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特許74183464-1BBLを含むHer2標的化抗原結合分子
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-11
(45)【発行日】2024-01-19
(54)【発明の名称】4-1BBLを含むHer2標的化抗原結合分子
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/30 20060101AFI20240112BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20240112BHJP
   C07K 14/525 20060101ALI20240112BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20240112BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20240112BHJP
   C12N 15/19 20060101ALI20240112BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240112BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20240112BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20240112BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20240112BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240112BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20240112BHJP
   C12P 21/02 20060101ALI20240112BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240112BHJP
   A61K 38/19 20060101ALI20240112BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240112BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
C07K16/30
C07K19/00
C07K14/525
C12N15/13 ZNA
C12N15/62 Z
C12N15/19
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/08
C12P21/02 C
C12P21/02 L
A61K39/395 T
A61K38/19
A61P35/00
A61P43/00 121
【請求項の数】 30
(21)【出願番号】P 2020555351
(86)(22)【出願日】2019-04-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-26
(86)【国際出願番号】 EP2019059391
(87)【国際公開番号】W WO2019197600
(87)【国際公開日】2019-10-17
【審査請求日】2020-12-08
(31)【優先権主張番号】18167147.0
(32)【優先日】2018-04-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】514099673
【氏名又は名称】エフ・ホフマン-ラ・ロシュ・アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】フェッラーラ コラー, クラウディア
(72)【発明者】
【氏名】ユンッティラ, テーム タパニ
(72)【発明者】
【氏名】クライン, クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ウマーナ, パブロ
(72)【発明者】
【氏名】クラウス, クリスティーナ
【審査官】小倉 梢
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-503356(JP,A)
【文献】特表2017-501706(JP,A)
【文献】国際公開第2016/177802(WO,A1)
【文献】J. Immunother. Cancer,2015年,Vol. 3, Suppl. 2,p. 187
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 16/00 - 16/46
C07K 19/00
C12N 15/00 - 15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
4-1BBL三量体含有抗原結合分子であって、
(a)Her2に特異的に結合可能な抗原結合ドメインであって
(a)(i)配列番号13のアミノ酸配列を含むCDR-H1;(ii)配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR-H2;及び(iii)配列番号15のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含むVHドメインと、(iv)配列番号16のアミノ酸配列を含むCDR-L1;(v)配列番号17のアミノ酸配列を含むCDR-L2;及び(vi)配列番号18のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含むVLドメイン;又は
(b)(i)配列番号21のアミノ酸配列を含むCDR-H1;(ii)配列番号22のアミノ酸配列を含むCDR-H2;及び(iii)配列番号23のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含むVHドメインと、(iv)配列番号24のアミノ酸配列を含むCDR-L1;(v)配列番号25のアミノ酸配列を含むCDR-L2;及び(vi)配列番号26のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含むVLドメイン;又は
(c)(i)配列番号29のアミノ酸配列を含むCDR-H1;(ii)配列番号30のアミノ酸配列を含むCDR-H2;及び(iii)配列番号31のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含むVHドメインと、(iv)配列番号32のアミノ酸配列を含むCDR-L1;(v)配列番号33のアミノ酸配列を含むCDR-L2;及び(vi)配列番号34のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含むVLドメイン
を含む、Her2に特異的に結合可能な抗原結合ドメインと、
(b)CH1ドメインとCLドメインとの間のジスルフィド結合によって互いに連結されている第1のポリペプチド及び第2のポリペプチドであって、ここで抗原結合分子が、第1のポリペプチドは、ペプチドリンカーによって互いに接続されている4-1BBLの2つのエクトドメイン又はそれらの断片を含むこと、及び第2のポリペプチドは4-1BBLの1つのエクトドメイン又はその断片を含むことを特徴とし、4-1BBLのエクトドメイン又はその断片が、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7及び配列番号8からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、第1のポリペプチド及び第2のポリペプチドと、
(c)安定な会合が可能な第1のサブユニットと第2のサブユニットから構成されるFcドメインであって、Fcドメインは、Fc受容体への結合を低減させる1又は複数のアミノ酸置換を含む、Fcドメイン
を含み、
Her2に特異的に結合可能な抗原結合ドメインは、Her2に特異的に結合可能なFab分子であり、且つ、
第1のペプチドリンカーによって互いに接続された4-1BBLの2つのエクトドメイン又はそれらの断片を含む第1のペプチドは、第2のペプチドリンカーによってそのC末端で重鎖の一部であるCLドメインに融合されており、且つ、
前記4-1BBLの1つのエクトドメイン又はその断片を含む第2のペプチドは、第3のペプチドリンカーによってそのC末端で軽鎖の一部であるCH1ドメインに融合されており、
前記抗原結合分子は、
Her2に特異的に結合可能なFab分子を双方が含む第1の重鎖及び第1の軽鎖;
定常ドメインと、4-1BBLの2つのエクトドメイン又はそれらの断片とを含む、第2の重鎖であって、
4-1BBLの2つのエクトドメイン又はそれらの断片は、第1のペプチドリンカーによって互いに接続され、かつ、
4-1BBLの2つのエクトドメイン又はそれらの断片は、第2のペプチドリンカーによってそのC末端で第2の重鎖に融合される、
第2の重鎖;並びに
定常ドメインと、前記4-1BBLの1つのエクトドメイン又はその断片とを含む、第2の軽鎖であって、
前記4-1BBLの1つのエクトドメイン又はその断片は、第3のペプチドリンカーによってそのC末端で第2の軽鎖に融合される、第2の軽鎖;
を含む、4-1BBL三量体含有抗原結合分子。
【請求項2】
Fc受容体は、Fcγ受容体である、請求項1に記載の4-1BBL三量体含有抗原結合分子。
【請求項3】
(a)Her2に特異的に結合可能な抗原結合ドメインと、
(b)ジスルフィド結合によって互いに連結されている第1のポリペプチド及び第2のポリペプチドであって、ここで抗原結合分子が、第1のポリペプチドは、配列番号9、配列番号10、配列番号11及び配列番号12からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むこと、並びに第2のポリペプチドは、配列番号1、配列番号5、配列番号3及び配列番号4からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むことを特徴とする、第1のポリペプチド及び第2のポリペプチドと、
(c)安定な会合が可能な第1のサブユニットと第2のサブユニットから構成されるFcドメイン
を含む、請求項1又は2に記載の4-1BBL三量体含有抗原結合分子。
【請求項4】
Fcドメインが、Fcドメインの第1のサブユニットと第2のサブユニットの会合を促進するノブ・イントゥ・ホール改変を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の4-1BBL三量体含有抗原結合分子。
【請求項5】
Fcドメインが、アミノ酸置換L234A、L235A及びP329G(Kabat EUインデックスによる番号付け)を含むIgG1 Fcドメインである、請求項1から4のいずれか一項に記載の4-1BBL三量体含有抗原結合分子。
【請求項6】
Her2に特異的に結合可能な抗原結合ドメインが、
(a)配列番号19のアミノ酸配列を含むVHドメイン及び配列番号20のアミノ酸配列を含むVLドメイン;又は
(b)配列番号27のアミノ酸配列を含むVHドメイン及び配列番号28のアミノ酸配列を含むVLドメイン;又は
(c)配列番号35のアミノ酸配列を含むVHドメイン及び配列番号36のアミノ酸配列を含むVLドメイン
を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の4-1BBL三量体含有抗原結合分子。
【請求項7】
(i)配列番号19のアミノ酸配列を含むVHドメインを含む第1の重鎖及び配列番号20のアミノ酸配列を含むVLドメインを含む第1の軽鎖;又は
配列番号27のアミノ酸配列を含むVHドメインを含む第1の重鎖及び配列番号28のアミノ酸配列を含むVLドメインを含む第1の軽鎖;又は
配列番号35のアミノ酸配列を含むVHドメインを含む第1の重鎖及び配列番号36のアミノ酸配列を含むVLドメインを含む第1の軽鎖、
(ii)配列番号37、配列番号39、配列番号41及び配列番号43からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む第2の重鎖、並びに
(iii)配列番号38、配列番号40、配列番号42及び配列番号44からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む第2の軽鎖
を含む、請求項1からのいずれか一項に記載の4-1BBL三量体含有抗原結合分子。
【請求項8】
(a)配列番号45のアミノ酸配列を含む第1の重鎖、配列番号46のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、配列番号37のアミノ酸配列を含む第2の重鎖、及び配列番号38のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖;又は
(b)配列番号47のアミノ酸配列を含む第1の重鎖、配列番号48のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、配列番号37のアミノ酸配列を含む第2の重鎖、及び配列番号38のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖;又は
(c)配列番号49のアミノ酸配列を含む第1の重鎖、配列番号50のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、配列番号37のアミノ酸配列を含む第2の重鎖、及び配列番号38のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖
を含む、請求項1からのいずれか一項に記載の4-1BBL三量体含有抗原結合分子。
【請求項9】
請求項1からのいずれか一項に記載の4-1BBL三量体含有抗原結合分子をコードする単離された核酸。
【請求項10】
請求項に記載の単離された核酸を含むベクター。
【請求項11】
発現ベクターである、請求項10に記載のベクター。
【請求項12】
請求項に記載の核酸又は請求項10若しくは11に記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項13】
4-1BBL三量体含有抗原結合分子の発現に適した条件下で、請求項12に記載の宿主細胞を培養することを含む、請求項1からのいずれか一項に記載の4-1BBL三量体含有抗原結合分子の生産方法。
【請求項14】
宿主細胞から4-1BBL三量体含有抗原結合分子を回収することを更に含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法によって生産される4-1BBL三量体含有抗原結合分子。
【請求項16】
請求項1から又は15のいずれか一項に記載の4-1BBL三量体含有抗原結合分子と少なくとも1種の薬学的に許容される添加剤とを含む、薬学的組成物。
【請求項17】
追加的治療剤を更に含む、請求項16に記載の薬学的組成物。
【請求項18】
T細胞活性化抗CD3二重特異性抗体を更に含む、請求項16又は17に記載の薬学的組成物。
【請求項19】
T細胞活性化抗CD3二重特異性抗体が抗Her2/抗CD3二重特異性抗体である、請求項18に記載の薬学的組成物。
【請求項20】
医薬としての使用のための、請求項1からのいずれか一項に記載の4-1BBL三量体含有抗原結合分子、又は請求項16から19のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項21】
がんの治療における使用のための、請求項1からのいずれか一項に記載の4-1BBL三量体含有抗原結合分子、又は請求項16から19のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項22】
4-1BBL三量体含有抗原結合分子が別の治療剤と併用される、請求項21に記載の使用のための、請求項1からのいずれか一項に記載の4-1BBL三量体含有抗原結合分子、又は請求項16から19のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項23】
4-1BBL三量体含有抗原結合分子がT細胞活性化抗CD3二重特異性抗体と併用され、且つ、T細胞活性化抗CD3二重特異性抗体が4-1BBL三量体含有抗原結合分子と同時に、それに先立って、又はそれに続いて投与される、がんの治療における使用のための、請求項1からのいずれか一項に記載の4-1BBL三量体含有抗原結合分子。
【請求項24】
がんの治療のための医薬の製造のための、請求項1からのいずれか一項に記載の4-1BBL三量体含有抗原結合分子の使用。
【請求項25】
4-1BBL三量体含有抗原結合分子がT細胞活性化抗CD3二重特異性抗体と併用される、がんの治療のための医薬の製造のための、請求項1からのいずれか一項に記載の4-1BBL三量体含有抗原結合分子の使用。
【請求項26】
T細胞活性化抗CD3二重特異性抗体が抗Her2/抗CD3抗体である、請求項25に記載の使用。
【請求項27】
請求項1からのいずれか一項に記載の4-1BBL三量体含有抗原結合分子又は請求項16から18のいずれか一項に記載の薬学的組成物の有効量を含む、がんを有する個体の治療のための医薬。
【請求項28】
請求項1からのいずれか一項に記載の4-1BBL三量体含有抗原結合分子又は請求項16から18のいずれか一項に記載の薬学的組成物の有効量及びT細胞活性化抗CD3二重特異性抗体の有効量を含む、がんを有する個体の治療のための医薬。
【請求項29】
T細胞活性化抗CD3二重特異性抗体が抗Her2/抗CD3抗体である、請求項28に記載の医薬。
【請求項30】
請求項1からのいずれか一項に記載の4-1BBL三量体含有抗原結合分子又は請求項16に記載の薬学的組成物の有効量を含む、がんを有する個体において細胞傷害性T細胞活性をアップレギュレーション又は延長するための医薬。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Her2に特異的に結合可能な抗原結合ドメインを含むHer2標的化4-1BBアゴニスト、特に4-1BBL三量体含有抗原結合分子と、がんの治療におけるその使用に関する。本発明は更に、このような分子の生成方法及び使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
4-1BB(CD137)は、TNF受容体スーパーファミリーのメンバーであり、T細胞によって活性化されることにより発現する誘導性分子として最初に同定された(Kwon and Weissman, 1989, Proc Natl Acad Sci USA 86, 1963-1967)。その後の研究により、NK細胞、B細胞、NKT細胞、単球、好中球、マスト細胞、樹状細胞(DC)、並びに内皮細胞及び平滑筋細胞といった非造血性起源の細胞を含む、多くの他の免疫細胞も4-1BBを発現することが実証された(Vinay and Kwon, 2011, Cell Mol Immunol 8, 281-284)。様々な細胞型における4-1BBの発現は、多くが誘導性であり、T細胞受容体(TCR)又はB細胞受容体トリガリングといった様々な刺激シグナル、及び共刺激分子又は炎症誘発性サイトカイン受容体を介して誘導されるシグナル伝達によって駆動される(Diehl et al., 2002, J Immunol168, 3755-3762; Zhang et al., 2010, Clin Cancer Res 13, 2758-2767)。
【0003】
4-1BBリガンド(4-1BBL又はCD137L)は、1993年に同定された(Goodwin et al., 1993, Eur J Immunol 23, 2631-2641)。4-1BBLの発現はB細胞、DC及びマクロファージなどの専門的な抗原提示細胞(APC)上に制限されていることが示された。4-1BBLの誘導性発現は、αβ及びγδ両方のT細胞サブセットを含むT細胞、並びに内皮細胞に特徴的である(Shao and Schwarz, 2011, J Leukoc Biol 89, 21-29)。
【0004】
4-1BB受容体を介した共刺激(例えば4-1BBLのライゲーションによる)は、T細胞(CD4及びCD8サブセットの両方)内の複数のシグナル伝達カスケードを活性化し、T細胞の活性化を強力に増強する(Bartkowiak and Curran, 2015)。TCRトリガリングとの組み合わせで、アゴニスト4-1BB特異性抗体は、T細胞の増殖を強化し、リンホカインの分泌を刺激し、活性化により誘導される細胞死に対するTリンパ球の感受性を低下させる(Snell et al., 2011, Immunol Rev244, 197-217)。この機序は、がん免疫療法の最初の概念実証として更に発展した。前臨床モデルにおいて、4-1BBに対するアゴニスト抗体を担腫瘍マウスに投与したところ、強力な抗腫瘍効果が得られた(Melero et al., 1997, Nat Med 3, 682-685)。その後、エビデンスの蓄積により、4-1BBは通常、他の免疫調節化合物、化学療法試薬、腫瘍特異的ワクチン接種又は放射線治療と併用投与されたときにのみ、抗腫瘍剤としてのその能力を呈することが示された(Bartkowiak and Curran, 2015, Front Oncol 5, 117)。
【0005】
TNFRスーパーファミリーのシグナル伝達は、受容体と結合するために三量体化リガンドの架橋を必要とし、野生型Fc結合を必要とする4-1BBアゴニスト抗体も同様である(Li and Ravetch, 2011, Science333, 1030-1034Li and Ravetch, 2011)。しかしながら、機能的に活性のFcドメインを有する4-1BB特異的アゴニスト抗体の全身投与は、肝臓毒性に関連するCD8 T細胞の流入をもたらしたが(Dubrot et al., 2010, Cancer Immunol Immunother 59, 1223-1233)、これはマウスにおける機能的Fc受容体の非存在下では減少するか又は有意に改善される。臨床でFcコンピテント4-1BBアゴニストAb(BMS-663513)(NCT00612664)がグレード4の肝炎を引き起こし、治験の中止に至った(Simeone and Ascierto, 2012)。したがって、効果的で安全な4-1BBアゴニストが必要とされている。
【0006】
ヒト上皮増殖因子受容体2(Her2;ErbB2)は、受容体型チロシンキナーゼであり、膜貫通型受容体である上皮増殖因子受容体(EGFR)ファミリーのメンバーである。Her2は、様々なタイプの腫瘍で過剰発現しており、疾患の開始と進行に関与している。Her2は、予後不良と関連している。例えば、Her2の過剰発現は、ヒト乳がんの約30%で観察され、これらの腫瘍に関連する侵襲性増殖と臨床転帰不良に関与している(Slamon et al (1987) Science 235:177-182)。
【0007】
ヒト化抗Her2モノクローナル抗体トラスツズマブ(CAS 180288-69-1、ハーセプチン(登録商標)、huMAb4D5-8、rhuMAb Her2、ジェネンテック)は、HER-2の細胞外ドメインを標的とする(米国特許第5677171号;米国特許第5821337号;米国特許第6054297号;米国特許第6165464号;米国特許第6339142号;米国特許第6407213号;米国特許第6639055号;米国特許第6719971号;米国特許第6800738号;米国特許第7074404号;Coussens et al (1985) Science 230:1 132-9; Slamon et al (1989) Science 244:707-12; Slamon et al (2001) New Engl. J . Med. 344 (783-792)。トラスツズマブは、HER-2を過剰発現し、抗体依存性細胞傷害(ADCC)のメディエーターであるヒト腫瘍細胞の増殖を阻害することが示されている(Hudziak et al (1989) Mol Cell Biol 9:1 165-72; Lewis et al (1993) Cancer Immunol Immunother; 37:255-63; Baselga et al (1998) Cancer Res. 58:2825-2831; Hotaling et al (1996) [abstract]. Proc. Annual Meeting Am Assoc Cancer Res; 37:471; Pegram MD, et al (1997) [abstract]. Proc Am Assoc Cancer Res; 38:602; Sliwkowski et al (1999) Seminars in Oncology 26(4), Suppl 12:60- 70; Yarden Y. and Sliwkowski, M. (2001) Nature Reviews: Molecular Cell Biology, Macmillan Magazines, Ltd., Vol. 2:127-137)。
【0008】
ハーセプチン(登録商標)(トラスツズマブ、ジェネンテック社)は、1998年にHER2過剰発現転移性乳がんの治療薬として承認された(Baselga et al, (1996) J. Clin. Oncol. 14 (737-744)。2006年、FDAは、HER2陽性、リンパ節転移陽性乳がん患者のアジュバント療法として、ドキソルビシン、シクロホスファミド及びパクリタキセルを含む治療レジメンの一部としてハーセプチン(登録商標)を承認した。
【0009】
ペルツズマブ(組換えヒト化モノクローナル抗体2C4、rhuMAb 2C4、パージェタ(登録商標)としても知られている;サウス・サンフランシスコのジェネンテック社)は、Her2を標的とする別の抗体治療である。ペルツズマブは、Her二量体化阻害剤(HDI)であり、Her2が他のHer受容体(EGFR/Herl、Her2、Her3、Her4等)と活性ヘテロ二量体又はホモ二量体を形成する能力を阻害するように機能する。例えば、Harari and Yarden Oncogene 19:6102-14(2000);Yarden and Sliwkowski.Nat Rev Mol Cell Biol 2:127-37(2001);Sliwkowski,Nat Struct Biol 10:158-9(2003);Cho et al.Nature 421:756-60(2003);及びMalik et al.,Pro Am Soc Cancer Res 44:176-7(2003);米国特許第7560111号を参照のこと。パージェタ(登録商標)は、進行性又は後期(転移性)のHer2陽性乳がん患者の治療薬として、トラスツズマブ及びドセタキセルとの併用で2012年に初めて承認された。一方、トラスツズマブとペルツズマブを使用する併用療法も、Her2陽性局所進行、炎症性又は初期乳がんのネオアジュバント(術前)療法として、また、再発リスクの高いHer2陽性早期乳がん(EBC)のアジュバント(術後)療法として承認されている。パージェタとハーセプチンの作用機序は、両者ともHer2受容体に結合しているが、異なる場所に結合しているため、相互に補完し合うと考えられている。パージェタとハーセプチンの併用は、HERのシグナル伝達経路をより包括的に二重に遮断することにより、腫瘍細胞の増殖と生存を防ぐことができると考えられている。
【0010】
ヒトErbB2のドメインII、III及びIVに対して向けられた二重特異性二価のHer2抗体は、国際公開第2012/143523号に開示されている。抗体rhuMab 2C4とhu4D5の最適化された変異体を含む二重特異性HER-2抗体(Herceptargと呼ばれる)は、国際公開第2015/091738号に記載されている。
【0011】
乳癌におけるトラスツズマブの治療効果は十分に実証されているが、耐性のためにトラスツズマブの恩恵を受けていない患者が多く存在する。低レベルのHer2を発現する特定のがんに対する有効な抗Her2療法がないこと、現在の療法に対する耐性、及びHer2関連のがんの有病率を考慮すると、このようながんを治療するためには新しい療法が必要である。
【0012】
本発明の新規抗原結合分子は、抗Her2抗原結合ドメインを、共刺激4-1BBリガンド三量体を形成することができ、且つ、薬学的に有用であるのに十分に安定な部分と組み合わせる。CD137に対する結合特異性とHer2/neuに対する結合特異性から構成される融合タンパク質は、国際公開第2016/177802号に開示されている。これらの分子は、抗体-リポカリンムテイン融合ポリペプチドであり、CD137に対する結合特異性を有するリポカリンムテインが抗Her2抗体に融合していることを意味する。リポカリンムテイン(アンチカリン)は非抗体足場であり、このようなモダリティを、特殊な薬物に変換することは困難であった(Vazquez-Lombardi et al. 2015, Drug Discovery Today 20, 1271-1283)。抗体と比較して、異なる血清半減期、組織浸透性及び免疫原性の観点から課題が生じる可能性がある。したがって、抗体技術又はヒト様タンパク質に基づく改善された特性を有する薬物候補が依然として必要とされている。
【発明の概要】
【0013】
本発明の新規抗原結合分子は、抗Her2抗原結合ドメインを、共刺激4-1BBL三量体を形成することができ、且つ、薬学的に有用であるのに十分に安定な部分と組み合わせる。驚くべきことに、本発明の抗原結合分子は、三量体化4-1BBLエクトドメインの1つが該分子の他の2つの4-1BBLエクトドメインではなく別のポリペプチド上に位置しているにもかかわらず、三量体であり、故に生物学的に活性なヒト4-1BBリガンドを提供する。抗Her2抗原結合ドメインによって標的化された本発明の抗原結合分子は、腫瘍部位において増大した活性を有し、天然のヒト4-1BBリガンドを含むため、従来の4-1BBアゴニスト抗体又はより人工的な融合タンパク質と比較して、課せられるべき安全性の問題はより少ない。
【0014】
一実施態様において、本発明は、4-1BBL三量体含有抗原結合分子であって、
(a)Her2に特異的に結合可能な抗原結合ドメインと、
(b)ジスルフィド結合によって互いに連結されている第1のポリペプチド及び第2のポリペプチドであって、ここで抗原結合分子が、第1のポリペプチドは、ペプチドリンカーによって互いに接続されている4-1BBLの2つのエクトドメイン又はそれらの断片を含むこと、及び第2のポリペプチドは4-1BBLの1つのエクトドメイン又はその断片を含むことを特徴とする、第1のポリペプチド及び第2のポリペプチドと、
(c)安定な会合が可能な第1のサブユニットと第2のサブユニットから構成されるFcドメイン
を含む、4-1BBL三量体含有抗原結合分子を提供する。
【0015】
特定の態様では、本発明は、4-1BBL三量体含有抗原結合分子を提供し、4-1BBLのエクトドメイン又はその断片は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7及び配列番号8からなる群より選択されるアミノ酸配列、特に配列番号1又は配列番号5のアミノ酸配列を含む。
【0016】
更なる態様では、本発明は、4-1BBL三量体含有抗原結合分子であって、
(a)Her2に特異的に結合可能な抗原結合ドメインと、
(b)ジスルフィド結合によって互いに連結されている第1のポリペプチド及び第2のポリペプチドであって、ここで抗原結合分子が、第1のポリペプチドは、配列番号9、配列番号10、配列番号11及び配列番号12からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むこと、並びに第2のポリペプチドは、配列番号1、配列番号5、配列番号3及び配列番号4からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むことを特徴とする、第1のポリペプチド及び第2のポリペプチドと、
(c)安定な会合が可能な第1のサブユニットと第2のサブユニットから構成されるFcドメイン
を含む、4-1BBL三量体含有抗原結合分子を提供する。
【0017】
一態様において、Fcドメインは、IgG、特にIgG1 Fcドメイン又はIgG4 Fcドメインである。より具体的には、Fcドメインは、IgG1 Fcドメインである。特定の態様では、Fcドメインは、Fcドメインの第1のサブユニットと第2のサブユニットの会合を促進する改変を含む。特定の態様では、本発明は、4-1BBL三量体含有抗原結合分子を提供し、ここで、Fcドメインは、Fcドメインの第1のサブユニットと第2のサブユニットの会合を促進するノブ・イントゥ・ホール改変を含む。特定の態様において、本発明は、4-1BBL三量体含有抗原結合分子を提供し、ここで、Fcドメインの第1のサブユニットは、アミノ酸置換S354C及びT366W(Kabat EUインデックスによる番号付け)を含み、Fcドメインの第2のサブユニットは、アミノ酸置換Y349C、T366S、L368A及びY407V(Kabat EUインデックスによる番号付け)を含む。
【0018】
別の態様では、本発明は、(c)安定な会合が可能な第1のサブユニットと第2のサブユニットから構成されるFcドメインを含む、前述の4-1BBL三量体含有抗原結合分子に関するものであり、ここで、Fcドメインは、Fc受容体、特にFcγ受容体への結合を低減させる1又は複数のアミノ酸置換を含む。特に、Fcドメインは、IgG重鎖の234と235(KabatによるEU番号付け)及び/又は329(KabatによるEU番号付け)の位置にアミノ酸置換を含む。特に、Fcドメインが、アミノ酸置換L234A、L235A及びP329G(Kabat EUインデックスによる番号付け)を含むIgG1 Fcドメインである、4-1BBL三量体含有抗原結合分子が提供される。
【0019】
一態様では、4-1BBL三量体含有抗原結合分子は1つであり、Her2に特異的に結合可能な抗原結合ドメインは、Her2に特異的に結合可能なFab分子である。別の態様において、Her2に特異的に結合可能な抗原結合ドメインは、Her2に特異的に結合可能なクロスオーバーFab分子又はscFV分子である。
【0020】
一態様では、本発明は、前述の4-1BBL三量体含有抗原結合分子を提供し、ここで、4-1BBL三量体含有抗原結合分子は、Her2に特異的に結合可能な1つのFabドメインを含み、これは、Her2に対する一価結合を含むことを意味する。
【0021】
更なる態様では、4-1BBL三量体含有抗原結合分子が提供され、ここで、Her2に特異的に結合可能な抗原結合ドメインは、
(a)(i)配列番号13のアミノ酸配列を含むCDR-H1;(ii)配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR-H2;及び(iii)配列番号15のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含むVHドメインと、(iv)配列番号16のアミノ酸配列を含むCDR-L1;(v)配列番号17のアミノ酸配列を含むCDR-L2;及び(vi)配列番号18のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含むVLドメイン;又は
(b)(i)配列番号21のアミノ酸配列を含むCDR-H1;(ii)配列番号22のアミノ酸配列を含むCDR-H2;及び(iii)配列番号23のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含むVHドメインと、(iv)配列番号24のアミノ酸配列を含むCDR-L1;(v)配列番号25のアミノ酸配列を含むCDR-L2;及び(vi)配列番号26のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含むVLドメイン;又は
(c)(i)配列番号29のアミノ酸配列を含むCDR-H1;(ii)配列番号30のアミノ酸配列を含むCDR-H2;及び(iii)配列番号31のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含むVHドメインと、(iv)配列番号32のアミノ酸配列を含むCDR-L1;(v)配列番号33のアミノ酸配列を含むCDR-L2;及び(vi)配列番号34のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含むVLドメイン
を含む。
【0022】
更なる態様では、本発明の4-1BBL三量体含有抗原結合分子は、
(a)配列番号19のアミノ酸配列を含むVHドメイン及び配列番号20のアミノ酸配列を含むVLドメイン;又は
(b)配列番号27のアミノ酸配列を含むVHドメイン及び配列番号28のアミノ酸配列を含むVLドメイン;又は
(c)配列番号35のアミノ酸配列を含むVHドメイン及び配列番号36のアミノ酸配列を含むVLドメイン
を含む。
【0023】
更なる態様では、4-1BBL三量体含有抗原結合分子であって、
Her2に特異的に結合可能なFab分子を双方が含む第1の重鎖及び第1の軽鎖;
第2のペプチドリンカーによってC末端で第2の重鎖又は軽鎖に融合され、第1のペプチドリンカーによって互いに接続された、4-1BBLの2つのエクトドメイン又はそれらの断片と定常ドメインとを含む、第2の重鎖;並びに
第3のペプチドリンカーによってそれぞれC末端で第2の軽鎖又は重鎖に融合された、4-1BBLの定常ドメインと1つのエクトドメイン又はその断片とを含む第2の軽鎖
を含む、4-1BBL三量体含有抗原結合分子が提供される。より詳細には、4-1BBL三量体含有抗原結合分子が提供され、ここで、第1のペプチドリンカーによって互いに接続された4-1BBLの2つのエクトドメイン又はそれらの断片を含む第1のペプチドは、第2のペプチドリンカーによってそのC末端で重鎖の一部であるCLドメインに融合されており、且つ、前記4-1BBLの1つのエクトドメイン又はその断片を含む第2のペプチドは、第3のペプチドリンカーによってそのC末端で軽鎖の一部であるCH1ドメインに融合されている。
【0024】
特定の態様では、本発明は、ペプチドリンカーが(G4S)、すなわち配列番号68のペプチドである、上記のような4-1BBL三量体含有抗原結合分子に関する。一態様では、ペプチドリンカーは、いかなる場合も(G4S)である。
【0025】
更に、TNFリガンドファミリーメンバーに隣接するCLドメインにおいて123位(EU番号付け)のアミノ酸がアルギニン(R)によって、124位(EU番号付け)のアミノ酸がリジン(K)によって置き換えられ、且つ、TNFリガンドファミリーメンバーに隣接するCH1ドメインにおいて147位(EU番号付け)及び213位(EU番号付け)のアミノ酸がグルタミン酸(E)によって置換された4-1BBL三量体含有抗原結合分子が提供される。
【0026】
別の態様では、4-1BBL三量体含有抗原結合分子であって、
(i)配列番号19のアミノ酸配列を含むVHドメインを含む第1の重鎖及び配列番号20のアミノ酸配列を含むVLドメインを含む第1の軽鎖;又は
配列番号27のアミノ酸配列を含むVHドメインを含む第1の重鎖及び配列番号28のアミノ酸配列を含むVLドメインを含む第1の軽鎖;又は
配列番号35のアミノ酸配列を含むVHドメインを含む第1の重鎖及び配列番号36のアミノ酸配列を含むVLドメインを含む第1の軽鎖、
(ii)配列番号37、配列番号39、配列番号41及び配列番号43からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む第2の重鎖、並びに
(iii)配列番号38、配列番号40、配列番号42及び配列番号44からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む第2の軽鎖
を含む、4-1BBL三量体含有抗原結合分子が提供される。
【0027】
特定の態様において、4-1BBL三量体含有抗原結合分子であって、
(a)配列番号45のアミノ酸配列を含む第1の重鎖、配列番号46のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、配列番号37のアミノ酸配列を含む第2の重鎖、及び配列番号38のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖;又は
(b)配列番号47のアミノ酸配列を含む第1の重鎖、配列番号48のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、配列番号37のアミノ酸配列を含む第2の重鎖、及び配列番号38のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖;又は
(c)配列番号49のアミノ酸配列を含む第1の重鎖、配列番号50のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、配列番号37のアミノ酸配列を含む第2の重鎖、及び配列番号38のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖
を含む、4-1BBL三量体含有抗原結合分子が提供される。
【0028】
本発明の別の態様によると、前述の4-1BBL三量体含有抗原結合分子をコードする単離された核酸分子が提供される。本発明は更に、ベクター、特に本発明の単離された核酸分子含む発現ベクター及び本発明の単離された核酸分子又はベクターを含む宿主細胞を提供する。いくつかの実施態様では、宿主細胞は真核細胞、特に哺乳動物の細胞である。
【0029】
別の態様では、4-1BBL三量体含有抗原結合分子の発現に適した条件下で本発明の宿主細胞を培養する工程と、4-1BBL三量体含有抗原結合分子を単離する工程とを含む本発明の4-1BBL三量体含有抗原結合分子を生産するための方法が提供される。本発明は、本発明の方法によって生産される4-1BBL三量体含有抗原結合分子も包含する。
【0030】
本発明は更に、本発明の4-1BBL三量体含有抗原結合分子と、少なくとも1種の薬学的に許容される添加剤とを含む薬学的組成物を提供する。別の態様では、本発明の4-1BBL三量体含有抗原結合分子と、少なくとも1種の薬学的に許容される添加剤とを含み、更に追加の治療剤、例えばがんの免疫療法における使用のための化学療法剤及び/又は他の薬剤を含む薬学的組成物が提供される。更なる態様では、T細胞活性化抗CD3二重特異性抗体、特に抗Her2/抗CD3二重特異性抗体を更に含む薬学的組成物が提供される。
【0031】
また、本発明が包含するのは、医薬としての使用のための、本発明の4-1BBL三量体含有抗原結合分子又は本発明の薬学的組成物である。一態様では、治療を必要とする個体の疾患の治療における使用のための、本発明の4-1BBL三量体含有抗原結合分子又は本発明の薬学的薬組成物が提供される。特定の実施態様において、がんの治療における使用のための、本発明の4-1BBL三量体含有抗原結合分子又は本発明の薬学的組成物が提供される。別の態様において、細胞傷害性T細胞活性をアップレギュレーション又は延長することにおける使用のための、本発明の4-1BBL三量体含有抗原結合分子又は本発明の薬学的組成物が提供される。別の態様において、がんの治療における使用のための、本発明の4-1BBL三量体含有抗原結合分子又は本発明の薬学的組成物が提供され、ここで、4-1BBL三量体含有抗原結合分子は、別の治療剤、特にT細胞活性化抗CD3二重特異性抗体と併用される。一態様において、T細胞活性化抗CD3二重特異性抗体は、4-1BBL三量体含有抗原結合分子と同時に、その前に、またはその後に投与される。
【0032】
更に、治療を必要とする個体の疾患を治療するための医薬の製造のための、特にがんの治療のための医薬の製造のための本発明の4-1BBL三量体含有抗原結合分子の使用、及び本明細書で開示されている4-1BBL三量体含有抗原結合分子を含む治療的有効量の組成物を薬学的に許容される形態で個体に投与することを含む、前記個体の疾患の治療方法が提供される。特定の態様において、疾患はがんである。更に提供されるのは、がんの治療のための医薬の製造のための、本発明の4-1BBL三量体含有抗原結合分子の使用であって、ここで、4-1BBL三量体含有抗原結合分子は、T細胞活性化抗CD3二重特異性抗体、特に抗Her2/抗CD3抗体と併用される。更に、本発明の4-1BBL三量体含有抗原結合分子又はその薬学的組成物の有効量と、T細胞活性化抗CD3二重特異的抗体、特に抗Her2/抗CD3抗体の有効量を対象に投与することを含む、がんを有する個体を治療するための方法が提供される。また、がんを有する個体において細胞傷害性T細胞活性をアップレギュレーション又は延長する方法であって、本発明の4-1BBL三量体含有抗原結合分子又は本発明の薬学的組成物の有効量を個体に投与することを含む方法も提供される。上記のいずれの実施態様においても、個体は、好ましくは哺乳動物、特にヒトである。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1A-B】図1は、一価のHer2標的化スプリット三量体44-1BBリガンドFc融合抗原結合分子の組み立てのための構成要素を示す。図1Aは、変異E123R及びQ124K(電荷変異体(charged variant))を有するヒトIgG1-CLドメインにC末端で融合された二量体4-1BBリガンドを示し、図1Bは、変異K147E及びK213E(電荷変異体)を有するヒトIgG1-CH1ドメインにC末端で融合された単量体4-1BBリガンドを示す。
図2A】荷電残基を有するCH-CLクロスを含む一価のHer2標的化スプリット三量体4-1BBリガンドFc(kih)融合抗原結合分子の構造を模式的に示した図である。太い黒い点は、ノブ・イントゥ・ホール改変を表している。は、CH1及びCLドメインにおけるアミノ酸修飾を表す記号である(いわゆる荷電残基)。
図2B】マウスサロゲート、すなわち、マウス4-1BBに対する二価の結合とHer2に対する一価の結合を有する(抗4-1BB/抗Her2 moIgG1 DDKK DAPG、mu4-1BB-Her2と呼ばれる)二重特異性4-1BB抗体を示した図である。太い黒い点は、DD/KKノブ・イントゥ・ホール改変を表している。DAPG変異は、マウスFcγ受容体を介して融合タンパク質の架橋又は補体の結合を無効にするが、FcRnへの結合を可能にするため、分子はその抗体様の薬物動態を残す。
図3A】本発明のHer2標的化スプリット三量体4-1BBリガンド含有抗原結合分子の同時結合のためのSPR実験のセットアップを示す。
図3B】Her2(PER)-4-1BBL(分析物1)の固定化されたヒト4-1BB及びヒトHer2(分析物2)に対する同時結合を示す。
図3C】Her2(aff PER)-4-1BBLのヒト4-1BB及びヒトHer2への同時結合を示す。
図4A-D】ヒト乳がん細胞株SK-Br3(図4Aと4C)又はヒト胃癌細胞株NCI-N87(図4Bと4D)によって細胞表面に発現するHer2への、Her2標的化4-1BBスプリット三量体リガンドFc融合抗原結合分子の結合を示す。Her2バインダーであるペルツズマブ(PER)若しくは親和性成熟ペルツズマブ(aff-PER)若しくは融合タンパク質Her2(TRAS)-アンチカリン4-1BB huIgG4(特許国際公開第2016/177802号に記載)を表示するHer2標的化スプリット4-1BBL抗原結合分子、又は以前に記載されたアゴニスト抗ヒト4-1BB抗体である抗ヒト4-1BBクローン20H4.9 huIgG4(米国特許第7659384号に記載)若しくは抗ヒト4-1BBクローンMOR-7480 huIgG2(国際公開第2012/032433号に記載)、又は凡例に示されているコントロール分子が、X軸に示されているように異なる濃度のHer2発現細胞株SK-Br3(図4Aと4C)又はNCI-N87(図4Bと4D)と共にインキュベートされた。その後、過剰で結合していない分子は洗い流され、結合した分子は二次結合PEコンジュゲート抗ヒトFc断片特異的ヤギIgG F(ab`)2断片で検出された。蛍光強度(MFI)の中央値は、フローサイトメトリーによって測定され、用量依存的に試験された分子の親和性(一価バインダー)又はアビディティー(二価バインダー)を示す。値は、ブランクコントロール(例:2番目の検出断片のみで染色)を差し引くことによってベースライン補正したものであり、示されているのは平均±SEMである。
図5A-B】ヒト乳がん細胞株KPL-4によって細胞表面に発現するHer2への、Her2標的化スプリット三量体4-1BBLリガンドFc融合抗原結合分子の結合を示す図である。Her2バインダーであるPER、aff-PER若しくはトラスツズマブ(TRAS)、融合タンパク質Her2(TRAS)-アンチカリン4-1BB huIgG4(国際公開第2016/177802号に記載)を含むHer2標的化スプリット4-1BBL抗原結合分子、又は以前に記載されたアゴニスト抗ヒト4-1BB抗体である20H4.9 huIgG4若しくはMOR-7480 huIgG2、又は凡例に示されているコントロール分子が、X軸に示されているように異なる濃度のHer2発現細胞株KL-4と共にインキュベートされた。その後、過剰で結合していない分子は洗い流され、結合した分子は二次結合PEコンジュゲート抗ヒトFc断片特異的ヤギIgG F(ab`)2断片で検出された。蛍光強度(MFI)の中央値は、フローサイトメトリーによって測定され、用量依存的に試験された分子の親和性(一価バインダー)又はアビディティー(二価バインダー)を示す。値は、ブランクコントロール(例:2番目の検出断片のみで染色)を差し引くことによってベースライン補正したものであり、示されているのは平均±SEMである。
図6】ヒト4-1BBを発現するJurkatレポーター細胞株を用いたNFκB活性化アッセイの一般的な原則を示すスキームである。レポーター細胞上に発現したヒト4-1BBの架橋は、NFκB活性化及びNFκB媒介ルシフェラーゼ発現を誘導する。細胞の溶解後、ルシフェラーゼは、ルシフェリンのオキシルシフェリンへの酸化を触媒することができる。この化学反応は、NFκB媒介ルシフェラーゼ発現の強さと正の相関があり、発光の強さ(放出された光の単位)によって測定することができる。
図7A-F】Jurkat-hu4-1BB-NFkB-luc2レポーター細胞株におけるNFκB媒介ルシフェラーゼ活性を図7Aから7Fに示す。96ウェルプレートJurkat-hu4-1BB-NFkB-luc2レポーター細胞を、凡例に示したように、異なる濃度(x軸に示す)のHer2(PER)-4-1BBL分子又はHer2(PER)-4-1BBL分子又は融合タンパク質Her2(TRAS)-アンチカリン4-1BB huIgG4又はアゴニスト抗ヒト4-1BB抗体20H4.9 huIgG4若しくはMOR-7480 huIgG2又はコントロール分子とインキュベートした。Her2+細胞が存在しない場合の結果を図7Aと7Dに、ヒトHer2+乳がん細胞株SK-Br3が存在する場合の結果を図7Bと7Eに、又はHer2+ヒト胃がん細胞株NCI-N87が存在する場合の結果を図7Cと7Fに示す。レポーター細胞を1:5の比率で6時間、Her2発現腫瘍細胞とインキュベートした。その後、細胞を洗浄し、溶解し、検出バッファー中でルシフェリンと共にインキュベートした。ルシフェリンのルシフェラーゼ触媒酸化は、放出された光の単位として発光を介して検出された(y軸)。示されているのは平均±SEMである。値は全て、ベースライン発光を差し引くことによってベースライン補正されている。
図8A-H】Her2(PER)-4-1BBLとHer2(TRAS)-4-1BBLを比較した第2の実験の結果を図8Aから8Hに示す。348ウェルプレートJurkat-hu4-1BB-NFkB-luc2レポーター細胞を、凡例に示したように、異なる濃度(x軸に示す)のHer2(PER)-4-1BBL分子又はHer2(PER)-4-1BBL分子又は融合タンパク質Her2(TRAS)-アンチカリン4-1BB huIgG4又はアゴニスト抗ヒト4-1BB抗体20H4.9 huIgG4若しくはMOR-7480 huIgG2又はコントロール分子とインキュベートした。示されているのは、レポーター細胞株対腫瘍細胞株が1:5の比率で6時間投与された場合の、ヒトHer2+乳がん細胞株SK-Br3の非存在下(図8Aと8E)又はヒトHer2+乳がん細胞株SK-Br3の存在下(図8Bと8F)、ヒト乳がん細胞株KPL-4の存在下(図8Cと8G)又はHer2+ヒト胃がん細胞株NCI-N87の存在下(図8Dと8H)でのJurkat-hu4-1BB-NFκB-luc2レポーター細胞株におけるNFκB媒介ルシフェラーゼ発現である。細胞を洗浄し、溶解し、検出バッファー中でルシフェリンと共にインキュベートした。ルシフェリンのルシフェラーゼ触媒酸化は、放出された光の単位として発光を介して検出された(y軸)。示されているのは平均+/-SEMである。値は全て、ベースライン発光を差し引くことによってベースライン補正されている。
図9】実施例3.2.2に記載の、ヒトPBMCを使用した活性化アッセイの一般的な原理を示すスキームである。T細胞は、2nMアゴニストCD3抗体により活性化され、Her2発現胃癌NCI-N87細胞の存在下で、異なる濃度のアゴニスト4-1BB分子によって共刺激される。内容物/ウェルは、50Gy照射2x10 NCI-N87細胞、7.5x10 CFSE標識ヒトPBMC、2nMアゴニスト抗ヒトCD3ヒトIgG wt(クローンV9)、及び異なる濃度のHer2標的化4-1BBアゴニスト分子(ここではHer2-4-1BBLとして示される)から構成された。細胞を4日間インキュベートし、その後T細胞活性化をフローサイトメトリーで決定した。
図10A-F】その結果は、図10Aから10FにCD8 T細胞の活性化として示されている。健康なドナーのバフィーコートから単離した休止PBMCを、2nMアゴニストCD3抗体で活性化し、Her2発現胃癌NCI-N87細胞の存在下で4日間、X軸及び凡例に示すように、異なる濃度のアゴニスト4-1BB分子で共刺激した。細胞を生きたCD8 T細胞にゲーティングし、CD25図10Aと10D)、グランザイムBhigh図10Bと10E)、又は増殖性(低CFSE MFI)CD8 T細胞(図10Cと10F)の頻度について分析した。示されているのは平均±SDである。
図11A-F】CD4 T細胞の活性化を図11Aから11Fに示す。健康なドナーのバフィーコートから単離した休止PBMCを、2nMアゴニストCD3抗体で活性化し、Her2発現胃癌NCI-N87細胞の存在下で4日間、X軸に示すように、異なる濃度のアゴニスト4-1BB分子で共刺激した。細胞を生きたCD4 T細胞にゲーティングし、CD25図11Aと11D)、グランザイムBhigh図11Bと11E)、又は増殖性(低CFSE MFI)CD4 T細胞(図11Cと11F)の頻度について分析した。示されているのは平均±SDである。
図12】実施例3.2.3に記載したような、マウス脾細胞を用いた活性化アッセイの一般的な原理を説明するスキームである。T細胞は、0.5μg/mL(約3.6nM)のアゴニスト抗マウスCD3アルメニアンハムスターIgG抗体(クローン1452C11)によって活性化され、Her2発現ヒト乳がん細胞株KPL-4の存在下で、異なる濃度のアゴニストマウスサロゲートmu4-1BB-Her2と共刺激される。内容物/ウェルは、50Gy照射2x10 KPL-4細胞、15x10バイオレット増殖色素標識マウス脾臓細胞、0.5μg/mL(約3.6nM)アゴニスト抗マウスCD3アルメニアンハムスターIgG抗体(クローン1452C11)、及び異なる濃度のマウスサロゲートmu4-1BB-Her2又は非標的コントロールmu4-1BB muIgG1 DAPGから構成された。細胞を3日間インキュベートし、その後T細胞活性化をフローサイトメトリーで決定した。
図13A-D】その結果は、図13Aから13DにマウスCD8及びCD4 T細胞の活性化として示されている。C57BL/6脾臓から単離した休止マウス脾細胞を、0.5μg/mL(約3.6nM)のアゴニスト抗マウスCD3アルメニアンハムスターIgG抗体(クローン1452C11)で活性化し、Her2発現ヒト乳がんKPL-4細胞の存在下で、x軸と凡例に示されるように、異なる濃度のマウスサロゲートmu4-1BB-Her2又は非標的コントロールで3日間共刺激した。細胞を生きたCD8又はCD4 T細胞にゲーティングし、CD25発現の頻度(図13Aと13C)又は増殖(低バイオレット増殖色素MFI)(図13Bと13D)について分析した。示されているのは、一点ごとのテクニカルトリプケートの平均±SDである。
図14A-B】図14Aには、抗Her2/抗CD3二重特異性抗体(Her2 TDB)とHer2(PER)-4-1BBLの併用のT細胞活性化と、各単剤のT細胞活性化が示されている。Her2 TDB単独によっても、両剤の併用によっても、強いT細胞活性化が誘導された。抗Her2/抗CD3二重特異性抗体(Her2 TDB)とHer2(PER)-4-1BBLの併用及び各単剤による標的細胞の死滅を図14Bに示す。
図15A-B】抗Her2/抗CD3二重特異性抗体(Her2 TDB)とHer2(PER)-4-1BBLの併用のT細胞増殖アッセイの結果を図15Aと15Bに示す。HER2-4-1BBLの添加により、抗HER2/CD3-TDB誘導T細胞の増殖/生存率がin vitroで大幅に向上した。
図16A-D】ヒトHER2発現Fo5腫瘍同種移植片を移植し、ビヒクル(図16A)、Her2 TDB単独(図14B)、mu4-1BB-Her2マウスサロゲート単独(図14C)、及びHer2 TDBとmu4-1BB-Her2の併用(図14D)で処置した免疫適格マウスで観察された腫瘍成長速度(線形目盛り)を示す。全ての処置群での各動物の個々の腫瘍成長速度が示される。CRは試験終了時に検出可能な腫瘍がないことを意味し、PRは0日目と比較して少なくとも50%の腫瘍収縮が観察されることを意味する。mu4-1BB-Her2アゴニストとの併用で処置された7頭のマウスのうち4頭は、試験終了時に検出可能な腫瘍を伴わない完全奏効を示した(CR=57%)。
【発明を実施するための形態】
【0034】
定義
特に定義しない限り、本明細書で使用される技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野において一般的に使用されるのと同じ意味を有する。本明細書の解釈上、以下の定義が適用され、適切な場合は常に、単数形で使用される用語には複数形も含まれ、その逆も同様である。
【0035】
本明細書において使用される用語「抗原結合分子」は、その最も広い意味において、抗原決定基に特異的に結合する分子を指す。抗原結合分子の例は、抗体、抗体断片、及び足場抗原結合タンパク質である。
【0036】
用語「抗原結合ドメイン」は、抗原の一部又は全部に特異的に結合し、且つ、それに相補的な領域を含む抗原結合分子の部分を指す。抗原が大きい場合、抗原結合分子は、エピトープと呼ばれる抗原の特定部分にのみ結合する。抗原結合ドメインは、例えば、1又は複数の可変ドメイン(可変領域とも呼ばれる)により提供され得る。好ましくは、抗原結合ドメインは、抗体軽鎖可変領域(VL)及び抗体重鎖可変領域(VH)を含む。
【0037】
本明細書で使用される「Her2に特異的に結合可能な抗原結合ドメイン」又は「Her2に特異的に結合可能な部分」という用語は、Her2に特異的に結合するポリペプチド分子を指す。ある態様では、抗原結合ドメインは、Her2を介したシグナル伝達を活性化又は阻害することができる。特定の態様において、抗原結合ドメインは、それが付着している実体(例:4-1BBL三量体)を標的部位、例えばHer2を有する特定のタイプの腫瘍細胞へ方向付けることができる。Her2に特異的に結合可能な部分には、本明細書で更に定義される抗体及びそれらの断片が含まれる。抗体又はその断片に関して、「標的細胞抗原に特異的に結合可能な部分」という用語は、抗原の一部又は全部に特異的に結合し、且つ、それに相補的である領域を含む分子の部分を指す。特異的な抗原結合が可能な部分は、例えば1又は複数の抗体可変ドメイン(抗体可変領域とも呼ばれる)により提供されてもよい。特異的な抗原結合が可能な部分は、特に、抗体軽鎖可変領域(VL)及び抗体重鎖可変領域(VH)を含む。
【0038】
本明細書における用語「抗体」は最も広い意味で用いられ、様々な抗体構造を包含し、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、単一特異性及び多重特異性抗体(例えば二重特異性抗体)、並びに、所望の抗原結合活性を示す限り、抗体断片を含むが、これらに限定されない。
【0039】
本明細書で使用される用語「モノクローナル抗体」は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を意味し、すなわち、例えば、天然に生じる変異を含むか又はモノクローナル抗体調製物の製造時に発生し、一般的に少量で存在している、あり得る変異体抗体を除き、集団を構成する個々の抗体は同一であり、且つ/又は同じエピトープに結合する。異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を通常含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、モノクローナル抗体調製物の各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対するものである。
【0040】
本明細書で使用される用語「単一特異性」抗体は、それぞれが同一の抗原の同一のエピトープに結合する1又は複数の結合部位を有する抗体を意味する。用語「二重特異性」とは、抗原結合分子が少なくとも二つの異なる抗原決定基に特異的に結合することができることを意味する。典型的には、二重特異性抗原結合分子は、各々が異なる抗原決定基に特異的な2つの抗原結合部位を含む。特定の実施態様では、二重特異性抗原結合分子は、2つの抗原決定基、特に2つの別個の細胞上に発現した2つの抗原決定基に同時に結合することができる。
【0041】
本願内で使用される用語「価」は、抗原結合分子における特定数の結合部位の存在を意味する。このように、用語「一価」、「二価」、「四価」及び「六価」は、抗原結合分子中、それぞれ2つの結合部位、4つの結合部位及び6つの結合部位の存在を意味する。
【0042】
用語「完全長抗体」、「インタクトな抗体」及び「全抗体」は、本明細書中で互換的に使用され、天然型抗体構造と実質的に類似の構造を有する抗体を指す。「天然型抗体」は、様々な構造を有する天然に生じる免疫グロブリン分子を指す。例えば、天然IgGクラスの抗体は、ジスルフィド結合している2つの軽鎖と2つの重鎖とから構成される約150000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。N末端からC末端にかけて各重鎖は、可変領域(VH)(可変重鎖ドメイン又は重鎖可変ドメインとも呼ばれる)、続いて3つの定常ドメイン(CH1、CH2及びCH3)(重鎖定常領域とも呼ばれる)を有する。同様に、N末端からC末端にかけて各軽鎖は、可変領域(VL)(可変軽鎖ドメイン又は軽鎖可変ドメインとも呼ばれる)、続いて軽鎖定常ドメイン(CL)(軽鎖定常領域とも呼ばれる)を有する。抗体の重鎖は、α(IgA)、δ(IgD)、ε(IgE)、γ(IgG)又はμ(IgM)と呼ばれる5つのタイプのうちの1つに割り当てられ、それらのいくつかはサブタイプ、例えばγ1(IgG1)、γ2(IgG2)、γ3(IgG3)、γ4(IgG4)、α1(IgA1)及びα2(IgA2)に更に分けられる。抗体の軽鎖は、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ(κ)とラムダ(λ)と呼ばれる2種類のうちのいずれかに割り当てることができる。
【0043】
「抗体断片」は、インタクトな抗体が結合する抗原に結合するインタクトな抗体の一部分を含む、インタクトな抗体以外の分子を指す。抗体断片の例には、限定されないが、Fv、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’);ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、クロスFab断片;直鎖状抗体、一本鎖抗体分子(例えばscFv);及び単一ドメイン抗体が含まれる。特定の抗体断片の総説については、Hudson et al.,Nat.Med.9:129-134(2003)を参照されたい。scFv断片の総説については、例えば、Pluckthun,The Pharmacology of Monoclonal Antibodies,vol.113,Rosenburg and Moore eds.,Springer-Verlag,New York,pp.269-315(1994)を参照;また、国際公開第93/16185号;並びに米国特許第5571894号及び第5587458号も参照。サルベージ受容体結合エピトープ残基を含み、且つ、増加したin vivo半減期を有するFab及びF(ab’)2断片の議論については、米国特許第5869046号を参照のこと。ダイアボディは、二価又は二重特異性であり得る2つの抗原結合部位を有する抗体断片である。例えば欧州特許第404097号;国際公開第1993/01161号;Hudson et al.,Nat Med 9,129-134(2003);及びHollinger et al.,Proc Natl Acad Sci USA 90,6444-6448(1993)を参照のこと。トリアボディ及びテトラボディもHudson et al.,Nat Med 9,129-134(2003)に記載されている。単一ドメイン抗体は、抗体の重鎖可変ドメインの全部若しくは一部又は軽鎖可変ドメインの全部若しくは一部を含む抗体断片である。特定の実施態様では、単一ドメイン抗体は、ヒト単一ドメイン抗体(Domantis社,マサチューセッツ州ウォルサム;例えば米国特許第6248516号参照)である。抗体断片は、本明細書に記載の組換え宿主細胞(例えば大腸菌(E.Coli)又はファージ)による産生の他、インタクトな抗体のタンパク質消化を含むがこれらに限定されない様々な技術で作製することができる。
【0044】
インタクトな抗体のパパイン消化は、各々が重鎖及び軽鎖可変ドメインと、更には軽鎖の定常ドメインと重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)とを含む、「Fab」断片と呼ばれる2つの同一の抗原結合断片を生成する。したがって、本明細書において使用される用語「Fab断片」は、軽鎖(CL)のVLドメインと定常ドメインとを含む軽鎖断片、並びに重鎖のVHドメイン及び第1の定常ドメイン(CH1)を含む、抗体断片を指す。Fab’断片は、抗体ヒンジ領域由来の1又は複数のシステインを含む重鎖CH1ドメインのカルボキシ末端に数個の残基が付加されている点でFab断片とは異なる。Fab’-SHは、定常ドメインのシステイン残基が遊離チオール基を持つFab’断片である。ペプシン処理により、2つの抗原結合部位(2つのFab断片)とFc領域の一部とを有するF(ab’)断片が生成される。
【0045】
用語「クロスFab断片」又は「xFab断片」又は「クロスオーバーFab断片」は、Fab断片であって、重鎖と軽鎖の可変領域又は定常領域のいずれかが交換されているものを指す。クロスオーバーFab分子の2つの異なる鎖構成が可能であり、本発明の二重特異性抗体に含まれる。一方で、Fab重鎖可変領域とFab軽鎖可変領域が交換されており、すなわち、クロスオーバーFab分子は、軽鎖可変領域(VL)と重鎖定常領域(CH1)からなるペプチド鎖、及び重鎖可変領域(VH)と軽鎖定常領域(CL)からなるペプチド鎖を含む。このクロスオーバーFab分子は、CrossFab(VLVH)とも呼ばれる。他方で、Fab重鎖定常領域とFab軽鎖定常領域が交換されている場合、クロスオーバーFab分子は、重鎖可変領域(VH)と軽鎖定常領域(CL)からなるペプチド鎖、及び軽鎖可変領域(VL)と重鎖定常領域(CH1)からなるペプチド鎖を含む。このクロスオーバー分子は、CrossFab(CLCH1)とも呼ばれる。
【0046】
「一本鎖Fab断片」又は「scFab」は、抗体重鎖可変ドメイン(VH)、抗体定常ドメイン1(CH1)、抗体軽鎖可変ドメイン(VL)、抗体軽鎖定常ドメイン(CL)及びリンカーからなるポリペプチドであり、これらの抗体ドメインと前述のリンカーは、N末端からC末端方向に次の順序:a)VH-CH1-リンカー-VL-CL、b)VL-CL-リンカー-VH-CH1、c)VH-CL-リンカー-VL-CH1、又はd)VL-CH1-リンカー-VH-CLのうちの1つを有し;前述のリンカーは、少なくとも30のアミノ酸、好ましくは32から50の間のアミノ酸からなるポリペプチドである。前述の一本鎖Fab断片は、CLドメインとCH1ドメインとの間の天然ジスルフィド結合によって安定化されている。加えて、これらの一本鎖Fab分子は、システイン残基(例えばKabat番号付けによる可変重鎖の44位及び可変軽鎖の100位)の挿入による鎖間ジスルフィド結合の生成により、更に安定化する可能性もある。
【0047】
「クロスオーバー一本鎖Fab断片」又は「x-scFab」は、抗体重鎖可変ドメイン(VH)、抗体定常ドメイン1(CH1)、抗体軽鎖可変ドメイン(VL)、抗体軽鎖定常ドメイン(CL)及びリンカーからなるポリペプチドであり、これらの抗体ドメインと前述のリンカーは、N末端からC末端方向に次の順序:a)VH-CL-リンカー-VL-CH1及びb)VL-CH1-リンカー-VH-CLのうちの1つを有し、VHとVLは一緒に、抗原に特異的に結合する抗原結合部位を形成し、前述のリンカーは少なくとも30のアミノ酸からなるポリペプチドである。加えて、これらx-scFab分子は、システイン残基(例えばKabat番号付けによる可変重鎖の44位及び可変軽鎖の100位)の挿入による鎖間ジスルフィド結合の生成により、更に安定化する可能性もある。
【0048】
「一本鎖可変断片(scFv)」は、10から約25のアミノ酸からなる短いリンカーペプチドにより接続された、抗体の重鎖可変領域(V)と軽鎖の可変領域(V)の融合タンパク質である。リンカーは通常、柔軟性のためにグリシンに、溶解度のためにセリン又はスレオニンに富み、VのN末端をVのC末端に接続することができ、又はその逆も可能である。このタンパク質は、定常領域の除去及びリンカーの導入にも関わらず、元の抗体の特異性を保持している。scFv抗体は、例えばHouston,J.S.,Methods in Enzymol.203(1991)46-96に記載されている。加えて、抗体断片は、VHドメインの特性、すなわちVLドメインと一緒に機能性的な抗原結合部位に集合することができる特性、又はVLドメインの特性、すなわちVHドメインと一緒に機能的な抗原結合部位に集合することができる特性を有し、それにより完全長抗体の抗原結合特性を提供する一本鎖ポリペプチドを含む。
【0049】
「足場抗原結合タンパク質」は当技術分野で既知であり、例えば、フィブロネクチン及び設計アンキリン反復タンパク質(DARPin)が、抗原結合ドメインの代替的な足場として使用されている。例えば、Gebauer and Skerra,Engineered protein scaffolds as next-generation antibody therapeutics.Curr Opin Chem Biol 13:245-255(2009)and Stumpp et al.,Darpins:A new generation of protein therapeutics.Drug Discovery Today 13:695-701(2008)を参照されたい。本発明の一態様において、足場抗原結合タンパク質は、CTLA-4(Evibody)、リポカリン(Anticalin)、プロテインAに由来する分子、例えばプロテインAのZドメイン(Affibody)、Aドメイン(Avimer/Maxibody)、血清トランスフェリン(トランス体);設計アンキリン反復タンパク質(DARPin)、抗体軽鎖又は重鎖の可変ドメイン(単一ドメイン抗体、sdAb)、抗体重鎖の可変ドメイン(ナノボディ、aVH)、VNAR断片、フィブロネクチン(AdNectin)、C型レクチンドメイン(Tetranectin);新規抗原受容体ベータ-ラクタマーゼの可変ドメイン(VNAR断片)、ヒトガンマ-クリスタリン又はユビキチン(Affilin分子);ヒトプロテアーゼ阻害剤のクーニッツ型ドメイン、ミクロボディ、例えばノッチンファミリー由来のタンパク質、ペプチドアプタマー及びフィブロネクチン(adnectin)からなる群より選択される。CTLA-4(細胞傷害性Tリンパ球関連抗原4)は、主にCD4 T細胞に発現するCD28ファミリーの受容体である。その細胞外ドメインは、可変ドメイン様Igフォールドを有する。抗体のCDRに対応するループを異種配列で置換して、異なる結合特性を付与することができる。異なる結合特異性を持つように設計されたCTLA-4分子は、エビボディとしても知られている(例:米国特許第7166697号)。エビボディは、抗体の単離された可変領域(例:ドメイン抗体)とほほ同じ大きさである。更なる詳細は、Journal of Immunological Methods 248(1-2),31-45(2001)を参照のこと。リポカリンは、ステロイド、ビリン、レチノイド及び脂質等の疎水性の小分子を運搬する細胞外タンパク質のファミリーである。これは、様々な標的抗原に結合するように設計することができる、円錐構造の開放端に複数のループを備えた強固なベータシート二次構造を有する。アンチカリンは、大きさが160~180アミノ酸であり、リポカリンに由来する。更なる詳細については、Biochim Biophys Acta 1482:337-350(2000)、米国特許第7250297号及び米国特許出願公開第20070224633号を参照されたい。アフィボディは、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)のプロテインA由来の足場であり、抗原に結合するように設計することができる。このドメインは、約58アミノ酸で構成される3ヘリックスバンドルからなる。ライブラリーは、表面残基のランダム化によって生成されている。更なる詳細については、Protein Eng.Des.Sel.2004,17,455-462及び欧州特許出願第1641818号を参照のこと。アビマーは、Aドメイン足場ファミリー由来のマルチドメインタンパク質である。約35アミノ酸の天然ドメインは、明確なジスルフィド結合構造をとっている。多様性は、Aドメインのファミリーが表す天然変異のシャッフルによって生じる。更なる詳細については、Nature Biotechnology 23(12),1556-1561(2005)及びExpert Opinion on Investigational Drugs 16(6),909-917(June 2007)を参照されたい。トランスフェリンは、単量体の血清輸送糖タンパク質である。トランスフェリンは、ペプチド配列を寛容な表面ループに挿入することにより、様々な標的抗原に結合するように設計することができる。設計されたトランスフェリン足場の例には、トランスボディが含まれる。更なる詳細は、J.Biol.Chem 274,24066-24073(1999)を参照のこと。設計アンキリン反復タンパク質(DARPin)は、細胞骨格に対する内在性膜タンパク質の付着を媒介するタンパク質のファミリーであるアンキリンに由来する。単一のアンキリン反復は、2つのアルファヘリックスと1つのベータターンからなる33残基のモチーフである。それらは、各反復の第1のアルファヘリックスとベータターンの残基をランダム化することにより、様々な標的抗原に結合するように設計することができる。それらの結合面は、モジュールの数を増加せることにより増大させることができる(親和性成熟の方法)。更なる詳細については、J.Mol.Biol.332,489-503(2003),PNAS 100(4),1700-1705(2003)及びJ.Mol.Biol.369,1015-1028(2007)及び米国特許出願公開第20040132028号を参照のこと。単一ドメイン抗体は、単一の単量体可変抗体ドメインからなる抗体断片である。最初の単一ドメインは、ラクダ科の抗体重鎖の可変ドメインに由来するものであった(ナノボディ又はVH断片)。更に、単一ドメイン抗体という用語は、自律性ヒト重鎖可変ドメイン(aVH)又はサメ由来のVNAR断片を含む。フィブロネクチンは、抗原に結合するように設計可能な足場である。アドネクチンは、ヒトフィブロネクチンIII型(FN3)の15反復単位の10番目のドメインの天然アミノ酸配列の主鎖からなる。ベータサンドイッチの一端にある3つのループを設計して、アドネクチンが目的の治療標的を特異的に認識できるようにすることができる。更なる詳細については、Protein Eng.Des.Sel.18,435-444(2005)、米国特許出願公開第20080139791号、国際公開第2005056764号及び米国特許第6818418号を参照されたい。ペプチドアプタマーは、定常足場タンパク質、典型的には活性部位に挿入された制限された可変ペプチドループを含むチオレドキシン(TrxA)からなるコンビナトリアル認識分子である。更なる詳細については、Expert Opin.Biol.Ther.5,783-797(2005)を参照されたい。ミクロボディは、3~4個のシステインブリッジを含有する、長さ25~50アミノ酸の天然に存在する微小タンパク質に由来する。微小タンパク質の例には、KalataBI、コノトキシン及びノッチンが含まれる。微小タンパク質は、その全体的フォールドに影響を与えることなく、最大25個のアミノ酸を含むように設計可能なループを有する。設計されたノッチンドメインの更なる詳細については、国際公開第2008098796号を参照されたい。
【0050】
リポカリンは、ステロイド、ビリン、レチノイド及び脂質等の疎水性の小分子を運搬する細胞外タンパク質のファミリーである。これは、様々な標的抗原に結合するように設計することのできる、円錐構造の開放端に複数のループを備えた強固なベータシート二次構造を有する。アンチカリンは、大きさが160~180アミノ酸であり、リポカリンに由来する。更なる詳細については、Biochim Biophys Acta 1482: 337-350(2000)、Biodrugs 19(5),279-288(2005)、米国特許第7250297号及び米国特許出願公開第20070224633号を参照されたい。
【0051】
参照分子と「同じエピトープに結合する抗原結合分子」とは、競合アッセイにおいてその抗原に対する参照分子の結合を50%以上ブロックする抗原結合分子を指し、逆に、参照分子は競合アッセイにおいてその抗原に対する抗原結合分子の結合を50%以上ブロックする。
【0052】
本明細書において使用される用語「抗原決定基」は、「抗原」及び「エピトープ」と同義であり、抗原結合部分が結合し、抗原結合部分-抗原複合体を形成するポリペプチド巨大分子上の部位(例えば、アミノ酸の連続したストレッチ又は非連続的アミノ酸の異なる領域から形成される立体配座構造)を指す。有用な抗原決定基は、例えば、腫瘍細胞の表面上に、ウイルス感染細胞の表面上に、その他の疾患細胞の表面上に、免疫細胞の表面上に、血清中に遊離して、及び/又は細胞外マトリックス(ECM)中に見出すことができる。特に断らない限り、本明細書において抗原として有用なタンパク質は、霊長類(例えばヒト)及びげっ歯類(例えば、マウス及びラット)などの哺乳動物を含む任意の脊椎動物源由来の任意の天然タンパク質を指す。特定の実施態様では、抗原はヒトタンパク質である。本明細書において特定のタンパク質が言及される場合、その用語は、「完全長」、未処理のタンパク質だけではなく、細胞内でのプロセシングから生じる任意の型のタンパク質を包含する。その用語はまた、天然に存在するタンパク質変異体、例えばスプライスバリアント又は対立遺伝子変異体を包含する。
【0053】
「Her2に特異的に結合可能な」という用語は、Her2を標的とする上で診断薬剤及び/又は治療的薬剤として有用であるように十分な親和性でHer2に結合可能な抗原結合分子を指す。抗原結合分子には、抗体、Fab分子、クロスオーバーFab分子、一本鎖Fab分子、Fv分子、scFv分子、単一ドメイン抗体、並びにVH及び足場抗原結合タンパク質が含まれるが、これらに限定されない。一態様において、抗Her2抗原結合分子の、無関係な、非Her2タンパク質への結合の程度は、例えば表面プラズモン共鳴(SPR)によって測定して、抗原結合分子のHer2への結合の約10%未満である。特に、Her2に結合可能な抗原結合分子は、≦1μM、≦100nM、≦10nM、≦1nM、≦0.1nM、≦0.01nM、又は≦0.001nM(例えば10-8M以下、例えば10-8Mから10-13M、例えば10-9Mから10-13M)の解離定数(K)を有する。特定の態様では、抗Her2抗原結合分子は、様々な種由来のHer2に結合する。特に、抗Her2抗原結合分子は、ヒト及びカニクイザルのHer2に結合する。
【0054】
用語「エピトープ」とは、抗[[PRO]]抗体が結合する抗原上のタンパク性又は非タンパク性の部位をいう。エピトープは、連続したアミノ酸ストレッチから形成されることも(直鎖状エピトープ)、又は、例えば抗原のフォールドにより、すなわちタンパク性抗原の3次フォールドにより空間的に近接する非連続的なアミノ酸を含むこと(立体構造エピトープ)も可能である。直鎖状エピトープは通常、タンパク性抗原を変性剤にさらした後も抗体によって結合されているが、一方、立体構造エピトープは通常、変性剤で処理すると破壊される。エピトープは、独特の空間的立体構造の中に少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、又は少なくとも8~10のアミノ酸を含む。
【0055】
「エピトープ4D5」又は「4D5エピトープ又は「4D5」は、抗体4D5(ATCC CRL 10463)及びトラスツズマブが結合するHER2の細胞外ドメイン内の領域である。このエピトープは、HER2の膜貫通ドメインに近く、HER2のドメインIV内にある。4D5エピトープに結合する抗体についてスクリーニングするために、Antibodies,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,Ed Harlow and David Lane(1988)に記載されているような常套的なクロスブロッキングアッセイを実行することができる。或いは、エピトープマッピングを実施して、抗体がHER2の4D5エピトープ(例えば、HER2(配列番号54)のおよそ残基550からおよそ残基610までの領域の任意の1又は複数の残基)に結合するかどうかを評価することができる。
【0056】
「エピトープ2C4」又は「2C4エピトープ」は、抗体2C4が結合するHER2の細胞外ドメイン内の領域である。2C4エピトープに結合する抗体についてスクリーニングするために、Antibodies,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,Ed Harlow and David Lane(1988)に記載されているような常套的なクロスブロッキングアッセイを実行することができる。代替的に、エピトープマッピングを実施して、抗体がHER2の2C4エピトープに結合するかどうかを評価することができる。エピトープ2C4は、HER2の細胞外ドメインのドメインIIの残基を含む。2C4抗体及びペルツズマブは、ドメインI、II及びIIIの接合部でHER2の細胞外ドメインに結合する(Franklin et al.Cancer Cell 5:317-328(2004))。
【0057】
「特異的結合」とは、結合が抗原に対して選択的であることを意味し、不要な又は非特異的な相互作用とは区別され得る。抗原結合分子の、特定の抗原への結合能は、酵素結合免疫吸着法(ELISA)又は当業者によく知られた他の技術、例えば表面プラズモン共鳴(SPR)技術(BIAcore計器上での解析)(Liljeblad et al., Glyco J 17, 323-329 (2000))、及び古典的結合アッセイ(Heeley, Endocr Res 28, 217-229 (2002))により測定することができる。一実施態様では、抗原結合分子の無関係なタンパク質への結合の程度は、例えばSPRによって測定した場合、抗原結合分子の抗原への結合の約10%未満である。特定の実施態様では、抗原に結合する分子は、≦1μM、≦100nM、≦10nM、≦1nM、≦0.1nM、≦0.01nM又は≦0.001nM(例えば10-8M以下、例えば10-8Mから10-13M、例えば10-9Mから10-13M)の解離定数(Kd)を有する。
【0058】
「親和性」又は「結合親和性」は、分子(例えば抗体)の単一結合部位とその結合パートナー(例えば抗原)との間の非共有結合相互作用の総和の強度を指す。本明細書で使用する場合、特に断らない限り、「結合親和性」は、結合対(例えば抗体と抗原)のメンバー間の1:1の相互作用を反映する固有の結合親和性を指す。分子Xの、そのパートナーYに対する親和性は、通常、解離定数(Kd)によって表され、この解離定数(Kd)は、解離速度定数と会合速度定数(それぞれ、koff及びkon)の比である。したがって、速度定数の比が同じである限り、同等の親和性が異なる速度定数を含み得る。親和性は、本明細書に記載したものを含め、当技術分野で知られている一般的な方法によって測定することができる。親和性を測定するための特定の方法は、表面プラズモン共鳴(SPR)である。
【0059】
本明細書で使用される「標的細胞抗原」は、標的細胞、例えばT細胞又はB細胞、がん細胞などの腫瘍内の細胞又は腫瘍間質の細胞の表面に提示される抗原性決定因子を指す。特定の態様では、標的細胞抗原は、がん細胞の表面上の抗原である。ある態様では、標的細胞抗原は、Her2である。
【0060】
「ErbB2」、「ErbB2受容体」又は「c-Erb-B2」としても知られる、本明細書で使用される用語「Her2」は、細胞中のHer2前駆体タンパク質のプロセシングから生じる任意の天然の成熟HER2を指す。この用語は、特に断らない限り、霊長類(例えばヒト及びカニクイザル)及びげっ歯類(例えばマウス及びラット)などの哺乳動物を含む任意の脊椎動物由来のHER2を指す。この用語は、天然に存在するHER2の変異体、例えば、スプライスバリアント又は対立遺伝子変異体も含む。例示的なヒトHER2タンパク質のアミノ酸配列は、配列番号54に示されている。
【0061】
本明細書において使用される「T細胞抗原」は、Tリンパ球、特に細胞傷害性Tリンパ球の表面に提示される抗原決定基を指す。
【0062】
本明細書において使用される「T細胞活性化治療剤」は、対象におけるT細胞活性化を誘導することのできる治療剤、特に対象におけるT細胞活性化を誘導するために設計された治療剤を指す。T細胞活性化治療剤の例には、CD3などの活性化T細胞抗原及びCEA又は葉酸受容体などの標的細胞抗原に特異的に結合する二重特異性抗体が含まれる。
【0063】
本明細書において使用される「活性化T細胞抗原」は、Tリンパ球、特に細胞傷害性Tリンパ球によって発現される抗原決定基を指し、抗原結合分子との相互作用時にT細胞活性化を誘導又は増強することができる。具体的には、抗原結合分子と活性化T細胞抗原との相互作用は、T細胞受容体複合体のシグナル伝達カスケードのトリガーとなることによりT細胞活性化を誘導することができる。例示的な活性化T細胞抗原は、CD3である。
【0064】
特に断らない限り、用語「CD3」は、霊長類(例えばヒト)、非ヒト霊長類(例えばカニクイザル)及びげっ歯類(例えばマウス及びラット)といった哺乳動物を含む任意の脊椎動物由来の任意の天然型CD3を指す。この用語は、「完全長」の、未処理のCD3だけではなく、細胞内でのプロセシングから生じた任意の形態のCD3を包含する。この用語は、天然に存在するCD3の変異体、例えばスプライスバリアント又は対立遺伝子変異体も包含する。一実施態様において、CD3は、ヒトCD3、特にヒトCD3のエプシロンサブユニット(CD3ε)である。ヒトCD3εのアミノ酸配列は、UniProt(www.uniprot.org)のアクセッション番号P07766(バージョン144)、又はNCBI(www.ncbi.nlm.nih.gov/)RefSeq NP_000724.1に示されている。配列番号85も参照のこと。カニクイザル[Macaca fascicularis]CD3εのアミノ酸配列は、NCBI GenBank no.BAドメインB71849.1に示されている。配列番号86も参照のこと。
【0065】
用語「可変ドメイン」又は「可変領域」は、抗原結合分子の抗原への結合に関与する抗体の重鎖又は軽鎖のドメインを指す。通常、天然型の重鎖及び軽鎖の可変ドメイン(それぞれVH、VL)は、類似の構造を有し、各ドメインが4つの保存されたフレームワーク領域(FR)と3つの超可変領域(HVR)を有する。例えば、Kindt et al.,Kuby Immunology,第6編,W.H.Freeman and Co.,91頁(2007)を参照されたい。抗原結合特異性を付与するには、単一のVH又はVLドメインで十分である。
【0066】
本明細書で使用される用語「超可変領域」又は「HVR」は、配列が超可変であり、且つ、抗原結合特異性を決定する抗原結合可変ドメインの各領域、例えば「相補性決定領域」(「CDR」)を指す。抗体は通常、VHに3つ(CDR-H1、CDR-H2、CDR-H3)及びVLに3つ(CDR-L1、CDR-L2、CDR-L3)、計6つのCDRを有する。本明細書における例示的なCDRは、
(a)アミノ酸残基26-32(L1)、50-52(L2)、91-96(L3)、26-32(H1)、53-55(H2)及び96-101(H3)に生じる超可変ループ(Chothia and Lesk,J.Mol.Biol.196:901-917(1987));
(b)アミノ酸残基24-34(L1)、50-56(L2)、89-97(L3)、31-35b(H1)、50-65(H2)及び95-102(H3)に生じるCDR(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD(1991));及び
(c)アミノ酸残基27c-36(L1)、46-55(L2)、89-96(L3)、30-35b(H1)、47-58(H2)及び93-101(H3)に生じる抗原接触(antigen contact)(MacCallum et al.J.Mol.Biol.262:732-745(1996))である。
【0067】
別途指示がない限り、CDRは、上掲のKabat et al.に従って決定される。当業者であれば、CDRの名称はまた、上掲のChothia、上掲のMcCallum又は他の科学的に認められた命名法に従って決定することができることを理解するであろう。Kabatらは、あらゆる抗体に適用可能な可変領域配列の番号付けシステムも定義した。当業者であれば、この「Kabat番号付け」のシステムを、配列自体を超える実験データに頼ることなく、どのような可変領域配列にも明確に割り当てることができる。「Kabat番号付け」は、本明細書で使用される場合、Kabat et al.,U.S.Dept. of Health and Human Services,「Sequence of Proteins of Immunological Interest」(1983)によって定められた番号付けシステムを指す。特に断らない限り、抗体可変領域内における特定のアミノ酸残基の位置の番号付けへの言及は、Kabat番号付けシステムに従っている。
【0068】
本明細書において抗原結合分子(例えば抗体)の文脈で使用される用語「親和性成熟」は、参照抗原結合分子に由来し、例えば変異により、参照抗体と同じ抗原に、好ましくは同じエピトープに結合し、抗原に対して、参照抗原結合分子より高い親和性を有す抗原結合分子を指す。親和性成熟は通常、抗原結合分子の1又は複数のCDRにおいて1又は複数のアミノ酸残基の修飾を伴う。典型的には、親和性成熟抗原結合分子は、最初の参照抗原結合分子と同じエピトープに結合する。
【0069】
「フレームワーク」又は「FR」は、超可変領域(HVR)残基以外の可変ドメイン残基を指す。可変ドメインのFRは、一般に4つのFRドメイン:FR1、FR2、FR3、FR4で構成される。したがって、HVR配列とFR配列は一般に、FR1-H1(L1)-FR2-H2(L2)-FR3-H3(L3)-FR4の順序でVH(又はVL)に現れる。
【0070】
本明細書において、「アクセプターヒトフレームワーク」とは、下記に定義されるように、ヒト免疫グロブリンフレームワーク又はヒトコンセンサスフレームワークから得られる軽鎖可変ドメイン(VL)フレームワーク又は重鎖可変ドメイン(VH)フレームワークのアミノ酸配列を含むフレームワークである。ヒト免疫グロブリンフレームワーク又はヒトコンセンサスフレームワーク「から得られる」アクセプターヒトフレームワークは、その同一のアミノ酸配列を含んでもよく、又はそれはアミノ酸配列の変化を含んでもよい。いくつかの実施態様において、アミノ酸変化の数は、10以下、9以下、8以下、7以下、6以下、5以下、4以下、3以下、又は2以下である。いくつかの実施態様において、VLアクセプターヒトフレームワークは、VLヒト免疫グロブリンフレームワーク配列又はヒトコンセンサスフレームワーク配列と配列が同一である。
【0071】
用語「キメラ」抗体は、重鎖及び/又は軽鎖の一部分が特定の起源又は種に由来し、重鎖及び/又は軽鎖の残りが異なる起源又は種に由来する抗体を指す。
【0072】
抗体の「クラス」は、その重鎖が保有する定常ドメイン又は定常領域の種類を指す。抗体には5つの主要なクラス、すなわちIgA、IgD、IgE、IgG及びIgMがあり、これらのいくつかは、更にサブクラス(アイソタイプ)、例えばIgG、IgG、IgG、IgG、IGA及びIgAに分けることができる。免疫グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれα、δ、ε、γ、及びμと呼ばれる。
【0073】
「ヒト起源に由来する定常領域」又は「ヒト定常領域」という用語は、サブクラスIgG1、IgG2、IgG3又はIgG4のヒト抗体の定常重鎖領域及び/又は定常軽鎖カッパ若しくはラムダ領域を示す。このような定常領域は当技術分野でよく知られており、例えばKabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th ed.,Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD(1991)で記載されている(例えばJohnson, G., and Wu, T.T., Nucleic Acids Res. 28 (2000) 214-218; Kabat, E.A., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 72 (1975) 2785-2788も参照のこと)。特に断らない限り、定常領域内のアミノ酸残基の番号付けは、Kabat,E.A.et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th ed.,Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD(1991),NIH Publication 91-3242に記載されるように、KabatのEUインデックスとも呼ばれるEU番号付けシステムに従う。
【0074】
「ヒト化」抗体は、非ヒトHVR由来のアミノ酸残基、及びヒトFR由来アミノ酸残基を含むキメラ抗体を指す。特定の実施態様において、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含み、HVR(例えばCDR)の全て又は実質的に全てが非ヒト抗体のものに対応し、FRの全て又は実質的に全てがヒト抗体のものに対応する。ヒト化抗体は、場合によって、ヒト抗体由来の抗体定常領域の少なくとも一部を含んでもよい。抗体の「ヒト化型」、例えば、非ヒト抗体は、ヒト化を遂げた抗体を指す。本発明により包含される「ヒト化抗体」の他の型は、特にC1q結合及び/又はFc受容体(FcR)結合に関して、本発明による特性が生じるように定常領域が追加的に改変されたか又は元の抗体のものから変更されたものである。
【0075】
「ヒト」抗体は、ヒト若しくはヒト細胞により生成された抗体の、又はヒト抗体レパートリーを利用する非ヒト源に由来する抗体のアミノ酸配列、或いは他のヒト抗体をコードする配列に対応するアミノ酸配列を有する抗体である。ヒト抗体のこの定義は、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体を特に除外する。
【0076】
本明細書の用語「Fcドメイン」又は「Fc領域」は、定常領域の少なくとも一部を含む、抗体重鎖のC末端領域を定義するために使用される。この用語は、天然配列Fc領域及び変異型Fc領域を含む。一実施態様において、ヒトIgG重鎖Fc領域は、Cys226又はPro230から重鎖のカルボキシル末端にまで及ぶ。しかしながら、宿主細胞によって生成された抗体は、重鎖のC末端から1又は複数、特に1又は2のアミノ酸の翻訳後切断を受けることがある。したがって、完全長重鎖をコードする特定の核酸分子の発現により宿主細胞によって生成された抗体は、完全長重鎖を含んでも、完全長重鎖の切断された変異体を含んでもよい。これは、重鎖の最終的2つのC末端アミノ酸がグリシン(G446)とリジン(K447、Kabat EUインデックスによる番号付け)である場合に当てはまる。したがって、Fc領域のC末端リジン(Lys447)又はC末端グリシン(Gly446)及びリジン(Lys447)は、存在することもしないこともあり得る。Fc領域を含む重鎖のアミノ酸配列は、特に断らない限り、C末端グリシン-リジンジペプチドなしで本明細書に示される。一実施態様では、本発明による抗体に含まれる、本明細書に明記されるFc領域を含む重鎖は、追加のC末端グリシン-リジンジペプチド(G446及びK447、KabatのEUインデックスによる番号付け)を含む。一実施態様では、本発明による抗体に含まれる、本明細書に明記されるFc領域を含む重鎖は、追加のC末端グリシン残基(G446、KabatのEUインデックスによる番号付け)を含む。本明細書に明記されていない限り、Fc領域又は定常領域内のアミノ酸残基の番号付けは、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD,1991に記載のように、EUインデックスとも呼ばれるEU番号付けシステムに従う。IgG Fc領域は、IgG CH2及びIgG CH3ドメインを含む。ヒトIgG Fc領域の「CH2ドメイン」は通常、およそ231位のアミノ酸残基からおよそ340位のアミノ酸残基まで延びる。一実施態様では、CH2ドメインに糖鎖が結合している。本明細書のCH2ドメインは、天然配列CH2ドメインでも変異型CH2ドメインでもよい。「CH3ドメイン」は、Fc領域のC末端からCH2ドメインまでの残基のストレッチ(すなわちIgGのおよそ341位のアミノ酸残基からおよそ447位のアミノ酸残基まで)を含む。本明細書におけるCH3領域は、天然配列CH3ドメインでも変異型CH3ドメイン(例えばその一方の鎖に導入された「隆起」(「ノブ」)と、その他方の鎖に導入された対応する「空洞」(「ホール」)とを有するCH3ドメイン;米国特許第5821333号(出典明示により本明細書において明示的に援用される)参照)でもよい。このような変異型CH3ドメインは、本明細書に記載されるように、2つの非同一の抗体重鎖のヘテロ二量体化を促進するために使用することができる。
【0077】
「ノブ・イントゥ・ホール」技術は、例えば米国特許第5731168号;同第7695936号;Ridgway et al.,Prot Eng 9,617-621(1996)及びCarter,J Immunol Meth 248,7-15(2001)に記載されている。通常、この方法は、隆起(「ノブ」)が対応する空洞(「ホール」)内に配置されて、ヘテロ二量体形成を促進し、且つ、ホモ二量体形成を妨げることができるように、第1のポリペプチドの接触面に隆起を、空洞を第2のポリペプチドの接触面に導入することを伴う。隆起は、第1のポリペプチドの接触面からの小さなアミノ酸側鎖をそれより大きな側鎖(例えばチロシン又はトリプトファン)で置き換えることにより構築される。隆起と同じ又は同様のサイズの相補的空洞は、大きなアミノ酸側鎖をそれよりも小さなもの(例えばアラニン又はスレオニン)で置き換えることにより、第2のポリペプチドの接触面に作り出される。隆起と空洞は、ポリペプチドをコードする核酸を、例えば部位特異的突然変異誘発又はペプチド合成によって変化させることにより作られる。特定の実施態様では、ノブ改変は、Fcドメインの2つのサブユニットの一方にアミノ酸置換T366Wを含み、ホール改変は、Fcドメインの2つのサブユニットのもう一方にアミノ酸置換T366S、L368A及びY407Vを含む。更なる特定の実施態様では、ノブ改変を含むFcドメインのサブユニットは、アミノ酸置換S354Cを更に含み、ホール改変を含むFcドメインのサブユニットは、アミノ酸置換Y349Cを更に含む。これら2つのシステイン残基の導入により、Fc領域の2つのサブユニット間にジスルフィド架橋が形成され、したがって二量体を更に安定させる(Carter,J Immunol Methods 248,7-15(2001))。番号付けは、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD(1991)に従う。
【0078】
「免疫グロブリンのFc領域に相当する領域」には、免疫グロブリンのFc領域の天然に存在する対立遺伝子変異体と、置換、付加又は欠失を生じるが免疫グロブリンのエフェクター機能(例えば抗体依存性細胞傷害)を媒介する能力を実質的に低下させない変更を有する変異体とが含まれることが意図される。例えば、1又は複数のアミノ酸は、生物学的機能を実質的に損なうことなく、免疫グロブリンのFc領域のN末端又はC末端から欠失させることができる。このような変異体は、活性に対する影響が最小となるように、当技術分野で知られている一般的な規則に従って選択することができる(例えばBowie, J. U. et al., Science 247:1306-10 (1990)参照)。
【0079】
用語「エフェクター機能」は、抗体のアイソタイプにより変わる、抗体のFc領域に起因しうる生物活性を指す。抗体エフェクター機能の例には、C1q結合及び補体依存性細胞傷害(CDC)、Fc受容体結合、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)、抗体依存性細胞貪食(ADCP)、サイトカイン分泌、抗原提示細胞による免疫複合体を介した抗原取り込み、細胞表面受容体(例えばB細胞受容体)の下方制御、及びB細胞の活性化が含まれる。
【0080】
「活性化Fc受容体」は、抗体のFc領域の結合に続いて、エフェクター機能を実行するように受容体保有細胞を刺激するシグナル伝達現象を生じさせるFc受容体である。活性化Fc受容体には、FcγRIIIa(CD16a)、FcγRI(CD64)、FcγRIIa(CD32)、及びFcαRI(CD89)が含まれる。活性化Fc受容体は特に、ヒトFcγRIIIaである(UniProtアクセッション番号P08637、バージョン141参照)。
【0081】
「TNFリガンドファミリーメンバー」又は「TNFファミリーリガンド」という用語は、炎症誘発性サイトカインを指す。サイトカイン一般、特にTNFリガンドファミリーのメンバーは、免疫系の刺激及び調整において重要な役割を果たしている。現在、19種類のサイトカインが、配列、機能、構造の類似性に基づいて、TNF(腫瘍壊死因子)リガンドスーパーファミリーのメンバーとして同定されている。これらのリガンドは全て、C末端の細胞外ドメイン(エクトドメイン)、N末端の細胞内ドメイン、及び単一の膜貫通ドメインを有する膜貫通タンパク質タイプIIIである。TNFホモロジードメイン(THD)として知られるC末端細胞外ドメインは、スーパーファミリーメンバー間で20~30%のアミノ酸同一性を有し、受容体への結に関与している。また、TNFエクトドメインは、TNFリガンドがそれらの特定の受容体によって認識される三量体複合体を形成するのにも関与している。TNFリガンドファミリーのメンバーは、リンパトキシンα(LTA又はTNFSF1としても知られている)、TNF(TNFSF2としても知られている)、LTβ(TNFSF3としても知られている)、OX40L(TNFSF4としても知られている)、CD40L(CD154又はTNFSF5としても知られている)、FasL(CD95L、CD178又はTNFSF6としても知られている)、CD27L(CD70又はTNFSF7としても知られている)、CD30L(CD153又はTNFSF8としても知られている)、4-1BBL(TNFSF9としても知られている)、TRAIL(APO2L、CD253又はTNFSF10としても知られている)、RANKL(CD254又はTNFSF11としても知られている)、TWEAK(TNFSF12としても知られている)、APRIL(CD256又はTNFSF13としても知られている)、BAFF(CD257又はTNFSF13Bとしても知られている)、LIGHT(CD258又はTNFSF14としても知られている)、TL1A(VEGI又はTNFSF15としても知られている)、GITRL(TNFSF18としても知られている)、EDA-A1(エクトジスプラシンA1としても知られている)及びEDA-A2(エクトジスプラシンA2としても知られている)からなる群より選択される。特に断らない限り、この用語は、霊長類(例えばヒト)、非ヒト霊長類(例えばカニクイザル)及びげっ歯類(例えばマウス及びラット)等の哺乳動物を含む任意の脊椎動物源由来の任意の天然型TNFファミリーリガンドを指す。「共刺激TNFリガンドファミリーメンバー」又は「共刺激TNFファミリーリガンド」という用語は、T細胞の増殖及びサイトカイン産生を共刺激することができる、TNFリガンドファミリーメンバーのサブグループを指す。これらのTNFファミリーリガンドは、対応するTNF受容体と相互作用すると、TCRシグナルを同時刺激することができ、その受容体との相互作用はTNFR関連因子(TRAF)の動員をもたらし、それによりシグナル伝達カスケードが開始されてT細胞活性化を招く。共刺激TNFファミリーリガンドは、4-1BBL、OX40L、GITRL、CD70、CD30L及びLIGHTからなる群より選択され、特に、共刺激TNFリガンドファミリーメンバーは4-1BBLである。
【0082】
前述の通り、4-1BBLは、膜貫通タンパク質タイプIIであり、TNFリガンドファミリーのメンバーの1つである。配列番号69のアミノ酸配列を有する完全又は完全長4-1BBLは、細胞の表面上に三量体を形成することが記載されている。三量体の形成は、4-1BBLのエクトドメインの特定のモチーフにより可能になる。上記モチーフは、本明細書では、「三量体化領域」と称される。ヒト4-1BBL配列(配列番号70)のアミノ酸50~254は、4-1BBLの細胞外ドメインを形成するが、その断片までもが三量体を形成することができる。本発明の特定の実施態様では、用語「4-1BBLのエクトドメイン又はその断片」は、配列番号4(ヒト4-1BBLのアミノ酸52~254)、配列番号1(ヒト4-1BBLのアミノ酸71~254)、配列番号3(ヒト4-1BBLのアミノ酸80~254)、及び配列番号2(ヒト4-1BBLのアミノ酸85~254)から選択されるアミノ酸を有するポリペプチド、又は配列番号5(ヒト4-1BBLのアミノ酸71~248)、配列番号8(ヒト4-1BBLのアミノ酸52~248)、配列番号7(ヒト4-1BBLアミノ酸80~248)及び配列番号6(ヒト4-1BBLのアミノ酸85~248)から選択されるアミノ酸を有するポリペプチドを指すが、本明細書には三量体化することが可能なエクトドメインの他の断片も含まれる。
【0083】
「エクトドメイン」は、細胞外空間(すなわち標的細胞外の空間)に及ぶ膜タンパク質のドメインである。エクトドメインは通常、表面との接触を開始するタンパク質の部分であり、シグナル伝達をもたらす。したがって、本明細書に記載のTNFリガンドファミリーメンバーのエクトドメインは、細胞外空間(細胞外ドメイン)に及ぶTNFリガンドタンパク質の一部を指すが、三量体化及び対応するTNF受容体への結合に関与する、そのより短い部分又はその断片も含む。したがって、用語「TNFリガンドファミリーメンバーのエクトドメイン又はその断片」は、細胞外ドメインを形成するTNFリガンドファミリーメンバーの細胞外ドメイン又はやはり受容体に結合可能なその部分(受容体結合ドメイン)を指す。
【0084】
用語「ペプチドリンカー」は、1又は複数のアミノ酸、典型的には約2から20のアミノ酸を含むペプチドを指す。ペプチドリンカーは、当技術分野において既知であるか、又は本明細書に記載されている。適切な非免疫原性リンカーペプチドは、例えば(GS)、(SG又はG(SGペプチドリンカーであり、ここで「n」は通常1から10の間、典型的には1から4の間の数字、特に2であり、すなわちGGGGS(配列番号71)、GGGGSGGGGS(配列番号68)、SGGGGSGGGG(配列番号72)、(GS)又はGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号73)、GGGGSGGGGSGGGG又はG4(SG4)(配列番号74)、及び(GS)又はGGGGSGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号75)からなる群より選択されるペプチドであるが、配列GSPGSSSSGS(配列番号76)、GSGSGSGS(配列番号77)、GSGSGNGS(配列番号78)、GGSGSGSG(79)、GGSGSG(配列番号80)、GGSG(配列番号81)、GGSGNGSG(配列番号82)、GGNGSGSG(配列番号83)、及びGGNGSG(配列番号84)も含む。特に目的とするペプチドリンカーは、(G4S)又はGGGGS(配列番号71)、(GS)又はGGGGSGGGGS(配列番号68)、及び(GS)(配列番号73)である。
【0085】
本願内で使用される場合、用語「アミノ酸」は、アラニン(3文字コード:ala、1文字コード:A)、アルギニン(arg、R)、アスパラギン(asn、N)、アスパラギン酸(asp、D)、システイン(cys、C)、グルタミン(gln、Q)、グルタミン酸(glu、E)、グリシン(gly、G)、ヒスチジン(his、H)、イソロイシン(ile、I)、ロイシン(leu、L)、リジン(lys、K)、メチオニン(met、M)、フェニルアラニン(phe、F)、プロリン(pro、P)、セリン(ser、S)、スレオニン(thr、T)、トリプトファン(trp、W)、チロシン(tyr、Y)、及びバリン(val、V)を含む天然に存在するカルボキシαアミノ酸の群を意味する。
【0086】
本明細書で使用される「融合ポリペプチド」又は「融合タンパク質」は、抗体断片と抗体に由来しないペプチドとから構成される一本鎖ポリペプチドを指す。一態様では、融合ポリペプチドは、抗原結合ドメインの一部又はFc部分に融合された4-1BBLの1つ又は2つのエクトドメイン又はその断片から構成される。融合は、ペプチドリンカーを介して抗原結合部分のN又はC末端アミノ酸を、上記4-1BBLのエクトドメイン又はその断片のC又はN末端アミノ酸に直接連結することによって起こり得る。
【0087】
「融合された」又は「接続された」とは、構成要素(例えば、上記TNFのリガンドファミリーメンバーのポリペプチド及びエクトドメイン)が、直接又は1若しくは複数のペプチドリンカーを介して、ペプチド結合によって連結されていることを意味する。
【0088】
参照ポリペプチド(タンパク質)配列に対する「アミノ酸配列同一性パーセント(%)」は、これらの配列を整列させ、最大の配列同一性パーセントを得るために必要に応じてギャップを導入し、配列同一性の一部としていかなる保存的置換も考慮しない場合の、該参照ポリペプチド配列中のアミノ酸残基と同一である、候補配列中のアミノ酸残基の割合と定義される。アミノ酸配列同一性パーセントを決定するためのアライメントは、当分野の技術の範囲内にある様々な方法、例えばBLAST、BLAST-2、ALIGN、SAWI又はMegalign(DNASTAR)ソフトウェア等の一般に利用可能なコンピュータソフトウェアを使用して得ることができる。当業者であれば、比較する配列の全長にわたって最大のアライメントを得るのに必要な任意のアルゴリズムを含めた、配列を整列させるための適切なパラメーターを決定することができる。しかしながら、本明細書において、アミノ酸配列同一性%値は、配列比較コンピュータプログラムALIGN-2を使用して生成される。ALIGN-2配列比較コンピュータプログラムはジェネンテック社によって作成されたもので、そのソースコードは、ユーザー文書と共に米国著作権庁(ワシントンD.C.,20559)に提出されており、ここで米国著作権登録番号TXU510087として登録されている。ALIGN-2プログラムは、ジェネンテック社(カリフォルニア州サウスサンフランシスコ)から一般に利用可能であり、又はそのソースコードからコンパイルすることができる。ALIGN-2プログラムは、デジタルUNIXのV4.0Dを含むUNIXオペレーティングシステム上での使用のためにコンパイルされていなければならない。全ての配列比較パラメーターは、ALIGN-2プログラムによって設定され変動しない。アミノ酸配列比較にALIGN-2が用いられる状況では、所与のアミノ酸配列Aの、所与のアミノ酸配列Bとの(又はこれに対する)アミノ酸配列同一性%(或いは、所与のアミノ酸配列Aは、所与のアミノ酸配列Bと(又はこれに対して)特定のアミノ酸配列同一性%を有するか又は含む所与のアミノ酸配列A、ということもできる)は次のように計算される:
分数X/Yの100倍
ここで、Xは配列アライメントプログラムALIGN-2により、AとBのそのプログラムのアライメントにおいて完全一致(identical match)としてスコア化されるアミノ酸残基の数であり、YはBの全アミノ酸残基の総数である。アミノ酸配列Aの長さがアミノ酸配列Bの長さと異なる場合、AのBに対するアミノ酸配列同一性%は、BのAに対する%アミノ酸配列同一性%とは異なることは理解されるであろう。特に断らない限り、本明細書で使用される全てのアミノ酸配列同一性%値は、ALIGN-2コンピュータプログラムを使用して、直前の段落に記載のようにして得られる。
【0089】
特定の実施態様では、本明細書に提供される、TNFリガンド三量体含有抗原結合分子のアミノ酸配列変異体が企図される。例えば、TNFリガンド三量体含有抗原結合分子の結合親和性及び/又は他の生物学的特性を改善することが望ましい場合がある。TNFリガンド三量体含有抗原結合分子のアミノ酸配列変異体は、該分子をコードするヌクレオチド配列に適切な改変を導入することにより、又はペプチド合成により調製することができる。このような改変には、例えば抗体のアミノ酸配列内の残基からの欠失及び/又はそれへの挿入及び/又はそれの置換が含まれる。最終が所望の特性、例えば抗原結合を有していることを条件として、欠失、挿入及び置換の任意の組み合わせが、最終コンストラクトに到達するまでなされ得る。置換突然変異誘発の対象となる部位には、HVRとフレームワーク(FR)が含まれる。保存的置換が、表Bの「好ましい置換」という項目でが示されており、その下に更に、アミノ酸側鎖分類(1)から(6)に基づいて記載されている。アミノ酸置換を目的の分子に導入することができ、生成物を、所望の活性、例えば抗原結合の保持/改善、免疫原性の低下又はADCC若しくはCDCの改善についてスクリーニングすることができる。
【0090】
アミノ酸は以下の共通の側鎖特性に従ってグループ化することができる。
(1)疎水性:ノルロイシン,Met,Ala,Val,Leu,Ile;
(2)中性の親水性:Cys,Ser,Thr,Asn,Gln;
(3)酸性:Asp,Glu;
(4)塩基性:His,Lys,Arg;
(5)鎖配向に影響する残基:Gly,Pro;
(6)芳香族:Trp,Tyr,Phe
【0091】
非保存的置換は、これらのクラスのうちの1つの要素を別のクラスの要素と交換することを必然的に伴うものである。
【0092】
用語「アミノ酸配列変異体」は、親抗原結合分子の1又は複数の超可変領域残基中にアミノ酸置換が存在する実質的変異体を含む(例えばヒト化又はヒト抗体)。一般に、更なる研究のために選択された結果として得られる変異体は、親抗原結合分子と比較して、特定の生物学的特性の改変(例えば改善)(例えば親和性の向上、免疫原性の低下)を有し、且つ/又は、親抗原結合分子の特定の生物学的特性を実質的に保持しているものである。例示的な置換型変異体は、親和性成熟抗体であり、例えば、本明細書に記載されるようなファージディスプレイに基づく親和性成熟技術を用いて、簡便に生成することができる。簡潔に言えば、1又は複数のCDR残基が変異し、変異型抗原結合分子は、ファージ上に表示され、特定の生物活性(例えば、結合親和性)についてスクリーニングされる。特定の実施態様では、置換、挿入又は欠失は、これらの変更が抗原に対する抗原結合分子の抗原との結合能を実質的に低下させない限り、1又は複数のCDR内で生じ得る。例えば、実質的に結合親和性を低下させない保存的変更(例えば本明細書において提供される保存的置換)をCDR内で行うことができる。突然変異誘発のために標的とすることができる抗体の残基又は領域を同定するための有用な方法は、Cunningham and Wells(1989)Science,244:1081-1085により記載されているように、「アラニンスキャニング変異誘発」と呼ばれる。この方法では、複数の標的残基のうちの1つ残基又は群(例えばArg、Asp、His、Lys及びGlu等の荷電残基)を同定し、中性又は負に荷電したアミノ酸(例えばアラニン又はポリアラニン)で置き換えて、抗原と抗体との相互作用が影響を受けるかどうかを判定する。更なる置換が、最初の置換に対する機能的感受性を示すアミノ酸の位置に導入され得る。別法として又はそれに加えて、抗体と抗原との接触点を特定するための抗原-抗原結合分子複合体の結晶構造。このような接触残基及び隣接残基は、置換の候補として標的にしても排除してもよい。変異体をスクリーニングして、それらが所望の特性を含むかどうか判定することができる。
【0093】
アミノ酸配列挿入には、長さが1残基から100又はそれ以上の残基を有するポリペプチドまでの範囲のアミノ末端及び/又はカルボキシル末端融合、並びに単一又は複数のアミノ酸残基の配列内挿入が含まれる。末端挿入の例には、N末端メチオニル残基を有する、4-1BBL三量体含有抗原結合分子が含まれる。該分子のその他の挿入変異体には、4-1BBL三量体含有抗原結合分子の血清半減期を延ばす、ポリペプチドに対するN末端又はC末端への融合体が含まれる。
【0094】
特定の実施態様では、本明細書に提供される4-1BBL三量体含有抗原結合分子を、抗体がグリコシル化される程度を上昇又は低下させるように変化させることができる。該分子のグリコシル化変異体は、簡便には、1又は複数のグリコシル化部位が生成又は除去されるようにアミノ酸配列を変化させることにより得ることができる。4-1BBL三量体含有抗原結合分子がFc領域を含む場合、それに結合する炭水化物を変化させることができる。哺乳動物細胞によって産生される天然型抗体は、典型的には、Fc領域のCH2ドメインのAsn297へのN結合によって通常結合される分枝状の二分岐オリゴ糖を含む。例えばWright et al.TIBTECH 15:26-32(1997)を参照。オリゴ糖には、様々な炭水化物、例えばマンノース、N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)、ガラクトース及びシアル酸の他、二分岐オリゴ糖構造の「幹」においてGlcNAcに結合したフコースが含まれ得る。いくつかの実施態様では、特定の改善された特性を有する変異体を作製するために、4-1BBLリガンド三量体含有抗原結合分子中のオリゴ糖の修飾を行うことができる。一態様において、Fc領域に(直接的又は間接的に)結合するフコースを欠く糖鎖構造を有する4-1BBL三量体含有抗原結合分子の変異体が提供される。このようなフコシル化変異体は、改善されたADCC機能を有し得る。例えば米国特許出願公開第2003/0157108号(Presta, L.)又は同第2004/0093621号(協和発酵株式会社)を参照のこと。本発明の4-1BBL三量体含有抗原結合分子の更なる変異体は、二分されたオリゴ糖を含むもの、例えば、Fc領域に結合する二分岐オリゴ糖がGlcNAcにより二分されているものを含む。このような変異体は、減少したフコシル化及び/又は改善されたADCC機能有し得る。例えば国際公開第2003/011878号(Jean-Mairet et al.);米国特許第6602684号(Umana et al.);及び米国特許出願公開第2005/0123546号(Umana et al.)を参照のこと。Fc領域に結合したオリゴ糖内に少なくとも1のガラクトース残基を持つ変異体も提供される。このような抗体変異体は、改善されたCDC機能を有することがあり、例えば、国際公開第1997/30087号(Patel et al.);国際公開第1998/58964号(Raju, S.);及び国際公開第1999/22764号(Raju, S.)に記載されている。
【0095】
特定の実施態様では、本発明の4-1BBL三量体含有抗原結合分子のシステイン操作変異体、例えば、該分子の1又は複数の残基がシステイン残基で置換されている「チオMab」を作製することが望ましい。特定の実施態様において、置換される残基が到達可能な該分子の部位で生じる。これらの残基をシステインで置換することによって、反応性チオール基は、到達可能な抗体の部位に配置され、抗体を他の部分、例えば薬物部分又はリンカー-薬物部分にコンジュゲートさせて、免疫コンジュゲートを作るために使用され得る。ある実施態様において、次の残基:軽鎖のV205(Kabat番号付け);重鎖のA118(EU番号付け);及び重鎖Fc領域のS400(EU番号付け)のいずれか1つ又はそれ以上がシステインと置換され得る。システイン操作抗原結合分子は、例えば米国特許第7521541号に記載されているように生成され得る。
【0096】
特定の態様では、本明細書に提供される4-1BBL三量体含有抗原結合分子は、当技術分野で知られ、容易に入手可能な追加の非タンパク質部分を含むように更に改変することができる。抗体の誘導体化に適した部分は、限定されるものではないが、水溶性ポリマーを含む。水溶性ポリマーの非限定的な例には、ポリエチレングリコール(PEG)、エチレングリコール/プロピレングリコールのコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ-1,3-ジオキソラン、ポリ-1,3,6-トリオキサン、エチレン/無水マレイン酸コポリマー、ポリアミノ酸(ホモポリマー又はランダムコポリマーのいずれか)、及びデキストラン又はポリ(n-ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、ポリプロピレン(propropylene)グリコールホモポリマー、ポリプロピレン(prolypropylene)オキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール(例えばグリセロール)、ポリビニルアルコール、並びにこれらの混合物が含まれる(ただし、これらに限定されない)。ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒドは、水中でのその安定性による製造上の利点を有し得る。該ポリマーは、任意の分子量であってよく、分枝状でも非分枝状でもよい。抗体に結合するポリマーの数は変化してもよく、複数のポリマーが結合する場合、それらは同じ分子でも異なる分子でもよい。一般に、誘導体化に使用されるポリマーの数及び/又は型は、改善されるべき抗体の特定の特性又は機能、その二重特異性抗体誘導体が規定の条件下で治療に使用されるかどうかを含むがこれらに限定されない考慮事項に基づいて決定され得る。別の態様では、放射線への曝露によって選択的に加熱さ得る非タンパク質部分と抗体とのコンジュゲートが提供される。一実施態様では、非タンパク質部分はカーボンナノチューブである(Kam, N.W. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 102 (2005) 11600-11605)。放射線は、任意の波長であってよく、通常の細胞に害を与えないが抗体-非タンパク質部分の近位細胞が死滅する温度に非タンパク質部分を加熱する波長を含むがこれに限定されない。
【0097】
別の態様では、本明細書で提供される4-1BBL三量体含有抗原結合分子のイムノコンジュゲートが得られる。「イムノコンジュゲート」は、細胞傷害性剤を含むがそれに限定されない、1又は複数の異種分子にコンジュゲートした抗体である。
【0098】
用語「核酸分子」又は「ポリヌクレオチド」には、ヌクレオチドのポリマーを含む任意の化合物及び/又は物質が含まれる。各ヌクレオチドは、塩基、具体的にはプリン塩基又はピリミジン塩基(すなわち、シトシン(C)、グアニン(G)、アデニン(A)、チミン(T)又はウラシル(U))、糖(すなわち、デオキシリボース又はリボース)、及びリン酸基から構成される。しばしば、核酸分子は塩基の配列によって記述されることにより、これらの塩基は核酸分子の一次構造(直鎖状構造)を表す。塩基の配列は、典型的には5’から3’まで表される。ここで、核酸分子という用語は、例えば相補的DNA(cDNA及びゲノムDNAを含むデオキシリボ核酸(DNA)、リボ核酸(RNA)、特にメッセンジャーRNA(mRNA)、DNA又はRNAの合成形態、並びにこれらの2以上の分子を含む混合ポリマーを包含する。核酸分子は、直鎖状であっても円形であってもよい。更に、核酸分子という用語には、センス鎖及びアンチセンス鎖の双方、並びに一本鎖形態及び二本鎖形態が含まれる。更に、本明細書に記載の核酸分子は、天然に存在するヌクレオチド又は非天然に存在するヌクレオチドを含み得る。非天然に存在するヌクレオチドの例には、誘導体化された糖若しくはリン酸骨格連結を有する修飾ヌクレオチド塩基、又は化学的に修飾された残基が含まれる。核酸分子はまた、in vitro及び/又はin vivo、例えば宿主又は患者において本発明の抗体を直接発現させるためのベクターとして好適なDNA分子及びRNA分子を包含する。このようなDNA(例えばcDNA)又はRNA(例えばmRNA)ベクターは、改変されていなくても、改変されていてもよい。例えば、mRNAを化学的に修飾して、RNAベクターの安定性及び/又はコードされた分子の発現を高め、mRNAを対象に注入してin vivoで抗体を生成することができるようにすることが可能である(例えば、Stadler ert al,Nature Medicine 2017、2017年6月12日オンライン公開、doi:10.1038/nm.4356又は欧州特許第2101823号参照)。
【0099】
「単離された」核酸分子又はポリヌクレオチドとは、その天然環境から除去された核酸分子、DNA又はRNAが意図される。例えば、ベクターに含有されるポリペプチドをコードする組換えポリヌクレオチドを、本発明の目的のために単離することが考慮される。単離されたポリヌクレオチドの更なる例には、異種宿主細胞内に維持される組換えポリヌクレオチド、又は溶液中の(部分的に又は実質的に)精製されたポリヌクレオチドが含まれる。単離されたポリヌクレオチドは、ポリヌクレオチド分子を通常含む細胞に含まれるポリヌクレオチド分子を含むが、そのポリヌクレオチド分子は、染色体外又はその自然の染色体上の位置とは異なる染色体位置に存在している。単離されたRNA分子には、本発明のin vivo又はin vitro RNA転写物、並びにプラス鎖及びマイナス鎖型、並びに二本鎖型が含まれる。更に、本発明の単離されたポリヌクレオチド又は核酸には、合成により生成されたこのような分子が含まれる。また、ポリヌクレオチド又は核酸は、プロモーター、リボソーム結合部位又は転写ターミネーター等の調節エレメントであっても、それを含んでいてもよい。
【0100】
本発明の参照ヌクレオチド配列と、例えば、少なくとも95%「同一」であるヌクレオチド配列を有する核酸又はポリヌクレオチドとは、ポリヌクレオチドのヌクレオチド配列が、参照ヌクレオチド配列の各100ヌクレオチドあたり5つまでの点突然変異を含み得ること以外は、参照配列と同一であることを意味する。換言すれば、参照ヌクレオチド配列と少なくとも95%同一であるヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドを得るために、参照配列中最大5%のヌクレオチドが欠失しているか又は別のヌクレオチドで置換されてもよく、或いは参照配列中の全ヌクレオチドの最大5%の数のヌクレオチドが参照配列に挿入されてよい。参照配列のこのような変更は、参照ヌクレオチド配列の5’若しくは3’末端位置で、又はこれら末端位置の間のどの位置で起こってもよく、参照配列中の残基間に個々に散在してもよいし、又は参照配列内に1つ若しくは複数の連続した群として散在してもよい。実際問題として、特定のポリヌクレオチド配列が本発明のヌクレオチド配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%同一であるかどうかは、ポリペプチドについて上述したもの(例えばALIGN-2)などの既知のコンピュータプログラムを用いて慣例的に判定することができる。
【0101】
用語「発現カセット」とは、標的細胞内の特定の核酸の転写を可能にする一連の特定の核酸エレメントを用いて、組換え又は合成により生成されたポリヌクレオチドを指す。組換え発現カセットは、プラスミド、染色体、ミトコンドリアDNA、プラスチドDNA、ウイルス又は核酸断片中に取り込むことができる。発現ベクターの組換え発現カセット部分には、数ある配列の中でも特に、転写される核酸配列及びプロモーターが典型的に含まれる。特定の実施態様では、本発明の発現カセットは、本発明の二重特異性抗原結合分子をコードするポリヌクレオチド配列又はその断片を含む。
【0102】
用語「ベクター」又は「発現ベクター」は、「発現コンストラクト」と同義であり、標的細胞内においてそれが作動可能に会合する特定の遺伝子の発現を導入及び方向付けするために使用されるDNA分子を指す。この用語は、自己複製核酸構造物としてのベクター、及び導入された宿主細胞のゲノムに組み込まれたベクターを含む。本発明の発現ベクターは、発現カセットを含む。発現ベクターは、大量の安定なmRNAの転写を可能にする。発現ベクターが標的細胞内部に入ると、遺伝子によってコードされるリボ核酸分子又はタンパク質が、細胞転写及び/又は翻訳機構によって生成される。一実施態様では、本発明の発現ベクターは、本発明の二重特異性抗原結合分子をコードするポリヌクレオチド配列又はその断片を含む発現カセットを含む。
【0103】
用語「宿主細胞」、「宿主細胞株」及び「宿主細胞培養物」は、互換的に使用され、外因性の核酸が導入された細胞を指し、そのような細胞の子孫を含む。宿主細胞は、「形質転換体」及び「形質転換(された)細胞」を含み、それには初代形質転換細胞及び、継代の数に関係なく、それに由来する子孫が含まれる。子孫は親細胞と核酸含量が完全に同一でなくてもよく、突異を含んでいてもよい。本明細書には、最初に形質転換された細胞でスクリーニング又は選択されたものと同じ機能又は生物活性を有する変異子孫が含まれる。宿主細胞は、本発明の二重特異性抗原結合分子を生成するのに使用できる任意の種類の細胞系である。宿主細胞は、培養細胞、例えばいくつか例を挙げると、CHO細胞、BHK細胞、NS0細胞、SP2/0細胞、YO骨髄腫細胞、P3X63マウス骨髄腫細胞、PER細胞、PER.C6細胞又はハイブリドーマ細胞といった、哺乳動物の培養細胞;酵母細胞;昆虫細胞;及び植物細胞を含み、更には、トランスジェニック動物、トランスジェニック植物、又は培養植物若しくは動物組織内部に含まれる細胞を含む。
【0104】
「有効量の」薬剤は、それが投与される細胞又は組織中に生理的変化をもたらすために必要な量を指す。
【0105】
薬剤、例えば、薬学的組成物の「治療的有効量」とは、所望の治療的又予防的結果を達成するために必要な用量及び期間での、有効な量を指す。治療的有効量の薬剤は、疾患の有害作用を、例えば、排除する、低下させる、遅延させる、最小化する、又は防止する。
【0106】
「個体」又は「対象」は、哺乳動物である。哺乳動物には、限定されないが、家畜動物(例えばウシ、ヒツジ、ネコ、イヌ、ウマ)、霊長類(例えばヒト、及びサルなどの非ヒト霊長類)、ウサギ、及びげっ歯類(例えばマウス及びラット)が含まれる。特に、個体又は対象はヒトである。
【0107】
用語「薬学的組成物」とは、中に含まれる活性成分の生物活性が有効になるような形態の調製物であり、且つ、製剤が投与される対象にとって許容できないほど毒性である追加の成分を含まない調製物を指す。
【0108】
「薬学的に許容される添加剤」は、薬学的組成物中の活性成分以外の成分で、対象に対して非毒性である成分を指す。薬学的に許容される添加剤には、限定されないが、バッファー、安定剤又は保存剤が含まれる。
【0109】
「添付文書」という用語は、治療製品の商品包装に通例含まれる説明書を指すのに用いられ、適応症、用法、用量、投与、併用療法、当該治療製品の使用に関する禁忌及び/又は注意事項についての情報を含む。
【0110】
本明細書で用いられる場合、「治療(treatment)」(及び「治療する(treat)」又は「治療すること(treating)」など、その文法的変形)は、治療されている個体の自然経過を変えようと試みる臨床的介入を指し、予防のために行うことも、臨床病理の過程において行うこともできる。治療の望ましい効果には、限定されないが、疾患の発症又は再発を予防すること、症状の緩和、疾患の直接的又は間接的な病理学的帰結の縮小、転移を予防すること、疾患の進行の速度を遅らせること、疾患の状態の改善又は緩和、及び寛解又は予後の改善が含まれる。いくつかの実施態様において、本発明の分子は、疾患の発症を遅延させるか又は疾患の進行を遅くするために使用される。
【0111】
本明細書で使用される用語「がん」は、増殖性疾患、例えばリンパ腫、癌腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫、白血病、リンパ性白血病、肺がん、非小細胞肺(NSCL)がん、細気管支肺胞細胞肺がん、骨がん、膵臓がん、皮膚がん、頭頸部がん、皮膚黒色腫又は眼球内黒色腫、子宮がん、卵巣がん、直腸がん、肛門領域のがん、胃がん(stomach cancer)、胃がん(gastric cancer)、結腸直腸がん(CRC)、膵臓がん、乳がん、三種陰性乳がん、子宮がん、卵管癌、子宮内膜癌、子宮頸癌、膣癌、外陰癌、ホジキン病、食道がん、小腸がん、内分泌系のがん、甲状腺がん、副甲状腺がん、副腎がん、軟組織の肉腫、尿道がん、陰茎がん、前立腺がん、膀胱がん、腎臓又は尿管のがん、腎細胞癌、腎盂癌、中皮腫、肝細胞がん、胆道がん、中枢神経系(CNS)の腫瘍、脊椎腫瘍、脳幹神経膠腫、多形神経膠芽腫、星状細胞腫、シュワン腫、上衣腫、髄芽腫、髄膜腫、扁平上皮癌、下垂体腺腫、及びユーイング肉腫、黒色腫、多発性骨髄腫、B細胞がん(リンパ腫)、慢性リンパ性白血病(CLL)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、毛細血管性白血病、慢性骨髄芽球性白血病(任意の上記がんの難治性型、又は1つ以上の上記がんの組み合わせを含む)を指す。
【0112】
「Her2陽性」がんは、Her2のレベルが通常よりも高いがん細胞を含む。Her2陽性がんの例には、Her2陽性乳がん及びHer2陽性胃がんが含まれる。任意選択的に、Her2陽性がんは、2+又は3+の免疫組織化学(IHC)スコア及び/又は≧2.0のin situハイブリダイゼーション(ISH)増幅比を有する。
【0113】
用語「初期乳がん(EBC)」又は「早期乳がん」は、乳房又は腋窩リンパ節を越えては広がっていない乳がんを指すために本明細書で使用される。これには、非浸潤性乳管癌とステージI、ステージIIA、ステージIIB及びステージIIIAの乳がんが含まれる。
【0114】
腫瘍又はがんを、「ステージ0」、「ステージI」、「ステージII」、「ステージIII」又は「ステージIV」及びこの分類内の様々なサブステージと呼ぶことは、当技術分野で知られている総合ステージ分類又はローマ数字ステージ分類法を用いた腫瘍又はがんの分類を示している。がんの実際のステージはがんの種類によるものの、一般的に、ステージ0のがんはin situ病変であり、ステージIのがんは小さな局所腫瘍であり、ステージII及びIIIのがんは、局所リンパ節の転移を示す局所進行腫瘍であり、また、ステージIVのがんは転移性がんを表す。腫瘍の種類ごとの具体的なステージは、熟練した臨床医に知られている。
【0115】
「転移性乳がん」という用語は、がん細胞が元の部位から血管又はリンパ管によって体内の他の場所の1つ以上の部位に伝播し、乳房以外の1又は複数の臓器に1又は複数の続発性腫瘍を形成する乳がんの状態を意味する。
【0116】
「進行」がんとは、局所浸潤又は転移のいずれかによって、発生部位又は臓器の外に広がったがんである。したがって、「進行」がんという用語には、局所進行性疾患及び転移性疾患の双方が含まれる。
【0117】
「再発」がんとは、手術などの初期治療への反応後に、初期部位又は遠隔部位のいずれかで再成長したがんのことである。「局所再発」がんとは、以前に治療したがんと同じ場所で治療後に再発するがんである。「手術可能」又は「切除可能」ながんとは、原発臓器に限局しており、手術(切除)に適したがんである。「切除不可能」又は「切除不能」ながんは、手術で除去(切除)することができないがんである。
【0118】
本発明の4-1BBL三量体含有抗原結合分子
本発明は、生産可能性、安定性、結合親和性、生物活性、標的化効率、低い毒性、及び低い免疫性(immunicity)等の特に有利な特性を有する新規な4-1BBL三量体含有抗原結合分子を提供する。
【0119】
第1の態様では、本発明は、4-1BBL三量体含有抗原結合分子であって、
(a)Her2に特異的に結合可能な抗原結合ドメインと、
(b)ジスルフィド結合によって互いに連結されている第1のポリペプチド及び第2のポリペプチドであって、ここで抗原結合分子が、第1のポリペプチドは、ペプチドリンカーによって互いに接続されている4-1BBLの2つのエクトドメイン又はそれらの断片を含むこと、及び第2のポリペプチドは4-1BBLの1つのエクトドメイン又はその断片を含むことを特徴とする、第1のポリペプチド及び第2のポリペプチドと、
(c)安定な会合が可能な第1のサブユニットと第2のサブユニットから構成されるFcドメイン
を含む、4-1BBL三量体含有抗原結合分子を提供する。
【0120】
更なる態様では、前述のような4-1BBL三量体含有抗原結合分子であって、
(a)Her2に特異的に結合可能な抗原結合ドメインと、
(b)ジスルフィド結合によって互いに連結されている第1のポリペプチド及び第2のポリペプチドであって、ここで抗原結合ドメインが
(i)第1のポリペプチドはCH1又はCLドメインを、第2のポリペプチドはCL又はCH1ドメインをそれぞれ有し、ここで第2のポリペプチドはCH1及びCLドメイン間のジスルフィド結合によって第1のポリペプチドに連結されており、ここで第1のポリペプチドは、ペプチドリンカーによって互いに及びCH1又はCLドメインに接続されている4-1BBLの2つのエクトドメイン又はそれらの断片を含み、第2のポリペプチドは、前述のポリペプチドのCL又はCH1ドメインにペプチドリンカーを介して接続された、前述の4-1BBLの1つのエクトドメイン又はその断片を含むこと、或いは
(ii)第1のポリペプチドはCH3ドメインを、第2のポリペプチドはCH3ドメインをそれぞれ有し、ここで第1のポリペプチドは、ペプチドリンカーによって互いに及びCH3ドメインのC末端に接続されている4-1BBLの2つのエクトドメイン又はそれらの断片を含み、第2のポリペプチドは、前述のポリペプチドのCH3ドメインのC末端にペプチドリンカーを介して接続された、前述の4-1BBLの1つのエクトドメイン又はその断片のみを含むこと、或いは
(iii)第1のポリペプチドはVH-CL又はVL-CH1ドメインを、第2のポリペプチドはVL-CH1ドメイン又はVH-CLドメインをそれぞれ有し、ここで第2のポリペプチドは、CH1及びCLドメイン間のジスルフィド結合によって第1のポリペプチドに連結されており、第1のポリペプチドは、ペプチドリンカーによって互いに及びVH又はVLに接続されている4-1BBLの2つのエクトドメイン又はそれらの断片を含み、第2のポリペプチドは、前述のポリペプチドのVL又はVHにペプチドリンカーを介して接続された、前述のTNF リガンドファミリーメンバーの1つのエクトドメイン又はその断片を含むこと
を特徴とする、第1のポリペプチド及び第2のポリペプチドと、
(c)安定な会合が可能な第1のサブユニットと第2のサブユニットから構成されるFcドメイン
を含む、4-1BBL三量体含有抗原結合分子が提供される。
【0121】
別の態様では、前述のような4-1BBL三量体含有抗原結合分子であって、
(a)Her2に特異的に結合可能な抗原結合ドメインと、
(b)ジスルフィド結合によって互いに連結されている第1のポリペプチド及び第2のポリペプチドであって、ここで抗原結合ドメインが
(i)第1のポリペプチドはCH1又はCLドメインを、第2のポリペプチドはCL又はCH1ドメインをそれぞれ有し、ここで第2のポリペプチドは、CH1及びCLドメイン間のジスルフィド結合によって第1のポリペプチドに連結されており、ここで第1のポリペプチドは、ペプチドリンカーによって互いに及びCH1又はCLドメインに接続されている4-1BBLの2つのエクトドメイン又はそれらの断片を含み、第2のポリペプチドは、前述のポリペプチドのCL又はCH1ドメインにペプチドリンカーを介して接続された、前述の4-1BBLの1つのエクトドメイン又はその断片を含むこと、或いは
(ii)第1のポリペプチドはCH3ドメインを、第2のポリペプチドはCH3ドメインをそれぞれ有し、ここで第1のポリペプチドは、ペプチドリンカーによって互いに及びCH3ドメインのC末端に接続されている4-1BBLの2つのエクトドメイン又はそれらの断片を含み、第2のポリペプチドは、前述のポリペプチドのCH3ドメインのC末端にペプチドリンカーを介して接続された、前述の4-1BBLの1つのエクトドメイン又はその断片のみを含むこと
を特徴とする、第1のポリペプチド及び第2のポリペプチドと、
(c)安定な会合が可能な第1のサブユニットと第2のサブユニットから構成されるFcドメイン
を含む、4-1BBL三量体含有抗原結合分子が提供される。
【0122】
一態様では、4-1BBLのエクトドメインは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7及び配列番号8からなる群より選択されるアミノ酸配列、特に配列番号1又は配列番号5のアミノ酸配列を含む。更に具体的には、4-1BBLのエクトドメインは、配列番号1又は配列番号5のアミノ酸配列を含む。最も具体的には、4-1BBLのエクトドメインは、配列番号5のアミノ酸配列を含む。特に、前述の4-1BBL三量体含有抗原結合分子であって4-1BBLの3つ全てのエクトドメイン又はそれらの断片が同一である抗原結合分子が提供される。
【0123】
更なる態様では、本発明の4-1BBL三量体含有抗原結合分子は、
(a)Her2に特異的に結合可能な抗原結合ドメインと、
(b)ジスルフィド結合によって互いに連結されている第1のポリペプチド及び第2のポリペプチドであって、ここで抗原結合分子が、第1のポリペプチドは、配列番号9、配列番号10、配列番号11及び配列番号12からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むこと、並びに第2のポリペプチドは、配列番号1、配列番号5、配列番号3及び配列番号4からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むことを特徴とする、第1のポリペプチド及び第2のポリペプチドと、
(c)安定な会合が可能な第1のサブユニットと第2のサブユニットから構成されるFcドメイン
を含む。
【0124】
一態様では、本発明の4-1BBL三量体含有抗原結合分子は、
(a)Her2に特異的に結合可能な抗原結合ドメインと、
(b)ジスルフィド結合によって互いに連結されている第1のポリペプチド及び第2のポリペプチドであって、ここで抗原結合分子が、第1のポリペプチドは配列番号10のアミノ酸配列を含むこと、及び第2のポリペプチドは配列番号5のアミノ酸配列を含むことを特徴とする、第1のポリペプチド及び第2のポリペプチドと、
(c)安定な会合が可能な第1のサブユニットと第2のサブユニットから構成されるFcドメイン
を含む。
【0125】
更なる態様では、本発明の4-1BBL三量体含有抗原結合分子は、
(a)Her2に特異的に結合可能な抗原結合ドメインと、
(b)ジスルフィド結合によって互いに連結されている第1のポリペプチド及び第2のポリペプチドであって、ここで抗原結合分子が、第1のポリペプチドは、配列番号9のアミノ酸配列を含むこと、及び第2のポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列を含むことを特徴とする、第1のポリペプチド及び第2のポリペプチドと、
(c)安定な会合が可能な第1のサブユニットと第2のサブユニットから構成されるFcドメイン
を含む。
【0126】
別の態様では、本発明の4-1BBL三量体含有抗原結合分子は、
(a)Her2に特異的に結合可能な抗原結合ドメインと、
(b)CH1又はCLドメインを含む第1のポリペプチドと、CL又はCH1ドメインを含む第2のポリペプチドであって、CH1及びCLドメイン間のジスルフィド結合によって第1のポリペプチドに連結されている第2のポリぺプチドと
を含み、
ここで抗原結合分子が、第1のポリペプチドは、ペプチドリンカーによって互いに及びCH1又はCLドメインに接続されている4-1BBLの2つのエクトドメイン又はそれらの断片を含むことと、第2のポリペプチドは、前述のポリペプチドのCL又はCH1ドメインにペプチドリンカーを介して接続された4-1BBLの1つのエクトドメイン又はその断片のみを含むこととを特徴とする。
【0127】
一態様において、4-1BBL三量体含有抗原結合分子であって、
(a)Her2に特異的に結合可能な抗原結合ドメインと、
(b)CH1ドメインを有する第1のポリペプチドと、CLドメインを有する第2のポリペプチドであって、CH1及びCLドメイン間のジスルフィド結合によって第1のポリペプチドに連結されている第2のポリぺプチドと
を含む、4-1BBL三量体含有抗原結合分子が提供され、
ここで抗原結合分子が、第1のポリペプチドは、ペプチドリンカーによって互いに及びCH1ドメインに接続されている4-1BBLの2つのエクトドメイン又はそれらの断片を含むことと、第2のポリペプチドは、前述のポリペプチドのCLドメインにペプチドリンカーを介して接続された4-1BBLの1つのエクトドメイン又はその断片のみを含むこととを特徴とする。
【0128】
別の態様では、本発明は、4-1BBL三量体含有抗原結合分子であって、
(a)Her2に特異的に結合可能な1つの抗原結合ドメインと、
(b)ジスルフィド結合によって互いに連結されている第1のポリペプチド及び第2のポリペプチドであって、ここで抗原結合分子が、第1のポリペプチドは、ペプチドリンカーによって互いに接続されている4-1BBLの2つのエクトドメイン又はそれらの断片を含むこと、及び第2のポリペプチドは4-1BBLの1つのエクトドメイン又はその断片を含むことを特徴とする、第1のポリペプチド及び第2のポリペプチドと、
(c)安定な会合が可能な第1のサブユニットと第2のサブユニットから構成されるFcドメイン
を含む、4-1BBL三量体含有抗原結合分子を提供する。
【0129】
更に別の態様では、本発明は、4-1BBL三量体含有抗原結合分子であって、
(a)Her2に特異的に結合可能な複数の抗原結合ドメインと、
(b)ジスルフィド結合によって互いに連結されている第1のポリペプチド及び第2のポリペプチドであって、ここで抗原結合分子が、第1のポリペプチドは、ペプチドリンカーによって互いに接続されている4-1BBLの2つのエクトドメイン又はそれらの断片を含むこと、及び第2のポリペプチドは4-1BBLの1つのエクトドメイン又はその断片を含むことを特徴とする、第1のポリペプチド及び第2のポリペプチドと、
(c)安定な会合が可能な第1のサブユニットと第2のサブユニットから構成されるFcドメイン
を含む、4-1BBL三量体含有抗原結合分子を提供する。
【0130】
一態様では、本発明は、4-1BBL三量体含有抗原結合分子であって、
(a)Her2に特異的に結合可能な2つの抗原結合ドメインと、
(b)ジスルフィド結合によって互いに連結されている第1のポリペプチド及び第2のポリペプチドであって、ここで抗原結合分子が、第1のポリペプチドは、ペプチドリンカーによって互いに接続されている4-1BBLの2つのエクトドメイン又はそれらの断片を含むこと、及び第2のポリペプチドは4-1BBLの1つのエクトドメイン又はその断片を含むことを特徴とする、第1のポリペプチド及び第2のポリペプチドと、
(c)安定な会合が可能な第1のサブユニットと第2のサブユニットから構成されるFcドメイン
を含む、4-1BBL三量体含有抗原結合分子を提供する。
【0131】
更なる態様において、本発明は、前述のような4-1BBL三量体含有抗原結合分子であって、Her2に特異的に結合可能な抗原結合ドメインが抗体、抗体断片及び足場抗原結合タンパク質からなる群より選択される、抗原結合分子を提供する。
【0132】
一態様において、前述のような4-1BBL三量体含有抗原結合分子であって、Her2に特異的に結合可能な抗原結合ドメインが抗体断片、Fab分子、クロスオーバーFab分子、一本鎖Fab分子、Fv分子、scFv分子、単一ドメイン抗体、又はVH及び足場抗原結合タンパク質からなる群より選択される、抗原結合分子が提供される。一態様において、Her2に特異的に結合可能な抗原結合ドメインは、VH又は足場抗原結合タンパク質である。
【0133】
特定の態様では、4-1BBL三量体含有抗原結合分子であって、Her2に特異的に結合可能な抗原結合ドメインがHer2に特異的に結合可能なFab分子又はクロスオーバーFab分子である、抗原結合分子が提供される。特に、Her2に特異的に結合可能な抗原結合ドメインは、Her2に特異的に結合可能なFabである。
【0134】
更なる態様では、本発明による4-1BBL三量体含有抗原結合分子が提供され、ここで、第1のペプチドリンカーによって互いに接続された4-1BBLの2つのエクトドメイン又はそれらの断片を含むペプチドが、そのC末端で、第2のペプチドリンカーによって重鎖のCH1ドメインに融合されており、且つ、前述の4-1BBLの1つのエクトドメイン又はその断片が、第3のペプチドリンカーによってそのC末端で軽鎖上のCLドメインに融合されている。
【0135】
別の態様では、本発明による4-1BBL三量体含有抗原結合分子が提供され、ここで、第1のペプチドリンカーによって互いに接続された4-1BBLの2つのエクトドメイン又はそれらの断片を含むペプチドが、そのC末端で第2のペプチドリンカーリンカーによって重鎖のCLドメインに融合されており、且つ、前述の4-1BB1のエクトドメイン又はその断片が、そのC末端で第3のペプチドリンカーリンカーによって軽鎖上のCH1ドメインに融合されている。
【0136】
更なる態様では、本発明は、本発明による4-1BBL三量体含有抗原結合分子に関し、ここで、第1のペプチドリンカーによって互いに接続された4-1BBLの2つのエクトドメイン又はそれらの断片を含むペプチドが、そのC末端で、第2のペプチドリンカーによって軽鎖のCLドメインに融合されており、且つ、前述の4-1BBLの1つのエクトドメイン又はその断片が、第3のペプチドリンカーによってそのC末端で重鎖のCH1ドメインに融合されている。
【0137】
特定の態様では、本発明は、ペプチドリンカーが(G4S)である、上記のような4-1BBL三量体含有抗原結合分子に関する。一態様では、第1のペプチドリンカーは(G4S)(配列番号68)であり、第2のペプチドリンカーは(G4S)(配列番号68)であり、第3のペプチドリンカーは(G4S)(配列番号68)である。
【0138】
別の態様では、上記の4-1BBL三量体含有抗原結合分子は、安定な会合が可能な第1及び第2のサブユニットからなるFcドメインを含む。
【0139】
特に、本発明の4-1BBL三量体含有抗原結合分子は、(a) Her2に特異的に結合可能なFab分子であって、Fab重鎖がC末端でFcドメイン内のCH2ドメインのN末端に融合されているFab分子、並びに(c)安定な会合が可能な第1及び第2のサブユニットからなるFcドメインを含む。
【0140】
更なる態様において、Fcドメインは、IgG、特にIgG1 Fcドメイン又はIgG4 Fcドメインである。より具体的には、Fcドメインは、IgG1 Fcドメインである。特定の態様では、Fcドメインは、Fcドメインの第1のサブユニットと第2のサブユニットの会合を促進する改変を含む。
【0141】
Fc受容体の結合を低減させ、且つ/又はエフェクター機能を低下させるFcドメインの改変
本発明の4-1BBL三量体含有抗原結合分子のFcドメインは、免疫グロブリン分子の重鎖ドメインを含む一対のポリペプチド鎖からなる。例えば、免疫グロブリン G(IgG)分子のFcドメインは二量体であり、その各サブユニットはCH2及びCH3 IgG重鎖定常ドメインを含む。Fcドメインの2つのサブユニットは、互いに安定に会合可能である。
【0142】
Fcドメインは、本発明の抗原結合分子に望ましい薬物動態特性を付与し、そのような薬物動態特性には、標的組織中への良好な蓄積に貢献する長い血清半減期、及び望ましい組織-血液分布比が含まれる。しかしながら、同時に、Fcドメインは、好ましい抗原保有細胞に対するのではなく、Fc受容体を発現する細胞に対する、本発明の二重特性抗体の望ましくない標的化の原因となることがある。したがって、特定の態様では、本発明の4-1BBL三量体含有抗原結合分子のFcドメインは、天然型IgG1のFcドメインと比較して、Fc受容体に対する結合親和性の低下及び/又はエフェクター機能の低下を呈する。一態様では、Fcは、Fc受容体に実質的に結合せず、且つ/又はエフェクター機能を誘導しない。特定の態様では、Fc受容体はFcγ受容体である。一態様では、Fc受容体はヒトFc受容体である。特定の態様では、Fc受容体は活性化ヒトFcγ受容体であり、更に具体的にはヒトFcγRIIIa、FcγRI又はFcγRIIa、最も具体的にはヒトFcγRIIIaである。一態様では、Fcドメインはエフェクター機能を誘導しない。低下したエフェクター機能には、低下した補体依存性細胞傷害(CDC)、低下した抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)、低下した抗体依存性細胞貪食(ADCP)、低下したサイトカイン分泌、抗原提示細胞による低下した免疫複合体を介した抗原取り込み、NK細胞への低減された結合、マクロファージへの低減された結合、単球への低減された結合、多形核細胞への低減された結合、アポトーシスを誘導する、低減された直接シグナル伝達、低減された樹状細胞成熟、又は低減されたT細胞プライミングのうちの1つ以上が含まれるが、これらに限定されない。
【0143】
特定の態様において、1又は複数のアミノ酸改変を、本明細書で提供される4-1BBL三量体含有抗原結合分子のFc領域に導入し、それによりFc領域変異体を生成することができる。Fc領域変異体は、1又は複数のアミノ酸位置にアミノ酸改変(例えば置換)を含むヒトFc領域配列(例えばヒトIgG1、IgG2、IgG3又はIgG4 Fc領域)を含み得る。
【0144】
特定の態様では、本発明は、4-1BBL三量体含有抗原結合分子であって、
(a)Her2に特異的に結合可能な抗原結合ドメインと、
(b)ジスルフィド結合によって互いに連結されている第1のポリペプチド及び第2のポリペプチドであって、ここで抗原結合分子が、第1のポリペプチドは、ペプチドリンカーによって互いに接続されている4-1BBLの2つのエクトドメイン又はそれらの断片を含むこと、及び第2のポリペプチドは4-1BBLの1つのエクトドメイン又はその断片を含むことを特徴とする、第1のポリペプチド及び第2のポリペプチドと、
(c)安定な会合が可能な第1のサブユニットと第2のサブユニットから構成されるFcドメインであって、Fc受容体への、特にFc受容体への結合を低減させる1又は複数のアミノ酸置換を含むFcドメイン
を含む、4-1BBL三量体含有抗原結合分子を提供する。
【0145】
一態様において、本発明の二重特異性抗原結合分子のFcドメインは、Fc受容体に対するFcドメインの結合親和性及び/又はエフェクター機能を低下させる、1又は複数のアミノ酸変異を含む。典型的には、1又は複数の同じアミノ酸変異が、Fcドメインの2つのサブユニットの各々に存在する。特に、Fcドメインは、E233、L234、L235、N297、P331及びP329(EU番号付け)の位置にアミノ酸置換を含む。特に、Fcドメインは、IgG重鎖の234及び235(EU番号付け)及び/又は329(EU番号付け)の位置にアミノ酸置換を含む。更に詳細には、IgG重鎖にアミノ酸置換L234A、L235A及びP329G(「P329G LALA」、EU番号付け)を有するFcドメインを含む、本発明による三量体TNFファミリーリガンド含有抗原結合分子が提供される。アミノ酸置換L234A及びL235Aは、いわゆるLALA変異を指す。アミノ酸置換の「P329G LALA」組み合わせは、ヒトIgG1 FcドメインのFcγ受容体結合をほぼ完全に消失させるもので、国際公開第2012/130831号に記載があり、同文献には、このような変異Fcドメインを調製する方法、及びFc受容体の結合又はエフェクター機能といったその特性を決定するための方法も記載されている。「EU番号付け」とは、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD(1991)のEUインデックスに従った番号付けをいう。
【0146】
Fc受容体の結合が低減され、且つ/又はエフェクター機能が低下したFcドメインは、Fcドメイン残基238、265、269、270、297、327及び329のうちの1又は複数の置換を伴うものも含む(米国特許第6737056号)。このようなFc変異体には、残基265及び297のアラニンへの置換を有する、いわゆる「DANA」Fc変異体を含む、アミノ酸265、269、270、297及び327位のうちの2つ以上において置換を有するFc変異体が含まれる(米国特許第7332581号)。
【0147】
別の態様では、FcドメインはIgG4 Fcドメインである。IgG4抗体は、IgG1抗体と比較して、Fc受容体に対する結合親和性の低下及びエフェクター機能の低下を呈する。より具体的な態様では、Fcドメインは、S228位(Kabat番号付け)にアミノ酸置換を、特にアミノ酸置換S228Pを含むIgG4のFcドメインである。より具体的な態様では、Fcドメインは、アミノ酸置換L235E及びS228P及びP329G(EU番号付け)を含むIgG4 Fcドメインである。このようなIgG4 Fcドメイン変異及びそのFcγ受容体結合特性は、国際公開第2012/130831号にも記載されている。
【0148】
変異Fcドメインは、当技術分野で周知の遺伝学的又は化学的方法を用いたアミノ酸の欠失、置換、挿入又は修飾により調製することができる。遺伝学的方法は、コード化DNA配列の部位特異的突然変異、PCR、遺伝子合成などを含みうる。正しいヌクレオチドの変化は、例えば配列決定により検証することができる。
【0149】
Fc受容体に対する結合は、例えばELISAにより、又はBIAcore装置(GEヘルスケア)などの標準的装置を用いる表面プラズモン共鳴(SPR)により容易に測定することができ、このようなFc受容体は組換え発現により得ることができる。このような適切な結合アッセイは、本明細書に記載されている。代替的に、Fcドメインの、又はFcドメインを含む細胞活性化二重特異性抗原結合分子のFc受容体に対する結合親和性を、特定のFc受容体を発現することが知られている細胞株、例えばFcγIIIa受容体を発現するヒトNK細胞を用いて評価してもよい。
【0150】
Fcドメインの、又はFcドメインを含む本発明の二重特異性抗体のエフェクター機能は、当技術分野で既知の方法により測定することができる。ADCCを測定するための適切なアッセイは、本明細書に記載されている。目的の分子のADCC活性を評価するためのin vitroアッセイの他の例が、米国特許第5500362号;Hellstrom et al.Proc Natl Acad Sci USA 83,7059-7063(1986)及びHellstrom et al.,Proc Natl Acad Sci USA 82,1499-1502(1985);米国特許第5821337号;Bruggemann et al.,J Exp Med 166,1351-1361(1987)に記載されている。代替的に、非放射性アッセイ法を用いてもよい(例えば、フローサイトメトリー用のACTITM非放射性細胞傷害性アッセイ(カリフォルニア州マウンテンビューのCellTechnology,Inc.;及びCytoTox 96(登録商標)非放射性細胞傷害性アッセイ(ウィスコンシン州マディソンのPromega)参照)。このようなアッセイに有用なエフェクター細胞は、末梢血単核細胞(PBMC)及びナチュラルキラー(NK)細胞を含む。代替的又は追加的に、目的の分子のADCC活性は、例えば、Clynes et al.,Proc Natl Acad Sci USA 95,652-656(1998)に開示されているような動物モデルにおいて、in vivoで評価することができる。
【0151】
いくつかの実施態様では、補体成分に対するFcドメインの結合、特にC1qに対する結合が低減する。したがって、Fcドメインが低下したエフェクター機能を有するように設計されているいくつかの実施態様では、前述のエフェクター機能の低下はCDCの低下を含む。C1q結合アッセイを実行して、本発明の二重特異性抗体がC1qに結合できるかどうか、したがってCDC活性を有するかどうかを判定することができる。例えば、国際公開第2006/029879号及び国際公開第2005/100402号のC1q及びC3c結合ELISAを参照。補体活性化を評価するために、CDCアッセイを行うことができる(例えば、Gazzano-Santoro et al.,J.Immunol.Methods 202:163(1996);Cragg, et al.,Blood 101:1045-1052(2003);及びCragg,and Glennie,Blood 103:2738-2743(2004)を参照)。
【0152】
特定の態様では、Fcドメインは、Fcドメインの第1のサブユニットと第2のサブユニットの会合を促進する改変を含む。
【0153】
ヘテロ二量体化を促進するFcドメインの改変
一態様において、本発明の4-1BBL三量体含有抗原結合分子は、(a)Her2に特異的に結合可能な抗原結合ドメインと、(b)ジスルフィド結合によって互いに対して連結されている第1のポリペプチドと第2のポリペプチドであって、ここで抗原結合分子が、第1のポリペプチドは、ペプチドリンカーによって互いに接続されている4-1BBLの2つのエクトドメイン又はそれらの断片を含むこと、及び第2のポリペプチドは4-1BBLの1つのエクトドメイン又はその断片を含むことを特徴とする、第1のポリペプチドと第2のポリペプチドと、(c)安定な会合が可能な第1及び第2のサブユニットから構成されるFcドメインとを含む。したがって、該分子は、典型的には2つの同一でないポリペプチド鎖(「重鎖」)に含まれる、Fcドメインの2つのサブユニットの一方又は他方に融合された、異なる部分を含む。これらポリペプチドの組換え共発現とそれに続く二量体化は、2つのポリペプチドの複数の可能な組み合わせをもたらす。したがって、組換え生産において4-1BBL三量体含有抗原結合分子の収率及び純度を改善するためには、本発明の4-1BBL三量体含有抗原結合分子のFcドメインに、所望のポリペプチドの会合を促進する改変を導入することが有利であろう。
【0154】
したがって、本発明の4-1BBL三量体含有抗原結合分子のFcドメインは、Fcドメインの第1のサブユニットと第2のサブユニットの会合を促進する改変を含む。ヒトIgGのFcドメインの2つのサブユニット間の最も広範なタンパク質間相互作用の部位は、FcドメインのCH3ドメインにある。したがって、前記改変は特に、FcドメインのCH3ドメイン内にある。
【0155】
特定の態様では、前記改変は、いわゆる「ノブ・トゥ・ホール」改変であり、Fcドメインの2つのサブユニットの一方に「ノブ」改変を、Fcドメインの2つのサブユニットの他方に「ホール」改変を含んでいる。したがって、特定の態様において、本発明は、IgG分子を含む前述の4-1BBL三量体含有抗原結合分子に関するものであり、ここで、第1の重鎖のFc部分は第1の二量体化モジュールを含み、第2の重鎖のFc部分はIgG分子の2つの重鎖のヘテロ二体量化を可能にする第2の二量体化モジュールを含み、ノブ・イントゥ・ホール技術により第1の二量体化モジュールはノブを含み、第2の二量体化モジュールはホールを含む。
【0156】
ノブ・イントゥ・ホール技術は、例えば米国特許第5731168号;同第7695936号;Ridgway et al.,Prot Eng 9,617-621(1996)、及びCarter,J Immunol Meth 248,7-15(2001)に記載されている。通常、この方法は、隆起(「ノブ」)が対応する空洞(「ホール」)内に配置されて、ヘテロ二量体形成を促進し、且つ、ホモ二量体形成を妨げることができるように、第1のポリペプチドの接触面に隆起を、空洞を第2のポリペプチドの接触面に導入することを伴う。隆起は、第1のポリペプチドの接触面からの小さなアミノ酸側鎖をそれより大きな側鎖(例えばチロシン又はトリプトファン)で置き換えることにより構築される。隆起と同じか又は同様のサイズの相補的空洞は、大きなアミノ酸側鎖をそれよりも小さなもの(例えばアラニン又はスレオニン)で置き換えることにより、第2のポリペプチドの接触面に作り出される。
【0157】
このように、特定の態様では、本発明の4-1BBL三量体含有抗原結合分子のFcドメインの第1のサブユニットのCH3ドメインにおいて、アミノ酸残基がそれよりも大きな側鎖体積を有するアミノ酸残基で置き換えられ、それにより、第1のサブユニットのCH3ドメイン内部に、第2のサブユニットのCH3ドメイン内部の空洞内に配置可能な隆起が生成され、Fcドメインの第2のサブユニットのCH3ドメインにおいて、アミノ酸残基がそれよりも小さな側鎖体積を有するアミノ酸残基で置き換えられ、それにより、第2のサブユニットのCH3ドメイン内部に、第1のサブユニットのCH3ドメイン内部の隆起を配置可能な空洞が生成される。
【0158】
隆起と空洞は、ポリペプチドをコードする核酸を、例えば部位特異的突然変異誘発又はペプチド合成によって、改変することにより作られる。
【0159】
特定の態様では、Fcドメインの第1のサブユニットのCH3ドメインにおいて、366位のスレオニン残基がトリプトファン残基で置き換えられ(T366W)、Fcドメインの第2のサブユニットのCH3ドメインにおいて、407位のチロシン残基がバリン残基で置き換えられる(Y407V)。より詳細には、Fcドメインの第2のサブユニットにおいて更に、366位のスレオニン残基がセリン残基で置き換えられ(T366S)、368位のロイシン残基がアラニン残基で置き換えられる(L368A)。より詳細には、Fcドメインの第1のサブユニットにおいて更に、354位のセリン残基がシステイン残基で置き換えられ(S354C)、Fcドメインの第2のサブユニットにおいて更に、349位のチロシン残基がシステイン残基で置き換えられる(Y349C)。これら2つのシステイン残基の導入により、Fcドメインの2つのサブユニット間にジスルフィド架橋が形成される。ジスルフィド架橋は、二量体を更に安定させる(Carter, J Immunol Methods 248, 7-15 (2001))。
【0160】
代替的な態様では、Fcドメインの第1のサブユニットと第2のサブユニットの会合を促進する改変は、例えば、国際公開第2009/089004号に記載されているような静電ステアリング効果(electrostatic steering effect)を媒介する改変を含む。通常、この方法は、ホモ二量体形成が静電的に望ましくなくなり、ヘテロ二量体化が静電的に望ましくなるように、荷電アミノ酸残基による2つのFcドメインサブユニットの接触面における1又は複数のアミノ酸残基の置き換えを伴う。
【0161】
CH1/CLドメイン内の改変
正しいペアリングに改良を加えるために、4-1BBL三量体含有抗原結合分子は、異なる荷電アミノ酸置換(いわゆる「荷電残基」)を有することができる。このような改変は、交差(crossed)又は非交差(non-crossed)CH1及びCLドメインに導入される。特定の態様では、本発明は、1つのCLドメインにおいて、123位(EU番号付け)のアミノ酸がアルギニン(R)で置き換えられており、124位(EU番号付け)のアミノ酸がリジン(K)で置換されており、且つ、1つのCH1ドメインにおいて、147位(EU番号付け)及び213位(EU番号付け)のアミノ酸がグルタミン酸(E)で置換されている4-1BBL三量体含有抗原結合分子に関する。
【0162】
更に詳細には、本発明は、TNFリガンドファミリーメンバーに隣接するCLドメインにおいて123位(EU番号付け)のアミノ酸がアルギニン(R)によって、124位(EU番号付け)のアミノ酸がリジン(K)によって置き換えられ、且つ、TNFリガンドファミリーメンバーに隣接するCH1ドメインにおいて147位(EU番号付け)及び213位(EU番号付け)のアミノ酸がグルタミン酸(E)によって置換された4-1BBL三量体含有抗原結合分子に関する。
【0163】
したがって、特定の態様において、4-1BBL三量体含有抗原結合分子であって、
(a)Her2に特異的に結合可能な抗原結合ドメインと、
(b)アミノ酸変異E123R及びQ124Kを含むCLドメインを有する第1のポリペプチド、並びにアミノ酸変異K147E及びK213Eを含むCH1ドメインを有し、CHドメインとCLドメインの間のジスルフィド結合によって第1のポリペプチドに連結されている第2のポリペプチドであって、
ここで抗原結合分子が、第1のポリペプチドは、ペプチドリンカーによって互いに及びCLドメインに接続されている4-1BBLの2つのエクトドメイン又はそれらの断片を含むことと、第2のポリペプチドは、前述のポリペプチドのCH1ドメインにペプチドリンカーを介して接続された1つの4-1BBL又はその断片を含むこととを特徴とする、第1及び第2のポリペプチドと、
(c) 安定な会合が可能な第1のサブユニットと第2のサブユニットから構成されるFcドメイン
を含む、4-1BBL三量体含有抗原結合分子が提供される。
【0164】
一態様では、本発明は、TNFリガンドファミリーメンバーに隣接するCLドメインにおいて123位(EU番号付け)のアミノ酸がアルギニン(R)によって、124位(EU番号付け)のアミノ酸がリジン(K)によって置き換えられ、且つ、TNFリガンドファミリーメンバーに隣接するCH1ドメインにおいて147位(EU番号付け)及び213位(EU番号付け)のアミノ酸がグルタミン酸(E)によって置換された4-1BBL三量体含有抗原結合分子を提供する。これらの改変は、例えばミスペアリングなどの望ましくない影響を回避する有利な特性を有する、いわゆる荷電残基をもたらす。
【0165】
特に、CLドメインはアミノ酸変異E123R及びQ124Kを含み、CH1ドメインはアミノ酸変異K147E及びK213Eを含む。
【0166】
特定の4-1BBL三量体含有抗原結合分子
本発明は、Her2に特異的に結合可能な抗原結合ドメインを含む4-1BBL三量体含有抗原結合分子を提供する。特定の態様において、4-1BBL三量体含有抗原結合分子はHer2に特異的に結合可能な1つの部分を含むが、これは、4-1BBL三量体含有抗原結合分子が一価であることを意味する。別の態様において、本発明は、Her2に特異的に結合可能な2つの部分を含む4-1BBL三量体含有抗原結合分子を提供するが、これは、4-1BBL三量体含有抗原結合分子が二価であることを意味する。
【0167】
一態様において、 本発明は、4-1BBL三量体含有抗原結合分子が提供され、ここで、Her2に特異的に結合可能な抗原結合ドメインは、
(a)(i)配列番号13のアミノ酸配列を含むCDR-H1;(ii)配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR-H2;及び(iii)配列番号15のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含むVHドメインと、(iv)配列番号16のアミノ酸配列を含むCDR-L1;(v)配列番号17のアミノ酸配列を含むCDR-L2;及び(vi)配列番号18のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含むVLドメイン;又は
(b)(i)配列番号21のアミノ酸配列を含むCDR-H1;(ii)配列番号22のアミノ酸配列を含むCDR-H2;及び(iii)配列番号23のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含むVHドメインと、(iv)配列番号24のアミノ酸配列を含むCDR-L1;(v)配列番号25のアミノ酸配列を含むCDR-L2;及び(vi)配列番号26のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含むVLドメイン;又は
(c)(i)配列番号29のアミノ酸配列を含むCDR-H1;(ii)配列番号30のアミノ酸配列を含むCDR-H2;及び(iii)配列番号31のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含むVHドメインと、(iv)配列番号32のアミノ酸配列を含むCDR-L1;(v)配列番号33のアミノ酸配列を含むCDR-L2;及び(vi)配列番号34のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含むVLドメイン
を含む。
【0168】
一態様では、本発明は、4-1BBL三量体含有抗原結合分子を提供し、ここで、Her2に特異的に結合可能な抗原結合ドメインは、(i)配列番号13のアミノ酸配列を含むCDR-H1;(ii)配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR-H2;及び(iii)配列番号15のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含むVHドメインと、(iv)配列番号16のアミノ酸配列を含むCDR-L1;(v)配列番号17のアミノ酸配列を含むCDR-L2;及び(vi)配列番号18のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含むVLドメインとを含む。
【0169】
一態様では、本発明は、4-1BBL三量体含有抗原結合分子が提供され、ここで、Her2に特異的に結合可能な抗原結合ドメインは、(i)配列番号21のアミノ酸配列を含むCDR-H1;(ii)配列番号22のアミノ酸配列を含むCDR-H2;及び(iii)配列番号23のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含むVHドメインと、(iv)配列番号24のアミノ酸配列を含むCDR-L1;(v)配列番号25のアミノ酸配列を含むCDR-L2;及び(vi)配列番号26のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含むVLドメインとを含む。
【0170】
更なる態様では、4-1BBL三量体含有抗原結合分子が提供され、ここで、Her2に特異的に結合可能な抗原結合ドメインは、(i)配列番号29のアミノ酸配列を含むCDR-H1;(ii)配列番号30のアミノ酸配列を含むCDR-H2;及び(iii)配列番号31のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含むVHドメインと、(iv)配列番号32のアミノ酸配列を含むCDR-L1;(v)配列番号33のアミノ酸配列を含むCDR-L2;及び(vi)配列番号34のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含むVLドメインとを含む。
【0171】
更なる態様では、Her2に特異的に結合可能な抗原結合ドメインは、配列番号19のアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号20のアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む。
【0172】
別の態様では、Her2に特異的に結合可能な抗原結合ドメインは、配列番号27のアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号28のアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む。
【0173】
更なる態様では、Her2に特異的に結合可能な抗原結合ドメインは、配列番号35のアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号36のアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む。
【0174】
更なる態様では、本発明は、4-1BBL三量体含有抗原結合分子が提供され、ここで、Her2に特異的に結合可能な抗原結合ドメインは、
(a)配列番号19のアミノ酸配列を含むVHドメイン及び配列番号20のアミノ酸配列を含むVLドメイン;又は
(b)配列番号27のアミノ酸配列を含むVHドメイン及び配列番号28のアミノ酸配列を含むVLドメイン;又は
(c)配列番号35のアミノ酸配列を含むVHドメイン及び配列番号36のアミノ酸配列を含むVLドメイン
を含む。
【0175】
一態様において、前述の4-1BBL三量体含有抗原結合分子が提供され、ここで、Her2に特異的に結合可能な抗原結合ドメインは、配列番号19のアミノ酸配列を含む可変重鎖と配列番号20のアミノ酸配列を含む可変軽鎖を含むか、又はHer2に特異的に結合可能な抗原結合ドメインは、配列番号5のアミノ酸配列を含む可変重鎖と配列番号36のアミノ酸配列を含む可変軽鎖を含む。
【0176】
特定の態様では、Her2に特異的に結合可能な抗原結合ドメインは、配列番号19のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と配列番号20のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む。別の態様では、Her2に特異的に結合可能な抗原結合ドメインは、配列番号35のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と配列番号36のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む。特定の態様では、Her2に特異的に結合可能な抗原結合ドメインは、配列番号27のアミノ酸配列からなるVHドメインと配列番号28のアミノ酸配列からなるVLドメインとを含む。
【0177】
更なる態様では、本発明の4-1BBL三量体含有抗原結合分子は、
(i)配列番号19のアミノ酸配列を含むVHドメインを含む第1の重鎖及び配列番号20のアミノ酸配列を含むVLドメインを含む第1の軽鎖;又は
配列番号27のアミノ酸配列を含むVHドメインを含む第1の重鎖及び配列番号28のアミノ酸配列を含むVLドメインを含む第1の軽鎖;又は
配列番号35のアミノ酸配列を含むVHドメインを含む第1の重鎖及び配列番号36のアミノ酸配列を含むVLドメインを含む第1の軽鎖、
(ii)配列番号37、配列番号39、配列番号41及び配列番号43からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む第2の重鎖、並びに
(iii)配列番号38、配列番号40、配列番号42及び配列番号44からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む第2の軽鎖
を含む。
【0178】
特定の態様では、本発明の4-1BBL三量体含有抗原結合分子は、
(i)配列番号19のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号20のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;又は配列番号27のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号28のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;又は配列番号35のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号36のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、Her2に特異的に結合可能な抗原結合ドメインと、
(b)ジスルフィド結合によって互いに連結されている第1のポリペプチド及び第2のポリペプチドであって、ここで抗原結合分子が、第1のポリペプチドは配列番号10のアミノ酸配列を含むこと、及び第2のポリペプチドは配列番号5のアミノ酸配列を含むことを特徴とする、第1のポリペプチド及び第2のポリペプチドと
を含む。
【0179】
特定の態様では、4-1BBL三量体含有抗原結合分子であって、
(i)配列番号19のアミノ酸配列を含むVHドメインを含む第1の重鎖及び配列番号20のアミノ酸配列を含むVLドメインを含む第1の軽鎖;又は
配列番号27のアミノ酸配列を含むVHドメインを含む第1の重鎖及び配列番号28のアミノ酸配列を含むVLドメインを含む第1の軽鎖;又は
配列番号35のアミノ酸配列を含むVHドメインを含む第1の重鎖及び配列番号36のアミノ酸配列を含むVLドメインを含む第1の軽鎖、
(ii)配列番号37、配列番号39、配列番号41及び配列番号43からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む第2の重鎖、並びに
(iii)配列番号38、配列番号40、配列番号42及び配列番号44からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む第2の軽鎖
を含む、4-1BBL三量体含有抗原結合分子が提供される。
【0180】
別の態様では、本発明は、4-1BBL三量体含有抗原結合分子であって、
(a)配列番号45のアミノ酸配列を含む第1の重鎖、配列番号46のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、配列番号37のアミノ酸配列を含む第2の重鎖、及び配列番号38のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖;又は
(b)配列番号47のアミノ酸配列を含む第1の重鎖、配列番号48のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、配列番号37のアミノ酸配列を含む第2の重鎖、及び配列番号38のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖;又は
(c)配列番号49のアミノ酸配列を含む第1の重鎖、配列番号50のアミノ酸配列を含む第1の軽鎖、配列番号37のアミノ酸配列を含む第2の重鎖、及び配列番号38のアミノ酸配列を含む第2の軽鎖
を含む、4-1BBL三量体含有抗原結合分子を提供する。
【0181】
ポリヌクレオチド
本発明は更に、本明細書に記載の4-1BBL三量体含有抗原結合分子をコードする単離された核酸分子又はその断片を提供する。
【0182】
本発明の4-1BBL三量体含有抗原結合分子をコードする単離されたポリヌクレオチドは、抗原結合分子全体をコードする単一のポリヌクレオチドとして、又は共発現される複数の(例えば2以上の)ポリヌクレオチとして発現され得る。共発現されるポリヌクレオチドによりコードされたポリペプチドは、例えばジスルフィド結合又は他の手段を介して会合し、機能的抗原結合分子を形成することができる。例えば、免疫グロブリンの軽鎖部分は、免疫グロブリンの重鎖部分とは別個のポリヌクレオチドによってコードされる。共発現されるとき、重鎖ポリペプチドは軽鎖ポリペプチドと会合して免疫グロブリンを形成する。
【0183】
いくつかの態様では、単離された核酸分子は、本明細書に記載されるように、本発明による4-1BBL三量体含有抗原結合分子全体をコードする。特に、単離されたポリヌクレオチドは、本明細書に記載されるように、本発明による4-1BBL三量体含有抗原結合分子に含まれるポリペプチドをコードする。
【0184】
一態様では、本発明は、4-1BBL三量体含有抗原結合分子をコードする単離された核酸分子に関し、ここで、核酸分子は、(a)Her2に特異的に結合可能な抗原結合ドメインをコードする配列;(b)ペプチドリンカーによって互いに接続されている4-1BBLの2つのエクトドメイン又はそれらの断片を含むポリペプチドをコードする配列;及び(c)前述の4-1BBLの1つのエクトドメイン又はその断片を含むポリペプチドをコードする配列を含む。
【0185】
別の態様では、4-1BBリガンド三量体含有抗原結合分子をコードする単離されたポリヌクレオチドが提供され、ここで、ポリヌクレオチドは、(a)Her2に特異的に結合可能な部分をコードする配列;(b)ペプチドリンカーによって互いに接続されている4-1BBLの2つのエクトドメイン又はそれらの断片を含むポリペプチドをコードする配列;及び(c)4-1BBLの1つのエクトドメイン又はその断片を含むポリペプチドをコードする配列を含む。
【0186】
特定の態様では、ポリヌクレオチド又は核酸はDNAである。他の実施態様では、本発明のポリヌクレオチドはRNA、例えばメッセンジャーRNA(mRNA)の形態のRNAである。本発明のRNAは、一本鎖でも二本鎖でもよい。
【0187】
組換え法
本発明の4-1BBL三量体含有抗原結合分子は、例えば、固相ペプチド合成(例えばメリフィールド固体相合成)又は組換え生産によって得ることができる。組換え生産のために、例えば上述したように、4-1BBL三量体含有抗原結合分子をコードする1又は複数のポリヌクレオチドが単離され、宿主細胞内での更なるクローニング及び/又は発現のために1又は複数のベクターに挿入される。このようなポリヌクレオチドは、一般的な手順を使用して容易に単離され、配列決定され得る。本発明の一態様において、本発明のポリヌクレオチドの一又は複数を含むベクタ-、好ましくは発現ベクターが提供される。当業者によく知られている方法を使用して、適切な転写/翻訳制御シグナルと共に、4-1BBL三量体含有抗原結合分子(断片)のコード配列を有する発現ベクターを構築することができる。このような方法には、in vitroでの組換えDNA技術、合成技術及びin vivoでの組換え/遺伝子組換えが含まれる。例えば、Maniatis et al.,MOLECULAR CLONING: A LABORATORY MANUAL,Cold Spring Harbor Laboratory,N.Y.(1989);及びAusubel et al.,CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY,Greene Publishing Associates and Wiley Interscience,N.Y.(1989)に記載の技術を参照。発現ベクターはプラスミド、ウイルスの一部であっても、又は核酸断片であってもよい。発現ベクターには、4-1BBL三量体含有抗原結合分子をコードするポリヌクレオチド又はそのポリペプチド断片(すなわちコード領域)が、プロモーター及び/又は他の転写若しくは翻訳制御エレメントと作動可能に結合してクローニングされる発現カセットが含まれる。本発明で使用される場合、「コード領域」は、アミノ酸に翻訳されるコドンからなる核酸の一部である。「終止コドン」(TAG、TGA又はTAA)はアミノ酸に翻訳されないが、(存在する場合には)コード領域の一部と考えられる。但し、例えばプロモーター、リボソーム結合部位、転写ターミネーター、イントロン、5’及び3’非翻訳領域等の任意の隣接配列はコード領域の一部ではない。2つ以上のコード領域が、単一のポリヌクレオチドコンストラクト中(例えば単一のベクター上)に、又は別々のポリヌクレオチドコンストラクト中(例えば別々の(異なる)ベクター上)に存在することができる。更に、任意のベクターは、単一のコード領域を有してもよいし、2つ以上のコード領域を含んでいてもよく、例えば本発明のベクターは、タンパク質分解性切断によって翻訳後又は翻訳と同時に最終タンパク質に分離される1又は複数のポリペプチドをコードしてもよい。加えて、本発明のベクター、ポリヌクレオチド又は核酸は、本発明の4-1BBL三量体含有抗原結合分子をコードするポリヌクレオチド若しくはそのポリペプチド断片又はその変異体若しくは誘導体をコードするポリヌクレオチドに融合しているか、又は融合していない異種コード領域をコードすることができる。異種コード領域には、限定されないが、例えば分泌シグナルペプチド又は異種性機能ドメインなどの特殊なエレメント又はモチーフが含まれる。作動可能な会合とは、ポリペプチドなどの遺伝子産物のコード領域が、遺伝子産物の発現を制御配列の影響下又は制御下に置くように、1又は複数の制御配列と会合している場合である。2つのDNA断片(ポリペプチドコード領域とそれに会合するプロモーターなど)は、プロモーター機能の誘導が、所望の遺伝子産物をコードするmRNAの転写をもたらす場合、及び2つのDNA断片間の連結の性質が、遺伝子産物の発現を指示する発現制御配列の能力を妨げないか又は転写されるDNAテンプレートの能力を妨げない場合、「作動可能に会合している」。したがって、プロモーター領域は、プロモーターがその核酸の転写をもたらすことができる場合に、ポリペプチドをコードする核酸に作動可能に会合されているといえる。プロモーターは、所定の細胞においてのみDNAの実質的な転写を指示する、細胞特異的プロモーターであってもよい。プロモーター以外に、他の転写調節エレメント、例えばエンハンサー、オペレーター、リプレッサー及び転写終結シグナルが、細胞特異的転写を指示するポリヌクレオチドと作動可能に結合することができる。
【0188】
適切なプロモーター及び他の転写制御領域は本明細書に開示されている。様々な転写制御領域が当業者に知られている。これらには、限定されないが、脊椎動物細胞において機能する転写制御領域、例えば、限定されないが、サイトメガロウイルス由来のプロモーター及びエンハンサーセグメント(例えば、最初期プロモーターとイントロンA)、シミアンウイルス40(例えば最初期プロモーター)、及びレトロウイルス(例えばラウス肉腫ウイルスなど)が含まれる。他の転写制御領域は、脊椎動物の遺伝子由来のもの、例えばアクチン、熱ショックタンパク質、ウシ成長ホルモン及びウサギa-グロビン(rabbit a-globin)、並びに、真核細胞における遺伝子発現を制御することができる他の配列を含む。さらなる適切な転写制御領域は、組織特異的プロモーター及びエンハンサー並びに誘導性プロモーター(例えば、プロモーター誘導性テトラサイクリン)を含む。同様に、種々の翻訳制御エレメントが当業者に知られている。これらには、限定されないが、リボソーム結合部位、翻訳開始及び終結コドン、並びにウイルス系由来のエレメント(特に、配列内リボソーム進入部位、又はCITE配列とも呼ばれるIRES)が含まれる。発現カセットは、例えば、複製起点、及び/又はレトロウイルスの長い末端反復配列(LTR)又はアデノ随伴ウイルス(AAV)の末端反転型配列(ITR)などの染色体組み込みエレメントといった他の特徴を含んでいてもよい。
【0189】
本発明のポリヌクレオチド及び核酸コード領域は、本発明のポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドの分泌を指示する分泌又はシグナルペプチドをコードする更なるコード領域と会合させることができる。例えば、4-1BBL三量体含有抗原結合分子又はそのポリペプチド断片の分泌が望まれる場合、シグナル配列をコードするDNAが、本発明の4-1BBL三量体含有抗原結合分子又はそのポリペプチド断片をコードする核酸の上流に配置され得る。シグナル仮説によると、哺乳類細胞によって分泌されるタンパク質は、成長中のタンパク質鎖の粗面小胞体を横切る排出輸送が開始されると成熟タンパク質から切断されるシグナルペプチド又は分泌リーダー配列を有する。当業者は、脊椎動物細胞によって分泌されるポリペプチドが通常、ポリペプチドの分泌型又は「成熟」型を生成するために翻訳されたポリペプチドから切断されるポリペプチドのN末端に融合されたシグナルペプチドを有することを認識している。特定の実施態様では、天然のシグナルペプチド、例えば免疫グロブリン重鎖又は軽鎖シグナルペプチドが使用されるか、又はそれに作動可能に会合しているポリペプチドの分泌を指示する能力を保持するその配列の機能的誘導体が使用される。或いは、異種哺乳動物シグナルペプチド又はその機能的誘導体が使用され得る。例えば、野生型リーダー配列は、ヒト組織プラスミノーゲン活性化因子(TPA)又はマウスβ-グルクロニダーゼのリーダー配列で置換されてもよい。
【0190】
(例えばヒスチジンタグなど)後の精製を容易にするため又は融合タンパク質の標識化の補助のために使用され得る短いタンパク質配列をコードするDNAは、本発明の4-1BBL三量体含有抗原結合分子をコードするポリヌクレオチド又はそのポリペプチド断片の中又は両末端に含まれ得る。
【0191】
本発明の更なる態様では、本発明の1又は複数のポリヌクレオチドを含む宿主細胞が提供される。特定の実施態様では、本発明の1又は複数のベクターを含む宿主細胞が提供される。ポリヌクレオチド及びベクターは、ポリヌクレオチド及びベクターそれぞれに関連して本明細書に記載される特徴のいずれかを単独で又は組み合わせて組み込むことができる。一態様では、宿主細胞は、本発明の4-1BBL三量体含有抗原結合分子(の一部)をコードするポリヌクレオチドを含むベクターを含む(例えばそのようなベクターで形質転換又はトランスフェクトされている)。本明細書で使用される場合、「宿主細胞」という用語は、本発明の融合タンパク質又はその断片を生成するように設計可能な任意の種類の細胞系を指す。抗原結合分子の複製及び発現の補助に適切な宿主細胞は当分野でよく知られている。このような細胞は、特定の発現ベクターを適切にトランスフェクト又は形質導入することができ、臨床応用に十分な量の抗原結合分子を得るために大規模発酵槽に播種するために大量のベクター含有細胞を増殖させることができる。適切な宿主細胞は、原核生物微生物、例えば大腸菌、又は様々な真核生物細胞、例えばチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)、昆虫細胞などを含む。例えば、特に、グリコシル化が必要でない場合には、ポリペプチドは細菌中で生成することができる。発現の後、ポリペプチドは可溶性画分において細菌細胞のペーストから単離することができ、更に精製することができる。原核生物に加えて、糸状菌又は酵母菌などの真核微生物は、そのグリコシル化経路が「ヒト化」されており、部分的又は完全なヒトグリコシル化パターンを有するポリペプチドの生成を結果として生じる菌類及び酵母菌株を含む、ポリペプチドコード化ベクターのための適切なクローニング又は発現宿主である。Gerngross,Nat Biotech 22,1409-1414(2004),及びLi et al.,Nat Biotech 24,210-215(2006)を参照。
【0192】
(グリコシル化)ポリペプチドの発現に適した宿主細胞は、多細胞生物(無脊椎動物と脊椎動物)からも得られる。無脊椎動物細胞の例には、植物及び昆虫細胞が含まれる。特にヨウトガ(Spodoptera frugiperda)細胞のトランスフェクションのために昆虫細胞と併せて使用することができる、多数のバキュロウイルス株が特定されている。植物細胞培養を宿主として利用することもできる。例えば、米国特許第5959177号、同第6040498号、同第6420548号、同第7125978号及び同第6417429号(トランスジェニック植物における抗体作製に関するPLANTIBODIESTM技術を記載)を参照。脊椎動物細胞も宿主として用いることができる。例えば、懸濁液中で増殖するように適合されている哺乳動物細胞株は、有用であり得る。有用な哺乳動物宿主細胞株の他の例は、SV40(COS-7)で形質転換されたサル腎臓CV1株、ヒト胚腎臓株(例えばGraham et al., J. Gen Virol. 36:59 (1977)に記載の293又は293T細胞)、ベビーハムスター腎臓細胞(BHK)、マウスのセルトリ細胞(例えばMather, Biol. Reprod. 23:243-251 (1980)に記載のTM4細胞)、サル腎臓細胞(CV1)、アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO-76)、ヒト子宮頚癌細胞(HELA)、イヌ腎臓細胞(MDCK)、バッファローラット肝臓細胞(BRL 3A)、ヒト肺細胞(W138)、ヒト肝細胞(HepG2)、マウス乳腺腫瘍細胞(MMT060562)、TRI 細胞(例えばMather et al., Annals N.Y. Acad. Sci. 383:44-68 (1982)に記載)、MRC5細胞、及びFS4細胞である。他の有用な哺乳動物宿主細胞株には、dhfr-CHO細胞(Urlaub et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:4216 (1980))を含むチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞;及びYO、NS0、P3X63及びSp2/0などの骨髄腫細胞株が含まれる。タンパク質生成に適した特定の哺乳動物宿主細胞株の総説については、例えば、Yazaki and Wu,Methods in Molecular Biology,Vol.248(B.K.C.Lo,ed.,Humana Press,Totowa,NJ),p.255-268(2003)を参照。宿主細胞には、培養細胞、例えばいくつか挙げると、哺乳動物の培養細胞、酵母細胞、昆虫細胞、細菌細胞及び植物細胞が含まれ、更にはトランスジェニック動物、トランスジェニック植物又は培養植物若しくは動物組織内部に含まれる細胞も含まれる。一実施態様において、宿主細胞は、真核生物細胞、好ましくは哺乳動物細胞、例えばチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ヒト胎児腎臓(HEK)細胞、又はリンパ系細胞(例えば、Y0、NS0、Sp20細胞)である。これらの系において外来遺伝子を発現する標準的な技術が当技術分野で知られている。免疫グロブリンの重鎖又は軽鎖を含むポリペプチドを発現する細胞は、発現した生成物が重鎖及び軽鎖の両方を有する免疫グロブリンであるように、免疫グロブリン鎖の他方も発現するように操作することができる。
【0193】
一態様では、本発明の4-1BBL三量体含有抗原結合分子又はそのポリペプチド断片を生産する方法が提供され、この方法は、本発明の4-1BBL三量体含有抗原結合分子又はそのポリペプチド断片の発現に適した条件下で、本明細書に提供される本発明の4-1BBL三量体含有抗原結合分子又はそのポリペプチド断片をコードするポリヌクレオチドを含む宿主細胞を培養すること、及び本発明の4-1BBL三量体含有抗原結合分子又はそのポリペプチド断片を宿主細胞(又は宿主細胞培地)から回収することを含む。
【0194】
本発明の4-1BBL三量体含有抗原結合分子において、その構成要素(標的細胞抗原に特異的に結合可能な少なくとも1つの部分、TNFリガンドファミリーメンバーの2つのエクトドメインを含む1つのポリペプチド又はその断片、及び前述の4-1BBLファミリーメンバ-の1つのエクトドメインを含むポリペプチドまたはその断片)は通常、互いに遺伝的に融合されていない。これらのポリペプチドは、その構成要素(TNFリガンドファミリーメンバーの2つのエクトドメイン又はその断片、及びCH又はCLのような他の構成要素)が直接又はリンカー配列を介して互いに融合するように設計されている。リンカーの組成及び長さは、当技術分野でよく知られている方法に従って決定することができ、有効性について試験することができる。本発明の抗原結合分子の様々な構成要素間のリンカー配列の例は、本明細書に提供されている配列に見出される。必要に応じて、融合タンパク質の個々の構成要素を切り離すための切断部位を取り込むために、追加的配列、例えばエンドペプチダーゼ認識配列も含めることができる。
【0195】
特定の実施態様では、抗原結合分子の一部を形成する、標的細胞抗原(例えばFab断片)に特異的に結合可能な部分は、少なくとも、抗原に結合することのできる免疫グロブリン可変領域を含む。可変領域は、天然に又は非天然に存在する抗体及びその断片の一部を形成することができ、且つ、そのような抗体及び断片から誘導することができる。ポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体を生産する方法は、当技術分野でよく知られている(例えばHarlow and Lane, 「Antibodies, a laboratory manual」, Cold Spring Harbor Laboratory, 1988参照)。天然には存在しない抗体は、固体相-ペプチド合成を使用して構築することができ、(例えば米国特許第4186567号に記載のように)組換え生産することも、又は例えば可変重鎖及び可変軽鎖を含むコンビナトリアルライブラリーをスクリーニングすることによって得ることもできる(例えばMcCaffertyへの米国特許第5969108号を参照)。
【0196】
あらゆる動物種の免疫グロブリンを本発明に使用することができる。本発明において有用な、非限定的な免疫グロブリンは、マウス、霊長類又はヒト起源のものであり得る。融合タンパク質がヒトでの使用を目的とする場合、免疫グロブリンの定常領域がヒト由来であるキメラ型の免疫グロブリンを使用することができる。ヒト化又は完全ヒト型の免疫グロブリンも、当分野でよく知られている方法に従って調製することができる(例えばWinterへの米国特許第5565332号を参照)。ヒト化は、様々な方法によって達成することができ、それらの方法には、限定されないが、(a)非ヒト(例えばドナー抗体)のCDRを、重要なフレームワーク残基(例えば、良好な抗原結合親和性又は抗体機能を維持するために重要であるもの)の保持を伴う又は伴わない、ヒト(例えばレシピエント抗体)のフレームワーク領域及び定常領域の上に移植すること、(b)非ヒト特異性決定領域(SDR又はa-CDR;抗体-抗原相互作用に重要な残基)のみをヒトフレームワーク領域及び定常領域上に移植すること、又は(c)非ヒト可変ドメイン全体を移植するが、表面残基の置き換えによってヒト様切片で「クローキング」することが含まれる。ヒト化抗体及びその製造方法は、例えば、Almagro and Fransson,Front.Biosci.13:1619-1633(2008)に総説され、更に、例えばRiechmann et al.,Nature 332,323-329(1988);Queen et al.,Proc Natl Acad Sci USA 86,10029-10033(1989);米国特許第5821337号、同第7527791号、同第6982321号、及び同第7087409号;Jones et al.,Nature 321,522-525(1986);Morrison et al.,Proc Natl Acad Sci 81,6851-6855(1984);Morrison and Oi,Adv Immunol 44,65-92(1988);Verhoeyen et al.,Science 239,1534-1536(1988);Padlan,Molec Immun 31(3),169-217(1994);Kashmiri et al., Methods 36,25-34(2005)(SDR(a-CDR)移植について記載);Padlan,Mol Immunol 28,489-498(1991)(「リサーフェイシング」について記載);Dall’Acqua et al.,Methods 36,43-60(2005)(「FRシャフリング」について記載);Osbourn et al.,Methods 36,61-68(2005)及びKlimka et al.,Br J がん83,252-260(2000)(FRシャフリングへの「誘導選択(guided selection)」アプローチについて記載)に記載されている。本発明による特定の免疫グロブリンはヒト免疫グロブリンである。ヒト抗体及びヒト可変領域は、当技術分野において既知の様々な技術を用いて作製することができる。ヒト抗体は、van Dijk and van de Winkel,Curr.Opin.Pharmacol.5:368-74(2001)及びLonberg,Curr.Opin.Immunol.20:450-459(2008)で一般的に記載されている。ヒト可変領域は、ハイブリドーマ法によって作製されたヒトモノクローナル抗体の一部を形成することができ、且つ、そのような抗体から得ることができる(例えば、Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications, pp. 51-63 (Marcel Dekker, Inc., New York, 1987)を参照)。ヒト抗体及びヒト可変領域は、抗原チャレンジに応答して、インタクトなヒト抗体又はヒト可変領域を持つインタクトな抗体を産生するように改変されたトランスジェニック動物に、免疫原を投与することによっても調製することができる(例えば、Lonberg, Nat Biotech 23, 1117-1125 (2005)を参照)。ヒト抗体及びヒト可変領域はまた、ヒト由来のファージディスプレイライブラリーから選択されたFvクローン可変領域配列を単離することによっても作製することができる(例えば、Hoogenboom et al. Methods in Molecular Biology 178, 1-37 (O’Brien et al., ed., Human Press, Totowa, NJ, 2001);及びMcCafferty et al., Nature 348, 552-554; Clackson et al., Nature 352, 624-628 (1991)参照)。ファージは通常、抗体断片を、一本鎖Fv(scFv)断片又はFab断片として表示する。
【0197】
特定の態様では、本発明の抗原結合分子に含まれる、標的細胞抗原に特異的に結合できる部分(例えばFab断片)は、例えば国際公開第2012/020006号(親和性成熟に関する実施例)又は米国特許出願公開第2004/0132066号に開示されている方法に従って、向上した結合親和性を有するように設計される。特定の抗原決定基に対する本発明の抗原結合分子の結合能は、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)又は当業者によく知られている他の技術、例えば表面プラズモン共鳴技術(Liljeblad, et al., Glyco J 17, 323-329 (2000))及び古典的な結合アッセイ(Heeley, Endocr Res 28, 217-229 (2002))によって測定することができる。競合アッセイは、特定の抗原への結合について参照抗体と競合する抗原結合分子を同定するために使用され得る。特定の実施態様では、このような競合抗原結合分子は、参照抗原結合分子によって結合される同じエピトープ(例えば直鎖状又は立体構造エピトープ)に結合する。抗原結合分子が結合するエピトープをマッピングするための詳細な例示的な方法が、Morris(1996)によるMethods in Molecular Biology 第66巻の「Epitope Mapping Protocols」(Humana Press、ニュージャージー州トトワ)に提供されている。例示的な競合アッセイでは、固定化された抗原は、抗原に結合する第1の標識抗原結合分子と、抗原への結合について第1の抗原結合分子と競合するその能力について試験されている第2の非標識抗原結合分子とを含む溶液中でインキュベートされる。第2の抗原結合分子はハイブリドーマ上清中に存在してもよい。コントロールとして、固定化抗原が、第1の標識抗原結合分子を含むが第2の非標識抗原結合分子を含まない溶液中でインキュベートされる。第1の抗体の抗原への結合を許容する条件下でインキュベートした後、過剰な未結合抗体が除去され、固定化された抗原に結合した標識の量が測定される。固定化抗原に結合した標識の量が、コントロール試料と比較して試験試料中で実質的に減少している場合、それは、第2の抗原結合分子が、抗原への結合について第1の抗原結合分子と競合していることを示している。Harlow and Lane(1988)Antibodies:A Laboratory Manual ch.14(Cold Spring Harbor Laboratory、ニューヨーク州、コールドスプリングハーバー)を参照。
【0198】
本明細書に記載されるように調製された本発明の4-1BBL三量体含有抗原結合分子は、当分野で知られている技術、例えば高速液体クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル電気泳動、アフィニティークロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー等によって精製することができる。特定のタンパク質を精製するために使用される実際の条件は、一部には正味荷電、疎水性、親水性などの因子に依存し、当業者に明瞭であろう。アフィニティークロマトグラフィー精製では、4-1BBL三量体含有抗原結合分子が結合する抗体、リガンド、受容体又は抗原が使用され得る。例えば、本発明の融合タンパク質のアフィニティークロマトグラフィー精製では、プロテインA又はプロテインGを含むマトリックスが使用され得る。連続的なプロテインA又はGアフィニティークロマトグラフィー及びサイズ排除クロマトグラフィーが、基本的に実施例に記載されるように、抗原結合分子を単離するために使用され得る。4-1BBL三量体含有抗原結合分子又はその断片の純度は、ゲル電気泳動、高圧液体クロマトグラフィーなどを含む任意の様々な周知の分析方法によって決定され得る。例えば、実施例に記載されるように発現された4-1BBL三量体含有抗原結合分子は、還元型及び非還元型SDS-PAGEにより示されるようにインタクトであり、且つ、適切に集合することが示された。
【0199】
アッセイ
本明細書で提供される抗原結合分子は、当技術分野で既知の様々なアッセイによって、その物理的/化学的性質及び/又は生物活性について同定、スクリーニング、又は特徴付けされ得る。生物活性は、例えば、様々な免疫細胞、特にT細胞の活性化及び/又は増殖を強化する能力を含み得る。例えば、それらは、免疫調節サイトカインの分泌を増強する。増強されている、又は増強され得る他の免疫調節サイトカインは、例えば、IL2、グランザイムBなどである。生物活性には、カニクイザル結合交差反応性及び異なる細胞型への結合も含まれ得る。in vivo及び/又はin vitroでこのような生物活性を有する抗原結合分子が提供される。
【0200】
1.親和性アッセイ
本明細書で提供される4-1BBL三量体含有抗原結合分子の4-1BB(CD137)に対する親和性は、実施例に記載の方法に従って、BIAcore装置GEヘルスケア()などの標準的装置と、組換え発現により得られるような受容体又は標的タンパク質とを用いる、表面プラズモン共鳴(SPR)により決定することができる。また、HER2に対する4-1BBL三量体含有抗原結合分子の親和性は、BIAcore装置(GEヘルスケア)などの標準的装置と、組換え発現により得られるような受容体又は標的タンパク質とを用いる、表面プラズモン共鳴(SPR)により決定することができる。結合親和性を測定するための特定の例示的な実施態様は、実施例4に記載されている。一態様によれば、Kは、25℃でBIACORE(登録商標)T100装置(GEヘルスケア)を用いる表面プラズモン共鳴により測定される。
【0201】
2.結合アッセイ及びその他のアッセイ
本明細書で提供される4-1BBL三量体含有抗原結合分子の、対応する受容体発現細胞への結合は、例えばフローサイトメトリー(FACS)によって、特定の受容体又は標的抗原を発現する細胞株を使用して評価することができる。一態様では、4-1BBを発現する新鮮な末梢血単核細胞(PBMC)が結合アッセイで使用され得る。この細胞は、単離後そのまま使用することも(ナイーブPMBC)、刺激後に使用することもできる(活性化PMBC)。別の態様では、活性化されたマウス脾細胞(4-1BBを発現している)を使用して、本発明の4-1BBL三量体含有抗原結合分子の、4-1BB発現細胞への結合を実証することができる。
【0202】
更なる態様では、Her2を発現している細胞株を使用して、この標的細胞抗原への該抗原結合分子の結合を実証した。
【0203】
別の態様では、競合アッセイを使用して、Her2又は4-1BBそれぞれへの結合について特定の抗体又は抗原結合分子と競合する抗原結合分子を同定することができる。特定の実施態様では、このような競合抗原結合分子は、特定の抗Her2抗体又は特定の4-1BB抗体によって結合される同じエピトープ(例えば直鎖状又は立体構造エピトープ)に結合する。抗体が結合するエピトープをマッピングするための詳細な例示的な方法が、Morris(1996)「Epitope Mapping Protocols」,Methods in Molecular Biology 第66巻(Humana Press、ニュージャージー州トトワ)に提供されている。
【0204】
3.活性アッセイ
一態様において、Her2及び4-1BBに結合する、生物活性を有する4-1BBL三量体含有抗原結合分子を同定するためのアッセイが提供される。生物活性には、例えば、Her2を発現しているがん細胞上での4-1BBを介したアゴニストシグナル伝達が含まれる。これらのアッセイによってin vitroでそのような生物活性を有すると認められた4-1BBL三量体含有抗原結合分子も提供される。
【0205】
特定の態様では、本発明の4-1BBL三量体含有抗原結合分子は、このような生物活性について試験される。本発明の該分子の生物活性を検出するためのアッセイは、実施例3に記載されているものである。更に、細胞溶解(例えばLDH放出の測定による)、誘導性アポトーシスのカイネティクス(例えばカスパーゼ3/7活性の測定による)又はアポトーシス(例えばTUNELアッセイを使用)を検出するためのアッセイは、当技術分野で周知である。更に、このような複合体の生物活性は、NK細胞、NKT細胞又はγδT細胞などの様々なリンパ球サブセットの生存、増殖及びリンホカイン分泌に対するこれらの複合体の作用を調べるか、或いは樹状細胞、単球/マクロファージ又はB細胞等の抗原提示細胞の表現型と機能を調節するこれらの能力を査定することによって、評価され得る。
【0206】
薬学的組成物、製剤及び投与経路
更なる態様において、本発明は、例えば下記の治療法のいずれかに使用される、本明細書で提供される4-1BBL三量体含有抗原結合分子のいずれかを含む薬学的組成物を提供する。一実施態様では、薬学的組成物は、本明細書で提供される4-1BBL三量体含有抗原結合分子のいずれかと、少なくとも1種の薬学的に許容される添加剤とを含む。別の他の実施態様において、薬学的組成物は、本明細書で提供される4-1BBL三量体含有抗原結合分子のいずれかと、少なくとも1種の追加的治療剤を、例えば後述するように含む。
【0207】
本発明の薬学的組成物は、薬学的に許容される添加剤に溶解又は分散した1又は複数の4-1BBL三量体含有抗原結合分子の治療的有効量を含む。「薬学的又は薬理学的に許容される」という語句は、用いられる用量及び濃度でレシピエントに対して一般に無毒である、すなわち、例えばヒトなどの動物に必要に応じて投与されたとき、副作用、アレルギー又は他の有害な反応を生じない分子実体及び組成物を指す。少なくとも1の4-1BBL三量体含有抗原結合分子と、任意選択的に追加の活性成分とを含有する薬学的組成物の調製は、(参照により本明細書に援用される)Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th Ed.Mack Printing Company,1990によって例示されている通りであり、本開示に照らして当業者には既知であろう。特に、該組成物は、凍結乾燥製剤又は水溶液である。本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される添加剤」には、当業者に既知であるように、あらゆる溶媒、バッファー、分散媒、コーティング、界面活性剤、抗酸化剤、防腐剤(例えば抗細菌剤、抗真菌剤)、等張化剤、塩、安定剤、及びこれらの組み合わせが含まれる。
【0208】
非経口組成物には、注射による投与、例えば皮下、皮内、病巣内、静脈内、動脈内、筋肉内、髄腔内又は腹腔内注射用に設計されたものが含まれる。注射の場合、本発明の4-1BBL三量体含有抗原結合分子は、水溶液、好ましくはハンクス液、リンゲル液又は生理食塩水緩衝液(physiological saline buffer)等の、生理的に適合性のバッファー中で製剤化され得る。該溶液は、懸濁剤、安定剤、及び/又は分散剤等の調合剤を含有することができる。或いは、融合タンパク質は、使用前に、適切なビヒクル(例えば発熱性物質除去蒸留水)と構成するために、粉末形態であってもよい。無菌の注射可能な溶液は、必要量の本発明の融合タンパク質を、必要に応じて以下に列挙する他の様々な成分を含む適切な溶媒中に取り込むことにより調製される。滅菌状態は、例えば滅菌濾過膜に通して濾過することにより、容易に達成することができる。分散体は通常、塩基性分散媒及び/又は他の成分を含有する滅菌ビヒクルに、様々な滅菌活性成分を取り込むことにより調製される。滅菌注射用溶液、懸濁液又はエマルジョンの調製のための滅菌粉末の場合、好ましい調製方法は真空乾燥又は凍結乾燥技術であり、これは、事前に滅菌濾過された該活性成分の液体媒質から該活性成分+任意の所望の追加的成分の粉末を得るものである。場合によっては、該液体媒質を適切に緩衝し、注射前にまず、その液体希釈剤を十分な生理食塩水又はグルコースで等張にする必要がある。該組成物は、製造及び貯蔵条件下で安定でなければならず、細菌及び真菌といった微生物の汚染作用から保護されなければならない。エンドトキシンの汚染は、安全レベル、例えばタンパク質1mgあたり0.5ng未満で最小限に保たれなければならない。薬学的に許容される適切な添加剤には、限定されないが、リン酸塩、クエン酸塩及び他の有機酸等のバッファー;アスコルビン酸及びメチオニンを含む抗酸化剤;防腐剤(例えばオクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;ヘキサメトニウムクロリド;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、フェノール、ブチル又はベンジルアルコール;アルキルパラベン類、例えばメチル又はプロピルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;及びm-クレゾール);低分子量(約10残基未満)のポリペプチド;タンパク質、例えば血清アルブミン、ゼラチン又は免疫グロブリン;親水性ポリマー類、例えばポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えばグリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン又はリジン;単糖類、二糖類、及びグルコース、マンノース又はデキストリンを含む他の炭水化物;キレート剤、例えばEDTA;糖、例えばスクロース、マンニトール、トレハロース又はソルビトール;塩形成対イオン、例えばナトリウム;金属錯体(例えばZn-タンパク質錯体);及び/又はポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン性界面活性剤が含まれる。水性注射懸濁液には、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、デキストラン等の懸濁液の粘度を上昇させる化合物が含有されていてよい。任意選択的に、該懸濁液は、適切な安定剤、又は化合物の溶解度を上昇させて高濃度溶液の調製を可能にする薬剤も含有することができる。加えて、活性化合物の懸濁液は、適切な油性注射懸濁液として調製することができる。適切な親油性溶媒又はビヒクルには、ゴマ油などの脂肪油、又はオレイン酸エチル(ethyl cleat)若しくはトリグリセリドなどの合成脂肪酸エステル、又はリポソームが含まれる。
【0209】
活性成分は、例えばコアセルベーション技術又は界面重合法によって調製されたマイクロカプセル(例えばそれぞれ、ヒドロキシメチルセルロースマイクロカプセル又はゼラチン-マイクロカプセル、ポリ-(メチルメタクリレート)(poly-(methylmethacylate))マイクロカプセル)に、コロイド薬物送達系(例えばリポソーム、アルブミンミクロスフィア、マイクロクロエマルジョン、ナノ粒子、及びナノカプセル)に、又はマクロエマルジョンに封入することができる。これらの技術は、Remington’s Pharmaceutical Sciences(18th Ed.Mack Printing Company,1990)に開示されている。徐放性製剤が調製されてもよい。徐放性調製物の適切な例には、ポリペプチドを含有する固体疎水性ポリマーの半透性マトリクスが含まれ、そのマトリックスは、成形品、例えばフィルム又はマイクロカプセルの形態である。特定の実施態様では、注射可能な組成物の吸収を、例えばモノステアリン酸アルミニウム、ゼラチン、又はそれらの組合せといった吸収を遅延させる薬剤を組成物に使用することにより持続させることができる。
【0210】
本明細書における例示的な薬学的に許容される添加剤には、間質性薬物分散剤(insterstitial drug dispersion agent)、例えば可溶性の中性活性ヒアルロニダーゼ糖タンパク質(sHASEGP)、例えば、rhuPH20(HYLENEX(登録商標)、Baxter International社)などのヒト可溶性PH-20ヒアルロニダーゼ糖タンパク質が更に含まれる。rHuPH20を含む、特定の例示的なsHASEGP及び使用法については、米国特許出願公開第2005/0260186号及び同第2006/0104968号に記載されている。一態様において、sHASEGPは、コンドロイチナーゼなどの1種以上のさらなるグリコサミノグリカナーゼと併用される。
【0211】
例示的な凍結乾燥抗体製剤は、米国特許第6267958号に記載されている。水性抗体製剤には、米国特許第6171586号及び国際公開第2006/044908号に記載されているものが含まれ、この製剤はヒスチジン-酢酸塩バッファーを含む。
【0212】
上記の組成物に加えて、融合タンパク質は、デポー製剤として製剤化することもできる。このような長時間作用型の製剤は、植込(implantation)(例えば、皮下又は筋肉内)により、又は筋肉内注射により投与することができる。したがって、例えば、融合タンパク質は、適切なポリマー性又は疎水性物質(例えば、許容可能な油中のエマルジョンとしての)又はイオン交換樹脂を用いて、又は難溶性の誘導体として、例えば難溶性の塩として製剤化することができる。
【0213】
本発明の融合タンパク質を含む薬学的組成物は、一般的な混合、溶解、乳化、カプセル化、封入又は凍結乾燥プロセスにより製造することができる。薬学的組成物は、1種以上の生理的に許容される担体、希釈剤、添加剤、又はタンパク質の薬学的に使用可能な調製物への加工を容易にする補助剤を使用して、従来の方法で製剤化できる。適した製剤は、選択される投与経路に応じて決まる。
【0214】
4-1BBL三量体含有抗原結合分子は、遊離酸又は遊離塩基の、天然又は塩の形態の組成物に製剤化することができる。薬学的に許容される塩は、遊離酸又は遊離塩基の生物活性を実質的に保持する塩である。これらには、酸付加塩、例えばタンパク質性組成物の遊離アミノ基で形成されたもの、又は例えば塩酸若しくはリン酸といった無機酸、又は酢酸、シュウ酸、酒石酸若しくはマンデル酸といった有機酸で形成されたものが含まれる。また、遊離カルボキシル基で形成される塩は、例えばナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム若しくは水酸化第二鉄等の無機塩基;又はイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジン若しくはプロカイン等の有機塩基に由来し得る。薬学的塩は、対応する遊離塩基形態より、水性及び他のプロトン性溶媒に溶け易い。
【0215】
本明細書の組成物は治療される特定の適応症に必要な複数の活性成分、好ましくは、互いに悪影響を及ぼさない相補的な活性を有するのも含有し得る。そのような活性成分は、適切には、意図する目的に有効な量の組み合わせで存在する。
【0216】
一態様において、薬学的組成物は、本明細書で提供される4-1BBL三量体含有抗原結合分子のいずれかと、少なくとも1種の追加的治療剤とを含み得る。一態様において、薬学的組成物は、本明細書で提供される4-1BBL三量体含有抗原結合分子のいずれかと、T細胞活性化抗CD3二重特異性抗体、特に抗Her2/抗CD3抗体とを含み得る。
【0217】
一態様において、抗Her2/抗CD3抗体は、CD3に結合する第1の抗原結合ドメインと、Her2に結合する第2の抗原結合ドメインとを含む。特定の態様において、Her2に結合する第2の抗原結合ドメインは、4-1BBL三量体含有抗原結合分子とは異なるHer2上のエピトープに結合する。
【0218】
一態様では、本明細書で使用される抗Her2/抗CD3二重特異性抗体は、配列番号91のCDR-H1配列、配列番号92のCDR-H2配列、及び配列番号93のCDR-H3配列を含む重鎖可変領域(VCD3)、並びに/又は配列番号94のCDR-L1配列、配列番号95のCDR-L2配列、及び配列番号96のCDR-L3配列を含む軽鎖可変領域(VCD3)を含む第1の抗原結合ドメインを含む。更に詳細には、抗Her2/抗CD3二重特異性抗体は、配列番号97のアミノ酸配列と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%若しくは99%同一である重鎖可変領域(VCD3)及び/又は配列番号98のアミノ酸配列と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%若しくは99%同一である軽鎖可変領域(VCD3)を含む第1の抗原結合ドメインを含む。更なる態様では、抗Her2/抗CD3二重特異性抗体は、配列番号97のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VCD3)及び/又は配列番号98のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VCD3)を含む。
【0219】
一態様では、抗Her2/抗CD3二重特異性抗体は、(そのヒト化型で、トラスツズマブとして知られている)抗体4D5と同じエピトープに結合する第2の抗原結合ドメインを含む。別の態様では、抗Her2/抗CD3二重特異性抗体は、(そのヒト化型で、ペルツズマブとして知られている)抗体2C4と同じエピトープに結合する第2の抗原結合ドメインを含む。更に別の態様では、抗Her2/抗CD3二重特異性抗体は、抗体7C2(米国特許第9518118号)と同じエピトープに結合する第2の抗原結合ドメインを含む。
【0220】
別の態様では、抗Her2/抗CD3二重特異性抗体は、
(a)配列番号21のCDR-H1配列、配列番号22のCDR-H2配列、及び配列番号23のCDR-H3配列を含む重鎖可変領域(VHer2);並びに/若しくは配列番号24のCDR-L1配列、配列番号25のCDR-L2配列、及び配列番号26のCDR-L3配列を含む軽鎖可変領域(VHer2)、又は
(b)配列番号13のCDR-H1配列、配列番号14のCDR-H2配列、及び配列番号15のCDR-H3配列を含む重鎖可変領域(VHer2);並びに/若しくは配列番号16のCDR-L1配列、配列番号17のCDR-L2配列、及び配列番号18のCDR-L3配列を含む軽鎖可変領域(VHer2)、又は
(c)配列番号99のCDR-H1配列、配列番号100のCDR-H2配列、及び配列番号101のCDR-H3配列を含む重鎖可変領域(VHer2);並びに/若しくは配列番号102のCDR-L1配列、配列番号103のCDR-L2配列、及び配列番号104のCDR-L3配列を含む軽鎖可変領域(VHer2)
を含む第2の抗原結合ドメインを含む。
【0221】
一態様では、抗Her2/抗CD3二重特異性は、配列番号27のアミノ酸配列と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%若しくは99%同一である重鎖可変領域(VHer2)及び/又は配列番号28のアミノ酸配列と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%若しくは99%同一である軽鎖可変領域(VHer2)を含む第2の抗原結合ドメインを含む。更なる態様では、抗Her2/抗CD3二重特異性は、配列番号27のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VHer2)及び/又は配列番号28のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VHer2)を含む第2の抗原結合ドメインを含む。別の態様では、抗Her2/抗CD3二重特異性は、配列番号19のアミノ酸配列と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%若しくは99%同一である重鎖可変領域(VHer2)及び/又は配列番号20のアミノ酸配列と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%若しくは99%同一である軽鎖可変領域(VHer2)を含む第2の抗原結合ドメインを含む。更なる態様では、抗Her2/抗CD3二重特異性は、配列番号19のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VHer2)及び/又は配列番号20のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VCEA)を含む第2の抗原結合ドメインを含む。別の態様では、抗Her2/抗CD3二重特異性は、配列番号105のアミノ酸配列と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%若しくは99%同一である重鎖可変領域(VHer2)及び/又は配列番号106のアミノ酸配列と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%若しくは99%同一である軽鎖可変領域(VHer2)を含む第2の抗原結合ドメインを含む。更なる態様では、抗Her2/抗CD3二重特異性は、配列番号105のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VHer2)及び/又は配列番号106のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VCEA)を含む第2の抗原結合ドメインを含む。
【0222】
一態様において、抗Her2/抗CD3二重特異性抗体は、配列番号97のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VCD3)及び/又は配列番号98のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VCD3)を含む第1の抗原結合ドメインと、配列番号27のアミノ酸配を含む重鎖可変領域(VHer2)及び/又は配列番号28のアミノ酸配を含む軽鎖可変領域(VHer2)を含む第2の抗原結合ドメインを含む。
【0223】
in vivo投与に使用される製剤は、一般的に滅菌されている。滅菌状態は、例えば滅菌濾過膜に通して濾過することにより、容易に達成することができる。
【0224】
治療方法及び組成物
本明細書において提供される4-1BBL三量体含有抗原結合分子のいずれも、治療法に使用することができる。
【0225】
治療方法において使用される場合、本発明の4-1BBL三量体含有抗原結合分子は、医療実施基準に一致した様式で製剤化、調薬及び投与され得る。この観点において考慮すべき要素には、治療される特定の障害、治療される特定の哺乳動物、個々の患者の臨床状態、障害の原因、薬剤送達部位、投与方法、投与日程、及び医療従事者が知るその他の要素が含まれる。
【0226】
一態様では、医薬としての使用のための本発明の4-1BBL三量体含有抗原結合分子が提供される。更なる態様において、疾患の治療における使用のための、特にがんの治療における使用のための、本発明の4-1BBL三量体含有抗原結合分子が提供される。特定の態様では、治療法における使用のための、本発明の4-1BBL三量体含有抗原結合分子が提供される。一態様では、本発明は、本明細書に記載の4-1BBL三量体含有抗原結合分子であって、それを必要とする個体の疾患の治療における使用のための4-1BBL三量体含有抗原結合分子を提供する。特定の態様において、本発明は、疾患を有する個体に治療的有効量の融合タンパク質を投与することを含む、該個体の治療法における使用のための4-1BBL三量体含有抗原結合分子を提供する。特定の態様では、治療される疾患は、HER2陽性がんである。HER2陽性がんの例には、乳がん、卵巣がん、胃がん、膀胱がん、唾液腺、子宮内膜がん、膵臓がん及び非小細胞肺がん(NSCLC)が含まれる。一態様では、Her2陽性がんは、Her2+陽性乳がん、例えば早期又は局所進行Her2+陽性乳がんである。したがって、これらのがんの治療における使用のための、本明細書に記載の4-1BBL三量体含有抗原結合分子が提供される。治療を必要とする対象、患者又は「個体」は、典型的には哺乳動物であり、より具体的にはヒトである。
【0227】
別の態様において、提供されるのは、感染症の治療のための、特にウイルス感染症の治療のための、本明細書に記載の4-1BBL三量体含有抗原結合分子である。更なる態様において、提供されるのは、自己免疫疾患、例えばループス病の治療における使用のための、本明細書に記載の4-1BBL三量体含有抗原結合分子である。
【0228】
更なる態様では、本発明は、必要とする個体における疾患の治療のための医薬の製造又は調製における、4-1BBL三量体含有抗原結合分子の使用に関する。一態様において、該医薬は、疾患を有する個体に治療的有効量の該医薬を投与することを含む疾患の治療方法における使用のためのものである。特定の実施態様では、治療される疾患は増殖性障害、特にがんである。したがって、一態様では、本発明は、がん、特にHer2陽性がんの治療のための医薬の製造又は調製における、本発明の4-1BBL三量体含有抗原結合分子の使用に関する。HER2陽性がんの例には、乳がん、卵巣がん、胃がん、膀胱がん、唾液腺、子宮内膜がん、膵臓がん及び非小細胞肺がん(NSCLC)が含まれる。特定の態様において、治療されるがんは、HER2陽性乳がん、特にHer2陽性転移性乳がんである。当業者であれば、場合によっては4-1BBL三量体含有抗原結合分子は治癒をもたらさず、部分的恩恵を提供するだけであることが分かる。いくつかの態様では、いくらかの恩恵を有する生理的変化も治療的に有益と考えられる。したがって、いくつかの態様では、生理的変化をもたらす4-1BBL三量体含有抗原結合分子の量は、「有効量」又は「治療的有効量」と考えられる。
【0229】
更なる態様において、本発明は、個体に治療的有効量の本発明の4-1BBL三量体含有抗原結合分子を投与することを含む、前記個体における疾患を治療するための方法を提供する。一態様では、薬学的に許容される形態の本発明の融合タンパク質を含む組成物が前記個体に投与される。特定の態様では、治療される疾患は増殖性障害である。特定の態様では、疾患はがんである。特定の態様では、該方法は、該個体に治療的有効量の少なくとも1種の追加の治療剤(例えば、治療される疾患ががんである場合には抗がん剤)を投与することを更に含む。上記実施態様のいずれかによる「個体」は、哺乳動物、好ましくはヒトとすることができる。
【0230】
疾患の予防又は治療に関し、本発明の4-1BBL三量体含有抗原結合分子の(単独での使用又は1種以上の他の追加的治療剤との併用の際の)適切な投与量は、治療される疾患の種類、投与経路、患者の体重、抗原結合分子の種類、疾患の重症度及び経過、抗原結合分子が予防又は治療のどちらの目的で投与されるか、従前又は同時の治療的介入、患者の病歴及び融合タンパク質に対する応答、並びに主治医の裁量によって決定されるであろう。いずれにしても、投与を担当する施術者は、組成物中の活性成分の濃度及び個々の対象にとって適切な用量を決定する。本明細書では、単回投与又は様々な時点にわたる複数回投与、ボーラス投与、パルス注入を含むがこれらに限定されない様々な投与スケジュールが想定される。
【0231】
4-1BBL三量体含有抗原結合分子は、単回、又は一連の治療にわたって患者に適切に投与される。疾患の種類及び重症度に応じて、例えば1又は複数回の別個の投与によるか、連続注入によるかに関わらず、約1μg/kg~15mg/kg(例えば0.1mg/kg~10mg/kg)の4-1BBL三量体含有抗原結合分子が患者への投与のための初期候補用量となり得る。1つの典型的な1日用量は、上記の要素に応じて、約1μg/kg~100mg/kg又はそれ以上の範囲である。数日以上にわたる反復投与に関しては、病状に応じて、治療は一般に疾患症状の望まれる抑制が起こるまで継続されるものとする。融合タンパク質の1つの例示的な投薬量は、約0.005mg/kg~約10mg/kgの範囲であろう。他の例では、用量は、投与1回につき、体重1kgあたり約1μgから、体重1kgあたり約5μgから、体重1kgあたり約10μgから、体重1kgあたり約50μgから、体重1kgあたり約100μgから、体重1kgあたり約200μgから、体重1kgあたり約350μgから、体重1kgあたり約500μgから、体重1kgあたり約1mgから、体重1kgあたり約5mgから、体重1kgあたり約10mgから、体重1kgあたり約50mgから、体重1kgあたり約100mgから、体重1kgあたり約200mgから、体重1kgあたり約350mgから、体重1kgあたり約500mgから、体重1kgあたり約1000mgまで、又はそれ以上の範囲、及びそこから導き出せる範囲を含む。本明細書に挙げた数字から導き出せる範囲の例では、上記の数字に基づいて、体重1kgあたり約5mg~体重1kgあたり約100mg、体重1kgあたり約5μg~体重1kgあたり約500mg等の範囲が投与され得る。したがって、約0.5mg/kg、2.0mg/kg、5.0mg/kg又は10mg/kg(又はこれらの任意の組み合わせ)の1又は複数の用量を患者に投与することができる。このような用量は断続的に、例えば毎週又は3週毎(例えば患者が約2から約20、または例えば融合タンパク質の約6用量を受けるように)投与してよい。初回の高負荷用量の後、それより低い用量を1以上投与してもよい。しかしながら、他の用量レジメンも有用である。この治療法の進行は、従来の技術及びアッセイにより容易にモニターされる。
【0232】
一般に、本発明の4-1BBL三量体含有抗原結合分子は、意図された目的を達成するのに有効な量で使用される。疾患の状態を治療又は予防するための使用のために、本発明の4-1BBL三量体含有抗原結合分子又はその薬学的組成物は、治療的有効量で投与又は適用される。治療的有効量の決定は、特に本明細書に提供される詳細な開示内容を踏まえると十分に当業者の能力の範囲内である。
【0233】
全身投与の場合、治療的有効用量は、細胞培養アッセイなどのin vitroアッセイから最初に推定することができる。その後、細胞培養で決定したIC50を含む循環濃度範囲を達成するように、動物モデルにおいて用量を定式化することができる。このような情報は、ヒトにおいて有用な用量を更に正確に決定するために使用することができる。
【0234】
初期投与量は、in vivoデータ、例えば動物モデルから、当技術分野でよく知られている技術を用いて推定することもできる。当業者であれば、動物データに基づくヒトへの投与を容易に最適化することができるであろう。
【0235】
投与の量及び間隔は、4-1BBL三量体含有抗原結合分子の、治療効果を維持するのに十分な血漿レベルを提供するために個別に調整される。注射による投与のための患者への通常の投与量は、約0.1~50mg/kg/日、典型的には約0.5~1mg/kg/日の範囲である。治療的に有効な血漿レベルは、毎日複数回投与を行うことにより達成することができる。血漿中のレベルは、例えばHPLCにより測定することができる。
【0236】
局所投与又は選択的取り込みの場合、4-1BBL三量体含有抗原結合分子の有効な局所濃度は血漿濃度に関連していなくともよい。当業者であれば、過度の実験をしなくとも、治療的に有効な局所投与量を最適化することができるであろう。
【0237】
本明細書に記載される4-1BBL三量体含有抗原結合分子の治療的に有効な用量は一般に、実質的な毒性を引き起こすことなく治療的効果を提供する。融合タンパク質の毒性及び治療効果は、細胞培養又は実験動物における標準の薬学的手順により決定することができる。細胞培養アッセイ及び動物の研究を用いて、LD50(集団の50%を死に至らしめる用量)及びED50(集団の50%で治療的に有効な用量)を決定することができる。毒性作用と治療効果の用量比が治療指数であり、これはLD50/ED50の比率として表すことができる。大きな治療指数を呈する4-1BBL三量体含有抗原結合分子が好ましい。一実施態様では、本発明による4-1BBL三量体含有抗原結合分子は、高い治療指数を呈する。細胞培養アッセイ及び動物研究から得られたデータを用いて、ヒトにおける使用に適した投与量の範囲を定式化することができる。投与量は、好ましくは、毒性を殆ど又は全く伴わないED50を含む、一定範囲の循環濃度内にある。投与量は、様々な要素、例えば、使用される剤形、利用される投与経路、対象の病状等に応じて、この範囲内で変動し得る。正確な処方、投与経路及び用量は、患者の病状を考慮して個々の医師により選択され得る(例えば、本明細書に参照により全文が援用されるFingl et al.,1975,The Pharmacological Basis of Therapeutics,第1章,1頁参照)。
【0238】
本発明の融合タンパク質を用いて治療される患者の主治医には、毒性、器官不全などにより、いつ及びどのようにして投与を終了、中断、又は調整するかが分かるであろう。逆に、主治医は、臨床応答が十分でなかった場合には、治療レベルを上げるように調整する(毒性は予め排除)ことも知っているであろう。対象となる障害の管理における投与量の大きさは、治療される病状の重症度、投与経路などによって変わる。例えば、病状の重症度は、部分的には標準の予後評価方法により評価される。更に、用量及び恐らくは投薬頻度も、個々の患者の年齢、体重及び応答応じて変化するであろう。
【0239】
その他の薬剤及び治療
治療において、本発明の4-1BBL三量体含有抗原結合分子は、1種以上の他の薬剤との併用で投与され得る。例えば、本発明の融合タンパク質は、少なくとも1種の追加の治療剤と共投与され得る。用語「治療剤」は、このような治療を必要とする個体の症状又は疾患を治療するために投与され得る任意の薬剤を包含する。このような追加の治療剤は、治療される特定の適応症に適した活性成分、好ましくは、互いに悪影響を及ぼさない相補的活性を有するものを含んでもよい。特定の実施態様では、追加の治療剤は別の抗がん剤である。
【0240】
このような他の薬剤は、意図した目的に有効な量で組み合わされて適切に存在する。このような他の薬剤の有効量は、使用される4-1BBL三量体含有抗原結合分子の量、障害又は治療の種類、及び上述の他の要素に応じて決まる。一般に、4-1BBL三量体含有抗原結合分子は、本明細書に記載されているのと同じ用量及び投与経路で、又は本明細書に記載の投与量の約1%~99%で、又は経験的に/臨床的に妥当であると決定された任意の投与量及び経路で使用される。
【0241】
上記のこうした併用療法は、併用投与(二以上の治療剤が、同一又は別々の組成物に含まれている)、及び本発明の4-1BBL三量体含有抗原結合分子の投与が、追加の治療剤及び/又はアジュバントの投与の前、投与と同時、及び/又は投与の後に起こり得る別々の投与を包含する。
【0242】
したがって、一態様では、がん、特にHer2陽性がんの治療における使用のための、本明細書に記載の4-1BBL三量体含有抗原結合分子が提供され、ここで、4-1BBL三量体含有抗原結合分子は、T細胞活性化抗CD3二重特異性抗体、特に抗Her2/抗CD3二重特異性抗体と併用される。
【0243】
一態様において、抗Her2/抗CD3抗体は、CD3に結合する第1の抗原結合ドメインと、Her2に結合する第2の抗原結合ドメインとを含む。特定の態様において、Her2に結合する第2の抗原結合ドメインは、4-1BBL三量体含有抗原結合分子とは異なるHer2上のエピトープに結合する。
【0244】
一態様では、本明細書で使用される抗Her2/抗CD3二重特異性抗体は、配列番号91のCDR-H1配列、配列番号92のCDR-H2配列、及び配列番号93のCDR-H3配列を含む重鎖可変領域(VCD3)、並びに/又は配列番号94のCDR-L1配列、配列番号95のCDR-L2配列、及び配列番号96のCDR-L3配列を含む軽鎖可変領域(VCD3)を含む第1の抗原結合ドメインを含む。更に詳細には、抗Her2/抗CD3二重特異性抗体は、配列番号97のアミノ酸配列と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%若しくは99%同一である重鎖可変領域(VCD3)及び/又は配列番号98のアミノ酸配列と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%若しくは99%同一である軽鎖可変領域(VCD3)を含む第1の抗原結合ドメインを含む。更なる態様では、抗Her2/抗CD3二重特異性抗体は、配列番号97のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VCD3)及び/又は配列番号98のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VCD3)を含む。
【0245】
一態様では、抗Her2/抗CD3二重特異性抗体は、(そのヒト化型で、トラスツズマブとして知られている)抗体4D5と同じエピトープに結合する第2の抗原結合ドメインを含む。別の態様では、抗Her2/抗CD3二重特異性抗体は、(そのヒト化型で、ペルツズマブとして知られている)抗体2C4と同じエピトープに結合する第2の抗原結合ドメインを含む。更に別の態様では、抗Her2/抗CD3二重特異性抗体は、抗体7C2(米国特許第9518118号)と同じエピトープに結合する第2の抗原結合ドメインを含む。
【0246】
別の態様では、抗Her2/抗CD3二重特異性抗体は、
(a)配列番号21のCDR-H1配列、配列番号22のCDR-H2配列、及び配列番号23のCDR-H3配列を含む重鎖可変領域(VHer2);並びに/若しくは配列番号24のCDR-L1配列、配列番号25のCDR-L2配列、及び配列番号26のCDR-L3配列を含む軽鎖可変領域(VHer2)、又は
(b)配列番号13のCDR-H1配列、配列番号14のCDR-H2配列、及び配列番号15のCDR-H3配列を含む重鎖可変領域(VHer2);並びに/若しくは配列番号16のCDR-L1配列、配列番号17のCDR-L2配列、及び配列番号18のCDR-L3配列を含む軽鎖可変領域(VHer2)、又は
(c)配列番号99のCDR-H1配列、配列番号100のCDR-H2配列、及び配列番号101のCDR-H3配列を含む重鎖可変領域(VHer2);並びに/若しくは配列番号102のCDR-L1配列、配列番号103のCDR-L2配列、及び配列番号104のCDR-L3配列を含む軽鎖可変領域(VHer2)
を含む第2の抗原結合ドメインを含む。
【0247】
一態様では、抗Her2/抗CD3二重特異性は、配列番号27のアミノ酸配列と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%若しくは99%同一である重鎖可変領域(VHer2)及び/又は配列番号28のアミノ酸配列と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%若しくは99%同一である軽鎖可変領域(VHer2)を含む第2の抗原結合ドメインを含む。更なる態様では、抗Her2/抗CD3二重特異性は、配列番号27のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VHer2)及び/又は配列番号28のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VHer2)を含む第2の抗原結合ドメインを含む。別の態様では、抗Her2/抗CD3二重特異性は、配列番号19のアミノ酸配列と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%若しくは99%同一である重鎖可変領域(VHer2)及び/又は配列番号20のアミノ酸配列と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%若しくは99%同一である軽鎖可変領域(VHer2)を含む第2の抗原結合ドメインを含む。更なる態様では、抗Her2/抗CD3二重特異性は、配列番号19のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VHer2)及び/又は配列番号20のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VCEA)を含む第2の抗原結合ドメインを含む。別の態様では、抗Her2/抗CD3二重特異性は、配列番号105のアミノ酸配列と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%若しくは99%同一である重鎖可変領域(VHer2)及び/又は配列番号106のアミノ酸配列と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%若しくは99%同一である軽鎖可変領域(VHer2)を含む第2の抗原結合ドメインを含む。更なる態様では、抗Her2/抗CD3二重特異性は、配列番号105のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VHer2)及び/又は配列番号106のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VCEA)を含む第2の抗原結合ドメインを含む。
【0248】
一態様において、抗Her2/抗CD3二重特異性抗体は、配列番号97のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VCD3)及び/又は配列番号98のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VCD3)を含む第1の抗原結合ドメインと、配列番号27のアミノ酸配を含む重鎖可変領域(VHer2)及び/又は配列番号28のアミノ酸配を含む軽鎖可変領域(VHer2)を含む第2の抗原結合ドメインを含む。
【0249】
更なる態様では、4-1BBL三量体含有抗原結合分子は、T細胞活性化抗CD3二重特異性抗体と併用され、T細胞活性化抗CD3二重特異性抗体は、4-1BBL三量体含有抗原結合分子と同時に、それに先立って、又はそれに続いて投与される。
【0250】
更なる態様において、提供されるのは、がんの治療のための医薬の製造のための4-1BBL三量体含有抗原結合分子の使用であって、ここで、4-1BBL三量体含有抗原結合分子は、T細胞活性化抗CD3二重特異性抗体、特に抗Her2/抗CD3二重特異性抗体と併用される。特定の態様では、治療される疾患は、HER2陽性がんである。HER2陽性がんの例には、乳がん、卵巣がん、胃がん、膀胱がん、唾液腺、子宮内膜がん、膵臓がん及び非小細胞肺がん(NSCLC)が含まれる。特定の態様において、治療されるがんは、HER2陽性乳がん、特にHer2陽性転移性乳がんである。
【0251】
更なる態様では、本発明は、個体におけるがんの治療のための方法であって、前記個体に治療的有効量の本発明の4-1BBL三量体含有抗原結合分子と有効量の上記T細胞活性化抗CD3二重特異性抗体、特に抗Her2/抗CD3二重特異性抗体とを投与することを含む方法を提供する。特定の態様では、該方法は、HER2陽性がんに対するものである。HER2陽性がんの例には、乳がん、卵巣がん、胃がん、膀胱がん、唾液腺、子宮内膜がん、膵臓がん及び非小細胞肺がん(NSCLC)が含まれる。一態様では、該方法は、HER2陽性転移性乳がんを治療するためのものである。
【0252】
製造品
本発明の別の態様では、上述した障害の治療、予防、及び/又は診断に有用な材料を含む製造品が提供される。製造品は、容器と、容器に貼られているか又は付随しているラベル又は添付文書とを備える。好適な容器には、例えば瓶、バイアル、シリンジ、IV輸液バッグ等が含まれる。該容器は、例えばガラス又はプラスチック等の様々な材料から形成され得る。該容器は、該病状の治療、予防及び/又は診断に有効な、単独の又は他の組成物と組み合わされる組成物を収容し、無菌のアクセスポートを有し得る(例えば、該容器は皮下注射針で穿孔可能な、ストッパーを有する静脈内溶液のバッグ又はバイアルであってよい)。該組成物中の少なくとも1種の活性剤は、本発明の4-1BBL三量体含有抗原結合分子である。
【0253】
ラベル又は添付文書は、最適な病状の治療のために該組成物が使用されることを示している。更に、製造品は、(a)本発明の4-1BBL三量体含有抗原結合分子を含む組成物を中に含む第1の容器;及び(b)更なる細胞傷害性又はその他の治療剤を含む組成物を中に含む第2の容器を含んでもよい。本発明の本実施態様における製造品は、組成物が特定の状態を治療するために使用できることを示す添付文書を更に備えてもよい。
【0254】
代替的に又は追加的に、製造品は、薬学的に許容されるバッファー(例えば注射用静菌水(BWFI)、リン酸緩衝生理食塩水、リンゲル液、及びデキストロース溶液)を収容する第2(又は第3)の容器を更に備えてもよい。製造品は、他のバッファー、希釈剤、フィルター、針及びシリンジを含む、商業的及びユーザーの観点から望ましい他の材料を更に備えてもよい。
【0255】
【0256】
ヒト免疫グロブリン軽鎖及び重鎖のヌクレオチド配列に関する一般的な情報は、Kabat,E.A,et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,第5版,Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD(1991)に示されている。抗体鎖のアミノ酸は、上記に定義されるように、Kabat(Kabat, E.A., et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD (1991))によるEU番号付けシステムに従って番号付け及び参照される。
【実施例
【0257】
以下は本発明の方法及び組成物の実施例である。上に提供された一般的な説明を前提として、他の様々な実施態様が実施され得ることが理解される。
【0258】
組換えDNA技術
Sambrook et al.,Molecular cloning: A laboratory manual;Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,New York,1989に記載されているように、標準的な方法を使用してDNAを操作した。分子生物学的試薬を、製造元の指示に従って使用した。ヒト免疫グロブリン軽鎖及び重鎖のヌクレオチド配列に関する一般的な情報は、Kabat,E.A.et al.,(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest,第5版,NIH Publication No91-3242に示されている。
【0259】
DNA配列決定
DNA配列は、二本鎖配列決定により決定された。
【0260】
遺伝子合成
所望の遺伝子セグメントは、適切なテンプレートを用いるPCRによって生成されたか、又は自動遺伝子合成による合成オリゴヌクレオチド及びPCR産物からGeneart社(ドイツ、レーゲンスブルク)によって合成された。正確な遺伝子配列が入手可能でない場合、最も近いホモログ由来の配列に基づいてオリゴヌクレオチドプライマーを設計し、適切な組織を起源とするRNAからRT-PCRによって遺伝子を単離した。単一の制限エンドヌクレアーゼ切断部位に隣接する遺伝子セグメントを、標準的なクローニング/配列決定ベクター中でクローニングした。形質転換した細菌からプラスミドDNAを精製し、UV分光法により濃度を決定した。サブクローニングされた遺伝子断片のDNA配列を、DNA配列決定によって確認した。遺伝子セグメントは、それぞれの発現ベクター中へのサブクローニングを可能にする適切な制限部位を用いて設計された。全てのコンストラクトは、真核細胞における分泌のためのタンパク質を標的とするリーダーペプチドをコードする、5’末端DNA配列を含むように設計された。
【0261】
細胞培養技術
Current Protocols in Cell Biology(2000),Bonifacino,J.S.,Dasso,M.,Harford,J.B.,Lippincott-Schwartz,J.and Yamada,K.M.(eds.),John Wiley & Sons,Inc.に記載されているような、標準的な細胞培養技術を使用した。
【0262】
タンパク質の精製
標準的なプロトコールを参照して、濾過された細胞培養上清からタンパク質を精製した。簡潔には、抗体を、プロテインA Sepharoseカラム(GEヘルスケア)に適用し、PBSで洗浄した。抗体の溶出はpH2.8で達成され、その直後に試料を中和した。凝集したタンパク質を、サイズ排除クロマトグラフィー(Superdex200、GEヘルスケア)により、PBS中又は20mMのヒスチジン(150mMのNaCl、pH6.0)中の単量体抗体から分離させた。単量体抗体画分をプールし、例えばMILLIPORE Amicon Ultra(30MWCO)遠心濃縮機を使用して濃縮し(必要な場合)、-20℃又は-80℃で冷凍し、保存した。試料の一部が、その後のタンパク質分析、及び例えばSDS-PAGE、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)又は質量分析による分析的特徴付けのために提供された。
【0263】
SDS-PAGE
NuPAGE(登録商標)Pre-Castゲルシステム(Invitrogen)を製造元の指示書に従って使用した。特に、10%若しくは4~12%のNuPAGE(登録商標)Novex(登録商標)Bis-TRIS Pre-Castゲル(pH6.4)及びNuPAGE(登録商標)MES(還元ゲル、NuPAGE(登録商標)抗酸化剤ランニングバッファー添加剤を含む)又はMOPS(非還元ゲル)ランニングバッファーを使用した。
【0264】
分析的サイズ排除クロマトグラフィー
抗体の凝集及びオリゴマー状態の決定のためのサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を、HPLCクロマトグラフィーによって実施した。簡潔には、プロテインA精製抗体を、Agilent HPLC 1100システムで300mM NaCl、50mM KHPO/KHPO(pH7.5)中のTosoh TSKgel G3000SWカラムに、又はDionex HPLC-システムで2倍のPBS中のSuperdex 200カラム(GEヘルスケア)に塗布した。UV吸光度及びピーク面積の積分により、溶出したタンパク質を定量化した。BioRadゲル濾過Standard 151-1901が標準として機能した。
【0265】
実施例1
Her2標的化4-1BBアゴニスト抗原結合分子の生成と生産
1.1.Her2標的化4-1BBリガンド三量体含有Fc融合抗原結合分子の生成と生産
三量体4-1BBリガンドを標的とするために使用されたHer2バインダーは、国際公開第2015/091738号に記載されているように、ペルツズマブ(以下の文中ではPERという)、トラスツズマブ(TRAS)、及び親和性成熟ペルツズマブ(aff-PER)であった。
【0266】
Her2に特異的なバインダーをコードする重鎖及び軽鎖DNA配列の可変領域を、ホールの定常重鎖又はヒトIgG1の定常軽鎖のいずれかと共にフレーム内でサブクローニングした。
【0267】
ヒト4-1BBリガンドのエクトドメイン(アミノ酸71-248)の一部をコードするDNA配列を、UniprotデータベースのP41273配列に従って合成した。
【0268】
(G4S)2リンカーによって分離された4-1BBリガンドの2つのエクトドメインを有し、ヒトIgG1-CLドメインに融合されたポリペプチドを、図1Aに描かれているようにクローニングした:ヒト4-1BBリガンド、(G4S)2コネクター、ヒト4-1BBリガンド、(G4S)2コネクター、ヒトCL。
【0269】
4-1BBリガンドの1つのエクトドメインを有し、ヒトIgG1-CHドメインに融合されたポリペプチドを、図1Bに描かれているようにクローニングした:ヒト4-1BBリガンド、(G4S)2コネクター、ヒトCH。
【0270】
正しいペアリングに改良を加えるために、以下の変異を交差CH-CLに導入した(荷電変異体)。ヒトCLに融合した二量体4-1BBリガンドには、変異E123RとQ124Kが導入された。ヒトCH1に融合した単量体4-1BBリガンドにおいて、変異K147E及びK213Eが、国際公開第2015150447号に記載されているように、ヒトCH1ドメインにクローニングされた。
【0271】
Her2(PER、TRAS及びaff-PER)に特異的なバインダーをコードする重鎖及び軽鎖DNA配列の可変領域を、ホールの定常重鎖又はヒトIgG1の定常軽鎖のいずれかと共にフレーム内でサブクローニングした。
【0272】
Fcガンマ受容体への結合を無効にするために、国際公開第2012/130831号に記載の方法に従って、ノブ及びホール重鎖の定常領域にP329G、L234A及びL235A変異を導入した。S354C/T366W変異を有する二量体リガンドFcノブ鎖、単量体CH1融合体、Y349C/T366S/L368A/Y407V変異を有する標的抗Her2-Fcホール鎖、及び抗Her2軽鎖の組み合わせにより、集合した三量体4-1BBリガンド及びHer2結合Fabを含むヘテロ二量体が生成された(図2A)。
【0273】
表1に、CH1-CLクロスオーバー及び荷電残基を有する一価の抗Her2(PER)スプリット三量体4-1BBリガンドFc(kih)融合抗原結合分子のアミノ酸配列を示す。該分子は、Her2(PER)-4-1BBLと称される。
【0274】
表2に、CH1-CLクロスオーバー及び荷電残基を有する一価の抗Her2(TRAS)スプリット三量体4-1BBリガンドFc(kih)融合抗原結合分子のアミノ酸配列を示す。該分子は、Her2(TRAS)-4-1BBLと称される。
表3に、CH1-CLクロスオーバー及び荷電残基を有する一価のHer2(aff-PER)スプリット三量体4-1BBリガンドFc(kih)融合抗原結合分子のアミノ酸配列を示す。該分子は、Her2(aff-PER)-4-1BBLと称される。
【0275】
【0276】
【0277】
【0278】
二重特異性コンストラクトは、ポリエチレンイミンを使用して、HEK293-EBNA細胞を哺乳動物発現ベクターでコトランスフェクトすることにより作製された。上記細胞は、1:1:1:1の比の対応する発現ベクター(「べクター4-1BBL Fc-knob鎖」:「ベクターFc-ホール鎖」:「ベクター軽鎖」)でトランスフェクトされた。
【0279】
生成は、HEK293EBNA細胞を使用して、振盪フラスコ中で行った。トランスフェクションのために、細胞を遠心分離し、培地を予熱したCD CHO培地で置き換えた。発現ベクターをCD CHO培地で混合し、PEIを添加し、溶液をボルテックスし、室温で10分間インキュベートした。その後細胞を、DNA/PEI溶液と混合し、振盪フラスコに移し、5%CO雰囲気のインキュベーター内で37℃で3時間インキュベートした。インキュベーション後、サプリメントを含むExcell培地を加えた。トランスフェクションの翌日、12%のFeedを加えた。7日間培養した後、細胞上清を遠心分離によって回収した。溶液を滅菌濾過し、最終濃度0.01%(w/v)になるようにアジ化ナトリウムを補充し、4℃で維持した。
【0280】
分泌タンパク質を、プロテインAを用いるアフィニティークロマトグラフィーによって、続いてサイズ排除クロマトグラフィーによって細胞培養上清から精製した。アフィニティークロマトグラフィーのために、20mMリン酸ナトリウム、20mMクエン酸ナトリウム(pH7.5)で平衡化したProtein A MabSelect SuReカラム(GEヘルスケア)に上清をロードした。結合していないタンパク質を平衡化バッファーで洗浄することにより除去した。結合したタンパク質は、20mMクエン酸ナトリウム、100mM塩化ナトリウム、100mMグリシン(pH3.0)で作製した段階溶出液を使用して溶出した。回収した画分のpHは、0.5Mリン酸ナトリウム(pH8.0)の1/10(v/v)を添加することにより調整した。該タンパク質を濃縮し、濾過した後、20mMヒスチジン、140mM塩化ナトリウム(pH6.0)で平衡化したHiLoad Superdex 200カラム(GEヘルスケア)にロードした。
【0281】
精製されたコンストラクトのタンパク質濃度を、アミノ酸配列に基づいて計算されたモル吸光係数を用いて、280nmにおけるODを測定することにより決定した。この二重特異性コンストラクトの純度及び分子量をLabChipGXII(ノギス)を使用して、還元剤(Invitrogen社、米国)の有無に関わらずCE-SDS分析により分析した。二重特異性コンストラクトの凝集体含有量を、25mM KHPO、125mM NaCl、200mM L-アルギニン一塩酸塩、0.02%(w/v)NaN、pH6.7、25℃のランニングバッファー中で平衡化したTSKgel G3000 SW XL分析用サイズ排除カラム(Tosoh)を用いて分析した。
【0282】
表4は、HER2標的化及び非標的化4-1BBリガンド三量体含有Fc(kih)融合抗原結合分子、並びにコントロール分子の収量と最終的なモノマー含有量をまとめたものである。
【0283】
【0284】
1.2.マウスサロゲートとしてのHer2標的化4-1BBアゴニスト抗原結合分子(mu4-1BB-Her2)の生成及び生産
mu4-1BBBLは自然に二量体を形成し(A. Brita et al. 2018)、ヒトのように三量体を形成しないため、マウス4-1BBに二価結合しHer2に一価結合する二重特異性アゴニスト4-1BB抗体(2+1ともいう)は、図2Bに示すように調製された。
【0285】
本実施例では、コンストラクトのHC1は、抗マウス4-1BB(クローンMU137-1)のVHCH1に続いてCH2及びCH3から構成された。HC2は、抗Her2(クローン2C4、Adams CWら、Cancer Immunol Immunother、55(6), 2006, 717-727頁,cross Fab)のVLCH1に続いて抗マウス4-1BB(クローンMU137-1)のVHCH1、並びにCH2及びCH3から構成された。Gunasekaran et al.,J.Biol.Chem.2010,19637-19646によって記載されているヘテロ二量化を促進する変異、すなわちE356KとD399K(KKという)及びK392DとK409D(DDという)をそれぞれHC1及びHC2に導入した。
【0286】
更に、Baudinoら J. Immunol.(2008),181,6664-6669又は国際公開第2016/030350号に記載の方法に従って、重鎖の定常領域にDAPG変異を導入し、マウスFcガンマ受容体への結合を無効にした。簡潔には、Fcガンマ受容体への結合を無効にするために、Fc-DDとFc-KK重鎖の定数領域にD265AとP329G変異が導入された(Kabat EUインデックスに従った番号付け;すなわち、D265A、P329G)。
【0287】
Fc-DDとFc-KK鎖を組み合わせることで、1つのHer2結合Fabと2つの4-1BB結合Fabを含むヘテロ二量体を生成することができた。正しいペアリングに改良を加えるために、以下の変異を抗4-1BB結合FabのCH-CLに導入した:CLにE123RとQ124K、CH1にK147EとK213E。
【0288】
2+1抗4-1BB(MU137-1)、抗Her2(2C4)抗体のアミノ酸配列は、表4Aに記載されている。
【0289】
【0290】
【0291】
実施例2
表面プラズモン共鳴法によるHer2標的化スプリット三量体4-1BBリガンドFc融合抗原結合分子の機能的特性解析
4-1BB Fc(kih)融合分子の調製
ヒト4-1BBのエクトドメインをコードするDNA配列(Q07011、配列番号51によるヒト4-1BBのアミノ酸24から186)を、ノブ上のヒトIgG1重鎖CH2及びCH3ドメインとインフレームでサブクローニングした。AcTEVプロテアーゼ切断部位を、抗原エクトドメインとヒトIgG1のFcとの間に導入した。抗原-FcノブのC末端に、定方向(directed)ビオチン化用のAviタグを導入した。S354C/T366W変異を有する抗原-Fcノブ鎖と、Y349C/T366S/L368A/Y407V変異を有するFcホール鎖との組み合わせにより、4-1BBエクトドメイン含有鎖の単一コピーを含むヘテロ二量体の生成が可能になり、それによってFc結合抗原の単量体形態を作製する。表5に、抗原Fc融合コンストラクトのアミノ酸配列を示す。
【0292】
【0293】
全ての4-1BB-Fc融合分子をコードする配列は、MPSVプロモーターからのインサートの発現を駆動し、CDSの3’末端に位置する合成ポリAシグナル配列を有するプラスミドベクターにクローン化された。更に、ベクターには、プラスミドのエピソーム維持のためのEBV OriP配列が含まれている。
【0294】
ビオチン化単量体抗原/Fc融合分子の調製のために、指数関数的に増殖する懸濁液HEK293 EBNA細胞に、融合タンパク質の2つの構成要素(ノブ鎖とホール鎖)をコードする3つのベクターと、ビオチン化反応に必要な酵素BirAとをコトランスフェクトした。対応するベクターは、2:1:0.05の比率(「抗原ECD-AcTEV-Fcノブ」:「Fc(ホール)」:「BirA」)で使用された。
【0295】
500mlの振盪フラスコ内でのタンパク質生成のために、トランスフェクションの24時間前に4億個のHEK293 EBNA細胞を播種した。トランスフェクションのために、細胞を210gで5分間遠心分離し、予熱したCD CHO培地で上清を置き換えた。発現ベクターは、200μgのベクターDNAを含む20mLのCD CHO培地に再懸濁させた。540μlのポリエチレンイミン(PEI)を加えた後、該溶液を15秒間ボルテックスし、室温で10分間インキュベートした。その後、細胞を、DNA/PEI溶液と混合し、500mlの振盪フラスコに移し、5%CO雰囲気でインキュベーター中、37℃で3時間インキュベートした。インキュベート後、160mLのF17培地を加え、細胞を24時間培養した。トランスフェクションの翌日、サプリメントを含む1mMのバルプロ酸及び7%のFeedを培養液に加えた。7日間の培養後、細胞を210gで15分間スピンダウンすることにより、細胞上清を回収した。溶液を滅菌濾過(0.22μmフィルター)し、最終濃度0.01%(w/v)になるようにアジ化ナトリウムを補充し、4℃で維持した。
【0296】
分泌タンパク質を、プロテインAを用いるアフィニティークロマトグラフィーによって、続いてサイズ排除クロマトグラフィーによって細胞培養上清から精製した。アフィニティークロマトグラフィーのために、40mLの20mMリン酸ナトリウム、20mMクエン酸ナトリウム(pH7.5)で平衡化したHiTrap ProteinA HPカラム(CV=5mL、GEヘルスケア)に上清をロードした。結合していないタンパク質を、少なくとも10カラム体積の20mMリン酸ナトリウム、20mMクエン酸ナトリウム、0.5M塩化ナトリウム(pH7.5)含有バッファーで洗浄することにより除去した。結合したタンパク質は、20カラム体積の20mMクエン酸ナトリウム、0.01%(v/v)Tween-20(pH3.0)で作製された塩化ナトリウムの直線pH勾配(0~500mM)を使用して溶出した。その後、10カラム体積の20mMクエン酸ナトリウム、500mM塩化ナトリウム、0.01%(v/v)Tween-20(pH3.0)でカラムを洗浄した。
【0297】
回収した画分のpHは、2Mトリス(pH8.0)の1/40(v/v)を添加することにより調整した。このタンパク質を濃縮し、濾過した後、2mM MOPS、150mM塩化ナトリウム、0.02%(w/v)アジ化ナトリウム溶液(pH7.4)で平衡化したHiLoad Superdex 200カラム(GEヘルスケア)にロードした。
【0298】
組換えヒトHer2(ErbB2タンパク質のECD、配列番号54のアミノ酸23~652、UniProt Acc.No.P04626-1)は市販されており(例えばabcamから、カタログ番号ab168896)、Her2への結合の決定に使用した。
【0299】
Her2標的化スプリット三量体4-1BBリガンドFc融合抗原結合分子の同時結合の決定
ヒト4-1BB Fc(kih)とヒトHer2に同時に結合する能力を表面プラズモン共鳴(SPR)によって評価した。全てのSPR実験は、HBS-EP(0.01M HEPES(pH7.4)、0.15M NaCl、3mM EDTA、0.005%Surfactant P20、ドイツ国フライブルグのBiacore社)をランニングバッファーとして用い、Biacore T200で25℃で実施された。ビオチン化ヒト4-1BB Fc(kih)は、ストレプトアビジン(SA)センサーチップのフローセルに直接結合させた。最大450レゾナンスユニット(RU)までの固定化量が使用された。
【0300】
Her2標的化スプリット三量体4-1BBリガンドFc融合コンストラクトを、90秒にわたってフローセルに30μL/分の流量で200nMの濃度範囲で通過させ、解離をゼロ秒に設定した。ヒトHer2は、500nMの濃度で90秒間にわたってフローセルに30μL/分の流量で2番目の分析物として注入された(図3A)。解離を120秒間モニターした。バルク屈折率の差異は、タンパク質が全く固定化されていない基準フローセルで得られた応答差し引くことによって補正した。
【0301】
図3Bと3Cのグラフに見られるように、二重特異性コンストラクトは、ヒト4-1BB及びヒトHer2を同時に結合することができた。
【0302】
実施例3
Her2標的化スプリット三量体4-1BBリガンドFc融合抗原結合分子の機能的特性解析
機能アッセイでは、本発明者らは、上記の一価のHer2標的化スプリット三量体4-1BBリガンドFc融合抗原結合分子、つまり、2つの前述のアゴニスト抗ヒト4-1BB抗体に対するHer2(PER)-4-1BBL、Her2(aff-PER)-4-1BBL及びHer2(TRAS)-4-1BBL、すなわち抗ヒト4-1BBクローン20H4.9 ヒトIgG4(欧州特許第1670828号及び米国特許第7659384号に記載、配列番号55の重鎖と配列番号56の軽鎖を有する抗体)と抗ヒト4-1BBクローンMOR7480 ヒトIgG2(国際公開第2012/032433号に記載、配列番号57の重鎖と配列番号58の軽鎖を有する抗体)、及び前述の融合ポリペプチドHer2(TRAS)-アンチカリン-4-1BB ヒトgG4(国際公開第2016/177802号に記載の、配列番号59と60の融合ポリペプチド)を試験した。
【0303】
更に、非標的化DP47-4-1BBL(配列番号37、28、61及び62のアミノ酸配列を含み、国際公開第2016/075278号にコントロールDと記載されている分子であって、抗原に結合しないDP47と呼ばれる生殖系列コントロールを使用して、抗原結合ドメインを置き換えた)、DP47-アンチカリン-4-1BBヒトIgG4(国際公開第2016/17780号に記載されている分子と同様に調製された配列番号63及び64の融合ポリペプチド)、Her2(TRAS)ヒトIgG1 P329G LALA(配列番号65の重鎖と配列番号48の軽鎖とを有する抗体)、Her2(PER)ヒトIgG1 P329G LALA(配列番号66の重鎖と配列番号46の軽鎖とを有する抗体)、及び非標的化DP47ヒトIgG1 P329G LALA(配列番号67の重鎖と配列番号62の軽鎖を有する抗体)などの種々のコントロール分子が使用された。これらのIgG1抗体は、Fcガンマ受容体への結合を無効にするPro329Gly、Leu234Ala、及びLeu235Ala変異を含む。
【0304】
3.1.Her2発現腫瘍細胞への結合
細胞表面に発現したHer2との結合を試験するために、種々のヒトHer2発現腫瘍細胞を用いた:ヒト乳がん細胞株SK-Br3(ATCC HTB-30)、ヒト乳がん細胞株KPL-4(川崎医科大学)及びヒト胃がん細胞株NCI-N87(ATCC CRL-5822)。
【0305】
DPBS(Life Technologies社製Gibco、カタログ番号14190326)中に再懸濁させた0.2x10腫瘍細胞を、丸底懸濁細胞96ウェルプレート(greiner bio-one,cellstar,カタログ番号650185)の各ウェルに加えた。細胞を200μLのDPBSで1回洗浄し、ペレットを再懸濁させた。1:5000希釈した、Fixable Viability Dye eFluor 450(eBioscience、カタログ番号65-0863-18)を含む4℃のコールドDPBSバッファーを100μL/ウェル添加し、プレートを4℃で30分間インキュベートした。細胞を4℃のコールドDPBSバッファー200μLで1回洗浄し、滴定濃度の、Her2(PER)-4-1BBL又はHer2(aff-PER)-4-1BBL又はHer2(TRAS)-4-1BBLと呼ばれるヒトスプリット4-1BBリガンド分子と、コントロール分子、すなわち、非標的化DP47-4-1BBL又は抗ヒト4-1BB抗体(抗ヒト4-1BBクローン20H4.9 huIgG4又は抗ヒト4-1BBクローンMOR-7480 huIgG2と呼ばれる)又は融合タンパク質[Her2(TRAS)-アンチカリン-4-1BB huIgG4又はその非標的化コントロールDP47-アンチカリン-4-1BB huIgG4又はHer2(TRAS)huIgG1 P329G LALA又はHer2(PER)huIgG1 P329G LALA又はDP47 huIgG1 P329G LALA]とを含む、50μL/ウェルの4℃のコールドFACSバッファー(2%FBS,5mM EDTA pH8(Amresco、カタログ番号E177)と7.5mMアジ化ナトリウム(Sigma-Aldrich S2002)中に再懸濁させた。細胞を4℃で1時間インキュベートし、その後、非結合抗体を除去するためにコールドFACSバッファーで数回洗浄した。細胞を更に、50μL/ウェルの4℃のコールドFACSバッファー5μg/mL PEコンジュゲートAffiniPure抗ヒトIgG F(ab`)2断片特異的ヤギF(ab`)2断片(Jackson ImmunoResearch、カタログ番号109 116 097)を用いて、4℃で30分間染色した。細胞を200μLの4℃のFACSバッファーで2回洗浄し、1%ホルムアルデヒド(Sigma、HT501320-9.5L)を含む50μL/ウェルDPBS中で少なくとも10分間固定した。その後、細胞を100μLの4℃のFACSバッファーに再懸濁させ、Cytomat(ThermoFisher)に結合されたMACS Quant Analyzer 10フローサイトメーター(Miltenyi Biotech)を使用して取得した。データは、FlowJoバージョン10(FLowJo LLC)、Microsoft Excel及びGraph Pad Prismバージョン6(Graph Pad Software Inc)を用いて分析した。
【0306】
図4Aから4Dに示すように、Her2(per)-4-1BBL及びHer2(aff-PER)-4-1BBLは、ヒト腫瘍細胞SK-Br3又はNCI-N87によって発現されたヒトHer2と同様の結合を示し、それにより、Her2(af-PER)-4-1BBL分子は、表6に記載されているように、わずかに高いEC50値を示す。抗体Her2(PER)huIgG P329G LALAは、Her2(PER)-4-1BBLとは異なり、一価ではなく二価で結合する。これは、図4に示すように、わずかに低いMFI(抗体が1つのHer2分子ではなく2つのHer2分子を占めることができるため、細胞表面に対する抗体が少ない)と、表6に記載されているようなアビディティー効果を反映して、わずかに低いEC50値に反映される。二価トラスツズマブ結合融合タンパク質Her2(TRAS)-アンチカリン-4-1BB huIgG4は、二価結合Her2(PER)huIgG P329G LALAよりも低いMFIと高いEC50値を示す(図4と表6に示す)。これは、トラスツズマブ(TRAS)バインダーの、ペルツズマブ(PER)バインダーと比べて低い親和性及びアビディティーを反映している。
【0307】
【0308】
図5Aと5Bに示すように、Her2(PER)-4-1BBL及びHer2(aff-PER)-4-1BBLは、ヒト乳がん細胞株KPL-4によって発現されたヒトHer2に類似の結合を示す。Her2(Tras)-4-1BBLは、Her2(PER)-4-1BBL及びHer2(af-PER)-4-1BBLよりも低いMFI(図5A)及びわずかに高いEC50値(表7)を有し、これは、トラスツズマブ(Tras)の親和性がパーツズマブ(PER)よりも低いことを反映している。これは、一価のHer2結合コンストラクトについてのみ、二価のHer2結合Her2(TRAS)huIgG1 PG LALA及びHer2(PER)huIgG1 PG LALA分子(アビディティーを示す)が同様に結合することを示している(図5Bと表7)。二価のHer2結合分子Her2(TRAS)-アンチカリン-4-1BB huIgG4は、Her2(Tras)-4-1BBLよりも低いMFI(図5A)を示したが、より低いEC50(表6)を示した - これは、2つのHer2(TRAS)-標的分子の親和性(一価結合)とアビディティー(二価結合)の間の違いを反映している。
【0309】
3.2.生物活性アッセイ
3.2.1 ヒト4-1BBを発現するJurkat細胞及びNFκB-lucレポーターカセットにおけるNFκB活性化
Jurkat-hu4-1BB-NFkB-luc2レポーター細胞株をPromega(CS196004)から注文し、10%FCS(Life Technologies社製GIBCO、カタログ番号16000-044)、2mM GlutaMAX-I(Life Technologies社製GIBCO、カタログ番号35050-038)、1mMピルビン酸ナトリウム(SIGMA-Aldrich、カタログ番号S8636)、0.1mM MEM-非必須アミノ酸溶液(SIGMA-Aldrich、カタログ番号M7145)、25mM HEPES(Sigma Life Science,カタログ番号H0887)、600μg/ml G-418(ロッシュ、カタログ番号04727894001)及び400μg/mlハイグロマイシンB(ロッシュ、カタログ番号10843555001)を補充したRPMI 1640(Life Technologies社製GIBCO、カタログ番号42401-042)中で培養した。活性化アッセイをセットアップするために、Jurkat-hu4-1BB-NFkB-luc2を10%FCSと2mM GlutaMAX-Iを補充したRPMI 1640(以下アッセイ培地という)に再懸濁させ、組織培養処理した平底白色96ウェルプレート(Huber lab,greiner bio-one、カタログ番号655083)の各ウェルに100 μμL中に20`000個の細胞を、又は組織培養処理した平底白色384ウェルプレート(Corning、カタログ番号3826)の各ウェルに10 μL中に2`000個の細胞を播種した。その後、50μL(96ウェルプレート)又は10μL(384ウェルプレート)のアッセイ培地又はHer2発現腫瘍細胞のいずれか(SK-Br3、KLP-4又はNCI-N87のいずれか、96ウェルプレートで100`000細胞/ウェル又は384ウェルプレートで10`000細胞/ウェル)を添加した。最後に、異なる滴定濃度の、Her2(PER)-4-1BBL、Her2(aff-PER)-4-1BBL若しくはHer2(TRAS)-4-1BBLと呼ばれる一価Her2標的化スプリット三量体4-1BBリガンドFcc融合抗原結合分子、又は非標的化コントロールDP47-4-1BBL、又は抗ヒト4-1BB抗体20H4.9 huIgG4若しくはMOR-7480 huIgG2、又は融合タンパク質Her2(TRAS)-アンチカリン-4-1BB huIgG4若しくはその非標的コントロールDP47-アンチカリン-4-1BB huIgG4、又はコントロール抗体Her2(TRAS) huIgG1 P329G LALA若しくはHer2(PER)huIgG1 P329G LALA若しくはDP47 huIgG1 P329G LALAを含有するアッセイ培地を50μL(96ウェルプレート)又は10μL(384ウェルプレート)加えた。プレートを細胞培養インキュベーター内で37℃、5%COで6時間インキュベートした。
【0310】
96ウェルプレートを用いてルシフェラーゼ活性を検出するために、プレートを200μL/ウェルDPBSで2回洗浄した。40μlの新鮮なReporter Lysis Buffer(Promega、カタログ番号E3971)を各ウェルに添加し、プレートを20℃で一晩保存した。翌日、凍結したプレート及び検出バッファー(Luciferase 1000 Assay System,Promega,カタログ番号E4550)を室温に解凍した。100μLの検出バッファーを各ウェルに添加し、積分時間500ms、フィルターなし、全波長収集、トップ読み取りでマイクロプレートリーダー(Tecan)を使用して、プレートを可能な限り高速で測定した。
【0311】
384ウェルプレートを用いてルシフェラーゼ活性を検出するために、各ウェルに室温に解凍したばかりのOne-Glo Luciferase(Promega、カタログ番号E6110)6μ」Lを添加し、プレートを500ms積分時間、フィルターなし、全波長収集、トップ読み取りでTecanマイクロプレートリーダー(Tecan)を用いて、可能な限り高速で測定した。ルシフェラーゼを介したルシフェリン酸化による発光を、放出光の単位(URL)として検出した。データは、Microsoft Excel及びGraph Pad Prismバージョン6(Graph Pad Software Inc)を用いて分析した。
【0312】
図6において、Jurkat-hu4-1BB-NFB-luc2活性化アッセイのセットアップを示す。図7Aから7Fに示すように、Her2(PER)-4-1BBLとHer2(aff-PER)-4-1BBLは、Her2発現腫瘍細胞の存在下で同様の活性を示す(図7B及び7C)一方、融合タンパク質Her2(TRAS)-アンチカリン4-1BB huIgG1は、より低い活性のポテンシャル(曲線下面積の減少で示される)及び表8に記載のより高いEC50値を示す。3つ全てのHer2標的4-1BBアゴニスト分子は、Her2発現細胞の非存在下では、レポーター細胞株Jurkat-hu4-1BB-NFkB-luc2の活性化を全く誘導しない(図7A)。アゴニスト抗ヒト4-1BBクローン20H4.9 huIgG4のみが、Her2発現腫瘍細胞の有無に関係なく、Jurkat-hu4-1BB-NFkB-luc2活性化を誘導することができた(図7D、7E及び7F)。
【0313】
【0314】
図8Aから8Dで、Her2(PER)-4-1BBLを、Her2(TRAS)-4-1BBLと比較している。より低い親和性バインダーであるトラスツズマブ(TRAS)のために、Her2(TRAS)-4-1BBLは、Her2(PER)-4-1BBLよりも低い活性を示している(図8B、8C及び8D)。これは、表9では、曲線下面積がより低く、EC50値がより高く表示されている。Her2腫瘍細胞の非存在下では、両分子は、レポーター細胞株Jurkat-hu4-1BB-NFKB-luc2を活性化しなかった(図8A)。この場合も、融合タンパク質Her2(TRAS)-アンチカリン4-1BB huIgG1は、Her2(PER)-4-1BBL又はHer2(TRAS)-4-1BBLよりも低い活性を示し、曲線下面積が小さく、プラトー値が低く、EC50が高くなっている(図8B-8D及び表9に示されている)。図7と同様に、この実験でも、Her2発現腫瘍細胞の有無に関係なく、アゴニスト抗ヒト4-1BBクローン20H4.9huIgG4のみがJurkat-hu4-1BB-NFkB-luc2活性化を誘導できた。
【0315】
【0316】
3.2.2 Her2発現腫瘍細胞株NCI-N87の存在下でのヒトPBMCの活性化アッセイ
Her2結合を介した架橋には、Her2を発現する付着性ヒト胃癌細胞株NCI-N87を使用した。NCI-N87細胞をDPBS(Life Technologies社製Gibco、カタログ番号14190 326)で洗浄し、酵素フリー、PBSベースのCell Dissociation Buffer(Life Technologies社製Gibco、カタログ番号13151-014)で37℃で15分間処理した。細胞を採取し、10%FCS、2mM GlutaMAX-I、1mMピルビン酸ナトリウム(SIGMA-Aldrich、カタログ番号S8636)、1%MEM非必須アミノ酸溶液(SIGMA-Aldrich、M7145)及び50μM β-メルカプトエタノール(Sigma-Aldrich、カタログ番号(Cyt.-No.)M3148)を補充したRPMI 1640からなるT細胞培地に再懸濁させ、50Gyで照射した(X-Ray Irradiator RS 2000、Rad Source社製)。
【0317】
50μLのT細胞培地中の2x10NCI-N87細胞を、丸底組織培養96ウェルプレート(TTP、カタログ番号92697)の各ウェルに播種した。異なる滴定濃度の、ヒト一価Her2標的化スプリット三量体4-1BBリガンドFcc融合抗原結合分子Her2(PER)-4-1BBL、Her2(aff-PER)-4-1BBL若しくはHer2(TRAS)-4-1BBL、又は非標的化コントロール分子DP47-4-1BBL、又はアゴニスト抗ヒト4-1BB抗体抗ヒト4-1BBクローン20H4.9 huIgG4若しくは抗ヒト4-1BBクローンMOR-7480 huIgG2、又は融合タンパク質Her2(TRAS)-アンチカリン-4-1BB huIgG4若しくはその非標的コントロールDP47-アンチカリン-4-1BB huIgG4、又はコントロール抗体Her2(TRAS)huIgG1 P329G LALA、Her2(PER)huIgG1 P329G LALA若しくはDP47 huIgG1 P329G LALAを含有するアッセイ培地を50μL加えた。健康なドナーのバフィーコートから単離されたヒトPBMCを、40nM CFDA-SE(SIGMA-Aldrich、カタログ番号21888-25MG-F)を含有する37℃の温かいDPBS中で37℃で15分間標識した。ウシ胎児血清(FBS)を添加することによりCFSE標識を停止させ、PBMCを2回洗浄し、T細胞培地に再懸濁させて最終濃度を1.5x10細胞/mLにした。このPBMC細胞溶液50μLを各ウェルに播種し、ウェルあたり7.5x10個のCFSE標識PBMCを添加した。最後に、8nMアゴニスト抗ヒトCD3ヒトIgG1クローンV9を含有するT細胞培地のストック溶液を調製し、50μL/ウェルを各ウェルに添加し、最終濃度2nMの抗ヒトCD3ヒトIgG1クローンV9を得た。
【0318】
プレートを細胞インキュベーター内で37℃、5%COで4日間インキュベートした。細胞をDPBSで洗浄し、1:1000に希釈したLIVE/DEAD Fixable Aqua Dead Cell Stain Kit(Life Technology社製Molecular Probes、カタログ番号L34957)を含む100μL/ウェルDPBSで4℃で30分間染色した。細胞を、200μL/ウェルDPBSで1回洗浄し、0.1μg/mL PerCP-Cy5.5コンジュゲート抗ヒトCD137マウスIgG1κ(クローン4B4-1、BioLegend、カタログ番号309814)、0.1μg/mL PE/Cy7コンジュゲート抗ヒトPD-1マウスIgG1κ(クローンEH12.2H7,BioLegend、カタログ番号329918)、0.03μg/mL APCコンジュゲート抗ヒトCD25マウスIgG1κ(クローンBC96,BioLegend、カタログ番号302610)、0.06μg/mL APC/Cy7コンジュゲート抗ヒトCD8マウスIgG1κ(クローンRPA-T8,BioLegend、カタログ番号3301016)、BV421コンジュゲート抗ヒトCD4マウスIgG1κ(クローンRPA-T4,BioLegend、カタログ番号300532)を含有する50μL FACSバッファー(2%FBS、5mM EDTA pH8(Amresco、カタログ番号E177)及び7.5mMアジ化ナトリウム(Sigma-Aldrich S2002)を補充したDPBS)を用い、4℃で30分間染色した。細胞を、200μL/ウェルのDPBSで2回洗浄し、50μL/ウェルの新たに調製したFoxP3Perm/Fixバッファー(eBioscience カタログ番号00-5123)と共に4℃で30分間インキュベートした。細胞を、200μL/ウェルのDPBSで2回洗浄し、新たに調製した、1:250希釈した抗ヒトグランザイムBマウスIgG1κ(クローンGB11、ロット4269803,BD Pharmingen、カタログ番号561142)を補充した50μL/ウェルのPermバッファー(eBioscience カタログ番号00-8333)に再懸濁させ、4℃で1時間インキュベートした。200μL/ウェルのDPBSでプレートを2回洗浄し、1%ホルムアルデヒド(Sigma,HT501320-9.5L)を含有するDPBSで15分間細胞を固定した。細胞を、100μL/ウェルのFACSバッファーに再懸濁させ、MACS Quant Analyzer X(Miltenyi Biotech)を用いて取得した。データは、FlowJo V10(FlowJo,LLC)及びGraphPad Prism 6(GraphPad Software,Inc)を用いて解析した。
【0319】
図9において、PBMC活性化アッセイのセットアップを示す。図10Aから10F及び図11Aから11Fに示すように、Her2(PER)-4-1BBLは、IL-2Rα(CD25)のアップレギュレーション(図10Aと11A)、グランザイムBの細胞内増加(図10Bと11B)、及び増殖の増加(図10Cと11C)によって示される、CD8及びCD4 T細胞の最も強い活性化を誘導した。Her2(TRAS)-4-1BBLも、CD8 T細胞(図10A-10C)及びCD4 T細胞(図11A-11C)の強い活性化を誘導したが、EC50値が高かった。融合ポリペプチドHer2(TRAS)-アンチカリン4-1BB huIgG4は、主にCD25、グランザイムBhigh、増殖中のCD8 T細胞(図10A-10C)及びCD4 T細胞(図11A-11C)のはるかに低い頻度で示されている、T細胞の少ない活性化を媒介した。アゴニスト抗ヒト4-1BBクローン20H4.9huIgG4抗体は、再びある程度の活性化ポテンシャルを示すが、Her2標的4-1BBアゴニストポリペプチドほど強力ではない(図10D-10F及び図11D-11F)。EC50値及びバックグラウンドを超える曲線下面積の値を表10と表11に示す。
【0320】
【0321】
【0322】
3.2.3 Her2発現腫瘍細胞株KPL-4の存在下でのマウス脾細胞の活性化アッセイ
Her2結合を介した架橋には、Her2を発現する付着性ヒト乳がん細胞株KPL-4を使用した。KPL-4細胞をDPBS(Life Technologies社製Gibco、カタログ番号14190 326)で洗浄し、酵素フリー、PBSベースのCell Dissociation Buffer(Life Technologies社製Gibco、カタログ番号13151-014)で37℃で15分間処理した。細胞を採取し、10%FCS、2mM GlutaMAX-I、1mMピルビン酸ナトリウム(SIGMA-Aldrich、カタログ番号S8636)、1%MEM非必須アミノ酸溶液(SIGMA-Aldrich,M7145)及び50μM β-メルカプトエタノール(Sigma-Aldrich、カタログ番号(Cyt.-No.)M3148)を補充したRPMI 1640からなるT細胞培地に再懸濁させ、50Gyで照射した(X-Ray Irradiator RS 2000,Rad Source社製)。
【0323】
T細胞培地50μL中の2x10の照射KPL-4細胞を、丸底組織培養96ウェルプレート(TTP、カタログ番号92697)の各ウェルに播種した。異なる滴定濃度のマウスサロゲートmu4-1BB-Her2又は非標的化コントロールmu4-1BB muIgG1 DAPGを含む50μLのT細胞培地を添加した。C57BL/6マウスの新鮮な脾臓からマウス脾臓を分離した(Octo Dissociator,Miltenyi Biotech、製造元のプロトコールに従った)。その後、赤血球をACK溶解バッファー(ddHO中、0.15M NHCL、10mM KHCO、0.1mM EDTA、pH7.2)中で室温で10分間インキュベートすることにより溶解した。T細胞培地を加えることにより溶解を停止し、細胞をDPBSで洗浄した。マウス脾細胞を、0.5μM CellTraceバイオレット増殖色素(Life Technologies社製MolecularProbes、カタログ番号C34557)を含有する37℃の温かいDPBS中で37℃で15分間インキュベートすることにより標識した。ウシ胎児血清(FBS)を添加することによりCFSE標識を停止させ、マウス脾細胞を2回洗浄し、T細胞培地に再懸濁させて最終濃度を3x10細胞/mLにした。このマウス脾細胞細胞溶液50μLを各ウェルに播種し、1ウェルあたり15x10個のバイオレット増殖色素標識マウス脾細胞を添加した。最後に、2μg/mLのアゴニスト抗マウスCD3εアルメニアンハムスターIgG1クローン1452C11(BioLegend カタログ番号100331)を含有するT細胞培地のストック溶液を調製し、各ウェルに50μL/ウェルを添加し、最終濃度0.5μg/mLのアゴニスト抗マウスCD3εアルメニアンハムスターIgG1クローン1452C11を得た。
【0324】
プレートを細胞インキュベーター内で37℃、5%COで3日間インキュベートした。細胞をDPBSで洗浄し、1:1000に希釈したLIVE/DEAD Fixable Aqua Dead Cell Stain Kit(Life Technology社製Molecular Probes、カタログ番号L34957)を含む100μL/ウェルDPBSで4℃で30分間染色した。細胞を200μL/ウェルDPBSで1回洗浄し、0.67μg/mL抗マウスCD8a-APC-Cy7(BioLegend、カタログ番号100714、クローン53-6.7、ラットIgG2a κ)、0.67μg/mL抗マウスCD4-APC(BioLegend、カタログ番号100412 クローンGK1.5、ラットIgG2b、κ)、0.67μg/mL抗マウスCD137-PE(BioLegend、カタログ番号106106、クローン17B5、シリアンハムスターIgG)、0.67μg/mL抗マウスCD25-PerCP-Cy5.5(BioLegend、カタログ番号101912、クローン3C7、ラットIgG2b、κ)を含有する50μμLのFACSバッファー(2%FBS、5mM EDTA pH8(Amresco、カタログ番号E177)と7.5mMアジ化ナトリウム(Sigma-Aldrich S2002)を補充したDPBS)を4℃で30分間染色した。細胞を、200μL/ウェルのDPBSで2回洗浄し、50μL/ウェルの新たに調製したFoxP3Perm/Fixバッファー(eBioscience カタログ番号00-5123)と共に4℃で30分間インキュベートした。細胞を、200μL/ウェルのDPBSで2回洗浄し、10μg/mLの抗マウスEomes-AlexaFluor488(eBioscience、カタログ番号53-4875-82、クローンDan11mag、ratIgG2a)を補充した、新たに調製した50μL/ウェルのPerm-buffer(eBioscience カタログ番号00-8333)に再懸濁させ、4℃で1時間インキュベートした。200μL/ウェルのDPBSでプレートを2回洗浄し、1%ホルムアルデヒド(Sigma、HT501320-9.5L)を含有するDPBSで15分間細胞を固定した。細胞を、100μL/ウェルのFACSバッファーに再懸濁させ、MACS Quant Analyzer X(Miltenyi Biotech)を用いて取得した。データは、FlowJo V10(FlowJo,LLC)及びGraphPad Prism 6(GraphPad Software,Inc)を用いて解析した。
【0325】
図12において、マウス脾細胞活性化アッセイのセットアップを示す。図13Aから13Dに示すように、マウスサロゲートmu4-1BB-Her2は、IL-2Rα(CD25)のアップレギュレーション(図13Aと13C)及び増殖の増加(図13Bと13D)によって示されるCD8 T細胞及びCD4 T細胞の活性化を誘導した。対照的に、非標的アゴニストmu4-1BB muIgG1 DAPGは、このような活性化を誘導しなかった。したがって、この相乗的な共刺激効果は、Her2架橋に強く依存する。EC50値及びバックグラウンドを超える曲線下面積の値を表12と表13に示す。
【0326】
【0327】
【0328】
実施例4
Her2(PER)-4-1BBLとHer2/CD3二重特異性抗体の併用のin vitro試験
Her2(PER)-4-1BBLとHer2/CD3二重特異性抗体(Her2 TDB, Junttila et al., 2014)の併用を試験するために、ペルツズマブ(2C4)由来のFabを用いて、本発明者らは、Her2に結合する4-1BBL二重特異性分子を生成した(図2A)。トラスツズマブベースのHer2/CD3二重特異性抗体(Her2-TDB)はHer2のドメインIVに結合する(Cho et al., 2003)のに対し、Her2(PER)-4-1BBLはHer2のドメインIIに非競合的に結合する(Franklin et al., 2004)。Her2 TDBは、国際公開第2015/095392号に記載されているように作製された。マウスサロゲートは、「ノブ」アームがマウス抗HER2(hu4D5)であり、「ホール」アームがキメラ抗マウスCD3(2C11)であるmuIgG2a HER2 TDBである(Leo et al. Proc Natl Acad Sci USA. 84: 1374-1378, 1987)。
【0329】
ヒト末梢血単核細胞(PBMC)及びCD8 T細胞単離:
Lymphoprep培地(Technologies社製STEMCELL)を用いて、健康なボランティアの血液からヒトPBMCを分離した。Miltenyi Biotec(#130-094-156)のヒトCD8 Isolation Kitを使用して、ネガティブセレクションによって、CD8細胞をPBMCから抽出した。
【0330】
in vitro T細胞活性化:
フローサイトメトリー細胞染色用の抗体は全て、BD Biosciences(カリフォルニア州サンホセ)からのものであった。ヒトCD8+細胞及びヒト乳がん細胞株SKBR3細胞(比率3:1)を、被験物の存在下、平底96ウェルプレート(BD)中で24時間インキュベートした。インキュベーション後、細胞を新しいV底96ウェルプレートに移した。細胞を、抗CD8-FITC、抗CD69-PE及び抗CD25-APCで染色した。CD69及びCD25表面発現を、フローサイトメトリーによりCD8 T細胞上で検出した。T細胞活性化としてCD8CD69CD25の割合を報告した。
【0331】
in vitroでの標的細胞死滅:
エフェクター細胞(ヒトCD8細胞)と標的細胞(SKBR3、ウェルあたり20,000細胞の密度で)を、被験物の存在下、黒色のクリアボトム96ウェルプレート中で3:1の比率で48時間インキュベートした。インキュベーションの最後に、細胞上清を捨て、プレートをPBSで2回洗浄した。100μLのCell Titer-Glow Luminescent Cell Viability試薬(Promega カタログ番号G7570)を添加し、説明書に記載されているようにルミノメーターでプレートを読み取った。
【0332】
in vitroでの細胞増殖&生存アッセイ:
CD8 T細胞増殖応答を、カルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル(CFSE)蛍光強度希釈を測定することによって検出した。簡潔には、ヒトCD8 T細胞を、CFSEで標識し、SKBR3標的細胞及び被験物と共培養した。HER2 TDBを100ng/mlで使用し、4-1BBアゴニストを1000ng/mlで使用した。0日目(新鮮に単離され、標識されたCD8)、3日目及び7日目からの細胞のアリコートを、フローサイトメトリーでCFSE蛍光強度を分析した。CD8 T細胞の生存率を、0日目、3日目及び7日目の生きたCD8 T細胞の数によって測定した。
【0333】
予想通り、単剤のHer2(PER)-4-1BBLは、in vitroではT細胞活性化又は標的細胞死滅を誘導しなかった(それぞれ図14A及び14B)。抗HER2/CD3-TDBは強いT細胞活性化と腫瘍細胞死滅を誘導したが、これはHer2(PER)-4-1BBLとの共処理では実質的に増強されなかった。対照的に、Her2(PER)-4-1BBLの添加は、in vitroで抗HER2/CD3-TDB誘導T細胞増殖/生存を実質的に増強した(図15A及び15B)。
【0334】
実施例5
マウスサロゲートHer2(2C4)-4-1BBとHer2/CD3二重特異性抗体の併用によるin vivo抗腫瘍効果
マウス4-1BBアゴニストの抗腫瘍活性は、ヒトHER2発現Fo5腫瘍同種移植片を移植した免疫適格マウスにおいて試験された(Lewis Phillips et al., 2008)。単剤HER2 TDB処置は、典型的には、このモデルの処置において一過性の応答をもたらし、完全な応答は、高用量レベルであってもまれである(Li et al., 2018)。mu4-1BB-Her2とTDBの共処置は、応答の有意な改善をもたらさなかったが、Her2 TDBとmu4-1BB-Her2の併用で処置された7頭のマウスのうち4頭(57%)は、試験終了時に検出可能な腫瘍を伴わない完全な応答を示した(図16D)。
【0335】
抗腫瘍効果-Fo5腫瘍同種移植モデル:
メスFVB WTマウスの第3乳腺脂肪パッドのすぐ吻側の皮膚に1cmの切開を行った。腫瘍のためのポケットを第2/3乳腺脂肪パッドに作り、2x2mmのMMTV-Her2-トランスジェニックファウンダー#5(Fo5)腫瘍切片(Lewis Phillips et al., 2008)をポケットに入れた。創傷クリップを用いて皮膚を閉じた。創傷クリップは手術後7~10日目に除去され、触知可能な腫瘍の出現についてマウスをモニターした。腫瘍体積が平均約190mmまで成長したとき、同等の腫瘍体積平均サイズを有する治療コホートに入れた。
【0336】
担腫瘍マウスを、1群7頭ずつの群に分けた(N=7)。1つの群は、0、7、14日目の週2回(qwx2)HER2 TDBの0.5mg/kgのi.v.投与によって処置された。もう1つの群は、10mg/kg用量のmu4-1-BB-HER(2C4)(マウスサロゲート)の週2回(qwx2)、0日目にi.v.、7日目にi.p.注入により処置され、更にもう1つの群は、0、7、14日目の週2回(qwx2)Her2 TDBの0.5mg/kgのi.v.投与と、10mg/kg用量のmu4-1-BB Her2(2C4)(マウスサロゲート)の週2回(qwx2)、0日目にi.v.、7日目にi.p.注入により処置された。コントロール群はビヒクルのみで処置した。
【0337】
引用文献:
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図1A-B】
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図4A-D】
図5A-B】
図6
図7A-F】
図8A-D】
図8E-H】
図9
図10A-F】
図11A-F】
図12
図13A-D】
図14A-B】
図15A-B】
図16A-D】
【配列表】
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