自動分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本技術分野の背景技術として、特許文献1には、波長および変調周波数が互いに異なる光を発する二つの光源からの光を血清に対して照射し、該血清を透過した透過光の強度に基づいて、波長ごとの血清による吸光量を算出する旨が記載されている。また、特許文献2には、複数の光源それぞれを異なる変調周波数で変調し、周波数分離によって所望の信号成分のみを検出する旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-26036号公報
【文献】特開2006-329920号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した技術において、計測結果に対する外乱成分による影響を適切に抑制したいという要望がある。
そこで、本発明の目的は、計測結果に対する外乱成分による影響を適切に抑制できる自動分析装置および自動分析方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため本発明の自動分析装置は、試料に向けて光を照射する第1の光源と、断続的または連続的に周波数が変化する第1の駆動電流を前記第1の光源に供給する駆動回路と、前記試料を透過した光に基づいて光検出信号を出力する受光器と、前記光検出信号を、前記第1の駆動電流の周波数に応じて復調し、復調結果に基づいて計測信号を出力する信号処理回路と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、計測結果に対する外乱成分による影響を適切に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態による自動分析装置のブロック図。
図2図1の要部のブロック図。
図3図2における各部の波形図の例。
図4】第1比較例における各部の波形図の例。
図5】第2実施形態による自動分析装置の要部のブロック図。
図6】第2実施形態の光電流信号に現れる周波数スペクトルを示す図。
図7】第2比較例の光電流信号に現れる周波数スペクトルを示す図。
図8】第3比較例の光電流信号に現れる周波数スペクトルを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[実施形態の前提]
まず、固定された周波数を有する電流で光源を駆動し、放射された光を試料に入射させる場合を想定する。この場合、駆動周波数と同じ周波数をもつ外乱が混入すると、計測結果から駆動周波数成分を分離する際に、外乱成分が分析対象である透過光成分から分離できず、計測結果に誤差が生じる可能性が生じる。また、上述の特許文献2のように、複数の光源を異なる周波数で駆動すると、駆動周波数差に応じた信号がビート信号となり測定値に雑音として重畳する可能性が生じる。また、受光信号の処理の過程で異なる周波数の信号発生器や、周波数分離手段が必要となり、構成の複雑化や、高コスト化を招く問題が生じる。
【0009】
そのため、後述する実施形態は、駆動周波数と同一の周波数を有する外乱が受光器の出力に混入した場合において、外乱成分による影響を低減しようとするものである。また、実施形態は、複数の光源を駆動する際に、回路構成を複雑化することなくビート現象に由来する雑音を低減しようとするものである。
【0010】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態による自動分析装置1のブロック図である。
図1において、自動分析装置1は、主に、サンプルディスク10と、試薬ディスク20と、反応ディスク(インキュベータ)30と、光送信部40と、光受信部41と、光信号制御部42と、コンピュータ54と、を備えている。
【0011】
反応ディスク30は、略円板状に形成され、その上面周縁部には、複数の(例えば100個~200個程度の)反応容器31が配置されている。反応容器31は、透光性材料を略直方体箱状に形成したものである。反応容器31は、恒温槽32により所定温度(例えば37℃)に維持されている。
【0012】
サンプルディスク10上には、血液、尿等の生体サンプルを収容する多数の検体容器11が、図示の例では二重に周方向に沿って載置されている。また、サンプルディスク10の近傍には、サンプル分注機構16が配置されている。このサンプル分注機構16は、可動アーム15と、これに取り付けられたピペットノズル17とを備えている。
【0013】
上記構成により、サンプル分注機構16は、サンプル分注時にはピペットノズル17が可動アーム15により分注位置に移動して、サンプルディスク10の吸入位置に位置する検体容器11から所定量のサンプルを吸入し、そのサンプルを反応ディスク30上の吐出位置にある反応容器31内に吐出する。
【0014】
試薬ディスク20には、略円筒状に形成された試薬保冷庫22が配置されている。この試薬保冷庫22の内部には、複数の試薬ボトル21が試薬ディスク20の周方向に沿って配置されている。各試薬ボトル21には、例えばバーコードのように試薬識別情報を表示したラベル(図示略)が各々貼付されている。
【0015】
各試薬ボトル21には、自動分析装置1により分析され得る分析項目に対応する試薬液が収容されている。また、試薬ディスク20に近接してバーコード読み取り装置27が配置されている。バーコード読み取り装置27は、試薬登録時に各試薬ボトル21の外壁に表示されているバーコードを読み取る。読み取られた試薬情報は、試薬ディスク20上のポジションとともに記憶装置53に登録される。
【0016】
また、試薬ディスク20の近傍には、サンプル分注機構16と概ね同様の機構をなす試薬分注機構25が配置されている。試薬分注時には、試薬ディスク20は、検査項目に応じた試薬ボトル21を試薬分注機構25の付近に配置する。また、反応ディスク30は、対応する反応容器31を試薬分注機構25の付近に配置する。そして、試薬分注機構25は、ピペットノズル25aによって試薬ボトル21から試薬液を吸入し、反応容器31に吐出する。
【0017】
反応ディスク30、試薬ディスク20および試薬分注機構25に囲まれる位置には、攪拌機構36が配置されている。反応容器31内に収容されたサンプルと試薬との反応液(試料)は、この攪拌機構36により攪拌されて反応が促進される。光送信部40は反応ディスク30の中心部付近に配置され、光受信部41は反応ディスク30の外周側に配置されている。攪拌を終えた反応容器31の列は、光送信部40と光受信部41とによって挟まれた測光位置を通るように回転移動する。
【0018】
反応ディスク30は、例えば、45°の回転角毎に間欠駆動され、9秒で1回転する。各反応容器31内におけるサンプルと試薬との反応液は、反応ディスク30の回転動作で測光位置を横切る度に、光送信部40によって光が照射される。1個の反応容器31が測光位置を横切る期間は、例えば10~30msec程度になる。反応液の吸光度に応じて減衰した透過光は、対向配置された光受信部41に入射する。光受信部41は、受信した光を波長毎に分離し、波長毎の強度に応じた光電流信号を光信号制御部42に供給する。
【0019】
次に、図1の自動分析装置1における制御系および信号処理系について簡単に説明する。コンピュータ54は、インターフェース50を介して、サンプル分注制御部19、試薬分注制御部29、および光信号制御部42に接続されている。コンピュータ54は、サンプル分注制御部19に対して指令を送り、サンプルの分注動作を制御する。また、コンピュータ54は、試薬分注制御部29に対して指令を送り、試薬の分注動作を制御する。
【0020】
光信号制御部42は、光受信部41が測光した各波長の光電流信号に基づいて、計測信号VLを生成する。さらに、光信号制御部42は、計測信号VLを数値データに変換し、インターフェース50を介してコンピュータ54に供給する。インターフェース50には、印字するためのプリンタ56、記憶装置である記憶装置53、外部出力メディア(図示せず)、操作指令等を入力するための入力装置52、画面を表示するための表示装置51が接続されている。
【0021】
記憶装置53は、例えばハードディスクメモリまたは外部メモリ等(図示せず)を備えている。記憶装置53には、各操作者のパスワード、各画面の表示レベル、分析パラメータ、分析項目依頼内容、キャリブレーション結果、分析結果等の情報が記憶される。
【0022】
次に、図1の自動分析装置1におけるサンプルの分析動作を説明する。自動分析装置1によって分析可能な項目に関する分析パラメータは、予めキーボード等の入力装置52を介して入力されておリ、記憶装置53に記憶されている。操作者は、表示装置51の操作機能画面を用いて各サンプルに依頼されている検査項目を選択する。
【0023】
この際に、患者IDなどの情報も入力装置52から入力される。各サンプルに対して指示された検査項目を分析するために、サンプル分注機構16のピペットノズル17は、分析パラメータに従って、検体容器11から反応容器31へ所定量のサンプルを分注する。
【0024】
サンプルが分注された反応容器31は、反応ディスク30の回転によって移送され、試薬分注機構25の近傍における試薬受け入れ位置に停止する。試薬分注機構25のピペットノズル25aは、該当する検査項目の分析パラメータに従って、反応容器31に所定量の試薬液を分注する。なお、サンプルと試薬の分注順序は、この例とは逆に、サンプルより試薬が先であってもよい。
【0025】
その後、攪拌機構36により、サンプルと試薬との攪拌が行われ、両者が混合される。この反応容器31が、測光位置を横切る時、光受信部41により反応液の透過光が測光される。測光された透過光は、信号処理回路により光量に対応した数値データに変換され、インターフェース50を経由して、コンピュータ54に取り込まれる。
【0026】
この変換された数値を用い、検査項目毎に指定された分析法によって、予め測定しておいた検量線に基づき、濃度データが算出される。各検査項目の分析結果としての成分濃度データは、プリンタ56や表示装置51の画面に出力される。以上の測定動作が実行される前に、操作者は、分析測定に必要な種々のパラメータの設定や試料の登録を、表示装置51の操作画面を介して行う。また、操作者は、測定後の分析結果を表示装置51上の操作画面により確認する。
【0027】
図2は、図1の要部のブロック図である。特に、図2は、光送信部40、光受信部41および光信号制御部42の詳細を示している。
図2において、光信号制御部42は、光源駆動回路101(駆動回路)と、信号処理回路111と、を備えている。また、光送信部40は、光源102(第1の光源)を備えている。光源102は、駆動電流に対する周波数応答の良いものが好ましく、例えばLED等が適している。
【0028】
反応容器31は、光送信部40からの照射光L3に平行な一対の壁面31aと、照射光L3に対して直交する一対の壁面31bと、を有している。白抜きの矢印34は、反応ディスク30による反応容器31の搬送方向である。また、反応容器31には、サンプルと試薬とを混合した反応液44(試料)が注入されている。また、光受信部41は、受信した光を波長毎に分離する分光器112と、波長毎の強度に応じた光電流信号を出力する受光器113と、を備えている。
【0029】
図3は、図2における各部の波形図の例である。
図3において、各グラフの横軸は時刻tである。また、縦軸のV、IおよびLは、それぞれ電圧、電流および光の強度を表す。図3における各波形は、後述する図2の内容とともに後述する。
【0030】
光源駆動回路101は、直流電源103(直流成分制御部)と、交流電源104(交流成分制御部)と、加算器105と、電圧・電流変換器106と、を備えている。直流電源103は、直流電圧V1を出力し、交流電源104は、交流電圧V2を出力する。図3の1段目に、直流電圧V1および交流電圧V2および光源102に供給される駆動電流I3の波形例を示す。ここで、交流電圧V2の周波数は、f1(最低周波数)~f2(但し、f1<f2)の範囲で、連続的に、または時分割で断続的に変化する。
【0031】
なお、周波数f1,f2は、例えば1kHz~1MHzの範囲にすることが好ましく、10kHz~100kHzの範囲にすると、より好ましい。図3に示す交流電圧V2の例では、時刻t2付近で、振幅が小さくなっている。これは、交流電圧V2の周波数の切替に伴って、振幅が低下したことによる。
【0032】
図2において加算器105は、直流電圧V1と交流電圧V2とを合成し、その結果である脈流電圧V3を出力する。電圧・電流変換器106は、脈流電圧V3に比例した大きさの脈流電流である駆動電流I3(第1の駆動電流)を光源102に供給する。これにより、光源102は、時間的に強度および周波数が変化する照射光L3を発生させる。
【0033】
すなわち、直流電源103は、直流電圧V1によって駆動電流I3の直流成分を制御する機能を有し、交流電源104は、交流電圧V2によって駆動電流I3の交流成分を制御する機能を有する。照射光L3は、測定対象である反応液44が測光位置(図示せず)を横切る際に、該反応液44に照射される。図3の1段目および2段目に駆動電流I3および照射光L3の波形例を示す。図示の例では、駆動電流I3および照射光L3の波形は、略同一になっている。
【0034】
また、図3の2段目には、外乱成分VDの波形例を示している。
図示の例においては、外乱成分VDを電圧(V)のディメンジョンで示しているが、外乱成分VDは、様々なディメンジョンに生じ、自動分析装置1の各部の信号に影響を与え得る。例えば、商用電源による基板パターンや配線への電気的な結合による干渉、他機器から放射され自動分析装置へ混入してくる干渉、装置内におけるモータを動かすためのパルス信号の干渉、試薬保冷庫や恒温槽の温度制御信号の干渉、各機構の動作に伴い周期的に電気的な誘導または容量結合状態が変化することに伴う干渉、ディスクの回転時の振動に伴い生じる光量変化等が、外乱成分VDの例として挙げられる。
【0035】
また、図2において、信号処理回路111は、電流・電圧変換器114と、高帯域通過フィルタ115と、増幅器116と、乗算器117と、位相器118と、低帯域通過フィルタ119と、A/D変換器120と、を備えている。
【0036】
分光器112は、反応液44を通過した光を複数の波長帯域の成分に分光する。受光器113は、分光された各波長帯域の光を、光電流信号IR(光検出信号)に変換する。図3の2段目に光電流信号IRの波形例を示す。なお、受光器113は、波長帯域の数だけ光電流信号IRを出力するが、図3においては、光電流信号IRおよび後段で生じる信号は、一つの波長帯域に対応するものを図示する。また、光電流信号IRの波形に重ねて、理想的光電流信号IRXの波形を破線で示す。ここで、理想的光電流信号IRXとは、外乱成分VDが全く無いものと仮定した、仮想的な光電流信号IRである。換言すれば、実際に観測できる光電流信号IRは、理想的光電流信号IRXに外乱成分VDを重畳したものになる。
【0037】
図2に戻り、電流・電圧変換器114は、光電流信号IRを電圧信号に変換する。高帯域通過フィルタ115は、該電圧信号のうち、所定の遮断周波数ftよりも低い成分を除去し、その結果を交流信号VHとして出力する。ここで、遮断周波数ftは、駆動電流I3の最低周波数(すなわち周波数f1)よりも低い周波数に設定されている。
【0038】
図3の3段目に、交流信号VHの波形例を示す。また、これに重ねて、外乱成分VDが全く無いものと仮定した場合の、理想的交流信号VHXの波形を破線で示す。このように、高帯域通過フィルタ115により、駆動電流I3の直流成分に対応する成分、光電流信号IRに現れるオフセット、電流・電圧変換器114で生じたオフセット等が除去される。
【0039】
図2に戻り、増幅器116は、交流信号VHを増幅し、交流信号VH’として出力する。また、光源駆動回路101は、信号処理回路111に対して同期信号V2Sを供給する。図3の3段目に同期信号V2Sの波形例を示す。図示の例において、同期信号V2Sは、交流電圧V2と同一の波形を有している。
【0040】
図2に戻り、位相器118は、同期信号V2Sの位相を交流信号VH’の位相と一致するように調整し、その結果を同期信号V2S’として出力する。乗算器117は、同期信号V2S’と交流信号VH’とを乗算し、その結果を乗算信号VMとして出力する。但し、増幅器116の出力信号の位相と、同期信号V2Sとの位相とがほぼ一致する場合には、位相器118を省略し、同期信号V2Sをそのまま同期信号V2S’として乗算器117に供給してもよい。
図3の3段目に、乗算信号VMの波形例を示す。また、これに重ねて、外乱成分VDが全く無いものと仮定した場合の、理想的乗算信号VMXの波形を破線で示す。
【0041】
図2の乗算器117において交流信号VH’と同期信号V2S’とを乗算する処理は、両者のパターンマッチを行うことであると考えることができる。すなわち、乗算信号VMは、交流信号VH’の中から、同期信号V2S’との相関の強い光電流成分を抽出した結果であると考えることができる。実際には、図3に示す乗算信号VMの波形例のように、同一周波数の二つの信号を乗算すると、乗算結果は二乗した正弦波に近い波形になり、該周波数の2倍の周波数成分が強く表れる。
【0042】
この相関の強い光電流成分は、反応液44の吸光度に応じて変調された光電流信号である。従って、乗算信号VMは、この光電流信号を二乗した結果に略比例する。従って、乗算信号VMの振幅強度を計測することで、反応液44の吸光度を測定できる。また、乗算信号VMの極大値をプロットする包絡線検波を行い、その包絡線検波結果のレベルを計測しても、反応液44の吸光度を測定できる。
【0043】
図2において低帯域通過フィルタ119は、乗算信号VMを平滑化し、計測信号VLとして出力する。A/D変換器120は、計測信号VLを数値データに変換し、インターフェース50(図1参照)を介してコンピュータ54に供給する。図3の4段目に、計測信号VLの波形例を示す。低帯域通過フィルタ119が乗算信号VMを平滑化する際、外乱成分VDの周波数帯域は、ほぼ除去される。従って、図示の計測信号VLの波形は、外乱成分VDが全く無いものと仮定した場合の、理想的計測信号の波形(図示略)とほぼ同様になる。このように、信号処理回路111は、光電流信号IRを駆動電流I3の周波数f1~f2に応じて復調し、復調結果に基づいて計測信号VLを出力する機能を有する。
【0044】
本実施形態において、駆動電流I3の周波数を時間的に変化させると、駆動電流I3の周波数が外乱成分VDの周波数と一致した瞬間には、乗算信号VMと理想的乗算信号VMXとの間に有意な差が現れる。しかし、それ以外の期間では、外乱成分VDの影響が分散されるため、乗算信号VMには、外乱成分VDの影響がほとんど現れないことが解る。
【0045】
そして、このように周波数f1からf2に変化する乗算信号VMを、低帯域通過フィルタ119に供給し、外乱成分の含まれる乗算信号VMを一定時間で積分することにより、瞬間的に現れる外乱成分が計測信号VLに及ぼす影響を低減することができる。さらに、本実施形態では、外乱成分VDの周波数を事前に調べる必要が無く、同じ回路構成で、様々な環境下における外乱成分VDによる影響を低減することができる。
【0046】
ここで低帯域通過フィルタ119の遮断周波数について述べておく。低帯域通過フィルタ119の遮断周波数は、駆動電流I3の周波数と反応ディスク30(図1参照)の回転速度と、によって決定するとよい。ところで、上述した反応容器31の壁面31a(図2参照)が測光位置を横切る際、光電流信号IRには方形波状のノイズが重畳する。そこで、低帯域通過フィルタ119の遮断周波数は、計測信号VLから、この方形波状のノイズによる影響を充分に抑制できる周波数にしておくことが好ましい。
【0047】
但し、計測信号VLに壁面31aによるノイズが重畳する場合であっても、種々の方法によって、このノイズを除去できる。例えば、測光位置が測光領域すなわち一対の壁面31a(図2参照)の間の領域に入った時点で所定のトリガ信号を出力する検出回路(図示せず)を設けることが考えられる。このトリガ信号を、乗算信号VMにフィードバックすることにより、低帯域通過フィルタ119における平滑化の応答性を改善することができる。また、A/D変換器120において、同様のトリガ信号を起点としてA/D変換を行い、離散データの操作によって計測信号VLの平均化処理を行ってもよい。
【0048】
[第1比較例]
次に、第1比較例について説明する。
第1比較例の構成は、上述した第1実施形態のもの(図1図2)と同様であるが、交流電源104が発生する交流電圧V2の周波数は一定である点が異なる。
図4は、第1比較例における各部の波形図の例である。図4においても、図3と同様に、各グラフの横軸は時刻tである。また、縦軸のV、IおよびLは、それぞれ電圧、電流および光の強度を表す。
【0049】
図4の1段目において、直流電圧V1は、図3に示したものと同様である。また、交流電圧V2Cは、本比較例における交流電圧V2である。交流電圧V2Cは、周波数が一定である点で、図3に示した交流電圧V2とは波形が異なっている。また、駆動電流I3Cは、本比較例における駆動電流I3Cであり、やはり周波数が一定である点で、図3に示した駆動電流I3とは波形が異なっている。
【0050】
図4の2段目において、照射光L3Cは本比較例における照射光L3である。また、外乱成分VDは図3に示したものと同様である。但し、外乱成分VDの周波数は、本比較例における照射光L3Cの脈動周波数と一致していることとする。また、光電流信号IRCは本比較例における光電流信号IRであり、やはり周波数が一定である点で、図3に示した光電流信号IRとは波形が異なっている。また、これに重ねて、外乱成分VDが全く無いものと仮定した場合の、理想的光電流信号IRCXの波形を破線で示す。
【0051】
図4の3段目において、交流信号VHCは本比較例における交流信号VHであり、やはり周波数が一定である点で、図3に示した交流信号VHとは波形が異なっている。また、同期信号V2SCは、本比較例における同期信号V2Sである。図示の例において、同期信号V2Sは、交流電圧V2と同一の波形を有している。
【0052】
また、乗算信号VMCは本比較例における乗算信号VMであり、やはり周波数が一定である点で、図3に示した乗算信号VMとは波形が異なっている。また、交流信号VHCおよび乗算信号VMCの各グラフに重ねて、外乱成分VDが全く無いものと仮定した場合の、理想的交流信号VHCXおよび理想的乗算信号VMCXの波形を破線で示す。
【0053】
上述のように、本比較例においては、外乱成分VDの周波数は、照射光L3Cの脈動周波数と一致している。従って、交流信号VHCと理想的交流信号VHCXとの関係は、交流信号VHCの各周期において同様なものになる。例えば、図示の例では、交流信号VHCの振幅は、何れの周期においても理想的交流信号VHCXの振幅よりも大きくなっている。この結果、乗算信号VMCの各周期における極大値は、何れの周期においても理想的乗算信号VMCXの極大値よりも高くなっている。
【0054】
図4の4段目において、計測信号VLCは本比較例における計測信号VLである。また、計測信号VLCのグラフに重ねて、外乱成分VDが全く無いものと仮定した場合の、理想的計測信号VLCXの波形を破線で示す。上述した3段目の乗算信号VMCおよび理想的乗算信号VMCXの関係により、計測信号VLCには、理想的計測信号VLCXに対して有意な差が現れている。この現れている差は、計測信号VLCの誤差になる。このように、第1比較例においては、外乱成分VDの周波数が駆動電流I3Cの脈動周波数に一致(または近接)すると、計測信号VLCに対して有意な誤差が生じるという問題がある。
【0055】
[第2実施形態]
図5は、第2実施形態による自動分析装置2の要部のブロック図である。なお、以下の説明において、上述した第1実施形態の各部に対応する部分には同一の符号を付し、その説明を省略する場合がある。
自動分析装置2の全体構成は、上述した第1実施形態の自動分析装置1(図1参照)のものと同様である。但し、本実施形態においては、第1実施形態における光源駆動回路101および光送信部40に代えて、図5に示す光源駆動回路151(駆動回路)および光送信部140が設けられている。
【0056】
光送信部140は、上述した光源102に加えて、他の光源(第2の光源)152を備えている。光源102,152は、放射光の波長分布が異なるものを適用すると好ましい。これにより、より広い波長帯域における計測結果を取得できる。また、光源駆動回路151は、第1実施形態の光源駆動回路101(図2参照)と同様の構成要素103~106に加えて、直流電源153と、加算器155と、電圧・電流変換器156と、を備えている。
【0057】
直流電源153は直流電圧V21を出力する。加算器155は直流電圧V21と交流電圧V2とを合成し、その結果である脈流電圧V23を出力する。電圧・電流変換器156は、脈流電圧V23に比例した大きさの脈流電流である駆動電流I23(第2の駆動電流)を光源152に供給する。これにより、光源152は、光源102と同様に、時間的に強度および周波数が変化する照射光を発生させる。上記構成によれば、光源102,152は、共に交流電圧V2に基づいて、同一周波数の時間的変化で発光する。
【0058】
図6は、第2実施形態の光電流信号IRに現れる周波数スペクトルSP1を示す図である。
交流電圧V2が周波数f1~f2の範囲で変化すると、周波数スペクトルSP1には、ビート周波数fb1,fb2等の周波数成分が発生する。ここで、ビート周波数fb1,fb2は、「fb1=f2-f1,fb2=f1+f2」となる値である。
【0059】
但し、図示のように、ビート周波数fb1,fb2は周波数f1,f2から充分に離れている。従って、例えば高帯域通過フィルタ115の遮断周波数ftを図示のように設定すると、交流信号VHからビート周波数fb1の成分を除去できる。また、ビート周波数fb2の成分は、同期信号V2S(図5参照)の周波数f1~f2に対して相関性が低い。従って、該成分は、乗算器117におけるパターンマッチおよび低帯域通過フィルタ119による平滑処理によって充分に低減できる。
【0060】
本実施形態において、光源102,152(図5参照)は相互に同一周波数の時間的変化を伴いながら発光する。従って、それぞれの光源102,152から照射され反応液44を透過した各透過光による光電流信号には、ビート現象に基づく周波数差の成分が現れにくい。そして、双方の透過光に基づく光電流信号は、同一周波数の時間的変化が現れるため、共通の高帯域通過フィルタ115、乗算器117、低帯域通過フィルタ119等を用いて、計測信号VLを取得することができる。
【0061】
光源102,152に供給される駆動電流の「周波数を揃える」という観点では、例えば交流電源104と同種の交流電源をさらに追加し、各々が出力する交流電圧を加算器105,155にそれぞれ供給することも考えられる。しかし、複数の同種の交流電源を適用すると、製造過程におけるばらつきや、使用条件等によって、僅かに周波数差が生じるという問題が発生する。従って、本実施形態のように、1台の交流電源104が出力した共通の交流電圧V2を、加算器105,155の双方に供給すると、この種の問題を回避できる点で好ましいと考えられる。以上のように、本実施形態によれば、複数の光源102,152を用いて広い波長帯域における計測結果を取得しつつ、ビート現象による影響を十分に抑制でき、簡易に光の強度測定を実現することができる。
【0062】
[第2比較例]
次に、第2比較例について説明する。
第2比較例の構成については図示を省略するが、第2比較例においては、第2実施形態と同様の光送信部140(図5参照)が適用される。そして、光源102に対して、脈動周波数がf1に固定された脈流の駆動電流が供給される。また、光源152には、脈動周波数がf3(但し、f1<f3)に固定された脈流の駆動電流が供給される。上述した以外の第2比較例の構成は、第2実施形態のもの(図1図5参照)と同様である。
【0063】
図7は、第2比較例の光電流信号IRに現れる周波数スペクトルSP2を示す図である。
光源102に供給される駆動電流の脈動周波数がf1であり、光源152に供給される駆動電流の脈動周波数がf3であるため、周波数スペクトルSP2には、ビート周波数fb4,fb5等の周波数成分が発生する。ここで、ビート周波数fb4,fb5は、「fb4=f3-f1,fb5=f1+f3」となる値である。
【0064】
図7に示すように、ビート周波数fb4,fb5は、周波数f1,f3から充分に離れている。従って、上述の第2実施形態と同様に、交流信号VHまたは乗算信号VMから、ビート周波数fb4,fb5の成分を除去できる。しかし、外乱VD(図4の2段目参照)の周波数が周波数f1またはf3に一致すると、上述した第1比較例と同様に、計測信号VLに誤差が混入するという問題が発生する。
【0065】
[第3比較例]
次に、第3比較例について説明する。
第3比較例の構成については図示を省略するが、第3比較例においては、第2実施形態と同様の光送信部140(図5参照)が適用される。そして、光源102に対して、上述した第2実施形態と同様に、脈動周波数がf1~f2の範囲で変化する駆動電流が供給される。一方、光源152には、脈動周波数がf3~f4(但し、f1<f2<f3<f4)の範囲で変化する駆動電流が供給される。上述した以外の第3比較例の構成は、第2実施形態のもの(図1図5参照)と同様である。
【0066】
図8は、第3比較例の光電流信号IRに現れる周波数スペクトルSP3を示す図である。
第3比較例においては、周波数f1,f2,f3,f4の相互関係に基づいて、広い帯域に渡ってビート周波数成分が発生する。特に、図中のビート周波数fb6,fb7は、例えば「fb6=f4-f1,fb7=f1+f2」となる値であり、周波数f1~f4の範囲に近接している。
【0067】
従って、この第3比較例においては、高帯域通過フィルタ115の遮断周波数ftを図示のように設定すると、十分にビート周波数成分を低減できなくなり、計測信号VLにおいて、ビート現象による誤差が大きくなる。また、高帯域通過フィルタ115の遮断周波数ftをビート周波数fb6よりも高くすると、高帯域通過フィルタ115において、周波数f1付近の成分も減衰されることになり、やはり計測信号VLにおける誤差が大きくなる。
【0068】
また、本比較例では、光源102,152に対して異なる周波数の駆動電流を供給するため、交流電源104に相当する電源を周波数毎に設ける必要が生じる。また、光受信部41または信号処理回路111(図5参照)には、これら周波数を分離する手段が必要になる。従って、本比較例では、装置の構成が複雑化し、高コスト化するという問題も生じる。
【0069】
[第3実施形態]
次に、第3実施形態による自動分析装置について説明する。なお、以下の説明において、上述した他の実施形態の各部に対応する部分には同一の符号を付し、その説明を省略する場合がある。
第3実施形態による自動分析装置の構成は、上述した第1実施形態の自動分析装置1(図1図2参照)または第2実施形態の自動分析装置2(図5参照)のものと同様である。但し、上述した第1,第2実施形態において、直流電源103,153が出力する直流電圧V1,V21は一定値であったのに対して、本実施形態においては、直流電源103,153が直流電圧V1,V21を変化させる点が異なる。
【0070】
すなわち、本実施形態における直流電源103,153は、光源102,152に通電を開始するタイミングでは、直流電圧V1,V21を比較的高い第1のレベルに設定する。その後、光源102,152に対する通電時間が経過するに従って直流電圧V1,V21のレベルを徐々に低下させ、通電時間が所定時間に達すると、直流電圧V1,V21を第1のレベルよりも低い第2のレベルに設定する。
【0071】
ここで、直流電圧V1,V21を上述のように変化させる意義について説明する。光源102,152の寿命を長くするためには、駆動電流I3,I23の直流成分を、所期の発光特性が得られる範囲で、なるべく小さくすることが好ましい。しかし、直流成分を抑制すると、光源102,152の温度が一定温度に達するまでに長時間を要するようになる。光源102,152の発光特性はこれらの素子温度に影響される。従って、駆動電流I3,I23の直流成分を単に抑制すると、光源102,152の発光特性が安定するまでに長時間を要するという問題が生じる。
【0072】
本実施形態においては、光源102,152に通電を開始するタイミングでは、駆動電流I3,I23の直流成分を大きくするため、上述した一定温度付近にまで、光源102,152の温度を速やかに上昇させることができる。そして、その後に直流成分のレベルを徐々に低下させ、通電時間が所定時間に達すると、第2のレベルに対応する大きさに直流成分を抑制する。これにより、本実施形態によれば、光源102,152の発光特性を速やかに安定させることができ、かつ、光源102,152の長寿命化を図ることができる。
【0073】
[実施形態の効果]
以上の実施形態によれば、自動分析装置1は、試料(44)に向けて光を照射する第1の光源(102)と、断続的または連続的に周波数(f1~f2)が変化する第1の駆動電流(I3)を第1の光源(102)に供給する駆動回路(101)と、試料(44)を透過した光に基づいて光検出信号(IR)を出力する受光器113と、光検出信号(IR)を、第1の駆動電流(I3)の周波数(f1~f2)に応じて復調し、復調結果に基づいて計測信号VLを出力する信号処理回路111と、を備える。
【0074】
また、実施形態は、他の観点においては、断続的または連続的に周波数(f1~f2)が変化する第1の駆動電流(I3)を第1の光源(102)に供給することによって第1の光源(102)から試料(44)に光を照射する過程と、試料(44)を透過した光に基づいて光検出信号(IR)を出力する過程と、光検出信号(IR)を、第1の駆動電流(I3)の周波数(f1~f2)に応じて復調し、復調結果に基づいて計測信号VLを出力する過程と、を有する自動分析方法である。これにより、実施形態においては、光検出信号(IR)に外乱成分VDが混入した場合であっても、計測信号VLにおいて外乱成分VDによる影響を適切に抑制できる。
【0075】
また、自動分析装置2は、試料(44)に向けて光を照射する、第1の光源(102)とは異なる第2の光源(152)をさらに備え、駆動回路(151)は、第1の駆動電流(I3)と同一の周波数(f1~f2)を有する第2の駆動電流(I23)を第2の光源(152)に供給すると一層好ましい。これにより、複数の光源を用いて広い波長帯域における計測結果を取得しつつ、ビート現象による影響を適切に抑制できる。
【0076】
また、第1の駆動電流(I3)は、直流成分と交流成分とを有する脈流電流であり、駆動回路(101)は、直流成分を制御する直流成分制御部(103)と、交流成分を制御する交流成分制御部(104)と、を備え、信号処理回路111は、光検出信号(IR)の周波数成分のうち、交流成分の最低周波数(f1)よりも低い遮断周波数ft以下の成分を減衰させる高帯域通過フィルタ115を備え、直流成分制御部(103)は、第1の光源(102)に対する通電時間の経過とともに直流成分を低下させる機能を有すると一層好ましい。これにより、第1の光源(102)を速やかに加熱して発光特性を速やかに安定させることができ、かつ、その後は第1の光源(102)に供給する電流を抑制して第1の光源(102)の長寿命化を図ることができる。
【0077】
[変形例]
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。上述した実施形態は本発明を理解しやすく説明するために例示したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について削除し、もしくは他の構成の追加・置換をすることが可能である。また、図中に示した制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上で必要な全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。上記実施形態に対して可能な変形は、例えば以下のようなものである。
【0078】
(1)上記各実施形態においては試料の例として反応液44を適用した例を説明した。しかし、試料は反応液44に限られず、種々の固体、液体または気体であってもよい。
【符号の説明】
【0079】
1,2 自動分析装置
44 反応液(試料)
101,151 光源駆動回路(駆動回路)
102 光源(第1の光源)
103 直流電源(直流成分制御部)
104 交流電源(交流成分制御部)
111 信号処理回路
113 受光器
115 高帯域通過フィルタ
152 光源(第2の光源)
I3 駆動電流(第1の駆動電流)
IR 光電流信号(光検出信号)
VL 計測信号
f1 周波数(最低周波数)
f2,f3,f4 周波数
ft 遮断周波数
I23 駆動電流(第2の駆動電流)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8