(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-11
(45)【発行日】2024-01-19
(54)【発明の名称】温度測定装置、温度測定方法、及び、温度測定装置用プログラム
(51)【国際特許分類】
G01J 5/58 20220101AFI20240112BHJP
G01K 11/12 20210101ALI20240112BHJP
H01L 21/3065 20060101ALI20240112BHJP
C23C 16/52 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
G01J5/58
G01K11/12 D
H01L21/302 103
C23C16/52
(21)【出願番号】P 2021540636
(86)(22)【出願日】2020-05-25
(86)【国際出願番号】 JP2020020512
(87)【国際公開番号】W WO2021033386
(87)【国際公開日】2021-02-25
【審査請求日】2023-04-17
(31)【優先権主張番号】P 2019150425
(32)【優先日】2019-08-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000127961
【氏名又は名称】株式会社堀場エステック
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【氏名又は名称】中村 惇志
(74)【代理人】
【識別番号】100218187
【氏名又は名称】前田 治子
(72)【発明者】
【氏名】林 大介
(72)【発明者】
【氏名】南 雅和
【審査官】小澤 瞬
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/052074(WO,A1)
【文献】国際公開第2008/123186(WO,A1)
【文献】特表2009-510480(JP,A)
【文献】特開2011-145680(JP,A)
【文献】特開2018-100902(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 16/00 - C23C 16/56
G01J 3/00 - G01J 9/04
G01K 1/00 - G01K 19/00
G01N 21/00 - G01N 21/01
G01N 21/17 - G01N 21/61
H01L 21/18 - H01L 21/20
H01L 21/205
H01L 21/302
H01L 21/3065
H01L 21/31
H01L 21/34 - H01L 21/36
H01L 21/365
H01L 21/461
H01L 21/469
H01L 21/84 - H01L 21/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセスガスが供給されるチャンバ内、又は、プロセスガスが流される流路内を測定対象空間として、当該測定対象空間内の温度を測定する温度測定装置であって、
プロセスガスとは別種のガスであり、プロセスに影響を与えない温度測定用ガスの吸収線を含む波長のレーザ光を前記測定
対象空間内に射出するレーザ射出機構と、
前記測定
対象空間内を通過したレーザ光を検出するレーザ検出機構と、
前記レーザ検出機構の出力に基づいて、前記測定対象空間内の温度を算出する温度算出器と、を備え、
前記レーザ検出機構の出力が、温度測定用ガスが存在する前記測定対象空間内を通過したレーザ光によって生じたものであり、
温度測定用ガスが、炭化水素を含むガスであり、
温度測定用ガスが、プロセスガスとともに前記測定対象空間内に供給される、又は、温度測定用ガスで温度が測定された後、前記測定対象空間内から温度測定用ガスが排気された後にプロセスガスが当該測定対象空間内に供給されることを特徴とする温度測定装置。
【請求項2】
温度測定用ガスが、CH
4、C
2H
6、C
3H
8からなる群から選択される化合物を少なくとも1つ含む請求項1記載の温度測定装置。
【請求項3】
温度測定用ガスが、O
2を含み、プロセス間に供給される請求項1又は2いずれかに記載の温度測定装置。
【請求項4】
温度測定用ガスが、前記測定対象空間内に温度算出可能な所定濃度以上で供給される請求項1乃至3いずれかに記載の温度測定装置。
【請求項5】
温度測定用ガスが、プロセスガスとともに前記測定対象空間内に供給される請求項1乃至4いずれかに記載の温度測定装置。
【請求項6】
前記測定対象空間内へ温度測定用ガスの供給するガス供給機構を制御して、温度測定可能状態を実現するガス制御部をさらに備え、
前記レーザ射出機構が、温度測定用ガスの2つの吸収線に対応する第1波長と第2波長のレーザ光を前記測定対象空間内に射出するものであり、
前記温度算出器が、
前記レーザ検出機構の出力から第1波長と第2波長の吸光度比を算出する吸光度比算出部と、
温度測定用ガスについて、前記第1波長と前記第2波長の吸光度比及び温度の間の関係である温度特性を記憶する温度特性記憶部と、
算出された吸光度比と、前記温度特性に基づいて前記測定対象空間内の温度を出力する温度出力部と、を具備し、
前記温度算出器が、前記温度測定可能状態における前記レーザ検出機構の出力に基づいて、前記測定対象空間内の温度を算出するように構成された請求項1乃至5いずれかに記載の温度測定装置。
【請求項7】
プロセスガスが供給されるチャンバ内、又は、プロセスガスが流される流路内を測定対象空間として、当該測定対象空間内の温度を測定する温度測定方法
であって、
プロセスガスとは別種のガスである温度測定用ガスを前記測定対象空間内に供給し、温度測定可能状態を実現するガス供給ステップと、
レーザ射出機構によって、温度測定用ガスの吸収線を含む波長のレーザ光を前記測定
対象空間内に射出するレーザ射出ステップと、
レーザ検出機構によって、前記測定
対象空間内を通過したレーザ光を検出するレーザ検出ステップと、
前記温度測定可能状態における前記レーザ検出機構の出力から算出される吸光度に基づいて、前記測定対象空間内の温度を算出する温度算出ステップと、を備えたことを特徴とする温度測定方法。
【請求項8】
プロセスガスが供給されるチャンバ内、又は、プロセスガスが流される流路内を測定対象空間
として、前記プロセスガスとは別種のガスである温度測定用ガスの吸収線を含む波長のレーザ光を前記測定対象空間内に射出するレーザ射出機構と、前記測定対象空間内を通過したレーザ光を検出するレーザ検出機構と、を備え、前記測定対象空間内の温度を測定する温度測定装置に用いられるプログラム
であって、
プロセスガスとは別種のガスである温度測定用ガスを前記測定対象空間内に供給するガス供給機構を制御して、温度測定可能状態を実現するガス制御部と、
前記温度測定可能状態における前記レーザ検出機構の出力から算出される吸光度に基づいて、前記測定対象空間内の温度を算出する温度算出器と、しての機能をコンピュータに発揮させることを特徴とする温度測定装置用プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定対象空間内に存在するガスの吸光度に基づいて当該測定対象空間内の温度を測定する温度測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に示すように例えば半導体製造プロセスでは、シリコン基板が収容されたチャンバ内にプロセスガスを所定の濃度で供給するとともに、シリコン基板をヒータによって加熱してチャンバ内にプラズマを発生させることで、成膜やエッチング等の基板処理が行われる。
【0003】
このような基板処理では、チャンバ内のシリコン基板の面板方向に沿った平面内における温度分布(以下、二次元温度分布ともいう)が不均一であると、処理結果も不均一なものになってしまう。
【0004】
したがって、上述した二次元温度分布を制御するために、レーザ吸光分光法(Tunable diode laser absorption spectroscopy: TDLAS)による温度測定が二次元的に行われる。
【0005】
具体的には、チャンバ内に存在するプロセスガスが赤外吸収を示す異なる2波長のレーザ光がチャンバ内に射出され、各波長における吸光度が測定される。測定された吸光度から吸光度比が算出された後、この吸光度比に基づいて、予め実験的に求められた吸光度比と温度との関係である温度特性から対応する温度が算出される。
【0006】
ところで、プロセスガスの吸光度に基づいて温度測定を行う場合、温度に対して変化を検出しやすい波長を少なくとも2つ選定する必要がある。
【0007】
しかしながら、プロセスガスの種類や濃度によっては測定に適した2波長を見つけることが困難な場合がある。すなわち、プロセスガスによっては吸光度のスペクトルがブロードであり、温度変化に対して吸光度比があまり変化しないことがある。加えて、吸光度はガスの濃度に対しても影響を受けるので、例えばプロセスガスの濃度が低い場合には吸光度比が温度変化に対して十分な感度を示さないこともある。
【0008】
仮に温度測定に適した2波長が存在したとしても、プロセスガスの種類や使用する波長ごとに温度特性は異なっている。このため、温度特性が未知のプロセスガスが用いられる場合には、予め実験により温度特性のデータベースを作成しなくてはならず、吸光度に基づいて温度を測定するのは非常に手間がかかる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【非特許文献】
【0010】
【文献】Meas. Sci. Technol. 9 (1998) 545-562
【文献】ECS Journal of Solid State Science and Technology, 7 (11) Q211-Q217 (2018)
【文献】CT半導体レーザ吸収法を用いた高温・高圧域における2次元温度分布計測の特性評価」自動車技術会論文集2015 年 46 巻 6 号 p. 1031-1037
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は上述したような問題に鑑みてなされたものであり、温度特性が未知のプロセスガスが使用される場合でも吸光度に基づいて測定対象空間内の温度を測定することが可能な温度測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る温度測定装置は、プロセスガスが供給されるチャンバ内、又は、プロセスガスが流される流路内を測定対象空間として、当該測定対象空間内の温度を測定する温度測定装置であって、プロセスガスとは別種のガスであり、プロセスに影響を与えない温度測定用ガスの吸収線を含む波長のレーザ光を前記測定空間内に射出するレーザ射出機構と、前記測定空間内を通過したレーザ光を検出するレーザ検出機構と、前記レーザ検出機構の出力に基づいて、前記測定対象空間内の温度を算出する温度算出器と、を備え、前記レーザ検出機構の出力が、温度測定用ガスが存在する前記測定対象空間内を通過したレーザ光によって生じたものであり、温度測定用ガスが、炭化水素を含むガスであり、温度測定用ガスが、プロセスガスとともに前記測定対象空間内に供給される、又は、温度測定用ガスで温度が測定された後、前記測定対象空間内から温度測定用ガスが排気された後にプロセスガスが当該測定対象空間内に供給されることを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る温度測定方法は、プロセスガスが供給されるチャンバ内、又は、プロセスガスが流される流路内を測定対象空間として、当該測定対象空間内の温度を測定する温度測定方法あって、プロセスガスとは別種のガスである温度測定用ガスを前記測定対象空間内に供給し、温度測定可能状態を実現するガス供給ステップと、レーザ射出機構によって、温度測定用ガスの吸収線を含む波長のレーザ光を前記測定空間内に射出するレーザ射出ステップと、レーザ検出機構によって、前記測定空間内を通過したレーザ光を検出するレーザ検出ステップと、前記温度測定可能状態における前記レーザ検出機構の出力から算出される吸光度に基づいて、前記測定対象空間内の温度を算出する温度算出ステップと、を備えたことを特徴とする。
【0014】
このようなものであれば、プロセスガスについて吸光度と温度との関係である温度特性が未知であったとしても、温度特性が既知の温度測定用ガスを用いることでデータベース等を作成することなく、前記測定対象空間の温度を測定することができる。
【0015】
また、温度測定用ガスが、炭化水素を含むガスであるので、例えばプロセスガスとともに温度測定用ガスを供給しても、チャンバにおいてプロセスガスを用いて行われる基板処理に対して作用せず、影響を与えない、あるいは、影響を与えたとしてもほとんど無視できる程度にすることができる。言い換えると、温度測定用ガスが、前記チャンバ内でプロセスガスにより行われるプロセスに影響を与えないガスとすることができるので、例えばチャンバ内において基板処理が進行している間でもリアルタイムで温度を測定できるようにしたり、温度測定用ガスがチャンバ内に残存していたとしても基板処理の品質に影響が現れないようにしたりできる。
【0016】
加えて、上述したような温度測定用ガスを使用すれば、前記測定対象空間内に所定の濃度以上の温度測定用ガスを供給して、測定される吸光度が温度変化に対して十分な感度を示すようにできる。
【0017】
さらに、温度測定用ガスの温度特性を一度データベースとして作成しておけば、様々なプロセスガスが用いられるプロセスにおいて共通して使用できる。したがって、温度測定のために必要となる手間を大幅に低減できる。
【0018】
プロセスガスに対して反応しないもので、特に吸光度に基づく温度測定に適したものとしては、温度測定用ガスが、CH4、C2H6、C3H8からなる群から選択される化合物を少なくとも1つ含むものが挙げられる。
【0019】
温度測定用ガスが、O2を含み、プロセス間に供給されるものであっても、プロセスに影響を与えることなく、測定対象空間の温度を測定することができる。
【0020】
十分な感度で吸光度に基づいた温度測定を可能とするには、温度測定用ガスが、前記測定対象空間内に温度算出可能な所定濃度以上で供給されればよい。
【0021】
例えばパージ中だけでなく、基板処理が行われている間も前記測定対象空間内の温度を測定できるようにするには、温度測定用ガスが、プロセスガスとともに前記測定対象空間内に供給されるものであればよい。
【0022】
前記測定対象空間内に温度測定用ガスが存在している状態においてのみ、前記測定対象空間内の温度が算出されるようにして、不正確な温度が算出されないようにするための具体的な構成例としては、前記測定対象空間内へ温度測定用ガスの供給するガス供給機構を制御して、温度測定可能状態を実現するガス制御部をさらに備え、前記レーザ射出機構が、温度測定用ガスの2つの吸収線に対応する第1波長と第2波長のレーザ光を前記測定対象空間内に射出するものであり、前記温度算出器が、前記レーザ検出機構の出力から第1波長と第2波長の吸光度比を算出する吸光度比算出部と、温度測定用ガスについて、前記第1波長と前記第2波長の吸光度比及び温度の間の関係である温度特性を記憶する温度特性記憶部と、算出された吸光度比と、前記温度特性に基づいて前記測定対象空間内の温度を出力する温度出力部と、を具備し、前記温度算出器が、前記温度測定可能状態における前記レーザ検出機構の出力に基づいて、前記測定対象空間内の温度を算出するように構成されたものが挙げられる。
【0023】
既存の温度測定装置においてプログラムを更新することにより、本発明に係る温度測定装置とほぼ同様の効果を享受できるようにするには、プロセスガスとは別種のガスである温度測定用ガスの吸収線を含む波長のレーザ光をプロセスガスが供給されるチャンバ内、又は、プロセスガスが流される流路内を測定対象空間に射出するレーザ射出機構と、前記測定空間内を通過したレーザ光を検出するレーザ検出機構と、を備え、前記測定対象空間内の温度を測定する温度測定装置に用いられるプログラムあって、プロセスガスとは別種のガスである温度測定用ガスを前記測定対象空間内に供給するガス供給機構を制御して、温度測定可能状態を実現するガス制御部と、前記温度測定可能状態における前記レーザ検出機構の出力から算出される吸光度に基づいて、前記測定対象空間内の温度を算出する温度算出器と、しての機能をコンピュータに発揮させることを特徴とする温度測定装置用プログラムを用いればよい。
【0024】
なお、温度測定装置用プログラムは電子的に配信されるものであってもよいし、CD、DVD、HDD、フラッシュメモリ等の記録媒体に記録されたものであってもよい。
【発明の効果】
【0025】
このように本発明に係る温度測定装置によれば、プロセスガスとは別種の炭化水素を含むガスである温度測定用ガスを測定対象空間内に供給し、温度測定用ガスの吸光度に基づいて温度を算出するように構成されているので、プロセスガスの温度特性が不明であっても、実験等により温度特性のデータベースを事前に用意せずに、温度を算出できる。また、温度測定用ガスの濃度についても温度測定に適した値に調整しやすいので、例えば温度変化に対する吸光度の感度を高くし、正確な温度測定を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る温度測定装置を示す模式図。
【
図2】第1実施形態に係る温度測定装置の機能ブロック図。
【
図3】本発明の第2実施形態に係る温度測定装置、及び、基板処理システムを示す模式図。
【
図4】に係る温度測定装置のレーザ射出機構及びレーザ検出機構の構成を示す模式的斜視図。
【
図5】同実施形態に係る温度測定装置のチャンバ周辺の構造を示す模式的断面図。
【
図6】同実施形態に係る温度測定装置の機能ブロック図。
【
図7】本発明の第2実施形態に係る温度測定装置の変形例。
【符号の説明】
【0027】
200・・・基板処理システム
100・・・温度測定装置
10 ・・・チャンバ
20 ・・・レーザ射出機構
30 ・・・レーザ検出機構
40 ・・・制御装置
44 ・・・温度算出器
441・・・吸光度比算出部
442・・・温度特性記憶部
443・・・温度出力部
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に、本発明の第1実施形態に係る温度測定装置100について説明する。
第1実施形態の温度測定装置100は、半導体製造プロセスにおいて様々なチャンバ10内にプロセスガスを供給するための流路L又はチャンバ10内を測定対象空間として、その温度を吸光度に基づいて測定するものである。
【0029】
図1に示すように、温度測定装置100は、チャンバ10に対して接続され、少なくともプロセスガスが流される流路Lに対してレーザ光を射出するレーザ射出機構20と、流路Lを通過したレーザ光を検出するレーザ検出機構30と、レーザ検出機構30により検出されたレーザ光の光強度信号を取得する制御機構40と、を備えている。レーザ射出機構20から射出されたレーザ光は流路Lに設けられた透過窓を介してレーザ検出機構30へと到達するように構成されている。
【0030】
チャンバ10内では例えばエッチングプロセスが実施される。シリコンのエッチングが実施される場合には、プロセスガスとしてSF6、HBr、及び、CF4等の炭化フッ素系ガスが流路Lを介してチャンバ10内に供給される。
【0031】
さらに、第1実施形態ではプロセスガスとは別種のガスである例えばCH4(メタン)も温度測定用ガスとして単独又はプロセスガスと混合された状態で流路Lに流される。ここで、温度測定用ガスはチャンバCHにおいて行われる各種プロセスに影響を与えないガスである。なお、流路Lの上流側に設けられたガス供給機構GSによってプロセスガス又は温度測定用ガスの流路Lへの供給が制御される。そして、第1実施形態では、制御機構40はCH4の吸光度に基づいて測定対象空間内の温度を算出するように構成されている。また、温度測定用ガスが測定対象空間である流路L内に単独で流される場合には、この温度測定用ガスの吸光度に基づく温度測定が温度測定装置100によって行われた後、流路L及びチャンバCHから温度測定用ガスが排気された後にガス供給機構GSによってプロセスガスが流路L及びチャンバCH供給される。なお、温度測定用ガスはメタンに限られるものではなく、C2H6、C3H8等のアルカンやその他の炭化水素系ガスであっても構わない。また、温度測定用ガスは近赤外領域に吸収波長帯を有するものであればよく、例えば酸素(O2)であってもよい。
【0032】
すなわち、レーザ射出機構20は、温度測定用ガスの異なる2つの吸収ピークに対応する波長のレーザ光を射出し、レーザ検出機構30はそれぞれ波長での光強度信号を出力する。また、温度測定用ガスはチャンバ10においてプロセスの対象となる基板又は基板上に成膜された膜に対してプロセス中においても反応しない、あるいは、プロセスガスによる作用と比較して実質的に無視できるものが選定される。さらに温度測定用ガスは、その温度特性が少なくとも2つの吸収ピークにおいて既知のものが使用される。
【0033】
より具体的には、制御機構40は、物理的にはCPU、内部メモリ、入出力インターフェース、A/Dコンバータ、D/Aコンバータ等を備えた専用乃至汎用のコンピュータであり、前記内部メモリに格納された温度測定装置用プログラムに基づいて、CPU及びその他の構成要素が協働することによって、
図2に示すように、ガス制御部41、レーザ制御部42、光強度信号取得部43、温度算出器44などの機能を発揮するように構成されたものである。
【0034】
ガス制御部41は、ガス供給機構GSを制御して流路L内に温度測定用ガスであるメタンガスを供給し、メタンガスの濃度が所定濃度以上の温度測定可能状態を実現する。例えばチャンバ10に対してプロセスガスが供給される前にガス制御部41は、ガス供給機構GSを制御して、メタンガスのみを流路L内に供給させる。ここで、メタンガスの濃度は、所定の濃度以上であって、第1波長と第2波長における吸光度比が温度変化に対して十分な感度を有する濃度値に設定される。ここで所定の濃度とは、例えば検出される吸光度が10-4程度もしくは10-4以上となるような値である。
【0035】
レーザ制御部42は、ガス制御部41の制御によってガス供給機構GSから温度測定用ガスが流路Lに供給されている状態においてレーザ射出機構20を制御する。具体的にはレーザ制御部42はレーザ射出機構20に印加される電流又は電圧を制御して、温度測定用ガスの吸収ピークに対応する第1波長と第2波長に対応するレーザ光をレーザ射出機構20から射出させる。
【0036】
光強度信号取得部43は、流路Lを通過したレーザ光をレーザ検出機構30が検出した場合の出力である光強度信号をその信号が示す光強度の値にデジタル化してコンピュータ内に取り込む。
【0037】
温度算出器44は、レーザ検出機構30の出力に基づいて、測定対象空間内の温度を算出する。すなわち、温度算出器44は温度測定用ガスであるメタンガスにおいて生じる第1波長と第2波長での吸光度比から対応する温度を算出する。ここで、温度算出器44による第1波長と第2波長の吸光度比に基づく温度算出アルゴリズムについては、例えば非特許文献1に記載されている既知のものである。
【0038】
より具体的には、温度算出器44は、吸光度比算出部441、温度特性記憶部442、温度出力部443からなる。
【0039】
吸光度比算出部441は、レーザ検出機構30から得られた第1波長と第2波長の光強度信号から吸光度比を算出する。
【0040】
温度特性記憶部442は、温度測定用ガスについて、第1波長と第2波長の吸光度比及び温度の間の関係である温度特性を記憶する。この温度特性は、予め実験により作成されたデータベースとして記憶されている。ここで第1波長の吸光度は温度と濃度に依存する値であり、第2波長は温度に対しては依存しておらず、濃度に対してのみ依存する値である。したがって、第2波長の吸光度の絶対値からは温度測定用ガスの濃度を算出することができる。また、第1波長と第2波長の吸光度比は濃度が一定に保たれていることを前提とすれば、温度に対して固有の対応関係を有するので、温度を算出できる。
【0041】
温度出力部443は、算出された第1波長と第2波長の吸光度比で、前述した温度関係を参照し、対応する温度を出力する。
【0042】
このように構成された第1実施形態の温度測定装置によれば、プロセスガスとは別の温度測定用ガスの吸光度比に基づいて、測定対象空間の温度を測定するので、例えば使用されているプロセスガスにおいて温度を算出しやすい吸収波長ピークが少なくとも2つ存在していない場合でも、容易に温度測定を行うことができる。
【0043】
また、温度測定用ガスの温度特性については既知のものであるので、温度測定を行う前の準備として温度特性のデータベースを作成する必要がない。したがって、プロセスガスが例示したような既知の組成のものではなく、特性が未知のプロセスガスであっても測定対象空間の温度を吸光度に基づいて測定することが可能となる。
【0044】
以下に、本発明の第2実施形態に係る温度測定装置100、及び、基板処理システム200について、
図3乃至
図6を参照して説明する。
【0045】
本実施形態の基板処理システム200は、半導体製造プロセスに用いられるものであり、シリコンウエハ等の基板に対して成膜やエッチング等の基板処理が行われる。この基板処理システム200は、チャンバ10と、チャンバ10内に各種ガスを供給するガス供給機構GSと、チャンバ10内のガスを外部へ排出するガス排出機構と、チャンバ10内を測定対象空間としてその温度を測定する温度測定装置100を少なくとも備える。
【0046】
具体的に
図3に示すように、基板(不図示)を収容するチャンバ10にはプロセスガスを供給するプロセスガス供給路L1と、チャンバ10に供給されたプロセスガスを排出するプロセスガス排出路L2とが接続されている。なお、第2実施形態ではチャンバ10内のシリコン基板をエッチングするために、プロセスガスとしてはSF
6がチャンバ10内へと供給される。
【0047】
チャンバ10は、基板を収容する内部空間Sが形成されたものであり、この内部空間Sには基板を加熱するためのヒータHが設けられている。そして、ヒータHによって基板を加熱するとともに、チャンバ10にプロセスガスを供給しながら、該チャンバ10の内部空間Sにプラズマを発生させることで、上述した基板処理が行われる。
【0048】
このチャンバ10には、プロセスガスが供給される複数の供給ポートP1と、内部空間Sに供給されたプロセスガスを排出する排出ポートP2とが形成されている。
【0049】
プロセスガス供給路L1は、一端が上述した供給ポートP1に接続されるとともに、他端がプロセスガスのガス源Z1に接続されている。ここでは、複数の供給ポートP1それぞれにプロセスガス供給路L1が接続されており、これら複数のプロセスガス供給路L1は、互いに並列に設けられている。これにより、各プロセスガス供給路L1を流れるプロセスガスの流量等を独立して制御することができる。
【0050】
各プロセスガス供給路L1には、複数の流体機器かならなるガス供給機構GSの一部が設けられている。具体的にガス供給機構GSは、各プロセスガス供給路L1に設けられた1又は複数の開閉弁V1と、プロセスガスの流量や圧力等の物理量を制御する第1流体制御機器MFC1と、を備えている。ここでの第1流体制御機器MFC1は、プロセスガス供給路L1に流れるプロセスガスの流量を制御する差圧式又は熱式のマスフローコントローラであり、プロセスガス供給路L1に流れる実流量を算出し、その実流量が予め入力された目標流量に近づくように、流体制御弁(不図示)を制御するものである。
【0051】
また、各プロセスガス供給路L1には、プロセスガスとは別種のメタンガス等の温度測定用ガスが流れる温度測定用ガス供給路L3が接続されており、これら複数の温度測定用ガス供給路L3は、互いに並列に設けられている。これにより、各温度測定用ガス供給路L3を流れる温度測定用ガスの流量等を独立して制御することができる。第2実施形態ではメタンガスの吸収線に対応する波長のレーザ光をチャンバ10内に導入し、その吸光度が測定される。
【0052】
各温度測定用ガス供給路L3は、一端がプロセスガス供給路L1に接続されるとともに、他端が温度測定用ガスのガス源Z2に接続されている。また、各温度測定用ガス供給路L3上にはガス供給機構GSの一部が設けられている。具体的にガス供給機構GSは、各温度測定用ガス供給路L3上に設けられた、1又は複数の開閉弁V2と、温度測定用ガスの流量や圧力等の物理量を制御する第2流体制御機器MFC2と、をさらに備えている。ここでの第2流体制御機器MFC2は、上述した第1流体制御機器MFC1と同様、温度測定用ガスの流量を制御する差圧式又は熱式のマスフローコントローラである。
【0053】
また、各プロセスガス供給路L1には、プロセスガスとは別種のメタンガス等の温度測定用ガスが流れる温度測定用ガス供給路L3が接続されており、これら複数の温度測定用ガス供給路L3は、互いに並列に設けられている。これにより、各温度測定用ガス供給路L3を流れる温度測定用ガスの流量等を独立して制御することができる。第2実施形態ではメタンガスの吸収線に対応する波長のレーザ光をチャンバ10内に導入し、その吸光度が測定される。
【0054】
各温度測定用ガス供給路L3は、一端がプロセスガス供給路L1に接続されるとともに、他端が温度測定用ガスのガス源Z2に接続されている。また、各温度測定用ガス供給路L3上にはガス供給機構GSの一部が設けられている。具体的にガス供給機構GSは、各温度測定用ガス供給路L3上に設けられた、1又は複数の開閉弁V2と、温度測定用ガスの流量や圧力等の物理量を制御する第2流体制御機器MFC2と、をさらに備えている。ここでの第2流体制御機器MFC2は、上述した第1流体制御機器MFC1と同様、温度測定用ガスの流量を制御する差圧式又は熱式のマスフローコントローラである。
【0055】
さらに、各材料ガス供給路L1には、プロセスガスを希釈する例えば窒素ガス等の希釈ガスが流れる希釈ガス供給路L4が接続されており、これら複数の希釈ガス供給路L4は、互いに並列に設けられている。これにより、各希釈ガス供給路L4を流れる希釈ガスの流量等を独立して制御することができる。
【0056】
各希釈ガス供給路L4は、一端がプロセスガス供給路L1に接続されるとともに、他端が希釈ガスのガス源Z3に接続されており、1又は複数の開閉弁V3と、希釈ガスの流量や圧力等の物理量を制御する第3流体制御機器MFC3とが設けられている。ここでの第2流体制御機器MFC3は、上述した第1流体制御機器MFC1と同様、希釈ガスの流量を制御する差圧式又は熱式のマスフローコントローラである。
【0057】
プロセスガス排出路L2は、一端が上述した排出ポートP2に接続されており、他端がチャンバ10の外部に位置する例えば吸引ポンプPに接続されている。このプロセスガス排出路L2には、ガス排出機構を構成する調圧弁等の調圧手段V4や開閉弁V5が設けられている。
【0058】
そして、本実施形態の温度測定装置100は、
図4に示すように、チャンバ10内を横断するようにチャンバ10内にレーザ光を射出するレーザ射出機構20と、チャンバ10内を通過した各レーザ光を検出するレーザ検出機構30と、レーザ検出機構30により検出された各レーザ光の光強度信号を取得して、各種機器の動作を制御する制御機構40とをさらに具備している。ここで、チャンバ10、レーザ射出機構20、レーザ検出機構30に関する構成については、例えば非特許文献2に記載されている公知のものである。
【0059】
まず、チャンバ10をより詳細について説明すると、本実施形態のチャンバ10は、
図5に示すように、上述した内部空間Sを有するチャンバ本体11と、内部空間Sを上方から覆う上側蓋部材12と、上側蓋部材12の下方に設けられて多数の小孔h1が形成された多孔部材13と、多孔部材13の下方に設けられて内部空間Sを下方から覆う下側蓋部材14とを有している。
【0060】
チャンバ本体11は、例えば回転体形状の内部空間Sを形成する内周面と、レーザ光を透過させる入射窓W1及び射出窓W2が形成された外周面とを有している。また、チャンバ本体11の底壁には、上述した排出ポートP2が1つ形成されている。なお、排出ポートP2の数や配置は適宜変更して構わない。
【0061】
本実施形態のチャンバ本体11は、外周面が多角形状をなしており、外周面のうちの互いに対向する一対の辺部の一方に入射窓W1が形成され、他方に射出窓W2が形成されている。ここでの外周面は八角形であり、
図4に示すようにある1つの辺部に入射窓W1が形成され、当該入射窓W1に対向する辺部に射出窓W2が形成されている。
【0062】
さらにチャンバ本体11には、内周面と外周面とを貫通する1本のレーザ光路Xが形成されている。このレーザ光路Xは、内部空間Sの中心軸Cに直交する平面に沿って、言い換えれば内部空間Sに収容された基板に沿って形成されている。
【0063】
上側蓋部材12は、チャンバ10の上壁を構成しており、上述した複数の供給ポートP1が形成された例えば円形平板状のものである。複数の供給ポートP1は、例えば上面視円周上に等間隔に配置されており、ここでは4つの供給ポートP1が内部空間Sの中心軸C周りに等間隔に配置されている。なお、供給ポートP1の数や配置は適宜変更して構わない。
【0064】
多孔部材13は、上側蓋部材12の下方に隙間を隔てて配置されたものである。これにより、内部空間Sは多孔部材13よりも上方の上部空間S1と、多孔部材13よりも下方の下部空間S2とに仕切られている。この多孔部材13には、厚み方向に貫通する多数の小孔h1が形成されており、供給ポートP1から上部空間S1に供給されたプロセスガスが、これら多数の小孔h1に分散しながら下部空間S2の全体に行き渡るようにしてある。
【0065】
下側蓋部材14は、内部空間Sに供給されたプロセスガスを排出ポートP2に導く複数の貫通孔h2が形成されており、ここでは基板(不図示)が載置される基板保持部材としても用いられる。この下側蓋部材14は、例えば上述した供給ポートP1に対応する位置に複数の貫通孔h2が形成された例えば円形平板状のものである。また、この下側蓋部材の下面には、例えばカートリッジヒータ等のヒータHが複数設けられている。
【0066】
次に、温度測定装置100を構成するレーザ射出機構20、レーザ検出機構30、及び制御機構40について説明する。
【0067】
レーザ射出機構20は、
図4に示すように、チャンバ10の周壁に形成された入射窓W1に向かってレーザ光を射出するものである。具体的にこのレーザ射出機構20は、例えば半導体レーザ等のレーザ光源21を備え、レーザ光源21から射出されたレーザ光をファイバにより導光し、入射窓W1に対して対向するように配置された射出端部23から射出する。また、レーザ光源21は、温度測定用ガスであるメタンガスの赤外吸収線の異なる2つに対応する第1波長と第2波長のレーザを射出するように構成されている。レーザ光源21は、例えば2種類の半導体レーザからなるものであってもよいし、印加される電圧を変化させることで射出されるレーザ光の波長を変更可能にしたものであってもよい。ここで、第1波長、及び、第2波長は、温度測定用ガスの吸収線ではあるが、プロセスガスの吸収線ではないものが挙げられる。
【0068】
レーザ検出機構30は、
図4に示すように、チャンバ10内を通過し、チャンバ10の周壁に形成された射出窓W2から射出するレーザ光を検出するものである。具体的にこのレーザ検出機構30は、ファイバから射出されて内部空間Sを通過したレーザ光を検出するためのファイバの端部であるレーザ検出部31を有しており、レーザ検出部31は、内部空間Sを挟むようにファイバの射出端部23に対向配置されている。レーザ検出部31により検出されたレーザ光の強度を示す光強度信号は、アンプA等を介して上述した制御機構40に出力される。
【0069】
制御機構40は、物理的にはCPU、内部メモリ、入出力インターフェース、A/Dコンバータ、D/Aコンバータ等を備えた専用乃至汎用のコンピュータであり、前記内部メモリに格納された温度測定装置100用プログラムに基づいて、CPU及びその他の構成要素が協働することによって、
図6に示すように、ガス制御部41、レーザ制御部42、光強度信号取得部43、温度算出器44、ヒータ制御部45などの機能を発揮するように構成されたものである。
【0070】
ガス制御部41は、ガス供給機構GSを制御してチャンバ10内に温度測定用ガスであるメタンガスを供給し、メタンガスの濃度が所定濃度以上の温度測定可能状態を実現する。例えばチャンバ10に対してプロセスガスが供給される前にガス制御部41は、ガス供給機構GSを制御して、メタンガスのみをチャンバ10内に供給させる。ここで、メタンガスの濃度は、所定の濃度以上であって、第1波長と第2波長における吸光度比が温度変化に対して十分な感度を有する濃度値に設定される。ここで所定の濃度とは、例えば検出される吸光度が10-4程度もしくは10-4以上となるような値である。
【0071】
レーザ制御部42は、ガス制御部41によってチャンバ10内に温度測定用ガスであるメタンガスが所定の濃度以上となった後にレーザ射出機構からチャンバ10内へレーザ光を射出させる。
【0072】
光強度信号取得部43は、チャンバ10内を通過したレーザ光をレーザ検出機構が検出した場合の出力である光強度信号をその信号が示す光強度の値にデジタル化してコンピュータ内に取り込む。
【0073】
温度算出器44は、レーザ検出機構30の出力に基づいて、前記測定対象空間内の温度を算出する。すなわち、温度算出器44は温度測定用ガスであるメタンガスにおいて生じる第1波長と第2波長での吸光度比から温度を算出する。ここで、温度算出器44により算出される温度は、チャンバ10内の平均温度である。
【0074】
より具体的には、温度算出器44は、吸光度比算出部441、温度特性記憶部442、温度出力部443からなる。
【0075】
吸光度比算出部441は、レーザ検出機構30から得られた各光路の第1波長と第2波長の光強度信号のから、それぞれ吸光度比を算出する。
【0076】
温度特性記憶部442は、温度測定用ガスについて、第1波長と第2波長の吸光度比及び温度の間の関係である温度特性を記憶する。この温度特性は、予め実験により作成されたデータベースとして記憶されている。ここで第1波長の吸光度は温度と濃度に依存する値であり、第2波長は温度に対しては依存しておらず、濃度に対してのみ依存する値である。したがって、第2波長の吸光度の絶対値からは温度測定用ガスの濃度を算出することができる。また、第1波長と第2波長の吸光度比は濃度が一定に保たれていることを前提とすれば、温度に対して固有の対応関係を有するので、温度を算出できる。
【0077】
温度出力部443は、算出された第1波長と第2波長の吸光度比で、前述した温度関係を参照し、対応する温度をチャンバ10の平均温度として出力する。
【0078】
ヒータ制御部45は、温度出力部443で算出された平均温度に基づいて基板上の温度が目標温度で均一となるように各ヒータHを制御する。
【0079】
このように構成された温度測定装置100によれば、プロセスガスではなく、温度測定用ガスの吸光度に基づいて測定対象空間であるチャンバ10内の温度を測定することができる。
【0080】
また、温度測定用ガスは温度特性が既知で、かつ、温度測定に使用しやすい波長に赤外領域の吸収線を有しているものが選択されているので、吸光度に基づく温度測定を正確に実施しやすい。また、温度特性が既知であるので、予め実験等によって吸光度比と温度との間の関係を示すデータベースを作成する必要がない。
【0081】
したがって、プロセスガスが仮に温度特性が未知のものであったとしても、測定前に手間をかけなくても正確な温度測定を実現することができる。
【0082】
加えて、温度測定用ガスは例えばメタンガスを使用しているので、測定対象空間内における濃度を制御しやすく、吸光度に基づく温度測定に適した濃度にすることで、吸光度比に温度変化に対して十分な感度が現れるようにできる。
【0083】
また、温度測定用ガスであるメタンガスは、赤外に吸収線を有しており、かつ、プロセスガスと反応しないのでチャンバ10内におけるシリコンエッチングにも実質的に影響を与えない。したがって、温度測定を行っても基板の品質に悪影響が出ることもない。
【0084】
また、本実施形態では温度測定用ガスの吸光度によりチャンバCH内の温度を測定した後で、チャンバCH内から温度測定用ガスが排気した後にプロセスガスを測定対象空間内に供給することで、プロセス反応が特に低圧な場合に活用できる。すなわち、温度測定用ガスとプロセスガスをチャンバCH内に同時に導入する場合に比べてチャンバCH内を低圧状態で維持しやすい。
【0085】
次に第2実施形態の変形例について説明する。なお、この変形例におけるチャンバ10、レーザ射出機構20、レーザ検出機構30に関する構成については、例えば非特許文献2に記載されている公知のものである。温度測定装置100は、前述したシングルパスのレーザ光路Xを有するものに限られず、マルチパスのレーザ光路Xを有するものであってもよい。すなわち、
図7に示すようにレーザ射出機構20はチャンバ10の周囲の複数箇所からレーザ光を射出し、レーザ検出機構30はそれぞれのレーザ光を検出するように構成してもよい。
【0086】
具体的には、チャンバ10の連続する半数(4つ)の辺部に入射窓W1が形成され、それ以外の連続する(4つ)の辺部に射出窓W2が形成されている。レーザ検出機構20は、レーザ光を各ファイバに分光するファイバスプリッタ22を具備し、各辺部に対してそれぞれ8本の平行なレーザ光を射出し、チャンバ10内において各辺部から入射したレーザ光が格子状に交差するように構成されている。
【0087】
また、温度算出器44は各レーザ光路Xで検出される吸光度に基づいてチャンバ10内の2次元温度分布を算出する。また制御機構40は2次元温度分布に基づき、各ヒータHを個別に制御する。具体的には、制御機構40は2次元温度分布において目標温度よりも低い部分については対応するヒータHに印加する電圧を上昇させ、目標温度よりも高い部分については対応するヒータHに印加する電圧を低下させる。
【0088】
その他の実施形態について説明する。
【0089】
前述した実施形態では、測定対象空間内に温度測定用ガスのみが存在する状態で測定される吸光度に基づいて温度を算出していたが、プロセスガスと温度測定用ガスが同時に存在する状態で測定される吸光度に基づいて温度を算出するようにしてもよい。このようなものであれば、例えばチャンバにおいて基板処理が行われている間もリアルタイムで温度の変化をモニタリングし、逐次ヒータのフィードバック制御を行うといったことができる。言い換えると、温度測定用ガスがプロセスガスとともに測定対象空間内に供給する場合においては、温度測定用ガスとプロセスガスを別々に測定対象空間内に供給する場合と比較して短時間、かつ、リアルタイムな温度計測が可能となるとともに、温度測定とともにプロセスガスによる反応を同時に実施する事が可能となる。
【0090】
測定対象空間についてはプロセスガスが供給されるチャンバ内に限られず、例えばプロセスガスが流れる流路であっても構わない。この場合、流路内にプロセスガスの代わりに温度測定用ガスを流し、レーザ光の吸光度を測定することで温度を測定することができる。
【0091】
本発明は、前述した各実施形態のようにシリコンのエッチングプロセスのみに適用されるものではなく、その他のプロセスであっても適用可能である。例えば、プロセスは、アルミやIII-V族半導体のエッチングや、CVDプロセス等様々な基板処理のためのプロセスであってもよい。
【0092】
シリコンのエッチングプロセスに用いられるプロセスガスは、SF6、HBr、CF4、ハロゲン化合物からなる群から選択される少なくとも1つの化合物を含むガスである。また、アルミやIII-V族半導体のエッチングプロセスの場合には、プロセスガスはCl2、BCl2、SiCl4、CHCl3からなる群から選択される少なくとも1つの化合物を含むガスである。温度測定用ガスとしてはこれらとは別種のガスを使用すればよい。
【0093】
また、MOCVDプロセスでは、プロセスガスとしてトリメチルガリウム、トリメチルアルミニウム、トリメチルインジウム等の有機金属材料が用いられ、温度測定用ガスとしてこれらとは別種のガスを使用すればよい。いずれの場合でもあっても温度測定用ガスとしてはメタンガスを使用することができる。
【0094】
成膜プロセスに用いられるプロセスガスとしては、絶縁膜形成用ガスであってもよいし、強誘電体形成用ガス又は電極形成用ガスであってもよい。具体的には絶縁膜形成用ガスは、例えばテトラエトキシシラン(TEOS),トリメチルボレート(TMB)、トリエチルボレート(TEB)、トリメチロールプロパン(TMP)、トリメチルホスフェート(TMOP)、トリエチルホスフェート(TEOP)、テトラキスエチルメチルアミノジルコニウム(TEMAZ)、テトラキスジエチルアミノハフニウム(TDMAH)、ターシャリーブチルイミノトリス(エチルメチルアミノ)タンタル(TBTEMT)、トリスジメチルアミノシラン(3DMAS)、塩化ジリコニウム(ZrCl4)、塩化ハフニウム(HfCl4)、六塩化タングステン(WCl6)、塩化アルミニウム(AlCl3)、五塩化モリブデン(MoCl5)からなる群から選択される少なくとも1つの化合物を含むものである。
【0095】
また、強誘電体形成用ガス又は電極形成用ガスとして用いられるプロセスガスは、ペンタエトキシタンタル(Ta(OC2H5)5)、テトラ-t-ブトキシハフニウム(Hf(O-t-C4H9)4), トリ-sec-ブトキシアルミニウム(Al(O-sec-C4H9)3), ビス(エチルシクロペンタジエニル)ルテニウム(Ru(C5H4C2H5)2), ビス(ジピバロイルメタナト)鉛(Pb(C11H19O2)2), (イソプロポキシ)トリス(ジピバロイルメタナト)ジルコニウム(Zr(O-i-C3H7)(C11H19O2)3), ジ(イソプロポキシ)ビス(ジピバロイルメタナト)チタン(Ti(O-i-C3H7)2(C11H19O2)2)からなる群から選択される少なくとも1つの化合物を含むものである。
【0096】
上記の化合物を含むプロセスガスを使用するエッチングプロセス又は成膜プロセスにおいて測定対象空間内の温度を測定するために好ましい温度測定用ガスの例としては、メタン(CH4)、C2H6、C3H8等のアルカンやその他の炭化水素からなる群から選択される化合物を少なくとも1つ含むガスが挙げられる。このような温度測定用ガスであれば、上述したプロセスガスに対して反応しないので、プロセス中でも測定対象空間の温度を測定できる。また、例えばプロセス間において測定対象空間内の温度を測定するのであれば、温度測定用ガスは、上記のプロセスガスと反応するものであっても構わない。このような場合には、近赤外領域に吸収体を有する酸素(O2)を温度測定用ガスとして用いることができる。
【0097】
なお、温度測定用ガスは上述したものに限られず、その他の温度特性が既知のガスを用いても構わない。吸光度に基づいて温度を測定できるようにするには、温度測定用ガスは赤外に吸収波長帯を有するものが好ましい。
【0098】
吸光度から温度を算出する場合、第1波長と第2波長のピークの比を吸光度比として用いていたが、例えばレーザ光の波長を所定帯域で掃引して、第1波長と第2波長のそれぞれのスペクトル面積比を吸光度比として用いても構わない。
【0099】
その他、本発明の趣旨に反しない限りにおいて様々な実施形態の変形や、各実施形態の一部同士の組み合わせを行っても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明であれば、温度特性が未知のプロセスガスが使用される場合でも吸光度に基づいて測定対象空間内の温度を測定することが可能な温度測定装置を提供できる。