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特許7418331プラズマフラッドガン(PFG)の動作のためにフッ素含有ガスおよび不活性ガスを使用する方法および組立体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-11
(45)【発行日】2024-01-19
(54)【発明の名称】プラズマフラッドガン(PFG)の動作のためにフッ素含有ガスおよび不活性ガスを使用する方法および組立体
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/077 20060101AFI20240112BHJP
   H01J 37/317 20060101ALI20240112BHJP
   H01J 37/06 20060101ALI20240112BHJP
   H05H 1/24 20060101ALI20240112BHJP
   H01L 21/265 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
H01J37/077
H01J37/317 Z
H01J37/06 Z
H05H1/24
H01L21/265 603A
H01L21/265 N
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020533012
(86)(22)【出願日】2018-11-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-22
(86)【国際出願番号】 US2018061052
(87)【国際公開番号】W WO2019118121
(87)【国際公開日】2019-06-20
【審査請求日】2021-11-12
(31)【優先権主張番号】62/599,098
(32)【優先日】2017-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】505307471
【氏名又は名称】インテグリス・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】デプレ, ジョセフ アール.
(72)【発明者】
【氏名】スウィーニー, ジョセフ ディー.
(72)【発明者】
【氏名】イェデイブ, シャラド エヌ.
(72)【発明者】
【氏名】タン, イン
【審査官】大門 清
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/117053(WO,A1)
【文献】特表2011-512015(JP,A)
【文献】特表2016-534495(JP,A)
【文献】特表2013-506962(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0108894(US,A1)
【文献】国際公開第2013/122986(WO,A1)
【文献】特開2014-003022(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/00-37/36
H05H 1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマフラッドガン(PFG)の性能を改善する方法であって、
フィラメントを備えるPFGにフッ素含有ガスを導入することと、
前記PFGに不活性ガスを導入することとを含み、
前記PFGが、0~90ボルトの範囲のアーク電圧、0~10アンペアの範囲のアーク電流、0~30キロボルトの範囲の引出し電圧、0~5キロボルトの範囲の抑制電圧といった条件のうち1つまたは複数の下で動作し、
導入される前記フッ素含有ガスが、導入される前記フッ素含有ガスと不活性ガスの全体積の10%以下であり、
前記PFGの動作期間中に、前記フッ素含有ガスと前記不活性ガスを導入しながら前記フィラメントに電流が流され、前記フィラメントの重量損失が、同一の期間および動作条件で前記フッ素含有ガスは導入しないフィラメントの重量損失よりも小さく、
いかなる重量損失も、前記同一の期間および動作条件におけるフィラメントの重量損失と比較して50%または25%を超えて低減される、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般にイオン注入機器および処理に関し、より具体的にはイオン注入プラズマフラッドガンの性能を改善するための装置および方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体製造の分野では、イオン注入は、半導体デバイス製作の基本的な単位動作である。イオン注入機器は多種多様なタイプがあり、ビームイオン注入システム、プラズマ浸漬システム、および他の様々なタイプのシステムを含み得る。
【0003】
ビームイオン注入システムを使用すると、正に帯電したイオンが、注入されるウェーハ基板上に衝突して、ウェーハ基板の絶縁された領域に正の電荷を蓄積し得、正の表面電位を生成する。ウェーハ帯電は、ウェーハ基板からの2次電子放出に由来することもある。ウェーハ基板の表面電荷は、金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)回路などウェーハの集積回路構成のフィーチャに悪影響を及ぼすかまたは、回復不能な被害を与えかねないほど十分に強いものであり得る。
【0004】
低エネルギー電子を含むプラズマを生成することによってそのような表面電荷蓄積に対処するためにプラズマフラッドガン装置が使用され得、そのため、低エネルギー電子がイオンビームの中に分散してウェーハ面に移送され得、そうでなければ出現するであろう電荷蓄積を中和する。
【0005】
プラズマフラッドガン装置は多種多様であり得るが、特徴としてアークチャンバを備え、これは、イオン化フィラメント要素とともに配置され、ソレノイドコイルによって囲まれたプラズマチューブに結合されており、イオンビームチャンバと連通するものである。アークチャンバのイオン化フィラメント要素は高融点金属から形成され、大抵の場合タングステンであり、低エネルギーの電子プラズマを形成するために使用されるガスは、特徴としては、とりわけアルゴン、クリプトン、またはキセノンなどの不活性ガスである。ウェーハの近辺に中和電子を閉じ込めることによってウェーハ基板の帯電の緩和を支援するために、一般的には電子線量、均一性、ならびに電荷の測定および監視の構成要素を含むように、ファラデー組立体が含まれてよい。
【0006】
このように、プラズマフラッドガン装置は、ビームイオン注入システムの運用問題に対処するものであり、ビームプラズマ電荷を中和して粒子上昇を制御するように機能し、ウェーハ基板のチャージアップ電圧を低減して薄膜集積回路構成素子の静電破壊を防止する。
【0007】
プラズマフラッドガンの動作中に、イオンビームに、電荷を中和する低エネルギー電子が導入され、基板ウェーハに対して、ウェーハ上に蓄積した正の電荷を中和するように作用する。しかしながら、この処理中に、プラズマフラッドガンのフィラメントが不活性ガスによって偶発的にスパッタされてゆっくり劣化する可能性がある。スパッタされたフィラメント材料は、ガス物質になり、汚染物質として、イオン注入システムの絶縁物およびグラファイト部品上に堆積する可能性がある。より一般的には、拡張動作を用いて、イオンビームおよび凝縮可能なガス蒸気が、プラズマフラッドガンのアークチャンバおよびその構成要素の内部、上、およびまわりに堆積する。そのような蒸気は、プラズマフラッドガンが電気的に結合されているファラデー(用量測定)組立体上にも堆積する。それらの堆積物は、堆積物の特定の起源に関係なく、プラズマフラッドガンシステムの性能にとって有害であり、システムの動作寿命にも有害である。性能の観点から、たとえば、これらの堆積物は電気的短絡による電気的不全をもたらしがちである。やはり性能に関して、スパッタされたフィラメント材料(たとえばタングステン)が、イオン注入されているウェーハ基板の中に向かい得、そのスパッタされたフィラメント材料(たとえばタングステン)が基板の中の汚染物質となって、イオン注入システムおよびイオン注入処理の製品収量が低下する。
【0008】
これらの堆積物によって、プラズマフラッドガンの放出電流が弱まるとともに、フィラメントのリーク電流も増加し得、プラズマフラッドガンが用量測定システムの一部分であるため、ファラデーリーク電流が生じ得る。フラッドガンのアークチャンバ内に堆積した汚染物質のこれらの影響のすべてが、動作中に蓄積的影響を及ぼし得て、堆積された汚染物質の洗浄を含む定期補修が必要となり、プラズマフラッドガンの有効寿命を経時的に短縮し得る。
【発明の概要】
【0009】
本開示は、一般にイオン注入機器およびイオン注入処理に関し、より具体的にはイオン注入プラズマフラッドガンの性能を改善するための装置および方法に関する。本開示の一態様は、プラズマフラッドガンにガスを配送するためのガス組立体を提供するものである。組立体は、プラズマフラッドガンに不活性ガスを配送するように構成された流体供給パッケージを含み、プラズマフラッドガンは、イオン注入動作において基板の表面電荷を調整するための電子を含む不活性ガスプラズマを生成するために使用される。組立体にはフッ素含有ガスも含まれ、これは、不活性ガスと混合されているか、または、フッ素含有ガスを、プラズマフラッドガンへの不活性ガスの配送と同時もしくは順次に配送するように構成された個別の気体供給パッケージの中にある。組立体は、フッ素含有ガスと不活性ガスの全体積の10%以下の体積のフッ素含有ガスを配送するように構成されている。
【0010】
関連して、本開示は、プラズマフラッドガンの性能を改善する方法も提供するものであり、この方法は、(a)フィラメントを備えるPFGにフッ素含有ガスを導入するステップと、(b)PFGに不活性ガスを導入するステップとを含む。この方法では、導入されるフッ素含有ガスは、導入されるフッ素含有ガスと不活性ガスの全体積の10%以下である。
【0011】
フッ素含有ガスと不活性ガスの全体積の10%以下の量のフッ素含有ガスが、フラッドガンの動作中にアークチャンバに導入されたとき、動作中のフラッドガンのアークチャンバの内部に所望の効果をもたらすことができ、結果としてプラズマフラッドガンの性能および寿命を改善する。
【0012】
本明細書で説明された量のフッ素含有ガス(≦10%)と不活性ガスを使用すると、アークチャンバの内部の表面に存在する残留物を揮発させることができる。プラズマフラッドガンのフィラメントに由来し、フッ素含有ガスを使用することによって揮発される残留物は、フィラメント上に再堆積され得、プラズマフラッドガンのフィラメントを効果的に再金属化する。結果として、プラズマフラッドガンのフィラメントの寿命が、フッ素含有ガスがない状態で使用されるフィラメントの寿命と比較して延び得る。
【0013】
交互に、または加えて、洗浄効果は、フッ素含有ガスがフィラメントのスパッタを低減するのに有効であるということであり得る。スパッタされたフィラメント材料(たとえばタングステン)は、プラズマフラッドガンを包含する処理によって、イオン注入されている基板に汚染物質として注入され得、処理の収率が低下する。フィラメントのスパッタリングを低減すると、フィラメント材料のイオン注入による基板汚染の可能性が低下し、それによって、説明されたようなフッ素含有ガスおよび不活性ガスを用いて動作するプラズマフラッドガンを包含しているイオン注入方法の収率が向上する。
【0014】
フィラメントに関するフッ素含有ガスの有益な効果は、プラズマフラッドガンの使用期間の後に観測され得る。たとえば、プラズマフラッドガンの動作期間中に、フッ素含有ガスと不活性ガスを導入しながらフィラメントに電流が流される。この期間の最後におけるフィラメントの重量損失は、同一の期間および運転条件でフッ素含有ガスは導入しないフィラメントの重量損失よりも小さい。たとえば、理想条件下では、フッ素含有ガスは、フィラメントからのいかなる重量損失も解消することができるか、またはフィラメントからのいかなる重量損失も大幅に低減することができる。たとえば、フッ素含有ガスを使用すると、重量損失が、同一の期間および運転条件でフッ素含有ガスを使用しないフィラメントの重量損失に対して、少なくとも50%、または少なくとも25%低減され得る。
【0015】
本開示の、様々な、新規かつ独創的な主題の他の態様、特徴、および実施形態が、次の説明および添付の特許請求の範囲から、より十分に明らかになるはずである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】プラズマフラッドガン装置の構造の詳細を示す概略図である。
図2】イオン注入されているウェーハ基板の上流のビームライン構造においてプラズマフラッドガン装置を利用するビームイオン注入システムの概略図である。
図3】本開示の実例となる実施形態によるプラズマフラッドガンにガスを配送するように構成されたガス供給組立体の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本開示は、一般にイオン注入機器およびイオン注入処理に関し、より具体的にはイオン注入プラズマフラッドガンの性能を改善するための装置および方法に関するものである。
【0018】
本開示の一態様は、プラズマフラッドガンに不活性ガスおよびフッ素含有ガスを配送するためのガス供給組立体を提供するものである。組立体は、プラズマフラッドガンに不活性ガスを配送するように構成された流体供給パッケージを含み、プラズマフラッドガンは、イオン注入動作において基板の表面電荷を調整するための電子を含む不活性ガスプラズマを生成するために使用される。組立体にはフッ素含有ガスも含まれ、これは、不活性ガスと混合されているか、または、フッ素含有ガスを、プラズマフラッドガンへの不活性ガスの配送と同時もしくは順次に配送するように構成された個別の気体供給パッケージの中にある。組立体は、フッ素含有ガスと不活性ガスの全体積の10%以下の体積のフッ素含有ガスを配送するように構成されている。
【0019】
本明細書で使用されるように、「フッ素含有ガス」は、プラズマフラッドガンの運転条件下ではガス状であり、1つまたは複数のフッ素原子を含む化合物である。実施形態では、例示のフッ素含有ガスは、F、HF、SiF、GeF、PF、PF、BF、B、NF、N、N、SF、MoF、WF、CF、COF、C、およびC(w、x、y、およびzは、それぞれ独立して、ゼロまたは非ゼロの化学量的に適正な値である)から成るグループから選択される。いくつかの実施形態では、フッ素含有ガスは、NFなどの窒素含有ガスまたはWFなどのタングステン含有ガスである。
【0020】
ガス供給組立体において、フッ素含有ガスは、単一のフッ素含有ガスまたはフッ素ガスの混合物によって代表され得る。
【0021】
フッ素含有に関して、基本的に単一のフッ素含有ガスから成るガス供給組立体は、組立体における支配的なフッ素含有ガスを意味する。すなわち、不活性ガスは別として、組立体のフッ素含有ガス部分において、フッ素含有ガスに混合している他のガスは、ほんの少し(2%以下の体積)しかないか、またはない。組立体のフッ素含有ガス部分の出発物質として、高純度(たとえば少なくとも98%、少なくとも99%)、非常に高い純度(たとえば少なくとも99.9%)、または超高純度(少なくとも99.99%)のフッ化水素などのフッ素含有ガスを利用することができる。
【0022】
同様に、いくつかの実施形態において、フッ素含有ガスが、F、HF、SiF、GeF、PF、PF、BF、B、NF、N、N、SF、MoF、WF、CF、COF、C、およびC(w、x、y、およびzは、それぞれ独立して、ゼロまたは非ゼロの化学量的に適正な値である)のうち2つ以上などの基本的にフッ素ガスから成る混合物によって代表される場合には、前記混合物には、フッ素含有ガスの混合物以外の他のガスは、ほんの少し(1%以下の体積)しかないか、またはない。例示の混合物は、NFの混合物などの窒素とフッ素含有ガスの混合物、WFの混合物などのタングステンとフッ素含有ガスの混合物であり得る。同様に、これらのガスの混合物の出発物質として、たとえば高純度、非常に高い純度、または超高純度のフッ素含有ガスが使用され得る。
【0023】
不活性ガスは、イオン注入システムにおけるウェーハ面の電荷中和のための低エネルギー電子を生成するためにプラズマフラッドガン組立体において有益に採用される任意の適切なタイプのものでよい。特定の実施形態では、不活性ガスは、たとえばアルゴン、ヘリウム、ネオン、窒素、キセノン、クリプトン等、もしくはこれらの不活性ガスのうち2つ以上の混合物を含み得、これらから成り得、またはこれらから基本的に成り得る。
【0024】
そのようなガス供給組立体では、フッ素含有ガスは、様々な実施形態において、不活性ガスと混合されて不活性ガス流体供給パッケージの中にあってよい。そのような供給パッケージは、不活性ガスおよびフッ素含有ガスのパッケージと称され得る。ガスの混合物を有するそのようなパッケージでは、フッ素含有ガスの量は、フッ素含有ガスと不活性ガスの全体積の10%以下である。それゆえに、パッケージでは、不活性ガスの量は、フッ素含有ガスと不活性ガスの全体積の90%以上である。
【0025】
あるいは、フッ素含有ガスおよび不活性ガスの量は、(a)フッ素ガスのフッ素と(b)不活性ガスとの分子比(a:b)に関して説明され得る。いくつかの実施形態では、(a)フッ素ガスのフッ素と(b)不活性ガスとの分子比(a:b)は、1:9~1:999の範囲にある。
【0026】
本開示の態様では、ガス供給組立体は、フッ素含有ガスと不活性ガスの全体積の、約0.1~10%、約0.5~約5%、または約1~約3%の体積のフッ素含有ガスを配送するように構成されている。例示のガスには、NFなどの窒素およびフッ素含有ガス、およびまたはWFなどのタングステンおよびフッ素含有ガスが含まれる。
【0027】
実施形態では、パッケージは、全体積の90%~99.9%の量のキセノンなど1つまたは複数の不活性ガス、および全体積の0.1%~10%の量のNFまたはWFなど1つまたは複数のフッ素含有ガスを含む。より具体的には、パッケージは、全体積の95%~99.5%の量の1つまたは複数の不活性ガス、および全体積の0.5%~5%の量の1つまたは複数のフッ素含有ガスを含み得る。より具体的には、パッケージは、全体積の96%~99.25%の量の1つまたは複数の不活性ガス、および全体積の0.75%~4%の量の1つまたは複数のフッ素含有ガスを含み得る。より具体的には、パッケージは、全体積の97%~99%の量の1つまたは複数の不活性ガス、および全体積の1%~3%の量の1つまたは複数のフッ素含有ガスを含み得る。より具体的には、パッケージは、全体積の97.5%~98.5%の量の1つまたは複数の不活性ガス、および全体積の1.5%~2.5%の量の1つまたは複数のフッ素含有ガスを含み得る。不活性ガスおよびフッ素含有ガスのパッケージからのガス混合物は、記述された範囲のうちいずれかの範囲内の所望量の不活性ガスおよびフッ素含有ガスを供給するために、プラズマフラッドガンに直接配送され得る。
【0028】
様々な実施形態において、フッ素含有ガスは個別のフッ素含有ガス供給パッケージの中にあってよく、この組立体は、フッ素含有ガスと不活性ガスを混合して、プラズマフラッドガンに分配する混合物を形成するために、フッ素含有ガス供給パッケージからフッ素含有ガスを受け取り、不活性ガス流体供給パッケージから不活性ガスを受け取るように構成された流れ回路構成をさらに含む。流れ回路構成は、プラズマフラッドガンの中で、不活性ガスの量が全体積の90%~99.9%になり、フッ素含有ガスの量が全体積の0.1%~10%になるように、分配するように構成され得る。流れ回路構成は、プラズマフラッドガンの中で、不活性ガスの量とフッ素含有ガスの量とが、それぞれ、全体積の95%~99.5%と0.5%~5%、96%~99.25%と0.75%~4%、97%~99%と1%~3%、97.5%~98.5%と1.5%~2.5%になるように、分配するように任意選択で構成され得る。
【0029】
様々な実施形態において、流れ回路構成には、それぞれの流体供給パッケージからフッ素含有ガスと不活性ガスとを受け取り、これらを混合して、プラズマフラッドガンに分配するための混合物を形成するように配置された混合チャンバが含まれ得る。
【0030】
様々な実施形態において、流れ回路構成には、混合チャンバの中でフッ素含有ガスと不活性ガスの混合を選択的に可能にするか、あるいはフッ素含有ガスおよび不活性ガスがプラズマフラッドガンに個別に流れることを選択的に可能にするように構成された弁が含まれ得る。弁は、不活性ガスとフッ素含有ガスの量が、それぞれ、全体積の90%~99.9%と0.1%~10%になるように、または本明細書で説明されたようなより具体的な範囲のうち任意のものに入るように、ガスの流れを調整するように構成され得る。
【0031】
様々な実施形態において、流れ回路構成は管などのガス流れコンジットを含み得、不活性ガス用のコンジットはフッ素含有ガス用のコンジットよりも大きく、不活性ガスはフッ素含有ガスよりも大量の流れが供給され得る。そのため、コンジットの大きさを調整すれば、全体積の90%~99.9%の量の不活性ガスおよび0.1%~10%の量のフッ素含有ガスの流れ、または本明細書で説明されたようなより具体的な範囲のうち任意ものに入るガスの流れを供給することができる。
【0032】
様々な実施形態において、ガス供給組立体が備え得るプロセッサは、フッ素含有ガス供給パッケージからのフッ素含有ガスの分配を制御し、不活性ガス供給パッケージからの不活性ガスの分配を分離するように構成されている。そのような組立体では、プロセッサは、イオン注入中に不活性ガスが連続的に分配されるように、不活性ガスの分配を制御するように構成されてよく、また、不活性ガスの分配中にフッ素含有ガスが断続的に分配されるか、または、不活性ガスの分配後にフッ素含有ガスが順次に分配されるように、フッ素含有ガスの分配を制御するように構成されている。プロセッサは、連続的分配または断続的分配のいずれかを使用して、全体積の90%~99.9%の量の不活性ガスおよび0.1%~10%の量のフッ素含有ガス、または本明細書で説明されたようなより具体的な範囲のうち任意ものに入るガスを分配するように構成され得る。
【0033】
フッ素含有ガスと不活性ガスの全体積の10%以下の量のフッ素含有ガスが、フラッドガンの動作中にアークチャンバに導入されたとき、動作中のフラッドガンのアークチャンバの内部に所望の効果をもたらすことができ、結果としてプラズマフラッドガンの性能および寿命を改善する。フッ素含有ガスまたはこれから導出される化学成分は、プラズマフラッドガンの1つまたは複数の部分、またはアークチャンバの内部に堆積された残留物と相互作用して、短期の性能特性、より長期の性能特性、またはプラズマ流ガンもしくは付属のイオン注入システムの寿命のうち1つまたは複数を改善する。
【0034】
上記で様々に説明されたガス供給組立体および様々な方法の実施形態において、プラズマフラッドガンの中にフッ素含有ガスがあると、プラズマフラッドガンの材料堆積物から揮発性の反応生成物ガスを生成するのに効果的である。結果として得られる「洗浄効果」により、材料堆積物が揮発してアークチャンバの表面から除去され得、任意選択でアークチャンバから(たとえばポンピングして)搬出することも可能である。フッ素含有ガスは、アークチャンバの壁表、絶縁体、または他の表面に存在する堆積物を除去するのに効果的であり得る。アークチャンバの内部に存在し、使用中に内部の表面に蓄積する残留物の量が、この洗浄効果により、フッ素含有ガスがないことを除けば同一のやり方でのプラズマフラッドガンの動作によって表面に存在するはずの同一の残留物の量と比較して、低減される。アークチャンバにおける残留物が減少すると、プラズマフラッドガンの性能が改善され得る。一例として、絶縁体に存在する残留物は、絶縁体上の残留物構造によって直接引き起こされる可能性がある短絡による電気的不全の出現を減少するかまたは防止することができる。
【0035】
それに加えて、またはその代わりに、アークチャンバの表面から堆積物を除去すると、フィラメントの性能またはフィラメントの寿命も改善し得る。たとえば、アークチャンバの内部の表面に存在する残留物を揮発させると、これらの残留物は、プラズマフラッドガンのフィラメントに由来するものであるならアークチャンバに再入してフィラメント上に再堆積され得、プラズマフラッドガンのフィラメントを効果的に再金属化する。結果として、プラズマフラッドガンのフィラメントの寿命が、反応チャンバにフッ素含有ガスがないことを除けば同一のやり方での同一のプラズマフラッドガンの動作の同一のフィラメントの寿命と比較して、延長され得る。
【0036】
たとえば、PFGの動作期間中に、フッ素含有ガスと不活性ガスを導入しながらフィラメントに電流が流される。運転期間の前後にフィラメントの重量を比較することによって決定され得るものなど、フィラメント材料の何らかの損失がある場合には、重量損失は、フッ素含有ガスを導入しないことを除けば同一の期間および運転条件にわたるフィラメントの重量損失よりも少ない。たとえば、フッ素含有ガスを使用すると、重量損失が、同一の期間および運転条件でフッ素含有ガスを使用しないフィラメントの重量損失に対して、約50%、または約25%少なくなり得る。
【0037】
交互に、または加えて、洗浄効果の別の可能性には、フッ素含有ガスが動作中のプラズマフラッドガンのフィラメントのスパッタを低減するのに有効であるということがあり得る。使用中にスパッタされてアークチャンバに入るフィラメント材料(たとえばタングステン)は、プラズマフラッドガンとともに動作する注入ビームの中を進むことができる。一旦イオン注入ビームに入ったフィラメント材料は、イオン注入されている基板の中に汚染物質として注入され得る。基板の中に存在するフィラメント材料は、イオン注入処理の収率を低下させる汚染物質である。本開示のこの洗浄効果、すなわちアークチャンバへのフィラメント材料のスパッタの減少は、イオン注入基板がフィラメント材料によって汚染される可能性を低減することにより、説明されたようにフッ素含有ガスを用いて動作するプラズマフラッドガンを包含しているイオン注入方法の収率は、プラズマフラッドガンにフッ素含有ガスを使用しない同一の方法と比較して増加する。
【0038】
フッ素含有ガスと不活性ガスの混合物としてフッ素含有ガスがプラズマフラッドガンに供給される実施形態では、この混合物は、説明されたような例示のフッ素含有ガス(単一のフッ素含有ガスまたは2つ以上の組合せ)および説明されたような不活性ガスを含み得、これらから成り得、またはこれらから基本的に成り得る。(たとえばパッケージの中の、または説明されたようなシステムもしくは方法において使用される)フッ素含有ガスおよび不活性ガスから基本的に成る混合物は、説明されたようなフッ素含有ガスおよび不活性ガス以外には、微小量より多くのいかなる成分も含有していない混合物である。
【0039】
プラズマフラッドガン装置は、本明細書で様々に説明されたようなガス供給組立体を含むものとして、本開示の広範な実践の範囲内で様々に設置されてよい。同様に、本開示は、プラズマフラッドガン装置を含むイオン注入システムを、様々に設置されるように企図するものである。
【0040】
さらなる態様における本開示は、不活性ガス源からプラズマフラッドガンに流れる不活性ガスを受け取って、不活性ガスから、イオン注入されている基板の表面電荷を中和するようにエネルギー的に適合された電子を含む不活性ガスプラズマを生成するように構成されたプラズマフラッドガンを動作させる方法を企図するものであり、前記方法は、プラズマフラッドガンへのフッ素含有ガスの流れに関して、プラズマフラッドガンに、断続的に、連続的に、または順次に導入することを含む。
【0041】
電荷を中和する低エネルギー電子を生成するためのプラズマフラッドガンシステムの動作では、不活性ガスがプラズマフラッドガンのフィラメントをスパッタする。スパッタされたフィラメント材料は、ガス状になり、イオン注入システムの絶縁物およびグラファイト成分上に堆積物を形成し得る。連続動作を用いて、イオンビームおよび凝縮可能なガス蒸気が、プラズマフラッドガンのアークチャンバおよびその構成要素の内部、上、およびまわりに堆積する。そのような蒸気は、プラズマフラッドガンが電気的に結合されているファラデー(用量測定)組立体上にも堆積する。本明細書で説明された方法およびフッ素含有ガスは、本明細書で説明されたような洗浄効果をもたらすことにより、これらの影響を低減するか、解消するか、または改良するのに効果的である。洗浄効果のタイプの1つには、説明されたような方法で使用されたとき、フッ素含有ガスが、プラズマフラッドガンに堆積した材料から揮発性の反応生成物ガスを生成するのに効果的であり得ることがある。これによって、アークチャンバにおけるそのような材料の堆積物の存在を低減することができ、すなわち、アークチャンバが、フッ素含有ガスを使用しないで同一の動作をする同一のアークチャンバと比較して、より清浄になる。材料堆積物を低減すると、結果としてプラズマフラッドガンの短期性能を改善するとともに、プラズマフラッドガンの製品寿命を延長することができる。加えて、または交互に、フッ素含有ガスの洗浄効果は、プラズマフラッドガンにおけるプラズマ発生フィラメントの再金属化を達成し得るものである。
【0042】
本開示の方法では、不活性ガスは、単独で、またはフッ素含有ガスと混合されて、1つまたは複数の所望の流量でプラズマフラッドガンに流入することができる。ガスまたはガス混合物の流量は、標準立方センチメートル/分(SCCM)の流れ単位で測定され得る。本開示の方法の実施形態では、不活性ガスの流れは3SCCM以下の流量でPFGに導入される。より具体的な実施形態では、不活性ガスがPFGに導入される流量は、0.1~3SCCM、0.5~2SCCM、または0.75~1.75SCCMである。
【0043】
そのような技法の様々な実施形態において、フッ素含有ガスは、プラズマフラッドガンへの不活性ガスの流れに関連してプラズマフラッドガンに断続的に導入され得る。そのような実施形態では、フッ素含有ガスは、プラズマフラッドガンへの不活性ガスの流れに関連してプラズマフラッドガンに断続的に導入され得、PFGに導入される不活性ガスの流量は、0.1~3SCCM、0.5~2SCCM、または0.75~1.75SCCMであって3SCCM以下であり、導入される不活性ガスとフッ素含有ガスの量は、それぞれ、全体積の90%~99.9%と0.1%~10%であり、または本明細書で説明されたようなより具体的な範囲のうち任意のものである。
【0044】
この技法の様々な実施形態において、フッ素含有ガスは、プラズマフラッドガンへの不活性ガスの流れに関連してプラズマフラッドガンに連続的に導入され得る。そのような実施形態では、フッ素含有ガスは、プラズマフラッドガンへの不活性ガスの流れに関連してプラズマフラッドガンに連続的に(たとえば別々の流れから同時に)導入され得、PFGに導入される不活性ガスの流量は、0.1~3SCCM、0.5~2SCCM、または0.75~1.75SCCMであって3SCCM以下であり、導入される不活性ガスとフッ素含有ガスの量は、それぞれ、全体積の90%~99.9%と0.1%~10%であり、または本明細書で説明されたようなより具体的な範囲のうち任意のものである。
【0045】
in situフッ素含有ガスおよび不活性ガスが(少なくとも最初は)個別の流れで供給されるとき、それぞれの個別の流れの流量は、プラズマフラッドガン組立体の中の堆積物の除去を達成し、内部のフィラメントを再金属化(たとえば再タングステン化)する一方で、不活性ガスからの低エネルギー電子の電荷中和も達成するなど、本明細書で説明されたような洗浄効果をもたらすのに十分な流れから導出するガスの相対濃度を達成するために、対応して変化され、決定され得る。
【0046】
この技法の様々な実施形態において、フッ素含有ガスは、プラズマフラッドガンへの不活性ガスの流れに関連してプラズマフラッドガンに順次に導入され得る。そのような実施形態では、フッ素含有ガスは、プラズマフラッドガンへの不活性ガスの流れに関連してプラズマフラッドガンに順次に導入され得、PFGに導入される不活性ガスの流量は、0.1~3SCCM、0.5~2SCCM、または0.75~1.75SCCMであって3SCCM以下であり、導入される不活性ガスとフッ素含有ガスの量は、それぞれ、全体積の90%~99.9%と0.1%~10%であり、または本明細書で説明されたようなより具体的な範囲のうち任意のものである。
【0047】
この技法の様々な実施形態において、フッ素含有ガスは、不活性ガスと混合されてプラズマフラッドガンに流され得る。そのような実施形態では、PFGに導入されるフッ素含有ガスと不活性ガスの混合物の流量は、0.1~3SCCM、0.5~2SCCM、または0.75~1.75SCCMであって3SCCM以下であり、導入される不活性ガスとフッ素含有ガスの量は、それぞれ、全体積の90%~99.9%と0.1%~10%であり、または本明細書で説明されたようなより具体的な範囲のうち任意のものである。
【0048】
上記で論じられた方法は、フッ素含有ガスと不活性ガスを個別のガス供給パッケージからプラズマフラッドガンに供給して実行され得るものである。たとえば、フッ素含有ガスと不活性ガスは、プラズマフラッドガンの外部で互いに混合されてよい。例示の方法によって、混和物はフッ素含有ガスおよび不活性ガス以外には有意量のガスを含有し得ず、フッ素含有ガスおよび不活性ガス以外の他のガスはプラズマフラッドガンに供給されず、すなわち、たとえば個別に、または混和物で、プラズマフラッドガンに供給されるガスは、フッ素含有ガスおよび不活性ガスから成るかまたは基本的に成る。
【0049】
本開示は、保守イベントの間の動作寿命を増すためのイオン注入システムを動作させる方法を企図するものであり、イオン注入システムはプラズマフラッドガンを備え、この方法は、フッ素含有ガスの使用を含めて、本明細書で様々に説明された任意のモードに従ってプラズマフラッドガンを動作させることを含む。
【0050】
本明細書の背景技術の節で論じられたように、イオン注入システムの絶縁体およびグラファイト部品上のフィラメント由来のタングステンまたは他の高融点金属の堆積と、そのようなイオン注入システムにおけるプラズマフラッドガンのアークチャンバおよびファラデー組立体領域における他の不要物質の堆積とを含む運用問題が、ビームイオン注入システムにおけるプラズマフラッドガン装置の使用を特徴づけた。
【0051】
一般的な運用上のプロトコルとして、プラズマフラッドガンは、たとえば年間4回定期的に保守するように設計されているが、非常に頻繁に、たった数週間程度といった短い運転期間の後に早期の交換が必要となる。プラズマフラッドガンが、イオン注入システムの、ファラデー監視要素、用量監視要素、均一性監視要素および帯電監視要素の一部分であり、各プラズマフラッドガンの真空破壊を用いるウェーハの再適格性確認が必要とされるため、早期の交換は不利である。
【0052】
本開示は、そのような運用問題に対する様々な解決策を提供するものである。様々な実施形態において、in situフッ素含有ガスは、プラズマフラッドガンのアークチャンバに流れる不活性ガスと混和される。そのような混和物は、プラズマフラッドガンのアークチャンバに不活性ソースガス(不活性ガス)を供給するために使用される単独ガス供給容器の中に、対応する混合物を用意する必要があり得、そのため、混合物はそのような単独ガス供給容器からプラズマフラッドガンに分配される。他の実施形態では、不活性ソースガスとin situフッ素含有ガスに個別のガス供給容器が使用され得、フッ素含有ガスと不活性ソースガスはアークチャンバまで個別のラインで並行して流れ、そこで混合されて混和ガスを形成し、または、フッ素含有ガスおよび不活性ソースガスがそれぞれ混合チャンバへ流れて混和ガスを形成し、次いで、供給ラインでプラズマフラッドガンのアークチャンバへ流され、または、フッ素含有ガスが、個別のガス供給容器から、不活性ガスを個別のガス供給容器からプラズマフラッドガンのアークチャンバへ運ぶガス供給ラインに流され、その結果、フッ素含有ガスが供給ラインの中で不活性ソースガスと混合されて、混和ガスでプラズマフラッドガンのアークチャンバに配送される。さらなる変形形態として、フッ素含有ガスが、一定期間ごとに、プラズマフラッドガンのアークチャンバまたはアークチャンバへの不活性ガス供給ラインに吹き込まれてよい。この方法の結果すなわち洗浄効果は、動作中にプラズマフラッドガンの表面または構成要素に堆積した残留物の継続的な、または進行中の蓄積が低減することであり得、プラズマフラッドガンのアークチャンバのフィラメントの(たとえば周期的)再金属化(たとえば再タングステン化)を達成し、またはプラズマフラッドガンおよび関連するイオン注入システム構造から不要な堆積物の周期的除去を達成する。
【0053】
このように、本開示が企図する方法の実施形態は、プラズマフラッドガンのアークチャンバに、フッ素含有ガスの連続流を、そのようなアークチャンバへの不活性ソースガスの連続流と同時に、たとえば予混合されたガス混合物として、これを含有するソース容器から供給すること、あるいは、様々な並行流機構において、不活性ガスとフッ素含有ガスを、それぞれ個別のガス供給容器からアークチャンバに直接供給すること、または、アークチャンバの上流の混合構造体に供給すること(専用の混合チャンバまたはプラズマフラッドガンのアークチャンバに流れる不活性ガス用の供給ラインへのフッ素含有ガスの注入)を包含するものである。本開示は、そのようなアークチャンバへの不活性ソースガスの連続的または断続的な流れの中に、プラズマフラッドガンのアークチャンバ向けフッ素含有ガスを周期的(たとえば循環的または非循環的)に配送することも企図するものである。
【0054】
このように、本開示は、たとえばプラズマフラッドガンのフィラメントへタングステンなどのフィラメント材料を運ぶための所望の洗浄効果をもたらすため、または、より一般的には、堆積物との反応から結果として生じる反応生成物ガスが、イオン注入システムから容易に除去され得るように、たとえばフッ素含有ガスの場合の揮発性フルオリドといった揮発性反応生成物ガスを形成するために、in situフッ素含有ガスを不活性ガスと混和するための様々な技術を企図するものである。ある特定の実施形態によって、プラズマフラッドガンのアークチャンバからの揮発性反応生成物ガスの除去は、イオン注入システムからの流出ガスの通常の排出において達成され得、システムに流入する揮発性反応生成物ガスは、他の流出ガスとともにシステムから排出される。それに加えて、またはその代わりに、プラズマフラッドガンのアークチャンバに流れている不活性ガスの中に一定期間ごとにフッ素含有ガスを吹き込むステップ中にアークチャンバからガスを排出することなどによってそのような揮発性反応生成物ガスを除去するために、ポンピング動作が行われてよい。
【0055】
言及されたようなフッ素含有ガスおよび不活性ガスは、一体型ガス供給容器において混和されてよく、またはフッ素含有ガスおよび不活性ガスの各々について個別の容器が採用されてもよい。いずれにしても、ガス供給容器は任意の適切なタイプであり得、たとえば高圧のガスシリンダ、またはEntegris社(米国マサチューセッツ州ビルリカ)から市販されているVAC(登録商標)などの内部で圧力調整するガス供給容器、またはEntegris社(米国マサチューセッツ州ビルリカ)から市販されているSDS(登録商標)などの吸着剤ベースのガス供給容器を備え得る。
【0056】
したがって、上記で論じられたように、様々な実施形態において、不活性ガスおよびin situフッ素含有ガスは、第1の事例では一体型ガス供給容器からガス混合物として供給されてよい。他の実施形態において、不活性ガスおよびin situフッ素含有ガスは、プラズマフラッドガンおよびイオン注入装置の部位において個別の容器で供給されてよく、個別の容器が、それぞれのガスを、装置の中で混合するように、プラズマフラッドガンおよびイオン注入器装置への個別の流れラインに分配する。あるいは、個別の分配ラインが、プラズマフラッドガンおよびイオン注入器装置の上流の共通の供給ラインにガスを分配してよく、その結果、それぞれのガスは共通の供給ラインを通る流れにおいて混ぜ合わされる。さらなる代替形態として、個別の容器がそれぞれのガスを混合チャンバに分配してよく、混合ガスは、混合チャンバから、単一の供給ラインを通ってプラズマフラッドガンおよびイオン注入器装置へ流れる。それゆえに、一体型のガス混合物流体供給ならびに並行流機構が企図され、不活性ガスから低エネルギー電子を生成すること、ならびにプラズマフラッドガンの洗浄、プラズマフラッドガンのフィラメントの再金属化または両方のために混和ガスを供給するのに必要なのは、それぞれのガスを、プラズマフラッドガンおよびイオン注入器装置において、またはこれらの上流において組み合わせることだけである。
【0057】
in situフッ素含有ガスおよび不活性ガスが個別の供給源から供給されて、プラズマフラッドガン装置の使用場所において混合される他の事例では、プラズマフラッドガンを高強度で清浄するために、イオン注入装置に、不活性ガスなしでin situフッ素含有ガスのみを流すガス供給回路構成の能力を提供するのが有利であろう。これは、プラズマフラッドガン装置から他のガスを押し流すために装置へのin situフッ素含有ガスのパージ流を可能にし、断続的なフッ素含有動作としてプラズマフラッドガンの洗浄作業が行われることを可能にするように構成された、供給容器とマニフォールドの機構によって適用され得るはずである。
【0058】
そのような断続的な高強度洗浄は、様々な実施形態において装置の動作寿命を向上するために望ましいものであり得、プラズマフラッドガンイオン注入装置の予防保全の一部分として組み込まれ得る。
【0059】
他の動作モードでは、混和されたin situフッ素含有ガスと不活性ガスを同時に送り込む専用の洗浄動作を行う代わりに、通常のプラズマ生成動作のためにプラズマフラッドガンイオン注入装置に流れている不活性ガスの中にin situフッ素含有ガスの量の浄化を一定期間ごとに循環させるか、またはin situフッ素含有ガスによるin situ洗浄が自動的かつ周期的に実行されるように、プラズマフラッドガンのアークチャンバの中に直接、in situフッ素含有ガスの量の浄化を、一定期間ごとに循環させるのが望ましいであろう。これは、たとえば、サイクルタイマプログラムと、不活性ガスにin situフッ素含有ガスを混合してフッ素含有ガス/不活性ガス混合物におけるフッ素含有ガスの所定濃度を達成するように構成されたガスキャビネットまたは弁マニフォールドボックス(VMB)とを利用することによって適用され得る。
【0060】
プラズマフラッドガンおよび注入器の性能を改善するため、プラズマフラッドガンのフィラメントを再金属化するため、または両方のために、in situフッ素含有ガスを、不活性プロセスガスと、同時に、断続的に、または順次に(交互に)使用して、タングステンなどのスパッタされたフィラメント材料の堆積した蓄積および他の堆積した残留物を反応的に除去する本開示の手法は、当技術における大幅な進歩を達成するものである。本明細書で説明されたようなフッ素含有ガスを使用することなく動作させられる同一のプラズマフラッドガンの同一の動作に対して、フッ素含有ガスを使用することの利益には、イオン注入器におけるプラズマフラッドガンの使用可能な実用寿命の改善、そのような機器のための保守イベントの低減、注入器の性能を大幅に劣化させ得るプラズマフラッドガンの有害な動作の出現の低減が含まれる。
【0061】
次に図面を参照して、図1は、プラズマフラッドガン装置100の構造の詳細を示す概略図である。
【0062】
プラズマフラッドガン装置が含むアークチャンバ120には、絶縁体140によってアークチャンバの壁に支持されて電気回路構成でフィラメント電源260に結合されたフィラメント130が配設されている。フィラメント130は、エネルギーを与えられたときアークチャンバ120内にプラズマ150を生成する。アークチャンバの外表面には磁石122が備わっている。示されるように、アークチャンバはアーク電源250と電気的に結合されている。アークチャンバは、ソレノイドコイル電源230によってエネルギーを与えられるソレノイドコイル170によって囲まれたプラズマチューブ160と結合されている。プラズマチューブ160にはプラズマチューブ用の保守弁180が装備されている。プラズマチューブは、ビームプラズマ210を含有しているイオンビームチャンバ200と連通している。プラズマチューブ160から放射される磁界190は、角度的に、イオンビームチャンバにおけるイオンビーム220の方向へ導かれる。イオンビームチャンバ200は、プラズマフラッドガン装置の電源回路構成の一部分としての外部電源240と結合されている。プラズマチューブ160は、絶縁体によってイオンビームチャンバ200から電気的に絶縁されている。
【0063】
動作において、図1のプラズマフラッドガン装置は、フィラメントが、アークチャンバに導入された不活性ガスから低エネルギー電子を含有しているプラズマを形成するようにエネルギーを与えられて動作し、ウェーハ基板(図1には示されていない)の表面の電荷を中和するために、イオンビームチャンバ200においてイオンビームの中に低エネルギー電子が分散される。
【0064】
プラズマフラッドガンの様々な運転条件が、プラズマフラッドガンへの不活性ガスおよびフッ素含有ガスの流れとともに使用され得る。不活性ガスおよびフッ素含有ガスを導入しながらプラズマフラッドガンを動作させる方法では、アーク電圧は、0~90ボルト、30~70ボルト、または40~60ボルトの範囲であり得る。不活性ガスおよびフッ素含有ガスを導入しながらプラズマフラッドガンを動作させる方法では、アーク電流は、0~10アンペア、0.1~5アンペア、または0.25~2.5アンペアの範囲であり得る。不活性ガスおよびフッ素含有ガスを導入しながらプラズマフラッドガンを動作させる方法では、引出し電圧は、0~30キロボルト、0~12キロボルト、または0~8キロボルトの範囲であり得る。不活性ガスおよびフッ素含有ガスを導入しながらプラズマフラッドガンを動作させる方法では、抑制電圧は、0~5キロボルト、0~4キロボルト、または1~4キロボルトの範囲であり得る。本明細書で説明されたような範囲のうちいずれかの範囲内のアーク電圧、アーク電流、引出し電圧および抑制の組合せが使用され得る。
【0065】
図2は、イオン注入されているウェーハ基板の上流のビームライン構造においてプラズマフラッドガン装置を利用するビームイオン注入システム300の概略図である。
【0066】
図示されたシステム300において、イオン注入チャンバ301は、ライン302からドーパント源ガスを受け取るイオン源316を含有しており、イオンビーム305を生成する。イオンビーム305は、必要なイオンを選択し、選択されないイオンを排斥する質量分析器ユニット322を通過する。
【0067】
選択されたイオンは、加速電極配列324、次いで偏向電極326を通過する。次いで、結果として生じる集束イオンビームは、イオンビームの中に低エネルギー電子を分散させるように動作するプラズマフラッドガン327を通過し、そのような低エネルギー電子を増補されたイオンビームは、次いで、軸332に取り付けられた回転可能な保持具330上に配設された基板素子328に衝突する。それによって、ドーパントイオンのイオンビームが基板を要望通りにドープして、ドープされた構造体を形成し、低エネルギー電子は、基板素子328の表面上の電荷蓄積を中和するのに役立つ。
【0068】
イオン注入チャンバ301のそれぞれの区分は、ポンプ320、342および346によって、それぞれライン318、340および344を通って排出される。
【0069】
図3は、本開示の実例となる実施形態によるプラズマフラッドガンにガスを配送するように構成されたガス供給組立体の概略図である。
【0070】
プラズマフラッドガン480は、図3において、ガス供給組立体の様々な運転上の様態を明らかにするために、3つのガス供給パッケージ414、416、および418に対する流体受取り関係に配置されて示される。ガス供給パッケージ418は、ガス供給ライン460に結合された排出ポート436を有する弁頭組立体434を有する容器432を含む。弁頭組立体434は、分配動作あるいは容器432内のガス混合物の密閉貯蔵を達成するために、弁頭組立体を必要に応じて全開位置と全閉位置の間で移動させる、弁の手動調節のためのハンドル車442を装備している。ハンドル車442は、たとえばCPU478に対して動作可能に関連づけられた空気圧弁アクチュエータといった、弁頭組立体における弁の設定を調整するように自動制御される弁アクチュエータによって、置換され得る。
【0071】
容器432が含有しているin situフッ素含有ガス/不活性ガス混合物は、たとえばin situフッ素含有ガスとして体積で5%のフッ素ガスと、不活性ガスとして体積で95%のキセノンとを含む。示されるようなガス供給ライン460は流量制御弁462を含有している。流量制御弁462が装備する自動弁アクチュエータ464は信号伝送ライン466によってCPU478に接続されており、それによって、CPU478は、信号伝送ライン466で弁アクチュエータに制御信号を伝送して弁462の位置を調整し、対応して、容器432からプラズマフラッドガン組立体480へのフッ素含有ガス/不活性ガス混合物の流れを制御することができる。
【0072】
予混合されて容器432の中に存在するin situフッ素含有ガス/不活性ガス混合物をプラズマフラッドガンに供給することの代替形態として、図3のガス供給組立体が含む代替機構では、流体供給パッケージ414が容器420の中に不活性ガスを含み、流体供給パッケージ416が容器426の中にフッ素含有ガスを含む。
【0073】
以前に説明されたように、流体供給パッケージ414が含む容器420の弁頭組立体422は、容器420からの不活性ガスを分配するようにガス供給ライン444に結合された排出ポート424を有する。弁頭組立体が装備しているハンドル車438は、流体供給パッケージ418の場合のように、CPU478に対して動作可能に関連づけられた自動弁アクチュエータで置換されてよい。
【0074】
同様に、以前に説明されたように、流体供給パッケージ416が含む容器426の弁頭組立体428は、容器426からフッ素含有ガスを分配するようにガス供給ライン452に結合された排出ポート430を有する。弁頭組立体が装備しているハンドル車440は、CPU478に対して動作可能に関連づけられた自動弁アクチュエータで置換されてよい。
【0075】
図3のシステムでは、不活性ガス供給ライン444が含有する流量制御弁446は、信号伝送ライン450によってCPU478に対して動作可能に関連づけられたアクチュエータ448を装備している。対応して、フッ素含有ガス供給ライン452は、信号伝送ライン458によってCPU478に対して動作可能に関連づけられた弁アクチュエータ456を装備した流量制御弁454を含有している。そのような機構によって、CPU478は、不活性ガス供給容器420からの不活性ガスの分配動作と、フッ素含有ガス供給容器426からのフッ素含有ガスの分配動作とを要求通りに実行するようにプログラム可能に構成され得る。
【0076】
図3に図示されるように、流量制御弁446の下流の不活性ガス供給ライン444は、混合チャンバ486に結合された末端の供給ライン区分482を含む。同様に、流量制御弁454の下流のフッ素含有ガス供給ライン452は、混合チャンバ486に結合された末端の供給ライン区分484を含む。この機構によって、不活性供給ガスおよびフッ素含有ガスはそれぞれの末端の供給ライン区分において混合チャンバに導入され得、混合された後に、混合チャンバ486からガス供給ライン488の中をプラズマフラッドガン480へ流れる。混合チャンバ486から排出される混合物のそれぞれの不活性ガス成分とフッ素含有ガス成分の相対的比率は、ガス供給ライン444の流量制御弁446およびガス供給ライン452の流量制御弁454を適切に調整することによって制御可能に設定され得る。
【0077】
図3のシステムにおけるさらなる代替形態として、不活性ガス供給ライン444は、プラズマフラッドガン装置に、たとえばそのような装置のアークチャンバに、不活性ガスを直接導入するために、破線で示された不活性ガス供給ライン490に直接接続されてよい。対応して、フッ素含有ガス供給ライン452は、プラズマフラッドガン装置にフッ素含有ガスを直接導入するために、たとえばそのような装置のアークチャンバに対して、破線で示されたフッ素含有ガス供給ライン492に直接接続されてよい。このように不活性ガスとフッ素含有ガスの並行流がプラズマフラッドガンに直接導入され、装置のアークチャンバにおいて互いに混和される。
【0078】
図3のシステムは、プラズマフラッドガン480が配設されている注入器装置のイオン注入動作中に、不活性ガスが容器420からプラズマフラッドガン480に対して連続的に流され、同時に、容器426からのフッ素含有ガスが、プラズマフラッドガンに対してのみ、たとえば所定の循環的期間で断続的に導入され、その結果、フィラメントの洗浄作用および再金属化が、そのような所定の循環的期間で、そうでなければ周期的に達成されるようにも動作され得る。
【0079】
図3のシステムの動作のさらなる修正形態として、フッ素含有ガスは、フッ素含有ガス供給ライン452、492および/または末端の供給ライン区分484における適切な弁により、フッ素含有ガスのみがプラズマフラッドガン装置に流れるように、プラズマフラッドガンに対して周期的期間で、そうでなければ、必要に応じて、プラズマフラッドガンへの不活性ガスの並流の間中、あるいは、プラズマフラッドガンへの不活性ガスの流れが終結した後に、個別に流されてよい。弁は、プラズマフラッドガンへの並行の不活性ガス流なしで、フッ素含有ガス流のそのような個別の独立運転を適用し得、また、別の動作モードとして、フッ素含有ガスを、混合チャンバに流れる不活性ガスと混合するために、混合チャンバ486へ切り換えるように、たとえばCPU478との適切なリンクによって調整され得る。
【0080】
したがって、図3のシステムは、一体型ガス供給容器からの予混合された不活性ガス/フッ素含有ガスの流れ、プラズマフラッドガンへの不活性ガスとフッ素含有ガスの並行流、プラズマフラッドガンの上流の混合チャンバへの不活性ガスとフッ素含有ガスの並行流、プラズマフラッドガンへの不活性ガスの並行流を伴う、または伴わない、プラズマフラッドガンへのフッ素含有ガスの周期的導入(周期的または間隔をおいた洗浄モード)、あるいはフッ素含有ガスの、不活性ガス流れに対する混合チャンバを介した周期的導入を含めて、複数の動作モードを適用するように様々に構成され得ることが認識されよう。対応して、そのようなシステムにおいて例証として示されるCPU478は、専用にプログラムされたコンピュータ、プログラマブルロジックコントローラ、マイクロプロセッサなどを含む任意の適切なタイプのプロセッサを備えてよく、CPUは、フッ素含有ガスを包含する前述の動作モードのうち任意のものを実行するようにプログラム可能に構成され得ることが認識されよう。
【0081】
最後に、本明細書において様々に開示されたように、プラズマフラッドガンの動作においてフッ素含有ガスを利用すると、プラズマフラッドガンの動作寿命を大幅に増すことを可能にする際に当技術における大幅な進歩を達成し、イオン注入システムの総合効率が向上することが認識されよう。
【0082】
本明細書で、本開示が、特定の態様、特徴および実例となる実施形態に関連して明らかにされてきたが、本開示の有用性がこのように限定されることはなく、むしろ、それ自体が、本明細書の説明に基づいて、本開示の分野における当業者に示唆するように、多くの他の変形形態、修正形態、および代替実施形態に及び、包含することが認識されよう。対応して、以下で特許請求されるような開示は、その趣旨および範囲の範囲内のすべてのそのような変形形態、修正形態および代替実施形態を含むように広く理解され、かつ解釈されるように意図されている。
【0083】
例1
Xeガスを用いるビーム電流試験
グラファイトアークチャンバを有するBernasイオン源を使用した。ビーム条件は以下の通りであった。アーク電圧:50V、アーク電流:0.75A、引出し電圧:20kV、抑制電圧:3kV。使用された不活性ガスはアルゴンであり、1sccmまたは1.5sccmのいずれかの速度でアークチャンバに流し込まれた。フッ素含有ガスは2%のガス混合物(Ar+NF)において使用されたNFであり、(1sccmのAr流れにおける)0.021sccmまたは(1.5sccmのAr流れにおける)0.031sccmのいずれかの流量に対応する。ガス流を記録しながらアークチャンバを合計11時間運転し、各供給源を検査して、運転期間に続いてフィラメント重量を測定した結果を表1に示す。
【0084】
すべてのフィラメントの重量変化は、フィラメントの重量損失と負の相関があった。フィラメントの重量損失はフッ素ガスNFの存在下では大幅に低減された。アルゴン流れを1sccmから1.5sccmに増加することによってフィラメント重量損失のさらなる低減が観測され、重量損失がゼロに近づいた。
図1
図2
図3