(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-11
(45)【発行日】2024-01-19
(54)【発明の名称】被加工物の加工方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/301 20060101AFI20240112BHJP
【FI】
H01L21/78 B
(21)【出願番号】P 2019218442
(22)【出願日】2019-12-03
【審査請求日】2022-10-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100142804
【氏名又は名称】大上 寛
(72)【発明者】
【氏名】シャー ジャクソン
【審査官】宮久保 博幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-056544(JP,A)
【文献】特開2018-088439(JP,A)
【文献】特開2015-123466(JP,A)
【文献】特開2019-009191(JP,A)
【文献】特開2013-212539(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の幅の分割予定ラインを有した被加工物の加工方法であって、
該被加工物に対して透過性を有する波長のレーザービームを該分割予定ラインに沿って照射して被加工物に改質層を形成する改質層形成ステップと、
該改質層形成ステップを実施した後、被加工物に外力を付与して該改質層を起点に被加工物を分割する分割ステップと、を有し、
該改質層形成ステップでは、
レーザービームを第一レーザービームと第二レーザービームとに分岐し、該第一レーザービームの第一集光点と該第二レーザービームの第二集光点とを被加工物内部の同一高さに位置付けるとともに、
該分割予定ラインの幅方向に該第一集光点と該第二集光点を隣接させた状態で該分割予定ラインに沿って照射して該分割予定ラインに沿った一条の改質層を形成する
とともに、該被加工物の厚み方向に伸びるクラックを形成することとし、
該第一,第二レーザービームは、該改質層の幅が分割予定ラインの幅に収まるように照射される、被加工物の加工方法。
【請求項2】
該被加工物は、ウェーハであって、デバイスが形成される領域がデバイス領域として定義され、該デバイス領域の外周の領域が外周余剰領域として定義され、
該第一,第二レーザービームによる一条の該改質層の形成は、該デバイス領域に対応する範囲についてのみ行われる、
ことを特徴とする請求項1に記載の被加工物の加工方法。
【請求項3】
該分割ステップでは、被加工物の裏面側を研削することで被加工物に外力を付与することで該被加工物を分割する、
ことを特徴とする請求項1
又は請求項2に記載の被加工物の加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分割予定ラインにレーザービームを照射して被加工物の加工を行う方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被加工物である半導体ウェーハの分割予定ラインにレーザービームを照射して改質層を形成した後、外力を付与してチップに分割する方法が知られている。
【0003】
特許文献1には、ウェーハの内部にクラック領域を含む改質領域を形成する方法が開示されている。
【0004】
特許文献2には、ウェーハの裏面側から分割予定ラインに沿ってレーザー光線を照射し、ウェーハの表面からチップの仕上がり厚さに相当する位置より裏面側に変質層を形成する変質層形成工程と、ウェーハに外力を付与し、ウェーハを分割予定ラインに沿って個々のチップに分割する分割工程と、個々のチップに分割されたウェーハの裏面を研削し、チップの仕上がり厚さに形成する裏面研削工程と、含む方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第3408805号公報
【文献】特開2006-012902号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
被加工物であるウェーハの厚みが厚い場合には、改質層やクラック領域のウェーハの厚み方向の幅が狭いと、外力を付与しても分割がなされず、分割不良が生じてしまう。したがって、ウェーハが厚い場合には、それに応じて、改質層やクラック領域の厚み方向の幅も十分に確保することが好ましい。
【0007】
そこで、ウェーハの厚み方向に集光点をずらしつつ、レーザービームを複数回照射することも考えられる。
【0008】
しかしながら、同一の分割予定ラインに対するレーザービームの照射を、ウェーハを所定の送り速度で移動させることで実施することは、その回数分だけ時間を要することになり、スループットが低下してしまう。
【0009】
他方、ウェーハの厚み方向において複数箇所に集光点を位置付けて、厚み方向の複数箇所に同時にレーザービームを照射して改質層を形成することも考えられる。
【0010】
しかしながら、例えば、厚み方向の上下2位置に同時にレーザービームを照射する場合では、上側に集光させるレーザービームにより、下側に集光されるレーザービームが妨げられることが懸念される。このため、下側の改質層の形成が阻害され、所望の改質層が得られないことが懸念される。
【0011】
以上に鑑み、本願発明は、レーザービームを分割予定ラインに照射して分割のための改質層を形成する方法において、特に、ウェーハの厚みが厚い場合に好適に採用される新規な方法を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様によれば、
所定の幅の分割予定ラインを有した被加工物の加工方法であって、
該被加工物に対して透過性を有する波長のレーザービームを該分割予定ラインに沿って照射して被加工物に改質層を形成する改質層形成ステップと、
該改質層形成ステップを実施した後、被加工物に外力を付与して該改質層を起点に被加工物を分割する分割ステップと、を有し、
該改質層形成ステップでは、
レーザービームを第一レーザービームと第二レーザービームとに分岐し、該第一レーザービームの第一集光点と該第二レーザービームの第二集光点とを被加工物内部の同一高さに位置付けるとともに、
該分割予定ラインの幅方向に該第一集光点と該第二集光点を隣接させた状態で該分割予定ラインに沿って照射して該分割予定ラインに沿った一条の改質層を形成する、被加工物の加工方法とする。
【0013】
また、本発明の一態様によれば、
該分割ステップでは、被加工物の裏面側を研削することで被加工物に外力を付与することで該被加工物を分割する、こととする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の構成によれば、第一レーザービームと第二レーザービームによって、より体積の大きな一つの改質層が形成され、改質層とその周辺の間のひずみも大きくなることで、被加工物の厚み方向により長いクラックを形成させることが可能となる。これにより、被加工物の厚みが厚い場合でも確実に分割することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】レーザー加工装置の一実施形態について示す斜視図である。
【
図2】レーザービーム発生ユニットのブロック図である。
【
図4】被加工物となるウェーハの一実施形態について示す斜視図である。
【
図5】ウェーハユニットの一実施形態について示す斜視図である。
【
図6】第一,第二集光点について説明する平面図である。
【
図7】改質層が形成された状態について示す断面図である。
【
図8】レーザー加工ステップについて説明する図である。
【
図9】研削装置を用いた分割ステップについて説明する図である。
【
図10】テープを拡張する分割装置の構成例について説明する図である。
【
図11】(A)はテープを拡張する前の分割装置の状態について示す側面一部断面図である。(B)はテープを拡張した状態の分割装置の状態について示す側面一部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の実施に使用されるレーザー加工装置の一実施例である。レーザー加工装置2は、静止基台4上にX軸方向に移動可能に搭載された第一スライドブロック6を有する。
【0017】
第一スライドブロック6は、ボールねじ8及びパルスモータ10から構成される加工送り手段12により一対のガイドレール14に沿って加工送り方向(X軸方向)に移動される。
【0018】
第一スライドブロック6上には第二スライドブロック16がY軸方向に移動可能に搭載されている。具体的には、第二スライドブロック16はボールねじ18及びパルスモータ20から構成される割り出し送り手段22により一対のガイドレール24に沿って割り出し方向(Y軸方向)に移動される。
【0019】
第二スライドブロック16上には円筒支持部材26を介してチャックテーブル28が搭載されており、チャックテーブル28は加工送り手段12及び割り出し送り手段22によりX軸方向及びY軸方向に移動可能である。チャックテーブル28には、チャックテーブル28に吸引保持されたウェーハユニットUをクランプするクランプ30が設けられている。
【0020】
静止基台4にはコラム32が立設されており、このコラム32にレーザービーム照射ユニット34が取り付けられている。レーザービーム照射ユニット34は、ケーシング33中に収容された
図2に示すレーザービーム発生ユニット35と、ケーシング33の先端に取り付けられた集光器37と、
図3に示す光学系70と、を有して構成される。
【0021】
図2に示すように、レーザービーム発生ユニット35は、YAGレーザー又はYVO4レーザーを発振するレーザー発振器62と、繰り返し周波数設定手段64と、パルス幅調整手段66と、パワー調整手段68と、を有して構成される。レーザー発振器62は図示せぬブリュースター窓を有しており、レーザー発振器62から出射するレーザービームは直線偏光のレーザービームである。
【0022】
図1に示すように、ケーシング33の先端部には、集光器37とX軸方向に整列してレーザー加工すべき加工領域を検出する撮像手段39が配設されている。撮像手段39は、可視光によってウェーハの加工領域を撮像する通常のCCD等の撮像素子を有している。
【0023】
撮像手段39は更に、ウェーハに赤外線を照射する赤外線照射手段と、赤外線照射手段によって照射された赤外線を捕らえる光学系と、この光学系によって捕らえられた赤外線に対応した電気信号を出力する赤外線CCD等の赤外線撮像素子から構成される赤外線撮像手段と、を有しており、撮像した画像信号はコントローラ(制御手段)40に送信される。
【0024】
コントローラ40は、コンピュータによって構成されており、制御プログラムに従って演算処理する中央処理装置(CPU)42と、制御プログラム等を格納するリードオンリーメモリ(ROM)44と、演算結果等を格納する読み書き可能なランダムアクセスメモリ(RAM)46と、カウンタ48と、入力インターフェイス50と、出力インターフェイス52とを備えている。
【0025】
静止基台4上に設けられる加工送り量検出手段56は、案内レール14に沿って配設されたリニアスケール54と、第一スライドブロック6に配設される図示しない読み取りヘッドと、を有して構成される。加工送り量検出手段56の検出信号はコントローラ40の入力インターフェイス50に入力される。
【0026】
第一スライドブロック6上に設けられる割り出し送り量検出手段60は、ガイドレール24に沿って配設されたリニアスケール58と、第二スライドブロック16に配設される図示しない読み取りヘッドと、を有して構成される。割り出し送り量検出手段60の検出信号はコントローラ40の入力インターフェイス50に入力される。
【0027】
撮像手段39で撮像した画像信号もコントローラ40の入力インターフェイス50に入力される。一方、コントローラ40の出力インターフェイス52からはパルスモータ10、パルスモータ20、レーザービーム照射ユニット34等に制御信号が出力される。
【0028】
図4に示すように、被加工物となるウェーハW(半導体ウェーハ)の表面Waにおいては、第一の分割予定ライン(ストリート)S1と第二の分割予定ライン(ストリート)S2とが直交して形成されており、第一の分割予定ラインS1と第二の分割予定ラインS2とによって区画された領域にそれぞれデバイスDが形成されている。なお、被加工物は、シリコン、サファイア、ガリウムなどを母材とする円板状の半導体ウェーハや、光デバイスウェーハや、ガラス、セラミクス、樹脂からなるウェーハなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0029】
図4に示すように、ウェーハWの表面Waにおいて、デバイスDが形成される領域がデバイス領域Dxとして定義され、デバイス領域Dxの外周の領域が外周余剰領域Gとして定義される。
【0030】
図5に示すように、被加工物となるウェーハWは、詳しくは後述するように、レーザー加工に先立ってその表面WaがテープT(粘着層を有するダイシングテープ)に貼着される。テープTの外周部は環状フレームFに貼着され、ウェーハWはテープTを介して環状フレームFに支持された状態となり、ウェーハWと環状フレームFが一体となったウェーハユニットUが構成される。
図5においては、ウェーハWの裏面Wbが露出された状態が示されている。
【0031】
図1に示すように、ウェーハユニットUはチャックテーブル28上に搬送され、チャックテーブル28にてウェーハWがテープTを介して吸引保持され、環状フレームFがクランプ30によりクランプされる。
【0032】
次に、
図3を参照して、レーザービーム照射ユニット34を構成する光学系70について説明する。レーザービーム発生ユニット35のパワー調整手段68(
図2)により所定パワーに調整されたレーザービームLBは、
図3に示すレーザービーム照射ユニット34の光学系70に導かれる。
【0033】
図3に示すように、光学系70はレーザービーム発生ユニット35が発生したレーザービームLBを、チャックテーブル28に保持されたウェーハWに集光して照射する集光器37内に配設された集光レンズ72を有する。
【0034】
レーザービーム発生ユニット35と集光レンズ72との間には、レーザービームLBを同一偏光面を有する複数のレーザービーム(第一のレーザービームLB1と第二のレーザービームLB2)に分岐するレーザービーム分岐手段74が配設されている。
【0035】
レーザービーム分岐手段74は、例えばレーザービームLBを同一偏光面を有する2つのレーザービームに分岐する2分岐DOE(回折光学素子:Diffractive Optical Element)から構成される。
【0036】
レーザービーム発生ユニット35とレーザービーム分岐手段74との間には、1/2波長板76が回転手段78で回転可能に配設されている。一般的に1/2波長板76は、入射光の偏光面に対して1/2波長板の光学軸が角度θであるとき、出射光の偏光面を180°-2θだけ回転させる。よって、回転手段78により1/2波長板76を角度αだけ回転させると、出射光の偏光面は2αだけ回転する。
【0037】
一般的なレーザー発振器62では、ブリュースター窓を介してP偏光のレーザービームが発振される。よって、レーザービーム発生ユニット35から出射するレーザービームLBはP偏光のレーザービームであり、回転手段78により1/2波長板76の光学軸をレーザービームLBの偏光面に対して45°回転すると、偏光面が90°回転されたS偏光のレーザービームが1/2波長板76から出射される。
【0038】
このS偏光のレーザービームはミラー80により反射され、例えば2分岐DOEから形成されたレーザービーム分岐手段74に入射し、レーザービーム分岐手段74によりS偏光の第一のレーザービームLB1と同じくS偏光の第二のレーザービームLB2に分岐される。
【0039】
第一及び第二のレーザービームLB1,LB2は集光レンズ72で集光されてチャックテーブル28に保持されているウェーハWに照射され、
図6に示す平面図、及び、
図7に示す断面図で表現されるように、X軸方向に延びる分割予定ラインS1の幅方向(Y軸方向)に離れた2箇所の位置に、それぞれ集光点P1,P2が配置される。
【0040】
なお、
図5の構成において、回転手段78で1/2波長板を回転せずに、1/2波長板76の光学軸をレーザービーム発生ユニット35から発生されるP偏光のレーザービームLBの偏光面と平行となるように配設した場合には、1/2波長板76からはP偏光のレーザービームLBが出射され、このレーザービームLBはミラー80で反射されてレーザービーム分岐手段74に入力される。そして、レーザービーム分岐手段74でP偏光の第一のレーザービームLB1と同じくP偏光の第二のレーザービームLB2に分岐される。
【0041】
次に、上述したレーザー加工装置を使用したウェーハの加工方法について説明する。
<テープ貼着ステップ>
図5に示すように、ウェーハWの表面Wa側をテープTに貼着する。また、テープTに対しウェーハWを囲むように環状フレームFを貼着することで、ウェーハWと環状フレームFを一体化したウェーハユニットUが構成される。なお、ウェーハユニットUを構成する他、ウェーハWと同径の保護テープをウェーハWの表面Waに貼着し、環状フレームFを利用せずにウェーハWをハンドリングしてもよい。
【0042】
なお、本実施例では、ウェーハWの裏面Wbを露出してレーザービームを照射する構成とするため、ウェーハWの表面WaをテープTに貼着するものであるが、ウェーハWの表面Waを露出してウェーハの表面にレーザービームを照射する、またはテープを介してウェーハの裏面にレーザービームを照射する構成とする場合には、ウェーハWの裏面WbをテープTに貼着してハンドリングすることとしてもよい。
【0043】
また、このテープ貼着ステップは、後述する分割ステップまでに実施すればよく、例えば、改質層形成ステップの後に実施されることとしてもよい。
【0044】
<改質層形成ステップ>
図8に示すように、チャックテーブル28にてウェーハWを保持した状態とし、チャックテーブル28をX軸方向に加工送りできる状態とする。次いで、分割予定ラインS1と集光器37の位置が一致するようにアライメントを実施した後、集光器37の下方の位置にウェーハWを送りつつ、集光器37からレーザービームLB1,LB2をウェーハWに照射する。
【0045】
図6及び
図7に示すように、第一集光点P1と第二集光点P2の分割予定ラインS1の幅方向(Y軸方向)の幅Pwは、分割予定ラインS1の幅Swの範囲内で隣接するように設定される。なお、分割予定ラインS1の幅Swは、分割予定ラインS1の幅方向(Y軸方向)において隣接するデバイスD間の距離に相当する。
【0046】
図7に示すように、集光器37(
図1)から照射される第一レーザービームLB1の第一集光点P1と、第二レーザービームLB2の第二集光点P2は、ウェーハWの厚み方向の内側に設定される。第一集光点P1、第二集光点P2のウェーハWの厚み方向(Z軸方向、高さ方向)の位置は同一に設定される。
【0047】
第一,第二レーザービームLB1,LB2の波長は、ウェーハWに対する透過性を有し、加工条件は、例えば、以下とすることができる。
[レーザー加工条件]
レーザー光線の波長:1064nm
繰り返し周波数 :120kHz
平均出力 :3.0W
加工送り速度 :1300mm/s
【0048】
図7に示すように、レーザービームの集光点をそれぞれ第一集光点P1、第二集光点P2に位置付けた状態で第一,第二レーザービームLB1,LB2を照射することで幅Mwを有する一つの改質層Mが形成される。ここで、第一,第二レーザービームLB1,LB2は、改質層Mの幅Mwが分割予定ラインS1の幅Swに収まるように照射される。
【0049】
図7に示すように、改質層Mが形成される過程において、改質層Mとその周辺の間のひずみが形成され、ウェーハWの厚み方向に伸びるクラックCが形成される。このクラックCが伸長し、ウェーハWの裏面Wbや表面Waに到達することによって、後の分割ステップにおいて分割がされやすくなり、分割性が向上する。
【0050】
そして、
図8に示すようにチャックテーブル28の加工送りと、割り出し送りを繰り返し、全ての分割予定ラインS1(
図4)についてレーザービームの照射によるレーザー加工を実施した後、チャックテーブルを90°回転し、分割予定ラインS1と直交する分割予定ラインS2(
図4)についても同様に、レーザー加工を実施する。
【0051】
ここで、第一,第二レーザービームLB1,LB2の2条のレーザービームによる改質層の形成は、
図4に示すデバイス領域Dx(デバイスDが形成される領域)に対応する範囲についてのみ行われることが好ましい。外周余剰領域Gについては、改質層の形成を行わない、あるいは、1条のレーザービームにより分割予定ラインの延長線状について改質層を形成する。
【0052】
これにより、外周余剰領域Gについては破断が生じ難い状態を維持することができ、外周余剰領域Gを補強部として利用することで、ハンドリングをしやすくすることができる。
【0053】
なお、外周余剰領域Gに改質層を形成させない場合においては、
図9に示す研削装置100により分割ステップを実施する場合には、研削の前、又は、後において外周余剰領域Gを取り除き、その後にテープTを拡張(エキスパンド)してチップ間に隙間を形成し、ピックアップに備えることとする。
図10,
図11に示す分割装置207により分割ステップを実施する場合には、分割ステップの前に外周余剰領域Gが取り除かれる。外周余剰領域Gを取り除く方法は、特に限定されるものではない。
【0054】
また、外周余剰領域Gに1条のレーザービームにより改質層を形成する場合には、当該改質層により外周余剰領域Gも分割させることができ、外周余剰領域Gを取り除く必要はないものとなる。
【0055】
また、
図7において、改質層MがウェーハWの厚み方向において複数箇所に形成されるようにしてもよい。ウェーハWの厚みが特に厚いときには、有効な手段となる。
【0056】
<分割ステップ>
この分割ステップでは、改質層M(
図7)を分割起点としてチップに分割するものである。
【0057】
図9は、研削装置100を用いた分割ステップの一形態について示すものである。
研削装置100のチャックテーブル181にウェーハユニットUをセットし、ウェーハWを吸着保持する。チャックテーブル181を例えば300rpmで回転させるとともに、研削砥石182を備えた研削工具183を例えば6000rpmで回転しつつ、下方に所定の速度で研削送りする。
【0058】
この研削の過程においてウェーハWに荷重が作用し、ウェーハWの内側に形成された改質層M(
図7)の部分が分割起点として破断する。改質層MにつながるクラックCが形成されている場合には、より早期に分割がなされる。
【0059】
研削後においては、テープを拡張(エキスパンド)することにより、チップ間に間隔を形成し、ピックアップを行う。
【0060】
図10及び
図11(A)(B)は、分割装置207を分割ステップの他の形態について示すものである。
分割装置207は、ウェーハユニットU(
図5)の環状フレームFを保持するフレーム保持手段271と、フレーム保持手段271に保持された環状フレームFに装着されたテープTを拡張(エキスパンド)するテープ拡張手段272を具備している。フレーム保持手段271は、フレーム保持部材271aと、フレーム保持部材271aの外周に配設された固定手段としての複数のクランプ機構271bと、を有する。フレーム保持部材271aの上面は環状フレームFを載置する載置面271cを形成しており、この載置面271c上に環状フレームFが載置される。そして、載置面271c上に載置された環状フレームFは、クランプ機構271bによってフレーム保持部材271aに固定される。このように構成されたフレーム保持手段271は、テープ拡張手段272によって上下方向に進退可能に支持されている
【0061】
テープ拡張手段272は、環状のフレーム保持部材271aの内側に配設される拡張ドラム273を具備している。この拡張ドラム273は、環状フレームFの内径より小さく該環状フレームFに装着されたテープTに貼着されるウェーハWの外径より大きい内径および外径を有している。また、拡張ドラム273は、下端に支持フランジ273aを備えている。
【0062】
テープ拡張手段272は、環状のフレーム保持部材271aを上下方向に進退させる駆動手段274を有する。この駆動手段274は、支持フランジ273a上に配設される複数のエアシリンダにて構成され、そのピストンロッド275が環状のフレーム保持部材271aの下面に連結される。
【0063】
駆動手段274は、環状のフレーム保持部材271aを載置面271cが拡張ドラム273の上端と略同一高さとなる基準位置と、拡張ドラム273の上端より所定量下方の拡張位置の間を上下方向に移動させるように構成される。このように、駆動手段274は、拡張ドラム273とフレーム保持部材271aとを上下方向に相対移動する拡張移動手段として機能する。
【0064】
以上の構成において、
図11(A)に示すように、クランプ機構271bにて環状フレームFを挟持した状態で、駆動手段274を駆動してフレーム保持部材271aを下降させると、
図11(B)に示すように、テープTが拡張ドラム273に下側から保持されつつ拡張する。
【0065】
テープTが拡張すると、テープTに貼着されたウェーハWに半径方向に広がる外力が作用し、この外力によって改質層M(
図7)を起点として、ウェーハWがチップWcに分割される。
【0066】
以上のようにして本発明を実現することができる。
即ち、
図6乃至
図9に示すように、
所定の幅Swの分割予定ラインS1を有した被加工物(ウェーハW)の加工方法であって、
被加工物に対して透過性を有する波長のレーザービームLB1,LB2を分割予定ラインS1に沿って照射して被加工物に改質層Mを形成する改質層形成ステップと、
改質層形成ステップを実施した後、被加工物に外力を付与して改質層Mを起点に被加工物を分割する分割ステップと、を有し、
改質層形成ステップでは、
レーザービームを第一レーザービームLB1と第二レーザービームLB2とに分岐し、第一レーザービームLB1の第一集光点P1と第二レーザービームLB2の第二集光点P2とを被加工物内部の同一高さに位置付けるとともに、
分割予定ラインS1の幅方向に第一集光点P1と第二集光点P2を隣接させた状態で分割予定ラインS1に沿って照射して分割予定ラインS1に沿った一条の改質層Mを形成する、被加工物の加工方法とするものである。
【0067】
これにより、
図7に示すように、第一レーザービームLB1と第二レーザービームLB2によって、より体積の大きな幅Mwを有する一つの改質層Mが形成され、改質層Mとその周辺の間のひずみも大きくなることで、被加工物の厚み方向により長いクラックCを形成させることが可能となる。これにより、被加工物であるウェーハWの厚みが厚い場合でも確実に分割することができる。
【0068】
また、
図9に示すように、分割ステップでは、被加工物の裏面側を研削することで被加工物に外力を付与することで被加工物を分割することとするものである。
【0069】
この場合、広い幅を有する一つの改質層が形成されているため、分割不良が生じることなく、確実に分割を行うことができる。
【符号の説明】
【0070】
2 レーザー加工装置
28 チャックテーブル
37 集光器
70 光学系
72 集光レンズ
74 レーザービーム分岐手段
76 波長板
78 回転手段
80 ミラー
100 研削装置
181 チャックテーブル
182 研削砥石
183 研削工具
C クラック
D デバイス
F 環状フレーム
LB レーザービーム
LB1 第一レーザービーム
M 改質層
P1 第一集光点
P2 第二集光点
S1 分割予定ライン
S2 分割予定ライン
Sw ライン幅
T テープ
U ウェーハユニット
W ウェーハ
Wa 表面
Wb 裏面
Wc チップ