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特許7417917パラレルリンク機構およびリンク作動装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-11
(45)【発行日】2024-01-19
(54)【発明の名称】パラレルリンク機構およびリンク作動装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 21/46 20060101AFI20240112BHJP
   B25J 11/00 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
F16H21/46
B25J11/00 D
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019123478
(22)【出願日】2019-07-02
(65)【公開番号】P2021008926
(43)【公開日】2021-01-28
【審査請求日】2022-06-27
(73)【特許権者】
【識別番号】504174135
【氏名又は名称】国立大学法人九州工業大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 朗弘
(72)【発明者】
【氏名】福丸 浩史
(72)【発明者】
【氏名】野瀬 賢蔵
【審査官】増岡 亘
(56)【参考文献】
【文献】特表2001-520941(JP,A)
【文献】特開2018-75675(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 21/46
B25J 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基端部材と、
3つ以上のリンク機構とを備え、
前記3つ以上のリンク機構は、前記基端部材と先端部材とを接続するように構成され、
前記3つ以上のリンク機構は、前記先端部材の前記基端部材に対する姿勢を変更可能であり、
前記3つ以上のリンク機構のそれぞれは、
前記基端部材に第1回転対偶部において回転可能に接続された第1リンク部材と、
前記第1リンク部材に第2回転対偶部において回転可能に接続された第2リンク部材と、
前記第2リンク部材に第3回転対偶部において回転可能に接続された第3リンク部材と、
前記第3リンク部材に第4回転対偶部において回転可能に接続された第4リンク部材とを含み、
前記第4リンク部材は、前記先端部材に第5回転対偶部において回転可能に接続されるように構成され、
前記3つ以上のリンク機構において、前記第1回転対偶部の第1中心軸と、前記第2回転対偶部の第2中心軸とは球面リンク中心点で交わり、
前記3つ以上のリンク機構のそれぞれの前記第5回転対偶部が互いに異なる位置に独立に配置され
前記3つ以上のリンク機構のそれぞれに含まれる前記第4回転対偶部の第4中心軸に垂直な直線のうち前記第5回転対偶部の第5中心軸に垂直な直線と重なる直線である第5中心軸垂線同士が垂線交点で交わる、パラレルリンク機構。
【請求項2】
前記3つ以上のリンク機構のそれぞれに含まれる前記第5回転対偶部の前記第5中心軸同士が互いに平行である、請求項に記載のパラレルリンク機構。
【請求項3】
前記3つ以上のリンク機構のそれぞれに含まれる前記第5中心軸と前記第2中心軸とが中心軸交点で交わる、請求項1または2に記載のパラレルリンク機構。
【請求項4】
前記先端部材には、前記3つ以上のリンク機構のそれぞれに含まれる前記第5回転対偶部の平面視における内側に先端部材貫通孔が形成されている、請求項1~3のいずれか1項に記載のパラレルリンク機構。
【請求項5】
前記第1~第5回転対偶部の少なくともいずれか1つは軸受を含む、請求項1~のいずれか1項に記載のパラレルリンク機構。
【請求項6】
請求項1~のいずれか1項に記載のパラレルリンク機構と、
前記3つ以上のリンク機構のうち少なくとも3つのリンク機構に設置され、前記基端部材に対する前記先端部材の姿勢を任意に変更する姿勢制御用駆動源とを備える、リンク作動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、パラレルリンク機構およびリンク作動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、医療機器や産業機器などの各種装置に用いられるパラレルリンク機構が知られている。そのようなパラレルリンク機構は、たとえば特開2000-94245号公報(特許文献1)および米国特許第5,893,296号明細書(特許文献2)に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-94245号公報
【文献】米国特許第5,893,296号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特開2000-94245号公報のパラレルリンク機構は、構成が比較的簡単であるが、各リンクの作動角が小さい。このため、トラベリングプレートの作動範囲を大きく設定すると、リンク長が長くなることにより、機構全体の寸法が大きくなって装置の大型化を招くという問題がある。
【0005】
米国特許第5,893,296号明細書のパラレルリンク機構は、基端部材としての基端側のリンクハブと先端部材としての先端側のリンクハブとを、4節連鎖の3組以上のリンク機構を介して連結した構成としている。米国特許第5,893,296号明細書のパラレルリンク機構では、基端部材に対し先端部材の姿勢が変更可能になっている。米国特許第5,893,296号明細書のパラレルリンク機構は、コンパクトでありながら、高速、高精度で、広範な作動範囲の動作が可能である。
【0006】
しかし、米国特許第5,893,296号明細書のパラレルリンク機構は、先端部材の位置により当該先端部材の移動経路の回転半径が変化するとともに、当該先端部材の回転移動における回転中心の位置を固定できない。すなわち、基端部材から見て、先端部材は固定された回転中心から一定の半径を有する球面上を移動できないため、先端部材の動作をイメージしにくいという課題があった。さらに、先端部材は基端部材に対して回転2自由度で動作するため、先端部材の回転移動と独立して当該先端部材の回転半径を制御することができないという課題もあった。そのうえ、たとえば先端部材に作業体であるエンドエフェクタを搭載して動作させる場合に、慣性モーメントが大きくなり振動が大きくなる結果、パラレルリンク機構の寿命を低下させる恐れがあった。
【0007】
本発明は以上の課題に鑑みなされたものである。その目的は、固定された回転中心から一定の半径を有する球面上を先端部材が移動可能であるとともに、当該先端部材の回転半径を回転移動とは独立して制御可能であり、さらに振動を抑制し寿命を向上することが可能なパラレルリンク機構およびリンク作動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に従ったパラレルリンク機構は、基端部材と、3つ以上のリンク機構とを備える。3つ以上のリンク機構は、基端部材と先端部材とを接続するように構成される。3つ以上のリンク機構は、先端部材の基端部材に対する姿勢を変更可能である。3つ以上のリンク機構のそれぞれは、第1~第4リンク部材を含む。第1リンク部材は、基端部材に第1回転対偶部において回転可能に接続される。第2リンク部材は、第1リンク部材に第2回転対偶部において回転可能に接続される。第3リンク部材は、第2リンク部材に第3回転対偶部において回転可能に接続される。第4リンク部材は、第3リンク部材に第4回転対偶部において回転可能に接続される。第4リンク部材は、さらに、先端部材に第5回転対偶部において回転可能に接続されるように構成される。3つ以上のリンク機構において、第1回転対偶部の第1中心軸と、第2回転対偶部の第2中心軸とは球面リンク中心点で交わる。3つ以上のリンク機構のそれぞれの第5回転対偶部が互いに異なる位置に独立に配置される。
【0009】
本開示に従ったリンク作動装置は、上記パラレルリンク機構と、姿勢制御用駆動源とを備える。姿勢制御用駆動源は、3つ以上のリンク機構のうち少なくとも3つのリンク機構に設置され、基端部材に対する先端部材の姿勢を任意に変更する。
【発明の効果】
【0010】
上記によれば、固定された回転中心から一定の半径を有する球面上を先端部材が移動可能であるとともに、当該先端部材の回転半径を回転移動とは独立して制御可能であり、さらに振動を抑制し寿命を向上することが可能なパラレルリンク機構およびリンク作動装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施の形態1に係るパラレルリンク機構の構成を示す斜視模式図である。
図2図1に示したパラレルリンク機構の正面模式図である。
図3図2の線分III-IIIにおける断面模式図である。
図4図3の線分IV-IVにおける断面模式図である。
図5図2の線分V-Vにおける断面模式図である。
図6図1に示したパラレルリンク機構において先端部材の姿勢を変更した状態を示す斜視模式図である。
図7図1に示したパラレルリンク機構において先端部材の姿勢を変更した状態を図6とは異なる角度から見た態様を示す斜視模式図である。
図8図7の線分VIII-VIIIにおける断面模式図である。
図9】実施の形態1に係るパラレルリンク機構の先端部材貫通孔にエンドエフェクタが取り付けられた態様の第1例を示す斜視模式図である。
図10】実施の形態1に係るパラレルリンク機構の先端部材貫通孔にエンドエフェクタが取り付けられた態様の第2例を示す斜視模式図である。
図11】実施の形態1に係るパラレルリンク機構の先端部材貫通孔にエンドエフェクタが取り付けられた態様の第3例を示す斜視模式図である。
図12】実施の形態2に係るパラレルリンク機構の断面模式図である。
図13図12の線分XIII-XIIIにおける断面模式図である。
図14図13中の点線で囲まれた領域XIVの拡大断面模式図である。
図15】実施の形態3に係るリンク作動装置の斜視模式図である。
図16】実施の形態4に係るリンク作動装置の斜視模式図である。
図17】実施の形態5に係るリンク作動装置の斜視模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には、同一の参照番号を付し、その説明は繰り返さない。
【0013】
(実施の形態1)
<パラレルリンク機構の構成>
はじめに実施の形態1に係るパラレルリンク機構の必須構成について簡単に説明する。図1は、実施の形態1に係るパラレルリンク機構の構成を示す斜視模式図である。図1を参照して、実施の形態1のパラレルリンク機構10は概略、3つのリンク機構11A,11B,11Cを有している。リンク機構11Aとリンク機構11Bとリンク機構11Cとはそれぞれ、第5回転対偶部R5を有している。リンク機構11A,11B,11Cのそれぞれの第5回転対偶部R5は、互いに異なる位置に独立に配置されている。これがパラレルリンク機構10の必須構成である。
【0014】
図2は、図1に示したパラレルリンク機構の正面模式図である。図3は、図2の線分III-IIIにおける断面模式図である。図4は、図3の線分IV-IVにおける断面模式図である。図5は、図2の線分V-Vにおける断面模式図である。以下、図1図5を用いて、パラレルリンク機構10の構成について詳細に説明する。
【0015】
図1図5に示したパラレルリンク機構10は、基端部材1と、先端部材81と、3つのリンク機構11A,11B,11Cとを備える。基端部材1は平面形状が円形状の板状体である。なお、基端部材1の形状は任意の形状とすることができる。たとえば基端部材1の平面形状を四角形状、三角形状などの多角形状、あるいは楕円形状、半円形状などとしてもよい。また、リンク機構11A~11Cの数は3以上であればよく、たとえば4または5としてもよい。
【0016】
3つのリンク機構11は、先端部材8の基端部材1に対する姿勢を変更可能な状態で、基端部材1と先端部材81とを接続する。3つのリンク機構11のそれぞれは、第1リンク部材4a,4b,4c、第2リンク部材6a,6b,6c、第3リンク部材7a,7b,7cおよび第4リンク部材8a,8b,8cを含む。第1リンク部材4a、4b、4cは、基端部材1に第1回転対偶部R1において回転可能に接続される。具体的には、基端部材1の外周部に基端接続部2a,2b,2cが設置されている。基端接続部2a,2b,2cは、それぞれ基端部材1の表面に固定されたベース部21と、当該ベース部21から外周側に突出するように形成された軸部22とを含む。当該軸部22は第1リンク部材4a,4b,4cの貫通孔43に挿入されている。第1リンク部材4a,4b,4cの貫通孔43から突出した軸部22の先端部には固定部材の一例であるナット3a,3b,3cが固定されている。第1リンク部材4a,4b,4cは軸部22を中心に回転可能になっている。軸部22と当該軸部22が挿入された貫通孔43が形成された第1リンク部材4a,4b,4cの部分とにより第1回転対偶部R1が構成される。
【0017】
第1リンク部材4a,4b,4cは円弧状に延びる棒状の部材である。第1リンク部材4a,4b,4cの一方端部に上記貫通孔43が形成されている。図3に示すように、基端部材1の表面に垂直な方向から見た平面視において、第1リンク部材4a,4b,4cの内周側表面は曲面状になっている。上記平面視における当該内周側表面の曲率半径は、基端部材1の外周の曲率半径より小さい。なお、上記内周側表面の曲率半径は、基端部材1の外周の曲率半径と同じでもよく、当該外周の曲率半径より大きくてもよい。また、第1リンク部材4a,4b,4cの形状は円弧状以外の形状でもよい。たとえば、第1リンク部材4a,4b,4cの形状は直線状に延びる棒状であってもよいし、屈曲部を含む棒状であってもよい。図3に示すように、第1リンク部材4a,4b,4cは基端部材1の外周より外側に配置されている。
【0018】
第1リンク部材4a,4b,4cにおいて貫通孔43が形成された一方端部と反対側に位置する他方端部41には、軸部42が形成されている。軸部42は基端部材1の外周から外側に向けて延びるように形成されている。軸部42は第1リンク部材4a,4b,4cの基端部材1に面する内周側側面と反対側の外周側側面に形成されている。軸部42は第2リンク部材6a,6b,6cの貫通孔63に挿入されている。第2リンク部材6a,6b,6cの貫通孔63から突出した軸部42の先端部には固定部材の一例であるナット5a,5b,5cが固定されている。第2リンク部材6a,6b,6cは軸部42を中心に回転可能になっている。軸部42と当該軸部42が挿入された貫通孔63が形成されている第2リンク部材6a,6b,6cの部分とにより第2回転対偶部R2が構成される。つまり、第2リンク部材6a,6b,6cは、第1リンク部材4a,4b,4cに第2回転対偶部R2において回転可能に接続される。
【0019】
基端接続部2a,2b,2cにおける軸部22の第1中心軸15a,15b,15cは第1回転対偶部R1の中心軸に相当する。第1リンク部材4a,4b,4cの他方端部41における軸部42の第2中心軸16a,16b,16cは第2回転対偶部R2の中心軸に相当する。図1および図3に示すように、上記軸部22の第1中心軸15a,15b,15cと軸部42の第2中心軸16a,16b,16cとは球面リンク中心点30において交差する。この交差は必要条件であり、球面リンク中心点30に、上記第1回転対偶部R1の第1中心軸15a,15b,15cと第2回転対偶部R2の第2中心軸16a,16b,16cが交差するならば、第1回転対偶部R1および第2回転対偶部R2の配置は任意に変更可能である。
【0020】
第2リンク部材6a,6b,6cは直線状に延びる棒状の部材である。第2リンク部材6a,6b,6cの一方端部に上記貫通孔63が形成されている。第2リンク部材6a,6b,6cの形状は直線状に延びる棒状以外の任意の形状としてもよい。たとえば、第2リンク部材6a,6b,6cを円弧状に延びる棒状体などとしてもよい。図1および図3に示すように、第1リンク部材4a,4b,4cが基端部材1の表面に沿って延びるように配置された状態で、第2リンク部材6a,6b,6cは基端部材1の外周より外側に配置される。なお、第2リンク部材6a,6b,6cは基端部材1の外周と重なる位置に配置されてもよく、基端部材1の外周より内側に配置されてもよい。
【0021】
第2リンク部材6a,6b,6cにおいて貫通孔63が形成された一方端部と反対側に位置する他方端部には、第3リンク部材7a,7b,7cの一方端部を受け入れる凹部が形成されている。第2リンク部材6a,6b,6cの他方端部には、凹部に面する位置に貫通孔が形成されている。第3リンク部材7a,7b,7cの一方端部にも貫通孔が形成されている。第2リンク部材6a,6b,6cの他方端部における貫通孔と、第3リンク部材7a,7b,7cの一方端部における貫通孔73とは直線状に並ぶように配置される。第2リンク部材6a,6b,6cの他方端部における貫通孔と、第3リンク部材7a,7b,7cの一方端部における貫通孔73とには連結部材13a,13b,13cが挿入されている。連結部材13a,13b,13cは第2リンク部材6a,6b,6cと第3リンク部材7a,7b,7cとを相対的に回転可能な状態で連結する。連結部材13a,13b,13cはたとえばボルトおよびナットである。連結部材13a,13b,13cと第2リンク部材6a,6b,6cの他方端部と第3リンク部材7a,7b,7cの一方端部とにより第3回転対偶部R3が構成される。つまり、第2リンク部材6a,6b,6cと第3リンク部材7a,7b,7cとは第3回転対偶部R3において回転可能に接続される。
【0022】
連結部材13a,13b,13cの第3中心軸17a,17b,17cは第3回転対偶部R3における中心軸に相当する。第3中心軸17a,17b,17cはそれぞれ第2中心軸16a,16b,16cと直交する方向に延びる。したがって第2リンク部材6a,6b,6cは、その一方端部側の第2回転対偶部R2の第2中心軸16a,16b,16cが、その他方端部側の第3回転対偶部R3の第3中心軸17a,17b,17cのそれぞれと直交するように構成されている。
【0023】
第3リンク部材7a,7b,7cは直線状に延びる棒状の部材である。第3リンク部材7a,7b,7cの一方端部に上記貫通孔73が形成されている。第3リンク部材7a,7b,7cの形状は直線状に延びる棒状以外の任意の形状としてもよい。たとえば、第3リンク部材7a,7b,7cを円弧状に延びる棒状体などとしてもよい。
【0024】
第3リンク部材7a,7b,7cにおいて貫通孔73が形成された一方端部と反対側に位置する他方端部には、貫通孔74が形成されている。第4リンク部材8a,8b,8cには、第3リンク部材7a,7b,7cの他方端部を受け入れる凹部が形成されている。第4リンク部材8a,8b,8cの上記凹部に面する壁部83には、凹部に繋がる貫通孔が形成されている。第3リンク部材7a,7b,7cの他方端部における貫通孔74と、第4リンク部材8a,8b,8cの壁部83に形成された貫通孔とは直線状に並ぶように配置される。第3リンク部材7a,7b,7cの他方端部における貫通孔74と、第4リンク部材8a,8b,8cの壁部83における貫通孔とには連結部材14a,14b、14cが挿入されている。連結部材14a,14b,14cは第3リンク部材7a,7b,7cと第4リンク部材8a,8b,8cとを相対的に回転可能な状態で連結する。連結部材14a,14b,14cはたとえばボルトおよびナットである。連結部材14a,14b,14cと第3リンク部材7a,7b,7cの他方端部と第4リンク部材8a,8b,8cの壁部83とにより第4回転対偶部R4が構成される。つまり、第3リンク部材7a,7b,7cと第4リンク部材8a,8b,8cとは第4回転対偶部R4において回転可能に接続される。
【0025】
連結部材14a,14b,14cの第4中心軸18a、18b、18cは第4回転対偶部R4における中心軸に相当する。第4中心軸18a,18b,18cはそれぞれ第3中心軸17a,17b,17cと平行な方向に延びる。すなわち第4中心軸18a,18b,18cは第3中心軸17a,17b,17cと同様に、それぞれ第2中心軸16a,16b,16cと直交する方向に延びる。
【0026】
第4リンク部材8a,8b,8cを平面視したときの外周側に、第3リンク部材7a,7b,7cと接続されるための壁部83が形成されている。第4リンク部材8a,8b,8cは基端部材1の主表面に沿う方向、すなわち平面視において基端部材1の外周側から内側への方向に沿って延びている。図4に示すように、第4リンク部材8a,8b,8cは、その内側の領域(図4における左側)において、その外側の領域(図4における右側)に比べて図の上下方向の厚みが薄くなっていてもよい。第4リング部材8a,8b,8cにおいて壁部83が形成された一方端部(外周側)と反対側に位置する他方端部(内側)の上には、先端部材81が重なるように配置されている。先端部材81の外周の平面形状はたとえば円形状である。ただし先端部材81の外周の平面形状はこれに限られない。たとえば先端部材81の外周の平面形状を四角形状、三角形状などの多角形状、あるいは楕円形状、半円形状などとしてもよい。
【0027】
先端部材81は、その中央に位置し図4に示すように先端部材81の上面に垂直な方向に延びている中心軸82を有する。パラレルリンク機構10においては、先端部材81の中央の中心軸82が、球面リンク中心点30を通ることが特徴である。また中心軸82はたとえば先端部材中心点31を通ってもよい。先端部材中心点31とは、平面視において先端部材81の中央に位置するとともに先端部材81の厚み方向の中央に位置する点である。先端部材81には、平面視における中央部すなわち中心軸82を含む領域に先端部材貫通孔84が形成されている。先端部材貫通孔84は先端部材81を構成するたとえば円板形状の一方の主表面から他方の主表面までこれを貫通するように設けられた孔部である。たとえば先端部材81が円形の平面形状である場合、先端部材貫通孔84は先端部材81の円形状の径の1/4以上2/3以下の径を有することが好ましい。なおその中でも、先端部材貫通孔84は先端部材81の円形状の径の1/3以上1/2以下の径を有することがより好ましい。
【0028】
図4に示すように、第4のリンク部材8a,8b,8cのそれぞれの他方端側(内側)のたとえば他よりも厚みが薄くなった領域には、これを図の上下方向に貫通する貫通孔85が形成されている。また先端部材81には貫通孔85に重なるように貫通孔86が形成されている。第4のリンク部材8a,8b,8cのそれぞれの貫通孔85およびその真上の貫通孔86を貫通するように、ボルト9a,9b,9cのそれぞれが挿入されている。図1および図4においてはボルト9a,9b,9cはたとえば貫通孔86側に頭が配置されるように挿入されているが、逆に貫通孔85側に頭が配置されるように挿入されてもよい。第4リンク部材8a,8b,8cの貫通孔85から突出したボルト9a,9b,9cの先端部には固定部材の一例であるナット9d,9e(後述の図7参照),9f(後述の図6参照)が固定されている。
【0029】
ボルト9a,9b,9cおよびナット9d,9e,9fのそれぞれは、第4のリンク部材8a,8b,8cのそれぞれと先端部材81とを相対的に回転可能な状態で連結する。第4リンク部材8a,8b,8cの他方端部とボルト9a,9b,9cとナット9d,9e,9fと、先端部材81とにより第5回転対偶部R5が構成される。つまり、第4リンク部材8a,8b,8cと先端部材81とは第5回転対偶部R5において回転可能に接続される。
【0030】
図1図2図4および図5からわかるように、3つのリンク機構11A,11B,11Cのそれぞれの第5回転対偶部R5は、互いに異なる位置に独立に配置されている。つまり3つのリンク機構11A,11B,11Cのそれぞれの第5回転対偶部R5は1か所に重なるように配置されているのではなく、それぞれが互いに離れて別個の位置に配置されている。ここでは3つのリンク機構11A,11B,11Cのそれぞれの第5回転対偶部R5は、先端部材81の中央部に形成される先端部材貫通孔84の平面視における外側に、先端部材貫通孔84の周方向に沿って互いに間隔をあけて配置されている。より詳しくは、ここでは円形の平面形状を有する先端部材貫通孔84の外側に、先端部材貫通孔84の円周方向に位相120°分ずつ隔てて、3つのリンク機構11A,11B,11Cのそれぞれの第5回転対偶部R5が形成されている。逆に言えば、先端部材81には、3つのリンク機構11A,11B,11Cのそれぞれに含まれる第5回転対偶部R5の平面視における内側に先端部材貫通孔84が形成されている。先端部材貫通孔84の平面形状は円形状に限らず、多角形状、楕円形状など任意である。
【0031】
図4に示すボルト9aおよびナット9dの第5中心軸19aは第5回転対偶部R5における中心軸に相当する。同様に、後述の図6に示すように、ボルト9bおよびナット9eの第5中心軸19b、およびボルト9cおよびナット9fの第5中心軸19cのそれぞれも第5回転対偶部R5における中心軸に相当する。図4に示すように、リンク機構11Aに含まれる第5中心軸19aと第2中心軸16aとは、中心軸交点32で交わる(たとえば直交する)。同様に、リンク機構11Bに含まれる第5中心軸19bと第2中心軸16bとは中心軸交点で交わる。リンク機構11Cに含まれる第5中心軸19cと第2中心軸16cとは中心軸交点で交わる。
【0032】
図4において、第5中心軸19aは図の上下方向に延びる。これに対し、第4中心軸18aは貫通孔74を紙面奥行き方向に延びる。したがって第5中心軸19aと第4中心軸18aとは互いにねじれた配置となるように直交している。第4リンク部材8a,8b,8cは、その一方端部側の第4回転対偶部R4の第2中心軸18a,18b,18cが、その他方端部側の第5回転対偶部R5の第5中心軸19a,19b,19cのそれぞれと(互いにねじれた配置となるように)直交している。
【0033】
<パラレルリンク機構の動作>
図6は、図1に示したパラレルリンク機構において先端部材の姿勢を変更した状態を示す斜視模式図である。図7は、図1に示したパラレルリンク機構において先端部材の姿勢を変更した状態を図6とは異なる角度から見た態様を示す斜視模式図である。図8は、図7の線分VIII-VIIIにおける断面模式図である。図6および図7を参照して、第1リンク部材4a,4b,4cの第1回転対偶部R1における第1中心軸15a,15b,15cまわりの回転角度をそれぞれ変更することにより、先端部材8の位置を任意に変更することができる。図6および図7では、第1リンク部材4bの第1中心軸15bまわりの回転角度を相対的に大きくすることで、先端部材8において第4リンク部材8b側が上方に持上げられるとともに、先端部材中心点31から見て第4リンク部材8bが位置する側と反対側に先端部材81全体が移動している。
【0034】
図1図8に示したパラレルリンク機構10では、上述のような構成とすることにより、球面リンク中心点30を中心とした球面上を先端部材81が動作する。すなわち、先端部材8の姿勢は、図6に示すように球面リンク中心点30を原点とした3次元の極座標(r,θ,φ)で表すことができる。ここでいう折れ角θとは、先端部材中心点31から垂直方向に降ろした線が基端部材1と第1リンク部材4a,4b,4cとの接続部である第1回転対偶部R1の第1中心軸15a,15b,15cを含む平面と交わる点と球面リンク中心点30とを通る直線と、先端部材81の中心軸82とが成す角度である。旋回角φとは、先端部材中心点31から垂直方向に降ろした線が第1中心軸15a,15b,15cを含む平面と交わる点と球面リンク中心点30とを通る直線と、第1のリンク機構11に含まれる第1回転対偶部R1の第1中心軸15aとが成す角度である。また、中心間距離rとは、球面リンク中心点30と先端部材中心点31との距離である。
【0035】
図6および図8に示すように、リンク機構11Aにおいて、第4回転対偶部R4の第4中心軸18aに垂直な直線のうち、第5回転対偶部R5の第5中心軸19aに垂直な直線と重なる(つまり一致するように同一方向に延びる)直線を第5中心軸垂線L1とする。なおここで垂直な直線とは、誤差として第5中心軸19a等に垂直な方向に対し1°以内のずれがある直線を含むものとする。以下同様に、リンク機構11Bにおいて、第4回転対偶部R4の第4中心軸18bに垂直な直線のうち、第5回転対偶部R5の第5中心軸19bに垂直な直線と重なる(つまり一致するように同一方向に延びる)直線を第5中心軸垂線L2とする。リンク機構11Cにおいて、第4回転対偶部R4の第4中心軸18cに垂直な直線のうち、第5回転対偶部R5の第5中心軸19cに垂直な直線と重なる(つまり一致するように同一方向に延びる)直線を第5中心軸垂線L3とする。これらの第5中心軸垂線L1,L2、L3は、先端部材81の主表面に沿うように、概ね水平方向に沿って延びている。このとき、これらの3本の第5中心軸垂線L1,L2,L3同士が1点すなわち垂線交点131で交わっている。図6図8のように先端部材81の中心軸82が基端部材1の主表面の垂線に対して傾斜するよう姿勢変更された状態では、垂線交点131は球面リンク中心点30とは平面視にて重ならない(ずれた)位置に配置される。
【0036】
垂線交点131の位置は一定ではない。たとえば垂線交点131は先端部材81の平面視における中心である先端部材中心点31の位置に必ず存在するものではない。垂線交点131の位置は、先端部材81の姿勢によって変化する。すなわち図1のように先端部材81の主表面が基端部材1の主表面にほぼ平行となるように配置される場合(中心軸82が基端部材1の主表面にほぼ垂直な場合)には、垂線交点131は先端部材81の先端部材中心点31にほぼ一致する位置に存在する。これに対し、図6のように先端部材81の主表面が基端部材1の主表面に対して傾いている場合(中心軸82が基端部材1の主表面に垂直な方向に対して傾斜している場合)には垂線交点131は先端部材81の先端部材中心点31からずれた位置に存在する。
【0037】
図7に示すように、パラレルリンク機構10においては、3つのリンク機構11A,11B,11Cのそれぞれに含まれる第5回転対偶部R5の第5中心軸19a,19b,19c同士が互いに平行であることが好ましい。ここで平行とは、誤差として各中心軸19a間のなす角度が1°以下である場合を含むものとする。また第5中心軸19a,19b,19cは中心軸82に平行であることが好ましい。
【0038】
<作用効果>
以下、上記と重複する部分もあるが、本実施の形態の作用効果について説明する。
【0039】
本開示に従ったパラレルリンク機構(10)は、基端部材(1)と、3つ以上のリンク機構(11A,11B,11C)とを備える。3つ以上のリンク機構(11A,11B,11C)は、基端部材(1)と先端部材(81)とを接続するように構成される。3つ以上のリンク機構(11A,11B,11C)は、先端部材(81)の基端部材(1)に対する姿勢を変更可能である。3つ以上のリンク機構(11A,11B,11C)のそれぞれは、第1~第4リンク部材を含む。第1リンク部材(4a,4b,4c)は、基端部材(1)に第1回転対偶部(R1)において回転可能に接続される。第2リンク部材(6a,6b,6c)は、第1リンク部材(4a,4b,4c)に第2回転対偶部(R2)において回転可能に接続される。第3リンク部材(7a,7b,7c)は、第2リンク部材(6a,6b,6c)に第3回転対偶部(R3)において回転可能に接続される。第4リンク部材(8a,8b,8c)は、第3リンク部材(7a,7b,7c)に第4回転対偶部(R4)において回転可能に接続される。第4リンク部材(8a,8b,8c)は、さらに、先端部材(81)に第5回転対偶部(R5)において回転可能に接続されるように構成される。3つ以上のリンク機構(11A,11B,11C)において、第1回転対偶部(R1)の第1中心軸(15a,15b,15c)と、第2回転対偶部(R2)の第2中心軸(16a,16b,16c)とは球面リンク中心点(30)で交わる。3つ以上のリンク機構(11A,11B,11C)のそれぞれの第5回転対偶部(R5)が互いに異なる位置に独立に配置される。
【0040】
このようにすれば、3つ以上のリンク機構11A~11Cのそれぞれが第1回転対偶部R1~第5回転対偶部R5を有する5節連鎖構造となっている。したがって基端部材1に対して先端部材81を、球面リンク中心点30を中心とした回転2自由度と、第5中心軸19a~19cに沿った方向の1自由度という合計3自由度で移動させることができる。このため、基端部材1に対して先端部材81を、上記球面リンク中心点30を中心とした球面に沿って移動させることができるとともに、当該球面に沿った移動とは独立して第5中心軸19a~19cに沿った方向にも移動させることができる。この結果、先端部材81を上記球面に沿って移動させるとともに、先端部材81が沿って移動する球面の半径を調整できるので、先端部材81が一定半径の球面に沿ってしか移動できない場合よりも先端部材81の可動範囲を大きくできる。なお、ここで第4リンク部材8a,8b,8cが、先端部材81に第5回転対偶部R5において回転可能に接続されるように構成される、とは、第4リンク部材8a,8b,8cにおいて別部材としての先端部材を接続可能な部分が存在していることを意味し、第4リンク部材8a、8b、8cの一部が先端部材として機能する場合も含む。
【0041】
またこのようにすれば、3つ以上のリンク機構11A~11Cのそれぞれの第5回転対偶部R5が異なる位置に配置されるため、たとえば3つ以上の第5回転対偶部R5を先端部材81の平面視における比較的外側の領域に配置することができる。このため先端部材81の平面視における比較的内側の領域に作業体(エンドエフェクタ)を設けることができる。このようにすれば、先端部材81の比較的外側にエンドエフェクタが設けられる場合に比べて、エンドエフェクタの動作時の慣性モーメントを低減することができる。この結果、エンドエフェクタの動作精度を向上させ、パラレルリンク機構10の振動を抑制することができる。このためパラレルリンク機構10の寿命を向上することができる。
【0042】
上記パラレルリンク機構(10)において、先端部材(81)には、3つ以上のリンク機構(11A,11B,11C)のそれぞれに含まれる第5回転対偶部(R5)の平面視における内側に先端部材貫通孔(84)が形成されていることが好ましい。上記のように3つ以上のリンク機構11A~11Cのそれぞれの第5回転対偶部R5が異なる位置であるたとえば先端部材81の平面視での外側の領域に設けられれば、先端部材81の平面視での内側に先端部材貫通孔84を形成するスペースが得られる。先端部材貫通孔84にエンドエフェクタを取り付けることにより、先端部材81の平面視での内側の領域に安定にエンドエフェクタを設置できる。したがって上記のように、先端部材81の比較的外側にエンドエフェクタが設けられる場合に比べて、エンドエフェクタの動作時の慣性モーメントを低減することができる。この結果、エンドエフェクタの動作精度を向上させ、パラレルリンク機構10の振動を抑制することができる。このためパラレルリンク機構10の寿命を向上することができる。
【0043】
図9は、実施の形態1に係るパラレルリンク機構の先端部材貫通孔にエンドエフェクタが取り付けられた態様の第1例を示す斜視模式図である。図10は、実施の形態1に係るパラレルリンク機構の先端部材貫通孔にエンドエフェクタが取り付けられた態様の第2例を示す斜視模式図である。図11は、実施の形態1に係るパラレルリンク機構の先端部材貫通孔にエンドエフェクタが取り付けられた態様の第3例を示す斜視模式図である。図9を参照して、先端部材貫通孔84は先端部材81を構成するたとえば円板形状の一方の主表面81aからその反対側の他方の主表面81bまでこれを貫通するように形成された孔部である。図9に示すように、先端部材貫通孔84内にたとえば嵌挿するように、エンドエフェクタ101が取り付けられている。ただし、図9ではエンドエフェクタ101の大部分が先端部材81の一方の主表面81aより外側に位置している。このようにして先端部材81の平面視での内側の領域に取り付けられたエンドエフェクタ101は、動作時の慣性モーメントを小さくし、振動を抑制することで、パラレルリンク機構10の寿命を向上できる。エンドエフェクタ101はパラレルリンク機構10の3つのリンク機構に囲まれた領域の外側を向いている。このためエンドエフェクタ101は、たとえばインクの吐出装置など、パラレルリンク機構10の外側に配置される部材に対して作業を行なう作業体である。
【0044】
図10を参照して、エンドエフェクタ102は図9のエンドエフェクタ101と同様に、先端部材貫通孔84内にたとえば嵌挿されている。エンドエフェクタ102もエンドエフェクタ101と同様に、パラレルリンク機構10の3つのリンク機構に囲まれた領域の外側を向いている。ただしエンドエフェクタ102の先端部から先端部材81の一方の主表面81aまでの距離は、図9に示した構成の当該距離より小さい。
【0045】
図11を参照して、エンドエフェクタ101は、先端部材貫通孔84が設けられない先端部材81の平面視における他方の主表面81b上に、パラレルリンク機構10の3つのリンク機構に囲まれた領域の内側を向くように設置されてもよい。
【0046】
上記パラレルリンク機構(10)において、3つ以上のリンク機構(11A,11B,11C)のそれぞれに含まれる第4回転対偶部(R4)の第4中心軸(18a,18b,18c)に垂直な直線のうち第5回転対偶部(R5)の第5中心軸(19a,19b,19c)に垂直な直線と重なる直線である第5中心軸垂線(L1,L2,L3)同士が垂線交点(131)で交わることが好ましい。このようにすれば、基端部材1上の球面リンク中心点30から見て先端部材81を、球面リンク中心点30を中心とした回転2自由度と、中心軸82に沿った方向の1自由度という合計3自由度で移動させることができる。このため、基端部材1に対して先端部材81を、上記球面リンク中心点30を中心とした球面に沿って移動させることができるとともに、当該球面に沿った移動とは独立して中心軸82に沿った方向にも移動させることができる。
【0047】
上記パラレルリンク機構(10)において、3つ以上のリンク機構のそれぞれに含まれる第5回転対偶部(R5)の第5中心軸(19a,19b,19c)同士が互いに平行であることが好ましい。このようにすれば、パラレルリンク機構10の動作の制御を容易にすることができる。
【0048】
上記パラレルリンク機構(10)において、3つ以上のリンク機構(11A,11B,11C)のそれぞれに含まれる第5中心軸(19a,19b,19c)と第2中心軸(16a,16b,16c)とが中心軸交点(32)で交わることが好ましい。先端部材81の姿勢をどのように変更しても上記の条件を満たすことにより、パラレルリンク機構10の動作の制御を容易にすることができる。
【0049】
(実施の形態2)
<パラレルリンク機構の構成>
図12は、実施の形態2に係るパラレルリンク機構の断面模式図である。図13は、図12の線分XIII-XIIIにおける断面模式図である。図14は、図13中の点線で囲まれた領域XIVの拡大断面模式図である。なお、図12図3に対応し、図13図4に対応する。
【0050】
図12および図13に示すパラレルリンク機構20は、基本的には図1図5に示したパラレルリンク機構10と同様の構成を備えるが、第1回転対偶部R1~第5回転対偶部R5のそれぞれに回転抵抗低減手段としての軸受25~29が設置されている点および先端部材81に先端部材貫通孔84が形成されていない点が図1図5に示したパラレルリンク機構10と異なっている。なお、図12および図13では、すべての回転対偶部に軸受25~29を設置しているが、第1回転対偶部R1~第5回転対偶部R5の少なくともいずれか1つにおいて軸受を設置するようにしてもよい。
【0051】
各軸受25~29は、軸部22,42または、ボルトおよびナットを用いて、各リンク機構に取り付けられている。具体的には、図12に示すように、第1回転対偶部R1では、基端接続部2a,2b,2cの軸部22と第1リンク部材4a,4b,4cとの間に軸受25が配置されている。軸受25としては、たとえば玉軸受などの任意の構成の転がり軸受を用いることができる。たとえば、第1リンク部材4a,4b,4c側に軸受25の外輪を固定してもよい。また、軸部22に接続された軸受25の内輪は、ナット3a,3b,3cとベース部21との間で挟まれた状態で固定されてもよい。
【0052】
第2回転対偶部R2では、第1リンク部材4a,4b,4cの軸部42と第2リンク部材6a,6b,6cとの間に軸受26が配置されている。たとえば、第2リンク部材6a,6b,6c側に軸受26の外輪を固定してもよい。また、軸部42に接続された軸受26の内輪は、ナット5a,5b,5cと第1リンク部材4a,4b,4cとの間で挟まれた状態で固定されてもよい。
【0053】
第3回転対偶部R3では、連結部材13a,13b,13c(図2参照)と第3リンク部材7a,7b,7c(図2参照)との間に図13に示すように軸受27が配置されている。たとえば、第3リンク部材7a,7b,7c側に軸受27の外輪を固定してもよい。軸受27の外輪を第3リンク部材7a,7b,7cに固定する方法は任意の方法を用いることができる。たとえば、第3リンク部材7a,7b,7cに外輪を挿入するための穴を形成し、当該穴に外輪を圧入することで外輪を穴に固定してもよい。また、連結部材13a,13b,13cへの軸受27の内輪の固定方法は任意の方法を用いることができる。たとえば、連結部材13a,13b,13cとして、全ねじなどの棒状体と、当該棒状体の両端に配置された一組のワッシャおよび一組のナットとを用いる場合を考える。この場合、第2リンク部材6a,6b,6cの一方端部における貫通孔と、第3リンク部材7a,7b,7cの一方端部における貫通孔の内部に配置された軸受27の内輪の開口部とを通るように、棒状体が配置されている。当該棒状体の両端にワッシャおよびナットを配置する。ナットを締め付けることにより、第2リンク部材6a,6b,6cの一方端部およびワッシャを軸受27の内輪に押圧して当該内輪へ予圧を付与する。この結果、軸受27の内輪が連結部材13a,13b,13cを介して第2リンク部材6a,6b,6cに固定される。
【0054】
第4回転対偶部R4では、連結部材14a,14b,14c(図2参照)と第3リンク部材7a,7b,7c(図2参照)との間に図7に示すように軸受28が配置されている。たとえば、第3リンク部材7a、7b、7c側に軸受28の外輪を固定してもよい。また、連結部材14a、14b、14cへの軸受28の内輪の固定方法は任意の方法を用いることができるが、第3回転対偶部R3における軸受27の内輪の固定方法と同様の方法を用いてもよい。
【0055】
第5回転対偶部R5では、先端部材81と、これに形成された貫通孔86内に挿入されるボルト9a,9b,9cとの間に、図13および図14に示すように軸受29が配置されている。たとえば先端部材81側の貫通孔86に軸受29の外輪が、圧入などの方法で固定されてもよい。またボルト9a,9b,9cへの軸受29の内輪の固定方法は、たとえば以下の方法としてもよい。すなわち図14に示すように、内輪側にボルト9a,9b,9cが挿入され、ボルト9a,9b,9cの頭と反対側の端部にナット9d,9e,9fが配置される。このとき、軸受29とボルト9a,9b,9cの頭との間、および軸受29とナット9d,9e,9fとの間には、ワッシャWが挟まれる。このように先端部材81とボルト9a~9cとの間にある軸受29は、ワッシャWを介在して、ボルト9a~9cの頭とナット9d,9e,9fとに挟まれる。この状態でナットを締め付けることにより、ボルト9a~9cおよびワッシャWを軸受29の内輪に押圧して当該内輪へ予圧を付与する。この結果、軸受29の内輪がボルト9a~9cに固定される。
【0056】
なお、図12図14では回転抵抗低減手段として軸受25~29を用いたが、回転抵抗を低減できれば軸受とは異なる部材を適用してもよい。
【0057】
<作用効果>
上記パラレルリンク機構(20)において、第1回転対偶部(R1)~第5回転対偶部(R5)の少なくともいずれか1つは軸受(25~29)を含んでいてもよい。この場合、軸受25~29が設置された回転対偶部の動作を滑らかにすることができ、先端部材8の位置決め精度を向上させることができる。また、当該軸受25~29を設置することにより、軸受が設置された回転対偶部の摩擦トルクを低減することで当該回転対偶部での発熱を抑制でき、結果的に当該回転対偶部の寿命を延ばすことができる。さらに、軸受25~29を設置することにより、当該軸受25~29を用いない場合より回転対偶部の動作時のガタツキを抑制できる。
【0058】
(実施の形態3)
<リンク作動装置の構成>
図15は、実施の形態3に係るリンク作動装置の斜視模式図である。なお、図15図1に対応する。
【0059】
図15に示したリンク作動装置110は、図1図5に示したパラレルリンク機構10と、姿勢制御用駆動源35a,35b,35cとを備える。姿勢制御用駆動源35a,35b,35cは、3つのリンク機構11A,11B,11Cのすべてに設置されている。姿勢制御用駆動源35a,35b,35cは、第1リンク部材4a,4b,4cの第1中心軸15a,15b,15cまわりの回転角度を変更することにより、基端部材1に対する先端部材8の姿勢を任意に変更する。
【0060】
図15に示すように、姿勢制御用駆動源35a,35b,35cは、それぞれ固定部36a,36b,36cに固定されることで基端部材1に接続されている。固定部36a,36b,36cは基端部材1の表面における外周部に設置されている。固定部36a,36b,36cの形状は任意の形状とできるが、たとえば板状である。
【0061】
姿勢制御用駆動源35a,35b,35cは電動モータなど回転駆動力を発生させることができれば任意の構成を採用できる。姿勢制御用駆動源35a,35b,35cはそれぞれ回転可能な回転軸37を含む。回転軸37が第1リンク部材4a,4b,4cの貫通孔43(図3参照)に挿入されナット3a,3b,3cにより固定されている。つまり回転軸37に第1リンク部材4a,4b,4cが固定されている。回転軸37の回転により第1リンク部材4a,4b,4cは第1中心軸15a,15b,15c周りに回転する。ここで、第1中心軸15a,15b,15cは、回転軸37の中心軸である。
【0062】
姿勢制御用駆動源35a,35b,35cは、第1中心軸15a,15b,15cと重なる位置に配置している。また、姿勢制御用駆動源35a,35b,35cは、基端部材1の先端部材8側の表面側であって、基端部材1の外周より外側に突出した状態で配置されている。
【0063】
このような構成により、先端部材81の基端部材1に対する姿勢を各リンク機構11A~11C(図1参照)の状態によって一意に決定できる。すなわち、第1リンク部材4a,4b,4cの基端部材1に対する姿勢、あるいは第1中心軸15a,15b,15cまわりの第1リンク部材4a,4b,4cの回転角度、を制御することで、先端部材81の姿勢を制御することができる。
【0064】
なお、リンク作動装置110においてリンク機構11A~11C(図1参照)が3つ以上設置されている場合、当該3つ以上のリンク機構11のうち少なくとも3つのリンク機構に姿勢制御用駆動源35a,35b,35cを設置すればよい。
【0065】
<作用効果>
本開示に従ったリンク作動装置(110)は、上記パラレルリンク機構(10,20)と、姿勢制御用駆動源(35a,35b,35c)とを備える。姿勢制御用駆動源(35a,35b,35c)は、3つ以上のリンク機構(11A~11C)のうち少なくとも3つのリンク機構(11A~11C)に設置され、基端部材(1)に対する先端部材(81)の姿勢を任意に変更する。
【0066】
この場合、少なくとも3つの姿勢制御用駆動源35a,35b,35cがリンク機構11A,11B,11Cを個別に制御することで、先端部材81を広範囲かつ精密に動作させることができる。また、上記のようなパラレルリンク機構10を用いることで、軽量かつコンパクトなリンク作動装置110を実現できる。
【0067】
(実施の形態4)
<リンク作動装置の構成>
図16は、実施の形態4に係るリンク作動装置の斜視模式図である。図16に示したリンク作動装置120は、基本的には図15に示したリンク作動装置110と同様の構成を備えるが、姿勢制御用駆動源35a,35b,35cの配置が図15に示したリンク作動装置と異なっている。図16に示したリンク作動装置120では、姿勢制御用駆動源35a,35b,35cが基端部材1の先端部材81側の表面上であって、基端部材1の外周より内側に配置されている。姿勢制御用駆動源35a,35b,35cを固定する固定部36a,36b,36cは、第1リンク部材4a,4b,4cより内周側において基端部材1に固定されている。固定部36a,36b,36cの内周側に、姿勢制御用駆動源35a,35b,35cが配置されている。
【0068】
<作用効果>
このような構成により、図15に示したリンク作動装置と同様の効果を得ることができる。さらに、姿勢制御用駆動源35a,35b,35cが基端部材1の外周より内側に配置されているので、図15に示したリンク作動装置より装置の専有面積を小さくできる。
【0069】
(実施の形態5)
<リンク作動装置の構成>
図17は、実施の形態5に係るリンク作動装置の斜視模式図である。図17に示したリンク作動装置130は、基本的には図16に示したリンク作動装置120と同様の構成を備えるが、姿勢制御用駆動源35a,35b,35cの配置および姿勢制御用駆動源35a,35b,35cと第1リンク部材4a,4b,4cとの接続部の構成が図16に示したリンク作動装置120と異なっている。図17に示したリンク作動装置130では、姿勢制御用駆動源35a、35b、35cが基端部材1の裏面側に配置されている。つまり、姿勢制御用駆動源35a、35b、35cは基端部材1において先端部材81に面する表面と反対側の裏面に接続されている。基端部材1の裏面に対する姿勢制御用駆動源35a,35b,35cの固定方法は基本的に図16に示したリンク作動装置120と同様である。姿勢制御用駆動源35aを例として説明すれば、当該姿勢制御用駆動源35aは基端部材1の裏面に固定された固定部36aに接続されている。姿勢制御用駆動源35a,35b,35cの回転軸37には歯車38が固定されている。歯車38とかみ合うように歯車39が設置されている。歯車39は基端部材1の表面側において、基端接続部2a,2b,2cの軸部22に回転可能に設置されている。そして、歯車39は第1リンク部材4a,4b,4cに固定されている。このようにすれば、姿勢制御用駆動源35a,35b,35cの回転軸37が回転することで、歯車38,39を介し第1リンク部材4a,4b,4cを第1中心軸15a,15b,15c周りに回転させることができる。
【0070】
<作用効果>
このような構成により、図15に示したリンク作動装置110と同様の効果を得ることができる。さらに、姿勢制御用駆動源35a,35b,35cが基端部材1の裏面側に配置されているので、当該姿勢制御用駆動源35a,35b,35cがリンク機構11A~11C(図1参照)の動作の妨げになることを防止できる。また、平面視において姿勢制御用駆動源35a,35b,35cが基端部材1と重なる位置に配置されているので、図15に示したリンク作動装置より装置の専有面積を小さくできる。
【0071】
なお、上述した各実施の形態におけるパラレルリンク機構に対して、図15図17のいずれかに示した姿勢制御用駆動源35a,35b,35cを適用してリンク作動装置を構成してもよい。また、各実施の形態においてリンク機構11の数が3の場合を示しているが、リンク機構11の数は4以上の任意の数、たとえば5、6、8などであってもよい。
【0072】
今回開示された各実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることを意図される。
【符号の説明】
【0073】
1 基端部材、2a,2b,2c 基端接続部、3a,3b,3c,5a,5b,5c,9d,9e,9f ナット、4a,4b,4c 第1リンク部材、6a,6b,6c 第2リンク部材、7a,7b,7c 第3リンク部材、8a,8b,8c 第4リンク部材、10,20 パラレルリンク機構、11A,11B,11C リンク機構、13a,13b,13c,14a,14b,14c 連結部材、15a,15b,15c 第1中心軸、16a,16b,16c 第2中心軸、17a,17b,17c 第3中心軸、18a,18b,18c 第4中心軸、19a,19b,19c 第5中心軸、21 ベース部、22,42 軸部、25,26,27,28,29 軸受、30 球面リンク中心点、31 先端部材中心点、32 中心軸交点、35a,35b,35c 姿勢制御用駆動源、36a,36b,36c 固定部、37 回転軸、41 他方端部、43,63,73,74,85,86 貫通孔、81 先端部材、81a 一方の主表面、81b 他方の主表面、82 中心軸、83 壁部、84 先端部材貫通孔、101,102 エンドエフェクタ、110,120,130 リンク作動装置、L1,L2,L3 第5中心軸垂線、R1 第1回転対偶部、R2 第2回転対偶部、R3 第3回転対偶部、R4 第4回転対偶部、R5 第5回転対偶部。
図1
図2
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図17