IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 小林製薬株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-11
(45)【発行日】2024-01-19
(54)【発明の名称】経口組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/15 20060101AFI20240112BHJP
   A61K 31/198 20060101ALI20240112BHJP
   A61K 36/67 20060101ALI20240112BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20240112BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20240112BHJP
   A61P 9/12 20060101ALI20240112BHJP
   A61P 9/14 20060101ALI20240112BHJP
   A61P 39/06 20060101ALI20240112BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20240112BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20240112BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20240112BHJP
   A61P 39/02 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
A61K36/15
A61K31/198
A61K36/67
A61P3/06
A61P3/10
A61P9/12
A61P9/14
A61P39/06
A61P21/00
A61P17/02
A61P37/04
A61P39/02
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019158917
(22)【出願日】2019-08-30
(65)【公開番号】P2021038154
(43)【公開日】2021-03-11
【審査請求日】2022-07-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 馨也
(74)【代理人】
【識別番号】100175651
【弁理士】
【氏名又は名称】迫田 恭子
(72)【発明者】
【氏名】表迫 真美
【審査官】大島 彰公
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-216373(JP,A)
【文献】特開2018-203707(JP,A)
【文献】特開2017-141200(JP,A)
【文献】特開2017-190308(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K、A61P
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)松樹皮抽出物、(B)アルギニン、並びに、(C)ヒハツ及び/又はその抽出物を含む、経口組成物。
【請求項2】
前記(C)成分がヒハツ抽出物である場合、前記(A)成分及び前記(B)成分の総量1重量部に対し、前記(C)成分を原生薬換算で0.004重量部以上を含む、請求項1に記載の経口組成物。
【請求項3】
前記(C)成分がヒハツである場合、前記(A)成分及び前記(B)成分の総量1重量部に対し、前記(C)成分を0.004重量部以上含む、請求項1に記載の経口組成物。
【請求項4】
固形状製剤である、請求項1~3のいずれかに記載の経口組成物。
【請求項5】
前記固形状製剤が素錠である、請求項4に記載の経口組成物。
【請求項6】
(A)松樹皮抽出物及び(B)アルギニを含む経口組成物に、(C)ヒハツ及び/又はその抽出物を配合することを含む、経口組成物の不快味臭低減方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、松樹皮抽出物及びアルギニン源を含有する経口組成物の不快な味及び不快な臭い(以下において、「不快味臭」とも記載する。)に対するマスキングに関する。
【背景技術】
【0002】
松樹皮抽出物にはプロアントシアニジンを多く含んでいる。プロアントシアニジンはポリフェノール類の一種で、抗酸化作用を有する物質である。プロアントシアニジンの生理活性作用としては、血中脂質改善効果、抗高血圧効果、血糖値上昇抑制効果、血管保護効果、ビタミンCの利用効率向上効果、血液流動性改善効果等が挙げられ、松樹皮抽出物を経口組成物に配合することで、これらの生理活性作用による効果が期待できる。
【0003】
一方で、松樹皮抽出物には独特の不快な味臭があり、木のような不快味臭とも表現される。このため、松樹皮抽出物を含有する経口組成物に対してはマスキングすることが望まれる。例えば、特許文献1には、ピクノジェノール(松樹皮抽出物)を含む組成物にスクラロースを配合することで呈味を改善できることが記載されている。
【0004】
アルギニンは、一酸化窒素(NO)合成酵素の直接的な基質となるアミノ酸として、肝臓における尿素回路の中間体として、及び成長ホルモン分泌作用を有する物質として知られている。アルギニンの生理活性作用としては、血管拡張、血圧上昇抑、筋肉合成、創傷治癒、アンモニア解毒、免疫賦活、インスリン分泌、ポリアミン合成作用が挙げられアルギニンを含めアルギニン源を経口組成物に配合することで、これらの生理活性作用による効果が期待できる。
【0005】
一方で、アルギニン源には独特の不快な苦みがある。このため、アルギニン源を含有する経口組成物に対してはマスキングすることが望まれる。例えば、特許文献2には、アルギニンを含む組成物に5’-ウリジル酸ナトリウム(UMP)又は5’-シチジル酸ナトリウム(CMP)を配合することで呈味を改善できることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2008-099677号公報
【文献】特開2005-348748号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように、松樹皮抽出物及びアルギニンに対してはそれぞれにマスキング技術が知られているが、いずれもその効果は十分ではない。特に、松樹皮抽出物とアルギニン源との両方が配合された経口組成物では、各成分の呈味が相まって不快な味と不快な臭いとが激増するため、これまでの各成分に対するマスキング技術を用いてもこの不快な味と不快な臭いとを効果的に低減することはできない。
【0008】
そこで、本発明は、松樹皮抽出物とアルギニン源との両方が配合された経口組成物に対する不快味臭を低減可能な製剤技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは鋭意検討を行ったところ、松樹皮抽出物とアルギニン源との両方が配合された経口組成物に、ヒハツ及び/又はその抽出物を配合することで、効果的に経口組成物の不快味臭を低減できることを見出した。本発明は、この知見に基づいて更に検討を重ねることにより完成したものである。
【0010】
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. (A)松樹皮抽出物、(B)アルギニン源、並びに、(C)ヒハツ及び/又はその抽出物を含む、経口組成物。
項2. 前記(C)成分がヒハツ抽出物である場合、前記(A)成分及び前記(B)成分の総量1重量部に対し、前記(C)成分を乾燥重量換算で0.004重量部以上を含む、項1に記載の経口組成物。
項3. 前記(C)成分がヒハツである場合、前記(A)成分及び前記(B)成分の総量1重量部に対し、前記(C)成分を0.004重量部以上含む、項1に記載の経口組成物。
項4. 固形状製剤である、項1~3のいずれかに記載の経口組成物。
項5. 前記固形状製剤が素錠である、項4に記載の経口組成物。
項6. (A)松樹皮抽出物及び(B)アルギニン源を含む経口組成物に、(C)ヒハツ及び/又はその抽出物を配合することを含む、経口組成物の不快味臭低減方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の経口組成物によれば、松樹皮抽出物とアルギニン源との両方が配合されており本来であれば極めて強い不快味臭があるにも関わらず、この不快味臭を良好に抑制することができる。このため、呈味を直接的に感じる粉剤や素錠であっても、効果的に不快味臭を抑制することができる。従って、本発明の経口組成物剤は、呈味が改善されて服用し易くなっている点で、服用履行性(コンプライアンス)を向上させることが期待できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
1.経口組成物
本発明の経口組成物は、(A)松樹皮抽出物(以下において、「(A)成分」とも記載する)、(B)アルギニン源(以下において、「(B)成分」とも記載する)、及び(C)ヒハツ及び/又はその抽出物(以下において、「(C)成分」とも記載する)を含むことを特徴とする。以下、本発明の経口組成物について詳述する。
【0013】
(A)松樹皮抽出物
本発明の経口組成物は、(A)成分として松樹皮抽出物を含む。松樹皮抽出物はポリフェノール類の一種であるプロアントシアニジンを含んでおり、プロアントシアニジンの抗酸化作用による、血中脂質改善効果、抗高血圧効果、血糖値上昇抑制効果、血管保護効果、ビタミンCの利用効率向上効果、血液流動性改善効果等の効果を有する公知の成分である。
【0014】
松樹皮抽出物は、木の風味のような不快な不快味臭を有するが、本発明の経口組成物は、効果的に不快味臭が低減されている。
【0015】
松樹皮の由来元となる松としては、特に限定されないが、例えば、フランス海岸松(Pinus pinaster)、フィンランド産松、ニュージーランド産松が挙げられる。これらの中でも、プロアントシアニジンの抗酸化作用による効果をより一層好ましく得る観点から、好ましくはフランス海岸松が挙げられる。
【0016】
(A)成分としては、これら松樹皮の抽出物から、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、これらの松樹皮の抽出物としては、公知の抽出方法により自ら調製したものを用いてもよいし、市販品を用いてもよい。フランス海岸松樹皮抽出物の市販品としては、例えば商品名「ピクノジェノール」(スイス、ホファー・リサーチ社製)、商品名「フラバンジェノール」((株)東洋新薬販売)が挙げられる。フィンランド産松樹皮抽出物の市販品としては、例えば商品名「フィンジェノール」が挙げられる。ニュージーランド産松樹皮抽出物の市販品としては、例えば商品名「エンゾジノール」が挙げられる。
【0017】
松樹皮出物としては、具体的には、搾汁、溶媒抽出物、溶媒抽出物のプロアントシアニジンを含む分画物等が挙げられる。また、抽出物の具体的態様としては、非濃縮エキス(濃縮処理されていないもの)、軟エキス(つまり液状濃縮物)及びエキス末(つまり乾燥物)が挙げられる。また、濃縮率としては、抽出物重量に対する原料乾燥重量の比率(原料乾燥重量/抽出物重量)が、500~1500倍、好ましくは800~1200倍が挙げられる。
【0018】
松樹皮抽出物を得るための抽出溶媒としては、水、有機溶媒(メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール等の炭素数1~4の低級アルコール;プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール等の多価アルコール;アセトン等のケトン類;ジエチルエーテル、ジオキサン、アセトニトリル、酢酸エチルエステル等のエステル類;キシレン、ベンゼン、クロロホルム等)、これらの混合物が挙げられる。これらの抽出溶媒は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの抽出溶媒の中でも、好ましくは、水、低級アルコール、これらの混合物が挙げられ、より好ましくは、含水低級アルコールが挙げられ、さらに好ましくは、含水エタノールが挙げられる。
【0019】
本発明の経口組成物における(A)成分の含有量(乾燥重量換算量。以下において同様。)としては特に限定されず、付与すべき効能に応じて決定すればよいが、例えば、0.5~30重量%が挙げられる。本発明の経口組成物による不快味臭低減効果をより好ましく得る観点から、(A)成分の含有量としては、好ましくは0.5~15重量%、より好ましくは0.5~7重量%、更に好ましくは0.5~3重量%が挙げられる。また、本発明の経口組成物による不快味臭低減効果が優れているため、(A)が比較的多く含まれていても効果的に不快味臭低減効果を得ることができる。このような観点から、(A)成分の含有量としては、好ましくは0.8~30重量%、より好ましくは1.2~30重量%、更に好ましくは1.5~30重量%が挙げられる。
【0020】
(B)アルギニン源
本発明の経口組成物は、(B)成分としてアルギニン源を含む。アルギニン源は、アルギニン、シトルリン、オルニチン、アスパラギン酸、アスパラギン酸塩及び/又はアスパラギン酸ジペプチドからなる群より選択される成分である。
【0021】
アルギニンは、血管拡張、血圧上昇抑、筋肉合成、創傷治癒、アンモニア解毒、免疫賦活、インスリン分泌、ポリアミン合成作用を有する公知の成分である。また、シトルリン、オルニチン、アスパラギン酸、アスパラギン酸塩及び/又はアスパラギン酸ジペプチドは、アルギニンに生合成されるアルギニン前駆体であり、経口摂取することによって体内でアルギニンに変換され、血中のアルギニンレベルを効率良く上昇させることができる。
【0022】
アルギニン源は、苦みのある不快な不快味臭を有するが、本発明の経口組成物は、効果的に不快味臭が低減されている。
【0023】
アスパラギン酸塩としては、酸付加塩、金属塩、アンモニウム塩、有機アミン付加塩、アミノ酸付加塩等が挙げられる。酸付加塩としては、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩等の無機酸塩、酢酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、クエン酸塩、リンゴ酸塩、乳酸塩、α-ケトグルタル酸塩、グルコン酸塩、カプリル酸塩等の有機酸塩が挙げられる。金属塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、マグネシウム塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アルミニウム塩、亜鉛塩等が挙げられる。アンモニウム塩としては、アンモニウム、テトラメチルアンモニウム等の塩が挙げられる。有機アミン付加塩としては、モルホリン、ピペリジン等の塩が挙げられる。アミノ酸付加塩としては、グリシン、フェニルアラニン、リジン、アスパラギン酸、グルタミン酸等の塩が挙げられる。
【0024】
(B)成分は、L-体、D-体およびDL-体のいずれであってもよいが、好ましくはL-体である。
【0025】
これらのアルギニン源は、食品添加物、食品素材などとして市販されており、本発明の口腔用組成物においては、市販のアルギニン源をいずれも利用することができる。
【0026】
(B)成分としては、上述のアルギニン源から、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
本発明の経口組成物による不快味臭低減効果が優れているため、これらの(B)成分の中でも、好ましい例として、苦みのある不快味臭が強いアルギニンが挙げられる。
【0028】
本発明の経口組成物において、(B)成分の含有量としては特に限定されず、付与すべき効能に応じて決定すればよいが、例えば、5~93重量%が挙げられる。本発明の経口組成物による不快味臭低減効果をより好ましく得る観点から、(B)成分の含有量としては、好ましくは5~90重量%、より好ましくは5~75重量%、更に好ましくは5~50重量%、一層好ましくは5~30重量%、特に好ましくは5~25重量%が挙げられる。また、本発明の経口組成物による不快味臭低減効果が優れているため、(B)が比較的多く含まれていても効果的に不快味臭低減効果を得ることができる。このような観点から、(B)成分の含有量としては、好ましくは8~93重量%、より好ましくは12~93重量%、更に好ましくは15~93重量%が挙げられる。
【0029】
(A)成分と(B)成分との比率については特に限定されず、上記の各成分の含有量によって決定されるが、(A)成分1重量部に対する(B)成分の含有量として、例えば1~50重量部が挙げられる。本発明の経口組成物は、(A)成分と(B)成分とが相まって不快味臭が増強された共存形態に対して優れた不快味臭低減効果を示すため、本来的に一層不快味臭いが増強されている共存形態であっても効果的に不快味臭低減効果を得ることができる。このような観点から、(A)成分1重量部に対する(B)成分の含有量として、好ましくは1.5~40重量部、より好ましくは2~30重量部、更に好ましくは4~20重量部、一層好ましくは6~15重量部、特に好ましくは8~13重量部が挙げられる。
【0030】
(C)ヒハツ及び/又はその抽出物
本発明の経口組成物は、(C)成分としてヒハツ及び/又はその抽出物を含有する。(C)成分は、皮膚表面温度回復作用、血行促進作用、むくみ感改善作用等が知られている公知の成分である。
【0031】
本発明の経口組成物は、(A)成分と(B)成分とが相まって本来的には不快味臭が増強された共存形態であるが、(C)成分を更に配合することによって、不快味臭を低減することができる。
【0032】
ヒハツは、コショウ科に属する常緑の蔓性植物(Piper longum L.(別名:インドナガコショウ)又はPiper retrofractum Vahl(別名:ジャワナガコショウ、ヒハツモドキ))である。本発明の経口組成物で用いられるヒハツの使用部位としては、ヒハツ植物の全草又はその一部(果穂、根、葉、茎、花等)が挙げられ、より好ましくは果穂が挙げられる。
【0033】
ヒハツの形態としては、上記ヒハツの使用部位をそのまま乾燥したもの;乾燥後に破砕若しくは粉砕したもの、又は、破砕若しくは粉砕後に乾燥したもの(乾燥破砕物);搾汁又はその乾燥物が挙げられる。ヒハツの市販品としては、例えば、三國株式会社製の「ヒハツ末」が挙げられる。
【0034】
ヒハツ抽出物の形態としては、抽出液またはその乾燥物(乾燥エキス)が含まれる。ヒハツ抽出物は、上記のヒハツの使用部位を、抽出溶媒を用いて抽出処理することにより得ることができる。ヒハツの抽出処理に使用される抽出溶媒としては、例えば、水;エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール;1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール等の多価アルコール;これらの混合液等の極性溶媒が挙げられ、好ましくは水、エタノール、1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール又はこれらの混合溶媒が挙げられ、より好ましくは水が挙げられる。ヒハツ抽出物の市販品としては、例えば、丸善製薬株式会社の「ヒハツエキスパウダーMF」が挙げられる。
【0035】
本発明の経口組成物における(C)成分の含有量としては特に限定されず、得るべき不快味臭低減効果、及び/又は付与すべき(C)成分が本来有する効果に応じて適宜決定することができる。
【0036】
本発明の経口組成物における好ましい(C)成分の含有量としては、ヒハツの場合はヒハツそのものの重量、ヒハツ抽出物の場合は原生薬換算量(以下において、まとめて(C)成分の「原生薬換算量」と記載する。)で、0.1重量%以上が挙げられる。より一層好ましい不快味臭低減効果を得る観点から、(C)成分の含有量としては、原生薬換算量で、より好ましくは0.7重量%以上、更に好ましくは10重量%以上が挙げられる。経口組成物における好ましい(C)成分の含有量は、その上限において特に限定されないが、原生薬換算量で、例えば70重量%以下が挙げられる。また、本発明の経口組成物は不快味臭低減効果に優れているため、(C)成分が少量であっても効果的に不快味臭低減効果を得ることができる。このような観点から、経口組成物における(C)成分の含有量の上限の好適な例としては、原生薬換算量で、例えば5重量%以下、3重量%以下、又は1重量%以下が挙げられる。
【0037】
(C)成分がヒハツ抽出物単独の場合、本発明の経口組成物における好ましい(C)成分の含有量としては、乾燥重量換算量で、0.001重量%以上が挙げられる。より一層好ましい不快味臭低減効果を得る観点から、(C)成分の含有量としては、乾燥重量換算量で、より好ましくは0.007重量%以上、更に好ましくは0.1重量%以上が挙げられる。経口組成物における好ましい(C)成分の含有量は、その上限において特に限定されないが、乾燥重量換算量で、例えば7重量%以下が挙げられる。また、本発明の経口組成物は不快味臭低減効果に優れているため、(C)成分が少量であっても効果的に不快味臭低減効果を得ることができる。このような観点から、経口組成物における(C)成分の含有量の上限の好適な例としては、乾燥重量換算量で、例えば0.05重量%以下、0.03重量%以下、又は0.01重量%以下が挙げられる。
【0038】
(A)成分及び(B)成分の総量と(C)成分との比率については特に限定されず、上記の各成分の含有量によって決定される。
【0039】
(A)成分及び(B)成分の総量1重量部に対する好ましい(C)成分の含有量としては、原生薬換算量(ヒハツの場合はヒハツそのものの重量、ヒハツ抽出物の場合は原生薬換算量)で、0.004重量部以上が挙げられる。より一層好ましい不快味臭低減効果を得る観点から、(A)成分及び(B)成分の総量1重量部に対する(C)成分の含有量としては、原生薬換算量で、より好ましくは0.03重量部以上、更に好ましくは0.4重量部以上が挙げられる。経口組成物における(A)成分及び(B)成分の総量1重量部に対する好ましい(C)成分の含有量は、その上限において特に限定されないが、原生薬換算量で、例えば3.5重量部以下が挙げられる。また、本発明の経口組成物は不快味臭低減効果に優れているため、(C)成分が少量であっても効果的に不快味臭低減効果を得ることができる。このような観点から、経口組成物における(C)成分の含有量の上限の好適な例としては、原生薬換算量で、例えば0.25重量部以下、0.15重量部以下、又は0.05重量部以下が挙げられる。
【0040】
また、(C)成分がヒハツ抽出物単独の場合、(A)成分及び(B)成分の総量1重量部に対する好ましい(C)成分の含有量としては、乾燥重量換算で、0.00004重量部以上が挙げられる。より一層好ましい不快味臭低減効果を得る観点から、(A)成分及び(B)成分の総量1重量部に対する(C)成分の含有量としては、乾燥重量換算で、より好ましくは0.0003重量部以上、更に好ましくは0.004重量部以上が挙げられる。経口組成物における(A)成分及び(B)成分の総量1重量部に対する好ましい(C)成分の含有量は、その上限において特に限定されないが、原生薬換算量で、例えば0.035重量部以下が挙げられる。また、本発明の経口組成物は不快味臭低減効果に優れているため、(C)成分が少量であっても効果的に不快味臭低減効果を得ることができる。このような観点から、経口組成物における(C)成分の含有量の上限の好適な例としては、乾燥重量換算で、例えば0.0025重量部以下、0.0015重量部以下、又は0.0005重量部以下が挙げられる。
【0041】
その他の成分
本発明の経口組成物は、前記(A)~(C)成分の他に、必要に応じて、他の栄養成分や薬理成分を含有していてもよい。このような栄養成分や薬理成分としては、飲食品や医薬品に使用可能なものであれば特に制限されないが、例えば、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、ナイアシン、パントテン酸、葉酸、ビオチン、リコペン等のビタミン類;塩酸ベタイン、塩化カルニチン、塩化ベタネコール等の健胃剤;カルシウム、イオウ、マグネシウム、亜鉛、セレン、鉄等のミネラル類;大豆タンパク、卵白粉末、乳清タンパク等のタンパク質;グリシン、アラニン、シスチン、フェニルアラニン、タウリン、トリプトファン、バリン、ロイシン、イソロイシン等の上記(B)成分以外のアミノ酸;リノール酸、γ-リノレン酸、α-リノレン酸、ドコサヘキサエン酸、エイコサペンタエン酸等の脂肪酸類;カラメル色素、クチナシ色素、アントシアニン色素、アナトー色素、パプリカ色素、紅花色素、紅麹色素、フラボノイド色素、コチニール色素、アマランス、エリスロシン、アルラレッドAC、ニューコクシン、フロキシン、ローズベンガル、アシッドレッド、タートラジン、サンセットイエローFCF、ファストグリーンFCF、ブリリアントブルーFCF、インジゴカルミン等の色素;各種フルーツのフレーバーやエッセンス等の香料;クエン酸及びその塩、リンゴ酸及びその塩、酒石酸及びその塩、酢酸及びその塩、乳酸及びその塩、食塩、グルタミン酸及びその塩、みりん、食酢、天然果汁、上記(A)成分及び(C)成分以外の植物抽出エキス、果実・海産物等の裁断物又は粉末化物等の調味剤;アガリクス、シイタケエキス、レイシ、ヤマブシタケ等のキノコ類又はそのエキス;食物繊維、ローヤルゼリー、プロポリス、ハチミツ、コンドロイチン硫酸、グルコサミン、セラミド、ヒアルロン酸等のその他機能性素材等が挙げられる。これらの添加成分は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、これらの添加成分の含有量については、使用する添加成分の種類や経口組成物の用途等に応じて適宜設定される。
【0042】
更に、本発明の経口組成物は、所望の製剤形態に調製するために、必要に応じて、基剤や添加剤等が含まれていてもよい。このような添加剤及び基剤としては、食品や医薬品に使用可能なものであれば特に制限されないが、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、等張化剤、可塑剤、分散剤、乳化剤、溶解補助剤、湿潤化剤、安定化剤、懸濁化剤、粘着剤、コーティング剤、光沢化剤、水、油脂類、ロウ類、炭化水素類、脂肪酸類、高級アルコール類、エステル類、水溶性高分子、界面活性剤、金属石鹸、低級アルコール類、多価アルコール、pH調整剤、緩衝剤、酸化防止剤、紫外線防止剤、防腐剤、矯味剤、香料、粉体、増粘剤、色素、キレート剤等が挙げられる。これらの添加剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、これらの添加剤及び基剤の含有量については、使用する添加剤及び基剤の種類、経口組成物の製剤形態等に応じて適宜設定される。
【0043】
添加剤及び基剤としては、デンプン、セルロース、二酸化ケイ素、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、合成ケイ酸アルミニウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、合成ハイドロタルサイト、無水リン酸水素カルシウム、カルメロース、カルメロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、クロスポピドンが挙げられ、好ましくは、デンプン、セルロース、二酸化ケイ素、ステアリン酸カルシウムが挙げられる。これらの添加剤及び基剤の含有量は、使用する添加剤及び基剤の種類に応じて適宜設定される。
【0044】
本発明の経口組成物が、上述の(A)成分、(B)成分及び(C)成分の他に、添加剤及び/又は基剤をさらに含む場合、経口組成物中の添加剤及び基剤の配合量としては、総量で、2~90重量%、好ましくは10~85重量%、より好ましくは50~80重量%、さらに好ましくは70~80重量%が挙げられる。
【0045】
製造方法
本発明の経口組成物の製造方法は、上記の前記(A)~(C)成分と、必要に応じて配合されるその他の成分とを用いて、各種製剤形態及び性状、並びに使用目的に応じ、従来公知の通常の製剤手順に従えばよい。
【0046】
剤型・製剤形態
本発明の経口組成物の製剤形態については、経口投与が可能であれば特に制限されないが、例えば、散剤、細粒剤、顆粒剤、錠剤、トローチ剤、チュアブル剤、カプセル剤(軟カプセル剤、硬カプセル剤)、丸剤等の固形状製剤;ゼリー剤等の半固形状製剤;液剤、懸濁剤、シロップ剤等の液状製剤が挙げられる。これらの製剤形態の中でも、含有成分の安定性や携帯性等の観点から、好ましくは固形状製剤が挙げられる。また、本発明の経口組成物は、優れた不快味臭低減効果を奏するため、甘味料などの公知のマスキング剤を含まない製剤形態、及びコーティングを含まない製剤形態であっても、効果的に不快味低減効果が奏されるため良好な服用感を得ることができる。このような観点から、製剤形態としては、より好ましくは、散剤、細粒剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、丸剤が挙げられ、さらに好ましくは、散剤、細粒剤、顆粒剤、錠剤が挙げられ、一層好ましくは錠剤が挙げられ、特に好ましくは素錠が挙げられる。
【0047】
用途
本発明の経口組成物は、(A)成分、(B)成分、及び/又は(C)成分による公知の効果を得る目的で用いることができる。具体的な用途としては、(A)成分に由来する効能を利用した血中脂質改善剤、抗高血圧剤、血糖値上昇抑制剤、血管保護剤、ビタミンCの利用効率向上剤、血液流動性改善剤等;(B)成分に由来する効能を利用した血管拡張剤、血圧上昇抑剤、筋肉合成剤、創傷治癒竿、アンモニア解毒剤、免疫賦活剤、インスリン分泌剤、ポリアミン合成剤;(C)成分に由来する効能を利用した皮膚表面温度回復剤、血行促進剤、むくみ感改善剤等の少なくともいずれかが挙げられる。
【0048】
用量・用法
本発明の経口組成物の用量については、投与目的、投与対象者の年齢、性別、体質、症状の程度等に応じて適宜設定されるが、例えば、ヒト1人に対して1日当たり、(A)成分及び(B)成分の総量で300~1700mg、好ましくは700~1200mgとなる量で、1日1~3回、好ましくは2又は3回の頻度で服用することができる。
【0049】
2.経口組成物の不快味臭低減方法
前述するように、ヒハツ及び/又はその抽出物は、松樹皮抽出物とアルギニン源との両方が配合された極めて強い不快味臭を呈する経口組成物において、当該不快味臭を効果的に低減することができる。従って、本発明は、(A)松樹皮抽出物及び(B)アルギニン源を含む経口組成物に、(C)ヒハツ及び/又はその抽出物を配合することを含む、経口組成物の不快味臭低減方法も提供する。
【0050】
本発明の経口組成物の不快味臭低減方法において、使用する成分の種類や使用量、経口組成物の形態等については、前記「1.経口組成物」の欄に示す通りである。
【実施例
【0051】
以下に実施例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0052】
試験例1
1.経口組成物の調製
表1の組成を有する経口組成物の散剤を調製した。表1で用いられた各成分の詳細は以下の通りである。
・松樹皮抽出物:フランス松樹皮抽出物Pycnogenol(登録商標)、濃縮率1000倍
・アルギニン源:L-アルギニン
・ヒハツ抽出物:ヒハツ丸善製薬株式会社製「ヒハツエキスパウダーMF」;ヒハツ果穂の水抽出物とデキストリンの混合製剤(混合製剤重量=原生薬換算量)
【0053】
2.呈味評価(不快味臭低減効果の評価)
調製した粉末状製剤240mgを水なしでモニター(訓練された呈味パネラー)が服用し、呈味を評価した。呈味の評価は以下の基準に基づいて行った。結果を表1に示す。
【0054】
×××:苦味があり、木の風味のような不快な臭い及び味が極めて強く、服用が困難。
××:苦味があり、木の風味のような不快な臭い及び味が強く、非常に不快な味及び臭いを感じる。
×:苦味があり、木の風味のような不快な臭い及び味がし、不快な味及び臭いを感じる。
△:苦味はあるが、木の風味のような不快な臭い及び味が軽減されており、服用には耐えられる。
○:苦味及び木の風味のような不快な臭い及び味が軽減されており、あまり不快な味及び臭いを感じない。
◎:苦味及び木のような不快な臭い及び味をほとんど感じず、不快な味及び臭いを感じない。
【0055】
【表1】
【0056】
表1から明らかな通り、松樹皮抽出物には単独で不快味臭があり(比較例1)、また、表示していないがアルギニン源には単独で苦みのレベルが「×」の不快な苦みがあり、松樹皮抽出物とアルギニン源とが組み合わされると、服用に耐えないほどの顕著な不快味臭が認められた(比較例2)。これに対し、ヒハツ抽出物を更に配合することで、不快味臭の顕著な低減が認められた(実施例1~8)。
【0057】
試験例2
表2に示す組成の経口組成物の素錠を調製した。表2で用いられた松樹皮抽出物、アルギニン源、及びヒハツ抽出物の詳細は、試験例1と同様である。調製した経口組成物の素錠を女性モニター10人が服用し、呈味を評価した。具体的には、表3に示す5段階の判定指標で評価した。結果を表3に示す。
【0058】
【表2】
【0059】
【表3】
【0060】
表3から明らかなとおり、モニター全員が呈味について良好な評価であり、特に、大多数のモニターが、服用しやすい呈味であるとの評価であった。
【0061】
処方例
表4及び表5に記載の処方の経口組成物の散剤(1日量)、及び表6に記載の処方の経口組成物の素錠(16錠、1日量)を調製した。表4~表6で用いられた松樹皮抽出物、アルギニン源、及びヒハツ抽出物の詳細は、試験例1と同様である。いずれの経口組成物も、不快味臭が低減されていた。
【0062】
【表4】
【表5】
【表6】